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特開2023-73661感光性樹脂組成物、硬化膜および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073661
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化膜および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 503Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186252
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】森 清治
(72)【発明者】
【氏名】北畑 太郎
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AE04P
2H225AE06P
2H225AE12P
2H225AE15P
2H225AF21P
2H225AF22P
2H225AF79P
2H225AM79P
2H225AN33P
2H225AN54P
2H225BA05P
2H225BA22P
2H225BA32P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC03
(57)【要約】
【課題】低温硬化性を有するネガ型感光性樹脂組成物、およびこれを硬化して得られる、強度に優れた硬化膜を提供する。
【解決手段】半導体装置の再配線層に用いられるネガ型感光性樹脂組成物であって、(A)フェノール樹脂、(B)架橋剤、および(C)感光剤、を含み、前記フェノール樹脂(A)が、ビフェニル型フェノール樹脂を含み、前記架橋剤(B)が、4官能尿素樹脂系架橋剤と2官能エポキシ樹脂系架橋剤とを含み、当該ネガ型感光性樹脂組成物を硬化物としたときの、動的粘弾性測定(DMA)で測定した250℃における貯蔵弾性率が、2500MPa以下である、ネガ型感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の再配線層に用いられるポジ型感光性樹脂組成物であって、
(A)フェノール樹脂、
(B)架橋剤、および
(C)感光剤、を含み、
前記架橋剤(B)は、2官能のフェノキシ型エポキシ樹脂を含む、ポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノール樹脂の重量平均分子量は、2000以上50000以下である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋剤(B)は、2官能以上の尿素樹脂系架橋剤をさらに含む、請求項1または2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記2官能以上の尿素樹脂系架橋剤は、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物を含む、請求項3に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記2官能のフェノキシ型エポキシ樹脂は、当該ポジ型感光性樹脂組成物の固形分全体に対して、0.1質量%以上60質量%以下の量である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記感光剤(C)は、熱酸発生剤を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
以下の条件1にて測定される、当該ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜の引張伸び率が、5%以上200%以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
(条件1)
(i)当該ポジ型感光性樹脂組成物を200℃、180分の条件で硬化して前記硬化膜を形成し、前記硬化膜から、6.5mm×20mm×10μm厚の試料を作製する。
(ii)JIS K7161に基づき、23℃、試験速度5mm/minの条件で前記試料の引張試験を実施して前記引張伸び率を求める。
【請求項8】
OK73シンナーに対する25℃における溶解性が、2g/ml以上である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜。
【請求項10】
半導体素子と、
前記半導体素子の表面上に設けられた再配線層と、を備える半導体装置であって、
前記再配線層中の絶縁層が、請求項9に記載の硬化膜から構成される、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物およびその硬化膜、ならびに当該硬化膜を絶縁層として備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子分野においては、絶縁層などの硬化膜を形成するために、熱硬化性樹脂を含む感光性樹脂組成物が用いられることがある。そのため、熱硬化性樹脂を含む感光性樹脂組成物がこれまで検討されてきている。熱硬化性樹脂を含む感光性樹脂組成物により、再配線層中の絶縁膜や、再配線層以外の部分の絶縁膜を形成することが知られている。
【0003】
