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特開2023-73487定量的神経筋系遮断検知システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073487
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】定量的神経筋系遮断検知システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059706
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2021112512の分割
【原出願日】2017-10-13
(31)【優先権主張番号】62/408,327
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/469,310
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518149822
【氏名又は名称】ブリンク デバイス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】BLINK DEVICE,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】ハルヴァーショーン,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,カール
(72)【発明者】
【氏名】ハート,タイラー
(57)【要約】
【課題】本システムは、患者の四連反応を自動的に検知し得、間違った四連指標の可能性を減少させ得る。
【解決手段】新規のリード線アセンブリと、該リード線アセンブリ上に適切な電極を選択し得、リード線アセンブリを通じて患者に印加された刺激信号を調節し得るモニタとを使用する神経筋モニタリングが記述される。該モニタリングはまた、誤った四連計算の可能性を減少させるためにノイズフロア値を設定し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の電極と、
複数の第2の電極と、
(a)前記第1の電極を介して患者に第1の一連の刺激信号を印加し、前記第2の電極を介して前記第1の一連の刺激信号への患者の反応を検出し、ノイズフロア値よりも小さい前記患者から検出された識別可能な反応が四連(TOF)カウントに含まれないように前記第1の一連の刺激信号に続く前記ノイズフロア値よりも大きい前記患者から検出された前記識別可能な反応の数に基づいて、検出された前記患者の反応からTOFカウントを決定することと、
(b)ステップ(a)で決定された前記TOFカウントが所定の閾値以上である場合、ステップ(a)を自動的に反復し、ステップ(a)で決定された前記TOFカウントが前記所定の閾値未満である場合、前記第1の電極を介した前記患者への一連のテタニック刺激信号に続いて第2の一連の刺激信号を自動的に印加し、前記第2の電極を介して前記第2の一連の刺激信号への患者の反応を検出し、前記ノイズフロア値よりも小さい前記患者から検出された識別可能な反応がポストテタニックカウント(PTC)に含まれないように前記第2の一連の刺激に続く前記のノイズフロア値よりも大きい前記患者から検出された前記識別可能な反応の数に基づいて、検出された前記患者の反応から前記TOFカウントに対する前記患者の深い麻痺を定量化するためのより精密なシーケンスを含む前記PTCを決定し、ステップ(a)を自動的に反復すること
を含む自動的モニタリングサイクルを行うようにプログラムされたモニタと
を含む、神経筋モニタリングシステム。
【請求項2】
前記所定の閾値は1である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記自動的モニタリングサイクルは、10秒毎に1回のみステップ(a)を反復することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の第1の電極及び前記複数の第2の電極は、単一のリード線アセンブリ上に配備される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記単一のリード線アセンブリは、母指アパーチャを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
電子診療録を格納するサーバを更に含み、
前記モニタは、ネットワークを通じて前記サーバと通信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記モニタは、前記ネットワークを通じて前記サーバへ、決定されたTOFカウント又は決定されたPTCを自動的に送信するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記モニタは、前記モニタ、第1の電極、及び第2の電極の結合されたインピーダンスと前記患者のインピーダンスとの間を区別するように構成され、
前記モニタは、前記患者を通じて前記複数の第1の電極の内の少なくとも1つから信号を印可し、前記複数の第2の電極の内の少なくとも1つから前記信号を検出し、前記信号を印可することに応答して前記患者から抵抗を測定することに応答して、前記患者の前記インピーダンスを決定するように構成され、
前記モニタは、前記モニタ、第1の電極、及び第2の電極の結合された前記インピーダンスが所定の閾値を上回る場合に警告信号を発行し、前記患者から検出された前記識別可能な反応に基づくTOF比の計算を自動的に終了するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
コモンモード電極を更に含み、
前記モニタは、(1)コモンモード信号が前記第1及び第2の一連の刺激と前記一連のテタニック刺激とに反応しないように前記コモンモード電極を介して前記患者から周辺雑音を示す前記コモンモード信号を検出し、(2)前記PTCを決定する場合に前記TOFカウント及び前記第2の一連の刺激信号を決定する場合の前記第1の一連の刺激信号から前記患者から検出された前記識別可能な信号から前記周辺雑音を除去するために前記コモンモード信号を抑圧するようにプログラミングされる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記モニタは、前記ノイズフロアに対する所定の固定値を使用することによって前記ノイズフロア値を決定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記モニタは、
前記第1の電極を介して前記患者にノイズ信号を印可することと、
前記第2の電極を介して前記ノイズ信号への患者の反応を検出することと、
前記ノイズ信号に続く前記患者から検出された前記反応に基づいて前記ノイズフロア値を決定することと
によって前記ノイズフロア値を決定するように構成され、
前記ノイズフロア値は、前記患者に印可された前記ノイズ信号から検出された前記反応よりも大きく設定される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記モニタは、
前記患者に印可された前記ノイズ信号から検出された前記反応に乗数を印可することと、
前記患者から検出された反応及び前記乗数に基づいて前記ノイズフロア値を設定すること
によって前記ノイズフロア値を決定するように更に構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
リード線アセンブリであって、
2つの刺激電極と、
正の筋電図(EMG)信号検出電極と、
負のEMG信号検出電極と、
コモンモード電極と
を含む、前記リード線アセンブリと、
(a)前記刺激電極を介して患者に第1の一連の刺激信号を印加し、前記正のEMG信号検出電極を及び前記負のEMG信号検出電極を介して前記第1の一連の刺激信号への患者の反応を検出し、ノイズフロア値よりも小さい前記患者から検出された識別可能な反応が四連(TOF)カウントに含まれないように前記第1の一連の刺激信号に続く前記ノイズフロア値よりも大きい前記患者から検出された前記識別可能な反応の数に基づいて、検出された前記患者の反応からTOFカウントを決定することと、
(b)ステップ(a)で決定された前記TOFカウントが所定の閾値以上である場合、ステップ(a)を自動的に反復し、ステップ(a)で決定された前記TOFカウントが前記所定の閾値未満である場合、前記刺激電極を介した前記患者への一連のテタニック刺激信号に続いて第2の一連の刺激信号を自動的に印加し、前記正のEMG信号検出電極及び前記負のEMG信号検出電極を介して前記第2の一連の刺激信号への患者の反応を検出し、前記ノイズフロア値よりも小さい前記患者から検出された識別可能な反応がポストテタニックカウント(PTC)に含まれないように前記第2の一連の刺激信号に続く前記のノイズフロア値よりも大きい前記患者から検出された前記識別可能な反応の数に基づいて、検出された前記患者の反応から前記TOFカウントに対する前記患者の深い麻痺を定量化するためのより精密なシーケンスを含む前記PTC)を決定し、ステップ(a)を自動的に反復すること
を含む自動的モニタリングサイクルを行うようにプログラミングされたモニタと
を含む、神経筋モニタリングシステム。
【請求項14】
前記モニタは、
前記コモンモード信号が前記第1及び第2の一連の刺激と前記一連のテタニック刺激とに反応しないように、前記コモンモード電極を介して前記患者から周辺雑音を示すコモンモード信号を検知することと、
前記PTCを決定する場合に前記TOFカウント及び前記第2の一連の刺激信号を決定する場合の前記第1の一連の刺激信号から前記患者から検出された前記識別可能な反応から前記周辺雑音を除去するために前記コモンモード信号を抑圧することと
をするように構成された回路
を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記モニタは、前記自動的モニタリングサイクル中に取得されたデータを電子健康録へ自動的に送信するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記モニタは、前記モニタにより測定された前記患者のインピーダンスに基づいて電極の故障に関係する低信号状態を自動的に検出し、前記信号の状態を検出することに応答して発行信号を生成し、前記患者から検出された前記識別可能な反応に基づくTOF比の計算を自動的に終了するように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
リード線アセンブリと、神経筋モニタリング方法を行うようにプログラミングされたモニタとを含む神経筋モニタリングシステムであって、前記方法は、
(a)前記神経筋モニタリングシステムの前記リード線アセンブリ上の複数の刺激電極を介して患者に第1の一連の刺激信号を印加し、前記リード線アセンブリ上の複数の筋電図電極を介して前記第1の一連の刺激信号への患者の反応を測定し、ノイズフロア値よりも小さい前記患者から測定された識別可能な反応が四連(TOF)カウントに含まれないように前記第1の一連の刺激信号に続く前記ノイズフロア値よりも大きい前記患者から検出された前記識別可能な反応の数に基づいて、前記モニタを介して測定された前記患者の反応からTOFカウントを決定することと、
