(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073439
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 A
H01F37/00 C
H01F37/00 E
H01F37/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055521
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2017242787の分割
【原出願日】2017-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(57)【要約】
【課題】コア部材の接着作業を不要として生産性を向上させつつ、コイルを固定することのできるリアクトルを提供する。
【解決手段】端面113を有する複数のコア部材11を有し、端面113同士を突き合わせてなる環状のコア1と、コア部材11の周囲を覆う樹脂体21、22を複数有し、樹脂体21、22を組み合わせてコア1の周囲を覆う第1の樹脂部材2と、第1の樹脂部材2を介してコア1の一部に装着されるコイル5a、5bと、端面113と交差する方向に延び、コイル5a、5bの周囲を覆うとともに、第1の樹脂部材2を介してコイル5a、5bが装着されていないコア1のヨーク部を覆う第2の樹脂部材3と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合面となる端面を有する複数のコア部材を有し、前記端面同士を突き合わせてなる環状のコアと、
前記コア部材の周囲を覆う樹脂体を複数有し、前記樹脂体を組み合わせて前記コアの周囲を覆う第1の樹脂部材と、
前記第1の樹脂部材を介して前記コアの一部に装着されるコイルと、
前記コイルの周囲を覆うとともに、前記端面と交差する方向に延び、前記コイルが装着されていない前記コアのヨーク部を、前記第1の樹脂部材を介して覆う第2の樹脂部材と、
を備え、
前記第1の樹脂部材は、前記端面とは反対側の前記ヨーク部の背面を覆い、
前記第2の樹脂部材は、前記コア部材の端面を挟むように前記ヨーク部の背面を前記第1の樹脂部材を介して覆っていること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記第1の樹脂部材には、前記端面とは反対側の前記ヨーク部の背面を露出する開口部が設けられ、
前記第2の樹脂部材は、前記端面と平行に設けられた一部が前記開口部を覆うこと、
を特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記第2の樹脂部材は、前記コイルの底面が露出する開口部が設けられていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記コア部材は、U字型コアであり、
前記第1の樹脂部材は、前記U字型コアを覆うU字型形状の第1の樹脂体及び第2の樹脂体を有し、
前記第2の樹脂部材は、前記コイルを覆うコイル被覆部と、前記コイル被覆部から前記端面と交差する方向に突出し、前記U字型コアの脚間を繋ぐヨークを覆うヨーク被覆部とを有すること、
を特徴とする請求項1~3の何れかに記載のリアクトル。
【請求項5】
前記第1の樹脂部材には、前記ヨーク部を覆う部分に前記第1の樹脂部材を構成する樹脂の2つの注入痕が設けられ、
前記第2の樹脂部材は、前記注入痕間を覆うこと、
を特徴とする請求項1~4の何れかに記載のリアクトル。
【請求項6】
前記コイルは、その端部が前記ヨーク部の上方から外部に引き出され、
前記第2の樹脂部材は、前記ヨーク部の上方の前記端部を被覆する端部被覆部を有し、
前記端部被覆部が、前記第1の樹脂部材を介して前記ヨーク部を覆うこと、
を特徴とする請求項1~5の何れかに記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアとコイルを備えるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池車の駆動システム等をはじめ、種々の用途で使用されている。例えば、車載用の昇圧回路に用いられるリアクトルとして、環状コアの周囲に配置した樹脂製のボビンにコイルを巻回した後、これらを金属製のケースに収容し、ケース内に充填材を流し込んで固めたものが多く用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、コアとコイルとの絶縁は、両者の間に樹脂を介在させることで実現している。その方法の1つとして、コアとコイルを金型内に一緒に入れて固定し、その両方を同時に一体成型することが考えられる。しかし、コアとコイルの両方を同時に一体成型することは難しい。コイルはスプリングバックが生じるなど形状が一定せず、線材間も隙間が生じたりするなど金型内での固定が難しい。また、金型内でコアとコイルを固定していても、金型内に注入する樹脂の射出圧でコア又はコイルが煽られて動いてしまい、コアとコイルの間の絶縁距離を保つのが難しくなり、コアとコイルを同時に金型内に固定してモールドすることは困難である。
【0005】
そこで、従来は、リアクトルを分割して構成する方法を採用していた。すなわち、まず、分割されたコア部材を樹脂モールドしてモールドコアを形成し、次に当該モールドコアにコイルをはめ込んで各モールドコアの端面同士を接着剤等により接着してリアクトルを作製していた。しかし、この接着作業は、接着剤の塗布やその乾燥のための時間や手間が必要であり、製造工数及び製造時間を増大させる要因となっていた。
