(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073678
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】液体毛髪保護化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20230519BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230519BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230519BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20230519BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230519BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230519BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/10
A61Q5/06
A61Q5/12
A61Q7/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186283
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000151966
【氏名又は名称】株式会社桃谷順天館
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 政憲
(74)【代理人】
【識別番号】100187399
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 敏文
(72)【発明者】
【氏名】荻原 美代子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 宏樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB052
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AD042
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD282
4C083AD412
4C083BB36
4C083BB53
4C083CC31
4C083CC32
4C083CC33
4C083CC36
4C083CC37
4C083CC38
4C083CC39
4C083DD27
4C083DD41
4C083EE05
4C083EE22
4C083EE26
4C083EE28
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】カチオン性界面活性剤を含有せず、毛髪のコンディショニング効果を備え、頭皮等に刺激が少なく安全性が高い液体毛髪保護化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る液体毛髪保護化粧料は、少なくとも、高級アルコールと、液状多価アルコール又はエタノールのうち一種と、を含有し、前記含有成分が完全に溶解している性状を備え、水で濡れた毛髪に塗布して使用すること、又は、毛髪に塗布した後、水で濯いで使用することを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
高級アルコールと、
液状多価アルコール又はエタノールのうち一種と、
を含有し、
前記含有成分が完全に溶解している性状、
を備え、
水で濡れた毛髪に塗布して使用すること、又は、毛髪に塗布した後、水で濯いで使用すること、
を特徴とする液体毛髪保護化粧料。
【請求項2】
カチオン性界面活性剤を含有しないこと
を特徴とする請求項1に記載する液体毛髪保護化粧料。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体毛髪保護化粧料に、
水溶性高分子または油溶性ゲル化剤を配合すること、
を特徴とする液体毛髪保護化粧料。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の液体毛髪保護化粧料に、
シリコーン誘導体を配合し、
濁りが生じていること、
を特徴とする液体毛髪保護化粧料。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の液体毛髪保護化粧料に、
シリコーン誘導体を配合し、
二層に分離していること、
