(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073541
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
E04C 2/36 20060101AFI20230519BHJP
E04C 2/20 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
E04C2/36 A
E04C2/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186064
(22)【出願日】2021-11-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】520070507
【氏名又は名称】株式会社タクト
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】岩下 斉昭
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162CB15
2E162CD19
(57)【要約】
【課題】軽量であると共に、荷重に対する強度が高い構造体を提供する。
【解決手段】4つの長方形板のそれぞれの1短辺が集合して形成された中心軸を中心に、十字に形成された第1十字状板10を、第1十字状板10の周囲に同一形状の第2十字状板12~第5十字状板18が配置された構造部位を備えた構造体1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1十字状板の周囲に同一形状の第2十字状板~第5十字状板が配置された構造部位を備えた構造体であって、
前記第1十字状板~第5十字状板は、それぞれ、4つの長方形板から構成され、該長方形板の長側面を底面として立設され、4つの長方形板のそれぞれの1短辺が集合して形成された中心軸を中心に、上板部、下板部、右板部及び左板部からなる十字が形成され、
第2十字状板の中心が、第1十字状板の中心から、上に板の長辺の長さ分、右に板の長辺に板の厚さを足した長さの半分に板の厚さを足した長さ分、離れた位置に配置され、第1十字状板の上板部の上側面と、第2十字状板の左板部の下面とが当接されると共に、第1十字状板の右板部の上面と、第2十字状板の下板部の下側面とが当接され、
第3十字状板の中心が、第1十字状板の中心から、右に板の長辺の長さ分、下に板の長辺に板の厚さを足した長さの半分に板の厚さを足した長さ分、離れた位置に配置され、第1十字状板の右板部の右側面と、第3十字状板の上板部の左面とが当接されると共に、第1十字状板の下板部の右面と、第3十字状板の左板部の左側面とが当接され、
第4十字状板の中心が、第1十字状板の中心から、下に板の長辺の長さ分、左に板の長辺に板の厚さを足した長さの半分に板の厚さを足した長さ分、離れた位置に配置され、第1十字状板の下板部の下側面と、第4十字状板の右板部の上面とが当接されると共に、第1十字状板の左板部の下面と、第4十字状板の上板部の上側面とが当接され、
第5十字状板の中心が、第1十字状板の中心から、左に板の長辺の長さ分、上に板の長辺に板の厚さを足した長さの半分に板の厚さを足した長さ分、離れた位置に配置され、第1十字状板の左板部の左側面と、第5十字状板の下板部の右面とが当接されると共に、第1十字状板の上板部の左面と、第5十字状板の右板部の右側面とが当接され
ていることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記第2十字状板~第5十字状板の少なくとも1つが、第1十字状板となって、その周囲に同一形状の第2’~第5’十字状板が配置されていることを特徴とする請求項1記載の構造体。
【請求項3】
植物性由来の樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載の構造体。
【請求項4】
前記植物性由来の樹脂がポリ乳酸(PLA)であること特徴とする請求項3記載の構造体。
【請求項5】
3Dプリンタによって一体造形されたことを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の構造体。
【請求項6】
建築用パネル部材の芯材であることを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の構造体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか記載の構造体を芯材とすることを特徴とする建築用パネル部材。
【請求項8】
棚板であることを特徴とする請求項7記載の建築用パネル部材。
【請求項9】
防音パネルであることを特徴とする請求項7記載の建築用パネル部材。
【請求項10】
