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特開2023-73856予測方法、予測プログラム、及び予測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073856
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】予測方法、予測プログラム、及び予測装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20230519BHJP
   G16H 50/70 20180101ALI20230519BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20230519BHJP
【FI】
G16H20/00
G16H50/70
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186579
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】515099908
【氏名又は名称】株式会社サイキンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沢井 悠
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 諭史
(72)【発明者】
【氏名】栗山 実
(72)【発明者】
【氏名】福島 崇芳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 侑相
【テーマコード(参考)】
4B063
5L099
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QS28
4B063QX01
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、検査以外の簡便な手段により腸内フローラの状態を予測するための予測方法、予測プログラム、及び予測装置を提供することを目的とする。
【解決手段】予測方法は、コンピュータに、予測対象の生体についての生活習慣に関する質問項目を含む複数の質問項目によるアンケートに対する回答結果を取得し、取得された前記回答結果を入力として、前記回答結果と前記アンケートに予め関連付けられた腸内フローラの状態を示す検査データとの相関に基づいて、前記予測対象の生体の前記腸内フローラの状態を予測する、処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
予測対象の生体についての生活習慣に関する質問項目を含む複数の質問項目によるアンケートに対する回答結果を取得し、
取得された前記回答結果を入力として、前記回答結果と前記アンケートに予め関連付けられた腸内フローラの状態を示す検査データとの相関に基づいて、前記予測対象の生体の前記腸内フローラの状態を予測する、
処理を実行させる予測方法。
【請求項2】
前記アンケートの前記複数の質問項目には、前記生活習慣に関する質問項目としての、予め定められた食事習慣に関する第1質問項目、運動習慣に関する第2質問項目、及び便通状況に関する第3質問項目を少なくとも含む請求項1に記載の予測方法。
【請求項3】
前記アンケートの前記複数の質問項目には、年齢及び性別の少なくとも一方を含む属性情報に関する質問項目、並びに、前記生活習慣に関する質問項目としての、飲酒習慣に関する第4質問項目、喫煙習慣に関する第5質問項目、睡眠習慣に関する第6質問項目、及び既往歴に関する第7質問項目の少なくとも一つを含む請求項2に記載の予測方法。
【請求項4】
前記予測では、複数の前記生活習慣に関する質問項目ごとの前記腸内フローラの状態の予測から求まる、前記質問項目のカテゴリごとの評価を出力する請求項1~請求項3の何れか1項に記載の予測方法。
【請求項5】
予測された前記腸内フローラの状態と、当該腸内フローラの状態について予め定められた改善提案とを提示する請求項1~請求項4の何れか1項に記載の予測方法。
【請求項6】
前記改善提案には、前記生活習慣に関する複数の質問項目のカテゴリごとに予め定められた改善提案を更に含む請求項5に記載の予測方法。
【請求項7】
前記相関は予測モデルとして構成され、
前記予測モデルは、学習用データとして、体内の常在細菌叢の複数の菌組成データを元に腸内フローラの状態を数値化した前記検査データと、当該検査データに対応する前記複数の質問項目の前記回答結果とを用いて、前記検査データに対応する前記複数の質問項目のカテゴリに対して予め定められた回帰係数を求め、前記回帰係数に基づいたシミュレーションによって前記腸内フローラの状態の予測を出力するように構成されている請求項1~請求項6の何れか1項に記載の予測方法。
