(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073419
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/04 20060101AFI20230518BHJP
D06F 37/12 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
D06F39/04 Z
D06F37/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054463
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2022009775の分割
【原出願日】2018-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】土屋 法宏
(57)【要約】
【課題】加熱装置のメンテナンスを軽減することを課題とする。
【解決手段】筐体と、筐体内に配設される水槽と、水槽内に配設される洗濯槽と、略鉛直方向の回転軸を介して洗濯槽を回転駆動する駆動手段と、水槽内の洗濯液を排水する排水口と、洗濯液を加熱する加熱手段と、を備え、水槽の底部には、水槽の内底部より低くなるように形成された凹部と、加熱手段が装着される取付部と、が形成され、加熱手段の上方には、加熱手段を覆うカバー板が設けられ、カバー板には、加熱手段の上方位置からずれた位置であって回転軸と近い側に貫通孔が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配設される水槽と、
前記水槽内に配設される洗濯槽と、
略鉛直方向の回転軸を介して前記洗濯槽を回転駆動する駆動手段と、
前記水槽内の洗濯液を排水する排水口と、洗濯液を加熱する加熱手段と、を備え、
前記水槽の底部には、
前記水槽の内底部より低くなるように形成された凹部と、前記加熱手段が装着される取付部と、が形成され、
前記加熱手段の上方には、前記加熱手段を覆うカバー板が設けられ、
前記カバー板には、前記加熱手段の上方位置からずれた位置であって前記回転軸と近い側に開口が設けられている洗濯機。
【請求項2】
前記カバー板は、前記洗濯機が設置された状態で水平に対して傾斜するように設けられている、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記カバー板は、前記貫通孔に向かって漸次高くなるように傾斜して設けられている、
請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記カバー板は、略対向する二辺において前記水槽との間に間隔を有している、
請求項1~3のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記加熱手段には、温度センサが設けられ、
前記カバー板には、前記温度センサの上方位置に通孔が設けられている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項6】
循環路を介して洗濯液を循環させる循環ポンプ、を更に備え、
前記循環路の一端は、前記凹部の底面に形成された循環水口と接続され、前記凹部の底面前記循環路の他端は、前記水槽の上部に形成された注水口と接続され、
前記循環水口は、前記カバー体の下方に位置し、前記開口の反対側に設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等を洗濯する洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種洗濯機として、洗濯液を昇温させることにより、汚れを落としやすくする洗濯機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図13は、従来の洗濯機の断面図である。
図13において、水槽63に水を供給する給水口62と、給水口62から水槽63に至る給水経路を主水路64とバイパス経路65に分岐する切換弁66とを備え、バイパス経路65の途中に加熱器67を設けている。
【0004】
しかしながら、この構成では、加熱した洗濯液を水槽63に供給する流路が複雑となる問題点があった。
【0005】
