(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073668
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】運転支援システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230519BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
B62D6/00
G06F3/01 590
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186266
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高尾 英行
(72)【発明者】
【氏名】澄川 瑠一
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
(72)【発明者】
【氏名】松田 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡史
(72)【発明者】
【氏名】小松 孝徳
【テーマコード(参考)】
3D232
5E555
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA23
3D232DA76
3D232DA84
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3D232DA91
3D232DB11
3D232DB20
3D232DC33
3D232DC34
3D232EB30
3D232EC40
3D232GG01
5E555AA08
5E555BA23
5E555BA88
5E555BB23
5E555BC01
5E555BE10
5E555CA01
5E555CA41
5E555CB01
5E555DA23
5E555EA20
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】運転中のドライバに対して、注意力の低下を抑制可能な方法で操舵状態を知らせ、適切な操舵行動へと誘導可能な運転支援システムを提供する。
【解決手段】ドライバによるステアリング操作を支援する運転支援システムは、車両の予測軌道の情報を取得し、予測軌道に対応するステアリングホイールの想定操舵角を求め、想定操舵角に基づいてステアリングホイールの操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに角度領域ごとに音を割り当て、検出される操舵角に応じて、割り当てられた音を出力する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバによるステアリング操作を支援する運転支援システムにおいて、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記プロセッサは、
車両の予測軌道の情報を取得し、
前記予測軌道に対応するステアリングホイールの想定操舵角を求め、
前記想定操舵角に基づいて前記ステアリングホイールの操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに前記角度領域ごとに音を割り当て、
検出される操舵角に応じて、割り当てられた音を出力する、運転支援システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記ステアリングホイールの操作時に、前記ステアリングホイールが一方向に回転することに伴って段階的に音階が変化するように前記音を割り当てる、請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記予測軌道の旋回走行区間の曲率半径に応じた想定最大操舵角を算出し、
基準操舵角から前記想定最大操舵角までの範囲に、あらかじめ設定された第1基準音階から第2基準音階までの音を段階的に割り当てる、請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
基準操舵角から所定角度までの範囲を区分した角度領域それぞれの角度を、前記所定角度を超え前記想定最大操舵角までの範囲を区分した角度領域それぞれの角度よりも小さくする、請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項5】
ドライバによるステアリング操作を支援する運転支援システムに適用されるコンピュータプログラムであって、
一つ又は複数のプロセッサに、
車両の予測軌道の情報を取得することと、
前記予測軌道に対応するステアリングホイールの想定操舵角を求めることと、
前記想定操舵角に基づいて前記ステアリングホイールの操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに、角度領域ごとに音を割り当てることと、
検出される操舵角に応じて、割り当てられた音を出力することと、
を含む処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドライバによる車両の適切な操舵行動の誘導を図る運転支援システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転操作のレベルは、ドライバによってさまざまである。従来ドライバに車両の操舵状態を知らせる装置が種々提案されている。例えば特許文献1には、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段と、ドライバに目視可能な位置に配置され、操舵状態を回転中心周りに表示可能な表示手段とを備え、表示手段が、操舵角に一対一に対応するように回転中心周りに操舵角情報を表示するとともに回転中心の移動により操舵方向情報を表示する運転支援システムが提案されている。当該特許文献1には、ステアリングホイールの操舵量を、操舵量に連動して変化する音によって示し、例えば操舵量が大きくなるほど音階を高くするように制御することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の運転支援システムにおいて、運転中のドライバに対して、画像表示によって操舵状態を表示した場合、ドライバが目視で確認する際に車両の周囲に対する注意力が低下するおそれがある。また、特許文献1には、ステアリングホイールの操舵量を変化する音によって示すことも提案されているが、単に音を変化させるだけでは、ドライバは、適切な操舵行動が行われているかを知ることはできない。
【0005】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、運転中のドライバに対して、注意力の低下を抑制可能な方法で操舵状態を知らせ、適切な操舵行動へと誘導可能な運転支援システム及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、ドライバによるステアリング操作を支援する運転支援システムであって、一つ又は複数のプロセッサと、一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、プロセッサは、車両の予測軌道の情報を取得し、予測軌道に対応するステアリングホイールの想定操舵角を求め、想定操舵角に基づいてステアリングホイールの操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに角度領域ごとに音を割り当て、検出される操舵角に応じて、割り当てられた音を出力する運転支援システムが提供される。