(b)ステップ(a)で前記モニタより決定された前記TOFカウントが所定の閾値以上である場合、ステップ(a)を自動的に反復し、ステップ(a)で前記モニタより決定された前記TOFカウントが前記所定の閾値未満である場合、前記リード線アセンブリを介した前記患者への一連のテタニック刺激信号に続いて第2の一連の刺激信号を自動的に印加し、前記リード線アセンブリ上の前記複数の筋電図電極を介して前記第2の一連の刺激信号への患者の反応を測定し、前記ノイズフロア値よりも小さい前記患者から検出された識別可能な反応がポストテタニックカウント(PTC)に含まれないように前記第2の一連の刺激信号に続く前記のノイズフロア値よりも大きい前記患者から測定された前記識別可能な反応の数に基づいて、測定された前記患者の反応から前記TOFカウントに対する前記患者の深い麻痺を定量化するためのより精密なシーケンスを含む前記PTCを決定し、ステップ(a)を自動的に反復すること
を含む、システム。
【請求項18】
前記所定の閾値は1である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記モニタにより行われる前記神経筋モニタリング方法は、ポストテタニックカウント(PTC)を決定した後に、ステップ(a)及び(b)を反復することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記モニタは、ステップ(a)が10秒毎に1回のみ反復されるように前記神経筋モニタリング方法を行うようにプログラミングされる、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記モニタにより行われる前記神経筋モニタリング方法は、ネットワーク接続を通じて前記モニタからサーバへTOFカウント又はPTCを送信することを更に含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
前記モニタにより行われる前記神経筋モニタリング方法は、
前記患者により生じたインピーダンスを決定することと、
デバイスインピーダンスを決定するために、前記患者の前記インピーダンスを前記モニタ、前記複数の刺激電極、前記複数の筋電図電極、及び前記患者の総インピーダンスから減算することと、
前記デバイスインピーダンスが所定の閾値を上回る場合に警告を発行し、前記患者から検出された前記識別可能な反応に基づくTOF比の計算を自動的に終了することと
を更に含む、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本願は、2016年10月14日出願の米国仮出願番号62/408,327及び2017年3月9日出願の米国仮出願番号62/469,310の利益を主張し、それらの開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
神経筋遮断の検出のためのシステム及び方法が記述される。
【背景技術】
【0003】
今日の全身麻酔の2つの主要な製薬成分は、(1)意識不明の状態を招く麻酔薬と(2)筋麻痺を生じさせる神経筋遮断薬とを含む。部分的に麻痺して(残留神経筋遮断)患者が覚醒することは珍しいことではなく、それは、重大な患者の害(例えば、呼吸能力の不全)につながり得る。
【0004】
神経筋遮断の程度を評価するための少なくとも3つの方法がある。最も簡単で最小の正確な方法は、所定の秒数の間、ベッドから頭を持ち上げるように、患者に動かすように依頼することである。このテストは、かなりばらつきがあり、更に重要なことに、目の覚めた反応の良い患者を必要とする。患者が覚醒したときに、患者が十分な運動機能を有すると麻酔医が確信し得るように、患者が依然として意識不明であるときに行い得るテストを有することがより望ましい。麻酔をかけられた(意識不明の)患者において、神経が電気的に刺激され、神経支配された筋の動きをもたらす。例えば、手首近くの尺骨神経の刺激は、母指及び示指を緊縮させる。麻酔医は、電気刺激に反応して母指が動くか否かを確かめるために、この電気刺激の間、母指を視覚又は触覚し得る。この種のモニタリングは、末梢神経刺激、又は定量的(又は非定量的)神経筋モニタリングとしばしば称される。第3のより洗練された方法は、上述のような末梢神経刺激装置への動作検出素子の追加を含む。これらの装置は、医者の母指によってではなく、むしろ、ある検出装置、例えば、加速度測定又は筋電図検査に基づく検出装置によって動きが検出されるので、定量的神経筋モニタ、又は定量的収縮(twitch)モニタと称される。これらの種類の装置の利点は、動きの程度のより正確な定量化であり、それは、麻痺の程度のより良い見当を麻酔医に与え得る。
【発明の概要】
【0005】
神経筋遮断のモニタリングのための神経筋リード線アセンブリが記述され、複数の電極を支持する基部を含み得る。第1の複数の電極は、基部により機械的に支持され、刺激のために患者に接続されるように構成される。第2の複数の電極は、基部により支持され、刺激信号に対する反応を検知するために患者と電気的に通信する。第2の複数の電極は、第1の複数の刺激の電極の少なくとも1つからの刺激信号に反応した筋活動を検出するためにプロセッサと電気的に通信するように構成される。第2の複数の検知の電極は、患者の動きを検出していない複数の検知電極の内の少なくとも1つを用いて選択可能に構成される。
【0006】
リード線アセンブリの基部は、患者の手の上の解剖学的に所望の位置に第2の複数の検知の電極を、及び患者の前腕上の解剖学的に所望の位置に第1の複数の刺激の電極を配置するように非直線的である。
【0007】
例示的実施形態では、検出された信号の分析に基づいて、最適でない検知電極が駆動電極として使用されると共に、第2の複数の検知の電極の内の1つの電極は、最適な検出電極として選択される。駆動電極は、患者に接続された他の電極に共通しているコモンモード信号を除去するように動作し得る。
【0008】
例示的実施形態では、基部、刺激の電極、及び検知の電極は、使い捨てである。
【0009】
例示的実施形態では、基部は、電気的な活動を検知するために検知の電極を患者に固定するための医療グレードの接着剤を含む。
【0010】
例示的実施形態では、基部は、第1の複数の刺激の電極を支持する第1の部分と、第2の複数の検知の電極を支持する第2の部分とを含む。第1の部分は第2の部分から分離し得る。第1の複数の導電体は、複数の刺激の電極と電気的に通信し、第1の部分から延伸する。第2の複数の導電体は、複数の検知の電極と電気的に通信し、第2の部分から延伸する。例示的実施形態では、第1の複数の導電体及び第2の複数の導電体は、第2の部分から離れて機械的に接合される。
【0011】
例示的実施形態では、基部は、第1及び第2の複数の導体を取り囲む。
【0012】
例示的実施形態では、基部は、患者の手掌の上に第1の検知の電極を、及び患者の手背の上に第2の検知の電極を配置するために患者の母指の周囲に基部を取り付けるための母指アパーチャを含む。
【0013】
例示的実施形態では、第2の複数の検知の電極は、駆動電極を更に含む。第1の検知の電極及び第2の検知の電極の内の一方は、刺激信号に反応して患者の筋活動を検知するために選択され、第1の検知の電極及び第2の検知の電極の内の他方は、駆動電極として選択される。
【0014】
神経筋遮断のモニタリングのための神経筋リード線アセンブリは、主要部と、主要部により機械的に支持された複数の電極と、加速度計と、夫々、主要部により支持され、複数の電極と電気的に通信する複数の導体とを含み得、複数の導体は、刺激に反応した動きを検出するためにプロセッサと電気的に通信するように構成される。
【0015】
例示的実施形態では、主要部は、患者の前腕及び手の上の解剖学的に所望の位置に複数の電極を配置するために非直線的である。
【0016】
例示的実施形態では、主要部、電極、及び導体は使い捨てである。
【0017】
例示的実施形態では、主要部は、電気的活動を検知するために電極を患者に固定するための医療グレードの接着剤を含む。
【0018】
例示的実施形態では、複数の電極の内の刺激の電極は、刺激信号を患者に印加するためのものである。
【0019】
例示的実施形態では、複数の電極の内の検知の電極は、刺激の電極により印加された刺激信号に対する患者の反応を検知するためのものである。
【0020】
例示的実施形態では、複数の電極は、刺激の電極により印加された刺激信号に対する患者の反応を検知するように構成された2つ以上の検知の電極を含む。
【0021】
例示的実施形態では、主要部は、複数の導体を取り囲む。
【0022】
麻痺した患者上の神経筋モニタを調整する(calibrate)ための方法も記述され、第1の刺激信号値における調整を開始することと、四連(train of four)分析のための第1の刺激信号値において連続的入力信号を印加することと、T1反応及び四連比に対する患者の四連反応を測定することと、四連比が一定であり、T1反応が増加する場合、該刺激値をインクリメント値だけ増加した刺激値に増加させることと、増加した刺激信号値において連続的入力信号を印加し、測定を反復し、刺激値の刻みを増加させることと、増加した刺激信号値における四連に対する患者の初期反応が一定ではない場合(すなわち、連続的入力信号の印加中に四連比が変化した場合)、調整を停止することを含み得る。また、T1反応が増加しない場合、調整された刺激値を現在の刺激値に設定する。
【0023】
例示的実施形態では、方法は、神経筋モニタの刺激値を、係数だけ増加した調整された刺激値に設定することを更に含む。
【0024】
例示的実施形態では、第1の刺激値は25mAである。
【0025】
例示的実施形態では、連続的入力信号において患者の初期反応を測定することは、15秒間隔の2つの連続的TOF信号の第1の(T1の)高さを測定することを含む。
【0026】
例示的実施形態では、インクリメント値だけ刺激値を増加させることは、TOF比が以前の刺激値におけるTOF比と同じであることを確認することを含む。
【0027】
例示的実施形態では、最大の刺激値を設定するための係数は、1.1である。
【0028】
例示的実施形態では、測定することは、電気的雑音値を測定することと、現在の刺激値を設定するために、測定された雑音を使用することとを含む。
【0029】
例示的実施形態では、TOFの刺激値は、少なくとも1.4以上の信号対雑音比を有するように設定される。
【0030】
例示的実施形態では、TOFの刺激値は、少なくとも2.0以上の信号対雑音比を有するように設定される。
【0031】
例示的実施形態では、測定することは、T信号と同じ期間、ゼロ電流刺激信号を印加することを含む。
【0032】
例示的実施形態では、測定することは、電気的雑音値を測定することと、検知された患者の反応が本システムに接続された患者に対する雑音値以下に接近した場合に、励起信号に対する検知反応の使用を可能にする又は停止するために、測定された雑音を使用することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムの図を示す。
図2A】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングでの使用のためのリード線システムの図を示す。
図2B】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングでの使用のために患者に適用されているリード線システムの図を示す。
図3】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングでの使用のためのリード線システムの図を示す。
図4】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングでの使用のためのリード線システムの図を示す。
図5】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムのための制御部の概略図を示す。
