(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073787
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】椅子用張地の取付構造
(51)【国際特許分類】
A47C 31/02 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
A47C31/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186465
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】391029406
【氏名又は名称】カリモク家具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】石川 英樹
(57)【要約】
【課題】表張地の仕上がりの個体差を少なくするとともに、木枠への表張地の取付を容易にすることができる椅子用張地の取付構造を提供する。
【解決手段】
取付部17における取付溝18の着座側の反対側には、抑え部20が周方向全体に亘って形成され、周方向全体に亘って抑え部20の着座側に、周縁部が位置することができる形状保持部材31を有し、形状保持部材31の着座側にクッション材32を設け、クッション材32の着座側に張地33を設け、張地33によりクッション材32の着座側面を覆うとともに、張地33の周縁を、形状保持部材31に固定して張地構成部材30を形成し、張地構成部材30の外周部に、外側方向に突出する可撓性を有する突出部35を、周方向全体に亘って設け、突出部35の外縁部を、取付部17の取付溝18内に収納することにより、張地構成部材30を、取付部17に取り外し可能に取り付ける。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製のフレームを有する椅子であって、
前記フレームの一部により周方向全体が囲まれた取付部を形成し、
該取付部におけるフレームの内側には、その周方向全体に亘って取付溝が形成され、
前記取付溝の着座側の反対側には、抑え部が周方向全体に亘って形成され、
周方向全体に亘って、前記抑え部の着座側に、周縁部が位置することができる形状保持部材を有し、該形状保持部材の着座側にクッション材を設け、該クッション材の着座側に張地を設け、該張地によりクッション材の着座側面を覆うとともに、前記張地の周縁を、形状保持部材に固定して張地構成部材を形成し、
前記張地構成部材の外周部に、外側方向に突出する可撓性を有する突出部を、周方向全体に亘って設け、
前記突出部の外縁部を、前記取付部の取付溝内に収納することにより、前記張地構成部材を、前記取付部に取り外し可能に取り付けることを特徴とする椅子用張地の取付構造。
【請求項2】
前記突出部は取付部材を有し、取付部材に可撓性を有する線材を、周方向全周に亘って取り付け、前記線材が、前記取付部の取付溝内に位置するようにして、前記突出部の外縁部を、前記取付部の取付溝内に収納させたことを特徴とする請求項1記載の椅子用張地の取付構造。
【請求項3】
前記取付部を、椅子の背部に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の椅子用張地の取付構造。
【請求項4】
前記張地構成部材を前記取付部に取付けた状態において、前記張地構成部材の張地と形状保持部材により、前記線材が、前記取付溝から外れることを抑制することを特徴とする請求項1記又は2又は3記載の椅子用張地の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子用張地の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木枠で構成される椅子の背に表張地を取り付ける方法として、木枠にチップボールを固定し、該チップボールにクッション材を取り付けた後に、クッション材の表面を表張地で覆い、表張地の周縁部をタッカーにより木枠に取付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、椅子の木枠やクッション材が三次元的に湾曲して構成されている場合、表張地の取付は、機械で行うことが難しく手作業により行われている。そのため、熟練した技術が必要となるとともに、張地の仕上がりに個体差が生じるという問題点がある。
【0005】
そこで、木枠への表張地の取付を容易にするとともに、張地の仕上がりに個体差を少なくすることができる椅子用張地の取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、木製のフレームを有する椅子であって、
前記フレームの一部により周方向全体が囲まれた取付部を形成し、
該取付部におけるフレームの内側には、その周方向全体に亘って取付溝が形成され、
前記取付溝の着座側の反対側には、抑え部が周方向全体に亘って形成され、
周方向全体に亘って、前記抑え部の着座側に、周縁部が位置することができる形状保持部材を有し、該形状保持部材の着座側にクッション材を設け、該クッション材の着座側に張地を設け、該張地によりクッション材の着座側面を覆うとともに、前記張地の周縁を、形状保持部材に固定して張地構成部材を形成し、
前記張地構成部材の外周部に、外側方向に突出する可撓性を有する突出部を、周方向全体に亘って設け、
