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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073740
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/50 20060101AFI20230519BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
B66B1/50 Z
B66B3/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186385
(22)【出願日】2021-11-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100211502
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】テー コク ロン
【テーマコード(参考)】
3F303
3F502
【Fターム(参考)】
3F303CA01
3F303CA03
3F303CA08
3F303CB24
3F303CB28
3F303CB31
3F303DB12
3F303DC01
3F303DC03
3F303DC05
3F502JA06
3F502JA53
3F502KA02
3F502KA19
3F502MA01
3F502MA19
3F502MA48
(57)【要約】      (修正有)
【課題】近年需要が高まっている非接触登録において、物体検知センサや距離センサ等の部品が必要である。撮像装置から取得した映像と拡張現実の技術を活用したバーチャル画像を用いて、システム内で行先階登録を行うことを可能とした非接触行先階登録システムを提供する。
【解決手段】実施形態のエレベータは、撮像装置に取得された映像から入手した情報から利用者の位置を検知し、行先階を示すバーチャル画像の表示位置を決定する位置決定手段と、表示位置に表示するバーチャル画像を作成する画像作成手段と、撮像装置によって取得したリアルタイムのかご内映像と画像作成手段により作成した前記バーチャル画像とを視認可能に表示する映像表示装置と、映像に基づき利用者の動作を検知する動き検知手段と、動き検知手段にて、乗りかご1におけるバーチャル画像と重なる位置に利用者の動作を検知した場合、適した指示を登録する登録手段と、を具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内の映像を取得する撮像装置を備えたエレベータにおいて、
前記撮像装置に取得された映像から入手した情報から利用者の位置を検知し、行先階を
示すバーチャル画像の表示位置を決定する位置決定手段と、
前記表示位置に表示する前記バーチャル画像を作成する画像作成手段と、
前記乗りかごに設けられ、前記撮像装置によって取得したリアルタイムのかご内映像と
、前記画像作成手段により作成した前記バーチャル画像と、を視認可能に表示する映像表
示装置と、
前記撮像装置に取得された映像に基づき前記利用者の動作を検知する動き検知手段と、
前記動き検知手段にて、前記乗りかごにおける前記バーチャル画像と重なる位置に前記
利用者の動作を検知した場合、対応する行先階を登録する登録手段と、
を具備するエレベータ。
【請求項2】
前記位置決定手段は、前記利用者の手足の届く範囲を、前記バーチャル画像の表示位置
として決定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記位置決定手段は、前記利用者の位置とともに、前記乗りかごの空きスペースを検知
し、前記空きスペースを前記バーチャル画像の表示位置として決定することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記画像作成手段は、前記撮像装置から取得した映像から乗車率が定員の8割未満の場
合に、前記バーチャル画像を作成することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記バーチャル画像は、階床を示す数字ボタンと、前記階床を行先階として決定する決
定ボタンと、登録した行先階を取り消し可能としたリセットボタンとが含まれることを特
徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記登録手段は、前記利用者の身体の一部が、前記乗りかごにおける前記バーチャル画
像の前記数字ボタンと重なる位置に一定時間保持されたとき、前記数字ボタンの数値を階