図6】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムのための制御部の概略図を示す。
図7】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムのための制御部の概略図を示す。
図8】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムのための制御部の概略図を示す。
図9】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムのための制御部の概略図を示す。
図10】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムのための制御部の概略図を示す。
図11】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムのための制御部の概略図を示す。
図12】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムのための制御部の概略図を示す。
図13】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングプロセスを示すフローチャートを示す。
図14】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングシステムの図を示す。
図15】例示的実施形態に従った下肢上の神経筋モニタリングシステムの図を示す。
図16】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングプロセスを示すフローチャートを示す。
図17】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングプロセスを示すフローチャートを示す。
図18】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングプロセスを示すフローチャートを示す。
図19】例示的実施形態に従った調整プロセス中の例示的な患者の反応を示す。
図20】例示的実施形態に従った、プロセスステップ中の神経筋モニタリングシステムのための制御部の概略図を示す。
図21】例示的実施形態に従った神経筋モニタリングプロセスを示すフローチャートを示す。
図22】例示的実施形態に対して本明細書に記述される方法及びシステムからもたらされるTrain-Of-Four信号のグラフを示す。
図23】例示的実施形態に対して本明細書に記述される方法及びシステムからもたらされるTrain-Of-Four信号のグラフを示す。
図24】例示的実施形態に対して本明細書に記述される方法及びシステムからもたらされるTrain-Of-Four信号のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の必要とされる詳細な実施形態が本明細書に開示されるが、開示される実施形態は、様々な代替的な形式で実施され得る発明の模範に過ぎないことを理解すべきである。図は、必ずしも縮尺通りではなく、幾つかの図は、特定のコンポーネントの詳細を示すために誇張され得、又は最小化され得る。それ故、本明細書に開示される構造的及び機能的な具体的詳細は、限定するものとしてではなく、本発明を様々に用いるために当業者に教示するための代表的原理に過ぎないものとして解釈されるべきである。
【0035】
今日の全身麻酔の2つの主要な製薬成分は、(1)意識不明の状態を招く麻酔薬と(2)患者に麻痺を生じさせる神経筋遮断薬とを含む。意識不明のレベルをモニタリングするための新たな高性能のEEGモニタが存在するが、麻痺(例えば、神経筋遮断)のレベルをモニタリングするためのツールは、それほど高性能ではない。麻酔、具体的には、迅速にリバースする麻酔の進歩と共に、例えば、残留神経筋遮断を伴って、部分的に麻痺して患者が覚醒することが益々一般的になっている。患者は、大手術から覚醒したときに、かなりの不快感を経験し得、嚥下及び/又は呼吸することが困難であると患者は感じる。本記述のシステム及び方法は、麻痺、例えば、神経筋遮断のレベルをモニタリングするための改善されたツールを提供する。本記述のシステム及び方法は、末梢神経を刺激し、もたらされる筋電図(EMG)反応を測定するように動作する。実施形態は、患者状態の検知の誤りの可能性を減少させるために、ノイズフロアに対して、患者からの電気信号検知結果をフィルタリングすることを備える。
【0036】
図1は、患者の定量的収縮モニタリングのためのモニタリングシステム100を示す。システム100は、麻酔中の又は麻酔結果としての神経筋遮断の深度を測定するために使用され得る。モニタ101は、基部102に備えられる。基部102は、モニタ101を充電するため、さもなければモニタ101に電気エネルギを提供するために使用され得る。モニタ101は、手術室の無菌環境において使用可能であるように製造される。例えば、モニタは、例えば、その他の麻酔機器と共に、外科手術室又は外科手術ルームに設置するために洗浄可能であり得る。幾つかの実施形態では、基部102も手術室の無菌環境において使用可能であるように製造される。基部102は、手術室の外部にあり得、モニタ101は、基部102から取り外され得、手術室中に取り込まれ得る。リード線アセンブリ105は、モニタ101に接続され、モニタ101に送信されている検知信号又はデータと共に、少なくとも検知機能を提供し得る。リード線アセンブリ105は、刺激に反応した動きを検出するために、患者106に配置されるように構成される。モニタ101は、刺激信号をリード線アセンブリ105へ出力し得、リード線アセンブリ105は、患者106の反応を順番に検知する。例示的実施形態では、リード線アセンブリ105は、使用後に廃棄される単一使用品である。
【0037】
ディスプレイ、回路、メモリ、及びプロセッサを含むモニタ101は再利用可能である。モニタ101は筐体を含み得、筐体は射出成型ケースを含み得、筐体内には、充電池、充電回路、刺激回路、ディスプレイ(例えば、タッチスクリーンLCD)、ディスプレイ回路、並びにプロセッサ及びメモリを備えたプロセッサボードが封入される。プロセッサボードは、リード線アセンブリの種類を検出すること、表皮抵抗を測定すること、センサに必要な適切な電圧/電流パルス、並びにオペアンプ及びアナログデジタル変換器を生成することをするように構成され得る。モニタは、雑音補正方法を含む本明細書に記述される方法及びシステムを使用して、検知されたTOF信号のグラフを表示し得る。
【0038】
リード線アセンブリ105は、加速度計、フレックス回路、間隔を空けて離れた複数の電極、及びモニタを接続するためのコネクタを含み得る。リード線アセンブリ105は、加速度モニタリングベースの検知装置、筋電図検査ベースの検知装置、又はそれら両方であるように構成され得る。リード線アセンブリがコネクタを通じてモニタに接続された場合、モニタ101はリード線アセンブリ105の種類を検知し得る。
【0039】
リード線アセンブリ105を通じたモニタ101は、複数の別個の刺激パルスを使用し、これらの刺激パルスの各々に対する患者の反応を検知して、定量的な収縮モニタリングを提供し得る。これは、設定された期間、例えば、5秒未満、3秒未満、又は約2秒等に渡って実施される。一例では、刺激パルスは、2秒のタイムスパン内の4つの電気インパルス(“四連”又はTOF)であり得る。リード線アセンブリ105は、僅かな動き又は収縮を患者に生じさせ得る神経にこれらの刺激信号を印加する。リード線アセンブリ105は、手首近くの尺骨神経に刺激パルスを印加し得る。リード線アセンブリ105は、母指及び示指における刺激信号に対する患者の反応、例えば、収縮する母指及び示指をその後検知する。TOFカウントは、TOF刺激パターンに続く識別可能な反応の数を説明する。神経筋遮断がないと、4つの全ての反応は、本質的に同じ振幅である。第4の反応の喪失は、75~80%の神経筋遮断を表す。第3、第2、及び第1の反応の消滅は、85%、90%、及び98~100%の神経筋遮断と夫々関連付けられる。四連比は、神経筋の回復の測定として、第4の反応の振幅を第1の反応の振幅で除算することによって得られる。0.7の比は、十分な横隔膜(すなわち、患者の呼吸能力)の回復を表す。0.9を超える比は、抜管に対する十分な咽頭筋の回復を保証する。神経筋遮断のモニタリングの改善は、改善された患者の治療及びアウトカムをもたらし得る。
【0040】
モニタ101、又は任意に基部102は、ネットワーク107を通じてサーバ110と通信する。サーバ110は、モニタ101からのデータと電子診療録とを格納し得る。データは、検知データ、TOFデータ、電気的雑音データ、神経筋遮断データ、筋電図データ、刺激信号データ、ポストテタニックカウントデータ、単収縮データ、及び加速度計測データ等を含み得る。一例では、基部102は、モニタ101にワイヤレス(誘導)充電を提供し得る。これは、壁中の本線にモニタ101を直接挿し込むことから経験し得る電流サージから患者を保護すると共に、電池を交換する必要性を削減するであろう。基部102はまた、病院の電子診療録(EMR)に接続し得、収縮モニタリングデータを受信し、このデータを無線で又はケーブルを介してネットワーク107を通じてEMRへ送信するために、モニタ101と無線で通信し得る。
【0041】
モニタ101及びリード線アセンブリ105は、持ち運び可能であり、使用時にスタンドアローンである。リード線アセンブリ105は、麻酔薬が患者に投与される前に患者に適用され得る。リード線アセンブリ105は、例えば、麻酔後治療室(PACU)において、回復を通じて患者に留められ得る。モニタ101はまた、患者と同行し得る。例示的実施形態では、第1のモニタは、外科手術室にとどまり得、患者が外科手術室から去る時にリード線アセンブリ105から除去され(例えば、引き抜かれ)得る。第2のモニタは、外科手術室の外(例えば、PACU)においてリード線アセンブリ105に挿し込まれ得る。
【0042】
モニタ101は、電極への電気接続部及び電極自体に関する潜在的問題を識別するためにインピーダンス測定を使用し得る。モニタはまた、患者の身体への電気的接続不良を検出し得る。モニタ101はまた、2つの低信号状態間を区別するためにインピーダンスの測定を使用し得る。第1の低信号状態は、電極又は電極接続部に関する問題によって生じ得る。第2の低信号状態は、患者の完全麻痺に達した時に発生し得る。インピーダンスは、装置及び人体のインピーダンスを含む。装置のインピーダンスは、モニタの内部インピーダンスとリード線、例えば、接続部、ワイヤ、及び電極のインピーダンスとを含む。装置のインピーダンスは、製造中に決定され得、モニタのメモリ内に格納され得る。人体、例えば、患者のインピーダンスは、Rtotal=Rskin(in)+Rintemal+Rskin(out)として一般的に定義される。Rtotalは、2つの電極間に身体を通じて信号を印加することによって特定の患者に対するモニタを調整する時に使用され得る。人体のインピーダンスは、約1,000~100,000オームの間であり得る乾燥皮膚の抵抗を含む。皮膚の抵抗は、濡れている、又は火脹れ/水膨れがある場合により低くなる。幾つかの例では、より良い導電性で患者に電極を適用するのを助力するために、導電性ペースト又は導電性ゲルを塗布することが望ましい。医療グレードの導電性ゲルは、導電剤として濃縮のイオン化塩を有する水溶液と、架橋結合可能な天然ガムと、補強することなく粘着性を維持するための十分な内部強度を有する導電性ゲルを提供する架橋結合材料とを含み得る。インピーダンスは、例えば、第1の電極に既知の信号を印加し、別の電極で反応を検知することによって測定され得る。モニタは、信号源を使用して各電極を試験し得、もたらされる信号を何れか1つ以上の他の電極で検知し得る。これは、患者までの信号経路と、患者を通じて、刺激される所望の神経までの信号経路とのインピーダンスを計算するために使用される。
