IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友精密工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱交換器 図1
  • 特開-熱交換器 図2
  • 特開-熱交換器 図3
  • 特開-熱交換器 図4
  • 特開-熱交換器 図5
  • 特開-熱交換器 図6
  • 特開-熱交換器 図7
  • 特開-熱交換器 図8
  • 特開-熱交換器 図9
  • 特開-熱交換器 図10
  • 特開-熱交換器 図11
  • 特開-熱交換器 図12
  • 特開-熱交換器 図13
  • 特開-熱交換器 図14
  • 特開-熱交換器 図15
  • 特開-熱交換器 図16
  • 特開-熱交換器 図17
  • 特開-熱交換器 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073882
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/00 20060101AFI20230519BHJP
   F28F 13/08 20060101ALI20230519BHJP
   F28D 21/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
F28D7/00 Z
F28F13/08
F28D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186623
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】梅山 和也
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA17
(57)【要約】
【課題】コア表面において複数種別の流路開口が混在する態様で形成される場合でも、流体の分配に伴う圧力損失の増大を抑制することが可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】この熱交換器100は、複数の流路開口13が行列状に配列されたコア表面12を有するコア部1と、複数の流路開口13のそれぞれと接続する複数の通路21を含み、コア表面12に配置された位相調整部2とを備える。複数の流路開口13は、コア表面12において、流体の種別毎の配列パターンが各列において同一であり、かつ、列毎の配列パターンの位相が非同一となるように配列されている。位相調整部2の複数の通路21は、列毎の配列パターンの位相を揃えるように列方向に傾斜した傾斜通路列23aを含む。位相調整部2には、同一種別の流体が流通する通路21が行方向に並ぶことにより、流体の種別毎の通路21の他端開口22bが行単位で形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種別の流体をそれぞれ流通させる複数の流路と、前記複数の流路のそれぞれに繋がる四角形状の複数の流路開口が行列状に配列されたコア表面と、を有するコア部と、
行列状に配列されるとともに前記複数の流路開口のそれぞれと接続する複数の通路を含み、前記コア表面に配置された位相調整部と、を備え、
前記複数の流路開口は、前記コア表面において、内部を流通する前記流体の種別毎の配列パターンが各列において同一であり、かつ、列毎の前記配列パターンの位相が非同一となるように配列されており、
前記位相調整部の前記複数の通路は、前記複数の流路開口と接続する一端開口と、他端開口との間で、列毎の前記配列パターンの位相を揃えるように列方向に傾斜した傾斜通路からなる傾斜通路列を含み、
前記位相調整部には、同一種別の前記流体が流通する前記通路が行方向に並ぶことにより、前記流体の種別毎の前記通路の前記他端開口が行単位で形成されている、熱交換器。
【請求項2】
前記複数の通路は、前記一端開口と前記他端開口との間で、前記列方向に傾斜せずに直進する直進通路からなる直進通路列と、前記傾斜通路列とを含み、
前記傾斜通路列は、前記直進通路列に位相を一致させるように傾斜している、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記複数の流路開口の各列は、第1列と、前記第1列に対して位相が1行分だけずれた第2列と、の2種類の列で構成され、
前記傾斜通路列は、前記直進通路列に対して1行分だけ位相がずれるように前記列方向に傾斜している、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記複数の流路開口は、第1種別の前記流体を流通させる第1流路開口と、第2種別の前記流体を流通させる第2流路開口と、を含み、
前記複数の流路開口の各列の前記配列パターンは、前記第1流路開口と前記第2流路開口とが前記列方向に交互に並ぶパターンであり、かつ、第1列と、前記第1列に対して位相が1行分だけずれた第2列とが前記行方向に交互に並ぶことにより、前記コア表面において、前記第1流路開口と前記第2流路開口とが前記行方向および前記列方向の両方で交互に並んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記傾斜通路列を構成するそれぞれの前記傾斜通路は、隣接する列の他の前記通路と位相を一致させるように傾斜した傾斜部を有し、前記傾斜部よりも前記他端開口側で、隣接する列の他の前記通路と前記行方向に連通し、複数列を前記行方向に横断する合流部を形成している、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記複数の流路開口の各々は、前記列方向に沿って延びるとともに等しい長さを有する一対の辺を含み、
前記複数の通路の各々は、前記一端開口において前記流路開口と同じ断面形状を有し、断面形状を維持しながら各列の位相を一致させるように構成されている、請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記位相調整部は、前記コア表面と接続される第1面と、前記行方向に向かい合う第2面および第3面と、を含み、
第1種別の前記流体を流通させる前記合流部の前記行方向の一端部が、前記第2面に形成された前記他端開口に接続し、
第2種別の前記流体を流通させる前記合流部の前記行方向の他端部が、前記第3面に形成された前記他端開口に接続している、請求項5または6に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器に関し、特に、流路開口が行列状に配列されたコアを備えた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路開口が行列状に配列されたコアを備えた熱交換器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1では、複数の流路を有するコア部と、4つのヘッダ部と、一対の分配部とを備える熱交換器が開示されている。コア部の両端には、複数の流路に対する流体の入口または出口となる複数の開口が形成されている。各流路の開口は、コア部の表面において、行列状に配列されている。複数の流路は、第1流体を流通させる第1流路と、第2流体を流通させる第2流路と、の2種類で構成されている。コア部の表面において、第1流路の開口と、第2流路の開口とが、互い違いに市松模様状に配列されている。それぞれの開口は、矩形形状に形成されている。
【0004】
分配部は、コア部の表面に設けられ、市松模様状に配列された複数の開口のうち、第1流路の開口を第1流体のヘッダ部に接続し、第2流路の開口を第2流体のヘッダ部に接続するように、各流路を別々のヘッダ部に接続する機能を有する。分配部は、それぞれの第2流路の開口と一対一で接続し、流路径を縮小しつつ直進する円筒形状の複数の第2流体用の通路と、複数の第2流体用の通路の間の隙間によって構成された第1流体用の通路と、を含む。これにより、第2流体は、第2流路の開口から第2流体用の通路を通って、第2流体のヘッダ部に流れる。第1流体は、第1流路の開口から第1流体用の通路を通って、第1流体のヘッダ部に流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-46161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、分配部の第2流体用の通路をコア部の開口よりも流路径が縮小した円筒通路とすることで、隣り合う第2流体用の通路間に隙間を設け、その第2流体用の通路間の隙間によって第1流体用の通路を構築している。
