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特開2023-73624成形機、成形機の支援装置及び成形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073624
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】成形機、成形機の支援装置及び成形システム
(51)【国際特許分類】
   B22D 46/00 20060101AFI20230519BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20230519BHJP
   B22D 18/02 20060101ALI20230519BHJP
   B22D 18/04 20060101ALI20230519BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230519BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20230519BHJP
   B22D 47/00 20060101ALN20230519BHJP
【FI】
B22D46/00
B22D17/32 J
B22D18/02 Y
B22D18/04 Z
G05B19/418 Z
B29C45/76
B22D47/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186189
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】竹井 一康
【テーマコード(参考)】
3C100
4F206
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA29
3C100AA57
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
4F206AP02
4F206AP06
4F206AP07
4F206AP13
4F206AR02
4F206AR07
4F206AR08
4F206AR14
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP01
4F206JP14
4F206JP30
(57)【要約】
【課題】仕分けのための数値範囲を適切に設定することができる成形機を提供する。
【解決手段】ダイカストマシン1において、操作部15は、不良品指標率の設定値の入力を受け付ける。不良品指標率は、複数の成形サイクルを行った場合に、物理量の計測値が所定の数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む不良品が、複数の成形サイクルによって作製された成形品に占める割合、又は当該割合に相関する割合である。機械側送信部35は、操作部15に入力された不良品指標率の設定値を支援装置31へ送信する。機械側送信部35は、不良品指標率の設定値に対応する数値範囲の情報を支援装置31から受信する。制御部13は、センサ33が計測した物理量の計測値が、受信した数値範囲の外側の値となった成形サイクルによって作製された成形品を、他の成形品から仕分けする処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティに成形材料を充填して成形品を作製する成形サイクルを繰り返す機械本体と、
前記成形サイクルに係る物理量を計測するセンサと、
複数の成形サイクルを行った場合に、前記物理量の計測値が所定の数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む不良品が、前記複数の成形サイクルによって作製された成形品に占める割合、又は当該割合に相関する割合を、不良品指標率と称するときに、当該不良品指標率の設定値の入力を受け付ける設定値受付部と、
前記設定値受付部に入力された前記設定値を支援装置へ送信する機械側送信部と、
前記機械側送信部が送信した前記設定値に対応する前記数値範囲の情報を前記支援装置から受信する機械側受信部と、
前記機械本体が前記成形サイクルの繰り返しによって作製する複数の成形品を対象として、前記センサが計測した前記物理量の計測値が、前記機械側受信部が受信した前記数値範囲外の値となった成形サイクルによって作製された成形品を、他の成形サイクルによって作製された成形品から仕分けする処理を行う仕分け部と、
を有している成形機。
【請求項2】
前記不良品指標率は、
前記物理量の計測値が前記数値範囲内の値となる成形サイクルによって作製された成形品に占める不良品の割合、
前記複数の成形サイクルによって作製された成形品に占める、前記物理量の計測値が前記数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む不良品の割合、又は
前記複数の成形サイクルによって作製された不良品に占める、前記物理量の計測値が前記数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む不良品の割合、である
請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記物理量の計測値が前記数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品に占める良品の割合、又は当該割合に相関する割合を、良品指標率と称するときに、
前記機械側受信部は、前記機械側送信部が送信した前記設定値に対応する前記数値範囲に対応する前記良品指標率の値に係る情報を前記支援装置から受信し、
前記機械側受信部が受信した前記良品指標率の値に係る情報をオペレータに報知する報知部を更に有している
請求項1又は2に記載の成形機。
【請求項4】
前記良品指標率は、
前記物理量の計測値が前記数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品に占める良品の割合、
前記複数の成形サイクルによって作製された成形品に占める、前記物理量の計測値が前記数値範囲内の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む良品の割合、又は
前記複数の成形サイクルによって作製された良品に占める、前記物理量の計測値が前記数値範囲内の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む良品の割合、である
請求項3に記載の成形機。
【請求項5】
複数種類の前記物理量を計測する複数の前記センサを有しており、
前記機械側受信部は、前記複数種類の物理量のうちの1以上の種類を指定する指定情報を受信し、
前記仕分け部は、前記複数種類の物理量のうち、前記指定情報によって指定された種類の物理量についてのみ、前記数値範囲に基づく成形品の仕分けを行う
請求項1~4のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項6】
キャビティに成形材料を充填して成形品を作製する成形サイクルに係る物理量の計測値と、当該計測値が得られた成形サイクルによって作製された前記成形品が良品及び不良品のいずれであるかの判定結果の情報と、をそれぞれ含む複数の過去データを記憶する記憶部と、
前記複数の過去データに占める、前記計測値が前記数値範囲外の値であり、かつ前記判定結果が不良品である過去データの割合、又は当該割合に相関する割合を、不良品指標率と称するときに、当該不良品指標率の設定値を成形機から受信する支援側受信部と、
前記記憶部に記憶されている前記複数の過去データについての不良品指標率が、前記支援側受信部が受信した前記設定値となる前記数値範囲を特定する演算部と、
前記演算部が特定した前記数値範囲の情報を前記成形機へ送信する支援側送信部と、
を有している成形機の支援装置。
【請求項7】
前記計測値が前記数値範囲外の値である過去データに占める、前記判定結果が良品である過去データの割合、又は当該割合に相関する割合を、良品指標率と称するときに、
前記演算部は、前記支援側受信部が受信した前記設定値に基づいて特定した前記数値範囲を用いて、前記記憶部に記憶されている前記複数の過去データについての前記良品指標率の値を特定し、
前記支援側送信部は、前記演算部が特定した前記良品指標率の値に係る情報を前記成形機へ送信する
請求項6に記載の成形機の支援装置。
【請求項8】
前記複数の過去データは、複数種類の前記物理量の計測値と、当該計測値が得られた成形サイクルの前記判定結果の情報と、をそれぞれ含んでおり、
前記演算部は、前記複数の過去データに基づいて前記複数種類の物理量のうちの1以上の種類を選択し、
前記支援側送信部は、前記演算部が選択した前記1以上の種類を示す指定情報を前記成形機に送信する
請求項6又は7に記載の成形機の支援装置。
【請求項9】
前記計測値が前記数値範囲外の値である過去データに占める前記判定結果が良品である過去データの割合を良品含有率と称するとともに、当該良品含有率又は当該良品含有率に相関する割合を良品指標率と称するときに、
前記演算部は、前記不良品指標率が所定の仮想値であるときの前記数値範囲に対応する前記良品指標率の値が、所定の閾値に対して、前記良品含有率が低くなる側に位置する物理量の種類を前記1以上の種類に含ませる
請求項8に記載の成形機の支援装置。
【請求項10】
キャビティに成形材料を充填して成形品を作製する成形サイクルを繰り返す機械本体と、
前記成形サイクルに係る物理量を計測するセンサと、
前記物理量の計測値と、当該計測値が得られた成形サイクルによって作製された前記成形品が良品及び不良品のいずれであるかの判定結果の情報と、をそれぞれ含む複数の過去データを記憶する記憶部と、
複数の成形サイクルを行った場合に、前記複数の成形サイクルによって作製された成形品に占める、前記物理量の計測値が所定の数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む不良品の割合、又は当該割合に相関する割合を、不良品指標率と称するときに、当該不良品指標率の設定値の入力を受け付ける設定値受付部と、
前記記憶部に記憶されている前記複数の過去データについての不良品指標率が、前記設定値受付部に入力された前記設定値となる数値範囲を特定する演算部と、
前記機械本体が前記成形サイクルの繰り返しによって作製する複数の成形品を対象として、前記センサが計測した前記物理量の計測値が、前記演算部が特定した前記数値範囲外の値となった成形サイクルによって作製された成形品を、他の成形サイクルによって作製された成形品から仕分けする処理を行う仕分け部と、
を有している成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形機、当該成形機を支援する支援装置、並びに成形機を含む成形システムに関する。成形機は、型のキャビティに成形材料を充填して成形品を得るものであり、例えば、ダイカストマシン又は射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
種々の物理量を監視する成形機が知られている(例えば特許文献1)。種々の物理量としては、例えば、金型の温度、1ショットの成形材料の量、金型に成形材料を充填する速度、金型内の成形材料の圧力、並びにこれらに相関する成形機(又は周辺設備)の各部における温度、位置、速度、圧力、流量及び電力が挙げられる。このような物理量を監視することによって、例えば、成形機の異常を検知したり、成形品の良否を判定したり、又は不良品の原因を究明したりすることができる。特許文献2は、物理量の監視に基づいて成形品の良否判定を行うことができること、しかしながら、物理量の値が正常範囲内であっても不良品が生じることがあることを述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-140033号公報