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、ドライバによるステアリング操作を支援する運転支援システムに適用されるコンピュータプログラムであって、一つ又は複数のプロセッサに、車両の予測軌道の情報を取得することと、予測軌道に対応するステアリングホイールの想定操舵角を求めることと、想定操舵角に基づいてステアリングホイールの操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに、角度領域ごとに音を割り当てることと、検出される操舵角に応じて、割り当てられた音を出力することと、を含む処理を実行させるコンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本開示によれば、運転中のドライバに対して、注意力の低下を抑制可能な方法で操舵状態を知らせ、適切な操舵行動へと誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る運転支援システムを適用した車両を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る運転支援システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る運転支援システムによる聴覚刺激出力処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【
図4】同実施形態による音の割り当て方法の一例を示す説明図である。
【
図5】同実施形態による音の割り当て方法の別の例を示す説明図である。
【
図6】同実施形態による音の割り当て方法の別の例を示す説明図である。
【
図7】同実施形態による運転支援システムの作用を示す説明図である。
【
図8】同実施形態による運転支援システムの作用を示す説明図である。
【
図9】同実施形態による運転支援システムの作用を示す説明図である。
【
図10】同実施形態による運転支援システムの作用を示す説明図である。
【
図11】同実施形態による運転支援システムの作用を示す説明図である。
【
図12】同実施形態による運転支援システムの作用を示す説明図である。
【
図13】同実施形態による音の割り当て方法の応用例を示す説明図である。
【
図14】同実施形態による音の割り当て方法の応用例による作用を示す説明図である。
【
図15】第2の実施の形態に係る運転支援システムによる聴覚刺激出力処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【
図16】同実施形態による切り増し時基準音階の設定方法の一例を示す説明図である。
【
図17】同実施形態による切り増し時聴覚出力処理を示すフローチャートである。
【
図18】同実施形態による切り増し時基準音階の調整方法を示す説明図である。
【
図19】同実施形態による切り増し時基準音階の調整方法を示す説明図である。
【
図20】同実施形態による切り戻し時基準音階の設定方法の一例を示す説明図である。
【
図21】同実施形態による切り戻し時聴覚出力処理を示すフローチャートである。
【
図22】同実施形態による切り戻し時基準音階の調整方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<<1.第1の実施の形態>>
<1-1.運転支援システム>
まず、
図1及び
図2を参照して、本開示の第1の実施の形態に係る運転支援システム10の構成例を説明する。
図1は、運転支援システム10を搭載した車両1を示す模式図であり、
図2は、運転支援システム10の構成の一例を示すブロック図である。
【0012】
運転支援システム10は、車両情報取得装置11、道路形状情報取得装置15、出力装置21及び情報処理装置50を備えている。車両情報取得装置11、道路形状情報取得装置15及び出力装置21は、専用線、CAN(Controller Area Network)等の通信バス、又はBlutooth(登録商標)等の無線通信手段を介して情報処理装置50と通信可能に接続されている。
【0013】
車両情報取得装置11は、舵角センサ12及び車速センサ13を含む。舵角センサ12は、ステアリングホイール3の回転角度(操舵角)を検出する。車速センサ13は、車両1の速度を検出する。また、本実施形態では、車両情報取得装置11は、方向指示器の切り替えスイッチ14を含む。方向指示器の切り替えスイッチ14は、方向指示器の点灯状態に応じて切り替えられる。車両情報取得装置11は、このほかドライバを撮影するドライバ撮影カメラを備えていてもよい。情報処理装置50は、舵角センサ12、車速センサ13及び方向指示器の切り替えスイッチ14あるいはドライバ撮影カメラから出力される信号を受信可能に構成される。
【0014】
道路形状情報取得装置15は、前方撮影カメラ16及び車両位置検出センサ17を含む。前方撮影カメラ16は、CCD(Charged-Coupled Devices)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の撮像素子を備え、生成した画像データを情報処理装置50へ送信する。前方撮影カメラ16は、左右一対のカメラを含むステレオカメラであってもよく単眼カメラであってもよい。また、道路形状情報取得装置15は、前方撮影カメラ16に代えて、あるいは、前方撮影カメラ16と併せてLiDAR(Light Detection And Ranging)やレーダセンサを含んでいてもよい。
【0015】
車両位置検出センサ17は、GPS(Global Positioning System)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)に用いられるセンサであり、衛星から送信される衛星信号を受信し、衛星信号に含まれる車両1の位置情報を情報処理装置50へ送信する。なお、車両位置検出センサ17は、GPSアンテナとに代えて、あるいは、GPSアンテナと併せて、車両1の位置を特定可能な他の衛星システムからの衛星信号を受信可能なアンテナを含んでいてもよい。
【0016】
出力装置21は、ドライバに認識可能な音を出力する装置である。出力装置21は、車両に備えられたスピーカであってもよく、運転支援システム10専用のスピーカであってもよい。本実施形態では、出力装置21は、車両に備えられた複数のスピーカ21a~21dを含むスピーカシステムとして構成される。出力装置21は、情報処理装置50により出力の制御が行われ、聴覚刺激を通じてドライバに対して操舵状態を認識させる。
【0017】
情報処理装置50は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の一つ又は複数のプロセッサと、当該プロセッサと通信可能に接続されたRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の一つ又は複数のメモリを備えて構成される。情報処理装置50の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、プロセッサからの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0018】
情報処理装置50は、一つ又は複数のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで操舵状態に応じた音を出力する装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、情報処理装置50が実行すべき後述する動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、情報処理装置50に備えられた記憶部(メモリ)55として機能する記録媒体に記録されていてもよく、情報処理装置50に内蔵された記録媒体又は情報処理装置50に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。
【0019】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM及びROM等の記憶素子、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のフラッシュメモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0020】
<1-2.情報処理装置>
(1-2-1.基本構成)
情報処理装置50は、通信部51、処理部53、記憶部55及び地図データ記憶部57を備えている。処理部53は、取得部61、予測軌道演算部63、想定操舵角演算部65、音設定部67及び出力制御部69を備えている。処理部53は、CPU等のプロセッサにより構成され、取得部61、予測軌道演算部63、想定操舵角演算部65、音設定部67及び出力制御部69の各部は、プロセッサによるプログラムの実行により実現される機能である。ただし、取得部61、予測軌道演算部63、想定操舵角演算部65、音設定部67及び出力制御部69の一部が、アナログ回路や論理回路等のハードウェアにより構成されていてもよい。
