(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073795
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤、抗ウイルス製品、及び抗ウイルス性処理液
(51)【国際特許分類】
A01N 59/16 20060101AFI20230519BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230519BHJP
A61K 33/244 20190101ALI20230519BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20230519BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20230519BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230519BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20230519BHJP
A61L 15/18 20060101ALI20230519BHJP
A61L 29/10 20060101ALI20230519BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A01N59/16 Z
A01P1/00
A61K33/244
A61K33/24
A61Q15/00
A61K8/19
A61K33/26
A61L15/18 100
A61L15/18 110
A61L29/10
A61P31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186481
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】寺田 暁
(72)【発明者】
【氏名】狩野 朋未
(72)【発明者】
【氏名】小林 文人
(72)【発明者】
【氏名】吉住 渉
(72)【発明者】
【氏名】山田 厚
【テーマコード(参考)】
4C081
4C083
4C086
4H011
【Fターム(参考)】
4C081AA01
4C081AA12
4C081AC08
4C081CG08
4C081DC01
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB231
4C083AB232
4C083BB48
4C083CC01
4C083CC17
4C083EE09
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA05
4C086HA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4H011AA04
4H011BB18
(57)【要約】
【課題】環境汚染度が低く、安全性にも優れた抗ウイルス剤、当該抗ウイルス剤を含む抗ウイルス層を備える抗ウイルス製品、及び当該抗ウイルス剤を含む抗ウイルス性処理液を提供すること。
【解決手段】希土類元素、鉄、及び酸素を含む希土類フェライトを、抗ウイルス剤として用いる。具体的には、ランタン、プラセオジム、ネオジム、及びイットリウムからなる群より選択される希土類元素、鉄、及び酸素を含む希土類フェライトを、主成分として用いて抗ウイルス剤とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタン、プラセオジム、ネオジム、及びイットリウムからなる群より選択される希土類元素、鉄、及び酸素を含む希土類フェライトを主成分とする抗ウイルス剤。
【請求項2】
前記希土類フェライトは、下記式(1)で表される、請求項1に記載の抗ウイルス剤。
Ln2xFe2(1-x)O3 (1)
(式(1)中、Lnは、ランタン、プラセオジム、ネオジム、及びイットリウムからなる群より選択される希土類元素であり、0<x<1である。)。
【請求項3】
前記式(1)中のxは、0.45以上1.00未満の数である、請求項2に記載の抗ウイルス剤。
【請求項4】
前記式(1)中のxは、0.65以上0.85以下の数である、請求項2に記載の抗ウイルス剤。
【請求項5】
前記希土類元素は、ランタンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
【請求項6】
エンベロープウイルス用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
【請求項7】
ノンエンベロープウイルス用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤を含む、抗ウイルス製品。
【請求項9】
基体、及び抗ウイルス層を含む、抗ウイルス製品であって、
前記抗ウイルス層は、前記抗ウイルス剤を含む層である、
請求項8に記載の抗ウイルス製品。
【請求項10】
