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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073581
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20230519BHJP
   B62D 25/10 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
B60K11/04 F
B62D25/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186125
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花田 航汰
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 明
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 悠人
(72)【発明者】
【氏名】錦織 昇
(72)【発明者】
【氏名】渡部 英知
(72)【発明者】
【氏名】門脇 広武
(72)【発明者】
【氏名】竹内 達也
【テーマコード(参考)】
3D004
3D038
【Fターム(参考)】
3D004AA07
3D004BA05
3D004CA03
3D038BA06
3D038BA07
3D038BB06
3D038BC10
(57)【要約】
【課題】ボンネットによってエンジンと共に覆う排気ガス後処理装置が発生する熱を、排熱孔から排気して周辺部品に熱害を及ぼさないように構成する場合に、この排熱孔をボンネット等に設ける際の外観の悪化や製作コストの悪化を防止することができる作業車両を提供する。
【解決手段】エンジンの後部寄り上方に設ける排気ガス後処理装置16をボンネットの後部寄りと遮熱板より前方のスペーサーカバー37の前部寄りによって覆うと共に、この排気ガス後処理装置に臨むスペーサーカバーの天板部と側板部に排熱孔を設けて、当該排気ガス後処理装置によって高温となった熱気を排熱孔37c、37dから機外に排気するように構成する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンや排気ガス後処理装置を覆うボンネットとステアリングハンドルや運転席を備える操縦部とを遮熱板によって仕切ると共に、この遮熱板の外周側をスペーサーカバーによって覆う作業車両において、前記エンジンの後部寄り上方に設ける排気ガス後処理装置をボンネットの後部寄りと遮熱板より前方のスペーサーカバーの前部寄りによって覆うと共に、この排気ガス後処理装置に臨むスペーサーカバーの天板部と側板部に排熱孔を設けて、当該排気ガス後処理装置によって高温となった熱気を排熱孔から機外に排気するように構成することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記エンジンの後部に排気ガス後処理装置の取付プレートを立設すると共に、この取付プレートにボンネットの後部を取付ける支持プレートを取付け、この支持プレートによって排気ガス後処理装置の後部寄り上方を覆って、前記スペーサーカバーの排熱孔から侵入する雨水が排気ガス後処理装置に降り掛からないように構成することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記排気ガス後処理装置の取付プレートやボンネットの後部を取付ける支持プレートに遮熱プレート片を設けて、ボンネットと操縦部とを仕切る遮熱板に構成すると共に、前記ボンネットの後部を取付ける支持プレートの後方に向かう下り傾斜面に後上方に向かう上遮熱プレート片を設けて、係る支持プレートの傾斜面と上遮熱プレート片によって形成される側面視で略V字状の空間をスペーサーカバーの排熱孔から侵入する雨水の貯留部に構成することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記雨水の貯留部の底部にドレンホースを設け、係るドレンホースによって貯留部に溜まる雨水を地上に導いて排水するように構成することを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記排熱孔を設ける天板部と側板部によって略逆U字状に形成するスペーサーカバーの前端部と後端部にシールを設け、係る前後のシールによってボンネットの後端部や操縦部の前端部との間に生じる隙間を無くすことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の作業車両。
【請求項6】
前記スペーサーカバーの天板部を後方に向けて下り傾斜させて設けることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや乗用型田植機等の主に農業用の作業車両に関し、詳しくは、エンジンと共に排気ガス後処理装置をボンネットによって覆う作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用の作業車両に搭載して機体の各部を駆動するエンジンは、燃焼効率が優れて燃費が良く低回転から力強さを発揮するディーゼルエンジンが主に採用される。しかし、ディーゼルエンジンは、その排気ガス中に含まれる有害な粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)が問題視され、現在ではコモンレール式燃料噴射システムや排気再循環システム(EGR)等のエンジンの燃焼技術の改良と、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)や尿素SCRといった排気ガス後処理装置の採用によって、この問題に対応している。
【0003】
ところで、前述の排気ガス後処理装置としてのディーゼルパティキュレートフィルタは、排気ガス中の粒子状物質(主に固形炭素の微粒子:煤(SOOT))をそのフィルタに捕集して大気中への排出を無くす。しかし、捕集した粒子状物質はその堆積した量が増えるとフィルタを目詰まりさせるため、ある程度溜まった段階で高温で再燃焼させて除去するといったフィルタの再生を行わなければならない。
【0004】
