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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073849
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】捕獲装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20230519BHJP
   B03C 5/00 20060101ALI20230519BHJP
   B01D 57/02 20060101ALI20230519BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20230519BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C12M1/26
B03C5/00 Z
B01D57/02
B01J19/00 321
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186568
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】上原 聡司
【テーマコード(参考)】
4B029
4D054
4G075
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB13
4B029HA01
4B029HA09
4D054FA08
4D054FB01
4D054FB20
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA39
4G075BB05
4G075CA14
4G075EB50
4G075EC21
4G075FA12
(57)【要約】
【課題】対象物を捕獲する効率を向上させること。
【解決手段】捕獲装置100は、電極2と、第1流路11と、第2流路12と、を備えている。電極2は、対象物に電場を印加することで対象物に誘電泳動を作用させる。第1流路11は、電極2の一面の法線方向の高さが第1高さh1であって、対象物が流れる。第2流路12は、電極2の一面の法線方向の高さが第1高さh1よりも高い第2高さh2であって、第1流路11からの対象物が流れる。電極2は、第1流路11に設けられた第1電極21と、第2流路12に設けられた第2電極22と、を有する。対象物が流れる方向において、第2流路12の始端14と、第2電極22との間には、空隙G1が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に電場を印加することで前記対象物に誘電泳動を作用させる電極と、
前記電極の一面の法線方向の高さが第1高さであって、前記対象物が流れる第1流路と、
前記電極の一面の法線方向の高さが前記第1高さよりも高い第2高さであって、前記第1流路からの前記対象物が流れる第2流路と、を備え、
前記電極は、前記第1流路に設けられた第1電極と、前記第2流路に設けられた第2電極と、を有し、
前記対象物が流れる方向において、前記第2流路の始端と、前記第2電極との間には、空隙が設けられている、
捕獲装置。
【請求項2】
前記第1流路と前記第2流路とは、前記電極の一面の法線方向から見て前記第1流路の終端から前記第2流路の始端にかけて屈曲する第1屈曲部により接続されている、
請求項1に記載の捕獲装置。
【請求項3】
前記第1屈曲部は、前記電極の一面の法線方向から見てU字状である、
請求項2に記載の捕獲装置。
【請求項4】
前記第1流路は、複数の副流路を有しており、
前記複数の副流路のうち隣り合う副流路では、前記対象物の流れる向きが互いに逆であり、
前記隣り合う副流路は、前記電極の一面の法線方向から見て、一方の副流路の終端から他方の副流路の始端にかけて屈曲する第2屈曲部により接続されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の捕獲装置。
【請求項5】
前記第2流路は、始端から中間部にかけて、前記電極の一面の法線方向の高さが前記第1高さから前記第2高さまで変化する傾斜部を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の捕獲装置。
【請求項6】
前記第2流路における前記電極の一面の法線方向及び前記対象物の流れ方向の両方に交差する幅方向の寸法は、前記第1流路における前記幅方向の寸法よりも大きい、
請求項1~5のいずれか1項に記載の捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶液中の微小な対象物を捕獲するための捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、誘電泳動によって試料中の細胞を捕捉するためのマイクロデバイスが開示されている。このマイクロデバイスは、流入口と、流出口と、流入口と流出口とを連通する流路チャンバーと、を有している。流路チャンバーは、流入口から流出口に向かって流路の断面積が拡大する拡大部を有している。