床として行先階を仮決定し、前記仮決定した後、前記決定ボタンと重なる位置に一定時間
保持された場合に行先階として登録することを特徴とする請求項5に記載のエレベータ。
【請求項7】
前記バーチャル画像は、調整ボタンと、該調整ボタンの調整により調整できる数字表示
と、該数字表示を階床として行先階登録する登録ボタンと、登録した行先階を取り消し可
能としたリセットボタンとが含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか
一項に記載のエレベータ。
【請求項8】
前記登録手段は、前記利用者の身体の一部が、前記乗りかごにおける前記バーチャル画
像の前記調整ボタンと重なる位置に保持された時間もしくは回数によって前記数字表示が
変化し、調整後の前記数字表示の数値を階床として行先階を仮決定し、前記仮決定した後
、前記決定ボタンと重なる位置に一定時間保持された場合に行先階として登録することを
特徴とする請求項7に記載のエレベータ。
【請求項9】
前記バーチャル画像は、前記登録手段において、仮決定する階床を示す数値の文字を点
灯もしくは点滅することを特徴とする請求項6または請求項8に記載のエレベータ。
【請求項10】
前記登録手段は、行先階登録を行った後に、前記利用者の身体の一部が、前記乗りかご
における前記バーチャル画像の前記リセットボタンと重なる位置に一定時間保持されたと
き、既に行った階床の登録を取り消すことを特徴とする請求項6または請求項8に記載の
エレベータ。
【請求項11】
前記位置決定手段は、乗り込んだ利用者の向きを検出し、前記利用者の向きに合わせて
表示位置として決定することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載
のエレベータ。
【請求項12】
前記位置決定手段は、複数箇所を表示位置として決定することを特徴とする請求項1乃
至請求項11のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項13】
前記位置決定手段は、前記乗りかごにおける行先階登録済みの人物とそうでない人物と
を判断し、行先階登録を行っていない人物を前記利用者と判定し、前記利用者の立ち位置
近傍を表示位置として決定することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項
に記載のエレベータ。
【請求項14】
前記映像表示装置は、前記乗りかごの液晶インジケータの一部に設けられることを特徴
とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項15】
乗りかご内の映像を取得する撮像装置を備えたエレベータにおいて、
前記撮像装置に取得された映像から入手した情報から前記乗りかごの空きスペースを検
知し、行先階を示すバーチャル画像の表示位置を決定する位置決定手段と、
前記表示位置に表示する前記バーチャル画像を作成する画像作成手段と、
前記乗りかごに設けられ、前記撮像装置によって取得したリアルタイムのかご内映像と
、前記画像作成手段により作成した前記バーチャル画像と、を視認可能に表示する映像表
示装置と、
前記撮像装置に取得された映像に基づき前記利用者の動作を検知する動き検知手段と、
前記動き検知手段にて、前記乗りかごにおける前記バーチャル画像と重なる位置に前記
利用者の動作を検知した場合、対応する行先階を登録する登録手段と、
を具備するエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ、特にバーチャル画像を用いたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータにおいて行先階登録や開閉動作等を非接触で行うシステムへの需要が
高まっている。従来では、機器に直接手を触れずに登録を行うものとして、かご内操作盤
の各ボタン近傍にセンサを設けたものや投影装置によってドアや壁に階数等を投影する仕
組みのものが提案されている。これらは、センサを用いて物体検知を行ったり受光部との
距離に基づいて階数を推定したりする仕組みであり、いずれも所定の位置にかざすなどの
乗客の指や手の動きに基づいて指示を判定している。
【0003】
他方、拡張現実(AR)の技術においては、カメラをかざすと製品やイメージ画像のC
Gが端末上に表示される仕組みや携帯端末を通して見た風景上にその場所に関する情報を
重ねて表示する仕組み等が知られている。また、現実世界の地形やものの位置に基づいて
特定の画像を表示し、現実環境と関連する表示がなされる仕組みのものが存在する。他に
