(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073829
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】衣料用積層体および感染防止衣料
(51)【国際特許分類】
D06M 17/00 20060101AFI20230519BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20230519BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20230519BHJP
D03D 25/00 20060101ALI20230519BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20230519BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20230519BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20230519BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20230519BHJP
A41D 31/102 20190101ALI20230519BHJP
A41D 31/30 20190101ALI20230519BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20230519BHJP
【FI】
D06M17/00 L
B32B5/26
D03D15/283
D03D25/00 101
D04B21/16
A41D13/12 109
A41D31/02 A
A41D31/00 503F
A41D31/00 502B
A41D31/00 502C
A41D31/102
A41D31/30
A41D31/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186525
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西山 武史
(72)【発明者】
【氏名】樋口 眞矢
(72)【発明者】
【氏名】高月 珠里
【テーマコード(参考)】
3B011
4F100
4L002
4L032
4L048
【Fターム(参考)】
3B011AA01
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4F100AK48A
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4L048CA11
4L048CA15
4L048DA01
4L048EA01
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】十分な透湿防水性に加え、軽量性を有する衣料用積層体を提供する。また、前記積層体を用いて、血液やウイルスをバリアする防水性に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し、動作をする際にも十分な軽量性を有することにより動きやすく、着用快適性に優れた感染防止衣料を提供する。
【解決手段】織物、乾式膜、湿式膜、接着剤層および編物をこの順に積層してなる積層体であって、織物はカバーファクターが20~30で、特定の単糸繊度および総繊度を有するポリアミド系繊維で構成され、編物は目付けが10~30g/m2であり、特定の単糸繊度および総繊度を有するポリアミド系繊維で構成され、積層体の目付けが130g/m2以下である衣料用積層体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物、乾式膜、湿式膜、接着剤層および編物をこの順に積層してなる積層体であって、
織物は、カバーファクターが20~30であり、織物を構成する経糸および緯糸は、総繊度が20~55dtex、単糸繊度が0.5~3.0dtexのポリアミド系繊維、
編物は、目付けが10~30g/m2であり、編物を構成する糸は、総繊度が5~30dtex、単糸繊度が1.0~5.0dtexのポリアミド系繊維であり、
積層体の目付けが130g/m2以下である、
衣料用積層体。
【請求項2】
織物がリップストップ組織の織物である、請求項1記載の衣料用積層体。
【請求項3】
JIS L 1099 A-1法による透湿度が5000g/m2/24h以上である請求項1または2に記載の衣料用積層体。
【請求項4】
初期のウイルスバリア性がASTM F1670-08B法の試験に合格し、
初期の人工血液バリア性がASTM F1671-07B法の試験に合格する請求項1~3のいずれかに記載の衣料用積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の衣料用積層体を用いてなる感染防止衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液やウイルスに対するバリア性を有し、かつ透湿防水性に優れる衣料用積層体および感染防止衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、メディカル分野において医師、看護師、救急隊員などの医療従事者がウイルスなどの有害物質から身体を守るために感染防護衣が用いられている。感染防護衣には高いウイルスバリア性や血液バリア性を有するだけでなく、着用快適性の観点から、発汗に伴って発生する熱・蒸れを布帛外へ効率的に放出できる高い透湿性も求められる。ここで、高いウイルスバリア性や血液バリア性を有するためには、それに見合うだけの高い防水性能を有することが求められる。所望の防水性が達成されない場合、血液、体液などが浸透しやすくなり、ひいては細菌、ウイルスなどに接触する機会も増えることになる。そして、ウイルスバリア性や血液バリア性、すなわち防水性と透湿性を併せ持つ布帛としては、基材、樹脂膜および接着層が積層された血液・ウイルスバリア性積層布帛が従来から知られている。
例えば、特許文献1には、織物、微多孔膜、接着剤層および編物が、この順に積層された布帛で、表地用繊維および裏地用布帛は共にポリエステル系繊維からなる医療用衣料用積層体が記載されている。また、特許文献2には、表地、接着剤、防水膜、接着剤および裏地の順で積層一体化されてなる生地とシームテープまたはリペアパッチを有する医療用外衣で、前記表地および裏地はいずれもポリエステル布帛であり、前記接着剤はいずれもポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主体とする接着剤であり、前記防水膜はポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主体とするポリウレタン膜である医療用外衣が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-46576号公報
【特許文献2】特開2017-35826公報
【0004】
従来より感染防護衣としては、使い捨てを前提とするディスポーザブルタイプのものと、使用の都度洗濯を行いながら複数回利用することを前提とするリユーザブルタイプのものがある。
特にリユーザブルタイプのものにおいては、洗濯耐久性が要求されることから生地の厚みが厚く、特に夏場の着用においては蒸れが生じ、着用感や作業性に劣るものであった。
近年、地球温暖化により気温が上昇している中で、夏場の着用における蒸れを防ぎ、着用感を向上させた感染防護衣の要望が高まっている。
【0005】