そして、このフィルタの再生を行う場合、DPFは高温となって発熱するためにエンジンや排気ガス後処理装置を覆うボンネット内の温度が高くなり、エンジンやDPFの部品(センサやゴム類などの)の耐熱温度を超える虞がある。そこで、DPFの上方に位置するボンネットの天板に排熱孔を設けて、この排熱孔からDPF周辺の熱を逃がし、DPFの高温化による周辺部品の熱害の発生を防止することが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、この場合、排熱孔の下方に設ける補強部材によってボンネットの強度を向上させると共に、この補強部材を断面略U字状に形成したプレート部材として、排熱孔から逆に侵入した雨等の水滴を補強部材が受けてDPFに水がかかることを防止して、フィルタの再生を阻害したり、水蒸気となって運転席からの前方視界を悪化させたり、或いは、DPFや周辺部品等に錆を発生させるといった虞を無くしている。
【0006】
なお、この作業車両では、ボンネットの後方に遮熱板とこの遮熱板の外周側を覆うスペーサーカバーとによって構成する隔壁を設け、この隔壁でボンネットと操縦部とを仕切ることによって操縦部における居住性を向上させる。つまり、エンジンの冷却水を冷やすラジエータはクーリングファンの吸引した冷却風との熱交換によって冷却水を冷やし、また、これにより高温となった冷却風(排風)はボンネット内においてエンジンから後方の操縦部側に流れて、そのままでは操縦部が高温となる虞がある。しかし、係る排風の流れを隔壁が遮断して操縦部が高温となることを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-117963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように作業車両においては、エンジン等を覆うボンネットと、ステアリングハンドルや運転席等を備える操縦部とを、遮熱板とその外周側を覆うスペーサーカバーによって構成する隔壁で仕切ったり、或いは、ボンネットと操縦部とをキャビンの前面パネル等によって仕切って、エンジン等を覆うボンネットの後方から排出される温風が操縦部に掛からないように遮蔽して、操縦部における運転者の居住性を向上させる。
【0009】
また、作業車両は、走行振動や車体振動等に対する運転者の乗り心地を改善するために操縦部を防振支持する。そのため、エンジン等をボンネットによって覆う原動部と運転席等を設ける操縦部は、その振動系を異にして互いの振動が伝わらないように離して設ける必要があり、前述の隔壁をエンジン側に設ける場合、そのスペーサーカバーは遮熱板等を隠して外観の向上を図ると共に、操縦部の前部との間に生ずる隙間をシール等の緩衝材を設けて塞いでいる。
【0010】
一方、このような環境化においてエンジンと共に排気ガス後処理装置をボンネット内に設けると、ボンネットの後部寄りは前述のように隔壁やキャビンの前面パネルによって塞いでいるので、排気ガス後処理装置が発生する熱がボンネットの後部寄り上方にこもって周辺部品に熱害を及ぼす。そこで、特許文献1に記載されているように、ボンネットの天板に排熱孔を設けてこのこもった熱気を排熱孔から排気することが提案されている。
【0011】
しかし、排気ガス後処理装置の上方に位置するボンネットの天板に排熱孔を設けると、排気ガス後処理装置周辺の温度を低下させることができるが、ボンネットの強度が排熱孔を設けることによって低下するため補強部材によってボンネットの強度を向上させる必要がある。また、ボンネツトに設ける排熱孔やこの排熱孔を塞ぐパンチングメタルが外観を悪化させたり、排熱孔や補強部材、或いはパンチングメタルがボンネットの製作コストを悪化させるという問題がある。
【0012】
また、ボンネットの排熱孔の下方に設ける補強部材を断面略U字状に形成したプレート部材として、排熱孔から逆に侵入した雨等の水滴を補強部材が受けて排気ガス後処理装置に水がかかることを防止しようとするが、断面略U字状の補強部材を用いなければならないと共に、中間プレートや傾斜プレート、更にボンネットの側壁又は側壁プレートを伝って水滴を機外に落下させる必要があり、果たして水が排気ガス後処理装置にかからなかったり水滴が機外に確実に落下するのか定かでない。
【0013】
そこで、本発明は係る問題点に鑑み、ボンネットによってエンジンと共に覆う排気ガス後処理装置が発生する熱を、排熱孔から排気して周辺部品に熱害を及ぼさないように構成する場合に、この排熱孔をボンネット等に設ける際の外観の悪化や製作コストの悪化を防止することができる作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の作業車両は、上記課題を解決するため第1に、エンジンや排気ガス後処理装置を覆うボンネットとステアリングハンドルや運転席を備える操縦部とを遮熱板によって仕切ると共に、この遮熱板の外周側をスペーサーカバーによって覆う作業車両において、前記エンジンの後部寄り上方に設ける排気ガス後処理装置をボンネットの後部寄りと遮熱板より前方のスペーサーカバーの前部寄りによって覆うと共に、この排気ガス後処理装置に臨むスペーサーカバーの天板部と側板部に排熱孔を設けて、当該排気ガス後処理装置によって高温となった熱気を排熱孔から機外に排気するように構成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の作業車両は第2に、前記エンジンの後部に排気ガス後処理装置の取付プレートを立設すると共に、この取付プレートにボンネットの後部を取付ける支持プレートを取付け、この支持プレートによって排気ガス後処理装置の後部寄り上方を覆って、前記スペーサーカバーの排熱孔から侵入する雨水が排気ガス後処理装置に降り掛からないように構成することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の作業車両は第3に、前記排気ガス後処理装置の取付プレートやボンネットの後部を取付ける支持プレートに遮熱プレート片を設けて、ボンネットと操縦部とを仕切る遮熱板に構成すると共に、前記ボンネットの後部を取付ける支持プレートの後方に向かう下り傾斜面に後上方に向かう上遮熱プレート片を設けて、係る支持プレートの傾斜面と上遮熱プレート片によって形成される側面視で略V字状の空間をスペーサーカバーの排熱孔から侵入する雨水の貯留部に構成することを特徴とする。
【0017】
