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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073763
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】船外機、内燃機及び船舶
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20230519BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
F01M13/00 F
F01M13/00 D
F01M13/00 E
B63H21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186428
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】松江 弘人
(72)【発明者】
【氏名】前川 真也
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015AA03
3G015AB01
3G015BD04
3G015CA02
3G015CA03
3G015DA04
(57)【要約】
【課題】ブリーザー室へ到達するブローバイガスのオイルの量を削減する。
【解決手段】船舶10の船体11に取り付けられる船外機12は、エンジン14を備え、エンジン14は、一直線上に配置された4つのシリンダ25を有するシリンダブロック20を有し、シリンダブロック20は、ブローバイガスをクランク室29からブリーザー室24まで導く2つのブローバイガス流路30,31を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船体に取り付けられる船外機であって、
内燃機を備え、
前記内燃機は、少なくとも1つのシリンダを有するシリンダブロックを有し、
前記シリンダブロックは、ブローバイガスをクランク室からブリーザー室まで導く2つのブローバイガス流路を有し、
前記内燃機は、前記船舶の航走時においてクランク軸が前記船体の船底に対して略垂直な方向に沿うように配置される、船外機。
【請求項2】
2つの前記ブローバイガス流路は、間に前記少なくとも1つのシリンダを挟むように配置される、請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ブローバイガス流路は、前記クランク軸に対して略平行となるように延伸する、請求項1又は2に記載の船外機。
【請求項4】
前記シリンダブロックは複数の前記シリンダを有し、少なくとも2つの前記シリンダは一直線上に配列され、
少なくとも1つの前記ブローバイガス流路は、前記少なくとも2つのシリンダの配列方向に沿うように配置され、
前記少なくとも1つのブローバイガス流路の前記配列方向に沿う長さは、1つの前記シリンダの直径よりも大きい、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項5】
前記少なくとも1つのブローバイガス流路の前記配列方向に沿う長さは、前記少なくとも2つのシリンダの前記配列方向に関する先端から後端までの長さよりも大きい、請求項4に記載の船外機。
【請求項6】
一方の前記ブローバイガス流路の長さは、他方の前記ブローバイガス流路の長さと異なる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項7】
少なくとも1つの前記ブローバイガス流路を内包するボスの少なくとも一部が、前記クランク室へ突出する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項8】
船舶の船体に取り付けられる内燃機であって、
少なくとも1つのシリンダを有するシリンダブロックを有し、
前記シリンダブロックは、ブローバイガスをクランク室からブリーザー室まで導く2つのブローバイガス流路を有する、内燃機。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の船外機を備える船舶。
【請求項10】
請求項8に記載の内燃機を備える船外機。
【請求項11】
