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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073732
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】工作機械及び位相補正システム
(51)【国際特許分類】
   B23B 25/06 20060101AFI20230519BHJP
   B23B 3/26 20060101ALI20230519BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
B23B25/06
B23B3/26
B23Q17/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186375
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 創一
【テーマコード(参考)】
3C029
3C045
【Fターム(参考)】
3C029AA03
3C045BA13
3C045BA23
3C045EA02
3C045HA07
(57)【要約】
【課題】主軸により保持されたブランク材の周方向の位相ズレを抑制することができる工作機械及び位相補正システムを提供する。
【解決手段】工作機械は、第1主軸と、Z軸方向に沿って第1主軸を移動させる第1主軸移動機構と、工具45bを保持する工具保持部と、X軸方向及びY軸方向に沿って工具保持部を移動させる工具移動機構と、工具保持部に設置され、ブランク材Wへの接触を検出する検出部48と、ブランク材Wの第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2の位置情報を取得し、取得した位置情報に基づき第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2の間の距離を導出する距離導出部と、距離に基づき、ブランク材Wの傾き角θを導出し、傾き角θに基づき第1主軸を回転させることによりブランク材Wの周方向のズレを補正する位相補正を行う位相補正処理部と、を備える。工具移動機構は、位相補正の後、工具45bにてブランク材Wを加工する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク材を保持しつつ回転させる主軸と、
前記主軸の回転軸に沿う第1方向に沿って前記主軸を移動させる主軸移動機構と、
前記主軸により保持された前記ブランク材を加工する工具を保持する工具保持部と、
前記第1方向に交わる第2方向に沿って前記工具保持部を移動させる工具移動機構と、
前記工具保持部とともに移動可能に前記工具保持部に設置され、前記主軸により保持された前記ブランク材への接触又は接近を検出する検出部と、
前記工具移動機構を介して前記検出部を前記ブランク材の複数の箇所に順番に接触又は接近させるように移動させ、前記検出部により前記複数の箇所それぞれへの接触又は接近が検出された状態で前記複数の箇所それぞれの位置情報を取得し、取得した前記位置情報に基づき前記複数の箇所の間の距離を導出する距離導出部と、
前記距離導出部により導出された前記距離に基づき、前記主軸により保持された前記ブランク材の周方向のズレ量を導出し、導出した前記ズレ量に基づき前記主軸を前記ブランク材とともに回転させることにより前記ブランク材の前記周方向のズレを補正する位相補正を行う位相補正処理部と、を備え、
前記工具移動機構は、前記位相補正の後、前記工具保持部を移動させることにより、前記工具に前記ブランク材を接触させて前記ブランク材を加工する、
工作機械。
【請求項2】
前記位相補正処理部は、前記複数の箇所として第1箇所及び第2箇所の間の前記距離に基づき前記ズレ量を導出し、
前記第1箇所及び前記第2箇所は、前記ブランク材の軸中心を介して互いに反対側に位置し、
前記第2方向における前記軸中心と前記第1箇所の間の距離は、前記第2方向における前記軸中心と前記第2箇所の間の距離と同一の距離に設定されている、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記位相補正処理部は、前記複数の箇所として第1箇所及び第2箇所の間の前記距離に基づき前記ズレ量を導出し、
前記第1箇所及び前記第2箇所は、前記ブランク材の軸中心を介して互いに反対側に位置し、
前記第2方向における前記軸中心と前記第1箇所の間の距離は、前記第2方向における前記軸中心と前記第2箇所の間の距離と異なる距離に設定されている、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
前記位相補正処理部は、前記位相補正を行った後、再び前記ズレ量を導出して前記位相補正を行う、
請求項1から3の何れか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
ブランク材を保持しつつ回転させる主軸と、前記主軸の回転軸に沿う第1方向に沿って前記主軸を移動させる主軸移動機構と、前記主軸により保持された前記ブランク材を加工する工具を保持する工具保持部と、前記第1方向に交わる第2方向に沿って前記工具保持部を移動させる工具移動機構と、を備える工作機械に用いられる位相補正システムであって、
前記工具保持部とともに移動可能に前記工具保持部に設置され、前記主軸により保持された前記ブランク材への接触又は接近を検出する検出部と、
前記工具移動機構を介して前記検出部を前記ブランク材の複数の箇所に順番に接触又は接近させるように移動させ、前記検出部により前記複数の箇所それぞれへの接触又は接近が検出された状態で前記複数の箇所それぞれの位置情報を取得し、取得した前記位置情報に基づき前記複数の箇所の間の距離を導出する距離導出部と、