【0006】
一方、コイルは、外部からの振動を受けたり、リアクトル動作中の磁気吸引力を受けたりすることによってコイルを構成する電線が振動する。そのため、電線同士が擦れ合い、電線の被膜に傷が発生してしまう場合があった。特に、電線間に粉塵が紛れ込むとその損傷が著しくなる。また、コイルは、外部機器や部品と溶接等により電気的に接続される。そのため、コイルが振動等により動くと、外部機器や部品との接続部分に応力が加わり、接触不良や断線が生じ電気的な接続が維持できない虞があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コア部材の接着作業を不要として生産性を向上させつつ、コイルを固定することのできるリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリアクトルは、接合面となる端面を有する複数のコア部材を有し、前記端面同士を突き合わせてなる環状のコアと、前記コア部材の周囲を覆う樹脂体を複数有し、前記樹脂体を組み合わせて前記コアの周囲を覆う第1の樹脂部材と、前記第1の樹脂部材を介して前記コアの一部に装着されるコイルと、前記コイルの周囲を覆うとともに、前記端面と交差する方向に延び、前記コイルが装着されていない前記コアのヨーク部を、前記第1の樹脂部材を介して覆う第2の樹脂部材と、を備え、前記第1の樹脂部材は、前記端面とは反対側の前記ヨーク部の背面を覆い、前記第2の樹脂部材は、前記コア部材の端面を挟むように前記ヨーク部の背面を前記第1の樹脂部材を介して覆っていること、を特徴とする。
【0009】
前記第1の樹脂部材には、前記端面とは反対側の前記ヨーク部の背面を露出する開口部が設けられ、前記第2の樹脂部材は、前記端面と平行に設けられた一部が前記開口部を覆うようにしても良い。
【0010】
前記第2の樹脂部材は、前記コイルの底面が露出する開口部が設けられていても良い。
【0011】
前記コア部材は、U字型コアであり、前記第1の樹脂部材は、前記U字型コアを覆うU字型形状の第1の樹脂体及び第2の樹脂体を有し、前記第2の樹脂部材は、前記コイルを覆うコイル被覆部と、前記コイル被覆部から前記端面と交差する方向に突出し、前記U字型コアの脚間を繋ぐヨークを覆うヨーク被覆部とを有するようにしても良い。
【0012】
前記第1の樹脂部材には、前記ヨーク部を覆う部分に前記第1の樹脂部材を構成する樹脂の2つの注入痕が設けられ、前記第2の樹脂部材は、前記注入痕間を覆うようにしても良い。
【0013】
前記コイルは、その端部が前記ヨーク部の上方から外部に引き出され、前記第2の樹脂部材は、前記ヨーク部の上方の前記端部を被覆する端部被覆部を有し、前記端部被覆部が、前記第1の樹脂部材を介して前記ヨーク部を覆うようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コア部材の接着作業を不要として生産性を向上させつつ、コイルを固定することのできるリアクトルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施形態に係るリアクトルの上面側分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係るリアクトルの底面側分解斜視図である。
【
図6】コアモールド工程を説明するための図である。
【
図7】リアクトル本体の組立工程を説明するための図である。
【
図8】リアクトル本体モールド工程を説明するための図である。
【
図9】第2の実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【
図10】第2の実施形態に係るリアクトルの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るリアクトルについて説明する。
【0017】
[1.実施形態]
[1-1.構成]
本実施形態のリアクトルは、例えばハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池車の駆動システム等で使用される大容量のリアクトルである。リアクトルは、これら自動車に搭載される電気回路の主要部品である。この電気回路は、リアクトルの他、IGBT等の半導体スイッチング素子を有する。リアクトルは、半導体スイッチング素子のオンオフが高速に行われることにより、外部電源から供給される電気エネルギーを磁気エネルギーに変換し、当該エネルギーの蓄積及び放出を繰り返し、電流や電圧を抑制する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
図2は、本実施形態に係るリアクトルの上面側分解斜視図である。
図3は、本実施形態に係るリアクトルの底面側分解斜視図である。
図4は、
図1のA-A断面図である。
図5は、
図1のB-B断面図である。
【0019】
本明細書において、図面に示すz軸方向を「上」側、その逆方向を「下」側とする。各部材の構成を説明するのに、「下」は「底」とも称する。「上」や「下」とは、リアクトルの各構成の位置関係をいうものであり、リアクトルが設置対象の実機に搭載された際の位置関係や方向を指すものではない。z軸方向を高さ方向と称する場合もある。
【0020】
図1~
図3に示すように、本リアクトルは、コア1と、第1の樹脂部材2と、コイル5と、第2の樹脂部材3とを備える。
【0021】
コア1は、コイル5が装着される一対の脚部と、脚部の端部間を繋ぐ一対のヨーク部とを有し、圧粉磁心、フェライト磁心又は積層鋼板などの磁性体により環状に構成されている。コア1は、その内部がコイル5により発生した磁束の通り路となって磁気回路を形成する。