【請求項8】
コンピュータに、
予測対象の生体についての生活習慣に関する質問項目を含む複数の質問項目によるアンケートに対する回答結果を取得し、
取得された前記回答結果を入力として、前記回答結果と前記アンケートに予め関連付けられた腸内フローラの状態を示す検査データとの相関に基づいて、前記予測対象の生体の前記腸内フローラの状態を予測する、
処理を実行させる予測プログラム。
【請求項9】
予測対象の生体についての生活習慣に関する質問項目を含む複数の質問項目によるアンケートに対する回答結果を取得する取得部と、
取得された前記回答結果を入力として、前記回答結果と前記アンケートに予め関連付けられた腸内フローラの状態を示す検査データとの相関に基づいて、前記予測対象の生体の前記腸内フローラの状態を予測する予測部と、
を含む予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、予測方法、予測プログラム、及び予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腸内細菌叢の検査により、体内の菌叢状態である腸内フローラの状態を予測する技術がある。
【0003】
例えば、腸内細菌に関する複数の指標を用いて腸内フローラスコアを算出する技術がある(特許文献1参照)。この技術では、ユーザのヒト腸内細菌に関する情報を検査機関からネットワークを介して取得することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-078273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、腸内細菌叢の検査を受検するには比較的、高額な費用を要する。そのため、検査を受けようとするユーザは健康意識が高く、金銭的な余裕のあるユーザに限られていた。そのため、健康意識が高く、腸内フローラの状態を把握したいユーザがいたとしても、腸内細菌叢の検査の受検に至っていない、という課題があった。また、そのようなユーザは、腸内細菌叢の検査を受けないと腸内フローラの状態を把握できないため生活習慣の改善に取り組むに至らない、という課題もあった。
【0006】
以上の背景から、検査以外の簡便な手段により、腸内フローラの状態を予測した結果を提示できる手法が求められている。
【0007】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、検査以外の簡便な手段により腸内フローラの状態を予測できる予測方法、予測プログラム、及び予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様は、予測方法であって、コンピュータに、予測対象の生体についての生活習慣に関する質問項目を含む複数の質問項目によるアンケートに対する回答結果を取得し、取得された前記回答結果を入力として、前記回答結果と前記アンケートに予め関連付けられた腸内フローラの状態を示す検査データとの相関に基づいて、前記予測対象の生体の前記腸内フローラの状態を予測する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、検査以外の簡便な手段により腸内フローラの状態を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の学習装置及び予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】実施形態の学習装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図3】(A)実際の検査データの腸内フローラの状態の分布を示すグラフと、(B)アンケートの回答情報から予測モデルを用いて予測した腸内フローラの状態の分布を示すグラフである。
図4】学習した予測モデルの予測性能を検証した残差分析の結果を示すグラフである。
図5】実施形態の予測装置を含む予測システムの構成を示すブロック図である。
図6】アンケートの回答画面の一例である。
図7】予測された腸内フローラの状態の判定結果と、改善提案を示す提示画面の例である。
図8】実施形態の学習装置による学習処理の流れを示すフローチャートである。
図9】実施形態の予測装置による予測処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本開示の実施形態の概要を説明する。上記課題で説明したように、腸内細菌叢の検査には課題がある。そこで本実施形態では、生活習慣に関するアンケートの回答結果を用いて、体内の菌叢状態である腸内フローラの状態を予測する。腸内細菌叢は体内の菌叢(常在細菌叢)の一例である。ここでいう体内の菌叢とは、体内の部位に常在している菌叢(常在細菌叢)である。体内の常在細菌叢には、腸内のほか、口腔、眼窩等の体内の細菌叢が含まれ得る。
