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特開2023-73442組換えタンパク質の発現を改善するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073442
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】組換えタンパク質の発現を改善するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20230518BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230518BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20230518BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20230518BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
C12P21/02 C ZNA
C12N1/21
C12N15/70 Z
C12N15/55
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023055602
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2020534811の分割
【原出願日】2018-09-04
(31)【優先権主張番号】62/554,443
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508314607
【氏名又は名称】スカラブ ゲノミクス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック アール. ブラットナー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート イー. ノビー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エー. フリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ランドリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンシク チョイ
(72)【発明者】
【氏名】エリック エー. ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ブランドン
(57)【要約】
【課題】E.coli宿主株におけるペリプラズムを標的とする組換えタンパク質の改善された産生のための方法を提供すること。
【解決手段】改善された組換えタンパク質の産生能力を有するE.coli宿主株もまた提供される。いくつかの実施形態では、内因性E.coliホスホリパーゼを組換えタンパク質と同時発現させることを含む、E.coliにおいてペリプラズムを標的とする組換えタンパク質の放出を達成するための方法が提供される。いくつかの関連する実施形態では、組換えタンパク質およびホスホリパーゼの誘導後にE.coli宿主株は抽出緩衝液と接触される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月5日に出願された米国仮特許出願第62/554443号の利益を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
単鎖抗体、単鎖フラグメント、および多糖類およびハプテンのためのキャリアとして好適なものなどの産生することが困難なタンパク質の発現および回収を増強するための方法および組成物が提供される。
【背景技術】
【0003】
FDAが承認した組換え治療用タンパク質の30パーセントはE.coliの中で作られており、これらには、キャリアタンパク質、単鎖抗体、および単鎖抗体フラグメントなどの重要なワクチン成分が含まれている。しかし、E.coliから組換えタンパク質を生産する標準的な方法は、何十年もの間変わっていない。従来の流加バッチ発酵槽は、標的を含む細菌をますます大きなバッチで培養するために使用され、次いで、これは、タンパク質精製のしばしば複雑で骨の折れる作業の前に大量の均質化に供せられる。このプロセスは費用がかかり、時間がかかり、そして困難かつ広範な精製手順を必要とすることがしばしばであり、収率の損失を生じる。
【0004】
ジフテリア毒素の変異体非毒性型である、交差反応性物質197(CRM197)は、さまざまな成功した複合ワクチンにおいて使用されている承認されたキャリアタンパク質である。しかし、その製造に伴う問題により、CRM197の需要は供給を超えている。元々の宿主であるCorynebacterium diphtheriaeは低レベルのCRM197(0.1~0.2g/L)を生成し、バイオセーフティレベル2の施設を必要とする。野生型毒素へのCRM197の潜在的な復帰は、Pseudomonas fluorescensやほとんどのE.coli株などの代替宿主において問題のままであり、残留CRM197毒性はこれらの宿主に著しい生理学的ストレスを引き起こし、生産を制限する。さらに、ほとんどのE.coli宿主では、CRM197は不溶性の形で蓄積し(封入体に凝集する)、収率をさらに減少させ、下流の精製工程を複雑にする。発酵のために好まれる多くのE.coli株は、1)発現ベクターに影響を与える可能性があるか、または2)宿主を破壊する可能性があり、両方の場合において、バッチモードにおいては迅速かつ全体的な生産の損失をもたらし、および拡張連続発酵プロセスにおいてE.coli宿主の使用を不可能にする。
【0005】
Haemophilus influenzae の非アシル化プロテインD(PD)であるCRM197、およびPseudomonas aeruginosaのキャリアタンパク質エキソプロテインA(EPA)、ならびに単鎖抗体、単鎖抗体フラグメントscFab YMF10、単鎖抗体可変フラグメントscFv 75127などの生産することが困難なキャリアタンパク質の重要性に起因して、E.coli宿主細胞からこのようなタンパク質を産生および精製するための改善されかつ費用対効果の高い方法についての必要性が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態では、内因性E.coliホスホリパーゼを組換えタンパク質と同時発現させることを含む、E.coliにおいてペリプラズムを標的とする組換えタンパク質の放出を達成するための方法が提供される。いくつかの関連する実施形態では、組換えタンパク質およびホスホリパーゼの誘導後にE.coli宿主株は抽出緩衝液と接触される。
【0007】
いくつかの実施形態では、目的の組換えタンパク質のペリプラズムへの移入を方向付けるシグナル配列に融合された、目的の組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を保有する組換え(例えば、縮小ゲノム)E.coli株の発酵を含む対象とする組換えタンパク質を産生する方法が提供され、前記ヌクレオチド配列は発現制御配列に作動可能に連結され、E.coli株は目的の組換えタンパク質と1つ以上のE.coliホスホリパーゼを同時発現する。例示的なペリプラズム標的化シグナルには、米国特許出願公開第2017/0073379号の段落[0055]~[0059]に記載されているものが含まれ、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる。CRM197をペリプラズムに方向付けることができる代表的なシグナル配列は、US2017/0073379の段落[0057]の最後に列挙され、好ましくは、OmpA、MalE、HdeA、OppA、HdeB、GlnH、MglB、agp、OmpC、RbsB、FkpA、またはYtfQシグナル配列から選択され、より好ましくは、OmpA、OmpF、またはYtfQシグナル配列から選択される。いくつかの好ましい態様において、YtfQシグナル配列は、PD、EPAまたはCRM197をペリプラズムに方向付ける。いくつかの好ましい態様において、OmpAシグナル配列は、単鎖抗体フラグメントscFab YMF10、単鎖抗体可変フラグメントscFv 75127をペリプラズムに方向付ける。
【0008】
本明細書に記載の方法に従って、任意のE.coliホスホリパーゼを、E.coli宿主内で目的のタンパク質とともに同時発現させることができる。一実施形態において、E.coli株は、グリセロホスホリルジエステルホスホジエステラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸セグメントを含む(glpQ;b2239;GenBank Ref.No.NP_416742.1;配列番号1)。別の実施形態では、E.coli株は、Aesをコードするヌクレオチド配列を含む核酸セグメントを含む(ybaC;b0476;GenBank Ref.No.NP_415009.1;配列番号2)。別の実施形態では、E.coli株は、リゾホスホリパーゼL2をコードするヌクレオチド配列を含む核酸セグメントを含む(pldB;b3825;GenBank Ref.No.YP_026266.1;配列番号3)。好ましい実施形態では、E.coli株は、OmpLAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸セグメントを含む(pldA;b3821;GenBank Ref.NO.NP_418265.1;配列番号4)。
【0009】
「同時発現」とは、目的のタンパク質およびホスホリパーゼの発現が少なくとも重複するように、目的の組換えタンパク質およびホスホリパーゼの発現が調整されることを意味する。いくつかの好ましい態様において、目的の組換えタンパク質の発現およびホスホリパーゼの発現は、1つ以上の誘導性プロモーターの制御下(例えば、同じまたは別個の発現ベクター上)にある。いくつかの局面において、目的の組換えタンパク質およびホスホリパーゼの発現は、同じ誘導性プロモーターの制御下(例えば、同じまたは別個の発現ベクター上)にある。目的のタンパク質の発現およびホスホリパーゼの発現をほぼ同時に誘導するか、目的のタンパク質をホスホリパーゼの前に誘導するか、またはホスホリパーゼを目的のタンパク質の前に誘導することができる。いくつかの好ましい実施形態では、目的のタンパク質は、ホスホリパーゼの誘導の前(例えば、1時間前~6時間前)に誘導される。好ましくは、E.coliホスホリパーゼは、ホスホリパーゼの内因性レベルと比較して過剰発現され、組換えにより産生される(例えば、発現制御配列に作動可能に連結されたホスホリパーゼをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターをE.coliに導入することにより、または内因性ホスホリパーゼをコードする遺伝子のプロモーターを操作することによる)。あるいは、内因性ホスホリパーゼ遺伝子が操作されて、ホスホリパーゼを過剰発現させてもよい。本明細書に記載される方法に従って、任意のE.coliホスホリパーゼは、目的の組換えタンパク質とともに同時発現させることができる。いくつかの好ましい実施形態では、E.coliホスホリパーゼはOmpLAである。
【0010】
好ましい実施形態において、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列およびホスホリパーゼをコードするヌクレオチド配列は、同じ構築物(例えば発現ベクター)に存在し、同じ誘導性プロモーターの制御下にあるか、異なる誘導性プロモーターの制御下にある。他の実施形態において、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸セグメントおよびE.coliホスホリパーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸セグメントは、別々の構築物上にあり、同じ誘導性プロモーターの制御下にあってもよく、そうでなくてもよい。
【0011】
いくつかの態様では、(i)(a)発現制御配列に作動可能に連結された、ペリプラズムに目的のタンパク質を標的化する配列に融合された目的の組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列、および(b)発現制御配列に作動可能に連結されたE.coliホスホリパーゼをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を保有する組換え(例えば、縮小ゲノム)E.coli株を発酵すること、(ii)目的の組換えタンパク質およびホスホリパーゼの発現を誘導すること、および(iii)組換えE.coli株を抽出緩衝液と接触させることにより、目的のタンパク質をペリプラズムから培地に抽出することを含む、目的の組換えタンパク質を産生するための方法が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、目的のタンパク質の少なくとも95%または少なくとも98%が、これらの方法に従ってペリプラズムから放出される。
【0013】
好ましい実施形態では、抽出緩衝液は、約7~9のpH値の緩衝剤(例えばTris)およびキレート剤(例えばEDTA)を含む。いくつかの実施形態において、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N、N、N´、N´-四酢酸(BAPTA)、エチレンジアミン-N、N´-二コハク酸(EDDS)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)からなる群より選択される。好ましい実施形態では、キレート剤はEDTAである。特に好ましい実施形態では、抽出緩衝液は、約7~約9のpH、好ましくは、約pH7.75の、50mM~200mM Tris、好ましくは約150mM Trisおよび2mM~10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)好ましくは約5mMのEDTAを含む。一部の実施形態では、目的のタンパク質のペリプラズムから培地への抽出は、組換えE.coliを抽出緩衝液と少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間以上またはその間の任意の範囲(例えば、10~20時間の間または12~16時間の間)、接触させることにより達成される。好ましくは、組換えE.coliを抽出緩衝液と少なくとも2時間かつ24時間以内、より好ましくは少なくとも6時間かつ24時間以内接触させる。好ましくは、接触工程は20~30℃、より好ましくは約25℃で行われる。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法はバッチ発酵を含む。他の実施形態では、この方法は流加バッチ発酵を含む。好ましい実施形態では、この方法は連続発酵を含む。特に好ましい実施形態では、この方法は、縮小ゲノム株E.coliの連続発酵を含む。約5%~約30%のゲノム欠失を含む縮小ゲノムE.coliは、少なくとも7日間以上、少なくとも14日間以上、少なくとも21日間以上、少なくとも30日間以上、少なくとも45日間以上、少なくとも60日間以上、少なくとも180日間以上、少なくとも240日間以上、さらには少なくとも360日間以上、またはその間の任意の範囲、連続して発酵することができる。対照的に、一般に発酵に使用されるE.coli株は、連続製造における使用を不可能にするストレス誘導システムに供せられる。いくつかの実施形態では、連続発酵方法は、誘導相から種培養の成長を分離する2容器ケモスタット戦略を含む。簡単に説明すると、新しく成長した細胞が、誘導されていないシード容器(バイオリアクター1)から生産容器(バイオリアクター2)に供給され、そこで誘導剤が加えられ、生成物合成が開始される。定常状態のケモスタットは、誘導のために健康な細胞の生産容器への供給を提供する非誘導種子容器を備え、生産容器への導入まで、種子細胞の成長がストレスフリーであることを保証する。例示的な連続発酵装置には、図17に例解される装置および米国特許公開第2018/087018号に記載される装置が含まれ、その内容は参照により本明細書に組み込まれるが、任意の好適な連続発酵方法および装置が使用されて本明細書に記載される方法を実施してもよい。
【0015】
ペリプラズム標的化シグナルに融合し、ホスホリパーゼを同時発現する目的のタンパク質をコードする核酸セグメントを含む縮小ゲノムE.coli株は、7日間以上、14日間以上、30日間以上、45日間以上、60日間以上、180日間以上、240日間以上、または360日間以上さえ、連続的に発酵させることができる。好ましい実施形態において、CRM197、PDおよびEPAから選択されるキャリアタンパク質をコードし、ホスホリパーゼを同時発現する核酸セグメントを含む縮小ゲノムE.coli株は、少なくとも5~65日間(またはその間の任意の範囲)、連続的に発酵され、それにより、連続発酵の間に培地中に少なくとも1~9グラム/リットル/日のキャリアタンパク質の収率が得られる。E.coli宿主細胞は連続発酵プロセスの間に無傷のままであり、培地は細胞溶解から生じる細胞タンパク質および核酸を混入することが実質的にないため、キャリアタンパク質は培地から直接精製することができる。
【0016】
他の実施形態では、単鎖抗体断片scFab YMF10、単鎖抗体可変断片scFv
75127、共役キャリアタンパク質CRM197、PD、およびEPAなどの組換えタンパク質を産生することが困難な発言の増強のために特に重要であり、発酵からのこれらのタンパク質の回収を容易にする、改善された特性を有する遺伝子改変されたE.coli株が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つ以上の毒素抗毒素(TA)遺伝子の欠失を含むE.coli K-12またはB株が提供される。いくつかの態様において、E.coli K-12またはB株は、1つ以上のTA遺伝子の染色体欠失を含む。他の実施形態では、E.coli K-12またはB株は、プラスミドからの1つ以上のTA遺伝子の欠失を含む。好ましい実施形態では、E.coli K-12またはB株は染色体またはプラスミドTA遺伝子を含まない。いくつかの実施形態では、野生型E.coli K-12またはB株は、1つ以上のTA遺伝子を欠失するように改変される。他の実施形態では、縮小ゲノムE.coli K-12またはB株(例えば、その天然の親E.coli K-12株のゲノムよりも約5%~約30%小さくなるように遺伝子改変されたE.coli K-12株またはB株)は、1つ以上のTA遺伝子を欠失するように改変される。
