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特開2023-73838電動機ユニット、冷却風の流れの制御方法および自走式電動車両
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  • 特開-電動機ユニット、冷却風の流れの制御方法および自走式電動車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073838
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】電動機ユニット、冷却風の流れの制御方法および自走式電動車両
(51)【国際特許分類】
   B62M 7/02 20060101AFI20230519BHJP
   B62K 11/00 20060101ALI20230519BHJP
   H02K 9/02 20060101ALI20230519BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
B62M7/02 X
B62K11/00 A
H02K9/02 B
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186546
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】飯田 薫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大石 栄幸
【テーマコード(参考)】
3D011
5H609
【Fターム(参考)】
3D011AF04
3D011AF06
3D011AG01
3D011AL21
3D011AL33
5H609BB01
5H609BB19
5H609PP05
5H609PP17
5H609QQ04
5H609QQ11
5H609RR12
5H609RR38
5H609RR52
(57)【要約】
【課題】電動機の外表面上を流れる冷却風の流れを制御することができる電動機ユニット、冷却風の流れの制御方法および電動機ユニットを搭載した自走式電動車両を提供する。
【解決手段】自走式電動車両100は、前輪103および後輪108を支持するフレーム101に電動機ユニット120が取り付けられている。電動機ユニット120は、電動機121、送液ポンプ140,ラジエター141および送風機143を備えている。電動機121のハウジング124には、冷却液が流通する冷却流路126および冷却液室127が形成されるとともに送液ポンプ140および冷却液外部配管144が露出した状態で設けられている。冷却液外部配管144には、送風機143が出力する冷却風Wを送液ポンプ140に導く第1流路規制部145aおよび開閉キャップ127aへの流れを阻止する第2流路規制部145bが形成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式車両における駆動輪を駆動するための電動機と、
前記電動機の外表面上に設けられて前記電動機を冷却するための冷却液が流通する冷却液外部配管と、
前記電動機の外表面に風を冷却風として送る送風機とを備え、
前記冷却液外部配管は、
前記電動機の外表面上を流れる前記冷却風の流れを規制する流路規制部を有していることを特徴とする電動機ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載した電動機ユニットにおいて、
前記流路規制部は、
前記電動機の外表面上で屈曲しながら延びて形成されて前記冷却風の流れを規制していることを特徴とする電動機ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した電動機ユニットにおいて、
前記流路規制部は、
前記電動機の外表面との間の隙間が変化しながら延びて形成されて前記冷却風の流れを規制していることを特徴とする電動機ユニット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した電動機ユニットにおいて、
前記流路規制部は、
前記自走式車両における冷却対象となる冷却対象部に前記冷却風が流れるように形成されていることを特徴とする電動機ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載した電動機ユニットにおいて、さらに、
前記冷却液を流動させるための送液ポンプを備えており、
前記冷却対象部は、
前記送液ポンプであることを特徴とする電動機ユニット。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した電動機ユニットにおいて、
前記流路規制部は、
前記電動機の外表面における前記冷却風の流れを阻止するように形成されていることを特徴とする電動機ユニット。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した電動機ユニットにおいて、さらに、
前記冷却液を熱交換するラジエターを備えており、
前記送風機は、
前記電動機と前記ラジエターとの間に設けられていることを特徴とする電動機ユニット。
【請求項8】
自走式車両における駆動輪を駆動するための電動機と、
前記電動機の外表面上に設けられて前記電動機を冷却するための冷却液が流通する冷却液外部配管と、
前記電動機の外表面に風を冷却風として送る送風機とを備えた自走式車両における前記電動機の外表面上を流れる前記冷却風の流れの制御方法であって、
前記冷却液外部配管に前記電動機の外表面上を流れる前記冷却風の流れを規制する流路規制部を形成しておき、前記送風機から出力される前記冷却風の流れを規制することを特徴とする冷却風の流れの制御方法。
【請求項9】
運転者が着座するシートと、
前記シートに対向して設けられて前輪および後輪のうちの少なくとも一方を操舵するためのハンドルと、
