(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073556
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】静電容量型タッチスイッチ、静電容量型タッチスイッチの製造方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/02 20060101AFI20230519BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230519BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20230519BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20230519BHJP
H01H 11/00 20060101ALI20230519BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
G06F3/02 F
G06F3/041 422
G06F3/044
H01H36/00 J
H01H11/00 G
H05K1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186090
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】303062440
【氏名又は名称】株式会社東洋レーベル
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】桐村 幸寿
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英和
(72)【発明者】
【氏名】福本 仁司
【テーマコード(参考)】
5B020
5E338
5G023
5G046
【Fターム(参考)】
5B020DD02
5E338AA01
5E338AA12
5E338BB51
5E338CC01
5E338CC04
5E338CC06
5E338CD02
5E338EE11
5E338EE60
5G023CA19
5G023CA30
5G046AA01
5G046AB02
5G046AB03
5G046AC24
5G046AD02
5G046AD22
5G046AE02
(57)【要約】
【課題】スルーホールを必須としない構成でありながら、印刷処理回数も少なくすることが可能な多層の静電容量型タッチスイッチを提供する。
【解決手段】薄膜状の基材フィルム1に印刷処理で少なくともタッチ電極T及びグランド部Gを設けた静電容量型タッチスイッチであって、一方の面が印刷面2に設定され且つ他方の面が非印刷面3に設定された単一の基材フィルム1を備え、当該基材フィルム1のうち第1折り曲げ線4を境界にした一方の領域(第1領域A)の印刷面2Aに少なくともタッチ電極T及びグランド部Gが印刷処理によって設けられ、且つ他方の領域(第2領域B)の印刷面2Bに少なくともグランド部Gが印刷処理によって設けられた状態にあり、所定の第1折り曲げ線4に沿って第1領域A及び第2領域Bの印刷面2A,2Bが相互に対面しない外折り状態で相互に対面する第1領域A及び第2領域Bの非印刷面3A,3B同士を貼り合わせた構成にした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状の基材フィルムに印刷処理によって少なくともタッチ電極を設けた静電容量型のタッチスイッチであって、
一方の面が印刷面に設定され且つ他方の面が非印刷面に設定された単一の前記基材フィルムを備え、
当該基材フィルムのうち所定の第1折り曲げ線を境界にした第1領域の前記印刷面に少なくとも前記タッチ電極が印刷処理によって設けられ、且つ前記第1折り曲げ線を挟んで前記第1領域に隣接する第2領域の前記印刷面に少なくとも前記グランド部またはシールド部が印刷処理によって設けられた状態にあり、
前記第1折り曲げ線に沿って前記第1領域及び前記第2領域の前記印刷面同士が相互に対面しないように折り曲げた外折り状態で相互に対面する前記第1領域及び前記第2領域の前記非印刷面同士を貼り合わせた構成にしたことを特徴とする静電容量型タッチスイッチ。
【請求項2】
前記基材フィルムに設定した折り曲げ線が前記第1折り曲げ線のみであり、前記第2領域の前記印刷面に前記グランド部または前記シールド部を印刷処理によって設けたものである請求項1に記載の静電容量型タッチスイッチ。
【請求項3】
前記基材フィルムが、前記第2領域に第2折り曲げ線を挟んで隣接する第3領域を有するものであり、
前記第3領域の前記印刷面に前記シールド部または前記グランド部が印刷処理によって設けられた状態にあり、
前記第2折り曲げ線に沿って前記第2領域及び前記第3領域の前記印刷面同士が相互に対面しないように折り曲げた外折り状態で、前記第2領域、前記第1領域、及び前記第3領域がこの順で積層方向に並び、前記第1領域及び前記第3領域のうち相互に対面する部分同士を貼り合わせた構成にした請求項1に記載の静電容量型タッチスイッチ。
【請求項4】
前記基材フィルムが、前記第1領域に第2折り曲げ線を挟んで隣接する第3領域を有するものであり、
前記第3領域の前記印刷面に前記シールド部または前記グランド部が印刷処理によって設けられた状態にあり、
前記第2折り曲げ線に沿って前記第2領域及び前記第3領域の前記印刷面同士が相互に対面するように折り曲げた内折り状態で、前記第2領域、前記第1領域、及び前記第3領域がこの順で積層方向に並び、前記第1領域及び前記第3領域のうち相互に対面する部分同士を貼り合わせた構成にした請求項1に記載の静電容量型タッチスイッチ。
【請求項5】
少なくとも前記外折り状態で対面する前記第1領域及び前記第2領域の前記非印刷面同士の間に粘着層を形成して貼り合わせた構成をしている請求項1乃至4の何れかに記載の静電容量型タッチスイッチ。
【請求項6】
少なくとも前記第1領域に端子部分を形成し、当該端子部分が印刷処理によって前記グランド部が設けられたものである請求項1乃至5の何れかに記載の静電容量型タッチスイッチ。
【請求項7】
薄膜状の単一の基材フィルムを用いて製造する静電容量型タッチスイッチの製造方法であり、
前記単一の基材フィルムのうち一方の面である印刷面にのみ少なくともタッチ電極及びグランド部またはそれらに加えてシールド部を印刷する印刷工程と、
前記単一の基材フィルムを所定の第1折り曲げ線に沿って前記印刷面が相互に対面しないように折り曲げた外折り状態で相互に対面する前記非印刷面同士を貼り合わせる接着工程とを経て製造することを特徴とする静電容量型タッチスイッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が指を触れたり、近付けたりした際の静電容量の変化によってタッチを検出する静電容量型タッチスイッチ、及びこの静電容量型タッチスイッチの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、触れるだけで動作する液晶表示部のタッチパネルやタッチスイッチ、さらにはタッチパッドなどのタッチスイッチの需要が増大している。タッチスイッチの一種に静電容量型スイッチがある。静電容量結合方式を利用したタッチスイッチは、タッチ電極(スイッチ電極)をスイッチと規定し、指または手がそのタッチ電極に近付いたことを静電容量の変化で検出するものであり、スイッチのオン/オフを検出するデジタル入力装置である。
【0003】
このような静電容量型タッチスイッチでは、ノイズの低減化と信号レベルの安定化を図るためにグランド部(グランドパターン、GND電極)を基材フィルムに印刷処理によって設けたり、高周波信号の高速伝送やノイズ対策のためにシールド部を基材フィルムに印刷処理によって設けることが一般的である。多層(例えば二層)のタッチスイッチを構成する場合には、上層のランド(回路部分)と下層のランドとをスルーホール(基板に開けた穴の内壁に銅めっきを施したもの)を介して複数箇所で結合する構成が採用されている(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多層(例えば二層)のタッチスイッチに関してスルーホールを設けることが必須である構成であれば、高精度なスルーホール加工処理が要求されるとともに、各層を構成する基材ごとに印刷処理が必要であるため、印刷処理回数の増大化を招来する。
【0006】
