IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 船井電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073886
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】移乗装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/00 20060101AFI20230519BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20230519BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20230519BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20230519BHJP
   A61G 5/08 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A61G5/00 701
A61G5/14
A61G5/10 717
A61G5/12 701
A61G5/08 703
A61G5/10 703
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186629
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機・ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】村山 学
(72)【発明者】
【氏名】若林 尚之
(57)【要約】
【課題】操作性を向上させながら、被介護者の乗り心地を向上させることが可能である移乗装置を提供する。
【解決手段】支持フレーム1と、支持フレーム1に取り付けられるとともに、折り畳み可能または伸縮可能に構成されている被介護者P1を着座させるための座面部材2と、支持フレーム1に取り付けられるとともに、被介護者P1の上半身を前方から支持する支持部材3と、支持フレーム1の下方に取り付けられるキャスター4と、支持部材3に取り付けられるとともに、支持フレーム1の前後方向に位置を変更可能に構成され、移乗時に介護者P2に把持されるハンドル部材5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フレームと、
前記支持フレームに取り付けられるとともに、折り畳み可能または伸縮可能に構成されている被介護者を着座させるための座面部材と、
前記支持フレームに取り付けられるとともに、前記被介護者の上半身を前方から支持する支持部材と、
前記支持フレームの下方に取り付けられるキャスターと、
前記支持部材に取り付けられるとともに、前記支持フレームの前後方向に位置を変更可能に構成され、移乗時に介護者に把持されるハンドル部材と、を備える、移乗装置。
【請求項2】
前記ハンドル部材は、回動することにより前記支持フレームの前後方向に位置を変更可能に構成されている、請求項1に記載の移乗装置。
【請求項3】
前記ハンドル部材は、回動を抑制するためのロック機構を有し、
前記ハンドル部材は、前記ロック機構を解除することにより、回動可能になるように構成されている、請求項2に記載の移乗装置。
【請求項4】
前記ハンドル部材は、前記支持部材の延びる方向に交差する方向に延びる軸部と、前記軸部から前記支持部材が延びる方向に沿って屈曲した把持部とを有するように構成され、
前記ハンドル部材は、前記支持部材の延びる方向に交差する方向に沿って前記把持部を伸ばすことにより、前記ロック機構が解除されて回動可能になるように構成されている、請求項3に記載の移乗装置。
【請求項5】
前記ハンドル部材は、前記支持部材に対して側方に回動させることにより、前記ロック機構が解除されて回動可能になるように構成されている、請求項3に記載の移乗装置。
【請求項6】
前記ハンドル部材は、前記支持部材に対して取り外し可能に取り付けられている、請求項1に記載の移乗装置。
【請求項7】
前記座面部材は、前後方向に伸縮可能に構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の移乗装置。
【請求項8】
前記座面部材は、前記被介護者が着座する座面部と、前記座面部を伸縮させる伸縮機構とを有し、
前記座面部は、前記伸縮機構から取り外すことが可能に構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の移乗装置。
【請求項9】
前記座面部材よりも下方側に位置し、前記支持フレームの下端部から後方に向かって平行に延びるとともに、前記キャスターが取り付けられる一対のベースフレームをさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の移乗装置。
【請求項10】
前記支持部材を前記支持フレームに取り付けるための可動アームをさらに備え、
前記可動アームは、前記支持部材の側方の一方端において片持ちで支持するとともに、前記ハンドル部材の上下方向の移動に伴って前記支持部材とともに回動するように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の移乗装置。
【請求項11】
前記ハンドル部材は、前記キャスターの回転を停止させるためのブレーキを有し、
前記ブレーキの作動状態または非作動状態を検知する第1センサと、
前記可動アームの初期位置からの回動を検知する第2センサと、