遮光ルーバーであることを特徴とする請求項7記載の建築用パネル部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体に関し、詳しくは、棚板や防音パネルなどの建築用パネル部材に適用できる構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の内装材や家具材等に用いられる建築用パネル部材としては、合板やパーティクルボード、MDFなどの木質繊維板等の木質材料を基材として、表面に突き板や樹脂シート等の化粧シート材を貼着したパネル部材が知られている。このような木質材料を基材としたパネル部材では、重量が大きいため、運搬や施工時の取り扱い性が悪いといった問題や、木質資源の使用による環境への負荷が大きいといった問題があった。
【0003】
近年、上記のような木質材料を基材としたパネル部材に代えて、縦枠と横枠とを枠組みして形成した外枠内に、所定の構造体からなる芯材を配設して、その表裏に面材を貼り付けて形成した、いわゆるフラッシュパネル(サンドイッチパネルともいう)が建築用パネル部材として用いられている。このようなフラッシュパネルの芯材に適用できる構造体としては、ハニカム形状やひし形状等の幾何学形状の枠状セルの集合体からなる構造体や、発泡体等の構造体が採用されている。
【0004】
具体的に、このような構造体を適用した建築用パネル部材としては、例えば、少なくとも二枚の板の間に芯材を挟んだ板状の基材と、基材の端面へ備わる一又は二以上の補強板と、基材表面に貼付する化粧シートと、を備えた化粧板であって、基材は、芯材がハニカム構造を有し、化粧シートは、基材の一の板面側から補強板を含んで基材端面を覆いつつ他の板面側にまで亘って貼付されている建築用パネル部材が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のフラッシュパネルの芯材に適用できる構造体は、上記特許文献1のようなハニカム構造の芯材を用いるものであったが、ハニカム構造の芯材を用いたフラッシュパネルは、例えば、棚材とした場合、上からの荷重に対する強度が必ずしも十分とはいえなかった。特に、従来のフラッシュパネルの芯材は、軽量化を図るため、素材として紙を用いることから、上からの荷重に対する強度が十分ではなかった。
【0007】
本発明の課題は、軽量であると共に、荷重に対する強度の高い構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、4つの長方形板のそれぞれの1短辺が集合して形成された中心軸を中心に、十字に形成された第1十字状板を、第1十字状板の周囲に同一形状の第2十字状板~第5十字状板が配置された構造部位を備えた構造体とすることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]第1十字状板の周囲に同一形状の第2十字状板~第5十字状板が配置された構造部位を備えた構造体であって、
前記第1十字状板~第5十字状板は、それぞれ、4つの長方形板から構成され、該長方形板の長側面を底面として立設され、4つの長方形板のそれぞれの1短辺が集合して形成された中心軸を中心に、上板部、下板部、右板部及び左板部からなる十字が形成され、
第2十字状板の中心が、第1十字状板の中心から、上に板の長辺の長さ分、右に板の長辺に板の厚さを足した長さの半分に板の厚さを足した長さ分、離れた位置に配置され、第1十字状板の上板部の上側面と、第2十字状板の左板部の下面とが当接されると共に、第1十字状板の右板部の上面と、第2十字状板の下板部の下側面とが当接され、
第3十字状板の中心が、第1十字状板の中心から、右に板の長辺の長さ分、下に板の長辺に板の厚さを足した長さの半分に板の厚さを足した長さ分、離れた位置に配置され、第1十字状板の右板部の右側面と、第3十字状板の上板部の左面とが当接されると共に、第1十字状板の下板部の右面と、第3十字状板の左板部の左側面とが当接され、
第4十字状板の中心が、第1十字状板の中心から、下に板の長辺の長さ分、左に板の長辺に板の厚さを足した長さの半分に板の厚さを足した長さ分、離れた位置に配置され、第1十字状板の下板部の下側面と、第4十字状板の右板部の上面とが当接されると共に、第1十字状板の左板部の下面と、第4十字状板の上板部の上側面とが当接され、
第5十字状板の中心が、第1十字状板の中心から、左に板の長辺の長さ分、上に板の長辺に板の厚さを足した長さの半分に板の厚さを足した長さ分、離れた位置に配置され、第1十字状板の左板部の左側面と、第5十字状板の下板部の右面とが当接されると共に、第1十字状板の上板部の左面と、第5十字状板の右板部の右側面とが当接され
ていることを特徴とする構造体。
【0010】
[2]前記第2十字状板~第5十字状板の少なくとも1つが、第1十字状板となって、その周囲に同一形状の第2’~第5’十字状板が配置されていることを特徴とする上記[1]記載の構造体。
[3]植物性由来の樹脂からなることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の構造体。
[4]前記植物性由来の樹脂がポリ乳酸(PLA)であること特徴とする上記[3]記載の構造体。