【0021】
通信部51は、処理部53と、車両情報取得装置11、道路形状情報取得装置15及び出力装置21との間で通信をするためのインタフェースである。
【0022】
記憶部55は、RAM又はROM等の一つ又は複数の記憶素子を含んで構成される。記憶部55は、処理部53により実行されるコンピュータプログラムやコンピュータプログラムの実行に用いられる種々のパラメータの他、取得されたデータ、演算結果のデータ等を記憶する。
【0023】
地図データ記憶部57は、ハードディスク、CD-ROM又はDVD等の記録媒体により構成される。地図データ記憶部57には、少なくとも道路形状のデータを含む地図データが記録されている。道路形状のデータは、道路の幅、車線及び曲率半径の情報を含む。地図データは、所定の座標系により地図上の位置を特定可能に構成されており、車両位置検出センサ17から送信される車両1の位置データに含まれる所定の座標位置の情報により、車両1の地図データ上の位置が特定可能になっている。
【0024】
以下、処理部53の取得部61、予測軌道演算部63、想定操舵角演算部65、音設定部67及び出力制御部69それぞれの機能を簡単に説明した後で、各部による処理動作を詳細に説明する。
【0025】
(1-2-2.機能構成)
(取得部)
取得部61は、通信部51を介して、車両情報取得装置11及び道路形状情報取得装置15から送信される情報を取得する。取得部61は、所定の演算周期で情報を取得し、取得した情報を記憶部55に記憶する。
【0026】
(予測軌道演算部)
予測軌道演算部63は、車両1の予測軌道を演算する。予測軌道演算部63は、車両1の進行方向前方の道路形状を特定するとともに、当該道路形状に応じた車両1の予測軌道を算出する。本実施形態では、予測軌道演算部63は、車両位置検出センサ17から送信される車両1の位置データ及び地図データ記憶部57に記録された地図データに基づいて車両1の予測軌道を算出する。また、予測軌道演算部63は、前方撮影カメラ16から送信される画像データに基づいて車両1の前方の道路形状を算出し、車両1の予測軌道を演算する。
【0027】
また、予測軌道演算部63は、求めた車両1の予測軌道の情報に基づいて、車両1が通過予定の旋回走行区間の曲率半径、旋回走行区間の入口までの距離及び旋回走行区間の入口から出口までの距離を求める。「旋回走行区間」は、道路形状が湾曲状になったカーブ区間だけでなく、交差点を曲がる際の走行区間も含む。
【0028】
なお、予測軌道演算部63は、地図データに基づく予測軌道の演算又は前方撮影カメラ16から送信される画像データに基づく予測軌道の演算のいずれか一方又は両方により車両1の予測軌道を求めてもよい。例えば予測軌道演算部63は、例えば地図データに基づいて求められる予測軌道を、前方撮影カメラ16から送信される画像データに基づいて特定される障害物や車両1の走行位置等の情報を用いて補正し、車両1の予測軌道を求めてもよい。
【0029】
(想定操舵角演算部)
想定操舵角演算部65は、予測軌道演算部63により求められた車両1の予測軌道の情報に基づいて、予測軌道に対応するステアリングホイール3の想定操舵角を演算する。また、想定操舵角演算部65は、予測軌道の旋回走行区間の曲率半径に応じた想定最大操舵角を算出する。
【0030】
(音設定部)
音設定部67は、想定操舵角演算部65により求められた想定操舵角の情報に基づいて、ステアリングホイール3の操舵角に対して音を割り当てる処理を実行する。具体的に、音設定部67は、想定操舵角に基づいてステアリングホイール3の操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに角度領域ごとに音を割り当てる。このとき、音設定部67は、ステアリングホイール3の操作時に、ステアリングホイール3が一方向に回転することに伴って段階的に音階が変化するように音を割り当てる。第1の実施の形態では、音設定部67は、基準操舵角から想定最大操舵角までの範囲に、あらかじめ設定された第1基準音階から第2基準音階までの音階を段階的に割り当てる。
【0031】
(出力制御部)
出力制御部69は、音設定部67により設定された音の割り当ての情報と、舵角センサ12により検出されたステアリングホイール3の操舵角とに基づいて、ドライバによるステアリングホイール3の操舵状態を音に変換し、音を出力する処理を実行する。具体的に、出力制御部69は、検出されるステアリングホイール3の操舵角に応じて、当該操舵角に割り当てられている音を出力音として設定し、出力装置21の駆動を制御して音を出力する。出力される音は、例えばピアノやオルガン、バイオリン等の楽器音であってもよく、メダル獲得音、拍手音又は花火の打ち上げ音等の効果音であってもよい。ただし、出力される音は、これらの例に限られるものではない。
【0032】
<1-3.運転支援システムの動作>
ここまで、本実施形態に係る運転支援システム10の構成例を説明した。続いて、運転支援システム10の動作を具体例に沿って説明する。
【0033】
図3は、運転支援システム10を構成する情報処理装置50の処理部53による処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【0034】
まず、処理部53は、ステアリングホイール3の操舵状態を、聴覚刺激を通じてドライバに認識させる処理(以下、「聴覚刺激出力処理」ともいう)の実行を開始するか否かを判定する(ステップS11)。聴覚刺激出力処理の実行を開始する条件は特に限定されるものではない。例えば、車両の運転システムが起動されている間、常時聴覚刺激出力処理が実行される場合、処理部53は、運転システムの起動時に聴覚刺激出力処理の実行を開始すると判定してもよい。あるいは、処理部53は、ドライバ撮影カメラや運転席に設置された荷重センサの出力信号に基づいてドライバが運転席に着座したことを検知したときに聴覚刺激出力処理の実行を開始すると判定してもよい。また、ドライバ等の乗員が聴覚刺激出力処理の実行のオンオフを切り替え可能になっている場合、処理部53は、聴覚刺激出力処理の実行がオフからオンに切り替えられたときに聴覚刺激出力処理の実行を開始すると判定してもよい。
【0035】
聴覚刺激出力処理の実行を開始すると判定しない場合(S11/No)、処理部53は、ステップS11の判別処理を繰り返し実行する。聴覚刺激出力処理の実行を開始すると判定した場合(S11/Yes)、処理部53の予測軌道演算部63は、道路形状情報を取得する(ステップS13)。具体的に、予測軌道演算部63は、車両位置検出センサ17から送信される車両1の位置データに基づいて地図データ上の車両1の位置及び向きを特定する。また、予測軌道演算部63は、地図データに含まれる車両1の進行方向の道路形状のデータを取得する。あるいは、予測軌道演算部63は、前方撮影カメラ16から送信される画像データに基づいて、車両1の前方の道路形状を算出してもよい。この場合、予測軌道演算部63は、白線や縁石、ガードレール、側壁等の車線の境界を特定可能な対象物を認識する処理を実行し、道路形状を算出する。
【0036】
次いで、予測軌道演算部63は、車両1の進行方向前方にカーブ区間かあるか否かを判定する(ステップS15)。例えば予測軌道演算部63は、取得した道路形状の曲率半径が所定の閾値以下の場合に、車両1の進行方向前方にカーブ区間があると判定する。道路形状の曲率半径は、地図データ記憶部57に記録された地図データに含まれていてもよく、前方撮影カメラ16から送信される画像データに基づいて算出されてもよい。所定の閾値は、聴覚刺激を通じてドライバに操舵状態を認識させたいカーブの度合いに応じて任意に設定されてよい。
【0037】
車両1の進行方向前方にカーブ区間がある場合(S15/Yes)、予測軌道演算部63は、車両1の予測軌道を演算する処理を実行する(ステップS19)。一方、車両1の進行方向前方にカーブ区間がない場合(S15/No)、予測軌道演算部63は、方向指示器の切り替えスイッチの出力信号に基づいて、方向指示器が点灯しているか否かを判定する(ステップS17)。方向指示器が点灯していない場合(S17/No)、予測軌道演算部63は、ステップS13に戻って上述した各ステップの処理を繰り返す。一方、方向指示器が点灯している場合(S17/Yes)、予測軌道演算部63は、車両1の予測軌道を演算する処理を実行する(ステップS19)。