そして、本発明の作業車両は第4に、前記雨水の貯留部の底部にドレンホースを設け、係るドレンホースによって貯留部に溜まる雨水を地上に導いて排水するように構成することを特徴とする。また、本発明の作業車両は第5に、前記排熱孔を設ける天板部と側板部によって略逆U字状に形成するスペーサーカバーの前端部と後端部にシールを設け、係る前後のシールによってボンネットの後端部や操縦部の前端部との間に生じる隙間を無くすことを特徴とする。その上、本発明の作業車両は第6に、前記スペーサーカバーの天板部を後方に向けて下り傾斜させて設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の作業車両によれば、エンジンや排気ガス後処理装置を覆うボンネットとステアリングハンドルや運転席を備える操縦部とを遮熱板によって仕切ると共に、この遮熱板の外周側をスペーサーカバーによって覆う作業車両において、前記エンジンの後部寄り上方に設ける排気ガス後処理装置をボンネットの後部寄りと遮熱板より前方のスペーサーカバーの前部寄りによって覆うと共に、この排気ガス後処理装置に臨むスペーサーカバーの天板部と側板部に排熱孔を設けて、当該排気ガス後処理装置によって高温となった熱気を排熱孔から機外に排気するように構成する。
【0019】
そのため、エンジンの後部寄り上方に設ける排気ガス後処理装置が発生する熱によって高温となった熱気を、エンジンのクーリングファンによって後方に流れる排風に乗せて、その後方の操縦部と仕切る遮熱板より前方のスペーサーカバーの天板部と側板部に設ける排熱孔から速やかに機外に排気することができ、これによりボンネット内の温度を下げて排気ガス後処理装置の周辺部品等に対する熱害を防止することができる。
【0020】
また、熱気を機外に排気する排熱孔は、ボンネットと操縦部とを仕切る遮熱板の外周側を覆うスペーサーカバーの排気ガス後処理装置に臨む天板部と側板部に設けるので、スペーサーカバーが排熱孔を設けることによって強度的に劣ることになっても、スペーサーカバーは遮熱板等を隠して外観の向上を図る、云わば化粧カバーの役割を果たすもので、元々あまり強度が問題になることはないから補強材を用いて補強するまでもない。さらに、安全上において排熱孔を手等が入らない複数のスリット状の細長い孔等によって形成すれば、スペーサーカバーに変化を与えて外観を向上させる手段となすことができる。
【0021】
また、本発明の作業車両によれば、前記エンジンの後部に排気ガス後処理装置の取付プレートを立設すると共に、この取付プレートにボンネットの後部を取付ける支持プレートを取付け、この支持プレートによって排気ガス後処理装置の後部寄り上方を覆って、前記スペーサーカバーの排熱孔から侵入する雨水が排気ガス後処理装置に降り掛からないように構成する。
【0022】
即ち、エンジンの後部寄り上方に設ける排気ガス後処理装置は、ボンネットの後部寄りと遮熱板より前方のスペーサーカバーの前部寄りによって覆い、また、スペーサーカバーの天板部に設ける排熱孔は排気ガス後処理装置の後部寄りの上方に臨むから、このスペーサーカバーの天板部に設ける排熱孔に入った雨水は、排気ガス後処理装置の後部寄りに降り掛かる。
【0023】
しかし、排気ガス後処理装置の後部寄り上方はボンネットの後部を取付ける支持プレートによって覆っているので、雨水が排気ガス後処理装置に降り掛かることを防止することができ、例えば、フィルタの再生に影響を与えたり、前方視界を悪化させることもない。しかも、ボンネットの支持プレートによって排気ガス後処理装置に雨水が降り掛からないようにすることができ、雨水の降り掛かり防止用の新たなカバーを設ける必要がないから好都合である。
【0024】
さらに、本発明の作業車両によれば、前記排気ガス後処理装置の取付プレートやボンネットの後部を取付ける支持プレートに遮熱プレート片を設けて、ボンネットと操縦部とを仕切る遮熱板に構成すると共に、前記ボンネットの後部を取付ける支持プレートの後方に向かう下り傾斜面に後上方に向かう上遮熱プレート片を設けて、係る支持プレートの傾斜面と上遮熱プレート片によって形成される側面視で略V字状の空間をスペーサーカバーの排熱孔から侵入する雨水の貯留部に構成する。
【0025】
そのため、ボンネットの略々台形状をなす後面を隙間なく覆う遮熱板を、排気ガス後処理装置をエンジンの後部に設けるために設ける取付プレートと、ボンネットの後部をエンジンに取付けるために設ける支持プレートの各板面を利用しながら、また、残る隙間を遮熱プレート片を用いて埋めることによってその材料費を削減して形成することができる。
【0026】
また、ボンネットの後部を取付ける支持プレートに降り掛かったスペーサーカバーの排熱孔から侵入した雨水が、支持プレートを案内部材として例えば防水対策のされていないセンサー類等に降り掛かってトラブルを生じないように、その支持プレートに降り掛かった雨水を貯め置く貯留部を設ける。そして、この貯留部を支持プレートの後方に向かう下り傾斜面に後上方に向かう上遮熱プレート片を設けて、係る支持プレートの傾斜面と上遮熱プレート片によって形成される側面視で略V字状の空間を雨水の貯留部に構成することができる。
【0027】
そして、本発明の作業車両によれば、前記雨水の貯留部の底部にドレンホースを設け、係るドレンホースによって貯留部に溜まる雨水を地上に導いて排水するように構成する。そのため、貯留部から雨水が溢れ出す前にドレンホースを用いて地上に導いて排水することができ、雨水や洗車水が周辺部品等に溜まってそれを錆させたりする不具合の発生を未然に防止することができる。
【0028】
また、本発明の作業車両によれば、前記排熱孔を設ける天板部と側板部によって略逆U字状に形成するスペーサーカバーの前端部と後端部にシールを設け、係る前後のシールによってボンネットの後端部や操縦部の前端部との間に生じる隙間を無くす。そのため、スペーサーカバーの前端部に設けるシールはボンネットの開閉に伴う緩衝防止のために設ける隙間を無くし、また、スペーサーカバーの後端部に設けるシールは操縦部との振動系の相違に基づく隙間を無くすことができ、このような隙間をシールによって塞ぐことによって前述の排熱孔以外からのボンネット内への雨水の侵入を防ぐことができる。
【0029】
その上、本発明の作業車両によれば、前記スペーサーカバーの天板部を後方に向けて下り傾斜させて設ける。そのため、排気ガス後処理装置をエンジンの後部寄り上方に設けることによってボンネットの後部寄りの高さが高くなって、スペーサーカバーとの間に段差が生ずる場合でもこの段差をスペーサーカバーの天板部を後方に向けて下り傾斜させて設けることによって無くすことができると共に、スペーサーカバーの天板部の後端寄りと操縦部の前面が雨水を左右に流す排水路の役割を果たし、排熱孔への雨水の侵入を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】トラクタの正面図である。
図2】トラクタの側面図である。
