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特開2023-73453カラム別の放射線の照射およびそのための治療計画の生成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073453
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】カラム別の放射線の照射およびそのための治療計画の生成
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
A61N5/10 D
A61N5/10 H
A61N5/10 K
A61N5/10 N
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023056084
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2021553099の分割
【原出願日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】62/815,721
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/853,387
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/889,825
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/889,861
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508147706
【氏名又は名称】メビオン・メディカル・システムズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・クーリー
(72)【発明者】
【氏名】タウンゼント・ズワルト
(57)【要約】
【課題】改善されたカラム別の放射線の照射およびそのための治療計画を提供する。
【解決手段】粒子ビームを使用してターゲットを治療する例示的な方法は、ターゲットを少なくとも途中まで通る経路に沿って粒子ビームを向けることと、粒子ビームが経路に沿って配置されているターゲットの少なくとも内部部分を治療するように粒子ビームが経路に沿って方向付けられている間に粒子ビームのエネルギーを制御することとを含む。粒子ビームが経路に沿って方向付けられている間、粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線をターゲットに照射する。治療計画は、この方法を実行するように生成され得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子ビームを使用してターゲットを治療する方法であって、
前記ターゲットを少なくとも途中まで通る経路に沿って前記粒子ビームを方向付けるステップと、
前記粒子ビームが前記経路に沿って方向付けられている間に前記粒子ビームが前記経路に沿って配置されている前記ターゲットの少なくとも内部部分を治療するように前記粒子ビームのエネルギーを制御するステップと、
を含み、
前記粒子ビームが前記経路に沿って方向付けられている間、前記粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を前記ターゲットに照射する方法。
【請求項2】
前記粒子ビームの前記エネルギーを制御するステップは、1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして、前記ターゲットと前記粒子ビームの発生源との間の前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すステップは、前記粒子ビームが前記経路に沿って方向付けられている間に実行される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すステップは、複数のエネルギー吸収プレートを順次的に動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるステップを含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すステップは、複数のエネルギー吸収プレートを順次的に動かして前記粒子ビームの前記経路から出すステップを含む請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数のエネルギー吸収プレートのうちの1つのエネルギー吸収プレートは、前記エネルギー吸収プレートを動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すように制御可能であるリニアモーターを備える請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数のエネルギー吸収プレートの各々は、100ミリ秒以下の持続時間において前記粒子ビームの前記経路内に入るか、またはそこから出るように移動可能である請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数のエネルギー吸収プレートの各々は、10ミリ秒以下の持続時間において前記粒子ビームの前記経路内に入るか、またはそこから出るように移動可能である請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すステップは、
前記粒子ビームが前記1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを通過して前記ターゲットに到達するまでの間に移動する前記1つまたは複数のエネルギー吸収プレートのうちの第1のプレートを制御するステップであって、前記第1のプレートはビーム場の少なくとも一部を横切って移動するように制御可能であり、前記ビーム場は前記粒子ビームが前記ターゲットに対して相対的に移動できる最大範囲を画成する平面に対応する、ステップを含む請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子ビームは、粒子加速器内に収容されている超電導巻線を通る電流に基づく粒子ビームを出力するように構成されている粒子加速器によって生成され、
前記粒子ビームの前記エネルギーを制御するステップは、前記電流を複数の値のうちの1つに設定するステップであって、前記複数の値の各々は前記粒子ビームが前記粒子加速器から出力される異なるエネルギーに対応する、ステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子ビームが前記経路に沿って方向付けられている間、前記粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイを超える線量の放射線を前記ターゲットに照射する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子ビームが前記経路に沿って方向付けられている間、前記粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイから毎秒100グレイの間の線量の放射線を前記ターゲットに照射する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子ビームは、少なくとも2ミリメートルシグマのサイズを有するガウスペンシルビームを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子ビームは、2ミリメートルシグマから20ミリメートルシグマのサイズを有するガウスペンシルビームを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記経路は、第1の経路であり、
前記方法は、
前記第1の経路と異なる前記ターゲットを少なくとも途中まで通る第2の経路に沿って前記粒子ビームを方向付けるステップと、
前記粒子ビームが前記第2の経路に沿って方向付けられている間に前記粒子ビームが前記第2の経路に沿って配置されている前記ターゲットの部分を治療するように前記粒子ビームの前記エネルギーを制御するステップと、
をさらに含み、
前記粒子ビームが前記第2の経路に沿って方向付けられている間、前記粒子ビームは、500ミリ秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を前記ターゲットに照射し、
前記粒子ビームは、前記ターゲットの治療中に前記第1の経路に沿って再び方向付けられることは決してない請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、前記粒子ビームの第2の部分が前記ターゲットに到達することを許しながら前記粒子ビームの第1の部分をブロックするように構成可能であるコリメータを使用して前記粒子ビームの少なくとも一部をブロックするステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記コリメータは、
前記粒子ビームの通過をブロックする材料からなる構造体であって、前記構造体はエッジを画成し、前記エッジは前記エッジの第1の側の前記粒子ビームの前記第1の部分が前記構造体によってブロックされ、前記エッジの第2の側の前記粒子ビームの前記第2の部分が前記構造体によってブロックされないように前記粒子ビームの前記経路内に移動する、構造体と、
前記エッジを画成するように前記構造体を構成するために制御されるリニアモーターであって、前記リニアモーターの各々は移動可能コンポーネントと固定コンポーネントとを備え、前記固定コンポーネントは第1の磁場を発生するための磁場発生器を備え、前記移動可能コンポーネントは1つまたは複数のコイルを備え、このコイルに電流を流すと前記第1の磁場と相互作用する第2の磁場を発生して前記移動可能コンポーネントを前記固定コンポーネントに対して相対的に移動させる、リニアモーターとを備え、
各リニアモーターの前記移動可能コンポーネントは、対応する構造体が前記移動可能コンポーネントによる移動とともに移動するように前記構造体の対応する1つ、に接続されるか、またはその一部である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
粒子ビームを使用してターゲットを治療する方法であって、
前記ターゲットを少なくとも途中まで通る第1の経路に沿って前記粒子ビームを方向付けるステップと、
前記粒子ビームが前記第1の経路に沿って方向付けられている間に前記粒子ビームが前記第1の経路に沿っている前記ターゲットの3次元円柱状部分を治療するように前記粒子ビームのエネルギーを制御するステップと、
前記ターゲットを通る同じ経路に沿って前記粒子ビームを複数回方向付けることなく前記ターゲットを少なくとも途中まで通る複数の異なる経路に対して前記粒子ビームを方向付け、前記エネルギーを制御するステップを繰り返すステップと、
を含み、
前記粒子ビームが前記ターゲットを通る各経路に沿って方向付けられている間、前記粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を前記ターゲットに照射する方法。
【請求項19】
前記粒子ビームの前記エネルギーを制御するステップは、1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして、前記ターゲットと前記粒子ビームの発生源との間の前記粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すステップを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記粒子ビームは、粒子加速器内に収容されている超電導巻線を通る電流に基づく粒子ビームを出力するように構成されている粒子加速器によって生成され、
前記粒子ビームの前記エネルギーを制御するステップは、前記電流を複数の値のうちの1つに設定するステップであって、前記複数の値の各々は前記粒子ビームが前記粒子加速器から出力される異なるエネルギーに対応する、ステップを含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
粒子線治療システムであって、
粒子ビームを生成するための粒子加速器と、
ターゲットを少なくとも途中まで通る経路に沿って前記粒子ビームを方向付けるための走査磁石と、
前記ターゲットを少なくとも途中まで通る複数の経路に沿って前記粒子ビームを方向付けるように前記走査磁石を制御し、前記複数の経路の各々に沿って、前記粒子ビームが前記ターゲットの3次元円柱状部分を治療するように前記粒子ビームのエネルギーを制御するための制御システムと、
を備え、
前記粒子ビームが前記複数の経路の各々に沿って方向付けられている間、前記粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を前記ターゲットに照射する粒子線治療システム。
【請求項22】
前記制御システムは、前記粒子ビームが前記ターゲットを通る各経路に沿って一度だけ方向付けられるように前記走査磁石を制御するように構成される請求項21に記載の粒子線治療システム。
【請求項23】
エネルギー吸収構造体であって、前記エネルギー吸収構造体の各々は前記粒子ビームが前記エネルギー吸収構造体を通過して前記ターゲットに至るときに前記粒子ビームのエネルギーを低減するように構成されている、エネルギー吸収構造体をさらに備え、
前記制御システムは、前記粒子ビームの前記エネルギーを制御することを、1つまたは複数の前記エネルギー吸収構造体を動かして、前記ターゲットと前記粒子ビームの発生源との間の前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すことによって行うように構成される請求項21に記載の粒子線治療システム。
【請求項24】
前記エネルギー吸収構造体は、エネルギー吸収プレートを含む請求項23に記載の粒子線治療システム。
【請求項25】
前記複数の経路のうちの1つの経路について、前記制御システムは、前記粒子ビームが前記経路にある間に、1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すように構成される請求項22に記載の粒子線治療システム。
【請求項26】
前記複数の経路のうちの1つの経路について、前記制御システムは、複数のエネルギー吸収構造体を順次的に動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるように構成される請求項22に記載の粒子線治療システム。
【請求項27】
前記複数の経路のうちの1つの経路について、前記制御システムは、複数のエネルギー吸収構造体を順次的に動かして前記粒子ビームの前記経路から出すように構成される請求項22に記載の粒子線治療システム。
【請求項28】
エネルギー吸収構造体のうちの1つのエネルギー吸収プレートは、前記エネルギー吸収プレートを動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すように制御可能であるリニアモーターを備える請求項22に記載の粒子線治療システム。
【請求項29】
前記複数の経路のうちの1つの経路について、前記制御システムは、100ミリ秒以下の持続時間において1つまたは複数のエネルギー吸収構造体の各々を動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すように構成される請求項22に記載の粒子線治療システム。
【請求項30】
前記複数の経路のうちの1つの経路について、前記制御システムは、50ミリ秒以下の持続時間において前記1つまたは複数のエネルギー吸収構造体の各々を動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すように構成される請求項22に記載の粒子線治療システム。
【請求項31】
前記複数の経路のうちの1つの経路について、前記制御システムは、1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を移動することを、
前記粒子ビームが前記1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を通過して前記ターゲットに到達するまでの間に移動するように前記1つまたは複数のエネルギー吸収構造体のうちの第1のプレートを制御するステップを含む動作を実行することによって行うように構成される請求項22に記載の粒子線治療システム。
【請求項32】
前記粒子加速器は、超電導巻線を備え、前記粒子加速器は、前記超電導巻線を通る電流に基づき前記粒子ビームを生成するように構成され、
前記制御システムは、前記電流を複数の値のうちの1つの値に設定することによって前記粒子ビームの前記エネルギーを制御するように構成され、前記複数の値の各々は前記粒子加速器から出力される前記粒子ビームの異なるエネルギーに対応する請求項21に記載の粒子線治療システム。
【請求項33】
前記制御システムは、前記粒子ビームを制御して、各経路上で、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイを超える線量の放射線を前記ターゲットに照射するように構成される請求項21に記載の粒子線治療システム。
【請求項34】
前記制御システムは、前記粒子ビームを制御して、各経路上で、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイから毎秒100グレイの間に収まる線量の放射線を前記ターゲットに照射するように構成される請求項21に記載の粒子線治療システム。
【請求項35】
前記粒子ビームは、少なくとも2ミリメートルシグマのサイズを有するガウスペンシルビームを含む請求項21に記載の粒子線治療システム。
【請求項36】
前記粒子ビームは、2ミリメートルシグマから20ミリメートルシグマのサイズを有するガウスペンシルビームを含む請求項21に記載の粒子線治療システム。
【請求項37】
前記粒子ビームの第2の部分が前記ターゲットに到達することを許しながら前記粒子ビームの第1の部分をブロックするように構成可能であるコリメータをさらに備える請求項21に記載の粒子線治療システム。
【請求項38】
前記コリメータは、
前記粒子ビームの通過をブロックする材料からなる構造体であって、前記構造体はエッジを画成し、前記エッジは前記エッジの第1の側の前記粒子ビームの前記第1の部分が前記構造体によってブロックされ、前記エッジの第2の側の前記粒子ビームの前記第2の部分が前記構造体によってブロックされないように前記粒子ビームの前記経路内に移動する、構造体と、
前記エッジを画成するように前記構造体を構成するために制御可能であるリニアモーターであって、前記リニアモーターの各々は移動可能コンポーネントと固定コンポーネントとを備え、前記固定コンポーネントは第1の磁場を発生するための磁場発生器を備え、前記移動可能コンポーネントは1つまたは複数のコイルを備え、このコイルに電流を流すと前記第1の磁場と相互作用する第2の磁場を発生して前記移動可能コンポーネントを前記固定コンポーネントに対して相対的に移動させる、リニアモーターとを備え、
各リニアモーターの前記移動可能コンポーネントは、対応する構造体が前記移動可能コンポーネントによる移動とともに移動するように前記構造体の対応する1つ、に接続されるか、またはその一部である請求項37に記載の粒子線治療システム。
【請求項39】
前記制御システムは、前記複数の経路の各々に沿って前記粒子ビームの強度を制御するように構成される請求項21に記載の粒子線治療システム。
【請求項40】
前記粒子ビームの前記強度は、前記複数の経路のうちの少なくとも2つの経路に沿って異なる請求項39に記載の粒子線治療システム。
【請求項41】
粒子線治療システムのための治療計画立案システムを実装するために実行可能である命令を記憶する1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体であって、前記治療計画立案システムは
前記粒子線治療システムおよび前記粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける予測モデルであって、前記予測モデルは少なくとも一部は前記粒子線治療システムが放射線を照射することができるタイミングを特徴付けることによって前記粒子線治療システムを特徴付ける、予測モデルと、
前記放射線の照射の前記タイミングに基づき組織に対する前記放射線の相対的な生物学的効果を特徴付ける相対的生物学的効果比(RBE)モデルと、
前記患者のボクセルへの前記放射線の照射のための線量レジメンを決定する線量計算エンジンであって、前記線量計算エンジンは前記予測モデルおよび前記RBEモデルに基づき前記線量レジメンを決定するように構成される、線量計算エンジンと、
を備える1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項42】
前記線量レジメンでは、前記放射線が前記ボクセルに照射されるべき線量および線量率を指定し、
前記治療計画立案システムは、前記線量計算エンジンによって決定された有効線量を最適化するために線量の照射を順序付けするための命令を生成するシーケンサをさらに備える請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項43】
前記予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項44】
前記予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームの1パルスあたりの最大線量に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項45】
前記予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームを動かすための走査磁石の掃引時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項46】
前記予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーを変更するのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項47】
前記予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーを変更するために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項48】
前記予測モデルは、放射線の線量を調節するための戦略に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項49】
前記予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項50】
前記予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームをコリメートするためのコリメータを構成するのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項51】
前記予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビーム内の粒子のブラッグピークを変更するレンジモジュレータを制御するのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項52】
前記線量計算エンジンは、前記RBEモデルに基づき前記線量レジメンで指定された線量が前記患者の前記ボクセルに照射されるべき時間を決定するように構成される請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項53】
前記線量計算エンジンは、前記ボクセルのうちの1つのボクセルがターゲット組織、非ターゲット組織、またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含むかどうかを決定し、前記ボクセルがターゲット組織、非ターゲット組織、またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含むかどうかに少なくとも一部は基づき前記ボクセルへの放射線の線量率を決定するように構成される請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項54】
前記ターゲット組織は罹患組織を含み、前記非ターゲット組織は健常組織を含む請求項53に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項55】
前記ボクセルが非ターゲット組織のみを含む場合には、前記ボクセルへの放射線の前記線量率を決定するステップは、前記ボクセルに線量を照射しないことを決定するステップを含む請求項53に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項56】
前記ボクセルがターゲット組織またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含む場合には、前記ボクセルへの放射線の前記線量率を決定するステップは、前記ボクセルに超高線量率放射線を照射することを決定するステップを含む請求項53に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項57】
前記超高線量率放射線は、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含む請求項56に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項58】
前記超高線量率放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含む請求項56に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項59】
前記超高線量率放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒40グレイから毎秒120グレイの間に収まる線量の放射線を含む請求項56に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項60】
前記線量レジメンでは、前記放射線が前記ボクセルに照射されるべき線量および線量率を指定し、
前記線量は、前記RBEモデルからの重み係数に基づき決定される等価線量である請求項41に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項61】
前記重み係数は、前記線量が一定持続時間の間に増大することを引き起こす請求項60に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項62】
前記シーケンサは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、前記粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、前記粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、前記粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、前記粒子ビームの前記エネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、前記線量を調節するための戦略、前記粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、前記コリメータを構成するのに要する時間、もしくは前記粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの1つまたは複数に基づき前記線量の照射を順序付けするように構成される請求項42に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項63】
前記シーケンサは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、前記粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、前記粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、前記粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、前記粒子ビームの前記エネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、前記線量を調節するための戦略、前記粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、前記コリメータを構成するのに要する時間、もしくは前記粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの2つまたはそれ以上に基づき前記線量の照射を順序付けするように構成される請求項42に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項64】
前記シーケンサは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、前記粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、前記粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、前記粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、前記粒子ビームの前記エネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、前記線量を調節するための戦略、前記粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、前記コリメータを構成するのに要する時間、もしくは前記粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの3つまたはそれ以上に基づき前記線量の照射を順序付けするように構成される請求項42に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項65】
前記シーケンサは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、前記粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、前記粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、前記粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、前記粒子ビームの前記エネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、前記線量を調節するための戦略、前記粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、前記コリメータを構成するのに要する時間、もしくは前記粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間のすべてに基づき前記線量の照射を順序付けするように構成される請求項42に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項66】
前記ボクセルのうちの1つのボクセルについて、前記シーケンサは、前記ボクセルを少なくとも途中まで通過するカラム内の前記線量のセットの照射を順序付けるように構成され、前記セット内の各線量は超高線量率で照射される請求項42に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項67】