一例として、特許文献1には、アルカリ水溶液可溶性樹脂、架橋剤、光重合開始剤および特定の一般式で表わされるエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)を含有する感光性樹脂組成物が記載されている。特許文献1には、この感光性樹脂組成物の光感度は良好であると記載されている。また、特許文献1には、この感光性樹脂組成物により形成された膜は、屈曲性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性等に優れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-80871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子デバイスの高度化・複雑化に伴い、電子デバイスには従来以上の信頼性が求められるようになってきている。そのため、硬化膜の改良およびこの硬化膜を形成するための感光性樹脂組成物の改良により、電子デバイスの信頼性を向上させることが求められている。また、近年、半導体チップへの熱ダメージ低減のため、硬化膜を形成する際の加熱温度を比較的低くすること(例えば、200℃程度とすること)が求められてきている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、フェノール樹脂、感光剤および感光剤を含むポジ型感光性樹脂組成物において、特定のフェノール樹脂と特定の架橋剤とを組み合わせて使用することにより、低温硬化性でありながら、OK73シンナーに対する溶解性に優れ、よって加工性に優れた樹脂膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
半導体装置の再配線層に用いられるポジ型感光性樹脂組成物であって、
(A)フェノール樹脂、
(B)架橋剤、および
(C)感光剤、を含み、
前記架橋剤(B)は、2官能のフェノキシ型エポキシ樹脂を含む、ポジ型感光性樹脂組成物が提供される。
【0008】
また本発明によれば、上記ポジ型感光性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜が提供される。
【0009】
さらにまた本発明によれば、
半導体素子と、
前記半導体素子の表面上に設けられた再配線層と、を備える半導体装置であって、
前記再配線層中の絶縁層が、上記硬化膜から構成される、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温硬化性を有するポジ型感光性樹脂組成物、およびこれを硬化して得られる、強度に優れた硬化膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における半導体装置の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書において、数値範囲の「x~y」は「x以上y以下」を表し、下限値xおよび上限値yをいずれも含む。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。また、以下の図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0013】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0014】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、半導体装置の再配線層を形成するために用いられる樹脂材料である。本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)フェノール樹脂、(B)架橋剤、および(C)感光剤、を含み、
フェノール樹脂(A)は、ビフェニル型フェノール樹脂を含み、
架橋剤(B)は、2官能のフェノキシ型エポキシ樹脂を含む。
【0015】
本発明者は、ポジ型感光性樹脂組成物の低温硬化性を向上するとともに、得られる硬化膜の現像性を改善すべく検討をおこなった。その結果、ポジ型感光性樹脂組成物が特定の成分を含む構成とすることにより、上述の課題が解決されることを見出した。
以下に、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物に用いられる各成分について説明する。
【0016】
(フェノール樹脂(A))
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、フェノール樹脂として、ビフェニル型フェノール樹脂(a1)を含む。ビフェニル型フェノール樹脂(a1)としては、低温での硬化性および硬化膜の信頼性を向上する観点から、下記式(2)で表される構造単位を有するフェノール樹脂が好ましい。
【0017】
【化1】
【0018】
上記式(2)中、R41、およびR42は、それぞれ独立して、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1~20の飽和または不飽和のアルキル基、炭素数1~20のアルキルエーテル基、炭素数3~20の飽和または不飽和の脂環式基、または炭素数6~20の芳香族構造を有する有機基からなる群から選ばれる1価の置換基であり、これらはエステル結合、エーテル結合、アミド結合、カルボニル結合を介して結合していてもよく、r、およびsは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、Y、およびZは、それぞれ独立して、単結合、または不飽和結合を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族基、炭素数3~20の脂環式基、および炭素数6~20の芳香族構造を有する有機基からなる群から選択され、Zは、2つのベンゼン環のうちいずれか一方に結合する。
【0019】
ビフェニル型フェノール樹脂(a1)の重量平均分子量は、低温での硬化性を向上する観点から、たとえば2000以上であってよく、好ましくは3000以上であり、より好ましくは4000以上、さらに好ましくは5000以上である。
また、ビフェニル型フェノール樹脂(a2)の重量平均分子量は、たとえば50000以下であってよく、溶剤溶解性の観点から、好ましくは20000以下であり、より好ましくは15000以下、さらに好ましくは10000以下である。
【0020】
式(2)で表される構造単位を有するビフェニル型フェノール樹脂(a1)は、具体的には、特開2018-155938号公報の記載の方法を用いて得ることができる。
