(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073607
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】電空変換機構及び電空変換構造
(51)【国際特許分類】
F15B 5/00 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
F15B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186163
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】野見山 隆
【テーマコード(参考)】
3H086
【Fターム(参考)】
3H086CA09
3H086CB01
3H086CB15
3H086CB18
3H086CC06
3H086CC07
3H086CC27
(57)【要約】
【課題】電空変換機構及びこれを備える電空変換構造を小型化する。
【解決手段】電空変換機構10は、電気信号を空気圧信号に変換する。電空変換機構10は、空気が供給される第1端E1及び前記空気を放出する第2端E2を備える第1空気流路R1と、第1空気流路R1の途中に接続された、第1空気流路R1内の空気圧の変化を空気圧信号として取り出すための第2空気流路R2と、を備える流路部材20を備える。電空変換機構10は、第1空気流路R1の第2端E2から放出される空気の放出量を変化させることで空気圧を変化させる可変絞り機構30も備える。可変絞り機構30は、変形することで前記空気の放出量を変化させるダイアフラム31と、ダイアフラム31上に形成され、電気信号により変形することでダイアフラムを変形させる圧電素子32と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を空気圧信号に変換する電空変換機構であって、
空気が供給される第1端及び前記空気を放出する第2端を備える第1空気流路と、前記第1空気流路の途中位置に接続された、前記第1空気流路内の空気圧の変化を空気圧信号として取り出すための第2空気流路と、を備える流路部材と、
前記第1空気流路の前記第1端と前記途中位置との間に設けられた固定絞りと、
前記第1空気流路の前記第2端から放出される前記空気の放出量を変化させることで前記空気圧を変化させる可変絞り機構と、を備え、
前記可変絞り機構は、変形することで前記放出量を変化させるダイアフラムと、当該ダイアフラム上に形成され、電気信号により変形することで前記ダイアフラムを変形させる圧電素子と、を備える、
電空変換機構。
【請求項2】
前記ダイアフラムは、前記第2端と前記途中位置との間の位置で前記第1空気流路を形成しており、変形することで前記第1空気流路の断面積を変化させ、これにより前記放出量を変化させる、
請求項1に記載の電空変換機構。
【請求項3】
前記可変絞り機構は、前記ダイアフラムを前記第2端と対向させた状態で支持する支持部をさらに備え、
前記ダイアフラムは、変形することで前記第2端との距離が変化し、これにより、前記放出量を変化させる、
請求項1に記載の電空変換機構。
【請求項4】
前記支持部は、前記ダイアフラムの前記圧電素子を挟んだ少なくとも両端と接続されている、
請求項3に記載の電空変換機構。
【請求項5】
前記ダイアフラムと前記支持部とが一体的に形成されている、
請求項3又は4に記載の電空変換機構。
【請求項6】
前記流路部材及び前記可変絞り機構がMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の少なくとも一部である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電空変換機構。
【請求項7】
それぞれが請求項1~6のいずれか1項に記載の電空変換機構である複数の電空変換機構を有し、
前記複数の電空変換機構それぞれの前記第1空気流路は、前記空気の供給元に並列に接続されており、
前記複数の電空変換機構それぞれの前記第2空気流路は、前記空気圧信号の出力先に並列に接続されている、
