(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073438
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、推定装置、分析装置、情報処理方法及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/906 20190101AFI20230518BHJP
【FI】
G06F16/906
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055493
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2019071492の分割
【原出願日】2019-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加登谷 裕
(72)【発明者】
【氏名】山崎 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 貴子
(57)【要約】
【課題】より少ない情報でより高い精度の分析を行うこと。
【解決手段】分析主体の行為に起因する項目である主体項目と、前記分析主体の行為に起因しない項目である非主体項目と、の各値を含む実績データについて、1以上の前記主体項目と、前記主体項目に関する1以上の閾値と、の組み合わせによって定義された複数の各クラスについて、そのクラスに属する実績データを正解の教師データとして用い、そのクラスに属さない実績データを不正解の教師データとして用いて学習処理を行うことで、クラス毎に学習結果を取得する学習部と、を備える情報処理装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析主体の行為に起因する項目である主体項目と、前記分析主体の行為に起因しない項目である非主体項目と、の各値を含む実績データについて、1以上の前記主体項目と、前記主体項目に関する1以上の閾値と、の組み合わせによって定義された複数の各クラスについて、そのクラスに属する実績データを正解の教師データとして用い、そのクラスに属さない実績データを不正解の教師データとして用いて学習処理を行うことで、クラス毎に学習結果を取得する学習部、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記クラスの定義に用いられる主体項目は、前記実績データに含まれる主体項目について、主成分分析を行うことによって複数の因子を取得し、前記因子毎にその因子に影響が大きい1又は複数の主体項目を選択することで選択される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理装置によって取得された学習結果と、推定対象の前記実績データと、を用いることで、前記推定対象が前記各クラスに属する可能性を表す値を取得する推定部、を備える推定装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の情報処理装置によって取得された学習結果のうち、分析主体にとってより望ましい実績データが含まれるクラスの学習結果において、各主体項目のうち重み付けが大きい主体項目を選択する分析部、を備える分析装置。
【請求項5】
コンピューターが、分析主体の行為に起因する項目である主体項目と、前記分析主体の行為に起因しない項目である非主体項目と、の各値を含む実績データについて、1以上の前記主体項目と、前記主体項目に関する1以上の閾値と、の組み合わせによって定義された複数の各クラスについて、そのクラスに属する実績データを正解の教師データとして用い、そのクラスに属さない実績データを不正解の教師データとして用いて学習処理を行うことで、クラス毎に学習結果を取得する学習ステップ、
を有する情報処理方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の情報処理装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を分析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な情報を収集し分析することで将来を予測するようなビッグデータの活用が活発になっている。例えば、特許文献1に記載の技術では、営業戦略的に意味のあるまとまりで顧客を分類し、有望な顧客を予測することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
予測の精度を向上させることを目的として、より多くの情報を取得して学習することが従来は行われていた。しかしながら、より多くの情報の取得には、取得に時間や労力を要するとともに、演算にもより多くの時間を要してしまうという問題があった。
上記事情に鑑み、本発明は、より少ない情報でより高い精度の分析を行うことができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、分析主体の行為に起因する項目である主体項目と、前記分析主体の行為に起因しない項目である非主体項目と、の各値を含む実績データについて、1以上の前記主体項目と、前記主体項目に関する1以上の閾値と、の組み合わせによって定義された複数の各クラスについて、そのクラスに属する実績データを正解の教師データとして用い、そのクラスに属さない実績データを不正解の教師データとして用いて学習処理を行うことで、クラス毎に学習結果を取得する学習部、を備える情報処理装置である。