【0013】
腸内フローラの状態の予測には、アンケートの回答結果とアンケートに関連付けられた検査データとの相関を学習した予測モデルを用いる。検査データには、腸内フローラの状態を示す数値化されたデータ(腸内フローラスコア)を用いる。
【0014】
なお、以下の説明では、予測対象をヒトであるユーザの腸内フローラの状態とする場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。例えば、飼い主がアンケートに回答できる家庭用のペット、又は飼育動物といった生体であれば、本実施形態の手法は同様に適用可能である。
【0015】
本開示の実施形態は、学習装置と予測装置とに分けてそれぞれについて説明する。
【0016】
図1は、学習装置100及び予測装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、学習装置100及び予測装置200は同様のハードウェア構成とすることができる。
【0017】
図1に示すように、学習装置100は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0018】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、予測プログラムが格納されている。
【0019】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0020】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0021】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能してもよい。
【0022】
通信インタフェース17は、端末等の他の機器と通信するためのインタフェースである。当該通信には、例えば、イーサネット(登録商標)若しくはFDDI等の有線通信の規格、又は、4G、5G、若しくはWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格が用いられる。
【0023】
予測装置200についても同様に、CPU21、ROM22、RAM23、ストレージ24、入力部25、表示部26及び通信I/F27を有する。各構成は、バス29を介して相互に通信可能に接続されている。ROM22又はストレージ24には、予測プログラムが格納されている。ハードウェア構成の各部についての説明は、学習装置100と同様であるため省略する。
(学習装置)
学習装置100の各機能構成について説明する。図2は、本実施形態の学習装置100の構成を示すブロック図である。各機能構成は、CPU11がROM12又はストレージ14に記憶された学習プログラムを読み出し、RAM13に展開して実行することにより実現される。
【0024】
図2に示すように、学習装置100は機能的には、学習データ記憶部102と、モデル記憶部104と、取得部110と、学習部112とを含んで構成される。
【0025】
取得部110は、学習データを取得し、学習データ記憶部102に格納する。学習データ記憶部102には、取得部110で取得された学習データが格納される。学習データは、腸内細菌叢の複数の菌組成データを元に腸内フローラの状態を数値化した検査データと、当該検査データに対応する複数の質問項目によるアンケートの回答結果とである。なお、取得部110は、学習データを予測モデルの学習に用いるため、特徴量化して学習データ記憶部102に格納する。学習データの取得先は、腸内フローラの状態を示す検査データから構築済みの既存データベース、外部のデータベース等、適宜、必要な取得先を設定できる。腸内細菌叢の検査は検査機関により実施されている。検査では、便検体と、生活習慣に関するアンケートとが実施され、これらを解析した検査データが得られている。そのため、取得先のデータベースには、検査データと、検査時のアンケートの回答結果とが保存されており、これを学習データとして用いる。
【0026】