特許文献1に開示された医療用積層体は、透湿性を付与することにより着用快適性を付与することを考慮したものではあるが、夏場の着用においては、蒸れが生じやすく、着用感にも劣るものであった。また、特許文献2に開示された医療用外衣は、医療用外衣を構成する層の数が多いため、軽量性に劣り、夏場の着用においては、蒸れが生じやすく、着用感にも劣るものであった。
夏場の着用における蒸れを防ぎ、着用感を向上させるには、構成する生地が十分な透湿防水性を有しながら、軽量であることが求められるが、十分な軽量性と透湿防水性の両性能を満足する感染防護衣は未だ提案されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、十分な透湿防水性を有しながらも軽量である衣料用積層体であって、夏場の着用においても、血液やウイルスをバリアする性能に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し、かつ動作しやすい軽量性も兼ね備えた感染防止衣料を得ることができる、衣料用積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の(イ)~(ホ)を要旨とするものである。
【0008】
(イ)織物、乾式膜、湿式膜、接着剤層および編物をこの順に積層してなる積層体であって、
織物は、カバーファクターが20~30であり、織物を構成する経糸および緯糸は、総繊度が20~55dtex、単糸繊度が0.5~3.0dtexのポリアミド系繊維、
編物は、目付けが10~30g/m2であり、編物を構成する糸は、総繊度が5~30dtex、単糸繊度が1.0~5.0dtexのポリアミド系繊維であり、
積層体の目付けが130g/m2以下である、
衣料用積層体。
(ロ)織物がリップストップ組織の織物である、(イ)記載の衣料用積層体。
(ハ)JIS L 1099 A-1法による透湿度が5000g/m2/24h以上である(イ)または(ロ)に記載の衣料用積層体。
(ニ)初期のウイルスバリア性がASTM F1670-08B法の試験に合格し、
初期の人工血液バリア性がASTM F1671-07B法の試験に合格する(イ)~(ハ)のいずれかに記載の衣料用積層体。
(ホ)(イ)~(ニ)のいずれかに記載の衣料用積層体を用いてなる感染防止衣料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の衣料用積層体は、軽量でありながら、透湿防水性に優れ、血液バリア性及びウイルスバリア性にも優れる。そのため、本発明の衣料用積層体を用いることにより、夏場の着用においても、蒸れが生じにくく、着用感や作業性にも優れる感染防止衣料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の衣料用積層体は、織物、乾式膜、湿式膜、接着剤層および編物をこの順に積層したものであり、衣料用途に使用されるものである。なお、本発明では、衣料用積層体を「本発明積層体」、乾式膜、湿式膜および接着剤層を総称して「樹脂膜」と称することがある。
【0012】
[織物・編物]
本発明における織物および編物について以下に説明する。
【0013】
本発明における織物および編物を構成する繊維は、ポリアミド系繊維である。ポリアミド系繊維としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン56、ナイロンMXD(ポリメタキシリレンアジパミド)などのホモポリマーおよびこれらを主体とする共重合体もしくは混合物からなるものが好ましく用いられる。中でもナイロン6からなる繊維が好ましい。ポリアミド系ポリマーは、ポリエステル系ポリマーと比較して、そのポリマー特性として比重が20%程度軽く、本発明の訴求点のひとつである軽量性という観点から好適であるため、本発明においては、織物および編物を構成する繊維にポリアミド系繊維を用いる。
【0014】
なお、軽量性や透湿防水性の効果を損なわない範囲であれば、ポリアミド系繊維以外の繊維、例えば、ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維などの合成繊維、トリアセテートなどの半合成繊維、綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテートなどのセルロース系繊維が織物や編物中に含まれていてもよい。また、織物や編物には導電糸などの繊維を必要に応じて適宜含有させることができる。
ただし、中でも、織物や編物を構成する繊維として、ポリアミド系繊維は90質量%以上含まれることが好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0015】
ポリアミド系繊維としては、長繊維、短繊維、ステープルヤーンのいずれであってもよく、マルチフィラメント、モノフィラメントのいずれであってもよい。
【0016】
以下に、本発明における織物について説明する。
本発明における織物は、軽量性と透湿防水性の両性能を積層体に付与するために、特定のカバーファクターを満足する、高密度織物であることが必要である。
まず、織物の軽量化を図る上で、経緯糸の単糸繊度および総繊度を適切に選択することが有効である。織物を構成するポリアミド系繊維の単糸繊度は、0.5~3.0dtexであり、中でも1.0~2.5dtexがより好ましい。ポリアミド系繊維の総繊度は、20~55dtexであり、中でも20~50dtexがより好ましい。単糸繊度が0.5dtex未満であったり、総繊度が20dtex未満であると、単糸繊度や総繊度が細すぎて織物の強度が不十分なものとなる。一方、単糸繊度が3.0dtexを超えたり、総繊度が55dtexを超えると、単糸繊度や総繊度が太くなり、高密度の織物が得られず、織物に積層した樹脂膜が滲み出したり、軽量性に優れた織物とすることができない。
【0017】
本発明における織物は、透湿防水性や血液、ウイルスバリア性の点からカバーファクター(CF)が20~30であることが好ましく、21~28がより好ましく、23~26の高密度織物であることが特に好ましい。織物のCFが20未満であれば織物が高密度を有するものとならず、織物と樹脂膜との接着性に劣るものとなったり、織物に積層した樹脂膜が滲み出したりすることがあり、また、透湿防水性や血液バリア性、ウイルスバリア性に劣るものとなる。一方、織物のCFが30を超えると、織物が高密度になりすぎて透湿性に劣るものとなり、また、本発明積層体を感染防止衣料などとした場合に風合いが硬く動きづらいものとなる。ここで、カバーファクター(CF)とは、織編物の粗密を数値化したものであり、織物の場合、以下の式により算出される。
カバーファクター(CF)=A+B
ただし、A、Bは下記式により算出される数値である。
A={(織物の経糸の密度(本/2.54cm)÷√経糸の番手)+(織物の緯糸の密度(本/2.54cm)÷√緯糸の番手)}÷2
B={(織物の経糸の密度(本/2.54cm)÷√経糸の番手)+(織物の緯糸の密度(本/2.54cm)÷√緯糸の番手)}×(1÷一完全組織の数)
【0018】
本発明における織物は、目付けが15~80g/m2であることが好ましい。目付けを15g/m2以上とすることで、本発明積層体が引張強度や破裂強度や耐水圧に優れたものとなる。かかる観点から、織物の目付けは、20g/m2以上がより好ましく、30g/m2以上がさらに好ましい。一方、織物の目付けを80g/m2以下とすることで、本発明積層体を感染防止衣料などにした場合、感染防止衣料がより軽量となり、その着用快適性が向上する。かかる観点から、織物の目付は、70g/m2以下がより好ましく、50g/m2以下がさらに好ましい。ここで、目付けは、JIS L 1096(2010)の「8.3.2 標準状態における単位面積当たりの質量」A法により測定する。
【0019】
本発明における織物は、平組織、綾組織などの他、シングルリップ、ダブルリップなどのリップストップ組織などが好ましく採用できる。中でも防水性や血液、ウイルスバリア性、強度、耐久性の観点からリップストップ組織を採用することが好ましい。