電空変換構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を空気圧信号に変換する電空変換機構及び電空変換構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号を空気圧信号に変換する電空変換機構には、ノズルフラッパ機構が用いられる。ノズルフラッパ機構は、特許文献1が開示するように、ノズルに対向するフラッパを電気信号に基づいて変位させることにより、ノズル内の圧力であるノズル背圧を変化させる。ノズル背圧の変化は、空気圧信号として取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示するように、従来から利用されているノズルフラッパ機構には、フラッパを変位させるための励磁コイルなどが使用される。この励磁コイルなどは小型化に限界があり、従来のノズルフラッパ機構は大きくなってしまう傾向にある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、電空変換機構及びこれを備える電空変換構造を小型化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電空変換機構は、電気信号を空気圧信号に変換する電空変換機構であって、空気が供給される第1端及び前記空気を放出する第2端を備える第1空気流路と、前記第1空気流路の途中位置に接続された、前記第1空気流路内の空気圧の変化を空気圧信号として取り出すための第2空気流路と、を備える流路部材と、前記第1空気流路の前記第1端と前記途中位置との間に設けられた固定絞りと、前記第1空気流路の前記第2端から放出される前記空気の放出量を変化させることで前記空気圧を変化させる可変絞り機構と、を備え、前記可変絞り機構は、変形することで前記放出量を変化させるダイアフラムと、当該ダイアフラム上に形成され、電気信号により変形することで前記ダイアフラムを変形させる圧電素子と、を備える。
【0007】
前記ダイアフラムは、前記第2端と前記途中位置との間の位置で前記第1空気流路を形成しており、変形することで前記第1空気流路の断面積を変化させ、これにより前記放出量を変化させる、ようにしてもよい。
【0008】
前記可変絞り機構は、前記ダイアフラムを前記第2端と対向させた状態で支持する支持部をさらに備え、前記ダイアフラムは、変形することで前記第2端との距離が変化し、これにより、前記放出量を変化させる、ようにしてもよい。
【0009】
前記支持部は、前記ダイアフラムの前記圧電素子を挟んだ少なくとも両端と接続されている、ようにしてもよい。
【0010】
前記支持部は、前記ダイアフラムの前記圧電素子を挟んだ少なくとも両端と接続されている、ようにしてもよい。
【0011】
前記ダイアフラムと前記支持部とが一体的に形成されている、ようにしてもよい。
【0012】
前記流路部材及び前記可変絞り機構がMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の少なくとも一部である、ようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る電空変換構造は、それぞれが上記の電空変換機構である複数の電空変換機構を有し、前記複数の電空変換機構それぞれの前記第1空気流路は、前記空気の供給元に並列に接続されており、前記複数の電空変換機構それぞれの前記第2空気流路は、前記空気圧信号の出力先に並列に接続されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電空変換機構及びこれを備える電空変換構造が小型化される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電空変換機構及びその周辺の構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1のA-A断面及び周辺構成を示す構成図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る電空変換機構の平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3実施形態に係る電空変換機構の平面図である。
【
図8】
図8は、
図7のD-D断面及び周辺構成を示す構成図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4実施形態に係る電空変換構造の構成図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4実施形態に係る電空変換構造の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る電空変換機構、及び、複数の電空変換機構を備える電空変換構造について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係る電空変換機構10は、電空変換器1に使用されている。電空変換器1は、電空変換機構10の他、制御回路70と、パイロットリレー(空気圧増幅器)80と、を備える。制御回路70は、マイクロコンピュータ又は論理回路などを含んで構成されている。制御回路70は、上位装置Uから送られてくる設定空気圧と、制御対象である調節弁V(配管の途中に設けられたバルブなど)の操作器への出力空気圧との偏差を求める。出力空気圧は、当該出力空気圧の経路の途中に設けられたセンサSにより測定される。制御回路70は、求めた偏差に応じた電気信号を制御信号として生成し、電空変換機構10に出力する。電空変換機構10は、制御回路70からの制御信号を空気供給源ASからの空気を用いて空気圧信号に変換し、変換した空気圧信号をパイロットリレー80に出力する。パイロットリレー80は、電空変換機構10から出力される空気圧信号を増幅し、増幅した空気圧信号を出力空気圧として調節弁Vの操作器へ出力する。そして、出力された出力空気圧により操作器が動作することで、調節弁Vの弁開度が操作される。