前記前輪および前記後輪のうちの少なくとも一方を駆動するための請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載した電動機ユニットとを備えたことを特徴とする自走式電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を駆動源として自走する自走式電動車両に搭載される電動機ユニット、冷却風の流れの制御方法および電動機ユニットを搭載した自走式電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、両足を揃えた状態でシートに着座するまたはシートに跨った状態で着座して運転する自動二輪車などの自走式電動車両においては、電動機を冷却するために冷却装置が設けられている。例えば、下記特許文献1には、発熱する電動機を液体フロンなどの冷媒を用いて冷却する所謂水冷方式の自走式二輪電動車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-224490号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された自走式二輪電動車両においては、冷却効率の更なる効率化を図るために電動機に対して空冷用の冷却風を送る送風機を設けた場合に電動機の外表面上で冷却風が想定しない方向に流れて冷却効率の低下または送風による弊害の発生が危惧される。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、電動機の外表面上を流れる冷却風の流れを制御することができる電動機ユニット、冷却風の流れの制御方法および電動機ユニットを搭載した自走式電動車両を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、自走式車両における駆動輪を駆動するための電動機と、電動機の外表面上に設けられて電動機を冷却するための冷却液が流通する冷却液外部配管と、電動機の外表面に風を冷却風として送る送風機とを備え、冷却液外部配管は、電動機の外表面上を流れる冷却風の流れを規制する流路規制部を有していることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、電動機ユニットは、電動機の外表面に吹き付けられた冷却風の流れを電動機の外部に設けられた冷却液外部配管における流路規制部によって規制しているため、冷却風を必要な箇所に導いたり、冷却風を必要な箇所に留まらせたり、または冷却風の不必要な箇所への流動を抑制することができ電動機の外表面上を流れる冷却風の流れを制御することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機ユニットにおいて、流路規制部は、電動機の外表面上で屈曲しながら延びて形成されて冷却風の流れを規制していることにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機ユニットは、流路規制部が電動機の外表面上で屈曲しながら延びて形成されて冷却風の流れを規制しているため、電動機の外表面上を流れる冷却風の流れを円滑に変更することができる。この場合、流路規制部は、鋭角に屈曲していても良いが鈍角または円弧状に曲がって形成されているとよい。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機ユニットにおいて、流路規制部は、電動機の外表面との間の隙間が変化しながら延びて形成されて冷却風の流れを規制していることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機ユニットは、流路規制部が電動機の外表面との間の隙間が変化しながら延びて形成されて冷却風の流れを規制しているため、電動機の外表面上を流れる冷却風の流れを所望する流れに制御し易くすることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機ユニットにおいて、流路規制部は、自走式車両における冷却対象となる冷却対象部に冷却風が流れるように形成されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機ユニットは、流路規制部が自走式車両における冷却対象となる冷却対象部に冷却風が流れるように形成されているため、自走式車両または電動機を効率的に冷却することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機ユニットにおいて、さらに、冷却液を流動させるための送液ポンプを備えており、冷却対象部は、送液ポンプであることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機ユニットは、流路規制部が電動機における冷却対象となる冷却対象部としての送液ポンプに冷却風が流れるように形成されているため、電動機を効率的に冷却することができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機ユニットにおいて、流路規制部は、電動機の外表面における冷却風の流れを阻止するように形成されていることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機ユニットは、流路規制部が電動機の外表面における冷却風の流れを阻止するように形成されているため、冷却風を必要な箇所に導いたり、冷却風の不必要な箇所への流動を抑制したりすることができ電動機を効率的に冷却することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記電動機ユニットにおいて、さらに、冷却液を熱交換するラジエターを備えており、送風機は、電動機とラジエターとの間に設けられていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、電動機ユニットは、送風機が電動機とラジエターとの間に設けられているため、電動機に対して強い冷却風を出力することができるとともに、ラジエターへの外気の取り込みと電動機への冷却風の供給を同時に行うことができる。
【0020】
また、本発明は電動機ユニットの発明として実施できるばかりでなく、電動機外表面上を流動する冷却風の制御方法および自走式電動車両の発明としても実施できるものである。
【0021】
具体的には、冷却風の流れの制御方法は、自走式車両における駆動輪を駆動するための電動機と、電動機の外表面上に設けられて電動機を冷却するための冷却液が流通する冷却液外部配管と、電動機の外表面に風を冷却風として送る送風機とを備えた自走式車両における電動機の外表面上を流れる冷却風の流れの制御方法であって、冷却液外部配管に電動機の外表面上を流れる冷却風の流れを規制する流路規制部を形成しておき、送風機から出力される冷却風の流れを規制するようにすればよい。このように構成した冷却風の流れの制御方法によれば、前記電動機ユニットと同様の作用効果を期待することができる。