【特許文献2】特開2007-196604号公報
【特許文献3】特開2004-230901号公報
【特許文献4】特開2001-293761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように物理量の値が所定の数値範囲内にあるときに良品と判定することによって、成形品の良否判定を行うことができる。しかし、その数値範囲(上限値及び下限値)の設定は、例えば、オペレータの経験に基づいて行われている。数値範囲が適切な大きさよりも狭い場合、例えば、良品が不良品と判定されて廃棄される蓋然性が高くなる。また、数値範囲が適切な大きさよりも広い場合、例えば、不良品が良品と判定されて後工程が行われる蓋然性が高くなる。不良品は、後工程の更に後の検査等で発見されるが、不良品に対して無駄に後工程が行われることになる。このように、数値範囲が適切に設定されないと、生産性が低下する。従って、仕分けのための数値範囲を適切に設定することができる成形機、成形機の支援装置及び成形システムが提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る成形機は、キャビティに成形材料を充填して成形品を作製する成形サイクルを繰り返す機械本体と、前記成形サイクルに係る物理量を計測するセンサと、複数の成形サイクルを行った場合に、前記物理量の計測値が所定の数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む不良品が、前記複数の成形サイクルによって作製された成形品に占める割合、又は当該割合に相関する割合を、不良品指標率と称するときに、当該不良品指標率の設定値の入力を受け付ける設定値受付部と、前記設定値受付部に入力された前記設定値を支援装置へ送信する機械側送信部と、前記機械側送信部が送信した前記設定値に対応する前記数値範囲の情報を前記支援装置から受信する機械側受信部と、前記機械本体が前記成形サイクルの繰り返しによって作製する複数の成形品を対象として、前記センサが計測した前記物理量の計測値が、前記機械側受信部が受信した前記数値範囲外の値となった成形サイクルによって作製された成形品を、他の成形サイクルによって作製された成形品から仕分けする処理を行う仕分け部と、を有している。
【0006】
本開示の一態様に係る成形機の支援装置は、キャビティに成形材料を充填して成形品を作製する成形サイクルに係る物理量の計測値と、当該計測値が得られた成形サイクルによって作製された前記成形品が良品及び不良品のいずれであるかの判定結果の情報と、をそれぞれ含む複数の過去データを記憶する記憶部と、前記複数の過去データに占める、前記計測値が前記数値範囲外の値であり、かつ前記判定結果が不良品である過去データが占める割合、又は当該割合に相関する割合を、不良品指標率と称するときに、当該不良品指標率の設定値を成形機から受信する支援側受信部と、前記記憶部に記憶されている前記複数の過去データについての不良品指標率が、前記支援側受信部が受信した前記設定値となる前記数値範囲を特定する演算部と、前記演算部が特定した前記数値範囲の情報を前記成形機へ送信する支援側送信部と、を有している。
【0007】
本開示の一態様に係る成形システムは、キャビティに成形材料を充填して成形品を作製する成形サイクルを繰り返す機械本体と、前記成形サイクルに係る物理量を計測するセンサと、前記物理量の計測値と、当該計測値が得られた成形サイクルによって作製された前記成形品が良品及び不良品のいずれであるかの判定結果の情報と、をそれぞれ含む複数の過去データを記憶する記憶部と、複数の成形サイクルを行った場合に、前記複数の成形サイクルによって作製された成形品に占める、前記物理量の計測値が所定の数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む不良品の割合、又は当該割合に相関する割合を、不良品指標率と称するときに、当該不良品指標率の設定値の入力を受け付ける設定値受付部と、前記記憶部に記憶されている前記複数の過去データについての不良品指標率が、前記設定値受付部に入力された前記設定値となる数値範囲を特定する演算部と、前記機械本体が前記成形サイクルの繰り返しによって作製する複数の成形品を対象として、前記センサが計測した前記物理量の計測値が、前記演算部が特定した前記数値範囲外の値となった成形サイクルによって作製された成形品を、他の成形サイクルによって作製された成形品から仕分けする処理を行う仕分け部と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、仕分けのための数値範囲を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るダイカストマシンの構成を示す側面図。
図2図1のダイカストマシンを含む成形システムの構成を示す上面図。
図3図2の成形システムによるデータの蓄積動作を説明するためのブロック図。
図4図2の成形システムによる数値範囲の設定動作を説明するためのブロック図。
図5図2の成形システムによる仕分け動作を説明するためのブロック図。
図6図2の成形システムによる補助動作を説明するためのブロック図。
図7図2の成形システムの支援装置が記憶するデータの構成例を示す模式図。
図8図2の成形システムによる数値範囲の設定例を示す模式図。
図9図2の成形システムによる数値範囲の他の設定例を示す模式図。
図10図2の成形システの支援装置による判定対象を選択する処理の手順の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、まず、本開示の一実施形態に係る成形システムの概要について説明し、その後、成形システムの詳細について説明する。
【0011】
(成形システムの概要)
図1は、本開示の実施形態に係る成形システムSM1(符号は図2)が含むダイカストマシン1の構成を示す側面図(一部に断面図を含む。)である。図1には、便宜上、直交座標系xyzを付す。z方向は、鉛直方向であり、+z側は上方である。
【0012】
ダイカストマシン1は、金型101を保持している。金型101は、例えば、固定型103と、移動型105とを含んでいる。ダイカストマシン1は、図1において2点鎖線で示されているように、固定型103に対して移動型105を近づけて当接させる(型閉じを行う)。これにより、固定型103と移動型105との間に成形品(別の表現ではダイカスト品又は製品)の形状と同様の形状を有するキャビティCaが構成される。
【0013】
ダイカストマシン1は、例えば、キャビティCaに未硬化状態の金属材料を充填する(射出を行う。)。キャビティCaに充填された金属材料は金型101に熱を奪われて凝固する。これにより、成形品が作製される。その後、ダイカストマシン1は、成形品を取り出すために、移動型105を固定型103から離す(型開きを行う。)。ダイカストマシン1は、例えば、上記のような型閉じ、射出及び型開きが順に行われる成形サイクルを繰り返す。
【0014】
図2は、成形システムSM1の構成を示す模式的な上面図である。
【0015】
成形システムSM1は、型開きされた金型101から成形品107を取り出す取出装置21を有している。なお、取出装置21は、ダイカストマシン1とは別個の装置として捉えられてもよいし、ダイカストマシン1の一部として捉えられてもよい。本実施形態の説明では、便宜上、前者の捉え方を前提とした表現をすることがある。
【0016】
取出装置21は、例えば、取り出した成形品107をコンベア23に載置する。コンベア23によって搬送された成形品107は、例えば、後工程装置29によって後工程が施される。後工程としては、例えば、熱処理、バリ取り、切削加工、表面処理及び/又は組み立てが挙げられる。切削加工では、例えば、ビスケットなどの不要部分が除去される。
【0017】
また、成形システムSM1は、成形サイクルに係る種々の物理量を計測する種々のセンサ(ここでは不図示)を有している。当該物理量は、換言すれば、例えば、成形サイクルの進行に伴って値が変化する物理量、及び/又は成形サイクル同士で値が異なる物理量である。物理量の具体例としては、例えば、金型101の温度、金属材料の温度、1ショットの金属材料の量、金型101に金属材料を充填する速度(射出速度)、金型101内の金属材料の圧力(射出圧力又は鋳造圧力)、金属材料以外の物質(例えば冷却水、エアー若しくは離型剤)の温度若しくは供給量、並びにこれらに相関するダイカストマシン1(又は周辺設備)の各部における温度、位置、速度、圧力、流量及び電力が挙げられる。
【0018】
なお、以下では、便宜上、特に断りなく、1種の物理量のみに着目した説明乃至は表現を行うことがある。
【0019】
上記のような物理量は、成形品107の品質に相関する。そこで、取出装置21は、物理量の計測値が所定の数値範囲内か否かによって成形品107を仕分けする。例えば、物理量の計測値が数値範囲内である場合においては、取出装置21は、上記のように、成形品107をコンベア23に載置する。一方、物理量の計測値が数値範囲外である場合においては、取出装置21は、成形品107を不良品箱25に配置する。これにより、不良品である蓋然性が高い成形品107に対して後工程が行われることが回避される。
【0020】
なお、以下では、便宜上、物理量の計測値が所定の数値範囲内となる成形サイクルによって作製された成形品を「正常時の成形品」と称することがある。また、物理量の計測値が所定の数値範囲外となる成形サイクルによって作製された成形品を「異常時の成形品」と称することがある。その他、上記と同様の用い方で、「正常時」及び「異常時」の語を用いることがある。特に断りがない限り、複数の成形品は、同一種類のもの(形状、寸法及び材料が互いに同じもの)を指す。
【0021】
図8は、数値範囲の設定例を示す模式図である。
【0022】
この図において、横軸は、繰り返される成形サイクルの順番Nを示している。縦軸は、所定の物理量PQを示している。丸のプロットは、良品が作製された成形サイクルにおける物理量PQの値を示している。バツのプロットは、不良品が作製された成形サイクルにおける物理量PQの値を示している。ここでは、合計で、N1番目~N10番目までの10回分の成形サイクルの物理量PQの値が示されている。
【0023】
線LL40は、数値範囲R40の下限値を示している。線LU40は数値範囲R40の上限値を示している。図示の例では、N1(良品)、N3(不良品)、N4(良品)、N7(良品)及びN10(良品)の5個の物理量が数値範囲内に収まっている。上記の裏返しとなるが、図示の例では、N2(不良品)、N5(良品)、N6(不良品)、N8(不良品)及びN9(不良品)の5個の物理量が数値範囲外に位置している。
【0024】
この図に示されているように、物理量が数値範囲R40内に収まっていても、成形品が不良品であることがある(N3)。すなわち、正常時の成形品は、良品とは限らない。また、この図に示されているように、物理量が数値範囲R40外に位置していても、成形品が良品であることがある(N5)。すなわち、異常時の成形品は、不良品とは限らない。
【0025】
図示のような例では、数値範囲を狭くすると、例えば、不良品が正常時の成形品として仕分けされる蓋然性が低くなる一方で、良品が異常時の成形品として仕分けされる蓋然性が高くなる。良品が異常時の成形品として仕分けされる蓋然性が高くなると、良品が廃棄される蓋然性が高くなる。