本発明者は、鋭意研究の末、スルーホールを必要としない構成でありながら、印刷処理回数も少なくすることが可能な多層の静電容量型タッチスイッチ、及び静電容量型タッチスイッチの製造方法を案出し、実現するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る静電容量型タッチスイッチは、薄膜状の基材フィルムに印刷処理によって少なくともタッチ電極を設けたタッチスイッチであって、一方の面が印刷面に設定され且つ他方の面が非印刷面に設定された単一の基材フィルムを備え、当該基材フィルムのうち所定の第1折り曲げ線を境界にした第1領域の印刷面に少なくともタッチ電極が印刷処理によって設けられ、且つ第1折り曲げ線を挟んで第1領域に隣接する第2領域の印刷面に少なくともグランド部またはシールド部が印刷処理によって設けられた状態にあり、第1折り曲げ線に沿って第1領域の印刷面と第2領域の印刷面が相互に対面しないように折り曲げた外折り状態で相互に対面する第1領域の非印刷面と第2領域の非印刷面を貼り合わせた構成であることを特徴としている。
【0008】
このような本発明に係る多層の静電容量型タッチスイッチであれば、スルーホールが不要であり、単一の基材フィルムのうち一方の面にのみ設定した印刷面に少なくともタッチ電極及びグランド部またはシールド部を共通の印刷処理によって設けることができるため、多層のタッチスイッチにおいて各層を構成する基材フィルムごとに印刷する態様と比較して印刷処理回数を低減することができる。さらに、本発明に係る多層の静電容量型タッチスイッチは、単一の基材フィルムを折り曲げて成形した二層基板構造を採用し、折り曲げる前の展開状態にある基材フィルムのうち同一面(印刷面)にのみタッチ電極及びグランド部またはシールド部を印刷し、第1折り曲げ線に沿って第1領域の印刷面と第2領域の印刷面が互いに外側を向くように折り曲げた状態(外折り状態)で、互いに内を向く非印刷面同士を貼り合わせることで外曲げ状態を維持するように構成しているため、第1領域の印刷面と第2領域の印刷面が互いに内を向くように折り曲げた状態(内折り状態)にした構成と比較して、第1領域の印刷面と第2領域の印刷面との距離を少なくとも基材フィルムの厚み寸法の2倍分だけ大きく確保することができる。その結果、自己容量方式の静電容量型タッチスイッチを構成した場合には、第1領域の印刷面に設けたタッチ電極と第2領域の印刷面に設けたグランド部またはシールド部との距離を、内曲げ状態と比較して遠くすることができる。したがって、第2領域の印刷面にグランド部を設けた構成であれば、タッチ電極に対してグランド部が近いほど寄生容量が高くなって信号強度が落ちる傾向があるという不具合の防止・抑制を図ることができ、第2領域の印刷面にシールド部を設けた構成であれば、シールド効果の向上を図ることができる。
【0009】
加えて、第1領域の印刷面と第2領域の印刷面が互いに内を向くように折り曲げた状態(内折り状態)にした構成を採用した場合には、短絡を防止するために、第1領域の印刷面と第2領域の印刷面の間に基材フィルムとは別パーツである専用のフィルム等をスペーサとして介在させることが必要になる。このような内折り状態にした構成と比較して、外折り状態にした構成を採用する本発明に係る静電容量型タッチスイッチは、基材フィルムの厚み分だけ第1領域の印刷面と第2領域の印刷面の距離を離すことができ、専用のスペーサが不要であり、部品点数の削減及び構造のより一層の単純化を図ることができる。
【0010】
本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチの具体例として、基材フィルムに設定した折り曲げ線が第1折り曲げ線のみであり、第2領域の印刷面にグランド部またはシールド部を印刷処理によって設けたものを挙げることができる。この場合、第1領域の印刷面に印刷処理によって設けたタッチ電極(センサ層)と、第2領域の印刷面に印刷処理によって設けたグランド部(グランド層)またはシールド部(シールド層)を層状に有する二層基板構造タイプの静電容量型タッチスイッチになる。このような二層基板構造タイプの静電容量型タッチスイッチにおいて、グランド機能を発揮するグランド層はシールド効果も奏し、シールド機能を発揮するシールド層はグランドとしても機能し得る。
【0011】
また、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチには三層基板構造タイプのものも含まれ、好適な一例としては、基材フィルムが、第2領域に第2折り曲げ線を挟んで隣接する第3領域を有するもの、すなわち、第1折り曲げ線を挟んで第1領域と第2領域が隣接し、第2折り曲げ線を挟んで第2領域と第3領域が隣接するものであり、第3領域の印刷面にシールド部またはグランド部が印刷処理によって設けられた状態にあり、第2折り曲げ線に沿って第2領域及び第3領域の印刷面同士が相互に対面しないように折り曲げた外折り状態で、第2領域、第1領域、及び第3領域がこの順で積層方向に並び、第1領域及び第3領域のうち相互に対面する部分同士を貼り合わせた構成を挙げることができる。このような構成において、第2領域の印刷面にグランド部を印刷処理によって設けた場合には、第3領域の印刷面にシールド部を印刷処理によって設け、積層状態において、第2領域の印刷面に設けたグランド部がグランド層として機能し、第3領域の印刷面に設けたシールド部がシールド層として機能する。一方、第2領域の印刷面にシールド部を印刷処理によって設けた場合には、第3領域の印刷面にグランド部を印刷処理によって設け、積層状態において、第2領域の印刷面に設けたシールド部がシールド層として機能し、第3領域の印刷面に設けたグランド部がグランド層として機能する。
【0012】
また、三層基板構造タイプの静電容量型タッチスイッチの他の好適な一例としては、基材フィルムが、第1領域に第2折り曲げ線を挟んで隣接する第3領域を有するもの、すなわち、第1折り曲げ線を挟んで第1領域と第2領域が隣接し、第2折り曲げ線を挟んで第1領域と第3領域が隣接するものであり、第3領域の印刷面にシールド部またはグランド部が印刷処理によって設けられた状態にあり、第2折り曲げ線に沿って第2領域及び第3領域の印刷面同士が相互に対面するように折り曲げた内折り状態で、第2領域、第1領域、及び第3領域がこの順で積層方向に並び、第1領域及び第3領域のうち相互に対面する部分同士を貼り合わせた構成を挙げることができる。このような構成において、第2領域の印刷面にグランド部を印刷処理によって設けた場合には、第3領域の印刷面にシールド部を印刷処理によって設け、積層状態において、第2領域の印刷面に設けたグランド部がグランド層として機能し、第3領域の印刷面に設けたシールド部がシールド層として機能する。一方、第2領域の印刷面にシールド部を印刷処理によって設けた場合には、第3領域の印刷面にグランド部を印刷処理によって設け、積層状態において、第2領域の印刷面に設けたシールド部がシールド層として機能し、第3領域の印刷面に設けたグランド部がグランド層として機能する。
【0013】
さらに、本発明に係る静電容量型タッチスイッチが、少なくとも外折り状態で対面する第1領域及び第2領域の非印刷面同士の間に粘着層を形成して貼り合わせた構成を採用したものであれば、粘着層により良好な外折り状態を確保することができるとともに、粘着層の厚みを変更することで第1領域の印刷面と第2領域の印刷面の距離を調整することができ、上述したようなスペーサが不要となるだけでなく、第1領域及び第2領域の印刷面同士の距離を大きくすることに寄与することになる。
【0014】
本発明に係る静電容量型タッチスイッチには、少なくとも第1領域に端子部分を形成した態様が含まれる。この場合、端子部分は、印刷処理によってグランド部が設けられたものであることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る静電容量型タッチスイッチの製造方法は、静電容量型タッチスイッチを薄膜状の単一の基材フィルムを用いて製造する方法であり、単一の基材フィルムのうち一方の面である印刷面にのみ少なくともタッチ電極及びグランド部を印刷する印刷工程と、単一の基材フィルムを所定の第1折り曲げ線に沿って印刷面が相互に対面しない外折りにした状態で相互に対面する非印刷面同士を貼り合わせる接着工程とを経て製造することを特徴としている。
【0016】
このような本発明に係る静電容量型タッチスイッチの製造方法によれば、印刷回数を減らすことができるとともに、スルーホール加工処理も不要になるため、比較的単純な製造方法でありながら、指または手がそのタッチ電極に近付いたことを検出可能な多層基板構造の静電容量型タッチスイッチを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単一の基材フィルムの印刷面にタッチ電極等を印刷処理で設け、少なくとも第1折り曲げ線を挟んで隣接する第1領域の印刷面(センサ層)と第2領域の印刷面(グランド層またはシールド層)とが互いに外側を向く外曲げ状態にして多層基板構造を実現するというこれまでに着想されることのなかった新規且つ有用な技術的思想を採用したことによって、スルーホールが不要である単純な構成でありながら、印刷処理回数も少なくすることができ、外曲げ状態にした構成に基づいて、内曲げ状態にした構成であれば奏し得ない上述した特有の作用効果を発揮し、種々の用途で活用可能な汎用性の高い静電容量型タッチスイッチ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る静電容量型タッチスイッチの正面図。