【0022】
また、自走式電動車両は、運転者が着座するシートと、シートに対向して設けられて前輪および後輪のうちの少なくとも一方を操舵するためのハンドルと、前輪および後輪のうちの少なくとも一方を駆動するための請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載した電動機ユニットとを備えるとよい。このように構成した自走式電動車両によれば、前記電動機ユニットと同様の作用効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る自走式電動車両の全体構成の概略を模式的に示す側面図である。
図2図1に示す自走式電動車両に搭載される電動機ユニットの全体構成の概略を図1に示す自走式電動車両の右側から見た斜視図である。
図3図1に示す自走式電動車両に搭載される電動機ユニットの全体構成の概略を図1に示す自走式電動車両の左側から見た斜視図である。
図4図1に示す自走式電動車両の制御システムの概略を示すブロック図である。
図5図1に示す自走式電動車両に搭載される電動機ユニットの内部構成の概略を示す断面図である。
図6】電動機のハウジングの外表面と流路規制部との間の隙間を説明するための要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る自走式電動車両の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る自走式電動車両100の全体構成の概略を模式的に示す側面図である。また、図2は、図1に示す自走式電動車両100に搭載される電動機ユニット120の全体構成の概略を図1に示す自走式電動車両100の右側から見た斜視図である。図3は、図1に示す自走式電動車両100に搭載される電動機ユニット120の全体構成の概略を図1に示す自走式電動車両100の左側から見た斜視図である。また、図4は、図1に示す自走式電動車両100の制御システムの概略を示すブロック図である。また、図5は、図1に示す自走式電動車両100に搭載される電動機ユニット120の内部構成の概略を示す断面図である。この自走式電動車両100は、運転者Uが両足を揃えた状態でシート110上に着座して運転を行う小型の自動二輪車(所謂スクータ)である。
【0025】
(自走式電動車両100の構成)
自走式電動車両100は、フレーム101を備えている。フレーム101は、自走式電動車両100の形を維持する骨格を構成する部品であり、複数の鉄製のパイプまたは板材を組み合わせて構成されている。このフレーム101は、主として、ヘッドパイプ102、メインフレーム106およびシートレール109をそれぞれ備えて構成されている。
【0026】
ヘッドパイプ102は、自走式電動車両100の前輪103をフロントフォーク104を介して支持する筒状の部分である。フロントフォーク104は、前輪103の両側に棒状に延びて形成されてヘッドパイプ102に対して前輪103を自走式電動車両100の左右方向に転舵可能に支持する部品であり、サスペンション機構(図示せず)を備えて構成されている。このフロントフォーク104の上端部には、ハンドル105が設けられている。ハンドル105は、自走式電動車両100の進行方向を操舵するための部品であり、自走式電動車両100の左側および右側の幅方向にそれぞれ棒状に延びて形成されている。ハンドル105は、左右一対で構成されているとともに、これらの左右の一方が自走式電動車両100を加速させるためのアクセルグリップ105aを構成している。
【0027】
メインフレーム106は、電動機ユニット120および二次電池115をそれぞれ支持してフレーム101の強度を決定づけるフレーム101の中枢部分であり、自走式電動車両100の前方から後方に向かって斜め下方に延びた後水平に延びて再び斜め上方に延びる屈曲した形状に形成されている。このメインフレーム106は、この水平に延びる部分においてステップフロア114および二次電池115をそれぞれ支持するとともに、斜め上方に延びる部分付近でスイングアーム107および電動機ユニット120をそれぞれ支持している。スイングアーム107は、自走式電動車両100の後輪108をメインフレーム106との連結部であるピボット106aを基点として上下動自在な状態で支持している。
【0028】
シートレール109は、主として、シート110、荷台112およびテールランプ113をそれぞれ支持する部分であり、メインフレーム106の後方に向かって斜め上方に延びて形成されている。シート110は、自走式電動車両100の運転者Uが両足を揃えた状態で着座するための部品であり、クッション部材で構成されている。このシート110は、開閉自在に構成されており、シート110の下方にはヘルメットなどの小物を収容できる収納スペース111が空洞状に形成されている。
【0029】
この場合、収納スペース111の底部は、開閉自在に構成されており、電動機ユニット120にアクセスできるように構成されている。荷台112は、荷物を載せるための部分であり、金属製の棒体を枠状に形成して構成されている。テールランプ113は、運転者Uによるブレーキ操作、ウィンカー操作または夜間などにおけるヘッドランプの点灯操作によって点灯する照明器具である。
【0030】
ステップフロア114は、シート110に着座した運転者Uが両足を揃えた状態で載置するための部分であり、シート110の前方の下方で前記メインフレーム106の上方に平坦な床面として形成されている。
【0031】
二次電池115は、電動機121および自走式電動車両100が備える電気電子機器に電力を供給する装置であり、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの充放電可能な電池で構成されている。また、二次電池115は、自走式電動車両100の減速時に電動機121が発生させる回生電気エネルギを蓄える。この二次電池115は、ステップフロア114の下方でメインフレーム106に支持されている。
【0032】
また、ステップフロア114の後端部からシート110に向かって立ち上がって電動機ユニット120を覆う筒状のユニットカバー116には、後述するラジエター141の前方に格子状の通気口117が開口している。また、後輪108は、チェーン118を介して電動機121に連結されて駆動力を得ている。
【0033】