また、流路チャンバーには、少なくとも拡大部又は拡大部の近傍に電界発生手段が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-057372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、対象物を捕獲する効率を向上させることのできる捕獲装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る捕獲装置は、電極と、第1流路と、第2流路と、を備える。前記電極は、対象物に電場を印加することで前記対象物に誘電泳動を作用させる。前記第1流路は、前記電極の一面の法線方向の高さが第1高さであって、前記対象物が流れる。前記第2流路は、前記電極の一面の法線方向の高さが前記第1高さよりも高い第2高さであって、前記第1流路からの前記対象物が流れる。前記電極は、前記第1流路に設けられた第1電極と、前記第2流路に設けられた第2電極と、を有する。前記対象物が流れる方向において、前記第2流路の始端と、前記第2電極との間には、空隙が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様に係る捕獲装置によれば、対象物を捕獲する効率を向上させることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態に係る捕獲装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、第1比較例の捕獲装置での課題についての説明図である。
図3図3は、対象物と電極との間の距離と、対象物に作用する誘電泳動力との相関の説明図である。
図4図4は、第2比較例の捕獲装置での課題についての説明図である。
図5図5は、第3比較例の捕獲装置での課題についての説明図である。
図6A図6Aは、実施の形態に係る捕獲装置での対象物の流れについての説明図である。
図6B図6Bは、実施の形態に係る捕獲装置において傾斜部に第2電極が配置されていない場合の説明図である。
図7図7は、実施の形態に係る捕獲装置における第1電極と第2電極との間の距離の上限についての説明図である。
図8図8は、実施の形態に係る捕獲装置における空隙の長さの下限についての説明図である。
図9図9は、実施の形態の第1変形例に係る捕獲装置の概略構成を示す図である。
図10図10は、実施の形態の第2変形例に係る捕獲装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0009】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
【0010】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する場合がある。
【0011】
また、以下において、平行及び垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、矩形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。
【0012】
(実施の形態)
実施の形態では、液体中に存在する対象物は、電極に交流電圧を印加することで生じる電場による誘電泳動(DEP:Dielectrophoresis)が作用することにより、電極へと引き付けられて捕獲される。ここでいう「捕獲」とは、誘電泳動により対象物が電極へと引き付けられて、対象物が電極の引き付けられた位置から動かない状態になることを意味する。
【0013】
誘電泳動とは、不均一な電場にさらされた誘電体粒子に力が働く現象である。この力は、粒子の帯電を要求しない。
【0014】
対象物は、捕獲の対象となる粒子であって、例えば標的物質を含む粒子である。標的物質は、例えば病原性タンパク質等の分子、ウイルス(外殻タンパク質等)、又は細菌(多糖等)等を含み得る。実施の形態では、対象物は、標的物質に特異的に結合する特定物質が修飾された誘電体粒子に標的物質が結合した複合体粒子の他に、標的物質が結合していない誘電体粒子である未結合粒子を含み得る。また、対象物は、1種類の粒子に限らず、複数種類の粒子を含んでいてもよい。
【0015】
[捕獲装置の構成]
まず、実施の形態に係る捕獲装置100の構成について図1を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係る捕獲装置100の概略構成を示す図である。図1の(a)は、捕獲装置100の内部に設けられた流路部分の平面図を表している。図1の(b)は、捕獲装置100の平面図を表している。なお、図1の(b)において、電極2は捕獲装置100の表面に設置されているのではなく、後述するように流路部(つまり、第1流路11及び第2流路12)の内部に露出するように設置されている。図1の(c)は、図1の(b)に示すIc-Ic線での断面図を表している。
【0016】
実施の形態に係る捕獲装置100は、マイクロメートルのスケールで構成されるマイクロデバイスであって、例えば適宜のマイクロマシニング技術により製造される。図1に示すように、捕獲装置100は、流入口101と、流出口102と、第1流路11と、第2流路12と、第1屈曲部13と、電極2と、を備えている。
【0017】
流入口101は、対象物3及び液体4(図2参照)を含む試料を捕獲装置100の内部へ流入させるための穴である。流入口101は、第1流路11の始端に接続されている。したがって、流入口101から流入した試料は、第1流路11へと流れることになる。ここでいう「始端」は、対象物3の流れる方向において上流側の端部をいう。
【0018】