【0018】
E.coli K-12またはB株から欠失されたTA遺伝子は、1型(例えば、ldrA、rdlA、ldrB、rdlB、ldrC、rdlC、ldrD、rdlD、hokB、sokB、sibA、ibsA、sibB、ibsB、ohsC、shoB、sibC、ibsC、sibD、ibsD、dinQ、agrA、agrB、yhjJ、yhjM、yhjN、istR-2、tisB)、2型(YafQ、dinJ、hha、tomB、gnsA、ymcE、yoeB、yefF、yefM、mazF、mazE、mazG、cptA/ygfX、cptB/sdhE、mqsR、mqsA、higB、higA、yhaV、prlF、ldrD、rdlD、istr-2、tisB、chpB、chpS、ratA、ratB、ecnA、ecnB)、4型(cbtA、cbeA)、および/または5型(egghoT、ghoS)TA遺伝子であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、以下のTA遺伝子の1つ以上、好ましくはすべてがE.coli株から欠失される:YafQ、dinJ、hha、tomB、gnsA、ymcE、yoeB、yefM、mazF、mazE、mazG、cptA/ygfX、cptB/sdhE、mqsR、mqsA、higB、higA、yhaV、prlF、ldrD、rdlD、istR-2、tisB、chpB、chpS、ratA、ratB、ldrA、rdlA、ldrB、rdlB、ldrC、rdlC、hokB、sokB、sibA、ibsA、sibB、ibsB、ohsC、shoB、sibC、ibsC、sibD、sibE、ibsD、ibsE、dinQ、agrA、agrB、ghoT、ghoS、yfeC、yfeD、fic、yhfG、yhjJ、yhjM、yhjN、yjjJ、ecnA、および/またはecnB。いくつかの実施形態では、hipAおよび/またはhipBが欠失される。
【0020】
別の実施形態において、以下の表1に列挙される1つ以上のTA遺伝子は、E.coli株から欠失される。好ましい実施形態では、表1に列挙されるすべてのII型TA遺伝子が欠失される。特に好ましい実施形態では、表1に列挙されるすべてのTA遺伝子が欠失される。
【表1-1】


【表1-2】
【0021】
他の実施形態では、rnc(b2567)遺伝子(リボヌクレアーゼIIIをコードする)の発現を低減または排除するように遺伝的に改変されたE.coli K-12またはB株が提供される。好ましくは、rnc遺伝子産物の発現は、rnc遺伝子の部分的または完全な欠失により低減または排除される。いくつかの実施形態において、野生型E.coli K-12またはB株は、rnc遺伝子の発現を低減または排除するように改変される。好ましい実施形態では、縮小ゲノムE.coli K-12株(例えば、その天然の親E.coli K-12株のゲノムよりも約2%または約5%~約22%または約30%小さくなるように遺伝子改変されたE.coli株)は、rnc遺伝子の発現を低減または排除するように改変される。
【0022】
いくつかの実施形態では、rnc遺伝子の部分的または完全な欠失を含み、表1に列挙されたTA遺伝子の1つ以上、好ましくはすべての欠失を含むE.coli K-12またはB株が提供される。好ましい実施形態では、rnc遺伝子の部分的または完全な欠失を含み、表1に列挙されたTA遺伝子の1つ以上、好ましくはすべての欠失を含む縮小ゲノムE.coli K-12株が提供される。
【0023】
他の実施形態では、rnc遺伝子の部分的または完全な欠失を含み、および/または表1に列挙されたTA遺伝子の1つ以上、および好ましくはすべての欠失を含み、さらに以下の改変、(a)オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性の増強、(b)活性アセトヒドロキシ酸シンターゼIIの産生、ならびに(c)iclR遺伝子およびarpA遺伝子の発現の低下を含むE.coli K-12株が提供される。
【0024】
関連する実施形態では、rnc遺伝子の部分的または完全な欠失を含み、および/または表1に列挙されたTA遺伝子の1つ以上の対、および好ましくはすべてのTA遺伝子の対の欠失を含み、および/または以下の改変、(a)オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性の増強、(b)活性アセトヒドロキシ酸シンターゼIIの産生、ならびに(c)iclR遺伝子およびarpA遺伝子の発現の低下を含み、ならびに、その内容が参照により本明細書に組み込まれるWIPO公開第2013/059595号に記載されているように、非機能的dinBを含む(b0231、MG1655ゲノム上の座標250898-251953)遺伝子を含み、および選択的に非機能的polB(b0060、E.coli K12 MG1655ゲノム上の座標63429-65780)および/またはumuDC遺伝子(b1183-b1184、MG1655ゲノム上の座標1229990-1231667)を含む、E.coli K-12株が提供される。好ましくは、(これらの)遺伝子は、完全または部分的な欠失により不活性化される。
【0025】
いくつかの態様において、その天然の親株のゲノムよりも約2%または約5%~約22%または約30%小さくなるように遺伝子操作されるゲノムを有する縮小ゲノムE.coli K-12またはB株が提供され、縮小ゲノムE.coliは、本明細書に記載の1つ以上の欠失または修飾を含み、挿入配列を含まない。
【0026】
縮小ゲノム細菌は、細菌の天然の親株から選択された遺伝子を欠失させることにより産生され得るか、または例えば、事前に選択された遺伝子のアセンブリとして完全に合成され得る。本明細書における議論から容易に明らかなように、縮小ゲノム細菌は、比較される天然の親株において見出され、特定の必須遺伝子を共有する遺伝子の完全な相補物よりも少ない。
【0027】
本発明の改変されたE.coli K-12またはB株を利用して目的のポリペプチドを産生する方法もまた提供され、ここで目的の可溶性ポリペプチドはペリプラズムを標的とし、および/または発酵培地に分泌される。一実施形態において、ポリペプチドは、発現制御配列に作動可能に連結されたポリペプチドをコードする核酸を含む改変E.coli K-12またはB株を、ポリペプチドを発現するために好適な条件下で培養することにより産生される。一態様では、核酸は異種タンパク質をコードする。関連する局面において、タンパク質は、本明細書に記載の改変を含まないE.coli K-12またはB株におけるよりも高いレベルで、本発明の改変E.coli株において産生される。さらに別の態様では、タンパク質産生は、同じ増殖条件下でそのような改変細胞が達成することができる多い細胞数により、本明細書に記載の改変を含まないE.coli K-12またはB株よりも高いレベルで増加する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような、発現制御配列に作動可能に連結され、選択的にE.coliホスホリパーゼを同時発現する、ペリプラズムシグナルペプチドに融合された目的タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を保有する、改変E.coli K-12またはB株は、連続発酵に供せられ、それにより、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも7、さらには少なくとも10グラム/リットル/日の収率が、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも30日間、少なくとも60日間、少なくとも90日間、少なくとも120日間、または少なくとも365日間さえの期間の間、ペリプラズムから(例えば、ホスホリパーゼは同時発現されない場合)および/または培地から(ホスホリパーゼが同時発現される場合)直接得られる。
【0028】
本発明の改変されたE.coli K-12またはB株を利用して異種核酸(例えば、プラスミドなどのベクター)を増幅するための方法もまた提供される。一実施形態において、核酸は、好適な栄養条件下で異種核酸を含む改変E.coli K-12またはB株を培養し、それによって核酸を増幅することにより産生される。さらに別の態様では、核酸産生は、同じ増殖条件下でそのような改変細胞が達成することができるより多くの細胞数により、本明細書に記載の改変を含まないE.coli K-12またはB株よりも高いレベルで増加する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
E.coli宿主細胞のペリプラズムから組換えポリペプチドを抽出する方法であって、前記宿主細胞は、発現制御配列に作動可能に連結された前記組換えポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列、および発現制御配列に作動可能に連結されたE.coliホスホリパーゼをコードする第2のヌクレオチド配列を含み、前記方法は、
(a)前記E.coli宿主細胞における前記組換えポリペプチドおよび前記ホスホリパーゼの同時発現を可能にする条件下で、培地中で前記E.coli宿主細胞を培養することと、
(b)必要に応じて、発現された組換えポリペプチドおよび発現されたホスホリパーゼを含む前記E.coli宿主細胞を、キレート剤を含む抽出緩衝液と接触させることと、
(b)必要に応じて、前記培地から前記組換えポリペプチドを収集することと、含む、方法。
(項目2)
(a)前記E.coli宿主における前記組換えポリペプチドおよび前記ホスホリパーゼの同時発現を可能にする条件下で、培地中で前記E.coli宿主細胞を培養することと、
(b)前記発現された組換えポリペプチドおよび前記発現されたホスホリパーゼを含む前記E.coli宿主細胞を、キレート剤を含む抽出緩衝液と接触させることと、を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記組換えポリペプチドが、CRM197、プロテインDおよびエキソプロテインAから選択されるキャリアタンパク質である、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記ホスホリパーゼが、GlpQ、YbaC、OmpLA、PldB、およびTesAから選択される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記ホスホリパーゼが、配列番号1~5として示されるアミノ酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であるか、または同一である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記ホスホリパーゼがpldAであり、配列番号4として示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であるか、または同一である、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記E.coli宿主細胞が、前記第1のヌクレオチド配列および/または前記第2のヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。(項目8)
前記発現制御配列の一方または両方が誘導性プロモーターを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記発現制御配列の両方が誘導性プロモーターを含み、前記誘導性プロモーターが異なる、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記発現制御配列の両方が誘導性プロモーターを含み、前記誘導性プロモーターが同じである、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記第1のヌクレオチド配列が、前記組換えポリペプチドの前記ペリプラズムへの移動を方向付けるシグナル配列に融合した組換えポリペプチドをコードする、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記組換えポリペプチドを前記ペリプラズムに方向付ける前記配列が、OmpA、MalE、HdeA、OppA、HdeB、GlnH、MglB、agp、OmpC、RbsB、FkpAまたはYtfQシグナル配列から、より好ましくは、OmpA、OmpF、またはYtfQシグナル配列から選択される、項目11に記載の方法。
(項目12)
前記工程(b)の抽出緩衝液が、1~10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、好ましくは3mM~7mMのEDTA、より好ましくは約5mMのEDTAを含む、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記抽出緩衝液が、50~200mM Tris、好ましくは100mM~200mM
Tris、より好ましくは約150mM Trisを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記抽出緩衝液が、6.5~9、好ましくは7~8、より好ましくは約7.75~8のpHを有する、項目12または13に記載の方法。
(項目15)
工程(b)が、前記E.coli宿主細胞を抽出緩衝液中で少なくとも1時間かつ24時間未満、好ましくは少なくとも6時間かつ24時間未満、20℃~30℃、好ましくは約25℃の温度でインキュベートすることを含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
工程(b)が振盪することを含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記E.coli宿主細胞が野生型株、好ましくは野生型K-12またはB株である、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記E.coli宿主細胞が、その天然の親株のゲノムよりも約2%~約30%小さくなるように遺伝子操作されるゲノムを有する縮小ゲノム株である、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記E.coli宿主細胞の前記天然の親株がK-12またはB株である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記E.coli宿主細胞が、E.coli K-12株MG1655の少なくとも以下の遺伝子、b0245~b0301、b0303~b0310、b1336~b1411、b4426~b4427、b2441~b2450、b2622~b2654、b2657~b2660、b4462、b1994~b2008、b4435、b3322~b3338、b2349~b2363、b1539~b1579、b4269~b4320、b2968~b2972、b2975~b2977、b2979~b2987、b4466~4468、b1137~b1172、b0537~b0565、b0016~b0022、b4412~b4413、b0577~b0582、b4415、b2389~b2390、b2392~b2395、b0358~b0368、b0370~b0380、b2856~b2863、b3042~b3048、b0656、b1325~b1333、b2030~b2062、b2190~b2192、b3215~b3219、b3504~b3505、b1070~b1083、b1878~b1894、b1917~b1950、b4324~b4342、b4345~b4358、b4486、b0497~b0502、b0700~b0706、b1456~b1462、b3481~b3484、b3592~b3596、b0981~b0988、b1021~b1029、b2080~b2096、b4438、b3440~b3445、b4451、b3556~b3558、b4455、b1786、b0150~b0153およびb2945を欠いているか、または異なるK-12もしくはB株の対応する遺伝子を欠いている、減少ゲノム株である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記E.coli宿主細胞が、E.coli K-12株MG1655の少なくとも以下の遺伝子、b0245~b0301、b0303~b0310、b1336~b1411、b4426~b4427、b2441~b2450、b2622~b2654、b2657~b2660、b4462、b1994~b2008、b4435、b3322~b3338、b2349~b2363、b1539~b1579、b4269~b4320、b2968~b2972、b2975~b2977、b2979~b2987、b4466~4468、b1137~b1172、b0537~b0565、b0016~b0022、b4412~b4413、b0577~b0582、b4415、b2389~b2390、b2392~b2395、b0358~b0368、b0370~b0380、b2856~b2863、b3042~b3048、b0656、b1325~b1333、b2030~b2062、b2190~b2192、b3215~b3219、b3504~b3505、b1070~b1083、b1878~b1894、b1917~b1950、b4324~b4342、b4345~b4358、b4486、b0497~b0502、b0700~b0706、b1456~b1462、b3481~b3484、b3592~b3596、b0981~b0988、b1021~b1029、b2080~b2096、b4438、b3440~b3445、b4451、b3556~b3558、b4455、b1786、b0150~b0153、b2945、b2481~b2492、b2219~b2230、b4500、b3707~b3723、b0644~b0650、b4079~4090、b4487、b4092~b4106、b0730~b0732、b3572~b3587、b1653、b2735~b2740、b2405~b2407、b3896~b3900、b1202、b4263~b4268、b0611、b2364~b2366、b0839、b0488~b0500、およびb0502、または異なるK-12もしくはB株の対応する遺伝子を欠いている減少ゲノム株である、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記E.coli宿主細胞が機能的recA遺伝子を欠いている、項目19~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記E.coli宿主細胞が機能的dinB遺伝子を欠いている、項目19~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記E.coli宿主細胞の前記天然の親がK-12株であり、前記E.coli宿主細胞が、以下の改変、(i)オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を増強するためのrph遺伝子の欠失、(ii)活性アセトヒドロキシ酸シンターゼII産生を回復するためのilvG遺伝子のネイティブ-2フレームシフト変異の修正、および(iii)iclR遺伝子およびarpA遺伝子のすべてまたは一部の欠失、を含む、項目19~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記E.coli宿主細胞が、以下の毒素抗毒素遺伝子、yafQ、dinJ、hha、tomB、gnsA、ymcE、yoeB、yefM、mazF、mazE、mazG、cptA/ygfX、cptB/sdhE、mqsR、mqsA、higB、higA、yhaV、prlF、ldrD、rdlD、istR-2、tisB、chpB、chpS、ratA、ratB、ldrA、rdlA、ldrB、rdlB、ldrC、rdlC、hokB、sokB、sibA、ibsA、sibB、ibsB、ohsC、shoB、sibC、ibsC、sibD、sibE、ibsD、ibsE、dinQ、agrA、agrB、ghoT、ghoS、yfeC、yfeD、fic、yhfG、yhjJ、yhjM、yhjN、yjjJ、ecnA、およびecnBを欠いており、かつ必要に応じて、hipAおよびhipBを欠いている、項目1~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記E.coli宿主細胞が機能的rnc遺伝子を欠いており、好ましくは、前記E.coli宿主がrnc遺伝子の完全または部分的欠失を含む、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記組換えポリペプチドの少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が前記E.coli宿主細胞の前記ペリプラズムから抽出される、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記E.coli宿主細胞が連続発酵モードで、好ましくは少なくとも14日間、少なくとも30日間、またはそれ以上の期間培養され、好ましくは、それによって、1日あたり1リットルあたり少なくとも1グラム、少なくとも2グラム、少なくとも3グラムまたはそれ以上の前記組換えタンパク質が産生される、項目1~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