【0007】
このため、第2流体用の通路を通過する第2流体には、コア部の開口と分配部の第2流体用の通路との間の流路断面積の縮小に起因した圧力損失が発生するとともに、第2流体用の通路自体の流路断面積が小さいことに起因する圧力損失の増大も生じるため、第2流体の流通経路全体での圧力損失が増大してしまう。また、第1流体を通過させる第1流体用の通路は、円筒状の第2流体用の通路の隙間を縫うように蛇行した形状になるため、これによっても圧力損失の増大が生じる。そのため、複数種別の流体の流路開口がコア表面において混在する態様で形成される場合でも、流体の分配に伴う圧力損失の増大を抑制することが望まれる。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コア表面において複数種別の流路開口が混在する態様で形成される場合でも、流体の分配に伴う圧力損失の増大を抑制することが可能な熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明による熱交換器は、複数種別の流体をそれぞれ流通させる複数の流路と、複数の流路のそれぞれに繋がる四角形状の複数の流路開口が行列状に配列されたコア表面と、を有するコア部と、行列状に配列されるとともに複数の流路開口のそれぞれと接続する複数の通路を含み、コア表面に配置された位相調整部と、を備え、複数の流路開口は、コア表面において、内部を流通する流体の種別毎の配列パターンが各列において同一であり、かつ、列毎の配列パターンの位相が非同一となるように配列されており、位相調整部の複数の通路は、複数の流路開口と接続する一端開口と、他端開口との間で、列毎の配列パターンの位相を揃えるように列方向に傾斜した傾斜通路からなる傾斜通路列を含み、位相調整部には、同一種別の流体が流通する通路が行方向に並ぶことにより、流体の種別毎の通路の他端開口が行単位で形成されている。
【0010】
なお、「流体の種別」とは、熱交換器において互いに混合されないように別々に流される流体毎の区別である。「種別毎の配列パターン」とは、流体の種別で分類した流路開口の並び方の規則である。たとえば流体の種別がAとBとの2種類である場合、「A、A、B、A、A、B・・・」といった並び方の規則が、配列パターンである。「配列パターンの位相」とは、配列パターン内における各要素の位置を示す概念である。たとえば「A、A、B、・・・」という配列と、「A、B、A、・・・」という配列と、「B、A、A、・・・」という配列とは、互いに同じ配列パターンであるが位相が異なる。
【0011】
この発明による熱交換器では、行列状に配列されるとともに複数の流路開口のそれぞれと接続する複数の通路を含む位相調整部をコア表面に配置し、位相調整部の複数の通路に、列毎の配列パターンの位相を揃えるように列方向に傾斜した傾斜通路からなる傾斜通路列を含めるので、コア表面では異なる種別の流路開口が混在する場合であっても、一部の流路開口の列を、列方向にずれた位置を通過する傾斜通路列と接続することができる。そのため、コア表面に行列状に配列された複数の流路開口において、流体の種別毎の配列パターンが各列において同一であれば、いずれかの列を基準として、基準列とは位相がずれた列の流路開口を傾斜通路列と接続することで、流路開口の各列の位相を基準列の位相と一致させることができる。そして、各列の配列パターンの位相が一致する結果、流体の種別毎の通路の他端開口が行単位で形成される。これにより、種別毎の流体の導入または導出を行単位で行うことができる。この構成によれば、種別毎の流体を別々に流通させるために通路間に隙間を形成する必要がないため、一方の通路の断面積を流路開口の断面積よりも縮小する必要がない。そのため、コア表面において複数種別の流路開口が混在する態様で形成される場合でも、流体の分配に伴う圧力損失の増大を抑制することができる。
【0012】
また、上記特許文献1の分配部のような複雑形状は、積層造形法(いわゆる3Dプリンタ技術)で形成することが好ましいが、積層造形法では、四角形の流路開口から分配部の円筒形の通路へと変わる断面形状の変化部分では、造形時にひずみが生じ易く造形の難易度が高い。これに対して、本発明による熱交換器では、位相調整部に傾斜した傾斜通路列を設けるだけでよいので、断面形状を変化させないか、あるいは断面形状の変化を小さくすることができる。その結果、積層造形法による造形不良の発生リスクを効果的に低減できる。
【0013】
上記発明による熱交換器において、好ましくは、複数の通路は、一端開口と他端開口との間で、列方向に傾斜せずに直進する直進通路からなる直進通路列と、傾斜通路列とを含み、傾斜通路列は、直進通路列に位相を一致させるように傾斜している。このように構成すれば、位相調整部において、位相の基準列に単純な直進通路列を設け、基準列から位相のずれた列に傾斜通路列を設けるだけで、コア表面の流路開口の各列の位相ずれを揃えることができる。そのため、位相調整部の構造が複雑化することを抑制できる。
【0014】
この場合、好ましくは、複数の流路開口の各列は、第1列と、第1列に対して位相が1行分だけずれた第2列と、の2種類の列で構成され、傾斜通路列は、直進通路列に対して1行分だけ位相がずれるように列方向に傾斜している。このように構成すれば、1行分だけ位相がずれるように傾斜した傾斜通路列を設けるだけの単純な構造で、コア表面の流路開口の各列の位相ずれを揃えることができる。
【0015】
上記発明による熱交換器において、好ましくは、複数の流路開口は、第1種別の流体を流通させる第1流路開口と、第2種別の流体を流通させる第2流路開口と、を含み、複数の流路開口の各列の配列パターンは、第1流路開口と第2流路開口とが列方向に交互に並ぶパターンであり、かつ、第1列と、第1列に対して位相が1行分だけずれた第2列とが行方向に交互に並ぶことにより、コア表面において、第1流路開口と第2流路開口とが行方向および列方向の両方で交互に並んでいる。このように構成すれば、第1種別の流体を流通させる流路は第2種別の流体を流通させる流路に囲まれ、第2種別の流体を流通させる流路は第1種別の流体を流通させる流路に囲まれる。そのため、コア部の各流路の伝熱面積を大きくすることができるので、熱交換性能を効果的に向上させることができる。その一方、コア表面において第1流路開口と第2流路開口とが市松模様状に配列されるので、種別毎の流体の導入および導出が難しくなるが、本発明によれば、位相調整部において、第1流路開口と接続する通路を行単位でまとめることができ、第2流路開口と接続する通路を別の行にまとめることができる。そのため、種別毎の流体の導入および導出を個々の流路単位ではなく、行単位で行えばよいため、圧力損失を増大させることなく、種別毎の流体の導入および導出を容易に行えるようになる。
【0016】
上記発明による熱交換器において、好ましくは、傾斜通路列を構成するそれぞれの傾斜通路は、隣接する列の他の通路と位相を一致させるように傾斜した傾斜部を有し、傾斜部よりも他端開口側で、隣接する列の他の通路と行方向に連通し、複数列を行方向に横断する合流部を形成している。このように構成すれば、位相調整部の各通路において列毎の位相を揃えた後で、合流部において行方向に並んだ通路を相互に連通させることができる。そのため、流体の流通空間を大きくすることができるので、圧力損失が増大する事を効果的に抑制できる。また、コア表面において複数の流路開口を別々に通過する同一種別の流体が、合流部では混合された状態となるので、混合により流体の温度分布を均一化することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、複数の流路開口の各々は、列方向に沿って延びるとともに等しい長さを有する一対の辺を含み、複数の通路の各々は、一端開口において流路開口と同じ断面形状を有し、断面形状を維持しながら各列の位相を一致させるように構成されている。このように構成すれば、コア表面の流路開口の断面形状(開口形状)を維持したまま、位相調整部の各通路において列毎の位相を揃えることができる。そのため、圧力損失が増大する事を効果的に抑制できる。また、複数の流路開口の各々の一対の辺の長さが等しいので、列毎の位相を揃えた時に、行方向に並ぶ複数の通路同士の一対の辺の長さも揃えることができる。このため、合流部の断面において、各通路の辺の長さがばらつくことによって凹凸が形成されることを防止できる。