前記抗ウイルス層は、樹脂を更に含む、請求項9に記載の抗ウイルス製品。
【請求項11】
電化製品、食品衛生製品、建装材、インテリア、繊維製品、日用雑貨品、化粧品、医療用具からなる群より選択される、請求項8~10のいずれか一項に記載の抗ウイルス製品。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤を含む、抗ウイルス性処理液。
【請求項13】
樹脂、及び溶剤を更に含む、請求項12に記載の抗ウイルス性処理液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス剤、当該抗ウイルス剤を含む抗ウイルス層を備える抗ウイルス製品、及び当該抗ウイルス剤を含む抗ウイルス性処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生性の観点から、抗菌加工が施された種々のものが流通している。消費者が直接使用するものに限らず、例えば、建物の外壁、内壁、建材、エアフィルター、パッキン等についても、抗菌のニーズは高まっている。
【0003】
抗菌効果を発現する薬剤としては、フェノール系、有機スズ系、トリアジン系、ハロゲン化スルホニルピリジン系、キャプタン系、有機銅系、クロルナフタリン系、クロロフェニルピリタジン系等の化合物が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、抗菌効果を発現するイオンとして、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等が知られている。例えば、銀、銅、亜鉛等の金属粉、又はその合金や化合物を、担体に保持させた態様とし、微量のこれら金属イオンを溶出させることで、その毒性を利用する。特許文献2には、カルボキシル基含有ポリマーと金属化合物とから形成されたカルボン酸金属塩が分散された、消臭及び抗菌・抗かび性を有する分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-17249号公報
【特許文献2】特開平2-288804号公報
【特許文献3】特開2005-272320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近の新型コロナウイルスの感染拡大など、人体に大きな影響を及ぼすウイルスが問題となっている。このため、抗ウイルス効果を発現させる抗ウイルス剤には、強い要請があった。
【0007】
ところで、近年、環境汚染度が低く、安全性にも優れた防藻剤として、フェライト化合物が提案されている。例えば、特許文献3には、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、及びイットリウム(Y)から選択される希土類元素、鉄、及び酸素を含むオルソフェライトを主成分とする防藻用添加剤、これを用いた防藻性塗料、及び該塗料を基材表面に塗布した防藻製品が開示されている。
【0008】
特許文献3においては、防藻効果を材料の磁性と関連付けて考えており、保磁力が小さく、植物の固有磁場に近い磁力を示す、希土類酸化物:Fe2O3=1:1(モル比)のオルソフェライトが、防藻用添加剤として最も好ましいと説明されている。なお、特許文献3においては、オルソフェライトの抗ウイルス効果については、検討していない。
【0009】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、環境汚染度が低く、安全性にも優れた抗ウイルス剤、当該抗ウイルス剤を含む抗ウイルス層を備える抗ウイルス製品、及び当該抗ウイルス剤を含む抗ウイルス性処理液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、希土類元素、鉄、及び酸素を含む希土類フェライトは、環境汚染度が低く、安全性にも優れた抗ウイルス剤となりうることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0011】
《態様1》
ランタン、プラセオジム、ネオジム、及びイットリウムからなる群より選択される希土類元素、鉄、及び酸素を含む希土類フェライトを主成分とする抗ウイルス剤。
《態様2》
前記希土類フェライトは、下記式(1)で表される、態様1に記載の抗ウイルス剤。
Ln2xFe2(1-x)O3 (1)
(式(1)中、Lnは、ランタン、プラセオジム、ネオジム、及びイットリウムからなる群より選択される希土類元素であり、0<x<1である。)。
《態様3》
前記式(1)中のxは、0.45以上1.00未満の数である、態様2に記載の抗ウイルス剤。
《態様4》
前記式(1)中のxは、0.65以上0.85以下の数である、態様2に記載の抗ウイルス剤。
《態様5》
前記希土類元素は、ランタンである、態様1~4のいずれか一態様に記載の抗ウイルス剤。
《態様6》
エンベロープウイルス用である、態様1~5のいずれか一態様に記載の抗ウイルス剤。
《態様7》