【0020】
以下に、本発明における編物について説明する。
【0021】
本発明における編物は、軽量性と透湿防水性の両性能を積層体に付与するために、特定の目付けを満足する、薄地の編物であることが必要である。
【0022】
編物の軽量化を図る上で、編物を構成する繊維の単糸繊度および総繊度を適切に選択することが有効である。本発明における編物を構成する繊維の単糸繊度は、1.0~5.0dtexであり、中でも1.2~4.0dtexが好ましい。単糸繊度が1.0dtex未満になると、単糸繊度が細すぎて透湿性が低下する。一方、単糸繊度が5.0dtexを超えると、単糸繊度が太すぎて編物の目が粗くなることで肌触りが低下したり、樹脂膜が編物表面から露出することで、積層体の耐久性が低下する。
【0023】
本発明における編物を構成する繊維の総繊度は、5~30dtexであり、中でも5~25dtexが好ましい。総繊度が5dtex未満になると、編物と樹脂膜との接着性が低下し、一方、30dtexを超えると、編物の重量が重くなり、軽量性に劣るものとなる。
【0024】
本発明における編物の編密度は30~120コース/2.54cmかつ20~80ウェール/2.54cmが好ましく、40~100コース/2.54cmかつ25~70ウェール/2.54cmがより好ましい。コース密度、ウェール密度がそれぞれ上記範囲内であれば、得られる編物は組織点の粗いものとならず、編物内に空隙が過度に増えることを抑えられる。その結果、該空隙から樹脂膜が滲み出したり、防水性や血液バリア性、ウイルスバリア性の低下を抑えることができる。また、組織点による拘束が強すぎないため、編物として適度な引裂強力や破裂強力を有し、積層体が通気性に優れるものとなる。
【0025】
本発明における編物は、目付けが10~30g/m2である。目付けが10g/m2未満であれば、本発明積層体は引張強度や破裂強度や耐水圧に劣るものとなる。一方、目付けが30g/m2を超えると、本発明積層体を感染防止衣料などにした場合に、感染防止衣料が軽量性が低下し、着用快適性に劣るものとなる。かかる観点から、編物の目付けは、12~30g/m2であることが好ましく、15~27g/m2であることがさらに好ましい。ここで、目付けは、JIS L 1096(2010)の「8.3.2 標準状態における単位面積当たりの質量」A法により測定する。
【0026】
本発明における編物は、経編物としては、例えば、デンビー編、コード編、アトラス編などが挙げられ、緯編物としては、例えば、平編、ゴム編、パール編、スムース編などが挙げられる。とりわけ、トリコット編物は、それ以外の組織を有する編物と比較すると伸縮性が抑えられており、編目空隙が大きくなり過ぎないので好ましい。また、トリコット編物は製編時に長い生機を得ることができ繋ぎ目が少なく、樹脂膜上に均一に積層することができる点でも好ましい。
【0027】
[乾式膜および湿式膜]
次に、本発明における乾式膜および湿式膜について説明する。
本発明の衣料用積層体は、織物と編物の間に樹脂膜が存在する。すなわち、樹脂膜として、乾式膜、湿式膜および接着剤層がこの順に積層されている。
【0028】
乾式膜および湿式膜は、いずれもポリウレタン樹脂から主として構成されることが好ましい。ポリウレタン樹脂は、全樹脂組成物のうち好ましくは80質量%以上の割合で使用される。ポリウレタン樹脂は、一般に防水性のある樹脂膜の形成に適するとされており、本発明では耐湿熱性や各種耐久性をより向上させる観点より、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好適に使用できる。
【0029】
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートと鎖延長剤とを一括に仕込んで反応させるワンショット法、または予めポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させておき、後に鎖延長剤を加えて反応させるプレポリマー法などの方法により得られるものなどが使用できる。
【0030】
ポリカーボネートジオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどのアルキルジオール、2,2-ジメチル-1,プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ペンチル,2プロピル-1,3-プロパンジオールなどの2,2-ジアルキル-1,3-プロパンジオールなどから選択される1種以上のジオールと、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートなどから選択される1種以上の炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られるものなどが使用できる。特に結晶性の抑えられた樹脂は、有機溶剤に対する溶解性が良好で、溶融時における粘性も調製し易く好ましいため、このような樹脂を得るという点から、上記ジオールとしては、2,2-ジアルキル-1,3-プロパンジオールが好ましい。また、上記炭酸ジエステルとしては、オートクレーブ処理に対する耐久性の観点から、ジアリールカーボネートが好ましい。
【0031】
有機ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニールジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが使用できる。中でも、オートクレーブ処理に対する耐久性の観点から、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
【0032】
また、鎖延長剤としては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレンジアミンなどを単独でまたは混合して使用することができる。
【0033】
本発明における乾式膜および湿式膜は、共に微多孔質な構造を呈していることが好ましい。微多孔質な構造は、膜の透湿性を向上させる点で有利となる。また、積層体全体として透湿性をより向上させるために、主要な樹脂膜である湿式膜に無機微粉末を所定量含有させることが好ましい。
【0034】
無機微粉末としては、例えば二酸化珪素、二酸化アルミニウム、または二酸化チタンなどからなる微粉末が使用でき、種類としては、アモルファスのガラス状であって細孔がなく、乾式法で製造されるフュームドタイプのものが好ましい。
【0035】
無機微粉末の平均一次粒子径としては、7~40nm程度が好ましい。7nm以上であれば、透湿性の向上効果が認められる傾向にあり、40nm以内であれば、湿式膜中に大きな孔が形成されにくく、耐水圧性の低下を抑えることができる。
【0036】
無機微粉末は、湿式膜中に3~50質量%含有されていることが好ましく、中でも5~50質量%が好ましい。3質量%以上であれば防水性能を低下させずに透湿性を向上させることができる。一方、50質量%以下であれば、湿式膜の強度を低下させずに洗濯や滅菌処理に対する耐久性を有するものとできる。
また、微多孔膜を形成する際の作業性や製膜コストの点においても有利なものとなる。
【0037】
さらに、本発明では、必要に応じて樹脂膜に第三成分を含有させてもよい。第三成分としては、ポリエステル系樹脂が好ましく、同樹脂を含有させることで、樹脂膜の接着性を高めることができる。このため、大きな負荷が掛かっても層間剥離し難い衣料用積層体とすることができる。特に、乾式膜中にポリエステル系樹脂を含有させることが好ましい。
【0038】