を特徴とする液体毛髪保護化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮やその他の皮膚(以下、頭皮等という)の安全性を向上しつつ、毛髪を保護する効果を備えた液体毛髪保護化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、毛髪化粧料としては、リンス、コンディショナー、トリートメント、シャンプー、ヘアオイル、染毛剤、育毛剤などがある。その内、リンス、コンディショナー、トリートメントは毛髪保護の効果を備えた毛髪保護化粧料である。毛髪保護化粧料には、毛髪を柔らかくしなやかにする効果や、傷んだ髪を補修する毛髪表面の保護効果(コンディショニング効果ともいう)、また場合によっては、ポリペプチドやアミノ酸などを配合することで毛髪内部の成分を補充し、髪の内部から毛髪を保護する効果を有するものがある。
【0003】
毛髪保護化粧料においては、コンディショニング効果だけでなく、毛髪保護化粧料を塗布する際に触れる頭皮等への安全性についても重要である。従来、毛髪保護化粧料は、カチオン性界面活性剤とコンディショニング効果を有する高級アルコールとを主とする油剤と、水を主成分とし乳化物(O/Wエマルション)であるものが多く使用されてきた。特に、カチオン性界面活性剤は、電気的な吸着により疎水基が毛髪の表面を覆い表面の摩擦力を低下させ、毛髪を保護する効果を有することから、毛髪保護化粧料が開発され使用され始めた当初から含有されており、従来の毛髪保護化粧料が発揮するコンディショニング効果の主たる成分であった。そのため、乳化物でなければ、コンディショニング効果が薄れるような印象が定着していた。
【0004】
しかし、カチオン性界面活性剤には殺菌作用があるため、頭皮等への刺激や負担も大きいといった問題がある。また、カチオン性界面活性剤を使用することにより乳化物に調製された毛髪保護化粧料は、粘性が高い性状から濯いだ後でも頭皮等に残留しやすく、残留した毛髪保護化粧料が頭皮等に長時間刺激を与え続けるという問題がある。
【0005】
そこで、近年では、安全性を重要視する需要者から、非乳化物でさらっとした液体であってもよいので、従来のカチオン性界面活性剤含有の毛髪保護化粧料と同等の毛髪のコンディショニング効果を有しながら、頭皮等への刺激が少なく、濯いだ際に頭皮等に残留が起こりにくいカチオン性界面活性剤非含有の毛髪保護化粧料に対する要望が増えてきている。
【0006】
しかしながら、カチオン性界面活性剤は、毛髪にコンディショニング効果を与えるだけでなく、毛髪保護化粧料に配合された高級アルコールを主とする油剤と水とを混合し乳化物とする役目も担っているため、カチオン性界面活性剤を含有しない液状の毛髪保護化粧料では、油性成分である高級アルコールを水性成分と混和する方法が課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-213739号公報
【特許文献2】WO2020/175606号公報
【非特許文献1】皮膚 21(3),235-240,1979/日本皮膚科学会大阪地方会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、エステル類及びアルコール類を含有することで、ヘアコンディショナー等の毛髪処理剤を容易且つ安価に調製できる毛髪処理剤配合用組成物であって、べたつきが無く、ヌメリ感、ソフト感又はシットリ感に優れていることを特徴とする毛髪処理剤が開示されている。当該文献において、選択可能なアルコール類としてミリスチルアルコール等の高級アルコールやジプロピレングリコール等の多価アルコール、及びエタノールが挙げられている。また、カチオン性界面活性剤を必須の成分としていない。全ての実施例が乳化物であることから、粘度の高い性状において毛髪に使用されることが想定されており、頭皮等への残留感について考慮されていない。また、特許文献1における毛髪処理剤配合用組成物は容易に可能との記載があるが、配合用組成物を加温して溶解することが必要であり、従来の毛髪保護化粧料と比較して、調製が大幅に容易になったとはいえない。
【0009】
特許文献2には、固形ポリアルキレングリコール、液状多価アルコール、炭素数1~3の一価アルコール、水を配合することによって、肌に保湿性を付与しながらも、塗布後の肌の状態をさらさらにすることができることを特徴とする皮膚外用剤組成物が開示されている。当該文献において、毛髪コンディショニング剤に使用することができる旨の記載があり、また、効果を阻害しない範囲においてカチオン性界面活性剤を含有してもよいとの記載があり、基礎となる発明としてはカチオン性界面活性剤を必要としない旨が示されている。さらに、透明性を有する非乳化物であることが好ましい旨の記載がある。