【0043】
モニタ内に格納され得る閾値をリード線のインピーダンスが上回る場合、モニタは、電極又は電極接続部に関する問題があると決定し得る。モニタは、電気接続部で問題がある信号、例えば、光又はその他の表示標章を発行し得、確実な信号を取得できないことがある。インピーダンスが正常である場合、低信号は、おそらく患者の麻痺の結果である。何れの低信号の場合においても、加速度計信号又はEMG信号が非常に低い。何れの場合においても、低信号は、誤ったTOF比をもたらし得るので、モニタは、TOF比を計算しないであろう(一例では、モニタは、代わりに、TOFカウントをゼロと表示するであろう)。例えば、検知信号が非常に低い、例えば、深い麻痺の場合のように、元の検知信号の振幅の10%未満である、若しくは固定値よりも低い(例えば、2mV未満のEMG振幅)、及び4つの全ての収縮がほぼ等しい及び場合、TOF比は(第4の収縮が第1の収縮と同じ振幅であることを意味する)100%として誤って表示され得、それは、実際は患者が完全に麻痺しているときに患者が麻痺していないと暗示し得る。
【0044】
モニタ101は、神経筋遮断の検出での使用のための電極を選択するモダリティ選択機能部を含み得る。複数の電極の使用では、モニタ101は、複数の電極から刺激電極及び/又は検知電極を選択する。モニタは、刺激信号を印加するために、刺激対象の神経に配置された電極の何れかを使用し得る。モニタは、筋肉の刺激を電気的に又は機械的な移動によって検知するために、刺激可能な筋肉に配置された電極の何れかを使用し得る。モニタはまた、検知信号からコモンモード信号を除去するために、非選択の電極の内の1つを選択し得る。コモンモード信号は、環境雑音、例えば、患者の身体に存在する外科手術室内の主電源又はその他の装置からの60Hzの信号を含み得る。モニタは、コモンモード信号を検知し、コモンモード信号に利得を印加し、例えば、コモンモード信号を反転して検知信号にそれを加算することによって検知信号からコモンモード信号を減算するための回路を含み得る。手掌上の第1の電極、手背上にある第2の電極、及び指の上にある第3の電極を用いた、3つの検知電極を用いる例では、モニタ101は、検知のための最良の電極を選択するであろう。その他の電極の内の1つは、コモンモード電極であり、コモンモード信号を抑圧するために使用されるであろう。検知されている信号は、電極間で差がある。したがって、コモンモード信号は抑圧されるべきである。
【0045】
一例では、刺激電極が刺激され、第1の電極が検出電極である。この検出の第1の値が検知され、保存される。刺激電極が刺激され、第2の電極が検出電極である。第2の検出の第2の値が検知され、保存される。第1の値は第2の値と比較される。夫々、第1の値又は第2の値の内のより大きい方が電極の使用を決定し、第1の電極又は第2の電極の何れかが選択される。第1の電極及び第2の電極の内の他方はコモンモード電極である。これらの場合の各々における第3の電極は、EMG検出のための負電極である。これらの電極は、検知されたTOF信号の一部であり得る雑音信号を検出するために使用され得る。
【0046】
モニタ101は更に、そのモダリティの選択において、心電図検出及び/又は加速度計検出の間で決定し得る。モニタ101は、心電図検出又は加速度計検出の間で検出の種類を選択するマシンヒューマンインタフェースを通じて入力を受信し得る。
【0047】
基部102は、麻酔機に統合され得る。モニタ101は、麻酔機の付属品であり得る。基部102は、複数の引き出しを含む車輪付きカートを含み得る。引き出しの内の少なくとも1つは、幾つかの薬を格納するために施錠され得る。基部は更に、例えば、電子診療録データベースへのネットワーク通信接続部を含み得る。基部はまた、その他の電気接続部、例えば、USB等を含み得る。基部102はまた、水平なワークスペースを含み得る。一例では、モニタ101は、ワークスペースから分離したモニタ支持部において、電気接続部を通じて基部に電気的に接続され得る。
【0048】
モニタ101は、リード線アセンブリ105を通じて患者に印加された刺激電流を、電流の更なる増加が大きな筋収縮をもたらさなくなるまで徐々に上昇させる調整ルーチンを含み得る。刺激電流は、この最大刺激電流、例えば、最大上刺激を超えるまでその後設定される。動作において、調整は、麻痺薬を投与する前に患者上で実施されるべきである。モニタは、おおよそ又は少なくとも1秒離隔した一連の単一パルスにおいて、継続的に増加するパルスを印加するであろう。しかしながら、神経筋遮断は、この相互に近接して離隔した単一収縮に対する反応に減衰(減少)をもたらし、最大信号振幅を検出する能力を狂わせるので、麻痺した患者には、こうした調整シーケンスは機能しない。患者が薬により既に麻痺している場合、モニタ101は、単一パルスが更に離隔した一連のパルスを使用するであろう。一例では、TOFシーケンスにおける第1の収縮は、先行するTOFシーケンスの最後から少なくとも10秒離隔される。モニタは、データを狂わせ調整を阻むであろう患者の麻痺レベルが調整シーケンスの過程に渡って変化しないことを確認するためにTOF比を監視するであろう。例示的シーケンスは、(1)25mAで第1のTOF調整を開始すること、(2)15秒の間隔で離隔した連続的な2つのTOFシーケンスのT1の高さを測定すること、(3)TOF比が一定であるとみなし、そして患者が十分に“麻痺していない”か否か、例えば、ベースラインの50%のT1と相関があるTOF>0.4であるか否かを確認して、T1収縮の高さが更に増加しなくなる(5%未満の増加)まで5mA刻みで振幅を増加させること、及び(4)プラトーに先立つ振幅を取得し(例えば、40mA)、これに110%を乗算し(例えば、44mA)、後続の全ての刺激に対する“最大上電流”としてこれを使用することを含む。
【0049】
使用中、モニタ101及びリード線アセンブリ105は、刺激し、患者の反応を検知するように動作し得る。モニタ101及びリード線アセンブリ105による定量的収縮モニタリングによって与えられるより洗練された種類の刺激の一例は、四連(TOF)刺激シーケンス及び四連比の計算である。四連シーケンスは、タイムスパン、例えば、2秒内に4つの別個の電気インパルスを印加することを含む。インパルス列は、刺激信号であり、モニタ内の回路により生成される。リード線アセンブリは、(麻痺していない患者では)4つの電気インパルスの各々に対して一度、母指、示指、又はそれら両方に“収縮”を生じさせる刺激信号を患者に、例えば、手首近くの尺骨神経に伝達する。TOFカウントは、TOF刺激パターンに続く識別可能な反応の数を説明する。神経筋遮断が無ければ、4つの全ての反応は同じ振幅のものである。神経筋遮断の増加と共に、第4の、第3の、及び第2の反応は、振幅がより小さくなり始める(“減衰”と呼ばれる)。四連比は、神経筋遮断の測定として、第4の反応の振幅を第1の反応の振幅で除算することにより取得される。0.7(70%)の比は、十分な横隔膜(すなわち、呼吸能力)の回復を表す。0.9(90%)を超える比は、抜管に対する十分な咽頭筋の回復を保証する。本システム及び方法は、麻痺のレベルの正確な特性評価を提供するための定量的収縮モニタリングを提供する。
【0050】
リード線アセンブリ105は、医療専門家が少なくとも1つ(以上)の筋記録現場に検知電極を設置することを迅速に可能にする。リード線アセンブリは、その電極を予め配置する方法で支持する。モニタ101は、信号分析に基づいて最良の検知現場を選択するためのアルゴリズムを使用する。モニタは、リード線アセンブリに予めパッケージ化された複数の電極から、使用するための最良の電極を選択し得る。
【0051】
モニタ101は、心電図(“EMG”)電極及び加速度計の両方からの信号を検知及び処理し得る。モニタ101のアルゴリズムは、最良の信号を与える検知機構を選び取り得る。モニタ101は、例えば、信号の最大の高さ、最大の曲線下面積、波形分析、又はその他の信号処理分析に基づいて、複数の検知場所から最良の検知場所(例えば、第1背側骨間筋と母指内転筋との上方に設置された電極)を自動検出し得る。モニタ101はまた、リード線が不良であるか否か、及び何れの電極又はリード線に欠陥があるかを、例えば、インピーダンス測定に基づいてユーザに通知し得る。
【0052】
モニタ101はまた、リード線アセンブリ105からの検知データの経時変化をプロットし得る。モニタは、回復を完了するまでの患者の時間、又は設定値を超えるまでの四連比に対する時間、例えば、“TOF>0.7になるまでの時間”若しくは“TOF>0.9になるまでの時間”の予測を計算し得る。全ての患者は、神経筋遮断からの異なる回復時間を有するので、この予測は、特定の患者に対する以前の収縮モニタリングデータの外挿に基づく推定であり得る。或いは、予測は、類似の略歴、例えば、身長、体重、年齢、性別、診断結果等を有する類似の患者の既往歴に基づき得る。
【0053】
モニタ101はまた、患者が十分に麻痺している(例えば、TOF=0又は<0.1)時に患者の状態を検知するためにより感度の良いアルゴリズムを使用し得、より感度の高いシーケンス、例えば、ポストテタニックカウント(PTC)は、深い麻痺を定量化するために使用され得る。モニタ101は、TOF=0を検出し得、PTCモニタリングに自動的に切り換えるであろう。モニタ101は、タイムプロット上の両方のプロットをディスプレイ上に出力し得る。神経筋の十分な回復が発生した場合、モニタ101は、PTCからTOFへ再度切り換えるであろう。
【0054】
図2Aは、基部200と、基部200上に支持された複数の電極201~205とを含むリード線アセンブリ105を示す。基部200は、モニタに隣接する近位端221と遠位端222とで伸長する。近位端221は、リード線アセンブリ105をモニタ101に電気的に接続するコネクタ212を含み得る。基部200は、複数の導体、例えば、金属トレース線、プリント導電性インク、及びワイヤ等を支持する柔軟な基板を含み得、それはコネクタ212から夫々の電極201~205に延伸する。基部200の裏面は、基部の少なくとも一部を患者に固定するための医療グレードの接着剤を含み得る。基部200は、電極201~205の各々の周囲に周辺主要部を含み得る。結果として、基部200は、電極間よりも電極201~205で幅広である。電極201~205は、患者に電気的に接触し、基部200によって適所に保持される。
【0055】
第1の電極201は、近位端221に最も近い電極である。第1の電極201、第2の電極201、及び第3の電極203は、近位端221から順番に配置され、刺激信号を尺骨神経に各々印加し得る。モニタ101は、刺激信号を患者の尺骨神経に印加するのに何れの1つ又は2つ以上の電極201~203が最良であるかを決定し得る。電極201~203の各々、又は電極201~203の内の選択された電極は、モニタ又はその他の制御部から刺激信号を受信する。刺激信号は、刺激される尺骨神経又はその他の神経において50ミリアンペアの信号を患者に創出するために約400ボルト以下である。電極201~203の内の1つは、アースに接続され得、刺激信号によって直接駆動されなくてもよい。
【0056】
電極204は、他の電極201~203により印加された刺激信号に対する患者の反応を検出するように構成及び配置される。電極204により検出された信号は、神経筋遮断のレベルの分析及び定量的決定のために導体を経由してモニタへフィードバックされる。電極204は、刺激信号に反応して母指内転筋又は第1背側骨間筋の筋活動を検出するために、母指内転筋又は第1背側骨間筋に配置され得る。