【0021】
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物中の、ビフェニル型フェノール樹脂(a1)の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温硬化時の硬化性向上の観点から、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。
また、靭性悪化の観点から、ポジ型感光性樹脂組成物中のビフェニル型フェノール樹脂(a1)の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
【0022】
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、低温での硬化性および硬化膜の信頼性を向上する観点から、上述のビフェニル型フェノール樹脂(a1)以外のフェノール樹脂(a2)をさらに含んでもよい。
フェノール樹脂(a2)として、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂、アリル化ノボラック型フェノール樹脂、キシリレンノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのフェノール化合物とアルデヒド化合物との反応物;フェノールアラルキル樹脂などのフェノール化合物とジメタノール化合物との反応物が挙げられる。
【0023】
中でも、フェノール樹脂(a2)としては、低温硬化性の樹脂組成物を得る観点から、以下の式(1)で表される構造を有する樹脂であることが好ましい。
【0024】
【化2】
【0025】
上記式(1)中、nは、低温での硬化性を向上する観点から、好ましくは6以上であり、より好ましくは10以上、さらに好ましくは14以上である。
また、溶剤溶解性の観点から、nは、好ましくは72以下であり、より好ましくは54以下、さらに好ましくは36以下である。
【0026】
ビフェニル型フェノール樹脂(a2)の重量平均分子量は、低温での硬化性を向上する観点から、たとえば500以上であってよく、好ましくは2000以上であり、より好ましくは3000以上、さらに好ましくは4000以上である。
また、ビフェニル型フェノール樹脂(a2)の重量平均分子量は、たとえば50000以下であってよく、溶剤溶解性の観点から、好ましくは20000以下であり、より好ましくは15000以下、さらに好ましくは10000以下である。
【0027】
ポジ型感光性樹脂組成物がビフェニル型フェノール樹脂(a2)を含む場合、その含有量は、低温硬化時の靭性向上の観点から、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。
また、得られる硬化膜の機械的特性の観点から、ポジ型感光性樹脂組成物中のビフェニル型フェノール樹脂(a2)の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
【0028】
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、フェノール樹脂以外の熱硬化性樹脂を含んでもよい。かかる樹脂の具体例として、上述のビフェニル型フェノール樹脂以外のフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリイミド樹脂、環状オレフィン樹脂が挙げられる。
【0029】
また、ポジ型感光性樹脂組成物中のフェノール樹脂(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温での硬化性および硬化膜の信頼性を向上する観点から、好ましくは30質量部以上であり、より好ましくは45質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、さらにより好ましくは55質量部以上である。
また、耐薬性や感光性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは95質量部以下であり、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは85質量部以下である。ここで、フェノール樹脂(A)は、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物に用いられるフェノール樹脂の合計量であり、フェノール樹脂(A)は、上述のビフェニル型フェノール樹脂(a1)、および必要に応じて用いられるフェノール樹脂(a2)からなる。
【0030】
(架橋剤(B))
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、架橋剤(B)として、エポキシ樹脂系架橋剤(b1)を含む。本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、このような架橋剤を含むことにより、低温における硬化性に優れる。
【0031】
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物に架橋剤として用いられる2官能のエポキシ樹脂系架橋剤(b1)としては、2官能のフェノキシ型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。2官能フェノキシ型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型フェノキシ樹脂、ノボラック型フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂、フルオレン型フェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノキシ樹脂、ノルボルネン型フェノキシ樹脂、ナフタレン型フェノキシ樹脂、アントラセン型フェノキシ樹脂、アダマンタン型フェノキシ樹脂、テルペン型フェノキシ樹脂、およびトリメチルシクロヘキサン型フェノキシ樹脂等を用いることができる。また、このようなフェノキシ型エポキシ樹脂の具体例として、樹脂JER-1256、YX-7105(以上、三菱ケミカル社製)、LX-01(大阪ソーダ社製)が挙げられる。