【
図3】同実施形態において展開状態(折り曲げ前の状態)にある基材フィルムの正面図。
【
図4】本発明の各実施形態に係る静電容量型タッチスイッチの製造フローチャート。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る静電容量型タッチスイッチの正面図。
【
図8】同実施形態において展開状態にある基材フィルムの正面図。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る静電容量型タッチスイッチの正面図。
【
図12】同実施形態において展開状態にある基材フィルムの正面図。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る静電容量型タッチスイッチの正面図。
【
図16】同実施形態において展開状態にある基材フィルムの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
〈第1実施形態〉
本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、
図1乃至
図3に示すように、単一の基材フィルム1(PET基材フィルム)を折り曲げて貼り合わせた二層構造に特徴を有するものである。
図1は静電容量型タッチスイッチXの正面図、
図2は
図1のa方向矢視図(側面図)であり、
図3は後述する印刷処理完了時点における静電容量型タッチスイッチX(基材フィルム1が展開状態にある静電容量型タッチスイッチX)の正面図である。なお、
図2では、説明の都合上、実際の厚みよりも分厚く誇張して示している。
【0021】
本実施形態では、回路印刷の基材となるフィルムである基材フィルム1として、高い透明性を有する所定厚み(例えば100μm程度)のフレキシブルプリント基板(FPC;Flexible Printed Circuits)を適用し、折り曲げる前の展開状態にある単一の基材フィルム1のうち一方の面を印刷面2(導通面)に設定し、他方の面を非印刷面3(非導通面)に設定している。そして、展開状態にある単一の基材フィルム1のうち唯一の折り曲げ線である第1折り曲げ線4を境界にした一方の領域である第1領域A(
図3における相対的に下側の領域)の印刷面2Aにタッチ電極T、回路P(給電線)、及びグランド部Gを印刷するとともに、第1折り曲げ線4を境界にした他方の領域である第2領域B(
図3における相対的に上側の領域)の印刷面2Bにグランド部G及び回路P(給電線)を印刷する(印刷工程S1、
図4参照)。本実施形態では印刷工程S1における印刷方法としてスクリーン印刷を適用している。
【0022】
本実施形態では、印刷工程S1によって、タッチ電極Tを例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)またはITO(酸化インジウムスズ)を用いて形成し、回路P(給電線)及びグランド部Gを例えば銀ペーストを用いて形成することができる。
図3に示すように、タッチ電極Tは、第1領域Aの長手方向に所定ピッチで複数(図示例では4つ)設けられ、グランド部Gは、第1領域Aにおいて所定ピッチで並ぶタッチ電極Tを囲む枠状に設けられ、且つ第2領域Bにおいて各タッチ電極Tよりも一回り大きい円(図示例では4つの円)に囲まれた領域と周縁部を除く略全域にメッシュ状に設けられる。したがって、貼り合わせ工程S2後の状態では平面視においてタッチ電極Tとグランド部Gは重ならない一方、回路P(給電線)とグランド部Gは部分的に重なる。なお、タッチ電極Tの周辺にグランド部Gを配置することで電磁界ノイズによる誤動作を防止することができる一方、グランド部Gによる寄生容量でタッチ感度が低下する可能性があり、寄生容量低減のためにグランド部Gはメッシュ形状にすることが好ましい(
図1及び
図3参照)。グランド部Gを設けることによってノイズ低減と信号レベルの安定化を図ることができる。
【0023】
本実施形態では、回路P(給電線)及びグランド部Gを同じ材料で構成しているため、単一の基材フィルム1の第1領域Aの印刷面2A及び第2領域Bの印刷面2Bに同じタイミングでこれら回路P(給電線)及びグランド部Gを印刷することができる。さらに、本実施形態では、第1領域Aと第2領域Bとを跨ぐ位置にも、各領域(第1領域A、第2領域B)の回路P(給電線)及びグランド部G同士を接続する回路P(給電線)を印刷工程S1で印刷している(
図3参照)。
【0024】
また、本実施形態では、印刷工程S1においてレジストインキを用いてレジスト(絶縁層)を印刷面2における適宜の箇所(タッチ電極T、回路P、グランド部Gが印刷されない箇所)に印刷するように設定している。レジストは、銀とPEDOTまたはITOの保護と絶縁を兼ねたものであり、例えばタッチ電極Tの光透過性に悪影響を与えない透明度の高い材料を用いて形成される。
【0025】
本実施形態の基材フィルム1のうち第1折り曲げ線4の所定箇所にはスリット5(
図3に示す小孔)を形成し、第1折り曲げ線4で折り曲げる処理を容易に行えるようにしている。本実施形態では、各領域(第1領域A、第2領域B)の回路P(給電線)及びグランド部G同士を接続する2本の回路P(給電線)をそれぞれ挟む位置にスリット5を形成している(
図3参照)。
【0026】
基材フィルム1は、第1領域Aにおいて第1折り曲げ線4から遠い側の縁部に端子として機能する端子部分6を先端に設定したフレキシブル部60を有し、端子部分6を含むフレキシブル部60の所定箇所にも回路P(給電線)及びグランド部Gを印刷工程S1における印刷処理によって設けている。特に、印刷工程S1における印刷処理によって端子部分6にカーボンを設け、端子部分6の導電性を確保している。端子部分6に補強板61を設けることで、コネクタに挿入可能な厚みとなるように調整することもできる。
【0027】
このような基材フィルム1に対する印刷処理を実施した後(印刷工程S1後)に、第1折り曲げ線4に沿って基材フィルム1を折り曲げて貼り合わせる処理(貼り合わせ工程S2)を実施することで本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXを製造することができる。貼り合わせ工程S2では、
図2に示すように、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに外向きとなるように折り曲げて(外曲げ)、粘着材7を介して第1領域Aの非印刷面3Aと第2領域Bの非印刷面3Bが互いに向き合う状態で貼り合わせる処理を行う。粘着材7を非印刷面3に塗布する処理は、印刷処理と同時または時間差で行うことができる。本実施形態では、粘着材7としてシリコーンOCA(高透明粘着シート;Optical Clear Adhesive)を適用している。シリコーンOCA以外の糊、両面テープ等を粘着材7として用いることも可能である。粘着材7が配置される粘着層の厚みを調整することで静電容量型タッチスイッチXの厚み寸法を調整することもできる。
図2では、第1領域Aの印刷面2A及び第2領域Bの印刷面2Bを含む基材フィルム1の印刷面2にそれぞれ適宜印刷処理によって形成された印刷層20(タッチ電極、回路、グランド部、レジスト)を共通の層として単純化して示している。
【0028】
以上の処理工程を経て製造した本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXによれば、印刷面2Aの所定箇所にタッチ部Tを有する第1領域Aがセンサ層として機能し、印刷面2Bの大部分にグランド部Gを有する第2領域Bがグランド層として機能して、ユーザの指または手がそのタッチ電極Tに近付いたことを検出することができ、スイッチのオン/オフを検出するデジタル入力装置として利用することができる。したがって、静電容量型タッチスイッチXの適宜の箇所に例えば両面テープを設け、タッチスイッチXを実装する対象の部品に取り付けることで実用品として種々の用途で活用できる。例えば、家電製品、音響機器、自動車のカーナビゲーション等の表示パネルやキーボタンなどに用いることができる。静電容量型タッチスイッチXの使用に際しては、上述の基板フィルム1とは別パーツである適宜の基板側に実装しているコネクタ部品に、第1フレキシブル6Aの先端に設定した端子部分6を差し込めばよい。
【0029】