【0018】
電空変換機構10は、第1空気流路R1及び第1空気流路R1の途中に接続された第2空気流路R2を備える流路部材20と、流路部材20に搭載された可変絞り機構30と、を備える。
【0019】
図1~
図3に示すように、流路部材20は、ベースとなる第1部材21と、第1部材21に固定され第2部材22と、を備える。第1部材21は、直方体形状に形成されている。第1部材21は、第2部材22が固定される上面に開口する溝21Aを備える。第2部材22は、板状に形成されており、第1部材21の溝21Aを覆うように第1部材21に固定されている。第2部材22は、溝21Aを覆うことで、溝21Aの内面とともに、空気供給源ASから供給される空気の流路である第1空気流路R1を形成している。第2部材22には、貫通孔からなる第2空気流路R2が形成されている。第2空気流路R2は、第1空気流路R1の所定の途中位置に接続されている。
【0020】
第1空気流路R1は、直線状に形成されている。第1空気流路R1は、空気供給源ASからの空気が流れる流路であり、当該空気が供給される第1端E1(
図1の左端)と、当該第1端E1から流入した空気を第1空気流路R1の外部に放出する第2端E2と、を備える。流路部材20は、第1空気流路R1の空気を放出する第2端E2をノズル口としたノズルとして構成されている。
【0021】
第2空気流路R2は、第1空気流路R1が延びる方向と直交する方向に延びている。第2空気流路R2には、第1空気流路R1内を流れる空気の一部が流入する。第2空気流路R2は、パイロットリレー80に接続されている。第2空気流路R2は、第1空気流路R1内の空気圧(背圧ともいう)の変化を空気圧信号として取り出し、パイロットリレー80に供給するように構成されている。空気圧信号は、パイロットリレー80に供給されて増幅されてから調節弁Vに供給される。
【0022】
流路部材20は、第1部材21の溝21Aの内部に形成されたオリフィス25及び26も備える。オリフィス25は、第1空気流路R1の断面積を減少させることで圧力損失を生じさせる固定絞りとして機能する。オリフィス25及び26は、溝21Aの底から溝21Aの開口方向つまり第2部材22側に突出する凸部からなる。オリフィス25及び26は、第1空気流路R1の上下流方向に沿って間隔を空けて配置されている。オリフィス25及び26のうち、オリフィス26が下流側に位置する。オリフィス25は、第1空気流路R1の第1端E1と、第1空気流路R1の第2空気流路R2が接続されている途中位置との間に配置され、オリフィス26は、前記途中位置と第1空気流路R1の第2端E2との間に配置されている。これらの配置によりオリフィス25及び26の間に第2空気流路R2が配置され、第1空気流路R1におけるオリフィス25及び26の間の空間の空気圧が第2空気流路R2を介して取り出される。
【0023】
第2部材22のオリフィス26と対向する部分には、孔22Aが形成されている。第2部材22には、孔22Aを塞ぐように形成された可変絞り機構30が配置されている。可変絞り機構30は、第1空気流路R1のうちのオリフィス26が形成されている部分の断面積を変化させて第1空気流路R1の第2端E2から放出される空気の放出量を変化させることで、第1空気流路R1内の空気圧を変化させる可変絞りを構成している。
【0024】
可変絞り機構30は、孔22Aを塞ぎオリフィス26と対向するダイアフラム31と、ダイアフラム31上に形成された圧電素子32と、を備える。ダイアフラム31は、外周端全部が第2部材22に繋がっており、これにより、孔22Aを塞ぐ。ダイアフラム31は、第2部材22と一体的に形成されている。圧電素子32は、制御回路70と接続されており、制御回路70からの上記制御信号としての電気信号により変形する。ダイアフラム31は、
図2の点線で示すように、圧電素子32の変形により、オリフィス26側に膨らむように変形する。ダイアフラム31は、中央部が最もオリフィス26に近付くように変形する。ダイアフラム31の変形により、第1空気流路R1のオリフィス26が形成されている部分の断面積が減少する。
【0025】
