(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073735
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】折りたたみ椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 5/10 20060101AFI20230519BHJP
A47C 4/04 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A47C5/10 L
A47C4/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186379
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】391014114
【氏名又は名称】株式会社SANKEI
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】北岡 秀典
(72)【発明者】
【氏名】佐野 佑斗
(57)【要約】
【課題】折りたたみ椅子において、折りたたみ状態で自立が可能でかつ、安定した状態で使用することができ、背もたれにも損傷を与えることなく床面等に載置できる折りたたみ椅子を提供する。
【解決手段】折りたたみ可能に連結した前脚1、後脚3、座部11、背もたれ14を有する。上記前脚の下端に前方屈曲部17を設け、後脚の下端に後方屈曲部18を設ける。上記前方屈曲部17と後方屈曲部18の長さは、折りたたんだ際、上記前方屈曲部17と後方屈曲部18の各接地部20、21の間の最小離間間隔L2内の上方部分に、上記前脚1、後脚3、座部11及び背もたれ14を収めることができる長さに形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の前脚杆を有する前脚と、該前脚と平行に折りたたみ可能に連結された一対の後脚杆を有する後脚と、前脚と平行に起立する折りたたみ位置と着座位置に回転可能に上記前脚と後脚に支持された座部と、上記前脚杆の上部に形成された背枠と、上記背枠に支持された背もたれを具備し、上記前脚杆の下端には前方に屈曲して床面に接する前方屈曲部が設けられ、後脚杆の下端には後方に屈曲して床面に接する後方屈曲部が設けられ、前脚、後脚を折りたたんだ際、上記前方屈曲部が床面に接する前方接地部と、後方屈曲部が床面に接する後方接地部との間の最小離間間隔内の上方部分に、折りたたんだ状態の前脚、後脚、座部及び背もたれを収めることができる長さに上記前方屈曲部と後方屈曲部を形成したことを特徴とする折りたたみ椅子。
【請求項2】
上記背もたれの下部は取付具により後脚杆に回転可能に支持され、上部は背枠の前面に収納され、上記背もたれの下方部分は、背枠と後脚の後方屈曲部の後端を結ぶ仮想線よりも後脚杆側に位置している請求項1に記載の折りたたみ椅子。
【請求項3】
上記前方屈曲部及び後方屈曲部には接地キャップが装着され、該接地キャップの下面には下方に突出する接地突起が設けられている請求項1又は2に記載の折りたたみ椅子。
【請求項4】
上記前方屈曲部及び後方屈曲部には、キャスターが設けられている請求項1又は2に記載の折りたたみ椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折りたたみ椅子に関し、特に折りたたみ状態で自立できるようにした折りたたみ椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前脚、後脚、座部を折りたたみ可能に連結した折りたたみ椅子は、広く知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の折りたたみ椅子は、下端が床に接する一対の前脚杆を有する前脚と、該前脚の中間部に折りたたみ可能に枢着され下端が床に接する一対の後脚杆を有する後脚と、折りたたみ操作に伴って着座位置と跳ね上げ位置に移動するよう回動可能に組み込まれた座部を有し、前脚の上方には、背もたれが設けられている。この椅子を折りたたむと、前脚の後面に後脚の前面が接し、前脚の下端と後脚の下端が近接するが、後脚の下端だけが下方に突出するので、後脚だけでは、床面に対して自立させることができない。そのため、通常の場合、折りたたみ椅子は、折りたたみ状態で上方に重ねて積層して収納したり、収納支持台に並列状態に立てかけて収納することが多い。また、このような折りたたみ椅子は、前脚、後脚の下端が床面に接する接地部間の離間間隔が小さいので、着座したとき前後方向に不安定なことがあり、特に座部の高さを通常よりも低く設定すると、接地部間の離間間隔が一層短くなって不安定となり、座部を通常よりも高く設定した場合にも、同様に不安定になる。