前記距離導出部により導出された前記距離に基づき、前記主軸により保持された前記ブランク材の周方向のズレ量を導出し、導出した前記ズレ量に基づき前記主軸を前記ブランク材とともに回転させることにより前記ブランク材の前記周方向のズレを補正する位相補正を行う位相補正処理部と、を備える、
位相補正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及び位相補正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の旋盤のワークの供給排出方法は、アームのロボットハンドがワークパレットに配置されるワークを把持し、アームが動作することによりロボットハンドが旋盤の主軸チャックと同一軸線上で対向し、ワークをロボットハンドから主軸チャックに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-088702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の方法では、主軸チャックがブランク材(ワーク)を把持する際、又は主軸チャックがブランク材を把持し直す際、ブランク材が周方向に位置ズレ(位相ズレ)が生じるおそれがある。特に、ブランク材の外周面が部分的に平面状に形成されている等、ブランク材が複雑な形状の場合には、ブランク材の周方向の位相ズレによりブランク材の加工精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、主軸により保持されたブランク材の周方向の位相ズレを抑制することができる工作機械及び位相補正システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る工作機械は、ブランク材を保持しつつ回転させる主軸と、前記主軸の回転軸に沿う第1方向に沿って前記主軸を移動させる主軸移動機構と、前記主軸により保持された前記ブランク材を加工する工具を保持する工具保持部と、前記第1方向に交わる第2方向に沿って前記工具保持部を移動させる工具移動機構と、前記工具保持部とともに移動可能に前記工具保持部に設置され、前記主軸により保持された前記ブランク材への接触又は接近を検出する検出部と、前記工具移動機構を介して前記検出部を前記ブランク材の複数の箇所に順番に接触又は接近させるように移動させ、前記検出部により前記複数の箇所それぞれへの接触又は接近が検出された状態で前記複数の箇所それぞれの位置情報を取得し、取得した前記位置情報に基づき前記複数の箇所の間の距離を導出する距離導出部と、前記距離導出部により導出された前記距離に基づき、前記主軸により保持された前記ブランク材の周方向のズレ量を導出し、導出した前記ズレ量に基づき前記主軸を前記ブランク材とともに回転させることにより前記ブランク材の前記周方向のズレを補正する位相補正を行う位相補正処理部と、を備え、前記工具移動機構は、前記位相補正の後、前記工具保持部を移動させることにより、前記工具に前記ブランク材を接触させて前記ブランク材を加工する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る位相補正システムは、ブランク材を保持しつつ回転させる主軸と、前記主軸の回転軸に沿う第1方向に沿って前記主軸を移動させる主軸移動機構と、前記主軸により保持された前記ブランク材を加工する工具を保持する工具保持部と、前記第1方向に交わる第2方向に沿って前記工具保持部を移動させる工具移動機構と、を備える工作機械に用いられる位相補正システムであって、前記工具保持部とともに移動可能に前記工具保持部に設置され、前記主軸により保持された前記ブランク材への接触又は接近を検出する検出部と、前記工具移動機構を介して前記検出部を前記ブランク材の複数の箇所に順番に接触又は接近させるように移動させ、前記検出部により前記複数の箇所それぞれへの接触又は接近が検出された状態で前記複数の箇所それぞれの位置情報を取得し、取得した前記位置情報に基づき前記複数の箇所の間の距離を導出する距離導出部と、前記距離導出部により導出された前記距離に基づき、前記主軸により保持された前記ブランク材の周方向のズレ量を導出し、導出した前記ズレ量に基づき前記主軸を前記ブランク材とともに回転させることにより前記ブランク材の前記周方向のズレを補正する位相補正を行う位相補正処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主軸により保持されたブランク材の周方向の位相ズレを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る工作機械の側面図である。
図4図3の一部の拡大図である。
図5図2の一部の拡大図である。
図6】(a),(b)は本発明の一実施形態に係るハンド部から第2主軸にブランク材を供給する際の動作を示す概略図であり、(c)はプッシャを利用して第2主軸にブランク材を位置決めする際の動作を示す概略図である。
図7】(a),(b)は本発明の一実施形態に係る位相補正処理における検出部の動作を示す概略図であり、(c)は位相補正処理後にブランク材を加工する工具の動作を示す概略図である。
図8】本発明の一実施形態に係る第1接触箇所、第2接触箇所及びブランク材の傾き角を示す概略図である。
図9】本発明の変形例に係る第1接触箇所、第2接触箇所及びブランク材の傾き角を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る工作機械及び位相補正システムについて、図面を参照して説明する。
図2に示すように、旋盤である工作機械1は、ブランク材Wを加工する加工部2と、ブランク材供給部60と、搬送ハンド装置70と、ブランク材受け渡し装置80と、制御部300と、を備える。
図1及び図2に示すように、加工部2は、加工部2全体の台であるベッドSと、第1主軸11を有する第1主軸ユニット10と、第2主軸21を有する第2主軸ユニット20と、第1主軸移動機構13Zと、第2主軸移動機構25X,25Zと、工具移動機構42X,42Yと、第1工具ユニット45と、第2工具ユニット26と、検出部48と、を備える。