ダイアフラム31の変形により第1空気流路R1のオリフィス26が形成されている部分の断面積が減少すると、第1空気流路R1の第2端E2から放出される空気の放出量が減少する。このため、第1空気流路R1内のオリフィス25と、ダイアフラム31及びオリフィス26との間の空気圧(背圧)が上昇する。この空気圧の上昇は、空気圧信号として第2空気流路R2を介して取り出され、パイロットリレー80に出力される。これらにより、ダイアフラム31を変形させる制御回路70からの制御信号としての電気信号は、電空変換機構10により空気圧信号に変換されることになる。
【0026】
この実施形態では、可変絞り機構30を小型かつ薄型であるダイアフラム31と圧電素子32とにより構成したので、励磁コイルなどの比較的大型の部品から構成されるノズルフラッパ機構を採用した場合に比べて、電空変換機構10の小型化が実現される。さらに、この実施形態では、可変絞り機構30を構成するダイアフラム31が第1空気流路上に配置されているため、従来のノズルフラッパ機構のようにフラッパが流路部材20の外部に配置されることがなく、電空変換機構10全体が小型化される。
【0027】
電空変換機構10は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の少なくとも一部として形成されるとよい。このとき、制御回路70も電空変換機構10とともにMEMSとして構成されてもよい。この場合、電空変換機構10は、制御回路70も備えると捉えてもよい。
図4に示すように、制御回路70は、制御回路70と圧電素子32とを接続し、制御信号を伝送する配線L1とともに、電空変換機構10を構成する部材上に形成されてもよい。
図4の例では、制御回路70は、流路部材20(ここでは、第2部材22)上に設けられている。配線L1は、流路部材20とダイアフラム31とにわたって設けられている。
【0028】
電空変換機構10は、バルクマイクロマシニング、サーフェイスマイクロマシニングなどの任意のMEMS製造プロセスにより形成可能である。例えば、
図1などに示す第1部材21とオリフィス25及び26とは、SOI(Silicon On Insulator)ウェハなどをエッチングなどにより加工することにより一体的に形成される。第2部材22は、SOIウェハなどをエッチングなどにより加工することで、ダイアフラム31と一体的に形成される。第2部材22には、圧電素子32、制御回路70、これらを接続する配線なども成膜プロセスなどにより形成される。最後に第1部材21と第2部材22とを接合することで、制御回路70が搭載された電空変換機構10が形成される。電空変換機構10は、
図2の断面図に示すように、積層構造で形成され、1チップとして形成される。これにより、電空変換機構10が小型化される。MEMSの製造技術は、ダイアフラム31の形成に好適である。従って、ダイアフラム31を採用した電空変換機構10は、MEMSの製造技術により、容易に小型化される。MEMSの製造技術によれば、第1空気流路R1の高さを、数100μmまたは数mmとし、ダイアフラム31変形時の第1空気流路R1の高さを、10~100μmとすることができる。
【0029】
従来のノズルフラッパ機構は、機械加工により製造されるが、その主要構成部品である固定絞りの絞り穴は10~100μmオーダーの微細な加工を要し、また、フラッパとノズル部により生じる可変のギャップの可動範囲(空気圧変換機能を発揮する範囲)もやはり10~100μmオーダーであるため、その表面粗さ等の加工には注意を要する。また、その加工にいくら注意しても最終的な製品のばらつきの程度は大きく、組み立て後の調整作業が必須である。他方、電空変換機構10をMEMSで形成することで、このような調整作業が生じない。さらに、シリコンウェハ上などで大量生産が可能となる。これらにより、MEMSとしての電空変換機構10の製造コストが削減される。
【0030】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る電空変換機構110を、第1実施形態に係る電空変換機構10と異なる点を中心にして説明する。なお、第2実施形態における、第1実施形態と同じ構造又は機能を有する要素については、適宜同じ符号を付し、その説明については第1実施形態に準じる。このことは、第3実施形態以降も同じである。
【0031】
図5及び
図6に示すように、本実施形態に係る電空変換機構110の流路部材120は、第1実施形態のオリフィス25の代わりに、オリフィス125を備える。オリフィス125は、第1部材21の溝21Aの両側の内側面から突出した2つの凸部125A及び125Bを備える。凸部125A及び125Bは、三角柱形状に形成されている。このような形状のオリフィス125も、MEMSの製造技術により容易に形成できる。電空変換機構110も電空変換機構10の代わりに電空変換器1の一部として構成されている。