4.41Mb~2.78Mbのゲノムを有し、以下の毒素抗毒素遺伝子、yafQ、dinJ、hha、tomB、gnsA、ymcE、yoeB、yefM、mazF、mazE、mazG、cptA/ygfX、cptB/sdhE、mqsR、mqsA、higB、higA、yhaV、prlF、ldrD、rdlD、istR-2、tisB、chpB、chpS、ratA、ratB、ldrA、rdlA、ldrB、rdlB、ldrC、rdlC、hokB、sokB、sibA、ibsA、sibB、ibsB、ohsC、shoB、sibC、ibsC、sibD、sibE、ibsD、ibsE、dinQ、agrA、agrB、ghoT、ghoS、yfeC、yfeD、fic、yhfG、yhjJ、yhjM、yhjN、yjjJ、ecnA、およびecnBを欠いており、かつ/または機能的rnc遺伝子を欠いている、天然には存在しないE.coli細菌。
(項目30)
前記rnc遺伝子の完全または部分的欠失を含む、項目29に記載の細菌。
(項目31)
前記細菌が、IS1、IS2、IS3、IS5、IS150およびIS186挿入配列のすべてをさらに欠く、項目29または30に記載の細菌。
(項目32)
前記細菌がdinB遺伝子の欠失をさらに含む、項目29~31のいずれか一項に記載の細菌。
(項目33)
前記細菌がrecA遺伝子の欠失をさらに含む、項目29~32のいずれか一項に記載の細菌。
(項目34)
前記細菌の親株がK-12またはB株である、項目29~33のいずれか一項に記載の細菌。
(項目35)
前記細菌の前記親株がK-12株である、項目34に記載の細菌。
(項目36)
細前記菌が、以下の改変、(i)オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を増強するためのrph遺伝子の欠失、(ii)活性アセトヒドロキシ酸シンターゼII産生を回復するためのilvG遺伝子のネイティブ-2フレームシフト変異の修正、および(iii)iclR遺伝子およびarpA遺伝子のすべてまたは一部の欠失、のうちの1つ以上、及び好ましくはすべてを含む、項目35に記載の細菌。
(項目37)
前記細菌の前記親株がK-12またはB株である、項目29~36のいずれか一項に記載の細菌。
(項目38)
前記細菌の前記親株がK12株MG1655である、項目37に記載の細菌。
(項目39)
前記細菌が前記E.coli K-12株MG1655の少なくとも以下の遺伝子、b0245~b0301、b0303~b0310、b1336~b1411、b4426~b4427、b2441~b2450、b2622~b2654、b2657~b2660、b4462、b1994~b2008、b4435、b3322~b3338、b2349~b2363、b1539~b1579、b4269~b4320、b2968~b2972、b2975~b2977、b2979~b2987、b4466~4468、b1137~b1172、b0537~b0565、b0016~b0022、b4412~b4413、b0577~b0582、b4415、b2389~b2390、b2392~b2395、b0358~b0368、b0370~b0380、b2856~b2863、b3042~b3048、b0656、b1325~b1333、b2030~b2062、b2190~b2192、b3215~b3219、b3504~b3505、b1070~b1083、b1878~b1894、b1917~b1950、b4324~b4342、b4345~b4358、b4486、b0497~b0502、b0700~b0706、b1456~b1462、b3481~b3484、b3592~b3596、b0981~b0988、b1021~b1029、b2080~b2096、b4438、b3440~b3445、b4451、b3556~b3558、b4455、b1786、b0150~b0153およびb2945を欠いているか、または異なるK-12もしくはB株の対応する遺伝子を欠いている、項目29~38のいずれか一項に記載の細菌。
(項目40)
前記細菌が前記E.coli K-12株MG1655の少なくとも以下の遺伝子、b0245~b0301、b0303~b0310、b1336~b1411、b4426~b4427、b2441~b2450、b2622~b2654、b2657~b2660、b4462、b1994~b2008、b4435、b3322~b3338、b2349~b2363、b1539~b1579、b4269~b4320、b2968~b2972、b2975~b2977、b2979~b2987、b4466~4468、b1137~b1172、b0537~b0565、b0016~b0022、b4412~b4413、b0577~b0582、b4415、b2389~b2390、b2392~b2395、b0358~b0368、b0370~b0380、b2856~b2863、b3042~b3048、b0656、b1325~b1333、b2030~b2062、b2190~b2192、b3215~b3219、b3504~b3505、b1070~b1083、b1878~b1894、b1917~b1950、b4324~b4342、b4345~b4358、b4486、b0497~b0502、b0700~b0706、b1456~b1462、b3481~b3484、b3592~b3596、b0981~b0988、b1021~b1029、b2080~b2096、b4438、b3440~b3445、b4451、b3556~b3558、b4455、b1786、b0150~b0153、b2945、b2481~b2492、b2219~b2230、b4500、b3707~b3723、b0644~b0650、b4079~4090、b4487、b4092~b4106、b0730~b0732、b3572~b3587、b1653、b2735~b2740、b2405~b2407、b3896~b3900、b1202、b4263~b4268、b0611、b2364~b2366、b0839、b0488~b0500、およびb0502を欠いているか、または異なるK-12もしくはB株の対応する遺伝子を欠いている、項目29~39のいずれか一項に記載の細菌。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】振盪フラスコ培養におけるキャリアタンパク質の抽出。CRM197、プロテインDおよびEPAのペリプラズム収率(左パネル)を、抽出緩衝液(150mM Tris pH7.75、5mM EDTA)を使用して得られた収率(右パネル)と比較した。簡単に言えば、それぞれの場合において、分泌シグナル(例えば、YtfQ)に融合されたキャリアタンパク質をコードする発現プラスミドを保有する縮小ゲノムE.coli株を振盪フラスコ培養に供し、一旦宿主細胞が飽和に達するとキャリアタンパク質が誘導された。Tris/EDTA抽出緩衝液とともに6時間インキュベートした後の各キャリアタンパク質のペリプラズム収率の割合を示す。各々の場合における3回の実験からのタンパク質収率を示す。
図2】SG69 meta lpp株は、EPAを培地に放出することができ、これは精製を容易にする。EPAの発現と放出を示す連続発酵。ペリプラズムEPA(暗)は、誘導後3週間まで蓄積しないことに注目のこと。培地中のEPA量は明で示される。Aに最適な線(薄い明と中程度)は4次である。挿入図は、EPAに対するポリクローナル抗体を使用してキャピラリーウェスタンによって分析された1日6バッチ(20~25日目、D20-D25と表示)の培地中のEPAである。各例の重複レーンは、1:10および1:100希釈に対応する。
図3】連続発酵中にプロテインDが培地に放出される。ペリプラズムを標的としたPDを発現したSG69meta株(別名MDS69meta)を使用して、3つの別々の連続発酵(図3A、3B、3C)を実施した。誘導(100μMIPTG)は、図3Aおよび図3Bの1日目および図3Cの0日目であった。Caliper Labchipキャピラリータンパク質電気泳動を使用して、ペリプラズムPD(暗)および放出PD(明)値を1日2回測定した。ペリプラズムPD値(g/L/日)は、OD600の測定値に基づいている(ACの平均ODは、それぞれ224、220、214であった)。放出されたPD(光)は、培地から直接測定された。図3Bの挿入図は、示された日以内に放出されたPDの増加を示す(キャリパー分析、パネル上部)。キャピラリーウェスタン分析(Wes Instrument、Protein Simpl,San Jose,CA)(図3Bの下部パネル)は、培地サンプル中のPDの存在を確認した。機器の直線範囲内にある測定値を得るために、ウェスタンサンプルは希釈されていることに注目のこと。図3Bおよび3C(非常に明)の最良適合線は、4 次多項式である。
図4】質量分析を用いたPD配列の検証。推定PDに対応する発酵培地からの非常に濃縮されたバンドを4-12%SDS-PAGEスラブゲルから切除し、トリプシン消化またはキモトリプシン消化の後に質量分析を行った。カバレッジは> 99%であった。
図5A】pldAの発現後の振盪フラスコ培養からのキャリアタンパク質の抽出。YtfQ分泌シグナル(IPTG誘導性プロモーターの制御下)およびpldA(ドキシサイクリン(DOX)誘導性プロモーターの制御下)に融合したキャリアタンパク質をコードするプラスミドを保有する宿主株SG69metaの培養物がキャリアタンパク質発現についてIPTGを用いて誘導され、4時間後にpldA発現が誘導され(示された濃度のDOX)、培養物は16時間インキュベートされた。2 ODの培養液をペリプラズム分離(Epicentre Technologies, an Illumina Company, Madison, WI)に供し、一方1.5 mlを150 mM Tris pH 7.75、5 mM EDTAにし、25℃で24時間振盪抽出した。抽出値は、抽出および遠心分離後の中間上清からのものである。
図5B】pldAの発現後の振盪フラスコ培養からのキャリアタンパク質の抽出。YtfQ分泌シグナル(IPTG誘導性プロモーターの制御下)およびpldA(ドキシサイクリン(DOX)誘導性プロモーターの制御下)に融合したキャリアタンパク質をコードするプラスミドを保有する宿主株SG69metaの培養物がキャリアタンパク質発現についてIPTGを用いて誘導され、4時間後にpldA発現が誘導され(示された濃度のDOX)、培養物は16時間インキュベートされた。2 ODの培養液をペリプラズム分離(Epicentre Technologies, an Illumina Company, Madison, WI)に供し、一方1.5 mlを150 mM Tris pH 7.75、5 mM EDTAにし、25℃で24時間振盪抽出した。抽出値は、抽出および遠心分離後の中間上清からのものである。
図5C】pldAの発現後の振盪フラスコ培養からのキャリアタンパク質の抽出。YtfQ分泌シグナル(IPTG誘導性プロモーターの制御下)およびpldA(ドキシサイクリン(DOX)誘導性プロモーターの制御下)に融合したキャリアタンパク質をコードするプラスミドを保有する宿主株SG69metaの培養物がキャリアタンパク質発現についてIPTGを用いて誘導され、4時間後にpldA発現が誘導され(示された濃度のDOX)、培養物は16時間インキュベートされた。2 ODの培養液をペリプラズム分離(Epicentre Technologies, an Illumina Company, Madison, WI)に供し、一方1.5 mlを150 mM Tris pH 7.75、5 mM EDTAにし、25℃で24時間振盪抽出した。抽出値は、抽出および遠心分離後の中間上清からのものである。
図6A】本発明の実施形態を示す。図6A:CRM197 ORFのC末端とpldA ORFの間の介在接合部の配列を示す。パートA:CRM197 ORFの終止コドンのすぐ後に、リボソーム結合部位(RBS)およびpldA ORFが続く。強度の異なる2つの代表的なリボソーム結合部位が示される。文献および他のバイシストロン性構造体に伴う以前の経験に基づいて、RBSの修飾を使用して、下流のpldA ORFの翻訳頻度を増加または減少させることができる。パートB:MDS69meta(別名T69meta)のゲノムを改変して、内因性ゲノムpldAのDOX誘導を可能にした。tetリプレッサーおよびT5DE20-デュアルtetOプロモーター/オペレーターは、ネイティブpldA遺伝子およびそのネイティブプロモーターの上流に挿入された。この株のpldA遺伝子は、その内在性プロモーターおよび導入されたプロモーターから誘導することができる。図6B:ゲノムからのPldAの発現は、Tris / EDTAによるCRM197抽出を強化したが、ペリプラズムにあるものの100%抽出を生じることはできなかった。本発明者らはまた、(i)OmpLA発現が誘導因子ドキシサイクリンによって用量依存性様式で制御され、CRM197発現が誘導因子IPTGによって制御された、pSX2-ytfQ-CRM197と互換性のあるプラスミド上のtet-オペレーター/ tet-リプレッサー制御プロモーターの制御下に、pldA ORFを配置することにより、および(ii)CRM197をtet-Operator / tet-repressor制御プロモーターの下に配置し、pldA発現をITPG誘導性プロモーターの下に配置することにより、良好な結果を達成した。
図6B】本発明の実施形態を示す。図6A:CRM197 ORFのC末端とpldA ORFの間の介在接合部の配列を示す。パートA:CRM197 ORFの終止コドンのすぐ後に、リボソーム結合部位(RBS)およびpldA ORFが続く。強度の異なる2つの代表的なリボソーム結合部位が示される。文献および他のバイシストロン性構造体に伴う以前の経験に基づいて、RBSの修飾を使用して、下流のpldA ORFの翻訳頻度を増加または減少させることができる。パートB:MDS69meta(別名T69meta)のゲノムを改変して、内因性ゲノムpldAのDOX誘導を可能にした。tetリプレッサーおよびT5DE20-デュアルtetOプロモーター/オペレーターは、ネイティブpldA遺伝子およびそのネイティブプロモーターの上流に挿入された。この株のpldA遺伝子は、その内在性プロモーターおよび導入されたプロモーターから誘導することができる。図6B:ゲノムからのPldAの発現は、Tris / EDTAによるCRM197抽出を強化したが、ペリプラズムにあるものの100%抽出を生じることはできなかった。本発明者らはまた、(i)OmpLA発現が誘導因子ドキシサイクリンによって用量依存性様式で制御され、CRM197発現が誘導因子IPTGによって制御された、pSX2-ytfQ-CRM197と互換性のあるプラスミド上のtet-オペレーター/ tet-リプレッサー制御プロモーターの制御下に、pldA ORFを配置することにより、および(ii)CRM197をtet-Operator / tet-repressor制御プロモーターの下に配置し、pldA発現をITPG誘導性プロモーターの下に配置することにより、良好な結果を達成した。
図7】YtfQ分泌シグナル(IPTG誘導性プロモーターの制御下にある)に融合したCRM197をコードし、ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下でOmpLAをコードしている、単一プラスミド発現ベクターを保有する縮小ゲノムE. coli株T69 Meta recA(別名MDS69meta recA)の培地への組換えCRM917の放出に対するホスホリパーゼ(PldAが例示される)の同時発現の効果を例解する。振盪フラスコ培養において宿主細胞が一旦飽和に達すると、CRM197およびOmpLAが発現し、Tris / EDTAとの2時間または一晩のインキュベーション後に培地およびペリプラズム中の可溶性CRM197の収率が評価された。T69(別名MDS69)は、MDS42のすべての欠失および27の追加の欠失を含む複数欠失株である。T69 Meta recA(別名MDS69meta recA)は、MDS69の欠失を含み、ネイティブrphおよびilvGフレームシフト変異の修正、iclR遺伝子およびarpA遺伝子の欠失、ならびにrecA遺伝子の欠失も含む。