も、仮想現実(VR)においては、特定のデバイスの操作によって新たな環境にアクセス
できるような技術が知られている。特に、ヘッドマウントディスプレイを装着して活用可
能な拡張現実においては、現実世界を透過させながら、視界に入るものを認識し、それら
をフレーム越しで操作することが可能となるシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-143683号公報
【特許文献2】国際公開第2020/170334号
【特許文献3】米国特許第8968099号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0213393号明細書
【特許文献5】国際公開第2018/017993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、物体検知による非接触登録を行う場合は、行先階登録のためにかご内操
作盤やかごドア近傍等の規定の位置において行わなければならず、かご内が混みあってい
る場合の利用性が高くない。
【0006】
また、上記の仕組みを用いる場合には、一般的なエレベータの構成に加えて、非接触で
行うための物体検知センサや距離センサ、投影装置等の別の部品が必要となってしまう。
エレベータ側に部品を設けずに、拡張現実や仮想現実を活用する場合であっても、利用者
側が特定の装置を用いることが必要となってしまい、適用に限定がかかってしまうという
懸念点がある。
【0007】
そこで、本実施形態では、不特定多数の利用が想定されるエレベータにおいて、乗客が
乗り込むかご内の空間を有効的に利用して非接触で行先階登録を可能としたものを提案す
る。特に、あらかじめ撮像装置を有するエレベータにおいて、拡張現実の技術を活用しつ
つ、行先階登録ボタンを示すバーチャル画像を用いて、システム内で行先階登録を行うこ
とを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、実施形態のエレベータは、乗りかご内の映像を取得する撮像
装置を備えたエレベータにおいて、前記撮像装置から取得した情報から利用者の位置を検
知しバーチャル画像の表示位置を決定する位置決定手段と、前記表示位置に表示する前記
バーチャル画像を作成する画像作成手段と、前記乗りかごに設けられ、前記撮像装置によ
って取得したリアルタイムのかご内映像と、前記画像作成手段により作成した前記バーチ
ャル画像と、を視認可能に表示する映像表示装置と、前記撮像装置を介して乗客の動作を
検知する動き検知手段と、前記動き検知手段にて、前記乗りかごにおける前記バーチャル
画像と重なる位置に乗客の動作を検知した場合、適した指示を登録する登録手段と、を具
備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のエレベータにおける乗りかご内の全体図である。
図2】映像表示装置の表示内容を示す図である。
図3】かご内の乗客の動作を想定した図である。
図4】バーチャル画像のボタンの形状を示す図である。
図5】実施形態のシステムの構成を示すブロック図である。
図6】バーチャル画像のボタンの形状についての変化例(1)の図である。
図7】バーチャル画像のボタンの形状についての変化例(2)の図である。
図8】映像表示装置の表示内容についての表示例(1)である。
図9】映像表示装置の表示内容についての表示例(2)である。
図10】映像表示装置の表示内容についての表示例(3)である。
図11】映像表示装置の表示内容についての表示例(4)である。
図12】映像表示装置の表示内容についての表示例(5)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本実施形態のエレベータの構成及び動作を説明する。なお、以下
の説明において、略または実質的に同一の機能及び構成要素については、同一符号を付し
、必要に応じて説明を行う。
【0011】
図1から図4を用いて実施形態に係るエレベータについて説明する。
【0012】
図1は、実施形態のエレベータにおける乗りかごを上面から見た全体図である。
【0013】
乗りかご1と乗場との往来を可能とする出入口2には、乗場側に乗場ドア21、乗りか
ご1側にかごドア22がそれぞれ設けられており、乗場ドア21とかごドア22は連動し
て戸開可能となっている。乗りかご1内には、撮像装置3を設け、基本的には常時映像を
取得可能としている。なお、撮像装置3は、乗りかご1内であれば出入口2近傍や幕板、
天井、他の側板の上方に設けるとしても構わない。乗りかご1の映像を取得できれば、あ