図3】エンジンとエンジンに設けるDPFの斜視図である。
図4】ボンネットの開放状態を示す斜視図である。
図5】運転席側から見た操縦部の斜視図である。
図6】原動部の平面図である。
図7】原動部の右側後方から見た斜視図である。
図8】原動部の左側後方から見た斜視図である。
図9】スペーサーカバーの斜視図である。
図10】原動部の縦断面図である。
図11】原動部の後部寄りの縦断面図である。
図12】スペーサーカバーを原動部と操縦部の間に設ける要部の縦断面図である。
図13】遮熱板の構造を示す斜め前方から見た斜視図である。
図14】遮熱板の構造を示す斜め後方から見た斜視図である。
図15】第2実施形態のトラクタの上部寄りを示す正面図である。
図16】第2実施形態のトラクタの原動部寄りを示す平面図である。
図17】第2実施形態のトラクタの原動部寄りを示す側面図である。
図18】第2実施形態のスペーサーカバーを原動部と操縦部の間に設ける要部の縦断面図である。
図19】燃料フィルタとウォータセパレータの取付状態を示し、(a)はカバーで覆った状態を示す斜視図、(b)はカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図5に示すように作業車両としての農業用のトラクタ1は、エンジン2とフロント及びリヤトランスミッションケース3、4を一体的に連結して車体(機体)を構成する。また、エンジン2の下部寄り左右に固定して前方に延びるシャシブラケット5の下面側には、フロントアクスルケース6を左右揺動自在に軸支する。そして、このフロントアクスルケース6の左右端に前車軸ケース7を夫々取り付け、各前車軸ケース7は前車軸8を軸支して、この前車軸8に取り付ける左右の前輪9を操舵自在に設ける。
【0032】
一方、リヤトランスミッションケース4の左右に固定するリヤアクスルケースには夫々後車軸10を軸支して、各後車軸10に左右の後輪11を取り付ける。また、車体の後部には、トップリンク12及び左右のロワリンク13からなる周知の三点リンク機構を設ける。この三点リンク機構は、ロータリ耕耘装置等の作業機を機体に連結するものであり、作業機はリヤトランスミッションケース4の上部に取り付けて、その内部に昇降シリンダを設けるシリンダケースの左右リフトアームと、各リフトアームの先端とロワリンク13の中途にそれぞれ一端を連結したリフトロッドを介して昇降自在に設ける。
【0033】
さらに、前述のエンジン2は図3に示すように水冷4サイクルディーゼルエンジンを採用し、このエンジン2は排気ガス規制の強化に伴って、完全燃焼で発生する窒素酸化物や不完全燃焼で発生する煤などの粒子状物質の発生を低減するコモンレール式燃料噴射システム、過給機、及び排出ガス再循環システム(EGR)等を採用し、また、エンジン本体で浄化し切れなかった窒素酸化物や粒子状物質は、排気ガス後処理装置としてのディーゼル酸化触媒(DOC)とディーゼルパティキュレートフィルタ(ディーゼル微粒子捕集フィルター:DPF)を用いて除去する。
【0034】
そのため、ディーゼルエンジン2はそのシリンダヘッドの後部に取付プレート14を立設し、この取付プレート14の前面上部寄りにホルダ15を介してDOCとDPFを内蔵する円筒状のDPFケース16をその長手方向が左右方向となる横向きに取り付けて設ける。従って、エンジン2から排出されるガスはこのエンジン2の後部寄り上方に設けるDPFケース16の左下寄りの入口側から導入して、その後、DPFケース16の右前寄りの出口側から図示しないテールパイプを介して機外に排出する。
【0035】
なお、前述のシャシブラケット5の上面側には底板やステーからなる補機ブラケット17を取り付け、この補機ブラケット17にはエンジン2の冷却水を冷やすラジエータ18、エンジン2に清浄な空気を供給するエアクリーナ19、オイルクーラ20、インタークーラ21、バッテリー22等を設ける(図10参照)。
【0036】
また、係るエンジン2やDPFケース16、或いはエンジンの補機類はボンネット23によって覆っており、このボンネット23は略矩形状になす天井部23aと左右の側板部23bと、その前面に通気口24とヘッドランプ25を備えるインナーグリル26とアウターグリル27、及びその下方に設ける前面カバー28を取付金具等を用いて一体に連結して形成する。そして、ボンネット23の天井部23aの内側後部に支点軸29を備えるヒンジ30の前部プレート30aをボルトで取り付けると共に、ヒンジ30の後部プレート30bを支持プレート31の上部にボルトで取り付ける(図11参照)。
【0037】
さらに、前述の支持プレート31は、DPFケース16の取付プレート14の上部にボルトで取り付けるから、結局、ボンネット23はエンジン2の後部寄り上方に設けるDPFケース16の真上に位置する左右方向の支点軸29回りに回動自在に支持し、その前部寄りは図4に示すように開閉自在となし、ボンネット23の前面カバー28と補機ブラケット17に設ける図示しないピンとボンネットキャッチとの係合を外して、ボンネット23の前部を持ち上げると、エンジン2の上部とボンネット23の天井部23aに亘って設けるガススプリング32によってボンネット23を開放状態に保持することができる。
【0038】
また、係るエンジン2やDPFケース16等をボンネット23によって覆う原動部の後方には操縦部を設ける。また、この操縦部は運転席33をその後部寄り中央に設けると共に、フロントトランスミッションケース3やリヤアクスルケースの上方に防振支持して設けるフロアフレーム34と、フロアフレーム34に取り付けて後輪11の前部寄りから上部寄りを覆う左右のフェンダ35と、運転席33の後方に起倒自在に立設して設ける安全フレーム36等から構成する。
【0039】
そして、前述のフロアフレーム34の前部には、後述するボンネット23の後方に設ける後部カバー(スペーサーカバー)37に対面させて門型のコラムフレーム38を立設する。また、このコラムフレーム38の上部寄りに設けるコラム取付ブラケットに左右の前輪9を操舵するステアリングハンドル39をチルト調節自在に設け、さらに、ステアリングハンドル39によって作動させる全油圧式パワーステアリングユニットはフロントトランスミッションケース3の前部中央寄り上面に取り付けて設ける。
【0040】
さらに、図5に示すようにステアリングハンドル39の下方には、コンビネーションスイッチ40や作業機を昇降させるクイックアップレバー41、或いはエンジンコントロールレバー42や前後進レバー43を設け、また、ステアリングシャフトやステアリングコラムはその全体をカバー44によって覆う。さらに、コラム取付ブラケットには運転席33から見て左側にクラッチペダダル45を、また、右側に左右のブレーキペダルを各々垂下させて設け、さらに、中央寄りには駐車ブレーキレバー46を設ける。