【0006】
本発明の一態様は、上記の情報処理装置であって、前記クラスの定義に用いられる主体項目は、前記実績データに含まれる主体項目について、主成分分析を行うことによって複数の因子を取得し、前記因子毎にその因子に影響が大きい1又は複数の主体項目を選択することで選択される。
【0007】
本発明の一態様は、上記の情報処理装置によって取得された学習結果と、推定対象の前記実績データと、を用いることで、前記推定対象が前記各クラスに属する可能性を表す値を取得する推定部、を備える推定装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上記の情報処理装置によって取得された学習結果のうち、分析主体にとってより望ましい実績データが含まれるクラスの学習結果において、各主体項目のうち重み付けが大きい主体項目を選択する分析部、を備える分析装置である。
【0009】
本発明の一態様は、コンピューターが、分析主体の行為に起因する項目である主体項目と、前記分析主体の行為に起因しない項目である非主体項目と、の各値を含む実績データについて、1以上の前記主体項目と、前記主体項目に関する1以上の閾値と、の組み合わせによって定義された複数の各クラスについて、そのクラスに属する実績データを正解の教師データとして用い、そのクラスに属さない実績データを不正解の教師データとして用いて学習処理を行うことで、クラス毎に学習結果を取得する学習ステップ、を有する情報処理方法である。
【0010】
本発明の一態様は、上記の情報処理装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、より少ない情報でより高い精度の分析を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の情報処理装置10のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】軸の閾値を決定する処理の具体例を示す図である。
【
図3】軸の閾値を決定する処理の具体例を示す図である。
【
図4】軸の閾値を決定する処理の具体例を示す図である。
【
図5】軸の閾値を決定する処理の具体例を示す図である。
【
図8】学習処理を行う際の情報処理装置10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。
【
図9】推定処理を行う際の情報処理装置10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。
【
図10】分析処理を行う際の情報処理装置10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態の情報処理装置の変形例(情報処理装置10a)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の情報処理装置10のシステム構成を示す概略ブロック図である。情報処理装置10は、入力部11、出力部12、実績データ記憶部13、学習結果記憶部14、推定結果記憶部15、分析結果記憶部16及び制御部17を備える。
【0014】
入力部11は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン、タッチパネル等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部11は、ユーザーの指示を情報処理装置10に入力する際にユーザーによって操作される。入力部11は、入力装置を情報処理装置10に接続するためのインターフェースであってもよい。この場合、入力部11は、入力装置においてユーザーの入力に応じ生成された入力信号を情報処理装置10に入力する。
【0015】
出力部12は、情報処理装置10に接続された不図示の出力装置を介し、情報処理装置10のユーザーに対してデータの出力を行う。出力装置は、例えば画像や文字を画面に出力する装置を用いて構成されてもよい。例えば、出力装置は、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイ等を用いて構成できる。また、出力装置は、画像や文字をシートに印刷(印字)する装置を用いて構成されても良い。例えば、出力装置は、インクジェットプリンタやレーザープリンタ等を用いて構成できる。また、出力装置は、文字を音声に変換して出力する装置を用いて構成されても良い。この場合、出力装置は、音声合成装置及び音声出力装置(スピーカー)を用いて構成できる。
【0016】
実績データ記憶部13は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。実績データ記憶部13は、複数の実績データを記憶する。実績データは、複数の項目の実績値を有する。実績データに含まれる複数の項目には、分析主体の行為に起因する項目(以下「非主体項目」という。)と、分析主体の行為に起因しない項目(以下「主体項目」という。)と、が含まれる。分析主体とは、分析の実行を要求する者である。分析主体は、分析を実行する主体そのものであってもよいし、分析の実行の依頼元であってもよい。分析主体は、法人であってもよいし自然人であってもよいし、組合や社団などの団体であってもよい。