らかじめ備えられた防犯用の撮像装置や乗り込み検知用の撮像装置を活用するとしてもよ
い。
【0014】
さらに、乗りかご1は、かご内操作盤(COP)4a及び映像表示装置4bを設けてい
る。かご内操作盤4aは、ボタン等の操作によって行先階登録や開閉動作の指示を可能と
している。映像表示装置4bは、撮像装置3により取得した乗りかご1内の映像と新たに
作成するバーチャル画像5を合わせて視認可能に表示する。バーチャル画像5については
後述する。また、映像表示装置4bは、かご内操作盤4aの一部である液晶インジケータ
として一体に設けられても、外付けのディスプレイであっても構わない。映像表示装置4
bについては、副操作盤近傍等、かごドア22を有す面以外の乗りかご1内の壁面(側板
)に別で設けても構わない。画面の大きさを自由に変更可能となるため利用性が向上する
【0015】
次に、映像表示装置4bに映し出される内容について説明する。
【0016】
図2は、映像表示装置4bの表示内容を示す図である。図3は、図2の内容が表示中で
ある場合の乗客の動作を想定した図であり、乗りかご1内の利用者の視線の方向を点線矢
印で示した。なお、バーチャル画像5を指示する乗客を、本システムを利用する者として
利用者Uと呼称する。
【0017】
映像表示装置4bには、利用者Uを含めた撮像装置3にて取得した映像がおよそリアル
タイムで表示される。そしてシステム内で作成したバーチャル画像5を、乗りかご1内の
映像に重ねて適した位置に表示する。バーチャル画像5の作成及び表示位置の決定に関す
るシステム内の動作については後述する。なお、バーチャル画像5にあたる部分と利用者
Uの身体の一部と投影面上で重なると所定の階の行先階登録が行われる。
【0018】
映像表示装置4bに表示された乗りかご1内の映像及びバーチャル画像5は、図3に示
すように、乗りかご1内の利用者Uに視認可能に表示されており、乗りかご1の床への実
際の投影は行われない。利用者Uは、映像表示装置4bを確認しつつ、手や足等を動かす
ことで所定の行先階登録を行うことが可能である。バーチャル画像5は、利用者Uの立ち
位置に基づき、その近傍に配置される。近傍とは例えば利用者Uの周囲であって利用者U
の手足の届く範囲である。利用者Uの前方か側方であることが望ましい。あらかじめ人物
のパターン認識を行っておくことで、撮像装置3により取得した映像から乗り込んだ利用
者Uを判断し、利用者Uの動きやすい適した場所にバーチャル画像5を配置することが可
能となる。さらに、利用者Uの身体の向き、もしくは足や顔の向いている方向に基づき、
それに合わせて配置を定めても良い。身体の向きは、例えば、利用者Uの頭や肩などの特
徴点を抽出して判定する。他にも、顔認識の技術により、顔が横向きであるか後ろ向きで
あるか等の判定により行ってもよい。
【0019】
なお、バーチャル画像5の表示位置の決定には、利用者Uの位置に加えて、乗りかご1
内の空き状況に基づき、投影面上に障害物を検知しない空きスペースを判断して映像表示
装置4bに表示するとしてもよい。乗りかご1内の空きスペースを判断することにより、
混雑時等利用者U以外の乗客が多く乗り込んでいる場合に生じ得る、バーチャル画像5と
乗客とが重なってしまう等の懸念点を解消することが可能である。
【0020】
図4は映像表示装置4b内のバーチャル画像5である。
【0021】
バーチャル画像5は、建屋における停止階床を示す数字ボタン5aと、階床を行先階と
して決定する決定ボタン(OKボタン)5bと、登録した行先階を取り消し可能としたリ
セットボタン(RSTボタン)5cとから成る。
【0022】
利用者Uによるバーチャル画像5の指示については、例えば、利用者Uが数字ボタン5
aの数値3に2秒間手をかざすと、3を目的の階床として行先階を仮決定し、その後決定
ボタン5bに1秒間手をかざすと行先階として本登録可能としている。停止可能階床が2
桁以上の場合は、位の大きい方から順に登録する。仮決定の間は映像表示装置4b内のバ
ーチャル画像5は点滅、本登録されると色が変化して点灯する等、利用者Uが登録状態を
認識できるとなお良い。一度登録した目的階を取り消したい場合には、リセットボタン5
cに一定時間手をかざすことで可能となる。仮決定の時点で点滅した階床とは異なる階床
を目的階として登録したい場合、一度リセットボタン5cを反応させることで点滅が消え
、再度数字ボタン5aから指示することができる。もしくは、停止可能階床が1桁の場合
に限り、リセットボタン5cを反応させずに変更後の階床を示す数字ボタン5aを反応さ
せることで仮決定する階床を変更することを可能としても構わない。バーチャル画像5の