前記突出部の外縁部を、前記取付部の取付溝内に収納することにより、前記張地構成部材を、前記取付部に取り外し可能に取り付けることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記突出部に、可撓性を有する線材を、周方向全周に亘って取り付け、前記線材が、前記取付部の取付溝内に位置するようにして、前記突出部の外縁部を、前記取付部の取付溝内に収納させたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記取付部を、椅子の背部に設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2又は3記載の発明において、前記張地構成部材を前記取付部に取付けた状態において、前記張地構成部材の張地と形状保持部材により、前記線材が、前記取付溝から外れることを抑制することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、張地構成部材の外周部に外側方向に突出する突出部を形成し、突出部には、可撓性を有する線材が、周方向全周に亘って取り付けられ、線材を、取付部の取付溝内に収納することにより、張地構成部材を、取付部に取り外し可能に取り付けることにしたことにより、熟練度を要するタッカーを用いた張地の取付工程が不要となり、椅子における張地の取付の個体差を少なくし、品質を向上できる。
【0011】
また、修理、メンテナンス時において、張地を容易に取り外すことができ、作業性を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】本発明の実施例1に用いるフレームの斜視図。
【
図10】
図9から張地構成部材を取り外した状態の縦断面図。
【
図11】本発明の実施例1に用いる張地構成部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の椅子用張地の取付構造を備えた椅子の斜視図を示し、以下において、着座者の膝側が位置する側を前側Aとし、着座者の臀部側が位置する側を後側Bとし、
図2の上側を上側C、その反対側を下側Dとして説明する。
【0015】
椅子1は、
図5~
図8に示すように、木製のフレーム2を有する。フレーム2は、前側Aの左右に配置されるとともに、上下方向に立設される一対の前側フレーム3,3と、後側Bの左右に配置されるとともに、上下方向に立設される一対の後側フレーム4,4を有する。各前側フレーム3の下部は、前脚5を構成し、各後側フレーム4の下部は、後脚6を構成する。
【0016】
左右の前側フレーム3,3間には座前フレーム7が架設され、前側フレーム3と後側フレーム4との間には座側フレーム8が架設され、左右の後側フレーム4,4間には後横フレーム9が架設されている。座前フレーム7と座側フレーム8と後横フレーム9で座フレーム10が構成され、座フレーム10の上部には座11が設けられている。
【0017】
左右の後側フレーム4,4の上端間には、背上フレーム12が架設され、前側フレーム3と後側フレーム4の上端間には肘フレーム13が架設されている。
【0018】
背上フレーム12と、左右の後側フレーム4,4の上部と、後横フレーム9で背フレーム14が構成されている。
【0019】
なお、フレーム2の形状、構造等は上記のものに限定されず、任意に設定することができる。
【0020】
フレーム2の一部である背フレーム14、すなわち、背上フレーム12と、左右の後側フレーム4,4の上部と、後横フレーム9により、周方向全体が囲まれた背取付部17が、
図5~
図8に示すように構成される。背取付部17は前後方向に開口する空間19が形成されている。
【0021】
背取付部17には、その内側方向のみに開口する取付溝18が、背取付部17の周方向全体に亘って形成されている。
【0022】
背取付部17における、取付溝18の着座側の反対側である後側Bには、
図10に示すように、背取付部17の内側方向に突出する抑え部20が、周方向全体に亘って形成され取付溝18の前側Aの内側端より抑え部20の内側端が、内側に位置するようになっている。
【0023】
背取付部17の抑え部20における前側Aには、可撓性を有するとともに、着座者が座11に着座し、後述する張地構成部材30にもたれた際等に、張地構成部材30が後方に抜け落ちることを抑制できる抜け止め部材22が、空間19全体を閉塞するように設けられている。
図10に示すように、抜け止め部材22の周縁22aは、抑え部20における前側Aの面に対して取付けられるとともに、取付溝18内には位置しないようになっている。抜け止め部材22の後側Bには、クッション材23が設けられ、その後面は、裏張材24で覆われている。裏張材24の周縁は、抑え部20と抜け止め部材22の間に位置するとともに、抑え部20に固定されている。
【0024】
また、
図11~
図14に示す張地構成部材30が、背取付部17の空間19内に取り外し可能に取り付けることができるようになっている。
【0025】
張地構成部材30は、
図9に示すように、形状保持部材31とクッション材32と張地である表張地33を備えている。
【0026】
形状保持部材31は、その周縁が、周方向全体に亘って、背取付部17の抑え部20の着座者側(前側A)に位置するとともに、所定の3次元形状となるように形成されている。本実施例では、形状保持部材31を構成する部材としてチップボールを使用したが、これ以外にも、椅子1に着座者が着座した際に、形状をある程度保持できるものであれば、形状保持部材31を、プラスチックや金属等の任意の部材で構成することができる。