そして、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、単一の基材フィルム1を折り曲げて成形した二層基板構造であり、折り曲げる前の展開状態にある基材フィルム1のうち同一面(印刷面2)にのみタッチ電極T、回路P(給電線)、グランド部G及びレジストを印刷し、所定の第1折り曲げ線4に沿って第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに外側を向くように折り曲げた状態(外曲げ状態)で、互いに内を向く非印刷面3同士を粘着材7(粘着層)により接着させることで外曲げ状態を維持するように構成しているため、スルーホールを設ける加工処理が不要であり、基材フィルム1に対する印刷処理回数も減らすことができる。さらに、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXによれば、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに内を向くように折り曲げた状態(内曲げ状態)にした構成と比較して、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bとの距離を基材フィルム1の厚み寸法の2倍分と粘着層7の厚みの合計分だけ大きく確保することができる。その結果、自己容量方式の静電容量型タッチスイッチXを構成した場合には、第1領域Aの印刷面2Aに設けたタッチ電極T(センサ層)から第2領域Bの印刷面2Bに設けたグランド部G(グランド層)までの距離を、内曲げ状態と比較して遠くすることができ、タッチ電極Tに対してグランド部Gが近いほど寄生容量が高くなって信号強度が落ちる傾向があるという不具合の防止・抑制を図ることができる。
【0030】
また、このような二層構造タイプの静電容量型タッチスイッチXによれば、グランド機能を発揮する第2領域B(グランド層)はシールド効果も奏し得る。
【0031】
なお、内曲げ状態の構成を採用した場合に第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bとの距離を大きくしようとする場合には、粘着材7(粘着層)の厚みを増やすことになり、タッチスイッチX全体の厚みが増大することになり、この点において本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは有利な構造である。
【0032】
第1実施形態に準じた静電容量型タッチスイッチとして、図示しないが、第2領域の印刷面にグランド部ではなくシールド部を印刷処理によって形成したものを適用して、第1折り曲げ線に沿って第1領域の印刷面と第2領域の印刷面が互いに外を向くように折り曲げた状態(外曲げ状態)にした静電容量型タッチスイッチを挙げることができる。このような静電容量型タッチスイッチも本発明に含まれるものであり、スルーホールを設ける加工処理が不要である点、基材フィルムに対する印刷処理回数も減らすことができる点は第1実施形態に係る静電容量型タッチスイッチと同様であり、また、第1領域の印刷面と第2領域の印刷面が互いに内を向くように折り曲げた状態(内曲げ状態)にした構成と比較して、第1領域の印刷面に設けたタッチ電極(センサ層)から第2領域の印刷面に設けたシールド部(シールド層)までの距離を基材フィルムの厚み寸法の2倍分と粘着層の厚みの合計分だけ大きく確保することができ、シールド効果が増大する。
【0033】
〈第2実施形態〉
本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、
図5乃至
図8に示すように、単一の基材フィルム1(PET基材フィルム)を折り曲げて貼り合わせた三層構造に特徴を有するものである。
図5は本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXの正面図、
図6は
図5のa方向矢視図(側面図)であり、
図7は
図5のb方向矢視図であり、
図8は後述する印刷処理完了時点における静電容量型タッチスイッチX(基材フィルム1が展開状態にある静電容量型タッチスイッチX)の正面図である。なお、
図6及び
図7では、説明の都合上、実際の厚みよりも分厚く誇張して示している。
【0034】
本実施形態では、回路印刷の基材となるフィルムである基材フィルム1として、高い透明性を有する所定厚み(例えば100μm程度)のフレキシブルプリント基板(FPC;Flexible Printed Circuits)を適用し、折り曲げる前の展開状態にある単一の基材フィルム1のうち一方の面を印刷面2(導通面)に設定し、他方の面を非印刷面3(非導通面)に設定している。そして、展開状態にある単一の基材フィルム1において、第1領域A、第2領域B、第3領域Cがこの順で並び、第1領域Aと第2領域Bの境界に第1折り曲げ線4を設定し、第2領域Bと第3領域Cの境界に第2折り曲げ線8を設定している。第1領域Aの印刷面2Aにタッチ電極T、回路P(給電線)、及びグランド部Gを印刷するとともに、第2領域B(
図8における中央部分の領域)の印刷面2Bにシールド部S及び回路P(給電線)を印刷し、第3領域Cの印刷面2Cにグランド部G及び回路P(給電線)を印刷する(印刷工程S1、
図4参照)。本実施形態では印刷工程S1における印刷方法としてスクリーン印刷を適用している。
【0035】
本実施形態では、印刷工程S1によって、タッチ電極T及びシールド部Sを例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)またはITO(酸化インジウムスズ)を用いて形成し、回路P(給電線)及びグランド部Gを例えば銀ペーストを用いて形成することができる。
図8に示すように、タッチ電極Tは、第1領域Aの長手方向に所定ピッチで複数(図示例では4つ)設けられ、シールド部Sは、第2領域Bのうち周縁部を除く略全域にべた塗り状に設けられ、グランド部Gは、第1領域Aにおいて所定ピッチで並ぶタッチ電極Tを囲む枠状に設けられ、第3領域Cにおいて各タッチ電極Tよりも一回り大きい円(図示例では4つの円)に囲まれた領域と周縁部を除く略全域にメッシュ状に設けられる。
【0036】
したがって、貼り合わせ工程S2後の状態では平面視においてタッチ電極Tとグランド部Gは重ならない一方、回路P(給電線)とグランド部Gは部分的に重なる。なお、タッチ電極Tの周辺にグランド部Gを配置することで電磁界ノイズによる誤動作を防止することができる一方、グランド部Gによる寄生容量でタッチ感度が低下する可能性があり、寄生容量低減のためにグランド部Gはメッシュ形状にすることが好ましい(
図8参照)。グランド部Gを設けることによってノイズ低減と信号レベルの安定化を図ることができる。本実施形態では、第1領域Aのうち各タッチ電極Tと回路P(給電線)と周縁部を除く略全域にもグランド部Gをメッシュ状に設けている。
【0037】
本実施形態では、回路P(給電線)及びグランド部Gを同じ材料で構成しているため、単一の基材フィルム1の第1領域Aの印刷面2A及び第3領域Cの印刷面2Cに同じタイミングでこれら回路P(給電線)及びグランド部Gを印刷することができる。また、タッチ電極T及びシールド部Sを同じ材料で構成しているため、単一の基材フィルム1の第1領域Aの印刷面2A及び第2領域Bの印刷面2Bに同じタイミングでタッチ電極A及びシールド部Sを印刷することができる。さらに、本実施形態では、第1領域Aと第2領域Bとを跨ぐ位置、及び第2領域Bと第3領域Cとを跨ぐ位置に、それぞれ各領域(第1領域A、第2領域B、第3領域C)の回路P(給電線)及びグランド部G同士を接続する回路P(給電線)を印刷工程S1で印刷している(
図8参照)。
【0038】
また、本実施形態では、印刷工程S1においてレジストインキを用いてレジスト(絶縁層)を印刷面2における適宜の箇所(タッチ電極T、回路P、グランド部Gが印刷されない箇所)に印刷するように設定している。レジストは、銀とPEDOTまたはITOの保護と絶縁を兼ねたものであり、例えばタッチ電極Tの光透過性に悪影響を与えない透明度の高い材料を用いて形成される。
【0039】
本実施形態の基材フィルム1のうち第1折り曲げ線4及び第2折り曲げ線8の所定箇所にはスリット5(
図8に示す小孔)を形成し、第1折り曲げ線4及び第2折り曲げ線8で折り曲げる処理を容易に行えるようにしている。本実施形態では、各折り曲げ線(第1折り曲げ線4、第2折り曲げ線8)に2箇所ずつスリット5を形成している(
図8参照)。
【0040】
基材フィルム1は、第1領域Aの周縁部のうち一方の長辺に相当する縁部に端子として機能する端子部分6を先端に設定した第1フレキシブル部6Aを一体に有し、端子部分6を含む第1フレキシブル部6Aのうち印刷面2Aと同じ面(第1フレキシブル部6Aの印刷面)の所定箇所にも回路P(給電線)及びグランド部Gを印刷工程S1における印刷処理によって設けている。特に、印刷工程S1における印刷処理によって端子部分6にカーボンを設け、端子部分6の導電性を確保している。端子部分6に補強板61を設けることで、コネクタに挿入可能な厚みとなるように調整することもできる。また、本実施形態では、第2領域B及び第3領域Cの縁部にも第1フレキシブル部6Aに対応する第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cを一体に形成し、第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cのうち印刷面2B,2Cと同じ面(第2フレキシブル部6Bの印刷面,第3フレキシブル部6Cの印刷面)の所定箇所に回路P(給電線)、シールド部Sまたはグランド部Gを印刷工程S1における印刷処理によって設けている。なお、第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cは、第1フレキシブル部6Aと比較して端子部分6の分だけ長手方向の寸法が短く設定されている。つまり、第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cには端子部分6が設けられていない。