【0026】
逆に、数値範囲を広くすると、例えば、不良品が正常時の成形品として仕分けされる蓋然性が高くなる一方で、良品が異常時の成形品として仕分けされる蓋然性が低くなる。不良品が正常時の成形品として仕分けされる蓋然性が高くなると、不良品に対して後工程が行われる蓋然性が高くなる。
【0027】
ここで、正常時及び異常時を問わず、良品及び不良品を問わない任意の数の成形品(別の観点では全ての成形品)に占める異常時の不良品の割合を「不良率」と称するものとする。また、不良率に相関する割合を「不良品指標率」と称するものとする。不良率以外の不良品指標率としては、例えば、正常時の成形品(良品及び不良品)に占める正常時の不良品の割合(以下、「不良含有率」ということがある。)、及び正常時及び異常時の不良品(別の観点では全ての不良品)に占める異常時の不良品の割合(以下、「不良検出率」ということがある。)を挙げることができる。
【0028】
不良品指標率は、別の観点では、正常時の不良品の数又は異常時の不良品の数を所定の母集団の数で割った値ということができる。母集団は、全ての成形品、正常時の成形品、異常時の成形品及び全ての不良品から適宜に選択されてよい。さらに別の観点では、不良品指標率は、同一の母集団(換言すれば所定数の成形品)を対象として数値範囲を変化させ、正常時の不良品の数(別の観点では異常時の不良品の数)が変化したときに変化する割合ということができる。また、例えば、同一の母集団を対象としている場合、不良検出率と、全ての不良品に占める正常時の不良品の割合との和は一定であるから、両者は等価とみなされてよい。
【0029】
図8の例では、不良品含有率は、20%(1/5×100)である。不良率は、40%(4/10×100)である。不良検出率は、80%(=4/5×100)である。
【0030】
また、異常時の成形品(良品及び不良品)に占める異常時の良品の割合を「良品含有率」と称するものとする。また、良品含有率又は当該良品含有率に相関する割合を「良品指標率」と称するものとする。良品含有率以外の良品指標率としては、例えば、正常時及び異常時の成形品(全ての成形品)に占める正常時の良品の割合、及び正常時及び異常時の良品(全ての良品)に占める正常時の良品の割合を挙げることができる。
【0031】
良品指標率は、別の観点では、正常時の良品の数又は異常の良品の数を所定の母集団の数で割った値ということができる。母集団は、全ての成形品、正常時の成形品、異常時の成形品及び全ての良品から適宜に選択されてよい。さらに別の観点では、良品指標率は、同一の母集団(換言すれば所定数の成形品)を対象として数値範囲を変化させ、正常時の良品の数(別の観点では異常時の良品の数)が変化したときに変化する割合ということができる。
【0032】
図8の例では、良品含有率は、20%(=1/5×100)である。全ての成形品に占める正常時の良品の割合は、40%(=4/10×100)である。全ての良品に占める正常時の良品の割合は、80%(=4/5×100)である。
【0033】
不良品指標率及び良品指標率の理解を深めるために、図8と同じ物理量の計測結果に対して、図8の数値範囲R40とは異なる数値範囲R20が設定された場合の例を図9に示す。図9は、図8と同様の図であり、線LU20及び線LL20は、数値範囲R20の上限値及び下限値を示している。
【0034】
図9の例では、N1(良品)、N2(不良品)、N3(不良品)、N4(良品)、N5(良品)、N6(不良品)、N7(良品)及びN10(良品)の8個の物理量が数値範囲R20内に収まっている。上記の裏返しとなるが、図示の例では、N8(不良品)及びN9(不良品)の2個の物理量が数値範囲R20の外に位置している。
【0035】
図9の例では、不良品含有率は、約37.5%(3/8×100)である。不良率は、20%(2/10×100)である。不良検出率は、40%(=2/5×100)である。
【0036】
また、図9では、良品含有率は、0%(=0/5×100)である。全ての成形品に占める正常時の良品の割合は、約50%(=5/10×100)である。全ての良品に占める正常時の良品の割合は、100%(=5/5×100)である。
【0037】
本実施形態では、成形システムSM1の設定値受付部は、不良品指標率の設定値の入力を受け付ける。より詳細には、例えば、ダイカストマシン1の操作部(後述)は、オペレータが希望する不良品指標率の値の入力を受け付ける。そして、成形システムSM1は、過去の成形サイクルにおける物理量の値と、その成形サイクルによって作製された成形品の良否の判定結果とを対応付けたデータに基づいて、不良品指標率の設定値が実現される数値範囲(上限値及び下限値)を算出する。
【0038】
このように過去のデータに基づいて、不良品指標率の設定値を実現する数値範囲を算出することによって、オペレータの経験によらずに、所望の不良品指標率を実現する数値範囲を設定することができる。これにより、例えば、不良品に後工程が行われることによって生じる無駄なコストをコントロールすることが容易化される。
【0039】
本実施形態では、成形システムSM1は、上記のように数値範囲が設定されたときに、数値範囲に対応する良品指標率を過去のデータに基づいて算出してよい。算出された良品指標率は、例えば、不良品指標率の設定値の妥当性の検証等に利用されてよい。例えば、良品含有率(異常時の成形品に占める良品の割合)が高すぎれば、不良指標率の設定値が厳しすぎる(例えば正常時の成形品に占める不良品の割合(不良含有率)が低すぎる)と判定することができる。
【0040】
(成形システムの詳細)
成形システムSM1は、例えば、既述のように、ダイカストマシン1、取出装置21、コンベア23、不良品箱25及び後工程装置29を有している。これらに加えて、成形システムSM1は、例えば、成形品107にマーキングするマーカ27と、ダイカストマシン1と通信を行う支援装置31とを有している。
【0041】
マーキングによって、成形サイクルと、成形品とが紐付けられ、ひいては、成形サイクルにおける物理量の計測値と、成形品の良否判定の結果とが紐付けられる。支援装置31は、例えば、コンピュータを含んで構成されており、過去のデータの記憶、不良品指標率の設定値に基づく数値範囲の算出、及び数値範囲に基づく良品指標率の算出を担う。
【0042】
なお、成形システムSM1は、ダイカストマシン1及び支援装置31のみを含むものとして定義されてもよい。換言すれば、ダイカストマシン1及び支援装置31以外の他の装置は、成形システムSM1とは別個の装置として捉えられてもよい。本実施形態の説明では、便宜上、成形システムSM1は、上記他の装置を含むと捉えた表現を基本とする。
【0043】
ここでは、概略、下記の順に成形システムSM1の説明を行う。
・ダイカストマシン1(図1及び図2
・取出装置21、コンベア23及び不良品箱25(図2
・マーカ27(図2
・後工程装置29(図2
・支援装置31(図2
・物理量、数値範囲及びセンサ
・成形品の良否判定
・成形システムSM1の信号処理系の構成(図3図6
・過去のデータの構成例(図7
・成形システムSM1の動作(図3図6
・数値範囲の設定方法の具体例(図8及び図9
・判定対象となる物理量の種類の選択方法の例(図10
・実施形態のまとめ
【0044】
(ダイカストマシン)
図1及び図2に示すダイカストマシン1は、既述のように、未硬化状態の金属材料を金型101が構成している空間(キャビティCaを含む。)へ射出する。未硬化状態は、例えば、液状又は固液共存状態である。固液共存状態は、液状から凝固が進んだ半凝固状態、又は固体状から溶融が進んだ半溶融状態である。金属は、例えば、アルミニウム合金、亜鉛合金又はマグネシウム合金である。なお、以下では、未硬化状態の金属材料が溶湯(液状の金属材料)であることを前提とした表現をすることがある。
【0045】
既述のように、金型101は、例えば、固定型103及び移動型105を含んでいる。本開示の図面では、便宜上、固定型103又は移動型105の断面を1種類のハッチングで示す。ただし、各型は、その全体が一体的に形成された直彫り式のものであってもよいし、入れ子をおも型にはめ込んで構成された入れ子式のものであってもよい。また、金型101は、固定型103若しくは移動型105に固定された固定中子、及び/又は、固定型103と移動型105とに挟まれる移動中子を有していてもよい。
【0046】
ダイカストマシン1は、例えば、種々の機械的動作を行う機械本体3と、機械本体3を制御する制御ユニット5とを有している。
【0047】
機械本体3は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置7と、金型101内に溶湯を射出する射出装置9と、ダイカスト品を固定型103又は移動型105(図1では移動型105)から押し出す押出装置11(図1)とを有している。機械本体3(例えば、型締装置7、射出装置9及び押出装置11)の構成及び動作は、種々の態様とされてよく、公知の構成とされて構わない。
【0048】
例えば、型締装置7は、トグル機構を利用して型開閉及び型締めを行うものであってもよいし(図示の例)、トグル機構を有さないものであってもよい。後者の態様において、型開閉と、型締めとは別個の駆動源によって行われてもよい。また、例えば、型締装置7の駆動方式は、電動式、液圧式(油圧式)又はこれらを組み合わせたハイブリッド式であってよい。
【0049】
射出装置9は、例えば、コールドチャンバマシン用のものであってもよいし(図1の例)、ホットチャンバマシン用のものであってもよいし、両者を組みわせたようなハイブリッド式のものであってもよい。また、例えば、射出装置9の駆動方式は、電動式、液圧式(油圧式)又はこれらを組み合わせたハイブリッド式であってよい。
【0050】
押出装置11は、例えば、移動型105から成形品を押し出すものであってもよいし(図1の例)、固定型103から成形品を押し出すものであってもよい。また、例えば、押出装置11は、電動式又は液圧式(油圧式)の駆動源を有するものであってもよいし、型締装置7による型開きを利用するもの(駆動源を有さないもの)であってもよい。
【0051】
制御ユニット5は、例えば、各種の演算を行って制御指令を出力する制御部13と、オペレータの入力操作を受け付ける操作部15と、オペレータに視覚的に情報を提示する表示部17と、を有している。図1及び図2では、制御ユニット5として、操作部15及び表示部17を含むインターフェース部(符号省略)が示されている。制御ユニット5は、インターフェース部とは別に設置された不図示の制御盤を含んでいてもよい。インターフェース部の位置は任意である。例えば、インターフェース部は、型締装置7の固定ダイプレート(符号省略)に設けられていてもよいし(図示の例)、機械本体3とは別個に設置された制御盤に設けられてもよい。
【0052】
制御部13は、例えば、コンピュータによって構成されてよい。コンピュータは、例えば、特に図示しないが、CPU(central processing unit)、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)及び外部記憶装置を含んで構成されている。CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、種々の演算を行う種々の機能部が構築される。なお、制御部13は、一定の処理のみを行う論理回路を含んでいてもよい。制御部13は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御部13は、型締装置7、射出装置9及び押出装置11毎の下位の制御部と、複数の下位の制御部の同期を図るなどの制御を行う上位の制御部とを含んで構成されてよい。