【0027】
形状保持部材31の着座側である前側Aには、ウレタン等で構成されたクッション材32が設けられ、クッション材32の着座側面(前側面)全体を、表張地33で覆われている。表張地33の周縁は、周方向全体に亘って、着座側の反対側(後側B)に折り返された後に、形状保持部材31の着座側の反対側(後側B)に図示しない接着テープ等により固着されている。
【0028】
形状保持部材31における表張地33の外周部には、背取付部17の径方向の外側方向に突出するとともに、外縁部に可撓性を有する塩化ビニルや金属等の線材37を、周方向全体に亘って備えた突出部35が設けられている。
【0029】
突出部35は、布等の取付部材36を有し、取付部材36を折り返して、その両端部を表張地33の外周面に固設し、周方向全体に亘って、取付部材36の内部に収納部36aが形成されている。
【0030】
収納部36a内には線材37が、周方向全体に亘って収納され、突出部35の外縁部に線材37が備えられ、突出部35は可撓性を有する。なお、取付部材36に対する線材37の取付方法は、上記意外にも任意の方法に取り付けることができる。
【0031】
このように、張地構成部材30を別途、予め一体に形成し、この張地構成部材30を、その突出部35の線材37を、取付溝18内に周方向全体に亘って位置するようにして、突出部35の外縁部を、周方向全体に亘って取付溝18に取り付けることにより、背取付部17に張地構成部材30を取り外し可能に取り付けることができるようになっている。
【0032】
図9に示すように、背取付部17に張地構成部材30を取り付けた際に、突出部35は外部から視認できないようになっている。また、
図9に示すように、取付溝18は、抜け止め部材22、形状保持部材31、クッション材32、表張地33により閉塞され、突出部35と線材37が取付溝18から外れることを抑制できるとともに、張地構成部材30の脱落を防止できるようになっている。
【0033】
椅子1は、上記構造等を有することにより次の作用効果を奏する。
【0034】
形状保持部材31にクッション材32を載せ、表張地33で覆った後に、表張地33の周縁を、形状保持部材31の後面に接着テープ等により固着することで張地構成部材30を構成することができるため、熟練度を要するタッカー止め作業が不要となり、張地構成部材30の個体差を少なくし、椅子1の品質を向上することができる。また、椅子1の外観の自由度が増し、デザインの幅を広げることができる。
【0035】
また、線材37を、取付溝18内に収納することで、背取付部17に張地構成部材30を取付けできるため、取り付け作業する際に、タッカー止めが不要となり作業効率を大幅に向上できる。
【0036】
また、タッカー止めが不要となるとともに、張地構成部材30を容易に取り外すことができることで、椅子1の分別廃棄の可能性を高めることができる。また、椅子1の購入者の注文に応じて、張地構成部材30の表張地33の色、模様等を容易に交換することができる。
【0037】
また、椅子1の修理、メンテナンス時において、上記従来技術におけるステープルを一つずつ外す作業が不要となり、張地構成部材30を取り外しや取付作業が容易に行え、作業性を大幅に向上することができる。
【0038】
なお、抜け止め部材22は、着座者が着座し、張地構成部材30にもたれた際等に、抜け止め部材22により後方に抜けることを抑制できればよく、抜け止め部材22として、例えば、相互に離間するように設けた桟等で構成してもよい。
【0039】
[実施例2]
上記実施例1においては、取付部材36の収納部35a内に線材37を、周方向全体に亘って収納したが、収納部を形成せずに、取付部材と線材を、樹脂等により可撓性を有するように一体に突出部を形成するようにしてもよい。
【0040】
この可撓性を有する突出部の外縁部を、周方向全体に亘って取付溝18に取り付けることにより、背取付部17に張地構成部材30を取り外し可能に取り付けることができる。
【0041】
それ以外の構造は、前記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0042】
本実施例2においても前記実施例1と同様の効果を奏する。
【0043】
[実施例3]
上記実施例1,2においては、張地構成部材30を背取付部17に取り外し可能に取り付けて背部材として使用したが、フレーム2の一部で、周方向全体を囲まれた空間を形成するとともに、上記実施例1の背取付部17と同様の取付部を形成し、この取付部に、張地構成部材を取り外し可能に取り付けるようにしてもよい。
【0044】
例えば、前側フレーム3、後側フレーム4、肘フレーム13、座側フレーム8で囲まれた空間に、上記実施例1の背取付部17と同様の取付部を設けて、張地構成部材を取り外し可能に取り付けるようにしてもよい。
【0045】
それ以外の構造は、前記実施例1,2と同様であるのでその説明を省略する。
【0046】
本実施例3においても前記実施例1,2と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0047】
1 椅子
2 フレーム
17 背取付部(取付部)
18 取付溝
20 抑え部
30 張地構成部材
31 形状保持部材
32 クッション材
33 表張地(張地)
35 突出部
37 線材