【0041】
このような基材フィルム1に対する印刷処理を実施した後(印刷工程S1後)に、第1折り曲げ線4及び第2折り曲げ線8に沿って基材フィルム1を折り曲げて貼り合わせる処理(貼り合わせ工程S2、
図4参照)を実施することで本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXを製造することができる。貼り合わせ工程S2では、
図6及び
図7に示すように、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに外向きとなるように折り曲げて(外曲げ)、粘着材7を介して第1領域Aの非印刷面3Aと第2領域Bの非印刷面3Bが互いに向き合う状態で貼り合わせる第1貼り合わせ処理と、第1貼り合わせ処理に続いて、第2領域Bの印刷面3Bと第3領域Cの印刷面3Cが互いに外向きとなるように折り曲げて(外曲げ)、粘着材7を介して第3領域Cの非印刷面3Cと第1領域Aの印刷面2Aが互いに向き合う状態で貼り合わせる第2貼り合わせ処理とを行う。また、第1貼り合わせ処理では、第1フレキシブル部6Aと第2フレキシブル部6Bの印刷面同士が互いに外向きとなる状態で粘着材7を介して第1フレキシブル部6Aと第2フレキシブル部6Bを貼り合わせる処理も行い、第2貼り合わせ処理では、第2フレキシブル部6Bと第3フレキシブル部6Cの印刷面同士が互いに外向きとなる状態で粘着材7を介して第3フレキシブル部6Cの非印刷面と第1フレキシブル部6Aの印刷面とを貼り合わせる処理も行う。
【0042】
粘着材7を塗布する処理は、印刷処理と同時または時間差で行うことができる。本実施形態では、粘着材7としてシリコーンOCA(高透明粘着シート;Optical Clear Adhesive)を適用している。シリコーンOCA以外の糊、両面テープ等を粘着材7として用いることも可能である。粘着材7が配置される粘着層の厚みを調整することで静電容量型タッチスイッチXの厚み寸法を調整することもできる。
図6、
図7には、それぞれ
図5のc-c線断面、d-d線断面における各印刷面上のタッチ電極T、グランド部G、シールド部Sを単純化して模式的に示している。
【0043】
以上の処理工程を経て製造した本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、第3領域C、第1領域A、第2領域Bの順に並ぶ三層基板構造をなし、印刷面2Cの大部分にグランド部Gを有する第3領域Cがグランド層として機能し、印刷面2Aの所定箇所にタッチ部Tを有する第1領域Aがセンサ層として機能し、印刷面2Bの大部分にシールド部Sを有する第2領域Bがシールド層として機能して、センシング方向Yである第3領域C側からユーザの指または手がそのタッチ電極Tに近付いたことを検出することができ、スイッチのオン/オフを検出するデジタル入力装置として利用することができる。したがって、静電容量型タッチスイッチXの適宜の箇所に例えば両面テープを設け、タッチスイッチXを実装する対象の部品に取り付けることで実用品として種々の用途で活用できる。例えば、家電製品、音響機器、自動車のカーナビゲーション等の表示パネルやキーボタンなどに用いることができる。静電容量型タッチスイッチXの使用に際しては、上述の基板フィルム1とは別パーツである適宜の基板側に実装しているコネクタ部品に、第1フレキシブル6Aの先端に設定した端子部分6を差し込めばよい。
【0044】
そして、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、単一の基材フィルム1を折り曲げて成形した三層基板構造であり、折り曲げる前の展開状態にある基材フィルム1のうち同一面(印刷面2)にのみタッチ電極T、回路P(給電線)、グランド部G及びレジストを印刷し、第1折り曲げ線4に沿って第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに外側を向くように折り曲げた状態(外曲げ状態)で、互いに内を向く非印刷面3同士を粘着材7(粘着層)により接着させることで外曲げ状態を維持するとともに、第2折り曲げ線8に沿って第2領域Bの印刷面2Bと第3領域Cの印刷面2Cが互いに外側を向くように折り曲げた状態(外曲げ状態)で、相互に対面する第3領域Cの非印刷面3Cと第1領域Aの印刷面2Aとを粘着材7(粘着層)により接着させることで外曲げ状態を維持するように構成しているため、スルーホールを設ける加工処理が不要であり、基材フィルム1に対する印刷処理回数も減らすことができる。さらに、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXによれば、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに内を向くように折り曲げた状態(内曲げ状態)にした構成と比較して、第1領域Aの印刷面2Aに設けたタッチ電極T(センサ層)と第2領域Bの印刷面2Bに設けたシールド部S(シールド層)との距離を基材フィルム1の厚み寸法の2倍分と粘着層7の厚みの合計分だけ大きく確保することができる。その結果、自己容量方式の静電容量型タッチスイッチXを構成した場合には、シールド層とセンサ層との間に基材フィルム1の厚み寸法分(厚み寸法の1倍)に相当する距離しか確保できない態様と比較してシールド効果が増大する。
【0045】
さらに、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、第1領域Aの印刷面2Aに設けたタッチ電極T(センサ層)から第3領域Cの印刷面2Cに設けたグランド部G(グランド層)までの距離を、基材フィルム1の厚み寸法1倍分と粘着層7の厚み分の合計分だけ確保することができ、センサ層とグランド層との間に基材フィルム1の厚み寸法分(厚み寸法の1倍)に相当する距離しか確保できない態様や、センサ層とグランド層との間に粘着層7の厚み寸法分に相当する距離しか確保できない態様と比較して、タッチ電極Tに対してグランド部Gが近いほど寄生容量が高くなって信号強度が落ちる傾向があるという不具合を抑制し易い構成になる。
【0046】
〈第3実施形態〉
本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、
図9乃至
図12に示すように、単一の基材フィルム1(PET基材フィルム)を折り曲げて貼り合わせた三層構造に特徴を有するものであり、上述の第2実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXと比較して、第2実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、展開状態において第1領域A(センサ層)に第1折り曲げ線4を挟んでシールド層として機能する第2領域Bが隣接し、第2折り曲げ線8を挟んで第2領域Bとグランド層として機能する第3領域Cが隣接している構成であるのに対して、展開状態において第1領域A(センサ層)に第1折り曲げ線4を挟んでグランド層として機能する第2領域Bが隣接し、第2折り曲げ線8を挟んで第2領域Bとシールド層として機能する第3領域Cが隣接する構成である点で異なる。
図9は本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXの正面図、
図10は
図9のa方向矢視図(側面図)であり、
図11は
図9のb方向矢視図であり、
図12は後述する印刷処理完了時点における静電容量型タッチスイッチX(基材フィルム1が展開状態にある静電容量型タッチスイッチX)の正面図である。なお、
図10及び
図11では、説明の都合上、実際の厚みよりも分厚く誇張して示している。
【0047】
本実施形態では、回路印刷の基材となるフィルムである基材フィルム1として、高い透明性を有する所定厚み(例えば100μm程度)のフレキシブルプリント基板(FPC;Flexible Printed Circuits)を適用し、折り曲げる前の展開状態にある単一の基材フィルム1のうち一方の面を印刷面2(導通面)に設定し、他方の面を非印刷面3(非導通面)に設定している。そして、展開状態にある単一の基材フィルム1において、第1領域A、第2領域B、第3領域Cがこの順で並び、第1領域Aと第2領域Bの境界に第1折り曲げ線4を設定し、第2領域Bと第3領域Cの境界に第2折り曲げ線8を設定している。第1領域Aの印刷面2Aにタッチ電極T、回路P(給電線)、及びグランド部Gを印刷するとともに、第2領域B(