【0053】
操作部15及び表示部17の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされても構わない。例えば、操作部15は、表示部17を兼ねるタッチパネルと、機械式のスイッチ(符号省略)とを含んで構成されてよい。また、例えば、表示部17は、任意の2次元画像を表示するディスプレイ(例えば液晶表示ディスプレイ又は有機ELディスプレイ)を含んでいてよい。また、表示部17は、点灯状態によって情報を提示するランプ(例えばLED)を有していてもよい。
【0054】
表示部17は、オペレータに報知を行う報知部の一例である。ダイカストマシン1は、表示部17以外の報知部として、例えば、音響的に情報を提示するもの(例えばスピーカ)を有していてもよい。
【0055】
(取出装置、コンベア及び不良品箱)
取出装置21(図2)は、例えば、ダイカストマシン1からの信号に基づいて、成形サイクルに同期して成形品を金型101から取り出す。すなわち、取出装置21は、成形品の取出しの自動化に寄与している。ただし、本実施形態とは異なり、取出装置21は、オペレータの操作に基づいて動作してもよいし、また、取出装置21が設けられず、人力で成形品が取り出されてもよい。
【0056】
取出装置21の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同様とされて構わない。例えば、取出装置21は、成形品のうちのビスケット(不図示)を把持して成形品107を搬送する。取出装置21は、成形品の取出し専用に構成された装置であってもよいし、汎用の多関節ロボットであってもよい。
【0057】
図示の例とは異なり、正常時の成形品と異常時の成形品との仕分けは、取出装置21とは別の装置によって行われてもよい。例えば、取出装置21によって取り出された成形品は、一律にコンベア又は箱へ搬送されてよい。その後、仕分け用のロボットがコンベア又は箱から異常時の成形品をピックアップして除外したり、正常時の成形品及び異常時の成形品をピックアップして互いに別の場所へ搬送したりしてよい。又は、コンベア上を移動可能な仕切りが正常時の成形品が流れていく先とは異なる場所へ異常時の成形品を導いてよい。
【0058】
コンベア23及び不良品箱25は、それぞれ成形品の仕分け先の一例に過ぎない。仕分け先は、図示とは異なる態様とされて構わない。例えば、図示の例とは異なり、良品が搬入される箱と、不良品箱25とが設置されていてもよいし、良品が載置されるコンベアと、不良品が載置されるコンベアとが設けられていてもよい。コンベア及び箱の構成は種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同様とされて構わない。
【0059】
図示の例では、コンベア23は、正常時の成形品の仕分け先として利用されるだけでなく、正常時の成形品をマーカ27及び/又は後工程装置29へ自動的に搬送することに利用されている。図示の例とは異なり、この自動的な搬送は、コンベア以外の装置によって行われてもよい。例えば、汎用のロボットがコンベア23又は箱から正常時の成形品をピックアップして搬送してもよい。また、正常時の成形品は、自動的に搬送されるのではなく、コンベア又はロボットがオペレータの操作に応じたタイミングで動作することによって搬送されたり、人力によって搬送されたりしてもよい。
【0060】
正常時の成形品を自動的にマーカ27及び/又は後工程装置29へ搬送する動作は、仕分け後の動作ではなく、仕分けの一態様として行われてもよい。例えば、不図示のロボットは、全ての成形品(正常時の成形品と異常時の成形品とが混在している複数の成形品)から正常時の成形品をピックアップしてマーカ27及び/又は後工程装置29へ搬送してよい。
【0061】
成形品を自動的にマーカ27へ搬送する装置(コンベア23又は不図示のロボット)は、例えば、取出装置21と同様に、ダイカストマシン1の信号に基づいて、成形サイクルに同期して成形品をマーカ27へ搬送してよい。この場合、各成形サイクルが行われる時期と、各成形サイクルによって作製された成形品がマーカ27に搬送される時期との時間差は一定となる。この時間差は、マーカ27においてマーキングされる成形品と、当該成形品を作製した成形サイクルとの一方から他方を特定することに利用されてよい。
【0062】
(マーカ)
マーカ27が成形品に形成するマークは、例えば、文字、数字及び/又は記号の配列(以下、「文字列」という。)によって構成されており、個々の成形品と個々の成形サイクルとを紐付け可能な情報を示す。当該情報は、例えば、各成形サイクルに任意に割り振られた文字列であってもよいし、各成形サイクルが行われた時刻であってもよい。なお、以下では、便宜上、これらの情報を「識別情報」と称するものとする。マーカ27は、識別情報以外の情報を形成することに兼用されてもよい。
【0063】
マーカ27は、例えば、ダイカストマシン1からの信号に基づいて、成形サイクルに同期して、成形品に自動的にマーキングを行ってよい。ただし、マーカ27は、オペレータの操作に基づいてマーキングを行ってもよい。また、マーカ27を用いずに、手作業でマーキングを行うことも可能である。
【0064】
マーカ27は、例えば、種々の技術分野において利用されている種々のマーカと同様の構成とされてよい。例えば、マーカ27は、成形品に印を刻む(凹凸を形成する)もの(刻印機)であってもよいし、成形品に塗料を付着させるもの(印刷機)であってもよい。また、刻印機は、例えば、成形品に圧力を付与する打刻機であってもよいし、成形品にレーザー光を照射するレーザー刻印機であってもよい。
【0065】
図2の例では、マーカ27は、コンベア23に搬送されている成形品107に対してマーキングを行っている。ただし、既述のコンベア23及びこれに代わるロボットの説明からも理解されるように、マーカ27の構成は、そのようなものに限定されない。例えば、マーカ27が有しているテーブル上にロボットによって成形品が載置され、テーブル上の成形品に対してマーキングが行われてもよい。
【0066】
同一の成形品について、成形サイクルと良否判定の結果とを紐付け可能であれば、マーカ27は省略されてもよい。例えば、成形サイクルが行われてから良否判定までの時間長さが一定であれば、マーキングを行わなくても、紐付けは可能である。ただし、本実施形態の説明では、マーキングがなされることを前提とした表現をすることがある。
【0067】
(後工程装置)
後工程装置29が行う後工程の例については既に述べたとおりである。図示の後工程装置29は、種々の後工程に対応する複数の後工程装置のうちの1つが例示されたものと捉えられてもよいし、そのような複数の後工程装置の全体を1つの後工程装置として模式的にブロックで示したものと捉えられてもよい。後工程装置29の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成と同様とされて構わない。後工程装置29は、ダイカストマシン1から搬送された成形品に対して自動的に後工程を行ってもよいし、オペレータの操作に応じたタイミングで(すなわち自動的でなく)後工程を行ってもよい。前者の態様において、後工程装置29は、ダイカストマシン1の信号に基づいて、成形サイクルと同期して後工程を行ってもよいし、成形サイクルと同期せずに後工程を行ってもよい。
【0068】
図示の例では、マーカ27によるマーキングの後に後工程装置29による後工程が行われている。これにより、例えば、成形サイクルと、後工程がなされる成形品とを紐付けることができる。ただし、そのようなマークに基づく紐付けが不要な場合は、マーキングは、後工程の後に行われてもよい。このような場合としては、紐付け自体が後工程にとって不要な場合と、成形サイクルと後工程とが同期している(換言すれば両者の時間差が一定である)ことなどによって、マークによらずに紐付け可能な場合とが挙げられる。ただし、本実施形態の説明では、便宜上、後工程の前にマーキングが行われる態様を前提とした表現をすることがある。
【0069】
(支援装置)
支援装置31は、例えば、既述のように、コンピュータによって構成されてよい。コンピュータは、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含んで構成されている。CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、種々の演算を行う種々の機能部(後述する演算部39)が構築される。なお、支援装置31は、一定の処理のみを行う論理回路を含んでいてもよい。支援装置31は、ハードウェア的に1カ所に纏められていてもよいし、複数個所に分散されて配置されていてもよい。
【0070】
上記に関連して、支援装置31は、1台のダイカストマシン1に1つ設けられるものであってもよいし、複数台のダイカストマシン1に1つ設けられるものであってもよい。別の観点では、支援装置31は、1台のダイカストマシン1とのみ通信を行ってもよいし、複数台のダイカストマシン1と通信を行ってもよい。また、後者の態様において、1つの支援装置31に対応する複数台のダイカストマシン1は、互いに同一の構成を有していてもよいし、互いに異なる構成を有していてもよい。
【0071】
支援装置31が複数のダイカストマシン1と通信を行う態様において、複数台のダイカストマシン1は、互いに同一の構成を有する金型101を使用する(別の観点では同一種類の成形品を作製する)ように運用されるものであってもよいし、そのように運用されるものでなくてもよい。また、同一の支援装置31と通信を行う複数台のダイカストマシン1は、互いに同一の工場に設置されていてもよいし、互いに異なる工場に設置されていてもよい。
【0072】
支援装置31とダイカストマシン1との距離は任意である。例えば、支援装置31は、ダイカストマシン1に隣接して配置されてよい。逆に、支援装置31は、ダイカストマシン1が設置されている工場内においてダイカストマシン1から離れた位置に設置されていてもよいし、ダイカストマシン1が設置されている工場とは別の場所に設置されていてもよい。また、支援装置31は、1つのダイカストマシン1の一部として捉えることが可能な態様で設けられていてもよい。例えば、支援装置31及び制御部13(その少なくとも一部)は、同一の筐体に収容されていてもよい。
【0073】
支援装置31とダイカストマシン1との間で信号を送受信するための構成は任意である。例えば、支援装置31とダイカストマシン1(制御部13)とは、ケーブルによって互いに直接的に接続されていてもよいし、近距離無線通信を行ってもよいし、ネットワーク(例えばLAN(Local Area Network)又はインターネット)を介して通信を行ってもよい。また、支援装置31と制御部13(その少なくとも一部)とは、同一のハードウェア資源(CPU等)を共用していてもよい。すなわち、支援装置31と、制御部13とは、本実施形態の説明とは異なり、相互に通信を行わない態様であってもよい。
【0074】
(物理量、数値範囲及びセンサ)
成形サイクルの進行に伴って変化する種々の物理量の例は、既に述べたとおりである。成形システムSM1は、種々の物理量のうち、任意の1以上の物理量について、各物理量に対して数値範囲を設定して、正常時の成形品及び異常時の成形品の仕分けに利用してよい。また、仕分けに利用される物理量は、例えば、成形サイクル内の1つ以上の所定の時点のものであってもよいし、成形サイクルの一部又は全部の期間における、代表値(例えば平均値)、最大値又は最小値であってもよい。同一種類の物理量(別の観点では同一のセンサによって検出される物理量)であっても、互いに異なる時点の物理量について、それぞれ別個に仕分けのための数値範囲が設定されてもよい。この場合、互いに異なる時点の物理量は、互いに異なる種類の物理量として捉えられてもよい。