【0032】
架橋剤(B)は、上記エポキシ樹脂系架橋剤(b1)に加え、2官能以上の尿素樹脂系架橋剤(b2)を含んでもよい。
2官能以上の尿素樹脂系架橋剤(b2)としては、例えば、2~4官能のアルコキシメチル化グリコールウリル化合物が挙げられる。アルコキシメチル化グリコールウリル化合物とは、グリコールウリル化合物のアミノ基の水素原子が、アルコキシメチロール基に置換された化合物をいう。アルコキシメチル化グリコールウリルの具体例としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリノン、および1,3-ビス(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリノン等が挙げられる。
【0033】
架橋剤(B)は、ポジ型感光性樹脂組成物の低温硬化性を損なわない範囲で、上述の2官能のエポキシ樹脂系架橋剤(b1)および2官能以上の尿素樹脂系架橋剤(b1)に加え、その他の架橋剤(b3)を含んでもよい。その他の架橋剤(b3)としては、例えば、1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール(パラキシレングリコール)、1,3,5-ベンゼントリメタノール、4,4-ビフェニルジメタノール、2,6-ピリジンジメタノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール、4,4'-メチレンビス(2,6-ジアルコキシメチルフェノール)などのメチロール基を有する化合物;フロログルシドなどのフェノール類;1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,4'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,3'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,6-ナフタレンジカルボン酸メチル、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメトキシメチルフェノール)などのアルコキシメチル基を有する化合物;ヘキサメチロールメラミン、ヘキサブタノールメラミン等から代表されるメチロールメラミン化合物;ヘキサメトキシメラミンなどのアルコキシメラミン化合物;メチロールベンゾグアナミン化合物、ジメチロールエチレンウレアなどのメチロールウレア化合物;アルキル化尿素樹脂;ジシアノアニリン、ジシアノフェノール、シアノフェニルスルホン酸などのシアノ化合物;1,4-フェニレンジイソシアナート、3,3'-ジメチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアナートなどのイソシアナート化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリグリシジル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂型エポキシ樹脂などのエポキシ基含有化合物;N,N'-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N'-メチレンジマレイミドなどのマレイミド化合物等が挙げられる。
【0034】
2官能のエポキシ樹脂系架橋剤(b1)の含有量は、低温硬化時の靭性向上の観点から、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。
また、低温硬化時の熱機械特性を保持する観点から、ポジ型感光性樹脂組成物中の2官能のエポキシ樹脂系架橋剤(b1)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは60質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0035】
2官能以上の尿素樹脂系架橋剤(b2)が用いられる場合、その含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温硬化時の靭性向上の観点から、好ましくは80質量部以上であり、より好ましくは85質量部以上、さらに好ましくは90質量部以上である。
また、低温硬化時の熱機械特性を保持する観点から、ポジ型感光性樹脂組成物中の2官能以上尿素樹脂系架橋剤(b2)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは140質量部以下であり、より好ましくは120質量部以下、さらに好ましくは110質量部以下である。
【0036】
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物中の、架橋剤(B)の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温硬化時の靭性向上の観点から、好ましくは120質量部以上であり、より好ましくは140質量部以上、さらに好ましくは160質量部以上である。
また、低温硬化時の熱機械特性を保持する観点から、ポジ型感光性樹脂組成物中の架橋剤(B)の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは250質量部以下であり、より好ましくは220質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。ここで、架橋剤(B)は、上述の2官能エポキシ樹脂系架橋剤(b1)、ならびに必要に応じて用いられる2官能以上の尿素樹脂系架橋剤(b2)、および必要に応じて用いられるその他の架橋剤(b3)からなる。
【0037】
(感光剤(C))