【0018】
上記複数列を行方向に横断する合流部が形成される構成において、好ましくは、位相調整部は、コア表面と接続される第1面と、行方向に向かい合う第2面および第3面と、を含み、第1種別の流体を流通させる合流部の行方向の一端部が、第2面に形成された他端開口に接続し、第2種別の流体を流通させる合流部の行方向の他端部が、第3面に形成された他端開口に接続している。このように構成すれば、第1面から受け入れた流体を、第2面と第3面とに振り分けるように分配したり、第2面と第3面とからそれぞれ受け入れた流体を、第1面からコア部へ供給したりできる。この場合、流体の導入または導出のためのヘッダ部を、第2面と第3面とに設けることになる。仮に、いずれかの他端開口を第1面とは反対側の面に形成する場合には、位相調整部に対して第1面側にコア部が配置され、反対側の面にヘッダ部が配置され、コア部と位相調整部とヘッダ部とが直線状に並ぶことで熱交換器の全長が大きくなるが、他端開口が第2面と第3面とに設けられる本発明によれば、熱交換器の全長が大きくなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、コア表面において複数種別の流路開口が混在する態様で形成される場合でも、流体の分配に伴う圧力損失の増大を抑制することが可能な熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】熱交換器の全体を示した模式的な斜視図である。
図2図1に示した熱交換器の概略構造を説明するための模式的な断面図である。
図3】熱交換器のコア部を示した模式的な斜視図である。
図4】コア表面における流路開口の配置を示したコア表面の模式的な平面図である。
図5】位相調整部を示した模式的な斜視図(A)および(B)である。
図6】位相調整部の傾斜通路列に沿った模式的な断面図である。
図7】位相調整部の直進通路列に沿った模式的な断面図である。
図8】一端開口の配列を示す模式図(A)、傾斜部の形成位置における各通路の配列を示す模式図(B)、傾斜部の他端開口側端部における各通路の配列を示す模式図(C)である。
図9】位相調整後の第1通路が配置された位置(行)における通路に沿った模式的な断面図である。
図10】位相調整後の第2通路が配置された位置(行)における通路に沿った模式的な断面図である。
図11】位相調整部における第1流体の流れを説明するための模式図である。
図12】位相調整部における第2流体の流れを説明するための模式図である。
図13】傾斜通路列において2行分だけ位相がずれる変形例を示した模式図である。
図14】流路開口の形状の第1変形例(A)および位相調整後の通路の断面(B)、流路開口の形状の第2変形例(C)および位相調整後の通路の断面(D)を示した図である。
図15】位相調整部の第4面に他端開口が形成された第1変形例を示す模式的な斜視断面図(A)および流体の流れを示す模式図(B)である。
図16】位相調整部の第4面に他端開口が形成された第2変形例を示す模式的な斜視断面図(A)、第1流体の流れを示す模式図(B)および第2流体の流れを示す模式図(C)である。
図17】流体をUターンさせる構造の変形例における、第1流体の流れを説明するための模式的な断面図である。
図18】流体をUターンさせる構造の変形例における、第2流体の流れを説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、図1図12を参照して、一実施形態による熱交換器100について説明する。
【0023】
(熱交換器の全体構成)
図1に示すように、熱交換器100は、コア部1と、位相調整部2と、を備える。
【0024】
コア部1は、両端が開放された矩形断面の筒状形状(図3参照)を有し、一端と他端との間で流体を流通させるように構成されている。コア部1は、複数種別の流体をそれぞれ流通させる。コア部1は、少なくとも第1流体4(第1種別の流体)と第2流体5(第2種別の流体)とを別々の流路11(図2参照)に流通させ、第1流体4と第2流体5との間で熱交換を行うように構成されている。
【0025】
位相調整部2は、コア部1の端部に設けられ、コア部1と位相調整部2との間で流体を流通させる。図1の例では、位相調整部2は、コア部1の一端と他端とに1つずつ設けられている。また、位相調整部2は、ヘッダ部(3a~3d)と接続している。
【0026】
ヘッダ部(3a~3d)は、位相調整部2を介して、コア部1への流体の導入、またはコア部1からの流体の導出を行うように構成されている。図1の例では、熱交換器100には、第1流体4の導入口6aを備えるヘッダ部3a、第1流体4の導出口6bを備えるヘッダ部3b、第2流体5の導入口6cを備えるヘッダ部3c、第2流体5の導出口6dを備えるヘッダ部3d、の4つのヘッダ部3a~3dが設けられている。
【0027】
それぞれの位相調整部2は、第1流体4を流通させるヘッダ部(3aまたは3b)と、第2流体5を流通させるヘッダ部(3cまたは3d)との、2つのヘッダ部と接続されている。位相調整部2は、第1流体4と第2流体5とを、別々に仕切られた通路を介して、流通させる。位相調整部2は、流体の種別毎に設けられたコア部1の各流路11(図2参照)を、流体の種別毎に設けられたヘッダ部(3a~3d)と別々に接続することで、流体を種別毎に別々に分配する機能を有する。
【0028】
第1流体4について、ヘッダ部3aが、導入口6aから流入した第1流体4を、位相調整部2を介してコア部1の第1流路11a(図2参照)に供給する。ヘッダ部3bが、コア部1の第1流路11a(図2参照)から流出した第1流体4を、位相調整部2を介して導出口6bへ送り出す。
【0029】
また、第2流体5について、ヘッダ部3cが、導入口6cから流入した第2流体5を、位相調整部2を介してコア部1の第2流路11b(図2参照)に供給する。ヘッダ部3dが、コア部1の第2流路11b(図2参照)から流出した第2流体5を、位相調整部2を介して導出口6dへ送り出す。
【0030】
図2は、各位相調整部2のうち、ヘッダ部3aとヘッダ部3bとに連通する通路の断面を示している。図2では、各位相調整部2がヘッダ部3cとヘッダ部3dとに連通していないように図示されているが、各位相調整部2は、図2の断面とは異なる断面に現れる通路において、ヘッダ部3cとヘッダ部3dとに連通している。位相調整部2の構造については、後述する。
【0031】
図1および図2の例では、熱交換器100は、第1流体4および第2流体5を、それぞれコア部1の一端から他端に向けて流通させて熱交換を行う、並行流型の熱交換器として構成されている。並行流型とは、熱交換を行う流体同士がコア部1内で同じ方向に向けて流通する方式のことである。
【0032】
次に、熱交換器100の各部の詳細な構造を説明する。
【0033】
(コア部の構造)
図3に示すように、コア部1は、複数種別の流体をそれぞれ流通させる複数の流路11と、複数の流路11のそれぞれに繋がる複数の流路開口13が行列状に配列されたコア表面12a、12bと、を有する。複数の流路11は、それぞれ、管状構造を有する。
【0034】
図3に示すコア部1は、直方体形状を有する。各流路11は、コア部1の一端からコア部1の他端までコア部1を貫通するように設けられている。これにより、コア部1の一端側のコア表面12aと、コア部1の他端側のコア表面12bとにおいて、流体の入口または出口となる複数の流路開口13が形成されている。
【0035】
1つの流路11は、1つの入口(流路開口13)と1つの出口(流路開口13)とを有した管路である。つまり、流路11は、途中で分岐または合流することがない。個々の流路11(流路開口13)は、隔壁16を介して区画されている。コア部1は、管状部材(チューブ)の集合体ではなく、隣り合う流路11同士が隔壁16を共有する構造の単一の成形品である。
【0036】