図8】YtfQ分泌シグナル(IPTG誘導性プロモーターの制御下にある)に融合したrEPAをコードし、ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下でOmpLAをコードする単一のプラスミド発現ベクターを保有する縮小ゲノムE.coli株T69 Meta recA(別名MDS69meta recA)の培地への組換えエキソプロテインA(rEPA)の放出に対するホスホリパーゼ(OmpLAが例示される)の同時発現の効果を例解する。振盪フラスコ培養で一旦宿主細胞が飽和に達すると、rEPAおよびOmpLAが誘導され、Tris / EDTAとの2時間または一晩のインキュベーション後に培地およびペリプラズム中の可溶性rEPAの収率が評価された。
図9】YtfQ分泌シグナル(IPTG誘導性プロモーターの制御下にある)と融合したPDをコードし、ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるOmpLAをコードする単一のプラスミド発現ベクターを保有する縮小ゲノムE.coli株T69 Meta recA(別名MDS69meta recA)の培地への組換えプロテインD(PD)の放出に対するホスホリパーゼ(OmpLAが例示される)の同時発現の効果を例解する。振盪フラスコ培養で一旦宿主細胞が飽和に達すると、PDおよびOmpLAが誘導され、Tris/EDTAとの2時間、6時間または一晩のインキュベーション後に培地およびペリプラズムの可溶性PDの収率が評価された。
図10A】YtfQ分泌シグナル(IPTG誘導性プロモーターの制御下にある)に融合したCRM197(図10A)、プロテインD(図10B)またはrEPA(図10C)のいずれかをコードし、そして単一のテトラサイクリンオペレーター(tetO)ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるOmpLAをコードする、単一のプラスミド発現ベクターを保有するT69 Meta recA(別名MDS69meta recA)株における基底内因性(10Aレーン4~6のSG7766 2nd 0-100nm DOX左パネル)および基底内因性+非誘導(SG9040レーン4)OmpLAレベル(DOXの非存在下での培地へのキャリアタンパク質の放出により測定)を、IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合したCRM197(図10A)、プロテインD(図10B)、またはrEPA(図10C)のみをコードする単一のプラスミド発現ベクター(すなわち、このベクターにはOmpLAをコードする配列はない)を保有するT69 meta recA(別名MDS69meta recA)株と比較して例解する。ホスホリパーゼの同時発現は、培地中のキャリアタンパク質の放出を有意に増加させ、最高の誘導因子濃度のrEPAおよびCRM197では約5倍、最高の誘導因子濃でのPDでは約3倍であった。
図10B】YtfQ分泌シグナル(IPTG誘導性プロモーターの制御下にある)に融合したCRM197(図10A)、プロテインD(図10B)またはrEPA(図10C)のいずれかをコードし、そして単一のテトラサイクリンオペレーター(tetO)ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるOmpLAをコードする、単一のプラスミド発現ベクターを保有するT69 Meta recA(別名MDS69meta recA)株における基底内因性(10Aレーン4~6のSG7766 2nd 0-100nm DOX左パネル)および基底内因性+非誘導(SG9040レーン4)OmpLAレベル(DOXの非存在下での培地へのキャリアタンパク質の放出により測定)を、IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合したCRM197(図10A)、プロテインD(図10B)、またはrEPA(図10C)のみをコードする単一のプラスミド発現ベクター(すなわち、このベクターにはOmpLAをコードする配列はない)を保有するT69 meta recA(別名MDS69meta recA)株と比較して例解する。ホスホリパーゼの同時発現は、培地中のキャリアタンパク質の放出を有意に増加させ、最高の誘導因子濃度のrEPAおよびCRM197では約5倍、最高の誘導因子濃でのPDでは約3倍であった。
図10C】YtfQ分泌シグナル(IPTG誘導性プロモーターの制御下にある)に融合したCRM197(図10A)、プロテインD(図10B)またはrEPA(図10C)のいずれかをコードし、そして単一のテトラサイクリンオペレーター(tetO)ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるOmpLAをコードする、単一のプラスミド発現ベクターを保有するT69 Meta recA(別名MDS69meta recA)株における基底内因性(10Aレーン4~6のSG7766 2nd 0-100nm DOX左パネル)および基底内因性+非誘導(SG9040レーン4)OmpLAレベル(DOXの非存在下での培地へのキャリアタンパク質の放出により測定)を、IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合したCRM197(図10A)、プロテインD(図10B)、またはrEPA(図10C)のみをコードする単一のプラスミド発現ベクター(すなわち、このベクターにはOmpLAをコードする配列はない)を保有するT69 meta recA(別名MDS69meta recA)株と比較して例解する。ホスホリパーゼの同時発現は、培地中のキャリアタンパク質の放出を有意に増加させ、最高の誘導因子濃度のrEPAおよびCRM197では約5倍、最高の誘導因子濃でのPDでは約3倍であった。
図11】デュアルtetオペレーターを含むドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下でのIPTG誘導性プロモーターおよびpldAの制御下でのCRM197をコードする配列を含む単一の発現プラスミドを保有するT69 Meta recA (別名MDS69meta recA)宿主細胞におけるRM197 および OmpLAの発現の誘導後、ペリプラズムにおけるCRM197の収率と25℃でのTris / EDTA抽出を例解する。DOXの非存在下、25℃のTris / EDTA抽出において、CRM197はほとんど現れないが、これはpldAが誘導される場合に著しく増加する。CRM197のペリプラズム収率は、pldA遺伝子発現によって影響を受けない。
図12A図12Aは、(i)ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合されたCRM197をコードする発現プラスミドを保有するか、またはCRM197とpldA orfsの間に2つのリボソーム結合部位(図6参照)のいずれかを備えたCRM197-ytfQとpldA(コドン最適化)をコードする二シストロン性発現プラスミドを保有する、T69 Meta Tox / Atox LowMut recA株(別名MDS69meta T / A LowMut recA)のペリプラズムにおけるCRM197収率(リゾチームを用いたEpicentreペリプラズム調製法)を示す。図12Bは、図12Aと同じ培養であるが、リゾチームを有するEpicenter Peri prepの代わりに、誘導培養1 mlを25℃で一晩の振盪に供した(Tris / EDTA処理なし)。OmpLAの存在下では、25℃で振盪すると、約5倍以上の標的タンパク質がペリプラズムから培地に入る(OmpLAおよびTris / EDTA処理を用いて培地に抽出された標的タンパク質の総量のまだ50%に過ぎない)。図12Cは、pldA発現の誘導ならびにTris / EDTAによる抽出および25℃での振盪後の培地でのCRM197収率を例解する。一番左のパネルは、ペリプラズムから培地に抽出される標的が非常に少ないことを示す。一方、右の2つのパネルは、左のパネルに比べて培地に平均5倍多く産生されている。右側の2つのパネルには、図12Bの同じ2つのパネルよりも平均で2倍多く抽出されたCRM197がある。図12Dは、pldAの発現および4℃で2日間の誘導培養のサンプル1mlのインキュベーションを示す。4℃(Tris/EDTAなし)対25℃(Tris/EDTAなし)でのインキュベーションでは、ペリプラズムから培地への標的の「漏れ」は改善されない。
図12B図12Aは、(i)ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合されたCRM197をコードする発現プラスミドを保有するか、またはCRM197とpldA orfsの間に2つのリボソーム結合部位(図6参照)のいずれかを備えたCRM197-ytfQとpldA(コドン最適化)をコードする二シストロン性発現プラスミドを保有する、T69 Meta Tox / Atox LowMut recA株(別名MDS69meta T / A LowMut recA)のペリプラズムにおけるCRM197収率(リゾチームを用いたEpicentreペリプラズム調製法)を示す。図12Bは、図12Aと同じ培養であるが、リゾチームを有するEpicenter Peri prepの代わりに、誘導培養1 mlを25℃で一晩の振盪に供した(Tris / EDTA処理なし)。OmpLAの存在下では、25℃で振盪すると、約5倍以上の標的タンパク質がペリプラズムから培地に入る(OmpLAおよびTris / EDTA処理を用いて培地に抽出された標的タンパク質の総量のまだ50%に過ぎない)。図12Cは、pldA発現の誘導ならびにTris / EDTAによる抽出および25℃での振盪後の培地でのCRM197収率を例解する。一番左のパネルは、ペリプラズムから培地に抽出される標的が非常に少ないことを示す。一方、右の2つのパネルは、左のパネルに比べて培地に平均5倍多く産生されている。右側の2つのパネルには、図12Bの同じ2つのパネルよりも平均で2倍多く抽出されたCRM197がある。図12Dは、pldAの発現および4℃で2日間の誘導培養のサンプル1mlのインキュベーションを示す。4℃(Tris/EDTAなし)対25℃(Tris/EDTAなし)でのインキュベーションでは、ペリプラズムから培地への標的の「漏れ」は改善されない。
図12C図12Aは、(i)ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合されたCRM197をコードする発現プラスミドを保有するか、またはCRM197とpldA orfsの間に2つのリボソーム結合部位(図6参照)のいずれかを備えたCRM197-ytfQとpldA(コドン最適化)をコードする二シストロン性発現プラスミドを保有する、T69 Meta Tox / Atox LowMut recA株(別名MDS69meta T / A LowMut recA)のペリプラズムにおけるCRM197収率(リゾチームを用いたEpicentreペリプラズム調製法)を示す。図12Bは、図12Aと同じ培養であるが、リゾチームを有するEpicenter Peri prepの代わりに、誘導培養1 mlを25℃で一晩の振盪に供した(Tris / EDTA処理なし)。OmpLAの存在下では、25℃で振盪すると、約5倍以上の標的タンパク質がペリプラズムから培地に入る(OmpLAおよびTris / EDTA処理を用いて培地に抽出された標的タンパク質の総量のまだ50%に過ぎない)。図12Cは、pldA発現の誘導ならびにTris / EDTAによる抽出および25℃での振盪後の培地でのCRM197収率を例解する。一番左のパネルは、ペリプラズムから培地に抽出される標的が非常に少ないことを示す。一方、右の2つのパネルは、左のパネルに比べて培地に平均5倍多く産生されている。右側の2つのパネルには、図12Bの同じ2つのパネルよりも平均で2倍多く抽出されたCRM197がある。図12Dは、pldAの発現および4℃で2日間の誘導培養のサンプル1mlのインキュベーションを示す。4℃(Tris/EDTAなし)対25℃(Tris/EDTAなし)でのインキュベーションでは、ペリプラズムから培地への標的の「漏れ」は改善されない。
図12D図12Aは、(i)ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合されたCRM197をコードする発現プラスミドを保有するか、またはCRM197とpldA orfsの間に2つのリボソーム結合部位(図6参照)のいずれかを備えたCRM197-ytfQとpldA(コドン最適化)をコードする二シストロン性発現プラスミドを保有する、T69 Meta Tox / Atox LowMut recA株(別名MDS69meta T / A LowMut recA)のペリプラズムにおけるCRM197収率(リゾチームを用いたEpicentreペリプラズム調製法)を示す。図12Bは、図12Aと同じ培養であるが、リゾチームを有するEpicenter Peri prepの代わりに、誘導培養1 mlを25℃で一晩の振盪に供した(Tris / EDTA処理なし)。OmpLAの存在下では、25℃で振盪すると、約5倍以上の標的タンパク質がペリプラズムから培地に入る(OmpLAおよびTris / EDTA処理を用いて培地に抽出された標的タンパク質の総量のまだ50%に過ぎない)。図12Cは、pldA発現の誘導ならびにTris / EDTAによる抽出および25℃での振盪後の培地でのCRM197収率を例解する。一番左のパネルは、ペリプラズムから培地に抽出される標的が非常に少ないことを示す。一方、右の2つのパネルは、左のパネルに比べて培地に平均5倍多く産生されている。右側の2つのパネルには、図12Bの同じ2つのパネルよりも平均で2倍多く抽出されたCRM197がある。図12Dは、pldAの発現および4℃で2日間の誘導培養のサンプル1mlのインキュベーションを示す。4℃(Tris/EDTAなし)対25℃(Tris/EDTAなし)でのインキュベーションでは、ペリプラズムから培地への標的の「漏れ」は改善されない。
図13】いくつかのE.coli株からのCRM197のペリプラズム産生の比較を例解する。
図14】RNase IIIおよび毒素/抗毒素遺伝子が欠失された株におけるCRM197のペリプラズム収率を、これらの遺伝子を含む親株と比較して例解する。
図15】同じ発現プラスミドを保有する通常使用される発酵宿主におけるCRM197の産生と比較して、ペリプラズム発現シグナル配列に融合したCRM197をコードする発現ベクターを保有する縮小ゲノムE. coli株(SG69メタ別名MDS69meta)の長期連続培養の間のCRM197の産生を例解する。1リットルあたり1日あたり4~6グラムの間のCRM197を生成する発酵が示されている。データ点は、CRM197標準曲線を使用してCRM197発現値に変換されたWesキャピラリー電気泳動化学発光免疫測定シグナルである。CRM197の認識は、抗CRM197ポリクローナル抗血清およびHRP-ルシフェラーゼ化学発光によるものであった。
図16】IPTG誘導性プロモーターの制御下でCRM197をコードする配列とドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下でpldAを含む単一発現プラスミドを含むSG69meta株の拡張連続発酵(別名連続フロー発酵またはCフロー)を例解する。Caliper LabchipおよびWes(キャピラリーウェスタン)分析で決定されるように、Cフローは、平均で1g/L/日産生した。左パネルは、1)Tris/EDTAで処理し、25℃で振盪したか、または2)pldA遺伝子の発現を誘導するためにDOXで処理し、その後、Tris/EDTAで16時間抽出した、CRM197発現のIPTG誘導後10日間の生産タンクからの発酵液のキャリパー分析を示す。キャリパーの結果のグラフ表示は、右側のパネルに表示される。
図17】例示的な連続発酵装置の例を例解する。2つのケモスタットバイオリアクターにおける細菌培養は、高い細胞密度(約200OD600)で行われる。バイオリアクター2における標的遺伝子発現の誘導に続いて、生成物を含む細胞を1リットル/日の速度(または使用する発酵容器のサイズに応じた速度)で収集する。誘導されていないバイオリアクター1からの「シード」培養物がバイオリアクター2に移され、生成物の収集の間に除去された細胞が補充されることに注目のこと。誘導因子(IPTGが例示される)をバイオリアクター2のフィードに添加することにより、誘導因子濃度が維持される。
図18】ドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合したCRM197をコードする発現プラスミドを保持する、T69 Meta recA(別名MDS69meta recA)、T69 Meta recA T/AT(別名MDS69meta T/A recA)、およびT69 Meta recA T/AT LowMut(別名MDS69meta T/A LowMut recA)宿主細胞におけるCRM197のペリプラズム収率を比較する。毒素/抗毒素遺伝子の欠失は、ペリプラズムにおけるCRM197の収率を著しく増強する。
図19A】一本鎖可変フラグメントscFv 75127(Fritz Schaumburg,Lytic Solutions,Madison WIにより提供)(図19A)およびOmpLA発現後の振盪フラスコ培養からの一本鎖抗体scFab YMF10(図19B)の抽出を例解する。図19A:デュアルscFv、pldA二シストロン発現プラスミド構築物を含む縮小ゲノムE. coli株SG69meta(別名T69 Meta aka MDS69meta)におけるscFvおよびpldA発現の誘導後のscFv 75127のペリプラズムおよび抽出収率が示される。図19B:デュアルscFab、pldA二シストロン発現プラスミド構築物を含む縮小ゲノムE.coli株SG69meta(別名T69 Meta aka MDS69meta)におけるscFvおよびOmpLA発現の誘導後のscFab YMF10のペリプラズムおよび抽出収率が示される。
図19B】一本鎖可変フラグメントscFv 75127(Fritz Schaumburg,Lytic Solutions,Madison WIにより提供)(図19A)およびOmpLA発現後の振盪フラスコ培養からの一本鎖抗体scFab YMF10(図19B)の抽出を例解する。図19A:デュアルscFv、pldA二シストロン発現プラスミド構築物を含む縮小ゲノムE. coli株SG69meta(別名T69 Meta aka MDS69meta)におけるscFvおよびpldA発現の誘導後のscFv 75127のペリプラズムおよび抽出収率が示される。図19B:デュアルscFab、pldA二シストロン発現プラスミド構築物を含む縮小ゲノムE.coli株SG69meta(別名T69 Meta aka MDS69meta)におけるscFvおよびOmpLA発現の誘導後のscFab YMF10のペリプラズムおよび抽出収率が示される。