【0075】
物理量の値が正常時の成形品に対応する数値範囲の外側の値である場合としては、物理量の値が数値範囲の上限値よりも大きい場合、及び物理量の値が数値範囲の下限値よりも小さい場合が挙げられる。物理量の種類によっては、例えば、物理量の値が上限値を超える蓋然性が極めて低かったり、物理量の値が大きくなっても成形品の品質に及ぼす影響が小さかったりする場合がある。このような場合においては、数値範囲の上限値が設定されていなくてもよいし、又は物理量の値が数値範囲の上限値よりも大きいか否かの判定が行われなくてもよい。上限値について述べたが、下限値についても同様である。
【0076】
2種以上の物理量が仕分けに利用される場合、その2種以上の物理量の計測値が数値範囲外であるか否かの判定結果は、適宜に仕分けに利用されてよい。例えば、2種以上の物理量の計測値のうち、少なくとも1種の物理量の計測値が数値範囲外である場合に、成形品は、異常時の成形品として仕分けされてよい。また、例えば、物理量の計測値が数値範囲外である物理量の種類の数が所定数以上である場合に、成形品が異常時の成形品として仕分けされてよい。換言すれば、物理量の計測値が数値範囲外である物理量の種類の数が所定数未満である場合は、成形品は正常時の成形品として仕分けされてよい。また、特定の種類の物理量については、その計測値が数値範囲外である場合には、成形品を異常時の成形品として仕分けする一方で、他の種類の物理量については、計測値が数値範囲外となった物理量の種類の数が所定数以上である場合に、成形品が異常時の成形品として仕分けされるようにしてもよい。
【0077】
なお、上記の説明から理解されるように、例えば、1種の物理量に着目して「物理量の計測値が数値範囲外の値となった成形サイクルによって作製された成形品を、他の成形サイクルによって作製された成形品から仕分けする」というとき、前者の成形品は、後者の成形品から仕分けされないことがあってもよい。従って、上記は、例えば、「物理量の計測値が数値範囲外の値となった成形サイクルによって作製されたことを少なくとも1つの必要条件として成形品を他の成形サイクルによって作製された成形品から仕分けする」と言い換えられてよい。
【0078】
物理量の説明から理解されるように、成形システムSM1は、1以上の種々の物理量を検出する種々のセンサを有してよい。センサの種類としては、例えば、温度センサ、位置センサ、速度センサ、加速度センサ、荷重センサ、圧力センサ、流量センサ、電流センサ及び電圧センサが挙げられる。各センサの構成は、公知のものとされてよい。また、1つのセンサは、2種以上の物理量の検出に兼用されてもよい。例えば、位置、速度及び加速度は、微分又は積分によって相互に変換可能であるから、1種のセンサによって検出されてよい。また、2つ以上のセンサの検出値から算出される値が1つのセンサの検出値のように扱われてもよい。すなわち、2つ以上のセンサが1つのセンサと捉えられてもよい。例えば、2つ以上の温度センサの検出した温度の統計値が利用される場合、当該2つ以上の温度センサは1つのセンサとして捉えられても構わない。
【0079】
また、物理量の説明から理解されるように、種々のセンサは、適宜な位置に設けられてよい。例えば、種々のセンサは、金型101、ダイカストマシン1、及びダイカストマシン1の周辺設備等の種々の位置に設けられてよい。周辺設備としては、例えば、ダイカストマシン1に溶湯を供給する供給装置(不図示)、金型101に離型剤をスプレイするスプレイ装置(図1参照。符号省略)、既述の取出装置21、及び金型101に冷却水を供給する供給装置(不図示)が挙げられる。ただし、これらの周辺設備は、ダイカストマシン1の一部として捉えられても構わない。
【0080】
(成形品の良否判定)
本実施形態では、例えば、以下のとおり、少なくとも2種類の良否判定が行われる。
【0081】
第1の良否判定は、正常時の成形品及び異常時の成形品を含む複数の成形品に対して行われるものである。第1の良否判定の結果は、例えば、不良品指標率の設定値に基づく数値範囲の算出、数値範囲に基づく良品指標率の算出、及び後述する判定対象となる物理量の種類の選択(これらを統計処理と称することがある。)に利用される。第1の良否判定は、例えば、成形品の試作品に対して行われる。別の観点では、第1の良否判定は、最適な成形条件の探査などを目的として、成形条件を適宜に変えながら成形サイクルを実行したときの成形品に対して行われる。
【0082】
第2の良否判定は、仕分け後の正常時の成形品のみに対する良否判定である。この良否判定の結果は、例えば、正常時の成形品を出荷してよいか否かの判定に利用され、上記の統計処理には利用されない。第2の良否判定は、例えば、実際に出荷されることを目的として作製された成形品に対して行われる。別の観点では、第2の良否判定は、基本的に一定の成形条件で成形サイクルを繰り返したときの成形品に対する良否判定である。ただし、成形条件は、成形サイクルを繰り返す過程において、オペレータ及び/又は制御部13によって適宜に調整されて構わない。
【0083】
第2の良否判定の結果を含むデータを第1の良否判定の結果を含むデータに追加していくと、例えば、物理量の値が数値範囲外かつ不良の判定結果のデータは追加されない一方で、物理量の値が数値範囲内かつ不良の判定結果のデータは追加されることになる。その結果、例えば、不良品指標率の設定値を再設定したときに、設定値に応じた数値範囲は、追加されたデータが多いほど狭くなる。ひいては、統計処理の妥当性が低くなる。このことから、第2の良否判定の結果を含むデータは、統計処理に基本的に利用されない。ただし、何らかの推論及び処理に基づいて、第2の良否判定の結果を含むデータが統計処理に利用されてもよい。
【0084】
第1の良否判定が行われるときは、既述の説明とは異なり、例えば、取出装置21は、物理量の値に基づく成形品の仕分けを行わず、全ての成形品をコンベア23に載置する。コンベア23に載置された成形品は、マーカ27によってマーキングされ、後工程装置29によって後工程が行われる。成形品の良否判定は、例えば、コンベア23に載置された以後に行われる。
【0085】
第2の良否判定が行われるときは、これまでに説明したように、取出装置21は、物理量の値に基づく成形品の仕分けを行う。コンベア23に載置された正常時の成形品は、マーカ27によってマーキングされ、後工程装置29によって後工程が行われる。成形品の良否判定は、第1の良否判定と同様に、コンベア23に載置された以後に行われる。
【0086】
上記から理解されるように、第1の良否判定及び第2の良否判定は、その前段階において仕分けの有無が異なるものの、判定自体は互いに同一の時期及び同一の方法によって行われてよい。ただし、両者の時期及び/又は方法に差異があっても構わない。例えば、第1の良否判定が後工程の前に行われる一方で、第2の良否判定が後工程の後に行われてもよい。
【0087】
なお、第2の良否判定は、必ずしも成形サイクルと良否の判定結果とを紐付ける必要はない。従って、第2の良否判定が行われるときは、上記の紐付けを目的としたマーキングが行われなくてもよい。また、試作品は、必ずしも後工程が行われなくてもよい。換言すれば、第1の良否判定が行われるときは、後工程が行われなくてもよい。
【0088】
本実施形態の説明では、便宜上、第1の良否判定と第2の良否判定とは、取出装置21による仕分けの有無及び具体的な成形条件を除いて、概ね同様に行われることを前提とした表現をすることがあり、また、第1の良否判定及び第2の良否判定を特に区別しないことがある。
【0089】
成形品の良否判定は、成形品が金型101から取り出された以後からの適宜な時期に行われてよい。例えば、成形品の良否判定の時期は、成形品が金型101から取り出されてからマーカ27へ搬送されるまでの期間内の適宜な時期に行われてもよいし、マーカ27に位置しているときに行われてもよいし、マーカ27から後工程装置29に搬送されるまでの期間内の適宜な時期に行われてもよいし、後工程装置29に位置しているときに行われてもよいし、後工程装置29から搬出された後に行われてもよい。
【0090】
本実施形態の説明では、主として、成形品が後工程装置29へ搬送された以後に良否判定が行われる態様を例に取る。この場合、良否判定を行う装置は、後工程装置29の一例として捉えられてもよい。すなわち、図2に示す後工程装置29は、良否判定を行う装置が図示されたものと捉えられてもよい。以下の説明では、後工程装置29を良否判定装置として参照することがある。
【0091】
また、成形品の良否判定は、種々の方法によって行われてよく、例えば、公知の方法と同様の方法とされても構わない。例えば、成形品を撮像した画像に基づいてコンピュータが良否判定を行ってよい。成形品の撮像は、可視光を利用するものであってもよいし、放射線(例えばX線)を利用するものであってもよい。また、上記画像は、表面の画像であってもよいし、コンピュータ断層撮影(CT)によって取得した断層画像であってもよい。また、例えば、接触式又は非接触式の計測装置によって成形品の寸法を計測し、その計測した寸法に基づいてコンピュータが良否判定を行ってもよい。良否判定は、表面形状の寸法誤差又は巣の寸法等が所定の許容範囲に収まっているか否かであってもよいし、パターンマッチングに基づくものであってもよいし、AI(artificial intelligence)技術を利用したものであってもよい。さらに良否判定は、目視によって行うことも可能である。
【0092】
1回の成形サイクルで作製される1つの成形品107は、2以上の製品を含んでいることがある。このような場合、良否判定は、成形品107を1つの単位として行われてよい。ただし、1つの成形品107が含む2以上の製品のそれぞれについて良否判定が行われても構わない。この場合、例えば、少なくとも1つの製品が不良品である場合に不良品が作製されたと判定されてもよいし(ただし、この場合は成形品107単位での判定と捉えることもできる)、製品毎の判定結果を1つの判定結果として良品指標率等を算出する統計処理に利用してもよい。なお、本実施形態の説明では、便宜上、1つの成形品107につき1つの判定結果が得られることを前提とした表現をすることがある。
【0093】
(成形システムの信号処理系の構成)
図3図6は、成形システムSM1の信号処理系の構成を示すブロック図である。図3図6は、成形システムSM1の動作を説明する図ともなっており、ブロック間の信号を示す矢印等が互いに異なっている。ここでの説明では、基本的に、図3図6のいずれを参照しても構わない。
【0094】
成形システムSM1は、既述のように、ダイカストマシン1、取出装置21、マーカ27、後工程装置29及び支援装置31を有している。
【0095】
ダイカストマシン1は、既述の制御部13、操作部15及び表示部17の他、例えば、センサ33、機械側送信部35、機械側受信部37を有している。センサ33は、成形サイクルに伴って変化する物理量を検出するセンサ(既述)である。ここでは、1以上のセンサ33のうちの1つが代表して図示されている。機械側送信部35は、信号(別の観点では情報及び/又はデータ。以下、同様。)をダイカストマシン1の外部へ送信する。機械側受信部37は、信号をダイカストマシン1の外部から受信する。
【0096】