複数の流路11は、全体として所定方向に延びるように形成されている。図3において、所定方向は、コア部1の一端と他端とを結ぶ方向である。以下、所定方向をZ方向とする。Z方向と直交する面内で、互いに直交する2方向を、それぞれX方向、Y方向とする。ここで、X方向は、各コア表面12a、12bにおいて行列状に配列された流路開口13の行方向(行に沿った方向)とし、Y方向は、行列状に配列された流路開口13の列方向(列に沿った方向)とする。
【0037】
図3では、流路11の簡単な構成例として、個々の流路11が、Z方向に直線状に延びる例を示している。なお、個々の流路11は、コア表面12a(12b)における流路開口13の形状(四角形状)および配列(行列状配列)が特定されている他は、特に限定されない。個々の流路11のコア部1内における経路および断面形状は任意である。
【0038】
本実施形態では、コア部1を流れる流体の種別数は「2」である。第1種別および第2種別の流体は、一方が高温流体であり、他方が低温流体である。高温流体は、低温流体よりも高温で、低温流体との熱交換によって熱を放出する流体である。低温流体は、高温流体よりも低温で、高温流体との熱交換によって熱を吸収する流体である。複数の流路11は、第1種別の第1流体4を流通させる複数の第1流路11aと、第1流体4と熱交換する第2種別の第2流体5を流通させる複数の第2流路11bと、を含む。
【0039】
図4に示すように、本実施形態では、複数の流路開口13の各々は、四角形状を有する。より具体的には、複数の流路開口13の各々は、列方向(Y方向)に沿って延びるとともに等しい長さを有する一対の辺14aを含む。一対の辺14aは、いずれも、列方向に沿って平行に延びる。図4の例では、複数の流路開口13の各々は、長方形形状を有する。複数の流路開口13の各々は、行方向に沿って平行に延びるとともに等しい長さを有する一対の辺14bを含む。辺14aと辺14bとが直角に交わる。なお、本明細書における長方形形状は、各辺(14a、14b)の長さが同一である場合(つまり、正方形)を含む概念とする。
【0040】
また、複数の流路開口13の各々は、行方向(X方向)に沿って一定のピッチで配列されている。複数の流路開口13の各々は、列方向(Y方向)に沿って一定のピッチで配列されている。
【0041】
本実施形態では、複数の流路開口13は、コア表面12a(12b)において、内部を流通する流体の種別毎の配列パターンが各列において同一であり、かつ、列毎の配列パターンの位相が非同一となるように配列されている。流路開口13の列とは、列方向(Y方向)に沿って並ぶ複数の流路開口13のまとまりのことである。流路開口13の行とは、行方向(X方向)に沿って並ぶ複数の流路開口13のまとまりのことである。
【0042】
なお、図4において、図4の上方から順に1行目、2行目、・・・とする。図4の左方から順に、1列目、2列目、・・・とする。コア表面12a(12b)において、流路開口13は、M行N列で配列されているとする。
【0043】
図4に示す例では、複数の流路開口13の各列は、第1列15aと、第1列15aに対して位相が1行分だけずれた第2列15bと、の2種類の列で構成されている。
【0044】
まず、複数の流路開口13は、第1種別の流体(第1流体4)を流通させる第1流路開口13aと、第2種別の流体(第2流体5)を流通させる第2流路開口13bと、を含む。図4では、便宜的に、第1流路開口13aにハッチングを付して図示している。複数の流路開口13の各列の配列パターンは、配列パターンの要素である第1流路開口13aと第2流路開口13bとの並び方によって決まる。本実施形態では、複数の流路開口13の各列の配列パターンは、第1流路開口13aと第2流路開口13bとが列方向(Y方向)に1つずつ交互に並ぶパターンである。
【0045】
そして、本実施形態では、第1列15aと、第1列15aに対して位相が1行分だけずれた第2列15bとが行方向に交互に並んでいる。これにより、コア表面12a(12b)において、第1流路開口13aと第2流路開口13bとが行方向および列方向の両方で1つずつ交互に並んでいる。このため、本実施形態では、コア表面12a(12b)において、第1流路開口13aと第2流路開口13bとが、市松模様状(チェッカーボードパターン)に配列されている。
【0046】
このように、図4の例では、流路開口13の各列の配列パターンは、どの列も同一であり、第1流路開口13aと第2流路開口13bとが交互に並ぶパターンである。一方、配列パターンの位相については、奇数列の第1列15aは1行目に第1流路開口13aが配置される位相であり、偶数列の第2列15bは1行目に第2流路開口13bが配置される位相である。したがって、複数の流路開口13は、列毎の配列パターンの位相が非同一となるように配列されている。
【0047】
なお、同一の配列パターンで生じ得る位相の数は、配列パターンによって異なりうる。図4の配列パターンでは、第1流路開口13aと第2流路開口13bとが1つずつ交互に並ぶパターンであるため、生じ得る位相の数は2である。たとえば流体の種別をA、Bとして、A、A、B、A、A、B、・・・という配列パターンである場合、1行目から順に「A、A、B」となる位相と、「A、B、A」となる位相と、「B、A、A」となる位相との、3種類の位相がありうる。
【0048】
(位相調整部)
次に、位相調整部2の構成を説明する。図2に示したように、位相調整部2は、コア部1の一端または他端に設けられ、コア部1の各流路11と連通するように構成されている。位相調整部2は、図3に示したコア部1の一端側のコア表面12aまたは他端側のコア表面12bの全面を覆うように、コア表面(コア表面12aまたは他端側のコア表面12b)に配置されている。
【0049】
本実施形態において、コア部1の一端側(コア表面12a)に設けられる位相調整部2と、コア部1の他端側(コア表面12b)に設けられる位相調整部2とは、実質的に同一構造を有する。そのため、以下では、2つの位相調整部2に共通する構造についてはまとめて、一端側(コア表面12a)に設けられる1つの位相調整部2の構造について説明する。
【0050】
図5に示すように、位相調整部2は、コア表面12a(12b)と接続される第1面20aと、行方向(X方向)に向かい合う第2面20bおよび第3面20cと、を含む。位相調整部2は、全体として概ね直方体形状に形成されている。
【0051】
位相調整部2は、行列状に配列されるとともに複数の流路開口13のそれぞれと接続する複数の通路21を含む。複数の通路21は、複数の流路開口13と一対一で接続するように、複数の流路開口13と同数設けられている。そのため、複数の流路開口13と同様、複数の通路21は、流体の種別毎に設けられている。つまり、複数の通路21は、第1流路開口13aと接続する第1通路21aと、第2流路開口13bと接続する第2通路21bと、を含む。
【0052】
また、個々の通路21は、一端開口22aと、他端開口22bとを含む。複数の通路21の各々は、一端開口22aにおいて、コア表面12a(12b)のいずれかの流路開口13と接続する。このため、各通路21の一端開口22aは、位相調整部2の第1面20aに形成され、第1面20aにおいて行列状に配列されている。第1面20aにおいて、一端開口22aは、コア表面12a(12b)の流路開口13と同じく、M行N列で配列されている。各一端開口22aは、行方向(X方向)に沿って、複数の流路開口13のピッチと等しい一定のピッチで配列されている。各一端開口22aは、列方向(Y方向)に沿って、複数の流路開口13のピッチと等しい一定のピッチで配列されている。また、各通路21の一端開口22aは、流路開口13と同じ断面形状(同じ開口形状)を有する。後述するように、各通路21の他端開口22bは、位相調整部2の第2面20b(図5(A)参照)または第3面20c(図5(B)参照)に形成されている。
【0053】
位相調整部2の複数の通路21は、列単位で構造が異なる。具体的には、位相調整部2の複数の通路21は、列方向(Y方向)に傾斜した傾斜通路APからなる傾斜通路列23a(図6参照)と、列方向に傾斜せずに直進する直進通路SPからなる直進通路列23b(図7参照)と、を含む。本実施形態では、位相調整部2の複数の通路21の各列は、傾斜通路列23aと、直進通路列23bと、の2種類で構成される。傾斜通路列23aを構成する通路21は、全て傾斜通路APである。直進通路列23bを構成する通路21は、全て直進通路SPである。なお、図6および図7では、便宜的に、コア部1(コア表面12a)と位相調整部2(第1面20a)とを、分離させた態様で図示している。