そこで、この問題を解決するために、
図14に示すように、水槽71の底部にヒータ72を配設することが考えられる。
【0006】
図14は、従来の水槽の斜視図である。水槽71には、底部に凹部73が形成され、凹部73内に位置するようにヒータ72が配設される。水槽71底部の外周側には、ヒータ72を固定するための固定部74が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、ヒータ近傍に排水口が配設されているため、排水口からの排水は、ヒータ近傍を流れることになり、排水に含まれるリントがヒータに引っかかる虞がある。ヒータにリントが引っかかると、ヒータからリントを取り外す作業が必要となり、使用性が悪い問題がある。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、加熱装置のメンテナンスを軽減し得る洗濯機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、筐体と、前記筐体内に配設される水槽と、前記水槽内に配設される洗濯槽と、略鉛直方向の回転軸を介して前記洗濯槽を回転駆動する駆動手段と、前記水槽内の洗濯液を排水する排水口と、洗濯液を加熱する加熱手段と、を備え、前記水槽の底部には、前記水槽の内底部より低くなるように形成された凹部と、前記加熱手段が装着される取付部と、が形成され、前記加熱手段の上方には、前記加熱手段を覆うカバー板が設けられ、前記カバー板には、前記加熱手段の上方位置からずれた位置であって前記回転軸と近い側に貫通孔が設けられているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗濯機は、加熱装置のメンテナンスを軽減し得る洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の扉体を取り外した状態の背面側から見た斜視図
【
図6】同加熱板を取り外した状態の水槽を上方から見た平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態における洗濯機の背面から見た分解斜視図、
図2は、同洗濯機の縦断面図である。
【0015】
筐体1は、前面、両側面及び背面を有するロ字状に形成され、背面側に開口2を形成し、開口2を扉体3により開閉可能に閉塞している。扉体3を取り外すことにより、開口2から筐体1内部を臨むことができる。
【0016】
本実施の形態では、筐体1の背面側に開口2を形成しているので、開口2を介して筐体1内部をメンテナンスできる位置まで筐体1を回動させ、筐体1内部のメンテナンスを行なう。扉体3は、背面に配置することにより、洗濯機の設置時に、使用者の視界に入ることがなく、美観を損なうことがない。
【0017】
本実施の形態では、筐体1の背面側に開口2を形成したが、側面に形成してもよい。側面に形成すると、メンテナンス時に筐体1の移動量を少なくすることができ、点検作業性を向上することができる。
【0018】
筐体1の上方には、上部ケース4が装着される。筐体1及び上部ケース4により囲まれる空間には、難燃性の合成樹脂にて形成される有底円筒状の水槽5が支持され、水槽5の中心軸には、回転軸6が配設されている。水槽5内には、回転軸6に連結される洗濯槽7が内装され、洗濯槽7底部には、回転軸6に連結されるパルセータ8が配設されている。水槽5の下方には、モータ9が配設され、モータ9に回転軸6が連結され、モータ9により洗濯槽7とパルセータ8が回転駆動される。
【0019】
水槽5の上面には、洗濯槽7内に洗濯物を投入するための投入口10が形成され、投入口10は、蓋体11により開閉自在に閉塞される。上部ケース4には、洗濯槽7内に洗濯物を投入するための外投入口(図示せず)が形成され、外投入口は、外蓋12により開閉自在に閉塞される。
【0020】
洗濯槽7は、耐食性を有する金属製、本実施の形態では、ステンレスからなる円筒状の側壁7aと、難燃性の合成樹脂からなる底壁7bとを備え、側壁7aと底壁7bとを一体的に固定して構成される。洗濯槽7は、側壁7aに多数の脱水孔13を設けると共に、上部には脱水振動低減用の環状の流体バランサー14を取り付けている。
【0021】