数値化された検査データには、上述の特許文献1に記載の腸内フローラの状態に関わる腸内フローラスコアを用いる。特許文献1に記載の腸内フローラスコアは、50点未満がE、50点以上60点未満がD、60点以上70点未満がC、65点以上70点未満がB、70点以上がAの判定がスコアとして示される。腸内フローラスコアの点数が高いほど、腸内細菌の腸内フローラの状態が良好であることを示し、点数が低いほど腸内フローラの状態が不良であることを示している。D又はE判定の場合は生活習慣の改善が促されるスコアである。腸内フローラスコアの点数は、検査結果である腸内細菌叢の菌組成データ(ヒト腸内細菌データ)が示す各指標の判定スコアを加算して求められている。菌組成データが示す各指標は、腸内細菌の検査結果は、多様性関連指標、短鎖脂肪酸産生指標、腸管免疫関連指標、口腔内細菌関連指標、及び下痢便秘関連指標が挙げられ、各指標について判定スコアが算出される。また、検査データにおいては、腸内細菌叢のタイプ(腸内フローラタイプ)も求められている。本実施形態では、予測する腸内フローラの状態に検査データの腸内フローラスコアを用いる。なお、予測する腸内フローラの状態は腸内フローラスコアに限定されるものではなく、体内の腸内フローラの状態が数値として求められた検査データであれば適用できる。また、上記課題で説明した腸内細菌叢の検査では、採取した検体を検査機関において検体処理して上記各指標を得る必要がある。そのため、検査工程に係るコスト等から検査には比較的高額な費用を要してしまう。
【0027】
複数の質問項目によるアンケートは、属性情報の質問項目、及び生活習慣に関する質問項目の複数の質問項目からなり、回答結果にはそれぞれの質問項目に対する回答が含まれる。なお、アンケートについては予測装置200の説明で詳細に説明する。
【0028】
学習部112は、学習データ記憶部102に格納された学習データを用いて、腸内フローラの状態(腸内フローラスコア)を予測するための予測モデルを学習し、モデル記憶部104に格納する。予測モデルには、回帰問題として腸内フローラの状態の予測が可能な任意の学習手法を用いることができる。例えば、検査データを事前分布、回答結果を共変量として階層ベイズモデルに基づき事後分布として生成する手法を用いることができる。学習部112は、任意の学習手法により、検査データの腸内フローラスコアを教師データとして用いて、教師データに対する回答結果の複数の質問項目のカテゴリごとの回帰係数を導出し、回帰係数を用いて体内の腸内フローラの状態を予測するための予測モデルを学習する。表1に、教師データに対して求められる複数の質問項目のカテゴリごとの回帰係数の一例を示す。
【表1】
【0029】
表1の項目はアンケートの質問項目のカテゴリに対応しており、年齢(age_rank)、性別(gender_M)、飲酒習慣(drink_score)、運動習慣(exercise_score)、食事習慣(food_eat_score)、睡眠習慣(sleep_score)、喫煙習慣(smoke_score)がある。それぞれの項目の回帰係数は、マイナスで表されており、絶対値が大きいほど腸内フローラスコアに対する回答内容の影響が強いことを示している。学習部112により学習される予測モデルは、上記回帰係数に基づいたシミュレーションによって腸内フローラの状態の予測を出力するように構成される。上記回帰係数を用いた予測モデルの学習により、アンケートの回答結果と検査データとの相関が学習される。学習した予測モデルを用いてユーザの腸内フローラの状態をシミュレーションすることで、腸内フローラスコアを疑似的に合成したスコアを出力できる。なお、予測モデルは、上述のように腸内フローラの状態をスコアとして予測するように予め学習しておく態様だけでなく、アンケートの回答結果と検査データとの相関を示す回帰係数を格納しておき、予測を導出できるようにしたモデルであってもよい。
【0030】
[予測モデルの検証]
学習部112により学習した予測モデルの予測性能を検証した。検証において、実際の検査データとの比較と、残差分析とを行った。
【0031】
図3は、(A)実際の検査データの腸内フローラの状態の分布を示すグラフと、(B)アンケートの回答情報から予測モデルを用いて予測した腸内フローラの状態の分布を示すグラフである。(A)及び(B)は、それぞれ、右が男性、左が女性を集計したグラフであり、グラフの横軸はフローラスコア、縦軸はサンプル数を表している。(B)の予測した腸内フローラの状態は、(A)実際の検査データの腸内フローラの状態に近しい分布を出力できている。
【0032】
図4は、学習した予測モデルの予測性能を検証した残差分析の結果を示すグラフである。(A)のグラフは、観測値と予測値との残差(Residual)に対するサンプル数の頻度(Frequency)を示しており、残差がゼロの付近に集中している。(B)のグラフは、予測値(Predicted value)に対する残差(Residual)を示している。残差がゼロに近いほど予測性能が得られることを示しており、いずれのグラフでも、有意な予測性能が得られることが検証により確認できている。
【0033】