ポリエステル系樹脂としては、樹脂膜の接着性向上に資するものであればどのようなものでも使用できる。具体的には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどから選択される1種以上のジオールと、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン2酸などから選択される1種以上のジカルボン酸との重合反応物などが使用できる。特に、ジオール成分にエチレングリコール及びネオペンチルグリコールを、ジカルボン酸成分にテレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸をそれぞれ適用して、分子量10000~50000程度の非晶質飽和共重合ポリエステル樹脂とすれば、有機溶媒に溶解し易く、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂中の水酸基やイソシアネート基との反応性も良好なことから、好適である。
【0039】
ポリエステル系樹脂は、樹脂膜中に1~10質量%含有されていることが好ましく、3~8質量%がより好ましい。含有量を上記範囲とすることで、透湿性の低下や風合いの硬化、品位低下が生じることなく樹脂膜の接着性をより向上させることができる。特に乾式膜中に1~10質量%のポリエステル系樹脂を含有していることが好ましい。
【0040】
また、本発明では、第三成分として架橋性イソシアネート化合物を用いることも有効である。同化合物を含有させることで、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が架橋し、樹脂膜の強度及び接着性を同時に高めることができる。
【0041】
架橋性イソシアネート化合物としては、トリレン2,4-ジイソアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの他、これらのジイソシアネート類3モルと、活性水素を有する化合物(例えば、トリメチロールプロパン、グリセリンなど)1モルとの付加反応によって得られるトリイソシアネート類などが使用できる。中でも、樹脂膜の接着性をより向上させる観点から、反応性の緩やかな脂肪族系の架橋性イソシアネート化合物が好ましく、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0042】
架橋性イソシアネート化合物は、各樹脂膜すなわち乾式膜、湿式膜及び接着剤層それぞれに1~10質量%程度含有されていることが好ましい。含有量を上記範囲とすることで、樹脂膜の硬化や衣料用積層体の風合いの低下が生じることなく樹脂膜の強度と接着性を共に向上させることができる。
【0043】
さらに、第三成分として、上記ポリエステル系樹脂以外の樹脂、上記架橋性イソシアネート化合物以外の化合物の他、顔料、抗菌剤、消臭剤、難燃剤といった各種機能剤を必要に応じて使用してもよい。これらの含有量としては、樹脂膜全体に対し10質量%以下とすることが好ましい。
【0044】
乾式膜の厚みとしては、透湿性の観点から可能な限り薄いことが好ましく、0.5~3μmの厚みとすることが好ましい。厚みが0.5μm以上であれば、湿式膜と織物との間の接着性が良好となり、工業洗濯や滅菌処理の過程での層間剥離を防ぐことができる。一方、3μm以下であれば、優れた透湿性を発現するとともに、風合いが硬くならず、また軽量性にも優れたものとできる。
【0045】
湿式膜の厚みとしては、12~100μm程度が好ましく、15~60μmがより好ましい。
【0046】
本発明の衣料用積層体では、必要に応じて織物と編物間の任意の場所に任意の膜を設けてもよい。例えば、防水性や防護性などを向上させたい場合には、湿式膜の上に無孔膜を積層するとよい。この場合、無孔膜を構成する樹脂としては、接着性の観点からポリウレタン樹脂が好適である。中でもエーテル系ポリウレタン樹脂は透湿性の点で好ましく、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は耐久性の点で好ましい。ただし、無孔膜を設けると衣料用積層体の透湿性が低下する傾向にあるので、用途、目的などを十分に考慮したうえで無孔膜を設けることが望まれる。
【0047】
[接着剤層]
次に、本発明における接着剤層について説明する。
【0048】
本発明における接着剤層に使用される接着剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂などが挙げられる。また、透湿防水層との相溶性に優れるものであることが好ましく、例えば、微多孔膜を構成する樹脂として、ポリウレタン樹脂を主成分とするものを選定した場合は、ポリウレタン系接着剤からなる接着剤層を採用することが好ましい。ポリウレタン系接着剤は、エーテル系、エステル系、ポリカーボネート系などのいずれの構造のものを使用してもよいが、優れた接着性や耐久性の観点から、好ましくはエーテル系やポリカーボネート系が挙げられる。
【0049】
接着剤層は、膜上に全面状に形成されてもよいが、衣料用積層体の透湿性、風合いなどの観点からパターン状に形成されていてもよい。パターン状の形態としては、特に限定されないが、点状、線状、格子状、市松模様、亀甲模様などがあげられ、基本的に全体に均一に配置されていることが好ましい。
【0050】
また、膜もしくは織編物に対する接着剤層の占有面積としては、全面積に対し25~90%程度が好ましく、40~70%がより好ましい。接着剤層の塗布面積が著しく低いと、剥離性が低下し透湿性が向上する傾向となり、一方、接着剤層の塗布面積が著しく高いと、剥離性が向上し透湿性が低下する傾向となるが、両者のバランスの為に、上記の範囲とすることが好ましい。
【0051】
接着剤層の厚みとしては、一般に5~100μmが好ましく、10~70μmがより好ましく、20~50μmが特に好ましい。接着剤層の厚みが上記範囲であれば、膜や編物との接着性に優れ、耐久性や風合いに優れた積層体が得られる。
【0052】
[衣料用積層体の特性]
次に、本発明の衣料用積層体の特性について説明する。
【0053】
本発明積層体は、JIS L1096(2010)の「8.3.2 標準状態における単位面積当たりの質量」A法により測定する目付けが130g/m2以下であり、125g/m2以下がより好ましい。下限値は限定されないが、85g/m2以上であれば、実用する上で十分な強度を有するものとなるため好ましい。一方、130g/m2を超えると、積層体は重量が重く軽量性に劣るものとなり、本発明積層体を感染防止衣料などとした際に、軽量なものとならず動作のしにくいものとなる。
【0054】
本発明積層体は、JIS L 1099 A-1法(塩化カルシウム法)により測定する透湿度が5000g/m2/24hであることが好ましく、中でも5000~8000g/m2/24hであることが好ましく、5500~7500g/m2/24hであることがより好ましい。また、本発明積層体は、JIS L 1099 B-1法(酢酸カリウム法)により測定する透湿度が14000~18000g/m2/24hであることが好ましく、14200~17500g/m2/24hであることがより好ましい。いずれの測定法であっても透湿度の範囲が上記範囲内であれば、十分な透湿防水性を有するものとなるので、血液やウイルスへのバリア性に優れることに加え、樹脂膜表面が結露しにくく、本発明積層体を感染防止衣料などとした際に着用快適性に優れたものとなる。
【0055】
本発明積層体は、防水性の指標として、JIS L 1092(2009)B法(高水圧法)により測定する耐水圧が100kPa以上であることが好ましく、110kPa以上がより好ましく、さらには120kPa~300kPaであることが好ましい。耐水圧を上記範囲内のものにすることによって、本発明積層体は厚みが大きくなりすぎず軽量性を有するものとなるとともに、優れた防水性を示し、血液やウイルスへの優れたバリア性を有するものとなる。また、微多孔膜の貫通孔を適当数設けることができるため透湿性にも優れたものとできる。
【0056】