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、硬化膜を安定的に形成する観点から、感光剤(C)を含む。感光剤(C)は、具体的には、熱エネルギーまたは光エネルギーを吸収することにより酸を発生する酸発生剤である。
【0038】
低温での硬化性および耐薬性を向上する観点から、感光剤(C)は、好ましくはスルホニウム化合物またはその塩(c1)を含む。
スルホニウム化合物またはその塩(c1)は、具体的には、カチオン部としてスルホニウムイオンを有するスルホニウム塩である。このとき、スルホニウム化合物またはその塩(c1)のアニオン部は、具体的には、ホウ化物イオン、アンチモンイオン、リンイオンまたはトリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオンであり、低温での反応速度を向上する観点から、好ましくはホウ化物イオンまたはアンチモンイオンであり、より好ましくはホウ化物イオンである。これらのアニオンは置換基を有してもよい。
【0039】
スルホニウム化合物またはその塩(c1)は、好ましくは下記式(4)で示されるスルホニウム塩を含む。
【0040】
【化3】
【0041】
上記一般式(4)中、Rは水素原子または一価の有機基であり、低温での反応性を向上する観点から、好ましくは水素原子またはアシル基であり、より好ましくはアシル基であり、さらに好ましくはCHC(=O)-基である。
は一価の有機基であり、低温での反応性を向上する観点から、好ましくは鎖状もしくは分岐鎖を有する炭化水素基または置換基を有してもよいベンジル基であり、より好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基で置換されてもよいベンジル基または炭素数1以上4以下のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基または芳香環部がメチル基で置換されてもよいベンジル基である。
は一価の有機基であり、低温での反応性を向上する観点から、好ましくは鎖状もしくは分岐鎖を有する炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0042】
成分(c1)の他の好ましい例として、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のトリフェニルスルホニウム塩が挙げられる。
【0043】
ポジ型感光性樹脂組成物が、感光剤(C)を含む場合、その含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、低温での硬化性を向上する観点から、好ましくは0.005質量部以上であり、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.02質量部以上である。
また、信頼性低下を抑制する観点から、ポジ型感光性樹脂組成物中の感光剤(C)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたとき、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは18質量部以下、さらに好ましくは16質量部以下である。
【0044】
(密着助剤)
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、密着助剤を含むことが好ましい。これにより、例えば基板との密着性をより高めることができる。
【0045】
密着助剤は、特に限定されない。例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤、ウレイド基含有シランカップリング剤、スルフィド基含有シランカップリング剤等のシランカップリング剤を用いることができる。
シランカップリング剤を用いる場合、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えばビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤としては、例えばγ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-((メタ)アククリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えばビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレイド基含有シランカップリング剤としては、例えば3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
スルフィド基含有シランカップリング剤としては、例えばビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。
酸無水物含有シランカップリング剤としては、例えば3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシシリルプロピルコハク酸無水物、3-ジメチルメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0047】
密着助剤としては、シランカップリング剤だけでなく、チタンカップリング剤やジルコニウムカップリング剤等も挙げることができる。
【0048】
密着助剤が用いられる場合、単独で用いられてもよいし、2種以上の密着助剤が併用されてもよい。
密着助剤が用いられる場合、その含有量は、フェノール樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.3~15質量部、より好ましく0.4~12質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。
【0049】
(界面活性剤)