以上のようにして学習装置100は、生活習慣に関する質問項目を含むアンケートの回答結果を入力として腸内フローラの状態を予測するための予測モデルを生成できる。
【0034】
(予測装置)
予測装置200の各機能構成について説明する。図5は、本実施形態の予測装置200を含む予測システム2の構成を示すブロック図である。予測システム2は、予測装置200と、端末250とがネットワークNを介して接続されている。端末250は、ユーザが操作可能なスマートフォン、タブレット、又はパーソナルコンピュータ等であり、ユーザの腸内フローラの状態を予測するために必要なアンケートの回答画面を表示し、ユーザからの回答を受け付ける。予測装置200の各機能構成は、CPU11がROM12又はストレージ14に記憶された予測プログラムを読み出し、RAM13に展開して実行することにより実現される。なお、予測装置200及び端末250を一体として構成するようにしてもよい。
【0035】
図5に示すように、予測装置200は機能的には、モデル記憶部202と、アンケート記憶部204と、取得部210と、予測部212と、提示部214とを含んで構成される。
【0036】
モデル記憶部202には、学習装置100において予め学習された予測モデルが格納されている。アンケート記憶部204には、取得部210で取得されたアンケートの回答結果が格納される。なお、予測モデルは、上述のように予め学習しておく態様だけでなく、アンケートの回答結果と検査データとの相関を示す回帰係数を格納しておき、予測を導出できるようにしたモデルであってもよい。
【0037】
取得部210は、端末250から、予測対象のアンケートの回答結果を取得し、アンケート記憶部204に格納する。本実施形態の予測対象はユーザである。なお、取得部210は、回答結果を予測モデルの入力に用いるため、特徴量化してアンケート記憶部204に格納する。
【0038】
アンケートは、属性情報の質問項目、及び生活習慣に関する質問項目による複数の質問項目からなり、回答結果にはそれぞれの質問項目に対する回答が含まれる。属性情報の質問項目は、例えば、「性別」、「年齢」、及び「体重」といったユーザの属性を示す情報に関する質問をする項目である。属性情報の質問項目には、これ以外にも、家族構成、仕事の種類、及び体質等の項目が含まれてもよい。生活習慣に関する質問項目は、生活習慣の態様に応じて、更にサブ分類に分類した質問項目のカテゴリに分けられる。生活習慣に関する質問項目のカテゴリは、食事習慣に関する第1質問項目、運動習慣に関する第2質問項目、便通状況に関する第3質問項目、飲酒習慣に関する第4質問項目、喫煙習慣に関する第5質問項目、睡眠習慣に関する第6質問項目、並びに既往歴に関する第7質問項目がある。また、以下の回答画面の例に示すように、カテゴリの中でさらに詳細な複数の質問項目が用意される。なお、生活習慣に関する質問項目のうち、第4~第7質問項目は任意に設定してよい。また、属性情報の質問項目も任意に設定してよい。
【0039】
図6に、アンケートの回答画面の一例を示す。図6のアンケートの回答画面(6A)は、例えば、端末250に表示され、ユーザからの回答を受け付ける画面である。回答画面(6A)には、質問項目ごとに複数の選択肢が表示される。図6の回答画面(6A)では、属性情報について「性別」、「年齢層」、「体重」に関する質問項目を表示し、生活習慣について「食事習慣」、「運動習慣」、「便通状況」に関する質問項目を表示した場合を例としている。なお、回答画面(6A)の質問項目は、属性情報の質問項目、及び生活習慣に関する第1~第7の質問項目の一部を表した画面であり、他の質問項目も含まれ得る。ユーザは、回答画面(6A)の質問項目ごとに選択肢をチェックしてアンケートに回答できる。このように簡易な選択手段により、ユーザはアンケートに回答することができる。
【0040】
「性別」は、{男性}、{女性}の選択肢から選択する。「年齢層」は、{20s}、{30s}、{40s}・・・の年齢層のレンジの選択肢から回答を選択する。「体重」はkgを示す数値の選択肢から数値を選択する。「食事習慣」は、食事種別ごとに摂取頻度を選択する。「食事習慣」の食事種別は「精白米・パン」、「玄米・雑穀米・未精製米」、「淡色野菜(レタス、キャベツ、キュウリなど)」、「緑黄色野菜(ピーマン、かぼちゃ、ほうれん草など)」、「果物類」、「納豆」、「きのこ」の質問項目があり、それぞれの摂取頻度を選択する。摂取頻度は、{食べなかった}、{週1~3回}、{週4~6回}、{毎日1回}、{毎日2回以上}の5つの選択肢から選択する。「運動習慣」は、「最近3ヶ月以上、定期的に運動/スポーツをしていますか?」の質問項目について、{はい}、{いいえ}の選択肢から選択する。「便通状況」に関しては、(A)「ここ3ヶ月間、平均してどのような頻度で便通がありましたか?」の質問項目、(B)「ここ3ヶ月間の便の状態について、一番多かったのはどれですか?」の質問項目がある。(A)について、{3回以上/日}、{1~2回/日}、{4~6回/週}、{2~3回/週}、{1回以下/週}の選択肢から選択する。また、回答画面(6A)では図示の都合上「便通状況」に関する(B)の質問項目の選択肢を省略しているが、次の選択肢から選択する。{硬くてコロコロの兎糞状の(排便困難な)便}、{ソーセージ状であるがでこぼこした(塊状の)便}{表面にひび割れがあるソーセージ状の便}等の8点程度の選択肢から選択する。なお、上記に挙げた選択肢、及び選択肢の数は一例であり、適宜、予測モデルの設計に応じて設定できる。