電動機ユニット120は、前記した後輪108を回転駆動させるための駆動力を発生させる動力源を構成する装置群である。具体的には、電動機ユニット120は、主として、電動機121、冷却液室127、送液ポンプ140、ラジエター141および送風機143をそれぞれ備えて構成されている。なお、図1においては、電動機ユニット120は、自走式電動車両100の内部に配置されるため破線で描かれるべきであるが、理解を容易にするため敢えて実線で示している。
【0034】
電動機121は、自走式車両の駆動輪を回転駆動するための回転駆動力を発生させる駆動源である。本実施形態においては、電動機121は、自走式二輪車を駆動させる同期モータで構成されている。なお、電動機121は、直流モータで構成してもよいことは当然である。
【0035】
電動機121は、主として、ステータ122、ロータ123およびハウジング124をそれぞれ備えて構成されている。ステータ122は、三相交流によって回転磁界を生じさせるための部品であり、鉄心の外周部に巻線が設けられて筒状に形成されている。このステータ122は、ハウジング124を構成する胴体125内に固定的に取り付けられている。
【0036】
ロータ123は、ステータ122が発生させる回転磁界によって回転する部品であり、棒状に延びるシャフトの外周部に永久磁石が取り付けられて構成されている。このロータ123は、ステータ122を貫通した状態で胴体125内に配置されている。この場合、ロータ123における一方の端部側は、出力側蓋体130を貫通した状態で回転自在に支持されている。この場合、ロータ123における出力側蓋体130を貫通して露出した部分が電動機121の出力軸となる。また、ロータ123における他方側の端部が後部側蓋体135に回転自在な状態で支持されている。
【0037】
ハウジング124は、電動機121の外筐を構成する部品であり、主として、胴体125、制御室カバー129a、出力側蓋体130、伝達装置カバー131、後部側蓋体135および後部側カバー136をそれぞれ備えて構成されている。胴体125は、ステータ122およびロータ123の各主要部を収容する収容空間125aを形成するとともに冷却液室127を形成する部品であり、アルミニウムなどの非鉄系金属または樹脂材料などの非磁性材料を筒状に形成して構成されている。
【0038】
この胴体125は、円筒状に形成された内部空間である収容空間125aにおいてステータ122を支持しているとともに、出力側蓋体130および後部側蓋体135によって回転自在に支持されたロータ123が貫通した状態で配置されている。また、胴体125は、収容空間125aを形成する筒状部分の内部に冷却流路126が形成されている。
【0039】
冷却流路126は、収容空間125a、冷却液室127および作動制御室129をそれぞれ冷却するための冷却液を液密的かつ気密的に流通させるための管路であり、前記筒状部分の長手方向および周方向にそれぞれ延びて形成されている。この冷却流路126は、収容空間125aを外側から囲むように形成されている。すなわち、冷却流路126は、前記筒状部分の全体に略均等に形成されている。
【0040】
この冷却流路126の上流側には、流路の途中に後述する送液ポンプ140が接続されており、この送液ポンプ140の更に上流側に導入菅126aが接続されている。導入菅126aは、冷却流路126の上流側に冷却液を後述するラジエター141から引き込むための金属製のパイプである。また、冷却流路126における冷却液が胴体125の外部から流出する下流側には、冷却液をラジエター141に導くための金属製のパイプからなる排出管126bが接続されている。
【0041】
すなわち、これらの導入菅126aおよび排出管126bは、ラジエター141における冷却液の排出する部分となる下流側接続部および冷却液の導入部分となる上流側接続部にそれぞれ接続されている。また、冷却流路126は、胴体125を軸線方向にも貫通しており、出力側蓋体130および後部側蓋体135の各壁面が面している。なお、冷却流路126は、胴体125を軸線方向に貫通しないように形成することも可能である。
【0042】
冷却液は、収容空間125a、冷却液室127および作動制御室129との間で前記筒状部分を介してそれぞれ熱交換するための物質であり、液体によって構成されている。この場合、冷却液体は、水または油などの流体で構成することができる。本実施形態においては、冷却液体は、水で構成されている。また、胴体125における径方向外側には、冷却流路126に隣接して冷却液室127および作動制御室129がそれぞれ形成されている。
【0043】
冷却液室127は、前記冷却液を貯留するための容器を構成する部分であり、ハウジング124の一部が上方にドーム状に延びて形成されている。この場合、冷却液室127は、電動機121の配置姿勢における上部側の位置に送液ポンプ140側が開口する有底筒状に形成されており、この開口部が送液ポンプ140によって塞がれている。また、冷却液室127の上部部分には、冷却液室127内に外部から冷却液を充填するための開閉キャップ127aが取り付けられている。すなわち、冷却液室127は、リザーバータンクである。この冷却液室127は、冷却液外部配管144を介してラジエター141が接続されている。また、この冷却液室127の隣には、ポンプ収容部128が形成されている。
【0044】
ポンプ収容部128は、送液ポンプ140を露出した状態で収容する部分であり、冷却液室127と出力側蓋体130との間の領域が凹状に切り欠かれた形状に形成されている。この場合、ポンプ収容部128は、送風機143の冷却風の出力方向に平行な方向に貫通する溝状に形成されている。
【0045】
作動制御室129は、制御装置150を収容するための空間部分であり、胴体125の表面の一部が制御室カバー129aで覆われて形成されている。制御室カバー129aは、作動制御室129を形成するための部品であり、炭素鋼などの鉄系金属またはアルミニウムなどの非鉄系金属などの金属板を胴体125の軸線方向に延びる半円のドーム状に湾曲させて形成されている。この制御室カバー129aは、ボルトを介して胴体125の一部に着脱自在に取り付けられている。
【0046】