【0054】
図7に示すように、直進通路列23bを構成する各直進通路SPは、一端開口22aと他端開口22bとの間で、列方向(Y方向)に傾斜せずに直進する。各直進通路SPは、第1面20aで流路開口13と接続する一端開口22aから、そのままZ方向に真っ直ぐ延びている。
【0055】
したがって、直進通路列23bのうち、1行目に位置する直進通路SPは、コア表面12a(またはコア表面12b)における1行目の流路開口13(図4参照)と接続し、列方向に沿った位置が変化せずに、そのまま1行目の位置を維持する。同じように、2行目に位置する直進通路SPは、2行目の流路開口13と接続し、2行目の位置を維持する。最終行(M行目)に位置する直進通路SPは、M行目の流路開口13と接続し、N行目の位置を維持する。
【0056】
図6に示すように、傾斜通路列23aを構成する各傾斜通路APは、一端開口22aと、他端開口22bとの間で、列毎の配列パターンの位相を揃えるように列方向(Y方向)に傾斜している。つまり、傾斜通路列23aを構成するそれぞれの傾斜通路APは、隣接する列の他の通路21と位相を一致させるように傾斜した傾斜部24を有している。これにより、傾斜通路列23aは、直進通路列23bに位相を一致させるように傾斜している。
【0057】
本実施形態では、図4に示した通り、コア部1の流路開口13が、第1列15aと、第1列15aに対して位相が1行分だけずれた第2列15bとで構成されているため、図6の傾斜通路列23aは、直進通路列23bに対して1行分だけ位相がずれるように列方向に傾斜している。
【0058】
傾斜通路列23aのうち、1行目に位置する傾斜通路APは、コア表面12a(またはコア表面12b)における1行目の流路開口13と接続する。1行目に位置する傾斜通路APは、1行分位相がずれることによって、0行目に相当する、流路開口13の行列状配列からはみ出した位置へ傾斜している。
【0059】
同じように、2行目に位置する傾斜通路APは、2行目の流路開口13と接続し、1行目の流路開口13と同じ位置まで、列方向(Y方向)に沿って傾斜している。最終行(M行目とする)に位置する傾斜通路APは、M行目の流路開口13と接続し、(M-1)行目の流路開口13と同じ位置まで、列方向に沿って傾斜している。
【0060】
このため、コア部1の流路開口13がM行で配列される場合に、位相調整部2の各通路21は、一端開口22aではM行で配列される一方で、他端開口では行数が1行分増えて、行数がM+1となる。
【0061】
図8(A)に示すように、位相調整部2の第1面20aにおける各通路21の一端開口22aは、接続するコア表面12aの流路開口13(図4参照)と同じ配列になっている。すなわち、第1面20aにおける各通路21の各列の配列パターンは、第1流路開口13aと接続する第1通路21aと、第2流路開口13bと接続する第2通路21bとが、列方向に交互に並ぶパターンである。第1面20aでは、第1列(奇数列)と、第1列に対して位相が1行分だけずれた第2列(偶数列)とが行方向に交互に並んでいる。つまり、第1面20aにおいて、第1通路21aと、第2通路21bとが、行方向および列方向の両方で1つずつ交互に並んでおり、市松模様状の配列になっている。図8では、第1通路21aにハッチングを付して示している。
【0062】
図8では、奇数列が傾斜通路列23aであり、偶数列が直進通路列23bである例を示している。したがって、奇数列の傾斜通路列23aに属する各通路21は、図4に示したコア表面12a(12b)の奇数列の第1列15aに属する各流路開口13と、それぞれ接続する。偶数列の直進通路列23bに属する各通路21は、図4に示したコア表面12a(12b)の偶数列の第2列15bに属する各流路開口13と、それぞれ接続する。
【0063】
図8(B)に示すように、各傾斜通路列23aの傾斜部24(図6参照)の形成位置におけるXY方向断面では、奇数列の各傾斜通路列23aを構成する各傾斜通路APの断面が、直進通路列23bと比較して列方向(図8(B)の上方向)にずれた位置に現れている。
【0064】
そして、各傾斜通路列23aの傾斜部24を通過した後、つまり傾斜部24の他端開口22b側端部の位置におけるXY方向断面では、図8(C)に示すように、奇数列の各傾斜通路APが、初期位置(第1面20aにおける位置)よりも1行分だけ列方向にずれた位置を通過する。
【0065】
このように、各傾斜通路列23aの列方向に沿った位相が1行分ずれた結果、偶数列(直進通路列23b)の位相と、奇数列(傾斜通路列23a)の位相とが、一致する。
【0066】
したがって、図8(C)では、0行目、2行目、4行目、6行目の偶数行では、第1流路開口13aと接続する第1通路21a(つまり、第1種別の第1流体4を流通させる通路)が行方向に沿って並んでいる。1行目、3行目、5行目の奇数行では、第2流路開口13bと接続する第2通路21b(つまり、第2種別の第2流体5を流通させる通路)が行方向に沿って並んでいる。なお、図8では、説明の便宜のため、行数M=6、列数N=8で図示している。
【0067】
このようにして、本実施形態の位相調整部2は、同一種別の流体を流通させる通路21が行方向に並ぶように各列の配列パターンの位相を一致させる。
【0068】
なお、図8に示したように、本実施形態では、複数の通路21の各々は、一端開口22a(図8(A)参照)において流路開口13(図4参照)と同じ断面形状を有し、断面形状を維持しながら各列の位相を一致させるように構成されている。各通路21は、少なくとも、傾斜部24の他端開口側端部(図8(C)参照)の位置まで、断面形状を維持したまま延びる。複数の通路21の各々は、一端開口22a(図8(A)参照)において流路開口13(図4参照)の配列ピッチと同じピッチで配列され、配列ピッチを維持しながら各列の位相を一致させるように構成されている。各通路21は、少なくとも、傾斜部24の他端開口側端部(図8(C)参照)の位置まで、配列ピッチを維持したまま延びる。
【0069】
なお、傾斜部24よりも他端開口22b側の位置では、各傾斜通路列23aの列方向に沿った位相が1行分ずれた結果、新たに形成された0行目の奇数列だけに傾斜通路APが配置され、0行目の偶数列には直進通路SPが配置されていない。同様に、最終行(図8では6行目)の偶数列だけに直進通路SPが配置され、最終行の奇数列には傾斜通路APが配置されていない。
【0070】
次に、位相調整部2の各通路21の他端開口22b側の構造について説明する。
【0071】
図8(C)に示した通り、位相調整部2の各通路21は、同一種別の流体が流通する通路21が行方向に並ぶように位相が揃えられる。これにより、本実施形態の位相調整部2には、同一種別の流体が流通する通路21が行方向(X方向)に並ぶことにより、流体の種別毎の通路21の他端開口22b(図5参照)が行単位で形成されている。
【0072】
より具体的には、図9および図10に示すように、傾斜通路列23aを構成するそれぞれの傾斜通路APは、傾斜部24よりも他端開口22b側で、隣接する列の他の通路21(直進通路SP)と行方向に連通し、複数列を行方向に横断する合流部25を形成している。なお、図9および図10では、便宜的に、コア部1(コア表面12a)と位相調整部2(第1面20a)とを、分離させた態様で図示している。
【0073】
図9は、位相調整部2における偶数行の各通路21が通るXZ断面の模式図である。合流部25は、同一の行における、奇数列の各傾斜通路APと、偶数列の各直進通路SPと、を横断するように設けられ、これらの各直進通路SPと各傾斜通路APとに並列的に接続している。
【0074】
偶数列の直進通路SPは、一端開口22aからそのまま直進して、合流部25に接続している。奇数列の傾斜通路APは、一端開口22aの直後に傾斜部24によって1行分Y方向にずれる方向へ延びる(図6参照)。そのため、図9に示した行(m行目とする)の合流部25には、(m+1)行目の一端開口22aからm行目へずれてきた傾斜通路APの傾斜部24が接続している。図9では、m行目の傾斜部24と、(m+1)行目の傾斜部24とを仕切る傾斜隔壁26が傾斜通路APの断面に現れている。このようにして、m行目の直進通路SPと、(m+1)行目からm行目に遷移した傾斜通路APとが、それぞれ合流部25に接続している。