【0032】
<第3実施形態>
図7及び
図8に示すように、第3実施形態に係る電空変換機構210は、上記流路部材20及び可変絞り機構30の代わりに流路部材220及び可変絞り機構230を備える。電空変換機構210も電空変換機構10の代わりに電空変換器1の一部として構成されている。
【0033】
流路部材220は、流路部材20と同様に、第1空気流路R1及び第2空気流路R2を備える。第1空気流路R1は、第1実施形態と同様に直線状に形成されている。第2空気流路R2は、第1実施形態と同様に第1空気流路R1が延びる方向と直交する方向に延びている。各空気流路R1及びR2の断面は、ここでは円形となっている。流路部材220は、第1空気流路R1の空気を放出する第2端E2をノズル口としたノズルとして構成されている。ノズル口を形成している周縁部Kは、凸形状(ここでは、円錐台から第1空気流路R1を構成する円柱をくりぬいた形状)に形成されている。
【0034】
流路部材220は、第1空気流路R1の固定絞りとしての円筒状のオリフィス225及び226も備える(
図8)。オリフィス225及び226は、第1空気流路R1の上下流方向に沿って間隔を空けて配置されている。オリフィス225及び226の間に、第2空気流路R2が配置されており、第1空気流路R1におけるオリフィス225及び226の間の空間の空気圧(背圧)の変化が空気圧信号として第2空気流路R2を介して取り出される。
【0035】
可変絞り機構230は、ダイアフラム31と、ダイアフラム31上の圧電素子32と、ダイアフラム31を支持する支持部233と、を備える。支持部233は、流路部材220に固定されている。支持部233は、ダイアフラム31を第1空気流路R1の第2端E2と対向させた状態で支持している。支持部233は、四角環状に形成されている。ダイアフラム31は、支持部233の内周空間に配置されており、その全周にわたって支持部233と接続されている。従って、ダイアフラム31は、支持部233の内周空間を塞いでいる。ここでは、支持部233とダイアフラム31とが一体的に形成されている。支持部233及びダイアフラム31の組み合わせは、第2端E2とその周囲の空間S1を覆っている。支持部233には、空間S1と連通する切り欠きS2が形成されている。第2端E2から放出される空気は、切り欠きS2を介して電空変換機構210の外部に放出される。支持部233は、ダイアフラム31の圧電素子32を挟んだ両端を少なくとも両端に接続され、当該両端を支持するものであればよい。このため、支持部233は、環状ではなく、Cの字状などであってもよい。
【0036】
支持部233上には制御回路70が配置されている。制御回路70は、圧電素子32と配線L1を介して接続されている。圧電素子32は、制御回路70からの上記制御信号としての電気信号により変形する。ダイアフラム31は、
図7の点線で示すように、圧電素子32の変形により、空気流路R1の第2端E2側に膨らむように変形する。ダイアフラム31は、中央部が最も第2端E2に近付くように変形する。ダイアフラム31は、変形例により、第2端E2を完全に塞いでもよいし、塞がなくてもよい。
【0037】
ダイアフラム31の変形により、ダイアフラム31と第1空気流路R1の第2端E2との間の距離が変化し、ダイアフラム31の中央部が第1空気流路R1に近づく。その結果、この第2端E2から放出される空気の放出量が減少する。なお、ダイアフラム31は、最大の変形時に、第2端E2を塞いでも塞がなくてもよい。このため、第1空気流路R1内のオリフィス125と、ダイアフラム31及びオリフィス126との間の空気圧(背圧とも呼ばれる)が上昇する。空気圧の上昇は、空気圧信号として第2空気流路R2により取り出され、パイロットリレー80に出力される。これらにより、ダイアフラム31を変形させる制御回路70からの制御信号としての電気信号は、電空変換機構10により空気圧信号に変換されることになる。
【0038】
この実施形態でも、可変絞り機構230をダイアフラム31と圧電素子32とにより構成したので、励磁コイルなどの比較的大型の部品から構成されるノズルフラッパ機構を採用した場合に比べて、電空変換機構10の小型化が実現される。
【0039】
電空変換機構210も、MEMSの少なくとも一部として形成されるとよい。このとき、制御回路70も電空変換機構210とともにMEMSとして構成されてもよい。この場合、電空変換機構210は、制御回路70も備えると捉えてもよい。電空変換機構210も、任意のMEMS製造プロセスにより形成可能である。例えば、