以下では、第1主軸11及び第2主軸21の回転軸に沿う軸線方向をZ軸方向と規定し、Z軸方向に直交する高さ方向をY軸方向と規定し、Y軸方向及びZ軸方向に直交する方向をX軸方向と規定する。
【0011】
図7(a)に示すように、加工前のブランク材Wは、外周面に平面部Wa,Wbが形成された略円柱状をなす。2つの平面部Wa,Wbは、互いに平行をなすように形成されている。平面部Waは、平面部Wbよりも、ブランク材Wの軸中心Wcに近く、大きい面積を有する。図6(b)に示すように、2つの平面部Wa,Wbは、ブランク材Wの外周面のうち第2主軸21が保持する側に形成されている。
【0012】
図1に示すように、第1主軸ユニット10は、ブランク材Wを保持しつつ回転させる。具体的には、第1主軸ユニット10は、第1主軸11と、第1主軸11を回転可能に支持する第1主軸台12と、を備える。図5に示すように、第1主軸11は、ブランク材Wの平面部Wa,Wbを露出させた状態で、平面部Wa,Wbとは反対側の端部であるブランク材Wの一端を保持する。第1主軸台12には、第1主軸11を回転させるブランク材回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0013】
図1に示すように、第2主軸ユニット20は、Z軸方向に第1主軸ユニット10と向かい合う位置に設けられている。第2主軸ユニット20は、ブランク材Wの平面部Wa,Wb側の他端を保持する第2主軸21と、第2主軸21を回転可能に支持する第2主軸台22と、を備える。第2主軸台22には、第2主軸21を回転させるブランク材回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。
図6(a)に示すように、第2主軸21は、ブランク材Wの他端を外周から把持するコレット21cと、コレット21c内に位置するストッパ21sと、を備える。コレット21cは、制御部300による制御のもと、縮径してブランク材Wを把持した把持状態と拡径してブランク材Wの把持を解除した把持解除状態の間で状態が切り替えられる。
ストッパ21sは、コレット21c内に挿入されたブランク材Wに接触することにより、第2主軸21内でブランク材WをZ軸方向に位置決めする。
【0014】
図1に示すように、第1主軸移動機構13Zは、第1主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。第2主軸移動機構25Xは、第2主軸ユニット20をX軸方向に移動させる。第2主軸移動機構25Zは、第2主軸ユニット20をZ軸方向に移動させる。
【0015】
工具移動機構42Yは、第1工具ユニット45をY軸方向に移動させる。図2に示すように、工具移動機構42Xは、第1工具ユニット45をX軸方向に移動させる。工具移動機構42X,42Yは、制御部300による制御のもと、プログラム座標系における座標値にて第1工具ユニット45の位置が指令され、この指令された座標値に第1工具ユニット45を検出部48とともに移動させる。このプログラム座標系は、加工プログラムにおいて指令する際に利用されるブランク材Wに関連付けられた座標系であり、例えば、第1主軸11に保持されたブランク材Wの図2の右側端面の中心に原点を有する。一方、機械座標系は、工作機械1が持っている固有の座標系であり、後述する位置情報を取得する際に利用される。
第1主軸移動機構13Z、第2主軸移動機構25X,25Z及び工具移動機構42X,42Yは、それぞれ、モータ、ボールねじ及びナットを有する。
【0016】
図4に示すように、第1工具ユニット45は、ゲート部材45gと、工具保持部45L,45Rと、複数の工具45a,45b,45cと、を備える。
ゲート部材45gは、第1主軸11により保持されたブランク材Wの外周を囲む枠状で形成されている。ゲート部材45gは、工具移動機構42X,42YによりX軸方向及びY軸方向に移動可能に構成されている。
【0017】
工具保持部45L,45Rは、それぞれゲート部材45gに固定され、第1主軸11により保持されたブランク材WをX軸方向から挟み込むように配置されている。
図2に示すように、工具保持部45Rは、X軸方向において、工具保持部45Lよりも第2工具ユニット26又は搬送ハンド装置70に近い側に位置する。
【0018】
図4に示すように、工具保持部45Lは、複数の工具45aを支持する第1支持部45L1と、複数の工具45bを支持する第2支持部45L2と、を備える。
工具保持部45Rは、複数の工具45aを支持する第1支持部45R1と、複数の工具45c及び検出部48を支持する第2支持部45R2と、を備える。
第2支持部45L2,45R2は、第1支持部45L1,45R1の上方に位置し、X軸方向に対向して位置する。
【0019】
各工具45aは、切削バイト等の固定工具である。複数の工具45aは、それぞれ、第1支持部45L1,45R1に取り付けられる。複数の工具45aは、第1支持部45L1,45R1に取り付けられた状態で、X軸方向に沿って延び、Y軸方向に並べられている。
複数の工具45bは、ドリル又はエンドミル等の回転工具である。複数の工具45bは、第2支持部45L2に取り付けられた状態で、X軸方向に沿って延び、Y軸方向に並べられる。第2支持部45L2は、モータ等の駆動部(図示略)を備え、この駆動部の駆動力により、取り付けられた工具45bを回転させる。
【0020】
図1に示すように、複数の工具45cは、ドリル等の固定工具である。
図4及び図5に示すように、第2支持部45R2は、検出部支持部45R3と、工具支持部45R4と、を備える。
工具支持部45R4は、Y軸方向の上方から見て、X軸方向に反転した略L字状をなす。工具支持部45R4は、第1主軸11により保持されたブランク材Wの端面に対してZ軸方向に刃先が対向する向きで複数の工具45cを支持する。複数の工具45cはY軸方向に並べられている。
図5に示すように、工具支持部45R4には、検出部48が通過する孔部45R5が形成されている。孔部45R5は、工具支持部45R4のZ軸方向に延びる部位45R6にX軸方向に貫通するように形成されている。