【0075】
合流部25は、行方向(X方向)に延びて、位相調整部2の第2面20bまたは第3面20cのいずれかに開口している。この合流部25が接続する開口が、他端開口22bである。本実施形態では、位相調整された複数の通路21が合流部25に接続するため、合流部25の端部において、複数の通路21の他端をまとめた1つの大型の他端開口22bが構成されている。
【0076】
図9に示すように、第1種別の流体(第1流体4)を流通させる合流部25の行方向の一端部が、第2面20bに形成された他端開口22bに接続している。つまり、図8(C)に示した偶数行(0行、2、4、6行目)の通路21の合流部25は、それぞれ第2面20bに形成された各行の他端開口22bに繋がっている。そして、第2面20bに形成された各他端開口22bは、第1流体4を流通させるヘッダ部3bに接続している。
【0077】
そして、図10に示すように、第2種別の流体(第2流体5)を流通させる合流部25の行方向の他端部が、第3面20cに形成された他端開口22bに接続している。図10は、図8(C)に示した奇数行(1、3、5行目)の通路21の合流部25を示し、それぞれ第3面20cに形成された各行の他端開口22bに繋がっている。そして、第3面20cに形成された各他端開口22bは、第2流体5を流通させるヘッダ部3dに接続している。
【0078】
合流部25の端部が接続する他端開口22bは、個々の通路21の流路幅よりも大きい開口幅(図9図10におけるZ方向の幅)を有している。
【0079】
なお、図示を省略するが、図8(C)の0行目では、偶数列の直進通路SPが存在せず、奇数列で1行目の一端開口22aと繋がる傾斜通路APだけが合流部25に接続する。偶数列の直進通路SPに対応する箇所は隔壁によって仕切られる。同様に、図8(C)の最終行では、奇数列の傾斜通路APが存在せず、偶数列で最終行の一端開口22aと繋がる直進通路SPだけが合流部25に接続する。奇数列の傾斜通路APは、1行分ずれた(M-1)行の合流部25に接続する。
【0080】
(流体の流れ)
以上から、図11に示すように、第1流体4は、コア表面12a(コア表面12b)においては、市松模様状に互い違いに配列された各第1流路開口13aを通過する。第1列15aに属する第1流路開口13aを流れる第1流体4は、位相調整部2における傾斜通路列23aの第1通路21aに流入し、1行分だけずれた行を流れる。第2列15bに属する第1流路開口13aを流れる第1流体4は、位相調整部2における直進通路列23bの第1通路21aに流入し、同じ行を直進する。これにより、各列における第1流路開口13aを流れる第1流体4は、位相調整部2の偶数行の通路21にそれぞれ集約され、偶数行の合流部25を通過して偶数行の他端開口22bから流出する。
【0081】
図12に示すように、第2流体5は、コア表面12a(コア表面12b)においては、市松模様状に互い違いに配列された各第2流路開口13bを通過する。第1列15aに属する第2流路開口13bを流れる第2流体5は、傾斜通路列23aの第2通路21bに流入し、1行分だけずれた行を流れる。第2列15bに属する第2流路開口13bを流れる第2流体5は、位相調整部2における直進通路列23bの第2通路21bに流入し、同じ行を直進する。これにより、各列における第2流路開口13bを流れる第2流体5は、位相調整部2の奇数行の通路21にそれぞれ集約され、奇数行の合流部25を通過して奇数行の他端開口22bから流出する。
【0082】
ここではコア部1からの流体が位相調整部2を介して流出する場合について説明したが、図2に示したヘッダ部3a(3c)からの流体が位相調整部2を介してコア部1に流入する場合では、各行の他端開口22bから流入した流体が、位相調整部2において市松模様状の個別の通路21に分配される。流体が流入する場合の流れは、図11図12における矢印を逆方向に辿る経路となる。
【0083】
すなわち、位相調整部2では、いずれかの偶数行の他端開口22bを介して合流部25に流入した第1流体4(図11参照)が、その合流部25に接続する個々の直進通路SPおよび傾斜通路APに流入する。そして、各直進通路SPに流入した流体は、コア表面12bにおける同じ行の第1流路開口13aに流入する。各傾斜通路APに流入した流体は、1行分だけ位相がずれて、コア表面12bにおける1行分だけ位相がずれた行の第1流路開口13aに流入する。
【0084】
同じように、いずれかの奇数行の他端開口22bを介して合流部25に流入した第2流体5が、その合流部25に接続する個々の直進通路SPおよび傾斜通路APに流入する。そして、各直進通路SPに流入した流体は、コア表面12bにおける同じ行の第2流路開口13bに流入する。各傾斜通路APに流入した流体は、1行分だけ位相がずれて、コア表面12bにおける1行分だけ位相がずれた行の第2流路開口13bに流入する。
【0085】
この結果、位相調整部2では行単位で区分されて流入した種別毎の流体が、コア部1における市松模様状の各流路開口13へ分配されることになる。
【0086】
本実施形態の熱交換器100は、以上のように構成されている。
【0087】
熱交換器100のコア部1、位相調整部2およびヘッダ部3の各々は、たとえば、積層造形法によって形成された立体構造物としてされうる。より具体的には、積層造形法は、粉末積層造形法である。粉末積層造形法は、粉末材料を層状に敷き詰め、造形すべき箇所にレーザや電子ビームなどを照射して溶融、凝固させることによって層状の造形部分を形成する処理を、積層方向(造形方向)に繰り返し、層状の造形部分を積層方向に積み重ねて立体構造を造形する手法である。粉末材料は、鉄系、銅系、チタン系、アルミニウム系などの金属材料であり、重量、機械的強度、伝熱性能など観点から、たとえばアルミニウム(またはアルミニウム合金)などが好ましい。
【0088】
本実施形態では、コア部1、位相調整部2および4つのヘッダ部3が、それぞれ、積層造形法によって別々に形成(個別の単一部品として形成)された後、相互に接合されることによって熱交換器100として構成されうる。また、コア部1、位相調整部2およびヘッダ部3を含む熱交換器100の全体が、積層造形法によって一体的に形成されうる。
【0089】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0090】
本実施形態では、上記のように、行列状に配列されるとともに複数の流路開口13のそれぞれと接続する複数の通路21を含む位相調整部2をコア表面12a(12b)に配置し、位相調整部2の複数の通路21に、列毎の配列パターンの位相を揃えるように列方向に傾斜した傾斜通路APからなる傾斜通路列23aを含めるので、コア表面12a(12b)では異なる種別の流路開口13が混在する場合であっても、一部の流路開口13の列を、列方向にずれた位置を通過する傾斜通路列23aと接続することができる。そのため、コア表面12a(12b)に行列状に配列された複数の流路開口13において、流体の種別毎の配列パターンが各列において同一であれば、いずれかの列を基準として、基準列とは位相がずれた列の流路開口13を傾斜通路列23aと接続することで、流路開口13の各列の位相を基準列の位相と一致させることができる。そして、位相調整部2における複数の通路21では、各列の配列パターンの位相が一致する結果、流体の種別毎の通路(21a、21b)の他端開口22bが行単位で形成される。これにより、種別毎の流体の導入または導出を行単位で行うことができる。この構成によれば、種別毎の流体を別々に流通させるために通路21間に隙間を形成する必要がないため、一方の通路21の断面積を流路開口13の断面積よりも縮小する必要がない。そのため、コア表面12a(12b)において複数種別の流路開口13が混在する態様で形成される場合でも、流体の分配に伴う圧力損失の増大を抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態による熱交換器100では、位相調整部2に傾斜した傾斜通路列23aを設けるだけでよいので、断面形状を変化させないか、あるいは断面形状の変化を小さくすることができる。その結果、積層造形法による造形不良の発生リスクを効果的に低減できる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、複数の通路21は、一端開口22aと他端開口22bとの間で、列方向に傾斜せずに直進する直進通路SPからなる直進通路列23bと、傾斜通路列23aとを含み、傾斜通路列23aは、直進通路列23bに位相を一致させるように傾斜している。このように構成すれば、位相調整部2において、位相の基準列に単純な直進通路列23bを設け、基準列から位相のずれた列に傾斜通路列23aを設けるだけで、コア表面12a(12b)の流路開口13の各列の位相ずれを揃えることができる。そのため、位相調整部2の構造が複雑化することを抑制できる。