【0022】
具体的には、
図2及び
図3に示すように、コア1は、複数のコア部材11を有し、コア部材11の端面を突き合わせて環状形状を成している。ここでは、コア部材11は、U字型コア11a、11bであり、圧粉磁心で構成されている。U字型コア11a、11bは、一対の脚111と脚111の一端同士を繋ぐヨーク112とから構成され、全体としてU字型形状を成す。U字型コア11a、11bの、ヨーク112で繋がれていない脚111の端面113が他方のU字型コア11a、11bとの接合面となる。すなわち、コア1は、U字型コア11aの脚111の端面113と、U字型コア11bの脚111の端面113とをそれぞれ突き合わせて環状形状を構成している。
【0023】
コア1の脚部は、2つのコア部材11の脚111が突き合わされて成る。コア1のヨーク部は、ヨーク112であり、コイル5が装着されていないコア1の部位である。
【0024】
第1の樹脂部材2は、コア部材11の周囲を覆う複数の(ここでは2つ)樹脂体21、22を有し、樹脂体21、22を組み合わせてコア1の周囲を覆う樹脂からなる部材である。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等を用いることができる。
【0025】
樹脂体21、22は、U字型コア11a、11bに倣った形状を有する。具体的には、樹脂体21、22は、コア部材11を覆うコア被覆部201と、固定部202とを有する。
【0026】
コア被覆部201は、コア部材11を覆う部位であり、ここではU字型コア11a、11bを覆うため全体としてU字型形状である。コア被覆部201は、脚111を覆う筒状のボビン20a、20bと、ボビン20a、20bを繋ぐヨーク被覆部20cとを有する。
【0027】
ボビン20a、20bは、コア1とコイル5との間に介在し、両方の絶縁を図る。ボビン20a、20bの一端は開口しており、当該開口から内部のU字型コア11a、11bの端面113が露出している。ここでは、ボビン20a、20bの端部と端面113とは面一になっている。ボビン20a、20bの外周には、筒が延びる方向(y軸方向)に延びるスペーサ207が複数設けられている。スペーサ207は、
図5に示すように、ボビン20a、20bの外周面から膨出しており、コイル5a、5bの内周との距離を保つ。ヨーク被覆部20cは、ヨーク112を覆う筒状の部位である。
【0028】
ヨーク被覆部20cには、凹部203が設けられている。凹部203は、ヨーク被覆部20cの上面及び背面に亘って凹んだ部分である。具体的には、凹部203は、ヨーク被覆部20cの上面においては端面113と交差する方向に延び、ヨーク被覆部20cの背面においては、上下方向に延びる。ここでは、上面における延び方向はボビン20a、20bの延び方向と同じであり、凹部203は、ヨーク被覆部20cの上面の当該方向に亘って設けられている。
【0029】
ヨーク被覆部20cの底面には、コア部材11の底面(すなわち、ヨーク112の底面)を露出させる開口部204が設けられている。ここでは、開口部204は、略台形状であるが、その形状は特に限定されない。また、ヨーク被覆部20cの背面側の側面には、ヨーク112の背面を露出させる開口部205が設けられている。ここでいう「背面」とは、端面113とは反対側の側面のことをいう。ここでは開口部205は矩形状であり、2つ設けられている。但し、その形状及び数は特に限定されない。
【0030】
固定部202は、リアクトルを設置対象物に固定するための部位であり、コア被覆部201の両脇に2つ突出して設けられている。そのため、固定部202は、第1の樹脂部材2を構成したときの四隅に位置する。固定部202には、ネジ穴202aが設けられ、ネジ穴202aにネジが差し込まれ、ネジ締結することで設置対象物に対してリアクトルを固定する。固定部202には、ネジ穴202aが構成されるようにリング状又は円筒状の不図示のカラーが埋め込まれていても良い。
【0031】
また、樹脂体21、22には、樹脂体21、22を構成する樹脂の注入痕206が設けられている。注入痕206は、樹脂体21、22を構成するための金型に樹脂が注入され、当該樹脂が固化した際に形成された痕であり、凹凸などによりなる。ここでは、注入痕206は、ヨーク被覆部20cの上面に2カ所設けられ、外部に露出している。但し、注入痕206は、ヨーク被覆部20cの上面に限らず、ヨーク被覆部20cの底面又は側面に設けられていても良い。ヨーク被覆部20cの注入痕206間には、ウェルドラインWが設けられていても良い(
図6参照)。ウェルドラインWは、金型内で合流した樹脂同士が融着した箇所に発生する細い線である。ここでは、ヨーク被覆部20cの注入痕206間にウェルドラインWが設けられているものとする。
【0032】
コイル5は、絶縁被覆を有する導線が巻回されてなる。ここでは、コイル5は、一対のコイル5a、5bを有する。本実施形態では、コイル5a、5bは、平角線のエッジワイズコイルである。但し、コイル5a、5bの線材や巻き方は平角線のエッジワイズコイルに限定されず、他の形態であっても良い。
【0033】
コイル5a、5bは、端部がリアクトル外部に引き出され、外部電源などの外部機器の配線と接続される。外部電源から電力供給されると、コイル5a、5bに電流が流れてコイル5a、5bを突き抜ける磁束が発生し、コア1内に環状の閉じた磁気回路が形成される。
【0034】