洗濯槽7には、側壁7aの相対向する位置に循環水路カバー15が設けられ、洗濯槽7の側面と循環水路カバー15との間に循環水路(図示せず)が形成されている。洗濯槽7には、一対の循環水路カバー15を装着することにより、相対向して2つの循環水路を形成している。循環水路カバー15及び循環水路は、洗濯槽7の回転時のアンバランスの発生を抑制するために、同一形状に形成することが好ましいが、必要に応じて形状を異ならせても良い。
【0022】
循環水路カバー15には、洗濯槽7の上部と中間部に対応する位置に吐出口16を形成している。吐出口16は、洗濯槽7の上部または中間部に対応する位置のどちらか一方にのみ形成しても良い。
【0023】
パルセータ8の下部には、羽根8aが一体に形成されており、モータ9がパルセータ8を回転すると、羽根8aの遠心力により洗濯水が外周側へ押し出されて、循環水路を循環し、循環水路の吐出口16から洗濯槽7内に洗濯液を吐出、散水する。
【0024】
水槽5底部には、回転軸6を中心として略円弧状に凹部17が形成されており、水槽5底部は、凹部17に向かって漸次低くなるように傾斜して形成されている。凹部17には、凹部17の一端側に排水口18が形成されており、凹部17底面は、排水口18に向かって漸次低くなるように傾斜して形成されている。排水口18は、凹部17において、洗濯槽7の脱水時の回転方向の先行側の位置に形成されている。洗濯槽7の脱水時における回転方向は、洗濯槽7を上方から見た状態で、時計方向であり、
図11に矢示するA方向である。
【0025】
水槽5の凹部17には、加熱装置19が装着される取付部20が水槽5の凹部17底部から上方に向かって一体に膨出形成される。加熱装置19は、水槽5内に供給された洗濯水を加熱するためのものであり、ヒータにより構成している。
【0026】
取付部20は、水槽5の側面から凹部17に亘って形成され、凹部17底面から上方に膨出形成されている。取付部20は、天面が水槽5底面と略同じ高さ、あるいは、水槽5底面より少許高い高さに形成されている。取付部20は、洗濯槽7の回転方向に対して略直交する第1の側面20aと、第1の側面20aに対して略直交する第2の側面20bを有している。第1の側面20aは、底面側から上方になるに従って洗濯槽7の回転方向側に向かって傾斜するように構成されている。第2の側面20bは、略垂直な平面状に形成され、第2の側面20bには、加熱装置19が水槽5の外側から挿入される開口部21が形成されている。
【0027】
加熱装置19は、ヒータ線を蛇行状に形成し、両端部分を絶縁・断熱機能を有する取付板22に固定している。取付板22には、サーミスタにより構成される温度センサ23が装着されており、温度センサ23により加熱装置19の温度を検出している。温度センサ23は、ヒータ線の両端部分の略中央位置に配設され、加熱装置19の温度を正確に検出できるようにしている。取付板22の外周部分には、シール材(図示せず)が設けられ、取付板22がシール材により取付部20の第2の側面20bの開口部21周縁に水密に取り付けられる。
【0028】
水槽5は、取付部20の開口部21が扉体3に対向する位置に位置するように筐体1に
装着される。扉体3を開放すると、筐体1の開口2に取付部20の開口部21が臨み、開口部21に装着された加熱装置19のメンテナンスを行うことが可能となる。
【0029】
加熱装置19の下方位置には、金属、本実施の形態では、ステンレスにより形成された遮熱板24が配設され、遮熱板24は、凹部17底面との間に隙間をあけた状態に固定される。加熱装置19と凹部17底面との間に遮熱板24を配設することにより、加熱装置19の発熱が直接凹部17に伝達されるのを抑制することができ、水槽5底部の熱劣化を抑制することができる。
【0030】
本実施の形態では、遮熱板24は、耐食性を有するために、ステンレスにより形成したが、他の金属材料でもよく、加熱装置19の熱の水槽5への伝導を抑制でき、難燃性、或いは、不燃性を有する材料であれば、金属以外の材料、例えば、セラミックを用いてもよい。
【0031】
加熱装置19の上方位置には、金属、本実施の形態では、ステンレスにより形成された加熱板25が配設される。加熱板25には、水槽5の中心側に貫通孔25aが形成されている。貫通孔25aは、加熱装置19の上方位置からずれた位置に形成されており、加熱装置19は、加熱板25により覆われた状態に構成される。加熱装置19は、加熱板25により覆われているので、加熱装置19からの発熱が直接洗濯槽7に伝道されるのを抑制することができ、洗濯槽7底部の熱劣化を抑制することができる。