前記ボクセルのうちの1つのボクセルについて、前記シーケンサは、前記ボクセルを少なくとも途中まで通過するカラム内の前記線量のセットの照射を順序付けるように構成され、
前記カラムのうちの1つのカラムについて、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーは、前記粒子ビームが静止している間に変更されるべきである請求項42に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項68】
照射の順序は、前記カラムの治療の後に、前記粒子ビームは、前記カラムを治療するように再び方向付けられることは決してないような順序である請求項67に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項69】
粒子線治療システムのための治療計画立案システムを実装するために実行可能である命令を記憶する1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体であって、前記治療計画立案システムは
前記粒子線治療システムおよび前記粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける予測モデルと、
患者のボクセルへの放射線の照射のための線量レジメンを決定する線量計算エンジンであって、前記線量計算エンジンは前記予測モデルに基づき前記線量レジメンを決定するように構成される、線量計算エンジンと、
を備える1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項70】
前記線量レジメンでは、前記放射線が前記ボクセルに照射されるべき線量および線量率を指定し、
前記治療計画立案システムは、前記線量計算エンジンによって決定された率の線量の照射を順序付けするための命令を生成するシーケンサをさらに備える請求項69に記載の1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【請求項71】
方法であって、
コンピュータメモリ内に、粒子線治療システムおよび前記粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける第1の情報を記憶するステップと、
コンピュータメモリ内に、組織に対する放射線の相対的生物学的効果比を特徴付ける第2の情報を記憶するステップと、
1つまたは複数の処理デバイスによって、前記患者のボクセルに前記放射線を照射するための線量レジメンを決定するステップであって、前記線量レジメンは前記第1の情報および前記第2の情報に基づき決定される、ステップと、
を含む方法。
【請求項72】
前記線量レジメンでは、前記放射線が前記ボクセルに照射されるべき線量および線量率を指定し、
前記方法は、前記線量レジメンで指定された率で線量の照射を順次付けするための命令を生成するステップを含む請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームの1パルスあたりの最大線量に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項71に記載の方法。
【請求項78】
前記第1の情報は、線量を調節するための戦略に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項71に記載の方法。
【請求項79】
前記第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームをコリメートするためにコリメータを動かすのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項71に記載の方法。
【請求項80】
前記第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームをコリメートするためにコリメータを構成するのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項71に記載の方法。
【請求項81】
前記第1の情報は、レンジモジュレータを制御して、粒子加速器によって生成される粒子ビーム内の粒子のブラッグピークを変化させるのに要する時間に基づき前記粒子線治療システムを特徴付ける請求項71に記載の方法。
【請求項82】
前記線量レジメンを決定するステップは、前記第2の情報に基づき前記線量レジメンで指定された線量が前記患者の前記ボクセルに照射されるべき時間を決定するステップを含む請求項71に記載の方法。
【請求項83】
前記線量レジメンを決定するステップは、
前記ボクセルのうちの1つのボクセルがターゲット組織、非ターゲット組織、またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含むかどうかを決定し、前記ボクセルがターゲット組織、非ターゲット組織、またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含むかどうかに少なくとも一部は基づき前記ボクセルへの放射線の線量率を決定するステップを含む請求項71に記載の方法。
【請求項84】
前記ターゲット組織は罹患組織を含み、前記非ターゲット組織は健常組織を含む請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記ボクセルが非ターゲット組織のみを含む場合には、前記ボクセルへの放射線の前記線量率を決定するステップは、前記ボクセルに線量を照射しないことを決定するステップを含む請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記ボクセルがターゲット組織またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含む場合には、前記ボクセルへの放射線の前記線量率を決定するステップは、前記ボクセルに超高線量率放射線を照射することを決定するステップを含む請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記超高線量率放射線は、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含む請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記超高線量率放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含む請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記超高線量率放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒40グレイから毎秒120グレイの間に収まる線量の放射線を含む請求項86に記載の方法。
【請求項90】
前記線量レジメンでは、前記放射線が前記ボクセルに照射されるべき線量および線量率を指定し、
前記線量は、前記第2の情報からの重み係数に基づき決定される等価線量である請求項71に記載の方法。
【請求項91】
前記重み係数は、前記線量が一定持続時間の間に増大することを引き起こす請求項90に記載の方法。
【請求項92】
線量の照射を順序付けするステップは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、前記粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、前記粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、前記粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、前記粒子ビームの前記エネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、前記線量を調節するための戦略、前記粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、前記コリメータを構成するのに要する時間、もしくは前記粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの1つまたは複数に基づく請求項72に記載の方法。
【請求項93】
線量の照射を順序付けするステップは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、前記粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、前記粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、前記粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、前記粒子ビームの前記エネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、前記線量を調節するための戦略、前記粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、前記コリメータを構成するのに要する時間、もしくは前記粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの2つまたはそれ以上に基づく請求項72に記載の方法。
【請求項94】
線量の照射を順序付けするステップは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、前記粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、前記粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、前記粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、前記粒子ビームの前記エネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、前記線量を調節するための戦略、前記粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、前記コリメータを構成するのに要する時間、もしくは前記粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの3つまたはそれ以上に基づく請求項72に記載の方法。
【請求項95】
線量の照射を順序付けするステップは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、前記粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、前記粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、前記粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、前記粒子ビームの前記エネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、前記線量を調節するための戦略、前記粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、前記コリメータを構成するのに要する時間、もしくは前記粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間のすべてに基づく請求項72に記載の方法。
【請求項96】
前記ボクセルのうちの1つのボクセルについて、線量の照射を順序付けするステップは、前記ボクセルを少なくとも途中まで通過するカラム内の前記線量のセットの照射を順序付けするステップであって、前記セット内の各線量は超高線量率で照射される、ステップを含む請求項72に記載の方法。
【請求項97】
前記ボクセルのうちの1つのボクセルについて、線量の照射を順序付けするステップは、前記ボクセルを少なくとも途中まで通過するカラム内の前記線量のセットの照射を順序付けするステップを含み、
前記カラムのうちの1つのカラムについて、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーは、前記粒子ビームが静止している間に変更されるべきである請求項72に記載の方法。
【請求項98】
照射の順序は、前記カラムの治療後、前記粒子ビームが再び前記カラムの治療に方向付けられることが決してないような順序である請求項97に記載の方法。
【請求項99】
方法であって、
コンピュータメモリ内に、粒子線治療システムおよび前記粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける第1の情報を記憶するステップと、
1つまたは複数の処理デバイスによって、患者のボクセルに放射線を照射するための線量レジメンを決定するステップであって、前記線量レジメンは前記第1の情報に基づき決定される、ステップと、
を含む方法。
【請求項100】
前記線量レジメンでは、前記放射線が前記ボクセルに照射されるべき線量および線量率を指定し、
前記方法は、前記線量レジメンで指定された率で線量の照射を順次付けするための命令を生成するステップをさらに含む請求項99に記載の方法。
【請求項101】
システムであって、
患者に照射する放射線を生成するための粒子加速器と、
前記患者への前記放射線の前記照射を制御するための走査システムと、
前記患者のボクセルに前記放射線をどのように照射するかを指定する治療計画を生成するための治療計画立案システムと、
前記治療計画に従って前記患者の前記ボクセルに前記放射線を照射するために前記粒子加速器および前記走査システムを制御する制御システムと、
を備え、
前記治療計画立案システムは、請求項99に記載の方法を実行することによって前記治療計画を生成するようにプログラムされるシステム。
【請求項102】
前記治療計画立案システムは、第1のコンピューティングシステムを備え、前記制御システムは、第2のコンピューティングシステムを備え、前記第1のコンピューティングシステムは、前記第2のコンピューティングシステムと異なる請求項101に記載のシステム。
【請求項103】
前記治療計画立案システムおよび前記制御システムは、同じコンピューティングシステム上に実装される請求項101に記載のシステム。
【請求項104】
方向付けするステップおよび制御するステップは、前記ターゲットの複数の微小体積の各々について実行される請求項1に記載の方法。
【請求項105】
方向付けするステップおよび制御するステップは、前記ターゲットの複数の微小体積の各々について実行される請求項18に記載の方法。
【請求項106】
前記制御システムは、前記ターゲットの微小体積分を治療することを、前記ターゲットを少なくとも途中まで通る複数の経路に沿って前記粒子ビームを方向付けるように前記走査磁石を制御することによって行い、前記粒子ビームの前記エネルギーを制御して前記複数の経路の各々に沿って、前記粒子ビームが前記ターゲットの3次元円柱状部分を治療するように構成される請求項21に記載の粒子線治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月8日に出願した米国仮特許出願第62/815,721号、名称「Delivery Of Radiation By Column」の優先権および利益を主張するものである。本出願は、2019年5月28日に出願した米国仮特許出願第62/853,387号、名称「Energy Degrader Including Boron Carbide」の優先権および利益を主張するものである。本出願は、2019年8月21日に出願した米国仮特許出願第62/889,825号、名称「Generating A Treatment Plan」の優先権および利益を主張するものである。本出願は、2019年8月21日に出願した米国仮特許出願第62/889,861号、名称「Collimator For A Particle Therapy System」の優先権および利益を主張するものである。米国仮特許出願第62/815,721号、同第62/853,387号、同第62/889,825号、および同第62/889,861号の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、カラム(column)別に放射線量を照射する粒子線治療システム、およびそのための治療計画を生成することに関する。
【背景技術】
【0003】
粒子線治療システムは、加速器を使用して、腫瘍などの苦痛を治療するための粒子ビームを発生する。動作時に、粒子は、磁場の存在下で空洞内の軌道に沿って加速され、引き出しチャネルを通して空洞から取り出される。磁場再生器は、空洞の外側の近くに磁場バンプを生成していくつかの軌道のピッチおよび角度を歪め、これらの軌道が引き出しチャネルの方へ移動し、最終的に引き出しチャネル内に入るようにする。粒子からなるビームは、引き出しチャネルを出る。
【0004】
走査システムは、引き出しチャネルのビーム下流側(down-beam)にある。この例において、「ビーム下流」は、引き出しチャネルに対して相対的に照射ターゲットにより近いことを示唆している。走査システムは、粒子ビームを照射ターゲットに対して相対的に動かし、照射ターゲットの様々な部分を粒子ビームに曝す。たとえば、腫瘍を治療するために、粒子ビームが腫瘍の異なる断面にわたって走査されるものとしてよく、それにより異なる部分を放射線に曝す。
【0005】
粒子線治療システムは、典型的には、治療計画に従って動作する。治療計画では、ほかにもあるがとりわけ、粒子線治療システムによって患者に照射されるべき放射線線量を指定し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,791,656号明細書
【特許文献2】米国特許第9,723,705号号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0128746号号明細書
【特許文献4】米国特許第7,728,311号号明細書
【特許文献5】米国特許第9,730,308号号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
粒子ビームを使用してターゲットを治療する例示的な方法は、ターゲットを少なくとも途中まで通る経路に沿って粒子ビームを向けることと、粒子ビームが経路に沿って配置されているターゲットの少なくとも内部部分を治療するように粒子ビームが経路に沿って方向付けられている間に粒子ビームのエネルギーを制御することとを含む。粒子ビームが経路に沿って方向付けられている間、粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線をターゲットに照射する。例示的な方法は、次の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0008】
方向付けおよび制御は、ターゲットの複数の微小体積の各々に対して実行され得る。粒子ビームのエネルギーを制御することは、1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして、ターゲットと粒子ビームの発生源との間の粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すことを含み得る。1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すことは、粒子ビームが経路に沿って方向付けられている間に実行され得る。1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すことは、複数のエネルギー吸収プレートを順次的に動かして粒子ビームの経路内に入れることを含み得る。1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すことは、複数のエネルギー吸収プレートを順次的に動かして粒子ビームの経路から出すことを含み得る。1つまたは複数のエネルギー吸収プレートのうちの1つのエネルギー吸収プレートは、エネルギー吸収プレートを動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すように制御可能であるリニアモーターを備え得る。1つまたは複数のエネルギー吸収プレートの各々は、100ミリ秒以下の持続時間において粒子ビームの経路内に入るか、またはそこから出るように移動可能であってよい。1つまたは複数のエネルギー吸収プレートの各々は、50ミリ秒以下の持続時間において粒子ビームの経路内に入るか、またはそこから出るように移動可能であってよい。1つまたは複数のエネルギー吸収プレートの各々は、10ミリ秒以下の持続時間において粒子ビームの経路内に入るか、またはそこから出るように移動可能であってよい。1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すことは、粒子ビームが1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを通過してターゲットに到達するまでの間に1つまたは複数のエネルギー吸収プレートのうちの第1のプレートを移動するように制御することを含み得る。第1のプレートがあることは、ビーム場の少なくとも一部を横切って移動するように構成され、制御可能であってよい。ビーム場は、粒子ビームがターゲットに対して相対的に移動できる最大範囲を画成する平面に対応し得る。
【0009】
粒子ビームは、粒子加速器内に収容されている超電導巻線を通る電流に基づく粒子ビームを出力するように構成されている粒子加速器によって生成され得る。粒子ビームのエネルギーを制御することは、電流を複数の値のうちの1つの値に設定することを含み得る。複数の値の各々は、粒子加速器から出力される粒子ビームの異なるエネルギーに対応し得る。粒子ビームが経路に沿って方向付けられている間、粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイを超える線量の放射線をターゲットに照射し得る。粒子ビームが経路に沿って方向付けられている間、粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイから毎秒100グレイの間の線量の放射線をターゲットに照射し得る。粒子ビームが経路に沿って方向付けられている間、粒子ビームは、毎秒40グレイから毎秒120グレイの間の線量の放射線をターゲットに照射し得る。毎秒40から120グレイの線量は、5秒未満であってもよい。粒子ビームが経路に沿って方向付けられている間、粒子ビームは、500ms未満の持続時間において、10msから5sの間の持続時間において、または5s未満の持続時間において、毎秒100グレイ、毎秒200グレイ、毎秒300グレイ、毎秒400グレイ、または毎秒500グレイの線量のうちの1つまたは複数を超える線量の放射線をターゲットに照射するものとしてよい。粒子ビームは、少なくとも2ミリメートルシグマのサイズを有するガウスペンシルビームであってよい。粒子ビームは、2ミリメートルシグマから20ミリメートルシグマの間のサイズを有するガウスペンシルビームであってよい。
【0010】
経路は第1の経路であってよく、方法は第1の経路と異なるターゲットの少なくとも途中まで通る第2の経路に沿って粒子ビームを方向付けることを含み得る。方法は、粒子ビームが第2の経路に沿って方向付けられている間に粒子ビームが第2の経路に沿って配置されているターゲットの部分を治療するように粒子ビームのエネルギーを制御することを含み得る。たとえば、第1および第2の経路は、ターゲットを最後までまたは途中まで貫通するカラムであってよい。粒子ビームが第2の経路に沿って方向付けられている間、粒子ビームは、500ミリ秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線をターゲットに照射し得る。粒子ビームは、いくつかの例では、ターゲットの治療中に第1の経路に沿って再度方向付けられることはない。
【0011】
方法は、粒子ビームの第2の部分がターゲットに到達することを許しながら粒子ビームの第1の部分をブロックするように構成可能であるコリメータを使用して粒子ビームの少なくとも一部をブロックすることを含み得る。コリメータは、粒子ビームの通過をブロックする材料からなる構造体を含み得る。構造体は、エッジの第1の側の粒子ビームの第1の部分が構造体によってブロックされ、エッジの第2の側の粒子ビームの第2の部分が構造体によってブロックされないように、粒子ビームの経路内に移動して入るエッジを画成し得る。コリメータは、エッジを画成するように構造体を構成するように制御されるリニアモーターを備え得る。リニアモーターの各々は移動可能コンポーネントと固定コンポーネントとを備え得る。固定コンポーネントは、第1の磁場を発生するための磁場発生器を備え得る。移動可能コンポーネントは、1つまたは複数のコイルを備えるものとしてよく、このコイルに電流を流すと第1の磁場と相互作用する第2の磁場を発生して移動可能コンポーネントを固定コンポーネントに相対的に移動させる。各リニアモーターの移動可能コンポーネントは、対応する構造体が移動可能コンポーネントによる移動とともに移動するように構造体のうちの対応する1つの構造体、に接続されるか、またはその一部であるものとしてよい。
【0012】
粒子ビームを使用してターゲットを治療する例示的な方法は、ターゲットを少なくとも途中まで通る第1の経路に沿って粒子ビームを方向付けることと、粒子ビームが第1の経路に沿って方向付けられている間に粒子ビームが第1の経路に沿っているターゲットの3次元円柱状部分を治療するように粒子ビームのエネルギーを制御することと、ターゲットを通る同じ経路に沿って粒子ビームを複数回方向付けることなく、ターゲットを少なくとも途中まで通る複数の異なる経路に対して粒子ビームを方向付けることおよびエネルギーを制御することを繰り返すこと、とを含む。粒子ビームがターゲットを通る各経路に沿って方向付けられている間、粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線をターゲットに照射し得る。例示的な方法は、次の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0013】
方向付けおよび制御は、ターゲットの複数の微小体積の各々に対して実行され得る。粒子ビームのエネルギーを制御することは、1つまたは複数のエネルギー吸収プレートを動かして、ターゲットと粒子ビームの発生源との間の粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すことを含み得る。粒子ビームは、粒子加速器内に収容されている超電導巻線を通る電流に基づく粒子ビームを出力するように構成されている粒子加速器によって生成され得る。粒子ビームのエネルギーを制御することは、電流を複数の値のうちの1つの値に設定することを含み得る。複数の値の各々は、粒子加速器から出力される粒子ビームの異なるエネルギーに対応し得る。
【0014】
例示的な粒子線治療システムは、粒子ビームを生成するための粒子加速器と、ターゲットを少なくとも途中まで通る経路に沿って粒子ビームを方向付けるための走査磁石と、ターゲットを少なくとも途中まで通る複数の経路に沿って粒子ビームを方向付けるように走査磁石を制御し、複数の経路の各々に沿って、粒子ビームがターゲットの3次元円柱状部分を治療するように粒子ビームのエネルギーを制御するための制御システムとを備える。粒子ビームが複数の経路の各々に沿って方向付けられている間、粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線をターゲットに照射する。例示的なシステムは、次の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0015】
制御システムは、粒子ビームがターゲットを通る各経路に沿って一度だけ方向付けられるように走査磁石を制御するように構成され得る。システムは、エネルギー吸収構造体を含むものとしてよく、その各々は、粒子ビームがエネルギー吸収構造体を通過してターゲットに至るときに粒子ビームのエネルギーを低減するように構成され得る。制御システムは、粒子ビームのエネルギーを制御することを、エネルギー吸収構造体の1つまたは複数を動かして、ターゲットと粒子ビームの発生源との間の粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すことによって行うように構成され得る。エネルギー吸収構造体は、エネルギー吸収プレートを含み得る。制御システムは、ターゲットの微小体積分を治療することを、ターゲットを少なくとも途中まで通る複数の経路に沿って粒子ビームを方向付けるように走査磁石を制御することによって行い、粒子ビームのエネルギーを制御して複数の経路の各々に沿って粒子ビームがターゲットの3次元円柱状部分を治療するように構成され得る。
【0016】
方向付けられる粒子ビームが辿る複数の経路のうちの1つの経路について、制御システムは、粒子ビームがその経路にある間に、1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すように構成され得る。複数の経路のうちの1つの経路について、制御システムは、複数のエネルギー吸収構造体を順次的に動かして粒子ビームの経路内に入れるように構成され得る。複数の経路のうちの1つの経路について、制御システムは、複数のエネルギー吸収構造体を順次的に動かして粒子ビームの経路から出すように構成され得る。エネルギー吸収構造体のうちの1つのエネルギー吸収プレートは、エネルギー吸収プレートを動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すように制御可能であるリニアモーターを備え得る。複数の経路のうちの1つの経路について、制御システムは、100ミリ秒以下の持続時間において1つまたは複数のエネルギー吸収構造体の各々を動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すように構成され得る。複数の経路のうちの1つの経路について、制御システムは、50ミリ秒以下の持続時間において1つまたは複数のエネルギー吸収構造体の各々を動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すように構成され得る。複数の経路のうちの1つの経路について、制御システムは、粒子ビームが1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を通過してターゲットに至るときに1つまたは複数のエネルギー吸収構造体のうちの第1のプレートを移動するように制御することを含む動作を実行することによって、1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を移動するように構成され得る。
【0017】
粒子加速器は、超電導巻線を備え得る。粒子加速器は、超電導巻線を通る電流に基づき粒子ビームを生成するように構成され得る。制御システムは、電流を複数の値のうちの1つの値に設定することによって粒子ビームのエネルギーを制御するように構成され得る。複数の値の各々は、粒子加速器から出力される粒子ビームの異なるエネルギーに対応し得る。制御システムは、粒子ビームを制御して、各経路上で、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイを超える線量の放射線をターゲットに照射するように構成され得る。制御システムは、粒子ビームを制御して、各経路上で、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイから毎秒100グレイの間に収まる線量の放射線をターゲットに照射するように構成され得る。制御システムは、粒子ビームを制御して、各経路上で、指定された持続時間において毎秒40グレイから毎秒120グレイの間に収まる線量の放射線をターゲットに照射するように構成され得る。
【0018】