第2の樹脂部材3は、コイル5a、5bの周囲を覆うとともに、端面113と交差する方向(ここではy軸方向)に延び、コイル5a、5bが装着されていないコア1のヨーク部(ヨーク112)を、第1の樹脂部材2を介して覆う樹脂からなる部材である。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等を用いることができる。第2の樹脂部材3と第1の樹脂部材2とは、同じ種類の樹脂を用いても良いし、異なる種類の樹脂を用いても良い。第2の樹脂部材3に用いる樹脂としては、コイル5a、5bの振動に追従する柔らかい材質のものが好ましい。第2の樹脂部材3がコイル5a、5bの振動によって第1の樹脂部材2、コイル5a、5bから剥がれるのを抑制することができるからである。すなわち、剥離によって第2の樹脂部材3と第1の樹脂部材2又はコイル5a、5bとの間に空気層が形成され放熱性が悪化するのを抑制することができるからである。
【0035】
第2の樹脂部材3は、具体的には、コイル5a、5bの周囲を覆うコイル被覆部31と、コア1のヨーク部(ヨーク112)を覆うヨーク被覆部32とを有する。
【0036】
コイル被覆部31は、コイル5a、5bの周囲を覆う部位である。本実施形態では、コイル5a、5bが2つ設けられているので、各コイル5a、5bに対するコイル被覆部31をコイル被覆部31a、31bと称する。
【0037】
コイル被覆部31a、31bは、
図4及び
図5に示すように、二重筒構造、すなわち、外筒311、内筒312及び連結部313を有している。外筒311は、コイル5a、5bの外周を覆う。但し、外筒311の上面及び下面には、コイル5a、5bの上面、底面を露出させる開口部311a、311bが設けられている。内筒312は、コイル5a、5bの内周を覆うとともに、第1の樹脂部材2の外周を覆う。外筒311と内筒312とは、y軸方向に延びる中心軸を共通にして内筒312が内側に、外筒311が外側に配置されている。連結部313は、外筒311と内筒312の端部を連結する。また、連結部313は、ヨーク被覆部32と連結しており、コイル被覆部31a、31bとヨーク被覆部32とを一続きに継ぎ目なく繋いでいる。なお、本実施形態では、第2の樹脂部材3の作製後の熱収縮の影響を避けるため、外筒311間に空洞が設けられている。但し、当該空洞を埋めるように樹脂により一続きにしても良い。
【0038】
ヨーク被覆部32は、ヨーク被覆部20cを介在させてコア1のヨーク部(ヨーク112)を覆う。言い換えれば、ヨーク被覆部32は、ヨーク被覆部20cの一部を覆う。
【0039】
ヨーク被覆部32は、ヨーク被覆部20cの一部と固着している。ここでは、ヨーク被覆部32は、コイル被覆部31a、31bの一端部に接続され、端面113と交差する方向に延びて設けられている。ここでは、端面113と交差する方向とは、端面113と直交する方向(y軸方向)であり、コア1の脚部の延び方向又はコイル5a、5bの巻軸方向である。
【0040】
具体的には、ヨーク被覆部32は、L字形状を成し、ヨーク被覆部20cの上面を覆う板状体321と、ヨーク被覆部20cの背面を覆う板状体322とを有する。板状体321は、端面113と交差する方向に延びるヨーク被覆部32の一部である。ここでは、xy平面上に拡がっている。板状体322は、一端が板状体321と接続されて、高さ方向に延びている。ここでは、板状体322は、xz平面上に拡がり、端面113と平行に、端面113を挟むように設けられている。
【0041】
板状体321、322は、凹部203に嵌まっており、ヨーク被覆部20cの上面と板状体321とは同一平面(xy平面)上に位置して平坦であり、ヨーク被覆部20cの背面と板状体322とは同一平面(xz平面)上に位置して平坦である。板状体321、322は、凹部203の表面と固着している。
【0042】
板状体321の幅は、ヨーク112の幅より小さいことが好ましく、ヨーク112の直線部分の幅より小さいとより好ましい。後述する樹脂の収縮による応力が端面113の上側に集中するのを防止するためである。なお、ここにいう「幅」とはx軸方向の長さをいう。
【0043】
板状体322は、ヨーク被覆部20cの背面に設けられた開口部205を覆っており、ヨーク112の背面が外部に露出していない。ここでは、板状体322は、ヨーク112の背面に近い方の面に開口部205の形状に倣った形状(ここでは矩形状)を有する膨出部322aが開口部205の数に合わせて設けられており、膨出部322aが開口部205に嵌まり、ヨーク112の背面の外部への露出を防止する。
【0044】
[1-2.製造方法]
本リアクトルの製造方法を
図6~
図8を用いて説明する。本リアクトルは、金型を用いて作製する。但し、
図6~
図8に金型は図示していない。
【0045】
本リアクトルの製造方法は、(1)コア部材モールド工程、(2)リアクトル本体の組立工程、及び(3)リアクトル本体モールド工程を有する。
図6は、コアモールド工程を説明するための図である。
図7は、組立工程を説明するための図である。
図8は、リアクトル本体モールド工程を説明するための図である。
【0046】
(1)コア部材モールド工程
コア部材モールド工程は、コア部材11を樹脂モールドする工程である。コア部材11はここではU字型コア11a、11bとする。
図6に示すように、U字型コア11a、11bに対して樹脂モールドを行い、U字型コア11a、11bの周囲を樹脂体21、22で覆ったコアユニット1a、1bを形成する。コアユニット1a、1bの基本構成は同じであるので、コアユニット1aの製造方法を説明し、コアユニット1bについては説明を省略する。
【0047】
コアユニット1aの作製には、上型及び下型に二分割された金型を用いる。まず、下型内にU字型コア11aを載置する。このとき、