【0041】
また、この他、回答画面(6A)には、「飲酒習慣」、「喫煙習慣」、「睡眠習慣」、「肌質・体質」、及び「既往歴」等の質問項目が含まれ得る。「既往歴」の質問項目であれば特定の医薬品が質問項目となり、薬品の使用有無が選択肢となり得る。また、回答画面(6A)に、下痢便秘に関する自由記入欄を設け、記入内容を解析又は人手で判別するようにしてもよい。
【0042】
上記のように、アンケートの質問項目は、特定の質問項目を設定している。「食事習慣」であれば、腸内フローラの状態に特に関連する食事種別を質問項目として、食事種別ごとに1週間のうちの5段階の摂取頻度の選択肢を設定している。このような腸内フローラの状態との強い相関がある特有の質問項目を設定すると共に、質問項目を特定の内容に絞ってユーザからの回答結果を得ることで、腸内フローラの状態を予測できる。これらの質問項目は、実際の検査データと、検査データに対応する検査に際して行われたアンケートの回答結果とを比較して、相関において有意であることが検証された質問項目である。
【0043】
取得部210は、上記に挙げた回答の選択肢を元に、アンケートの回答結果を特徴量化してアンケート記憶部204に格納する。回答結果の特徴量化のためには、選択肢を元に特徴量を割り当てればよい。例えば、「食事習慣」の質問項目であれば、食事種別ごとに摂取頻度の5つの選択肢の何れかが回答結果として得られている。そのため、食事種別ごとに選択肢を元に特徴量の各次元を割り当て特徴量化する。食事種別の「精白米・パン」の5つの選択肢に1-5の次元、「玄米・雑穀米・未精製米」の5つの選択肢に6-10の次元、「淡色野菜」の5つの選択肢に11-15の次元の特徴量を割り当て、他の質問項目についても同様に選択肢を元に特徴量化する。なお、既知の次元削減の手法を用いて次元を圧縮して特徴量化してもよい。学習装置100の取得部110においても同様に特徴量化する。
【0044】
予測部212は、モデル記憶部202の予測モデルと、アンケート記憶部204の予測対象のアンケートの回答結果とを取得する。予測部212は、取得した予測対象のアンケートの回答結果を、予測モデルに入力し、予測対象の腸内フローラの状態を予測する。予測モデルは、上記の複数の質問項目の回答結果を入力とし、予測対象であるユーザの体内の腸内フローラの状態を出力する。腸内フローラの状態は、予測モデルによるシミュレーションによってユーザの腸内フローラスコアを疑似的に合成したスコアとして予測される。なお、腸内フローラの状態は、腸内フローラスコアとして予測されることに限定されず、腸内の菌叢の占有率又は数等の組成として予測されてもよい。
【0045】
提示部214は、予測された腸内フローラスコアに基づく腸内フローラの状態のA~Eの判定結果と、判定結果に応じた改善提案とを提示する。提示部214は、以下に示すような提示画面を端末250に表示させることでユーザに提示する。
【0046】
図7は、予測された腸内フローラの状態の判定結果と、改善提案を示す提示画面の例である。図7の提示画面(7A)では、タイトルに「アンケート回答結果から予測したあなたの腸内フローラスコア」を表示し、説明文として「生活習慣アンケートの回答結果から、あなたの腸内環境の良し悪しをA判定~E判定の5段階で予測しました。A判定、B判定の方は腸内環境が良好、C判定は標準的、D判定、E判定の方は腸内環境が乱れている可能性が高いです。」との文章を表示する。また、提示画面(7A)には、予測された腸内フローラの状態の判定結果(7x)として、A判定~E判定のうちのユーザの位置を表示する(例ではD判定)。また、提示画面(7A)には、判定結果の改善提案(7y)を表示する。改善提案は「アンケートの回答結果をもとに腸内フローラを予測した結果、あなたはD判定でした。D判定は腸内環境が乱れている可能性が高いです。以下のあなたのアンケートの回答結果から生活習慣を改善すると共に、腸内フローラ検査のご利用を推奨します。」との文章を表示する。また、「あなたのアンケートの回答結果」として質問項目ごとの回答結果を表示する。なお、A判定~E判定のスコアを表示してもよい。また、生活習慣に関する質問項目の回答結果に基づいて、例えば、「食事」、「運動」、「睡眠時間」、「飲酒頻度」、「タバコ」といった質問項目のカテゴリごとのA~Eの判定結果を生活習慣評価として表示し、質問項目のカテゴリごとの判定結果に応じた改善提案を提示してもよい。例えば、食事習慣に関する項目の判定結果が悪い場合は、食事習慣についての改善提案を提示する。このように提示部214は、生活習慣に関する質問項目ごとの腸内フローラの状態の予測から求まる生活習慣評価を出力してもよい。また、サプリメント、栄養素、食品、医薬品、及び運動方法等についての改善提案を出力してもよい。