請求項8に記載の内燃機を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機、内燃機及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機の内燃機で生じるブローバイガスは、内燃機のクランク室内で霧状となったオイルを巻き込むため、一旦、気液分離機能を有するブリーザー室へ導入されてオイルが分離された後、内燃機の吸気ポートへ送り込まれて燃焼される。また、通常、ブローバイガスは、シリンダブロックに設けられた1本のブローバイガス流路によってブリーザー室へ導入される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年、船舶はより目的地へ早く到達することが求められており、船外機の出力の増大が検討されている。出力が増大すると、例えば、燃焼圧が高まって内燃機においてブローバイガスが増加するため、ブローバイガスによってクランク室から持ち出されるオイル量も増加する。したがって、ブローバイガスからオイルを分離するためのブリーザー室も大きくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3537554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、船外機の内燃機は全面がカウルで覆われ、レイアウトにはあまり余裕が無く、ブリーザー室の大きさには限度があるため、ブリーザー室においてブローバイガスから分離可能なオイルの量にも限度がある。したがって、ブリーザー室へ到達するブローバイガスに含まれるオイルの量をできるだけ削減する必要がある。
【0006】
本発明は、ブリーザー室へ到達するブローバイガスのオイルの量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一態様による船外機は、船舶の船体に取り付けられる船外機であって、内燃機を備え、前記内燃機は、少なくとも1つのシリンダを有するシリンダブロックを有し、前記シリンダブロックは、ブローバイガスをクランク室からブリーザー室まで導く2つのブローバイガス流路を有し、前記内燃機は、前記船舶の航走時においてクランク軸が前記船体の船底に対して略垂直な方向に沿うように配置される。
【0008】
この構成によれば、シリンダブロックは2つのブローバイガス流路を有するため、トータルでのブローバイガス流路の断面積を大きくすることができる。これにより、各ブローバイガス流路を流れるブローバイガスの流速を低下させ、ブローバイガスがクランク室からブリーザー室へ到達するまでの時間を稼ぐことができ、各ブローバイガス流路においてブローバイガスからオイルが分離する時間を十分に確保することができる。その結果、ブリーザー室へ到達するブローバイガスのオイルの量を削減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブリーザー室へ到達するブローバイガスのオイルの量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る船外機が適用される船舶の側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る船外機の構成を概略的に示す側面図である。
図3】エンジンの構成を概略的に示す側面図である。
図4】シリンダブロックを排気側から眺めたときの側面図である。
図5】シリンダブロックを吸気側から眺めたときの側面図である。
図6】シリンダブロックをオイルパン側から眺めた正面図である。
図7】シリンダブロックをシリンダヘッド側から眺めた平面図である。
図8】シリンダブロックをクランクケース側から眺めた底面図である。
図9】シリンダブロックの吸気側に形成されるブローバイガス流路の配置を説明するための水平断面図である。
図10】シリンダブロックの排気側に形成されるブローバイガス流路の配置を説明するための水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る船外機が適用される船舶の側面図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る船外機の構成を概略的に示す側面図である。
【0012】
船舶10は、滑走艇であり、船体11と、船体11の船尾に取り付けられる推進機としての少なくとも1つ、例えば、2つの船外機12とを備える。船体11には操縦席を兼ねる船室13が配置される。船外機12は、内燃機であるエンジン14と、プロペラ15と、プロペラ15を回転させるためのプロペラシャフト16と、エンジン14の駆動力をプロペラシャフト16に伝達するドライブシャフト17と、を有し、エンジン14の駆動力によって回転されるプロペラ15によって船舶10へ推力を付与する。
【0013】
船外機12には操舵機構(図示しない)が設けられ、操舵機構は船外機12を船体11に対して略水平に首振りさせることで船外機12が発生する推力の作用方向を調整する。さらに、船外機12は、当該船外機12を船体11の船尾に取り付けるための懸架機構18を備え、懸架機構18は船外機12の昇降機構として機能し、船舶10の保管時には船外機12をチルトアップする。