図12における中央部分の領域)の印刷面2Bにグランド部G及び回路P(給電線)を印刷し、第3領域Cの印刷面2Cにシールド部S及び回路P(給電線)を印刷する(印刷工程S1、
図4参照)。本実施形態では印刷工程S1における印刷方法としてスクリーン印刷を適用している。
【0048】
本実施形態では、印刷工程S1によって、タッチ電極T及びシールド部Sを例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)またはITO(酸化インジウムスズ)を用いて形成し、回路P(給電線)及びグランド部Gを例えば銀ペーストを用いて形成することができる。
図12に示すように、タッチ電極Tは、第1領域Aの長手方向に所定ピッチで複数(図示例では4つ)設けられ、シールド部Sは、第3領域Cのうち周縁部を除く略全域にべた塗り状に設けられ、グランド部Gは、第1領域Aにおいて所定ピッチで並ぶタッチ電極Tを囲む枠状に設けられ、第2領域Bにおいて各タッチ電極Tよりも一回り大きい円(図示例では4つの円)に囲まれた領域と周縁部を除く略全域にメッシュ状に設けられる。
【0049】
したがって、貼り合わせ工程S2後の状態では平面視においてタッチ電極Tとグランド部Gは重ならない一方、回路P(給電線)とグランド部Gは部分的に重なる。なお、タッチ電極Tの周辺にグランド部Gを配置することで電磁界ノイズによる誤動作を防止することができる一方、グランド部Gによる寄生容量でタッチ感度が低下する可能性があり、寄生容量低減のためにグランド部Gはメッシュ形状にすることが好ましい(
図9及び
図12参照)。グランド部Gを設けることによってノイズ低減と信号レベルの安定化を図ることができる。本実施形態では、第1領域Aのうち各タッチ電極Tと回路P(給電線)と周縁部を除く略全域にもグランド部Gをメッシュ状に設けている。
【0050】
本実施形態では、回路P(給電線)及びグランド部Gを同じ材料で構成しているため、単一の基材フィルム1の第1領域Aの印刷面2A及び第2領域Bの印刷面2Bに同じタイミングでこれら回路P(給電線)及びグランド部Gを印刷することができる。また、タッチ電極T及びシールド部Sを同じ材料で構成しているため、単一の基材フィルム1の第1領域Aの印刷面2A及び第3領域Cの印刷面2Cに同じタイミングでタッチ電極A及びシールド部Sを印刷することができる。さらに、本実施形態では、第1領域Aと第2領域Bとを跨ぐ位置、及び第2領域Bと第3領域Cとを跨ぐ位置に、それぞれ各領域(第1領域A、第2領域B、第3領域C)の回路P(給電線)及びグランド部G同士を接続する回路P(給電線)を印刷工程S1で印刷している(
図12参照)。
【0051】
また、本実施形態では、印刷工程S1においてレジストインキを用いてレジスト(絶縁層)を印刷面2における適宜の箇所(タッチ電極T、回路P、グランド部Gが印刷されない箇所)に印刷するように設定している。レジストは、銀とPEDOTまたはITOの保護と絶縁を兼ねたものであり、例えばタッチ電極Tの光透過性に悪影響を与えない透明度の高い材料を用いて形成される。
【0052】
本実施形態の基材フィルム1のうち第1折り曲げ線4及び第2折り曲げ線8の所定箇所にはスリット5(
図13に示す小孔)を形成し、第1折り曲げ線4及び第2折り曲げ線8で折り曲げる処理を容易に行えるようにしている。本実施形態では、各折り曲げ線(第1折り曲げ線4、第2折り曲げ線8)に2箇所ずつスリット5を形成している(
図13参照)。
【0053】
基材フィルム1は、第1領域Aの周縁部のうち一方の長辺に相当する縁部に端子として機能する端子部分6を先端に設定した第1フレキシブル部6Aを一体に有し、端子部分6を含む第1フレキシブル部6Aのうち印刷面2Aと同じ面(第1フレキシブル部6Aの印刷面)の所定箇所にも回路P(給電線)及びグランド部Gを印刷工程S1における印刷処理によって設けている。特に、印刷工程S1における印刷処理によって端子部分6にカーボンを設け、端子部分6の導電性を確保している。端子部分6に補強板61を設けることで、コネクタに挿入可能な厚みとなるように調整することもできる。また、本実施形態では、第2領域B及び第3領域Cの縁部にも第1フレキシブル部6Aに対応する第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cを一体に形成し、第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cのうち印刷面2B,2Cと同じ面(第2フレキシブル部6Bの印刷面,第3フレキシブル部6Cの印刷面)の所定箇所に回路P(給電線)、グランド部Gまたはシールド部Sを印刷工程S1における印刷処理によって設けている。なお、第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cは、第1フレキシブル部6Aと比較して端子部分6の分だけ長手方向の長さが短く設定されている。つまり、第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cには端子部分6が設けられていない。
【0054】
このような基材フィルム1に対する印刷処理を実施した後(印刷工程S1後)に、第1折り曲げ線4及び第2折り曲げ線8に沿って基材フィルム1を折り曲げて貼り合わせる処理(貼り合わせ工程S2、
図4参照)を実施することで本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXを製造することができる。貼り合わせ工程S2では、
図10及び
図11に示すように、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに外向きとなるように折り曲げて(外曲げ)、粘着材7を介して第1領域Aの非印刷面3Aと第2領域Bの非印刷面3Bが互いに向き合う状態で貼り合わせる第1貼り合わせ処理と、第1貼り合わせ処理に続いて、第2領域Bの印刷面3Bと第3領域Cの印刷面3Cが互いに外向きとなるように折り曲げて(外曲げ)、粘着材7を介して第3領域Cの非印刷面3Cと第1領域Aの印刷面2Aが互いに向き合う状態で貼り合わせる第2貼り合わせ処理とを行う。また、第1貼り合わせ処理では、第1フレキシブル部6Aと第2フレキシブル部6Bの印刷面同士が互いに外向きとなる状態で粘着材7を介して第1フレキシブル部6Aと第2フレキシブル部6Bを貼り合わせる処理も行い、第2貼り合わせ処理では、第2フレキシブル部6Bと第3フレキシブル部6Cの印刷面同士が互いに外向きとなる状態で粘着材7を介して第3フレキシブル部6Cの非印刷面と第1フレキシブル部6Aの印刷面とを貼り合わせる処理も行う。
【0055】
粘着材7を塗布する処理は、印刷処理と同時または時間差で行うことができる。本実施形態では、粘着材7としてシリコーンOCA(高透明粘着シート;Optical Clear Adhesive)を適用している。シリコーンOCA以外の糊、両面テープ等を粘着材7として用いることも可能である。粘着材7が配置される粘着層の厚みを調整することで静電容量型タッチスイッチXの厚み寸法を調整することもできる。
図10、
図11には、それぞれ
図9のc-c線断面、d-d線断面における各印刷面上のタッチ電極T、グランド部G、シールド部Sを単純化して模式的に示している。
【0056】
以上の処理工程を経て製造した本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、第3領域C、第1領域A、第2領域Bの順に並ぶ三層基板構造をなし、印刷面2Cの大部分にグランド部Gを有する第3領域Cがグランド層として機能し、印刷面2Aの所定箇所にタッチ部Tを有する第1領域Aがセンサ層として機能し、印刷面2Bの大部分にグランド部Gを有する第2領域Bがシールド層として機能して、センシング方向Yである第3領域C(グランド層)側からユーザの指または手がそのタッチ電極Tに近付いたことを検出することができ、スイッチのオン/オフを検出するデジタル入力装置として利用することができる。したがって、静電容量型タッチスイッチXの適宜の箇所に例えば両面テープを設け、タッチスイッチXを実装する対象の部品に取り付けることで実用品として種々の用途で活用できる。例えば、家電製品、音響機器、自動車のカーナビゲーション等の表示パネルやキーボタンなどに用いることができる。静電容量型タッチスイッチXの使用に際しては、上述の基板フィルム1とは別パーツである適宜の基板側に実装しているコネクタ部品に、第1フレキシブル6Aの先端に設定した端子部分6を差し込めばよい。
【0057】