出力側蓋体130は、筒状に形成された胴体125の一方の端部に取り付けられる部品であり、アルミニウムなどの非鉄系金属または樹脂材料などの非磁性材料を周縁部が起立した板状体に形成して構成されている。この出力側蓋体130は、筒状に形成された胴体125の一方の端部を塞ぐとともにロータ123における一方の端部を回転自在に支持する。この場合、出力側蓋体130は、前記冷却流路126も塞いでいる。また、出力側蓋体130は、第1伝達装置133の出力軸133cおよび第2伝達装置134の第2歯車134bの各一方の端部を回転自在な状態で支持している。この出力側蓋体130は、胴体125に対してボルト(図示せず)によって取り付けられている。また、出力側蓋体130における胴体125とは反対側には、伝達装置カバー131が取り付けられている。
【0047】
伝達装置カバー131は、出力側蓋体130とともに出力側蓋体130との間に伝達装置収容空間132を形成するための部品であり、アルミニウムなどの非鉄系金属または樹脂材料などの非磁性材料を周縁部が起立した板状体に形成して構成されている。この伝達装置カバー131は、第1伝達装置133および第2伝達装置134をそれぞれ覆った状態で出力側蓋体130にボルトを介して取り付けられることで内部空間に伝達装置収容空間132を形成する。この場合、伝達装置カバー131は、ロータ123を貫通させた状態で回転自在に支持している。伝達装置収容空間132は、第1伝達装置133および第2伝達装置134をそれぞれ収容する空間である。
【0048】
第1伝達装置133は、電動機121の回転速度を減速して後輪108に対して出力する機械装置であり、主として、第1歯車133aと第2歯車133bとで構成されている。第1歯車133aは、電動機121のロータ123と一体的に回転する平歯車である。第2歯車133bは、第1歯車133aに噛み合うことで第1歯車133aの回転速度を減速しつつ回転する平歯車に出力軸133cが一体的に形成されて構成されている。出力軸133cは、伝達装置カバー131から突出する軸体にスプロケットが取り付けられて自走式電動車両100の後輪108にチェーン118を介して連結されて電動機121の出力軸として機能する。
【0049】
第2伝達装置134は、電動機121の回転速度を減速して送液ポンプ140に対して出力する機械装置であり、主として、第1歯車134aと第2歯車134bとで構成されている。第1歯車134aは、電動機121のロータ123と一体的に回転する平歯車である。第2歯車134bは、第1歯車134aに噛み合うことで第1歯車134aの回転速度を減速しつつ回転する平歯車であり、送液ポンプ140の入力部140aに噛み合っている。
【0050】
後部側蓋体135は、筒状に形成された胴体125の他方の端部に取り付けられる部品であり、アルミニウムなどの非鉄系金属または樹脂材料などの非磁性材料を板状に形成して構成されている。この後部側蓋体135は、筒状に形成された胴体125の他方の端部を塞ぐとともにロータ123における他方の端部を回転自在に支持する。この場合、後部側蓋体135は、前記冷却流路126も塞いでいる。この後部側蓋体135は、胴体125に対してボルト(図示せず)によって取り付けられている。また、後部側蓋体135の外側面は、空間を介して後部側カバー136で覆われており、この空間内にはロータ123の回転角度を検出する検出装置(図示せず)が設けられている。
【0051】
送液ポンプ140は、ハウジング124における冷却流路126とラジエター141との間で冷却液を循環させるための機械装置である。この送液ポンプ140は、一方の端部が前記伝達装置収容空間132内に配置されているとともに、他方の端部が冷却液室127の開口部を塞ぐようにハウジング124に取り付けられている。
【0052】
この場合、送液ポンプ140は、駆動力を受ける入力部140aが前記伝達装置収容空間132内に配置されており、この入力部140aを構成する歯車が前記第2伝達装置134の第2歯車134bに噛み合うことで電動機121の回転駆動力を受けて電動機121と一体的に駆動する。なお、送液ポンプ140は、必ずしも歯車によって駆動力を受ける必要はなく、ベルト伝達または摩擦車による伝達など歯車伝達以外の伝達手法で駆動されてもよいし、専用の電動機を備えて駆動されてもよい。
【0053】
この送液ポンプ140は、冷却流路126における上流側の流路内に組み込まれている。具体的には、送液ポンプ140は、前記したように、冷却流路126における導入菅126aが接続された部分の下流側に接続されて冷却液を導入するとともに、導入した冷却液を排出する排出口が冷却流路126の下流側に接続されている。これにより、送液ポンプ140は、導入菅126aを介してラジエター141から冷却液を導入するとともに、この冷却液を冷却流路126の下流側に吐出することでハウジング124における冷却流路126とラジエター141との間で冷却液を循環させる。
【0054】
ラジエター141は、前記冷却液を熱交換によって冷却するための装置である。このラジエター141は、例えば、アッパータンクとロアタンクとの間にフィンおよび水管をそれぞれ備えて構成されているが、冷却液を冷却するように構成されていれば他の形態であってもよいことは当然である。このラジエター141は、冷却液を導入する上流側がハウジング124の冷却流路126の下流端に排出管126bを介して接続されている。また、ラジエター141は、通気口117の後方側に面して設けられている。
【0055】
また、ラジエター141における冷却液を排出する下流側は、導入菅126aを介してハウジング124の冷却流路126の上流端に接続されているとともに、この上流端を介して前記送液ポンプ140に接続されている。また、ラジエター141には、冷却液外部配管144を介して冷却液室127が接続されている。このラジエター141は、取付け部材142a,142bをそれぞれ介してハウジング124に取り付けられている。
【0056】
取付け部材142a,142bは、ラジエター141および送風機143をそれぞれハウジング124に取り付けるための部材であり、金属材料をそれぞれブロック状に形成して構成されている。これらの取付け部材142a,142bは、それぞれ一方の端部がハウジング124にボルトを介して取り付けられているとともに、他方の端部に送風機143およびラジエター141がそれぞれ取り付けられている。また、取付け部材142a,142bは、前記した導入菅126aおよび排出管126bがそれぞれ貫通している。
【0057】
送風機143は、空気からなる冷却風を電動機121に吹き付けて空冷するための機械装置であり、制御装置150によって作動が制御されるプロペラファンを備えて構成されている。この送風機143は、電動機121とラジエター141との間に配置されて前記取付け部材142a,142bによって両側から支持されている。この場合、送風機143は、ラジエター141が風上側になるとともに電動機121が風下側になる向きで配置される。