粒子ビームは、少なくとも2ミリメートルシグマのサイズを有するガウスペンシルビームであってよい。粒子ビームは、2ミリメートルシグマから20ミリメートルシグマの間のサイズを有するガウスペンシルビームであってよい。
【0019】
粒子線治療システムは、粒子ビームの第2の部分がターゲットに到達することを許しながら粒子ビームの第1の部分をブロックするように構成可能であるコリメータを備え得る。コリメータは、粒子ビームの通過をブロックする材料からなる構造体を含み得る。構造体は、エッジの第1の側の粒子ビームの第1の部分が構造体によってブロックされ、エッジの第2の側の粒子ビームの第2の部分が構造体によってブロックされないように、粒子ビームの経路内に移動して入るエッジを備え得る。コリメータは、エッジを画成するように構造体を構成するように制御可能であるリニアモーターを備え得る。リニアモーターの各々は移動可能コンポーネントと固定コンポーネントとを備え得る。固定コンポーネントは、第1の磁場を発生するための磁場発生器を備え得る。移動可能コンポーネントは、1つまたは複数のコイルを備えるものとしてよく、このコイルに電流を流すと第1の磁場と相互作用する第2の磁場を発生して移動可能コンポーネントを固定コンポーネントに相対的に移動させる。各リニアモーターの移動可能コンポーネントは、対応する構造体が移動可能コンポーネントによる移動とともに移動するように構造体のうちの対応する1つの構造体、に接続されるか、またはその一部であるものとしてよい。
【0020】
制御システムは、複数の経路の各々に沿って粒子ビームの強度を制御するように構成され得る。粒子ビームの強度は、複数の経路のうちの少なくとも2つに沿って異なっていてもよい。
【0021】
粒子線治療システムは、粒子ビームのブラッグピークを拡大するためのリッジフィルタを備え得る。粒子線治療システムは、粒子ビームのブラッグピークを拡大するためのレンジモジュレータホイールを備え得る。レンジモジュレータホイールは、粒子ビームの動きを追跡するために少なくとも2次元で動くように構成され得る。制御システムは、粒子ビームがレンジモジュレータホイールに当たるときに粒子ビームの強度を制御するように構成され得る。
【0022】
一例では、1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体が、粒子線治療システムのための例示的治療計画システムを実装するために実行可能である命令を記憶する。治療計画立案システムは、粒子線治療システムおよび粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける予測モデルを含む。予測モデルは、少なくとも一部は、粒子線治療システムが放射線を照射することができるタイミングを特徴付けることによって粒子線治療システムを特徴付ける。治療計画立案システムは、放射線の照射のタイミングに基づき組織に対する放射線の相対的な生物学的効果を特徴付ける相対的生物学的効果比(RBE)モデルと、患者のボクセルに放射線を照射するための線量レジメンを決定する線量計算エンジンとを備える。線量計算エンジンは、予測モデルおよびRBEモデルに基づき線量レジメンを決定するように構成される。治療計画立案システムは、次の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0023】
線量レジメンでは、ボクセルに照射されるべき放射線の線量および線量率を指定してもよい。治療計画立案は、線量計算エンジンによって決定された有効線量を最適化するために線量の照射を順序付けするための命令を生成するシーケンサを含み得る。
【0024】
予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームの1パルスあたりの最大線量に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。予測モデルは、1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かして粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。予測モデルは、放射線量を調節するための戦略に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。予測モデルは、コリメータを動かして、粒子加速器によって生成される粒子ビームをコリメートするのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。予測モデルは、粒子加速器によって生成される粒子ビームをコリメートするようにコリメータを構成するのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。予測モデルは、レンジモジュレータを制御して、粒子加速器によって生成される粒子ビーム内の粒子のブラッグピークを変化させるのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。
【0025】
線量計算エンジンは、RBEモデルに基づき線量レジメンで指定された線量が患者のボクセルに照射される時間を決定するように構成され得る。線量計算エンジンは、それらのボクセルのうちの1つのボクセルがターゲット組織、非ターゲット組織、またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含むかどうかを決定し、ボクセルがターゲット組織、非ターゲット組織、またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含むかどうかに少なくとも一部は基づきボクセルへの放射線の線量率を決定するように構成され得る。ターゲット組織は罹患組織を含み、非ターゲット組織は健常組織を含むものとしてよい。ボクセルが非ターゲット組織のみを含む場合には、ボクセルへの放射線の線量率を決定することは、ボクセルに線量を照射しないことを決定することを含み得る。ボクセルがターゲット組織またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含む場合には、ボクセルへの放射線の線量率を決定することは、ボクセルに超高線量率放射線を照射することを決定することを含み得る。
【0026】
超高線量率放射線は、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含み得る。超高線量率放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含み得る。超高線量率放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒40グレイから毎秒120グレイの間に収まる線量の放射線を含み得る。
【0027】
線量レジメンでは、ボクセルに照射されるべき放射線の線量および線量率を指定してもよい。これらの線量は、RBEモデルからの重み係数に基づき決定される等価線量を含み得る。この重み係数により線量は一定の持続時間の間に高くなり得る。
【0028】
シーケンサは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、線量を調節するための戦略、粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、コリメータを構成するのに要する時間、もしくは粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの1つまたは複数に基づき、またはそれらの2つ以上に基づき、またはそれらのうちの3つ以上に基づき、またはそれらのうちの4つ以上に基づき、またはそれらのうちの5つ以上に基づき、またはそれらのすべてに基づき、線量の照射を順序付けるように構成される。
【0029】
それらのボクセルのうちの1つのボクセルについて、シーケンサは、ボクセルを少なくとも途中まで通過するカラム内の線量のセットの照射を順序付けるように構成され得る。ボクセルは、放射線のカラムを使用して治療される照射ターゲットの微小体積であるか、そのような微小体積の一部であるか、または複数のそのような微小体積を含み得る。セット内の各線量は、超高線量率で照射され得る。それらのカラムのうちの1つのカラムについて、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーが、粒子ビームが静止している間に変更され得る。照射の順序は、カラムの治療後、粒子ビームが再びカラムの治療に方向付けられることがないような順序であるものとしてよい。
【0030】
一例では、1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体が、粒子線治療システムのための例示的治療計画システムを実装するために実行可能である命令を記憶する。治療計画立案システムは、粒子線治療システムおよび粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける予測モデルと、患者のボクセルへの放射線の照射のための線量レジメンを決定する線量計算エンジンとを含む。線量計算エンジンは、予測モデルに基づき線量レジメンを決定するように構成され得る。治療計画立案システムは、前記の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。治療計画立案システムは、次の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0031】
線量レジメンでは、ボクセルに照射されるべき放射線の線量および線量率を指定してもよい。治療計画立案システムは、線量計算エンジンによって決定された率で線量の照射を順序付けするための命令を生成するシーケンサを含み得る。
【0032】
例示的な一方法は、コンピュータメモリ内に、粒子線治療システムおよび粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける第1の情報を記憶することを含む。この方法は、コンピュータメモリ内に、組織への放射線の相対的生物学的効果比を特徴付ける第2の情報を記憶することを含む。この方法は、1つまたは複数の処理デバイスによって、患者のボクセルに放射線を照射するための線量レジメンを決定することも含む。線量レジメンは、第1の情報および第2の情報に基づき決定され得る。方法は、次の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0033】
線量レジメンでは、ボクセルに照射されるべき放射線の線量および線量率を指定してもよい。方法は、線量レジメンで指定された率で線量の照射を順次付けするための命令を生成することを含み得る。
【0034】
第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームの1パルスあたりの最大線量に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。第1の情報は、1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かして粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。第1の情報は、線量を調節するための戦略に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。第1の情報は、コリメータを動かして、粒子加速器によって生成される粒子ビームをコリメートするのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。第1の情報は、粒子加速器によって生成される粒子ビームをコリメートするようにコリメータを構成するのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。第1の情報は、レンジモジュレータを制御して、粒子加速器によって生成される粒子ビーム内の粒子のブラッグピークを変化させるのに要する時間に基づき粒子線治療システムを特徴付け得る。
【0035】
線量レジメンを決定することは、第2の情報に基づき線量レジメンで指定された線量が患者のボクセルに照射される時間を決定することを含み得る。線量レジメンを決定することは、それらのボクセルのうちの1つのボクセルがターゲット組織、非ターゲット組織、またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含むかどうかを決定することと、ボクセルがターゲット組織、非ターゲット組織、またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含むかどうかに少なくとも一部は基づきボクセルへの放射線の線量率を決定することとを含み得る。ターゲット組織は罹患組織を含み、非ターゲット組織は健常組織を含むものとしてよい。ボクセルが非ターゲット組織のみを含む場合には、ボクセルへの放射線の線量率を決定することは、ボクセルに線量を照射しないことを決定することを含み得る。ボクセルがターゲット組織またはターゲット組織と非ターゲット組織の両方を含む場合には、ボクセルへの放射線の線量率を決定することは、ボクセルに超高線量率放射線を照射することを決定することを含み得る。
【0036】
超高線量率放射線は、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含み得る。超高線量率放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含み得る。超高線量率放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒40グレイから毎秒120グレイの間に収まる線量の放射線を含み得る。
【0037】
線量レジメンでは、ボクセルに照射されるべき放射線の線量および線量率を指定してもよい。これらの線量は、第2の情報からの重み係数に基づき決定される等価線量を含み得る。この重み係数により線量は一定の持続時間の間に高くなり得る。
【0038】
線量の照射を順序付けすることは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、線量を調節するための戦略、粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、コリメータを構成するのに要する時間、もしくは粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの1つまたは複数、またはそれらのうちの2つ以上、またはそれらのうちの3つ以上、またはそれらのうちの4つ以上、またはそれらのうちの5つ以上、またはそれらのすべてに基づく。
【0039】
それらのボクセルのうちの1つのボクセルについて、線量の照射を順序付けすることは、ボクセルを少なくとも途中まで通過するカラム内の線量のセットの照射を順序付けることを含み得る。セット内の各線量は、超高線量率で照射され得る。それらのカラムのうちの1つのカラムについて、粒子加速器によって生成される粒子ビームのエネルギーが、粒子ビームが静止している間に変更され得る。照射の順序は、カラムの治療後、粒子ビームが再びカラムの治療に方向付けられることがないような順序であるものとしてよい。
【0040】
例示的な一方法は、コンピュータメモリ内に、粒子線治療システムおよび粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける第1の情報を記憶することと、1つまたは複数の処理デバイスによって、患者のボクセルに放射線を照射するための線量レジメンを決定することとを含む。線量レジメンは、第1の情報に基づき決定され得る。方法は、次の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて含み得る。
【0041】
線量レジメンでは、ボクセルに照射されるべき放射線の線量および線量率を指定してもよい。方法は、線量レジメンで指定された率で線量の照射を順次付けするための命令を生成することを含み得る。
【0042】
例示的なシステムは、患者に照射する放射線を生成するための粒子加速器と、患者への放射線の照射を制御するための走査システムと、患者のボクセルに放射線をどのように照射するかを指定する治療計画を生成するための治療計画立案システムと、治療計画に従って患者のボクセルに放射線を照射するために粒子加速器および走査システムを制御する制御システムとを備える。
【0043】
治療計画立案システムは、治療計画を生成することを、コンピュータメモリ内に、粒子線治療システムおよび粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける第1の情報を記憶する動作と、コンピュータメモリ内に、組織への放射線の相対的生物学的効果比を特徴付ける第2の情報を記憶する動作と、1つまたは複数の処理デバイスによって、患者のボクセルに放射線を照射するための線量レジメンを決定する動作であって、線量レジメンは、第1の情報および第2の情報に基づき決定される、動作とを実行することによって行うようにプログラムされ得る。
【0044】
治療計画立案システムは、治療計画を生成することを、コンピュータメモリ内に、粒子線治療システムおよび粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける第1の情報を記憶する動作と、1つまたは複数の処理デバイスによって、患者のボクセルに放射線を照射するための線量レジメンを決定する動作であって、線量レジメンは、第1の情報に基づき決定される、動作とを実行することによって行うようにプログラムされ得る。
【0045】
治療計画立案システムは、粒子線治療システムおよび粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける予測モデルを含み得る。予測モデルは、少なくとも一部は、粒子線治療システムが放射線を照射することができるタイミングを特徴付けることによって粒子線治療システムを特徴付ける。治療計画立案システムは、放射線の照射のタイミングに基づき組織に対する放射線の相対的な生物学的効果を特徴付ける相対的生物学的効果比(RBE)モデルと、患者のボクセルに放射線を照射するための線量レジメンを決定する線量計算エンジンとを備える。線量計算エンジンは、予測モデルおよびRBEモデルに基づき線量レジメンを決定するように構成される。
【0046】
治療計画立案は、線量計算エンジンによって決定された有効線量を最適化するために線量の照射を順序付けするための命令を生成するシーケンサも含み得る。
【0047】
治療計画立案システムは、粒子線治療システムおよび粒子線治療システムによって治療される患者を特徴付ける予測モデルと、患者のボクセルへの放射線の照射のための線量レジメンを決定する線量計算エンジンとを含み得る。線量計算エンジンは、予測モデルに基づき線量レジメンを決定するように構成され得る。
【0048】
治療計画立案は、線量計算エンジンによって決定された有効線量を最適化するために線量の照射を順序付けするための命令を生成するシーケンサも含み得る。
【0049】
治療計画立案システムは、第1のコンピューティングシステムを含むものとしてよく、制御システムは、第2のコンピューティングシステムを含むものとしてよく、第1のコンピューティングシステムは、第2のコンピューティングシステムと異なっていてもよい。治療計画立案システムおよび制御システムは、同じコンピューティングシステム上に実装されてよい。この例示的なシステムは、限定はしないが、上のこの発明の概要の節で述べられているものを含む本明細書において説明されている特徴のうちのいずれかを含み得る。
【0050】
この発明の概要の節で説明されているものを含む、本開示で説明されている特徴のうちの2つまたはそれ以上を組み合わせることで、本明細書では具体的に説明されていない実装形態を形成し得る。
【0051】
本明細書で説明されている様々なシステム、またはその一部の制御は、1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体に記憶され、1つまたは複数の処理デバイス(たとえば、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイなどのプログラムされたロジック、または同様のもの)上で実行可能である命令を収めたコンピュータプログラム製品を介して実装され得る。本明細書で説明されているシステム、またはその一部は、1つまたは複数の処理デバイスおよび述べられている機能の制御を実装する実行可能命令を記憶するためのコンピュータメモリを含み得る装置、方法、または電子システムとして実装され得る。
【0052】
1つまたは複数の実装形態の詳細は、添付図面と以下の説明とで述べられる。他の特徴、目的、および利点は、説明と図面、さらには特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】粒子ビームを層全体にわたって順次走査することによって治療される例示的な照射ターゲットの斜視図である。
図2】粒子ビームをターゲットを横切ってカラム毎に走査することによって治療される例示的な照射ターゲットの斜視図である。
図3】本明細書において説明されている粒子線治療システムにおいて使用可能である例示的な粒子加速器の一部の破断図である。
図4】本明細書において説明されている粒子線治療システムにおいて使用可能である例示的な走査システムのコンポーネントの側面図である。
図5】本明細書において説明されている粒子線治療システムにおいて使用可能である例示的な走査システムのコンポーネントの斜視図である。
図6図4および図5に示されている種類の走査システムで使用するための例示的な磁石の正面図である。
図7図4および図5に示されている種類の走査システムで使用するための例示的な磁石の斜視図である。
図8図4および図5に示されている種類の走査システムで使用するための例示的なエネルギーデグレーダ(レンジモジュレータ)の斜視図である。
図9】エネルギーデグレーダのプレートを動かして粒子ビームの経路内に入れ、そこから出すためのプロセスの斜視図である。
図10】例示的なリニアモーターとそれによって制御されるエネルギーデグレーダの例示的なプレートのブロック図である。
図11】粒子ビームをターゲットを横切ってカラム毎に走査することによって照射ターゲットを治療するための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図12】エネルギー吸収プレートを順次的に動かして固定粒子ビームの経路内に入れることによって照射ターゲットのカラムの治療を例示する斜視ブロック図である。
図13】エネルギー吸収プレートを順次的に動かして固定粒子ビームの経路内に入れることによって照射ターゲットのカラムの治療を例示する斜視ブロック図である。
図14】エネルギー吸収プレートを順次的に動かして固定粒子ビームの経路内に入れることによって照射ターゲットのカラムの治療を例示する斜視ブロック図である。
図15】エネルギー吸収プレートを順次的に動かして固定粒子ビームの経路内に入れることによって照射ターゲットのカラムの治療を例示する斜視ブロック図である。
図16】エネルギー吸収プレートを順次的に動かして固定粒子ビームの経路から出すことによって照射ターゲットのカラムの治療を例示する斜視ブロック図である。
図17】エネルギー吸収プレートを順次的に動かして固定粒子ビームの経路から出すことによって照射ターゲットのカラムの治療を例示する斜視ブロック図である。
図18】エネルギー吸収プレートを順次的に動かして固定粒子ビームの経路から出すことによって照射ターゲットのカラムの治療を例示する斜視ブロック図である。
図19】エネルギー吸収プレートを順次的に動かして固定粒子ビームの経路から出すことによって照射ターゲットのカラムの治療を例示する斜視ブロック図である。
図20】本明細書で説明されている例示的な構成可能コリメータとともに使用可能である例示的な構成可能コリメータの斜視図である。
図21】照射ターゲットの治療領域に対して位置決めされた構成可能コリメータリーフの上面図である。
図22】例示的な構成可能コリメータの斜視図である。
図23】例示的な構成可能コリメータの正面図である。
図24】その内部を示すために透けて見えるように描かれているコンポーネントを有する例示的な構成可能コリメータの斜視図である。
図25】粒子療法治療の際に患者に対して位置決めされた例示的な構成可能コリメータの斜視図である。
図26】例示的な粒子線治療システムの正面図である。
図27】例示的な粒子線治療システムの斜視図である。
図28】例示的な粒子線治療システムの斜視図である。
図29】粒子ビームのエネルギーを変更するためにエネルギーデグレーダにおいて使用される異なる材料、異なる粒子ビームエネルギーに対する粒子ビームスポットサイズの変化を示すグラフである。
図30】例示的な治療計画立案システムのコンポーネントを示すブロック図である。
図31】患者のボクセルの断面図である。
図32】例示的な拡大ブラッグピーク(SOBP)および例示的な照射ターゲットの一部であるカラムを示す図である。
図33】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図34】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図35】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図36】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図37】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図38】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図39】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図40】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図41】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図42】微小体積により照射ターゲットのカラムを治療するための例示的なプロセスを示す斜視ブロック図である。
図43A】治療体積に照射される放射線量を計算するモンテカルロシミュレーションの結果およびその線量計算において各ボクセルが最終線量に達するのに要する時間を示すプロットである。
図43B】治療体積に照射される放射線量を計算するモンテカルロシミュレーションの結果およびその線量計算において各ボクセルが最終線量に達するのに要する時間を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
様々な図面内の類似の参照記号は、類似の要素を示す。
【0055】
本明細書において説明されるのは、粒子線治療システムのための治療計画立案システムの例示的な実装形態である。例示的な治療計画では、放射線を使用して患者を治療するための線量レジメンを指定する。線量レジメンは、照射されるべき線量、「線量率」と呼ばれる線量が照射される率、または照射されるべき線量および線量率の両方を含み得る。線量レジメンにおける線量は、単に治療中に照射される放射線の量を含み得る。線量レジメンにおける線量は、「等価線量」とも呼ばれる、生物学的等価線量を含み得る。生物学的等価線量は、堆積される放射線に対する患者体内の組織の生物学的効果を考慮して患者体内の罹患組織を治療するために必要な出力される一定量の放射線を含み得る。いくつかの実装形態において、治療計画立案システムは、ボクセルと呼ばれる患者体内の3次元治療体積にいくつかの線量率の放射線を施す命令を生成するために使用され得る。治療計画立案システムの全部または一部は、1つまたは複数の処理デバイス上で、1つまたは複数の非一時的な機械可読記憶媒体に記憶され、そこから取り出される、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行することによって実装され得る。
【0056】
本明細書において説明されている例示的な治療計画立案システムおよびその変更形態は、超高線量率の放射線--いわゆる「FLASH」線量率の放射線--を照射ターゲットに施す命令を生成するために使用され得る。この点で、放射線治療の実験結果は、超高(FLASH)線量率で治療線量が照射されたときに放射線を受ける健康組織の状態が改善されることを示している。たとえば、10~20グレイ(Gy)の放射線の線量を500ミリ秒(ms)未満のパルスで照射し、毎秒20から100グレイの実効線量率に達するときに、同じ線量をより長い時間スケールで照射したときに比べて、健常組織の損傷が少なく、腫瘍は類似の有効性で治療される。この「FLASH効果」を説明し得る理論は、組織への放射線損傷は、組織内の酸素供給量に比例するという事実に基づく。健常組織では、超高線量率では、より長い時間スケールにわたって酸素を複数回ラジカル化する線量用途とは反対に、酸素は一度だけラジカル化される。これにより、超高線量率を使用する健常組織内の損傷が少なくなる可能性がある。
【0057】
一例において、治療計画立案システムは、「予測モデル」と呼ばれる予測的な加速器依存のタイミングモデルと、時間依存相対的生物学的効果比(RBE)モデルと、たとえば超高線量(FLASH)率で放射線を照射することによって生じ得る時間依存RBE効果を組み込む線量計算エンジンと、最適化された超高線量率(または他の)線量レジメンを生成するために粒子ビーム照射を順序付けするシーケンサまたはオプティマイザとを含む。この例では、治療計画立案システムは、少なくとも一部はソフトウェアを使用して実装され、提案されたビーム照射については、照射ターゲット内の任意の所与の体積に任意の線量が照射される時間を決定するように構成される--たとえば、記述されるか、またはプログラムされる。
【0058】
予測モデルは、患者に放射線を照射する粒子線治療システムのコンポーネントを特徴付けるか、またはモデル化する。たとえば、予測モデルは、超高線量の放射線を供給するのに必要な時間内に一連のスポットまたはカラムの放射線を照射することができるシステムの機能を含む、粒子線治療システムのコンポーネントを特徴付け得る。予測モデルは、また、患者および患者の腫瘍などの治療ターゲットを特徴付けるか、またはモデル化し得る。予測モデルは、1つまたは複数のコンピュータプログラミングオブジェクト、1つまたは複数のルックアップテーブル(LUT)、配列、リスト、もしくは二分木などのデータ構造、または任意の適切なソフトウェアモデルを使用して実装され得る。
【0059】
RBEモデルは、時間依存方式で組織上の放射線の相対的生物学的効果比を特徴付けるものである。言い換えると、RBEモデルは、組織上の放射線の相対的生物学的効果比を、その組織への放射線照射のタイミングに基づき特徴付ける。たとえば、超高(FLASH)線量率で放射線が印加されるときに、健常組織の損傷は、その同じ組織が同じ線量をより長い時間スケールで照射されたときに比べて少なく、腫瘍は類似の有効性で治療される。言い換えると、腫瘍または他の罹患組織については、治療に対する臨界因子は、線量率とは反対に全放射線量であり、一方、健常組織については、線量率は、損傷が望まれないところで損傷を減らす因子である。RBEモデルは、異なる種類の健常組織および罹患組織に関する情報、および異なる線量率の放射線がそれらの異なる種類の組織に及ぼす影響を含み得る。RBEモデルは、異なる種類の健常組織および罹患組織が、放射線の照射および吸収にどのような影響を及ぼすかに関する情報を含み得る。RBEモデルは、また、異なる種類の放射線が異なる線量率で異なる種類の組織に及ぼす影響も含み得る。RBEモデルは、1つまたは複数のコンピュータプログラミングオブジェクト、1つまたは複数のルックアップテーブル(LUT)、配列、リスト、もしくは二分木などのデータ構造、または任意の適切なソフトウェアモデルを使用して実装され得る。
【0060】