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤を含むことにより、塗工時における濡れ性を向上させ、均一な樹脂膜そして硬化膜を得ることができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキル系界面活性剤、およびアクリル系界面活性剤等が挙げられる。
【0050】
界面活性剤は、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含む界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、均一な樹脂膜を得られること(塗布性の向上)や、現像性の向上に加え、接着強度の向上にも寄与する。このような界面活性剤としては、例えば、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含むノニオン系界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤として使用可能な市販品としては、例えば、DIC株式会社製の「メガファック」シリーズの、F-251、F-253、F-281、F-430、F-477、F-551、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-569、F-570、F-572、F-574、F-575、F-576、R-40、R-40-LM、R-41、R-94等の、フッ素を含有するオリゴマー構造の界面活性剤、株式会社ネオス製のフタージェント250、フタージェント251等のフッ素含有ノニオン系界面活性剤、ワッカー・ケミー社製のSILFOAM(登録商標)シリーズ(例えばSD 100 TS、SD 670、SD 850、SD 860、SD 882)等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0051】
ポジ型感光性樹脂組成物が界面活性剤を含む場合、感光性樹脂組成物は1または2以上の界面活性剤を含むことができる。
感光性樹脂組成物が界面活性剤を含む場合、その量は、フェノール樹脂(A)100質量部に対し、例えば0.001~1質量部、好ましくは0.005~0.5質量部である。
【0052】
(溶剤)
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、好ましくは溶剤を含む。これにより、段差基板に対して塗布法により感光性樹脂膜を容易に形成することができる。本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物が溶剤を含む場合、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、例えばワニス状である。
溶剤は、通常、有機溶剤を含む。上述の各成分を溶解または分散可能で、かつ、各構成成分と実質的に化学反応しないものである限り、有機溶剤は特に限定されない。
【0053】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモ
ノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロプレングリコールメチルーn-プロピルエーテル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いられても複数組み合わせて用いられてもよい。
【0054】
溶剤を用いる場合は、ポジ型感光性樹脂組成物中の不揮発成分の濃度が、好ましくは30~75質量%、より好ましくは35~70質量%となるように用いられる。この範囲とすることで、各成分を十分に溶解または分散させることができる。また、良好な塗布性を担保することができ、ひいてはスピンコート時の平坦性の良化にもつながる。さらに、不揮発成分の含有量を調整することにより、ポジ型感光性樹脂組成物の粘度を適切に制御できる。
【0055】
(その他成分)
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、上記の成分に加えて、必要に応じて、上掲の成分以外の成分を含んでもよい。そのような成分としては、例えば、酸化防止剤、シリカ等の充填材、増感剤、フィルム化剤等が挙げられる。
【0056】
(ポジ型感光性樹脂組成物の特性)
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、上記成分を含むことにより、以下の条件1にて測定される、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜の引張伸び率を、5%以上200%以下とすることができる。
(条件1)
(i)当該ポジ型感光性樹脂組成物を200℃、180分の条件で硬化して前記硬化膜を形成し、前記硬化膜から、6.5mm×20mm×10μm厚の試料を作製する。
(ii)JIS K7161に基づき、23℃、試験速度5mm/minの条件で前記試料の引張試験を実施して前記引張伸び率を求める。
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜の引張伸び率の下限値は、脆性破壊を抑制する観点から、5%以上であり、好ましくは、6%以上であり、より好ましくは、7%以上であり、さらにより好ましくは、8%以上である。また硬化膜をより安定的に得る観点から、硬化膜の引張伸び率の上限値は、200%以下であり、好ましくは、150%以下であり、より好ましくは、125%以下であり、さらに好ましくは、100%以下である。
【0057】
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、上記成分を含むことにより、OK73シンナーに対する25℃における溶解性を、2g/ml以上とすることができる。このような溶解性を有することにより、露光、現像処理による加工性が良好となる。ここでOK73シンナーに対する溶解性は、以下の条件で測定される。