流出口102は、第1流路11、第2流路12、及び第1屈曲部13を流れた試料を捕獲装置100の外部へ流出させるための穴である。流出口102は、第2流路12の終端に接続されている。したがって、第2流路12を流れた試料は、流出口102を介して捕獲装置100の外部へと流出することになる。ここでいう「終端」は、対象物3の流れる方向において下流側の端部をいう。
【0019】
電極2は、流路部(つまり、第1流路11及び第2流路12)の内部に露出するように、第1流路11及び第2流路12の内底部にパターニングにより形成されている。電極2は、第1櫛形電極2aと、第2櫛形電極2bと、を有している。第1櫛形電極2a及び第2櫛形電極2bは、いずれも第1流路11(又は第2流路12)の長さ方向と交差する方向に延びる複数の凸電極を有している。また、第1櫛形電極2a及び第2櫛形電極2bは、それぞれの凸電極が第1流路11(又は第2流路12)の長さ方向(図1における左右方向)に沿って交互に並ぶように配置されている。
【0020】
電極2は、第1櫛形電極2aと第2櫛形電極2bとの間に交流電圧が印加されることにより、不均一な電場を生成する。したがって、電極2は、試料に含まれる対象物3に電場を印加することで対象物3に誘電泳動を作用させることが可能である。以下の説明では、電極2のうち第1流路11の内底部に形成されている電極を「第1電極21」という。言い換えれば、第1電極21は、第1櫛形電極2a及び第2櫛形電極2bのうち、第1流路11の内底部に形成されている部分に相当する。また、電極2のうち第2流路12の内底部に形成されている電極を「第2電極22」という。言い換えれば、第2電極22は、第1櫛形電極2a及び第2櫛形電極2bのうち、第2流路12の内底部に形成されている部分に相当する。つまり、電極2は、第1流路11に設けられた第1電極21と、第2流路12に設けられた第2電極22と、を有している。
【0021】
第1流路11は、流入口101から流入した試料が流れる流路であって、その長さ方向は捕獲装置100の長さ方向(図1における左右方向)に沿っている。第1流路11の終端は、第1屈曲部13の始端に接続されている。したがって、流入口101から流入した試料は、第1流路11を通って第1屈曲部13へと流れることになる。
【0022】
第1流路11には、既に述べたように第1電極21が設けられている。このため、第1流路11は、第1電極21に交流電圧が印加されることで生じる不均一な電場にさらされる。これにより、第1流路11を流れる試料に含まれる対象物3には、第1電極21が生じる不均一な電場による誘電泳動が作用する。
【0023】
第1屈曲部13は、第1流路11から流入した試料が流れる流路であって、平面視で(つまり、電極2の一面の法線方向から見て)第1流路11の終端から第2流路12の始端にかけて屈曲している。実施の形態では、第1屈曲部13は、その始端から終端にかけて試料が流れる向きが逆になるように湾曲している。つまり、実施の形態では、第1流路11と第2流路12とでは、試料(対象物3)の流れる向きが互いに逆である。また、実施の形態では、第1屈曲部13は、平面視で(つまり、電極2の一面の法線方向から見て)U字状である。
【0024】
第1屈曲部13には、電極2が設けられていない。このため、第1屈曲部13は、電極2の生じる不均一な電場にさらされることがない。これにより、第1屈曲部13を流れる試料に含まれる対象物3には、電極2が生じる不均一な電場による誘電泳動が作用しない。
【0025】
第2流路12は、第1屈曲部13の終端から流入した試料が流れる流路であって、その長さ方向は捕獲装置100の長さ方向に沿っている。また、第2流路12は、捕獲装置100の幅方向(図1における上下方向)において第1流路11と並ぶように配置されている。第2流路12の始端は、第1屈曲部13の終端に接続されている。また、第2流路12の終端は、流出口102に接続されている。したがって、第1屈曲部13から流入した試料は、第2流路12を通って流出口102へと流れることになる。
【0026】
第2流路12には、既に述べたように第2電極22が設けられている。このため、第2流路12は、第2電極22に交流電圧が印加されることで生じる不均一な電場にさらされる。これにより、第2流路12を流れる試料に含まれる対象物3には、第2電極22が生じる不均一な電場による誘電泳動が作用する。
【0027】
実施の形態では、第1流路11の高さは、第1高さh1(図6A参照)である。また、第2流路12の高さは、第1高さh1よりも高い第2高さh2(図6A参照)である。ここでいう「高さ」は、第1流路11(又は第2流路12)の内部における底面から天井までの距離である。言い換えれば、「高さ」は、電極2の一面(上面)の法線方向の高さである。つまり、第1流路11は、電極2の一面の法線方向の高さが第1高さh1であって、対象物3が流れる流路である。また、第2流路12は、電極2の一面の法線方向の高さが第1高さh1よりも高い第2高さh2であって、第1流路11からの対象物3が流れる流路である。
【0028】
また、実施の形態では、第2流路12の幅方向(図1の上下方向)の寸法は、第1流路11の幅方向の寸法よりも大きくなっている。つまり、実施の形態では、第2流路12における電極2の一面の法線方向及び対象物3の流れ方向の両方に交差する幅方向の寸法、第1流路11における幅方向の寸法よりも大きくなっている。
【0029】