線量計算エンジンは、患者のための線量レジメンを決定する。たとえば、線量計算エンジンは、患者のボクセルに照射する放射線の線量と、それらの線量が照射されるべき率とを決定し得る。線量計算エンジンは、その計算を実行する際に予測モデルおよびRBEモデルからの情報を使用する。この点で、線量計算エンジンは、患者体内の組織への放射線の時間依存RBEに少なくとも一部は基づき線量および線量率を決定するように構成される--たとえば、記述されるか、またはプログラムされる。したがって、線量計算エンジンは、患者の組織が健常であるか罹患しているかを識別し、RBEモデルおよび予測モデルを使用して、システム制約条件に基づき放射線の1回分のまたは複数回分の線量がその組織に照射されるべき持続時間を計算し、治療の所望のタイプに基づきターゲット組織への線量をスケーリングするものとしてよい。たとえば、線量計算エンジンは、悪性新生物などの患者体内のターゲットを識別し、また患者体内の健常組織を識別するように構成され得る。次いで、線量計算エンジンは、RBEモデルに基づきその組織に対する放射線のRBEを決定し得る。次いで、線量計算エンジンは、予測モデルに基づき線量を照射するシステムの制約条件および関連する患者情報を与えられた場合にターゲットに照射する放射線の線量および線量が照射されるべき率を決定し得る。線量計算エンジンは、ターゲットを構成するボクセルに対する超高線量率などの適切な線量を維持しつつ、健常組織への放射線の照射を可能な限り回避する。放射線が健常組織に影響を与える程度であれば、超高(FLASH)線量率でその放射線を照射することで、より低線量率での従来の用途の場合よりも健常組織への影響が少なくなる可能性がある。
【0061】
すべていずれにせよタイミングを考慮している、予測モデル、RBEモデル、および線量計算エンジンの組合せを使用することで、治療計画立案システムは、適切な線量レジメンを有する時間依存治療計画を生成することができ、ユーザはその品質を評価することができる。また、ビーム照射順序は、FLASH効果を利用する順序付けられた治療計画を作成するために順方向治療計画アプローチを使用して手動で作成されるか、または修正され得る。たとえば、ユーザは、一定のビームステアリングを有するカラム内への放射線の照射を手動で配置構成するか、または異なる放射線の異なるカラムの間の重なりの程度を低減するビーム角度またはコリメーションを選択し得る。
【0062】
シーケンサまたはオプティマイザは、線量計算エンジンによって決定された率の線量の照射を順序付けするための、コンピュータ実行可能命令などの命令を生成するように構成され得る--たとえば、記述されるか、またはプログラムされ得る。治療計画立案システムは、シーケンサまたはオプティマイザを使用して、逆計画立案アプローチを使用して治療を順序付けすることによって順序最適化を自動的に実行し得る。一例では、シーケンサは、ビームまたはスポット照射の順序を追加の自由度として使用し、最適化技術を用いて、時間依存効果を考慮しながらユーザによって指定された入力基準を最もよく達成する順序を決定する。
【0063】
前述のように、シーケンサは、放射線の線量が照射される順序を決定するために逆方向治療計画を採用するものとしてよい。いくつかの実装では、逆方向治療計画は、放射線のターゲット線量分布を取得し、次いで、超高(FLASH)線量率を達成するために必要な時間制約条件の下で治療計画の目的--たとえば、悪性組織を破壊すること--を達成するためにその放射線をどのように照射するかを決定する、最適化プロセスなどのプロセスを実行することを含む。一例において、予測モデルにおける特性およびターゲット線量が与えられた場合、シーケンサは、放射線がカラム内の患者のボクセルに印加されるべきと決定し得る。シーケンサは、それらのカラムがターゲットにおいて配置されるべき、それらのカラムの半径および長さ、および放射線の各カラムが照射されるべき順序を決定し得る。超高線量率を使用しない例では、シーケンサは、放射線がターゲットの層にスポットで印加されるべきと決定してもよい。シーケンサは、スポットのサイズ、形状、および配置、層の厚さ、層の数、各スポット内のプロトンの数、各スポットが適用されるべき順序、および層が治療される順序を決定し得る。
【0064】
いくつかの実装形態において、シーケンサは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、線量を調節するための戦略、粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、コリメータを構成するのに要する時間、もしくは粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの1つまたは複数、またはそれらのうちの2つ以上、またはそれらのうちの3つ以上、またはそれらのうちの4つ以上、またはそれらのうちの5つ以上、またはそれらのすべてに基づき、線量の照射を順序付けるように構成される。
【0065】
治療計画立案システムは、陽子またはイオンビームなどの粒子ビームを使用して、腫瘍などの照射ターゲット(または単に「ターゲット」)を治療するための粒子線治療システムとともに使用され得る。この点で、そのようなシステムの中には、ターゲットの断面を層毎に治療するものがある。たとえば、粒子ビームのエネルギーは、ある層に放射線量(または単に「線量」)を照射するように制御され、次いで、粒子ビームは、その層の全部または一部を横切って動かされ得る。その後、粒子ビームのエネルギーは、別の層に線量を照射するように変更され得る。粒子ビームは、他の層の全部または一部を横切って動かされ、というようにターゲット全体が治療されるまで続くものとしてよい。たとえば、図1は、矢印15の方向に沿って層を横切って粒子ビームを動かすことによって層10に線量を照射する十分なエネルギーを有する粒子ビーム12を使用してターゲット11の層10全体を治療することを示している。次いで、ターゲット11の異なる層16が、層16に線量を照射するのに十分な異なるエネルギーを有する粒子ビームを使用して同じ方式で治療され、というように続く。各層の治療は、典型的には、毎秒0.1グレイなどの、比較的平均的な線量率である。粒子ビームは、ターゲットに到達する前に健常組織を貫通することが多い。この健常組織内の任意の1つの配置が、治療の過程で数回アクセスされることがある。そのような配置の線量は、数分のオーダーで時間スケールにわたって受け取られる。
【0066】
対照的に、粒子線治療システムは、超高線量率放射線--放射線のFLASH線量--を使用してターゲットの3次元のカラムを治療し得る。これらのシステムは、ペンシルビーム走査を使用してターゲットへの超高線量率の照射をスケーリングする。いくつかの例では、ペンシルビーム走査は、各々固有の方向、エネルギー、および電荷を有することができる粒子放射線の一連の小さなビームを照射することを含む。これらの個別のビームからの線量を組み合わせることによって、3次元ターゲット治療体積は、放射線により治療され得る。さらに、このシステムでは、一定のエネルギーで治療をいくつかの層上に編成する代わりに、固定ビームの方向によって画成されるカラムの中へ治療を編成する。ビームの方向は、ターゲットの表面に向かうものとしてよい。
【0067】
いくつかの実装形態において、粒子ビームが照射ターゲットを通る別の経路に沿って方向付けられる前にカラムの全部または一部が治療される。いくつかの実装形態において、ターゲットを通る経路は、ターゲットの最後までかまたは途中までである。一例において、粒子ビームは、ターゲットを通る経路に沿って方向付けられ、その経路から逸脱しないものとしてよい。その経路に沿って方向付けられている間、粒子ビームのエネルギーは変化する。粒子ビームは、そのエネルギーが変化するときに動かず、その結果、粒子ビームは、粒子ビームの長さに沿って、またビームスポットの幅に沿って延在するターゲットの内部部分の全部または一部を治療する。したがって、ビームの長手方向に沿って深さ方向の治療が行われる。たとえば、治療されるターゲットの一部は、ターゲットの表面のビームのスポットからターゲットの内部の全部または一部を通って下へ延在し得る。その結果、粒子ビームは、超高線量率の放射線を使用してターゲットの3次元柱状部分を治療する。いくつかの例では、超高線量率の放射線は、たとえば、500ミリ秒(ms)未満の持続時間において毎秒1グレイを超える、10msから5秒(s)の間の持続時間において毎秒1グレイを超える、または5s未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含む。他の例も、本明細書において提供されている。
【0068】
いくつかの実装形態において、ターゲットのカラムが前の段落において説明されているように治療された後、粒子ビームはターゲットを通る新たな異なる経路に沿って方向付けられる。たとえば、図2に示されているように、ターゲット21のカラム20は、矢印28の方向に沿って進行する粒子ビーム22のエネルギーを変化させることによって治療される。次いで、粒子ビームは、ターゲット21を通る新しい経路24に沿って方向付けられ、そこで矢印29の方向に沿って進む。次いで、粒子ビームが静止している間に粒子ビームのエネルギーを変化させることによってその新しい経路に沿ってカラム25が治療される。述べたように、カラムは、ビームの長手方向の広がりに沿って配置される。いくつかの実装形態において、粒子ビームは、ターゲットのカラムを治療するときに、ターゲットを通る各経路に沿って一度だけ方向付けられる。
【0069】
前述のプロトコルの結果、ターゲット21より上または下にある健常組織は、超高線量率の放射線に一度だけ曝され、図1のようにターゲットが層毎に治療されるときに生じるような複数の低線量の放射線には曝されない。したがって、いくつかの実装形態では、粒子ビームは新しい経路に沿って方向付けされ、その経路に沿った上流の組織には二度とアクセスしない。このようにして、ターゲット内の各配置は、層切り替え時間で変調された個別のペンシルビームに匹敵する率で治療され得る。治療全体にわたる平均線量率は、層毎の放射線照射に匹敵するものとしてよいが、任意の1つのスポットに対する局所的な線量率は超高線量率である。
【0070】
いくつかの場合において、超高線量率で放射線を照射した場合に、健常組織への損傷の低減が生じ得る。たとえば、10~20グレイの放射線の線量を500ms未満のパルスで照射した--毎秒20から100グレイの実効線量率に達する--ときに、同じ線量をより長い時間スケールで照射したときに比べて、健常組織の損傷が少なくなり得、照射される放射線は同じ有効性レベルで腫瘍を治療し得る。
【0071】
いくつかの実装形態において、超高線量率を達成するために、粒子ビームのエネルギーは、層毎の走査に使用されるエネルギーの変化を超える率で変化させられてよい。たとえば、ターゲットのカラムに印加される超高線量率は、50msの持続時間内にビームエネルギーを切り替えることによって達成され得る。たとえば、ターゲットのカラムに印加される超高線量率は、10ms以下の持続時間内にビームエネルギーを切り替えることによって達成され得る。これは、たとえば、粒子ビームの動きおよびエネルギー吸収プレートまたは他の構造体が粒子ビームの経路に入り、出る動きを制御することによって達成され得る。たとえば、深さ5センチメートル(cm)のカラムは、5層スイッチを必要とすることもあり得るが、粒子ビームが照射されない250msのダウンタイムを必要とし、10から20グレイの線量が照射され得る250msのビーム照射を可能にし得る。エネルギー吸収プレートのより速い動きおよび/またはビームの動きの付加的な調整は、層切り替え時間をさらに短縮し、局在する超高線量率の要件をそのまま満たしながら必要な治療線量を照射する時間をさらに増やすことを可能にする。
【0072】
以下で説明されるのは、治療計画立案システムによって決定された治療計画に従ってターゲットの3次元カラムを通して超高線量率の放射線を照射するように構成されている粒子治療線システムの例示的な実装形態である。例示的な一実装形態において、粒子線治療システムは、陽子線治療システムである。本明細書で説明されているように、例示的な陽子線治療システムは、照射ターゲットを横切って3次元で陽子ビームを走査し、悪性組織を破壊する。図3は、陽子線治療システムにおいて粒子(たとえば、陽子)ビームを供給するために使用され得る例示的な超電導シンクロサイクロトロンのコンポーネント310の断面図を示している。この例では、コンポーネント310は、超電導磁石311を備える。超電導磁石は、超電導コイル312および313を備える。超電導コイルは、それ自体超電導であっても非超電導であってもよい中心ストランドの周りに巻かれた超電導ストランド--たとえば、4本のストランドまたは6本のストランド--を各々含む複数の一体化された導体から形成される。超電導コイル312、313の各々は磁場(B)を発生する電流を伝導するためのものである。磁気ヨーク314、315またはより小さな磁極片の形状は、加速される粒子が中に置かれる空洞316内のその磁場を整形する。一例において、低温保持装置(図示せず)は、各コイルを超電導温度、たとえば、約4°ケルビン(K)まで導電的に冷却するために液体ヘリウム(He)を使用する。
【0073】
いくつかの実装形態において、粒子加速器は、電離プラズマ柱を空洞316に供給するために、ペニングイオンゲージ--PIG源などの、粒子源317を備える。水素ガス、または水素ガスと希ガスとの組合せは、電離されると、プラズマ柱を発生する。電圧源は、可変高周波(RF)電圧を空洞316に印加して空洞内のプラズマ柱から粒子を加速する。指摘されているように、一例では、粒子加速器はシンクロサイクロトロンである。したがって、加速空洞内の粒子を加速するときに、粒子質量が増加することなどの、粒子に対する相対論的効果を考慮してRF電圧が一定範囲の周波数にわたって掃引される。RF電圧は、空洞内に収容されているD字形プレートを駆動し、陽子の増大する相対論的質量と減少する磁場とを考慮するように加速サイクルにおいて下方に掃引される周波数を有する。ダミーD字形プレートは、このD字形プレートに対する規定基準として働く。超電導コイルに電流を流すことよって発生した磁場は、RF電圧の掃引と合わせて、プラズマ柱からの粒子が空洞内の軌道上で加速し、回転数が増えるにつれエネルギーの増大を引き起こす。
【0074】
空洞内の磁場は、粒子に空洞内の軌道上を移動させる形状をとる。例示的なシンクロサイクロトロンは、回転角度が一様とされる磁場であって、半径が大きくなるに従って強度が低下する磁場を採用する。いくつかの実装形態において、超電導(主)コイルに生成される最大磁場は、空洞の中心において4テスラ(T)から20Tの範囲内にあるものとしてよく、これは半径が大きくなるほど低下する。たとえば、超電導コイルは、4.0T、4.1T、4.2T、4.3T、4.4T、4.5T、4.6T、4.7T、4.8T、4.9T、5.0T、5.1T、5.2T、5.3T、5.4T、5.5T、5.6T、5.7T、5.8T、5.9T、6.0T、6.1T、6.2T、6.3T、6.4T、6.5T、6.6T、6.7T、6.8T、6.9T、7.0T、7.1T、7.2T、7.3T、7.4T、7.5T、7.6T、7.7T、7.8T、7.9T、8.0T、8.1T、8.2T、8.3T、8.4T、8.5T、8.6T、8.7T、8.8T、8.9T、9.0T、9.1T、9.2T、9.3T、9.4T、9.5T、9.6T、9.7T、9.8T、9.9T、10.0T、10.1T、10.2T、10.3T、10.4T、10.5T、10.6T、10.7T、10.8T、10.9T、11.0T、11.1T、11.2T、11.3T、11.4T、11.5T、11.6T、11.7T、11.8T、11.9T、12.0T、12.1T、12.2T、12.3T、12.4T、12.5T、12.6T、12.7T、12.8T、12.9T、13.0T、13.1T、13.2T、13.3T、13.4T、13.5T、13.6T、13.7T、13.8T、13.9T、14.0T、14.1T、14.2T、14.3T、14.4T、14.5T、14.6T、14.7T、14.8T、14.9T、15.0T、15.1T、15.2T、15.3T、15.4T、15.5T、15.6T、15.7T、15.8T、15.9T、16.0T、16.1T、16.2T、16.3T、16.4T、16.5T、16.6T、16.7T、16.8T、16.9T、17.0T、17.1T、17.2T、17.3T、17.4T、17.5T、17.6T、17.7T、17.8T、17.9T、18.0T、18.1T、18.2T、18.3T、18.4T、18.5T、18.6T、18.7T、18.8T、18.9T、19.0T、19.1T、19.2T、19.3T、19.4T、19.5T、19.6T、19.7T、19.8T、19.9T、20.0T、20.1T、20.2T、20.3T、20.4T、20.5T、20.6T、20.7T、20.8T、20.9T、もしくはそれ以上のうちの1つまたは複数の大きさの、またはこれらを超える大きさの磁場を発生する際に使用され得る。さらに、超電導コイルは、4Tから20Tの範囲外にあるか、または4Tから20Tの範囲内にあるが、上に特には挙げられていない、磁場を発生する際に使用され得る。
【0075】
図3に示されている実装形態などのいくつかの実装形態において、比較的大型の強磁性磁気ヨーク314、315は、超電導コイルによって生成される漂遊磁場に対する帰還として働く。いくつかのシステムでは、磁気シールド(図示せず)がヨークを囲んでいる。帰還ヨークおよびシールドは、一緒になって漂遊磁場を減少させ、それによって、漂遊磁場が粒子加速器の動作に悪影響を及ぼす可能性を低減する働きをする。
【0076】
いくつかの実装形態において、帰還ヨークおよびシールドは、能動的帰還システムによって置き換えられるか、または増強され得る。例示的な一能動的帰還システムは、主超電導コイルを通る電流と反対の方向に電流を流す1つまたは複数の能動的帰還コイルを備える。いくつかの例示的な実装形態では、それぞれの超電導主コイルに対して能動的帰還コイルがある、たとえば、2つの能動的帰還コイル--それぞれの主超電導コイルに対して1つ--がある。それぞれの能動的帰還コイルは、対応する主超電導コイルの外側を同心円状に囲む超電導コイルであってもよい。
【0077】
能動的帰還システムを使用することによって、比較的大型の強磁性磁気ヨーク314、315は、より小型で軽量の磁極片と交換できる。したがって、シンクロサイクロトロンのサイズおよび重量は、さらに性能を犠牲にすることなく削減できる。使用され得る能動的帰還システムの一例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、特許文献1、名称「Active Return System」において説明されている。
【0078】
粒子加速器の引き出しチャネルの出力のところ、またはその近くに、走査システムを含む1つもしくは複数のビーム整形要素があり得る。走査システムのコンポーネントは、治療中の患者に比較的近いところに位置決めするためにノズル上に取り付けられるか、または他の何らかの方法でそれに付着され得る。
【0079】
図4を参照すると、例示的な実施例において、シンクロサイクロトロン421(図3の構成を有し得る)の引き出しチャネル420の出力のところに、照射ターゲットの上に、これを通過して、粒子ビームを3次元空間内で動かすために使用され得る例示的な走査コンポーネント422がある。図5は、図4のコンポーネントの例も示している。これらは、限定はしないが、1つまたは複数の走査磁石424、電離箱425、エネルギーデグレーダ426、および構成可能コリメータ428を含む。いくつかの実装形態は、構成可能コリメータを含み得ない。これらなどの例示的な実装形態では、粒子ビームは、コリメーションなどのその後の調整なしでエネルギーデグレーダを通過して患者に至る。引き出しチャネルのビーム下流にあってよい他のコンポーネントは、図4または図5には示されず、たとえば、ビームスポットサイズを変えるための1つまたは複数の散乱デバイスを含み得る。例示的な散乱デバイスは、粒子ビームが散乱デバイスを通過するときに粒子ビームを分散させるプレートまたはレンジモジュレータを含む。
【0080】
例示的な動作において、走査磁石424は、2次元内で制御可能であり(たとえば、直交座標のXY次元)、これにより、これら2次元内で粒子ビームを位置決めし、粒子ビームを照射ターゲットの少なくとも一部を横切って移動させる。電離箱425では、ビームの線量を検出し、その情報を制御システムにフィードバックしてビーム移動を調整する。エネルギーデグレーダ426は、構造体を動かして粒子ビームの経路内に入れ、そこから出し、粒子ビームのエネルギー、したがって粒子ビームの線量が照射ターゲットに堆積される深さを変化させるように制御可能である。そのような構造体の例は、限定はしないが、エネルギー吸収プレート、楔、四面体、または環状多面体などの多面体、円筒形、球形、または円錐形などの湾曲した3次元形状を含む。このようにして、エネルギーデグレーダは、粒子ビームが照射ターゲットの内部に放射線線量を堆積させて、ターゲットのカラムを治療することを引き起こし得る。この点で、陽子が組織を通って移動するときに、陽子は組織の原子を電離し、その経路に沿って線量を堆積する。ブラッグピークは、組織中を進行するときの電離性放射線のエネルギー損失をプロットするブラッグ曲線上の顕著なピークである。ブラッグピークは、ほとんどの陽子が組織内に堆積する深さを表している。陽子については、ブラッグピークは、粒子が停止する直前に出現する。したがって、粒子ビームのエネルギーは変化して、そのブラッグピークの配置を変え、したがって、陽子の線量の大部分が組織内の深くに堆積する。
【0081】
図6および図7は、例示的な走査磁石424を示している。この例では、走査磁石424は、X次元の粒子ビーム移動を制御する2つのコイル441と、Y次元の粒子ビーム移動を制御する2つのコイル442とを備える。制御は、いくつかの実装形態において、一方のコイルのセットまたは両方のセットを通る電流を変化させ、それによって、発生する磁場を変化させることによって達成される。磁場を適切に変化させることによって、粒子ビームは、照射ターゲット上をXおよび/またはY次元の方向に移動することができる。前に説明されているエネルギーデグレーダは、ビームをZ方向に動かしてターゲットに通し、それによって3次元内での走査を可能にし得る。
【0082】
図4を再び参照すると、電流センサ427は、走査磁石424に接続されるか、または他の何らかの方法で関連付けられ得る。たとえば、電流センサは、走査磁石と通信するが、接続され得ない。いくつかの実装形態において、電流センサは、磁石424に印加される電流をサンプリングし、これはX次元に走査するビームを制御するためのコイルへの電流および/またはY次元に走査するビームを制御するためのコイルへの電流を含み得る。電流センサは、粒子ビーム内のパルスの発生に対応する回数で、またはパルスが粒子ビーム内で生じる率を超える率で、磁石を通過する電流をサンプリングし得る。磁石電流を識別する、サンプルは、以下で説明されている電離箱によるパルスの検出に相関する。たとえば、電離箱を使用してパルスが検出される回数は、電流センサからのサンプルに時間的に相関し、それにより電流センサからパルスの回数で磁石コイル内の電流を識別し得る。したがって、磁石電流を使用することで、各パルス、およびしたがって、放射線の線量--すなわち、粒子の線量--が照射された照射ターゲット内の配置を決定することが可能であり得る。ターゲット内に照射される線量の配置は、また、エネルギーデグレーダの構成に基づき、たとえばビーム経路内のプレートの数に基づき、決定され得る。
【0083】
動作時に、磁石電流の大きさ値は、線量の量(たとえば、強度)とともに、線量が照射される各配置で記憶され得る。加速器上にあるか、または加速器から離れた場所にあってよい、ならびにメモリおよび1つまたは複数の処理デバイスを含み得る、制御システムは、磁石電流と照射ターゲット内の座標との相関を求めるものとしてよく、それらの座標は、線量の量とともに記憶され得る。たとえば、配置は、深さ毎の層の数および直交XY座標によって、または直交XYZ座標によって識別されるものとしてよく、深さ毎の層はZ座標に対応している。いくつかの実装形態において、磁石電流の大きさおよび座標配置は両方とも、各配置における線量とともに記憶され得る。この情報は、加速器上の、または加速器から離れた場所のいずれかの、メモリに記憶されてよい。この情報は、ターゲットの治療を追跡し、その治療の記録を維持するために使用され得る。
【0084】
電離箱425は、入射放射線によって引き起こされるガス内に形成されるイオン対の数を検出することによって粒子ビームによって照射ターゲット内の位置に印加される、1つまたは複数の個別の線量などの、線量を検出する。イオン対の数は、粒子ビームによってもたらされる線量に対応する。その情報は、制御システムにフィードバックされ、線量が送られる時間とともにメモリに記憶される。この情報は、上で説明されているように、線量が送られた配置および/またはそのときの磁石電流の大きさに、相関し、およびそれらに関連して記憶され得る。
【0085】
すでに述べたように、いくつかの実装形態は、構成可能コリメータを含まない。構成可能コリメータを含む例示的な実装形態において、構成可能コリメータ428は、図4および図5に示されているように、走査磁石のビーム下流およびエネルギーデグレーダのビーム下流に配置されてよい。構成可能コリメータは、ターゲットを通る経路から経路へと粒子ビームが移動するときにスポット毎に粒子ビームをトリミングするものとしてよい。構成可能コリメータは、また、粒子ビームがターゲット上で静止している間、および静止している粒子ビームのエネルギーが変化してターゲットの内部の異なる部分に衝突するときに粒子ビームをトリミングし得る。たとえば、粒子ビームは、ターゲットの内部に入るとその直径に沿って広がり得る。その広がりは、内部の中の異なる深さに対して変化し得る。コリメータは、その広がりを考慮して粒子ビームをトリミングするように構成され得る。たとえば、コリメータは、スポットの直径またはサイズが、治療されるカラムの全体にわたって同じままであるように構成され、また再構成され得る。
【0086】
いくつかの実装形態において、構成可能コリメータは、互いに面し、開口形状を形成するようにキャリッジ内におよびキャリッジから移動可能であるリーフのセットを含み得る。開口形状を超える粒子ビームの部分はブロックされ、患者には届かない。患者に届くビームの部分は少なくとも部分的にコリメートされ、それによって比較的正確なエッジをビームに持たせる。いくつかの実装形態において、構成可能コリメータ内の、たとえばキャリッジ上に配設されているリーフのセット内の各リーフは、エッジの第1の側の粒子ビームの第1の部分が複数のリーフによってブロックされるように、またエッジの第2の側の粒子ビームの第2の部分が複数のリーフによってブロックされないように粒子ビームの経路内に移動可能であるエッジを画成するように単一のリニアモーターを使用して制御可能である。各セット内のリーフは、単一のスポットと同じくらい小さい領域をトリミングするように走査中に個別に制御可能であり、より大きいマルチスポット領域をトリミングするためにも使用され得る。異なる粒子ビームエネルギーに対して異なる量のトリミングが実行される必要がある場合があるので、ターゲットのカラムを治療する際に、単一スポットをトリミングできることは重要であり得る。
【0087】
図8は、エネルギーデグレーダ426の例示的な一実装形態である、例示的なレンジモジュレータ460を示している。いくつかの実装形態において、レンジモジュレータ460は、構成可能コリメータと患者との間の走査磁石のビーム下流に配置され得る。図8に示されているようないくつかの実装形態において、レンジモジュレータは、一連のプレート461を備える。プレートは、LEXAN(商標)などのポリカーボネート、炭素、ベリリウム、炭化ホウ素、炭化ホウ素とグラファイトからなる複合材料、または原子番号の低い材料のうちの1つまたは複数の例示的な材料から作られ得る。しかしながら、これらの例示的な材料の代わりに、またはそれに加えて、他の材料も使用され得る。楔、四面体、もしくは環状多面体などの多面体、または円筒形、球形、もしくは円錐形などの湾曲した3次元構造体を含むエネルギーデグレーダの他の実装形態において、これらの構造体は、LEXAN(商標)などのポリカーボネート、炭素、ベリリウム、炭化ホウ素、炭化ホウ素とグラファイトからなる複合材料、または原子番号の低い材料などの1つまたは複数の例示的な材料から作られ得る。
【0088】
いくつかの実装形態において、炭化ホウ素を含むレンジモジュレータの構造体は、炭化ホウ素のみを含んでいてもよく、すなわち、構造体は純粋な炭化ホウ素であってもよい。いくつかの実装形態において、炭化ホウ素を含む構造体は、炭化ホウ素を、グラファイト、ポリカーボネート、炭素、またはベリリウムなどの別の材料と組み合わせて含み得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダ内のすべての構造体--たとえば、プレート、多面体、または湾曲した3次元構造体--が、炭化ホウ素の全部または一部を含み得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダ内の異なる構造体--たとえば、プレート、多面体、または湾曲した3次元構造体--は、異なる材料を含み得る。たとえば、エネルギーデグレーダ内の1つまたは複数のプレートは、純粋な炭化ホウ素から作られてもよく、同じエネルギーデグレーダの1つまたは複数の他のプレートは、ポリカーボネート、炭素、および/またはベリリウムのうちの1つまたは複数から作られるか、またはそれらを含み得る。他の材料も使用され得る。たとえば、エネルギーデグレーダ内の1つもしくは複数のプレートまたはその一部は、炭化ホウ素およびグラファイトからなる複合材料から作られ得る。
【0089】
これらのプレートのうちの1つまたは複数は、ビーム経路内を出入りするように移動可能であり、それによって、粒子ビームのエネルギー、したがって、粒子ビームの線量のほとんどが照射ターゲット内に堆積される深さを変える。プレートは動かされて、粒子ビームの経路内に物理的に出入りする。たとえば、図9に示されているように、プレート470は、粒子ビーム473の経路内の位置と粒子ビームの経路外の位置との間の矢印472の方向に沿って移動する。プレートは、コンピュータ制御される。一般的に、粒子ビームの経路内に入るプレートの数は、照射ターゲットの走査が行われるべき深さに対応する。したがって、粒子ビームからの線量は、1つまたは複数のプレートの適切な制御によってターゲットの内部に方向付けされ得る。
【0090】
いくつかの実装形態において、レンジモジュレータ460の個別のプレートは、各々、対応するモーター464に結合され、それによって駆動される。一般に、モーターは、何らかの形態のエネルギーを運動に変換するデバイスを含む。モーターは、ロータリーまたはリニアであってよく、また電気式、油圧式、または空気圧式であってよい。たとえば、各モーターは、送りネジを駆動してプレートをビーム場内に伸長するか、またはプレートをビーム場から引っ込める電気モーターであってよく、これは、プレートの動きをビーム場内の粒子ビームの動きに追跡させるか、追従させることを含む。たとえば、各モーターは、対応する構造体の動きを制御するために対応するリニアアクチュエータを駆動するロータリーモーターであってもよい。いくつかの実装形態において、レンジモジュレータ460の個別のプレートは、各々、対応するアクチュエータに結合され、それによって駆動される。いくつかの例において、アクチュエータは、制御された動きを提供し、モーターによって電気的に、油圧式で、空気圧式で、機械式で、または熱的に動作し得る、機械的または電気機械的デバイスを含む。いくつかの例において、アクチュエータは、電流、油圧油圧力、または空気圧などのエネルギー源によって動作し、そのエネルギーを運動に変換する任意のタイプのモーターを含む。
【0091】
いくつかの実装形態において、炭化ホウ素構造体(または他の材料から構成されている構造体)を含むエネルギーデグレーダが、粒子ビームが患者に印加される治療室内に配置され得る。たとえば、エネルギーデグレーダは、走査磁石と患者との間に配置され得る。一例では、エネルギーデグレーダは、システムの内部ガントリー上のノズルに配置されてよく、その例は、図26図27、および図28に関して説明されている。
【0092】