前記第1センサと前記第2センサとの検知結果に基づいて、前記座面部材を伸縮させる駆動機構とを備える、請求項10に記載の移乗装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移乗装置に関し、特に、ハンドル部材と座面部材とを備える移乗装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドル部材と座面部材とを備える移乗装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、本体フレームと、座面部と、介護者が把持する把持レバーとを備える移乗装置が開示されている。上記特許文献1に開示されている移乗装置では、座面部に被介護者を着座させた状態で移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-168307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に開示されている移乗装置では、把持レバーは、本体フレームに対して前方に固定して配置されているとともに、座面部が本体フレームよりも後方に配置されている。また、上記特許文献1に開示されている移乗装置では、介護者と被介護者とが対面している状態で、被介護者を座面部に着座させた後、介護者と被介護者とが対面している状態で移乗装置が移動される。そのため、介護者と被介護者とのうち一方は、移動方向に対して背中を向けることになる。
【0006】
介護者が移動方向に背中を向けた状態で移乗装置を移動する場合、介護者が段差につまずいたり、障害物に接触したりする恐れがある。一方で、被介護者が移動方向に背中を向けた状態で移動する場合、進行方向が見えないため乗り心地が悪いという問題点がある。
【0007】
一方で、上記特許文献1には開示されていないが、把持レバーを本体フレームよりも後方に配置した場合、把持レバーは被介護者に接触しないように座面部の側方に配置されると考えられる。そのため、被介護者を移乗する際に、着座の対象物の側方に移乗装置を配置して側方から被介護者を移乗させることができず、介護者は、被介護者を抱えた状態で前方から被介護者を着座させる必要があるため、操作性が悪いという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するために、操作性を向上させながら、被介護者の乗り心地を向上させることが可能である移乗装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による移乗装置は、支持フレームと、支持フレームに取り付けられるとともに、折り畳み可能または伸縮可能に構成されている被介護者を着座させるための座面部材と、支持フレームに取り付けられるとともに、被介護者の上半身を前方から支持する支持部材と、支持フレームの下方に取り付けられるキャスターと、支持部材に取り付けられるとともに、支持フレームの前後方向に位置を変更可能に構成され、移乗時に介護者に把持されるハンドル部材と、を備える。
【0010】
この発明の一の局面による移乗装置では、上記のように、支持部材に取り付けられ、移乗時に支持部材を回動させるとともに、支持フレームの前後方向に位置を変更可能に構成され、移乗時に介護者に把持されるハンドル部材を備える。これにより、移動時に支持フレームの後方にハンドル部材の位置を変えることにより、介護者が被介護者の背中側から移乗装置を操作することができるため、移動方向に対して介護者および被介護者がともに進行方向を向いた状態で移動することができる。また、移乗時に、ハンドル部材を支持フレームの前方に移動することにより、前後方向において座面部材とハンドル部材とを支持フレームを挟んで互いに反対側に配置することができる。これにより、座面部材の側方にハンドル部材が配置されないため、介護者は、側方から被介護者を座面部材に着座させることができる。また、被介護者の上半身を前方から支持する支持部材を備えることにより、移乗時および移動時に被介護者が前方の支持部材にもたれる(寄りかかる)ことができる。さらに、支持部材に被介護者の上半身を支持させた状態で支持部材を回動させることにより、被介護者の姿勢を変更させることができるため、移乗作業が容易となる。この結果、操作性を向上させながら、被介護者の乗り心地を向上させることができる。
【0011】
上記一の局面による移乗装置において、好ましくは、ハンドル部材は、回動することにより支持フレームの前後方向に位置を変更可能に構成されている。このように構成すれば、ハンドル部材を回動させることにより、支持フレームの前後方向に位置を変更することができるため、介護者が容易にハンドル部材の位置を変更することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、ハンドル部材は、回動を抑制するためのロック機構を有し、ハンドル部材は、ロック機構を解除することにより、回動可能になるように構成されている。このように構成すれば、ハンドル部材を回動させた後、ロック機構によって回動が抑制されるため、移乗時および移動時にハンドル部材を支持部材に固定した状態で移乗装置を操作することができる。
【0013】
上記ハンドル部材が回動を抑制するためのロック機構を有する構成において、好ましくは、ハンドル部材は、支持部材の延びる方向に交差する方向に延びる軸部と、軸部から支持部材が延びる方向に沿って屈曲した把持部とを有するように構成され、ハンドル部材は、支持部材の延びる方向に交差する方向に沿って把持部を伸ばすことにより、ロック機構が解除されて回動可能になるように構成されている。このように構成すれば、支持部材の延びる方向に交差する方向に沿って把持部を伸ばすことによりロック機構が解除されるため、介護者がロック機構を解除するための複雑な操作を行う必要がない。これにより、操作性を向上させることができる。
【0014】
上記ハンドル部材が回動を抑制するためのロック機構を有する構成において、好ましくは、ハンドル部材は、支持部材に対して側方に回動させることにより、ロック機構が解除されて回動可能になるように構成されている。このように構成すれば、ハンドル部材の位置を変更する際の回動方向と、ロック機構を解除する際の回動方向とを異ならせることができるため、同じ方向に回動する場合と比べて構成する場合と比べて複雑な機構を設ける必要がない。
【0015】