【0058】
また、送風機143は、電動機121の外表面に対して接近して配置されている。この場合、送風機143は、電動機121の外表面に対して30mm以下、より好ましくは20mm以下の間隔を介して配置するとよい。また、この場合、電動機121の外表面を構成するハウジング124は、送風機143が対向する壁面部分が平坦面状に形成されていてもよいが、冷却液室127、送液ポンプ140および作動制御室129などの冷却対象となる部分に向かう傾斜面または曲面に形成されているとよい。
【0059】
また、送風機143は、ラジエター141に対しても接近して配置するとよい。この場合、送風機143は、ラジエター141に対して50mm以下、より好ましくは40mm以下の間隔を介して配置するとよい。また、この場合、送風機143は、ラジエター141との間隔は電動機121に対する間隔よりも狭い方がよい。
【0060】
冷却液外部配管144は、冷却液室127内に貯留されている冷却水をラジエター141に導くとともに電動機121の外表面に吹き付けられた冷却風を電動機121における冷却を必要とする部分に導くための部品であり、金属製のパイプで構成されている。この冷却液外部配管144は、一方の端部がハウジング124を貫通して冷却液室127に繋がっているとともに、他方の端部がラジエター141に繋がっている。そして、この冷却液外部配管144は、前記一方の端部と前記他方の端部との間に第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bがそれぞれ形成されている。
【0061】
第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bは、電動機121の外表面に吹き付けられた冷却風を電動機121における冷却を必要とする部分に導くまたは冷却風を必要としない部分への流れを阻止するための部分である。第1流路規制部145aは、ハウジング124の外表面上を送風機143側から流れてきた冷却風を送液ポンプ140側に導くための部分である。この第1流路規制部145aは、ラジエター141から電動機121側に水平方向に延びた冷却液外部配管144が送風機143側に屈曲した後、送風機143側に向かって正面視で斜め上方に延びて形成されている。
【0062】
この場合、第1流路規制部145aは、ハウジング124の上部に溝状に形成されたポンプ収容部128の縁部分に向かって延びて形成されている。また、第1流路規制部145aは、ハウジング124の湾曲した外表面に対して接するように同外表面に沿って湾曲した状態で延びて形成されている。
【0063】
なお、この場合、第1流路規制部145aは、ハウジング124の湾曲した曲面状の外表面に全長に亘って完全に接するように湾曲して形成されることが理想である。しかし、第1流路規制部145aを、ハウジング124の湾曲した曲面状の外表面に全長に亘って完全に接するように湾曲して形成することは実際には困難である。したがって、第1流路規制部145aの長手方向の両端部間においては、厳密には、ハウジング124の外表面との間に部分的に隙間が生じていることもあり得るものである。
【0064】
第2流路規制部145bは、冷却液室127の開閉キャップ127aに冷却風が送られることを阻止するための部分である。この第2流路規制部145bは、ポンプ収容部128の縁部まで延びた第1流路規制部145aの端部がポンプ収容部128とは反対側に屈曲した後、冷却液室127における送液ポンプ140とは反対側の端部側に向かって水平に延びて形成されている。この場合、第2流路規制部145bは、ハウジング124の外表面に対して接した状態で延びている。なお、この場合、第2流路規制部145bは、前記第1流路規制部145aと同様に、ハウジング124の外表面との間で部分的に隙間が生じ得るものである。
【0065】
ここで、第1流路規制部145aは、ハウジング124の外表面上を送風機143側から流れてきた冷却風の第2流路規制部145b側への流動も阻止している。すなわち、第1流路規制部145aは、第2流路規制部145bと同様に、冷却風が開閉キャップ127aに流動することも阻止する機能も有している。しかし、第1流路規制部145aは、前記したように、ハウジング124の外表面との間に隙間が生じ得るものである。したがって、第2流路規制部145bは、第1流路規制部145aから漏れ出た冷却風が開閉キャップ127aに流動することも阻止している。なお、冷却液外部配管144は、剛性を有する管のほか、可撓性を有するチューブで構成することもできる。
【0066】
制御装置150は、電動機121の作動を制御するとともに自走式電動車両100の作動も総合的に制御する電気電子機器である。より具体的には、制御装置150は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されるとともに、電動機121の作動を直接制御するためのインバータ、昇圧コンバータおよびDCDCコンバータなどからなるパワーコントールユニット(PCU)などを備えて構成されている。
【0067】
ここで、インバータは、二次電池115から出力される直流電流を交流電流に変換して電動機121に出力するとともに、電動機121から出力される交流電流を直流電流に変換して二次電池115に出力する。また、昇圧コンバータは、二次電池115から出力される電圧を昇圧して電動機121に供給する。また、DCDCコンバータは、電動機121から出力される電圧を降圧して二次電池115に供給する。
【0068】
この制御装置150は、ROMなどの記憶装置に記憶させている制御プログラムを実行することでハンドル105に設けられたアクセルグリップ105aまたはウィンカーなどの操作子の操作に応じて電動機121および送風機143の各回転駆動の制御、計器類の作動制御および灯火類の点灯制御をそれぞれ行う。また、制御装置150は、ハウジング124の制御室カバー129aの外表面に電源供給用端子および電気配線を露出させた状態で作動制御室129内に収容されている。
【0069】
この電動機ユニット120は、ハウジング124の一部がフレーム101に対してボルトを介して固定的に取り付けられている。
【0070】
(自走式電動車両100の作動)