【0041】
そして、ステアリングハンドル39前方のコラム取付ブラケットには自らを覆うカバーを設け、このカバーは上部寄りに設けるパネルカバー47と下部寄りの後面を覆うリヤパネルカバー48によって構成する。また、その内、パネルカバー47の上部中央寄り後面に設ける開口部にはメーターパネル49を取り付け、作業者が運転席33に座って前方を見た際に、ステアリングハンドル39のリムとハブとの間からメーターパネル49を視認することができ、その際にメーターパネル49の盤面は作業者の前方視線に対して略直交するようにパネルカバー47に傾けて設ける。
【0042】
なお、パネルカバー47のメーターパネル49を取り付ける開口部の周縁部は後方に盛り上がるバイザー(日除け)に形成しており、全体としてメーターパネル49の中央寄り上面は、前方に向けて下り傾斜させている。また、メーターパネル49を取り付ける開口部の後方にはステアリングハンドル39のカバー44が嵌る開口の左右に各種の自動制御(倍速、バックアップ、旋回アップ、・・)を入り切りするスイッチとその入り切り状態を表示するLEDを備える左フロントユニットと、メーターパネル49に備える液晶ディスプレイの表示画面を設定する操作スイッチ等を備える右フロントユニット50を設ける。
【0043】
さらに、左フロントユニットの上方側と下方側となるパネルカバー47にはハザードランプスイッチ51とホーンスイッチを設け、右フロントユニット50の下方側となるパネルカバー47にはスタータスイッチ52を設ける。また、トラクタ1は以上説明したスイッチや操作レバー等の他に、運転席33の左右側方に設けるパネルやフロアフレーム34の床面に走行並びにPTOの変速レバーやペダル、並びに作業機の昇降を行うポジションレバーや各種スイッチ及びボリューム等の操作具を適切な場所に分散して配置する。
【0044】
以上、トラクタ1の概要について説明したが、次にディーゼルエンジン2に備えるディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)の再生と、その再生に関するスイッチ等について説明すると、先ず、ディーゼルパティキュレートフィルタは、ディーゼルエンジン2の排気ガス中に含まれる煤(SOOT)を捕集する。また、ディーゼルエンジン2を制御する電子制御装置(ECU)は、DOCの入口やDPFの入口と出口に設ける排気温度センサ53~55や排気圧の差圧センサ56等に基づいてディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した煤の量(堆積量割合)を推定する。
【0045】
そして、係るエンジン2のECUは、煤の堆積量割合(パーセント)が例えば、0~80未満であればエンジン2を通常運転として扱い、80以上であれば自動再生要求を出す。ここで、自動再生要求が出されてエンジン回転数が高回転で冷却水温が高ければ、コモンレール式燃料噴射システムはポスト噴射によってその排気管中に未燃燃料を混入させ、この未燃燃料をディーゼル酸化触媒(DOC)は酸化燃焼させて、ディーゼルパティキュレートフィルタを通過する排気温度を上昇させ、これによりディーゼルパティキュレートフィルタに堆積した煤は再燃焼してフィルタから除去することができる。
【0046】
また、エンジン2のECUは、上述の自動再生に関らず煤の堆積量割合が100以上であれば手動再生要求を出し、この場合に100~120未満である前期であれば、エンジン出力の制限制御は行わないが、120~140未満である後期であれば、エンジン出力を50パーセントとして最高回転を1500rpmに制限する。そして、作業者によって手動再生が指令されると、自動再生に比べて主噴射やポスト噴射の噴射量を多くして、排気温度をより高めてディーゼルパティキュレートフィルタの再生速度を加速させる。
【0047】
さらに、エンジン2のECUは、煤の堆積量割合が140以上であれば過堆積要求を出し、この場合に140~160未満である前期であれば、エンジン出力の制限制御として、先ず第1段階はエンジン出力を50パーセントとして回転制限を1500rpmとし、7200秒後の第2段階では回転制限を1200rpmとする。また、160以上である後期で、その第1段階は同じくエンジン出力を50パーセントとして回転制限を1500rpmとし、3600秒後の第2段階では回転制限を1200rpmとする。
【0048】
なお、エンジン2のECUがディーゼルパティキュレートフィルタの再生を行うと、排出ガスやテールパイプ等が高温となり、上述の自動再生が換気の悪い屋内や可燃物と近接する場所(木陰・ビニールハウス等)で行われると火災やガス中毒等の虞があるので、このような場合には作業者が自動再生を禁止する指令を出すことができる。また、手動再生を指令する場合、風通しの良い屋外で回りに燃えやすいものがない安全な広い場所にトラクタ1を移動し、また、駐車ブレーキをかけて停車させた後、エンジン2をアイドリング状態としなければ手動再生を行わせることができない。
【0049】
さらに、ディーゼルパティキュレートフィルタの自動再生や手動再生を適切に行うことが出来ずに上述の過堆積要求が出されると、作業者ではディーゼルパティキュレートフィルタの再生処理が不可能となるので作業を速やかに中止して、サービスマン等に任せてサービスツール等を用いて再生を試みるか、最悪の場合、ディーゼルパティキュレートフィルタの修理や交換作業を行うことになる。
【0050】
そして、トラクタ1は図5に示すように、以上のようなディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関して、パネルカバー47のメーターパネル49にDPFの状況(要求/再生/異常)を報知するDPF再生ランプとエンジン故障ランプを設ける。また、手動再生の指令を行う手動再生スイッチと再生禁止の指令を行う再生禁止スイッチ、並びに手動再生の要求と実行を報知する手動再生ランプと再生禁止の実行を報知する再生禁止ランプを設ける。
【0051】
また、上述の手動再生スイッチと手動再生ランプ、及び再生禁止スイッチと再生禁止ランプは夫々ランプとスイッチを一体的に纏めたLED球付押しボタンスイッチを使用し、この2つの手動再生スイッチ(ランプ付)57と再生禁止スイッチ(ランプ付)58は、合成樹脂製のサブパネルカバー59の後面に取り付ける。そして、係るサブパネルカバー59はパネルカバー47の前部上方の中央寄りに設け、それによって、パネルカバー47のメーターパネル49やサブパネルカバー59に設けるスイッチやランプが、運転席33に座った作業者の前方視界内に入るようになす。