【0047】
(処理の流れ)
次に、学習装置100及び予測装置200の作用について説明する。
【0048】
図8は、学習装置100による学習処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から学習プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、学習処理が行なわれる。CPU11が学習装置100の各部として機能することにより、以下の処理を実行させる。
【0049】
ステップS100において、CPU11は、学習データを取得し、学習データ記憶部102に格納する。学習データは、腸内細菌叢の複数の菌組成データを元に腸内フローラの状態を数値化した検査データと、当該検査データに対応する複数の質問項目によるアンケートの回答結果とである。なお、学習データは予測モデルの学習に用いるため、特徴量化して学習データ記憶部102に格納する。
【0050】
ステップS102において、CPU11は、学習データ記憶部102に格納された学習データを用いて、腸内フローラの状態(腸内フローラスコア)を予測するための予測モデルを学習し、モデル記憶部104に格納する。
【0051】
以上説明したように本実施形態の学習装置100によれば、検査データと検査データに対応するアンケートの回答結果とを学習データとして用いて、腸内フローラの状態を予測するための予測モデルを学習できる。
【0052】
図9は、予測装置200による予測処理の流れを示すフローチャートである。CPU21がROM22又はストレージ24から予測プログラムを読み出して、RAM23に展開して実行することにより、予測処理が行なわれる。CPU11が予測装置200の各部として機能することにより、以下の処理を実行させる。
【0053】
ステップS200において、CPU21は、端末250から、予測対象のアンケートの回答結果を取得し、アンケート記憶部204に格納する。回答結果は予測モデルの入力に用いるため、特徴量化してアンケート記憶部204に格納する。
【0054】
ステップS202において、CPU21は、予測のため、モデル記憶部202の予測モデルと、アンケート記憶部204の予測対象のアンケートの回答結果とを取得する。
【0055】
ステップS204において、CPU21は、取得した予測対象のアンケートの回答結果を、予測モデルに入力し、予測対象の腸内フローラの状態を予測する。
【0056】
ステップS206において、CPU21は、予測された腸内フローラの状態のA~Eの判定結果と、判定結果に応じた改善提案とを端末250に提示する。
【0057】
以上説明したように本実施形態の予測装置200によれば、検査以外の簡便な手段により腸内フローラの状態を予測することができる。
【0058】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した学習処理又は予測処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、並びに、GPU(Graphics Processing Unit)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、学習処理又は予測処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、複数のGPU、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0059】
また、上記実施形態では、学習プログラム又は予測プログラムがストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
100 学習装置
102 学習データ記憶部
104 モデル記憶部
110、210 取得部
112 学習部
2 予測システム
200 予測装置
202 モデル記憶部
204 アンケート記憶部
212 予測部
214 提示部
250 端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9