(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073870
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】防水リング
(51)【国際特許分類】
F16B 43/00 20060101AFI20230519BHJP
F16J 15/14 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
F16B43/00 C
F16J15/14 C
F16J15/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186607
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】大澤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇気
【テーマコード(参考)】
3J034
【Fターム(参考)】
3J034AA04
3J034BA09
3J034BA13
3J034BD06
3J034CA01
(57)【要約】
【課題】ボルト等の締結箇所を容易かつ確実に防水できる防水リングを提供する。
【解決手段】防水リング1は、リング本体2と、蓋部3とを備え、リング本体2は、底面4と、リング本体2の外縁に沿って形成される円筒状の外壁5とを備え、上方に向けて開口している中空円筒形状であり、底面4には、本体貫通孔6が形成され、本体貫通孔6の周縁には、円筒状の内壁7が形成され、内壁7には、底面4にかけて延びる流出孔8が形成され、蓋部3は、リング本体2の開口した上部を閉塞する部材であって、外壁5の内径と同等の外径を有する上面視円形状であり、リング本体2の開口を蓋部3で閉塞した際、リング本体2と蓋部3との間に形成される空間が充填空間13となり、充填空間13にゲル状のコーキング材14が充填されると共に、充填空間13の容積が蓋部3の上下方向の摺動で変化する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング本体と、蓋部とを備える防水リングであって、
前記リング本体は、底面と、前記リング本体の外縁に沿って形成される円筒状の外壁とを備え、上方に向けて開口している中空円筒形状であり、
前記底面の中央には、前記リング本体の直径よりも小さな直径を有する本体貫通孔が形成され、
前記本体貫通孔の周縁には、前記外壁よりも低い高さの円筒状の内壁が形成され、
前記内壁には、前記底面にかけて延びる流出孔が所定数形成され、
前記蓋部は、前記リング本体の開口した上部を閉塞する部材であって、前記外壁の内径と同等の外径を有する円形状であり、
前記蓋部の上面視中央には、前記本体貫通孔と同サイズの蓋部貫通孔が形成され、
前記蓋部の下面には、前記リング本体の開口を塞ぐように、前記蓋部を前記リング本体に上方から取り付けた際、前記内壁の外周に接する様に、下方に向けて突出する円環状のリムが形成され、
前記リング本体の前記開口を前記蓋部で閉塞した際、前記リング本体と前記蓋部との間に形成される空間が充填空間となり、
前記充填空間にゲル状のコーキング材が充填されると共に、この充填空間の容積が、前記蓋部の上下方向の摺動で変化することを特徴とする防水リング。
【請求項2】
前記リング本体の前記外壁の内側には、所定数の係止部が形成され、
前記蓋部の外周には、前記係止部に対応する位置に前記係止部と同数の被係止部が形成され、
前記リング本体に前記蓋部を取り付けた際、前記係止部に前記被係止部が係止することを特徴とする請求項1に記載の防水リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやビスの締結部の防水が可能な防水リングに関する。
【背景技術】
【0002】
固定対象を固定する方法として、ボルトやビス等の締付方式の固定具を用いた締結は広く用いられている。この時、金属製ワッシャをボルト等の頭と固定対象との間に挿入することで、ボルト等による締付力を固定対象のボルト等の差込孔周辺に均等に分散負荷させることができる。これにより母材の保護や、ボルト等の緩み防止といった効果を実現できる。しかし、ワッシャはボルト等の差込孔周辺の防水効果を備えないため、差込孔から固定対象内に水が浸入することを防ぎたい場合等においては、差込孔及びその周辺部にシリコン等によるコーキングを施す必要があった。そのため、締結箇所の数が多数に亘る場合等、コーキング作業に要する時間が嵩むことが問題となっていた。