しかしながら、当該文献で開示されているのは皮膚の保湿効果であり、コンディショニング効果を有する高級アルコール等を含有していないことから、毛髪の保護に関しては考慮されていないものと推察される。具体的な毛髪の保護に関する記載も無い。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、カチオン性界面活性剤を含有せず、毛髪のコンディショニング効果を備え、頭皮等に刺激が少なく安全性が高い液体毛髪保護化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の液体毛髪保護化粧料は、少なくとも、高級アルコールと、液状多価アルコールまたはエタノールのうち少なくとも1種と、を含有し、前記含有成分が完全に溶解している性状、を備え、水で濡れた毛髪に塗布して使用すること、又は、毛髪に塗布した後水で濯いで使用すること、を特徴とする。
【0012】
本発明の液体毛髪保護化粧料は、カチオン性界面活性剤を含有しないことを特徴とする。
【0013】
本発明の液体毛髪保護化粧料は、さらに水溶性高分子または油溶性ゲル化剤を配合することを特徴とする。
【0014】
本発明の液体毛髪保護化粧料は、さらにシリコーン誘導体を配合し、濁りを生じさせたことを特徴とする。
【0015】
本発明の液体毛髪保護化粧料は、さらにシリコーン誘導体を配合し、二層に分離させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
コンディショニング効果を有する高級アルコールは、油溶性であるため、万遍なく毛髪に塗布されてコンディショニング効果を得るためには、従来の毛髪保護化粧料は、カチオン性界面活性剤を使用して乳化物とする必要があった。つまり、高級アルコールは、毛髪保護化粧料中で完全に溶解しているわけではなく、乳化物中で混和している状態が形成されているのである。一方、本発明の液体毛髪保護化粧料によれば、カチオン性界面活性剤を含有して乳化物の状態にせずとも、少なくとも、高級アルコールと、液状多価アルコール又はエタノールのうち少なくとも一種を含有し、前記含有成分を完全に溶解させることで、本来油溶性で水溶性溶媒中において均一になりにくい高級アルコールを万遍なく毛髪に塗布してコンディショニング効果を有することができる効果を奏する。
【0017】
本発明の液体毛髪保護化粧料は、乳化物ではなく、高級アルコールと、液状多価アルコールまたはエタノールのうち少なくとも一種を含有し、前記含有成分の完全溶解液としたため、流動性があり頭皮等に残存しにくい。これにより、高級アルコールによる毛髪へのコンディショニング効果を維持しつつ、濯いだ際に、頭皮等には毛髪保護化粧料を残留させず、頭皮等への刺激や負担を少なくする効果を奏する。それに伴い、毛髪保護化粧料が頭皮等に残留することによるべたつきなどの違和感も少なくさせる相乗効果を得ることができる。
【0018】
本発明の液体毛髪保護化粧料は、濯いで使用する(インバス又はリンスオフという。以下では、インバスという。)従来の毛髪保護化粧料とは異なり、カチオン性界面活性剤を含有して乳化物にする必要がないため、手に取って毛髪全体に広げる手間が必要ない。また、毛髪に塗布したまま濯がずに使用する(アウトバス又はリーブオンという。以下では、アウトバスという。)従来の毛髪保護化粧料と同様に、水で濡れた毛髪に塗布して放置することができるだけではなく、毛髪に塗布した後、水を塗布してふき取ることも、水で濯いで使用することもできて、いずれの使用方法であっても、コンディショニング効果を有する成分が毛髪全体に万遍なく広がり保護することが可能である。
【0019】
従来のカチオン性界面活性剤を含有して乳化物に調製された毛髪保護化粧料は、カチオン性界面活性剤の殺菌作用により頭皮等への刺激や負担が大きい。一方、本発明の液体毛髪保護化粧料によれば、高級アルコール等の油剤と水とを乳化して毛髪に吸着させる必要がなくカチオン性界面活性剤を含有しないため、頭皮等への刺激や負担を少なくし安全性が向上する効果を奏する。
【0020】
従来の毛髪保護化粧料は乳化物であるため粘性を有し、濯いだ際に毛髪保護化粧料が頭皮等に残留するという問題があった。一方、本発明の液体毛髪保護化粧料は、液状多価アルコール、高級アルコール、エタノールを含む完全溶解液に、水溶性高分子または油溶性ゲル化剤を配合して軽度に抑えた粘性を備えることができる。従来の毛髪保護化粧料が備える高い粘性ではなく、軽度の粘性を備えることにより毛髪保護化粧料が頭皮等に残留する量を抑えつつ毛髪への塗布性を向上させる効果を奏する。
【0021】
シリコーン誘導体によるコンディショニング効果については、周知されている。液状多価アルコール、高級アルコール及びエタノールを含有する完全溶解液に、シリコーン誘導体を分散させ濁りが生じた状態で使用することで、コンディショニング効果をより高めることができる効果を奏する。
【0022】