【0003】
また、前脚の上方に設けられる背もたれは、種々の構成が知られているが、
図8に示すように、背もたれ50の下端を、取付具により後脚51よりも後方に突出して設けた場合には、前脚52、後脚51を折りたたんで床面53等においたり、重ね合わせると、床面等に背もたれ50の表皮が擦れて破れたり、損傷を与えることがある。
【0004】
折りたたみ状態で前脚の下端と後脚の下端の接地部間の離間間隔を広げるようにした折りたたみ椅子も提案されている(例えば特許文献2参照)。特許文献2に記載の折りたたみ椅子は、上下方向に長い長尺体の上下に折曲部を構成して略S字状に形成した前側脚部材と、ほぼ同様に、逆向きの折曲部を構成して略逆S字状に形成した後側脚部材を有し、上方の折曲部どうしを対向させた状態で蝶番によって回動可能に連結して肘掛部を構成している。この構成によれば、組み立てた際、下方の上記折曲部が互いに遠ざかる方向に延出するので、折曲部がない場合に比べて安定性が向上する、と記載されている。しかし、折りたたみ状態では、下方の上記折曲部が接近して方向に移動して隣接するので、上記前脚側脚部材の折曲部の前方側先端と、後脚側脚部材の折曲部の後方側先端との接地部間の離間間隔は、使用状態に比べて大幅に少なくなる。しかもこの離間間隔よりも外側に、折りたたまれた状態の前側脚部材及び後脚部材の上方部分が突出してくるので、脚部材や座部等からの荷重が上記接地部よりも外側に作用することになり、その上、前脚部材からは座部や背もたれが前方に偏って垂下するから、自立させるには不安定であり、転倒しやすくなり、コンパクトに収納することもむずかしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-80773号公報(
図1~
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、折りたたみ状態で自立させることができ、効率よく収納することが可能であり、使用状態も安定し、背もたれの一部が後方に突出するような椅子でも、表皮等を損傷しないように床面等に載置できる折りたたみ椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、一対の前脚杆を有する前脚と、該前脚と平行に折りたたみ可能に連結された一対の後脚杆を有する後脚と、前脚と平行に起立する折りたたみ位置と着座位置に回転可能に上記前脚と後脚に支持された座部と、上記前脚杆の上部に形成された背枠と、上記背枠に支持された背もたれを具備し、上記前脚杆の下端には前方に屈曲して床面に接する前方屈曲部が設けられ、後脚杆の下端には後方に屈曲して床面に接する後方屈曲部が設けられ、前脚、後脚を折りたたんだ際、上記前方屈曲部が床面に接する前方接地部と、後方屈曲部が床面に接する後方接地部との間の最小離間間隔内の上方部分に、折りたたんだ状態の前脚、後脚、座部及び背もたれを収めることができる長さに上記前方屈曲部と後方屈曲部を形成したことを特徴とする折りたたみ椅子が提供され、上記課題が解決される。
【0008】