【0038】
進行方向前方にカーブ区間がある場合(S15/Yes)、又は、方向指示器が点灯している場合(S17/Yes)に進んだステップS19では、予測軌道演算部63は、車両1の予測軌道を求める。カーブ区間の予測軌道は、車両1が走行する車線の幅方向の中心線等、任意の算出方法により求められてよい。また、右折時又は左折時等の予測軌道は、曲がる前の車線及び曲がった後の車線の幅方向の中心線をつなぐ、所定の曲率半径の円弧としてもよい。また、地図データに含まれる道路形状のデータが、車両1の予測軌道として用いられる走行軌道のデータを含んでいてもよい。
【0039】
また、予測軌道演算部63は、求めた予測軌道の所定の区間ごとに曲率半径を求める。例えば予測軌道演算部63は、所定の区間ごとに設定される通過点それぞれの位置での予測軌道の曲率半径を求める。所定の区間ごとに設定される通過点は、一定の距離ごとに設定されてもよく、車両1の車速に所定の時間をかけた走行距離ごとに設定されてもよい。
【0040】
また、予測軌道演算部63は、予測軌道の曲率半径が所定の閾値以下になってから所定の閾値を超えるまでの区間を一つの「旋回走行区間」とし、旋回走行区間の入口までの距離及び特定した旋回走行区間の入口から出口までの距離を求める。旋回走行区間の入口までの距離は、車両1の位置から旋回走行区間の入口の地点までの走行軌道の長さとして求めることができる。また、旋回走行区間の入口から出口までの距離は、旋回走行区間の入口の地点から出口の地点までの走行軌道の長さとして求めることができる。それぞれの距離は、地図データ上で特定される距離を計算してもよく、前方撮影カメラ16の画像データにより特定される距離を計算してもよい。
【0041】
次いで、想定操舵角演算部65は、予測軌道の情報に基づいて、予測軌道に対応するステアリングホイール3の想定操舵角を演算するとともに、それぞれの旋回走行区間における想定最大操舵角を算出する(ステップS21)。具体的に、想定操舵角演算部65は、ステアリングホイール3の操舵角と転舵輪の転舵角との関係に基づいてあらかじめ設定された、操舵角に対する走行軌道の曲率半径のデータを参照して、予測軌道上を車両1が走行する場合に想定される操舵角の推移を求める。さらに、想定操舵角演算部65は、想定される操舵角の推移のデータから、それぞれの旋回走行区間中に想定される最大操舵角を求める。
【0042】
次いで、音設定部67は、基準操舵角から想定最大操舵角までの範囲を複数の角度領域に区分し、基準操舵角から想定最大操舵角までの範囲に、あらかじめ設定された第1基準音階から第2基準音階までの音階を段階的に割り当てる(ステップS23)。本実施形態では、それぞれの旋回走行区間を通過する際に、車両1が旋回走行区間に進入してから、操舵角が想定最大操舵角となるまでに第1基準音階から第2基準音階までの音が出力され、操舵角が想定最大操舵角となってから旋回走行区間を出るまでに第2基準音階から第1基準音階までの音が出力されるように音階が割り当てられる。
【0043】
図4は、右カーブの区間を車両1が走行する際の想定最大操舵角θzが90度の場合に、第1基準音階を「ド」の音とし、第2基準音階を1オクターブ高い「ド」の音として、音階を割り当てる例を示す説明図である。
図4に示した例では、基準操舵角θ0は、直進走行状態の操舵角、つまり0度に設定されている。音設定部67は、基準操舵角θ0(0度)から想定最大操舵角θz(90度)までの範囲を8つの角度領域に区分し、基準操舵角θ0から順に「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音を割り当てる。これにより、車両1が旋回走行区間に進入してから、操舵角が想定最大操舵角θzとなるまでに、音階が1段階ずつ上がるように「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音が出力される。また、操舵角が想定最大操舵角θzとなってから旋回走行区間を出るまでに、音階が1段階ずつ下がるように「ド」、「シ」、「ラ」、「ソ」、「ファ」、「ミ」、「レ」、「ド」の音が出力される。
【0044】
「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音階であれば、多くの人が基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでの範囲における操舵状態を直感的に認識することができる。したがって、本実施形態では、音設定部67は、想定最大操舵角θzの大きさにかかわらず、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでの範囲を8つの角度領域に区分し、基準操舵角θ0から順に「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音を割り当てる。
【0045】
例えば
図5及び
図6は、それぞれ想定最大操舵角θzが135度及び70度である場合に割り当てられた音階の例を示す。
図5は、
図4に示す例に比べて曲率が大きい(曲率半径が小さい)旋回走行区間を走行する場合の例であり、
図6は、
図4に示す例に比べて曲率が小さい(曲率半径が大きい)旋回走行区間を走行する場合の例である。想定最大操舵角θzが大きいほど、それぞれの音階が割り当てられる角度領域は大きくなる一方、想定最大操舵角θzが小さいほど、それぞれの音階が割り当てられる角度領域は小さくなる。
【0046】
なお、基準操舵角θ0は0度でなくてもよいが、基準操舵角θ0を0度とすることにより、直進状態から旋回走行区間に進入したタイミングや、S字カーブを走行中に旋回方向が切り替わったタイミングから、第1基準音階の音を発生させることができる。一方、曲率半径が大きい緩いカーブを走行中に、曲率半径が小さいカーブ区間が認識された場合、緩いカーブを走行中のステアリングホイール3の操舵角を基準操舵角θ0に設定することによって、カーブ区間に進入する直前の操舵角から想定最大操舵角までの範囲を均等な角度領域に区分して音階を設定することができる。
【0047】
次いで、出力制御部69は、車両1が旋回走行区間の入口に到達するまでの時間が所定の閾値未満になったか否かを判定する(ステップS25)。この閾値は、それぞれの旋回走行区間について、操舵状態に応じた音の出力を開始するタイミングを定めるものであり、ゼロを含む任意の値に設定されてよい。車両1が旋回走行区間の入口に到達するまでの時間は、車両1から旋回走行区間の入口までの距離を車速で割ることにより求めることができる。車両1から旋回走行区間の入口までの距離は、例えば前方撮影カメラ16から送信される画像データに基づいて算出されてもよく、車両位置検出センサ17により特定される車両1の位置情報と地図データとに基づいて算出されてもよい。
【0048】
車両1が旋回走行区間の入口に到達するまでの時間が所定の閾値未満になっていない場合(S25/No)、出力制御部69は、車両1が旋回走行区間の入口に到達するまでの時間が所定の閾値未満になったか否かの判定を繰り返す。一方、車両1が旋回走行区間の入口に到達するまでの時間が所定の閾値未満になった場合(S25/Yes)、出力制御部69は、舵角センサ12から送信される検出データに基づいて操舵角θを検出し、検出された操舵角θを含む角度領域に割り当てられた音を出力するように出力装置21を制御する(ステップS27)
【0049】
次いで、出力制御部69は、車両1が旋回走行区間を通過したか否かを判定する(ステップS29)。例えば出力制御部69は、ステアリングホイール3の操舵角θが0度になったときに車両1が旋回走行区間を通過したと判定する。また、出力制御部69は、ステアリングホイール3の操舵角θが基準操舵角θ0(0度)を中心とする微小操舵角の範囲内に保持された状態で所定時間を経過した場合に、車両1が旋回走行区間を通過したと判定してもよい。あるいは、出力制御部69は、予測軌道の曲率半径が、ステップS15で用いた所定の閾値以上の区間に車両1が到達したときに、車両1が旋回走行区間を通過したと判定してもよい。また、S字カーブ等の連続するカーブ区間を通過する際には、出力制御部69は、次のカーブ区間に進入したときに、それまでのカーブ区間を通過したと判定してもよい。
【0050】