【0093】
また、本実施形態では、上記のように、複数の流路開口13の各列は、第1列15aと、第1列15aに対して位相が1行分だけずれた第2列15bと、の2種類の列で構成され、傾斜通路列23aは、直進通路列23bに対して1行分だけ位相がずれるように列方向に傾斜しているので、1行分だけ位相がずれるように傾斜した傾斜通路列23aを設けるだけの単純な構造で、コア表面12a(12b)の流路開口13の各列の位相ずれを揃えることができる。
【0094】
また、本実施形態では、上記のように、複数の流路開口13は、第1種別の流体を流通させる第1流路開口13aと、第2種別の流体を流通させる第2流路開口13bと、を含み、複数の流路開口13の各列の配列パターンは、第1流路開口13aと第2流路開口13bとが列方向に交互に並ぶパターンであり、かつ、第1列15aと、第1列15aに対して位相が1行分だけずれた第2列15bとが行方向に交互に並ぶことにより、コア表面12a(12b)において、第1流路開口13aと第2流路開口13bとが行方向および列方向の両方で交互に並んでいるので、第1種別の流体を流通させる流路11は第2種別の流体を流通させる流路11に囲まれ、第2種別の流体を流通させる流路11は第1種別の流体を流通させる流路11に囲まれる。そのため、コア部1の各流路11の伝熱面積を増大させることができるので、熱交換性能を効果的に向上させることができる。その一方、コア表面12a(12b)において第1流路開口13aと第2流路開口13bとが市松模様状に配列されるので、種別毎の流体の導入および導出が難しくなるが、本実施形態によれば、位相調整部2において、第1流路開口13aと接続する通路21を行単位でまとめて他端開口22bに接続でき、第2流路開口13bと接続する通路21を別の行にまとめて他端開口22bに接続できる。そのため、圧力損失を増大させることなく、種別毎の流体の導入および導出を容易に行えるようになる。
【0095】
また、本実施形態では、上記のように、傾斜通路列23aを構成するそれぞれの傾斜通路APは、隣接する列の他の通路21と位相を一致させるように傾斜した傾斜部24を有し、傾斜部24よりも他端開口22b側で、隣接する列の他の通路21と行方向に連通し、複数列を行方向に横断する合流部25を形成しているので、位相調整部2の各通路21において列毎の位相を揃えた後で、合流部25において行方向に並んだ通路21を相互に連通させることができる。そのため、流体の流通空間を大きくすることができるので、圧力損失が増大する事を効果的に抑制できる。また、コア表面12a(12b)において複数の流路開口13を別々に通過する同一種別の流体が、合流部25では混合された状態となるので、混合により流体の温度分布を均一化することができる。
【0096】
また、本実施形態では、上記のように、複数の流路開口13の各々は、列方向に沿って延びるとともに等しい長さを有する一対の辺を含み、複数の通路21の各々は、一端開口22aにおいて流路開口13と同じ断面形状を有し、断面形状を維持しながら各列の位相を一致させるように構成されているので、コア表面12a(12b)の流路開口13の断面形状(開口形状)を維持したまま、位相調整部2の各通路21において列毎の位相を揃えることができる。そのため、圧力損失が増大する事を効果的に抑制できる。また、複数の流路開口13の各々の一対の辺の長さが等しいので、列毎の位相を揃えた時に、行方向に並ぶ複数の通路21同士の一対の辺の長さも揃えることができる。このため、合流部25の断面において、各通路21の辺の長さがばらつくことによって凹凸が形成されることを防止できる。
【0097】
また、本実施形態では、上記のように、位相調整部2は、コア表面12a(12b)と接続される第1面20aと、行方向に向かい合う第2面20bおよび第3面20cと、を含み、第1種別の流体を流通させる合流部25の行方向の一端部が、第2面20bに形成された他端開口22bに接続し、第2種別の流体を流通させる合流部25の行方向の他端部が、第3面20cに形成された他端開口22bに接続しているので、第1面20aから受け入れた流体を、第2面20bと第3面20cとに振り分けるように分配したり、第2面20bと第3面20cとからそれぞれ受け入れた流体を、第1面20aからコア部1へ供給したりできる。この場合、流体の導入または導出のためのヘッダ部を、第2面20bと第3面20cとに設けることになる。仮に、いずれかの他端開口22bを第1面20aとは反対側の面に形成する場合には、位相調整部2に対して第1面20a側にコア部1が配置され、反対側の面にヘッダ部が配置され、コア部1と位相調整部2とヘッダ部とが直線状に並ぶことで熱交換器100の全長が大きくなるが、他端開口22bが第2面20bと第3面20cとに設けられる本実施形態の構成によれば、熱交換器100の全長が大きくなることを抑制できる。
【0098】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0099】
たとえば、上記実施形態では、第1流体4と第2流体5との2種別の流体を扱う熱交換器100の例を示したが、本発明はこれに限られない。流体の種別数は、3以上であってもよい。たとえば高温流体として、A流体とB流体とをコア部1に流通させ、低温流体としてC流体をコア部1に流通させ、A流体とB流体とをC流体と熱交換させる構成であってもよい。この場合、コア部1には、図13に示すように、流体の種別毎に第1~第3の流路開口13(図13のA~C)が形成される。同じく、位相調整部2には、流体の種別毎に第1~第3の通路21(図13のA~C)が形成される。
【0100】
また、上記実施形態では、傾斜通路列23aが、直進通路列23bに対して1行分だけ位相がずれる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば図13に示すように、A流体、B流体、C流体の3種別で、流路開口13の各列が、位相が異なる第1列111、第2列112、第3列113を含むとする。この場合、位相調整部2では、第2列112の位相を傾斜通路列123によって1行分ずらし、第3列113の位相を傾斜通路列124によって2行分ずらすことで、各列の位相を第1列111の位相に一致させることができる。このように、傾斜通路列の位相を2行分以上ずらしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、位相調整部2の各行に合流部25を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位相調整後に行方向に並んだ各通路21が合流せずに、別々の他端開口22bに接続してもよい。この場合、個々の通路21の他端開口22bが、行方向に沿って並ぶ構成(図15(A)参照)であってもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、複数の流路開口13の各々が、長方形状(正方形を含む)を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の流路開口13の各々が、長方形状以外の形状を有していてもよい。たとえば図14(A)は平行四辺形の流路開口13の配列を示し、図14(B)は図14(A)に対応した位相調整後の各通路21の断面形状を示す。図14(C)は台形の流路開口13の配列を示し、図14(D)は図14(C)に対応した位相調整後の各通路21の断面形状を示す。