そのような中、特許文献1には、ワッシャ本体にゴム製のブッシュを嵌め込むことで、ボルトを締め付けた際、ボルトの締付力がボルトの頭部とワッシャ本体とを介してブッシュに負荷され、ブッシュが固定対象物表面で変形し、ボルト嵌挿孔を密封する防水ワッシャが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で開示される防水ワッシャは、例えば、ボルトの締結が不十分である場合や、固定対象物表面に対し、ボルト嵌挿孔が傾いている等の理由により防水ワッシャが傾き、ブッシュの変形が歪である場合等、密封が不十分となり、防水機能を発揮しないことが考えられる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ボルト等の締結箇所を容易かつ確実に防水できる防水リングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、リング本体と、蓋部とを備える防水リングであって、リング本体は、底面と、リング本体の外縁に沿って形成される円筒状の外壁とを備え、上方に向けて開口している中空円筒形状であり、底面の中央には、リング本体の直径よりも小さな直径を有する本体貫通孔が形成され、本体貫通孔の周縁には、外壁よりも低い高さの円筒状の内壁が形成され、内壁には、底面にかけて延びる流出孔が所定数形成され、蓋部は、リング本体の開口した上部を閉塞する部材であって、外壁の内径と同等の外径を有する上面視円形状であり、蓋部の中央には、本体貫通孔と同サイズの蓋部貫通孔が形成され、蓋部の下面には、リング本体の開口を塞ぐように、蓋部をリング本体に上方から取り付けた際、内壁の外周に接する様に、下方に向けて突出する円環状のリムが形成され、リング本体の開口を蓋部で閉塞した際、リング本体と蓋部との間に形成される空間が充填空間となり、充填空間にゲル状のコーキング材が充填されると共に、この充填空間の容積が、蓋部の上下方向の摺動で変化することを特徴とする防水リング。
請求項2に記載の発明は、上記構成に加え、前記リング本体の前記外壁の内側には、所定数の係止部が形成され、前記蓋部の外周には、前記係止部と同数の被係止部が形成され、前記リング本体に前記蓋部を取り付けた際、前記係止部に前記被係止部が係止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、固定対象を固定する際、ワッシャーの代わりに防水リングを挿入することで、ボルト等を固定対象に螺着すると、ボルト等の頭部が蓋部を押し込み、充填空間の容積減少に伴い、充填空間に充填されたコーキング材が流出孔から流出し、流出したコーキング材によりボルト等と固定対象に設けられたボルト等の螺着孔との隙間及び固定対象と防水リングとの隙間をコーキングすることができ、ボルト等の締結部に確実な防水処理を容易に施すことができる。また、締結作業に要する時間のみでコーキング作業を同時に行えるため、作業時間を短縮できる。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加え、蓋部がリング本体から容易に離脱することがなくなるため、防水リングの取り扱いが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の防水リングを示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【
図2】本発明の防水リングの中央縦断面を示す説明図である。
【
図3】(a)は本発明の防水リングの使用例を示す説明図であり、(b)は
図3(a)の丸枠A内を示す拡大図である。
【
図4】本発明の防水リングの使用時における締結部の中央縦断面図であり、(a)はコーキング材の流出前、(b)はコーキング材の流出後である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の防水リングを示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
図2は、本発明の防水リングの中央縦断面を示す説明図である。
防水リング1は、
図1(a)に示すように、リング本体2と、蓋部3とを備える。
【0010】
リング本体2は、
図1(b)に示すように、底面4と、リング本体2の外縁に沿って形成される円筒状の外壁5とを備え、上方に向けて開口している中空円筒形状である。また、前記底面4の中央には、ボルト等の固定手段が挿通可能な所定径の本体貫通孔6が形成されている。本体貫通孔6の周縁には、外壁5よりも低い高さの円筒状の内壁7が本体貫通孔6の周縁に沿って形成されている。そして、内壁7には、それぞれ底面4にかけて延びる流出孔8が所定数形成されている。さらに、外壁5の内面には係止部としての凹部9が所定数形成されている。
【0011】
蓋部3は、リング本体2の開口した上部を閉塞する部材であって、リング本体2の外壁5の内径と同等の直径の上面視円形状であり、蓋部3の中央には、本体貫通孔6と同等の直径を有する蓋部貫通孔10が形成される。また、蓋部3の外周には、リング本体2に形成された凹部9と対応する位置に被係止部としての凸部11が凹部9と同数形成されている。また、蓋部3の下面には、
図2に示すように、下方に向けて突出する円環状のリム12が形成されている。リム12は、リング本体2と蓋部3とを組み付けた際、内壁7の外周に接する様に形成されている。
【0012】
防水リング1は、リング本体2に対し、リング本体2の開口側(上方)から、リング本体2の開口した上部を閉塞するように蓋部3を取り付けることで形成される。この時、リング本体2と蓋部3との間に形成される空間が、充填空間13となり、
図2に示すように、充填空間13にゲル状のコーキング材14が充填される。また、蓋部3は、リング本体2に対し、上下方向に摺動可能であり、蓋部3の摺動により充填空間13の容積が変化する。