【0057】
電極205は、指、例えば、図2Bに示されるように示指の先近くに配置される。電極205は、近位端221から約14センチメートルであり得る。電極205は、中性(負)端子であり得る。
【0058】
加速度計は、複数の電極201~205の内の何れか1つに、又は該1つの適所に配置され得る。一例では、加速度計は、母指内転筋又は第1背側骨間筋にある第4の電極204に配置され、第1の電極201、第2の電極202、又は第3の電極203の内の少なくとも1つにより印加された刺激信号に反応する関連する筋の動きを検知し得る。一例では、加速度計は、患者の指の上の電極に配置される。一例では、加速度計は、指先に配置される別個の装置である。加速度計は、リード線アセンブリの基部200に統合され得る。
【0059】
適用証印部(indicia)210は、リード線アセンブリの基部200の近位端221に隣接して証明され得る。リード線アセンブリの基部200が患者の何れかの手に適用されるように適合された場合では、証印部210は、リード線アセンブリの左手の適用とリード線アセンブリの右手の適用の両方に対して適切な適用を示し得る。証印部は、何れかの手に適用された場合の複数の電極201~205の各々の場所のグラフィカル表示である。リード線アセンブリの基部200は、基部200を患者に取り外し可能に接着するために、片側上に接着剤を有し得る。導電性接着剤は電極に配置され得る。
【0060】
電極203、204、及び205は、患者の手のその他の場所に配置され得る。一例では、少なくとも1つの電極は、患者の小指(little finger)(時折“小指(pinky finger)”とも称される)上に配置され得る。本明細書に記述されるように、刺激電極201、202は、人体の筋又は骨により保護されない大きさである尺骨神経を刺激する。尺骨
神経は、純粋な感覚機能を果たさない単に無保護の神経である。尺骨神経は、小指と、薬指の隣接する半分とに直接接続される。したがって、小指に隣接して又は小指上に検知電極を設置することは、幾らかの患者に対して改善した刺激及び検知を提供し得る。
【0061】
図3は、リード線アセンブリ105の別の実施形態であるリード線アセンブリ300を示す。リード線アセンブリ300は、基部306上に支持された複数の電極301~305を含む。基部306は、図2Aの実施形態の基部200の材料と類似又は同じ材料で形成され得る。基部306は、リード線アセンブリ300を患者に取り外し可能に固定するために、その片側上に接着剤を含み得る。導電性接着剤は電極301~305に配置され得る。
【0062】
基部306は、近位端321から遠位端322まで伸長し延伸する。基部306は、患者の解剖学的構造、例えば、手首及び手に沿って湾曲するように、軟性であり柔軟である。複数の導体は、基部306内で延伸し、モニタを電極301~305に電気接続する。最初の2つの電極301、302は、刺激信号、例えば、一連の電気パルスを患者の神経(例えば、尺骨神経、後脛骨神経、又は顔面神経)に印加する刺激電極である。2つの検知電極303、304は、近位端321と遠位端322との中間に配置される。一例では、検知電極303、304は、近位端321よりも遠位端322により近い。
【0063】
電極301~305は、皮膚上の筋よりも上の表面から筋活動を記録することによって患者の筋機能を評価するために、表面筋電図の読み出しを提供するように動作する。電極303、304は、母指内転筋、背側骨間筋(例えば、第1背側骨間筋)、口輪筋、又は長母趾屈筋等の活動を読み出し得る。電極303、304は、表面電極であり。刺激電極301、302からの刺激信号に反応した筋活動の限られた評価のみを提供可能である。EMG信号を決定するために、更なる負電極、例えば、患者の指における電極305が使用される。検知のための2つの電極が示されているが、一例では、刺激信号に反応した筋を記録するために、3つ以上の電極が使用され得る。一例では、電極の対によって、又は複数の電極のより複雑なアレイによって反応が記録され得る。しかしながら、2つの別個の電極間の電位差(例えば、電圧差)をEMGの記録が表示する時には2つ以上の電極が必要とされる。一例では、刺激されている筋に隣接しない電極303又は304の内の他方は、コモンモード信号を抑圧するための駆動電極であり得る。電極305は、EMG信号に対する電圧差を提供するための負電極として使用され得る。患者の反応を検出するために電極303、304の内の何れが使用されそうであるかを選択することが望ましい。試験信号に対して最良の導電性又は最良の応答性を示す電極がモニタ101によって検知電極として選択され得る。端的に言えば、2つのモードがあり得、第1のモードは、コモンモード信号を抑圧する電極303と、正のEMG検出電極である電極304と、負のEMG検出電極である電極305とを含む。第2のモードは、正のEMG検出電極である電極303と、コモンモード信号を検出する電極304と、負のEMG検出電極である電極305とを含む。
【0064】
電気コネクタは、導電ワイヤを通じてモニタ又は制御部101に電極を接続するために、近位端321に提供される。モニタ/制御部101は、患者における電気信号の刺激及び検知に関する電気信号を処理及び出力するための制御回路を含む。モニタ/制御部101は、主電源に差し込まれていない時にシステムに電力を与え得る充電池を含み得る。モニタ/制御部101は、それに統合された触覚入力回路を有する表示スクリーンを含み得る。表示スクリーンは、本明細書に記述されるグラフィカルユーザインタフェースの何れかを出力するように構成される。表示スクリーンは、検知されたEMG信号又は進行中の四連試験のタイムプロットの図示間を切り換え得る。有効な結果が生み出された場合、TOFの計算値が表示スクリーンに示され得る。
【0065】
動作中、モニタはコモンモード信号を検出するための回路を含み得る。回路は、コモンモード信号を反転し、コモンモード抑圧信号を生み出すために利得をその後印加する。コモンモード抑圧信号は、コモンモード信号を抑圧するために非検知電極に印加される。
【0066】
電極303、304は、基部306に母指アパーチャ310を経由して遠位に配置される。母指アパーチャ310は、基部306の卵型の延伸部によって形成され、該延伸部は、母指アパーチャ310に巻き付き、近位端に向かって再度延伸する。挿入開口部311は、基部306の本体と基部306のカンチレバーな円弧312との間で画定される。異なる形状、例えば、円形又は多角形の母指開口部を提供することは、本開示の範囲内にあるであろう。一例では、母指開口部310は、閉じており、すなわち、間隙311を有さず、円弧312の端部は、基部306の中間部に再度延伸する。
【0067】
電極305は、遠位端322にある。電極305は、中性電極であり得、指、例えば、患者の示指の先端に配置され得る。
【0068】
リード線アセンブリ300は、尺骨神経の上方の皮膚上の電極301、302を用いて患者に添付される。患者の母指は、母指アパーチャ310を貫通する。電極303、304は、手の反対側に配置される。リード線アセンブリ300が患者の左手に配置された場合、電極303は手掌側にあり、電極304は背側にある。リード線アセンブリ300が患者の右手上に搭載された場合、その逆が真であり、例えば、電極303は背側にあり、電極304は手掌側にある。検知電極303、304は、それらが配置される側に依存して、隣接の筋肉組織の動きを検知する。電極の他方は、駆動電極として動作し、電流のシンク又はソースであり得る。駆動電極の使用は、コモンモードインタフェースを削減し得る。モニタ内の回路は、患者内のコモンモード信号を検出し得る。コモンモード信号は、筋活動に起因する検知信号からコモンモード信号を除去するためにモニタ内で使用され得、又はコモンモード信号を抑圧するために非検知電極に印加され得る。
【0069】
リード線アセンブリが患者に設置された場合、医療専門家は、例えば、マシンヒューマンインタフェース又はその他のI/O装置を通じて、リード線アセンブリが添付された手をモニタ101に入力し得る。これは、関連する筋からの反応をモニタ101が読み出すのを助力するであろう。
【0070】
基部300は、患者の手の上の異なる位置に電極を移動するために異なる形状で形成され得る。例えば、電極、例えば、電極305が示指以外の指、例えば、小指上に配置される場合、基部は、小指に延伸するように、母指から延伸する部分が患者の手背又は手掌を越えて延伸するように形作られるであろう。
【0071】
電極201~205及び301~305は、患者への電気的な接触を改善するために、電極上に電解質の物質、例えば、ゲルを有する自己準備の電極であり得る。電極はまた、角質層に延伸する長さの小さなタイン(tine)又はマイクロニードルを含み得る。角質層は、幾つかの電気信号と干渉し得、角質層の幾らかを貫通する又は剥離することは、電極の電気刺激又は検知機能を改善し得る。電極のマイクロニードル又はタインは、皮膚の真皮に至るまで又は該真皮を通って角質層を突き刺し得る。結果として、電気信号は、角質層の表面上にあるよりも減少したインピーダンスで、角質層を通り過ぎ電極を通って又は越えて流れ又は伝導する。
【0072】
図4は、リード線アセンブリ300に類似するが、異なる基部306A、306Bを有するリード線アセンブリ400を示す。同じ素子は、図3に使用されるような同じ参照番号を用いて、同じ参照符号と添え字“A”又は“B”で同様に明示されて示される。基部306(図3)は、2つの別個の基部306A、306Bに分離される。近位の刺激基部306Aは、刺激電極301、302を支持し、電極301、302をモニタ101に電気的に接続する。遠位の検知基部306Bは、正の検知電極303、304と負電極305とを支持する。検知基部306Bはまた、母指アパーチャ310を形成する。検知基部306Bは、電極301、302をモニタ101に電気的に接続する。刺激電極301、302からの検知電極303、304の物理的な分離は、患者へのより容易な適用を可能にし得る。リード線アセンブリ400とモニタ101との間の刺激と検知とに対する電気経路の分離は、導体間のクロストークを減少させ得、検知電極303、304の内の少なくとも1つからより良い検知信号をもたらし得る。
【0073】
図5は、モニタ101の一部であるディスプレイ上に示されるグラフィカルユーザインタフェース500を示す。インタフェース500は、そのセットアップを確認するモニタと、リード線アセンブリ105との接続とを示す。進捗グラフ501は、装置確認プロセスの進捗を示し得る。ヘッダ503には、電池の充電及び時間が示され得る。第1の表示領域505には、TOF比及びタイマが示され得る。第2の表示領域507には、現在のビュー名が示され得る。第3の表示領域509には、進捗グラフ501及び制御ボタン508がある。制御ボタン508は、例えば、装置がまだアクティブではないことを示すために、グレイアウトされるように又はその他の標章を用いて示されたインアクティブである。
【0074】
図6は、モニタ101の一部であるディスプレイ上に示されるグラフィカルユーザインタフェース600を示す。インタフェース600は、インタフェース500と比較して動作の更なる段階である、設定段階にある。第3の表示領域509には、開始ボタンとしてアクティブである制御ボタン508と共に、現在の設定601が示される。設定601の各々は、タッチスクリーンである場合にはディスプレイとのインタラクションを通じて、又はモニタ101に接続された入出力装置を使用することによって選択及び変更され得る。刺激信号パラメータは調節可能であり得る。刺激パラメータは、電流、パルス幅、周波数、及びモニタリングモードを含み得る。インタフェース600に示されるように、電流は50mAに設定される。インタフェース600に示されるように、パルス幅は200ミリ秒に設定される。インタフェース600に示されるように、周波数は10秒に設定される。インタフェース600に示されるように、モードは四連(TOF)に設定される。