図6の白塗り矢印で示すように、下型内から上方に膨出した略台形状の突起がヨーク112の底面を支持する。この載置の際には、U字型コア11aの脇に固定部202に埋められるカラー(不図示)を載置しても良い。次に、上型をセットするとともに、
図6の白塗り矢印で示すように、治具によって、両側からU字型コア11aを挟み込む。すなわち、一方の側であるU字型コア11aの背面(ヨーク112の背面)を端面113の方向に押すとともに、他方の側である端面113をU字型コア11aの背面の方向に押す。この状態で、上型に設けられた樹脂注入用の貫通孔であるゲートから金型内に樹脂を充填し、固化させることでU字型コア11aと樹脂体21とが一体化されたコアユニット1aを作製する。
【0048】
このとき、金型内に充填する樹脂の注入方向や速度の調整や、U字型コア11aの自重を利用することで金型内でのU字型コア11aの位置変動を抑制することができる。例えば、ゲートは、
図6の黒塗り矢印で示すように、ヨーク112の上面の2カ所に位置しており、金型内に樹脂を、ヨーク112の上面側から下方に充填することで、樹脂による上からの射出圧と、下型内底面から膨出した突起との挟み込みで上下方向に押さえることができ、また、治具及び金型内壁による脚111の延び方向の押さえ込みにより、上下方向と直交した脚111の延び方向からもU字型コア11aを押さえることができる。
【0049】
充填した樹脂を固化させた後、作製されたコアユニット1a、1bを金型内から取り出す。樹脂体21、22に形成された開口部204、205及びボビン20a、20bの端面113を露出させる開口は、治具や金型内の突起によってU字型コア11aが押さえられたことにより樹脂が被覆されずに形成されたものである。また、金型内には、ヨーク112の上面及び背面に接触しないものの両面に向かって膨出した突起が設けられており、この突起により凹部203が形成される。また、2つのゲートから注入された樹脂は、その中間位置付近で出会うことで凹部203の中央部分にウェルドラインWが形成される。ウェルドラインWは、その設けられる箇所が必ずしも凹部203の中央部分でなくても良く、2つのゲート間すなわち注入痕間206であれば良い。また、ウェルドラインWは、直線状でなくても良く、例えば波線であっても良い。
【0050】
以上のように、樹脂体21、22は樹脂モールド成形法により形成されているため、樹脂体21、22の各部の構成は、同じ樹脂により継ぎ目なく一続きに構成されている。
【0051】
(2)リアクトル本体の組立工程
リアクトル本体の組立工程は、コアユニット1a、1bとコイル5a、5bとを組み立ててリアクトル本体10を構成する工程である。すなわち、
図7に示すように、上方に端部(不図示)を引き出したコイル5a、5bの空芯部に両側からコアユニット1a、1bのボビン20a、20bを嵌め込み、コアユニット1a、1bの端面113同士を突き合わせてリアクトル本体10を構成する。このとき、端面113同士を接着剤での接着はしていない。
【0052】
(3)リアクトル本体モールド工程
リアクトル本体モールド工程は、リアクトル本体10に第2の樹脂部材3を形成し、リアクトルを構成する工程である。第2の樹脂部材3の形成には、上型及び下型を使用する。ここでは、リアクトル本体10は
図8に示すように上下逆さまになるように下型に配置する。すなわち、下型に掘り下げられて設けられた4つの穴に、コイル5a、5bの端部をそれぞれ差し込む。当該穴はコイル5a、5bと同程度の大きさであり、コイル5a、5bの端部が当該穴に圧入される。そのため、リアクトル本体10は、金型内で固定される。
【0053】
コイル5a、5bの端部を当該穴に奥まで差し込むことで、コイル5a、5bの上面と、凹部203を除くヨーク被覆部20cの表面とが下型の底面と当接する。さらに、上型の内壁面で、コイル5a、5bの底面と開口部204から露出したヨーク112の底面とヨーク被覆部20cの表面とを押さえるように、上型をセットする。すなわち、
図8の白塗り矢印で示すように、リアクトル本体10は金型内で上下左右に固定される。この状態で、金型内に樹脂を充填し、固化させる。これにより、コイル5a、5bの周囲を覆うコイル被覆部31が形成されるとともに、凹部203を埋め立てるようにコイル被覆部31と繋がるヨーク被覆部32が形成され、リアクトルを構成する。
【0054】
このように、第2の樹脂部材3は樹脂モールド成形法により形成されているため、コイル被覆部31及びヨーク被覆部32、並びに、各部31,32の構成は、同じ樹脂により継ぎ目なく一続きに構成されている。
【0055】
なお、樹脂を金型内に注入するゲートの位置は、ウェルドラインが第2の樹脂部材3に形成されても、第1の樹脂部材2のウェルドラインWとは重複しない位置とする。例えば、ゲートを2カ所設ける場合には、各ヨーク112の背面側や底面側とし、ゲートを1カ所設ける場合にはコイル5a、5b間などとすることができる。また、第2の樹脂部材3にボビン20a、20bなど第1の樹脂部材2の表面に第2の樹脂部材3の肉厚よりも小さな突起を、ジグザグに配置するなど複数設けるようにしても良い。これにより、第2の樹脂部材3を形成する際、金型内に注入した樹脂の流れを乱し、ウェルドラインの形成を防ぐことができる。
【0056】
[1-3.作用・効果]
(1)本実施形態のリアクトルは、端面113を有する複数のコア部材11を有し、端面113同士を突き合わせてなる環状のコア1と、コア部材11の周囲を覆う樹脂体21、22を複数有し、樹脂体21、22を組み合わせてコア1の周囲を覆う第1の樹脂部材2と、第1の樹脂部材2を介してコア1の一部に装着されるコイル5a、5bと、コイル5a、5bの周囲を覆うとともに、端面113と交差する方向に延び、コイル5a、5bが装着されていないコア1のヨーク部を、第1の樹脂部材2を介して覆う第2の樹脂部材3と、を備えるようにした。