【0032】
加熱板25は、凹部17底面から上方に立設された複数のリブ26により加熱装置19との間に間隔を保持して固定される。加熱板25は、水槽5底面及び取付部20天面と略同じ高さに装着される。加熱板25は、貫通孔25aに向かって漸次高くなるように傾斜して装着されており、加熱装置19により加熱された洗濯液が加熱板25の傾斜により効率よく貫通孔25aに導かれる。
【0033】
本実施の形態では、加熱板25は、水平に対する傾斜角を3度に設定している。本実施の形態の洗濯機は、設置時に許容される傾斜を水平に対して2度に設定しており、洗濯機が2度傾斜して設置された場合でも、加熱板25が接地面に対して傾斜するように設定している。
【0034】
加熱板25は、概略矩形状に形成され、取付部20の第2の側面20b側の辺25bと、凹部17の外周側の辺25cと、凹部17の中心側の辺25dは、それぞれ第2の側面20b、凹部17の外周側側面及び凹部17の中心側側面に当接、もしくは、近接する状態に取り付けられる。加熱板25の洗濯槽7回転方向側の辺25eは、凹部17側面との間に間隔を有し、加熱板25の凹部17中心側側面と第2の側面20bとの間に位置する辺25fは、円弧状に形成され、凹部17中心側側面と第2の側面20bとの間に間隔を有している。
【0035】
加熱板25には、温度センサ23の上方位置に通孔25gを形成している。加熱装置19により加熱された洗濯液が通孔25gから上方に通過するため、温度センサ23周囲に加熱された洗濯液がとどまることがなく、温度センサ23が洗濯液の温度を正確に検出することができる。
【0036】
凹部17の加熱装置19近傍には、遮熱板24と凹部17側壁との間に循環水口32が形成されている。循環水口32には、循環ポンプ27が接続され、循環ポンプ27には、循環路28の一端が接続される。循環路28は、水槽5の外部に配設され、循環路28の他端は、投入口10近傍に形成した注水口29に接続され、循環ポンプ27によって洗濯液を注水口29から洗濯槽7内の洗濯物に上方から供給する。
【0037】
注水口29は、循環水路の吐出口16より上方に配置されている。循環ポンプ27による洗濯液の循環量は、循環水路の洗濯液の循環量より大きく設定している。これにより、注水口29から供給される洗濯液の量は多く、高い位置から供給されることになり、供給される洗濯液は、洗濯槽7内の洗濯物や洗濯液に当たって泡立ち、洗濯物を大量の泡で包み込んで汚れに作用し、洗浄性能を向上することができる。
【0038】
上部ケース4の上面後部には、操作表示装置30が配設され、操作表示装置30を操作して各種運転コースを設定すると共に、設定された運転コース等を表示する。筐体1の開口2に臨む位置には、制御装置33が配設され、制御装置33により操作表示装置30で選択された運転コースを実行する。
【0039】
本実施の形態では、制御装置33で実行する運転コースには、洗濯液を加熱して洗濯を行うコースと、洗濯液の非加熱状態で洗濯を行なうコースを設けている。
【0040】
以上のように構成した洗濯機において、以下、その動作、作用を説明する。
【0041】
外蓋12及び蓋体11を開き、投入口10から洗濯槽7内に洗濯物を投入して外蓋12及び蓋体11を閉じ、操作表示装置30の電源スイッチ(図示せず)を操作して電源を投入する。操作表示装置30により運転コース等を選択し、スタートスイッチ(図示せず)を操作して運転を開始させる。
【0042】
運転が開始されると、投入された洗濯物の量を検知した後、給水手段(図示せず)が作動して給水が開始され、洗剤ケース(図示せず)に投入された洗剤と共に水槽5内に洗濯液が給水される。
【0043】
水槽5内に所定量の洗濯液が貯留されると、循環ポンプ27が作動して注水口29から洗濯液が注水される(
図3参照)。注水口29からの洗濯液は、高い位置から供給されるので、洗濯槽7内の洗濯物に当たって泡立ち、泡は洗濯物の繊維の奥まで浸透して、汚れを包み込み、汚れを浮かせて洗い落とす。
【0044】
水槽5への給水量は、洗濯槽7内に投入された洗濯物の量に応じて設定され、水位センサー(図示せず)により所定の水位を検知すると給水を停止し、モータ9が駆動してパルセータ8を交互に正逆回転させる。パルセータ8の回転により洗濯槽7内の洗濯物を洗濯液と共に撹拌し、洗濯物を洗濯する。