車両1が旋回走行区間を通過していない場合(S29/No)、出力制御部69は、ステップS23に戻り、操舵角θを検出し、割り当てられた音を出力する処理を繰り返す。一方、車両1が旋回走行区間を通過した場合(S29/Yes)、処理部53は、聴覚刺激出力処理を終了させるか否かを判定する(ステップS31)。例えばステップS11で聴覚刺激出力処理を開始すると判定した条件が不成立となった場合に、処理部53は聴覚刺激出力処理を終了させると判定する。聴覚刺激出力処理を終了させると判定された場合(S31/Yes)、処理部53は、聴覚刺激出力処理を停止して本ルーチンを終了する。一方、聴覚刺激出力処理を終了させると判定されない場合(S31/No)、処理部53は、ステップS13に戻って聴覚刺激出力処理を継続する。
【0051】
<1-4.作用>
続いて、
図7~
図12を参照して本実施形態に係る運転支援システム10の作用を説明する。
図7~
図12は、いずれも想定最大操舵角θzが90度で、旋回走行区間全体の想定操舵角にしたがって適切にステアリング操作を行ったときに、操舵角速度が一定の状態でステアリングホイール3が切り増し及び切り戻しされる右カーブの区間を車両1が通過する例を示す。
図7~
図12は、それぞれ
図4に示したように音階が割り当てられた状態でドライバが適切なステアリング操作を行った場合(
図7及び
図8)、修正舵を加えた場合(
図9及び
図10)、ステアリングホイール3を切りすぎた場合(
図11及び
図12)の例を示す。
【0052】
図7及び
図8に示すように、ドライバが適切にステアリング操作を行った場合、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでステアリングホイール3を切り増す間に「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音が順に出力される。さらに、出力音が途切れることなく、想定最大操舵角θzから基準操舵角θ0までステアリングホイール3を切り戻す間に「ド」、「シ」、「ラ」、「ソ」、「ファ」、「ミ」、「レ」、「ド」の音が順に出力される。これにより、ドライバは、旋回走行区間を通過する際に、適切なステアリング操作を行うことができたことを直感的に認識することができる。また、ドライバは、ステアリングホイール3を切り増している間に、ステアリングホイール3の操舵角が想定最大操舵角θzに近づくことを直感的に認識することができる。
【0053】
これに対して、
図9及び
図10に示すように、ドライバが修正舵を加えた場合、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでステアリングホイール3を切り増す間に「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音が順に出力される。ただし、音階が変化する速度が適切なステアリング操作の場合(一点鎖線)と比べて速くなるとともに、続けて修正舵に合わせて「ド」、「シ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音が出力される。その後、想定最大操舵角θzから基準操舵角θ0までステアリングホイール3を切り戻す間に「ド」、「シ」、「ラ」、「ソ」、「ファ」、「ミ」、「レ」、「ド」の音が順に出力される。したがって、ドライバは自身が修正舵を行ったことを認識することができ、次回、出力音が適切に変化するステアリング操作となるように、ドライバに意識させることができる。
【0054】
また、
図11及び
図12に示すように、ドライバがステアリングホイール3を切りすぎた場合、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでステアリングホイール3を切り増す間に「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音が順に出力される。ただし、音階が変化する速度が適切なステアリング操作の場合(一点鎖線)と比べて速くなるとともに、その後、操舵角が想定最大操舵角θzを超えている間に出力音が途切れる。そして、想定最大操舵角θzから基準操舵角θ0までステアリングホイール3を切り戻す間に「ド」、「シ」、「ラ」、「ソ」、「ファ」、「ミ」、「レ」、「ド」の音が順に出力される。したがって、ドライバは自身がステアリングホイール3を切りすぎたことを認識することができ、次回、出力音が途切れないように、ドライバに意識させることができる。
【0055】
なお、音階を割り当てる際に、
図13に示すように、基準操舵角θ0から所定角度θxまでの範囲を区分した角度領域それぞれの角度を、所定角度θxを超え想定最大操舵角θzまでの範囲を区分した角度領域それぞれの角度よりも小さくしてもよい。つまり、旋回走行区間への進入直後のステアリングホイール3の切り増し開始時に音階の変化により示される操舵角の変化の感度が高くなるように音階が割り当てられてもよい。
図13に示した例では所定角度θxは28度であり、「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」の音が出力される角度領域がそれぞれ7度に設定され、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音が出力される角度領域がそれぞれ15.5度に設定されている。これにより、
図14に示すように、同じ時間間隔で音階が変化するようにステアリングホイール3を操作するためには切り始め及び切り戻しの終わりの操舵角速度を緩やかにする必要があるため、ドライバに、切り始め又は切り戻しの終わりのステアリング操作を緩やかにするように意識させることができる。したがって、車両1の挙動がより安定化するステアリング操作を実現することができる。
【0056】
<1-5.本実施形態による効果>
以上説明したように、本実施形態に係る運転支援システム10は、車両1の予測軌道に対応するステアリングホイール3の想定操舵角を求め、想定操舵角に基づいてステアリングホイール3の操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに角度領域ごとに音を割り当て、検出される操舵角に応じて割り当てられた音を出力する。このため、運転中のドライバに対して、ステアリングホイール3の操舵状態をリアルタイムに認識させることができる。また、聴覚刺激は表示又は音声のテキスト情報を含まないことから、ドライバに対して聴覚刺激を通じて直感的に操舵状態を認識させることができ、注意力の低下を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る運転支援システム10では、ステアリングの想定最大操舵角が求められ、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでの範囲に、あらかじめ設定された第1基準音階から第2基準音階までの音が段階的に割り当てられる。したがって、ドライバは、想定最大操舵角に対してどの程度ステアリングホイール3を切っているかを認識することができるとともに、ステアリングホイール3を切りすぎたことを認識することができる。また、ステアリングホイール3の操作時に一方向に回転することに伴って第1基準音階から第2基準音階までの音が段階的に出力されることから、ドライバは修正舵を行ったことを認識することができる。これにより、ドライバが適切なステアリング操舵を行うようにドライバにモチベーションを与えることができる。
【0058】
<<2.第2の実施の形態>>
続いて、本開示の第2の実施の形態に係る運転支援システムを説明する。
第1の実施の形態で説明した運転支援システムでは、車両1の予測軌道の旋回走行区間の曲率半径に応じた想定最大操舵角θzが算出され、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでの範囲に対して第1基準音階から第2基準音階までの音が段階的に割り当てられていた。これに対して、第2の実施の形態に係る運転支援システムでは、予測軌道に対応するステアリングホイールの基準回転操作が設定され、ステアリングホイールの基準回転操作の回転方向へ操舵角が変化する場合に段階的に音階が変化するように割り当てられた角度領域の間隔と、ステアリングホイールの基準回転操作の回転方向とは逆方向へ操舵角が変化する場合に段階的に音階が変化するように割り当てられた角度領域の間隔と、を異ならせる。
【0059】