検出部支持部45R3は、工具保持部45Rの一部として構成されている。図4に示すように、検出部支持部45R3は、工具支持部45R4(本例では工具支持部45R4の上面)に固定されていて、第1主軸11により保持されたブランク材WにX軸方向に対向可能となるように検出部48を支持する。検出部支持部45R3は、図5に示すように、工具支持部45R4の部位45R6のX軸方向の外側(ブランク材Wとは反対側)にて検出部48を外周から把持する。
【0021】
検出部48は、第1主軸11により保持されたブランク材Wへの接触を検出し、この検出した結果を示す検出信号を制御部300に出力する。
図7(a),(b)に示すように、検出部48は、接触子48aと、本体部48bと、を備える。
図5に示すように、本体部48bは、円筒状をなし、X軸方向に沿う姿勢で、検出部支持部45R3に保持され、孔部45R5を通過する。接触子48aは、X軸方向に沿って延びる棒状をなし、本体部48bに支持されている。接触子48aの先端部は、第1主軸11により保持されたブランク材Wの外周面に対向可能である。検出部48は、接触子48aの先端部がブランク材Wに接触したことを検出する。
検出部48は、接触検出方式であるが、これに限らず、ブランク材Wへの接近を検出するレーザー方式、電波方式等の非接触検出方式であってもよい。
【0022】
図6(a)に示すように、第2工具ユニット26は、第2主軸21により保持されたブランク材Wを加工する。第2工具ユニット26は、複数の工具26aと、プッシャ26cと、複数の工具26a及びプッシャ26cを保持する工具保持部26bと、を備える。
複数の工具26a及びプッシャ26cは、第2主軸21により保持されたブランク材WにZ軸方向に対向可能な向きで工具保持部26bに保持される。
複数の工具26aは、例えば、バイト、ドリル等であり、X軸方向に並べられている。
プッシャ26cは、X軸方向において複数の工具26aの隣に並べられ、複数の工具26aよりも搬送ハンド装置70(図2参照)に近い位置に設けられている。プッシャ26cは、Z軸方向に弾性的に移動可能なバネ式であり、ブランク材Wを第2主軸21内に押し込むための力を貯める弾性体としてバネ(図示略)を有する。
【0023】
図2に示すように、ブランク材供給部60、ブランク材受け渡し装置80及び搬送ハンド装置70はX軸方向に並べられる。
図3に示すように、ブランク材供給部60は、パーツフィーダであり、加工前のブランク材Wをブランク材受け渡し装置80により受け取り可能な第1授受位置Paに供給する。ブランク材供給部60は、第1授受位置Paに位置するブランク材Wの周方向の位置を合わせる位相合わせを行う。本例では、ブランク材Wの平面部Wa,WbがY軸方向に沿うように位相合わせが行われる。
【0024】
ブランク材供給部60は、ベース部61と、ボウル62と、レール63と、加振部64と、を備える。ボウル62は、ベース部61の上面に設置され、複数のブランク材Wが収容される。レール63は、ブランク材Wが配列可能にX軸方向に直線状に延びる。
加振部64は、ボウル62に振動を与えることにより、ボウル62内で複数のブランク材Wを螺旋状に並べたうえで、レール63に沿って移動させてブランク材Wを位相合わせされた状態で第1授受位置Paに到達させる。
【0025】
図2に示すように、ブランク材受け渡し装置80は、ブランク材供給部60により第1授受位置Paに供給されたブランク材Wを把持して第2授受位置Pbまで運ぶ。
ブランク材受け渡し装置80は、ブランク材Wをその外周から把持するハンド部81と、ハンド部81をX軸方向に移動させる第1駆動部84と、ハンド部81をZ軸方向に移動させる第2駆動部85と、を備える。
【0026】
搬送ハンド装置70は、ブランク材受け渡し装置80から第2授受位置Pbにてブランク材Wを受け取り、受け取ったブランク材Wを加工部2内の第3授受位置Pcに移動させる。詳しくは、搬送ハンド装置70は、ブランク材Wをその外周から把持するハンド部71と、ハンド部71をX軸方向に移動させるハンド駆動部72と、を備える。
【0027】
図2に示すように、制御部300は、加工部2、ブランク材供給部60、搬送ハンド装置70及びブランク材受け渡し装置80を制御する。制御部300は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)等の処理部と、処理部による処理の手順を定義したプログラム、例えば、位相補正処理を含む加工プログラムであるNC(Numerical Control)プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)等のメモリと、を備える。制御部300は、位相補正処理を実行する位相補正処理部301及び距離導出部302を有する。
【0028】
次に、制御部300により実行される加工処理について説明する。制御部300は、事前に作成されたNCプログラムに従って、この加工処理を実行する。この加工処理実行中においては、ブランク材供給部60は、ブランク材Wを第1授受位置Paに供給する。
図2に示すように、制御部300は、ブランク材受け渡し装置80の第1駆動部84を介してハンド部81を第1授受位置Paに移動させる。そして、ブランク材受け渡し装置80の第2駆動部85を介してハンド部81をブランク材Wに向けてZ軸方向に前進させて、ハンド部81によりブランク材Wを把持する。
【0029】
次に、制御部300は、ブランク材受け渡し装置80の第2駆動部85を介してハンド部81を後退させて、ブランク材受け渡し装置80の第1駆動部84を介してハンド部81をX軸方向に第2授受位置Pbに移動させる。
制御部300は、ハンド部81が第2授受位置Pbにある状態で、ブランク材受け渡し装置80の第2駆動部85を介してハンド部81をハンド部71に向けてZ軸方向に前進させ、ハンド部71にてブランク材Wを保持させる。