また、液状多価アルコール、高級アルコール及びエタノールを含有する完全溶解液には相溶しないシリコーン誘導体溶液を、前記完全溶解液と二層に分離した状態で容器内に充填しておき、容器を振って混和した後に取り出して使用する形態を採ることで、コンディショニング効果をより高めることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】液体毛髪保護化粧料において、含有成分が完全溶解し、透明で液状となった状態を示した写真である。
【
図2】含有成分が完全溶解しておらず、結晶化、析出、白濁により透明で液状ではない不溶状態の溶液を示した写真である。
【
図3】2%のミリスチルアルコールを溶解して25℃にて完全溶解液となる溶媒(DPG,エタノール及び水)の配合比を示す相図である。
【
図4】2%のミリスチルアルコールを溶解して5℃にて完全溶解液となる溶媒(DPG,エタノール及び水)の配合比を示す相図である。
【
図5】2%のミリスチルアルコールを溶解して25℃にて完全溶解液となる溶媒(ペンチレングリコール,エタノール及び水)の配合比を示す相図である。
【
図6】2%のミリスチルアルコールを溶解して5℃にて完全溶解液となる溶媒(ペンチレングリコール,エタノール及び水)の配合比を示す相図である。
【
図7】液体毛髪保護化粧料の使用感「コンディショニング効果」に関するアンケート結果を示した表である。
【
図8】液体毛髪保護化粧料の使用感「ぬるつき及び残留感」に関するアンケート結果を示した表である。
【
図9】液体毛髪保護化粧料の使用感「頭皮等刺激」に関するアンケート結果を示した表である。
【
図10】水溶性高分子または油溶性ゲル化剤を配合して増粘した液体毛髪保護化粧料の外観の写真である。
【
図11】シリコーン誘導体を配合して濁りを生じた液体毛髪保護化粧料の外観の写真である。
【
図12】シリコーン誘導体を配合して2層に分離した液体毛髪保護化粧料の外観の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、従来、頭皮等に強い刺激を与え悪い影響を及ぼすことが知られているにもかかわらず、毛髪保護化粧料におけるコンディショニング効果を得るための主成分であったカチオン性界面活性剤を含まない毛髪保護化粧料に着目し、カチオン性界面活性剤を含有せずとも、頭皮等への高い安全性を備え、カチオン性界面活性剤を使用した際と同等のコンディショニング効果を発揮する毛髪保護化粧料の開発に取り組むこととした。
【0025】
従来含有されているカチオン性界面活性剤は、電気的な吸着により疎水基が毛髪の表面を覆い表面の摩擦力を低下させ、毛髪にコンディショニング効果を与える。さらに、カチオン性界面活性剤は、毛髪保護化粧料に配合された高級アルコールを主とする油剤と水とを混合する役目も担っているため、カチオン性界面活性剤を含有しない液状の毛髪保護化粧料では、油溶性分である高級アルコールを水性成分と混和させる方法が課題であった。
【0026】
高級アルコールは、コンディショニング効果及び毛髪にやわらかさや滑らかさを与える効果を有することが分かっている。しかし、高級アルコールは容易に溶媒に溶解することができず、温度条件によっても分離、析出するため、一定の性状を保つことが難しい。そのため、まず高級アルコールを溶解するための溶媒の探索を行った。その結果、液状多価アルコール及びエタノールが、毛髪や頭皮等への安全性を有し高級アルコールを溶解するための溶媒として使用できることを見出した。
【0027】
したがって、本発明の液体毛髪保護化粧料は、従来のインバス用の毛髪保護化粧料とは異なり、カチオン性界面活性剤を含有して乳化物とする必要がないため、手に取って毛髪全体に広げる必要がなく容器から直接毛髪に塗布して使用することもできる。また、従来のアウトバス用の毛髪保護化粧料と同様に、水で濡れた毛髪に塗布して放置することができるだけでなく、毛髪に塗布した後水を塗布してタオルでふきとることも、水で濯いで使用することもできる。
【0028】
本発明を実施するための形態において使用する液体毛髪保護化粧料の調製方法の一例を以下に示す。高級アルコールをエタノールまたは液状多価アルコールに溶解し、他の成分を加えて、完全溶解するまで撹拌して均一化する。
【0029】
(成分を完全に溶解させる試験)
毛髪のコンディショニング効果を有する高級アルコールは、油溶性であるため、従来万遍なく毛髪に塗布してコンディショニング効果を得るためには、カチオン性界面活性剤を使用して成分が完全に溶け合っていない乳化物中で細かく分散している状態を形成し、手に取って毛髪表面に塗り広げて付着させることで使用していた。一方、本発明においては、カチオン性界面活性剤を使用せず、液状多価アルコールまたはエタノールのうち少なくとも一種を含有することで、高級アルコールを溶媒に完全溶解させることとし、液体の状態で高級アルコールを毛髪の表面に万遍なく行き渡らせるようにした。しかしながら、完全溶解が可能な配合の比率は限定的であるため、配合比率の範囲を探索する必要があった。そこで、まず液状多価アルコール及びエタノールを用いた高級アルコールの常温(25℃)での溶解領域、及び低温(5℃)下における溶解領域を確認した。