本発明積層体の初期の血液バリア性は、ASTM F1670-08B法に記載の試験に合格するものであることが好ましい。上記試験の判定が合格であれば、実用する上で十分な血液バリア性を有するものであり、好ましいと評価できる。なお、初期とは加工上がりで洗濯前の状態を指す。
【0057】
本発明積層体の初期のウイルスバリア性は、ASTM F1671-07B法に記載の試験に合格するものであることが好ましい。上記試験の判定が合格であれば、実用する上で十分なウイルスバリア性を有するものであり、好ましいと評価できる。なお、初期とは加工上がりで洗濯前の状態を指す。
【0058】
[衣料用積層体の製造方法]
次に、本発明の衣料用積層体を得るための好ましい方法について述べる。
【0059】
まず、乾式製膜法に準じて乾式膜を形成する。すなわち、織物の片面に乾式膜形成用樹脂溶液を塗布し、乾燥することにより乾式膜を形成する。
【0060】
乾式膜は、湿式膜と織物とを貼り合わせる接着剤のような役割を果たすものである。すなわち、乾式膜を設けることで、織物や編物と樹脂膜とを強固に接着させることができ、層間剥離し難い衣料用積層体とすることができる。
【0061】
また、乾式膜は、バリアのような役割も果たす。すなわち、乾式膜を設けることで、後述する湿式膜形成用樹脂溶液が織物内部へ浸透するのを抑えることができる。これにより、織物や編物のレベリング性が上がり、衣料用積層体の品位、風合いなどが向上する。
【0062】
さらに、乾式膜を設けることで、衣料用積層体の防水性をより高めることもできる。ただし、乾式膜を設けることは、一般に透湿性の点で不利となる傾向にある。このため、膜としては上記の通り可能な限り薄いことが好ましく、後述する質量範囲で製膜することが好ましい。薄い膜とすることは、微多孔質な構造を具現するうえでも好ましい。
【0063】
樹脂溶液を塗布する際は、形成される乾式膜の質量が好ましくは0.5~10g/m2、より好ましくは1~5g/m2となるように、予め固形分濃度、塗布量などが適宜調整された樹脂溶液を用いることが好ましい。乾式膜の質量が0.5g/m2未満になると、湿式膜と織編物との間の接着性が十分に向上しない傾向にあり、工業洗濯や滅菌処理の過程で衣料用積層体が層間剥離する傾向にあるため、好ましくない。一方、10g/m2を超えると、製膜時に乾式膜形成用樹脂溶液が織物内部に浸透し、衣料用積層体の風合いが硬くなる傾向にある他、乾式膜の構造が実質的に無孔質なものとなり、衣料用積層体の透湿性が低下する傾向にあるため、好ましくない。
【0064】
乾式膜形成用樹脂溶液は、主成分となる樹脂と、必要に応じて無機微粒子や任意成分の第三成分とを、有機溶媒に溶解または分散することにより調製することができる。有機溶媒としては、乾燥効率の観点から、メチルエチルケトン、トルエンなど揮発性を有する溶媒が好ましい。
【0065】
乾式膜形成用樹脂溶液の塗布は、ナイフコータなどを用いて行えばよい。そして、乾燥としては、50~150℃で1~5分間行うのが好ましい。
【0066】
乾式膜を形成した後は、湿式製膜法に準じて湿式膜を形成する。すなわち、乾式膜の上に湿式膜形成用樹脂溶液を塗布した後、湿式凝固液に浸漬することで湿式膜を形成する。
【0067】
湿式膜形成用樹脂溶液は、主成分となる樹脂と、必要に応じて無機微粒子や任意成分の第三成分とを、有機溶媒に溶解または分散することにより調製することができる。有機溶媒としては、主成分となる樹脂に対して親和性を示すものであれば任意のものが使用でき、例えばポリウレタン樹脂の場合には、N,N-ジメチルホルムアミドを使用することが好ましい。有機溶媒の含有量としては、70~85質量%程度が好ましい。
【0068】
湿式膜形成用樹脂溶液を乾式膜上に塗布するには、ナイフコーティング法、コンマコーティング法、グラビアコーティング法などを採用すればよい。
【0069】
以下、乾式膜および湿式膜を構成する樹脂として、ポリウレタン樹脂を用いた場合の一実施態様を説明する。
【0070】
湿式凝固液としては、水もしくは極性有機溶剤を含有する水溶液が好適であり、極性有機溶剤としてはN,N-ジメチルホルムアミドなどが好適である。特に湿式凝固液としてN,N-ジメチルホルムアミド水溶液を用いる場合、その濃度は40%以下が好ましく、5~40%がより好ましく、5~30%がさらに好ましい。なお、濃度が40%を超えると、凝固速度が低下し、膜が無孔質な形態のものとなり易いため、好ましくない。
【0071】
製膜の際の凝固液温度としては、5~35℃程度、凝固時間としては30秒~5分間程度がそれぞれ好ましい。
【0072】
湿式膜の形成は、乾式膜形成後速やかに行うことが好ましい。これは、湿式膜の形成時機を早めることで、乾式膜と湿式膜とが界面およびその近傍で一体化し、良好な透湿性が具現されるからである。特に、乾式膜全体を取り込んで一体化させると、透湿性はさらに良好なものとなる。
【0073】
湿式膜の形成は、一般に乾式膜の状態が常態化する前の時機、すなわち樹脂架橋の余地が残されている時機に行うことが好ましく、一応の目安として乾式膜形成後3~4日以内に行うのが好ましい。
【0074】
湿式凝固液中で湿式膜形成用樹脂溶液に含まれる固形分を凝固することで、湿式膜を形成した後は、湿式膜に付着するN,N-ジメチルホルムアミドを除去する目的で、35~80℃の温度下で1~10分間湯洗し、さらに続いて、50~150℃の温度下で1~10分間乾燥するとよい。
【0075】
一般に、湿式膜形成用樹脂溶液を織物や編物に塗布した後、水に浸漬すると、湿式膜形成用樹脂溶液中の有機溶剤と湿式凝固液中の水とが素早く溶媒置換し、直径5~50μm相当の大きな孔(長孔)が膜内に形成される。膜内に大きな孔が形成されることは、所望の防水性を得るうえで不利となる傾向にある。さらに、不利となる防水性を補う目的で膜を厚くすると、透湿抵抗によりかえって透湿性が低下する傾向にあり、同時に衣料用積層体の風合いも損なわれる傾向にある。
【0076】
この点、ポリウレタン樹脂を主体とする固形分の凝固速度を遅らせることができれば、長孔の形成を抑えることができると考えられる。検討の結果、水に代えて極性有機溶剤を含有する水溶液を湿式凝固液として用いると、長孔の形成が抑えられ、より微多孔質に富む形態(ナノポーラス)の膜が形成され易くなることがわかった。特に濃度5~40質量%のN,N-ジメチルホルムアミド水溶液を湿式凝固液として用いると、膜はよりナノポーラスな形態を呈し易くなることがわかった。湿式膜がナノポーラスな形態となれば、衣料用積層体において透湿・防水・風合いの調和が取り易くなる。
【0077】
本発明における湿式膜には、無機微粉末が3~50質量%含有されていることが好ましく、無機微粉末を使用することも、ナノポーラスな形態を形成するうえで有利となる。無機微粉末を使用すると、その表面に有機溶媒が吸着され、無機微粉末の周囲で有機溶媒の濃度が高くなる。そして同時に、その外側では固形分の濃度が高くなる。この状態で溶媒置換すると、無機微粉末の周囲で溶媒置換が先行し、その外側では固形分濃度が高い状態のままで凝固が進む。そうすると、長孔の形成が抑えられると共に、微細孔が形成され易くなる。本発明者らの研究によれば、湿式膜における無機微粉末の含有量が、好ましくは15~50質量%、より好ましくは20~50質量%となるように予め調製された湿式膜形成用樹脂溶液を用いると、好ましくは孔径3μm以下、より好ましくは孔径1μm以下の多数の微細孔を有する均一な膜が形成され易くなる。そして、このようなナノポーラスな湿式膜を形成すると、前記のように衣料用積層体において透湿・防水・風合いの調和を図る点で有利となるだけでなく、耐湿熱性や血液、体液、薬品などに対する防護性、特にウイルスバリア性の点で顕著に有利となる。
【0078】
また、本発明では、前記のように必要に応じて湿式膜上に無孔膜を設けてもよい。無孔膜の形成には、ポリウレタン樹脂溶液が好ましく使用され、溶液の種類としては、溶剤型、エマルジョン型、水溶性型のいずれもが使用可能である。
【0079】