次に、制御部300は、第2駆動部85を介してハンド部81を後退させた後、図6(a)の矢印J1に示すように、ハンド部71を第3授受位置Pcに向けてX軸方向に移動させる。第3授受位置Pcのハンド部71は、プッシャ26cのZ軸方向の前側に位置する。
【0030】
次に、制御部300は、第2主軸移動機構25X,25Z(図2参照)を介して第2主軸21を第3授受位置Pcにあるハンド部71のZ軸方向に対向させ、図6(a)の矢印J2に示すように、第2主軸21をハンド部71により把持されたブランク材Wに近づける。これにより、図6(b)に示すように、第2主軸21のコレット21c内にブランク材Wの平面部Wa,Wb側が進入し、コレット21cが把持解除状態から把持状態に切り替えられる。これにより、第2主軸21がブランク材Wの平面部Wa,Wb側を仮保持した状態となる。この仮保持された状態では、ブランク材Wは、第2主軸21内に完全に押し込まれておらず、ストッパ21sから離間している。
そして、制御部300は、ハンド部71の把持を解除し、第2主軸21をZ軸方向に沿ってハンド部71から退避させ、ハンド部71を図6(a)の矢印J1の反対方向に移動させる。
【0031】
その後、ブランク材Wは、上述したようにバネ(図示略)が内在するプッシャ26cを利用して、Z軸方向に位置決めされる。詳しくは、制御部300は、まず、図6(b)の矢印J3に示すように、第2主軸21をプッシャ26cに近づけて、図6(c)に示すように、第2主軸21により保持されたブランク材Wの端面にてプッシャ26cを押し込む。このとき、プッシャ26cのバネ(図示略)は圧縮された状態となる。そして、第2主軸21のコレット21cを把持状態から把持解除状態に切り替える。これにより、プッシャ26cの復元力により、図6(c)の矢印J4に示すように、ブランク材Wが第2主軸21内のストッパ21sに向けて押されて、ブランク材Wがストッパ21sに接触することによりZ軸方向に位置決めされる。
そして、制御部300は、第2主軸21のコレット21cを把持解除状態から把持状態に切り替え、ブランク材Wの平面部Wa,Wb側を保持し、第2主軸21をプッシャ26cからZ軸方向に退避させる。
上記のように、ブランク材Wがプッシャ26cにより第2主軸21内のストッパ21sに向けて押し込まれる際には、ブランク材Wは周方向に拘束されていないため、ブランク材Wが周方向に回転して、第2主軸21に保持されたブランク材Wの位相のズレが生じるおそれがある。この位相のズレは、後述する位相補正処理により補正される。
【0032】
次に、制御部300は、第2主軸21により把持したブランク材Wを第2工具ユニット26の工具26aを利用しつつ第1加工を行う。なお、この第1加工では、平面部Wa,Wbとの位相は無関係のため、ブランク材Wの位相のズレがある状態でも加工に影響しない。
この第1加工の完了後、図2に示すように、制御部300は、第1主軸移動機構13Zと第2主軸移動機構25X,25Zを介して第2主軸21を第1主軸11にZ軸方向に対向させて、第2主軸21から第1主軸11に第1加工を行ったブランク材Wを受け渡す。このとき、第1主軸11は、平面部Wa,Wbを露出させつつ位相がずれた状態でブランク材Wを保持する。
【0033】
位相補正処理部301及び距離導出部302は、第1主軸11にてブランク材Wを保持すると、第1主軸11により保持されたブランク材Wの周方向のズレ、すなわち位相のズレを補正する位相補正処理を実行する。この位相補正処理は、加工処理の実行中に、サブプログラムとして実行される。
本例では、図7(a)に示すように、ブランク材Wの平面部Wa,WbがY軸方向に対して傾斜するように位相のズレが生じており、この位相補正処理により平面部Wa,WbがY軸方向に沿う状態に位相のズレが補正される。
【0034】
この位相補正処理においては、まず、距離導出部302は、図1及び図2に示すように、工具移動機構42X,42Y(図1及び図2参照)を介して、工具保持部45Rとともに検出部48を移動させる。そして、図7(a)に示すように、検出部48の接触子48aをブランク材Wの平面部Waの第1接触箇所P1に接触させる。詳しくは、距離導出部302は、接触子48aを第1接触箇所P1からX軸方向に離れた位置から、X軸方向に沿って第1接触箇所P1に向けて移動させる。そして、検出部48から接触子48aが第1接触箇所P1に接触した旨の検出信号を受けると、第1停止位置で、検出部48が支持される工具保持部45Rの移動を停止する。距離導出部302は、この第1停止位置において、検出部48からの検出信号を受けたとき、工具保持部45Rの座標値(機械座標値)を第1X座標値及び第1Y座標値として取得する。
【0035】
次に、距離導出部302は、工具移動機構42X,42Yを介して、工具保持部45Rとともに検出部48を移動させ、図7(b)に示すように、検出部48の接触子48aをブランク材Wの平面部Waの第2接触箇所P2に接触させる。詳しくは、距離導出部302は、接触子48aを第2接触箇所P2からX軸方向に離れた位置から、X軸方向に沿って移動させ、検出部48から接触子48aが第2接触箇所P2に接触した旨の検出信号を受けると、第2停止位置で、工具保持部45Rの移動を停止する。この第2停止位置は、X軸方向及びY軸方向において、上記第1停止位置と異なる位置にある。距離導出部302は、この第2停止位置において、検出部48からの検出信号を受けたとき、工具保持部45Rの座標値(機械座標値)を第2X座標値及び第2Y座標値として取得する。
第1X座標値及び第2X座標値はX軸方向の位置情報であり、第1Y座標値及び第2Y座標値はY軸方向の位置情報である。
第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2は、Z軸方向においては同一の位置にある。また、第1接触箇所P1は、ブランク材Wの軸中心WcよりもY軸方向の一方側(本例では上側)に位置する。第2接触箇所P2は、ブランク材Wの軸中心WcよりもY軸方向の他方側(本例では下側)に位置する。