【0030】
本試験において、液状多価アルコールとしてはジプロピレングリコール(以下、DPGと呼ぶ。)または1,2-ペンタンジオール(以下、PDと呼ぶ。)、高級アルコールとしては、ミリスチルアルコールを使用した。
【0031】
(試験方法)
室温において、DPGまたはPD、ミリスチルアルコール、エタノール、水を各種の配合比で混合し、撹拌混和した溶液を得た。そのうち、含有成分が完全溶解した溶液を抽出した。完全溶解は、透明で結晶化、析出、白濁などが認められないことを、目視によって判断した。室温における完全溶解液については、ガラス瓶に封入した状態で恒温槽に入れて、まず25℃に設定して定常状態になった後、室温の場合と同様に目視により完全溶解か否かを評価した。次に、恒温槽を5℃に設定して定常状態になった後、同様に目視により完全溶解か否かを評価した。
【0032】
(試験結果)
含有成分が完全溶解し、透明で液状となった本発明の液体毛髪保護化粧料を
図1に示した。含有成分が完全溶解しておらず、結晶化、析出、白濁などにより透明な液状ではない不溶状態の溶液を比較例として、
図2に左から結晶化した溶液、析出した溶液、白濁した溶液として示した。
【0033】
図3は、液状多価アルコールとしてDPGを選択した場合に、25℃における2%のミリスチルアルコールを溶解して完全溶解液となる溶媒(DPG,エタノール及び水)の配合比を示す相図である。4成分が完全に溶解する領域は、斜線で示す範囲(線上及びその内部)である。
【0034】
また、
図4は、液状多価アルコールとしてDPGを選択した場合に、5℃における2%のミリスチルアルコールを溶解して完全溶解液となる溶媒(DPG,エタノール及び水)の配合比を示す相図である。図の見方は
図3と同様である。5℃においては、25℃の場合と比較して、完全溶解領域は、水の含有量が減少する方向へ領域が狭まった。
【0035】
図には示していないが、25℃において、溶媒のエタノールが100%のとき、ミリスチルアルコールは80%程度の濃度まで溶解でき、溶媒のDPGが100%のとき、ミリスチルアルコールは40%程度の濃度まで溶解できることが分かった。また、5℃においては、溶媒のエタノールが100%のとき、ミリスチルアルコールは10%程度の濃度まで溶解でき、溶媒のDPGが100%のとき、ミリスチルアルコールは4%程度の濃度まで溶解できることが分かった。
【0036】
図5は、液状多価アルコールとしてPDを選択した場合に、25℃における2%のミリスチルアルコールを溶解して完全溶解液となる溶媒(PD、エタノール及び水)の配合比を示す相図である。図の見方は
図3と同様である。4成分が完全に溶解する領域は、斜線で示す範囲(線上及びその内部)である。液状多価アルコールとしてDPGを使用した
図3の場合と比較すると、完全溶解領域が、水の含有量が増加する方向に広がったことが分かる。すなわち、DPGを使用した場合と比較すると水を含有できる量は増加する。
【0037】
図5は、液状多価アルコールとしてPDを選択した場合に、5℃における2%のミリスチルアルコールを溶解して完全溶解液となる溶媒(PD、エタノール及び水)の配合比を示す相図である。図の見方は
図3と同様である。5℃においては、25℃の場合と比較して、完全溶解領域が、水の含有量が減少する方向へ領域が狭まったが、液状多価アルコールとしてDPGを使用した
図4の場合と比較すると、完全溶解領域が、水の含有量が増加する方向に広がったことが分かる。すなわち、DPGを使用した場合と比較すると、25℃の場合と同様に水を含有できる量は増加する。
【0038】
これらの結果から、油溶性成分である高級アルコールは、液状多価アルコール、エタノール及び水の水溶性溶媒を用いた際に、含有成分の配合比率によっては完全に溶解することが可能であることが示された。
【0039】
液状多価アルコール、エタノール及び水の水溶性溶媒を用いて、油溶性成分である高級アルコールを完全溶解する場合、完全溶解領域を超える水量においては、高級アルコールは完全溶解の状態を得られない。高級アルコールが完全溶解の状態を保つ水量は、配合する液状多価アルコールの種類によって異なる。
【0040】
本発明の液体毛髪保護化粧料は、完全溶解によって液状であることから、特許文献1の粘度の高い毛髪処理剤による頭皮等への残留感を解決した。また、本発明の液体毛髪保護化粧料は溶解のみで調製が可能であることから、特許文献1の毛髪処理剤と比較して加温溶解を必要としない点で、より容易に調製が可能であるといえる。