【0017】
例えば、実績データとしてサービスの提供先である顧客の情報が用いられてもよい。この場合、例えば非主体項目として、顧客の資本金、顧客の単位期間の売上高、顧客の業種、顧客の社員数、顧客の拠点数、提供されるサービスに関連するウェブサイトへの顧客の閲覧履歴、顧客向けポータルサイトにおいて取得される履歴などがある。また、例えば主体項目として、分析主体が顧客に対して単位期間で提供したサービスの種類数、分析主体が顧客から単位期間に得た売上高、分析主体が顧客から単位期間に得た収益、分析主体が顧客に対して割り当てた営業マンの人数、などがある。単位期間は、例えば月や、年や、年度であってもよい。実績データ記憶部13には、予め取得された実績データが記憶されていることが望ましい。実績データ記憶部13には、2つ以上の単位期間における実績データが記憶されていることが望ましい。
【0018】
学習結果記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。学習結果記憶部14は、制御部17によって行われた学習結果を記憶する。
【0019】
推定結果記憶部15は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。推定結果記憶部15は、制御部17が学習結果を用いて推定処理を行うことによって得られた推定結果を記憶する。推定結果は、例えば、学習結果に対してある単位期間における実績データの説明変数を入力として用いることで得られる、その単位期間における目的変数の値であってもよい。この場合、目的変数は、その単位期間において実績値として得られていない情報である。推定結果は、例えば、学習結果に対してある単位期間における実績データの説明変数を入力として用いることで得られる、次の単位期間における目的変数の値であってもよい。
【0020】
分析結果記憶部16は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。分析結果記憶部16は、制御部17が学習結果を用いて分析処理を行うことによって得られた分析結果を記憶する。分析結果は、例えば分析主体にとってより好ましい結果が得られる学習結果のモデルにおいて、より大きなプラスの要因となる主体項目(以下「正項目」という。)であってもよい。分析結果は、例えば分析主体にとってより好ましくない結果が得られる学習結果のモデルにおいて、より大きなプラスの要因となる主体項目(以下「負項目」という。)であってもよい。正項目と負項目とがわかることで、より好ましい結果を導くために分析主体がどのように主体項目について行動すべきかを理解することが容易となる。
【0021】
制御部17は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部17は、プロセッサーが特定のプログラムを実行することによって、クラス定義部171、学習部172、推定部173、分析部174及び情報提供制御部175として機能する。
【0022】
クラス定義部171は、実績データを分類するための複数のクラスを定義する。クラス定義部171が定義するクラスの数は、クラス定義部171によって定義される軸の数と、各軸に対して個別に定義される閾値の数と、に基づいて決定される。以下、軸を定義する処理の具体例と、閾値を定義する処理の具体例と、について説明する。
【0023】
クラス定義部171は、実績データに含まれる主体項目の中から1以上の項目を軸として選択する。クラス定義部171によって選択される軸の数は、主体項目の数よりも少ないことが望ましい。例えば、クラス定義部171は、複数の主体項目について主成分分析を実行することによって、主体項目の数よりも少ない所定数(例えば2つ)の主成分を生成し、各主成分(各因子)に対して影響が大きい(例えば最も大きい)主体項目を主成分毎に1又は複数選択することで、軸を選択してもよい。例えば、サービスの提供先である顧客の情報が実績データとして用いられている場合に、分析主体が顧客から単位期間に得た収益(以下「収益」という。)と、分析主体が顧客に対して提供した全サービスに対して新サービスが占める割合(以下「新サービス比率」という。)と、が軸として選択されてもよい。
【0024】
クラス定義部171は、選択された各軸について1以上の閾値を決定する。閾値は、分析主体や分析を実行する者によって任意に決定されてもよい。この場合、例えば入力部11を介して各軸の閾値が入力されてもよい。また、以下のような処理によって閾値が決定されてもよい。
【0025】
図2及び
図3は、軸の閾値を決定する処理の具体例を示す図である。
図2及び
図3に示される軸は、分析主体が顧客から単位期間(例えば1つの年度)に得た収益である。クラス定義部171は、所定数の閾値候補で分けられる各カテゴリに同じ数の実測データが含まれるように、所定数の各閾値候補の値を決定する。例えば、
図2及び
図3の例では、閾値候補数が“4”と定められており、4つの閾値候補で分けられる5つの各カテゴリに属する実測データの数が同数となるように4つの閾値候補が決定される。
図2及び
図3の例では、4つの閾値候補はそれぞれ“81”、“125”、“321”、“485”と決定された。
【0026】
各カテゴリに属する実測データについて、主成分分析で得られた第1因子への影響の度合いと、第2因子への影響の度合いと、が算出される。算出された値は、