【0075】
図7は、モニタ101の一部であるディスプレイ上に示されるグラフィカルユーザインタフェース700を示す。インタフェース700は、インタフェース500及び600と比較して動作の更なる段階である、刺激段階にある。第1の表示領域505は、ここでは90%として、TOF比の読み出しを示す。第3の表示領域509は、各バーが時間T1、T2、T3、及びT4での読み出しである棒グラフ701としての四連結果を示す。設定アイコン703は、図6に示すような設定段階にユーザがプロセスを戻すことを可能にするために提供される。制御ボタン508は、ここでは、モニタ101による刺激と結果の読み出しとを停止するための一時停止ボタンである。
【0076】
図8は、モニタ101の一部であるディスプレイ上に示されるグラフィカルユーザインタフェース800を示す。インタフェース800は、インタフェース500、600及び700と比較して動作の更なる段階である、記録段階にある。インタフェース800は、図7に示すような棒グラフに代えて、第3の表示領域509にデータのプロット801を示す。図8の読み出しの例は、70%のTOF比を有する。プロットは時間経過のTOF比である。時間T(横軸の最も左の点)において、患者は、麻酔をまだ受けていないか、神経筋遮断をまだ経験していない。TOF比は1.0又は100%である。TOF比が低下し始める時間は、患者が神経筋遮断を受けているときである。本例では、最も低いTOF比は、約0.4又は40%のTOF比を伴う約25分にある。モニタは更に、TOF比が0.9になるまでの予測時間を計算し得る。ここでは、これは13分として示されている。モニタは、TOF比が0.9に達する予測時間を決定するために様々な規則をデータに適用するプロセッサを用い得る。プロセッサは、TOF比を時間経過で予測するために曲線あてはめ規則等を適用し得る。しかしながら、医療専門家は、患者が何時、覚醒させられる適切な状態にあるかを依然として決定し得、例えば、神経筋遮断薬の再投与、薬の変更、輸血等、その他の要因と共に、患者を覚醒させる決定要因として該予測を使用し得る。
【0077】
図9図12は、図5図8と同じ、モニタリングプロセスのステップではあるが、付加的医療装置、例えば、基部102又はサーバ110上にあり得るか、該付加的医療装置と通信し得る更なるディスプレイを示す。このことは、モニタ101から、場合によっては患者から遠隔の追加の医療専門家が、患者の状態をモニタすることを可能にするであろう。
【0078】
図13は、神経筋遮断を伴う麻酔下の患者をモニタリングするためのプロセス1300を示す。1301において、リード線アセンブリが患者に適用される。少なくとも2つの励起電極が、刺激される神経の上方に配置される。2つ以上の電極は、刺激信号により刺激され得る筋の上方に配置される。1303において、リード線アセンブリは、刺激信号を生成しリード線アセンブリにより検知された反応信号を処理するモニタに電気的に接続される。
【0079】
1305において、モニタは、患者の神経筋遮断を検知するために使用されるリード線上の電極を選択する。モニタは、電極の各々のインピーダンス値を測定し得る。例えば、図3及び図4を参照すると、電極303と電極305との間のインピーダンスが測定される。電極304と電極305との間のインピーダンスが測定される。許容範囲内に収まるインピーダンス値が選択される。検知電極303、304に関するインピーダンスは、その他の方法でモニタにより測定され得る。
【0080】
1307において、刺激信号が調整される。一例では、患者が麻痺薬を投与される前に調整が実施され得る。別例では、患者は麻痺薬を既に受けている。モニタは、測定された患者の反応の増加が停止するまで連続的な入力信号を通じて進め得る。入力信号は、低い値で開始し、設定量だけ順次増加する。連続的な入力信号は、約25mAで開始され得、電流の増加が検出反応の増加をもはや生じさせなくなるまで5mAだけインクリメントされ得る。TOF入力信号が使用される場合、第1のインパルス反応(T1)は、患者の反応の変化を決定するために使用される。TOF比は、調整中に患者の麻痺レベルが一定を維持することを検証するために使用される。連続的な入力信号においてTOF比が一定である場合、入力値の増加が検出反応の増加をもはやもたらさなくなるまで、入力信号は増加させられる。調整は、最大入力信号値(刺激電流)を設定する。一例では、最大入力信号は、係数だけ増加させられる、患者の反応がプラトーになる入力信号値である。係数は、信号に加算され得、又は信号に乗算され得る。最大入力信号を増加させることは、最大値が患者の閾値よりも低くなく、患者における麻痺薬の効果が減少したときに反応が生じるであろうことを確保するのを助ける。TOFの決定の一例は、図18を参照しながら更に記述される。
【0081】
ステップ1307はまた、ノイズフロア値を決定するように動作し得る。患者上のセンサにより検知された周辺雑音が検知される。期間に渡って、患者上のセンサでの電気信号が検知される。このノイズフロアの検知期間中、刺激信号は患者に何ら印加されない。ノイズフロア値は、患者において検知される、まばらな電気信号を表し得る。ノイズフロア値は、刺激信号に起因する患者からの電気反応を表す最低値であり得る。ノイズフロア値以下の検知値は、患者の鎮静状態に関連して計算と患者状態の出力とを実施したときに廃棄され得る。
【0082】
1309において、神経筋遮断が時間と共に検知される。継続的な検知は、患者の傾向、過去の状態、及び現在の状態と、薬の効果とを医療専門家が見ることを可能にし得る。
【0083】
1311において、モニタは、検知データ、設定、又は計算結果を表示し得る。表示は、計算値、例えば、TOF比若しくはパーセント、又は時間経過のデータのプロットを含み得る。
【0084】
1313において、モニタは、定量値として測定されるような患者の状態が閾値を下回るか否かを決定し得、モニタは、患者が薬から依然として回復されていないことを示し得る。例えば、閾値は、患者が横隔膜の不十分な回復又は咽頭の不十分な回復を有することを示し得る。
【0085】
図14は、収縮センサ1401と結合されたリード線アセンブリ105を有する定量的収縮モニタリングシステム1400を示す。リード線アセンブリ105は、図2A及び図2Bを参照しながら上述した電極と類似の電極を含み得る。収縮センサ1401は、母指及び示指に隣接する患者の手の側面の上方に搭載された手支持部1403を含む。支持部1403は、患者に対する支持を確保するために、手掌側上の第1の壁と、手背側上の第2の壁とを含む。支持部1403は、例えば、接着剤を使用して、適所に固定される。収縮センサ主要部1405は、調節可能な張力ピボット1409を通じて支持部1403に旋回可能に接続される。患者の母指は、収縮センサ主要部1405内に保持される。収縮センサ主要部1405には加速度計が統合される。例えば、尺骨神経上の電極202、203による刺激に反応して患者の母指が動くとき、収縮センサ主要部1405は移動し、加速度計は、該移動を検知し、ケーブル上の信号をモニタ101へ出力するであろう。刺激電極202、203のみを用い、検知電極204、205を用いずに収縮センサ1401を使用することは本開示の範囲内にあるであろう。
【0086】
身体の異なる部位、例えば、下肢又は顔上でモニタリングシステムを使用することは、本開示の範囲内にある。図15は、患者の下腿及び足の上にリード線アセンブリ105を有するモニタリングシステム1500を示す。刺激神経筋電極は、足関節1503に近位の下腿1501の側前面上に設置される。電極の物理的寸法は、成人に見られる足関節のサイズの射程範囲に最適化された寸法の所定のセットから選択される。腓骨神経の上にあり、刺激信号をそれに伝達する異なる現場に2つの刺激電極があり得る。刺激信号からもたらされる足の短趾伸(EDB)筋の収縮は、検出現場とEDB筋との間の異なる距離に起因する外側の検出現場と内側の検出現場との間に筋電位を生成する。検知電極及び刺激電極は、手に対して本明細書で記述されるように選択され得る。複数の刺激電極の内の何れかは、患者をモニタリングするために使用され得る。複数の検知電極の内の何れかは、刺激に対する患者の反応を検知するために使用され得る。検知のために使用されていない検知電極の1つは、コモンモード信号を除去するために駆動され得る。モニタ内の回路は、筋活動信号を検知しない電極に印加されるコモンモード抑圧信号を生み出し得る。
【0087】
図16は、リード線アセンブリを通じて患者に刺激信号を印加するためのモニタを調整するための方法を示す。1601において、モニタは、連続的な刺激信号をリード線アセンブリを通じて患者に印加する。第1の刺激信号は、連続的な信号間で患者の反応の変化を生じさせる可能性が低い値で開始する。反応のサンプルのグラフが図19に示される。一例では、調整は、20ミリアンペアで開始する。刺激信号は、四連(TOF)分析のための信号のセットであり得る。TOF信号が使用される場合、特定の患者に対する刺激を調整するために、TOF比と共に連続的なTOF信号中の第1の反応(T)が使用される。1603において、入力信号に対する患者の反応が測定される。1605において、入力信号に応じたTOF比が不変(例えば、誤差の範囲内)であったか否か、及びTが増加したか、それとも同じ状態のままであったかが決定される。TOF比が不変であり、T反応が増加した場合、1607において、入力信号の値は増加させられる。その後、プロセスはステップ1601に戻る。該増加は、本明細書に記述された増加、例えば、5ミリアンペアの増加、例えば、20ミリアンペアから25ミリアンペアであり得る。1605においてTOF比が不変ではない場合、プロセスは終了する。1605においてTOF比及びT反応が増加しない場合、方法はステップ1609へ進む。最大刺激値は、この刺激信号の値を使用して設定される。設定されたインクリメント値、例えば、係数又は定数は、最大刺激値を設定するために、例えば、係数が乗算され、又は定数が加算されて、連続的な入力信号の値に適用される。1611において、最大刺激値はモニタ内に格納される。
【0088】
調整の例示的実施形態では、プロセスは、約10~70ミリアンペアの間で複数の刺激信号を通じて進み、T反応が増加しないで一定であるTOF比をもたらす刺激信号を探索するであろう。この刺激値は、刺激信号、例えば、最大上刺激信号を設定するために使用されるであろう。
【0089】
励起のための最大上信号は、開始信号、例えば、単一の20mAの刺激を用いて開始することによって設定され得る。励起信号の値は、インクリメント値、例えば、5mAだけ、最大、例えば、80mAまで増加させられる。最大上信号は、刺激された筋内の最大数の繊維を活性化するのに必要な励起信号である。調整シーケンスが一旦完了すると、計算された全ての振幅が最大反応に正規化される。最大反応の少なくとも90%の反応を誘発する最小刺激振幅が選択され、この電流は、最大上電流の設定をもたらす値よりも大きな値(例えば、110%、120%、125%)だけ増加させられる。
【0090】