【0045】
洗い工程においても、循環ポンプ27の動作は継続される。泡立てた洗濯液を循環させて、泡を汚れに作用させ、効率よく汚れを落とすことができる。
【0046】
洗い工程を所定時間継続し、洗いが終了すると、排水弁(図示せず)を開放し、排水を行なう。排水が終了すると、脱水を行なう。脱水は、洗濯槽7を一方向に、本実施の形態では、上方から見て洗濯槽7を時計方向に高速回転させることにより行なう。
【0047】
脱水の後、給水手段を作動させて所定量の水を洗濯槽7に給水し、すすぎ工程を行い、さらに、脱水工程を行い、洗濯の各工程を終了する。
【0048】
運転コースとして、洗濯液を加熱して洗濯を行うコースが選択された場合には、洗い工程において、洗濯液を加熱する加熱工程が行われる。運転が開始されると、投入された洗濯物の量を検知し、投入された洗濯物の量に応じて水槽5内へ給水される。給水とともに加熱装置19に通電され、水槽5内の洗濯液を加熱する。
【0049】
加熱装置19により加熱された洗濯液は、上方に移動する。加熱装置19の上方に位置する加熱板25は、貫通孔25a側に向かって漸次高くなるように傾斜して配設されているので、加熱された洗濯液は、加熱板25に沿って貫通孔25aに導かれ貫通孔25aから加熱板25の上方に移動する。
【0050】
加熱板25下方の洗濯液が加熱板25の上方へ移動するため、低温の洗濯液が加熱板25の周囲から加熱板25の下方側へ流れ込む。加熱板25は、洗濯槽7の回転方向側の辺25eと、凹部17中心側側面と第2の側面20bとの間に位置する辺25fとが、凹部17側面との間に間隔を有しているので、加熱板25の略対向する2辺から加熱板25の下方に洗濯液が流れ込む。加熱板25の略対向する2辺から加熱板25の下方に洗濯液が流れ込むので、洗濯液が効率よく対流し、洗濯液を効率よく加熱することができる。なお、加熱装置19は加熱板25も加熱するので、洗濯液は加熱板25によっても加熱され、洗濯液の加熱効率が向上する。
【0051】
加熱板25には、傾斜した上方側に貫通孔25aを形成しているので、加熱された洗濯液を効率よく上方に導くことができる。貫通孔25aは、加熱装置19の上方位置から横方向にずれた位置に形成し、加熱装置19の上方は、加熱板25により覆われているので、加熱板25によって異物が加熱装置19に接触するのを抑制することが可能になる。
【0052】
加熱工程においては、洗濯液が加熱装置19によって加熱され、洗濯に適した所定の温度、本実施の形態では、約15℃に加熱される。
【0053】
洗濯液が所定温度より少許低い一定温度に達すると、循環ポンプ27を作動し、洗濯液を循環して注水口29から洗濯物に供給させる。温めた洗濯液を循環させるので、粉末洗剤を効率よく溶かすことができ、粉末洗剤の溶け残りを抑制でき、洗濯効率を向上することができる。
【0054】
注水口29から供給される洗濯液は、高い位置から洗濯物に供給されるので、洗濯物に当たって泡立ち、泡が洗濯物に浸透し、繊維の奥に付着した汚れを洗い流す。洗濯液は温められているので、洗剤の酵素が活性化し、洗浄力を向上することができる。
【0055】
洗濯液が所定の温度に達すると、パルセータ8を交互に正逆回転させる。パルセータ8の回転により洗濯槽7内の洗濯物を洗濯水と共に撹拌し、洗濯物を洗濯する。洗濯液を加熱して撹拌するので、粉末洗剤の溶け残りを抑制することができる。この状態においても循環ポンプ27の動作を継続し、洗浄効率を向上させる。
【0056】
パルセータ8が回転すると、洗濯液が羽根8aの回転による遠心力でから外周側へ押しやられ、循環水路を上昇し、吐出口16から洗濯槽7内の洗濯物に向かって散水される。
【0057】
吐出口16から洗濯物に散水される洗濯液は、所定の温度に加熱されているため、洗剤中の酵素が活性化して洗濯物の繊維に染み付いた汚れを効率よく洗浄することができる。
【0058】
温水による洗い工程が終了すると、排水弁(図示せず)を開放し、排水を行なう。排水が終了すると、脱水を行なう。脱水は、洗濯槽7を一方向に、本実施の形態では、上方から見て洗濯槽7を時計方向に高速回転させることにより行なう。
【0059】
脱水の後、給水手段を作動させて所定量の水を洗濯槽7に給水し、すすぎ工程を行い、さらに、脱水工程を行い、洗濯の各工程を終了する。