図2及び
図3において各カテゴリに記載されている。あるカテゴリにおける第1因子及び第2因子への影響の度合いを示す値と、隣接する他のカテゴリにおける第1因子及び第2因子への影響の度合いを示す値と、の変化が所定の条件を満たす場合に、2つのカテゴリを分けている閾値候補が閾値として選択される。所定の条件とは、変化が大きいことを示す条件である。例えば、第1因子及び第2因子のいずれにもおいて、2つの値の差が所定の閾値以上である場合に、所定の条件が満たされたと判定されてもよい。例えば、パレートの法則に応じて全体の8割に該当することが所定の条件であってもよい。
図2の例及び
図3の例では、変化が大きいことを示す条件に基づいて第一閾値及び第二閾値が選択され、パレートの法則に応じて第三閾値が選択されている。各閾値は、推定結果や分析結果を使用する際の利便性を向上させるために、キリのよい値に近似されてもよい。例えば、第一閾値は、81万円という値から80万円という値に変更されてもよい。例えば、第二閾値は、321万円という値から300万円という値に変更されてもよい。
【0027】
図4及び
図5は、軸の閾値を決定する処理の他の具体例を示す図である。
図4及び
図5に示される軸は、分析主体が顧客に対して提供した全サービスに対して新サービスが占める割合である。
図4及び
図5の例では、閾値候補数が“3”と定められており、3つの閾値候補で分けられる4つの各カテゴリに属する実測データの数が同数となるように3つの閾値候補が決定される。
図4及び
図5の例では、3つの閾値候補はそれぞれ“0.25”、“0.41”、“0.68”と決定された。そして、
図4の例及び
図5の例では、変化が大きいことを示す条件に基づいて第一閾値“0.41”が選択されている。
【0028】
クラス定義部171は、選択された複数の軸と、各軸の閾値と、に基づいてクラスを定義する。例えば、軸を各閾値で分ける事によって生成されるカテゴリを、全ての軸において組み合わせることによってクラスが定義されてもよい。
図6は、クラスの定義の具体例を示す図である。
図2~5に示される軸及び閾値を例にとると、
図6に示されるように、収益の軸については3つの閾値が選択されているために4つのカテゴリが生成され、新サービス比率の軸については1つの閾値が選択されているために2つのカテゴリが生成される。したがって全てのカテゴリについて組み合わせを定義すると、4×2=8つのクラスが定義される。8つのクラスは、分析主体にとってより望ましい実績データが含まれるクラス(以下「正クラス」という。)と、分析主体にとってより望ましくない実績データが含まれるクラス(以下「負クラス」という。)と、その他のクラス(以下「中立クラス」という。)と、を含む。
図6の例では、収益が500万円以上の2つのクラス(クラス1,クラス2)が正クラスであり、収益が80万円未満の2つのクラス(クラス7,クラス8)が負クラスであり、その他のクラスが中立クラスと定義されてもよい。
【0029】
クラス定義部171は、実績データ記憶部13に記憶されている各実績データを、単位期間毎に各クラスに分類する。
図6の例では、クラス1には107社分の実績データが分類され、クラス2には61社分の実績データが分類されている。全1,259社分の実績データが、いずれかのクラスに分類されている。
【0030】
次に学習部172について説明する。
図7は、学習処理の概略を示す図である。学習部172は、クラス毎に学習処理を実行し、クラスの数と同数の学習結果(モデル)を取得する。学習部172の処理は、例えば以下のとおりである。学習部172は、処理対象となっているクラス(以下「対象クラス」という。)において学習処理を行う際に、対象クラスに分類された実績データを正解の教師データとして用いる。また、学習部172は、対象クラスにおいて学習処理を行う際に、他のクラスに分類された実績データを不正解の教師データとして用いる。学習処理では、主体項目と非主体項目とが説明変数として用いられ、どのクラスに属することになるかが目的変数として用いられる。このような学習処理が行われることによって、
図7に示されるように、クラス毎に学習結果(モデル)が生成される。このような学習処理は、例えば回帰分析を行うことで行われてもよい。
【0031】
例えば、学習処理では、クラスの分類に用いられた実績データよりも一つ前の単位期間における実績データの主体項目と非主体項目とが説明変数として用いられ、どのクラスに属することになるか(その可能性を示す値)が目的変数として用いられてもよい。この場合、例えば2016年度に得られた実績データに基づいて
図6及び
図7に示すようなクラス分けが行われたとすると、2015年度に得られた実績データが説明変数として使用される。その学習の結果、例えば2016年度に得られた実績データと学習結果とを用いることによって、2017年度にどのクラスに属することになるかを推定することが可能となる。学習部172は、学習結果をクラス毎に学習結果記憶部14に記録する。
【0032】