【0014】
また、船外機12には多量の飛沫がかかるが、エンジン14の各部が塩水等で腐食しないように、船外機12は、エンジン14の全面を覆うカウル19を有する。カウル19は、エンジン14の他にプロペラシャフト16やドライブシャフト17も覆う。
【0015】
なお、船外機12では、船舶10の航走時において、ドライブシャフト17や後述のクランク軸28の軸方向が、船体11の船底に対して略垂直な方向となるように、エンジン14が配置される。
【0016】
図3は、エンジン14の構成を概略的に示す側面図である。図3において、エンジン14は、シリンダブロック20と、シリンダヘッド21と、クランクケース22と、オイルパン23と、ブリーザー室24と、を主要構成要素として有する。
【0017】
なお、図3の上下方向は、船舶10の船体11の船底に対して略垂直な方向であり、例えば、船舶10が陸揚げされた際、平坦な陸地に対して略垂直な方向であり、船舶10が水面に浮かんで停船している際、水面に対して略垂直な方向でもある。また、本実施の形態の各図では、以降、船体11の船尾から船首に向かう方向(船舶10の進行方向)を「X」で表し、船体11の右舷から左舷へ向かう方向を「Y」で表し、船体11(船外機12)の下から上に向かう方向を「Z」で表す。さらに、船体11の左舷側(図3の手前側)は排気側と称し、船体11の右舷側(図3の手前側とは反対側)を吸気側と称する。
【0018】
シリンダブロック20は、一直線上に配置された複数、例えば、4つのシリンダ25を有し、各シリンダ25にはピストン26が挿嵌される。各ピストン26はコンロッド27によってクランク軸28へ連結される。シリンダヘッド21は、シリンダブロック20の各シリンダ25と対向するようにシリンダブロック20へ締結され、各シリンダ25に対応する燃料室(不図示)を有する。クランクケース22は、間にシリンダブロック20を挟んでシリンダヘッド21へ対向するように、シリンダブロック20へ締結される。また、クランクケース22はシリンダブロック20とともにクランク軸28を挟み込み、さらに、クランク軸28を収容するクランク室29を画成する。クランク軸28は、ドライブシャフト17と同軸に位置するように、シリンダブロック20やクランクケース22に設けられたジャーナル(不図示)によって軸支されるとともに、その一端がドライブシャフト17に連結される。
【0019】
オイルパン23は、シリンダブロック20やクランクケース22の下面を覆うように配置され、内部に潤滑油としてのオイルを貯蓄する。オイルパン23の内部はクランク室29と連通する。オイルパン23のオイルはストレーナー(不図示)を介してオイルポンプ(不図示)によってエンジン14の各部へ圧送され、主として摺動する各部品を潤滑する。各部品を潤滑したオイルは、例えば、クランク室29へ排出されてオイルパン23へ落下する。このとき、オイルパン23のオイルの一部は霧状となって漂う。ブリーザー室24は、シリンダブロック20に取り付けられるが、ブリーザー室24をシリンダブロック20と一体的に成形してもよい。
【0020】
エンジン14は、シリンダヘッド21の燃焼室で生じた燃焼の圧力による各ピストン26の移動力をクランク軸28によって回転力に変換してドライブシャフト17へ伝達する。また、エンジン14では、上述したように、クランク室29がオイルパン23の内部と連通するため、燃焼室からピストン26とシリンダ25の壁面の隙間を吹き抜けてクランク室29へ侵入したブローバイガスが、オイルパン23の内部にも侵入する。そして、ブローバイガスはオイルパン23の内部を漂う霧状のオイルを巻き込む。このオイルを巻き込んだブローバイガスは後述する2つのブローバイガス流路30,31によってブリーザー室24へ導入される。
【0021】
次に、本実施の形態におけるシリンダブロック20が有する2つのブローバイガス流路30,31について説明する。図4は、シリンダブロック20を排気側から眺めたときの側面図であり、図5はシリンダブロック20を吸気側から眺めたときの側面図である。また、図6は、シリンダブロック20をオイルパン23側から眺めた正面図であり、図7は、シリンダブロック20をシリンダヘッド21側から眺めた平面図であり、図8は、シリンダブロック20をクランクケース22側から眺めた底面図である。また、図9は、シリンダブロック20の吸気側に形成されるブローバイガス流路30の配置を説明するための水平断面図であり、図10は、シリンダブロック20の排気側に形成されるブローバイガス流路31の配置を説明するための水平断面図である。
【0022】
シリンダブロック20は、2つのブローバイガス流路30,31を有する。シリンダブロック20は、アルミニウムを用いたダイキャスト製法によって製造され、各ブローバイガス流路30,31は、主にダイキャストの型によってその形状が作成される。