次に、このように構成した自走式電動車両100の作動について説明する。この自走式電動車両100の運転者Uは、自走式電動車両100のシート110上に着座した状態でスイッチ操作を介して制御装置150を起動した後、アクセルグリップ105aの回動操作によるアクセル操作によって自走式電動車両100を走行させることができる。
【0071】
この場合、制御装置150は、自身の起動と同時に送風機143の作動を開始させて電動機121の冷却を開始する。これにより、送風機143は、主として、電動機121、送液ポンプ140および制御装置150をそれぞれ冷却することができる。具体的には、送風機143から出力された冷却風Wは、ハウジング124に衝突することで収容空間125aを冷却する。この場合、冷却風Wは、胴体125内に形成された冷却流路126内に存在する冷却液も冷却する。これらにより、冷却風Wは、電動機121を冷却する。
【0072】
次に、ハウジング124の外表面に衝突した冷却風Wは、ハウジング124の外表面に沿って制御室カバー129a側およびその反対側である冷却液室127およびポンプ収容部128側の2方向にそれぞれ流動する。この場合、ハウジング124の外表面に衝突した冷却風Wは、取付け部材142a,142bの各方向には取付け部材142a,142bがそれぞれ障壁となって流動が制限されるため、前記2方向により強い流れで流動する。
【0073】
次に、制御室カバー129a側に流れた冷却風W1は、制御室カバー129aの外表面に沿って流れることで作動制御室129内を冷却して制御装置150を冷却する。その後、冷却風W1は、電動機121から離脱する。
【0074】
一方、冷却液室127およびポンプ収容部128側に流れた冷却風W2は、一部がポンプ収容部128側に向かって流れて電動機121を冷却するとともに、他の一部が冷却液外部配管144における第1流路規制部145aに衝突する。この第1流路規制部145aに衝突した冷却風W3は、冷却液室127側への流れが遮られて進行方向が第1流路規制部145aに沿ってポンプ収容部128側に曲げられる。すなわち、第1流路規制部145aに衝突した冷却風W3は、第1流路規制部145aおよび電動機121をそれぞれ冷却しつつポンプ収容部128内に流れ込む。
【0075】
これにより、ポンプ収容部128には、直接ポンプ収容部128側に向かって流れている冷却風W2と第1流路規制部145aによって進行方向が曲げられた冷却風W3とが流れ込むため、これら両者の冷却風W2,W3によって送液ポンプ140が冷却される。この場合、ポンプ収容部128内に流れ込んだ冷却風W2,W3は、一部が送液ポンプ140を乗り越えてポンプ収容部128外に流れ去るとともに、他の一部がポンプ収容部128と送液ポンプ140との間の隙間を介して溝状のポンプ収容部128内を貫通して流れ去りポンプ収容部128内に滞留することはない。なお、この場合、ポンプ収容部128内を通過する冷却風W2,W3によって伝達装置収容空間132の一部も冷却される。
【0076】
また、第1流路規制部145aに衝突した冷却風W3は、一部が冷却液外部配管144とハウジング124の外表面との間の隙間を介して冷却液室127側に漏れ出ることがある。この場合、冷却液外部配管144とハウジング124の外表面との間の隙間から漏れ出た冷却風W4は、第2流路規制部145bによって冷却液室127側への流動が阻止される。これにより、冷却風W4に混じったが粉塵が開閉キャップ127aおよびその周囲に付着して汚損または開閉キャップ127aを開いた際に冷却液室127内に粉塵が混入することが防止される。
【0077】
一方、送液ポンプ140は、運転者Uによるアクセル操作による電動機121の回転駆動とともに作動して冷却流路126とラジエター141との間で冷却液を循環させる。この場合、ラジエター141は、送風機143の吸引側に隣接配置されているため、冷却液を効率的に冷却することができる。
【0078】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、自走式電動車両100は、電動機121の外表面に吹き付けられた冷却風の流れを電動機121の外部に設けられた冷却液外部配管144における第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bによって規制しているため、冷却風Wを必要な箇所に導いたり、または冷却風Wの不必要な箇所への流動を抑制することができ電動機121を効率的に冷却することができる。
【0079】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記に示す各変形例においては、上記実施形態における自走式電動車両100と同様の構成部分には同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0080】
例えば、上記実施形態においては、冷却液外部配管144は、第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bからなる2つの流路規制部を有して構成されている。しかし、冷却液外部配管144は、少なくとも1つの流路規制部を有して構成されていればよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、冷却液外部配管144は、冷却液室127とラジエター141とを接続する配管で構成した。しかし、冷却液外部配管144は、
電動機121の外表面上に設けられて電動機121を冷却する冷却液が流通する配管で構成されていればよい。したがって、冷却液外部配管144は、冷却流路126、冷却液室127、送液ポンプ140およびラジエター141のうちの少なくとも2つを相互に接続する配管で構成することができる。
【0082】
また、上記実施形態においては、第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bは、略直線状に形成した。しかし、第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bは、冷却風Wを所定の箇所に対して流動させるまたは流動を阻止するために屈曲して形成してもよいことは当然である。
【0083】