【0103】
また、上記実施形態では、複数の流路開口13の各々が、列方向に沿って延びるとともに等しい長さを有する一対の辺14aを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の流路開口13の各々において、一対の辺の長さが異なっていてもよい。図14(C)および図14(D)に示した台形の流路開口13では、一対の辺121の一方の長さと他方の長さとが異なる。この場合、図14(D)に示すように、位相調整後に行方向に並んだ各通路21では、行方向に沿って流路断面の高さ(Y方向寸法)が変化する。この場合に合流部25を設けると、行方向の位置に応じて合流部25の高さが変動するが、図14(B)のように一対の辺の長さが同一の場合、合流部25の高さが変動しないので好ましい。
【0104】
また、上記実施形態では、第1種別の流体を流通させる他端開口22bを第2面20bに形成し、第2種別の流体を流通させる他端開口22bを第3面20cに形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2面20b、第3面20c以外の面に他端開口22bを形成してもよい。たとえば図15(A)および(B)では、第1種別の流体を流通させる他端開口22bを、第1面20aとは反対側の第4面20dに形成している。第4面20dの他端開口22bに接続する通路21は、第1面20aからZ方向に延びて、第4面20dに到達している。このため、第4面20dを覆うヘッダ部131へ、第1流体4をまとめて流出させることができる。図15(B)では、第2流体5を流通させる他端開口22bは、第3面20cに形成されているが、第2流体5を流通させる他端開口22bを第2面20bに形成してもよい。
【0105】
また、図16(A)~(C)では、第1流体4を流通させる第1通路21aの他端開口22bと、第2流体5を流通させる第2通路21bの他端開口22bとの両方を、第4面20dに形成している。図16の場合、第4面20dにおける奇数行の他端開口22bは、図16(B)のように、ヘッダ部132aに接続され、第1流体4が流通する。第4面20dにおける偶数行の他端開口22bは、図16(C)のように、ヘッダ部132bに接続され、第2流体5が流通する。このように、行単位で、奇数行の他端開口22bに接続するヘッダ部132aと偶数行の他端開口22bに接続するヘッダ部132bとを設けることで、同じ第4面20dから、種別毎に流体を取り出すことができる。
【0106】
また、上記実施形態では、第1流体4および第2流体5をそれぞれコア部1の一端から他端に向けて流通させる並行流型の熱交換器100の構成例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱交換を行う流体同士が互いに反対方向に向けて流通する対向流型の熱交換器としてもよい。
【0107】
さらに、本発明では、ヘッダ部3a~3dをコア部1の一端側または他端側のどちらかにまとめて配置して、流体をUターン(折り返し)させてもよい。
【0108】
図17および図18に示す例では、コア部1の一端側の位相調整部140の内部が、入口領域と出口領域との2つの領域に区画されている。
【0109】
位相調整部140は、第1流体4を流通させる第1流路160aに接続する入口領域141aと出口領域142aとを含む。入口領域141aと出口領域142aとは、隔壁143によって区画されている。入口領域141aと出口領域142aとがたとえば位相調整部140の偶数行に配置される。コア部1の第1流路160aは、入口領域141aに接続する往路流路161aと、出口領域142aに接続する復路流路162aとを含む。第1流体4が、ヘッダ部133aから位相調整部140の入口領域141aに流入し、コア部1の往路流路161aへ分配される。コア部1の他端側の位相調整部150は、第1面20aに、往路流路161aと接続する一端開口22aと、復路流路162aと接続する他端開口22bとを有する。位相調整部150では、各第1通路21aの一端開口22aがコア部1の往路流路161aと接続し、各第1通路21aの他端開口22bがコア部1の復路流路162aと接続している。このため、各往路流路161aから位相調整部150の各第1通路21aに流入した第1流体4は、位相調整後に偶数行の合流部25においてUターンし、各第1通路21aの他端開口22bを介してコア部1の復路流路162aに流入する。第1流体4は、各復路流路162aから位相調整部140の出口領域142aに流入し、ヘッダ部133bへ流出する。
【0110】
図18は、第2流体5の流通経路を示している。位相調整部140は、第2流体5を流通させる第2流路160bに接続する入口領域141bと出口領域142bとを含む。入口領域141bと出口領域142bとがたとえば位相調整部140の奇数行に配置される。コア部1の第2流路160bは、入口領域141bに接続する往路流路161bと、出口領域142bに接続する復路流路162bとを含む。第2流体5は、ヘッダ部133cから位相調整部140の入口領域141bを介して、往路流路161bへ分配される。往路流路161bから位相調整部150の各第2通路21bに流入した第2流体5は、位相調整後に奇数行の合流部25においてUターンし、各他端開口22bを介してコア部1の復路流路162bに流入する。第2流体5は、各復路流路162bから位相調整部140の奇数行の出口領域142bに流入し、ヘッダ部133dへ流出する。
【0111】
このような構成によって、各流体がUターンしてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、位相調整部2に、直進通路列23bと、傾斜通路列23aとを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、直進通路列23bを設けなくてもよい。たとえば、上記実施形態の市松模様状の配列の場合、1行分位相がずれる傾斜通路列23aと、2行分位相がずれる傾斜通路列23aと、の組み合わせによっても位相を揃えることが可能である。
【0113】
また、上記実施形態では、コア部1の各流路11が、Z方向に直線状に延びる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コア部1の流路11の構造は任意である。流路11は、コア部1の内部で曲がっていたり、分岐していたり、ねじれていたり、断面形状が変化していたりしてもよい。1つの流路11のXY方向における位置が、コア部1の内部で別の流路11の位置と入れ替わってもよい。たとえば、一端側のコア表面12aにおけるm1行n1列の位置の流路開口13と接続する流路11が、他端側のコア表面12bでは、m2行n2列(m1≠m2、n1≠n2)の位置の流路開口13と接続してもよい。
【0114】
たとえば上記特許文献1(特開2020-46161号公報)に開示された構造の流路を備えたコア部を設けてもよい。すなわち、コア部1の複数の流路11は、全体として所定方向(Z方向)に延びる様に形成され、かつ、複数の流路11のそれぞれは、所定方向(Z方向)と直交する断面における位置および外形形状が、所定方向(Z方向)における位置に応じて変化していてもよい。より具体的には、コア部1の複数の流路11のそれぞれの位置が、一方のコア表面12aの流路開口13から他方のコア表面12bの流路開口13までの間で、螺旋状に変化してもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 コア部
2、140、150 位相調整部
4 第1流体(第1種別の流体)
5 第2流体(第2種別の流体)
11 流路
12a、12b コア表面
13 流路開口
13a 第1流路開口
13b 第2流路開口
14a、121 一対の辺
15a、111 第1列
15b、112 第2列
20a 第1面
20b 第2面
20c 第3面
21 通路
22a 一端開口
22b 他端開口
23a、123、124 傾斜通路列
23b 直進通路列
24 傾斜部
25 合流部
100 熱交換器
AP 傾斜通路
SP 直進通路
X 行方向
Y 列方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18