ノンエンベロープウイルス用である、態様1~5のいずれか一態様に記載の抗ウイルス剤。
《態様8》
態様1~7のいずれか一態様に記載の抗ウイルス剤を含む、抗ウイルス製品。
《態様9》
基体、及び抗ウイルス層を含む、抗ウイルス製品であって、
前記抗ウイルス層は、前記抗ウイルス剤を含む層である、
態様8に記載の抗ウイルス製品。
《態様10》
前記抗ウイルス層は、樹脂を更に含む、態様9に記載の抗ウイルス製品。
《態様11》
電化製品、食品衛生製品、建装材、インテリア、繊維製品、日用雑貨品、化粧品、医療用具からなる群より選択される、態様8~10のいずれか一態様に記載の抗ウイルス製品。
《態様12》
態様1~7のいずれか一態様に記載の抗ウイルス剤を含む、抗ウイルス性処理液。
《態様13》
樹脂、及び溶剤を更に含む、態様12に記載の抗ウイルス性処理液。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、環境汚染度が低く、安全性にも優れた、抗ウイルス剤が提供される。
【0013】
また、本発明の抗ウイルス剤は、その周囲についても、抗ウイルス効果を発現する。すなわち、本発明の抗ウイルス剤が直接接触していない部分にも、抗ウイルス効果を波及させることができる。このため、本発明の抗ウイルス剤を用いた抗ウイルス製品を作製する際に、製品となる物品全体に抗ウイルス剤を存在させなくとも、抗ウイルス効果を発現させることができる。
【0014】
また、本発明の抗ウイルス剤は、水や有機溶剤等への分散性に優れる。このため、様々な媒体に分散させた分散液等を作製することができる。したがって、本発明の抗ウイルス剤を含む分散液等を、基体となる物品等に塗布して抗ウイルス剤を含む層を形成することにより、これまで抗ウイルス剤が適用できなかった材料や、複雑な形状を有する場所等に、抗ウイルス効果を付与することが可能となる。また、本発明の抗ウイルス剤を含む分散液は、抗ウイルススプレー等の構成要素として用いることができる。
【0015】
また、本発明の抗ウイルス剤を含む分散液やジェルをそのまま用いて、人体や対象物に散布や塗布を行うことで、即時に抗ウイルス効果を発現させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例及び比較例における抗ウイルス評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《抗ウイルス剤》
本発明の抗ウイルス剤は、ランタン、プラセオジム、ネオジム、及びイットリウムからなる群より選択される希土類元素、鉄、及び酸素を含む希土類フェライトを主成分とするものである。
【0018】
希土類元素としては、ランタン、プラセオジム、ネオジムからなる群より選択され、これらの少なくとも1種が主成分となっている混合希土類であってもよい。
【0019】
本発明者らは、希土類フェライトと、その抗ウイルス効果について詳細に検討した。その結果、希土類フェライトは、高い抗ウイルス効果を発現することを見出した。
【0020】
本発明の抗ウイルス剤の主成分となる希土類フェライトは、例えば、下記式(1)で表されるものであってよい。
Ln2xFe2(1-x)O3 (1)
(式(1)中、Lnは、ランタン、プラセオジム、ネオジム、及びイットリウムからなる群より選択される希土類元素であり、0<x<1である。)。
【0021】
本発明の抗ウイルス剤は、上記式(1)の構造を有していれば、どのような形態であってもよい。例えば、全体が均一な組成である固溶体を形成していてもよいし、LnFeO3相とLn2O3相との混合物であってもよいし、均一組成の固溶体とLnFeO3相とLn2O3相との混合物であってもよい。また、これら以外の相を含んでいてもよい。
【0022】
式(1)中のxは、0<x<1であれば特に限定されるものではないが、例えば、0.45以上、0.50以上、0.55以上、0.60以上、0.65以上、0.70以上、又は0.75以上であってもよく、1.00未満、0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、又は0.60以下であってもよい。
【0023】
上記式(1)中のxは、典型的には、例えば、0.45以上1.00未満の数であってよく、更には、0.65以上0.85以下であってよい。
【0024】
式(1)中の希土類(Ln)は、抗ウイルス性及びコストの観点から、特に、ランタンであってよく、したがって本発明の抗ウイルス剤は、ランタンフェライトであってよい。
【0025】
<適用ウイルス>
本発明の抗ウイルス剤を適用可能なウイルスは、特に限定されるものではない。本発明の抗ウイルス剤は、エンベロープウイルス用であっても、ノンエンベロープウイルス用であってもよく、いずれのタイプのウイルスに対しても効果を発現する。
【0026】
なかでは、エンベロープウイルスに対しての効果が大きく、例えば、2019年に発生した新型コロナウイルス(COVID-19)に対しても適用可能である。
【0027】
<抗ウイルス剤の製造方法>