無孔膜を形成するための具体的な方法としては、所定のポリウレタン樹脂溶液を用意し、ナイフコーティング法、コンマコーティング法、グラビアコーティング法などにより、当該溶液を湿式膜上にコーティングし、50~150℃で30秒~10分間乾燥すればよい。
【0080】
本発明積層体は、さらに接着剤層と編物とを備えている。すなわち、湿式膜と編物とが接着剤層により貼合されている。なお、湿式膜の上に無孔膜を積層した場合には、無孔膜と編物とが接着剤層を介して貼合されることになる。
【0081】
接着剤層を構成する樹脂としては、基本的に乾式膜、湿式膜を構成する樹脂と同一組成のものが使用できる。中でも、分子量その他を調製することでタッグ感、粘性など接着剤として好ましいとされる各種特性が最適化されたものを使用するとよい。また、樹脂の種類として、架橋型の樹脂を使用することが実用上好ましい。前述のように必要に応じて第三成分を併用してもよい。
【0082】
そして、接着剤層の形成には、乾式膜および湿式膜のときと同様、樹脂溶液を用いた方法が採用できる他、ホットメルトによる方法も採用できる。
【0083】
例えば、ポリウレタン樹脂溶液であれば、二液硬化型であって粘度を500~5000mPa・sの範囲に調製したものが好適である。まず、グラビアコーティング法、コンマコーティング法などにより、湿式膜(もしくは無孔膜)または編物の上に溶液を塗布する。その後、乾燥し、ラミネート機などを用いて、両者を圧着もしくは熱圧着すれば、両者を貼合することができる。
【0084】
一方、ホットメルトの場合には、空気中の水分と反応する湿気硬化型のものが好適であり、実用上、80~150℃程度の温度域で溶融するものがより好ましい。この場合、まず、樹脂の融点および溶融時の粘性などを考慮しながらホットメルト樹脂を溶融させる。その後、湿式膜(もしくは無孔膜)または編物の上に溶融した樹脂を塗布し、常温で冷却しながら、ラミネート機などを用いて両者を圧着すればよい。
【0085】
以上のように、本発明の衣料用積層体は、前記織物の上に乾式膜、湿式膜および接着剤層がこの順に積層されている。すなわち、本発明では、乾式膜、湿式膜および接着剤層が織物および編物に挟まれた構造をなしている。本発明積層体に織物および編物の2枚を用いる理由としては、樹脂膜の一方の面を露出させた状態で使用すると、その露出している樹脂膜が物体と接触した時に摩擦による剥離が生じるなど劣化が進みやすくなるため、樹脂膜を保護する目的がある他、本発明積層体を用いた衣料として着用した際に生じうる、樹脂膜と肌面との直接接触や透湿性能不足による不快感を防ぐ目的がある。すなわち、本発明積層体を衣料として用いる場合には透湿性の観点から、前記織物が肌面から遠い側、前記編物が肌面に近い側となるように配置された状態で使用することが好ましい。
【0086】
また本発明の衣料用積層体は、医療用途に使用される衣料に好適であり、血液やウイルスをバリアする防水性に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し、動作をする際にも十分な軽量性を有することにより動きやすく、着用快適性に優れた衣料などを提供することができる。なお、本発明にいう医療用途とは、病院を対象とするメディカル分野に限定されるものではなく、その周囲に位置する介護、看護、製薬分野なども包含するものである。
【実施例0087】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。各種の特性値などの測定、評価方法は次の通りである。
【0088】
(a)目付け
得られた編物および衣料用積層体を用いて、JIS L 1096:2010 8.3.2 標準状態における単位面積当たりの質量A法に従って測定、算出した。
(b)透湿性
得られた衣料用積層体を試験片として用いて、JIS L1099 A-1法(塩化カルシウム法)およびB-1法(酢酸カリウム法)に規定されている方法に従って透湿度を測定した。
(c)防水性
得られた衣料用積層体を試験片として用いて、JIS L 1092(2009)B法(高水圧法)に規定されている方法に従って耐水圧を測定した。
(d)血液バリア性
得られた衣料用積層体の初期および工業洗濯30洗後の血液バリア性は、ASTM F1670-08B法に規定されている方法に従って、合否判定により評価した。工業洗濯はJIS L1096 F-2法(ワッシャー洗濯、高温タンブル乾燥)に規定される方法で行った。
(e)ウイルスバリア性
得られた衣料用積層体の初期および工業洗濯30洗後のウイルスバリア性は、ASTM F1671-07B法に規定されている方法に従って、合否評価により評価した。工業洗濯はJIS L1096 F-2法(ワッシャー洗濯、高温タンブル乾燥)に規定される方法で行った。
(f)微多孔膜の厚み、断面形状の観察
(株)日立製作所製、S-4000形電界放射形走査電子顕微鏡を用いて、倍率2000倍の断面写真を撮影し、微多孔膜の厚みを測定すると共に断面形状を観察した。
(g)着用快適性
衣料用積層体を用いて長袖上衣とパンツからなる感染防止衣料を作成し、医療従事者にこれを着用してもらい、真夏日の環境下(気温30℃以上)で通常の医療従事時と同様の作業を1日行った際の着用感を、快適性(蒸れを感じないこと)および動作のしやすさ(軽量性)の観点から判断し、以下の2段階評価を行った。
○:快適性、動作のしやすさともに良好である
×:快適性、動作のしやすさともに不良である
【0089】
(実施例1)
〔織物の作製〕
ウォータジェットルーム(WJL)織機を用い、経糸および緯糸にナイロン6マルチフィラメント仮撚加工糸22dtex/14fを用いて、リップストップ組織の織物生機を製織した。
得られた生機を製織後、精練剤を用いて80℃で20分間の精練し、分散染料を用いて130℃で30分間染色した。続いて、170℃で1分間ファイナルセットした後、市販のフッ素系撥水剤を用いて有効成分5質量%の水分散液を調製し、パディング法にて織物に水分散液をピックアップ率40%の割合で付与した。付与後、120℃で2分間乾燥し、さらに170℃で40秒間熱処理した後、鏡面ロールを有するカレンダー加工機を用いて、温度175℃、圧力300kPa、速度25m/分の条件でカレンダー加工し、経糸密度227本/2.54cm、緯糸密度167本/2.54cmの織物を得た。
【0090】
〔編物の作製〕
ナイロン6マルチフィラメント糸8dtex/5fを用意し、28ゲージトリコット編機を用いてトリコット編物生機を編立した。
得られた生機を公知の条件で染色加工を実施し、生地の編密度が69コース/2.54cm×33ウェール/2.54cmの編物を得た。
【0091】
〔積層体の作製〕
織物のカレンダー加工面に、下記処方1に示す組成の乾式膜形成用樹脂溶液をナイフコータにて10g/m2塗布し、120℃で2分間乾燥することで、乾式膜を形成した。なお、乾式膜形成用樹脂溶液の固形分濃度は25質量%、粘度は25℃下において7000mPa・sであった。また、この段階での乾式膜の厚みは1~2μmであった。
【0092】
<処方1>
エステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成(株)製、「ラックスキン1740-29B(商品名)」) 100質量部
レザミンX 2質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分濃度100質量%、架橋性イソシアネート化合物)
メチルエチルケトン 40質量部
【0093】
次に、湿式膜形成を以下のように行った。
まず、N,N-ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液であって固形分濃度が28%である、セイコー化成(株)製、「ラックスキン1740-29B(商品名)」と、一次粒子径が16nmの疎水性フュームドシリカ系微粉末であってN,N-ジメチルホルムアミドの吸着量が260mL/100gである、日本アエロジル(株)製、「AEROSIL R972(商品名)」と、N,N-ジメチルホルムアミドとを順に3:1:1の割合で粗練りした後、3本ロールミル機を用いて均一に混練し、無色透明の樹脂溶液(樹脂溶液A)を得た。