ここで、第2流路12では、試料(対象物3)の流れる方向(図1における左右方向)において、第2流路12の始端14と、第2電極22との間には、空隙G1が設けられている。言い換えれば、対象物3の流れる方向において、流路の高さが第1高さh1から第2高さh2へと変化する箇所と、第2電極22との間には、空隙G1が設けられている。空隙G1の長さL1は、例えば数百μmである。空隙G1は、言い換えれば、第1電極21及び第2電極22のいずれも配置されていない領域である。
【0030】
実施の形態では、第2流路12の始端14を境にして流路の高さが第1高さh1から第2高さh2へと急峻に変化している。なお、流路の高さが第1高さh1から第2高さh2へと変化する箇所は、第2流路12の始端に限らず、例えば第1屈曲部13の中間部分に設けられていてもよい。この場合も、対象物3の流れる方向において、少なくとも第2流路12の始端14と第2電極22との間に空隙G1が設けられることになる。
【0031】
試料は、例えば送液ポンプにより流入口101から第1流路11へと輸送される。これにより、試料が第1流路11、第1屈曲部13、第2流路12、及び流出口102の順に流れる。実施の形態では、捕獲装置100は、流入口101及び流出口102が水平面に沿うように、水平面に設置されている。したがって、実施の形態では、試料は重力に従って自然落下することで流入口101から流出口102へと流れるわけではなく、送液ポンプにより輸送されることで流入口101から流出口102へと流れる。なお、試料は、流出口102を陰圧とすることにより、流入口101から第1流路11へと輸送されてもよい。
【0032】
[利点]
以下、実施の形態に係る捕獲装置100の利点について、第1比較例~第3比較例との比較を交えて説明する。まず、第1比較例の捕獲装置200について、図2を参照して説明する。図2は、第1比較例の捕獲装置200での課題についての説明図である。
【0033】
第1比較例の捕獲装置200は、図2に示すように、電極201と、流路202と、を備えている。電極201は、実施の形態に係る捕獲装置100の電極2と同じ構成であり、ここでは説明を省略する。流路202は、実施の形態に係る捕獲装置100の第1流路11、第2流路12、及び第1屈曲部13と同様に、試料が流れる流路である。流路202の高さ(電極201の一面(上面)の法線方向の高さ)は一定であり、およそ第2高さh2である。
【0034】
ここで、対象物3に作用する誘電泳動力は、対象物3と電極(ここでは、電極201)との間の距離hに応じて変化する。図3は、対象物3と電極との間の距離hと、対象物3に作用する誘電泳動力との相関の説明図である。図3に示すグラフにおいて、縦軸が距離hを表しており、横軸が対象物3に作用する誘電泳動力を表している。図3に示すように、距離hが小さければ小さい程、対象物3に作用する誘電泳動力が指数関数的に大きくなるのに対して、距離hが大きければ大きい程、対象物3に作用する誘電泳動力が指数関数的に小さくなる。
【0035】
第1比較例の捕獲装置200では、電極201の比較的近傍(例えば、距離hが数十μm)を流れる対象物3は、電極201が生じる不均一な電場による誘電泳動が作用しやすく、対象物3が流線を横切って電極201に向かって移動するため、電極201に捕獲されやすい。これに対して、電極201から比較的遠方(例えば、流路の天井付近)を流れる対象物3は、電極201が生じる不均一な電場による誘電泳動が作用しにくく、電極201に捕獲されることなく流されてしまう。したがって、第1比較例の捕獲装置200では、多数の対象物3が電極201に捕獲されることなく流れてしまうため、対象物3を捕獲する効率が低くなる、という課題がある。
【0036】
次に、第2比較例の捕獲装置210について、図4を参照して説明する。図4は、第2比較例の捕獲装置210での課題についての説明図である。第2比較例の捕獲装置210は、図4に示すように、電極211と、流路212と、を備えている。電極211は、実施の形態に係る捕獲装置100の電極2と同じ構成であり、ここでは説明を省略する。流路212は、実施の形態に係る捕獲装置100の第1流路11、第2流路12、及び第1屈曲部13と同様に、試料が流れる流路である。流路212の高さ(電極211の一面(上面)の法線方向の高さ)は一定であり、およそ第1高さh1である。
【0037】
第2比較例の捕獲装置210では、第1比較例の捕獲装置200とは異なり、対象物3の多数が電極211の比較的近傍を流れる。このため、対象物3の多数に、電極211が生じる不均一な電場による誘電泳動が作用しやすくなる。しかしながら、第2比較例の捕獲装置210では、第1比較例の捕獲装置200と比較して流路212の高さを低くしたために、流路の断面積が小さくなっていることから、対象物3の流速が速くなっている。このため、第2比較例の捕獲装置210では、対象物3に作用する誘電泳動力F2に対して、対象物3に作用する流体抵抗力F1の方が非常に大きいため、やはり多数の対象物3が電極211に捕獲されることなく流されてしまう。したがって、第2比較例の捕獲装置210では、第1比較例の捕獲装置200と同様に、多数の対象物3が電極211に捕獲されることなく流れてしまうため、対象物3を捕獲する効率が低くなる、という課題が依然としてある。
【0038】
なお、第2比較例の捕獲装置210において、対象物3の流速を遅くして対象物3が電極211に捕獲されやすくするために、流路の幅方向(図4における紙面と垂直な方向)の寸法を大きくして断面積を大きくすることが考えられる。しかしながら、この場合、流路212を流れる試料(対象物3)の単位時間当たりの流量が小さくなるため、やはり対象物3を捕獲する効率が低くなる、という課題がある。