ボタンについて、反応するまでにかかる手をかざす保持時間は任意に決定して構わない。
また利用者Uの身体の一部であれば所定の位置にかざすのは手でなくても、足や指先であ
っても反応可能とする。
【0023】
次に、バーチャル画像5の作成及びバーチャル画像5を用いた行先階登録の動作の流れ
について、制御内容とともに説明する。
【0024】
図5は、実施形態のシステムの構成を示すブロック図である。
【0025】
実施形態のエレベータに備えられる制御装置6において、バーチャル画像5の表示位置
を決定する位置決定手段601と、適したバーチャル画像5を作成する画像作成手段60
2と、利用者Uの動作の有無を判定する動き検知手段603と、行先階登録を行う行先階
登録手段604と、を有する。
【0026】
乗りかご1の撮像装置3より取得した情報を制御装置6の位置決定手段601に送信す
る。位置決定手段601では、乗りかご1における利用者Uの位置を検知し、その結果に
基づき表示位置を決定する。画像作成手段602は、大きさなどの観点から配置に適した
画像を決定し、かご内映像とともに表示する指示を映像表示装置4bに出力する。映像表
示装置4bを視認し、乗りかご1内におけるバーチャル画像5の位置に手をかざす等の動
作を行った利用者Uの情報を、撮像装置3から取得し、動き検知手段603により検知す
る。動作有りと判定された場合、行先階登録手段604は、一定時間保持された数値を目
的の階床として行先階を仮決定し、その後所定の動作が行われると本登録する。行先階登
録後は従来の仕組みに従って行先階までの運行等の制御を行う。
【0027】
なお、位置決定手段601は、利用者Uの位置に加えて、乗りかご1の空き状況を検知
し、その結果に基づき空きスペースを表示位置として決定するとしても構わない。利用者
の位置と空きスペースの両方に基づき表示位置を決定できれば、周囲の人や物等にバーチ
ャル画像5の表示位置が重なる心配がなく、利用者Uの利用性を向上させることができる
【0028】
また、画像作成手段602において、バーチャル画像5の作成とは、都度新たな画像を
作成することに限定はせず、例えばあらかじめ複数のバーチャル画像5を記憶しておき、
その中から選定するとしても構わない。この場合は、適した階数を示すバーチャル画像5
を、後述する図6図7のように複数のパターンで設け、利用者Uの位置や空きスペース
の状況に合わせて選定する。
【0029】
次に、図6及び図7を用いて、バーチャル画像5のボタンとして機能する部分の形状に
ついて説明する。図6(a)は図4と同様に乗りかご1の出入口2に対しておよそ水平に
バーチャル画像5を視認可能に表示する場合を示している。図6(b)及び(c)は乗り
かご1の出入口2に対しておよそ垂直にバーチャル画像5を視認可能に表示する場合を示
している。いずれも、階床を示す数字ボタン(階数ボタン)5aと、数字ボタン5aが指
示されたときにその数値を行先階として決定する決定ボタン(OKボタン)5bと、登録
した行先階を取り消すことのできるリセットボタン(RSTボタン)5cとから構成され
る。なお、重ね検知を避けるため、バーチャルの行先階登録ボタンを一列で設けることが
望ましい。横並び、縦並びのいずれであっても構わない。横並びの場合は、利用者Uの位
置を検出した上で利用者Uの前面もしくは左右いずれかの側面に数字の底部が向くように
配置する。また決定ボタン5bの数および位置は任意に決定可能とし、数字ボタン5aの
両端部に設けたり間に設けたりしても構わない。他にも決定ボタン5bとリセットボタン
5cは位置が逆であっても構わない。なお、数字ボタン5aは、「乗りかご1の可動する
階床数」もしくは「0から9」とする。特に建物の階床数が二桁以上の場合は後者が好ま
しい。数字ボタン5aは、階床を示す表示であるため、数値に限定せず、地下を表す「B
」や屋上を示す「R」等であっても構わないとする。
【0030】
図7は、図6と同様にバーチャル画像5のボタンとして機能する部分を示す図であり、
スピンボタンを用いる場合の形状である。図7の(a)から(c)はいずれも、数字表示
(階数表示)5dと、数字表示の数値を大きくする方向へ調整する調整ボタン5eと、小
さくする方向へ調整する調整ボタン5fを有する。調整ボタン5e・5fへの指示に従っ
て数字表示5dが調整可能となっている。さらに、調整された数字表示5dの数値を行先
階として決定する決定ボタン(OKボタン)5bと、登録した行先階を取り消すことので
きるリセットボタン(RSTボタン)5cを有する。
【0031】
数字ボタン5aの内のいずれかに手をかざすことで目的階を仮決定する図2及び図6