【0094】
次いで、上記樹脂溶液Aを含有する、下記処方2に示す組成の湿式膜形成用ポリウレタン樹脂溶液を準備した。なお、この樹脂溶液は、粘度が25℃下において10000mPa・sであり、固形分濃度は24%であった。また、疎水性フュームドシリカ系微粉末は、湿式膜形成にかかる固形分100質量%に対し30質量%含有されていた。
【0095】
<処方2>
エステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成(株)製、「ラックスキン1740-29B(商品名)」) 50質量部
樹脂溶液A 50質量部
イソシアネート化合物(大日精化工業(株)製、架橋剤「レザミンX(商品名)」固形分100%) 1質量部
N,N-ジメチルホルムアミド 38質量部
【0096】
そして、乾式膜形成後直ちに、上記処方2に示す組成の湿式膜形成用樹脂溶液をコンマコータにて乾式膜上に100g/m2塗布した後、20℃の水浴に織物を導入し、2分間浸漬して固形分を凝固した。続いて、50℃の温水浴を使用して十分にオーバーフロー湯洗し、織物をマングルで絞り、引き続き、乾燥機に導入して140℃で2分間乾燥し、湿式膜を形成した。
【0097】
得られた湿式膜の断面形状を走査電子顕微鏡(2000倍)で観察したところ、厚みは20~30μmであった。また、膜中には5~40μmの範囲で長孔が形成されていたものの、孔径1μm程度の微細孔も多数数存在し、それらは膜全体に渡って略均等に分布していることが確認できた。
【0098】
次に、下記処方3に示す組成のポリウレタン樹脂溶液を準備した。この樹脂溶液は2液タイプであり、接着剤層を形成するためのものである。粘度は25℃下において1000mPa・sであり、固形分濃度は35%であった。
【0099】
<処方3>
非膨潤型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成(株)製、「ラックスキンUD-108(商品名)」) 50質量部
膨潤型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成(株)製、「ラックスキンUD-4048(商品名)」) 50質量部
イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製、架橋剤「コロネートHL(商品名)」固形分100%) 8質量部
メチルエチルケトン 35質量部
トルエン 15質量部
【0100】
そして、ドット状グラビアロール(ドット径0.75mm、ドット間隔0.25mm、25メッシュ、深度0.25mm)を用いて、湿式膜上に占有面積約50%の割合でこの樹脂溶液を点状に約60g/m2塗布した。塗布後、120℃で2分間乾燥し、接着剤層を形成した。そして、圧力300kPaで編物を貼合し、40℃×80%RHの環境下で3日間エージングして、衣料用積層体を得た。
【0101】
(実施例2)
〔織物の作製〕
実施例1と同様にして経糸密度227本/2.54cm、緯糸密度167本/2.54cmのリップストップ組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
ナイロン6マルチフィラメント仮撚加工糸22dtex/7fを用い、生地の編密度を46コース/2.54cm×30ウェール/2.54cmとした以外は実施例1と同様にしてトリコット編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、乾式膜、湿式膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂膜、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
【0102】
(実施例3)
〔織物の作製〕
経糸および緯糸にナイロン6マルチフィラメント仮撚加工糸44dtex/34fを用いて、経糸密度154本/2.54cm、緯糸密度112本/2.54cmとした以外は実施例1と同様にしてリップストップ組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
実施例2と同様にして、生地密度46コース/2.54cm×30ウェール/2.54cmのトリコット編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、乾式膜、湿式膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂膜、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
【0103】
(実施例4)
〔織物の作製〕
実施例1と同様にして経糸密度227本/2.54cm、緯糸密度167本/2.54cmのリップストップ組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
実施例1と同様にして、生地密度69コース/2.54cm×33ウェール/2.54cmのトリコット編物を得た。
〔積層体の作製〕
織物のカレンダー加工面に、下記処方4に示す組成の乾式膜形成用樹脂溶液をナイフコータにて10g/m2塗布し、120℃で2分間乾燥することで、乾式膜を形成した。なお、乾式膜形成用樹脂溶液の固形分濃度は25質量%、粘度は25℃下において7000mPa・sであった。
<処方4>
レザミンCU-9450NL 100質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分濃度30質量%、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
レザミンX 2質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分濃度100質量%、架橋性イソシアネート化合物)
メチルエチルケトン 40質量部
【0104】
次に、湿式膜形成を以下のように行った。
まず、レザミンCU-9450NL 100質量部と、AEROSIL COK84(日本アエロジル株式会社製、平均一次粒子径が約16nmを主体とする親水性二酸化珪素と、酸化アルミニウムとの混合無機微粉末)2質量部とを粗練りした後、3本ロールミル機を用いて本練りした。そして、レザミンX及びN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、脱泡することで、下記処方5に示す組成の湿式膜形成用樹脂溶液を調製した。得られた樹脂溶液は、粘度が25℃下において12000mPa・sであり、固形分濃度は24質量%であった。また、混合無機微粉末は、湿式膜形成にかかる固形分100質量%に対し6質量%含有されていた。
【0105】
<処方5>
レザミンCU-9450NL 100質量部
AEROSIL COK84 2質量部
レザミンX 2質量部
N,N-ジメチルホルムアミド 40質量部
【0106】
そして、乾式膜形成後直ちに、上記処方5に示す組成の湿式膜形成用樹脂溶液をコンマコータにて乾式膜上に100g/m2塗布した後、20℃の水浴に織物を導入し、2分間浸漬して固形分を凝固した。続いて、50℃の温水浴を使用して十分にオーバーフロー湯洗し、織物をマングルで絞り、引き続き、乾燥機に導入して140℃で2分間乾燥し、湿式膜を形成した。
【0107】
得られた湿式膜の断面形状を走査電子顕微鏡(2000倍)で観察したところ、厚みは50~60μmであった。また、膜中には5~40μmの範囲で長孔が形成されていたものの、孔径1μm程度の微細孔も多数数存在し、それらは膜全体に渡って略均等に分布していることが確認できた。