【0023】
ブローバイガス流路30はシリンダブロック20の吸気側に形成され、ブローバイガス流路31はシリンダブロック20の排気側に形成される。そして、ブローバイガス流路30とブローバイガス流路31は間に複数のシリンダ25を挟むように配置される。
【0024】
また、ブローバイガス流路30,31はそれぞれ、シリンダブロック20において一直線上に配置された各シリンダ25の配列方向(以下、「シリンダ配列方向」という。)に沿うように延伸して配置される。なお、シリンダ配列方向は、図中のZ方向と平行である。また、シリンダ配列方向はクランク軸28の軸方向とも平行であるため、ブローバイガス流路30,31はそれぞれクランク軸28の軸方向に対して略平行となるように延伸して配置されるとも言える。
【0025】
ブローバイガス流路30のシリンダ配列方向に沿う長さLは、図9に示すように、2つのシリンダ25のシリンダ配列方向に関する先端から後端までの長さLよりも大きい。また、ブローバイガス流路31は、図10に示すように、シリンダブロック20を図中Z方向に関して貫通するため、ブローバイガス流路31の長さLは4つのシリンダ25のシリンダ配列方向に関する先端から後端までの長さLよりも大きい。換言すると、ブローバイガス流路30の高低差はシリンダ25の直径の2倍以上であり、ブローバイガス流路31の高低差はシリンダ25の直径の4倍以上である。なお、ブローバイガス流路30の長さLは、ブローバイガス流路31の長さLよりも短いが、長さLと長さLが同じであってもよい。また、図中Z方向は船体11の上下方向であるため、ブローバイガス流路30、31の延伸方向は重力方向と一致するとも言える。
【0026】
ブローバイガス流路30,31はいずれも一端が、シリンダブロック20におけるオイルパン23の取り付け面(シリンダブロック20の前面)において開口する(図6)。これにより、オイルパン23の内部のブローバイガスがブローバイガス流路30,31へ効率良く流入する。
【0027】
ブローバイガス流路30の他端は、シリンダブロック20におけるシリンダヘッド21の取り付け面(シリンダブロック20の上面)において開口し(図7)、ブローバイガス流路30を流れるブローバイガスは、シリンダブロック20の上面の開口からシリンダブロック20に設けられたブローバイガス流路(不図示)へ流入し、その後、ブリーザー室24へ流入する。また、ブローバイガス流路31の他端は、シリンダブロック20におけるオイルパン23の取り付け面と反対側の面(シリンダブロック20の後面)において開口し、ブローバイガス流路31を流れるブローバイガスは、シリンダブロック20の後面の開口から不図示のパイプ等を介してブリーザー室24へ流入する。
【0028】
ブローバイガス流路30,31へ流入したブローバイガスがブリーザー室24へ流入するまでには、或る程度時間を要するが、ブローバイガスからのオイルの分離は時間の経過とともに進行するため、ブローバイガスがブローバイガス流路30,31を流れている間に、ブローバイガスからオイルの分離が進行する。すなわち、ブローバイガス流路30,31は副次的な気液分離機能を備える。ブローバイガス流路30,31においてブローバイガスから分離したオイルは、ブローバイガス流路30,31内をオイルパン23へ向けて落下する。
【0029】
そして、本実施の形態では、エンジン14のシリンダブロック20が2つのブローバイガス流路30,31を有するため、トータルでのブローバイガス流路の断面積を大きくすることができる。これにより、各ブローバイガス流路30,31を流れるブローバイガスの流速を低下させ、ブローバイガスがオイルパン23からブリーザー室24へ到達するまでの時間を稼ぐことができ、各ブローバイガス流路30,31においてブローバイガスからオイルが分離する時間を十分に確保することができる。その結果、ブリーザー室24へ到達するブローバイガスのオイルの量を削減することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、ブローバイガス流路30,31のいずれも、シリンダ25との間に必要最小限の肉厚のみを確保するように、配置される。すなわち、ブローバイガス流路30,31のいずれもシリンダ25へ寄せて配置される。これにより、ブローバイガス流路30,31を内包する筒状の肉部(ボス)がシリンダブロック20の外表面に浮き出るのを抑制することができる。特に、本実施の形態では、ブローバイガス流路31をできるだけシリンダ25へ寄せて配置した結果、ブローバイガス流路31を包むボス32の一部がクランク室29へ突出する(図8)。その結果、シリンダブロック20が不必要に大きくなるのを抑制することができ、エンジン14、引いては、船外機12の小型化、軽量化に寄与することができる。