そして、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、単一の基材フィルム1を折り曲げて成形した三層基板構造であり、折り曲げる前の展開状態にある基材フィルム1のうち同一面(印刷面2)にのみタッチ電極T、回路P(給電線)、グランド部G及びレジストを印刷し、所定の第1折り曲げ線4に沿って第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに外側を向くように折り曲げた状態(外曲げ状態)で、互いに内を向く非印刷面3同士を粘着材7(粘着層)により接着させることで外曲げ状態を維持するとともに、第2折り曲げ線8に沿って第2領域Bの印刷面2Bと第3領域Cの印刷面2Cが互いに外側を向くように折り曲げた状態(外曲げ状態)で、相互に対面する第3領域Cの非印刷面2Cと第1領域Aの印刷面2Aとを粘着材7(粘着層)により接着させることで外曲げ状態を維持するように構成しているため、スルーホールを設ける加工処理が不要であり、基材フィルム1に対する印刷処理回数も減らすことができる。さらに、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXによれば、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに内を向くように折り曲げた状態(内曲げ状態)にした構成と比較して、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bとの距離を基材フィルム1の厚み寸法の2倍分と粘着層7の厚みの合計分だけ大きく確保することができる。その結果、自己容量方式の静電容量型タッチスイッチXを構成した場合には、第1領域Aの印刷面2Aに設けたタッチ電極T(センサ層)から第2領域Bの印刷面2Bに設けたグランド部G(グランド層)までの距離を、内曲げ状態と比較して遠くすることができ、タッチ電極Tに対してグランド部Gが近いほど寄生容量が高くなって信号強度が落ちる傾向があるという不具合の防止・抑制を図ることができる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、第1領域Aの印刷面2Aに設けたタッチ電極T(センサ層)から第3領域Cの印刷面2Cに設けたシールド部S(シールド層)までの距離を、基材フィルム1の厚み寸法1倍分と粘着層7の厚み分の合計分だけ確保することができ、センサ層とシールド層との間に基材フィルム1の厚み寸法分(厚み寸法の1倍)に相当する距離しか確保できない態様や、センサ層とシールド層との間に粘着層7の厚み寸法に相当する距離しか確保できない態様と比較してシールド効果が増大する。
【0059】
〈第4実施形態〉
本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、
図13乃至
図16に示すように、単一の基材フィルム1(PET基材フィルム)を折り曲げて貼り合わせた三層構造に特徴を有するものであり、上述の第2実施形態及び第3実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXと比較して、展開状態において中央に第1領域A(センサ層)が配置され、第1領域A(センサ層)を挟む一方側に第1折り曲げ線4を介して第2領域Bが隣接し、他方側に第2折り曲げ線8を介して第3領域が隣接している点で異なる。
図13は本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXの正面図、
図14は
図13のa方向矢視図(側面図)であり、
図15は
図13のb方向矢視図であり、
図16は印刷処理完了時点における静電容量型タッチスイッチX(基材フィルム1が展開状態にある静電容量型タッチスイッチX)の正面図である。なお、
図14及び
図15では、説明の都合上、実際の厚みよりも分厚く誇張して示している。
【0060】
本実施形態では、回路印刷の基材となるフィルムである基材フィルム1として、高い透明性を有する所定厚み(例えば100μm程度)のフレキシブルプリント基板(FPC;Flexible Printed Circuits)を適用し、折り曲げる前の展開状態にある単一の基材フィルム1のうち一方の面を印刷面2(導通面)に設定し、他方の面を非印刷面3(非導通面)に設定している。そして、展開状態にある単一の基材フィルム1において、第2領域B、第1領域A、第3領域Cがこの順で並び、第2領域Bと第1領域Aの境界に第1折り曲げ線4を設定し、第1領域Aと第3領域Cの境界に第2折り曲げ線8を設定している。第1領域Aの印刷面2Aにタッチ電極T、回路P(給電線)、及びグランド部Gを印刷するとともに、第3領域Cの印刷面2Cにシールド部S及び回路P(給電線)を印刷し、第2領域B(
図5における中央部分の領域)の印刷面2Bにグランド部G及び回路P(給電線)を印刷する(印刷工程S1、
図4参照)。本実施形態では印刷工程S1における印刷方法としてスクリーン印刷を適用している。
【0061】
本実施形態では、印刷工程S1によって、タッチ電極T及びシールド部Sを例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)またはITO(酸化インジウムスズ)を用いて形成し、回路P(給電線)及びグランド部Gを例えば銀ペーストを用いて形成することができる。
図16に示すように、タッチ電極Tは、第1領域Aの長手方向に所定ピッチで複数(図示例では4つ)設けられ、シールド部Sは、第2領域Bのうち周縁部を除く略全域にべた塗り状に設けられ、グランド部Gは、第1領域Aにおいて所定ピッチで並ぶタッチ電極Tを囲む枠状に設けられ、第3領域Cにおいて各タッチ電極Tよりも一回り大きい円(図示例では4つの円)に囲まれた領域と周縁部を除く略全域にメッシュ状に設けられる。
【0062】
したがって、貼り合わせ工程S2後の状態では平面視においてタッチ電極Tとグランド部Gは重ならない一方、回路P(給電線)とグランド部Gは部分的に重なる。なお、タッチ電極Tの周辺にグランド部Gを配置することで電磁界ノイズによる誤動作を防止することができる一方、グランド部Gによる寄生容量でタッチ感度が低下する可能性があり、寄生容量低減のためにグランド部Gはメッシュ形状にすることが好ましい(
図13及び
図16参照)。グランド部Gを設けることによってノイズ低減と信号レベルの安定化を図ることができる。本実施形態では、第1領域Aのうち各タッチ電極Tと回路P(給電線)と周縁部を除く略全域にもグランド部Gをメッシュ状に設けている。
【0063】
本実施形態では、回路P(給電線)及びグランド部Gを同じ材料で構成しているため、単一の基材フィルム1の第1領域Aの印刷面2A及び第3領域Cの印刷面2Cに同じタイミングでこれら回路P(給電線)及びグランド部Gを印刷することができる。また、タッチ電極T及びシールド部Sを同じ材料で構成しているため、単一の基材フィルム1の第1領域Aの印刷面2A及び第2領域Bの印刷面2Bに同じタイミングでタッチ電極A及びシールド部Sを印刷することができる。さらに、本実施形態では、第1領域Aと第2領域Bとを跨ぐ位置、及び第2領域Bと第3領域Cとを跨ぐ位置に、それぞれ各領域(第1領域A、第2領域B、第3領域C)の回路P(給電線)及びグランド部G同士を接続する回路P(給電線)を印刷工程S1で印刷している(
図16参照)。
【0064】
また、本実施形態では、印刷工程S1においてレジストインキを用いてレジスト(絶縁層)を印刷面2における適宜の箇所(タッチ電極T、回路P、グランド部Gが印刷されない箇所)に印刷するように設定している。レジストは、銀とPEDOTまたはITOの保護と絶縁を兼ねたものであり、例えばタッチ電極Tの光透過性に悪影響を与えない透明度の高い材料を用いて形成される。
【0065】
本実施形態の基材フィルム1のうち第1折り曲げ線4及び第2折り曲げ線8の所定箇所にはスリット5(
図16に示す小孔)を形成し、第1折り曲げ線4及び第2折り曲げ線8で折り曲げる処理を容易に行えるようにしている。本実施形態では、各折り曲げ線(第1折り曲げ線4、第2折り曲げ線8)に3箇所ずつスリット5を形成している(
図16参照)。
【0066】
