(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073642
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良剤
(51)【国際特許分類】
A23D 9/013 20060101AFI20230519BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20230519BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A23D9/013
A23J3/16 502
A23D9/00 518
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186217
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛大
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DK01
4B026DX08
(57)【要約】
【課題】大豆タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることのできる大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良剤を提供する。
【解決手段】構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良剤。構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルと大豆タンパク質含有粉末とを流動状態とし、そこに水を噴霧しながら混合し乾燥する、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良方法。構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルと大豆タンパク質含有粉末とを混合する、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良剤。
【請求項2】
構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルと大豆タンパク質含有粉末とを流動状態とし、そこに水を噴霧しながら混合し乾燥する、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良方法。
【請求項3】
構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルと大豆タンパク質含有粉末とを混合する、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆タンパク質含有粉末は、その加熱凝固性、保水性及び保油性等の性質を有していることから食肉加工、水産加工食品に幅広く利用されている。また、大豆タンパク質含有粉末は、筋肉合成の促進や美容上の効果を狙ったタンパク質の補給の目的で水に分散させて飲用されている。しかし、大豆タンパク質含有粉末は、水への分散性が悪く、水に加えた場合、水に濡れた部分が被膜を形成して内部への水の浸透を阻害し、「ままこ」(又は「ダマ」)と呼ばれる塊を形成して均一に分散しないという問題がある。
【0003】
大豆タンパク質含有粉末の水分散性を改良する方法としては、例えば、原料大豆蛋白粉末を、流動層処理を行うに際して、水、又はグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及び/又はシュガーエステルを界面活性剤として含有する含水液を噴霧することを特徴とする粉末状大豆蛋白の製造方法(特許文献1)、大豆蛋白質に、炭素数8~18の脂肪酸と重合度4~10のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されてなる大豆蛋白粉末(特許文献2)、水溶性窒素指数(NSI)が50~85である大豆たん白にポリグリセリン脂肪酸エステルを付着させた粉末状大豆たん白(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
しかし、上記各方法でも「ままこ」の形成を十分に抑制できない場合があることから、大豆タンパク質含有粉末の水分散性を改良し得る新たな方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06-113749号公報
【特許文献2】特開平08-131083号公報
【特許文献3】特開平09-313112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、大豆タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることのできる大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステルを特定の方法でタンパク質含有粉末に添加したところ、その水分散性が向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
即ち、本発明は、次の(1)~(3)からなっている。
(1)構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良剤。
(2)構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルと大豆タンパク質含有粉末とを流動状態とし、そこに水を噴霧しながら混合し乾燥する、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良方法。
(3)構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルと大豆タンパク質含有粉末とを混合する、大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良剤は、大豆タンパク質含有粉末の水分散性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の大豆タンパク質含有粉末の水分散性改良剤(以下、「本発明の水分散性改良剤」という)は、構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする。
【0011】
本発明で用いられる構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと炭素数18~22の飽和脂肪酸とのエステル化生成物である。