上記折りたたみ椅子は、好ましくは、背もたれの下部が取付具により後脚杆に回転可能に支持され、上部が背枠の前面に収納されている。上記前脚の中間部には支持ロッドが枢着され、該支持ロッドを後脚の先端に摺動可能に挿入してシリンダー方式により、後脚と前脚は折りたたみ可能に連結されている。さらに好ましくは、上記背もたれの下方部分は、背枠と後脚の後方屈曲部の先端を結ぶ仮想線よりも後脚杆側に位置しており、上記前方屈曲部及び後方屈曲部には接地キャップが装着され、該接地キャップには下方に突出する接地突起が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように構成され、一対の前脚杆を有する前脚と一対の後脚杆を有する後脚を、ほぼ平行状態に折りたたみ可能に連結し、折りたたみ操作により着座位置と前脚にほぼ平行する折りたたみ位置に回転可能に上記前脚、後脚間で座部を支持し、上記前脚杆の上部に背枠を形成して背もたれを保持している。そして、上記前脚杆の下端には前方に屈曲して床面に接するよう前方屈曲部を設け、後脚杆の下端には後方に屈曲して床面に接するよう後方屈曲部を設けたので、前脚、後脚を展開した際には、上記前方屈曲部が床面に接する前方接地部と、後方屈曲部が床面に接する後方接地部が前後方向に離間して広く離れ、従来の折りたたみ椅子に比べて前方屈曲部と後方屈曲部により最大離間距離を広くすることができるから、従来の椅子に比べて安定した状態で着座することができる。
【0010】
折りたたんだ際には、上記前方屈曲部の前方接地部と、後方屈曲部の後方接地部は近づく方向に移動するが、屈曲部を有しない従来の折りたたみ椅子に比べて接地部間の最小離間間隔を大きくでき、その上、この接地部間の最小離間間隔内の上方部分に、折りたたんだ状態の前脚、後脚、座部及び背もたれを収めることができる長さに上記前方屈曲部と後方屈曲部を構成したので、折りたたんだ状態で前脚、後脚、座部、背もたれ等からの荷重は上記離間した前方屈曲部と後方屈曲部間で安定状態で支持され、椅子を自立させることができる。このように折りたたみ状態で自立させることができるので、収納するときに、効率よくコンパクトな収納が可能である。
【0011】
さらに、上記背もたれの下方部分を、背枠と後脚の後方屈曲部の先端を結ぶ仮想線よりも後脚杆側に位置させて設けると、折りたたみ状態で床面等に置いたとき、床面と背もたれの下方部分の間に空間を形成することができるので、背もたれの表皮等に損傷をあたえるおそれがない。また、上記前方屈曲部及び後方屈曲部に接地キャップを装着し、該接地キャップの下面に下方に突出する接地突起を設けると、床面に損傷を与えることがなく、接地キャップ自体も長期にわたって使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の折りたたみ椅子の一実施例を示している。なお、本発明において、着座したとき正面を向く側を「前」、背面側を「後」として説明する。
図1に示すように、断面円形のパイプ材料により形成された一対の前脚杆2を有する前脚1と、該前脚1の中間部に折りたたみ可能に枢着された一対の後脚杆4を有する後脚3を具備しており、左右の上記前脚杆2及び後脚杆4は、前脚連結杆5及び後脚連結杆6でそれぞれ連結されている。上記前脚1の上方部には、後方に湾曲しながら左右の前脚杆2と一連に延びる背枠7が形成されている。
【0014】
上記後脚3は、前脚1に沿ってほぼ平行状態に折りたたみ可能に連結されている。連結する手段としては、種々の構成にすることもできるが、好ましくは、
図1に示す実施例のように、シリンダー方式により後脚3と前脚1を連結している。すなわち、前脚1の中間部に支持ロッド8をピン9で枢着し、この支持ロッド8の下端を後脚杆4に摺動可能に挿入してある。この構成により、折りたたむ際、後脚杆4がシリンダーとなって後脚3が上下方向に回動しながら摺動して展開、折りたたみできる。なお、展開状態では、図示を省略した支持ロッド8の内方先端がストッパー10に当って指詰め防止できるように構成されている(図示略)。
【0015】
座部11は、中間部が前脚1にピン12で枢着され、後部が上記後脚3の上部に設けたブラケット13に枢着され、回転可能に設けられている。この構成により、
図1に示すように、折りたたみ椅子の展開状態では、座部11はほぼ水平な着座位置に保持され、折りたたみ時には、後脚3が回転しながら下方に移動することにより座部11は、その前方部分が上方に跳ね上げられて前脚1とほぼ平行に起立した折りたたみ位置に移動する(
図3参照)。
【0016】
上記背枠7には背もたれ14が支持される。該背もたれ14は種々に構成することができるが、好ましくは、実施例に示すように、背もたれの上方部分が背枠7の前面側に上下方向に移動可能に収納され、下方部分が後脚杆方向に延びている形状に構成されている。