機械側送信部35及び機械側受信部37の通信の方式は適宜なものとされてよく、例えば、有線及び/又は無線とされてよい。機械側送信部35及び機械側受信部37の通信相手は、例えば、コンベア23(ここでは不図示)、取出装置21、マーカ27、後工程装置29及び支援装置31である。既述のように、機械側送信部35及び機械側受信部37と支援装置31との通信は、直接的なものであってもよいし、ネットワーク(例えばLAN及び/又はインターネット)を介した間接的なものであってもよい。
【0097】
支援装置31は、例えば、種々の演算を行う演算部39と、データを記憶する記憶部41と、支援装置31の外部へ信号を送信する支援側送信部43と、支援装置31の外部から信号を受信する支援側受信部45とを有している。記憶部41は、例えば、物理量の値と良否判定の結果とをそれぞれ対応付けている複数の過去データを記憶している。演算部39は、例えば、記憶部41が記憶している複数の過去データに基づいて統計処理を行う。
【0098】
支援側送信部43及び支援側受信部45の通信の方式は適宜なものとされてよく、例えば、有線及び/又は無線とされてよい。支援側送信部43及び支援側受信部45の通信相手は、例えば、ダイカストマシン1及び後工程装置29(良否判定装置)である。これまでの説明から理解されるように、支援側送信部43及び支援側受信部45の通信は、直接的なものであってもよいし、ネットワーク(例えばLAN及び/又はインターネット)を介した間接的なものであってもよい。
【0099】
(過去のデータの構成例)
図7は、支援装置31の記憶部41が記憶するデータベースDB1の構成例を概念的に示す模式図である。
【0100】
データベースDB1は、複数の過去データDT1(図中、テーブル内の複数の行で表現されている。)を有している。各過去データDT1は、1回の成形サイクルにおける1以上の物理量の値と、前記1回の成形サイクルによって作製された成形品の良否判定の結果の情報とを有している。前者については、「物理量1」、「物理量2」及び「物理量3」の欄によって表現されている。後者については「判定結果」の欄によって表現されている。そして、データベースDB1は、不良品指標率の設定値に対応する物理量の数値範囲の算出、数値範囲に対応する良品指標率の算出、及び判定対象となる物理量の選択(後述)等の統計処理に利用される。
【0101】
過去データDT1は、識別情報を含んでいてよい。この識別情報の内容は、例えば、マーカ27によって成形品にマーキングされる識別情報の内容と同様のものである。ただし、マーキングされる識別情報は、成形サイクル(その物理量の値)と、成形品の良否判定の結果の情報とを対応付けてデータベースDB1に記憶させるためのものであるから、記憶後においては必須のものではない。従って、過去データDT1は、マーキングされた識別情報の内容を含んでいなくてもよい。念のために記載すると、過去データDT1は、データ処理において複数の過去データDT1を互いに区別するための識別情報(マーキングされた識別情報の内容とは無関係な内容の識別情報)を含んでいて構わない。
【0102】
1つのデータベースDB1は、例えば、単一のダイカストマシン1によって同一種類の成形品を繰り返し成形したときに構築されたものである。そして、上記1つのデータベースDB1は、上記単一のダイカストマシン1によって利用される。ただし、1つのデータベースDB1は、互いに同一の構成を有する複数のダイカストマシン1によって同一種類の成形品を成形したときに構築されたもの、及び/又は互いに同一の構成を有する複数のダイカストマシン1によって同一種類の成形品を形成するときに利用されるものとされてもよい。別の観点では、データベースDB1の構築に供されるダイカストマシン1の数と、データベースDB1を利用するダイカストマシン1の数とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0103】
互いに同一の構成を有する複数のダイカストマシン1によって同一種類の成形品を成形して1つのデータベースDB1を構築し、利用する場合においては、例えば、過去データDT1の数を多くすることができ、データ数が少ないことに起因する算出結果のばらつきを低減できる。単一のダイカストマシン1によってデータベースDB1を構築し、利用する場合においては、例えば、金型101の個体間の相違、ダイカストマシン1の個体間の相違、ダイカストマシン1の周辺設備の構成の装置若しくは個体間の相違、外部環境の相違に起因する算出結果のばらつきを低減できる。従って、適宜にいずれかの態様が選択されてよい。
【0104】
特に図示しないが、記憶部41は、複数のデータベースDB1を有していてよい。そして、支援装置31は、成形品の種類及び/又はダイカストマシン1の種類に応じて、データベースDB1を選択し、その選択したデータベースDB1に対して、過去データDT1の蓄積、又は過去データDT1の読み出し(統計処理)を実行してよい。
【0105】
より詳細には、例えば、特に図示しないが、記憶部41は、データベースDB1を特定する情報と、データベースDB1と、を対応付けて記憶しているデータベースを有していてよい。データベースDB1を特定する情報は、例えば、成形品の種類を特定する情報と、ダイカストマシン1の種類を特定する情報とを対応付けたものとされてよい。又は、データベースDB1を特定する情報は、成形品の種類及びダイカストマシン1の種類の組み合わせそれぞれに対して適宜に割り振られた識別情報とされてよい。そして、支援装置31は、過去データDT1と上記のデータベースDB1を特定する情報とを共に受信して、対応するデータベースDB1に過去データDT1を蓄積したり、統計処理の要求と上記のデータベースDB1を特定する情報とを共に受信して、対応するデータベースDB1に基づく統計処理を行ったりしてよい。
【0106】
ただし、本実施形態の説明では、便宜上、支援装置31が複数のデータベースDB1から1つのデータベースDB1を選択する動作等についての説明は基本的に省略する。そして、支援装置31が1つのデータベースDB1のみを有しているかのように表現することがある。
【0107】
複数の試作品が作製されたとき、1つのデータベースDB1は、全ての試作品についての過去データDT1を含んでいてもよいし、一部の試作品についての過去データDT1を含んでいてもよい。第2の良否判定結果を統計処理に基本的に利用しないことについての既述の説明から理解されるように、データベースDB1において物理量の値が特異な値に偏っていれば、データベースDB1に基づいて算出した良品指標率の値の妥当性が低くなる。従って、データベースDB1において物理量の値が所定の範囲に亘って分布するように、試作品の条件設定がされたり、全ての試作品の過去データDT1からデータベースDB1を構築する過去データDT1が抽出されたりしてよい。このときの分布は、一様分布又は正規分布等の適宜な分布態様とされてよい。
【0108】
(成形システムの動作)
成形システムSM1の動作は、例えば、下記のように分けて捉えることができる。ここでの説明では、概略、下記の順に成形システムSM1の動作について説明する。
・過去データDT1を蓄積する動作
・過去データDT1に基づいて仕分けのための数値範囲を設定する動作
・設定した数値範囲に基づいて仕分けを行う動作
・数値範囲の設定を補助する動作(良品指標率を算出する動作)
【0109】
(過去データの蓄積)
図3は、過去データDT1を蓄積する動作を模式的に示している。図3は、既述の第1の良否判定(正常時の成形品及び異常時の成形品を対象とした良否判定)を行うときの動作を示していると捉えられてもよく、別の観点では、試作品を成形しているときの動作を示していると捉えられてもよい。
【0110】
ダイカストマシン1が成形サイクルを行うとき、センサ33から制御部13への矢印によって示されているように、成形サイクルに係る物理量が検出される。この物理量の計測値の情報DT5は、機械側送信部35から送信され、支援装置31の支援側受信部45によって受信される。このとき、物理量の計測値の情報DT5には、情報DT5が含む計測値が得られた成形サイクルを特定する情報を含む識別情報DT7が付されている。
【0111】
識別情報DT7は、マーカ27の既述の説明において述べた成形サイクルを特定する情報である。識別情報DT7は、例えば、既述のように、制御部13が任意に成形サイクルに割り振った文字列、又は成形サイクルが行われた時刻の情報とされてよい。識別情報DT7は、例えば、制御部13によって生成されてよく、機械側送信部35を介してマーカ27にも送信される。
【0112】
識別情報DT7を受信したマーカ27は、その識別情報DT7を成形品にマーキングする。このとき、識別情報DT7が示す成形サイクルと、識別情報DT7がマーキングされる成形品を成形した成形サイクルとが一致するように、適宜な方策がとられてよい。例えば、既に触れたように、取出装置21及びコンベア23(並びにマーカ27)は、ダイカストマシン1からの信号に基づいてダイカストマシン1に同期して動作し、成形サイクルから一定の時間が経過したときに成形品をマーカ27へ搬送してよい。そして、マーカ27は、識別情報DT7を受信してから一定の時間が経過したときに、その識別情報DT7をマーカ27に搬送された成形品にマーキングしてよい。
【0113】
マーカ27によって識別情報DT7がマーキングされた成形品は、後工程装置29の一例又は一部としての良否判定装置によって良否判定がなされる。そして、判定結果の情報DT9は、識別情報DT7が付されて支援装置31の支援側受信部45によって受信される。後工程装置29は、特に図示しないが、例えば、イメージャによって成形品にマーキングされた識別情報DT7を読み取ってよい。
【0114】
支援装置31の支援側受信部45は、上記のように、識別情報DT7が付された物理量の計測値の情報DT5と、識別情報DT7が付された良否判定の結果の情報DT9とを受信する。そして、演算部39は、同一の識別情報DT7が付された情報DT5と情報DT9とを対応付けて(過去データDT1を生成して)データベースDB1に追加する。このようにして、過去データDT1が蓄積される。
【0115】
(数値範囲の設定)
図4は、仕分けに用いる数値範囲を設定する動作を模式的に示している。
【0116】
ダイカストマシン1における操作部15から制御部13への矢印によって示されているように、例えば、制御部13は、操作部15を介して不良品指標率の設定値の入力を受け付ける。すなわち、オペレータは、不良品指標率の設定値として任意の値を入力する。そして、入力された設定値の情報DT11は、ダイカストマシン1の機械側送信部35から支援装置31の支援側受信部45へ送信され、ひいては、演算部39によって取得される。
【0117】
図示の例とは異なり、不良品指標率の設定値は、外部の入力機器(例えばパーソナルコンピュータ。以下、同様。)から機械側受信部37を介して制御部13へ入力されてもよい。また、不良品指標率の設定値は、支援装置31が有している不図示の操作部を介して入力されたり、外部の入力機器から支援側受信部45へ入力されたりしてもよい。すなわち、不良品指標率の設定値は、ダイカストマシン1を介さずに、演算部39によって取得されてもよい。
【0118】
演算部39は、記憶部41に記憶されているデータベースDB1を参照することによって、取得した不良品指標率の設定値を実現する数値範囲を特定する。そして、特定された数値範囲の情報DT13は、支援側送信部43からダイカストマシン1の機械側受信部37へ送信され、ひいては、制御部13によって取得される。
【0119】
(仕分け)
図5は、仕分けの動作を模式的に示している。
【0120】