推定部173は、学習結果記憶部14に記憶されている学習結果と、実績データ記憶部13に記憶されている実績データのうち推定対象の実績データと、に基づいて推定処理を実行する。例えば、推定対象についてある単位期間に得られた実績データと、クラス1の学習結果(モデル1)と、を用いた推定処理が行われることによって、推定対象が次の単位期間にクラス1に属する可能性を示す値が得られる。推定部173がこのような処理を全ての学習結果について実行することによって、推定対象が次の単位期間に各クラスに属する可能性を示す値が得られる。推定部173は、得られた値が最も高いクラスを、推定対象が次の単位期間に属するクラスとして推定してもよい。推定部173は、値が高いものから順に所定数(例えば3つ)を推定結果として取得してもよい。推定部173は、推定結果を推定結果記憶部15に記録する。
【0033】
分析部174は、学習結果記憶部14に記憶されている学習結果に基づいて正項目と負項目とを判定する。例えば、回帰分析の結果得られた各説明変数の重み(回帰係数)に基づいて正項目と負項目とが判定されてもよい。以下、分析部174の処理の具体例について説明する。分析部174は、正クラスの学習結果に含まれる各説明変数の中から、その重みが相対的に大きな値である説明変数を正項目として選択する。分析部174は、負クラスの学習結果に含まれる各説明変数の中から、その重みが相対的に大きな値である説明変数を負項目として選択する。分析部174は、分析結果として、選択された正項目と負項目とを分析結果記憶部16に記録する。
【0034】
情報提供制御部175は、実績データ記憶部13、学習結果記憶部14、推定結果記憶部15及び分析結果記憶部16に記憶されている情報のうちユーザーによって要望された情報を、出力部12を介してユーザーに提供する。例えば、ユーザーによって入力部11を介して特定の顧客について推定結果及び分析結果を画像表示装置に表示することを指示された場合には、情報提供制御部175は、指示された特定の顧客の推定結果及び分析結果を推定結果記憶部15及び分析結果記憶部16から読み出し、読み出された情報を画像表示装置に表示する。
【0035】
図8は、学習処理を行う際の情報処理装置10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。なお、
図8に示されるフローチャートが実行される時点で、既に複数の実績データが実績データ記憶部13に記憶されている。制御部17のクラス定義部171は、ユーザーの操作や所定の条件にしたがって、主体項目を選択する(ステップS101)。次に、クラス定義部171は、実績データ記憶部13に記憶されている実績データに関して、主体項目について主成分分析を実行する(ステップS102)。
【0036】
クラス定義部171は、主成分分析によって得られた複数の主成分(因子)毎に、相対的に与える影響が大きい主体項目を1又は複数選択し、選択された主体項目を軸として設定する(ステップS103)。クラス定義部171は、設定された各軸について1又は複数の閾値を設定する(ステップS104)。クラス定義部171は、設定された軸及び閾値に基づいて、複数のクラスを定義する。そして、クラス定義部171は、定義された各クラスに対し、実績データ記憶部13に記憶されている実績データを割り当てる(ステップS105)。
【0037】
学習部172は、各クラスについて学習処理を実行する(ステップS106)。学習部172は、学習処理の実行によってクラス毎の学習結果を取得する。そして、学習部172は、得られたクラス毎の学習結果を学習結果記憶部14に記録する(ステップS107)。
【0038】
図9は、推定処理を行う際の情報処理装置10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。例えば、入力部11を介して、推定対象として特定の顧客の実績データが選択されると、推定部173は、実績データ記憶部13から選択された実績データを読み出す。推定部173は、学習結果記憶部14に記憶されている各クラスに応じた学習結果と、選択された実績データと、を用いて推定処理を行う(ステップS201)。この推定処理の実行により、推定対象として選択されている特定の顧客が所定の将来の単位期間において各クラスに属する可能性に関する値(以下「スコア」という。)が算出される。推定部173は、例えばスコアが高いものから順に所定数取得する(ステップS202)。そして、推定部173は、推定結果を推定結果記憶部15に記録し、出力部12を介してユーザーに出力する(ステップS203)。
【0039】
図10は、分析処理を行う際の情報処理装置10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。例えば、入力部11を介して正クラス及び負クラスの指定を受けると、分析部174は、指定された正クラスの学習結果を学習結果記憶部14から取得する(ステップS301)。分析部174は、取得された正クラスの学習結果に含まれる各説明変数の重みの中から、大きい順に所定数の説明変数を正項目として取得する(ステップS302)。また、分析部174は、指定された負クラスの学習結果を学習結果記憶部14から取得する(ステップS303)。分析部174は、取得された負クラスの学習結果に含まれる各説明変数の重みの中から、大きい順に所定数の説明変数を正項目として取得する(ステップS304)。なお、分析部174は、学習結果に含まれる説明変数のうち主体項目の中から大きい順に所定数を正項目や負項目として取得してもよい。そして、分析部174は、取得された正項目及び負項目の説明変数を分析結果記憶部16に記録し、出力部12を介してユーザーに出力する(ステップS305)。
【0040】