【0039】
次に、第3比較例の捕獲装置220について、図5を参照して説明する。図5は、第3比較例の捕獲装置220での課題についての説明図である。第3比較例の捕獲装置220は、第1流路221と、第2流路222と、電極223と、を備えている。第1流路221及び第2流路222は、それぞれ実施の形態に係る捕獲装置100の第1流路11及び第2流路12と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。電極223は、以下の点を除いて、実施の形態に係る捕獲装置100の電極2と同じ構成である。すなわち、電極223は、実施の形態に係る捕獲装置100とは異なり、対象物3が流れる方向において、第1流路221及び第2流路222の内底部に連続して配置されるように形成されている。このため、第3比較例の捕獲装置220では、第2流路222の始端224においても途切れることなく電極223が配置されており、実施の形態に係る捕獲装置100のような空隙G1が設けられていない。
【0040】
第3比較例の捕獲装置220では、第1流路221の第1高さh1が比較的低いことから、多数の対象物3に、電極223が生じる不均一な電場による誘電泳動が作用しやすくなる。このため、第1流路221においては、多数の対象物3は、電極223に引き付けられることにより電極223の近傍を流れるようになる。ここで、第1流路221は第1高さh1が比較的低いことから、対象物3の流れは層流となる。したがって、対象物3が第1流路221から第2流路222へと移動しても、この層流が維持されることで、多数の対象物3は第2流路222においても電極223の近傍を流れる。そして、第2流路222の第2高さh2は、第1流路221の第1高さh1と比較して高いことから、第2流路222の断面積が第1流路221の断面積よりも大きくなり、第2流路222において対象物3の流速が遅くなる。つまり、第2流路222においては、多数の対象物3は、電極223の近傍を比較的遅い流速で流れることになる。
【0041】
したがって、第3比較例の捕獲装置220では、第2流路222において対象物3に作用する流体抵抗力に対して、対象物3に作用する誘電泳動力が大きくなることから、対象物3が電極223で捕獲されやすくなる。
【0042】
ここで、対象物3が第2流路222の始端224を超えると、第2流路222の断面積の増大に伴って対象物3の流速も増大するが、対象物3の流速は急峻に低下するわけではなく、時間経過に伴って連続的に低下する。このため、第2流路222の始端224を超えた時点で流速が十分に低下した対象物3が電極223に捕獲される一方、流速が十分に低下していない対象物3は、第2流路222の始端224から離れた箇所にある電極223で捕獲されることになる。つまり、第3比較例の捕獲装置220では、対象物3が捕獲される箇所にばらつきが生じやすく、結果として対象物3を捕獲する効率が向上しにくい、という課題がある。特に、対象物3が複数種類の粒子を含んでいる場合、粒子の種類ごとの性質又は粒径の差等により、上記のばらつきが更に大きくなりやすい。
【0043】
そこで、実施の形態に係る捕獲装置100では、対象物3の流れる方向において、第2流路12の始端14と第2電極22との間に空隙G1を設けることにより、上記の課題の解決を図っている。以下、実施の形態に係る捕獲装置100の利点について、図6Aを参照して説明する。図6Aは、実施の形態に係る捕獲装置100での対象物3の流れについての説明図である。なお、図6Aでは、説明をわかりやすくするため、第1屈曲部13の図示を省略し、かつ、第1流路11及び第2流路12を直線状に並ぶように図示している。また、図6Aでは、図1の(c)とは異なり、第2流路12が傾斜部15を有しているが、この傾斜部15については後述する。
【0044】
まず、第1流路11では、第1流路11の第1高さh1が比較的低いことから、多数の対象物3に、第1電極21が生じる不均一な電場による誘電泳動が作用しやすくなる。一方、第1流路11では、対象物3の流速が比較的速いことから、対象物3に作用する誘電泳動力F21に対して、対象物3に作用する流体抵抗力F11が大きくなっている。このため、第1流路11においては、多数の対象物3は、流線を横切って第1電極21の近傍にまで移動しつつ、第1電極21に捕獲されることなく流れるため、層流となって第1電極21の近傍を流れる。
【0045】
対象物3が第2流路12の始端14を超えると、流路の断面積の増大に伴って対象物3の流速が遅くなるが、層流が維持されるため、多数の対象物3は第2流路12においても内底部の近傍を流れる。ここで、実施の形態に係る捕獲装置100では、空隙G1が設けられている、つまり第2流路12の始端14から所定の間隔を空けて第2電極22が配置されている。このため、対象物3が空隙G1を流れている間においては、第2電極22が生じる不均一な電場による誘電泳動が作用することがなく、対象物3が空隙G1に留まることがない。そして、対象物が空隙G1を流れている間に、多数の対象物3の流速が十分に低下する。これにより、流速が十分に低下した多数の対象物3が第2電極22の始端に差し掛かると、対象物3に作用する流体抵抗力F12に対して、対象物3に作用する誘電泳動力F22が大きくなることから、第2電極22の始端にて多数の対象物3が捕獲されることになる。