登録方法とは異なり、図7のスピンボタンを用いる際には調整ボタン5e・5fを反応さ
せることで階数を調整する。操作前は数字表示5dが「01」等乗り込んだ階床数となっ
ており、バーチャル画像5における乗りかご1内の調整ボタン5eにあたる位置に手をか
ざした時間の長さに応じて数字表示5dが変化する。調整ボタン5eを指示すると数字表
示5dにおける数値は増加し、調整ボタン5fを指示すると数字表示5dにおける数値は
減少する。利用者Uは、目的階の数値の表示を確認した後、決定ボタン5bに一定時間手
をかざすことで行先階の登録を可能とする。
【0032】
なお、停止可能階床が2桁以上の場合は、数字表示5dの位それぞれを指示可能とする
としても構わない。例えば、数字表示5dの十の位に一定時間手をかざし、調整ボタン5
eで十の位の数値を定め、その後数字表示5dの一の位に一定時間手をかざし、同様に調
整ボタン5eで一の位の数値を定めた後、決定ボタン5bで行先階として登録することが
可能である。
【0033】
図6図7に示すようにして、バーチャル画像5の形状を、建物の停止可能階床数や乗
りかご1内の空きスペースによって適したものに変更することが可能である。
【0034】
次に乗りかご1に複数人が乗り込んだ場合について説明する。
【0035】
図8は目的階登録の必要な二人の利用者が乗り込んだ場合の、映像表示装置4bの表示
内容を示す図である。同じ階床から乗り込んだ二人の利用者U1・U2が各々行先階登録
を可能としたものであり、それぞれにバーチャル画像5を与えて行先階登録を可能とした
ものである。映像表示装置4bにおけるバーチャル画像5の登録方法は上述と同様である
。乗り込んだ利用者U1の位置及び空きスペースを検知し、映像表示装置4b上の利用者
U1の近傍の空きスペースにバーチャル画像5を配置する。利用者U2に対しても同様に
位置を決定させてバーチャル画像5を配置する。バーチャル画像5の表示位置に関しては
、利用者U1・U2の位置のみから決定しても構わない。図8においては、それぞれ図7
のスピンボタン方式を採用しているが、図6の0から9の数を表示させる方式であっても
構わない。
【0036】
図9は目的階登録の必要な利用者Uと目的階登録済みの乗客Pとが乗り込んだ場合の、
映像表示装置4bの表示内容を示す図である。図10図11図9と同様に目的階登録
の必要な利用者Uと目的階登録済みの乗客Pとが乗りかご1内に混在している場合の、映
像表示装置4bの表示内容を示す別の図である。図9から図11いずれも、乗りかご1内
全体の映像を取得した上で、取得した映像から、手や足等人物の位置の変化や動作を判定
し、かご内操作盤4aもしくはバーチャル画像5によって行先階登録を行っているか否か
を判断する。既にいずれかの方法で行先階登録を行った場合には乗客Pと判定し、いずれ
も行っていない場合には新規行先階登録の必要な利用者Uと判定する。利用者U以外のそ
の他の乗客Pによって既に登録されている目的階は、バーチャル画像5の中でもあらかじ
め数値を点灯させる等視認可能に表すことが望ましい。さらに、利用者Uは、利用者Uの
目的階が、登録の階床の場合には階床の指定、決定ボタン5bの指示の順で行い、既に登
録されている階床であった場合には決定ボタン5bのみを指示することを可能とする。こ
のようにすると状況に応じて登録にかかる時間を短縮できる。
【0037】
バーチャル画像5については利用者Uの立ち位置の近傍に配置される旨前述したが、乗
車率に基づいてバーチャル画像5を表示するか否か決定する。空きスペースを検知せずに
バーチャル画像5の表示位置を決定する場合には、乗車率が高いと他の乗客とバーチャル
画像5とが重なってしまう可能性があるため、例えば、乗車率が定員の8割未満の場合に
限り本システムを適用する。
【0038】
図12は、二方向出入口を有する乗りかご1の場合の、映像表示装置4bの表示内容を
示す図である。
【0039】
実施形態では出入口2を一つ有する乗りかご1として説明してきたが、他にも図12
示すように二方向出入口を有する場合であっても適用可能である。例えば、映像表示装置
4bとバーチャル画像5は入り口とは反対側のかごドア近傍に設ける。入り口側と、入り
口とは反対側と、側面の少なくともいずれかに表示可能であるとしても良い。バーチャル
画像5の表示を入り口側とは反対側に設けるとすると、乗りかご1に乗り込んだ利用者U
は体を向き直さずに登録できる位置まで移動すれば良いため、利用性が向上する。
【0040】
図8から図12に示すように、複数人が乗り込んだ場合にあっては、それぞれの目的階
登録の要否と利用者の立ち位置と空きスペースから適切なバーチャル画像5を配置するこ