本例では、図8に示すように、第1接触箇所P1とブランク材Wの軸中心Wcの間のY軸方向の距離Cは、第2接触箇所P2とブランク材Wの軸中心Wcの間のY軸方向の距離Dと同一の距離に設定されている。
【0036】
そして、距離導出部302は、図8に示すように、第1Y座標値と第2Y座標値の差分に基づきY軸方向の距離Aを導出し、第1X座標値と第2X座標値の差分に基づきX軸方向の距離Bを導出する。そして、それぞれ導出した距離A,Bからブランク材Wの周方向のズレ量である傾き角θを導出する。本例では、傾き角θは、以下の式により導出される。
θ=tan-1(B/A)
距離Bがマイナスのときには、図7に示すように、第1主軸11に対向する方向から見て、平面部Wa,Wbが反時計方向に傾く。距離Bがプラスのときには、第1主軸11に対向する方向から見て、図示しないが、平面部Wa,Wbが時計方向に傾く。
【0037】
位相補正処理部301は、導出した傾き角θと同じ角度の回転角度αにわたって第1主軸11をブランク材Wとともに回転させることにより、ブランク材Wの周方向のズレ、すなわち位相のズレを補正する。例えば、図7に示すように、平面部Wa,Wbが反時計方向に傾いた状態にあれば、第1主軸11を回転角度αにわたって時計方向に回転させ、図示しないが、平面部Wa,Wbが時計方向に傾いた状態にあれば、第1主軸11を回転角度αにわたって反時計方向に回転させる。この補正により、ブランク材Wの平面部Wa,WbがY軸方向に沿う状態となる。
以上で、位相補正処理が終了する。
【0038】
位相補正処理の終了後、制御部300は、ブランク材Wの平面部Waを工具45bに向けるように、第1主軸11をブランク材Wとともに回転させる。本例では、第1主軸11をブランク材Wとともに180°回転させる。これにより、図7(c)に示すように、ブランク材Wの平面部Waが工具45bに直交した向きとなる。
そして、制御部300は、工具45bによる第2加工を行うべく、図4に示すように、複数の工具45bのうちドリル45b1を軸回転させつつ、ドリル45b1の刃先が平面部Waに接触するように、工具移動機構42X,42Yを介してドリル45b1を移動させる。これにより、第2加工として、平面部Waに穴Wh(図7(c)参照)が形成されて穴明け加工が行われる。穴明け加工の後、複数の工具45bのうちタップ45b2を軸回転させつつ、タップ45b2を穴Wh内に挿入するように、工具移動機構42X,42Yを介してタップ45b2を移動させる。これにより、第2加工として、穴明け加工の後、穴Wh内にねじを切るタップ加工が行われる。穴明け加工及びタップ加工の前に、位相補正処理が行われているため、穴明け加工及びタップ加工の精度が高まる。
その後、第2加工として、穴明け加工及びタップ加工を行った工具45b以外の工具45a,45b,45cを利用してブランク材Wの加工が行われてもよい。
なお、本例では、位相補正処理の終了後に、直ぐに、平面部Waの加工が行われていたが、平面部Waの加工の順番はこれに限られない。
【0039】
第2加工が完了すると、制御部300は、ブランク材Wを第1主軸11から図示しないキャッチャーに排出する。このキャッチャーに排出されたブランク材Wは、図示しないコンベアで機外に搬送される。
以上で、加工処理が終了する。この加工処理は、ブランク材Wの加工毎に行われる。
【0040】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)工作機械1は、ブランク材Wを保持しつつ回転させる主軸の一例である第1主軸11と、第1主軸11の回転軸に沿う第1方向(Z軸方向)に沿って第1主軸11を移動させる主軸移動機構の一例である第1主軸移動機構13Zと、第1主軸11により保持されたブランク材Wを加工する工具45a,45b,45cを保持する工具保持部45L,45Rと、Z軸方向に交わる第2方向(X軸方向及びY軸方向)に沿って工具保持部45L,45Rを移動させる工具移動機構42X,42Yと、工具保持部45Rとともに移動可能に工具保持部45Rに設置され、第1主軸11により保持されたブランク材Wへの接触を検出する検出部48と、工具移動機構42X,42Yを介して検出部48をブランク材Wの複数の箇所の一例である第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2に順番に接触させるように移動させ、検出部48により第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2それぞれへの接触が検出された状態で第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2それぞれの位置情報(例えば、第1X座標値、第2X座標値、第1Y座標値及び第2Y座標値)を取得し、取得した位置情報に基づき第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2の間の距離A,Bを導出する距離導出部302と、距離導出部302により導出された距離A,Bに基づき、第1主軸11により保持されたブランク材Wの周方向のズレ量の一例である傾き角θを導出し、導出した傾き角θに基づき第1主軸11をブランク材Wとともに回転させることによりブランク材Wの周方向のズレを補正する位相補正を行う位相補正処理部301と、を備える。工具移動機構42X,42Yは、位相補正の後、工具保持部45L,45Rを移動させることにより、工具45bにブランク材Wを接触させてブランク材Wを加工する。
この構成によれば、例えば、以下の(a)~(h)の効果を奏する。
(a)位相補正により、第1主軸11により保持されたブランク材Wの周方向の位置ズレ、すなわち位相のズレを抑制することができる。このため、平面部Wa,Wbを有する複雑な形状のブランク材Wの加工精度を高めることができる。
(b)ブランク材Wの第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2それぞれの位置情報(例えば、第1X座標値、第2X座標値、第1Y座標値及び第2Y座標値)から、簡単に、距離A,B及び傾き角θが導出可能となる。