第2の実施の形態に係る運転支援システムは、音を割り当てる処理の内容が異なる以外、第1の実施の形態に係る運転支援システム10と同様に構成することができる。以下、本実施形態に係る運転支援システムの処理動作のうち、第1の実施の形態に係る運転支援システムの処理動作と異なる点を説明する。
【0060】
図15は、本実施形態に係る運転支援システム10を構成する情報処理装置50の処理部53による処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【0061】
まず、処理部53が聴覚刺激出力処理の実行を開始すると判定した後、予測軌道演算部63は、道路形状情報を取得し、車両1の進行方向前方に旋回走行区間があるか否かを判定する(ステップS41~ステップS47)。また、車両1の進行方向前方に旋回走行区間があると判定された場合(S45/Yes、S47/Yes)、予測軌道演算部63は、車両1が旋回走行区間を通過する間の予測軌道を演算する(ステップS49)。ここまでのステップS41~ステップS49までの処理は、
図3に示したフローチャートのステップS11~ステップS19までの処理と同様に実行されてよい。
【0062】
次いで、想定操舵角演算部65は、予測軌道の情報に基づいて、予測軌道に対応するステアリングホイール3の想定操舵角を演算する(ステップS51)。具体的に、想定操舵角演算部65は、ステアリングホイール3の操舵角と転舵輪の転舵角との関係に基づいてあらかじめ設定された、操舵角に対する走行軌道の曲率半径のデータを参照して、旋回走行区間を車両1が走行する場合に想定される操舵角の推移を求める。
【0063】
次いで、想定操舵角演算部65は、求めた想定操舵角の推移に基づいて、基準回転操作を設定する(ステップS53)。「基準回転操作」とは、車両1が旋回走行区間を走行する間に、想定操舵角にしたがってステアリングホイール3を切り始めるタイミング及び切り戻し始めるタイミングと、ステアリングホイール3の回転方向とを時系列に設定したデータである。例えば一つのカーブ区間を走行する場合、ステアリングホイール3をカーブの旋回方向へ回転させ始めるタイミング及び回転方向(切り増し方向)と、ステアリングホイール3を切り戻し始めるタイミング及び回転方向(切り戻し方向)が設定される。本実施形態では、基準回転操作には、さらに旋回走行区間における想定最大操舵角の情報が含まれる。
【0064】
次いで、音設定部67は、現在のステアリングホイール3の操舵角を回転開始操舵角(基準操舵角)θ0として、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzへ切り増す、基準回転操作の回転方向への操舵角の範囲を複数の角度領域に区分して、当該回転方向へ操舵角が変化する場合に段階的に音階が変化するように切り増し時基準音階を割り当てる(ステップS55)。切り増し時基準音階は、基準操舵角θ0から、基準回転操作の回転方向とは逆方向への操舵角の所定範囲を複数の角度領域に区分して、当該逆方向へ操舵角が変化する場合に音階が変化するように割り当てられた音階も含んでいる。切り増し時基準音階を設定する際に、音設定部67は、基準回転操作の回転方向に設定された角度領域の間隔と、基準回転操作の回転方向とは逆方向に設定された角度領域の間隔とを異ならせる。
【0065】
図16は、右カーブの区間を車両1が走行する際の想定最大操舵角θzが90度の場合に設定される切り増し時基準音階を示す説明図である。
図16に示す例では、基準操舵角θ0(0度)から想定最大操舵角θz(90度)までの範囲が4つの角度領域に区分され、基準操舵角θ0側から順に「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」の音階が割り当てられている。また、基準操舵角θ0(0度)から基準回転操作の回転方向とは逆方向の所定範囲が3つの角度領域に区分され、基準操舵角θ0側から順に「シ」、「ラ」、「ソ」の音階が割り当てられている。基準操舵角θ0(0度)から想定最大操舵角θz(90度)までの範囲の角度領域の間隔が22.5度であるのに対して、逆方向の所定範囲の角度領域の間隔が10度となっている。
【0066】
これにより、車両1が旋回走行区間に進入してから、基準回転操作に沿って操舵角が変化する場合には、操舵角が想定最大操舵角θzとなるまでに、音階が1段階ずつ上がるように「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」の音が出力される状態となる。また、旋回走行区間に進入するタイミングにおいて、ステアリングホイール3を逆方向に切る無駄な動作をした場合には、音階が1段階ずつ下がるように「シ」、「ラ」、「ソ」の音が出力される状態となる。そして、基準回転操作の回転方向とは逆方向に設定された角度領域の間隔が、基準回転操作の回転方向に設定された角度領域の間隔よりも小さいことから、ステアリングホイール3を逆方向に回転させたときの音の変化の感度がより高くなっている。
【0067】
なお、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでの範囲を区分する角度領域の数は4つに限定されない。区分する角度領域の数が任意の数に設定されていてもよく、角度領域それぞれの間隔(角度)があらかじめ設定されていてもよい。また、基準操舵角θ0から基準回転操作の回転方向とは逆方向に音を割り当てる範囲及び当該範囲を区分する角度領域の数は特に限定されるものではないが、当該範囲の角度領域それぞれの間隔が、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでの範囲を区分する角度領域の間隔よりも小さいことによって、ドライバがステアリングホイール3を基準回転操作の回転方向とは逆方向にステアリングホイール3を切ったことを認識しやすくすることができる。
【0068】
また、基準操舵角θ0は0度でなくてもよく、旋回走行区間が認識されたときのステアリングホイール3の操舵角が基準操舵角θ0に設定されてもよい。これにより、旋回走行区間に進入する直前の操舵角から想定最大操舵角θzまでの範囲を均等な角度領域に区分して音階を設定することができる。
【0069】
旋回走行区間に車両1が進入するまでに切り増し時基準音階が設定された後、出力制御部69は、切り増し時聴覚出力処理を実行する(ステップS57)。
図17は、切り増し時聴覚出力処理を示すフローチャートである。
【0070】
出力制御部69は、舵角センサ12から送信される検出データに基づいて操舵角θを検出し、検出された操舵角θを含む角度領域に割り当てられた音を出力するように出力装置21を制御する(ステップS71)。次いで、出力制御部69は、出力音の音階が前回のルーチンにおける出力音の音階から上がったか否かを判定する(ステップS73)。出力音の音階が上がっていない場合(S73/No)、出力制御部69は、ステップS71に戻って、操舵角θを検出し、割り当てられた音を出力する処理を繰り返す。
【0071】
一方、出力音の音階が上がった場合(S73/Yes)、音設定部67は、切り増し時基準音階の割り当てを調整する(ステップS75)。ここでは、基準回転操作に沿ってステアリングホイール3が切り増しされることに伴い、基準回転操作の回転方向とは逆方向に設定される角度領域の間隔の調整が行われる。
【0072】
図18及び
図19は、切り増し時基準音階の調整方法を示す説明図である。
図16に示したように切り増し時基準音階が設定された状態から、ステアリングホイール3が右方向に30度の位置まで切られたとすると、出力音の音階は「ド」から「レ」に上がる。この場合、
図18に示すように、音設定部67は、現在の操舵角θを含む角度領域よりも、切り増し側の方向とは逆方向に位置する角度領域の間隔を、すべて切り増し側に位置する角度領域の間隔よりも小さくする。具体的に、
図18に示した例では、「ド」の音が割り当てられていた角度領域の間隔が、22.5度から10度に変更されている。
【0073】
さらに、ステアリングホイール3が右方向に80度の位置まで切られたとすると、出力音の音階は「ファ」まで上がる。この場合、
図19に示すように、音設定部67は、現在の操舵角θを含む角度領域よりも、切り増し側の方向とは逆方向に位置する角度領域の間隔を、すべて切り増し側に位置する角度領域の間隔よりも小さくする。具体的に、
図19に示した例では、「レ」、「ミ」の音が割り当てられていた角度領域の間隔が、22.5度から10度に変更されている。