【0031】
さらに、本実施の形態では、ブローバイガス流路の断面積を大きくするために、1つのブローバイガス流路の断面積を大きくするのではなく、ブローバイガス流路の数を増やした。これにより、ブローバイガス流路を包むボスがシリンダブロック20の表面へ不必要に浮き出るのを抑制するだけでなく、1つ1つのブローバイガス流路の断面積をさほど大きくする必要が無くなり、各ブローバイガス流路の配置の自由度が増す。その結果、シリンダブロック20の形状に対する、ブローバイガス流路の断面積の増大の影響を最小限に抑えることができる。
【0032】
また、ブローバイガス流路30,31のいずれもシリンダ25へ寄せて配置した結果、各ブローバイガス流路30,31を、シリンダ25を冷却するためのウォータージャケット(不図示)へ近づけて配置することができる。例えば、ブローバイガス流路30を包むボスの一部やブローバイガス流路31を包むボス32の一部をウォータージャケットへ露出することができる。これにより、各ブローバイガス流路30,31を流れるブローバイガスを効率良く冷却することができ、各ブローバイガス流路30,31におけるブローバイガスからのオイルの分離を促進することができる。
【0033】
さらに、本実施の形態では、上述したように、ブローバイガス流路30の高低差はシリンダ25の直径の2倍以上であり、ブローバイガス流路31の高低差はシリンダ25の直径の4倍以上であるため、高低差が十分に確保できており、各ブローバイガス流路30,31にブローバイガスが留まる時間を長くすることができる。これにより、各ブローバイガス流路30,31においてブローバイガスからオイルが分離する時間をさらに確保することができる。また、ブローバイガス流路30、31の延伸方向は重力方向と一致するため、分離したオイルをオイルパン23へ向けて積極的に落下させることができる。その結果として、ブローバイガスからオイルの分離を促進することができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0035】
例えば、ブローバイガス流路31はZ方向に関してシリンダブロック20をストレートに貫通するが、途中にクランク形状を設けてもよい。この場合、クランク形状の存在によって流路の抵抗が増し、ブローバイガス流路31を流れるブローバイガスの流速が低下するのを期待することができ、もって、ブローバイガスからより多くのオイルを分離させることができる。
【0036】
また、ブローバイガス流路30の高低差はシリンダ25の直径の2倍以上であり、ブローバイガス流路31の高低差はシリンダ25の直径の4倍以上であったが、ブローバイガス流路30,31のいずれも高低差が少なくともシリンダ25の直径の1倍以上であればよい。これにより、各ブローバイガス流路30,31においてブローバイガスからオイルが分離する最低限の時間を確保することができる。なお、ブローバイガス流路30の高低差(長さ)とブローバイガス流路31の高低差(長さ)は同じであってもよい。
【0037】
さらに、エンジン14では、ブリーザー室24がシリンダブロック20へ取り付けられているが、ブリーザー室24がシリンダヘッド21へ取り付けられてもよく、若しくは、シリンダヘッド21と一体的に成形されてもよい。
【0038】
また、シリンダブロック20は2つのブローバイガス流路30,31を有するが、3つ以上のブローバイガス流路を有してもよい。この場合も、シリンダブロック20の排気側と吸気側のそれぞれには少なくとも1つのブローバイガス流路が配置される。
【0039】
本実施の形態では、エンジン14が4つのシリンダ25が全て一直線上に配置された直列エンジンであったが、本発明は、V型エンジンや水平対向型エンジンにも適用することができる。この場合、各バンクのシリンダブロックが少なくとも2つのブローバイガス流路を有する。また、本発明は、単気筒にも適用することができる。
【0040】
さらに、本実施の形態では、エンジン14が船外機12に搭載されたが、船内機や船内外機のエンジンにも本発明を適用することができ、船外機、船内機や船内外機に関わらず、エンジンのクランク軸の軸方向は、船体の船底に対して略垂直である必要はなく、例えば、エンジンのクランク軸の軸方向が船体の船底に対してほぼ水平であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 船舶、11 船体、12 船外機、14 エンジン、20 シリンダブロック、24 ブリーザー室、25 シリンダ、30,31 ブローバイガス流路、32 ボス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10