(c)工作機械1は、第1主軸11に対向して位置し、ブランク材Wを保持しつつ回転させ、第1主軸11との間でブランク材Wを授受可能である第2主軸21と、第2主軸21にブランク材Wを供給するブランク材供給機構の一例であるブランク材供給部60及び搬送ハンド装置70と、搬送ハンド装置70から第2主軸21が受け取ったブランク材Wを第2主軸21にZ軸方向に位置決めする際に利用されるプッシャ26cと、を備える。プッシャ26cを利用しつつ第2主軸21に対してブランク材WをZ軸方向に位置決めする際に、ブランク材Wの位相のズレが発生するおそれがあるが、第1主軸11が第2主軸21からブランク材Wを受け取った後に、上記位相補正が行われることにより、位相のズレが補正される。
(d)検出部48が工具保持部45Rに設置されるため、検出部48を利用しつつ上記位相補正が行われた後に、スムーズに、工具45bによるブランク材Wの加工が可能となる。
(e)検出部48が工具保持部45Rに設置されるため、工具保持部45L,45Rの熱変位による影響が工具45b及び検出部48の両方に及ぶ。このため、工具保持部45L,45Rが熱変位した状態での検出部48の検出結果が工具45a,45b,45cによる加工に影響を及ぼしにくい。
(f)検出部48が工具保持部45Rに設置されるため、検出部48を単独で移動させる機構が不要となり、工作機械1をより簡易な構成とすることができる。これにより、省スペースとコスト低減を図ることができる。
(g)第1主軸11でブランク材Wを保持した状態で、検出部48を利用しつつ上記位相補正が行われた後に、第2主軸21にブランク材Wを受け渡すことなく、そのまま第1主軸11にてブランク材Wの加工が行われる。よって、ブランク材Wの加工精度を高めることができる。
(h)第1主軸11がZ軸方向に移動可能であり、工具保持部45L,45RがX軸方向及びY軸方向の2軸方向に移動可能に構成される。これにより、工具保持部45L,45Rを3軸方向に移動させる構成に比べて、累積的な形状誤差や、熱変形による変位が少なく、検出部48の検出精度やブランク材Wの加工精度を高めることができる。また、簡易な構成とすることができる。
【0041】
(2)位相補正処理部301は、第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2の間の距離A,Bに基づきズレ量の一例である傾き角θを導出する。第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2は、ブランク材Wの軸中心Wcを介して互いに反対側に位置する。Y軸方向におけるブランク材Wの軸中心Wcと第1接触箇所P1の間の距離Cは、Y軸方向におけるブランク材Wの軸中心Wcと第2接触箇所P2の間の距離Dと同一の距離に設定される。
この構成によれば、傾き角θが大きいときに、検出部48がブランク材Wの被検出部の一例である平面部Waから外れることが抑制される。
また、工具保持部45L,45RのY軸方向の移動量をどのようにするか考慮する必要がなく、距離C,Dの設定が容易である。
【0042】
(3)工作機械1に用いられる位相補正システムは、上記検出部48と、上記距離導出部302と、上記位相補正処理部301と、を備える。
この構成によれば、位相補正システムを工作機械1に後付けすることが可能である。
【0043】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0044】
(変形例)
上記実施形態においては、第1接触箇所P1と軸中心Wcの間の距離Cは、第2接触箇所P2と軸中心Wcの間の距離Dと同一の距離に設定されていたが、距離Cと距離Dは軸中心Wcから異なる距離に設定されていてもよい。例えば、図9に示すように、距離Cが距離Dよりも長く設定されてもよい。これにより、距離A,Bを長く設定することが可能となり、より正確にズレ量(傾き角θ)を導出することが可能となる。
【0045】
上記実施形態において、距離導出部302及び位相補正処理部301は、ブランク材Wの位相のズレを補正した後、再び、第1X座標値、第2X座標値、第1Y座標値及び第2Y座標値を取得し、傾き角θを再び導出し、再びブランク材Wの位相のズレを補正してもよい。これにより、より確実に、ブランク材Wの位相のズレが補正される。この変形例においては、例えば、位相補正処理部301は、再び導出した傾き角θが許容範囲外であれば位相のズレの再補正を行い、再び導出した傾き角θが許容範囲内であれば位相のズレの再補正を行わなくてもよい。
【0046】
上記実施形態においては、ブランク材Wの外周面には2つの平面部Wa,Wbが形成されていたが、平面部の数は2つに限らず、1つ又は3つ以上であってもよい。また、ブランク材Wの外周面における平面部の位置も変更可能である。また、平面部に代えて、ブランク材Wの外周面と異なる曲率の凹曲面又は凸曲面が形成されてもよい。さらに、ブランク材Wは、角柱状又は楕円柱状に形成されていてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、制御部300は、位相補正処理の終了後、第1主軸11をブランク材Wとともに180°回転させることにより、ブランク材Wの平面部Waを工具45bに対向させて加工を行っていたが、これに限らず、位相補正処理の終了後、第1主軸11を回転させずに、工具45bにより平面部Wbを加工してもよい。
また、工具45bを工具保持部45Rに設けて、工具45bにより平面部Waを加工してもよい。さらに、検出部48を工具保持部45Lに設けてもよい。また、ブランク材Wの端面が傾斜している場合には、検出部48は、ブランク材Wの端面への接触を検出可能に設けられてもよい。
【0048】
上記実施形態においては、工作機械1は、第1主軸ユニット10及び第2主軸ユニット20を備えていたが、第2主軸ユニット20が省略されてもよい。この場合、第1主軸ユニット10が搬送ハンド装置70からブランク材Wを直接、受け取ってもよい。