【0074】
これにより、ドライバが旋回走行区間を走行中に修正舵を行った場合、出力音の音階が下がって出力されるようになって、ドライバが修正舵を直感的に認識することができる。
【0075】
次いで、出力制御部69は、操舵角θが想定最大操舵角θzとなる位置あるいは範囲を車両1が通過したか否かを判定する(ステップS77)。操舵角θが想定最大操舵角θzとなる位置あるいは範囲を車両1が通過していない場合(S77/No)、出力制御部69は、ステップS71に戻り、上述した各ステップの処理を繰り返す。一方、操舵角θが想定最大操舵角θzとなる位置あるいは範囲を車両1が通過した場合(S77/Yes)、出力制御部69は、切り増し時聴覚刺激出力処理を終了する。
【0076】
図15に戻り、次いで、音設定部67は、想定最大操舵角θzから基準操舵角θ0へ切り戻す、基準回転操作の回転方向への操舵角の範囲を複数の角度領域に区分して、当該回転方向へ操舵角が変化する場合に段階的に音階が変化するように切り戻し時基準音階を割り当てる(ステップS59)。切り戻し時基準音階は、想定最大操舵角θzから、基準回転操作の回転方向とは逆方向(切り増し方向)への操舵角の所定範囲を複数の角度領域に区分して、当該逆方向へ操舵角が変化する場合に音階が変化するように割り当てられた音階も含んでいる。切り戻し時基準音階を設定する際に、音設定部67は、基準回転操作の回転方向に設定された角度領域の間隔と、基準回転操作の回転方向とは逆方向に設定された角度領域の間隔とを異ならせる。
【0077】
図20は、右カーブの区間を車両1が走行する際の想定最大操舵角θzが90度の場合に設定される切り戻し時基準音階を示す説明図である。
図20に示す例では、想定最大操舵角θz(90度)から基準操舵角θ0(0度)までの範囲が4つの角度領域に区分され、想定最大操舵角θz側から順に「ファ」、「ミ」、「レ」、「ド」の音階が割り当てられている。想定最大操舵角θz(90度)から基準操舵角θ0(0度)までの範囲に割り当てられた音階は、
図16に示した切り増し時基準音階と同じである。また、想定最大操舵角θz(90度)から基準回転操作の回転方向とは逆方向の所定範囲が3つの角度領域に区分され、想定最大操舵角θz側から順に「ソ」、「ラ」、「シ」の音階が割り当てられている。想定最大操舵角θz(90度)から基準操舵角θ0(0度)までの範囲の角度領域の間隔が22.5度であるのに対して、逆方向の所定範囲の角度領域の間隔が10度となっている。
【0078】
これにより、ステアリングホイール3を切り戻す際に、基準回転操作に沿って操舵角が変化する場合には、操舵角が基準操舵角θ0となるまでに、音階が1段階ずつ下がるように「ファ」、「ミ」、「レ」、「ド」の音が出力される状態となる。また、切り戻しを開始するタイミングにおいて、ステアリングホイール3をさらに切り増す動作をした場合には、音階が1段階ずつ上がるように「ソ」、「ラ」、「シ」の音が出力される状態となる。そして、基準回転操作の回転方向とは逆方向に設定された角度領域の間隔が、基準回転操作の回転方向に設定された角度領域の間隔よりも小さいことから、ステアリングホイール3を逆方向に回転させたときの音の変化の感度がより高くなっている。
【0079】
なお、想定最大操舵角θzから基準操舵角θ0までの範囲を区分する角度領域の数は4つに限定されない。区分する角度領域の数が任意の数に設定されていてもよく、角度領域それぞれの間隔(角度)があらかじめ設定されていてもよい。また、想定最大操舵角θzから基準回転操作の回転方向とは逆方向に音を割り当てる範囲及び当該範囲を区分する角度領域の数は特に限定されるものではないが、当該範囲の角度領域それぞれの間隔が、想定最大操舵角θzから基準操舵角θ0までの範囲を区分する角度領域の間隔よりも小さいことによって、ドライバがステアリングホイール3を基準回転操作の回転方向とは逆方向にステアリングホイール3を切ったことを認識しやすくすることができる。
【0080】
また、基準操舵角θ0は0度でなくてもよく、旋回走行区間の出口の想定操舵角が特定されている場合には、当該想定操舵角が基準操舵角θ0に設定されてもよい。これにより、想定最大操舵角θzから旋回走行区間から出た直後の操舵角までの範囲を均等な角度領域に区分して音階を設定することができる。
【0081】
切り戻し時基準音階が設定された後、出力制御部69は、切り戻し時聴覚出力処理を実行する(ステップS61)。
図21は、切り戻し時聴覚出力処理を示すフローチャートである。
【0082】
出力制御部69は、舵角センサ12から送信される検出データに基づいて操舵角θを検出し、検出された操舵角θを含む角度領域に割り当てられた音を出力するように出力装置21を制御する(ステップS81)。次いで、出力制御部69は、出力音の音階が前回のルーチンにおける出力音の音階から下がったか否かを判定する(ステップS83)。出力音の音階が下がっていない場合(S83/No)、出力制御部69は、ステップS81に戻って、操舵角θを検出し、割り当てられた音を出力する処理を繰り返す。
【0083】
一方、出力音の音階が下がった場合(S83/Yes)、音設定部67は、切り戻し時基準音階の割り当てを調整する(ステップS85)。ここでは、基準回転操作に沿ってステアリングホイール3が切り戻しされることに伴い、基準回転操作の回転方向とは逆方向に設定される角度領域の間隔の調整が行われる。
【0084】
図22は、切り戻し時基準音階の調整方法を示す説明図である。
図20に示したように切り戻し時基準音階が設定された状態から、ステアリングホイール3が右方向に35度の位置まで戻されたとすると、出力音の音階は「ファ」から「レ」まで段階的に下がる。この場合、
図22に示すように、音設定部67は、現在の操舵角θを含む角度領域よりも、切り戻し側の方向とは逆方向に位置する角度領域の間隔を、すべて切り戻し側に位置する角度領域の間隔よりも小さくする。具体的に、
図22に示した例では、「ミ」、「ファ」の音が割り当てられていた角度領域の間隔が、22.5度から10度に変更されている。
【0085】
これにより、ドライバが旋回走行区間の出口に向かってステアリングホイール3を切り戻している間に修正舵を行った場合、出力音の音階が上がって出力されるようになって、ドライバが修正舵を直感的に認識することができる。
【0086】
次いで、出力制御部69は、操舵角θが基準操舵角θ0となる位置あるいは範囲を車両1が通過したか否かを判定する(ステップS87)。操舵角θが基準操舵角θ0となる位置あるいは範囲を車両1が通過していない場合(S87/No)、出力制御部69は、ステップS81に戻り、上述した各ステップの処理を繰り返す。一方、操舵角θが基準操舵角θ0となる位置あるいは範囲を車両1が通過した場合(S87/Yes)、出力制御部69は、切り戻し時聴覚刺激出力処理を終了する。
【0087】
切り戻し時聴覚刺激出力処理が終了した後、処理部53は、聴覚刺激出力処理を終了させるか否かを判定する(ステップS63)。例えばステップS41で聴覚刺激出力処理を開始すると判定した条件が不成立となった場合に、処理部53は聴覚刺激出力処理を終了させると判定する。聴覚刺激出力処理を終了させると判定された場合(S63/Yes)、処理部53は、聴覚刺激出力処理を停止して本ルーチンを終了する。一方、聴覚刺激出力処理を終了させると判定されない場合(S63/No)、処理部53は、ステップS43に戻って聴覚刺激出力処理を継続する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係る運転支援システム10は、車両1の予測軌道に対応するステアリングホイール3の想定操舵角を求め、想定操舵角に基づいてステアリングホイール3の操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに角度領域ごとに音を割り当て、検出される操舵角に応じて割り当てられた音を出力する。このため、運転中のドライバに対して、ステアリングホイール3の操舵状態をリアルタイムに認識させることができる。また、聴覚刺激は表示又は音声のテキスト情報を含まないことから、ドライバに対して聴覚刺激を通じて直感的に操舵状態を認識させることができ、注意力の低下を抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る運転支援システム10では、車両1が旋回走行区間に進入する際に、基準操舵角θ0から基準回転操作の回転方向への想定最大操舵角θzまでの範囲に、音階が段階的に上がる音が割り当てられるとともに、基準操舵角θ0から逆方向への所定範囲に、音階が段階的に下がる音が割り当てられた、切り増し時基準音階が設定される。