【0046】
したがって、実施の形態に係る捕獲装置100では、多数の対象物3が第2電極22の始端に集中して捕獲されるため、第3比較例の捕獲装置220と比較して、対象物3を捕獲する効率を向上させることができる。なお、実施の形態に係る捕獲装置100では、対象物3が複数種類の粒子を含んでいる場合であっても、上記と同様に対象物3を捕獲する効率を向上させることができる。
【0047】
また、実施の形態に係る捕獲装置100では、図1に示すように、第1流路11と第2流路12とは、平面視で第1流路11の終端から第2流路12の始端にかけて屈曲する第1屈曲部13により接続されている。このため、実施の形態に係る捕獲装置100では、1つの電極2を2つの流路(第1流路11及び第2流路12)で共用することが可能である。したがって、実施の形態に係る捕獲装置100では、以下のような利点がある。
【0048】
例えば、第1流路11及び第2流路12が直線状に並ぶように配置されている場合、空隙G1を設けるためには、第1流路11用の第1電極21と、第2流路12用の第2電極22とを、別体で構成する必要がある。この場合、第1電極21がパターニングにより形成された第1流路11と、第2電極22がパターニングにより形成された第2流路12とを接合するために、μmスケールで精密な位置合わせを行う、つまりアライメントを行う必要が生じるため、製造工程が複雑化するという課題が生じる。
【0049】
これに対して、実施の形態に係る捕獲装置100では、第1電極21と第2電極22とを別体に構成することなく空隙G1を設けることができるため、上記のようなアライメントを行う必要がなく、製造工程の簡素化を図ることができる、という利点がある。
【0050】
ところで、図1の(c)では、第2流路12の高さは、第2流路12の始端14において急峻に第1高さh1から第2高さh2まで変化しているが、これに限られない。例えば、図6Aに示すように、第2流路12は、傾斜部15を有していてもよい。
【0051】
傾斜部15は、第2流路12の始端14から中間部にかけて、電極2の一面(上面)の法線方向の高さが第1高さh1から第2高さh2まで変化するように構成されている。ここでは、傾斜部15は、第2流路12の天井が傾斜することにより構成されている。つまり、図6Aでは、第2流路12の高さは、第2流路12の始端14から連続的に変化している。
【0052】
第2流路12が傾斜部15を有しておらず、第2流路12の高さが始端14において急峻に変化する場合、流路の断面積の急峻な変化により渦が発生し、対象物3の流れに乱れが生じる可能性がある。これに対して、第2流路12が傾斜部15を有している場合、流路の断面積が急峻に変化するのを抑制することができるので、渦が発生しにくいことから対象物3の流れに乱れが生じにくく、対象物3が第2電極22の始端にて捕獲されやすくなる、という利点がある。
【0053】
ここで、図6Aに示す例では、傾斜部15に第2電極22の一部が配置されているが、図6Bに示す例のように、傾斜部15に第2電極22が配置されていなくてもよい。図6Bは、実施の形態に係る捕獲装置100において傾斜部15に第2電極22が配置されていない場合の説明図である。図6Bに示す例では、図6Aに示す例と比較して、空隙G1の長さL1が長くなっている。このため、図6Bに示す例では、傾斜部15において対象物3の流れが十分に発達した後に、対象物3が第2電極22の始端に差し掛かるため、対象物3が第2電極22の始端にて更に捕獲されやすくなることが期待できる。
【0054】
以下、実施の形態に係る捕獲装置100における空隙G1の長さL1について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、実施の形態に係る捕獲装置100における第1電極21と第2電極22との間の距離L2の上限についての説明図である。図8は、実施の形態に係る捕獲装置100における空隙G1の長さL1の下限についての説明図である。ここで、距離L2は、空隙G1の長さL1よりも長い距離である。したがって、空隙G1の長さL1の上限は、距離L2の上限よりも短くなる。
【0055】
図7に示すように、第1流路11において第1電極21に引き付けられた対象物3は、第1電極21の終端から第2電極22の始端までの電極2が存在しない箇所を移動していく間に、熱拡散によって流路の内底部から離れていく。このため、対象物3が流路の内底部から離れるのを抑制しつつ、第2電極22の始端にて捕獲するために、第1電極21の終端から第2電極22の始端までの距離L2の上限は、以下に示す距離以下に設定されるのが好ましい。
【0056】
一般的に、溶媒中の粒子の拡散係数を「D」とした場合、時間「t」内に拡散する代表長さ「x」は、以下の数式により表される。
【0057】
【数1】
【0058】
また、拡散係数「D」は、以下の数式により表される。以下の数式において、「k」はボルツマン定数、「T」は温度、「μ」は粘性、「r」は分子半径を表している。
【0059】
【数2】
【0060】
粒子が平均速度「u」で流路内を流れるとき、拡散距離が、粒子に誘電泳動力が十分働く流路の内底部からの距離以内であればよいので、この長さを「h」とすると、距離L2の上限「Lul」は、以下の数式により見積もられる。
【0061】
【数3】
【0062】