(条件)所定量の当該ポジ型感光性樹脂組成物と、OK73シンナー18gとをスクリュー管に仕込み、スターラーで30分間撹拌した後、当該ポジ型感光性樹脂組成物の残留物がなく、すべて溶解していることを確認する。
【0058】
本実施形態において、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性向上の観点から、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは200℃以上である。
また、脆性悪化を抑制する観点から、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、好ましくは260℃以下であり、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。
【0059】
ここで、ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物のTgは、所定の試験片(幅3mm×長さ10mm×厚み0.005~0.015mm)に対して、熱機械分析装置(TMA)を用いて、開始温度30℃、測定温度範囲30~440℃、昇温速度10℃/minの条件下で測定をおこなった結果から算出される。
【0060】
[硬化樹脂膜]
本実施形態における感光性樹脂組成物を硬化することにより樹脂膜が得られる。また、本実施形態における樹脂膜は、感光性樹脂組成物の乾燥膜または硬化膜である。すなわち、樹脂膜は、感光性樹脂組成物を乾燥または硬化させてなり、好ましくは感光性樹脂組成物を効果させてなる。
この樹脂膜は、たとえば永久膜、レジストなどの電子装置用の樹脂膜を形成するために用いられる。これらの中でも、低温で樹脂膜が得られる観点、優れた加工性を有する観点、および、信頼性に優れる樹脂膜が得られる観点から、永久膜を用いる用途に用いられることが好ましい。
本実施形態によれば、たとえば、感光性樹脂組成物を用いて得られる樹脂膜について、電子装置等を作製するために有用な樹脂膜とする上で求められる、加工性または信頼性に優れる膜を得ることも可能となる。
【0061】
上記永久膜は、感光性樹脂組成物に対してプリベーク、露光および現像をおこない、所望の形状にパターニングした後、ポストベークすることによって硬化させることにより得られた樹脂膜で構成される。永久膜は、バッファーコート膜等の電子装置の保護膜、再配線用絶縁膜等の層間膜、ダム材などに用いることができる。
【0062】
レジストは、たとえば、ネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の方法で、レジストにとってマスクされる対象に塗工し、ネガ型感光性樹脂組成物から溶媒を除去することにより得られた樹脂膜で構成される。
【0063】
図1は、本実施形態における樹脂膜を有する電子装置の構成例を示す断面図である。
図1に示した電子装置100は、上記樹脂膜を備える電子装置とすることができる。具体的には、電子装置100のうち、パッシベーション膜32、絶縁層42および絶縁層44からなる群の1つ以上を、樹脂膜とすることができる。ここで、樹脂膜は、上述した永久膜であることが好ましい。
【0064】
電子装置100は、たとえば半導体チップである。この場合、たとえば電子装置100を、バンプ52を介して配線基板上に搭載することにより半導体パッケージが得られる。電子装置100は、トランジスタ等の半導体素子が設けられた半導体基板と、半導体基板上に設けられた多層配線層(図示せず。)と、を備えている。多層配線層のうち最上層には、層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられた最上層配線34が設けられている。最上層配線34は、たとえば、アルミニウムAlにより構成される。また、層間絶縁膜30上および最上層配線34上には、パッシベーション膜32が設けられている。パッシベーション膜32の一部には、最上層配線34が露出する開口が設けられている。
【0065】
パッシベーション膜32上には、再配線層40が設けられている。再配線層40は、パッシベーション膜32上に設けられた絶縁層42と、絶縁層42上に設けられた再配線46と、絶縁層42上および再配線46上に設けられた絶縁層44と、を有する。絶縁層42には、最上層配線34に接続する開口が形成されている。再配線46は、絶縁層42上および絶縁層42に設けられた開口内に形成され、最上層配線34に接続されている。絶縁層44には、再配線46に接続する開口が設けられている。
【0066】
絶縁層44に設けられた開口内には、たとえばUBM(Under Bump Metallurgy)層50を介してバンプ52が形成される。電子装置100は、たとえばバンプ52を介して配線基板等に接続される。
【0067】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1~7、比較例1)
表1に記載の配合にて感光性樹脂組成物を調製した。具体的には、まず、表1に従い配合された各成分を、窒素雰囲気下で撹拌混合後、孔径0.2μmのポリエチレン製フィルターで濾過することにより、ワニス状の感光性樹脂組成物を得た。表1に記載の各成分の詳細を以下に示す。
【0070】
((A)フェノール樹脂)
・フェノール樹脂a1:フェノールアラルキル型樹脂、日本化薬社製、KAYAHARD GPH-103
・フェノール樹脂a2:ビフェニル型フェノール樹脂、住友ベークライト社製、PR-X18121
(架橋剤(B))
(エポキシ樹脂系架橋剤(b1))
・架橋剤b1-1:フェノキシ型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製、YX-7105
・架橋剤b1-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、株式会社大阪ソーダ社製、LX-01
・架橋剤b1-3:ゴム変性エポキシ樹脂、DIC社製、TSR960