エネルギーデグレーダは、1つまたは複数のプレートまたは他の構造体を通過した後に粒子ビームが散乱されるか、または分散される量を制限するように患者の近くに配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から4メートル以下の距離のところに配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から3メートル以下の距離のところに配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から2メートル以下の距離のところに配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から1メートル以下の距離のところに配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から1/2メートル以下の距離のところに配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から4メートル以下の距離のところのノズル内に配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から3メートル以下の距離のところのノズル内に配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から2メートル以下の距離のところのノズル内に配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から1メートル以下の距離のところのノズル内に配置され得る。いくつかの実装形態において、エネルギーデグレーダは、粒子ビームのビームラインに沿って患者から1/2メートル以下の距離のところのノズル内に配置され得る。
【0093】
一般に、炭化ホウ素は、ベリリウムなど、粒子ビームのエネルギーを減衰させるために使用され得るいくつかの他の材料に比べて安価で安全に使用され得る。一般に、炭化ホウ素は、比較的低い原子量および高い密度を有し、その散乱特性に関して、炭素(たとえば、グラファイト)およびポリカーボネートなどの、粒子ビームのエネルギーを減衰させるために使用され得るいくつかの他の材料と比較して有利であり得る。ビームの散乱を低減すると、結果として、ビームのスポットサイズ、すなわち、ビームの断面サイズが小さくなる。スポットサイズが小さくなると、ペンシルビーム走査システムの形状適合性が向上し、局在的線量率が高くなる。言い換えると、スポットサイズを縮小することで、線量が堆積される面積が縮小する。その結果、単一のスポット内に堆積される陽子の濃度は上昇し、それによって単一のスポットの領域内の線量率が高くなる。単一のスポットの領域内の線量率を高めることは、超高(またはFLASH)線量率を使用して走査を行うときに、規定された期間内に超高線量の陽子の堆積を円滑にするので、望ましい。超高線量が印加される期間の例は、本明細書において説明されている。
【0094】
図29は、粒子ビームのエネルギーを変更するためにエネルギーデグレーダにおいて使用される異なる材料、異なる粒子ビームエネルギーに対する粒子ビームスポットサイズの変化を示すグラフである。この例では、LEXAN(商標)、炭素(たとえば、グラファイト)、炭化ホウ素、およびベリリウムが示されている。図29のグラフによると、たとえば、炭化ホウ素デグレーダ構造体は、70MeV(100万電子ボルト)のエネルギーで1.2センチメートル(cm)シグマ未満のスポットサイズを有する粒子ビームを生成する。この例では、スポットサイズはデグレーダ構造体の出力で測定される。スポットは、ビームが空気中を遠くへ進行するほど散乱し、スポットサイズが大きくなる。しかしながら、デグレーダを患者に十分に近づけることで、散乱が制限される。それに加えて、すべての場合ではないがいくつかの場合において、粒子ビームをコリメートするために、エネルギーデグレーダと患者との間に構成可能なコリメータが留置され得る。
【0095】
前述の利点に加えて、炭化ホウ素ベースのエネルギーデグレーダは、たとえばポリカーボネートを使用するエネルギーデグレーダと比較してサイズの点で縮小され得る。すなわち、炭化ホウ素ベースのエネルギーデグレーダは、ポリカーボネートベースのエネルギーデグレーダと実質的に同じ効果を達成し得るが、炭化ホウ素ベースのエネルギーデグレーダは、ポリカーボネートベースのエネルギーデグレーダよりも小さいフォームファクタを有し得る。これは、炭化ホウ素の密度がポリカーボネートの密度よりも大きいからである。いくつかの例では、純粋な炭化ホウ素プレートからなるエネルギーデグレーダは、ビームラインに沿って厚さ30センチメートル(cm)から40cmであってよい。プレートは、同じ、または可変の厚さを有し得る。プレートおよびエネルギーデグレーダそれ自体の厚さは、必要とされるエネルギー変化の全体的量および治療されるべき層の数などの様々な因子に依存し、これはプレートの各々の数および厚さを決定し得る。
【0096】
炭化ホウ素からなるエネルギーデグレーダのサイズの縮小で、エネルギーデグレーダが治療室であまり目立たなくなる。たとえば、すべてまたはいくつかの炭化ホウ素構造からなるエネルギーデグレーダは、内部ガントリー上のノズル内に収納され得る。エネルギーデグレーダを含むノズルは、内部ガントリー内に完全に引っ込められてもよく、それによって、エネルギーデグレーダは、治療を行う技術者の邪魔にならなくなる。いくつかの実装形態において、内部ガントリーは、治療室の壁と同一の平面上にあってもよく、その場合、ノズルおよびエネルギーデグレーダを内部ガントリー内に完全に引っ込めると、ノズルおよびエネルギーデグレーダが壁内に完全に引っ込められる。
【0097】
図10は、エネルギー吸収プレート101、102、および103の動作を制御するためにリニアモーターを使用する炭化ホウ素ベースのレンジモジュレータなどのレンジモジュレータの例示的な実装形態を示している。図10のレンジモジュレータは、そうでなければ、図8のレンジモジュレータの構成を有していてもよい。図10の例では3つのプレートしか示されていないけれども、長円106で例示されているように、任意の適切な数のプレートが含まれ得る。
【0098】
一例としてプレート102を取りあげると、プレート102の動作を制御する例示的なリニアモーターは、2つの部分--この例では、磁石110aおよび110b--からなる移動可能コンポーネントおよび固定コンポーネントを備える。2つの磁石は、隣り合って配置構成され、極は整列されている。すなわち、図示されているように、磁石110aの正極(+)は磁石110bの正極(+)に整列され、磁石110aの負極(-)は磁石110bの負極(-)に整列される。移動可能コンポーネントは、磁石110aと110bとの間にコイル搬送プレート109を備える。コイル搬送プレート109は、エネルギー吸収プレート102に物理的に接続され、エネルギー吸収プレート102が矢印111の方向に沿って、たとえば、粒子ビームの経路内を出入りするのを制御する。
【0099】
説明されているように、コイル搬送プレート109は、磁場を発生するために電流を通す、1つまたは複数の導電性トレースまたは他の導電性構造体を備える。磁場は、コイル搬送プレート、したがってエネルギー吸収プレート102の移動を制御するためにコイル搬送プレートを通る電流を制御することによって制御される。すなわち、コイルを通る電流は、磁石110aおよび110bが発生する磁場と相互作用する磁場を発生する。この相互作用は、コイル搬送プレート109およびエネルギー吸収プレート102が矢印111の方向に沿って、粒子ビーム経路内に入るか、またはそこから出るかのいずれかの移動を引き起こす。たとえば、コイル搬送プレート109が発生するより大きな磁場は、エネルギー吸収プレートが粒子ビーム経路内に移動することを引き起こし、コイル搬送プレートが発生するより小さな、または反対の磁場は、エネルギー吸収プレートが粒子ビーム経路から離れる方向に引っ込むことを引き起こし得る。
【0100】
いくつかの実装形態において、コイル搬送プレート上の導電性トレースまたは他の導電性構造体は、アルミニウム中に埋め込まれた3つの巻線を備えるものとしてよい。いくつかの実装形態において、エネルギー吸収プレートは、コイル搬送プレートに物理的にくっつけられ、コイル搬送プレートとともに動き得る。いくつかの実装形態において、使用される巻線の数および材料は本明細書において説明されているものと異なっていてもよい。いくつかの実装形態において、コイル搬送プレートはエネルギー吸収プレートと一体になっていてもよい。たとえば、エネルギー吸収プレートそれ自体が、導電性構造体またはトレースを備えていてよい。
【0101】
図10に示されているように、いくつかの実装形態において、コイル搬送プレートを通る電流は、コンピューティングシステム114などの制御システムによって受信された信号によって制御され得る。コンピューティングシステムは、中性子線の影響を受けやすく、したがって、離れた部屋116内に配置されるとよい。いくつかの実装形態において、離れた部屋116は、粒子加速器が発生する中性子線から遮蔽され得る。いくつかの実装形態において、離れた部屋は、粒子加速器からの中性子線の影響を受けないように治療室117から十分に離れた位置に配置され得る。いくつかの実装形態において、コンピューティングシステムは治療室内に配置されてもよいが、粒子加速器によって放射される中性子から遮蔽され得る。いくつかの実装形態において、すべての計算機能は中性子線から遮蔽され、遮蔽されていない電子機器は、それでも、中性子線の存在下でも動作することができる。エンコーダはそのような電子機器の例である。
【0102】
この点で、エンコーダ(図示せず)は、レーザーセンサ、光学センサ、またはダイオードセンサのうちの1つまたは複数を備え得る。エンコーダは、たとえば、コイル搬送プレート上の、またはコイル搬送プレートに接続され、コイル搬送プレートとともに移動する構造体上のマーキングもしくは他の印がエンコーダに関して相対的にどこに配設されているかを検出することによって、コイル搬送プレートの移動を検出する。コイル搬送プレートがどこにあるかに関するこの情報は、コンピューティングシステムにフィードバックされ、動作時にコイル搬送プレートの位置を確認するためにコンピューティングシステムによって使用される。エンコーダは、任意の適切な配置に配置され得る。いくつかの実装形態において、エンコーダは、コイル搬送プレートを収納するハウジング上に配置される。コイル搬送プレートが移動すると、コイル搬送プレートとともに移動するマーキングまたは他の印はエンコーダを越えて移動する。次いで、エンコーダは、その情報をコンピューティングシステム114に中継する。コンピューティングシステム114は、その情報を使用して、エネルギー吸収プレートの位置決めを含む、レンジモジュレータの動作を制御するものとしてよい。
【0103】
1つまたは複数の処理装置デバイスからなるものとしてよい、コンピューティングシステム114は、罹患組織を含む患者の体積などの、照射ターゲットにカラム毎に超高線量率放射線治療を実施するための走査システムのコンポーネントを含む、治療計画に基づき陽子線治療を施す陽子線治療システムを制御するようにプログラムされ得る。たとえば、コンピューティングシステムは、リニアモーターのうちの1つまたは複数を制御する1つまたは複数の制御信号を出力して走査時にエネルギー吸収プレートのうちの1つまたは複数を伸長させるかまたは引っ込めるように治療計画に基づき制御可能であるものとしてよい。たとえば、コンピューティングシステムは、1つまたは複数の電気モーターを制御する1つまたは複数の制御信号を出力して走査時にエネルギー吸収プレートのうちの1つまたは複数を伸長させるかまたは引っ込めるように治療計画に基づき制御可能であるものとしてよい。コンピューティングシステムは、たとえば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)などの、1つまたは複数の処理デバイスを含み得る。
【0104】
図30は、コンピューティングシステム114などの制御システム上に実装され得るか、または制御システムとは別のコンピューティングシステム上に実装され得る、例示的な治療計画立案システム1200のコンポーネントを示す。治療計画立案システムは、治療計画立案システムの異なる機能を実装するモジュール--たとえば、ソースコード、コンパイル済みコード、または解釈実行コードからなるデータおよび/またはルーチンを含み得る--を備える。これらのモジュールは、超高線量率の放射線の照射が、特定の時間に特定の線量でその放射線を照射する能力に依存するという意味で時間依存であり得る。線量および時間の例が、本明細書において提示されている。
【0105】
例示的なモジュールは、予測モデル1201を含む。予測モデルは、限定はしないが、患者に照射するための放射線を生成する粒子加速器、および放射線を方向付けるために使用される走査システムを含む、粒子線治療システムを特徴付けるか、またはモデル化する。予測モデルは、また、放射線が照射されるべき体積および放射線が照射されてはならない体積を含む、治療されるべき患者を特徴付けるか、またはモデル化する。いくつかの実装形態において、予測モデルは、少なくとも一部は、コンピュータメモリに記憶されている1つまたは複数のデータ構造体を使用して実装され得る。例示的なデータ構造は、データ値の集まり、それらの値の間の関係、およびデータに適用できる関数または操作を含む。予測モデルを実装するために使用され得るデータ構造の例は、ルックアップテーブル(LUT)、配列、スタック、キュー、リンクリスト、木、グラフ、トライまたはプレフィックス木、またはハッシュテーブルのうちの1つまたは複数を含み得る。予測モデルは、また、他のモジュールとインタラクティブにやり取りし、データ構造からデータを取り出すための実行可能コードを含み得る。予測モデルは、また、オブジェクト指向言語で書かれた1つまたは複数のコンピュータプログラミングオブジェクトを用いて実装され得る。
【0106】
予測モデル1201は、手動、自動、または手動と自動の組合せで値を入力され得る。たとえば、予測モデルに手動で値を入力するために、予測モデルの一部を実装するコードが実行され、治療計画立案技術者に対して電子ディスプレイデバイス上で表示されるプロンプトを生成し得る。治療計画立案技術者は、プロンプトに応答して予測モデルに情報を入力し得る。情報は、粒子線治療システム、患者、患者体内のターゲット、および他の関連パラメータの物理的特性に基づくか、またはそれらに割り当てられる、値を含み得る。情報は、時間順に、たとえば、FLASH線量または放射線を照射するのに要する時間にわたって一連のスポットまたはカラムにおいて、患者に放射線を照射する粒子線治療システムの能力に関係し得る。たとえば、情報は、限定はしないが、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造--たとえば、各パルスの持続時間、粒子ビームの1パルスあたりの最大線量--たとえば、1パルスあたりの粒子の数、粒子ビームを指定された距離だけ動かす走査磁石の掃引時間、粒子ビームのエネルギーを--たとえば、可変エネルギー加速器のエネルギーを変化させることにより--変化させるのに要する時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、線量を調節するための--たとえば、ターゲットのカラム内で超高線量率放射線を印加するか、またはターゲット内でより低い率の線量を層毎に印加するための--戦略、粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、コリメータを構成するのに要する時間、および/もしくは粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間に関係するものとしてよい。したがって、一般に、予測モデルは、放射線--たとえば、粒子線治療--が患者に照射されるか、または照射され得るタイミングを特徴付け得る。情報は、治療すべき疾患--たとえば腫瘍--の種類、たとえばXYZ座標で指定された患者の体内の腫瘍の配置、その体積を含む罹患組織のサイズおよび形状、罹患組織を取り囲む健常組織の種類、たとえばXYZ座標で指定された健常組織の配置、その体積を含む健常組織のサイズおよび形状、ならびに既往歴、前治療、手術、および同様のものなどの治療に関連し得る患者および疾患に関する任意の他の情報を含み得る。
【0107】
いくつかの実装形態において、予測モデル内の前述の情報のすべてまたは一部は、コンピューティングシステム114などの制御システムに記憶され得る。治療計画立案システムは、ユーザからの入力がない場合にこの情報のすべてまたは一部を取得するために制御システムに問い合わせてもよい。
【0108】
例示的なモジュールは、RBEモデル1202を含む。前に説明されているように、RBEモデルは、時間依存方式で組織上の放射線の相対的生物学的効果比を特徴付けるものである。たとえば、超高(FLASH)線量率で放射線が印加されるときに、健常組織の損傷は、その同じ組織が同じ線量をより長い時間スケールで照射されたときに比べて少なく、腫瘍は類似の有効性で治療される。RBEモデルは、異なる種類の健常組織および非健常組織に関する情報、および異なる線量率の放射線がそれらの異なる種類の組織に及ぼす効果を含み得る。たとえば、RBEモデルは、腺腫、癌腫、肉腫、またはリンパ腫を効果的に治療するために必要な放射線の線量を指定し得る。そのような腫瘍を治療するために必要な線量は、必ずしも時間依存ではなく、したがって、線量率は指定され得ない。しかしながら、いくつかの実装形態において、腫瘍を治療するための線量率は、RBEモデルにおいて指定され得る。前に説明した理由により、放射線治療中に健常組織に線量が印加される率は、放射線が健常組織に引き起こす損傷に影響を及ぼし得る。したがって、RBEモデルは、健常組織に対する線量率の時間依存性の効果を指定し得る。この点で、非健常組織の例は、良性および悪性の新生物、および他の種類の疾患に罹患した身体組織を含む。健常組織の例は、骨、皮膚、筋肉、または病気の影響を受けていない臓器を含む。RBEモデルは、また、異なる種類の放射線が異なる線量率で異なる種類の組織に及ぼす効果も含み得る。本明細書において説明されている例示的なシステムは、プロトン照射を使用するが、RBEモデルは、他の種類のイオン放射線、光子放射線、またはX線などの他の種類の放射線に関する情報を含み得る。
【0109】
RBEモデルは、また、異なる種類の健常組織および非健常組織が、それらの組織に印加される放射線にどのような影響を及ぼすかに関する情報を含み得る。前に説明されているように、等価線量は、堆積される放射線に対する患者体内の組織の生物学的効果を考慮して患者体内の罹患組織を治療するために必要な堆積される一定量の放射線を含み得る。この点で、一部の組織は、堆積される放射線の線量のすべてを吸収し得ない。したがって、線量はRBEモデルからの情報を使用して重み付けされ、それにより放射線に対する組織の生物学的効果を考慮し得る。結果として得られる等価線量は、放射線に対する生物学的効果を考慮したものとなる。たとえば、所与の組織は、ある種の放射線の破壊的効果を10%減衰させ得る。したがって、等価線量は10%だけ増やされ、この生物学的要因を考慮し得る。
【0110】
いくつかの実装形態において、RBEモデルは、少なくとも一部は、コンピュータメモリに記憶されている1つまたは複数のデータ構造体を使用して実装され得る。例示的なデータ構造は、データ値の集まり、それらの値の間の関係、およびデータに適用できる関数または操作を含む。RBEモデルを実装するために使用され得るデータ構造の例は、ルックアップテーブル(LUT)、配列、スタック、キュー、リンクリスト、木、グラフ、トライまたはプレフィックス木、またはハッシュテーブルのうちの1つまたは複数を含み得る。RBEモデルは、また、他のモジュールとインタラクティブにやり取りし、データ構造からデータを取り出すための実行可能コードを含み得る。RBEモデルは、また、オブジェクト指向言語で書かれた1つまたは複数のコンピュータプログラミングオブジェクトを用いて実装され得る。
【0111】
RBEモデル1202は、手動、自動、または手動と自動の組合せで値を入力され得る。たとえば、RBEモデルに手動で値を入力するために、RBEモデルの一部を実装するコードが実行され、治療計画立案技術者に対して電子ディスプレイデバイス上で表示されるプロンプトを生成し得る。治療計画立案技術者は、プロンプトに応答してRBEモデルに情報を入力し得る。情報は、異なる種類の腫瘍、異なる種類の放射線、異なる線量、および異なる線量率に基づくか、またはこれらに割り当てられた、値を含み得る。たとえば、RBEモデルは、腫瘍などの、疾患の1つまたは複数のリストを含み得る。RBEモデルは、各疾患を治療することができる陽子、光子、またはX線などの異なる種類の放射線を識別し得る。RBEモデルは、放射線の各種類について、疾患の所与の体積を治療することができる線量の1つまたは複数の範囲を識別し得る。RBEモデルは、放射線の各種類について、疾患の所与の体積を治療することができる線量率の1つまたは複数の範囲を識別し得る。この点で、述べたように、線量率は罹患組織を治療する際に常に因子であるとは限らず、線量それ自体は、いくつかの場合において線量率とは無関係にクリティカルであり得る。RBEモデルは、筋肉、骨、皮膚、臓器などの、異なる種類の健常組織を識別し得る。RBEは、異なる種類の放射線の異なる線量率--たとえば、一定期間にわたって印加される線量--がそれらの種類の組織に及ぼす効果を指定し得る。たとえば、RBEは、異なる種類の組織に対する、異なる種類の放射線の異なるレベルのFLASHおよび非FLASH線量率の効果を指定し得る。たとえば、RBEは、健常な筋肉、骨、皮膚、および臓器に対する、陽子放射線の異なるレベルのFLASHおよび非FLASH線量率の効果を指定し得る。これらの効果は定量化され得る。たとえば、組織への損傷は、0から10までの数字目盛りで指定されてもよく、0は損傷なしであり、10は組織の破壊である。たとえば、これらの効果は、たとえば線量計算エンジンによって電子的に読み取られ、理解され得る記述的情報を使用して指定され得る。RBEモデルは、その放射線の有効性に対する異なる種類の放射線の効果を指定し、これらの効果を打ち消す重み係数を含み得る。
【0112】
いくつかの実装形態において、RBEモデル内の前述の情報のすべてまたは一部は、コンピューティングシステム114などの制御システムに記憶され得る。治療計画立案システムは、治療計画立案技術者などのユーザからの入力がない場合にこの情報のすべてまたは一部を取得するために制御システムに問い合わせてもよい。
【0113】
例示的なモジュールは、線量計算エンジン1203を含む。線量計算エンジン1203は、患者のボクセルに照射する放射線の線量と、いくつかの例における、それらの線量が患者に照射されるべき率とを決定するように構成される--たとえば、書かれるか、またはプログラムされる。この点で、線量計算エンジン1203は、たとえば治療計画立案技術者から、患者の罹患組織に照射する総ターゲット放射線量、組織を横切る線量分布、または総ターゲット線量および線量分布の両方を受け取り得る。線量計算エンジンは、放射線を照射するシステムおよび患者に関する情報を予測モデルから取得する。線量計算エンジンは、RBEモデルから、システムによって罹患組織および健常組織に照射されるべき放射線のRBEに関する情報を取得する。次いで、予測モデルおよびRBEモデルからの情報は、患者に印加されるべき放射線の線量および線量率を決定するために使用される。
【0114】
たとえば、線量計算エンジンは、患者の治療されるべき腫瘍の組成を取得する。述べたように、この情報は、たとえば、予測モデルから、または治療計画立案技術者による入力から取得され得る。組成は、腫瘍の種類、腫瘍のサイズまたは体積、および腫瘍の形状を含み得る。線量計算エンジンは、腫瘍に隣接する患者の健常組織に関する情報を取得する。この情報は、たとえば、予測モデルから、または治療計画立案技術者による入力から取得され得る。この情報は、健常組織の種類、罹患組織に関する健常組織の相対的配置、および健常組織が以前に放射線に曝されたことがあるかどうかを含み得る。線量計算エンジンは、粒子加速器、走査システム、および粒子線治療システム内の他のハードウェアを使用して達成され得る最大線量率に関する情報も取得する。この情報は、予測モデルから取得されるか、またはモデル内の情報に基づき決定され得る。線量計算エンジンは、システムによって印加される放射線の線量が、罹患組織および健常組織をどのように治療し、そのような組織に効果をもたらし、または治療および効果の両方をもたらすかについての情報も取得する。この情報は、RBEモデルから取得され得る。線量計算エンジンは、患者体内の組織がシステムによって印加される放射線にどのような影響を及ぼすか(たとえば、放射線吸収)、およびそのような効果を打ち消すために必要な重み係数に関する情報も取得する。この情報は、RBEモデルから取得され得る。
【0115】
線量計算エンジンは、患者に適用されるべき線量レジメンを決定するように構成される。線量レジメンは、予測モデルから取得された前述の情報およびRBEモデルから取得された前述の情報に基づき患者に照射されるべき等価線量およびそれらの等価線量が照射されるべき率を含み得る。たとえば、前に説明されているように、超高(FLASH)線量率で放射線が印加されるときに、健常組織の損傷は、その同じ組織が同じ線量をより長い時間スケールで照射されたときに比べて少なく、腫瘍は類似の有効性で治療される。言い換えると、腫瘍または他の罹患組織については、治療に対する臨界因子は、線量率とは反対に全放射線量であり、一方、健常組織については、線量率は、何も望まれないところで損傷を減らす因子である。この例では、患者体内の治療されるべき罹患組織の特性、罹患組織に隣接する健常組織の特性、放射線を照射するシステムの能力、罹患組織および健常組織に対する放射線のRBE、印加されるべきターゲット線量および/または線量分布を知った上で、線量計算エンジンは、治療されるべき罹患組織--たとえば、ターゲット体積--をボクセルに分割し、各ボクセルに印加されるべき放射線の線量を決定し、その線量が照射されるべき率を設定する。たとえば、線量計算エンジンは、各ボクセルに、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える放射線の線量を印加することを決定し得る。たとえば、線量計算エンジンは、各ボクセルに、500ms未満の持続時間において毎秒1グレイを超える放射線の線量を印加することを決定し得る。たとえば、線量計算エンジンは、各ボクセルに、500ms未満の持続時間において毎秒40グレイから毎秒120グレイの間の線量の放射線を印加することを決定し得る。放射線は、たとえば図12から図19、または図33から図42に関して、説明されているようにカラム毎に印加されてよく、それによって、放射線がターゲットに到達するまでに通過する健常組織への損傷を低減する。いくつかの実装形態において、超高線量率放射線は、たとえば、放射線をターゲットを横切って散乱させ、放射線が静止している間に図12から図19または図33から図42に関して説明されているようにエネルギーを変化させ、健常組織の放射線への曝露を制限するためにボーラスを使用することによって、ターゲット全体に一度に印加され得る。
【0116】
いくつかの実装形態において、線量計算エンジンは、線量が照射されるべき時間スケールを見て、放射線のRBEを調整することを試みる際に、個別の線量に1つまたは複数の重みを適用してもよい。たとえば、線量計算エンジンは、線量が印加されるべき持続時間に基づきRBEを調整するためにボクセルへの線量に重み係数を適用するように構成され得る。述べたように、生物学は、放射線の線量がどのように堆積されるか、および組織が線量にどのように反応するかに影響を及ぼし得る。重み係数は、これらの生物学的効果を打ち消すために適用されてよい。重み係数は、前に説明されているように、患者によって実際に吸収され得る一定量の破壊的放射線を照射するために生物学的効果を考慮するように調整されている等価線量を生成する。一例において、重み係数は、線量が一定持続時間の間に増大することを引き起こし、それにより超高線量率を生成するか、またはすでにある超高線量率を高める。一例において、重み係数は、線量がまだ超高線量率である間の持続時間の間に減少すること、または通常線量率まで減少することを引き起こす。
【0117】
例示的なモジュールは、シーケンサ1204(または「オプティマイザ」)を含む。シーケンサ1204は、モデルに基づき、線量の照射を順序付けするための命令を生成する。いくつかの実装形態において、シーケンサは、線量計算エンジンによって決定された有効線量を最適化するために線量の照射を順序付けする命令を生成するように構成される。たとえば、指示は、粒子線治療システムを制御して、指定された線量を指定された線量率で各ボクセルに提供するように制御システムによって実行可能であり得る。線量の照射は自動的であるか、またはユーザからの入力を必要とし得る。前に説明されているように、シーケンサは、予測モデルからの情報、またはたとえば技術者によって提供される他の情報に基づき、線量の照射を順序付けるように構成される--たとえば、書かれるか、またはプログラムされる。線量の順序は、線量を照射するのにかかる時間を最適化--たとえば、最小化--するように意図され、したがって、超高線量率での放射線の照射を促進し得る。たとえば、シーケンサは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、線量を調節するための戦略、粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、コリメータを構成するのに要する時間、もしくは粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの1つまたは複数、またはそれらのうちの2つ以上、またはそれらのうちの3つ以上、またはそれらのうちの4つ以上、またはそれらのうちの5つ以上、またはそれらのすべてに基づき、線量の照射を順序付けるように構成され得る。この点で、これらなどの動作は、線量が照射され得る時間に影響を及ぼす。超高線量率を達成するために、タイミングは本明細書において説明されているような考慮事項である。したがって、超高線量率およびその利点を達成するために必要な時間的制約条件を満たすために照射ターゲットに線量が照射されるべき場所を決定するときにこれらなどの因子が考慮される。
【0118】
いくつかの実装形態において、値は、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、線量を調節するための戦略、粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、コリメータを構成するのに要する時間、および粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちのすべてまたはいくつかについて決定されるか、それらに割り当てられ得る。
【0119】
シーケンサは、どのように線量が照射されるべきか--たとえば、カラムまたはスポットで、超高線量率で--を知っており、前述の値を考慮する実行された計算に基づき線量を照射する順序を決定する。たとえば、図31を参照すると、隣接するボクセル1205、1206、1207、および1208を含む、ターゲットの重なり合うボクセルが示されている。シーケンサは、その計算に基づき、粒子ビームをボクセル1205からボクセル1206に動かすことが可能であり、粒子ビームが次いで隣接ボクセル1207、隣接ボクセル1208などに動かせるので、ターゲット内のすべてのボクセルに対して超高線量率をそのまま達成することが可能であると決定し得る。シーケンサは、その計算に基づき、粒子ビームをボクセル1205からボクセル1207に移動させても、ターゲット内のすべてのボクセルについて超高線量率を達成することは可能でないと決定し得る。これは、粒子ビームを中断することなく、隣接していないボクセル1206と1208との間をビームが移動するときにコリメータまたはエネルギー吸収プレートなどのシステム内のハードウェアを移動するか、または再構成するのに時間がかかりすぎるせいであり得る。言い換えると、シーケンサは、超高線量率で隣接するボクセルを順に治療する治療シーケンスを決定しており、それによって、粒子ビームを維持しながら治療配置の間でシステムを再構成するための機械的移動量を減らす。
【0120】