本発明の抗ウイルス剤の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、希土類源と鉄源とを所定の割合で含有する混合物に、適当な応力を印加して粉砕混合した後、焼成することにより、製造されてよい。ここで印加される応力としては、例えば、摩擦力、せん断力、ずり応力、衝撃力等であってよい。希土類源と鉄源との混合物に、このような応力を印加する方法としては、例えば、ボールミル中で湿式粉砕する方法等が挙げられる。
【0028】
希土類源としては、例えば、所望の希土類元素の酸化物を使用してよい他、バストネサイト、モナザイト、ゼノタイム等を使用してよい。
【0029】
希土類元素としては、得られる希土類フェライトの優れた抗ウイルス性、及びコストの観点から、ランタンを用いることが好ましい。中でも、La2O3を用いれば、効果が高く、比較的コストが安価なランタンフェライトを製造することができる。
【0030】
鉄源としては、FeO、Fe3O4、Fe2O3等の酸化物;FeOOH、フェリヒドライト、シュベルマンライト等のオキシ酸化物;Fe(OH)2、Fe(OH)3等の水酸化物;等を使用してよい。
【0031】
これらの中で、鉄源としてFeOOHを用いれば、Fe2O3等と比較して反応性が高いため、低温での焼成が可能となり、また、Fe2O3等と比較して粒経の小さい抗ウイルス剤を製造することができる。
【0032】
希土類源と鉄源との混合物の粉砕混合を、湿式粉砕にて実施する場合には、液状媒体として、例えば、水、アルコール等を使用してよい。希土類源と鉄源との混合物を粉砕混合した後は、必要に応じて、加熱乾燥等の適宜の方法によって液状媒体を除去し、その後に焼成を実施してもよい。
【0033】
焼成温度は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。例えば、500℃以上、600℃以上、700℃以上、800℃以上、900℃以上、又は1,000℃以上、かつ、例えば、1,300℃以下、1,200℃以下、1,100℃以下、又は1,000℃以下の温度において、実施してよい。
【0034】
焼成時間についても、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、6時間以上、8時間以上、12時間以上、又は15時間以上、かつ、72時間以下、48時間以下、36時間以下、24時間以下、18時間以下、又は15時間以下の時間で、実施してよい。
【0035】
焼成時の周囲雰囲気は、酸化性雰囲気であってよく、例えば、空気中で焼成してよい。
【0036】
焼成後、必要に応じて、適宜の方法で粉砕、分級等を行うことにより、本発明の抗ウイルス剤を得ることができる。
【0037】
<抗ウイルス剤の使用形態>
本発明の抗ウイルス剤の使用形態は、特に限定されるものではない。例えば、粉末状態、含侵状態、塗膜状態、分散状態にて使用することが可能である。その使用量についても、特に限定されるものではなく、使用形態に応じて適宜設定することができる。
【0038】
分散状態で用いる場合には、分散媒体としては特に限定されるものではない。分散媒体は、液体であっても固体であってもよく、例えば液体の場合には、分散液とすることができる。また、固体の場合には、樹脂等をマトリクスとして用いて、抗ウイルス剤が分散している成形体とすることができる。
【0039】
《抗ウイルス製品》
また別の本発明は、本発明の抗ウイルス剤を含む抗ウイルス製品である。
【0040】
抗ウイルス製品の態様は、本発明の抗ウイルス剤を含むものであれば、特に限定されるものではない。例えば、固体であっても、液体であってもよく、中間的な形態であるゲル状であってもよい。
【0041】
本発明の抗ウイルス剤を含む抗ウイルス製品の種類は、特に限定されるものではなく、あらゆる種類の製品であってよい。例えば、電化製品、食品衛生製品、建装材、インテリア、繊維製品、日用雑貨品、化粧品、医療用具からなる群より選択されるものであってよい。また、公共交通機関や、駅や空港等の公共の場所において、不特定多数が接触する機会のある製品であってよい。
【0042】
電化製品としては、特に限定されるものではないが、例えば、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、食器乾燥機、電子レンジ、炊飯器、ウォーターサーバー、携帯端末、レジスター、計算機、キーボード、加湿器等が挙げられる。
【0043】
食品衛生製品としては、特に限定されるものではないが、例えば、食品保存袋、保存容器、弁当容器、まな板、包丁、商品加工作業台、箸、衛生作業着、食品加工手袋、浄水器、食品包装材、水筒等が挙げられる。
【0044】
建装材、インテリアとしては、特に限定されるものではないが、例えば、板床材、壁紙、パーティション、手すり、マット、カーテン、排水トラップ、換気ダクト、トイレ部材、内装用合成皮革、化粧板等が挙げられる。
【0045】
繊維製品としては、特に限定されるものではないが、例えば、肌着、寝装具、白衣、モップ、インソール、帽子、タオル、マスク、空調機用フィルター等が挙げられる。