図4を参照して説明したように、制御部13は、数値範囲の情報DT13を保持している。また、センサ33から制御部13への矢印によって示されているように、制御部13は、成形サイクル毎に、物理量の計測値を取得する。そして、制御部13は、成形サイクル毎に、取得した物理量の計測値が数値範囲外であるか否かを判定し、その判定結果に応じて異なる信号を取出装置21に出力する。そして、取出装置21は、受信した信号に応じて仕分けを行う。
【0121】
なお、既に触れたように、複数種類の物理量のそれぞれの判定結果に基づいて、正常時の成形品及び異常時の成形品のいずれとするかの判定がさらに行われてよく、この判定も制御部13が行ってよい。上記の物理量の計測値が数値範囲外であるか否かの判定結果に応じて異なる信号は、正常時の成形品及び異常時の成形品のいずれであるかを示す信号と読み替えてよい。
【0122】
(良品指標率の算出)
図6は、良品指標率を算出する動作を模式的に示している。図6では、図4に示した動作の一部も示されている。
【0123】
図4を参照して説明したように、ダイカストマシン1の操作部15に入力された不良品指標率の設定値(その情報DT11)は、機械側送信部35及び支援側受信部45を介して、支援装置31の演算部39によって取得される。演算部39は、既述のように、不良品指標率の設定値を実現する数値範囲を算出する。さらに、演算部39は、算出した数値範囲と、記憶部41に記憶されているデータベースDB1とに基づいて、良品指標率の値を算出する。算出された良品指標率の値の情報DT15は、支援側送信部43から機械側受信部37へ送信され、ひいては、制御部13によって取得される。制御部13から表示部17への矢印によって示されているように、良品指標率の値は、例えば、表示部17に表示される。
【0124】
特に図示しないが、上記のようにして算出された良品指標率の値の表示とともに、制御部13は、入力された不良品指標率の設定値に基づく仕分けを行ってよいか否かを問い合わせる表示を表示部17に行わせてもよい。そして、制御部13は、操作部15に対する、不良品指標率の設定値に基づく仕分けを承認する操作、及び不良品指標率の設定値を再設定する操作を受け付けてよい。後者の操作がなされたときは、再度、図4及び図6を参照して説明した数値範囲の設定及び良品指標率の算出が行われてよい。
【0125】
なお、支援装置31は、良品指標率の値に係る情報DT15として、良品指標率の値自体の情報に代えて、又は加えて、良品指標率の値をランク分けした場合の該当ランクの情報を送信したり、良品指標率の値に基づく不良品指標率の設定値の適否の判定結果の情報を送信したりしてよい。あるいは、制御部13は、受信した良品指標率の値に基づいて、上記のようなランク分け、又は適否の判定を行ってよい。そして、表示部17は、良品指標率の値自体に代えて、又は加えて、上記のようなランク又は判定結果を表示してもよい。
【0126】
(数値範囲の設定方法の具体例)
不良品指標率の設定値を実現する数値範囲を特定する具体的な手順は種々のものとされてよい。図8及び図9を参照して、具体的な手順の一例について説明する。
【0127】
まず、線RLによって示されている基準値を設定する。基準値は、例えば、良品のデータの物理量の代表値(例えば平均値又は中央値)とする。次に、基準値からの差d1(絶対値のみに着目する。)が互いに同一になる上限値及び下限値であって、不良品指標率の設定値を実現できる上限値及び下限値を算出する。
【0128】
不良品指標率の設定値を実現できる上限値及び下限値の算出方法は、適宜なものとされてよい。例えば、仮の上限値及び下限値を設定して不良品指標率を算出する処理を、差d1を小さく又は大きくしながら繰り返すことによって、不良品指標率の設定値を実現できる上限値及び下限値が算出されてよい。また、例えば、不良品の物理量の値を、基準値からの差d3が大きい順に並べ、不良品検出率(異常時の不良品が正常時及び異常時の不良品に占める割合)の設定値に相当する順番の差d3と次の順番の差d3との間の値を上限値及び下限値の基準値からの差d1として特定してもよい。
【0129】
なお、例えば、不良品検出率の設定値に相当する順番の差d3と次の順番の差d3とが同一であるような場合においては、この同一の差d3が上限値及び下限値の基準値からの差d1として用いられてもよいし、上記の同一の差d3の次の順番の差d3が上限値及び下限値の基準値からの差d1として用いられてもよい。このように、不良品指標率の設定値を実現する上限値又は下限値は、1以上の少数のサンプル数に対応する誤差が存在して構わない。
【0130】
上記の手順は、適宜に変形されて構わない。例えば、基準値は、良品の物理量の値に基づいて算出されるのではなく、不良品の物理量の値又は全ての成形品の物理量の値に基づいて算出されてもよい。基準値を算出せずに、上限値及び下限値が特定されてもよい。例えば、仮の幅(2×d1)を有する仮の数値範囲を設定し、仮の数値範囲を縦軸PQの方向に移動させつつ不良品指標率の設定値を実現できる仮の数値範囲の位置が存在するか否かを判定する処理を、上記幅(2×d1)を小さく又は大きくしながら繰り返してもよい。
【0131】
同一の不良品指標率を実現可能な数値範囲は複数存在する。例えば、図9では、物理量の値が大きい2つの不良品(N9及びN8)が除外されて不良検出率40%とされているが、物理量の値が最大の不良品(N9)及び物理量の値が最小の不良品(N2)を除外して不良検出率40%としたり、物理量の値が小さい2つの不良品(N2及びN3)を除外して不良検出率40%としたりすることができる。そして、数値範囲の特定方法によっては、複数の数値範囲が特定され得る。このような場合において、複数の数値範囲から実際に仕分けに利用する数値範囲を特定する方法は適宜なものとされてよい。例えば、各数値範囲を用いたときの良品含有率(異常時の成形品に占める良品の割合)を算出して、良品含有率が最も小さくなる数値範囲が選択されてよい。
【0132】
(判定対象となる物理量の種類の選択方法の例)
仕分けに利用される物理量の種類は、適宜に選択されてよい。
【0133】
例えば、仕分けに利用される物理量の種類は、成形システムSM1の製造者によって選択されてよい。別の観点では、仕分けに利用される物理量の種類を特定する情報は、ダイカストマシン1及び/又は支援装置31のROM又は外部記憶装置に予め記憶されていてよい。また、例えば、仕分けに利用される物理量の種類は、ダイカストマシン1のオペレータによって選択されてよい。別の観点では、仕分けに利用される物理量の種類を特定する情報は、操作部15等を介して入力されて、ダイカストマシン1及び/又は支援装置31の外部記憶装置に記憶されてよい。
【0134】
また、例えば、仕分けに利用される物理量の種類は、データベースDB1に基づいて、ダイカストマシン1の制御部13又は支援装置31の演算部39が選択してもよい。このとき、制御部13又は演算部39は、所定のアルゴリズムに従って物理量の種類を選択してもよいし、AI技術を利用して物理量の種類を選択してもよい。以下では、演算部39が所定のアルゴリズムに従って物理量の種類を選択する場合の手順の一例を示す。
【0135】
図10は、演算部39が実行する仕分けに利用される物理量の種類(以下、「判定対象」ということがある。)を選択する処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、過去データDT1が蓄積されてデータベースDB1が構築された後から、かつデータベースDB1を利用した仕分けの動作が実行される前までの任意の時期に行われてよい。
【0136】
図10では、説明を容易にするために、不良品指標率として不良品検出率(不良品に占める異常時の不良品の割合)を例に取り、良品指標率として良品含有率(異常時の成形品に占める良品の割合)を例に取っている。以下の説明において、これらの説明の「大きい」又は「小さい」等の語は、指標率の種類によっては、「小さい」又は「大きい」等の逆の語に読み替えられる。
【0137】
ステップST1では、演算部39は、複数種類の物理量のうち、任意の物理量を選択する。なお、複数種類の物理量は、ダイカストマシン1によって計測がなされ、過去データDT1に計測値が含まれているものである。
【0138】
ステップST2では、演算部39は、不良品指標率の設定値として仮の値(仮想値)を設定する。この仮想値は、例えば、支援装置31の製造者によって予め設定されていてもよいし、ダイカストマシン1のオペレータによって設定されてもよい。換言すれば、支援装置31のROM又は外部記憶装置に予め記憶されていてもよいし、操作部15を介して入力されてもよい。また、仮想値は、物理量の種類毎に設定されていてよい。
【0139】
ステップST3では、演算部39は、データベースDB1を参照して、上記の仮の設定値を実現する数値範囲を特定し、特定した数値範囲を利用した場合の良品指標率を算出する。このときの算出手順は、不良品指標率の設定値から良品指標率を算出するまでの既述の手順と同様とされてよい。
【0140】
ステップST4では、演算部39は、算出した良品含有率が所定の閾値よりも小さいか否かを判定する。閾値は、例えば、支援装置31の製造者によって予め設定されていてもよいし、ダイカストマシン1のオペレータによって設定されてもよい。換言すれば、支援装置31のROM又は外部記憶装置に予め記憶されていてもよいし、操作部15を介して入力されてもよい。また、閾値は、物理量の種類毎に設定されていてよい。
【0141】
ここで、良品含有率が高い場合の理由としては、不良指標率の設定値が厳しすぎる(換言すれば、不良品検出率の設定値が高すぎる、又は当該設定値に対応する数値範囲が狭すぎる。)こと、又は物理量と成形品の品質との相関が低いことが挙げられる。従って、例えば、ステップST2で設定した不良品検出率の仮の設定値が適度に低い値とされている場合に、ステップST4において良品含有率が閾値以上であることは、現在選択している物理量(ステップST1で選択した物理量)と、成形品の品質との相関が低いことを意味する。
【0142】
そこで、演算部39は、ステップST4で肯定判定をした場合は、ステップST5に進み、現在選択している物理量を判定対象の物理量(仕分けに利用する物理量)として指定する。一方、ステップST4で否定判定をした場合は、ステップST5をスキップする。
【0143】
ステップST6では、演算部39は、全ての物理量について、ステップST1~ST5の処理を行ったか否か判定する。そして、否定判定の場合は、演算部39は、ステップST1に戻り、他の物理量について同様の処理を行う。また、肯定判定の場合は、演算部39は、処理を終了する。
【0144】
ステップST5で指定された物理量の種類の情報は、例えば、図3において点線で示すように、指定情報DT17として、支援装置31の支援側送信部43からダイカストマシン1の機械側受信部37へ送信されてよい。そして、制御部13は、指定情報DT17によって指定された種類の物理量の計測値を用いて仕分けを行ってよい。また、制御部13は、操作部15を介して不良品指標率の設定値の入力を受け付けるとき、指定情報DT17によって指定された物理量の種類を表示部17を介して提示して、当該提示した物理量の種類のみについて、不良品指標率の設定値の入力を受け付けてよい。
【0145】
ステップST2における不良品指標率の仮の設定値及びステップST4における良品指標率の閾値の具体的な大きさは適宜に設定されてよい。相関が極端に低い物理量を除外する観点で一例を挙げると、不良品検出率の仮の設定値を50%とし、良品含有率の閾値を50%としてよい。不良品の半分を異常時の成形品として除外できるようにしたところ、その異常時の成形品の半分が良品であるようでは、その物理量は、仕分けに用いることが適当とは言えないからである。また、より相関が高い物理量を選択する観点で一例を挙げると、不良品検出率の仮の設定値を90%とし、良品含有率の閾値を1%としてよい。