また、ステアリングホイール3の切り増し操作が行われる間、そのときの操舵角θが含まれる角度領域よりも切り増し方向とは逆方向の角度領域の間隔が、切り増し方向の角度領域の間隔よりも小さくなるように、切り増し時基準音階が調整される。このため、ドライバは、ステアリングホイール3の切り増し操作を行っている間に修正舵を行った場合、修正舵が行われたことを直感的に認識することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る運転支援システム10では、車両1が旋回走行区間の出口に向かう際に、想定最大操舵角θzから基準回転操作の回転方向への基準操舵角θ0までの範囲に、音階が段階的に下がる音が割り当てられるとともに、想定最大操舵角θzから逆方向への所定範囲に、音階が段階的に上がる音が割り当てられた、切り戻し時基準音階が設定される。また、ステアリングホイール3の切り戻し操作が行われる間、そのときの操舵角θが含まれる角度領域よりも切り戻し方向とは逆方向の角度領域の間隔が、切り戻し方向の角度領域の間隔よりも小さくなるように、切り戻し時基準音階が調整される。このため、ドライバは、ステアリングホイール3の切り戻し操作を行っている間に修正舵を行った場合、修正舵が行われたことを直感的に認識することができる。
【0091】
したがって、ドライバが適切なステアリング操舵を行うようにドライバにモチベーションを与えることができる。
【0092】
なお、第2の実施の形態においても、基準操舵角θ0から想定最大操舵角θzまでの範囲に対して「ド」、「レ」、「ミ」、「ファ」、「ソ」、「ラ」、「シ」、「ド」の音階の音を順番に割り当てることにより、旋回走行区間を通過する際に、ドライバに最大操舵角を容易に認識させることができる。
【0093】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0094】
例えば上記各実施形態では、車両1の走行中、車両1の進行方向前方に旋回走行区間があると判定されたときに、想定操舵角に基づいて操舵角の範囲を複数の角度領域を区分し、音を割り当てていたが、本開示の技術はこの例に限定されない。車両1がナビゲーションシステムを備えている場合、車両1の目的地及び走行ルートが設定されたときに、地図データ記憶部57に記録された地図データ及び道路形状のデータに基づいて、走行ルート上に存在する旋回走行区間を特定して音の割り当てを行ってもよい。このように音の割り当てを行った場合であっても、上記各実施形態による効果と同様の効果を得ることができる。
【0095】
また、上記各実施形態では、操舵角θの変化に伴って音階が段階的に変化するように複数の角度領域に対して音階が割り当てられていたが、本開示の技術はこの例に限定されない。例えば操舵角θの変化に伴って音階が段階的に変化するように音を割り当てる以外に、音の高さが周波数の大きさ順に変化するように音を割り当ててもよい。また、楽音のリズムあるいはピッチが段階的に変化するように音を割り当ててもよく、出力音を構成する音の数が段階的に変化するように音を割り当ててもよい。このように音の割り当てを行った場合であっても、ドライバに操舵状態の変化を直感的に認識させることができ、上記各実施形態による効果と同様の効果を得ることができる。
【0096】
また、上記各実施形態では、想定最大操舵角θzを超える範囲に対して音が割り当てられていなかったが、想定最大操舵角θzを超える範囲に対して音が割り当てられてもよい。例えば想定最大操舵角θzを超える範囲にも第2基準音階が割り当てられてもよい。これにより、ドライバは、ステアリングホイール3を切り増していくにつれて順次音階が上がることを感じる一方で、想定最大操舵角θzを超えてステアリングホイール3を切りすぎた場合には、音階の変化がないことによって、自身がステアリングホイール3を切りすぎたことを認識することができる。あるいは、想定最大操舵角θzを超える範囲についても複数の角度領域に区分し、第1基準音階から第2基準音階への変化に続くように第2基準音階を超える音階が割り当てられてもよい。これにより、ドライバがステアリングホイール3を切りすぎた場合、第2基準音階を超える音階の音が出力されることにより、自身がステアリングホイール3を切りすぎたことを認識することができる。
【0097】
また、上記各実施形態では、運転支援システム10の車両情報取得装置11及び道路形状情報取得装置15が車両1に設けられたセンサ類であり、出力装置21が車両に設けられたスピーカシステムであり、情報処理装置50が、CAN等の通信バスを介して車両情報取得装置11、道路形状情報取得装置15及び出力装置21と通信可能に接続されていたが、本開示の技術はこの例に限定されない。例えば情報処理装置50の機能がスマートホン等の携帯端末機器の機能として実現されてもよい。この場合、携帯端末機器に搭載されたスピーカが出力装置21として利用されてもよく、無線又は有線の通信手段を介して携帯端末機器に接続された車両のスピーカシステムが出力装置21として利用されてもよい。運転支援システム10が携帯端末機器を利用して構成されることにより、運転する車両1を問わず聴覚刺激出力処理を利用することができるようになり、ドライバの運転技能を向上する機会を増やすことができる。
【0098】
また、以下の各態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
・情報処理装置の処理部が、予測軌道に対応するステアリングホイールの基準回転操作を設定し、ステアリングホイールの基準回転操作の回転方向へ操舵角が変化する場合に段階的に音階が変化するように割り当てられた角度領域の間隔と、ステアリングホイールの基準回転操作の回転方向とは逆方向へ操舵角が変化する場合に段階的に音階が変化するように割り当てられた角度領域の間隔とを異ならせる運転支援システム。
・ドライバによるステアリング操作を支援する運転支援システムにおいて、車両の予測軌道を演算する予測軌道演算部と、予測軌道に対応するステアリングホイールの想定操舵角を演算する想定操舵角演算部と、想定操舵角に基づいてステアリングホイールの操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに角度領域ごとに音を割り当てる音設定部と、検出される操舵角に応じて、割り当てられた音を出力する出力制御部と、を備えた運転支援システム。
・ドライバによるステアリング操作を支援する運転支援装置(情報処理装置)において、一つ又は複数のプロセッサと、一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、プロセッサは、車両の予測軌道の情報を取得し、予測軌道に対応するステアリングホイールの想定操舵角を求め、想定操舵角に基づいてステアリングホイールの操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに角度領域ごとに音を割り当て、検出される操舵角に応じて、割り当てられた音を出力する、運転支援装置。
・少なくともステアリングホイールの操舵角を検出する車両情報取得装置と、車両の進行方向前方の道路形状の情報を取得する道路形状情報取得装置と、車両の予測軌道の情報を取得する予測軌道演算部と、予測軌道に対応するステアリングホイールの想定操舵角を求める想定操舵角演算部と、想定操舵角に基づいてステアリングホイールの操舵角の範囲を複数の角度領域に区分するとともに角度領域ごとに音を割り当てる音設定部と、検出される操舵角に応じて、割り当てられた音を出力する出力制御部と、を備えた車両。
・上記実施形態に開示されたコンピュータプログラムを記録した記録媒体。
【符号の説明】
【0099】
1:車両、3:ステアリングホイール、10:運転支援システム、11:車両情報取得装置、12:舵角センサ、13:車速センサ、14:切り替えスイッチ、15:道路形状情報取得装置、16:前方撮影カメラ、17:車両位置検出センサ、21:出力装置、50:情報処理装置、51:通信部、53:処理部、55:記憶部、57:地図データ記憶部、61:取得部、63:予測軌道演算部、65:想定操舵角演算部、67:音設定部、69:出力制御部、θ0:基準操舵角、θz:想定最大操舵角