【0046】
日用雑貨品としては、特に限定されるものではないが、例えば、スポンジクリーナー、台ふきん、ブラシ、室内消臭剤、風呂桶、健康器具等が挙げられる。
【0047】
化粧品、医療用具としては、特に限定されるものではないが、例えば、制汗消臭剤、化粧品、防腐剤、創傷被覆材、絆創膏、テーピングテープ、カテーテル等が挙げられる。
【0048】
不特定多数が接触する機会のある公共の場所にある製品としては、特に限定されるものではないが、例えば、電車、飛行機、バス、タクシー等の公共交通機関や、駅や空港等の公共の場所にある製品が挙げられる。具体的には、吊革、座席、手すり、改札、タッチパネル等が挙げられる。
【0049】
本発明の抗ウイルス剤を含む抗ウイルス製品は、基体、及び抗ウイルス層を備える抗ウイルス製品であってもよい。具体的には、基体、及び抗ウイルス層を含み、抗ウイルス層が、本発明の抗ウイルス剤を含む層となっている。
【0050】
<基体>
抗ウイルス製品における基体は、抗ウイルス性を付与すべきあらゆる物品であってよい。あらゆる材料からなる、あらゆる形状を有する物品であって、抗ウイルス性が求められるあらゆる物品であってよい。
【0051】
<抗ウイルス層>
抗ウイルス製品における抗ウイルス層は、本発明の抗ウイルス剤を含む層であれば、特に限定されるものではない。例えば、本発明の抗ウイルス剤の粉末を樹脂等にブレンドして、押出コーティング等により作製した層であってもよいし、後記する本発明の抗ウイルス性処理液の硬化物であってよい。
【0052】
抗ウイルス層には、本発明の抗ウイルス剤以外に、任意の成分が含まれていてもよい。任意の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂、結着剤、抗ウイルス以外の機能を発現させるための添加剤等が挙げられる。
【0053】
抗ウイルス層の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、1μm以上1mm以下程度であってよい。
【0054】
抗ウイルス層を、抗ウイルス性処理液等によって作製する場合には、その塗工量は、単位面積当たりの溶剤除去後の乾燥質量として、例えば、5g/m2以上、10g/m2以上、15g/m2以上、20g/m2以上、又は25g/m2以上であってよく、例えば、200g/m2以下、150g/m2以下、120g/m2以下、100g/m2以下、80g/m2以下、又は70g/m2以下であってよい。
【0055】
抗ウイルス製品は、基体、及び抗ウイルス層以外の、その他の構成を含んでいてもよい。その他の構成としては、例えば、その他の層が挙げられ、その他の層の配置場所は、基体の外側、基体と抗ウイルス層の間、抗ウイルス層の外側のいずれであってもよい。
【0056】
その他の層としては、例えば、基体に形成するプライマー層が挙げられる。プライマー層上に抗ウイルス層を形成することで、密着性を向上させることができる。
【0057】
また、抗ウイルス層の外側に、更に樹脂等を積層して被覆することで、長期使用による抗ウイルス剤の脱落や漏出による、抗ウイルス効果の低下を抑制してもよい。
【0058】
更に、抗ウイルス層の外側に、色相顔料層等を積層することで、抗ウイルス製品の色デザインの自由度を増加させてもよく、また、他の機能性層を積層したり複合化したりして、抗ウイルス以外の性能を備えさせてもよい。
【0059】
《抗ウイルス性処理液》
また別の本発明は、本発明の抗ウイルス剤を含む抗ウイルス性処理液である。抗ウイルス性処理液は、本発明の抗ウイルス剤の他に、樹脂及び溶剤や分散媒等の液体媒体等、他の成分を含んでいてもよい。
【0060】
<樹脂>
本発明の抗ウイルス性処理液に任意に含まれる樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等であってよい。
【0061】
<液体媒体>
本発明の抗ウイルス性処理液に含まれる液体媒体は、特に限定されるものではなく、例えば、水、アルコール、ケトン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル等から選択されてもよい。
【0062】
<抗ウイルス剤の含有量>
本発明の抗ウイルス性処理液における抗ウイルス剤の含有量は、高い抗ウイルス性能を発現する観点から、処理液中に樹脂が含まれる場合には、該処理液中の樹脂と抗ウイルス剤との合計に対する抗ウイルス剤の割合として、例えば1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、とりわけ好ましくは30質量%以上であってもよく、良好な塗布性を得る観点から、例えば80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、とりわけ好ましくは30質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。
【0063】