図2等の側面図に示すように、該背もたれ14の下方部分には略L字状の取付具15が設けられ、該取付具15は後脚の内側面側に回転可能に枢着されている。この構成により折りたたみ時には後脚3が回転しながら下方に移動することにより、背枠7に沿って背もたれ14は下方に移動し、展開時には上方に移動する。
【0017】
上記前脚杆2の下端には前方に屈曲して床面16に接する方向に延びる前方屈曲部17が設けられ、後脚杆4の下端には後方に屈曲して床面16に接する方向に延びる後方屈曲部18が設けられている。好ましくは、各屈曲部17,18の先端には接地キャップ19が装着されている。該前方屈曲部17と後方屈曲部18は、折りたたみ椅子を展開したとき、前後方向に大きく離れて移動し、前方屈曲部17が床面16に接する前方接地部20と、後方屈曲部18が床面16に接する後方接地部21間の距離は、最大離間間隔L1となる。また、前脚1、後脚3を折りたたんだ際には、上記前方接地部20と後方接地部21が近づき、前後の接地部間は、最小離間間隔L2となる。この最小離間間隔L2は従来の折りたたみ椅子を折りたたんだときの接地部間の間隔よりもはるかに大きい。そして、前方屈曲部17と後方屈曲部18の長さは、上記前方接地部20と後方接地部21との間の最小離間間隔L2内の上方部分に、折りたたんだ状態の前脚1、後脚3、座部11及び背もたれ14を収めることができるような長さに形成されている。
【0018】
上記前方屈曲部17及び後方屈曲部18に装着する上記接地キャップ19はプラスチック材料で形成され、該接地キャップの下面には床面16方向に向けて下方に突出する所要の厚みの接地突起22が設けられている。この接地キャップ19により、床面16に損傷を与えることがなく、接地突起22により接地キャップ19自体も長期にわたって使用することができる。
【0019】
実施例に示すように背もたれ14の下方部分を、取付具15により後脚3の後脚杆4に取り付けた場合、上記背もたれ14の上方部分の後面は背枠7に支持されているが、下方部分の後面は後脚杆4よりも後方に離れて位置することになる。そのため、折りたたみ状態で床面16に置いたとき、背もたれ14の表皮等が擦れて損傷するおそれがある。そこで、
図3に示すように、本発明では、背枠7と後脚3の後方屈曲部18の後端を結ぶ仮想線23よりも後脚杆4側に、背もたれ14の下方部分が位置するように設けてある。この構成により、
図6に示すように、上記仮想線23は床面16とほぼ一致する線となるから、背もたれ14の下方部分が床面16に接することがなく、損傷を防止することができる。
【0020】
以上のような構成により、本発明の折りたたみ椅子は、使用状態で前方屈曲部17と後方屈曲部18が前後方向に離れて位置することにより、前後の接地部20、21間の最大離間間隔L1が従来の折りたたみ椅子よりも大きくなるので、安定状態で着座することができる。また、折りたたみ状態で、後脚3及び座部11は前脚1に沿ってほぼ平行に折りたたまれるが、上記前方屈曲部17と後方屈曲部18の各接地部20、21間の最小離間間隔L2は従来の折りたたみ椅子の場合の最小離間間隔よりも大きくなり、かつ前方屈曲部17と後方屈曲部18の長さを、上記最小離間間隔L2内の上方部分に折りたたみ状態の前脚1、後脚3等を収納できる長さに形成したので、折りたたみ椅子を転倒することなく、自立させることが可能である。そして、複数の椅子を前後方向に収納する場合、2脚目の椅子の中心を、1脚目の椅子の後脚のパイプの太さ分ずらして重ね、3脚目の椅子を1脚目の中心と合わせて重ねると、
図4、
図5に示すように効率よく収納することができる。
【0021】
図7は他の実施例を示し、上記前方屈曲部17と後方屈曲部18にキャスター24を取り付けた折りたたみ椅子を示している。このようなキャスター24を取り付ける場合、上記屈曲部17、18が前後方向に延びていることにより、取付が容易であり、かつ走行安定性も確保することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 前脚
2 前脚杆
3 後脚
4 後脚杆
7 背枠
11 座部
14 背もたれ
17 前方屈曲部
18 後方屈曲部
19 接地キャップ
20 前方接地部
21 後方接地部