とが可能である。なお、映像表示装置4bに表示する内容について、乗りかご1内におけ
る利用者Uを判断し、その利用者U周辺の画像(映像)のみを全体から抽出し、拡大して
映像表示装置4bに表示しても構わない。
【0041】
このようにして、利用者の立ち位置の情報と乗りかご1の空きスペース、映像表示装置
4b及びバーチャル画像5を用いることで、かご内の空間を有効的に利用した非接触での
行先階登録が可能となる。乗りかご1内の他の乗客状況を踏まえた上で、行先階登録の必
要な利用者の近傍に適したバーチャル画像5を映し出すことができる。
【0042】
さらに、利用者Uの向き等に合わせて配置を決定することで動線上から大きく外れるこ
となく効率的にバーチャル画像5を配置することが可能となる。
【0043】
なお、利用者Uの位置からのみ、もしくは利用者Uの位置と乗りかご1の空きスペース
を検知してバーチャル画像5の表示位置を決定するとしているが、利用者の立ち位置を指
示、誘導する目的として空きスペースのみから表示位置を決定しても良いとする。
【0044】
実施形態では映像表示装置4bを乗りかご1内の装置としているが、利用者Uの乗り込
みとともに利用者Uの所有する電子端末にて乗りかご1内の映像を確認可能とし、実施形
態と同様に所定の位置に手をかざす動作から行先階登録を行うこととしても構わない。こ
の場合は、電子端末とエレベータとの接続方法を予め設定しておくこととする。
【0045】
以上に述べたように、実施形態によれば、利用者Uの立ち位置を検知しバーチャル画像
5の表示位置を決定する手段と、そのバーチャル画像5を作成する手段と、撮像装置3か
ら取得した乗りかご内の映像とバーチャル画像5とを重ねて見えるように表示する表示装
置と、乗客の動作を検知する手段と、乗りかご1においてバーチャル画像5と重なる位置
に手をかざすなどの利用者Uの動作を検知した場合、行先階登録もしくは取り消し等適し
た指示を登録する手段を有することで、かご内操作盤4aを使用せずに乗りかご内の空間
を利用して非接触で行先階登録が可能となる。撮像装置3から取得した画像情報として、
乗り込んだ利用者の立ち位置や動きから操作を行うことはすなわち乗り込んだ位置にて登
録可能であるため、特に規模の大きなエレベータであれば、乗降の動線上で登録操作が可
能となり、利用者の快適性向上につながる。利用者Uの立ち位置に加えて乗りかご1の空
きスペースを検知してバーチャル画像5の表示位置を決定するとしても良く、空きスペー
スのみから表示位置を決定しても良いとする。
【0046】
本発明の実施形態及びいくつかの変形例を説明したが、これらの実施形態は、例として
提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形
態は、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範
囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、
発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範
囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…乗りかご、2…出入口、21…乗場ドア、22…かごドア、3…撮像装置、4a…か
ご内操作盤(COP)、4b…映像表示装置(インジケータ)、5…バーチャル画像、5
a…数字ボタン(階数ボタン)、5b…決定ボタン(OKボタン)、5c…リセットボタ
ン(RSTボタン)、5d…数字表示(階数表示)、5e…調整ボタン(増やす)、5f
…調整ボタン(減らす)、6…制御装置、601…位置決定手段、602…画像作成手段
、603…動き検知手段、604…行先階登録手段、U…利用者、P…乗客
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内の映像を取得する撮像装置を備えたエレベータにおいて、
前記撮像装置に取得された映像から入手した情報から利用者の位置を検知し、行先階を示すバーチャル画像の表示位置を決定する位置決定手段と、
前記表示位置に表示する前記バーチャル画像を作成する画像作成手段と、
前記乗りかごに設けられ、前記撮像装置によって取得したリアルタイムのかご内映像と、前記画像作成手段により作成した前記バーチャル画像と、を視認可能に表示する映像表示装置と、
前記撮像装置に取得された映像に基づき前記利用者の動作を検知する動き検知手段と、