例えば、第2流路12が高さ×幅=100μm×1mmであって、試料を流量1μL/minで送液している、と仮定する。代表的な例として、h=10μmとすると、粒子の直径が1μm、環境が室温下である場合、Lul=3.8mmとなる。ここで、距離L2は、空隙G1の長さL1よりも長いため、空隙G1の長さL1の上限は、上記の数値よりも小さくなる。
【0063】
一方、図8に示すように、対象物3が第2電極22の始端にて捕獲されるためには、対象物3の流れが第2流路12において十分に発達した以降に、第2電極22に到達する必要がある。このための指標として、管内での対象物3の流れの助走区間を考えると、管径「d」の円管内での対象物3の流れが十分発達する距離、言い換えれば空隙G1の長さL1の下限「Lll」は、レイノルズ数によって以下の数式で表される。以下の数式において、「Re」はレイノルズ数を表している。
【0064】
【数4】
【0065】
そして、第2流路12の高さ、及び第2流路12における粒子の平均速度をそれぞれ代表長さ、及び代表速度としてレイノルズ数を表すと、空隙G1の長さL1の下限「Lll」は、以下の数式で表される。以下の数式において、「h」は第2流路12の第2高さh2である。
【0066】
【数5】
【0067】
例えば第2流路12が高さ×幅=100μm×1mmであって、試料を流量1μL/minで送液している場合、Lll=833nmとなる。よって、空隙G1の長さL1は、少なくとも数μmを確保することが好ましい。
【0068】
[効果等]
以上のように、実施の形態に係る捕獲装置100は、電極2と、第1流路11と、第2流路12と、を備えている。電極2は、対象物3に電場を印加することで対象物3に誘電泳動を作用させる。第1流路11は、電極2の一面の法線方向の高さが第1高さh1であって、対象物3が流れる。第2流路12は、電極2の一面の法線方向の高さが第1高さh1よりも高い第2高さh2であって、第1流路11からの対象物3が流れる。電極2は、第1流路11に設けられた第1電極21と、第2流路12に設けられた第2電極22と、を有する。対象物3が流れる方向において、第2流路12の始端14と、第2電極22との間には、空隙G1が設けられている。
【0069】
これによれば、対象物3が空隙G1を流れている間において、対象物3に誘電泳動が作用しないことから、空隙G1に留まることなく多数の対象物3の流速が十分に低下する。このため、流速が十分に低下した多数の対象物3が第2電極22の始端に差し掛かると、対象物3に作用する流体抵抗力F12に対して、対象物3に作用する誘電泳動力F22が大きくなることから、第2電極22の始端にて多数の対象物3が捕獲されることになる。つまり、これによれば、多数の対象物3が第2電極22の始端に集中して捕獲されるため、対象物3を捕獲する効率を向上させることができる。
【0070】
また、実施の形態に係る捕獲装置100では、第1流路11と第2流路12とは、電極2の一面の法線方向から見て第1流路11の終端から第2流路12の始端14にかけて屈曲する第1屈曲部13により接続されている。
【0071】
これによれば、1つの電極2を2つの流路(第1流路11及び第2流路12)で共用することが可能であることから、第1電極21と第2電極22とを別体に構成することなく空隙G1を設けることができるため、捕獲装置100の製造工程においてアライメントを行う必要がなく、製造工程の簡素化を図ることができる、という利点がある。
【0072】
また、実施の形態に係る捕獲装置100では、第1屈曲部13は、電極2の一面の法線方向から見てU字状である。
【0073】
これによれば、第1屈曲部13が平面視で直角の角を複数有する場合と比較して、試料(対象物3)が第1流路11から第2流路12へと流れやすくなる、という利点がある。
【0074】
また、実施の形態に係る捕獲装置100では、第2流路12は、始端14から中間部にかけて、電極2の一面の法線方向の高さが第1高さh1から第2高さh2まで変化する傾斜部15を有する。
【0075】
これによれば、流路の断面積が急峻に変化するのを抑制することができるので、渦が発生しにくいことから対象物3の流れに乱れが生じにくく、対象物3が第2電極22の始端にて捕獲されやすくなる、という利点がある。
【0076】
また、実施の形態に係る捕獲装置100では、第2流路12における電極2の一面の法線方向及び対象物3の流れ方向の両方に交差する幅方向の寸法は、第1流路11における幅方向の寸法よりも大きい。
【0077】
これによれば、第1流路11及び第2流路12の各々の幅方向の寸法が同じ場合と比較して、第2流路12において対象物3の流速を更に遅くすることができるので、第2電極22の始端にて対象物3を更に捕獲しやすくなる、という利点がある。
【0078】
(変形例)
以下、本開示の1つ又は複数の態様に係る捕獲装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0079】
[第1変形例]
以下、実施の形態の第1変形例に係る捕獲装置100Aについて、図9を参照して説明する。図9は、実施の形態の第1変形例に係る捕獲装置100Aの概略構成を示す図である。なお、以下では、第1変形例に係る捕獲装置100Aにおいて、実施の形態に係る捕獲装置100と共通する構成については説明を省略する。
【0080】
図9に示すように、第1変形例に係る捕獲装置100Aでは、第1流路11と第2流路12とは、平面視で電極2を迂回するように折れ曲がった形状を有する第1屈曲部13Aにより接続されている。したがって、第1変形例に係る捕獲装置100Aでは、第1流路11及び第2流路12のいずれにおいても試料(対象物3)の流れる向きが同じである。