【0052】
以上、ディーゼルエンジン2に備えるDPFの再生と、その再生に関するスイッチ等について説明したが、このDPFの再生に伴って前述のDPFケース16は発熱し、また、それによりDPFケース16を取り巻く空気は加熱されて、DPFケース16を設ける特にボンネット23の後部寄り上方とスペーサーカバー37の前部寄り上方には、この加熱された熱気がこもって周辺のセンサやゴム部品に熱害を及ぼす。そこで、この対策について以下に説明する。
【0053】
先ず、エンジン2やDPFケース16を覆うボンネット23の後部と、操縦部のハンドルフレーム38との間には遮熱板を設けて、両者を仕切ることによってエンジン2のクーリングファン60が排出した温かい冷却風(排風)が操縦部側に流れてその居住性を阻害しないようにする。そして、この遮熱板は図6乃至図12に示すようにエンジン2の後部に立設するDPFケース16の取付プレート14とボンネット23の後部を支持する支持プレート31を兼用して用いると共に、これらにボルトで取り付ける左右の遮熱プレート片60と支持プレート31に固着して設ける上遮熱プレート片61で略台形状に形成する。
【0054】
なお、図13及び図14に示すように左右の遮熱プレート片60は、その上部に設ける取付部60aを支持プレート31に固着する左右の台座31aにボルトで取り付けると共に、その下部に設ける取付部60bを左右のカバー取付ブラケット62にボルトで取り付け、また、この左右のカバー取付ブラケット62はDPFケース16の取付プレート14の下部寄りにボルトで取り付けている。さらに、支持プレート31に固着する左右の台座31aは後方に延長して、この延長部31bに操縦部のコラムフレーム38の上部と連結する防振ゴム63を設ける。
【0055】
また、このボンネット23の後部と操縦部のコラムフレーム38との間に設ける遮熱板の外周側は、ボンネット23の後方に設けるやや広い前後幅を備えるスペーサーカバー37で覆う。そして、この場合に鋼板を折り曲げて略逆U字状に形成するスペーサーカバー37には、その内側の前面側に図示しないアングル状の4つの金具を固着する。
【0056】
一方、支持プレート31に固着する左右の台座31aに長穴を備えて前後方向に位置調節自在に上部金具64を4本のボルトb1で取り付ける。また、左右のカバー取付ブラケット62に同じく前後方向に位置調節自在に下部金具65をボルトで取り付ける。そして、この上部金具64と下部金具65の前面にスペーサーカバー37に固着する金具の前面を重合させて4本のボルトb2でスペーサーカバー37の前部寄りを取り付ける。また、左右の下部金具65の外側面にスペーサーカバー37の下部を当接させて2本のボルトb2で取り付ける。
【0057】
そして、係るスペーサーカバー37のDPFケース16に臨む天板部37aと左右の側板部37bに排熱孔37c、37dを設けて、前述のDPF16によって高温となった熱気をこの排熱孔37c、37dから機外に排気するように構成する。より詳細に説明すると、スペーサーカバー37の天板部37aにはその長手方向を左右方向となすスリット状に細長く穿設する8個の排熱孔37cを設ける。また、スペーサーカバー37の左右の側板部37bの夫々にはその長手方向を斜め後上方となすスリット状に細長く穿設する7個の排熱孔37dを設ける。
【0058】
また、スペーサーカバー37の前端部と後端部にウエザーストリップによって構成するシール66、67を装着して設け、係る前後のシール66、67によって開閉するボンネット23の後端部や操縦部の前端部(コラムフレーム38)との間に生じる隙間を塞いで無くす。さらに、支持プレート31に上部金具64を取り付ける4本のボルトb1を取り外すことができるように穿設するスペーサーカバー37の天板部37aの穴をキャップ68で塞ぐ。
【0059】
そして、ボンネット23の後部を支持する支持プレート31は、ヒンジ30の後部プレート30bを取り付ける上部からDPFケース16の取付プレート14に取り付ける下部に至る中間部を後方に向かう下り傾斜面31bに形成してDPFケース16の後部寄りを上方から覆う。また、支持プレート31の下り傾斜面31bの中途に後上方に向かう上遮熱プレート片61を固着する。さらに、この上遮熱プレート片61の左右端側は支持プレート31の台座31aで塞ぐ。
【0060】
従って、スペーサーカバー37の天板部37aに設ける排熱孔37cから侵入する雨水、或いは洗車水は、支持プレート31の上部から下り傾斜面31bにかけて降り掛かり、最終的に支持プレート31の傾斜面31bと上遮熱プレート片61によって形成される側面視で略V字状の空間(貯留部)69に貯まる。また、上遮熱プレート片61の左右方向中央の下部寄りに(貯留部69の底部に)穴を穿設して、この穴にドレンホース70の始端部を後方からグロメット71を介して貯留部69に至るように瞬間接着剤を用いて装着する。
【0061】
さらに、ドレンホース70の終端寄りは取付プレート14の後方から適宜取付けバンドによってその配管箇所を選びながらエンジン2の左後方の側方に導き、最終的に貯留部69に貯まる雨水を地上に向けて排水するように構成する。なお、ボンネット23の左右下方には、補機ブラケット17に取り付けて立ち上がる固定カバー71と、ラジエータ近傍の補機ブラケット17にその前部をノブ付ボルト72で取り付けると共に、前述のカバー取付ブラケット62のピン62aにその後端部に設ける取付穴を差し込んで固定するサイドカバー72を設ける。
【0062】
そのため、エンジン2のクーリングファン73はボンネット23の通気口24から冷却風を吸引し、その冷却風はラジエータ18のコア部においてエンジン2の冷却水と熱交換して熱風となり、この熱風となった排風はボンネット23内に設けるエンジン2の周囲を通って後部に設ける遮熱板に至る。そして、遮断板は排風の操縦部側への流れを遮断するから、排風の大半はエンジン2の下方側やサイドカバー72に設ける排風孔を通って機外に排出される。
【0063】
しかし、エンジン2を設けるボンネット23内は排風によって圧力(気圧)が高くなっており、排風の一部はエンジン2の後部寄り上方に設けるDPFケース16の周囲に流れて、さらにスペーサーカバー37の天板部37aと左右の側板部37bに設ける排熱孔37c、37dを通って機外に排出される。従って、DPFの再生に伴ってDPFケース16が発熱し、また、それによりDPFケース16を取り巻く空気が加熱されると、この加熱された熱気は排風と共に排熱孔37c、37dを通って機外に排出され、周辺のセンサやゴム部品に熱害を及ぼす虞を無くすことができる。