【0057】
これにより、コア部材11の接着作業を不要として生産性を向上させつつ、コイル5a、5bを固定することのできるリアクトルを得ることができる。すなわち、第2の樹脂部材3は、端面113と交差する方向に延びており、かつコア1のヨーク部まで覆っているため、リアクトル本体モールド工程後に生じる第2の樹脂部材3の熱収縮は、ヨーク部の背面側から端面113側に向かって生じる。そのため、第2の樹脂部材3がコアユニット1aをコアユニット1b側へ、かつ、コアユニット1bをコアユニット1a側に引きつけ、接着剤を用いずとも端面113同士が突き合わされる。従って、端面113に接着剤を塗布したり、その乾燥時間を設ける必要がないので生産性を向上させることができる。その上、コイル5a、5bが第2の樹脂部材3(ここではコイル被覆部31)によって覆われるので、コイル5a、5bを固定することができる。従来、コイルの固定は、リアクトルをケースに収容し、ケース内に充填材を充填及び固化させることで行っていたが、本実施形態によれば、ケースも充填材も不要にすることができ、生産性の向上及び小型化を図ることができる。
【0058】
なお、第2の樹脂部材3は、ヨーク112の上面(ヨーク被覆部20cの上面)の一部を覆っていれば端面113を挟む熱収縮効果が得られるので、ヨーク112の背面まで覆う必要はない。また、樹脂モールド成形法により、ボビン20a、20bの内面とU字型コア11a、11bの表面が固着するとともに、コイル被覆部31a、31bの内筒312が、第1の樹脂部材2(具体的にはボビン20a、20b)と固着しており、この構成によっても、内筒312の熱収縮により接着剤を用いずに端面113同士を突き合わせることができる。
【0059】
(2)第2の樹脂部材3は、コア部材11の端面113を挟むように端面113とは反対側のコア1のヨーク部(ヨーク112)の背面まで覆うようにした。これにより、リアクトル本体モールド工程後に生じる熱収縮によって、一対のヨーク112の背面が近づくように押されるので、端面113の突き合わせをより強固にすることができる。
【0060】
(3)第1の樹脂部材2には、ヨーク部を覆う部分に凹部203が設けられ、第2の樹脂部材3は、端面113と交差する方向に延びた一部である板状体321が凹部203に設けられ、ヨーク部における第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3の表面が同一平面上に位置して平坦にするようにした。これにより、第2の樹脂部材3が、第1の樹脂部材2の全体を覆うことがないので、小型化を図ることができる。また、本実施形態では、板状体321が凹部203に設けられ、ヨーク部における第1の樹脂部材2と第2の樹脂部材3の表面が同一平面上に位置して平坦にするようにした。これによっても、リアクトルの小型化を図ることができる。
【0061】
(4)第1の樹脂部材2には、端面113とは反対側のヨーク部の背面を露出する開口部205が設けられ、第2の樹脂部材3は、端面113と平行に設けられた一部である板状体322が開口部205を覆うようにした。これにより、コア1のヨーク112の背面が露出しないので、コア1の錆を防止することができ、当該錆がリアクトルの振動等により拡散することで生じ得る周辺機器の不具合を防止することができる。
【0062】
(5)第2の樹脂部材3は、コイル5a、5bの底面が露出する開口部311bを設けるようにした。これにより、リアクトルの冷却効率を向上させることができる。例えば、リアクトルを放熱シートなどの放熱部材に配置することで、リアクトルの駆動により発生した熱をコイル5a、5bを介して外部の放出することができる。また、第1の樹脂部材2のヨーク112の底面部分には開口部204が設けられているので、ヨーク112の底面を直接放熱部材に押し当てることができ、リアクトルの冷却効率を向上させることができる。さらに、本実施形態では、第2の樹脂部材3は、コイル5a、5bの上面が露出する開口部311aを設けるようにした。これにより、大気中などに発生した熱を放出でき、リアクトルの冷却効率を向上させることができる。
【0063】
(6)第1の樹脂部材2には、ヨーク部を覆う部分に第1の樹脂部材2を構成する樹脂の2つの注入痕206が設けられ、第2の樹脂部材3は、注入痕206間を覆うようにした。具体的には、ヨーク被覆部32により覆うようにした。これにより、第1の樹脂部材2に形成されたウェルドラインWを第2の樹脂部材3で覆うことができる。
【0064】
すなわち、注入痕206間では、各ゲートから注入された樹脂が合流し、ヨーク被覆部20c表面にウェルドラインWが形成される。このウェルドラインWは相対的に強度が弱い部分であり、当該部分にクラックが発生しやすい。特に、リアクトルは例えば-40℃~170℃の範囲で低温環境下、高温環境下が繰り返される過酷な環境下で使用されることがある。このような場合、第1の樹脂部材2が熱膨張、熱収縮を繰り返すことで第1の樹脂部材2に応力が加わり、相対的に強度が弱いウェルドラインWの部分にクラックが発生する場合がある。また、リアクトルが受ける衝撃が度重なるとウェルドラインWの部分にクラックが発生する場合がある。クラックが発生すると、コア1とコイル5との間の絶縁距離が保てなくなり、絶縁破壊が生じてしまう。
【0065】