【0049】
上記実施形態において、第2主軸21は、第2加工済みのブランク材Wを第1主軸11から受け取り、第2主軸移動機構25X,25Zにより移動させられることにより、第2加工済みのブランク材Wを外部に排出してもよい。
【0050】
上記実施形態においては、ガイドブッシュなしで、第1主軸11又は第2主軸21によりブランク材Wが保持されていたが、特に、ブランク材Wが長尺である場合には、第1主軸11又は第2主軸21により保持されるブランク材Wを支持するガイドブッシュが設けられていてもよい。
【0051】
上記実施形態における第1主軸ユニット10、第2主軸ユニット20及び第1工具ユニット45の移動方向は適宜変更可能である。また、工具保持部45L,45Rがそれぞれ独立してX軸方向及びY軸方向の2軸方向に移動可能に構成されてもよい。
【0052】
上記実施形態においては、距離導出部302は、ブランク材Wの平面部Waの第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2から距離Bを導出していたが、距離Bを導出する方法はこれに限らない。例えば、距離Bを大きく取るために、距離導出部302は、接触子48aをY軸方向に所定の間隔でずらしながら、接触子48aを平面部Waに接触させ、接触子48aが平面部Waを空振りする直前の接触箇所を第1接触箇所P1又は第2接触箇所P2としてもよい。
上記実施形態においては、ブランク材Wの平面部Waの2つの接触箇所(第1接触箇所P1及び第2接触箇所P2)の位置情報に基づき、距離A,B及び傾き角θが導出されていたが、3つ以上の接触箇所の位置情報に基づき、距離A,B及び傾き角θが導出されてもよい。
【0053】
上記実施形態においては、ハンド部71は、プッシャ26cの前で、ブランク材Wを第2主軸21に受け渡していたが、この受け渡す位置は、プッシャ26cの前以外の位置であってもよい。この場合、プッシャ26cの前以外の位置で、ハンド部71がブランク材Wを第2主軸21に受け渡した後に、第2主軸21がプッシャ26cの前に移動してもよい。
【0054】
上記実施形態においては、ブランク材Wの平面部Wa,WbがY軸方向に対して傾斜するように位相のズレが生じており、上記位相補正処理により平面部Wa,WbがY軸方向に沿う状態に位相のズレが補正されていたが、平面部Wa,Wbが向く方向はこれに限定されない。例えば、ブランク材Wの平面部Wa,WbがX軸方向に対して傾斜するように位相のズレが生じており、上記位相補正処理により平面部Wa,WbがX軸方向に沿う状態に位相のズレが補正されてもよい。この場合、検出部48は、接触子48aがY軸方向に沿って延びるように、工具保持部45Rに保持される。
【0055】
上記実施形態においては、検出部48は、ブランク材Wへの接触を検出するのみであったが、これに限らず、接触子48aの移動量をブランク材Wの接触箇所の位置情報として検出信号に含ませてもよい。この変形例では、検出部48の本体部48bは、接触子48aをその先端側へ向けて付勢するバネ(図示略)を有する。検出部48は、接触子48aの先端がブランク材Wに接触して接触子48aがバネ(図示略)の弾性力に抗して本体部48b内に押し込まれると、その際の接触子48aの本体部48bに対する移動量をX軸方向に関する位置情報として検出信号に含ませて制御部300に出力する。この変形例においては、距離導出部302は、第1X座標値及び第2X座標値に代えて、接触子48aの移動量を示す第1測定値及び第2測定値から距離Aを導出してもよい。詳しくは、この変形例では、上述した第1停止位置と第2停止位置はX軸方向に同一位置に設定される。距離導出部302は、工具保持部45Rが第1停止位置にあり、接触子48aが第1接触箇所P1に接触しているときの検出部48の検出信号に含まれる接触子48aの移動量を第1測定値として取得する。また、距離導出部302は、工具保持部45Rが第2停止位置にあり、接触子48aが第2接触箇所P2に接触しているときの検出部48の検出信号に含まれる接触子48aの移動量を第2測定値として取得する。そして、距離導出部302は、第1測定値及び第2測定値の差分に基づき距離Bを導出する。第1測定値及び第2測定値は、接触子48aが本体部48b内に押し込まれる量に比例して大きな値となる。この変形例では、より検出精度の高い検出部48を採用することにより、より正確に距離Bを導出することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…工作機械、2…加工部、10…第1主軸ユニット、11…第1主軸、12…第1主軸台、13Z…第1主軸移動機構、20…第2主軸ユニット、21…第2主軸、21c…コレット、21s…ストッパ、22…第2主軸台、25X,25Z…第2主軸移動機構、26…第2工具ユニット、26a,45a,45b,45c…工具、26b,45L,45R…工具保持部、26c…プッシャ、42X,42Y…工具移動機構、45…第1工具ユニット、45b1…ドリル、45b2…タップ、45L1,45R1…第1支持部、45L2,45R2…第2支持部、45R3…検出部支持部、45R4…工具支持部、45R5…孔部、45g…ゲート部材、48…検出部、48a…接触子、48b…本体部、60…ブランク材供給部、61…ベース部、62…ボウル、63…レール、64…加振部、70…搬送ハンド装置、71,81…ハンド部、72…ハンド駆動部、80…ブランク材受け渡し装置、84…第1駆動部、85…第2駆動部、300…制御部、301…位相補正処理部、302…距離導出部、α…回転角度、A,B,C,D…距離、P1…第1接触箇所、P2…第2接触箇所、S…ベッド、W…ブランク材、Pa…第1授受位置、Pb…第2授受位置、Pc…第3授受位置、Wa,Wb…平面部、Wc…軸中心、Wh…穴、J1,J2,J3,J4…矢印、θ…傾き角。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9