いくつかの実装形態において、シーケンサは、粒子加速器によって生成される粒子ビームのパルスの構造、粒子ビームの1パルスあたりの最大線量、粒子ビームを動かす走査磁石の掃引時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるのに要する時間、粒子ビームのエネルギーを変化させるために1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かすのに要する時間、線量を調節するための戦略、粒子ビームをコリメートするためのコリメータを動かすのに要する時間、コリメータを構成するのに要する時間、粒子ビーム中の粒子のブラッグピークを変更するためにレンジモジュレータを制御するのに要する時間、のうちの各々にいくつかの異なる値を割り当て得る。シーケンサは、所望の線量率を満たすために放射線の線量が適用されるべき最適化された順序を取得するためにこれらの異なる値を反復する計算を実行し得る。最適化は、時間および治療に関して最良の順序を取得すること、または時間および治療に関して改善された順序を取得することを含み得る。
【0121】
例として、約4cm×4cm×4cmの、腫瘍などの、立方体の治療体積は2Gyで治療されるべきである。治療計画は、体積内の125個の全スポットに対して、各々25個のスポット、すなわち、5行×5列を有する5つの層を含む。システムは1.3ms毎に陽子を1パルス照射する。この例では、各スポットは少なくとも4つのパルスを受けなければならず、各パルス内の電荷の能動的線量制御を通じてそのスポットへの線量が正確に照射され得る。最も深い層は、そこにより多くの電荷が必要になるので6パルスを必要とする。走査磁石は1.3ms以下で1つのスポットから隣のスポットに移動できるほど高速に動くので、ビーム走査に追加の時間は必要ない。エネルギー層切り替えは、この例では50msを要する。
【0122】
次の治療計画の抜粋例は、図1に関して説明されているような層毎の治療を使用して実施される。最も深い層(1)から最も浅い層(5)まで治療が層に配置構成される場合、
- ビーム照射は時刻t=0に始まる。
- 層1の各スポットは、照射に1.3ms×6パルス=7.8msを要する。
- スポットからスポットへと移動する時間がない。
- 層全体は、7.8ms×25スポット=195msを要する。
- 次の層への切り替えに50msかかり、次の層でのビーム照射はt=245msで開始する。
- 層2から5の各スポットは、照射に4パルス×1.3ms=5.2msを要する。各層は、5.2ms×25スポット=130msを要する。
- 層2のビーム照射は、t=325msで終了する。
- 層3のビーム照射は、t=505msで終了する。
- 層4のビーム照射は、t=685msで終了する。
- 層5のビーム照射は、t=865msで終了し、全治療が終了する。
上記の例では、2.3Gy/sの平均線量率で865msの間に2Gyが体積全体に照射され、これはいくつかの定義の下で40Gy/sなどの例示的な「FLASH」線量を十分下回っている。しかし、最も深い層の各スポットは、各パルスから隣接するスポット上にこぼれる線量を無視すると、約7.8ms以内に2Gyに達した。それは、それらのスポットに対して256Gy/sの線量率である。線量が最も深い層に照射されると、線量はより浅い層にも照射される。したがって、最も浅い層の各スポットは、ほとんど865m/s全体にわたって線量を受け、その結果、256Gy/sよりも低い線量率を受ける。
【0123】
次の治療計画の抜粋例は、図2に関して説明されているようなカラム毎の治療を使用して実施される。前の段落で説明されている同じ量の治療が5つの層の代わりに25個のカラム内に再配置されるべきであった場合、各カラムはスポット5つ分の深さであるとすると、
- ビーム照射はt=0に始まる。
- 層1のスポットは、照射に7.8msを要する。
- 次の浅い深さに切り換えるのに50ms。
- 層2のスポットビーム照射は、57.8msで始まる。
- 層3のスポットビーム照射は、113msで始まる。
- 層4のスポットビーム照射は、168.2msで始まる。
- このカラムは223.4msで完了する。
- 治療は223.4ms×25カラム=5.6sで完了する。
この治療の結果、全体の治療時間は長くなるが、各カラムは2Gy/223.4ms=9Gy/sの線量率を受ける。これは、より高い線量率ではあるが、すべてのカラムのすべての部分についていくつかの定義の下ではFLASH線量率ではない場合がある。しかし、1パルスあたりの最大陽子電荷が増大し、同じパルス数であれば2Gyではなく10Gyに達することが可能であると仮定する。この場合、層毎の治療例に対する線量率は11.5Gy/sまで上昇する。この場合、カラム毎の治療例におけるすべてのボクセルは、45Gy/sの率の線量を照射される。また、層切り替え時間は、50msから25msに短縮される。この例では、カラム照射における各カラムでは、223.4msの代わりに123.4msを要する。この例では、より低い最大パルス電荷に対するカラム線量率は16.3Gy/sであり、高い最大パルス電荷に対するカラム線量率は治療体積内のすべてのボクセルに対して81.5Gy/sである。123.4msの間81.5Gy/sの線量率は、FLASHの大部分の定義の下でFLASH線量率として適格である。
【0124】
図11を参照すると、制御システムは、患者の腫瘍などの、ターゲットに対する治療計画を実施するように構成され--たとえば、プログラムされ--得る。前に説明されているように、治療計画は、照射する粒子ビームの線量(たとえば、等価線量)と、患者のボクセルに線量が照射されるべき率(たとえば、超高線量率または標準線量率)とを含むパラメータを指定し得る。治療計画は、また、ターゲットに線量が照射されるべき配置およびターゲットの一部が治療されるべき順序も指定し得る。たとえば、図1および図2を参照すると、ターゲットの一部分は、本明細書において説明されているようにカラムまたは層であってよい。最初に、制御システムは、粒子加速器--この例では、シンクロサイクロトロン310--を制御して、ビーム電流および強度を含む、指定されたパラメータを有する粒子ビームを生成(1101)し得る。いくつかの実装形態において、粒子ビームのビーム電流は、100ナノアンペア(nA)以下の電流である。いくつかの実装形態において、粒子ビームのビーム電流は、50nA以下の電流である。ナノアンペアのオーダーのビーム電流のレベルは、患者に対する傷害のリスクを低減するか、治療室内の加速器または他の電子機器に対する損傷のリスクを低減するか、またはそのような傷害および損傷の両方のリスクを低減し得る。
【0125】
粒子ビームの強度は、また、異なる粒子ビームエネルギーでターゲットに印加される線量を制御するか、または変更するように、制御される(1102)か、または変調され得る。したがって、強度変調陽子線治療(IMPT)は、本明細書において説明されている技術を使用して施され得る。いくつかの実装形態において、同じ照射ターゲットは、異なる強度または同じ強度を有するビームを複数の異なる角度から、FLASH線量率またはFLASH線量率よりも低い線量率のいずれかで使用して治療され得る。たとえば、照射ターゲットは、異なる角度でカラム別に放射線を照射することによってFLASH線量率または非FLASH線量率で治療され得る。そのような例では、放射線は、異なる角度で照射されるので、治療を受けていない健常組織は、一度だけ放射線に曝され得る。
【0126】
ビーム強度は、少なくとも一部は、粒子ビーム内の粒子の数に基づく。たとえば、ビーム強度は、粒子ビーム内の粒子の数によって定められ得る。粒子ビームの強度は、粒子ビームのスポットからスポットへと変化し得る。さらに、粒子ビームの1つのスポットの強度は、すぐ隣にあるスポットを含む、粒子ビームの1つまたは複数の他のスポットの強度とは独立していてもよい。したがって、いくつかの例では、3次元体積内の任意のスポットは、1つまたは複数の隣接するスポットの線量とは無関係に任意の線量を受けて治療され得る。制御システムは、1つまたは複数の技術を使用して粒子ビーム強度を制御し得る。
【0127】
例示的な一技術において、粒子ビームの強度は、プラズマ柱から取得された粒子パルスのパルス持続時間を変化させることによって制御され得る。より詳しくは、RF電圧は開始(たとえば、最高)周波数(たとえば、135メガヘルツ(MHz))から終了(たとえば、最低)周波数(たとえば、90MHz)まで掃引する。粒子源は、RF掃引において一定期間作動されて、プラズマ柱を発生する。たとえば、いくつかの実装形態において、粒子源は、一定期間にわたって132MHzで作動する。その期間に、粒子は、RF電圧によって生じる電場によってプラズマ柱から引き出される。粒子は、RF電圧周波数が低下するにつれ拡大する軌道内で外向きに加速し、減少する磁場と歩調を合わせ、粒子がある時間(たとえば、約600マイクロ秒)経過した後に掃引されるまで相対論的質量を増やす。粒子源が作動されている持続時間を変えることで、周波数掃引においてプラズマ柱から引き出される粒子のパルスの幅が変化する。パルス幅を増やすと、引き出される粒子の量が増加し、したがって、粒子ビームの強度が増大する。逆に、パルス幅を減らすと、引き出される粒子の量が減少し、したがって、粒子ビームの強度が減少する。
【0128】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、粒子源内の陰極に印加される電圧の変化させることによって制御され得る。この点で、プラズマ柱は、粒子源の2つの陰極に電圧を印加することによって、また陰極の付近に水素(H)などのガスを出力することによって、生成される。陰極に電圧を印加すると、水素が電離し、背景磁場が電離された水素をコリメートして、それによりプラズマ柱が生成される。陰極電圧を上げると、プラズマ柱内のイオンの量が増加し、陰極電圧を下げると、プラズマ柱内のイオンの量が減少する。プラズマ柱内に存在するイオンが多いと、RF電圧掃引で引き出されるイオンが多くなり、これにより、粒子ビームの強度が増大し得る。プラズマ柱内に存在するイオンが少ないと、RF電圧掃引で引き出されるイオンが少なくなり、これにより、粒子ビームの強度が減少し得る。
【0129】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、粒子源に供給される水素の量を変化させることによって制御され得る。たとえば、粒子源に供給される水素の量を増やすと、陰極電圧に応答してプラズマ柱内に電離が生じる機会が増える。逆に、粒子源に供給される水素の量を減らすと、陰極電圧に応答してプラズマ柱内に電離が生じる機会が少なくなる。上で指摘されているように、プラズマ柱内に存在する粒子が多いと、RF電圧掃引で引き出される粒子が多くなり、これにより、粒子ビームの強度が増大し得る。プラズマ柱内に存在する粒子が少ないと、RF電圧掃引で引き出される粒子が少なくなり、これにより、粒子ビームの強度が減少し得る。
【0130】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、プラズマ柱から粒子を引き出すために使用されるRF電圧の大きさを変化させることによって制御され得る。たとえば、RF電圧の大きさを増やすと、プラズマ柱から引き出される粒子が多くなる。逆に、RF電圧の大きさを減らすと、プラズマ柱から引き出される粒子が少なくなる。より多くの粒子が引き出されると、粒子ビームは、引き出される粒子が少ないときに比べて強度が大きい。
【0131】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、粒子源が作動される周波数掃引において、したがって粒子が引き出される期間に、開始時間を変化させることによって制御され得る。より具体的には、粒子がプラズマ柱から引き出され得る周波数掃引の期間に有限な窓がある。例示的な一実装形態において、周波数は実質的に一定の速度で約135MHzから約90MHzまで掃引する。この例では、粒子は、それぞれ、開始周波数から終了周波数まで、たとえば、132MHzから131MHzまでの下向きの勾配のほぼ始まりの時点で引き出され、粒子源は、一定期間、たとえば、約0.1マイクロ秒(μs)から100μs(たとえば、1μsから10μsまたは約1μsから40μs)までの期間にわたって作動され得る。粒子源が作動される周波数を変えるステップは、粒子ビームから引き出される粒子の量、したがって粒子ビームの強度に影響を及ぼす。
【0132】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度を制御するためにパルスブランキングが使用され得る。この点で、RF周波数掃引は、1秒間に何回も(たとえば、500回/秒)繰り返される。粒子源は、それぞれの周波数掃引(たとえば、2ms毎)に作動させることが可能である。パルスブランキングは、周波数掃引毎に粒子源を作動させないことによって粒子ビームから引き出される粒子の数を減らす。最大のビーム強度を達成するために、粒子源は、周波数掃引毎に作動され得る。ビーム強度を低減するために、粒子源は、頻度を下げて、たとえば、掃引2回、3回、100回に1回の割合で作動され得る。
【0133】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、RF電圧を粒子加速器空洞に印加するために使用される1つまたは複数のD字形部にDCバイアス電圧を印加することによって制御され得る。この点で、粒子加速器は、磁石ヨークによって囲まれている空洞の周りで回転しているときに陽子が加速される空間を囲む2つの半球面を有する中空金属構造物である能動的D字形プレートを備える。能動的D字形部は、RF伝送路の終端部に印加されるRF信号によって駆動され、電場を空間内に発生させる。RF場は、加速された粒子ビームが幾何学的中心からの距離を増やすにつれ時間に関して変化させられる。ダミーD字形部は、能動的D字形部の露出された縁の近くに間隔をあけて置かれるスロットを有する矩形の金属壁を備え得る。いくつかの実装形態において、ダミーD字形部は、真空室および磁石ヨークにおいて基準電圧に接続される。
【0134】
強磁場の存在下でRF電圧を印加すると、マルチパクタリングが引き起こされ、RF場の大きさが低減され、場合によっては、電気的短絡が生じ得る。マルチパクタリングの量を減らし、それによって、RF場を維持するために、DC(直流)バイアス電圧が能動的D字形部に印加され、いくつかの実装では、ダミーD字形部にも印加され得る。いくつかの実装形態において、能動的D字形部とダミーD字形部との間の差動DCバイアス電圧は、マルチパクタリングを減らし、それによってビーム強度を高めるように制御可能であるものとしてよい。たとえば、いくつかの実装形態において、能動的D字形部にかかるDCバイアス電圧とダミーD字形部にかかるDCバイアス電圧との間に50%の差異があり得る。例示的な一実装形態において、-1.9KVのDCバイアス電圧がダミーD字形部に印加され、-1.5KVのDCバイアス電圧が能動的D字形部に印加される。
【0135】
別の例示的な技術では、粒子ビームの強度は、RF電圧が掃引される速度--たとえば、減少の勾配--を制御することによって制御され得る。勾配を減少させることによって、粒子がプラズマ柱から引き出され得る時間量を増やすことが可能である。その結果、引き出され得る粒子が多くなり、それにより、粒子ビームの強度が増大し得る。この逆も、たとえば、勾配を大きくすることによって、真であり、粒子がプラズマ柱から引き出され得る時間の長さは短縮され、その結果、粒子ビーム強度が低下し得る。
【0136】
粒子ビーム強度を制御するための前述の技術の実装については、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている、特許文献2、名称「Controlling Intensity Of A Particle Beam」において説明されている。
【0137】
制御システムは、また、粒子ビームのスポットサイズを制御(1103)し得る。上に示されているように、1つまたは複数の散乱デバイスは動いて、粒子ビームの経路内に入り、そのスポットサイズを変更し得る。散乱デバイスの移動を制御するためにモーターが使用され得る。モーターは、治療計画における指示に基づく制御システムからのコマンドに応答し得る。いくつかの実装形態において、シンクロサイクロトロンの固有のスポットサイズは、システムによって生成される最小のスポットサイズである。ビーム強度は、スポットサイズの関数でもあるので、このスポットサイズは、最大のビーム強度も生み出す。いくつかの実装形態において、システムによって生成可能なスポットサイズは、2ミリメートル(mm)シグマ未満である。いくつかの実装形態において、システムによって生成可能なスポットサイズは、少なくとも2ミリメートル(mm)シグマである。いくつかの実装形態において、システムによって生成可能なスポットサイズは、2mmシグマから20mmシグマの間である。いくつかの実装形態において、システムによって生成可能なスポットサイズは、20mmシグマ超である。いくつかの実装形態において、動作1103は、省かれてもよい。
【0138】
制御システムは、たとえば図2に示されているように、治療計画に従って粒子ビームをターゲット21を通り経路24へ移動するように走査磁石を制御する(1104)。走査磁石を制御することは、直交座標X次元方向の粒子ビームの移動を制御する走査磁石のコイル(図6および図7)を通る電流を制御すること、直交座標Y次元方向の粒子ビームの移動を制御する走査磁石のコイルを通る電流を制御することと、またはその両方を含み得る。その配置で、システムは、ターゲットを通るビーム経路に沿って延在するカラムに超高線量率の放射線を照射する。この例では、カラムは、粒子ビームの方向29に沿って配置されているターゲットの内部部分を含む(図2)。カラム25は、ビームスポットの中心からスポットの周囲に向かって放射状に延在し、カラムはターゲットを通って下方に延在するという点で3次元である。いくつかの実装形態では、カラムは、図2に示されているように、ターゲットの全体を通って延在する。いくつかの実装形態では、カラムはターゲットの途中までしか通らない。いくつかの実装形態において、カラムは完全にターゲットの内部にある。いくつかの実装形態では、カラムはターゲットの一方の表面から始まり、ターゲットの内部まで延在するが、ターゲットの他方の表面には到達しない。いくつかの実装形態では、隣接するカラムの一部が重なっている。
【0139】
カラムは、超高線量率の放射線を使用して治療される(1105)。放射線の超高線量率の例は、本明細書において説明されており、限定はしないが、5s未満の持続時間において毎秒1グレイ以上を含む。制御システムは、粒子ビームがターゲット内のカラムを治療するように粒子ビームが静止している間に粒子ビームのエネルギーを制御する。ターゲット内のカラムを治療することは、エネルギーの変化毎に、粒子ビーム内の陽子の線量の大部分(そのブラッグピーク)がターゲット内の異なる深さに堆積するように粒子ビームのエネルギーを変化させることを含む。本明細書において説明されているように、粒子ビームのエネルギーは、図12から図19および図33から図42の例に示されているように、炭化ホウ素から作製され得る、構造体を動かして粒子ビームの経路内に入れるか、またはそこから出すことによって変更され得る。図11の動作のすべてまたはいくつかは、照射ターゲット上の異なるカラムを治療するように繰り返され得る。たとえば、動作1102、1103、1104、および1105は、照射ターゲット上で治療されるべき各カラムについて繰り返され得る。
【0140】
可変エネルギーシンクロサイクロトロン(または他の種類の可変エネルギー粒子加速器)を使用する以下で説明されている実装形態では、シンクロサイクロトロンの主コイルを通る電流を変化させることによって、粒子ビームのエネルギーが変化し得る。いくつかの実装形態において、粒子ビームのエネルギーは、レンジモジュレータ460のエネルギー吸収プレートなどの、構造体を動かして粒子ビームの経路内に出し入れすることによって変化する。この点で、治療計画ではターゲット上のカラムの配置を指定するので、レンジモジュレータのエネルギー吸収プレートは、それらのプレートが動いて適所に出入りするのに要する時間を短縮するようにそれらの配置の近くに事前位置決めされ得る。図12を参照すると、たとえば、プレート500--たとえば、純粋な炭化ホウ素または炭化ホウ素複合材から作られ得る--は、放射線によるカラム501の治療が始まる前にターゲット503内のカラム501の近くに位置決めされ得る。プレートは、その配置から粒子ビーム内に移動され、それによって、プレートが移動する必要のある距離を短縮し得る。すなわち、プレート500は、レンジモジュレータ内に完全に引っ込むように構成され得る。プレートは、治療の前に部分的または完全に伸長されてもよく、その結果、粒子ビームの経路に到達するために完全に引っ込められた位置から移動する必要はない。
【0141】
プレートの1つまたは複数は、述べたように、粒子ビームのエネルギーを変更するために粒子ビームの経路に入り、そこから出るように制御され得る。一例において、1つまたは複数のプレートの各々は、100ms以下の持続時間において粒子ビームの経路内に入るか、またはそこから出るように移動可能である。一例において、1つまたは複数のプレートの各々は、50ms以下の持続時間において粒子ビームの経路内に入るか、またはそこから出るように移動可能である。一例において、1つまたは複数のプレートの各々は、20ms以下の持続時間において粒子ビームの経路内に入るか、またはそこから出るように移動可能である。前に説明されているように、リニアモーターの使用により、プレートの素早い動きが促進され得るが、電気モーターも使用され得る。この例では、素早い動きは、数十ミリ秒のオーダーの動きを含む。
【0142】
プレートの1つまたは複数は、治療計画内で定義されている順序に基づき、動かされて粒子ビームの経路に入り、そこから出るものとしてよい。たとえば、図12図13図14、および図15を参照すると、粒子ビーム504は、ターゲット503のカラム501を超高線量率で治療するために走査システムによって位置決めされる。この例では、カラム501の次第に浅くなる部分を治療するために、治療は、最初に、粒子ビームの経路にプレートがない状態で実行される。これは、図12に示されている。したがって、カラム501の最深部502が治療される。図13において、プレート500aは、矢印505の方向に沿って粒子ビーム504の経路内に入り、粒子ビームのエネルギーを低減する。このプレート構成では、カラム501の第2の最深部506が治療される。図14において、プレート500bは、また、矢印505の方向に沿って粒子ビーム504の経路内に入り、粒子ビームのエネルギーをさらに低減する。このプレート構成では、カラム501の第3の最深部508が治療される。図15において、プレート500cは、また、矢印505の方向に沿って粒子ビーム504の経路内に入り、粒子ビームのエネルギーをさらに低減する。このプレート構成では、カラム501の最浅部510が治療される。粒子ビーム504が静止している間に粒子ビーム504のエネルギーを変化させることによって、カラム501は全体が、超高線量率放射線を照射され得る。超高線量率の例は、本明細書に提示されている。
【0143】
粒子ビームは、ターゲット503の異なるカラムを治療するためにターゲットを通る新しい経路に走査磁石によって方向付けられ得る。異なるカラムは、カラム501にすぐ隣にあるか、またはカラム501にすぐ隣になくてもよい。いくつかの実装形態において、ビームのスポットは、一部重なり得る。たとえば、図16図17図18、および図19を参照すると、粒子ビーム604は、ターゲット503のカラム601を超高線量率で治療するために走査システムによって位置決めされる。この例では、カラム601の次第に深くなる部分を治療するために、治療は、最初に、すべてのプレート500a、500b、および500cが粒子ビームの経路にある状態で実行される。これは、図16に示されている。したがって、カラム601の最浅部602が最初に治療される。図17において、プレート500cは矢印605の方向に沿って粒子ビーム604の経路から出て、粒子ビームのエネルギーを増大する。このプレート構成では、カラム601の第2の最浅部602が治療される。図18において、プレート500bは、また、矢印605の方向に沿って粒子ビーム604の経路から出て、粒子ビームのエネルギーをさらに増大する。このプレート構成では、カラム601の第3の最浅部608が治療される。図19において、プレート500cは、また、矢印605の方向に沿って粒子ビーム604の経路から出て、粒子ビームのエネルギーをさらに増大する。このプレート構成では、カラム601の最深部610が治療される。粒子ビーム604が静止している間に粒子ビーム604のエネルギーを変化させることによって、カラム601は全体が、超高線量率放射線を照射され得る。
【0144】
いくつかの実装形態において、プレートは、カラムを治療するために順序付けられる必要はない。たとえば、プレート500aは、最初に粒子ビームの経路内に移動され、次にプレート500c、さらにプレート500bと続くことも可能である。
【0145】
カラム501または601への超高線量率放射線の照射時に、治療計画で指定された超高線量率放射線を照射するために、粒子ビーム504または604の強度は、必要に応じて変更されてよい。注目すべきは、粒子ビームは、各カラムへの超高線量率放射線の照射時に静止していることである。たとえば、超高線量率放射線がカラム内の異なる深さに照射されている間、粒子ビームの経路はターゲットに関して変化せず、粒子ビームは移動しない。超高線量率放射線がカラムに照射された後、粒子ビームは、治療計画に従ってターゲットを通る新しい経路に方向付けられる。次いで、超高線量率放射線は、図11に関して説明されているのと同じ方式で治療計画に従って新しい経路において印加される。このプロセスは、ターゲットのすべてが超高線量率放射線を使用して治療されるまで、またはターゲットの指定された部分が超高線量率放射線を使用して治療されるまで繰り返される。いくつかの実装形態において、カラムは、図に示すように平行であってよく、いくつかの実装形態では一部が重なり合う。いくつかの実装形態において、カラムの少なくともいくつかは、平行でなく、結果として重なり得る。いくつかの実装形態において、カラムのセットは、異なる角度から同じターゲットまたは微小体積に適用されてよく、それによって、健常組織が放射線の衝突を複数回受けることを防止しながらターゲットを放射線で複数回治療し得る。
【0146】
いくつかの実装形態において、粒子ビームは、超高線量率放射線を使用してすでに治療済みの経路に沿って再び方向付けられることは決してない。たとえば、粒子ビームは、ターゲット503を通る経路から経路へと1ステップずつ進む。この例では、経路に沿ってターゲット内に延在する各カラムは、超高線量率放射線を使用して一度だけ治療される。カラムは再アクセスおよび再治療がなされることはない。超高線量率放射線を使用してカラムを一度だけ治療することによって、ターゲットよりも上、および場合によっては下の健常組織は、放射線からの損傷を受けにくい。しかしながら、注目すべきは、本明細書において説明されている例示的なシステムは、超高線量率放射線を使用して各カラムを1回だけ治療することに限定されないことである。たとえば、いくつかの実施例において、各カラムは、任意の適切な回数だけ再アクセスされ、1つまたは複数の追加線量の超高線量率放射線を受け得る。さらに、本明細書において説明されている例示的なシステムは、超高線量率放射線のみを使用して各カラムを治療することに限定されない。たとえば、ターゲットのカラムは、超高線量率とみなされるであろうものよりも少ない線量率の放射線を使用して本明細書において説明されているように治療され得る。たとえば、ターゲットのカラムは、1分以上の持続時間で毎秒0.1グレイなどの線量率の放射線を使用して本明細書において説明されているように治療され得る。いくつかの実装形態において、図2に示されているようなカラム毎の治療は、図1に示されているような層毎の治療と組み合わされ得る。たとえば、ターゲットは、カラム毎に治療された後に層毎に治療されるか、または層毎に治療された後にカラム毎に治療され得る。いくつかの実装形態において、ターゲットの一部はカラム毎に治療され、ターゲットの一部は層毎に治療されてもよく、各々の場合においても超高線量率以下の放射線を使用する。
【0147】
いくつかの実装形態において、レンジモジュレータのエネルギー吸収プレートは、治療時間を短縮するためにターゲット上の異なるカラムに対して異なる順序付けをされ得る。たとえば、カラム501については、プレートは、図12から図15に関して説明されているように順次動かされて粒子ビーム内に入るものとしてよい。次いで、粒子ビームは、ターゲットの隣接する--または他の--カラム601を治療するように方向付けられ得る。プレートがすでに粒子ビームのその経路を覆っている場合、プレートは、図16から図19に関して説明されているように順次動かされて粒子ビームの経路から出され得る。プレートが粒子ビームのその経路をすでに覆っているというのではない場合、プレートは一緒に動いて粒子ビームのその経路を覆い、次いで順次粒子ビームの経路から出され得る。したがって、第1のカラムについては、プレートは、順次動かされて、第1のカラムの次第に浅くなる部分--たとえば、層--を治療し得る。第1のカラムに隣接する第2のカラムについては、プレートは、順次動かされて、第2のカラムの連続的に深くなる部分--たとえば、層--を治療し得る。このプロセスは、粒子ビームの隣接する経路についてターゲット全体にわたって繰り返され得る。いくつかの実装形態において、プレートの移動は、ビーム場内で、たとえば、完全に引っ込められた位置からではなく、スポットサイズ(たとえば、ミリメートルのオーダーの)に基づき増分的であるものとしてよい。たとえば、プレートは、各カラムについて完全に引っ込められ、伸長されるのではなく、粒子ビーム経路から隣接する粒子ビーム経路へと移動され得る。
【0148】
いくつかの実装形態において、エネルギー吸収プレートは、ビーム場の全部または一部を横切って移動可能である。いくつかの例では、ビーム場は、ビームが患者身体上の治療領域に平行な平面を横切って移動され得る最大の広がりである。プレートの1つまたは複数は、粒子ビームから隣接する粒子ビームへと移動する際に粒子ビームを追跡し得る。たとえば、プレートの1つまたは複数は、プレートが動いている間に粒子ビームがプレートの1つまたは複数を通過するように粒子ビームの移動とともに移動し得る。
【0149】
いくつかの実装形態において、超高(またはFLASH)線量率放射線よりも少ない線量の放射線が、炭化ホウ素から作られたプレート、多面体、または湾曲した3次元形状などの構造体を有するエネルギーデグレーダを使用してターゲットに層毎に印加され得る。たとえば、図1を参照すると、矢印15の方向に沿って層を横切って粒子ビームを動かすことによって層10に線量を照射する十分なエネルギーを有する粒子ビーム12を使用してターゲット11の層10全体が治療され得る。次いで、エネルギーデグレーダは、再構成され得る--たとえば、炭化ホウ素から作られたプレートは動かされビーム経路から外に出されて、粒子ビームのエネルギーレベルを高め得る。次いで、ターゲット11の異なる層16が、層16に線量を照射するのに十分な異なるエネルギーを有する粒子ビームを使用して同じ方式で治療され、というように続くものとしてよい。
【0150】
いくつかの実装形態において、FLASH線量の放射線は、ビーム方向が粒子加速器の等角点における単一のスポットに固定された状態で、単一のカラムに沿って照射され得る。いくつかの実装形態において、FLASH線量の放射線が、単一のスポットに向けられたカラムではなく、わずかに大きい局在する体積--微小体積と称される--を使用して照射され得る。微小体積は、ボクセル、ボクセルの一部であり得るか、または治療計画で指定されているような複数のボクセルを含み得る。図33から図42は、照射ターゲットの微小体積に対するFLASH線量率を使用するカラム別の放射線の照射の例を示している。FLASH線量率の例が、本明細書において説明されている。いくつかの実装形態において、図33から図42の微小体積へのカラム別の放射線の照射は、非FLASH線量率、またはFLASH線量率と非FLASH線量率との組合せであってよい。
【0151】