これに対し、本実施形態では、ヨーク被覆部32により、ウェルドラインWが発生し得るヨーク被覆部20cの注入痕206間を覆うようにしたので、ウェルドラインWの部分にクラックが発生したとしても、絶縁距離を保つことができ、信頼性を向上させることができる。なお、クラックの発生は、樹脂厚が厚い程生じにくい。そのため、技術常識からすれば、ヨーク被覆部20cのウェルドラインWが発生し得る箇所は肉厚にする。これに反して、本実施形態ではウェルドラインWが形成されうるヨーク被覆部20cに敢えて周囲より1段凹んだ凹部203を設けて肉薄にしている。その理由は、ヨーク被覆部32が凹部203を埋めることで、ウェルドラインWを覆って絶縁確保ができるとともに、小型化を図ることができ、双方の利点を享受できるからである。
【0066】
このように、本発明の目的は、独立して2つある。すなわち、第1の目的は、上記の通り、コア部材の接着作業を不要として生産性を向上させつつ、コイルを固定することのできるリアクトルを提供することである。第2の目的は、ウェルドラインが形成されても絶縁距離を確保し、信頼性を向上させるリアクトルを提供することである。従って、第2の目的のみ達成することも本発明の範囲内である。
【0067】
[2.第2の実施形態]
[2-1.構成]
第2の実施形態に係るリアクトルを
図9~
図11を用いて説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と基本構成は同じである。よって、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
図9は、第2の実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
図10は、第2の実施形態に係るリアクトルの分解斜視図である。但し、コアユニット1a、1bは組み立てた状態である。
図11は、
図9のC-C断面図である。
【0069】
図10に示すように、本実施形態の凹部203は、ヨーク被覆部20cの背面に設けられた凹んだ部分であり、端面113とコア部材11を介して対向する。この凹部203は、ヨーク被覆部20cの上面の縁まで及んでいる。ヨーク部の背面部分にヨーク112の背面を露出させる開口部205は、凹部203の底面に設けられている。なお、固定部202の1つは、第1の樹脂部材2を構成したときの隅よりもボビン20b側に設けられている。各ボビン20a、20bの各面には、スペーサ207が設けられ、スペーサ207の両側に肉抜き部208が設けられている。
【0070】
図9、
図10に示すように、コイル5a、5bは、その両端部51~54がヨーク112の上方から外部に引き出されている。ここでは、端部51~54は、コイル5a、5bの導線の巻回部からy軸方向に突出した部位である。
【0071】
第2の樹脂部材3は、端部被覆部33を有し、端部被覆部33は、ヨーク112の上方の端部51~54を被覆する。但し、端子被覆部33は、端部51~54の先端は被覆せず、絶縁被膜がはぎ取られた線材が露出している。
【0072】
端部被覆部33は、コイル被覆部31と板状体322と接続されており、第1の樹脂部材2(ここではヨーク被覆部20c)を介してヨーク112を覆う。具体的には、端部被覆部33の下面でヨーク被覆部20cを介してヨーク112の上面を、端面113側からヨーク112の背面側の縁まで覆い、この覆っている部分がヨーク被覆部20cの表面と固着している。端部被覆部33は、必ずしも注入痕206間を被覆していなくても良い。
【0073】
板状体322は、端部被覆部33のヨーク112の背面側の先端部と接続されており、凹部203に嵌まっている。すなわち、第2の樹脂部材3(ここでは板状体322)が、端面113とコア部材11を介して対向するヨーク部の背面部分を覆っている。また、板状体322に設けられた膨出部322aが開口部205に嵌まることでヨーク112の背面の外部への露出を防止する。
【0074】
また、第2の樹脂部材3には、後述のセンサユニット9を被覆するセンサユニット被覆部34が設けられている。センサユニット被覆部34は、ここでは、コイル被覆部31a、31b間に、コイル5a、5bの巻回部の中程からヨーク112の上面を覆う程度までy軸方向に延び、両部31a、31bを繋ぐように設けられている。また、センサユニット被覆部34は、樹脂体22側においてコイル被覆部31a、31b間を繋ぐ連結部313と交差している。換言すれば、連結部313は、センサユニット被覆部34を介してコイル被覆部31a、31b間を繋ぐ。
【0075】
本実施形態のリアクトルには、センサユニット9が設けられ、第1の樹脂部材2には、センサユニット9を取り付ける取付け部209が設けられている。
【0076】
センサユニット9は、リアクトル内部の温度を検出する温度センサ91と、温度センサ91の周囲を樹脂で被覆してなり、取付け部209と接続するコネクタ92と、を有する。
【0077】
温度センサ91は、コネクタ92が取付け部209に取り付けられることで、コイル5a、5b間に配置される。温度センサ91は、リアクトル内部の温度を検出する温度検出部91aと、温度検出部91aと接続され、温度検出部91aが検出した温度情報をリアクトル外部に伝達するリード線91bとからなる。温度検出部91aとしては、例えば、温度変化に対して電気抵抗が変化するサーミスタを用いることができるが、これに限定されない。リード線91bは、例えば、温度検出部9aが検出した温度情報を、コイル5a、5bに流す電流をオンオフする制御回路に出力する。
【0078】