このように構成された情報処理装置10では、実績データに含まれる説明変数の中から、主成分分析などの手法を用いることによって実績データのばらつきに影響の大きい説明変数が選択され、選択された説明変数に応じて複数のクラスが定義される。そして、クラス毎に、そのクラスに属する実績データが正解の教師データ、他のクラスに属する実績データが不正解の教師データとして用いることで複数の学習が行われ、クラス毎の学習結果が得られる。そのため、単に実績データに含まれる全ての説明変数に基づいて何らかの目的変数を得るための学習処理が行われる場合に比べて、より少ない情報でより高い精度の分析(推定)を行うことが可能となる。
【0041】
また、情報処理装置10では、学習結果に対して分析部174が分析処理を実行することによって、分析結果として正項目と負項目とが得られる。そのため、ユーザーは、正項目と負項目とに基づいて、今後どのような行動を行っていくことでより好ましい状態を作り出すことができるのか容易に理解することが可能となる。
【0042】
(変形例)
分析部174は、正クラスの学習結果に含まれる各説明変数の中から、その重みの絶対値が相対的に大きく正の値である説明変数を正項目として選択し、その重みの絶対値が相対的に大きく負の値である説明変数を負項目として選択してもよい。分析部174は、負クラスの学習結果に含まれる各説明変数の中から、その重みの絶対値が相対的に大きく正の値である説明変数を負項目として選択し、その重みの絶対値が相対的に大きく負の値である説明変数を正項目として選択してもよい。
【0043】
推定部173の推定結果として複数のクラスが取得された場合、分析部174は、推定部173によって取得された複数のクラスに基づいて正項目及び負項目を選択してもよい。例えば、推定部173の推定結果として取得された複数のクラスのうち、推定対象の実績データが属するクラスよりも分析主体にとってより望ましい実績データが含まれるクラスを正クラスとし、推定対象の実績データが属するクラスよりも分析主体にとって望ましくない実績データが含まれるクラスを負クラスとして、分析が行われてもよい。
【0044】
分析部174は、クラス毎に正クラスと負クラスとを変更して分析を行うことによって、クラス毎の分析結果を取得してもよい。例えば、クラス8を分析対象とする場合には、クラス1~7の全てが正クラスとして定義され、負クラスは無しと定義されてもよい。例えば、クラス6を分析対象とする場合には、クラス1~5が正クラスとして定義され、クラス7及び8が負クラスとして定義されてもよい。
【0045】
正クラス及び負クラスの定義は、例えば以下のようになされてもよい。クラスのナンバーが分析主体にとって好ましいクラスである順番で並べられる場合に、分析対象のクラスの前後所定数のクラスが正クラス及び負クラスとして定義されてもよい。例えば、分析対象のクラスがクラス4である場合に、クラス5及び6が負クラスとして定義され、クラス3及び2が正クラスとして定義されてもよい。
【0046】
情報処理装置10は、複数の情報処理装置を用いて構成されてもよい。例えば、制御部17が備える機能は、複数の情報処理装置にまたがって実装されてもよい。このような実装の結果、例えばクラス定義部171及び学習部172を備える学習装置と、推定部173を備える推定装置と、分析部174を備える分析装置と、に分けて実装されてもよい。また、上述した学習装置及び分析装置は一体に構成されてもよいし、推定装置及び分析装置が一体に構成されてもよい。
【0047】
図11は、本実施形態の情報処理装置の変形例(情報処理装置10a)を示す図である。
図11に示されるように、情報処理装置10aは、通信部18を備えてもよい。
図11の例では、通信部18はネットワーク30を介して端末装置20と通信可能に接続される。ネットワーク30は、インターネットであってもよいし、構内ネットワーク(Local Area Network)であってもよい。ネットワーク30は、有線ネットワークであってもよいし、無線ネットワークであってもよいし、両者を組み合わせることによって構築されたネットワークであってもよい。
【0048】
端末装置20は、パーソナルコンピューターやタブレット端末やスマートフォン等の情報処理装置を用いて構成される。端末装置20は、ユーザーによって操作されることによって、上述した入力部11及び出力部12として機能する。すなわち、ユーザーによって端末装置20に入力された指示を示すデータは、端末装置20に備えられた通信部によってネットワーク30を介して情報処理装置10aに送信される。情報処理装置10aの通信部18は、端末装置20から指示を受信すると、受信された指示を制御部17に出力する。
【0049】
制御部17の情報提供制御部175は、ユーザーに対して出力される情報を取得すると、通信部18及びネットワーク30を介して端末装置20に送信する。端末装置20は、情報処理装置10aから情報を受信すると、ディスプレイやスピーカー等の出力装置によって情報をユーザーに出力する。
【0050】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10…情報処理装置, 11…入力部, 12…出力部, 13…実績データ記憶部, 14…学習結果記憶部, 15…推定結果記憶部, 16…分析結果記憶部, 17…制御部, 171…クラス定義部, 172…学習部, 173…推定部, 174…分析部, 18…通信部, 20…端末装置, 30…ネットワーク