図1などに示す流路部材220を空気流路R1及びR2の両中心軸を通る平面で切った2つの部材をSOIウェハなどをエッチングなどにより加工することにより形成し、形成した2つの部材を接合することで、流路部材220を形成する。さらに、可変絞り機構230を、SOIウェハなどをエッチングなどにより加工することにより一体的に形成する。可変絞り機構230には、圧電素子32、制御回路70、これらを接続する配線L1なども成膜プロセスなどにより形成される。最後に流路部材220と可変絞り機構230とを接合することで、制御回路70が搭載された電空変換機構210が形成される。電空変換機構210は、
図8の断面図に示すように、積層構造で形成され、1チップとして形成される。これにより、電空変換機構10が小型化される。
【0040】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る電空変換構造300は、
図9に示すように、複数の電空変換機構10を備える。電空変換機構10の数は、複数であればよく、
図9の三つに限定されない。電空変換構造300も電空変換器1に使用される。複数の電空変換機構10がそれぞれ有する複数の第1空気流路R1は、空気の供給元である空気供給源ASに、空気供給源ASに接続される流路を分岐する分岐流路R3(模式的に描いている)を介して並列に接続されている。従って、空気供給源ASからの空気は、分岐流路R3により分割されて、各第1空気流路R1に供給される。各第1空気流路R1には同量の空気が供給されるとよい。複数の電空変換機構10がそれぞれ有する複数の第2空気流路R2は、空気圧信号の出力先であるパイロットリレー80に、各第2空気流路R2からの空気を合流させる合流流路R4(模式的に描いている)を介して並列に接続されている。従って、各第2空気流路R2により取り出される空気圧信号は、合流流路R4で足し合わされ、パイロットリレー80に供給される。
【0041】
複数の電空変換機構10をそれぞれ構成する複数の流路部材20及び複数のダイアフラム31は、例えば、MEMS製造技術により、一体的に形成されてもよい。また、複数の電空変換機構10をそれぞれ構成する複数の圧電素子32も、MEMS製造技術により、一括で形成されてもよい。制御回路70も配線L2(模式的に示す)とMEMS製造技術により流路部材20上に形成されてもよい。1つの制御回路70は、複数の圧電素子32それぞれに制御信号(電気信号)を供給してもよい。なお、複数の圧電素子32に対して複数の制御回路70が一対一で形成されてもよい。
【0042】
図10に示すように、電空変換構造300の複数の電空変換機構10の少なくとも一部を、1以上の電空変換機構110又は210に変更してもよい。
図10に示す例では、電空変換構造300は、複数の電空変換機構110を備えるか、複数の電空変換機構210を備える。
【0043】
本実施形態によれば、複数の電空変換機構10などを設けたので、電空変換機構10などを1つ採用する場合より、空気圧信号を構成する空気の流量を大きく確保することができる。これは特に、電空変換機構10などをMEMSとすることで、微細加工により第1空気流路R1の空気の流量を多く確保できないときに有用である。流量が多く確保できれば後段のパイロットリレーを高速に駆動することができる(電空変換器としての過渡応答特性が良くなる)。
【0044】
<変形例>
上記電空変換機構10、110、及び210と電空変換構造300などは、電空変換器1の代わりに電空ポジショナに採用されてもよい。電空変換機構10、110、及び210を構成する部材などの要素の形状は任意である。例えば、電空変換機構10、110の第1空気流路R1及び第2空気流路R2は、断面円形としてもよい。ダイアフラム31は、第2部材22、支持部233と別体に形成され、これらに取り付けられることで、これらに接続されてもよい。支持部233は、円環状などに形成されてもよい。電空変換機構10において、ダイアフラム31の変形量を十分確保できる場合などには、オリフィス26が省略されてもよい。
【0045】
<本発明の範囲>
以上、実施の形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施の形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…電空変換器、10…電空変換機構、20…流路部材、21…第1部材、21A…溝、22…第2部材、22A…孔、25,26…オリフィス、30…可変絞り機構、31…ダイアフラム、32…圧電素子、70…制御回路、80…パイロットリレー、110…電空変換機構、120…流路部材、125,126…オリフィス、125A,125B…凸部、210…電空変換機構、220…流路部材、225,226…オリフィス、230…可変絞り機構、233…支持部、300…電空変換構造、AS…空気供給源、E1…第1端、E2…第2端、K…周縁部、L1,L2…配線、R1…第1空気流路、R2…第2空気流路、R3…分岐流路、R4…合流流路、S…センサ、S1…空間、S2…切り欠き、U…上位装置、V…調節弁。