図20A】IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるOmpA分泌シグナルおよびDOX誘導性プロモーターの制御下にあるpldAに融合したscFvをコードする発現プラスミドを保有する、MDS69meta recA(別名T69 Meta recA)およびMDS69meta T/AT LowMut RecA(別名T69 Meta T/AT LowMut recA)株におけるscFv 75127のペリプラズム(図20A)および抽出収率(図20B)を例解し、scFv発現が誘導され、4時間後にpldAの発現が誘導され、そして誘導が一晩続けられ、その時点で細胞が25℃で一晩Tris/EDTA抽出緩衝液(上記)と接触された。
図20B】IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるOmpA分泌シグナルおよびDOX誘導性プロモーターの制御下にあるpldAに融合したscFvをコードする発現プラスミドを保有する、MDS69meta recA(別名T69 Meta recA)およびMDS69meta T/AT LowMut RecA(別名T69 Meta T/AT LowMut recA)株におけるscFv 75127のペリプラズム(図20A)および抽出収率(図20B)を例解し、scFv発現が誘導され、4時間後にpldAの発現が誘導され、そして誘導が一晩続けられ、その時点で細胞が25℃で一晩Tris/EDTA抽出緩衝液(上記)と接触された。
図21A】IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるOmpA分泌シグナルおよびDOX誘導性プロモーターの制御下にあるpldAに融合したscFabをコードする発現プラスミドを保有する、MDS69meta recA(別名T69 Meta recA)およびMDS69meta T/AT LowMut RecA(別名T69 Meta T/AT LowMut recA)株におけるscFab YMF10のペリプラズム(図21A)および抽出収率(図21B)を例解し、scFab発現が誘導され、4時間後にpldAの発現が誘導され、そして誘導が一晩続けられ、その時点で細胞が25℃で一晩Tris/EDTA抽出緩衝液(上記)と接触された。
図21B】IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるOmpA分泌シグナルおよびDOX誘導性プロモーターの制御下にあるpldAに融合したscFabをコードする発現プラスミドを保有する、MDS69meta recA(別名T69 Meta recA)およびMDS69meta T/AT LowMut RecA(別名T69 Meta T/AT LowMut recA)株におけるscFab YMF10のペリプラズム(図21A)および抽出収率(図21B)を例解し、scFab発現が誘導され、4時間後にpldAの発現が誘導され、そして誘導が一晩続けられ、その時点で細胞が25℃で一晩Tris/EDTA抽出緩衝液(上記)と接触された。
図22】MDS69meta T/AT LowMut recAおよびMDS69meta株におけるTris/EDTA抽出後のCRM197およびCRM197のペリプラズム収率を例解する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明者らは、E.coli宿主細胞の細胞周辺質に送達された、内因性E.coliホスホリパーゼを同時発現する、単鎖抗体フラグメントscFab YMF10、単鎖抗体可変フラグメントscFv 75127、CRM197、プロテインDおよびEPAを含むがこれらに限定されない組換え治療用タンパク質が、発酵中に培地に直接抽出でき、生産時間と労力を削減し、これらのタンパク質の精製を大幅に簡素化し、そして生産コストが劇的に削減することを発見した。
【0031】
本明細書に記載される方法および組成物の使用は、CRM197および他のキャリアタンパク質に関連するいくつかの標準的な製造上の課題を克服でき、これらの課題には(1)もともとのCorynebacterium diphtheria宿主におけるCRM197(0.1~0.2g/L)の低いレベル、(2)Pseudomonas fluorescensや多くのE.coli株などの代替宿主におけるCRM197の野生型毒素への潜在的な復帰、(3)CRM197の高生産率下での発酵宿主における生理的ストレス、(4)ほとんどのE.coli宿主における不溶性形態でのCRM197の蓄積、収率の低下、および顕著に複雑な下流の精製工程、(5)潜在的なプロファージもしくは挿入要素の活性化、または毒素/抗毒素ホメオスタシスの破壊、および細胞溶解を誘発し、連続製造におけるこれらの株の使用を損なう可能性がある他の突然変異生成するE.coli宿主細胞におけるストレス誘導システムが挙げられる。
【0032】
本明細書に記載の縮小ゲノムE.coli株および方法を使用して、本発明者らは、CRM197、PD、およびEPAなどのペリプラズムを標的とするタンパク質が継続的に産生され、高収率で(1日あたり1リットルあたり3g以上)容易な精製のために細胞から直接培地に抽出され、これは、連続発酵中に少なくとも30日間、さらには少なくとも65日間以上さえもの期間、維持することができることを発見および検証した。対照的に、従来のE.coli株は、同じ条件下で数日間よりも多く生産を維持することができない。
【0033】
CRM197は、遺伝的に非毒性型のジフテリア毒素(DT)である。CRM197における単一塩基変化(52位のグルタミン酸からグリシンへ)は、A鎖のADPリボシル化活性を無効にして、毒性を弱める。CRM197は非毒性であるが、ジフテリア毒素と免疫学的に区別できない。CRM197は、多糖類およびハプテンのキャリアとして機能し、いくつかの複合ワクチンにおいてそれらを免疫原性にする。
【0034】
PDは、グラム陰性細菌Haemophilus influenzaの表面上に露出した免疫グロブリンD結合膜リポタンパク質である。このタンパク質は、エステル結合とアミド結合の両方のパルミテートのシステイン残基への共有結合により修飾された18残基長のシグナル配列を有する前駆体として合成され、これはシグナル配列の切断後に成熟タンパク質のアミノ末端になる。システイン残基を欠く変異プロテインDはアシル化されていない。非アシル化プロテインD分子は、E.coliの細胞膜周辺腔に局在する。親水性プロテインD分子は、多糖およびハプテンのキャリアとして機能し、それらを複合ワクチン中で免疫原性にする。
【0035】
Pseudomonas aeruginosa由来のキャリアタンパク質EPAは、CRM197と同じ様式でT細胞を活性化する。CRM197は、世界で最も売れているワクチンであるPrevnar-13を含む非常に多くの複合ワクチンの中で使用されているため、一部のワクチン製造業者は、エピトープ抑制を回避するためにそれを使用することを選択した。EPAは、ニコチン依存を緩和することが示されてきたニコチンワクチンNicVAX中で使用されている(Esterlis I,Hannestad JO,Perkins E,Bois F,D´Souza DC,Tyndale RF,Seibyl JP,Hatsukami DM,Cosgrove KP,O´Malley SS.Effect of a nicotine vaccine on nicotine binding to beta2*-nicotinic acetylcholine receptors in vivo in human tobacco smokers.Am J Psychiatry.2013;170(4):399-407.doi:.1176/appi.ajp.2012.12060793.PubMed PMID:23429725;PMCID:PMC3738000.)EPAを使用する抗マラリア抱合体ワクチンは開発に成功しており、臨床試験に入っている。
【0036】
本発明者らは、E.coli宿主細胞において目的のペリプラズム標的タンパク質とE.coliホスホリパーゼを同時発現させることが、適切な緩衝液を用いて目的タンパク質のほぼすべてを培地に抽出することができるシステムを提供することを発見した。好ましい実施形態では、ホスホリパーゼは、GlpQ、YbaC、PldA、PldBおよびTesAからなる群より選択される。これらの例示的なホスホジエステラーゼについて以下で議論する。
【0037】
グリセロホスホリルジエステルホスホジエステラーゼ(GlpQ)は、グリセロホスホジエステル、sn-グリセロール-3-リン酸(G3P)またはグリセロールなどの使用可能な形態に分解された後、リン脂質およびトリグリセリドのグリセロール部分の利用に関与する。GlpQは、グリセロホスホジエステルのsn-グリセロール3-リン酸(グリセロール-P)とアルコールへの加水分解を触媒する。次に、グリセロール-Pは、グリセロール-PトランスポーターであるGlpTによって細胞に輸送される。ペリプラズムGlpQは基質のグリセロホスホ部分に特異的であるが、アルコールはいくつかの長鎖および中鎖アルコールのいずれか1つであり得る。これは、広範でさまざまなグリセロホスホジエステルをglpエンコードされた異化システムに導く能力を細胞に与える。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法における使用のためのE.coli宿主細胞、好ましくは縮小ゲノムE.coli宿主細胞は、配列番号1のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である配列を含む核酸セグメントを含む。
【0038】
Aes(ybaC遺伝子によってコードされる)は、短い(長さが8未満の)アシル鎖を持つ基質を優先して、脂肪酸のp-ニトロフェニルエステルの加水分解を触媒する。Aesはリパーゼおよびエステラーゼと構造的な類似性を有し、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)タンパク質ファミリーに属する。酵素は単量体またはホモ二量体のいずれかであってもよく、それは結晶化され、結晶構造が解決された。変性剤で誘導される酵素のアンフォールディングが研究されており、より高い熱安定性を持つ変異体が単離されてきた。触媒トライアドは、ser165、asp262、およびhis292を含むと予測され、部位特異的突然変異誘発は、これらの残基が触媒活性に必要であることを確認した。さらに、asp164は構造的に重要であると考えられている。l97およびl209の点突然変異は、それぞれkcatを増加させ、kを減少させることにより、酵素活性を増加させる。aesの過剰発現は、野生型と比較してp-ニトロフェニルアセテートの加水分解の増加を生じる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法の使用のためのE.coli宿主細胞、好ましくは縮小ゲノムE.coli宿主細胞は、配列番号2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である配列を含む核酸セグメントを含む。
【0039】
E.coli K-12遺伝子pldAは、外膜ホスホリパーゼA(OmpLA)タンパク質をコードする。精製されたOmpLAは複数の脂肪分解活性を示し、リン脂質、リゾホスフォリン脂質、ジグリセリド、およびモノグリセリドに対して活性があるが、インビボでは予想される基質は細胞外皮のリン脂質である。OmpLAの二量体化は、ホスホリパーゼ活性に必要である。酵素と基質のアシル側鎖との間の相互作用は、二量体化の主な安定化因子である。pldAは構成的に発現されるが、OmpLA活性は通常の条件下では検出されず、外膜の完全性を妨げる条件によって誘導される。OmpLAはバクテリオシン放出に関係している。コリシン産生プラスミドを含むE.coli株において、溶解およびバクテリオシン放出の前にOmpLAの活性が増加し、ホスファチジルエタノールアミン(主要な細菌外膜リン脂質)が分解された。E.coli pldA変異体を産生するコリシンにおいて、コリシンは細胞質に保持される。いくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載の方法における使用のためのE.coli宿主細胞、好ましくは縮小ゲノムE.coli宿主細胞は、配列番号4のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である配列を含む核酸セグメントを含む。
【0040】
リゾホスホリパーゼL2(PldB)は、リゾリン脂質の残りのアシル基への結合を加水分解する。最も効果的な基質は、2-アシルグリセロホスホエタノールアミンおよび2-アシルグリセロホスホコリンであり、各化合物の1アシルバージョンは、加水分解の効率がいくぶん劣る。加えて、PldBはアシル基を特定のリゾリン脂質からホスファチジルグリセロールに転移させてアシルホスファチジルグリセロールを生成することができる。PldBは明らかなシグナル配列または膜貫通ドメインを含まず、内膜の細胞質側に関連すると考えられている。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法で使用するためのE.coli宿主細胞、好ましくは縮小ゲノムE.coli宿主細胞は、配列番号3のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である配列を含む核酸セグメントを含む。
【0041】
TAP複合体(TesA)は、チオエステラーゼ、アリールエステラーゼ、リゾホスホリパーゼ、およびプロテアーゼ活性を実行する広範な特異性のエステラーゼである。細胞内でのその正確な機能は不明であり、潜在的に遊離脂肪酸の生成またはエステル結合を含む化合物の回収に関与する可能性がある。TesA(pldC;b0494;GenBank Ref.No.NP_416742.1;配列番号5)は、チオエステラーゼ、アリールエステラーゼ、リゾホスホリパーゼとして作用することができ、プロテアーゼ活性が制限されている多機能エステラーゼである。それは非常に広範囲のアシルCoA分子に対するチオエステラーゼとして作用するが、パルミチル、パルミトレイル、およびシスーバクセニルエステルに対して最も高い活性を有する、炭素数が10より多い脂肪アシルチオエステルに特異的であると報告されてきた。TesAの実際のインビボでの役割は不明である。ペリプラズムにおけるその局在は、脂肪アシルCoA分子へのアクセスをほぼ不可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法における使用のためのE.coli宿主細胞、好ましくは縮小ゲノムE.coli宿主細胞は、配列番号5のポリペプチドまたはその配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である配列を含む核酸セグメントを含む。
【0042】
本明細書に記載の方法は、目的のタンパク質の任意のE.coli宿主細胞への抽出を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によるE.coli宿主細胞は、野生型E.coli BまたはK12株である。
【0043】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物による組換えE.coli宿主株は、縮小ゲノム細菌である。本明細書で使用される「縮小ゲノム」細菌とは、そのゲノム(例えば、タンパク質をコードする遺伝子、RNAをコードする遺伝子)の約1%~約75%が欠失した細菌、例えば、ゲノムの約2%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、または約60%が欠失した細菌を意味する。一実施形態では、本発明の実施において使用される縮小ゲノム細菌は、好ましくは少なくとも2パーセント(2%)~最大30パーセント(30%)(それらの間の任意の数を含む)まで、天然の親株のゲノムよりも小さい、遺伝子操作されたゲノムを有する。好ましくは、ゲノムは、天然の親株のゲノムよりも少なくとも2パーセント(2%)~最大25パーセント(25%)まで小さい。ゲノムは約2パーセント(2%)、5パーセント(5%)、8パーセント(8%)、14パーセント(14%)、22パーセント(22%)、25パーセント(25%)、30パーセント(30%)またはそれ以上(その間の任意の数を含む)、ネイティブの親株のゲノムよりも小さい。あるいは、ゲノムは、天然の親株のゲノムよりも10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、または30%未満小さくなるように操作されてもよい。縮小ゲノム細菌は、4.55Mb(2%)~3.25Mb(30%)、4.41Mb(5%)~3.62Mb(22%)、4.41Mb~3.25Mb、または4.41Mb~2.78Mbであるゲノムを有する可能性がある。「天然の親株」という用語は、科学界によって一般に理解されるように、株系統の樹立を表すことが、自然界または天然の環境で見出され、そのゲノム上で一連の欠失を行ってより小さなゲノムを有する細菌株を生成することができる細菌株を意味する。天然の親株はまた、操作された株がそれに対して比較される株をいい、操作された株は、天然の親株の完全な相補物よりも少ない。一連の欠失後にゲノムが小さくなる割合は、「すべての欠失後に欠失された塩基対の総数」を「すべての欠失前のゲノム内の塩基対の総数」で除算し、その後、100を掛けることによって計算される。同様に、ゲノムが天然の親株よりも小さい割合は、より小さなゲノムを有する株のヌクレオチドの総数を(それが産生されたプロセスに関係なく)ネイティブな親株のヌクレオチドの総数で除算し、その後、100を掛けることによって計算される。
【0044】