コネクタ92は、例えば一端が塞がれた筒形状であり、その中程には、取付け部209と接続するための外側に張り出した張り出し部92aが設けられている。取付け部209は、樹脂体22のヨーク被覆部20cのコイル5a、5b間に立設され、ここでは、二枚の板状体209aが張り出し部92aの厚み程度離間して平行に設けられている。板状体209aには、切り欠き209bが設けられており、この切り欠き209bにコネクタ92を嵌めるとともに、張り出し部92aを板状体209aの隙間に差し込むことで、温度センサ91がリアクトル本体10に固定される。
【0079】
本実施形態のリアクトルの製造方法は、基本的には第1の実施形態と同様である。すなわち、第1の樹脂部材2、第2の樹脂部材3は、樹脂モールド成形法により作製することができる。そのため、取付け部209は、樹脂体22各部の構成と同じ樹脂により継ぎ目なく一続きに構成されている。また、コイル被覆部31、連結部313、端子被覆部33、センサユニット被覆部34及び板状体322は、同じ樹脂により継ぎ目なく一続きに構成されている。
【0080】
本実施形態の製造方法が第1の実施形態と異なる点は、第一に、コア部材モールド工程において、樹脂体22に取付け部209が設けられる点、第二に、リアクトル本体10の組立工程において、別途作製した温度センサ91を取付け部209に取り付ける工程が加えられる点、第三に、リアクトル本体モールド工程において、端子被覆部33が設けられる点である。
【0081】
[2-2.作用・効果]
本実施形態の第2の樹脂部材3は、端面113とコア部材11を介して対向するヨーク部の背面部分を覆うようにした。このように、端面113と対向するようにヨーク被覆部32(板状体322)が配置されているため、より効率的に端面113同士を押しつける方向に熱収縮力を作用させることができ、端面113の突き合わせをより強固にすることができる。
【0082】
また、この熱収縮力の効率的な作用により、ヨーク被覆部32のヨーク部上部を覆う樹脂量を削減することができ、その結果、熱収縮の際に、ヨーク被覆部20cの上面に固着したヨーク部上部の樹脂がヨーク被覆部20c上面を端面113の方へ引っ張ることで生じる端面113上部への応力集中を防止し、リアクトルの信頼性を向上させることができる。
【0083】
換言すれば、ヨーク被覆部32のヨーク部上部を覆う樹脂を、第1の実施形態と比べてx軸方向に細くすることができる。具体的に、本実施形態のリアクトルは、コイル5a、5bの端部51~54をヨーク部の上方から外部に引き出し、第2の樹脂部材2は、ヨーク部の上方の端部51~54を被覆する端部被覆部33を有し、端部被覆部33が、第1の樹脂部材2を介してヨーク部を覆うようにした。
【0084】
このように、端子被覆部33により第1の樹脂部材2を介してヨーク部を覆うので、端子被覆部33が、端子51~54を被覆する機能の他、ヨーク被覆部32の機能を兼ね備える。そのため、端面113上部への応力集中を防止することができるとともに、ヨーク被覆部32を設けるための樹脂量を削減することができ、製造コストを低減することができる。
【0085】
(変形例)
本実施形態では、端子被覆部33の下面をヨーク被覆部32の機能を兼ね備えるようにしたが、これに限定されず、端子被覆部33はヨーク被覆部32と独立に設けても良い。例えば、端子51~54がヨーク部の上方を介して外部に引き出されるのではなく、コイル5a、5bの巻回部の端部から真上に引き出されていても良い。この場合、端子被覆部33は、ヨーク部の上方に位置しないので、ヨーク被覆部32とは独立する。
【0086】
[3.他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態の少なくともいずれか2つを組み合わせた形態も包含する。
【0087】
(1)上記実施形態では、コア部材11をU字型コア11a、11bとしたが、これに限定されず、環状のコア1を構成できれば、I字型コア、E字型コア、T字型コア、C字型コア、J字型コアとしても良く、また、いずれのコア部材11の組み合わせを用いても良い。
【0088】
(2)上記実施形態では、注入痕206は外部に露出するようにしたが、第2の樹脂部材3で覆っても良い。
【0089】
(3)上記実施形態では、ヨーク被覆部20cの表面にウェルドラインWが設けられるようにしたが、ウェルドラインWは必ずしも設けられていなくても良い。例えば、樹脂体21、22を構成する際に使用する金型に設けられたゲートの数を1つとし、注入痕206を1つとすることで、ゲートから注入した樹脂が合流することをなくすことができる。
【0090】
(4)上記実施形態では、注入痕206をヨーク被覆部20cに設けたが、ボビン20a、20bの表面に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 コア
10 リアクトル本体
11 コア部材
11a、11b U字型コア
111 脚
112 ヨーク
113 端面
2 第1の樹脂部材
21,22 樹脂体
201 コア被覆部
20a、20b ボビン
20c ヨーク被覆部
202 固定部
202a ネジ穴
203 凹部
204 開口部
205 開口部
206 注入痕
207 スペーサ
208 肉抜き部
209 取付け部
W ウェルドライン
5 コイル
5a、5b コイル
3 第2の樹脂部材
31 コイル被覆部
31a、31b コイル被覆部
311 外筒
311a 開口部
311b 開口部
312 内筒
313 連結部
32 ヨーク被覆部
321、322 板状体
322a 膨出部
33 端部被覆部
34 センサユニット被覆部
9 センサユニット
91 温度センサ
91a 温度検出部
91b リード線
92 コネクタ
92a 張り出し部