【0081】
第1変形例に係る捕獲装置100Aにおいても、実施の形態に係る捕獲装置100と同様に、1つの電極2を2つの流路(第1流路11及び第2流路12)で共用することが可能である。
【0082】
[第2変形例]
以下、実施の形態の第2変形例に係る捕獲装置100Bについて、図10を参照して説明する。図10は、実施の形態の第2変形例に係る捕獲装置100Bの概略構成を示す図である。図10では、電極2の具体的な形状の図示を省略している。なお、以下では、第2変形例に係る捕獲装置100Bにおいて、実施の形態に係る捕獲装置100と共通する構成については説明を省略する。
【0083】
図10に示すように、第2変形例に係る捕獲装置100Bでは、第1流路11は、複数(ここでは、2つ)の副流路11Aを有している。副流路11Aは、実施の形態に係る捕獲装置100の第1流路11と同様に、流入口101から流入した試料が流れる流路であって、第1電極21が設けられている。また、副流路11Aの高さは、第1高さh1である。
【0084】
また、隣り合う2つの副流路11Aにおいて、一方の副流路11A(流入口101側の副流路11A)の終端と他方の副流路11A(流出口102側の副流路11A)の終端とは、第2屈曲部13Bにより接続されている。さらに、他方の副流路11Aの終端と第2流路12の始端14とは、第2屈曲部13Bにより接続されている。
【0085】
第2屈曲部13Bは、実施の形態に係る捕獲装置100の第1屈曲部13と同様に、平面視で一端から他端にかけて試料(対象物3)が流れる向きが逆になるようにU字状に湾曲している。また、第2屈曲部13Bには、実施の形態に係る捕獲装置100の第1屈曲部13と同様に、電極2が設けられていない。
【0086】
つまり、実施の形態の第2変形例に係る捕獲装置100Bでは、第1流路11は、複数の副流路11Aを有している。複数の副流路11Aのうち隣り合う副流路11Aでは、対象物3の流れる向きが互いに逆である。隣り合う副流路11Aは、電極2の一面の法線方向から見て、一方の副流路11Aの終端から他方の副流路11Aの始端にかけて屈曲する第2屈曲部13Bにより接続されている。
【0087】
これによれば、複数の副流路11Aにより限られたスペースにおいて第1流路11を長くすることができ、対象物3に誘電泳動を作用させる区間を稼ぐことができるので、対象物3が第1電極21の近傍を流れやすくなる、という利点がある。
【0088】
[その他の変形例]
実施の形態に係る捕獲装置100では、第1屈曲部13は、平面視で(つまり、電極2の一面の法線方向から見て)U字状であるが、形状はこれに限られない。例えば、第1屈曲部13は、平面視で多角形の辺をなすように折れ曲がった形状であってもよい。
【0089】
実施の形態に係る捕獲装置100では、第1流路11と第2流路12とは第1屈曲部13により接続されているが、これに限られない。例えば、捕獲装置100は、第1屈曲部13を備えていなくてもよい。この場合、第1流路11と第2流路12とは、直線状に並んでいればよい。また、この場合、第1電極21と第2電極22とは、別体で構成されていればよい。
【0090】
実施の形態に係る捕獲装置100では、第2流路12における電極2の一面の法線方向に沿った断面積は、第1流路11における電極2の一面の法線方向に沿った断面積よりも大きいが、これに限られない。例えば、第1流路11の上記断面積と、第2流路12の上記断面積とは同じであってもよい。
【0091】
実施の形態に係る捕獲装置100では、電極2は、第1流路11及び第2流路12の内底部に設置されているが、これに限られない。例えば、電極2は、第1流路11及び第2流路12の内部の天井、又は側壁に設置されていてもよい。
【0092】
また、実施の形態に係る捕獲装置100では、電極2は、第1流路11及び第2流路12の内側に露出するように設置されているが、これに限られない。例えば、電極2は、電極2が生じる不均一な電場による誘電泳動が対象物3に対して十分に作用し得る位置であれば、流路の壁に埋め込み配置される等して、第1流路11及び第2流路12の内側に露出しないように設置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示は、例えば感染症等の原因となるウイルス等の微小な標的物質が結合した対象物を捕獲する捕獲装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
11 第1流路
11A 副流路
12 第2流路
13、13A 第1屈曲部
13B 第2屈曲部
14 始端
15 傾斜部
2 電極
2a 第1櫛形電極
2b 第2櫛形電極
21 第1電極
22 第2電極
3 対象物
4 液体
100、100A、100B 捕獲装置
101 流入口
102 流出口
200 第1比較例の捕獲装置
201 電極
202 流路
210 第2比較例の捕獲装置
211 電極
212 流路
220 第3比較例の捕獲装置
221 第1流路
222 第2流路
223 電極
224 始端
h、L2 距離
h1 第1高さ
h2 第2高さ
F1、F11、F12 流体抵抗力
F2、F21、F22 誘電泳動力
G1 空隙
L1 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10