【0064】
以上、本発明の特徴とするエンジン2の排気ガス後処理装置の熱害対策に係る第1の実施形態について説明したが、例えばエンジン2を4気筒から3気筒に変更すると共に操縦部をキャビンによって覆う第2の実施形態に係るトラクタ1について説明すると、図15乃至図18に示すようにこのトラクタ1は、運転席33やステアリングハンドル39等を設ける操縦部をキャビン73によって覆う。そして、キャビン73はフロントトランスミッションケース3やリヤアクスルケースに防振支持して車体に取り付ける。
【0065】
そして、エンジン2や排気ガス後処理装置としてのDPFケース16をボンネット23によって覆う構成については第1の実施形態のトラクタ1と何等変わることはないが、やや小型となす型式であるので、遮熱板の外周側を覆うスペーサーカバー37の後部寄りをキャビン73の前面に密着させて、その天板部37aを前方にそのまま延長するとボンネット23は兼用して設けるので、ボンネット23の天井部23aの後端部とスペーサーカバー37の天板部37aの前端部との間に段差が生じ、この段差によって生まれる隙間を熱気の排熱孔として利用することもできる。
【0066】
しかし、この段差からボンネット23内へ雨水や洗車水が侵入する虞があるから、スペーサーカバー37の天板部37aの前端部を閉じたボンネット23の天井部23aの後端部から後方に向けて下り傾斜させてキャビン73の前面に至らせる。そのため、排気ガス後処理装置をエンジン2の後部寄り上方に設けることによってボンネット23の後部寄りの高さが高くなって、スペーサーカバー37との間に段差が生ずる場合でも、この段差をスペーサーカバー37の天板部37aを後方に向けて下り傾斜させて設けることによって無くすことができ、また、スペーサーカバー37の形状変更によって外観に変化を与えて美観を向上させる。
【0067】
また、スペーサーカバー37の天板部37aが下り傾斜するため、排熱孔37cから熱気が後方に向けて抜けやすくなると共に、キャビン73のフロントウィンドウ74に設けるワイパー75の揺動支点位置を低くすることができるので、大き目のワイパー75を取り付けて運転者の前方視界の確保に務めることができる。
【0068】
さらに、スペーサーカバー37の後端部に装着するウエザーストリップ67は、通常操縦部のコラムフレーム38の門型枠に密着するように、その母体となるスペーサーカバー37の形状をコラムフレーム38に合わせなければならないといった制約がある。しかし、今回スペーサーカバー37の後端部に装着するウエザーストリップ67はキャビン73のフロントウィンドウ74のガラス面と密着するように変更するので、コラムフレーム38の形状を変えずにスペーサーカバー37の形状を決定することができる。
【0069】
また、スペーサーカバー37の天板部37aが下り傾斜して、そのウエザーストリップ67を介してキャビン73のフロントウィンドウ74のガラス面に密着するので、係るスペーサーカバー37の天板部37aの後端寄りと操縦部の前面が雨水を左右に流す排水路の役割を果たし、これによって排熱孔37cへの雨水の侵入を少なくすることができる。
【0070】
なお、図19に示すように操縦部の下方に設ける左右の燃料タンク76に貯留する軽油をエンジン2に供給するエンジンの燃料供給経路には燃料フィルタ77と燃料の中に含まれている水分を分離するウォータセパレータ78を設ける。そして、これらの燃料フィルタ77とウォータセパレータ78は燃料フィルタの交換や水抜きを簡単に行えるように右前輪8の後方となる操縦部のフレームにブラケットを介して取り付け、また、ボルトで着脱自在なカバー79によってこれらを覆っている。
【0071】
しかし、走行に伴って右前輪8に付着した泥がカバー79の上面に堆積する虞があって、洗車時にこの堆積した泥を落とすといった手間が掛かるので、カバー79の上面79aを前方に向けて下るように傾斜させて設け、洗車時に堆積した泥土が上面79aから前面79bを伝って地上に滑り落ち易くする。また、図3に示すようにDPFケース16とエンジン2の上部との間にカバー80を設けてDPFケース16からの熱気を遮ったり、図4に示すようにDPFケース16の左側方寄りに設けるエギゾーストエルボ等を覆うカバー81を設けて、ボンネット23を開いた際にこのカバー81によって作業者が高温部に触れて火傷することを防止する。
【0072】
さらに、スペーサーカバー37の天板部37aに設けるキャップ68を取り除いて4本のボルトb1を取り外したり、ボンネット23を開いて下部金具65の前面や外側面に取り付けるボルトb2を取り外すと、スペーサーカバー37を取り外すことができる。また、この状態でヒンジ30の後部プレート30bを支持プレート31に取り付けているボルトを取り外し、さらに、ボンネット23の天井部23aに取り付けるガススプリング32を取り外すとボンネット23を取り外すことができる。そのため、このようにボンネット23を取り外すと、新しいDPF16の交換やエンジン2のメンテナンスが行い易くなる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここで本発明の特徴とする排気ガス後処理装置の熱害対策について纏めると先ず、トラクタ1はエンジン2や排気ガス後処理装置16を覆うボンネット23とステアリングハンドル39や運転席33を備える操縦部とを遮熱板によって仕切ると共に、この遮熱板の外周側をスペーサーカバー37によって覆う。また、エンジン2の後部寄り上方に設ける排気ガス後処理装置16をボンネット2の後部寄りと遮熱板より前方のスペーサーカバー37の前部寄りによって覆うと共に、この排気ガス後処理装置16に臨むスペーサーカバー37の天板部37aと側板部37bに排熱孔37c、37dを設けて、当該排気ガス後処理装置16によって高温となった熱気を排熱孔37c、37dから機外に排気するように構成する。
【0074】
そのため、エンジン2の後部寄り上方に設ける排気ガス後処理装置16が発生する熱によって高温となった熱気を、エンジン2のクーリングファン73によって後方に流れる排風に乗せて、その後方の操縦部と仕切る遮熱板より前方のスペーサーカバー37の天板部37aと側板部37bに設ける排熱孔37c、37dから速やかに機外に排気することができ、これによりボンネット2内の温度を下げて排気ガス後処理装置16の周辺部品等に対する熱害を防止することができる。