・架橋剤b1-4:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ダイトーケミックス社製、PG207GS
(尿素樹脂系架橋剤(b2))
・架橋剤b2-1:1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、ダイトーケミックス社製、CROLIN-318
((C)感光剤)
・酸発生剤c1:光酸発生剤、ダイトーケミックス社製、DS-427、
・酸発生剤c2:4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、三新化学工業社製、SI-B5
・酸発生剤c3:4-アセトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、三新化学工業社製、SI-B3A
(密着助剤)
・密着助剤1:3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、KBM-503P
【0071】
(界面活性剤)
・界面活性剤1:フッ素系界面活性剤、スリーエムジャパン社製、FC4432(10%GBL)
(溶媒)
・溶媒1:γ-ブチロラクトン、三和油化工業社製
【0072】
得られた樹脂組成物について、以下の物性を測定した。
【0073】
(低温硬化性(硬化温度))
上記で得た感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウェハ上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにスピンコートし、イナートオーブン(光洋サーモシステム社製、品番CLH-21CD-(V)-S)中、窒素雰囲気下、下記の温度設定および測定内部温度に従って熱処理することにより硬化した。硬化温度を表1に示す。
・220℃硬化:常温(30℃)→30分かけて220℃まで昇温→180℃で2時間維持→30分かけて常温に降温
【0074】
(OK73シンナーへの溶解性)
感光性樹脂組成物2gと、OK73シンナー18gとをスクリュー管に仕込み、スターラーで30分間撹拌した。その後、得られた溶液を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:感光性樹脂組成物の残留物がなく、すべて溶解していた。
△:感光性樹脂組成物の固形分が目視で確認された。
(伸び率)
各例で得られた感光性樹脂組成物を200℃、180分の条件で硬化して硬化膜を形成した。得られた硬化膜から、6.5mm×20mm×10μm厚の試料を作製した。
試料の引張試験を、JIS K7161に基づき、オリエンテック社製引張試験機(テンシロンRTA-100)、23℃、試験速度5mm/minの条件で実施した。1つの試料について8回測定をおこない、その平均値(表1中「ave.」)を引張伸び率(%)とした。結果を表1に示す。
【0075】
(Tg、線膨張係数(CTE)))
各例で得られた感光性樹脂組成物の硬化膜を200℃、180分の条件で作製し、得られた硬化膜から幅3mm×長さ10mm×厚み10mmの試験片を得た。
各例の試験片に対し、熱機械分析装置(TMA、Seiko Instruments Inc社製、SS6000)を用いて、開始温度30℃、測定温度範囲30~440℃、昇温速度10℃/minの条件下で測定をおこない、測定結果より、Tg(℃)および50~100℃の温度領域の線膨張係数(ppm/℃)を求めた。結果を表1に示す。
【0076】
(膨潤性)
上記で得た感光性樹脂組成物を、それぞれ8インチシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で3分間プリベークし、膜厚約7.5μmの塗膜を得た。塗布膜を、酸素濃度を1000ppm以下に保ちながら、オーブンにて200℃で60分間加熱し、樹脂組成物の硬化膜を得た。硬化膜を30wt%アンモニア溶液に50℃で10分間浸漬し、その後純水で十分洗浄後風乾し、処理後の膜厚を測定した。処理後の膜厚と処理前の膜厚の膜厚変化率を下記式より算出し、硬化物の膨潤率とした。
硬化物の膨潤率(%){(浸漬後の膜厚-浸漬前の膜厚)/浸漬前の膜厚}×100(%)
硬化物の膨潤率が5%以下を「○」、5%を超えた場合を「×」として評価した。
硬化物の膨潤率は半導体製造プロセスでの膜厚変化を少なくし、工程異常をなくすためにも小さいほうがよい。
【0077】
(現像性)
上記で得られた感光性樹脂組成物を、それぞれ、8インチシリコンウエハ上にスピンコ
ーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で3分間プリベークし、膜厚約
9.0μmの塗膜を得た。この塗膜に凸版印刷社製マスク(テストチャートNo.1:幅
0.88~50μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して、i線ス
テッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いて、露光量を変化させて照射した。
次に、現像液として2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い
、プリベーク後の膜厚と現像後の膜厚の差が1.0μmになるように現像時間を調節して
2回パドル現像を行うことによって露光部を溶解除去した後、純水で10秒間リンスした
。100μmの正方形のビアホールのパターンが形成される最低露光量+100mJ/c
のエネルギーで露光されたパターンにてラインパターンの解像度を評価した。解像度は、10μm間隔のラインパターンにて開口しているかを確認した。開口している場合は、「○」、開口していない場合は「×」として表1に示す。
【0078】
【表1】
【符号の説明】
【0079】
30 層間絶縁膜
32 パッシベーション膜
34 最上層配線
40 再配線層
42、44 絶縁層
46 再配線
50 UBM層
52 バンプ
100 電子装置
図1