【0041】
また、本発明の液体毛髪保護化粧料は、毛髪のコンディショニング効果を備えることに特化しており、頭皮等への影響は少ないことから、皮膚の保湿が主要な効果である特許文献2とは本質的に異なる。
【0042】
(官能試験)
液体毛髪保護化粧料によるコンディショニング効果、また液体毛髪保護化粧料を濯ぐ際のヌメリ感や液体毛髪保護化粧料を濯いだ後の頭皮等への残留感の有無及び頭皮等への刺激の有無を確認するための官能試験を行った。官能試験に使用した液体毛髪保護化粧料の処方を以下に示す。以下の処方は一例であり、当該処方に限定されるものではない。
配合成分 配合量(質量%)
ミリスチルアルコール 4.0
イソステアリルアルコール 1.0
PPG-3カプリリルエーテル 1.0
ポリシリコーン-29 0.6
ジプロプレングリコール 48.0
エタノール 30.0
精製水 残余
香料 0.6
合 計 100.0
【0043】
(毛髪保護の官能試験)
カチオン性界面活性剤は、電気的な吸着により疎水基が毛髪の表面を覆い表面の摩擦力を低下させ、毛髪を保護する効果を有することから、毛髪保護化粧料が開発され使用され始めた当初から含有されており、従来の毛髪保護化粧料が発揮するコンディショニング効果を得るための主たる成分であった。一方で、本発明の液体毛髪保護化粧料においては、カチオン性界面活性剤を含有せずコンディショニング効果の低下が想定されるため、少なくとも従来のカチオン性界面活性剤を含む毛髪保護化粧料とコンディショニング効果において同等であることを実証する必要があった。そこで、「コンディショニング効果」に関する被験者の官能評価を行うためにアンケートを収集し段階評価を行った。
【0044】
(試験方法)
被験者21名が、シャンプー後に液体毛髪保護化粧料を塗布し濯いで使用し、毛髪を保護する効果を、カチオン性界面活性剤を含有する一般的なインバスタイプの毛髪保護化粧料と比較して感じる程度について、感覚スコアを用いたアンケートを行った。回答においては、「コンディショニング効果」の感覚スコアは五段階評価とし、従来の毛髪保護化粧料と比較してコンディショニング効果が特に低いと感じている場合は「0」、特に高いと感じている場合は「5」、差が無いと感じている場合は「3」とした。アンケートを集計し、感覚スコアの平均点を算出した。上記は、試験方法の一例であり、他の段階評価方法を用いた同様の試験でもよい。
【0045】
(試験結果)
液体毛髪保護化粧料の使用前後における被験者が感じる「コンディショニング効果」の感覚スコアを
図7に示した。21名の感覚スコアの平均点は3.38となり、本発明の液体毛髪保護化粧料のコンディショニング効果は、カチオン性界面活性剤を含有する従来の一般的なインバスタイプの毛髪保護化粧料と比較して若干であるが、優れていることが示された。
【0046】
(ヌメリ感、残留感の官能試験)
従来のカチオン性界面活性剤を含有する毛髪保護化粧料は、カチオン性界面活性剤による乳化物であるため、濯ぎ時に毛髪のヌメリ感を感じやすいという特徴があり、頭皮等に残留感を有するという性質があった。一方、本発明の液体毛髪保護化粧料は、従来の毛髪保護化粧料とは異なり、カチオン性界面活性剤を含有せずに非乳化物として、濯ぎ時にヌメリ感の無いさらっとした感覚を有する、すなわちヌメリ感がないことに加え、頭皮等への残留感の無さを特徴的な効果として備えることを目的としている。そのため、濯ぎ時の毛髪へのヌメリ感及び頭皮等への残留感が少ないことを実証する必要があった。そこで、「ヌメリ感及び残留感」に関する被験者の官能評価を行うためにアンケートを収集し段階評価を行った。
【0047】
(試験方法)
被験者21名が、シャンプー後に液体毛髪保護化粧料を塗布し濯いで使用し、毛髪へのヌメリ感や液体毛髪保護化粧料の頭皮等への残留感を、カチオン性界面活性剤を含有する一般的なインバスタイプの毛髪保護化粧料と比較して感じる程度について、感覚スコアを用いたアンケートを行った。回答においては、「ヌメリ感及び残留感」の感覚スコアは五段階評価とし、ヌメリ感及び残留感を特に強く感じている場合は「0」、全くないと感じている場合は「5」とした。アンケートを集計し、感覚スコアの平均点を算出した。上記は、試験方法の一例である。他の段階評価方法を用いた同様の試験でもよい。
【0048】
(試験結果)
液体毛髪保護化粧料の使用における被験者が感じる「ヌメリ感及び残留感」の感覚スコアを
図8に示した。21名の感覚スコアの平均点は4.9となり、本発明の液体毛髪保護化粧料を使用した際の毛髪へのヌメリ感や液体毛髪保護化粧料の頭皮等への残留感の評価は、カチオン性界面活性剤を含有する従来の一般的なインバスタイプの毛髪保護化粧料と比較して非常に高い結果が示された。このことから、乳化により粘性の高い性状での使用を想定している特許文献1とは効果に大きな異なる点があるといえる。