[5]3Dプリンタによって一体造形されたことを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか記載の構造体。
[6]建築用パネル部材の芯材であることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか記載の構造体。
【0011】
[7]上記[1]~[6]のいずれか記載の構造体を芯材とすることを特徴とする建築用パネル部材。
[8]棚板であることを特徴とする上記[7]記載の建築用パネル部材。
[9]防音パネルであることを特徴とする上記[7]記載の建築用パネル部材。
[10]遮光ルーバーであることを特徴とする上記[7]記載の建築用パネル部材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構造体は、軽量であると共に、荷重に対する強度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る構造体の概略平面図であり、第1十字状板~第5十字状板を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る構造体の第1十字状板の概略斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る構造体の概略平面図であり、第1’十字状板~第5’十字状板を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る構造体を用いて製造される建築用パネル部材の一例の概略平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る構造体を用いて製造される建築用パネル部材の他の例の説明図であり、(a)は概略斜視図であり、(b)は構造体の概略平面図である。
【
図6】実施例において製造した棚板の写真であり、(a)は構造体の拡大図を示し、(b)は上から張り付けたベニア板、アルミコアを用いて製造された建築用パネル部材、構造体を用いて製造された建築用パネル部材を示し、(c)はフェザーコアを用いて製造された建築用パネル部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の構造体の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態に制限されるものではない。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る構造体1は、第1十字状板10の周囲に同一形状の第2十字状板12、第3十字状板14、第4十字状板16、第5十字状板18が配置された構造部位を備えている。なお、
図1中、実線及び破線は、構造体1における第1~第5十字状板10~18の構造部位を区別するものであって、模様ではない。また、ハッチングは、第1~第5十字状板10~18を区別するものであって、模様ではない。
【0016】
第1十字状板~第5十字状板は、同一の構成であるため、第1十字状板を例にとって具体的に説明する。
図2に示すように、第1十字状板10は、長辺(a)30mm、短辺(b)15mm、厚さ(c)2mmの長方形板20~26から構成されている。第1十字状板10は、4つの長方形板20~26の長側面を底面として立設され、長方形板20~26のそれぞれの1短辺が集合して形成された中心軸28を中心に、上板部20、下板部22、右板部24、左板部26からなる十字に形成されている。
【0017】
第1十字状板10の長辺(a)の長さとしては、上記長さに限定されるものではなく、用途によって適宜設定することができ、例えば、10~200mmであることが好ましく、15~100mmであることがより好ましく、20~50mmであることがさらに好ましい。また、その短辺(b)の長さとしては、5~100mmであることが好ましく、8~50mmであることがより好ましく、10~30mmであることがさらに好ましい。また、その厚さとしては、0.1~15mmであることが好ましく、0.5~8mmであることがより好ましく、1~4mmであることがさらに好ましい。
【0018】
第1十字状板10の材質としては、所定の強度を有するものを採用することができ、例えば、プラスチック(合成樹脂)、金属を挙げることができ、軽量化の点から、プラスチックが好ましい。プラスチックとしては、具体的に例えば、硬質塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、硬質ポリエチレン樹脂、ポリ乳酸(PLA)等を挙げることができ、ポリ乳酸が好ましい。
【0019】
図1に示すように、第2十字状板~5十字状板12~18は、第1十字状板10の周囲に配置され、一体に形成されている。第1十字状板10の上板部20の右面から第2十字状板12の下板部22の左面までの間隔(X)は14mmである。同様に、第1十字状板の右板部24の下面から第3十字状板14の左板部26の上面までの間隔、第1十字状板10の下板部22の左面から第4十字状板16の上板部20の右面までの間隔、第1十字状板10の左板部26の上面から第5十字状板18の右板部24の下面までの間隔も14mmである。