一実施形態では、「縮小ゲノム」細菌とは、上記量のゲノムの除去が、最小培地で増殖する生物の能力に許容できないほど影響を及ぼさない細菌を意味する。2つ以上の遺伝子の除去が、本文脈における最小培地で成長する生物の能力に「許容できないほど影響する」かどうかは、特定の用途に依存し、容易に評価される。例えば、増殖率の30%の低下は、ある用途では許容されるが、別の用途では許容されない場合がある。さらに、ゲノムからDNA配列を欠失することの悪影響は、培養条件の変更などの手段によって軽減される可能性がある。そのような措置は、さもなければ許容できない悪影響を許容することができる悪影響に変える可能性がある。一実施形態では、増殖速度は親株とほぼ同じである。しかし、親株の増殖速度よりも約5%、10%、15%、20%、30%、40%~約50%低い増殖速度は本発明の範囲内にある。より具体的には、本発明の細菌の倍加時間は、約15分~約3時間の範囲であり得る。好適な縮小ゲノム細菌の非限定的な例、およびE.coliなどの細菌からゲノムDNAを累積的に欠失する方法は、米国特許第6,989,265号、同第7,303,906号、同第8,119,365号、同第8,039,243号、同第8,178,339号、同第8,765,408号および同第9,902,965号にそれぞれ開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
縮小されたゲノム細菌の文脈における親E.coli株は、任意のE.coli株であり得る。いくつかの好ましい実施形態では、親E.coli株はK-12株(例えばMG1655(GenBank受託番号U00096.3)、W3110(GenBank受託番号AP009048.1)、DH10B(GenBank受託番号CP000948.1)、DH1(GenBank受託番号CP001637.1)、またはBW2952(GenBank受託番号CP001396.1)である。他の実施形態では、親E.coli株はB株(例えば、BLR(DE3)(GenBank受託番号CP020368.1)、REL606(GenBank受託番号CP000819.1)、BL21(DE3)(GenBank受託番号CP001509.3)である。
【0046】
一態様において、親E.coli株は、米国特許第8,178,339号の表2-20に列挙された遺伝子の1つ以上を欠くK-12株またはB株であり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載の縮小ゲノムE.coli K12株またはB株は、E.coli K-12株MG1655(Blattner et al.,Science,277:1453-74およびGenBank受託番号U00096.3に示される名称に基づいて「b」番号で識別される)の少なくとも以下の遺伝子、b0245-b0301、b0303-b0310、b1336-b1411、b4426-b4427、b2441-b2450、b2622-b2654、b2657-b2660、b4462、b1994-b2008、b4435、b3322-b3338、b2349-b2363、b1539-b1579、b4269-b4320、b2968-b2972、b2975-b2977、b2979-b2987、b4466-4468、b1137-b1172、b0537-b0565、b0016-b0022、b4412-b4413、b0577-b0582、b4415、b2389-b2390、b2392-b2395、b0358-b0368、b0370-b0380、b2856-b2863、b3042-b3048、b0656、b1325-b1333、b2030-b2062、b2190-b2192、b3215-b3219、b3504-b3505、b1070-b1083、b1878-b1894、b1917-b1950、b4324-b4342、b4345-b4358、b4486、b0497-b0502、b0700-b0706、b1456-b1462、b3481-b3484、b3592-b3596、b0981-b0988、b1021-b1029、b2080-b2096、b4438、b3440-b3445、b4451、b3556-b3558、b4455、b1786、b0150-b0153およびb2945を欠き(例えば、その欠失を含む)、または異なるK-12またはB株に対応する遺伝子を欠いている。これらは、複数の欠失株MDS42を作製するために親株MG1655から欠失された遺伝子である。
【0048】
他の好ましい実施形態では、本明細書に記載の縮小ゲノムE.coli K12株またはB株は、E.coli K-12株MG1655の少なくとも以下の遺伝子、b0245-b0301、b0303-b0310、b1336-b1411、b4426-b4427、b2441-b2450、b2622-b2654、b2657-b2660、b4462、b1994-b2008、b4435、b3322-b3338、b2349-b2363、b1539-b1579、b4269-b4320、b2968-b2972、b2975-b2977、b2979-b2987、b4466-4468、b1137-b1172、b0537-b0565、b0016-b0022、b4412-b4413、b0577-b0582、b4415、b2389-b2390、b2392-b2395、b0358-b0368、b0370-b0380、b2856-b2863、b3042-b3048、b0656、b1325-b1333、b2030-b2062、b2190-b2192、b3215-b3219、b3504-b3505、b1070-b1083、b1878-b1894、b1917-b1950、b4324-b4342、b4345-b4358、b4486、b0497-b0502、b0700-b0706、b1456-b1462、b3481-b3484、b3592-b3596、b0981-b0988、b1021-b1029、b2080-b2096、b4438、b3440-b3445、b4451、b3556-b3558、b4455、b1786、b0150-b0153、b2945、b2481-b2492、b2219-b2230、b4500、b3707-b3723、b0644-b0650、b4079-4090、b4487、b4092-b4106、b0730-b0732、b3572-b3587、b1653、b2735-b2740、b2405-b2407、b3896-b3900、b1202、b4263-b4268、b0611、b2364-b2366、b0839、b0488-b0500、およびb0502を欠き(例えば、欠失を含む)、または異なるK-12またはB株の対応する遺伝子を欠いている。これらは、複数の欠失株MDS69(別名T69、別名SG69)を作製するために親株MG1655から欠失された遺伝子である。
【0049】
本明細書に記載の方法における使用のための組換え細菌は、機能的recA遺伝子を含んでもよく(b2699)、または機能的recA遺伝子を欠いてもよい(b2699)。例えば、MDS42またはMDS69(別名T69またはSG69)などの縮小ゲノムE.coli株は、改変E.coli K-12株からの遺伝子の完全なまたは部分的な欠失によるb2699の不活化によって改変することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法における使用のための縮小ゲノムE.coliは、以下の欠失/修飾のうちの1つ以上を含む:(i)表1の1つ以上の毒素-抗毒素遺伝子の欠失(ii)RNAse IIIをコードするrnc遺伝子の部分的なまたは完全な欠失(iii)dinBの欠失(iv)次の修飾:(a)オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性の増強(b)活性アセトヒドロキシ酸シンターゼIIの産生、および(c)iclR遺伝子およびarpA遺伝子の発現低下ならびに(v)recA遺伝子の欠失。関連する実施形態では、本明細書に記載の方法における使用のための縮小ゲノムE.coliは、親E.coli K12株MG1655に基づいており、MDS42またはMDS69の欠失(別名T69またはSG69)および上記に列挙された1つ以上の欠失/修飾を含む。
【実施例0051】
以下の実施例は、本発明の範囲を説明するものである。実施例の特定の要素は説明目的のためのみであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、等価な方法を開発し、本発明の範囲内にある比較し得る材料を利用することができる。
【0052】
以下の例で使用される株は以下の通りである。
【0053】
「MDS69」株(別名SG69またはT69)は、縮小ゲノムE.coli K12株であり、そのネイティブ親はMG1655であり、MG1655の以下の遺伝子を欠いている:b0245-b0301、b0303-b0310、b1336-b1411、b4426-b4427、b2441-b2450、b2622-b2654、b2657-b2660、b4462、b1994-b2008、b4435、b3322-b3338、b2349-b2363、b1539-b1579、b4269-b4320、b2968-b2972、b2975-b2977、b2979-b2987、b4466-4468、b1137-b1172、b0537-b0565、b0016-b0022、b4412-b4413、b0577-b0582、b4415、b2389-b2390、b2392-b2395、b0358-b0368、b0370-b0380、b2856-b2863、b3042-b3048、b0656、b1325-b1333、b2030-b2062、b2190-b2192、b3215-b3219、b3504-b3505、b1070-b1083、b1878-b1894、b1917-b1950、b4324-b4342、b4345-b4358、b4486、b0497-b0502、b0700-b0706、b1456-b1462、b3481-b3484、b3592-b3596、b0981-b0988、b1021-b1029、b2080-b2096、b4438、b3440-b3445、b4451、b3556-b3558、b4455、b1786、b0150-b0153、b2945、b2481-b2492、b2219-b2230、b4500、b3707-b3723、b0644-b0650、b4079-4090、b4487、b4092-b4106、b0730-b0732、b3572-b3587、b1653、b2735-b2740、b2405-b2407、b3896-b3900、b1202、b4263-b4268、b0611、b2364-b2366、b0839、b0488-b0500、およびb0502。
【0054】
「MDS69meta」株(別名SG69metaまたはT69meta)は、MDS69株について上記の遺伝子を欠いており、さらに以下の(meta)修飾を含む:ネイティブrphおよびilvGフレームシフト変異の修正ならびにiclR遺伝子およびarpA遺伝子の欠失。
【0055】
「MDS69meta recA」株(別名SG69meta recAまたはT69meta recA)は遺伝子を欠いており、MDS69meta株について上記の改変を含み、さらにrecA遺伝子の欠失を含む。
【0056】
「MDS69meta T/A recA」(別名SG69meta T/A recAまたはT69meta T/A recA)株は遺伝子を欠いており、MDS69meta recA株について上記の改変を含み、さらに以下の毒素/抗毒素遺伝子を欠く:YafQ、dinJ、hha、tomB、gnsA、ymcE、yoeB、yefM、mazF、mazE、mazG、cptA/ygfX、cptB/sdhE、mqsR、mqsA、higB、higA、yhaV、prlF、ldrD、rdlD、istr-2、tisB、chpB、chpS、ratA、ratB、ldrA、rdlA、ldrB、rdlB、ldrC、rdlC、hokB、sokB、sibA、ibsA、sibB、ibsB、ohsC、shoB、sibC、ibsC、sibD、sibE、ibsA、ibsD、ibsE、agrB、ghoT、ghoS、yfeC、yfeD、fic、yhfG、yhjJ、yhjM、yhjN、yjjJ、ecnA、およびecnB。
【0057】
「MDS69meta T/A LowMut recA」株(別名SG69meta
T/A LowMut recAまたはT69meta T/A LowMut recA)は遺伝子を欠いており、MDS69meta T/A recA株について記載された修飾を含み、さらにdinBの欠失を含む。
【0058】
上記のすべてのMDS株は挿入配列を含まない。
【0059】
実施例1
縮小ゲノム株における組換えキャリアタンパク質の緩衝液抽出
E.coliのペリプラズムから組換えタンパク質を抽出する方法は、小規模で一般的である。しかし、実験室規模のペリプラズム単離法は、浸透圧、および、工業規模では簡単または安価に使用できない高価な酵素または有機溶媒を使用する。本発明者は、拡張可能であるペリプラズム抽出のための経済的な方法を開発するためにかなりの時間と労力を費やした。
【0060】
多数の緩衝液システム、界面活性剤、および酵素を組み合わせて試験した後、E.coli株(縮小ゲノムE.coli株が例示されている)のペリプラズムから組換えタンパク質を抽出することができるTris-HClおよびEDTA(最終条件=150mM Tris pH7.75、5mM EDTA)を含む抽出緩衝液を特定した。標準的なEpiccenterペリプラズム分離法と比較して、この緩衝液はCRM197、プロテインD、およびEPAの25%、59%、および49%をそれぞれ抽出することができた(図1を参照)。
【0061】
実施例2
ムレインリポタンパク質遺伝子の欠失
抽出緩衝液での結果は有望であったが、抽出量を高めるための遺伝子的方法が、異なるクラスのタンパク質間の抽出成功の不一致を考慮して調査された。
【0062】
最初に、ムレインリポタンパク質(lpp)をコードする遺伝子をE.coli株MDS69meta(別名SG69meta別名T69meta)から除去して、株MDSmetaΔlpp(別名SG69metaΔlpp、別名T69metaΔlpp)を作製した。MDS69meta株は、親のK-12株MG1655に基づく還元ゲノムE.coli株であり、MG1655と比較して以下の欠失を含む:b0245-b0301、b0303-b0310、b1336-b1411、b4426-b4427、b2441-b2450、b2622-b2654、b2657-b2660、b4462、b1994-b2008、b4435、b3322-b3338、b2349-b2363、b1539-b1579、b4269-b4320、b2968-b2972、b2975-b2977、b2979-b2987、b4466-4468、b1137-b1172、b0537-b0565、b0016-b0022、b4412-b4413、b0577-b0582、b4415、b2389-b2390、b2392-b2395、b0358-b0368、b0370-b0380、b2856-b2863、b3042-b3048、b0656、b1325-b1333、b2030-b2062、b2190-b2192、b3215-b3219、b3504-b3505、b1070-b1083、b1878-b1894、b1917-b1950、b4324-b4342、b4345-b4358、b4486、b0497-b0502、b0700-b0706、b1456-b1462、b3481-b3484、b3592-b3596、b0981-b0988、b1021-b1029、b2080-b2096、b4438、b3440-b3445、b4451、b3556-b3558、b4455、b1786、b0150-b0153、b2945、b0315-b0331、b0333-b0341、b0346-b0354、b2481-b2492、b2219-b2230、b4500、b3707-b3723、b0644-b0650、b4079-4090、b4487、b4092-b4106、b0730-b0732、b3572-b3587、b1653、b2735-b2740、b2405-b2407、b3896-b3900、b1202、b4263-b4268、b0611、b2364-b2366、b0839、b0488-b0500、およびb0502(MDS69(別名SG69またはT69)を作製するためにMG1655から欠失された遺伝子)、およびさらに、以下の(meta)修飾を含む:ネイティブrphおよびilvGフレームシフト変異の修正、iclR遺伝子およびarpA遺伝子の欠失、ならびにrecA遺伝子の欠失。Lpp(Braunのリポタンパク質)は、ペリプラズムの細胞骨格様ペプチドグリカン層を細胞外皮に固定する主要な外膜タンパク質であり、LPPの不活性化はペリプラズムからのタンパク質の放出を増強することが見出されている。しかし、MDS69metaΔlpp株はペリプラズムからタンパク質を放出する能力が制限されていることがわかり、長時間発酵の間、溶解に感受性であった。さらに、抽出緩衝液は、連続発酵中、MDS69metaΔlpp株(別名SG69metaΔlpp、別名T69metaΔlpp)からの組換えタンパク質の放出を引き起こしたり、増強したりはしなかった。それにもかかわらず、組換えタンパク質のある程度の放出が観察された。図2は、キャリアタンパク質EPA(ペリプラズム発現配列に融合)をMDS69metaΔlpp株(別名T69metaΔlpp、図2ではSG69metaΔlppと示す)で発現させた連続発酵実験を示す。一旦発現が開始されると、EPAは培地に放出された(図2)。しかし、最初の3週間は発現が低く、シードおよび生成培養物は細胞溶解に感受性であることがわかった。より一貫した増殖を促進するために一旦条件が変更されると、EPAのレベルはいくらか安定し、培養培地はEPA精製のために収集された。生成は約35日間続いたが、主に細胞溶解量の変化により、この期間中に発現の変動を観察した。例えば、細胞密度は、図2に記載される発酵を通して比較的低かった(OD600の値が、MDS69meta、別名T69metaおよびSG69metaを使用した発酵の220~270のOD600値と比較して、 90~150であった)。
【0063】
培地中のEPAの識別は、最初にCaliper Labchipを使用して決定した(図2)。しかし、EPAは標準のSDS PAGEと比較してキャピラリー電気泳動上でより遅く移動し、それゆえにEPA特異的ポリクローナル抗体を用いるキャピラリーウェスタンを使用して同一性を確認した(図2の挿入図)。最後に、MSに供した部分精製EPAは、修飾またはアミノ酸の位置の間違いなしで予測タンパク質を明確に識別した(99%カバレッジ)(図4)。
【0064】
図2の挿入図は、1リットルの連続した6回の毎日の収集の培地中でのEPAの濃度を示す。精製プロセス全体が大幅に簡素化され、単一のクロマトグラフィー精製工程の後、EPAが>90%まで精製され、これは、タンパク質精製の最初の工程として培養培地中に放出された組換えタンパク質を使用する利点を再度示し、培養培地中にタンパク質を抽出するための方法を開発することの価値を実証する。
【0065】