【0108】
次に、下記処方6に示す組成のポリウレタン樹脂溶液を準備した。この樹脂溶液は2液タイプであり、接着剤層を形成するためのものである。粘度は25℃下において4000mPa・sであり、固形分濃度は59%であった。
【0109】
<処方6>
レザミンUD-8373 100質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分濃度70質量%、二液硬化型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
レザミンNE 12質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分濃度70質量%、架橋性イソシネート化合物)
レザミンUD-103NT 1質量部
(大日精化工業株式会社製、架橋促進剤)
メチルエチルケトン 20質量部
【0110】
そして、ドット状グラビアロール(ドット径0.75mm、ドット間隔0.25mm、25メッシュ、深度0.25mm)を用いて、湿式膜上に占有面積約50%の割合でこの樹脂溶液を点状に約60g/m2塗布した。塗布後、120℃で2分間乾燥し、接着剤層を形成した。そして、圧力300kPaで編物を貼合し、40℃×80%RHの環境下で3日間エージングして、衣料用積層体を得た。
【0111】
(比較例1)
〔織物の作製〕
経糸および緯糸にナイロン6マルチフィラメント仮撚加工糸56dtex/16fを用いて、経糸密度142本/2.54cm、緯糸密度105本/2.54cmとした以外は実施例1と同様にしてリップストップ組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
実施例2と同様にして、生地密度46コース/2.54cm×30ウェール/2.54cmのトリコット編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、乾式膜、湿式膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂膜、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
【0112】
(比較例2)
〔織物の作製〕
経糸密度175本/2.54cm、緯糸密度150本/2.54cmとした以外は実施例1と同様にしてリップストップ組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
実施例2と同様にして、生地密度46コース/2.54cm×30ウェール/2.54cmのトリコット編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、乾式膜、湿式膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂膜、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
【0113】
(比較例3)
〔織物の作製〕
経糸および緯糸にナイロン6マルチフィラメント仮撚加工糸17dtex/7fを用いて、経糸密度248本/2.54cm、緯糸密度218本/2.54cmとした以外は実施例1と同様にしてリップストップ組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
実施例2と同様にして、生地密度46コース/2.54cm×30ウェール/2.54cmのトリコット編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、乾式膜、湿式膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂膜、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
【0114】
(比較例4)
〔織物の作製〕
実施例1と同様にして経糸密度227本/2.54cm、緯糸密度167本/2.54cmのリップストップ組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
ナイロン6マルチフィラメント33dtex/12fを用い、生地の編密度を47コース/2.54cm×33ウェール/2.54cmとした以外は実施例1と同様にしてトリコット編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、乾式膜、湿式膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂膜、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
【0115】
(比較例5)
〔織物の作製〕
実施例1と同様にして経糸密度227本/2.54cm、緯糸密度167本/2.54cmのリップストップ組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
ナイロン6モノフィラメント17dtex/1fを用い、生地の編密度を56コース/2.54cm×33ウェール/2.54cmとした以外は実施例1と同様にしてトリコット編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、乾式膜、湿式膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂膜、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
【0116】
実施例1~4および比較例1~5で得られた織物、編物および積層体の構成を表1に、得られた衣料用積層体の特性値や評価結果を表2に示す。
【0117】
【0118】
【0119】
表1、2から明らかなように実施例1~4で得られた衣料用積層体は、本発明で規定する、繊度やカバーファクター、目付けの条件を満足するものであり、透湿防水性や人工血液バリア性・ウイルスバリア性に優れるとともに軽量性を有し、さらに洗濯耐久性にも優れるものであった。また、前記積層体を用いて得た感染防止衣料は、着用した場合にも軽量で動きやすく、蒸れ感も少なく、着用快適性に優れたものであった。
【0120】
一方、比較例1では織物を構成する経糸と緯糸に単糸繊度および総繊度の太いものを用いたため、得られた衣料用積層体は目付けが大きく、透湿性および軽量性に劣るものとなった。また、織物の織密度が小さいものであったため、織物上で乾式膜や湿式膜を形成する際にピンホールが発生や樹脂膜が織物表面に滲み出すなどの不良が生じ、衣料用積層体は人工血液バリア性・ウイルスバリア性に劣るものとなった。そのため、感染防止衣料として着用した場合には動きづらく、また蒸れ感を感じるものとなった。
比較例2では織物のCFが小さく、織物の糸の目が粗いものとなったことで、織物上で乾式膜や湿式膜を形成する際にピンホールが発生や樹脂膜が織物表面に滲み出すなどの不良が生じた。その結果、得られた衣料用積層体は耐水圧性や人工血液バリア性・ウイルスバリア性に劣るものとなった。
比較例3は織物を構成する経糸と緯糸に総繊度の細いものを用いたため、織物上で乾式膜や湿式膜を形成する際に樹脂膜が織物表面に滲み出すなどの不良が生じた。その結果、得られた衣料用積層体は耐水圧性や人工血液バリア性・ウイルスバリア性に劣るものとなった。
比較例4は編物の目付けが大き過ぎたために積層体が厚く重いものになり、さらに透湿性も低下したため、着用感を大きく損ねるものとなった。
比較例5は編地を構成するナイロン6モノフィラメントの単糸繊度が太過ぎたため、積層体の風合いが非常に硬く、着用感を大きく損ねるものとなった。加えて、樹脂膜との貼合せ時の樹脂の滲み出しの発生や、洗濯による編物の剥離が発生するなど、加工性や洗濯耐久性にも劣るものとなった。