また、上記実施形態においては、第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bは、ハウジング124の外表面に沿って接するように構成した。しかし、第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bは、図6に示すように、ハウジング124の外表面に対して隙間S1,S2を有するように形成することができる。この場合、隙間S1,S2は、ハウジング124の外表面に対して一定の間隔で形成されていてもよいし、間隔が変化するように形成されていてもよい。
【0084】
具体的には、第1流路規制部145aとハウジング124の外表面との間の隙間S1は、第2流路規制部145b側に向かって隙間の間隔が狭くなるように形成されている。また、第2流路規制部145bとハウジング124の外表面との間の隙間S2は、隙間の間隔が一定に形成されている。これによれば、第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bは、第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bを通過する冷却風Wの風量を調整することができる。
【0085】
また、上記実施形態においては、第1流路規制部145aは、冷却風W2の一部を送液ポンプ140に流れるように形成した。すなわち、第1流路規制部145aは、送液ポンプ140を冷却対象部として冷却風W2の流れる方向を規制した。しかし、冷却対象部は、電動機ユニット120または自走式電動車両100において冷却の必要のある部分であれば、送液ポンプ140に限定されるものではない。したがって、冷却対象部としては、例えば、冷却流路126、冷却液室127(冷却液室127が電動機121から分離したリザーバータンクである場合を含む)、作動制御室129、第1伝達装置133および第2伝達装置134のほか、電動機ユニット120とメインフレーム106との接続部分、収納スペース111またはチェーン118などが考えられる。
【0086】
また、上記実施形態においては、第2流路規制部145bは、冷却風W4が冷却液室127の開閉キャップ127aに流れることを阻止するように形成した。すなわち、第2流路規制部145bは、開閉キャップ127aを冷却非対象部として冷却風W4の流れを阻止した。しかし、冷却非対象部は、電動機ユニット120において冷却風Wの送風を避けたい部分であれば、開閉キャップ127aに限定されるものではない。したがって、冷却非対象部としては、例えば、前記冷却対象物と同様の部分が考えられる。
【0087】
また、第1流路規制部145aおよび第2流路規制部145bは、電動機121の外表面における冷却風Wの流れを阻止するように形成することで冷却風Wを必要な箇所に留まらせることもできる。
【0088】
また、上記実施形態においては、冷却液室127は、ハウジング124内に形成した。しかし、冷却液室127は、ハウジング124の外部に別体で設けてよいことは当然である。
【0089】
また、上記実施形態においては、電動機ユニット120は、ラジエター141を備えて構成した。この場合、送風機143は、電動機121とラジエター141との間に配置されている。しかし、送風機143は、ラジエター141に対して電動機121とは反対側、すなわち、送風機143の風下側にラジエター141が位置するように配置することもできる。また、電動機ユニット120は、ラジエター141を省略して構成することもできる。
【0090】
また、上記実施形態においては、電動機ユニット120は、送風機143を1つ備えて構成した。しかし、電動機ユニット120は、少なくとも1つの送風機143を備えて構成されていればよい。したがって、電動機ユニット120は、2つ以上の送風機143を備えて構成することができる。
【0091】
また、上記実施形態においては、電動機121は、第1伝達装置133、第2伝達装置134および制御装置150をそれぞれ一体的に備えて構成されている。しかし、電動機121は、第1伝達装置133、第2伝達装置134および制御装置150をそれぞれ省略して電動機121単体で構成することができる。
【0092】
また、上記実施形態においては、電動機ユニット120は、運転者Uが両足を揃えた状態でシート110上に着座して運転を行う小型の自動二輪車(所謂スクータ)に搭載した。しかし、電動機ユニット120は、二輪または三輪のオートバイクほか、四輪のカートなどの自走式電動車両に広く搭載することができる。この場合、例えば、電動機ユニット120は、シート110に跨って着座する鞍乗り形の二輪車、三輪車または四輪車に搭載することができる。また、電動機ユニット120は、後輪駆動車のほか、前輪駆動車または全輪駆動車に搭載することもできる。また、電動機ユニット120は、前輪を操舵する自走式電動車両のほか、後輪を操舵する自走式電動車両に搭載することもできる。また、自走式電動車両100は、二次電池115をステップフロア114の下方以外の場所、例えは、シート110の下方またはカウルの内側に配置することもできる。
【符号の説明】
【0093】
U…運転者、S…隙間、W,W1~W4…冷却風の流れ、
100…自走式電動車両、101…フレーム、102…ヘッドパイプ、103…前輪、104…フロントフォーク、105…ハンドル、105a…アクセルグリップ、106…メインフレーム、106a…ピボット、107…スイングアーム、108…後輪、109…シートレール、
110…シート、111…収納スペース、112…荷台、113…テールランプ、114…ステップフロア、115…二次電池、116…ユニットカバー、117…通気口、118…チェーン、
120…電動機ユニット、121…電動機、122…ステータ、123…ロータ、124…ハウジング、125…胴体、125a…収容空間、126…冷却流路、126a…導入菅、126b…排出管、127…冷却液室、127a…開閉キャップ、128…ポンプ収容部、129…作動制御室、129a…制御室カバー、
130…出力側蓋体、131…伝達装置カバー、132…伝達装置収容空間、133…第1伝達装置、133a…第1歯車、133b…第2歯車、133c…出力軸、134…第2伝達装置、134a…第1歯車、134b…第2歯車、135…後部側蓋体、136…後部側カバー、
140…送液ポンプ、140a…入力部、141…ラジエター、142a,142b…取付け部材、143…送風機、144…冷却液外部配管、145a…第1流路規制部、145b…第2流路規制部、
150…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6