図17は、軽度から中度までの遮断のモニタリングと、深い神経筋遮断のモニタリングとの間で自動的に切り換えるためのモニタにより実施され得る方法1700を示す。患者が十分に麻痺した場合(TOFカウント=0)、深い麻痺を定量化するために、より精密なシーケンス(ポストテタニックカウント、PTC)が使用され得る。モニタは、TOFカウント=0を検出し、PTCモニタリングに自動的に切り換えるであろう。神経筋の十分な回復が生じた場合(標準的なTOFでTOFカウント1以上)、モニタは、TOFモニタリングに再度切り換え、PTC測定を中止するであろう。PTC測定に対しては、最大上刺激値での刺激信号は、約5秒間、50Hzで印加される。1701において、TOF分析が実施される。1702において、TOFカウントが1以上である場合、方法は、例えば、ステップ1701に戻ることによって、TOF分析の実施を継続し得る。1702においてTOFカウントが1未満である場合、方法は、1703においてポストテタニックカウント(PTC)に切り換える。1703のPTCは一度実施される。1704において、TOF分析が再度実施される。1705において、TOFカウントが1以上である場合、方法はステップ1701に戻る。TOFカウントが1以上ではない場合、方法はステップ1703に戻り、PTCを実施する。
【0091】
図18は、刺激信号を調整する例示的実施形態1800を示す。1801において、リード線の選択された電極を通じて、TOFが患者に印加される。TOFは、第1の刺激信号値で実施される。1803において、TOF比が決定される。1805において、TOF比が以前のTOF比と一定ではない場合、調整は1807において中断される。1807において、調整1800においてメモリ内に格納されたTOF信号の値がリセットされる。期間、例えば、数分又は数十分の後、調整方法は初めから再開される。TOFが一定である場合、調整はステップ1809へ移動する。1809において、TOF内のT反応が増加した場合、最大刺激信号に到達しておらず、調整1800は、ステップ1801に戻り、インクリメント値、例えば、20%、5ミリアンペア、3ミリアンペア、2.5ミリアンペア、又は10ミリアンペアだけ刺激信号を増加させる。TOF内のT反応が増加しない場合、最大刺激信号値に到達している。1811において、刺激信号値、例えば、信号に使用されたアンペアが記録される。1813において、刺激信号値は、最大上刺激信号を決定するために係数だけ増加させられる。係数は、定数(例えば、2.5ミリアンペア、3ミリアンペア、5ミリアンペア、若しくは+/-0.05ミリアンペア等)、又は演算係数、例えば、1.05、1.1、1.2、1.25であり得る。1815において、最大上刺激信号が設定され、モニタ内に格納される。最大上刺激信号は、医療処置中に患者の状態を検出するため、TOF分析及び検出のために使用される。
【0092】
1807において、調整は中断される。調整は、待機期間後に再開され得る。待機期間は、2分、5分、10分、又は15分であり得る。調整方法はまた、調整が実施される回数の限界を有する。この限界は、ステップ1807の一部であり得、限界に一旦達すると、更なる調整の試みを停止し得る。
【0093】
図19は、患者に印加された刺激電流に対する反応のグラフを示す。例示的実施形態では、この曲線は、神経筋遮断モニタリングでの使用のための刺激信号を調整するために使用される刺激信号を示す。調整刺激信号は、最小値、例えば、15mA、20mA、又は25mAで開始し得る。調整信号は、インクリメント値、例えば、1mA、2.5mA、又は5mA等だけインクリメントされ得る。調整信号はまた、最大値、例えば、60mA、65mA、70mA、75mA、80mA、85mA、又は90mAで終了し得る。大多数の患者においてTOF反応を正確に実現するのに必要な刺激信号を決定すべきであるように、調整信号の射程範囲がある。刺激値の射程範囲を上回る刺激信号を調整することは、データ中の幾つかの変則を本方法及びシステムが把握することを可能にする。
【0094】
図19のy軸は、最大EMG振幅で除算された(生のEMG信号の曲線下面積を使用して計算された)EMG振幅を表す。最大EMG振幅は、全ての刺激信号(例えば、図19の場合では、例示として20mAから75mAまでの全ての刺激信号)を印加した後に決定される。1811において使用される刺激値は、図19で0.9の比率(最大EMG信号の90%)を超える最低の刺激振幅として選択されるであろう。図19の一例では、刺激値は、50mAとして選択されるであろう。
【0095】
図20は、グラフィカルユーザインタフェース700Aを示し、グラフィカルユーザインタフェース700Aは、本明細書に記述されるインタフェース700と類似し、モニタ101の一部であるディスプレイ上に示される。インタフェース700は、インタフェース500及び600と比較して動作の更なる段階である、刺激段階にある。第1の表示領域505は、ここでは90%として、TOF比の読み出しを示す。第3の表示領域509は、各バーが時間T1、T2、T3、及びT4における読み出しである棒グラフ701としての四連結果を示す。第3の表示領域509は、雑音試験Nを表す更なる試験結果2001を示す。雑音試験Nは、患者に刺激信号が何ら印加されていない時の患者の反応を検知した結果であり得る。一例では、雑音試験Nに対する期間は、読み出し時間T1、T2、T3、及びT4の内の少なくとも1つと同じである。一例では、雑音試験Nに対する期間と、読み出し時間T1、T2、T3、及びT4とは全て同じ時間長である。動作中、本システム及び方法は、読み出し時間T1、T2、T3、及びT4で示された結果から、検知された雑音を減算し得る。雑音は、環境、例えば、手術室での電磁放射からのもの、又は装置自体の回路からのものであり得る。雑音を検知することによって、本システムは、検知されたこの値を雑音を把握するために使用し得、TOFの読み出し及び結果においてより正確な読み出しを提供し得る。設定アイコン703は、雑音検知の継続期間をも設定し得る、図6に示すような設定段階にユーザがプロセスを戻すことを可能にするために提供される。制御ボタン508は、ここでは、モニタ101による刺激及び結果の読み出しを停止するための一時停止ボタンである。
【0096】
図19のy軸は、最大EMG振幅で除算された(生のEMG信号の曲線下面積を使用して計算された)EMG振幅を表す。最大EMG振幅は、全ての刺激信号(例えば、図19の例示のように20mAから75mAまでの全ての刺激信号)を印加した後に決定される。1811において使用される刺激値は、図19で0.9の比率(最大EMG信号の90%)を超える最低の刺激振幅として選択されるであろう。図19の一例では、刺激値は、50mAとして選択されるであろう。
【0097】
図20は、グラフィカルユーザインタフェース700Aを示し、グラフィカルユーザインタフェース700Aは、本明細書に記述されるインタフェース700と類似し、モニタ101の一部であるディスプレイ上に示される。インタフェース700は、インタフェース500及び600と比較して動作の更なる段階である、刺激段階にある。第1の表示領域505は、ここでは90%として、TOF比の読み出しを示す。第3の表示領域509は、各バーが時間T1、T2、T3、及びT4における読み出しである棒グラフ701としての四連結果を示す。第3の表示領域509は、雑音試験Nを表す更なる試験結果2001を示す。雑音試験Nは、患者に刺激信号が何ら印加されていない時の患者の反応を検知した結果であり得る。一例では、雑音試験Nに対する期間は、読み出し時間T1、T2、T3、及びT4の内の少なくとも1つと同じである。一例では、雑音試験Nに対する期間と、読み出し時間T1、T2、T3、及びT4とは全て同じ時間長である。動作中、本システム及び方法は、読み出し時間T1、T2、T3、及びT4で示された結果から、検知された雑音を減算し得る。雑音は、環境、例えば、手術室での電磁放射からのもの、又は装置自体の回路からのものであり得る、雑音を検知することによって、本システムは、検知されたこの値を雑音を把握するために使用し得、TOFの読み出し及び結果においてより正確な読み出しを提供し得る。設定アイコン703は、雑音検知の継続期間をも設定し得る、図6に示すような設定段階にユーザがプロセスを戻すことを可能にするために提供される。制御ボタン508は、ここでは、モニタ101による刺激及び結果の読み出しを停止するための一時停止ボタンである。
【0098】
図21は、TOF信号中の潜在的雑音を把握するための例示的実施形態を示す。2101において、TOF及び雑音信号は、リード線の選択された電極を通じて患者に印加される。TOF信号は、本明細書の技術の内の何れかに従って、又はその他の方法を使用して決定され得る。雑音信号は、非刺激信号期間中、例えば、TOF刺激信号の前又は後に決定され得る。雑音成分は、四連信号の反応に由来する患者の状態の決定に影響を及ぼし得る。2103において、ノイズフロア値が設定される。ノイズフロア値は、雑音信号それ自体よりも大きくなるように設定され得る。一例では、ノイズフロア値は、雑音信号の2倍に設定される。一例では、ノイズフロア値は、雑音信号の倍数、例えば、雑音信号のX倍であり、ここで、Xは2以上の実数である。一例では、Xは、5又は10以下であり得る。2105において、患者において検知されたTOF値の各々がノイズフロア値よりも大きいか否かが決定される。TOF検知値の各々(T、T、T、T)がノイズフロア値よりも大きい場合、2107において、TOF検知値は許容され、プロセスはステップ2111に移動する。TOF検知信号の何れか(T、T、T、又はT)がノイズフロア信号以下である場合、2109において、ノイズフロア信号以下であるTOF検知信号はゼロに設定される。例示的実施形態では、TOF検知信号の内の1つ又は2つ以上は、ノイズフロア値よりも小さく、該TOF検知信号はゼロに設定される。それからプロセスは2111に移動し、2111では、最後に検知されたTOF信号Tがゼロよりも大きいか否かが決定される。検知TOF信号Tがゼロよりも大きい場合、2113において、TOF比が計算され格納される。TOF比はまた、医療専門家に表示され得、本明細書に記述されるように使用され得る。検知TOF信号Tがゼロ以下である場合、2115において、TOFカウントが計算され格納される。TOFカウントは、零よりも大きい検知TOF値の数である。TOFカウントはまた、医療専門家に表示され得、本明細書に記述されるように使用され得る。
【0099】
図22図24は、患者に印加された刺激電流に対するTOF反応のグラフを示す。検知TOF信号の雑音部分は、検知信号のハッシュ部分に示されている。雑音値は、T、T、T、又はTの期間内にはない何れかの時間範囲で検知され得る。図22に示すように、グラフ2200、最大値の約10%である、約10の一定雑音値。ここで、TOF比(T/T)は約62.5%(50/80)である。TOF検知値の値は全て、雑音を超える。これは、正確なTOF比をもたらすであろう。
【0100】
図23は、TOF値の各々(T、T、T、又はT)で雑音が検知されたTOF値を示す。第1の検知値Tは20である。その他の値T、T、Tは雑音値と同じである。したがって、刺激信号の結果は実際にはゼロであり、又は雑音を考慮すれば僅かであるので、T、T、及びTの各々は、検知値として全てゼロであるべきである。Tの検知値は20である。Tの検知値は、患者において検知された雑音である10である。伝統的なTOF比の計算においてもたらされるこれらの値を使用することは、50%(10/20)のTOF値(比)をもたらす。しかしながら、これは、誤った結果であり、実際の値(すなわち、雑音無しの値)はゼロである。したがって、雑音値に対して訂正された時、本システム及び方法により生み出されるような訂正されたTOF比はゼロである。本発明の実施形態は、ノイズフロア値を設定する。信号がノイズフロア値を超えない場合、システムは、検知信号に基づいて又は検知信号を使用する等して、値、例えば、TOF比、その他の鎮静の指標を計算しないであろう。
【0101】