<抗ウイルス性処理液の製造方法>
本発明の抗ウイルス性処理液の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、市販の合成樹脂処理液と、本発明の抗ウイルス剤とを、所定の割合で混合することにより、調製されてよい。
【0064】
<用途>
本発明の抗ウイルス性処理液は、上記した本発明の抗ウイルス製品における抗ウイルス層の形成に用いることができる。また、例えば、目地材(タイル、コンリート、煉瓦等の隙間の充填材)、シーリング材、コーキング材、接着剤、吹き付け剤、等として用いてもよい。また、本発明の抗ウイルス剤が液体媒体に分散された分散液は、抗ウイルススプレー等の構成要素として用いることができる。分散液をそのまま用いて、人体や対象物に散布や塗布を行うことで、即時に抗ウイルス効果を発現させることも可能である。
【実施例0065】
《実施例1~2、比較例1~2》
<ランタンフェライトの合成>
粉砕メディアとして10mmφのアルミナ球を使用するボールミル中に、0.35モル部のLa2O3、0.3モル部のFeOOH、及び水を仕込み、5時間粉砕混合した。得られた粉砕物を、300℃にて15時間乾燥した後、回転式粉砕機で解砕した。得られた解砕物を焼成した後、ハンマーミルで粉砕することにより、La:Fe=70:30(モル比)のランタンフェライト(式La1.4Fe0.6O3)を得た。
【0066】
<抗ウイルス評価(ウイルス力価の減少値の測定)>
得られたランタンフェライトの抗ウイルス評価(ウイルス力価の減少値の測定)を、株式会社食環境衛生研究所にて実施した。抗ウイルス評価では、経時によるSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)のウイルス力価の減少値を測定した。SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)は、人由来分離株を用いた。具体的には、唾液よりvero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)を用いて分離培養後、リアルタイムPCRを用いてSARS-CoV-2遺伝子の増幅の確認(厚生労働省通知法)を行ったウイルス株を用いた。
【0067】
(予備試験)
本試験実施前に、作製したランタンフェライト1gを9mLの生理食塩液で懸濁し、又は0.1gを9.9mLの生理食塩液で懸濁し、それぞれを0.22μmのフィルターでろ過したものを10倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、37℃、5%CO2下で5日間培養した。培養細胞が正常な形状を示さなかった場合には、資材による細胞毒性有りと判定し、本試験では細胞毒性が確認された希釈倍率は試験判定から除外することとした。
【0068】
その結果、10倍希釈液では細胞毒性は確認されなかった。このため、本試験における検出限界は101.5TCID50/mLとした。
【0069】
(本試験)
実施例1~2、比較例1~2の混合液は下記のように調整し、それぞれの混合液を、室温(25℃)にて所定の時間、振とう状態とした:
・実施例1:ランタンフェライト1gに9mLのウイルス液を添加した。
・比較例1:ランタンフェライトを添加せず、1mLの生理食塩液に9mLのウイルス液を添加した。
・実施例2:ランタンフェライト0.1gに9.9mLのウイルス液を添加した。
・比較例2:ランタンフェライトを添加せず、0.1mLの生理食塩液に9.9mLのウイルス液を添加した。
【0070】
(1)実施例1及び実施例2の混合液については、感作時間を、1時間、及び24時間とした。比較例1及び比較例2の混合液については、感作時間を、0時間、1時間、24時間とした。それぞれの感作が終了した混合液を、0.22μmのフィルターでろ過した。
(2)それぞれのろ液を10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に、100μLずつ接種した。
(3)それぞれの細胞にて、37℃、5%CO
2下で5日間培養した後に顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。結果を表1及び
図1に示す。
(4)感作時間ごとに、下記式により、比較例に対する実施例の減少率(%)をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
減少率(%)=[比較例の濃度-実施例の濃度]/[比較例の濃度]×100
【0071】
【0072】
<考察>
比較例1及び比較例2は、試験開始から開始後24時間までの間に、時間経過によるウイルス力価の緩やかな減少が見られた。実施例1は、試験開始1時間後には検出限界未満となり、その減少率は99%以上であった。実施例では、試験開始1時間後は103.7TCID50/mLであったが、24時間後には検出限界未満となり、その減少率は試験開始1時間後及び24時間後の両者ともに99%以上であった。