MDS69metaΔlpp(別名T69metaΔlppおよびSG69metaΔlpp)は、MDS69meta(別名T69metaおよびSG69meta)と比較すると一貫してより多くのEPAを放出したが、外膜の大幅な改変に起因する溶解へのその感受性が、放出されたキャリアタンパク質の商業生産への応用を制限する可能性が高い。例えば、MDS69metaΔlppは連続発酵(C-Flow)でキャリアタンパク質CRM197を発現したが、MDS69metaΔlppを使用した培養培地へのCRM197の放出は観察されなかった。しかし、通常レベルのLppでMDS69metaを使用した連続発酵実験において、培地への中程度の量のCRM197の断続的な放出が観察された。
【0066】
実施例3
OmpLA処理との同時発現は、組換えタンパク質の抽出を生じる
本発明者らは、保護された分類不能なHaemophilus influenza抗原および肺炎球菌コンジュゲートワクチンのキャリアタンパク質であるH.influenzaeのプロテインD(PD)が、Tris/EDTA抽出なしで、E.coli株MDS69meta(別名SG69meta別名T69meta)の連続発酵中に適量で培地に放出され、CRM197およびEPAよりも効果的にペリプラズムから除去されたことを観察した。図3A~Cは、3つのPDを例解し、細菌細胞ペリプラズムで高レベルのPDが観察された後、培養培地へのPD放出の一時的なスパイクが起こった連続発酵を例解する。培地内のPDのレベルは1リットルあたり10グラムと同程度まで高く、放出された組換えタンパク質のレベルが高いことに注目のこと。培地内のインタクトなPDは、抗PD抗体を使用したCaliper LabChip、キャピラリーウェスタン(図3Bの挿入図)、およびSDS-PAGE電気泳動(図示せず)によって確認した。放出は、細胞タンパク質の増加が培地中で観察されず、細胞溶解から生じる物質(すなわち、核酸)の増加の証拠もなかったため、広範な細胞溶解の結果であるとは思われなかった。さらに、クロマトグラフィーの前にほとんど前処理することなく、PDを培地から容易に精製した(以下を参照)。
【0067】
PDの放出は、ペリプラズムPD濃度とパラレルではなかった。図3Cに示されている発酵の後半でPDの発現が増加しても、培地中のPDのレベルの増強は生じなかった。すなわち、PDのペリプラズムレベルは、図3Cの25日目~30日目まで増加したが、培地中のPDレベルはそれほど増加しなかった。この期間の間の培地中のPDの非存在は、28日目からの培地サンプルに「スパイク」された以前の発酵から部分精製PDが25℃で24時間インキュベーション後もインタクトなままであったため、PD分解の結果ではなかった。
【0068】
PDの同一性を確認するために、C-Flow図1Bの培地中の推定PDを、4~12%アクリルアミドゲル上で汚染タンパク質から分離し、ゲルから切り出して質量分析(MS)に供した。図4に示すように、MSは切除されたバンドをPDとして同定した。PD精製のために培養培地を使用することの利点を例解する切除領域において、汚染タンパク質は明らかではなかった(以下を参照)。PDの完全なN末端(末端システインを除く)が予測どおりに同定され、全体的なカバレッジは99%を超えていた。アシル化などの翻訳後修飾は、予想どおり明らかではなかった。
【0069】
PDの放出の原因であるメカニズムを特定するために、いくつかの培養条件が改変された。テストされた1つのパラメーター、誘導物質濃度の増加は、ペリプラズム中のPDを増強し、培地へのPDの移動の増加を促進すると仮定された。ペリプラズム中のPD量の増加は、試験した最高の誘導因子濃度(300μM IPTG)まで観察されたが、培養培地中ではPDはほとんどまたはまったく明らかではなかった。ストレスである事象がPD放出を引き起こしたか否かを判断するために、本発明者らは、C-FlowにおけるPD発現の間の温度の上昇とpHの低下の両方を調べた。発酵条件のどちらの変化もPDの培地への放出を生じなかった。
【0070】
ペリプラズムにおけるプロテインDの存在は、その内因性グリセロホスホジエステラーゼ活性により外細胞膜を変化させると仮定された。しかし、プロテインDとCRM197またはEPAの同時誘導は、振盪フラスコ培養におけるCRM197またはEPAの放出または抽出のいずれにも影響しなかった。
【0071】
培養培地へのPDの放出のトリガーはまだ特定されていないが、放出されたPDを含む連続発酵(別名C-Flow)サンプルを使用して、PDの簡単な精製方法が開発された。高レベルのPD(図3Bの21日目に約10g/L)を含む培地サンプルを使用して、純度95%を達成するために2回のクロマトグラフィー工程のみを必要とする精製スキームを開発した。PDの精製の容易さは、培地中の高いPDの割合(58%)に直接起因していた。精製プロトコルの単純さを考えると、記載された方法は、組換えタンパク質のための連続エンドツーエンド製造プロセスの自動化に非常に適している。
【0072】
次に、本発明者らは、振盪フラスコ培養を使用してペリプラズムからのより完全な抽出を促進すると予測した一連の酵素を調べた。E.coli外膜ホスホリパーゼA(OmpLA)酵素(pldA遺伝子によってコードされる)は、振盪フラスコ培養において3つすべてのキャリアタンパク質の抽出を増強することが見出された。(図5A~C)。他のいくつかのE.coliホスホリパーゼもテストした。GlpQ、PldB、およびTesAもまた、OmpLAよりも程度は低いものの、キャリアタンパク質の抽出を増強することが見出された。
【0073】
これらの振盪フラスコ培養実験において、plda遺伝子が各キャリアタンパク質(二シストロン性構築物)の下流に配置され、個別の制御下に置かれるように各発現プラスミドが改変された(すなわち、各キャリアタンパク質はIPTGによって誘導され、pldA発現はドキシサイクリン(DOX)によって誘導された)。次に、プラスミドは、配列が確認され、MDS69meta(別名SG69meta、別名T69meta)にサブクローニングされた。強固なキャリアタンパク質発現レベルを確立するために、組換えキャリアタンパク質の誘導の4時間後にpldA発現が誘導された。各キャリアタンパク質の16時間抽出後の結果を図5A~Cに示す。それぞれの場合において、抽出されたキャリアタンパク質の量は、Epicenterプロトコルに基づき、ペリプラズム中に存在する量と等しいか、それを超えていた。上記の実験と一致して、培養の間に中程度のレベルのプロテインDが細胞から「漏出」したため、ペリプラズムと比較して、抽出後の培地中には、より高レベルのプロテインDが存在した。OmpLAレベルを達成するために必要なDOXはほとんどなく、これは、各キャリアタンパク質を完全な抽出を生じ、このことは、商業化のスケールアップの重要な特徴である。
【0074】
ペリプラズム中における3つの組換えキャリアタンパク質(エキソプロテインA(rEPA)、プロテインD(PD)およびCRM197)の産生および培地への分泌を、MDS69metを作製するために作製された欠失を含み(上記)、いくつかの発現戦略を使用してrecAの欠失も含む、縮小ゲノムE.coli宿主株MDS69meta recA(別名T69meta recAまたはSG69meta recA)を用いる振盪フラスコ培養中で調べた。
【0075】
それぞれの場合の宿主細胞は、IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合したEPA、PDまたはCRM197をコードする配列を含み、さらにドキシサイクリン(DOX)誘導性プロモーターの制御下にあるOmplAをコードする配列を含む、単一発現プラスミド構築物でトランスフェクトした。
【0076】
-80℃で保存した宿主細胞のストック培養物を解凍し、10mLの規定培地(0.2%グルコースおよび50μg/mlカナマイシンを補充したKorz培地)に接種するために使用した。前培養物を一晩増殖させ、同じ初期細胞密度で振盪フラスコに接種するために使用した。細胞が飽和に達すると、標的遺伝子(EPA、PDまたはCRM197)は、50μMIPTG(EPAおよびCRM197)または100μMIPTG(PD)(非常に遅い誘導)で誘導され、約4時間後に0~100nM DOXでpldA発現が誘導され、誘導は25℃で一晩継続させた。増殖速度および最終細胞密度は、株間で同等であった。
【0077】
翌朝、1335μlの培養液を収集し、濃縮TrisおよびEDTA(最終条件=1.5ml、150mM Tris pH7.75、5mM EDTA)を含む数本の2mlチューブに入れた。次に、チューブを2時間インキュベート(25℃で振盪)し、その後、収率を評価するか、または2時間(25℃で振盪)、その後、一晩(25℃)インキュベート、その後、収率を評価した。PDについては、チューブをまた2時間インキュベートし(25℃で振盪)、その後25℃で6時間インキュベートした。
【0078】
2時間、6時間、または一晩振盪した後、チューブを4000xgで15分間遠心分離し、500μlの上清を除去し、YM10スピンフィルターに適用し、13000xgで30分間遠心分離した。保持液(培地を表す)を、Korz/0.2%グルコース Kan(25μg/ml)/Tris-EDTAで0.02 OD/μlの等価物に希釈した。ペリプラズム収率を評価するために、培養の別のアリコートで中心点ペリプレップを実施し、最終濃度=0.2 OD μlであった。すべてのサンプルはキャリパーチップ上で分析した。
【0079】
図7~9から見ることができるように、pldA遺伝子の同時発現は、各キャリアタンパク質のほぼ100%の抽出が培地に生じ、この方法が任意の特定の組換えタンパク質に限定されないことが確認された。Tris/EDTAを用いる一晩抽出は、2時間抽出よりもかなり多くの標的タンパク質を放出し、6時間および一晩抽出の間にほぼすべてのタンパク質が培地に抽出された(ペリプラズム収率を抽出収率に対して比較する-それらが同じ場合、すべてのタンパク質が抽出されている)。
【0080】
1つの奇妙な観察は、pldAの発現が誘導されなかった培養物(0 DOX)中においてさえ、これらの延長された抽出時間でキャリアタンパク質の一部が放出されるという事実であった。pldA発現を制御するプロモーターは、GFPを用いた以前の実験に基づいて、いくつかの非誘導のベース活性を有することが知られている。したがって、pldAベースのプラスミドを保有する株において、pldAの発現レベルは野生型よりも高い可能性があり得ると想定された。その仮定をテストするために、組換えキャリアタンパク質のみをコードする発現ベクターで形質転換したMDS69meta recA株からの標的のTris/EDTA抽出を、組換えキャリアタンパク質およびOmpLAをコードする発現ベクターと比較した。IPTGを用いてすべての株を標的に対して誘導し、0、10、または100nM DOXで処理した後、Tris/EDTA抽出緩衝液で一晩抽出した。結果は、pldA発現の誘導の非存在下でさえ、pldAベースのプラスミドを保有する株から有意に多くの標的が抽出されることを実証しており、非誘導状態でのOmpLAの漏出性のベース発現を示す。図10A~Cを参照。この手順を使用して、培地中の2~3g/LのCRM197の収率が得られた。
【0081】
OmpLAの漏出性発現は単一のtetオペレーターを用いて観察されたため(上記キャリアタンパク質実験におけるように)、以下の実験ではpldAはデュアルtetオペレーターの制御下に置かれた。MDS69meta recA宿主細胞は、IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合したEPA、PDまたはCRM197をコードする配列を含み、デュアルtetオペレーターによって制御されるOmpLAをコードする配列をさらに含む、単一発現プラスミド構築物でトランスフェクトした。
【0082】
-80℃で保存した宿主細胞のストック培養物を解凍し、10mLの規定培地(Korz/0.2%グルコース/カナマイシン(25μg/ml))を接種するために使用した。前培養物を一晩増殖させ、同じ初期細胞密度で振盪フラスコに接種するために使用した。一旦細胞が飽和に達すると、100μMIPTG(EPAおよびCRM197)または200μMIPTG(PD)(非常に遅い誘導)で標的遺伝子(EPA、PDまたはCRM197)が誘導され、約4時間後に、0、12.5、25、50、75、または100nM DOXでpldA発現が誘導され、25℃で一晩誘導を続けた。増殖速度および最終細胞密度は、株間で同等であった。
【0083】
翌朝、1335μlの培養液を収集し、濃縮TrisおよびEDTA(最終条件=1.5ml、150mM Tris pH7.75、5mM EDTA)を含む何本か1.5mlチューブに入れた。次に、チューブを6時間(25℃で振盪)または一晩インキュベートし、その後、収率を評価した。
【0084】
6時間または一晩振盪した後、チューブを4000xgで15分間遠心分離し、500μlの上清を除去してYM10スピンフィルターに適用し、13000xgで30分間遠心分離した。保持液(培地を表す)を、Korz/0.2%グルコース/Kan(25μg/ml)/Tris-EDTAで0.02 OD/μlの等価物に希釈した。ペリプラズム収率を評価するために、Epicenter Peri-Prepを培養の別のアリコートで実施し、最終濃度=0.2 OD/μlにした。すべてのサンプルはキャリパーチップ上で分析した。
【0085】
CRM197のデータを図11に示す。pldA遺伝子の発現を誘導するためにDOXが追加されない限り、Tris/EDTA抽出によってCRM197はほとんど放出されない。これは、単一tetO構築物で得られた以前の結果とまったく対照的である(上記の図10A)。これらの場合において、pldAの非誘導ベース発現に起因するDOXによるpldA遺伝子発現の誘導の非存在下では、一晩のTris/EDTA抽出後、通常、キャリアタンパク質の50%以上が放出された。PDおよびEPAについても同様の結果が観察された(データ示さず)。したがって、誘導されたpldA発現の非存在下でのキャリアタンパク質のTris/EDTA抽出は、pldAの発現が漏れやすい(例えば、単一のtetO)プロモーターによって制御され、誘導されていないバックグラウンドOmpLAに起因する場合にのみ観察される。
【0086】
前に見たように、PDの固有のリパーゼ活性に起因して、CRM197およびEPAと比較して、DOX(これはOmpLAを誘導する)の非存在下でより多くのPDが放出され、これはデュアルtetO-pldA構築物についてもまた当てはまる。しかし、デュアルtetO-PLDA構築物を使用する場合、単一のtetO-PLDA構築物で1/2以上(データ示さず)と比較して、PDの1/6のみが、PLDA発現の誘導の非存在下で放出される。
【0087】
非誘導状態における標的キャリアタンパク質およびOmpLAの発現を最小限にすることは、潜在的な選択バイアスを回避するための連続発酵のために有益である。
【0088】
上記の単一プラスミド/2プロモーター構築物は、培地中で2~3g/LのCRM197の収率をもたらしたが、しかし、これらの構築物はプラスミド二量体を形成する傾向があることが見出された。したがって、RBS(リボソーム結合部位)-pldAインサートがDOX誘導性プロモーターの制御下でCRM197のすぐ下流に配置された二シストロン性メッセージアプローチをテストした。この構築物において、CRM197とOmpLAの両方の発現がDOXによって誘導される。上記の手順でこの構築物を利用することは、ペリプラズム調製物に基づいて4~5g/LおよびTris/EDTA抽出物に基づいて4g/Lを生じた(データ示さず)。
【0089】
一部の実験においては、二シストロン性CRM197-RBS-pldA構築物を改変して、野生型pldAをコドン変更pldAに置き換え、染色体統合の機会を大幅に減らした。同時に、3つの異なるRBS配列をテストして、CRM197とOmpLAの同時発現を最適化してCRM197の収率を改善することができるか否かを判断した。
【0090】
実施例4
CRM197誘導因子濃度の最適化およびMDS69meta T/A LowMut recA細胞の培地へのCRM197放出の拡張分析
以前の実験では、CRM197の放出をモニターするための培地サンプルは、一晩の誘導期間後に採取された。一晩誘導培養のアリコートから培地サンプルを採取し、次にこれをTris/EDTA抽出サンプルと並行してインキュベートすることにより(25℃で振盪しながら再度一晩インキュベートする)、より良好な対照サンプルが生成される。
【0091】
以前の実験は、最適なCRM197発現は、50~250nMのドキシサイクリン濃度範囲で達成されたが、500nm以上では低下し始めたことを示した。
【0092】
次の実験は、100、250、400nM DOXによる誘導をテストし、改善された対照を使用して培地へのCRM197の放出を分析した。
【0093】
簡単に説明すると、(i)ドキシサイクリンプロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合したCRM197または(ii)同じドキシサイクリンプロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルおよびコドン最適化されたpldA配列に融合したCRM197をコードする発現プラスミドを保有するMDS69meta T/AT LowMut recA宿主細胞(CRM197とpldA ORFSの間のRBSに関してのみ異なる2つの別々の構築物を使用、図6Aを参照)が、100、250または400nM DOX(培地=Korz/0.2%グルコース/Kan)を用いて誘導された。ペリプラズム収率を評価するために、2ODに対して等価な培養物のアリコートに対して、Epicenter Peri-Prepを実施し、調製物の最終濃度を2OD/μlに対して等価にした。培地中のCRM197の収率を決定するために、1335μlの誘導培養物を濃縮TrisおよびEDTAを含む1.5mlチューブに入れ(最終条件=1.5ml、150mM Tris、pH7.75、5mM EDTA)、すべてのサンプルを25℃で一晩振盪した。上清は、cfgによって4000xgで15分間収集した。500μlの上清を除去し、YM10スピンフィルターに適用し、13000xgで30分間cfgを行った。保持液を、Korz/0.2%グルコース/Kan(25μg/ml)/Tris-EDTAを用いて0.02OD/μlと等価に希釈した。
【0094】
培地対照1:1mlの誘導培養物を1.5mlチューブに入れ、Tris/EDTA抽出と並行して25℃で一晩振盪した。
【0095】
培地対照2:1mlの誘導培養液を1.5mlチューブに入れ、4℃で2日間保存した。
【0096】
両方の培地サンプルからの上清を収集し、Tris/EDTA抽出物と同じ手順に従って処理した。0.02 OD/μlへの最終希釈は、Korz/0.2%グルコース/Kan(25μg/ml)/Tris-EDTAを用いて実施した。
【0097】
これらの株からのYtfQ-CRM197の最適な誘導のために使用するDOXの最大濃度は400nMである(図12Cを参照)。
【0098】