また、防水リング1を組み上げた際、凹部9に凸部11が挿入されて互いに係止することで、蓋部3がリング本体2から容易に脱落することを防止できるため、防水リング1の扱いが容易となる。
【0013】
図3(a)は本発明の防水リングの使用例を示す説明図であり、
図3(b)は
図3(a)の丸枠A内を示す拡大図である。
図4は、本発明の防水リングの使用時における締結部の中央縦断面図であり、
図4(a)はコーキング材の流出前、
図4(b)はコーキング材の流出後である。
防水リング1は、
図3(a),(B)に示すように、固定対象Wを固定する際の締結部において、固定対象Wとボルト15との間に挿入される。ここでは、地面に垂直な壁面に固定対象Wを取り付ける場合を例示している。この時、ボルト15の螺子部16は、本体貫通孔6及び蓋部貫通孔10に挿通されている。なお、固定対象Wの固定において、防水リング1を用いる場合、ボルト15の頭部17は、本体貫通孔6及び蓋部貫通孔10の直径よりも大きく、蓋部3の直径よりも小さいものを選択する必要がある。
固定対象Wの固定は、
図4(a),(b)に示すような固定対象Wに設置されたアンカー19に設けられた螺着孔18にボルト15の螺子部16を螺着することで行われる。なお、固定対象Wの設置箇所に直接螺着孔18を穿設できる場合は、アンカー19が用いられなくても良い。
【0014】
この時、
図4(b)に示すように、ボルト15を締め込んでいくと、蓋部3にボルト15の頭部17を介して外力が加わり、リング本体2に対し蓋部3が押し込まれる。蓋部3が押し込まれるのに伴い、充填空間13の容積が減少し、充填空間13に充填されたコーキング材14が、各流出孔8を介して充填空間13の外部へ流出する。これにより、流出孔8から流出したコーキング材14が、ボルト15と螺着孔18との隙間及び固定対象Wと防水リング1との隙間に流れ込み、これらの隙間をコーキングすることができる。よって、ボルト15等の締結部に確実な防水処理を容易に施すことができる。
【0015】
上記形態の防水リング1は、リング本体2と、蓋部3とを備え、リング本体2は、底面4と、リング本体2の外縁に沿って形成される円筒状の外壁5とを備え、上方に向けて開口している中空円筒形状であり、底面4の中央には、リング本体2の直径よりも小さな直径を有する本体貫通孔6が形成され、本体貫通孔6の周縁には、外壁5よりも低い高さの円筒状の内壁7が形成され、内壁7には、底面4にかけて延びる流出孔8が所定数形成され、蓋部3は、リング本体2の開口した上部を閉塞する部材であって、外壁5の内径と同等の外径を有する上面視円形状であり、蓋部3の中央には、本体貫通孔6と同サイズの蓋部貫通孔10が形成され、蓋部3の下面には、リング本体2の開口を塞ぐように、蓋部3をリング本体2に上方から取り付けた際、内壁7の外周に接する様に、下方に向けて突出する円環状のリム12が形成され、リング本体2の開口を蓋部3で閉塞した際、リング本体2と蓋部3との間に形成される空間が充填空間13となり、充填空間13にゲル状のコーキング材14が充填されると共に、充填空間13の容積が蓋部3の上下方向の摺動で変化する。
このようにして構成される防水リング1によれば、固定対象Wを固定する際、ワッシャーの代わりに防水リング1を挿入することで、ボルト15を固定対象Wに螺着すると、ボルト15の頭部17が蓋部3を押し込み、充填空間13の容積減少に伴い、充填空間13に充填されたコーキング材14が流出孔8から流出し、流出したコーキング材14によりボルト15と固定対象Wに設けられた螺着孔18との隙間及び固定対象Wと防水リング1との隙間をコーキングすることができ、ボルト15の締結部に確実な防水処理を容易に施すことができる。また、締結作業に要する時間のみでコーキング作業を同時に行えるため、作業時間を短縮できる。
【0016】
また、リング本体2の外壁5の内側には、所定数の凹部9が形成され、蓋部3の外周には、凹部9に対応する位置に凹部9と同数の凸部11が形成され、リング本体2に蓋部3を取り付けた際、凹部9に凸部11が挿入されて互いに係止する。
よって、蓋部3がリング本体2から外れることがなくなるため、防水リング1の取り扱いが容易となる。
【0017】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。
例えば、防水リングを構成する素材は、金属であっても樹脂であっても良い。
また、リング本体の外壁及び内壁の高さや蓋部の直径及びリムの厚み、形状等の設計は、充填空間が、締結部の確実な防水を可能とする量のコーキング材を充填可能であれば、限定されない。
また、流出孔の形状、数及び大きさは、コーキング材の所望流出とボルト螺着前の充填空間内へのコーキング材の保持とを両立できれば、任意に設定可能である。
また、コーキング材は、コーキング材として利用可能なゲル状の材料であれば、任意のコーキング材を選択できる。
また、係止部及び被係止部の数及び形状は、リング本体と蓋部とが容易に別離しない範囲で任意に設定可能であり、リング本体に凸部を形成し、蓋部に凹部を形成する等しても良い。
【符号の説明】
【0018】
1・・防水リング、2・・リング本体、3・・蓋部、4・・底面、5・・外壁、6・・本体貫通孔、7・・内壁、8・・流出孔、9・・凹部(係止部)、10・・蓋部貫通孔、11・・凸部(被係止部)、12・・リム、13・・充填空間、14・・コーキング材。