【0075】
また、熱気を機外に排気する排熱孔37c、37dは、ボンネット2と操縦部とを仕切る遮熱板の外周側を覆うスペーサーカバー37の排気ガス後処理装置16に臨む天板部37aと側板部37bに設けるので、スペーサーカバー37が排熱孔37c、37dを設けることによって強度的に劣ることになっても、スペーサーカバー37は遮熱板等を隠して外観の向上を図る、云わば化粧カバーの役割を果たすもので、元々あまり強度が問題になることはないから補強材を用いて補強するまでもない。さらに、安全上において排熱孔37c、37dを手等が入らない複数のスリット状の細長い孔等によって形成すれば、スペーサーカバー37に変化を与えて外観を向上させる手段となすことができる。
【0076】
また、トラクタ1は、エンジン2の後部に排気ガス後処理装置16の取付プレート14を立設すると共に、この取付プレート14にボンネット2の後部を取付ける支持プレート31を取付け、この支持プレート31によって排気ガス後処理装置16の後部寄り上方を覆って、スペーサーカバー37の排熱孔37cから侵入する雨水が排気ガス後処理装置16に降り掛からないように構成する。
【0077】
即ち、エンジン2の後部寄り上方に設ける排気ガス後処理装置16は、ボンネット23の後部寄りと遮熱板より前方のスペーサーカバー37の前部寄りによって覆い、また、スペーサーカバー37の天板部37aに設ける排熱孔37cは排気ガス後処理装置16の後部寄りの上方に臨むから、このスペーサーカバー37の天板部37aに設ける排熱孔37cに入った雨水は、排気ガス後処理装置16の後部寄りに降り掛かる。
【0078】
しかし、排気ガス後処理装置16の後部寄り上方はボンネット23の後部を取付ける支持プレート31によって覆っているので、雨水が排気ガス後処理装置16に降り掛かることを防止することができ、例えば、フィルタの再生に影響を与えたり、水蒸気の発生によって前方視界を悪化させることもない。しかも、ボンネット23の支持プレート31によって排気ガス後処理装置16に雨水が降り掛からないようにすることができ、雨水の降り掛かり防止用の新たなカバーを設ける必要がないから好都合である。
【0079】
さらに、トラクタ1は、排気ガス後処理装置16の取付プレート14やボンネット23の後部を取付ける支持プレート31に遮熱プレート片60、61を設けて、ボンネット23と操縦部とを仕切る遮熱板に構成すると共に、ボンネット23の後部を取付ける支持プレート31の後方に向かう下り傾斜面31bに後上方に向かう上遮熱プレート片61を設けて、係る支持プレート31の傾斜面31bと上遮熱プレート片61によって形成される側面視で略V字状の空間をスペーサーカバー37の排熱孔37cから侵入する雨水の貯留部69に構成する。
【0080】
そのため、ボンネット23の略々台形状をなす後面を隙間なく覆う遮熱板を、排気ガス後処理装置16をエンジン2の後部に設けるために設ける取付プレート14と、ボンネット23の後部をエンジン2に取付けるために設ける支持プレート31の各板面を利用しながら、また、残る隙間を遮熱プレート片60、61を用いて埋めることによってその材料費を削減して形成することができる。
【0081】
また、ボンネット23の後部を取付ける支持プレート31に降り掛かったスペーサーカバー37の排熱孔37cから侵入した雨水が、支持プレート31を案内部材として例えば防水対策のされていないセンサー類等に降り掛かってトラブルを生じないように、その支持プレート31に降り掛かった雨水を貯め置く貯留部69を設ける。そして、この貯留部69を支持プレート31の後方に向かう下り傾斜面31bに後上方に向かう上遮熱プレート片61を設けて、係る支持プレート31の傾斜面31bと上遮熱プレート片61によって形成される側面視で略V字状の空間を雨水の貯留部69に構成することができる。
【0082】
そして、トラクタ1は、雨水の貯留部69の底部にドレンホース70を設け、係るドレンホース70によって貯留部69に溜まる雨水を地上に導いて排水するように構成する。そのため、貯留部69から雨水が溢れ出す前にドレンホース70を用いて地上に導いて排水することができ、雨水や洗車水が周辺部品等に溜まってそれを錆させたりする不具合の発生を未然に防止することができる。なお、ドレンホース70は上遮熱プレート片61の下部寄りに設けて前進走行時に後方へ流れる水を受け止めて排水し易くする。さらに、ドレンホース70をグロメット71によって装着するので、ドレンホース70を繋ぐ鉄製パイプを上遮熱プレート片61に溶接して設けるといった構造が不要になってコストダウンすることができる。
【0083】
また、トラクタ1は、排熱孔37c、37dを設ける天板部37aと側板部37bによって略逆U字状に形成するスペーサーカバー37の前端部と後端部にシール66、67を設け、係る前後のシール66、67によってボンネット23の後端部や操縦部の前端部との間に生じる隙間を無くす。そのため、スペーサーカバー37の前端部に設けるシール66はボンネット23の開閉に伴う緩衝防止のために設ける隙間を無くし、また、スペーサーカバー37の後端部に設けるシール67は操縦部との振動系の相違に基づく隙間を無くすことができ、このような隙間をシール66、67によって塞ぐことによって排熱孔37c、37d以外からのボンネット23内への雨水の侵入を防ぐことができる。
【0084】
その上、トラクタ1は、スペーサーカバー37の天板部37aを後方に向けて下り傾斜させて設ける。そのため、排気ガス後処理装置16をエンジン2の後部寄り上方に設けることによってボンネット23の後部寄りの高さが高くなって、スペーサーカバー37との間に段差が生ずる場合でもこの段差をスペーサーカバー37の天板部37aを後方に向けて下り傾斜させて設けることによって無くすことができると共に、スペーサーカバー37の天板部37aの後端寄りと操縦部の前面が雨水を左右に流す排水路の役割を果たし、排熱孔37cへの雨水の侵入を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 トラクタ(作業車両)
2 ディーゼルエンジン
14 取付プレート
16 DPFケース(排気ガス後処理装置)
23 ボンネット
31 支持プレート
33 運転席
37 スペーサーカバー
37c 排熱孔
37d 排熱孔
39 ステアリングハンドル
60 遮熱プレート片
61 遮熱プレート片
69 貯留部
79 ドレンホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19