誘導培養物の4℃での保存は、振盪しながら25℃でインキュベートするよりも、培地へのCRM197の大幅に少ない放出をもたらした(図12Bと12Dを比較)。OmpLA同時発現株において発現したCRM197の約50%は、単に抽出緩衝液の非存在下で振盪しながら25℃でインキュベートすることによって放出することができる(図12B)。抽出緩衝液を用いると、CRM197のほぼ100%を放出することができる。
【0099】
これらのデータは、本明細書に記載の方法に従って非常に良好な結果で多種多様な構成を使用してホスホリパーゼと目的のタンパク質を同時発現することができるが、目的のタンパク質の発現と目的のタンパク質の培地への抽出の両方に関して最適な結果が、RBS(および同じプロモーター、この場合はDOX誘導性プロモーターの制御下にある)によって分離された目的のタンパク質とホスホリパーゼをコードする二シストロン性構築物を使用して達成され、実質的に100%目的のタンパク質を培地に抽出したことを実証する。さらに、リボソーム結合部位(RBS)の強度は、発現されるOmpLAの量と直接相関することが見出された(RBSの強度の違いによりpldA遺伝子が異なるレベルで発現されることを実証する図12Aの右の2つのパネルを参照)。
【0100】
実施例5 野生型E.coli株およびRNase III+毒素/抗毒素遺伝子欠失を有するE.coli株におけるCRM197ペリプラズム収率
CRM197のペリプラズム収率は、CRM197をペリプラズムに方向付けるためのOmpFまたはYtfQ分泌シグナルを使用して、MG1655株(本明細書に記載の複数欠失株E.coliの天然の親株)、野生型K12株W3110およびBL21DE3株(ファージ欠失ありおよびなし)を含むいくつかのE.coli株で測定された。
【0101】
図13は、以下の株、(1)BL21DE3(2)ファージ欠失を伴うBL21DE3(3)MG1655および(4)W3110におけるCRM197のペリプラズム産生を実証する。手短に言えば、発現プラスミドを保持する各株を、OD600が後期誘導(0.3 OD600)または超後期誘導(1.5~2.0 OD600)のために十分になるまで25℃で増殖させた。後期誘導のために、培養の20mlアリコートを125mlバッフル付きエルレンマイヤーフラスコに取り出し、OmpF-CRM197構築物には25μMIPTG、YtfQ-CRM197構築物には50μMIPTGを用いて誘導した。非常に遅い誘導のために、培養物の20mlアリコートを125mlのバッフル付きエルレンマイヤーフラスコに取り出し、ompF-CRM197構築物には25~200μMIPTG、YtfQ-CRM197構築物には500-400μMIPTGを用いて誘導した。すべての誘導は25℃で20時間増殖させた後、2 ODの培養物を収集し、Epicenter Periplasting法を使用してペリプラズムおよびスフェロプラスト画分を調製した。
【0102】
E.coli B株BL21DE3におけるCRM197の発現は、ファージを欠失させることによって大幅に改善された。OmpFまたはYtfQ分泌シグナルを利用した場合でも、同様の結果が得られた。
【0103】
CRM197のペリプラズム収率は、(i)RNAを標的とする毒素-抗毒素遺伝子を欠失させること、および(ii)RNAse IIIを欠失することにより、mRNA転写産物の量を増やすように設計された縮小ゲノムE coli株において評価された。T69meta Tox/Antitox RNase III株におけるCRM197産生(MDS69の欠失、RNase IIIの部分的(不活性化)欠失、およびRNAを標的とする毒素-抗毒素遺伝子の欠失を含む)をT69meta株におけるCRM197産生と比較した。
【0104】
図14に例解するように、RNA標的化毒素/抗毒素遺伝子とRNase IIIの組み合わせ欠失は、OmpFまたはYtfQシグナル配列を使用してCRM197をペリプラズムに誘導したか否かに関わらず、CRM197のペリプラズム収率を顕著に増加した(SG7755株の2.6g/Lと比較した、SG7128株およびSG800株における収率3.5および3.3g/L)。毒素-抗毒素遺伝子およびRNase IIIの欠失を含むE.coli株において、組換えタンパク質の収率の相加的および相乗的でさえある増加が得られる可能性がある。シャペロンpspAの同時発現はCRM197の収率を増加させず、おそらくシャペロンの産生への細胞機構の転換により、収率を低下させる傾向さえあった。
【0105】
結果を以下の表2に要約する。
【表2】
【0106】
実施例6
キャリアタンパク質の産生および培地への抽出のための連続発酵システム
減少したゲノムE.coli株は、連続発酵培養(連続フローまたは「C-Flow」)で60日間以上連続増殖およびタンパク質産生を維持することができる。従来のE.coli産生株BL21、MG1655およびBLRを用いても不可能である30日間を超える(3週間を示している)期間にわたって4~5g/リットル/日の(ペリプラズム)収率でのCRM197の連続的な増殖および産生を例解する、図15を参照のこと、ここでは、約1g/Lの収率が最初に得られ(これは徐々に減少する)、非産生変異体が培養を引き継ぐため、数日間よりも長い期間連続発酵は維持できない。
【0107】
振盪フラスコ培養における組換えタンパク質の緩衝液抽出が、連続発酵中に達成される高い細菌細胞密度までスケール変更可能であるかどうかを判断するために、IPTG誘導性プロモーターの制御下にあるCRM197およびドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるpldAをコードする配列を含む単一発現プラスミドを含むSG69meta(別名MDS69meta aka T69meta)を使用した拡張発酵が、上記の振盪フラスコ培養実験で使用される。2週間の期間にわたるCRM197の発現を示す拡張発酵を図16に示す。CRM197の発現は平均1g/L/日であり、発酵は200の比較的一貫した高密度OD600を維持した。高密度連続発酵発酵物に対して行われた抽出実験は、CRM197の90%回収を生じた(図16のパネルAおよびBを参照)。示されている実験において、100mlの未希釈発酵液が1リットルのバッチ収集容器から採取された。次に、ドキシサイクリンを100mlの発酵アリコートに加え、サンプルを25℃で撹拌しながら振盪チェストインキュベーターで4時間インキュベートした。抽出緩衝液を添加し(発酵物の1/10体積に等しい)、サンプルをさらに16時間インキュベートした。DOX誘導の非存在下でのTris/EDTA抽出は、ペリプラズムに存在するCRM197の約半分の抽出を生じたが(ompLAの非誘導発現に起因する)、Tris/EDTAと組み合わせたDOX誘導は、CRM197の90%の抽出を生じた。これらの結果は、本明細書に記載の抽出方法が高密度連続発酵に適応可能であることを実証する。
【0108】
本明細書に記載されるような、ペリプラズムシグナル配列およびE.coliホスホリパーゼ(単一のプロモーターまたは個別のプロモーターによって調節されるキャリアタンパク質およびホスホリパーゼを伴う)に融合された縮小ゲノムE.coli株(極度に高密度まで増殖することができる)の連続発酵は、コードされたタンパク質の長期的な高収率産生および単純な緩衝液を用いた標的タンパク質の培地への完全な抽出を可能にし、下流の処理(例えば、精製)工程を大幅に簡素化する。
【0109】
重要なことに、CRM197および他のキャリアタンパク質の産生は、BL21およびBLRなどの市販のE.coliB株においては実現可能ではなく、本明細書に記載の縮小ゲノムE.coli株の親株であるE.coli K12株MG1655においても実現可能ではない。これらの株を使用すると、7日間より長い連続発酵は不可能であり、CRM197の産生は約1g/L/日~約0g/L/日まで急速に低下する。本明細書に記載の縮小ゲノムE.coli株を使用すると、最大65日間の連続発酵の実行が達成され、PDの一貫した産生が約9g/L/日で、最大30日間でCRM197が約4~5g/L/日で一貫して産生され、リパーゼの同時発現を用いて可能である培地からの精製が大幅な改善を伴った。連続フローを365日間以上の連続生産に拡張することに制限はないようである。
【0110】
選択的な下流処理
連続培養(別名連続フローまたは「C-Flow」)は、発酵上清からインタクトな細胞または破片を除去するための連続的な自動清澄化のための下流培養清澄化プロセスを含んでもよく、クロマトグラフィープロセスを連続培養の流量と同時リンクさせることにより、清澄化された上清から所望の産物の容易な精製のための、小型化された低コストクロマトグラフィーシステムを含んでもよい。
【0111】
本明細書に記載の組成物および方法を使用して産生されたCRM197は、一貫性が高く、純度98%までで、メチル化、アセチル化、グルコノイル化またはリン酸化を含まず、エンドトキシンレベルが極度に低い(<25EU/mg)。市販ワクチンの用量あたりのCRM197の量は12~65ugの範囲であることを考慮すると、潜在的なエンドトキシン汚染は、標準ワクチンの用量あたり0.5EU未満であり、多糖類ワクチンの業界標準である<10EU/用量を大きく下回る。
【0112】
実施例7
毒素-抗毒素遺伝子の欠失は、キャリアタンパク質の生産を大幅に改善する
E.coliにおけるキャリアタンパク質の産生に対する毒素抗毒素遺伝子の欠失の影響を評価した。以下の毒素-抗毒素遺伝子をいくつかのMDS E.coli株から欠失させて、対応するMDS T/A株を作製した:YafQ、dinJ、hha、tomB、gnsA、ymcE、yoeB、yefM、mazF、mazE、mazG、cptA/ygfX、cptB/sdhE、mqsR、mqsA、higB、higA、yhaV、prlF、ldrD、rdlD、istr-2、tisB、chpB、chpS、ratA、ratB、ldrA、rdlA、ldrB、rdlB、ldrC、rdlC、hokB、sokB、sibA、ibsA、sibB、ibsB、ohsC、shoB、sibC、ibsC、sibD、sibE、ibsD、ibsE、dinQ、agrA、agrB、ghoT、ghoS、yfeC、yfeD、fic、yhfG、yhjJ、yhjM、yhjN、yjjJ、ecnA、およびecnB。
【0113】
CRM197、EPA、およびPDの産生は、MDS69meta rec A(毒素-抗毒素遺伝子を含む)において、および毒素-抗毒素遺伝子が欠失された、派生株MDS69meta T/A recAおよびMDS69meta T/A LowMut recAにおいて評価された。
【0114】
IPTG誘導性またはドキシサイクリン誘導性プロモーターの制御下にあるYtfQ分泌シグナルに融合したCRM197、EPAまたはPDをコードする発現プラスミドを保有する各宿主株において、CRM197、PDおよびEPAのペリプラズム収率を評価した。
【0115】
IPTG誘導を伴うCRM197については、各株からの3つのコロニーを使用して、別々のフラスコに25ml Kor/0.2%グルコース/Kan(25μg/ml)で、37℃で接種した。25mlの接種材料を使用して、その後の100mlの培養物を500mlのバッフル付きEフラスコ中にOD600=0.25になるように接種した。すべての培養物を25℃で次のおよそのOD600(修正)まで増殖させ、MDS69meta recAについて2.8(下の表3のSG7766)、MDS69meta T/A LowMut recAについて3.0(下の表3のSG8081)であった。その後、20mlのアリコートを取り出し、125mlのバッフル付きEフラスコに入れ、25μM、50μM、100μMまたは200μM IPTGで誘導し、培養物を25℃で一晩振盪した。25℃で16~20時間のインキュベーション後、cfgによって2 ODの培養物を収集し(7500xgで10分)、EpiCentreペリプラズム調製法により2 ODから3連でペリプラズムを単離した(4000xgで15分)。すべてのサンプルは最終濃度0.02 OD/μlであり、同じ分析で同じキャリパーチップで分析した。
【0116】
以下の表3から見ることができるように、毒素-抗毒素遺伝子が欠失された株においてはCRM197の産生が著しく増加した(CRM197で約38%増加)。
【表3】
【0117】
IPTG誘導を用いるEPAおよびPDについては、各株からの3つのコロニーを使用して、別々のフラスコに、37℃で25ml Kor/0.2%グルコース/Kanを接種した。25mlの接種材料を使用して、その後の100mlの培養物を500mlのバッフル付きEフラスコ中にOD600=0.25になるように接種した。すべての培養物を25℃で飽和、OD600m(修正)まで増殖させた:MDS69meta recAでは2.9、MDS69meta T/A LowMut recAでは3.2。その後、20 mlのアリコートを取り出し、125mlのバッフル付きEフラスコに入れ、25μM、50μM、100μMまたは200μM IPTGで、25℃で一晩誘導した。25℃での16~20時間インキュベート後、遠心分離(7500xgで10分)で2ODの培養物を収集し、EpiCentreペリプラズム調製法により2OD(4000xgで15分)からペリプラズムの内容物を3連で分離した。すべてのサンプルは最終濃度0.02 OD/μlであり、同じ分析で同じキャリパーチップで分析した。
【0118】
以下の表4から見ることができるように、PDの産生は、毒素-抗毒素遺伝子が欠失された株において有意に増加した(PDの約25%増加)。
【表4】
【0119】
次に、デュアルtetOオペレーター/tetリプレッサーの制御下でytfQシグナル配列に融合したCRM197をコードする発現プラスミドを保有する3株のCRM197のペリプラズム収率を評価した(オペレーターの2つのコピーであるがtetリプレッサーの1つのコピーのみ):(i)MDS69meta RecA(別名T69 Meta recA 別名SG69 Meta recA)(ii)MDS69meta T/A recA(別名T69 Meta Tox/Atox recA 別名SG69 Meta Tox/Atox recA)および(iii)MDS69meta T/A LowMut recA(別名T69 Meta Tox/Atox LowMut recA(別名SG69 Meta Tox/Atox LowMut recA)。
【0120】
各株の3つのコロニーを使用して、別々のフラスコに25ml Kor /0.2%グルコース/Kan(25μg/ml)を37℃で接種した。25mlの接種材料を使用して、その後の100mlの培養物を500mlのバッフル付きEフラスコ中にOD600=0.25になるように接種した。すべての培養物を25℃で飽和状態まで増殖させた。次に、20mlのアリコートを取り出し、125mlのバッフル付きEフラスコに入れ、50または100nM DOXを用いて25℃で一晩誘導した。25℃での16~20時間のインキュベート後、遠心分離(7500xgで10分)で2ODの培養物を収集し、EpiCentreペリプラズム調製法により2OD(4000xgで15分)からペリプラズムタンパク質を3連で分離した。すべてのサンプルは最終濃度0.02 OD/μlであり、同じ分析で同じキャリパーチップで分析した。
【0121】
毒素/抗毒素遺伝子の欠失は、ペリプラズムにおけるCRM197の収率を有意に増強した(3.9g/L~5.1g/L、以下の表5、図18も参照)。
【表5】
【0122】
これらの結果は、毒素-抗毒素遺伝子が欠失しているE.coli株の利点を実証している。これらの利点は、特定のE.coli株に限定されるものではないようである。
【0123】
実施例8
OmpLA同時発現は、組換え抗体の完全な抽出を促進する。
次に、関連する組換えタンパク質の抽出を拡大して、一本鎖抗体(scFab YMF10)および一本鎖可変フラグメント(scFv 75127、Fritz Schaumburgから恵与、Lytic Solutions,Madison,WI)を含めた。両方の標的は、関連性の高い組換え治療用タンパク質を表している。簡単に説明すると、IPTG制御下にあるOmpAペリプラズムシグナル配列に融合するいずれかの抗体をコードし、デュアルtetO DOX誘導性プロモーターの制御下にあるOmpLAをコードする、発現プラスミドを保有するMDS69meta RecA(別名T69 Meta RecA、別名SG69meta RecA)が誘導され(誘導が非常に遅い)、100μMIPTGを用いて、4時間後に0、50または100 nM DOXを用いてpldAを誘導する。一晩の誘導後、1335mlの培養液を濃縮TrisおよびEDTA(最終濃度=1.5ml、150mM Tris pH7.75、5mM EDTA)を含む2mlチューブに入れ、振盪しながら25℃で一晩インキュベートした。ペリプラズムについては、Epicenter Peri-Prepを培養の別のアリコートで実施し、最終濃度=0.02 OD/μlであった。すべてのサンプルはキャリパーチップ上で分析した。
【0124】
scFvの高レベルの発現とその後のペリプラズム送達が観察された(scFvは、ペリプラズムに適切な折り畳みを提供するシャペロンタンパク質skpと同時発現された)。抽出後の培養培地中には大量のscFv 75127が存在し(図19A)、そのレベルはペリプラズムで観察されたレベルよりもはるかに高かった。scFv 75127のペリプラズム収率および抽出収率を例解する図20Aおよび20Bもまた参照。これらの結果は、大量のキャリアタンパク質を産生する発現および抽出方法が、単鎖抗体についても同様に機能することを確認する。
【0125】
単鎖抗体scFab YMF10の発現と抽出もまた調べた。scFab YMF10は、従来のE.coli発現株の分解に対して非常に感受性が高く、MDS69meta(別名SG69meta、別名T69meta)中でゆっくりとした分解を受けることが見出された。分解の問題を解消するために、SG69metaと比較して追加のプロテアーゼが除去されたSG69発現株が利用された。scFab YMF10(およびシャペロン、skp)の安定した発現は、このプロテアーゼが減少した株において達成された(図19B)。scFab YMF10のペリプラズム収率および抽出収率を例解する図21Aおよび21Bも参照。scFvと同様に、抽出されたサンプル中では、Eccenterペリプラズム分離サンプルよりも多量のscFab YMF10が明らかであった。少量のscFabが抽出前の培地に存在しており(図19Bの緑色の三角形)、このことは、この不一致を説明することができる。これらの結果は、本明細書に記載されている新規抽出方法と縮小ゲノムE.coliの両方の汎用性を強調する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22
【配列表】
2023073442000001.app
【外国語明細書】