【0012】
前記グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源する飽和脂肪酸であって炭素数が18~22のものであれば特に制限はなく、例えばステアリン酸(炭素数18の飽和脂肪酸)、ベヘニン酸(炭素数22の飽和脂肪酸)等が挙げられる。これら脂肪酸は一種類のみを単独で用いてもよく、二種類を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0013】
構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばエマルジーMS(商品名;グリセリンモノステアリン酸エステル;粉末状;理研ビタミン社製)、ポエムB-100(商品名;グリセリンモノベヘニン酸エステル;粉末状;理研ビタミン社製)、ポエムB-200(商品名;グリセリンベヘニン酸エステル(モノエステル及びジエステルを含む);粉末状;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0014】
本発明の水分散性改良剤は、大豆タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることができる。
【0015】
本発明の水分散性改良剤の添加対象となる大豆タンパク質含有粉末は、大豆から分離されたタンパク質を主成分とする粉末状の食品素材であれば特に制限はないが、例えば、脱脂大豆粉、分離大豆タンパク質粉末、濃縮大豆タンパク質粉末、粉末豆乳等が挙げられ、好ましくは分離大豆タンパク質粉末である。
【0016】
大豆タンパク質含有粉末としては、例えばフジプロFM(商品名;分離大豆タンパク質粉末;不二製油社製)、フジプロRK(商品名;分離大豆タンパク質粉末;不二製油社製)、フジプロE(商品名;分離大豆タンパク質粉末;不二製油社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0017】
本発明の水分散性改良剤を大豆タンパク質含有粉末に添加する方法としては、例えば、流動層造粒乾燥機を用いて、構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルと大豆タンパク質含有粉末とを流動状態とし、そこに水を噴霧しながら混合した後に乾燥する方法(方法1:流動層造粒乾燥機処理法)、構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルと大豆タンパク質含有粉末とを混合する方法(方法2:粉々混合法)を実施することができる。
【0018】
上記方法1において、大豆タンパク質含有粉末100質量部に対する水の噴霧量は、好ましくは1~40質量部であり、5~30質量部がより好ましい。大豆タンパク質含有粉末100質量%に対する構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルの添加量は、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは1.0~10質量%である。水の噴霧時間は、好ましくは2~20分であり、より好ましくは5~15分である。また、水噴霧後の乾燥時間は、好ましくは1~30分であり、より好ましくは2~10分である。水噴霧時及び乾燥時の温度条件は、排気温度が好ましくは20~60℃、より好ましくは35~45℃である。また、上記水には、デキストリン、加工でん粉、キサンタンガム等の通常造粒に用いられるバインダー成分を溶解させたものを用いても良い。
【0019】
上記方法2は、より具体的には、構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルと大豆タンパク質含有粉末を均一に混合し、これらを粉末状態のまま接触させることにより実施することができる。また、上記方法2において、大豆タンパク質含有粉末100質量%に対する構成脂肪酸が炭素数18~22の飽和脂肪酸である粉末状のグリセリン脂肪酸エステルの添加量は、0.5~20質量%が好ましく、1.0~10質量%がより好ましい。
【0020】
本発明の水分散性改良剤を添加した大豆タンパク質含有粉末は水分散性に優れるため、例えば、低温(5~10℃)のみならず、50℃以上の水、牛乳、清涼飲料水等に対しても容易に分散させることができる。
【0021】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0022】
[試験例1]
[大豆タンパク質含有粉末(フジプロFM)の水分散性改良]
(1)原材料
1)大豆タンパク質含有粉末(商品名:フジプロFM;分離大豆タンパク質粉末;不二製油社製)
2)グリセリンモノベヘニン酸エステル(商品名:ポエムB-100;粉末状;理研ビタミン社製)
3)グリセリンベヘニン酸エステル(商品名:ポエムB-200;粉末状;理研ビタミン社製)
4)グリセリンモノステアリン酸エステル(商品名:エマルジーMS;粉末状;理研ビタミン社製)
5)デカグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムJ-0381V;粘稠な液体;理研ビタミン社製)
6)グリセリンモノオレイン酸エステル(商品名:エマルジーOL-100H;ロウ状塊;理研ビタミン社製)
7)ジグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;粘稠な液体;理研ビタミン社製)
8)水
9)菜種油(ボーソー油脂社製)
【0023】
(2)大豆タンパク質含有粉末の調整
1)大豆タンパク質含有粉末1の調整(流動層造粒乾燥機処理法)
流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末100gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させた。ここに、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が1.0質量%となるようにそのまま添加し、水20gを噴霧しながら10分混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させながら乾燥し、目開き840μmの篩に通して、大豆タンパク質含有粉末1を得た。
【0024】
2)大豆タンパク質含有粉末2の調整(流動層造粒乾燥機処理法)