図33は、患者体内の腫瘍などの、照射ターゲットの部分1400の一例を示している。部分1400は、4つの微小体積1401、1402、1403、および1404に分割されている。立方体微小体積が示されているけれども、微小体積は、3次元の超直方体、規則正しい湾曲形状、または無定形形状など、任意の適切な形状を有し得る。この例では、各微小体積は、たとえば、図12から図19に関して本明細書において説明されている方式でカラム別に放射線の照射を通して治療される。たとえば、微小体積のカラムの深さは、エネルギーデグレーダプレートを使用してビームエネルギーを変化させることによって、または可変エネルギーシンクロサイクロトロンを制御してビームエネルギーを変化させることによって、放射線により治療され得る。個別の微小体積が治療された後に、次の微小体積が治療され、というように、照射ターゲット全体が治療されるまで続く。微小体積の治療は、任意の適切な順番または順序に従うものとしてよい。
【0152】
図33から図42の例では、8つのカラム1405のみが示されている。しかしながら、任意の適切な数のカラムが微小体積毎に治療され得る。いくつかの例では、10から20のスポット、したがってカラムで微小体積を治療し得る。それに加えて、各スポットは放射線のカラムに対応するけれども、明確にするために図では前のカラムのみが示されている。さらに、本明細書において説明されている例では、カラムの最深部から最浅部までの微小体積を治療するが、そうである必要はない。たとえば、エネルギーデグレーダプレートは、図12から図19に関して説明されているように、カラムの最深部からカラムの最浅部までの1つの微小体積を治療し、次いで、カラムの最浅部からカラムの最深部までの隣の微小体積を治療する、などのように制御され得る。他の例では、異なるカラムの深さ部分が非連続的に治療され得る。
【0153】
図33において、カラム1405の最深部1407が治療される。カラムの治療部分は、本明細書の慣例のように、陰影を付けられ、未治療部分は陰影を付けられていない。図34において、カラム1405の次の最深部1408が治療される。図35において、カラム1405の次の最深部1409が治療される。図36において、カラム1405の次の最深部1410が治療される。図37において、カラム1405の最浅部1411が治療され、それによって微小体積1401の治療を完了する。この点で、カラムは明確にするために分離されているけれども、カラムは、微小体積全体が放射線で治療されることを確実にするために図12から図19に関する場合のように実際に少なくとも一部は重なり得る。
【0154】
微小体積1401が治療された後、次の微小体積1402が類似の方式で治療される。図38において、カラム1415の最深部1417が治療される。図39において、カラム1415の次の最深部1418が治療される。図40において、カラム1415の次の最深部1419が治療される。図41において、カラム1415の次の最深部1420が治療される。図42において、カラム1415の最浅部1421が治療され、それによって微小体積1402の治療を完了する。上記の場合と同様に、カラムは明確にするために分離されているけれども、カラムは、微小体積全体が放射線で治療されることを確実にするために図12から図19に関する場合のように実際に少なくとも一部は重なり得る。
【0155】
微小体積1402が治療された後、残りの微小体積が類似の方式で治療される。微小体積は、任意の順番または順序で、カラムの任意の適切な個数および配置を使用して治療されてもよい。それに加えて、本明細書において説明されているように、個別のカラムは、異なるビーム強度を使用して治療され得る。これらの強度は、カラムからカラムへ、微小体積から微小体積へ、またはカラムからカラムへと微小体積から微小体積への両方で変化し得る。さらに、各微小体積は、強度変調陽子線治療(IMPT)の一部として複数の異なる角度から治療され得る。
【0156】
一例において、図43Aおよび図43Bのプロットは、治療体積に照射される放射線量を計算するモンテカルロシミュレーションの結果、さらにはその線量計算において各ボクセルが最終線量に達するのに要する時間を示す。一例として、シンクロサイクロトロンのいくつかのパラメータに性能修正--たとえば、層切り替え時間を50msの代わりに10ms以下にする、ビーム電流を増やす、パルス-パルスの安定性を向上させる--を適用すると、各辺が3cmである立方体に照射されたスポットは、500ms未満でその線量を受ける治療体積のすべての部分により照射され得る。これらの小さな立方体は、厳密には、各エネルギー層が単一のスポットを有するカラム内で照射されないが、むしろ、各層が数個(たとえば、10~20個)のスポットを有する微小体積において照射される。それに加えて、コリメーションが、一方の微小体積を別の微小体積から分離するために使用されてよく、これによりこれらの体積が妥当な総治療時間内に照射されることを可能にする。たとえば、標準的な多葉コリメータ(MLC)を含む、本明細書において説明されている構成可能なコリメータまたは他の適切なコリメーティングデバイスが使用され得る。
【0157】
いくつかの実装形態において、各微小体積は、図12から図19に関して説明されている方式で治療され得る。たとえば、微小体積内のカラムの全体が、同じ微小体積内の次のカラムに移動する前に治療され得る。微小体積内のすべてのカラムが治療された後、治療は、次の微小体積に進む。そこで、治療は、微小体積のすべてのカラムが治療されるまで繰り返される。次いで、治療は、次の微小体積に進み、照射ターゲット全体が治療されるまでさらに次の微小体積などへと進む。これらの実装形態は、図33から図42の実装形態とは異なり、微小体積内の各カラムの深さ全体--または微小層--が、その微小体積内のすべてのカラムについて一度に治療される。その後、治療は、次の深さに進み、微小体積内のすべてのカラムが治療されるまで次の深さなどへと進む。
【0158】
本明細書において説明されているように、カラムの全部または一部に超高線量(FLASH)率の放射線を照射することは、任意のランダムな方式で放射線の線量を堆積させるために実施され得る。たとえば、図32を参照すると、放射線ターゲット内の例示的なカラム1299は、複数の深さ部分からなるものとしてよい。各深さ部分は、粒子ビームのスポットの直径程度を有するターゲットの微小層を含み得る。本明細書において説明されているカラム別の照射または放射線を使用することで、放射線が超高線量(FLASH)率で深さ1301、1302、および1303のそれぞれに照射され得る。線量は、治療計画によって確立された任意の方式で照射され得る。たとえば、より高い線量の放射線は、深さ1301または1302よりも深さ1303に印加され得る。別の例では、最高線量が深さ1303に印加され、次に高い線量が深さ1302に印加され、最低線量が深さ1302に印加され得る。別の例では、最高線量が深さ1301に印加され、次に高い線量が深さ1303に印加され、最低線量が深さ1302に印加され得る。したがって、線量は、複数の線量を足し合わせることによって生成されるブラッグピークの形状に関係なく--たとえば、それとは独立して--印加されてもよい。言い換えると、いくつかの場合において、線量は、超高線量(FLASH)率またはより低い線量率で照射ターゲットに照射される放射線のカラムに沿って拡大ブラッグピークを取得するように構成され得ない。
【0159】
いくつかの実装形態において、1つまたは複数のリッジフィルタまたはレンジモジュレータホイールが、粒子ビームの経路に加えられ、粒子ビームのブラッグピークを拡大--たとえば、細長く--するものとしてよい。細長または拡大ブラッグピークは、均一な深さ-線量曲線を使用することによって生成される。すなわち、線量は、平坦な、または実質的に平坦な細長ブラッグピークを達成するために線量が照射されるべき組織の深さに基づきキャリブレートされる。図32を参照すると、たとえば、カラム別の放射線の照射を使用して1300などの拡大ブラッグピークを達成するために、完全な(100%の)線量が、照射ターゲットのカラム1299の深さ1301に一定期間にわたって印加され得る。次に、80%の線量が、一定期間にわたって、深さ1302に印加され得る。深さ1302は、深さ1301よりアップビーム(up-beam)である(すなわち、より浅い)。次に、66%の線量が、一定期間にわたって、深さ1303に印加され得る。深さ1303は、深さ1302よりアップビームである(すなわち、より浅い)。これは、拡大ブラッグピーク1300が達成されるまで繰り返され得る。
【0160】
モーターは、1つまたは複数のリッジフィルタまたはレンジモジュレータホイールが粒子ビームの経路内に入るか、または出る動きを制御し得る。モーターは、制御システムのコマンドに応答し得る。粒子ビームのブラッグピークの拡大は、図12から図19に示されているようなカラム治療または図1に示されているような層毎の治療の両方に使用され得る。いくつかの実装形態において、粒子ビームの強度は、ブラッグピークが拡大されたときに本明細書において説明されているような技術を使用して高められ得る。
【0161】
いくつかの実装形態において、レンジモジュレータホイールは、粒子ビームの動きを追跡するためにビーム場内の2次元または3次元で動くようにロボット的に制御され得る。たとえば、図23を参照すると、レンジモジュレータホイールは、粒子ビームの経路内の直交座標系のX次元918およびZ次元917の方向に移動するようにロボット制御され得る。レンジモジュレータホイールは、様々な厚さを有し、粒子ビームのブラッグピーク、したがって粒子の大半が堆積されるターゲット内の深さを変化させるようにスピンし得る。いくつかの実装形態において、レンジモジュレータホイールは、その様々な厚さを定義するステップを含み得る。いくつかの実装形態において、粒子ビームの強度は、レンジモジュレータホイール上の各配置で照射される線量を制御するために制御され得る。これは、深さ-線量分布を制御するために実行され得る。
【0162】
上で説明されているように、いくつかの実装形態において、走査システムは、構成可能コリメータを備えない。たとえば、エネルギーデグレーダに炭化ホウ素を含むシステムでは、スポットサイズは、構成可能コリメータを必要なくするのに十分に小さく、正確であり得る。しかしながら、いくつかの実装形態では、走査システムは、構成可能コリメータを備える。構成可能コリメータは、粒子ビームが照射ターゲットに到達する前に粒子ビームをトリミングするように制御システムによって制御され得る。また、説明されているように、構成可能コリメータは、ターゲット内のカラムの異なる部分--たとえば、深さ部分--を治療するためにその粒子ビームのエネルギーが変化するのに合わせて静止粒子ビームを異なる形でトリミングするように制御され得る。より具体的には、粒子ビームの断面積--言い換えると、粒子ビームのスポットサイズ--は、粒子ビームが異なる量の組織を通過する際に変化し得る。粒子ビームのサイズ、したがって治療されるカラムの半径がカラムの長さ全体にわたって一貫していることを確実にするために、コリメータの構成は、異なる量のトリミングがなされるように変更され得る。言い換えると、構成可能コリメータの構成は、粒子ビームのエネルギーの変化に応答して変更され得る。すなわち、異なるエネルギーのビームは異なる量の組織を透過するので、それらのビームは異なる量の分散を受け、したがって、半径が一定である円筒形形状を有するカラムなどの規則正しい形状のカラムを生成するために異なる量のコリメーションを必要とすることがある。
【0163】
いくつかの実装形態において、構成可能コリメータは、一般的に平らな構造体を含み、これらは「プレート」または「リーフ」と称され、ある放射線の通過をブロックし、他の放射線の通過を許すようにビームまたは治療領域内に移動するように制御可能である。上で説明されているように、互いに向き合うリーフが2セットあり得る。リーフのセットは、治療に適切なサイズおよび形状の開口部を形成するように制御可能である。たとえば、リーフの各セットは、エッジの第1の側の粒子ビームの第1の部分がリーフによってブロックされるように、またエッジの第2の側の粒子ビームの第2の部分がリーフによってブロックされず、治療領域に移動することを許されるように粒子ビームの経路内に移動可能であるエッジを画成するように構成可能である。いくつかの実装形態において、リーフは、エッジを画成するために治療領域の方への、または治療領域から遠ざかる方へのリーフの移動を制御するために制御可能であるリニアモーター--リーフ毎に1つずつ--に接続されるか、その一部であるか、またはそれを含む。
【0164】
いくつかの実装形態において、リニアモーターは、第1のエッジを画成するようにリーフのセットを構成し、第1のエッジに面する第2のエッジを画成するようにリーフの別のセットを構成する、ように制御可能である。構成可能コリメータで使用されるリニアモーターは、図10に関して説明されているレンジモジュレータプレートで使用されるリニアモーターに類似しているか、または同一の構成を有し得る。たとえば、リニアモーターの各々は移動可能コンポーネントと固定コンポーネントとを備え得る。固定コンポーネントは、第1の磁場を発生するための磁場発生器を備える。磁場発生器の一例は、隣接して相隔てて並び、極が整列されている、2つの固定磁石を備える。移動可能コンポーネントは、1つまたは複数のコイルを備え、このコイルに電流を流すと第1の磁場と相互作用する第2の磁場を発生して移動可能コンポーネントを固定コンポーネントに相対的に移動させる。たとえば、移動可能コンポーネントは、固定コンポーネントを構成する2つの磁石の間にあるコイル搬送プレートであってよい。電流がコイルを通過するときに、その電流は、2つの磁石によって発生する磁場と相互作用し、移動可能コンポーネント(たとえば、通電プレート)を2つの磁石に相対的に移動させる磁場を発生する。リーフは移動可能コンポーネントに取り付けられているので、リーフは、移動可能コンポーネントと一緒に移動する。異なるリーフのリニアモーターは、リーフの移動を制御するように、したがって上で説明されている構成可能コリメータのエッジを画成するように制御され得る。
【0165】
指摘したように、いくつかの実装形態において、リニアモーターは、隣接し相隔てて並び、極が整列されている2つの磁石と、2つの磁石の間に挟装され、2つの磁石に相対的に移動するコイル搬送プレートとを備える。この構成は、複数のリニアモーターが各々隣と近接近して一列に配置構成されることを可能にするが、これは構成可能コリメータのリーフを制御するために必要になり得る。たとえば、いくつかの実装形態において、リーフの厚さはミリメートルのオーダーである(たとえば、5ミリメートル以下)。この厚さのリーフは、比較的高精度のエッジを使用可能にするが、この厚さのリーフは、いくつかの場合において、従来のモーターを使用する実装形態を実用的でないものにし得る。しかしながら、本明細書において説明されているリニアモーターは、この大きさの厚さを有するリーフの使用を可能にする。たとえば、2つの固定磁石はこれらの間を移動するコイル搬送プレートを遮蔽し、それによって、リーフの移動を制御する。コイル搬送プレートを漂遊磁場から遮蔽することによって、複数のコイル搬送プレートおよび対応する固定磁石が互いに近接近しているときでもプレートの移動を制御することが可能である。
【0166】
いくつかの実装形態において、1つまたは複数の処理デバイスからなるものとしてよい、制御システムは、リニアモーターを制御しそれによってリーフの位置決めを制御しエッジを画成するようにプログラムされる。たとえば、制御システムは、リニアモーターのうちの1つまたは複数を制御する1つまたは複数の制御信号を出力してエッジを画成するためにリーフのうちの1つまたは複数を伸長させるかまたは後退させるように制御可能であるものとしてよい。いくつかの実装形態において、リニアモーターの運動は、エンコーダを使用して追跡され得る。いくつかの例において、エンコーダは、リーフおよびリニアモーターと同じアセンブリに接続されている電子デバイスを含む。エンコーダは、レーザーセンサ、光学センサ、またはダイオードセンサのうちの1つまたは複数を備え得る。エンコーダは、たとえば、リーフ上の、またはリーフに接続されリーフとともに移動する構造体上のマーキングもしくは他の印がエンコーダに対して相対的にどこに配設されているかを検出することによって、リーフの移動を検出する。リーフの配置に関する情報は、制御システムにフィードバックされ、動作時にリーフの位置を確認し、いくつかの実装形態において、その位置を変更するために、制御システムによって使用される。エンコーダは、上で説明されているような処理デバイスほどには、中性子線に対して敏感でない、したがって、治療室内に配置されてよい、単純な電子センサであるか、またはそれを備え得る。
【0167】
すでに述べたように、いくつかの実装形態は、構成可能コリメータを含み得ない。これらなどの例示的な実装形態では、粒子ビームは、コリメーションなどのその後の調整なしでエネルギーデグレーダを通過して患者に至る。たとえば、構造体--プレート、多面体、または湾曲した3次元形状など--が炭化ホウ素を含む実装形態では、ビームのスポットサイズは、エネルギーデグレーダ内で他の材料を使用して生成されたビームのスポットサイズに関して減少し得る。そのような場合において、追加のコリメーションは、照射ターゲットを治療するのに必要なスポット分解能を達成するために必要でない場合がある。述べたように、いくつかの実装形態において、構成可能コリメータは、エネルギーデグレーダと患者との間にあってよい。使用され得る構成可能コリメータの例示的な実装形態は、図20から図25に関して説明されている。
【0168】
図20は、構成可能コリメータ内で使用され得るリーフ740の一例を示しているが、構成可能コリメータは、この種類のリーフとともに使用することに限定されない。リーフの高さ750は、ビームライン(たとえば、粒子ビームの方向)に沿っている。リーフの長さ752は、治療領域内への、および治療領域から外への作動方向に沿っており、システムが治療することができる場のサイズ、またはその一部に基づく。場のサイズは、ビームが衝突することができる治療領域に対応する。リーフの幅753は、作動したときに複数のリーフが積み重なる方向である。一般的に、使用されるリーフが多ければ多いほど、湾曲した境界の場合も含めて、形成され得る開口の分解能も高い。
【0169】
図20において、リーフ740はその側部に沿って舌および溝特徴部755を含み、これは複数のそのようなリーフが積み重なったときにリーフ間の漏れを低減するように構成されている。この例では、リーフ740の湾曲した端部756は、治療領域内のすべての配置でビームに接する表面を維持するように構成される。しかしながら、各リーフの端部は、平らであって、湾曲していなくてもよい。
【0170】
いくつかの実装形態において、構成可能コリメータリーフは、少なくとも最大ビームエネルギー(たとえば、加速器によって出力される粒子ビームの最大エネルギー)をブロックするのに十分な高さを有する。いくつかの実装形態において、構成可能コリメータリーフは、最大ビームエネルギー未満のエネルギーをブロックする高さを有する。いくつかの実装形態において、構成可能コリメータリーフは、治療領域全体の領域で示されないが、むしろ単一のビームスポット(粒子ビームの断面積)または複数のビームスポットの面積で示される長さを有する。
【0171】
図21は、構成可能コリメータ800の一部の例示的な実装形態を示している。構成可能コリメータ800は、所与のエネルギーで放射線の通過を阻害するか、または防止するのに十分な高さを有し、所与のエネルギーで放射線の通過を阻害するか、または防止するのに十分なニッケル、真鍮、タングステン、または他の金属などの金属から作られているリーフ801を備える。たとえば、いくつかのシステムでは、粒子加速器は、100MeV(100万電子ボルト)から300MeVの最大エネルギーを有する粒子ビームを発生するように構成される。したがって、そのようなシステムでは、リーフは、100MeV、150MeV、200MeV、250MeV、300MeVなどのエネルギーを有するビームの通過を防止するように製作されてよい。たとえば、いくつかのシステムでは、粒子加速器は、70MeVを越える最大エネルギーを有する粒子ビームを発生するように構成される。したがって、そのようなシステムでは、リーフは、70MeV以上のエネルギーを有するビームの通過を妨げるように製作され得る。
【0172】
リーフ801は、患者の腫瘍の断面層などの照射ターゲットの治療領域に対する移動を制御するためにキャリッジ上に取り付けられる。移動は、リーフ801で治療領域804のいくつかの部分を覆い、それによって、治療中に放射線がそれらの部分に当たるのを防止し、その一方で、治療領域の他の部分を放射線に曝されたままにするように制御される。図21の例示的な実装形態において、左に7枚、右に7枚の、合計14枚のリーフがある。いくつかの実装形態において、異なる数のリーフがあってよく、たとえば、左に5枚、右に5枚の、合計10枚のリーフ、左に6枚、右に6枚の、合計12枚のリーフ、などとしてよい。
【0173】
図21において、配置802は、ビームスポットの中心を表し、したがって、放射線が照射されるべきターゲット内の列の配置を表す。円808は、送達される放射線が超えないことを意図されている治療境界の一部を表す。この境界に近い(たとえば、粒子ビームのプロファイルの1つの標準偏差内の)ビームスポットが健常組織に隣接する。これらのスポットは、構成可能コリメータ上でリーフを適切に構成し配置することによってトリミングされる(すなわち、ブロックされる)ものとしてよい。トリミングされるべきビームスポットの一例は、その中心を配置806に置くビームスポット811である。図示されているように、リーフ801は、円808を越えて、健常組織(または少なくとも治療を指定されていない組織)中に入るビームスポット811の部分をブロックするように構成される。
【0174】
例示的な一実装形態において、2つの別個のキャリッジの各々に、幅が約5mmである5枚のリーフ、および幅が約80mmである2枚のリーフがある。いくつかの実装形態において、2つの別個のキャリッジの各々に、7枚のリーフがあり、そのうち2枚は各々、他の5枚のリーフのうちの各々の幅の3倍またはそれ以上である幅を有する。他の実装形態は、異なる数、サイズ、および構成のリーフ、ならびに異なる数および構成のキャリッジを含み得る。たとえば、いくつかの実装形態は、キャリッジ毎に5から50までの間の任意の数のリーフ、キャリッジ1つあたり5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50枚(またはそれ以上)のリーフを含み得る。
【0175】
キャリッジは、本明細書で説明されているように、水平方向と垂直方向の両方に移動することができる。リーフは、治療領域内へ、および治療領域から外へ各キャリッジに対して水平方向に移動可能でもある。このようにして、リーフは、治療される領域の近くの領域内の治療境界の形状(たとえば、この例では円811またはその一部)を近似するように構成可能である。
【0176】
リーフは、ビームが特定のカラムに照射されるときにリーフが適切な位置に来るように治療されるべき異なるカラムの間で垂直方向におよび/または水平方向に移動され得る。述べたように、リーフは、ビームが静止している間に、異なるビームエネルギーに対して異なる構成をとるようにビームエネルギーに基づき、再構成され得る。説明されているように、ビームは、組織内で多少分散し得る。構成可能コリメータは、規則正しい(たとえば、円筒形の)形状のカラムを維持するように、ビームエネルギーが変化するときに再構成され得る。
【0177】
図22図23、および図24は、治療ターゲットに対して垂直方向と水平方向の両方に、上で説明されているリーフを保持し、移動するように構成されているキャリッジ913、914、915を含む、構成可能コリメータの例示的な実装形態を示している。図示されているように、垂直方向移動は、直交座標Z次元917方向の移動を含み、水平方向移動は、直交座標X次元918方向の移動を含む(直交座標Y次元方向は図23のページ内に入るか、またはページから外に出る)。図23および図24は、ハウジングの内側のコンポーネントを示すためにキャリッジハウジングの一部分を透明であるかのように示しているが、しかしながら、ハウジングは、実際には透明でない。
【0178】
キャリッジ913は、本明細書では一次キャリッジと称され、キャリッジ914および915は、本明細書では二次キャリッジと称される。二次キャリッジ914、915は、図22から図24に示されているように、一次キャリッジ913に結合されている。この例では、二次キャリッジ914、915は、各々、対応する部材918、919を介して一次キャリッジ915に固定されているハウジングを備える。この例では、一次キャリッジ913は、照射ターゲットに対して、およびトラック920に沿って粒子加速器に対して、垂直方向(Z次元の方向)に移動可能である。一次キャリッジ913の垂直方向移動は、二次キャリッジが垂直方向に移動することも引き起こす。いくつかの実装形態において、二次キャリッジは一斉に垂直方向に移動する。いくつかの実装形態において、各二次キャリッジの垂直方向移動は、他の二次キャリッジの垂直方向から独立している。
【0179】
図22から図24に示されているように、各二次キャリッジ914、915は、対応するロッドまたはレール922、923に接続され、それに沿って二次キャリッジが移動する。より具体的には、この例において、モーター925は二次キャリッジ914を駆動して、ロッド922に沿って二次キャリッジ915の方へ移動するか、または二次キャリッジから遠ざかる。同様に、この例において、モーター926は二次キャリッジ915を駆動して、ロッド923に沿って二次キャリッジ914の方へ移動するか、または二次キャリッジから遠ざかる。一次および二次キャリッジの移動に対する制御は、本明細書で説明されているように、照射ターゲットに対してリーフを位置決めするように実装される。それに加えて、リーフそれ自体も、本明細書でも説明されているように、キャリッジの中へ移動し、キャリッジから外に移動するように構成される。
【0180】
図24に示されているように、モーター930は、一次キャリッジ913の垂直方向移動を駆動する。たとえば、図24に示されているように、送りネジ931は、対応する二次キャリッジ914、915を駆動するモーター925、926を保持し、トラック920上に据え付けられている、ハウジング932に結合される。送りネジ931は、モーター930に結合され、モーター430によって垂直方向に駆動される。すなわち、モーター930は、送りネジ931を垂直(直交座標系Z次元)方向に駆動する。送りネジ931は、ハウジング932に固定されるので、この移動は、また、ハウジング932およびしたがって二次キャリッジ914、915がトラック920に沿って、照射ターゲットの方へ、または照射ターゲットから遠ざかる方へのいずれかに移動することを引き起こす。
【0181】
この例示的な実施例において、指摘されているように、7枚のリーフ935、936が各二次キャリッジ914、915上に取り付けられている。各二次キャリッジは、そのリーフを水平方向に治療領域内に、または治療領域から外に移動するように構成され得る。各二次キャリッジ上の個別のリーフは、同じ二次キャリッジ上の他のリーフに相対的にX次元方向に、リニアモーターを使用して、独立して、直線的に移動可能であるものとしてよい。いくつかの実装形態において、リーフは、また、Y次元方向に移動するようにも構成され得る。さらに、二次キャリッジ914上のリーフは、他の二次キャリッジ915上のリーフから独立して移動可能であり得る。二次キャリッジ上のリーフのこれらの独立した移動は、一次キャリッジによって可能にされる垂直方向移動とともに、リーフが様々な構成になるように移動されることを可能にする。結果として、リーフは、水平方向および垂直方向の両方にランダムに形作られる治療領域に、水平方向および垂直方向の両方で形状適合することができる。リーフのサイズおよび形状は、異なる形状適合をもたらすように変化させられ得る。たとえば、サイズおよび形状は、単一のビームスポット、およびしたがって単一のカラムを治療するように変化させられ得る。いくつかの実装形態において、各二次キャリッジ上の個別のリーフは、同じ二次キャリッジ上の他のリーフに相対的にX次元方向に、送りネジを駆動する電気モーターを使用して、独立して、直線的に移動可能であるものとしてよい。
【0182】
リーフは、放射線の透過を防ぐか、または阻止する適切な材料から作られ得る。使用される放射線の種類は、リーフ内でどのような材料が使用されているかを示し得る。たとえば、放射線がX線である場合、リーフは鉛から作られるものとしてよい。本明細書で説明されている例において、放射線は陽子またはイオンビームである。したがって、異なる種類の金属または他の材料がこれらのリーフに使用され得る。たとえば、リーフは、ニッケル、タングステン、鉛、真鍮、鋼鉄、鉄、またはこれらの適切な組合せから作られ得る。各リーフの高さは、リーフが放射線の透過を阻止する程度を決定し得る。
【0183】
いくつかの実装形態において、リーフは同じ高さを有し得るが、他の実装形態では、これらのリーフのうちのいくつかのリーフはこれらのリーフのうちの他のリーフの高さと異なる高さを有し得る。たとえば、リーフのセットは、各々高さが5mmであってよい。しかしながら、任意の適切な高さが使用されてよい。たとえば、リーフ935、936は、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、3mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、25mm、26mm、27mm、28mm、29mmなど(または他の高さ)のうちのどれかを有し得る。リーフは、前述の高さの任意の組合せを有し得る。それに加えて、リーフの各々は、リーフのうちの1つまたは複数の他のリーフと異なる高さを有していてもよい。
【0184】
いくつかの実装形態において、リーフは、最大の予想される陽子エネルギーの粒子ビームを完全に停止するだけでなく(たとえば、230MeVでは3.3cmのタングステンまたはたとえば5.2cmのニッケル)、リーフの間の陽子透過を妨げる十分な余分な材料も有する十分な高さを有する。この材料は、図20に示されているような舌および溝構造体、または類似の構成を有し得る。リーフ端部は、湾曲した、またはテーパー付きの表面を備え、様々な発散の陽子ビームに対して送達される半影を高めるように構成され得る。
【0185】
いくつかの実装形態において、複数の一次キャリッジならびに対応するモーターおよびレールがあり得る。たとえば、第1の一次キャリッジは、第1の二次キャリッジの垂直方向移動を制御するものとしてよく、第2の一次キャリッジは、第2の二次キャリッジの垂直方向移動を制御するものとしてよい。したがって、そのような実装形態において、2つの二次キャリッジは、望ましい場合に、垂直方向に独立して移動されてよい。どのような場合も、一次キャリッジは、コンピュータ制御されてよい。たとえば、実行可能な命令は、コンピュータメモリ(たとえば、1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体)内に記憶され、移動を制御するために1つまたは複数の処理デバイスによって実行される。制御は、治療時にユーザ入力により、またはユーザ入力なしで実行されてよい。
【0186】
説明されているように、各二次キャリッジ914、915は、上で説明されているように、水平方向キャリッジ移動を制御するための対応するモーターを備える。いくつかの実装形態において、単一のキャリッジ上のすべてのリーフは、リニアモーターを使用して--各リーフを1つのリニアモーターで制御する--独立して移動可能である。各リーフは、図10で説明されている種類のリニアモーターによって制御され、それにより、たとえば、粒子ビームによって生成される1つまたは複数のスポットをトリミングするために、エッジを形成し少なくとも一部の放射線が患者に到達するのをブロックするものとしてよい。述べたように、構成可能コリメータにおいて使用されるリニアモーターは、レンジモジュレータとともに使用されるリニアモーターと同じ構造および機能を有し得る。しかしながら、この場合には、コリメータのリーフは、エネルギー吸収プレートの代わりにリニアモーターに取り付けられる。各リニアモーターは、構成されているエッジ内の位置に達するように対応するリーフを直線的に駆動する。
【0187】
上で説明されている例示的な実装形態において、各リーフは、リーフ構成により任意の適切な形状がトレースされ得るように、別々の、また独立して制御可能なリニアモーターを使用して、独立して作動される。しかしながら、許容可能なエッジ形状適合性を達成するためにそのような柔軟性は必要ない場合がある。リーフは、有限数の構成のみを達成する能力により機械的に制約される可能性がある。たとえば、リーフは、垂直線、前方対角形状、後方対角形状、凹形状、凸形状、または他の達成可能な任意の形状にする配置構成に制限される可能性がある。このようにして、柔軟性は機械的な単純さと引き換えになる可能性がある。