【0146】
図10の処理では、1種類の物理量に関して、1つの仮の設定値(ステップST2)についてのみ、良否指標率の値を調べている。ただし、複数の仮の設定値について、良品指標率の値を調べてもよい。この場合、例えば、不良品検出率に対する複数の仮の設定値から良品含有率が閾値未満となる仮の設定値を特定し、特定した仮の設定値が所定の許容値以上であるときに、その物理量を仕分け用の物理量として指定したり、仮の設定値の増加に伴って良品含有率の減少の変化率の絶対値が大きくなっていくときに、その物理量を仕分け用の物理量として指定したりしてよい。
【0147】
(実施形態のまとめ)
以上のとおり、本実施形態に係る成形機(ダイカストマシン1)は、機械本体3と、センサ33と、設定値受付部(操作部15)と、機械側送信部35と、機械側受信部37と、仕分け部(制御部13)とを有している。機械本体3は、キャビティCaに成形材料を充填して成形品を作製する成形サイクルを繰り返す。センサ33は、成形サイクルに係る物理量を計測する。操作部15は、不良品指標率の設定値の入力を受け付ける。不良品指標率は、複数(換言すれば任意の所定数)の成形サイクル(連続している成形サイクルでなくてもよい。)を行った場合に、物理量の計測値が所定の数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む不良品が、上記複数の成形サイクルによって作製された成形品に占める割合、又は当該割合に相関する割合と定義できる。機械側送信部35は、操作部15に入力された不良品指標率の設定値を支援装置31へ送信する。機械側送信部35は、機械側送信部35が送信した不良品指標率の設定値に対応する数値範囲の情報を支援装置31から受信する。制御部13は、機械本体3が成形サイクルの繰り返しによって作製する複数の成形品を対象として、センサ33が計測した物理量の計測値が、機械側受信部37が受信した数値範囲の外側の値となった成形サイクルによって作製された成形品を、他の成形サイクルによって作製された成形品から仕分けする処理を行う。
【0148】
別の観点では、本実施形態に係る支援装置31は、記憶部41と、支援側受信部45と、演算部39と、支援側送信部43とを有している。記憶部41は、複数(換言すれば任意の所定数)の過去データDT1を記憶する。各過去データDT1は、キャビティCaに成形材料を充填して成形品を作製する成形サイクルに係る物理量の計測値と、当該計測値が得られた成形サイクルによって作製された成形品が良品及び不良品のいずれであるかの判定結果の情報とを含む。支援側受信部45は、成形機(ダイカストマシン1)から不良品指標率の設定値を受信する。不良品指標率は、上記複数の過去データDT1に占める、計測値が所定の数値範囲外の値であり、かつ判定結果が不良品である過去データDT1の割合、又は当該割合に相関する割合と定義できる。演算部39は、記憶部41に記憶されている複数の過去データDT1についての不良品指標率が、支援側受信部45が受信した不良品指標率の設定値となる数値範囲を特定する。支援側送信部43は、演算部39が特定した数値範囲の情報DT13をダイカストマシン1へ送信する。
【0149】
さらに別の観点では、成形システムSM1は、機械本体3と、センサ33と、記憶部41と、設定値受付部(操作部15)と、演算部39と、仕分け部(制御部13及び/又は取出装置21)とを有している。機械本体3は、キャビティCaに成形材料を充填して成形品を作製する成形サイクルを繰り返す。センサ33は、成形サイクルに係る物理量を計測する。記憶部41は、複数の過去データDT1を記憶する。各過去データDT1は、物理量の計測値と、当該計測値が得られた成形サイクルによって作製された成形品が良品及び不良品のいずれであるかの判定結果の情報とを含む。操作部15は、不良品指標率の設定値の入力を受け付ける。不良品指標率は、複数の成形サイクルを行った場合に、上記複数の成形サイクルによって作製された成形品に占める、物理量の計測値が所定の数値範囲外の値となる成形サイクルによって作製された成形品が含む不良品の割合、又は当該割合に相関する割合と定義できる。演算部39は、記憶部41に記憶されている複数の過去データDT1についての不良品指標率が、操作部15に入力された設定値となる数値範囲を特定する。制御部13及び/又は取出装置21は、機械本体3が成形サイクルの繰り返しによって作製する複数の成形品を対象として、センサ33が計測した物理量の計測値が、演算部39が特定した数値範囲の外側の値となった成形サイクルによって作製された成形品を、他の成形サイクルによって作製された成形品から仕分けする処理を行う。
【0150】
従って、例えば、既述のように、オペレータの経験によらずに、所望の不良品指標率を実現する数値範囲を設定することができ、ひいては、不良品に対して後工程が行われることによって生じる無駄なコストをコントロールすることが容易化される。
【0151】
ダイカストマシン1において、機械側受信部37は、機械側送信部35が送信した不良品指標率の設定値に対応する数値範囲に対応する良品指標率の値に係る情報DT15を支援装置31から受信してよい。良品指標率は、物理量の計測値が数値範囲外の値となった成形サイクルによって作製された成形品に占める良品の割合又は当該割合に相関する割合と定義できる。ダイカストマシン1は、機械側受信部37が受信した良品指標率の値に係る情報DT15をオペレータに報知する報知部を更に有していてよい。
【0152】
別の観点では、支援装置31において、演算部39は、支援側受信部45が受信した不良品指標率の設定値に基づいて特定した数値範囲を用いて、記憶部41に記憶されている複数の過去データDT1についての良品指標率の値を特定してよい。良品指標率は、物理量の計測値が数値範囲外の値である過去データDT1に占める、判定結果が良品の過去データDT1の割合、又は当該割合に相関する割合と定義できる。支援側送信部43は、演算部39が特定した良品指標率の値に係る情報DT15をダイカストマシン1へ送信してよい。
【0153】
この場合、例えば、既述のように、不良品指標率の設定値の妥当性を検証することが容易化される。例えば、良品含有率が高すぎれば、不良品指標率の設定値が厳しすぎる(例えば不良品含有率が低すぎる)と判定することができる。また、例えば、図10の説明から理解されるように、オペレータは、仕分けに用いている物理量の種類が妥当か否かを考慮することもできる。このような効果に対応して、既に述べたように、ダイカストマシン1は、仕分けに用いる物理量の種類の選択を、操作部15を介して受付可能であってよい。
【0154】
ダイカストマシン1は、複数種類の物理量を計測する複数のセンサ33を有してよい。機械側受信部37は、複数種類の物理量のうちの1以上の種類を指定する指定情報DT17を受信してよい。仕分け部(制御部13)は、複数種類の物理量のうち、指定情報DT17によって指定された種類の物理量についてのみ、数値範囲に基づく成形品の仕分けを行ってよい。
【0155】
別の観点では、支援装置31において、複数の過去データDT1は、複数種類の物理量の計測値と、当該計測値が得られた成形サイクルの良否の判定結果の情報と、をそれぞれ含んでよい。演算部39は、複数の過去データDT1に基づいて複数種類の物理量のうちの1以上の種類を選択してよい。支援側送信部43は、演算部39が選択した1以上の種類を示す指定情報DT17をダイカストマシン1に送信してよい。
【0156】
この場合、例えば、オペレータは、仕分けに利用する物理量の種類を経験則に基づいて選択しなくてもよい。その結果、オペレータの負担が軽減される。オペレータの負担が軽減される状況としては、例えば、計測対象として新たな物理量の種類(別の観点では新たなセンサ)が導入された場合が挙げられる。また、例えば、金型101の種類、ダイカストマシン1の種類及びダイカストマシン1の運用状態によって、成形品の品質に相関が高い物理量の種類が異なる場合においても、オペレータの負担を軽減できる。
【0157】
演算部39は、不良品指標率が所定の仮想値であるときの数値範囲に対応する良品指標率が、所定の閾値に対して、良品含有率が低くなる側に位置している物理量の種類を指定情報DT17によって指定される上記1以上の種類に含ませてよい。
【0158】
この場合、例えば、良品指標率を利用した簡便なアルゴリズムによって物理量と成形品の品質との相関の高低を判定して、仕分けに利用する物理量を選択することができる。また、成形システムSM1が不良品指標率の設定値に応じた良品指標率の値をオペレータに提示する機能を有している態様においては、その機能の一部を物理量の種類の適否の判定に利用できる。
【0159】
以上の実施形態において、ダイカストマシン1は成形機の一例である。金属材料は成形材料の一例である。仕分けを行う取出装置21に仕分けを行わせるための信号を送信する制御部13は、仕分けする処理を行う仕分け部の一例である。なお、取出装置21が成形システムの仕分け部の一例として捉えられてもよい。
【0160】
操作部15は、不良品指標率の設定値の入力を受け付ける設定値受付部の一例である。操作部15を介して不良品指標率の設定値を取得する制御部13が設定値受付部の一例として捉えられてもよい。図4を参照して行った数値範囲の設定の動作の説明では、不良品指標率の設定値が操作部15を介さずに入力されてよいについて述べた。この説明から理解されるように、外部から設定値に係る情報を受信する機械側受信部37がダイカストマシンの設定値受付部の一例として捉えられたり、外部から設定値に係る情報を受信する支援側受信部45、又は支援装置31が有している不図示の操作部が成形システムの設定値受付部の一例として捉えられたりしてもよい。
【0161】
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0162】
例えば、成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、縦型締横射出、横型締縦射出であってもよい。
【0163】
実施形態でも言及したように、成形システムは、成形機と支援装置とを区別可能な態様でなくてもよい。例えば、複数の過去データを記憶する記憶部、及び複数の過去データについて数値範囲等を特定する演算部の少なくとも一方は、成形機の制御部と共に筐体に収容されていたり、成形機の制御部とハードウェア資源(CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置)を共用していたりしてもよい。
【0164】
ダイカストマシンと支援装置との役割分担は実施形態と異なっていてもよい。例えば、実施形態では、物理量の計測値が数値範囲内か否かの判定は、ダイカストマシンが行ったが、当該判定は、支援装置によって行われてもよい。
【0165】
本開示からは、不良品指標率の設定値に基づいて数値範囲を設定するという要件を含まない発明が抽出されてもよい。例えば、図10に示した判定対象の物理量の種類を選択する点に着目した発明が抽出されてもよい。そのような発明においては、数値範囲は、例えば、オペレータが経験に基づいて設定してもよいし、良品含有率が所定の設定値以下となるように成形システム又は支援装置が数値範囲を算出してもよい。
【符号の説明】
【0166】
1…ダイカストマシン(成形機)、3…機械本体、5…制御部13…冷却部、15…スプレイ装置、59…温度センサ(センサ)、101…金型(型)。
図1
図2
図3
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図10