流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末100gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させた。ここに、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が3.0質量%となるようにそのまま添加し、水20gを噴霧しながら10分混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させながら乾燥し、目開き840μmの篩に通して、大豆タンパク質含有粉末2を得た。
【0025】
3)大豆タンパク質含有粉末3の調整(流動層造粒乾燥機処理法)
流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末100gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させた。ここに、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加し、水20gを噴霧しながら9分混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させながら乾燥し、目開き840μmの篩に通して、大豆タンパク質含有粉末3を得た。
【0026】
4)大豆タンパク質含有粉末4の調整(流動層造粒乾燥機処理法)
流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末100gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させた。ここに、粉末状のグリセリンベヘニン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加し、水20gを噴霧しながら10分混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させながら乾燥し、目開き840μmの篩に通して、大豆タンパク質含有粉末4を得た。
【0027】
5)大豆タンパク質含有粉末5の調整(粉々混合法)
大豆タンパク質含有粉末100gに対し、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が1.0質量%となるようにそのまま添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末5を得た。
【0028】
6)大豆タンパク質含有粉末6の調整(粉々混合法)
大豆タンパク質含有粉末100gに対し、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が3.0質量%となるようにそのまま添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末6を得た。
【0029】
7)大豆タンパク質含有粉末7の調整(粉々混合法)
大豆タンパク質含有粉末100gに対し、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末7を得た。
【0030】
8)大豆タンパク質含有粉末8の調整(粉々混合法)
大豆タンパク質含有粉末100gに対し、粉末状のグリセリンベヘニン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末8を得た。
【0031】
9)大豆タンパク質含有粉末9の調整(粉々混合法)
大豆タンパク質含有粉末100gに対し、粉末状のグリセリンモノステアリン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末9を得た。
【0032】
10)大豆タンパク質含有粉末10の調整(流動層造粒乾燥機処理法)
デカグリセリンオレイン酸エステルは、親水性の高い粘稠な液体であり、上記1)~4)と同様の造粒乾燥法を実施できないため、以下の方法を実施した。
デカグリセリンオレイン酸エステルを50℃の水に分散させ、デカグリセリンオレイン酸エステル25%水分散液を得た。次に、流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末95gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させた。ここに、該水分散液20gを噴霧しながら11分混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させながら乾燥し、目開き840μmの篩に通して、大豆タンパク質含有粉末10を得た。
【0033】
11)大豆タンパク質含有粉末11の調整(流動層造粒乾燥機処理法)
グリセリンモノオレイン酸エステルは、親油性の高いロウ状塊であり、上記1)~4)と同様の造粒乾燥法を実施できないため、以下の方法を実施した。
グリセリンモノオレイン酸エステルを60℃の菜種油に溶解させ、グリセリンモノオレイン酸エステルを50質量%含有する油脂組成物を得た。次に、流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末99gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させた。ここに、該油脂組成物2gを噴霧しながら5分混合し、大豆タンパク質含有粉末11を得た。
【0034】
12)大豆タンパク質含有粉末12の調整(流動層造粒乾燥機処理法)
ジグリセリンモノオレイン酸エステルは、親油性の高い粘稠な液体であり、上記1)~4)と同様の造粒乾燥法を実施できないため、以下の方法を実施した。
ジグリセリンモノオレイン酸エステルを60℃の菜種油に溶解させ、ジグリセリンモノオレイン酸エステルを50質量%含有する油脂組成物を得た。次に、流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末99gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させた。ここに、該油脂組成物2gを噴霧しながら5分混合し、大豆タンパク質含有粉末12を得た。
【0035】
(3)水への分散試験