【0188】
いくつかの場合において、粒子ビームがリーフエッジの表面に接しているときに結果としてより良好なビーム性能(半影またはエッジ鮮明さ)が得られる。しかしながら、ビームは効果的に単一の点源から発せられるので、それが構成可能コリメータの平面を通過する角度は、ビームが場の中心から遠ざかる方へ移動するときに変化する。このような理由から、図20に示されているように、リーフは湾曲した縁を有することがあり、したがって、縁は、常に、粒子ビームに接するようにする配置に置かれ得る。構成可能コリメータの例示的な実装形態において、一次キャリッジと二次キャリッジの両方が移動するトラックは、平らなリーフエッジが湾曲したリーフエッジの代わりに使用され得るように、および平らであるが粒子ビームに接したままになるように湾曲する。
【0189】
要約すると、いくつかの実装形態において、構成可能コリメータは、少なくとも一部は本明細書において説明されているリニアモーターにより、比較的小さいサイズを有するものとしてよい。したがって、標準的な多葉コリメータとは対照的に、例示的な構成可能コリメータは、したがって、一度に治療領域の数分の一、たとえば、治療領域全体未満であり、1スポットサイズ、2スポットサイズ、3スポットサイズ、4スポットサイズ、5スポットサイズ、などにほぼ等しい領域をトリミングするために使用され得る。したがって、いくつかの実装形態において、構成可能コリメータは、一度に単一のスポットをトリミングするのには十分に小さく、移動せずに場全体ではなく1つの位置でいくつかのスポットをトリミングするのには十分に大きいものとしてよい。述べたように、単一のスポットをトリミングする能力が、そのカラムを作成するために使用される粒子ビームのエネルギーが変化するときに治療カラムの規則正しい形状を維持するために使用され得る。
【0190】
走査システムは、粒子ビームの範囲を制限するため照射ターゲットに相対的に留置可能である、本明細書において説明されている構成可能コリメータを備えるものとしてよく、それによって粒子ビームの範囲を制限する。たとえば、構成可能コリメータは、エネルギーデグレーダのビーム下流側の、粒子ビームが照射ターゲットの治療領域に当たる前の、ビーム経路内に配置され得る。構成可能コリメータは、制御システムにより、治療計画に従って、粒子ビームがそこを通過し、次いで、治療領域のいくつかの部分に当たり、その一方で粒子ビームが患者体内の他の部分に当たるのを防ぐことを可能にするように制御可能である。図25は、患者971に相対的な構成可能コリメータ970の実装形態の留置を示している。ビーム971aの方向も図示されている。
【0191】
使用され得る構成可能コリメータの一例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、特許文献3、名称「Adaptive Aperture」において説明されている。
【0192】
図26および図27は、ガントリーに搭載された粒子加速器を含む陽子線治療システム1082の一例の一部を示している。加速器はガントリーに搭載されているので、治療室内にあるか、または隣接している。粒子加速器は、図3のシンクロサイクロトロンであってもよいが、このシステムはシンクロサイクロトロンとの併用に限定されない。ガントリーおよび粒子加速器は、本明細書において説明されている方式で超高線量率放射線を使用して照射ターゲットのカラムを治療するために治療計画に従って、走査システムとともに、制御され得る。いくつかの実装形態において、ガントリーは鋼製であり、患者の両側に配設された2つのそれぞれの軸受に回転するように取り付けられた2つの脚部(図示せず)を有する。ガントリーは、患者が横たわる治療領域に跨設するのに十分に長く、その両端においてガントリーの回転式脚部に取り付けられている、その脚部の各々に接続されている鉄骨トラス(図示せず)を備え得る。粒子加速器は、患者身体の周りを動けるように鉄骨トラスによって支持され得る。
【0193】
図26および図27の例では、患者は、治療台1084上に配置される。この例では、治療台1084は患者を支えるプラットフォームを備える。プラットフォームは、患者を適所に保持し、台の移動時および治療中に患者を実質的に動けないように固定するための1つまたは複数の拘束器具(図示せず)も備え得る。プラットフォームは、詰め物をされ、および/または患者身体の一部の形状に対応する形状(たとえば、凹み)を有することがあってもなくてもよい。台は、アーム1085を介して移動され得る。
【0194】
図28は、参照により本明細書に組み込まれている特許文献4において説明されているガントリー構成の一例を示しており、これは本明細書において説明されている方式で超高線量率放射線を使用して照射ターゲットのカラムを治療するために使用可能な陽子線治療システムの代替的実装形態のコンポーネントを含む。図28の例示的な陽子線治療システムは、ノズル1191を有する内部ガントリー1190と、治療台1192と、患者身体の周りの少なくとも途中まで回転させて患者体内のターゲットに放射線を照射するために外部ガントリー1194に取り付けられている粒子加速器1193(たとえば、本明細書で説明されている種類のシンクロサイクロトロン)とを備える。治療台1192は、治療計画に従って制御可能であり、本明細書で説明されている方式で患者を回転させ、並進運動させるように構成される。
【0195】
図28の例では、粒子加速器1193は、また、アーム1196に沿って矢印1195の方向に粒子加速器の直線運動(たとえば、並進運動)を可能にするようにも外部ガントリー1194に取り付けられる。図28にも示されているように、粒子加速器1193は、ガントリーに対して相対的な枢動運動を行うようにジンバル1199に接続され得る。この枢動運動は、治療のため加速器、およびしたがってビームを位置決めするために使用され得る。
【0196】
走査磁石、電離箱、レンジモジュレータ、および構成可能コリメータを備える走査システムのコンポーネントは、陽子線治療システムの内部ガントリーのノズル1081、1191に装着されるか、その中にあるか、またはそれらに結合され得る。これらのコンポーネントは、超高線量率放射線を使用して照射ターゲットのカラムを治療するための治療計画に従って制御システムによって制御され得る。両方の例において、ノズルは、患者および粒子加速器に相対的に内部ガントリー(1080または1190)のトラックに沿って移動可能であり、患者の方へ伸長可能であり、患者から遠ざかって後退可能であり、それによって、その上に取り付けられているコンポーネントを伸長させ引っ込める。
【0197】
いくつかの実装形態において、本明細書で説明されている陽子線治療システムにおいて使用されるシンクロサイクロトロンは、可変エネルギーシンクロサイクロトロンであるものとしてよい。いくつかの実装形態において、可変エネルギーシンクロサイクロトロンは、粒子ビームが加速される磁場を変化させることによって出力粒子ビームのエネルギーを変化させるように構成される。たとえば、電流は、対応する磁場を発生するように複数の値のうちのいずれか1つに設定され得る。例示的な一実装形態において、超電導コイルの1つまたは複数のセットが、変動電流を受けて、空洞内に変動磁場を発生する。いくつかの例では、1つのコイルセットが固定電流を受けるが、1つまたは複数の他のコイルセットはコイルセットが受ける全電流が変化するように変動電流を受ける。いくつかの実装形態において、すべてのコイルセットが超電導である。いくつかの実装形態において、固定電流に対するセットなどのいくつかのコイルセットは、超電導であるが、変動電流に対する1つまたは複数のセットなどの他のコイルセットは、非超電導(たとえば、銅)コイルである。
【0198】
一般的に、可変エネルギーシンクロサイクロトロンでは、磁場の大きさは、電流の大きさとともに一定の比率で増減し得る。コイルの全電流を所定の範囲内に調整することで、対応する所定の範囲内で変化する磁場を発生させることができる。いくつかの例では、電流の連続的調整により、磁場の連続的変動および出力ビームエネルギーの連続的変動を引き起こすことができる。代替的に、コイルに印加される電流が、非連続的な段階的様式で調整される場合、磁場および出力ビームエネルギーも、それに応じて非連続的な(段階的)様式で変化する。磁場を電流に応じて一定の比率で増減させることにより、ビームエネルギーを比較的正確に変化させることが可能であり、したがって、エネルギーデグレーダの必要性が減じる。本明細書で説明されている粒子線治療システムにおいて使用され得る可変エネルギーシンクロサイクロトロンの一例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、特許文献5、名称「Particle Accelerator That Produces Charged Particles Having Variable Energies」で説明されている。
【0199】
可変エネルギーシンクロサイクロトロンを使用する粒子線治療システムの実装形態では、ターゲットのカラムを治療するための粒子ビームのエネルギーを制御することは、シンクロサイクロトロンによって出力される粒子ビームのエネルギーを変化させることによって、治療計画に従って実行され得る。そのような実装形態では、レンジモジュレータは、使用される場合も使用されない場合もある。たとえば、粒子ビームのエネルギーを制御することは、シンクロサイクロトロンの主コイルの電流を、複数の値のうちの1つに設定することを含むものとしてよく、各々の値は粒子ビームがシンクロサイクロトロンから出力される異なるエネルギーに対応する。レンジモジュレータは、たとえば、シンクロサイクロトロンによって提供される離散エネルギーレベルの間で、エネルギーの付加的変化をもたらすために可変エネルギーシンクロサイクロトロンとともに使用され得る。
【0200】
いくつかの実装形態において、本明細書で説明されている粒子線治療システムにおいてシンクロサイクロトロン以外の粒子加速器が使用され得る。たとえば、サイクロトロン、シンクロトロン、直線加速器、または同様のものは、本明細書において説明されているシンクロサイクロトロンの代替えとなり得る。回転ガントリーが説明されているけれども(たとえば、外部ガントリー)、本明細書で説明されている例示的な粒子治療システムは、回転ガントリーとの使用に限定されない。むしろ、粒子加速器の移動を実装するために任意の種類のロボットまたは他の制御可能機構--本明細書ではガントリーの種類として特徴付けられる--上に、適宜、粒子加速器が取り付けられてよい。たとえば、粒子加速器は、患者に対して相対的な加速器の回転運動、枢動運動、および/または並進運動を実装するために1つまたは複数のロボットアーム上に取り付けられ得る。いくつかの実装形態において、粒子加速器はトラック上に取り付けられてよく、トラックに沿った移動はコンピュータ制御され得る。この構成では、患者に対して相対的な加速器の回転および/または並進運動および/または枢動運動も、適切なコンピュータ制御を通じて達成できる。いくつかの実装形態において、粒子加速器は、固定式であり、治療室の外に配置され、ビームは治療室内のノズルに照射され得る。
【0201】
いくつかの例では、上で述べたように、超高線量率の放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含み得る。いくつかの例では、超高線量率の放射線は、10msから5sの間の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含み得る。いくつかの例では、超高線量率の放射線は、5s未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を含み得る。
【0202】
いくつかの例では、超高線量率の放射線は、500ms未満の持続時間において、毎秒2グレイ、毎秒3グレイ、毎秒4グレイ、毎秒5グレイ、毎秒6グレイ、毎秒7グレイ、毎秒8グレイ、毎秒9グレイ、毎秒10グレイ、毎秒11グレイ、毎秒12グレイ、毎秒13グレイ、毎秒14グレイ、毎秒15グレイ、毎秒16グレイ、毎秒17グレイ、毎秒18グレイ、毎秒19グレイ、毎秒20グレイ、毎秒30グレイ、毎秒40グレイ、毎秒50グレイ、毎秒60グレイ、毎秒70グレイ、毎秒80グレイ、毎秒90グレイ、または毎秒100グレイの線量のうちの1つを超える線量の放射線を含む。いくつかの例では、超高線量率の放射線は、10msから5sの間の持続時間において、毎秒2グレイ、毎秒3グレイ、毎秒4グレイ、毎秒5グレイ、毎秒6グレイ、毎秒7グレイ、毎秒8グレイ、毎秒9グレイ、毎秒10グレイ、毎秒11グレイ、毎秒12グレイ、毎秒13グレイ、毎秒14グレイ、毎秒15グレイ、毎秒16グレイ、毎秒17グレイ、毎秒18グレイ、毎秒19グレイ、毎秒20グレイ、毎秒30グレイ、毎秒40グレイ、毎秒50グレイ、毎秒60グレイ、毎秒70グレイ、毎秒80グレイ、毎秒90グレイ、または毎秒100グレイの線量のうちの1つを超える線量の放射線を含む。いくつかの例では、超高線量率の放射線は、5s未満の持続時間において、毎秒2グレイ、毎秒3グレイ、毎秒4グレイ、毎秒5グレイ、毎秒6グレイ、毎秒7グレイ、毎秒8グレイ、毎秒9グレイ、毎秒10グレイ、毎秒11グレイ、毎秒12グレイ、毎秒13グレイ、毎秒14グレイ、毎秒15グレイ、毎秒16グレイ、毎秒17グレイ、毎秒18グレイ、毎秒19グレイ、毎秒20グレイ、毎秒30グレイ、毎秒40グレイ、毎秒50グレイ、毎秒60グレイ、毎秒70グレイ、毎秒80グレイ、毎秒90グレイ、または毎秒100グレイの線量のうちの1つを超える線量の放射線を含む。
【0203】
いくつかの例において、放射線の超高線量率は、500ms未満の持続時間、10msから5sの間の持続時間、または5s未満の持続時間において、毎秒100グレイ、毎秒200グレイ、毎秒300グレイ、毎秒400グレイ、または毎秒500グレイの線量のうちの1つまたは複数を超える線量の放射線を含む。
【0204】
いくつかの例において、超高線量率の放射線は、500ms未満の持続時間において毎秒20グレイから毎秒100グレイの間に収まる線量の放射線を含む。いくつかの例において、超高線量率の放射線は、10msから5sの間の持続時間において毎秒20グレイから毎秒100グレイの間に収まる線量の放射線を含む。いくつかの例において、超高線量率の放射線は、5s未満の持続時間において毎秒20グレイから毎秒100グレイの間に収まる線量の放射線を含む。いくつかの例において、超高線量率の放射線は、5s未満などの時間期間において毎秒40グレイから毎秒120グレイの間に収まる線量の放射線を含む。時間期間の他の例は、上で提示されているものである。
【0205】
本明細書で説明されている例示的な陽子線治療システムの動作、ならびにそのすべてのまたはいくつかのコンポーネントの動作は、1つまたは複数のデータ処理装置、たとえば、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、および/またはプログラム可能な論理コンポーネントによる実行のため、またはその動作を制御するために、1つまたは複数のコンピュータプログラム製品、たとえば、1つまたは複数の非一時的機械可読媒体中に明確に具現化された1つまたは複数のコンピュータプログラムを使用することで少なくとも一部は(適宜)制御され得る。
【0206】
コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語またはインタプリタ型言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書かれ、スタンドアロンプログラム、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピューティング環境において使用するのに適している他のユニットを含む、任意の形態で配備され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つのサイトにあるか、または複数のサイトにまたがって分散され、ネットワークによって相互接続されている複数のコンピュータ上で実行されるように配備され得る。
【0207】
本明細書で説明されている例示的な陽子線治療システムの動作の全部または一部を制御することに関連するアクションは、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行して本明細書で説明されている機能を実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサによって実行され得る。これらの動作の全部または一部は、専用論理回路、たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、および/またはASIC(特定用途向け集積回路)を使用して制御され得る。
【0208】
コンピュータプログラムの実行に適しているプロセッサは、たとえば、汎用マイクロプロセッサ、専用マイクロプロセッサ、および任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサを含む。一般的に、プロセッサは、リードオンリー記憶領域またはランダムアクセス記憶領域またはその両方から命令およびデータを受け取る。コンピュータ(サーバを含む)の要素は、命令を実行するための1つまたは複数のプロセッサならびに命令およびデータを記憶するための1つまたは複数の記憶領域デバイスを含む。一般的に、コンピュータは、データを記憶するための1つまたは複数の機械可読記憶媒体、たとえば、磁気ディスク、磁気光ディスク、または光ディスクも備え、これらからデータを受け取るか、またはこれらにデータを転送するか、またはその両方を行うように動作可能なように結合される。コンピュータプログラムの命令およびデータを記憶するのに好適な非一時的機械可読記憶媒体は、たとえば、半導体記憶領域デバイス、たとえば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュ記憶領域デバイス、磁気ディスク、たとえば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク、光磁気ディスク、ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む、あらゆる形態の不揮発性記憶領域を含む。
【0209】
前述の実施例のうちのさらに任意の2つが、適切な粒子加速器(たとえば、シンクロサイクロトロン)において適切な組合せで使用され得る。同様に、前述の実装形態のうちのさらに任意の2つの個別の特徴が、適切な組合せで使用され得る。要素は、その動作に悪影響を及ぼすことなく本明細書で説明されているプロセス、システム、装置などから外してもよい。本明細書で説明されている機能を実行するために、様々な別々の要素を1つまたは複数の個別の要素に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0210】
1から5 層
10 層
11 ターゲット
12 粒子ビーム
15 矢印
16 層
20 カラム
21 ターゲット
22 粒子ビーム
24 経路
25 カラム
28 矢印
29 矢印
310 コンポーネント
311 超電導磁石
312、313 超電導コイル
314、315 磁気ヨーク
316 空洞
317 粒子源
420 引き出しチャネル
421 シンクロサイクロトロン
422 走査コンポーネント
424 走査磁石
425 電離箱
426 エネルギーデグレーダ
427 電流センサ
428 構成可能コリメータ
430 モーター
441 コイル
442 コイル
460 レンジモジュレータ
461 プレート
464 モーター
101、102、103 エネルギー吸収プレート
106 長円
109 コイル搬送プレート
110a、110b 磁石
111 矢印
114 コンピューティングシステム
116 離れた部屋
310 シンクロサイクロトロン
500 プレート
500b プレート
500c プレート
501 カラム
502 最深部
503 ターゲット
504 粒子ビーム
505 矢印
506 第2の最深部
508 第3の最深部
510 最浅部
601 カラム
602 最浅部
604 粒子ビーム
605 矢印
608 第3の最浅部
610 最深部
740 リーフ
750 高さ
752 長さ
753 幅
755 溝特徴部
756 端部
800 構成可能コリメータ
801 リーフ
802 配置
804 治療領域
806 配置
808 円
811 ビームスポット
913、914、915 キャリッジ
917 Z次元
918 X次元
918、919 部材
920 トラック
922、923 ロッドまたはレール
925 モーター
926 モーター
930 モーター
931 送りネジ
932 ハウジング
935、936 リーフ
970 構成可能コリメータ
971 患者
971a ビーム
1082 陽子線治療システム
1084 治療台
1085 アーム
1103 動作
1102、1103、1104、1105 動作
1190 内部ガントリー
1191 ノズル
1192 治療台
1193 粒子加速器
1194 外部ガントリー
1195 矢印
1196 アーム
1199 ジンバル
1200 治療計画立案システム
1201 予測モデル
1202 RBEモデル
1203 線量計算エンジン
1205、1206、1207、1208 ボクセル
1299 カラム
1301、1302、1303 深さ
1400 部分
1401、1402、1403、1404 微小体積
1405 カラム
1407 最深部
1408 次の最深部
1409 次の最深部
1410 次の最深部
1411 最浅部
1415 カラム
1417 最深部
1418 次の最深部
1419 次の最深部
1420 次の最深部
1421 最浅部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43A
図43B
【手続補正書】
【提出日】2023-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線治療システムであって、
粒子ビームを生成するための粒子加速器と、
経路に沿って粒子ビームを方向付けるための走査磁石であって、各経路は前記粒子ビームのターゲットを少なくとも途中まで通り、前記ターゲットは少なくとも第1の体積と第2の体積とを備える、走査磁石と
動作を実行するために少なくとも前記走査磁石を制御するための制御システムであって、前記動作は
前記粒子ビームを使用して前記第1の体積を治療するステップと、
前記第1の体積の治療が完了した後に前記粒子ビームを使用して前記第2の体積を治療するステップと、
を含み、
前記第1の体積または前記第2の体積のいずれかである体積を治療するステップは、
前記体積を少なくとも途中まで通る経路へ前記粒子ビームを方向付けるステップと、
前記粒子ビームのエネルギーを、前記粒子ビームが前記経路に沿って前記体積の、粒子ビームエネルギーレベルに対応する内部部分を治療するように制御するステップと、
前記粒子ビームエネルギーレベルに対応する異なる経路の各々に沿った前記体積の内部部分が治療されるまで前記体積を少なくとも途中まで通る前記異なる経路に対する方向付けおよび制御を実行するステップと、
経路に沿った異なる粒子ビームエネルギーレベルに対応する前記体積の内部部分が治療されるまで方向付け、制御、および実行を繰り返すステップと、
を含み、
前記粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を前記ターゲットに照射する、粒子線治療システム
【請求項2】
エネルギー吸収構造体であって、前記エネルギー吸収構造体の各々は前記粒子ビームが前記エネルギー吸収構造体を通過して前記ターゲットに至るときに前記粒子ビームのエネルギーを低減するように構成されている、エネルギー吸収構造体をさらに備え、
前記制御システムは、前記粒子ビームの前記エネルギーを制御することを、前記エネルギー吸収構造体の1つまたは複数を動かして、前記ターゲットと前記粒子ビームの発生源との間の前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すことによって行うように構成される請求項1に記載の粒子線治療システム
【請求項3】
前記制御システムは、前記粒子ビームが前記経路にある間に、前記1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すように構成される請求項に記載の粒子線治療システム
【請求項4】
前記制御システムは、100ミリ秒以下の持続時間において、前記1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すように構成される請求項に記載の粒子線治療システム
【請求項5】
前記制御システムは、50ミリ秒以下の持続時間において、前記1つまたは複数のエネルギー吸収構造体を動かして前記粒子ビームの前記経路内に入れるか、またはそこから出すように構成される請求項に記載の粒子線治療システム
【請求項6】
前記粒子加速器は、超電導巻線を備え、前記粒子加速器は、前記超電導巻線を通る電流に基づき前記粒子ビームを生成するように構成され、
前記制御システムは、前記電流を複数の値のうちの1つの値に設定することによって前記粒子ビームの前記エネルギーを制御するように構成され、前記複数の値の各々は前記粒子加速器から出力される前記粒子ビームの異なるエネルギーに対応する請求項1に記載の粒子線治療システム
【請求項7】
前記制御システムは、前記粒子ビームを制御して、各経路上で、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイを超える線量の放射線を前記ターゲットに照射するように構成される請求項1に記載の粒子線治療システム
【請求項8】
前記制御システムは、前記粒子ビームを制御して、各経路上で、5秒未満の持続時間において毎秒20グレイから毎秒100グレイの間に収まる線量の放射線を前記ターゲットに照射するように構成される請求項1に記載の粒子線治療システム
【請求項9】
前記粒子ビームの第2の部分が前記ターゲットに到達することを許しながら前記粒子ビームの第1の部分をブロックするように構成可能であるコリメータをさらに備え
前記コリメータは、
前記粒子ビームの通過をブロックするための材料からなる構造体であって、前記構造体はエッジを画成し、前記エッジは前記エッジの第1の側の前記粒子ビームの前記第1の部分が前記構造体によってブロックされ、前記エッジの第2の側の前記粒子ビームの前記第2の部分が前記構造体によってブロックされないように前記粒子ビームの前記経路内に移動する、構造体と、
前記エッジを画成するように前記構造体を構成するために制御可能であるリニアモーターであって、前記リニアモーターの各々は移動可能コンポーネントと固定コンポーネントとを備え、前記固定コンポーネントは第1の磁場を発生するための磁場発生器を備え、前記移動可能コンポーネントは1つまたは複数のコイルを備え、このコイルに電流を流すと前記第1の磁場と相互作用する第2の磁場を発生して前記移動可能コンポーネントを前記固定コンポーネントに対して相対的に移動させる、リニアモーターとを備え、
各リニアモーターの前記移動可能コンポーネントは、前記対応する構造体が前記移動可能コンポーネントによる移動とともに移動するように前記構造体の対応する1つ、に接続されるか、またはその一部である請求項1に記載の粒子線治療システム
【請求項10】
前記制御システムは、前記異なる経路の各々に沿って前記粒子ビームの強度を制御するように構成され、前記粒子ビームの前記強度は、前記異なる経路のうちの少なくとも2つに沿って異なる請求項1に記載の粒子線治療システム
【請求項11】
粒子線治療システムであって、
粒子ビームを生成するための粒子加速器と、
前記粒子ビームを方向付けるための走査磁石と、
前記粒子ビームと照射ターゲットとの間にプレートを備えるエネルギーデグレーダであって、前記プレートの各々は中を通過する前記粒子ビームのエネルギーを変化させるためのものである、エネルギーデグレーダと、
前記走査磁石を制御して前記粒子ビームを前記照射ターゲット上のある配置へ方向付けし、前記エネルギーデグレーダを制御して前記粒子ビームが前記配置にある間に前記粒子ビームのエネルギーを変化させそれによって前記粒子ビームが前記照射ターゲットの3次元柱状部分を通過することを引き起こし、前記粒子ビームの線量を、前記粒子ビームの複数の線量が前記照射ターゲットの3次元柱状部分内の異なる深さのところに印加されるように制御するための制御システムであって、前記異なる線量は前記複数の線量を総和することによって生成されるブラッグピークの形状から独立して印加される、制御システムと、
を備える粒子線治療システム。
【請求項12】
前記粒子ビームの前記複数の線量は、前記照射ターゲットの前記3次元柱状部分に沿って拡大ブラッグピークを生成しない請求項11に記載の粒子線治療システム。
【請求項13】
前記粒子ビームが前記照射ターゲットの前記3次元柱状部分に沿って方向付けられている間、前記粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を前記照射ターゲットに照射する請求項11に記載の粒子線治療システム。
【請求項14】
前記粒子ビームは、前記照射ターゲットの治療時に1回だけ前記照射ターゲットの前記3次元柱状部分に沿って方向付けられる請求項11に記載の粒子線治療システム。
【請求項15】
前記制御システムは、前記粒子ビームが前記照射ターゲットの少なくとも2つの3次元柱状部分を前記粒子ビームの中断なしで順に治療するように前記粒子線治療システムの1つまたは複数の要素を制御するように構成される請求項11に記載の粒子線治療システム。
【請求項16】
前記制御システムは、前記エネルギーデグレーダを制御して、プレートが10ミリ秒以下の速度で前記粒子ビームの経路内に入るか、またはそこから出ることを切り替えて、前記粒子ビームが前記配置にある間に前記粒子ビームのエネルギーを変えるように構成される請求項11に記載の粒子線治療システム。
【請求項17】
粒子ビームを照射ターゲットに印加するのを制御する方法であって、
走査磁石を制御して、前記粒子ビームを前記照射ターゲット上のある配置に方向付けるステップと、
エネルギーデグレーダを制御して前記粒子ビームが前記配置にある間に前記粒子ビームのエネルギーを変化させ、それによって前記粒子ビームが前記照射ターゲットの3次元柱状部分を通過することを引き起こすステップと、
前記粒子ビームの線量を制御して、前記粒子ビームが前記配置にある間に前記粒子ビームの複数の線量が前記照射ターゲットの前記3次元柱状部分内の異なる深さのところで印加されるようにするステップであって、前記異なる線量は前記複数の線量を総和することによって生成されるブラッグピークの形状から独立して印加される、ステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記粒子ビームの前記複数の線量は、前記照射ターゲットの前記3次元柱状部分に沿って拡大ブラッグピークを生成しない請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記粒子ビームが前記照射ターゲットの前記3次元柱状部分に沿って方向付けられている間、前記粒子ビームは、5秒未満の持続時間において毎秒1グレイを超える線量の放射線を前記照射ターゲットに照射する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記粒子ビームは、前記照射ターゲットの治療時に1回だけ前記照射ターゲットの前記3次元柱状部分に沿って方向付けられる請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子線治療システムの1つまたは複数の要素は、前記粒子ビームが前記照射ターゲットの少なくとも2つの3次元柱状部分を前記粒子ビームの中断なしで順に治療するように制御される請求項11に記載の粒子線治療システム。
【請求項22】
前記エネルギーデグレーダを制御するステップは、プレートが10ミリ秒以下の速度で前記粒子ビームの経路内に入るか、またはそこから出ることを切り替えて前記粒子ビームが前記配置にある間に前記粒子ビームのエネルギーを変化させることを制御するステップを含む請求項11に記載の粒子線治療システム。
【外国語明細書】