【0020】
具体的には、第2十字状板12の中心が、第1十字状板10の中心から、上に板の長辺の長さ分(30mm)、右に板の長辺(30mm)に板の厚さ(2mm)を足した長さの半分に板の厚さ(2mm)を足した長さ分(18mm)、離れた位置に配置され、第1十字状板10の上板部20の上側面と、第2十字状板12の左板部26の下面とが当接されると共に、第1十字状板10の右板部24の上面と、第2十字状板12の下板部22の下側面とが当接され、第3十字状板14の中心が、第1十字状板10の中心から、右に板の長辺の長さ分(30mm)、下に板の長辺(30mm)に板の厚さ(2mm)を足した長さの半分に板の厚さ(2mm)を足した長さ分(18mm)、離れた位置に配置され、第1十字状板10の右板部24の右側面と、第3十字状板14の上板部20の左面とが当接されると共に、第1十字状板10の下板部22の右面と、第3十字状板14の左板部26の左側面とが当接され、第4十字状板16の中心が、第1十字状板10の中心から、下に板の長辺の長さ分(30mm)、左に板の長辺(30mm)に板の厚さ(2mm)を足した長さの半分に板の厚さ(2mm)を足した長さ分(18mm)、離れた位置に配置され、第1十字状板10の下板部22の下側面と、第4十字状板16の右板部24の上面とが当接されると共に、第1十字状板10の左板部26の下面と、第4十字状板16の上板部20の上側面とが当接され、第5十字状板18の中心が、第1十字状板10の中心から、左に板の長辺の長さ分(30mm)、上に板の長辺(30mm)に板の厚さ(2mm)を足した長さの半分に板の厚さ(2mm)を足した長さ分(18mm)、離れた位置に配置され、第1十字状板10の左板部26の左側面と、第5十字状板18の下板部22の右面とが当接されると共に、第1十字状板10の上板部20の左面と、第5十字状板18の右板部24の右側面とが当接されている。
【0021】
図3に示すように、構造体1は、第3十字状板(以下、
図3においては、第1’十字状板とする)14の周囲に同一形状の第2’~第5’十字状板30~36が配置されている。すなわち、本発明の一実施形態に係る構造体1は、1つの十字状板の周囲に同一形状の4つの十字状板が配置された構造部位が連続して形成されるという特定の構造を有している。なお、第5’十字状板36は、
図1の第1十字状板10である。また、第2’~第4’十字状板30~34は、それぞれ
図1における第1十字状板10と同様の構成であるため説明を省略する。
【0022】
本発明の構造体1は、一体に成形されて構成されるものが好ましい。一体成型する方法としては、例えば、3Dプリンタによって一体造形する方法や、鋳造や射出成形などの型に材料を流し込み固める方法を挙げることができる。
【0023】
本発明の構造体1は、上記特定の構造を有するものであることから、用いる材料の量を少ないにもかかわらず、たわみが小さく、荷重に対する強度が高い。
【0024】
上記の本発明の構造体1は、例えば、建築用パネル部材の芯材として用いることができる。具体的に、構造体1を芯材とする建築用パネル部材の態様としては、構造体1と、構造体1の周囲を囲む枠材とを備えている態様や、さらに、構造体の表裏の両面に配設されたシート材を備えている態様(フラッシュパネル)を挙げることができ、具体的例えば、棚板、防音パネル、遮光ルーバー(ハイライトルーバー)等を挙げることができる。
【0025】
次に、上記一実施形態に係る構造体1を用いて製造される建築用パネル部材の一例を説明する。
図4に示すように、建築用パネル部材38は、構造体1と、構造体1の周囲を囲む枠材40~46とを備えている。構造体1は、第1~5十字状板10~18の上板部20及び下板部22が、構造体1の周囲を囲む枠材44及び46と平行に、かつ、右板部24及び左板部26が、構造体1の周囲を囲む枠材40及び42と平行に配置され、横約720mm、縦約240mm、厚さ約15mmの平板状に形成されている。長枠材40,42は、それぞれ、横約800mm、縦約40mm、厚さ約15mmであり、構造体1の長手方向の側面に取り付けられている。また、短枠材44,46は、横約40mm、縦約240mm、厚さ約15mmであり、構造体1の短手方向の側面に取り付けられている。建築用パネル部材38は、例えば、遮光ルーバー(ハイライトルーバー)として用いることができる。
【0026】
建築用パネル部材38は、さらに、その表裏面(構造体1が剥き出しの面)に、例えばベニア板製のシート材を貼り付けることにより、フラッシュパネルとすることができる。この場合、建築用パネル部材38は、例えば、棚板、防音パネル、建具、トイレブース、テーブル等に用いることができる。
【0027】
上記一実施形態に係る構造体1を用いて製造される建築用パネル部材の他の例について説明する。