基材フィルム1は、第1領域Aの周縁部のうち一方の長辺に相当する縁部に端子として機能する端子部分6を先端に設定した第1フレキシブル部6Aを一体に有し、端子部分6を含む第1フレキシブル部6Aのうち印刷面2Aと同じ面(第1フレキシブル部6Aの印刷面)の所定箇所にも回路P(給電線)及びグランド部Gを印刷工程S1における印刷処理によって設けている。特に、印刷工程S1における印刷処理によって端子部分6にカーボンを設け、端子部分6の導電性を確保している。端子部分6に補強板61を設けることで、コネクタに挿入可能な厚みとなるように調整することもできる。また、本実施形態では、第2領域B及び第3領域Cの縁部にも第1フレキシブル部6Aに対応する第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cを一体に形成し、第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cのうち印刷面2B,2Cと同じ面(第2フレキシブル部6Bの印刷面,第3フレキシブル部6Cの印刷面)の所定箇所に回路P(給電線)、シールド部Sまたはグランド部Gを印刷工程S1における印刷処理によって設けている。なお、第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cは、第1フレキシブル部6Aと比較して端子部分6の分だけ長手方向の長さが短く設定されている。つまり、第2フレキシブル部6B,第3フレキシブル部6Cには端子部分6が設けられていない。
【0067】
このような基材フィルム1に対する印刷処理を実施した後(印刷工程S1後)に、第1折り曲げ線4及び第2折り曲げ線8に沿って基材フィルム1を折り曲げて貼り合わせる処理(貼り合わせ工程S2、
図4参照)を実施することで本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXを製造することができる。貼り合わせ工程S2では、
図14及び
図15に示すように、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに外向きとなるように折り曲げて(外曲げ)、粘着材7を介して第1領域Aの非印刷面3Aと第2領域Bの非印刷面3Bが互いに向き合う状態で貼り合わせる第1貼り合わせ処理と、第1貼り合わせ処理に続いて、第1領域Aの印刷面2Aと第3領域Cの印刷面2Cが互いに内向きとなるように折り曲げて(内曲げ)、粘着材7を介して第3領域Cの非印刷面3Cと第2領域Bの印刷面2Bが互いに向き合う状態で貼り合わせる第2貼り合わせ処理とを行う。また、第1貼り合わせ処理では、第1フレキシブル部6Aと第2フレキシブル部6Bの印刷面同士が互いに外向きとなる状態で粘着材7を介して第1フレキシブル部6Aと第2フレキシブル部6Bを貼り合わせる処理も行い、第2貼り合わせ処理では、第1フレキシブル部6Aと第3フレキシブル部6Cの印刷面同士が互いに内向きとなる状態で粘着材7を介して第1フレキシブル部6Aと第3フレキシブル部6Cを貼り合わせる処理も行う。
【0068】
粘着材7を塗布する処理は、印刷処理と同時または時間差で行うことができる。本実施形態では、粘着材7としてシリコーンOCA(高透明粘着シート;Optical Clear Adhesive)を適用している。シリコーンOCA以外の糊、両面テープ等を粘着材7として用いることも可能である。粘着材7が配置される粘着層の厚みを調整することで静電容量型タッチスイッチXの厚み寸法を調整することもできる。
図14、
図15には、それぞれ
図13のc-c線断面、d-d線断面における各印刷面上のタッチ電極T、グランド部G、シールド部Sを単純化して模式的に示している。
【0069】
以上の処理工程を経て製造した本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、第3領域C、第1領域A、第2領域Bの順に並ぶ三層基板構造をなし、第3領域Cがグランド層として機能し、第1領域Aがセンサ層として機能し、第2領域Bがシールド層として機能して、センシング方向Yである第3領域C(グランド層)側からユーザの指または手がそのタッチ電極Tに近付いたことを検出することができ、スイッチのオン/オフを検出するデジタル入力装置として利用することができる。したがって、静電容量型タッチスイッチXの適宜の箇所に例えば両面テープを設け、タッチスイッチXを実装する対象の部品に取り付けることで実用品として種々の用途で活用できる。例えば、家電製品、音響機器、自動車のカーナビゲーション等の表示パネルやキーボタンなどに用いることができる。静電容量型タッチスイッチXの使用に際しては、上述の基板フィルム1とは別パーツである適宜の基板側に実装しているコネクタ部品に、第1フレキシブル6Aの先端に設定した端子部分6を差し込めばよい。
【0070】
そして、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、単一の基材フィルム1を折り曲げて成形した三層基板構造であり、折り曲げる前の展開状態にある基材フィルム1のうち同一面(印刷面2)にのみタッチ電極T、回路P(給電線)、グランド部G及びレジストを印刷し、所定の第1折り曲げ線4に沿って第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに外側を向くように折り曲げた状態(外曲げ状態)で、互いに内を向く非印刷面3同士を粘着材7(粘着層)により接着させることで外曲げ状態を維持するとともに、第2折り曲げ線8に沿って第1領域Aの印刷面2Aと第3領域Cの印刷面2Cが互いに内を向くように折り曲げた状態(内曲げ状態)で、相互に対面する第1領域Aの印刷面2Aと第3領域Cの印刷面2Cとを粘着材7(粘着層)により接着させることで内曲げ状態を維持するように構成しているため、スルーホールを設ける加工処理が不要であり、基材フィルム1に対する印刷処理回数も減らすことができる。さらに、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXによれば、第1領域Aの印刷面2Aと第2領域Bの印刷面2Bが互いに内を向くように折り曲げた状態(内曲げ状態)にした構成と比較して、第1領域Aの印刷面2Aに設けたタッチ電極T(センサ層)と第2領域Bの印刷面2Bに設けたシールド部S(シールド層)との距離を基材フィルム1の厚み寸法の2倍分と粘着層7の厚みの合計分だけ大きく確保することができる。具体的には、本実施形態に係る静電容量型タッチスイッチXは、第2領域Bの印刷面2Bに設けたシールド部S(シールド層)と、第1領域Aの印刷面2Aに設けたタッチ電極T(センサ層)との間に基材フィルム1の厚み寸法の2倍に相当する距離を確保することができる。その結果、自己容量方式の静電容量型タッチスイッチXを構成した場合には、シールド層とセンサ層が相互に内を向くように折り曲げた内曲げ状態となる態様や、シールド層とセンサ層との間に基材フィルム1の厚み寸法分(厚み寸法の1倍)に相当する距離しか確保できない態様と比較して、第1領域Aの印刷面2Aに設けたタッチ電極T(センサ層)から第2領域Bの印刷面2Bに設けたシールド部S(シールド層)までの距離を遠くすることができ、シールド効果が増大する。
【0071】
なお、第4実施形態に準じた静電容量型タッチスイッチとして、図示しないが、第2領域の印刷面にグランド部を印刷処理によって形成し、第3領域の印刷面にシールド部を印刷処理によって形成したものを適用して、第1折り曲げ線に沿って第1領域の印刷面と第2領域の印刷面が互いに外を向くように折り曲げた状態(外曲げ状態)にし、第1領域及び第2領域のうち相互に対面する部分(非印刷面)同士を貼り合わせるとともに、第2折り曲げ線に沿って第1領域の印刷面と第3領域の印刷面が互いに内を向くように折り曲げた状態(内曲げ状態)にし、第1領域及び第3領域のうち相互に対面する部分(印刷面)同士を貼り合わせた構成にすることで、グランド層として機能する第2領域、センサ層として機能する第1領域、シールド層として機能する第3領域が粘着層を介してセンシング方向にこの順で並ぶ三層基板構造の静電容量型タッチスイッチも本発明に含まれる。この場合も、スルーホールを設ける加工処理が不要であり、基材フィルムに対する印刷処理回数も減らすことができるとともに、第1領域の印刷面に設けたタッチ電極(センサ層)と第2領域の印刷面に設けたグランド部(グランド層)との距離を基材フィルムの厚み寸法の2倍分と粘着層の厚みの合計分だけ大きく確保することができ、センサ層に対してグランド層が近いほど寄生容量が高くなって信号強度が落ちる傾向があるという不具合の防止・抑制を図ることができる。
【0072】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、基材フィルムの材料やサイズを変更したり、グランド部やシールド部の材料を変更してもよい。グランド部の材料としては、銀の他に、ECP(Electric Conductive paste)またはカーボンを適用することができる。また、グランド部はメッシュ状に限らず、べた塗りであってもよい。
【0073】
基材フィルムの印刷面におけるタッチ電極やグランド部の印刷箇所・印刷パターンも適宜変更することができる。
【0074】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…基材フィルム
2、2A、2B、2C…印刷面
3、3A、3B、3C…非印刷面
4…第1折り曲げ線
6…端子部分
7…粘着層(粘着材)
8…第2折り曲げ線
A…第1領域
B…第2領域
C…第3領域
G…グランド部
S…シールド部
T…タッチ電極
X…静電容量型タッチスイッチ