200mL容のガラス製ビーカーに60℃の水140mLを入れ、ここに大豆タンパク質含有粉末(1~12のうちいずれか)を7g加えた。10秒間静置後、スパチュラで40秒間撹拌して混合し、さらに10秒間静置後、これを14mesh(目開き1.18mm)のステンレス製篩を通しながら300mL容のガラス製ビーカーに流し入れたところ、篩を通過しなかった粗大な「ままこ」が一定量篩上に残った。その後、さらに60℃の水100mLを該篩にかけ、篩及び「ままこ」に付着した水を洗い流した。「ままこ」が付着した篩を5分間静置して余分な水分を切った後、該篩の質量を測定し、その質量から篩自体の質量を差し引いて、篩上に残った粗大な「ままこ」の質量を算出した。また、対照として前記の処理を行っていない大豆タンパク質含有粉末(未処理品)についても同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例である大豆タンパク質含有粉末1~9は、いずれも「ままこ」の質量が対照に比べて少なく、大豆タンパク質含有粉末の水分散性が改善していた。一方、比較例の水分散性改良剤10~12は、「ままこ」の質量が対照よりも多く、水分散性が改善されていなかった。
【0038】
[試験例2]
[大豆タンパク質含有粉末(フジプロRK)の水分散性改良]
(1)原材料
1)大豆タンパク質含有粉末(商品名:フジプロRK;分離大豆タンパク質粉末;不二製油社製)
2)グリセリンモノベヘニン酸エステル(商品名:ポエムB-100;粉末状;理研ビタミン社製)
3)グリセリンベヘニン酸エステル(商品名:ポエムB-200;粉末状;理研ビタミン社製)
4)グリセリンモノステアリン酸エステル(商品名:エマルジーMS;粉末状;理研ビタミン社製)
5)水
【0039】
(2)大豆タンパク質含有粉末の調整
1)大豆タンパク質含有粉末13の調整(流動層造粒乾燥機処理法)
流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末100gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させた。ここに、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加し、水20gを噴霧しながら10分混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させながら乾燥し、目開き500μmの篩に通して、大豆タンパク質含有粉末13を得た。
【0040】
2)大豆タンパク質含有粉末14の調整(粉々混合法)
大豆タンパク質含有粉末100gに対し、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末14を得た。
【0041】
3)大豆タンパク質含有粉末15の調整(粉々混合法)
大豆タンパク質含有粉末100gに対し、粉末状のグリセリンベヘニン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末15を得た。
【0042】
4)大豆タンパク質含有粉末16の調整(粉々混合法)
大豆タンパク質含有粉末100gに対し、粉末状のグリセリンモノステアリン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末16を得た。
【0043】
(3)水への分散試験
200mL容のガラス製ビーカーに60℃の水140mLを入れ、ここに大豆タンパク質含有粉末(13~16のうちいずれか)を7g加えた。10秒間静置後、スパチュラで40秒間撹拌して混合し、さらに10秒間静置後、これを14mesh(目開き1.18mm)のステンレス製篩を通しながら300mL容のガラス製ビーカーに流し入れたところ、篩を通過しなかった粗大な「ままこ」が一定量篩上に残った。その後、さらに60℃の水100mLを該篩にかけ、篩及び「ままこ」に付着した水を洗い流した。「ままこ」が付着した篩を5分間静置して余分な水分を切った後、該篩の質量を測定し、その質量から篩自体の質量を差し引いて、篩上に残った粗大な「ままこ」の質量を算出した。また、対照として前記の処理を行っていない大豆タンパク質含有粉末(未処理品)についても同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
表2の結果から明らかなように、本発明の実施例である大豆タンパク質含有粉末13~16は、いずれも「ままこ」の質量が対照に比べて少なく、大豆タンパク質含有粉末の水分散性が改善していた。
【0046】
[試験例3]
[大豆タンパク質含有粉末(フジプロE)の水分散性改良]
(1)原材料
1)大豆タンパク質含有粉末(商品名:フジプロE;分離大豆タンパク質粉末;不二製油社製)
2)グリセリンモノベヘニン酸エステル(商品名:ポエムB-100;粉末状;理研ビタミン社製)
3)水
【0047】
(2)大豆タンパク質含有粉末の調整
1)大豆タンパク質含有粉末17の調整(流動層造粒乾燥機処理法)
流動層造粒乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末100gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させた。ここに、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加し、水20gを噴霧しながら9分混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させながら乾燥し、目開き500μmの篩に通して、大豆タンパク質含有粉末17を得た。
【0048】
2)大豆タンパク質含有粉末18の調整(粉々混合法)
大豆タンパク質含有粉末100gに対し、粉末状のグリセリンモノベヘニン酸エステルを添加量が5.0質量%となるようにそのまま添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末18を得た。
【0049】
(3)水への分散試験
200mL容のガラス製ビーカーに60℃の水140mLを入れ、ここに大豆タンパク質含有粉末(17~18のうちいずれか)を7g加えた。10秒間静置後、スパチュラで40秒間撹拌して混合し、さらに10秒間静置後、これを14mesh(目開き1.18mm)のステンレス製篩を通しながら300mL容のガラス製ビーカーに流し入れたところ、篩を通過しなかった粗大な「ままこ」が一定量篩上に残った。その後、さらに60℃の水100mLを該篩にかけ、篩及び「ままこ」に付着した水を洗い流した。「ままこ」が付着した篩を5分間静置して余分な水分を切った後、該篩の質量を測定し、その質量から篩自体の質量を差し引いて、篩上に残った粗大な「ままこ」の質量を算出した。また、対照として前記の処理を行っていない大豆タンパク質含有粉末(未処理品)についても同様の試験を行った。結果を表3に示す。
【0050】
【0051】
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例である大豆タンパク質含有粉末17~18は、いずれも「ままこ」の質量が対照に比べて少なく、大豆タンパク質含有粉末の水分散性が改善していた。