図5に示す他の例に係る建築用パネル部材48は、構造体1の第1~5十字状板の構造部位(上板部20、下板部22、右板部24及び左板部26)が、構造体の周囲を囲む枠材と傾斜した状態で配置されている点で上記の例と異なる。なお、上記構造体1と同様の構成の部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
図5に示すように、建築用パネル部材48は、上記構造体の第1~5十字状板の構造部位が、構造体の周囲を囲む枠材40~46と所定角度(45°)傾斜した状態となるように周囲をカッティングし、全体が横約720mm、縦約240mm、高さ約15mmの平板状に形成された構造体1’を備えている。建築用パネル部材48は、その表裏面にベニア板製のシート材50が貼り付けられている。
【実施例0029】
本発明の構造体の強度を調査した。
【0030】
[たわみ試験1]
(実施例1)
本発明の構造体を用いて製造された建築用パネル部材38の表裏面に横800mm縦320mm厚さ4mmのベニア板を貼り付けて棚板を作製し、強度試験を行った。
【0031】
(比較例1)
構造体をフェザーコア(新日本フェザーコア株式会社製)とした以外は実施例1と同様にして、棚板を製造した。フェザーコアは、中芯原紙、強化中芯原紙、耐水中芯原紙を波形に連続成型積層したものを用いた。
【0032】
(比較例2)
構造体をアルミコア(株式会社パイオニアテック製)とした以外は実施例1と同様にして、棚板を製造した。アルミコアは、厚さ0.6mm格子サイズ15mm×15mmであり、枠材の中の格子の密度が本発明の構造体よりも大きいものを用いた。
【0033】
図6は、実施例において製造した棚板の写真であり、(a)は構造体の拡大図を示し、(b)は上から張り付けたベニア板、アルミコアを用いて製造された建築用パネル部材、構造体を用いて製造された建築用パネル部材を示し、(c)はフェザーコアを用いて製造された建築用パネル部材を示す。
【0034】
試験方法は、JIS S1200:2012 6.1.3棚板のたわみ試験(レベル2)の方法に準拠する試験を用いた。
図7は、たわみ試験1の概要を示す説明図である。
具体的には、
図7に示すように、両端20mmを支持台に載置した状態の棚板に37.3kg[1.5kg/dm
2]のおもりを均一に載せ、その状態で7日間(168時間)放置した。放置後の棚板のたわみ量を0.1mmの精度で測定し、棚板支持間の距離に対するたわみ率を算出した。たわみ率の算出には以下の式を用いた。
【0035】
たわみ率[%]=たわみ量/棚板支持間の距離×100
【0036】
おもりを除荷した後、試験体各部において、使用上支障がある破損、ゆるみ、変形などの異状の有無を調べた。
【0037】
実施例1に係る棚板は、測定たわみ量が4.0mm、棚板支持間の距離(762mm)に対するたわみ率は0.5%であった。
一方、比較例1に係る棚板は、測定たわみ量が4.3mm、棚板支持間の距離(762mm)に対するたわみ率は0.6%であった。また、比較例2に係る棚板は、測定たわみ量が3.6mm、棚板支持間の距離(762mm)に対するたわみ率は0.5%であった。
なお、実施例1に係る棚板、比較例1に係る棚板及び比較例2に係る棚板は、試験終了後、試験体各部において、使用上支障がある異状は認められなかった。
【0038】
[たわみ試験2(垂直力試験)]
(実施例2)
上記たわみ試験1の実施例1に係る棚板と同様の構成の実施例2に係る棚板を用いて強度試験を行った。
【0039】
(比較例3)
上記たわみ試験の比較例1に係る棚板と同様の構成の比較例3に係る棚板を用いた。
【0040】
(比較例4)
上記たわみ試験の比較例2に係る棚板と同様の構成の比較例4に係る棚板を用いた。
【0041】
試験方法は、JIS S1205:1998 7.1.1主作業面の垂直力試験(区分2)を参考とした試験を用いた。
図8は、たわみ試験2の概要を示す説明図である。
具体的には、
図8に示すように、両端20mmを支持台に載置した状態の棚板の中央部に当て板(直径が100mmの剛性の円盤で、表面が平らで縁を12mmに丸めたもの)を介して750N(約76.5kgf)の力を垂直に10回加えた。力を加える時間は1回につき10秒間とした。棚板の長手方向中央端部の最大たわみ量を0.1mmの精度で測定を行った。
【0042】
試験終了後、試験体各部において、使用上支障がある破損、ゆるみ、変形などの異状の有無を調べた。
【0043】
実施例2に係る棚板は、測定たわみ量が6.7mmであった。
一方、比較例3に係る棚板は、測定たわみ量が9.8mmであった。また、比較例4に係る棚板は、測定たわみ量が6.5mmであった。
なお、実施例2に係る棚板、比較例3に係る棚板及び比較例4に係る棚板は、試験終了後、試験体各部において、使用上支障がある異状は認められなかった。
【0044】
上記たわみ試験の結果から、本発明の構造体を用いて製造された棚板は、フェザーコア(ペーパーコア)よりも、上からの荷重に対する強度が高く、密度が大きいアルミコア(アルミ格子)と同等の強度を有することを確認できた。