【0049】
(頭皮等刺激の官能試験)
カチオン性界面活性剤は殺菌作用を有することから、皮膚への刺激を有することが知られている。このことから、従来のカチオン性界面活性剤を含有する毛髪保護化粧料は、頭皮等への安全性に懸念があるといえる。したがって、本発明の液体毛髪保護化粧料では、カチオン性界面活性剤を含有しないことが、従来の毛髪保護化粧料と比較して、頭皮等への刺激が少なく安全であることを実証する必要があった。そこで、「頭皮等への刺激」に関する被験者の官能評価を行うためにアンケートを収集し段階評価を行った。カチオン性界面活性剤による刺激の影響としては、主に皮膚に付着した刺激成分が原因となって皮膚に痒みや痛みを起こさせ、赤くなる、腫れる、発疹が出る、ただれるなどの炎症を起こす接触性皮膚炎の症状として現れることが一般的である。
【0050】
(試験方法)
被験者21名が、シャンプー後に液体毛髪保護化粧料を塗布し濯いで使用し、頭皮等の刺激の有無についてアンケートを行った。回答においては、刺激を感じた場合は「ある」、刺激を感じなかった場合は「ない」とした。上記は、試験方法の一例である。他の段階評価方法を用いた同様の試験でもよい。
【0051】
(試験結果)
液体毛髪保護化粧料の使用時における被験者が感じる「頭皮等への刺激」の有無に関するアンケート結果を
図9に示した。21名の被験者全員が「ない」と回答しており、本発明の液体毛髪保護化粧料が頭皮等に与える刺激は、極めて少ないことが示された。
【0052】
上記官能試験の結果により、液体毛髪保護化粧料の頭皮等への刺激性が極めて小さいことが示された。加えて、非特許文献1をはじめとして、従来の毛髪保護化粧料に含まれるカチオン性界面活性剤は皮膚刺激性が強いとの記載を含む文献が多数存在することから、カチオン性界面活性剤を使用せず化粧料中に含有しないことで、皮膚に対する刺激性が小さく、皮膚に対する安全性が向上していることを示している。
【0053】
従来の毛髪保護化粧料に含有される事例が多いカチオン性界面活性剤の4級カチオンは、頭皮等への悪影響からヨーロッパや中国では規制物質に指定されており、インバス用又はアウトバス用の毛髪保護化粧料において、それぞれの国で配合量の上限が設けられている。一方、日本では4級カチオンの配合量に制限は無いものの、世界の動向を考慮すると、カチオン界面活性剤を含有しない毛髪保護化粧料が望ましいのは明白である。したがって、カチオン性界面活性剤を含有しない本発明の液体毛髪保護化粧料が、従来のカチオン性界面活性剤を含有する毛髪保護化粧料と比較して、頭皮等に対する刺激を軽減させて安全性を高めたことは、非常に有用である。
【0054】
以下に、本発明の液体毛髪保護化粧料に使用可能な含有成分を例示する。
【0055】
本発明の液体毛髪保護化粧料に使用可能な液状多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,2-ブタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,3ブタンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,3-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-2,4-ブタンジオール等の2価アルコール又はその縮合物;
また、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール等の脂環状2価アルコール;
また、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール等の3価アルコール;
また、エリスリトール、1,2,3,4-ペンタテトロール、2,3,4,5-ヘキサテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール;
また、アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール;
また、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;
また、1-メチルグリセリルエーテル、2-メチルグリセリルエーテル、1-エチルグリセリルエーテル、2-エチルグリセリルエーテル、1-プロピルグリセリルエーテル、2-プロピルグリセリルエーテル、1-イソプロピルグリセリルエーテル、2-イソプロピルグリセリルエーテル等のグリセリンモノエーテル類等が挙げられる。
これらの多価アルコールの中でも、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール等の2価アルコールが好ましく、特に、ジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオールが好ましい。