前記動き検知手段にて、前記乗りかごにおける前記バーチャル画像と重なる位置に前記利用者の動作を検知した場合、対応する行先階を登録する登録手段と、
を具備するエレベータ。
【請求項2】
前記位置決定手段は、前記利用者の手足の届く範囲を、前記バーチャル画像の表示位置として決定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記位置決定手段は、前記利用者の位置とともに、前記乗りかごの空きスペースを検知し、前記空きスペースを前記バーチャル画像の表示位置として決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記画像作成手段は、前記撮像装置から取得した映像から乗車率が定員の8割未満の場合に、前記バーチャル画像を作成することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記バーチャル画像は、階床を示す数字ボタンと、前記階床を行先階として決定する決定ボタンと、登録した行先階を取り消し可能としたリセットボタンとが含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記登録手段は、前記利用者の身体の一部が、前記乗りかごにおける前記バーチャル画像の前記数字ボタンと重なる位置に一定時間保持されたとき、前記数字ボタンの数値を階床として行先階を仮決定し、前記仮決定した後、前記決定ボタンと重なる位置に一定時間保持された場合に行先階として登録することを特徴とする請求項5に記載のエレベータ。
【請求項7】
前記バーチャル画像は、調整ボタンと、該調整ボタンの調整により調整できる数字表示と、該数字表示を階床として行先階登録する登録ボタンと、登録した行先階を取り消し可能としたリセットボタンとが含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項8】
前記登録手段は、前記利用者の身体の一部が、前記乗りかごにおける前記バーチャル画像の前記調整ボタンと重なる位置に保持された時間もしくは回数によって前記数字表示が変化し、調整後の前記数字表示の数値を階床として行先階を仮決定し、前記仮決定した後、前記登録ボタンと重なる位置に一定時間保持された場合に行先階として登録することを特徴とする請求項7に記載のエレベータ。
【請求項9】
前記バーチャル画像は、前記登録手段において、仮決定する階床を示す数値の文字を点灯もしくは点滅することを特徴とする請求項6または請求項8に記載のエレベータ。
【請求項10】
前記登録手段は、行先階登録を行った後に、前記利用者の身体の一部が、前記乗りかごにおける前記バーチャル画像の前記リセットボタンと重なる位置に一定時間保持されたとき、既に行った階床の登録を取り消すことを特徴とする請求項6または請求項8に記載のエレベータ。
【請求項11】
前記位置決定手段は、乗り込んだ利用者の向きを検出し、前記利用者の向きに合わせて表示位置として決定することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項12】
前記位置決定手段は、複数箇所を表示位置として決定することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項13】
前記位置決定手段は、前記乗りかごにおける行先階登録済みの人物とそうでない人物とを判断し、行先階登録を行っていない人物を前記利用者と判定し、前記利用者の立ち位置近傍を表示位置として決定することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項14】
前記映像表示装置は、前記乗りかごの液晶インジケータの一部に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載のエレベータ。
【請求項15】
乗りかご内の映像を取得する撮像装置を備えたエレベータにおいて、
前記撮像装置に取得された映像から入手した情報から利用者と前記乗りかごの空きスペースを検知し、行先階を示すバーチャル画像の表示位置を決定する位置決定手段と、
前記表示位置に表示する前記バーチャル画像を作成する画像作成手段と、
前記乗りかごに設けられ、前記撮像装置によって取得したリアルタイムのかご内映像と、前記画像作成手段により作成した前記バーチャル画像と、を視認可能に表示する映像表示装置と、
前記撮像装置に取得された映像に基づき前記利用者の動作を検知する動き検知手段と、
前記動き検知手段にて、前記乗りかごにおける前記バーチャル画像と重なる位置に前記利用者の動作を検知した場合、対応する行先階を登録する登録手段と、
を具備するエレベータ。