図24は、ここでは10ミリボルトよりも大きい、雑音値よりも大きい量でノイズフロア値が設定されている図23と同じ結果を示す。ここでは、ノイズフロアは20ミリボルトに設定されている。幾つかの例では、ノイズフロアは、実際の検知雑音値、又は実際の検知雑音値+それに加算された小さな係数であり得る。図24に示すような本例では、訂正TOF比は、ここでは、正確にゼロに算出される。TOFカウントは1である。T値のみが、少なくともノイズフロア値であるか、ノイズフロアよりも大きい値である。
【0102】
幾つかの実施形態は、T1、T2、T3、及びT4でのTOF結果の検知の後に雑音検知を有するが、本説明は、そのように限定されない。雑音検知は、TOF検知の前、すなわち、T1の前に発生してもよい。雑音検知は、TOF検知の何れかの中間、すなわち、T1と前のT4との間、T1とT2との中間、又はT3とT4との中間に発生してもよい。雑音を検知する時、刺激信号(例えば、電流)はゼロに設定される。検知された雑音信号は、本システムがそれより下のTOF値を算出しないであろうフロアとして使用され得る。誤った計算の可能性を減少させるために、検知信号が雑音信号値以下である場合にはTOF値は計算されない。例示的実施形態では、雑音信号値は、検知値+それに加算された安全マージン、例えば、それに加算された2.5%、5%、7%、又は10%等である。幾つかの例では、TOF結果T1、T2、T3、及びT4に対して異なる安全マージンが使用され得る。例えば、T1に対する安全マージンは、T2、T3、又はT4に対する安全マージンは大きくし得る。
【0103】
例示的実施形態では、検知された雑音値は、刺激電流、例えば、刺激信号値を決定するための開始信号を設定するために使用され得る。検知された雑音信号は5.0ミリボルトであり得る。したがって、TOF処置に対する刺激電流は、少なくとも2.0の信号対雑音比を有するために、もたらされるEMG信号が少なくとも10ミリボルトであるように設定される。
【0104】
雑音を把握する本方法及びシステムは、様々なソース、例えば、患者に接続されても接続されなくてもよい、電源から若しくは手術室内の別の装置からのコモンモード雑音、60Hzコモンモード、浮遊電磁信号から雑音を検知し得る。雑音の検知は、四連信号スキームに5番目の検知期間を追加したものとみなし得る。TOFシステムは、刺激信号を印加し、刺激信号の開始に続く期間中に反応を検知するが、この5番目の検知期間は、刺激信号無しに検知され得る。5番目の検知期間は、刺激信号の何れからも時間的に間隔が空けられている。本説明は、医療処置中にリアルタイムで雑音を測定することを可能にし、個別の手術室に対して正確性を向上させ得る。本システムは、検知された値がノイズフロア値以下に収まる場合にはTOF値を計算しないであろう。
【0105】
例示的実施形態では、係数又は定数は、信号対ノイズフロア又は信号対雑音比を設定するために、刺激信号を増加させるために使用される。そうした信号対雑音比は、1.4よりも大きく、2.5又は3.0又は4.0以下であり得る。信号対雑音比は、約1.5から4.0の射程範囲、又は1.6から3.0若しくは4.0の射程範囲、+/-0.1で設定され得る。幾つかの例では、信号対雑音比は2.5に設定される。
【0106】
四連モニタリングは、四連刺激パルス間で一時停止を伴う反復試験シーケンスであり得る。これは、システムが雑音値を検知することを可能にし、以前の四連パルスから患者の身体を回復することを可能にする。一例では、四連患者測定のシーケンスは、12~15秒間隔、20秒間隔、又は30秒間隔で発生する。
【0107】
ここで記述されるシステム及び方法は、TOF患者モニタリングが信頼できる結果を生み出していないかもしれない場合、例えば、検知信号がノイズフロア閾値を超えない場合に、その他の患者モニタリングスキームに切り換え得る。その他の患者モニタリングの例は、ポストテタニックカウント、単収縮、又は強縮検知を含み得る。TOFカウントがゼロに収まる場合、システムは、深い神経筋遮断をモニタリングするために、ポストテタニックカウント(PTC)に切り換えるようにユーザに促すであろう。選択された場合、患者が(ゼロのTOFカウントとして定義される)深い神経筋遮断を継続する限り、10分間隔でPTCがその後反復される。TOFカウントが1以上に回復した場合、システムは、TOF刺激に再度切り替える。したがって、本システム及び方法は、TOF検知の患者反応に少なくとも部分的に基づき得る1つ又は2つ以上の患者モニタリングスキームを提供し得る。
【0108】
本システムによるPTC刺激シーケンスは、深い神経筋遮断をモニタリングするために使用され、(筋をより反応させるための)5秒の50Hzの強縮刺激に続いて、3秒の一時停止と、その後、1秒に1回伝達される(全15個以下の)一連の単刺激とを含み得る。単刺激に対して検出可能な反応の数がカウントされ、ポストテタニックカウントとして報告される。検出反応が少ないほど、神経筋遮断はより深い。深い神経筋遮断を有する患者に使用するだけのためにPTCが確保され、各PTC刺激シーケンスの初めにTOFが実施される。強縮刺激は、TOFカウントがゼロである(患者に検出可能な収縮がない)場合に伝達されるのみである。付加的な強縮刺激は、最後の強縮刺激に続く約2分間、禁止される。PTC刺激シーケンスの進捗は、刺激中に動的に表示され得る。PTC刺激は、5分と90分との間で反復され得る。
【0109】
単収縮反応は、患者に伝達される単刺激パルスを含み得、EMG反応が測定及び表示される。システムが調整された場合、調整収縮高がディスプレイ上に示され、後続の全ての単収縮は、調整値(0~100%)に合わせてスケール化されるであろう。調整が実施されていない場合、反応高は固定スケール(0~100)で表示される。単収縮プロセスは、10秒から60分の間隔で反復され得る。
【0110】
システムは、5秒の50Hzの強縮刺激を伝達し得る。強縮刺激中、EMG検知はアクティブではない。付加的な強縮刺激は、最後の強縮刺激に続く2分間、禁止される。同様に、強縮刺激後までTOF検知は遅延する。典型的には、本システムは、強縮刺激に対する反復を設定しない。
【0111】
本開示はまた、検知電極の決定の一部として、最大又は最大上の刺激信号の決定を使用することを含む。このプロセスでは、各検知電極(例えば、少なくとも2つの異なる電極、例えば、303、404)は、最大上信号を決定するためのプロセスで使用される。電極の内のその他は、コモンモード信号を除去するための駆動電極であり得る。電極毎の最大上決定の結果は、刺激信号に対する反応を検知するために何れの電極が使用されるかを選択するために使用され得る。幾つかの例示的実施形態では、検知された雑音は、刺激信号に対する最小値を設定するために使用され得る。
【0112】
コモンモード信号を検出及び抑圧するためのモニタ内の回路は、右足駆動アンプを含み得る。
【0113】
本説明は、患者の皮膚に接着される表面電極を記述する。該電極は、接着剤、例えば、電極の導電部分を包囲する接着剤を用いて接着され得る。一例では、電極を患者の皮膚に固定するために、サージカルテープが使用され得る。患者の皮膚に突き刺すニードル電極をも含むことは本開示の範囲内であろう。厚く乾燥した皮膚、例えば、胼胝、瘢痕組織、又は異常に厚い皮膚等を患者が電極の場所に有する場合にニードル電極を使用することは有用であり得る。
【0114】
本説明は、“電気的通信”、“通信”、及び類似の意味の用語といった言い回しを使用する。こうした通信は、無線、有線、又は生物的接続経由、例えば、身体経由であり得る。
【0115】
本明細書に記述されるような定量的神経筋遮断モニタリング(時折“収縮”モニタリングと称される)は、改善した患者のケアと満足度を提供し得、呼吸器合併症の発生率を減少させ得る。
【0116】
定量的神経筋遮断モニタリングは、全身麻酔で使用され得、局所麻酔に限定されない。
【0117】
本開示は、Merckにより現在供給される薬Sugammadexと組み合わせて使用され得る。Sugammadexは、例えば、ベクロニウム又はロクロニウム等の非脱分極性神経筋遮断薬の投与後に、神経筋遮断を回復する速効性の薬である。該薬は、欧州連合、日本、及び豪州での使用が承認されている。Sugammadexは、米国のFDAにより現在検討中である。評判がよいが、Sugammadexは、非常に高価であり、その投薬指示は、神経筋モニタリングの使用を必要とする。
【0118】
外来外科手術は、泊りがけの入院を必要としない。外来外科手術の1つの目的は、さもなければ病院に滞在するであろう患者の時間を抑制することと共に、医療費を低く抑えることである。外来外科手術は、外来外科センタの増加と改善された技術とに起因して人気が高まっており、全ての外科処置の内の約65%を現在占めている。外来外科センタの1つの重要な点は、安全で迅速な術後の回復時間であり、それは、外科処置が一旦完了すると麻酔の急速な回復により容易になり得る。具体的には、麻酔回復薬、例えば、ロクロニウムとSugammadexとの組み合わせの使用は、神経筋遮断からの急速な回復をもたらし、危険な部分的神経筋遮断と関連する罹病及び死亡のリスクを減少させるであろう神経筋遮断の注意深い客観的なモニタリングを必要とし得る。
【0119】
本開示は、神経筋遮断薬を投与されている患者の反応の値よりも低い雑音又は周囲の検知信号を表すノイズフロア値を確立し得る。患者の状態を算出するために検知データを使用するシステムにとって、検知信号は、このノイズフロア値よりも上になければならない。四連計算は実施されず、又は装置から出力されない、すなわち、ノイズフロアよりも下にある検知信号が医療専門家に提供されないであろう。これは、医療専門家に提供されているシステムからの誤った出力の可能性を減少させるであろう。
【0120】
本開示は、神経筋遮断の深さを客観的にモニタリングするためのシステム及び方法を医療専門家、例えば、麻酔医に提供する。過去においては、主観的な試験が実施され、それは、神経筋遮断の完全な回復の前に、患者の抜管をもたらし得る。早すぎる抜管は、手術の約2%で発生し得ると報告されており、すなわち、患者は部分的に麻痺して覚醒する。
【0121】
本開示は更に、その他の過去の方法又は装置での問題を扱う。本リード線アセンブリは、電極を適切に配置するのを助力するための母指アパーチャを含み得る。多くても、2つの基部だけがあり、例示的実施形態では、以前の装置における個別の電極とは対照的に、皮膚に固定される必要がある電極と共に、単一の一体的基部がある。ここで説明される電極は、少なくとも2つの電極を各々有する、単一の一体的な基部又は2つの基部の上に全てある。電極との電気的通信のためのケーブルは、基部により支持される。一体的な単体のコネクタは、複数の導体をモニタに接続し得る。これは、複数のワイヤがもつれること、又は誤ったケーブルを誤った電極に接続することのリスクを減少させる。導体は、不可欠であり、電極を引き剥がさないであろう。本リード線アセンブリは、単一使用の装置として作られ得る。本リード線アセンブリは、セットアップの時間を削減し得、配置の誤り、及びワイヤ破損若しくは不注意なパッドの引き剥がしの何れかに起因する、進行している手術中の障害を減少させ得る。
【0122】
請求項1~22の何れかは相互に組み合わせ得ることは分かるであろう。請求項は、単独で従属するものとして提示されているが、任意の組み合わせで相互に組み合され得る。
【0123】
模範的実施形態が上述されているが、これらの実施形態が発明の全ての可能な形式を説明することを意図しない。むしろ、明細書で使用される文言は、限定ではなくむしろ説明の文言であり、発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることは理解される。また、様々な実装の実施形態の特徴は、発明の更なる実施形態を形成するように組み合され得る。
図1
図2A
図2B
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