【0056】
本発明の液体毛髪保護化粧料に使用可能な高級アルコールとしては、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において使用できる炭素数6~26の高級アルコールであれば特に限定されず、飽和及び不飽和、直鎖及び分岐鎖の一価アルコールを包含する。例えば、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等が挙げられる。これらの高級アルコールの一種を単独で用いても、二種以上を含有成分として併用してもよいが、常温で固体の高級アルコールを少なくとも一種以上含有することが好ましい。また、常温で固体の高級アルコール又は液体の高級アルコールのそれぞれを一種以上採用したうえで、固体の高級アルコール及び液体の高級アルコールを併用しても良い。常温で固体の高級アルコールは、化粧料に配合できるものであれば特に限定されないが、好ましくは、炭素数12~26の、直鎖状の一価の飽和アルコールである。常温で固体の高級アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セタノール(セチルアルコール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、アラキルアルコール、(C14-22)アルコール、ヒドロキシステアリルアルコール、水添ナタネ油アルコール等が挙げられ、特にミリスチルアルコールが好ましい。
【0057】
本発明の液体毛髪保護化粧料に使用可能な水溶性高分子の具体例としては、特に限定的ではなく、通常の化粧料に用いられるものであればよく、グァーガム、カラギーナン、カンテン、クインスシード、褐藻エキス等の植物系高分子、キサンタンガム、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、ゼラチン、コンドロイチン硫酸等の動物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子等が挙げられ、少なくとも一種を含有させることができる。特に、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
【0058】
本発明の液体毛髪保護化粧料に使用可能な油溶性ゲル化剤の具体例としては、特に限定的ではなく、通常の化粧料に用いられるものであればよく、12-ヒドロキシステアリン酸、デキストリン脂肪酸エステル、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド等が挙げられる。これらの油溶性ゲル化剤を一種か、少なくとも二種を混合して含有させることができる。特に、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドおよびジブチルラウロイルグルタミドが好ましい。
【0059】
本発明の液体毛髪保護化粧料に使用可能なシリコーン誘導体の具体例としては、特に限定的ではなく、通常の化粧料に用いられるものであればよく、環状ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、パーフルオロアルキルポリオキシアルキレン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン等が挙げられる。これらシリコーン誘導体は、一種又は少なくとも二種を組み合わせて含有させることができる。特に、高重合のジメチコン、ジメチコノール、アミノプロプルジメチコンが好ましい。シリコーン誘導体は、シリコーンエマルションとして含有しても良い。本発明によるシリコーンエマルションとは、上記に示したシリコーン誘導体を界面活性剤により水中に分散させたものを指す。
【0060】
以下では、本発明の液体毛髪保護化粧料において有効な配合例を示す。
【実施例0061】
水溶性高分子を配合し増粘した液体毛髪保護化粧料の外観を
図10に示す。従来の毛髪保護化粧料は乳化物であるため非常に粘性が高く、毛髪に塗布後濯いだ際に毛髪保護化粧料が頭皮等に残留し、使用者が違和感を持つという問題があった。本発明の液体毛髪保護化粧料の一の実施例では、液状多価アルコール、高級アルコール及びエタノールを含む完全溶解液に、増粘剤である水溶性高分子を配合して軽度に粘性を高めた。従来の毛髪保護化粧料のように濯いでも頭皮等に残留を生じさせる強い粘性ではなく、比較的軽度な粘性を備えることにより、毛髪保護化粧料が頭皮等に残留することを軽減しつつ毛髪への塗布性を向上させることができるのである。油溶性ゲル化剤を配合することによっても、同様に軽度に粘性を高めることができ、水溶性高分子で軽度に増粘した場合と同じ効果を得ることができる。