【0060】
脱水工程においては、洗濯槽7を上方から見て時計方向に高速回転させて行う。洗濯槽7の回転により、水槽5内に
図11に示す矢印A方向に気流が発生し、脱水された洗濯液が気流と共に流れる。
【0061】
取付部20の第1の側面20aは、上方になるに従って洗濯槽7の回転方向側に傾斜しているので、洗濯槽7の回転に伴う流れは、第1の側面20aの傾斜に沿って導かれる。第1の側面20aが傾斜しているので、洗濯槽7の回転に伴う流れが遮られるのが抑制され、乱流の発生が抑制され、振動の発生が抑制される。
【0062】
第2の側面20bは、加熱装置19を装着するために略垂直に形成されているが、第1の側面20aよりも洗濯槽7の回転に伴う流れの下流側に位置するため、流れを妨げることがなく、乱流を発生させることがない。
【0063】
加熱装置19の上方を加熱板25により覆い、さらに、加熱板25は、水槽5底面及び取付部20天面と略同じ高さに配設しているので、水槽5内を流れる洗濯液の流れを妨げることがなく、乱流の発生を抑制することができる。
【0064】
水槽5底面は、凹部17に向かって傾斜し、凹部17底面は、排水口18に向かって傾斜している。排水工程において、水槽5内の洗濯液は、排水口18に向かって流れる。加熱装置19は、排水口18から離間した位置に配設しているので、水槽5内の回転軸6に対して加熱装置19と対向する位置の洗濯液は、加熱装置19を介することなく排水口18から流出する。加熱装置19を経由する洗濯液の量が減少するため、洗濯液に含まれるリントが加熱装置19に付着するのが抑制される。
【0065】
加熱装置19に不具合が生じた場合など、加熱装置19のメンテナンスが必要な場合には、洗濯機を扉体3が臨む位置まで回転させ、筐体1から扉体3を取り外す。加熱装置19は、扉体3を取り外した開口2に臨む位置に配設されているため、扉体3を取り外すことにより加熱装置19を視認することが可能となる。
【0066】
加熱装置19の両端の端子から配線を取り外し、固定ねじ(図示せず)を取り外すことにより加熱装置19を水槽5から取り外すことが可能となる。加熱装置19を水槽5から引き抜き、メンテナンスを行なうことができる。加熱装置19を新たな加熱装置19に交換する場合には、新たな加熱装置19を水槽5の取付部20の開口部21に挿入し、固定ねじを螺合して、加熱装置19を水槽5に固定し、加熱装置19の端子に配線を取り付ける。扉体3を筐体1に取り付け、洗濯機を元の位置に戻すことによりメンテナンスが完了する。
【0067】
水槽5底面は、排水口18に向かって漸次低くなるように傾斜し、水槽5底面は、凹部17の底面も含めて、外周側が最も高くなるように形成されている。水槽5底面には、裏面側に、凹部17の裏面も含めて補強リブ31を形成している。凹部17裏面の外周側を高くすることにより、凹部17裏面に位置する補強リブ31の高さを高く形成することができ、凹部17の強度を向上することができる。
【0068】
加熱装置19は、水槽5底面と略平行に装着されており、水平面に対して排水口18側が低くなるように傾斜して配置されている。加熱装置19が水槽5底面と略平行に配置されているので、排水口18に向かって流れる排水の抵抗になりにくく、排水中に含まれるリントが加熱装置19に絡みつくのを抑制することができる。
【0069】
本実施の形態では、開口2を筐体1の背面側に形成したが、筐体1の側面に形成し、加熱装置19を筐体1側面の開口2に臨ませてもよく、開口2を筐体1の前面に形成し、加
熱装置19を筐体1前面の開口2に臨ませても良い。
【0070】
開口2を筐体1の側面、あるいは前面に配設することにより、メンテナンス時の洗濯機の移動量を低減でき、作業性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、脱水運転時における振動の発生を抑制することができるので、洗濯乾燥機、業務用洗濯機等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 筐体
2 開口
3 扉体
5 水槽
7 洗濯槽
8 パルセータ
9 モータ
17 凹部
19 加熱装置
20 取付部
20a 第1の側面
20b 第2の側面
21 開口部
23 温度センサ
24 遮熱板
25 加熱板
25a 貫通孔
27 循環ポンプ
28 循環路
29 注水口