上記第一の局面による移乗装置において、好ましくは、ハンドル部材は、支持部材に対して取り外し可能に取り付けられている。このように構成すれば、介護者は、たとえば、支持フレームの後方に向かって延びるように支持部材に配置されたハンドル部材を支持部材から取り外し、ハンドル部材を支持フレームの前方に向かって延びるように向きを変更して支持部材に取り付けることができる。この結果、介護者は、容易にハンドル部材の向きを変更することができる。
【0016】
上記第一の局面による移乗装置において、好ましくは、座面部材は、前後方向に伸縮可能に構成されている。ここで、上下方向に折りたたまれる座面部材では、上下方向(垂直方向)に移動する座面部材に被介護者が接触しないように折りたたまれた座面部材の上端の位置よりも上方に介護者が被介護者を持ち上げながら、介護者は座面部材を操作する必要がある。そのため、座面部材を前後方向に伸縮可能に構成することにより、座面部材を前後方向(水平方向)に移動させて座面部材を伸ばすことができるため、上下方向に折りたたまれる座面部材と比較して、介護者は被介護者を上方に持ち上げずに座面部材を操作することができる。この結果、被介護者の負担を減らすことができる。また、座面部材が、前後方向に伸縮可能であることにより、座面部材が縮んでいる場合に、支持フレームから座面部材が前後方向に突出しないため、移乗装置を前後方向においてコンパクトにすることができる。
【0017】
上記第一の局面による移乗装置において、好ましくは、座面部材は、被介護者が着座する座面部と、座面部を伸縮させる伸縮機構とを有し、座面部は、伸縮機構から取り外すことが可能に構成されている。このように構成すれば、座面部が汚損した場合に、清潔な座面部に取り換えるか、または、取り外して洗浄することができるため、移乗装置の衛生状態を向上させることができる。
【0018】
上記第一の局面による移乗装置において、好ましくは、座面部材よりも下方側に位置し、支持フレームの下端部から後方に向かって平行に延びるとともに、キャスターが取り付けられる一対のベースフレームをさらに備える。このように構成すれば、たとえば、ベッドと移乗装置との間において被介護者を移乗する場合に、ベッドと床との間にベースフレームを挿入することができるため、移乗装置をベッドに近づけることができる。また、トイレと移乗装置との間において被介護者を移乗する際に、トイレを挟んだ状態で一対のベースフレームを配置することができるため、トイレと移乗装置とを近づけることができる。これらの結果、被介護者を容易に移乗することができる。
【0019】
上記第一の局面による移乗装置において、好ましくは、支持部材を支持フレームに取り付けるための可動アームをさらに備え、可動アームは、支持部材の側方の一方端において片持ちで支持するとともに、ハンドル部材の上下方向の移動に伴って支持部材とともに回動するように構成されている。このように構成すれば、可動アームが設けられていない側から被介護者を移乗装置に移乗させることができる。また、可動アームは、ハンドル部材の上下方向の移動に伴って支持部材とともに回動するため、支持部材を回動させて被介護者の姿勢を変更する際に被介護者が可動アームに接触することを抑制することができる。
【0020】
上記第一の局面による移乗装置において、好ましくは、ハンドル部材は、キャスターの回転を停止させるためのブレーキを有し、ブレーキの作動状態または非作動状態を検知する第1センサと、可動アームの初期位置からの回動を検知する第2センサと、第1センサと第2センサとの検知結果に基づいて、座面部材を伸縮させる駆動機構とを備える。ここで、ブレーキが作動した後、非作動状態になった場合は、座面部材を伸縮させるために移乗装置が移動される場合と考えられる。また、可動アームが初期位置から回動した状態は、被介護者が支持部材にもたれかかっている状態であると考えられる。そのため、このように構成すれば、第1センサの検知結果と第2センサとの検知結果から座面部材を伸縮させる段階であると判断し、座面部材を自動で伸縮させることができる。その結果、介護者が座面部材を手動で伸縮させる必要がなく、介護者の作業負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、操作性を向上させながら、被介護者の乗り心地を向上させることが可能である移乗装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態による移乗装置の全体を示した模式図である。
図2】座面部材が伸びている状態を示す図である。
図3】座面部材が縮んでいる状態を示す図である。
図4】ハンドル部材が前方に位置している状態を示す図である。
図5】ハンドル部材が後方に位置している状態を示す図である。
図6】(A)ロック状態のハンドルを示す図である。(B)ロック状態を説明するための断面図である。
図7】(A)ロック解除状態のハンドルを示す図である。(B)ロック解除状態を説明するための断面図である。
図8】(A)被介護者がベッドに座っている状態を示す正面図である。(B)被介護者がベッドに座っている状態を示す側面図である。
図9】移乗装置をベッドに移動する状態を示す図である。
図10】移乗装置をベッドに接近させた状態を示す図である。
図11】移乗時のベッドと被介護者との配置を示す図である。
図12】移乗装置をベッドと被介護者との間に移動させた状態を示す図である。
図13】第1保持部および第2保持部を被介護者に取り付けた状態を示す図である。
図14】被介護者の姿勢を変更した状態を示す図である。
図15】座面部材を伸ばすために移乗装置を移動させた状態を示す図である。
図16】座面部材を伸ばした状態を示す図である。
図17】座面部材に被介護者が着座した状態を示す図である。
図18】ハンドル部材の位置を前方から後方に変更した状態を示す図である。
図19】移乗装置を移動させた後の様子を示す図である
図20】ハンドル部材の位置を後方から前方に移動させた状態を示す図である。
図21】被介護者の姿勢を変更した状態を示す図である。
図22】座面部材を縮めた状態を示す図である。
図23】移乗装置をトイレに近づけた状態を示す図である。
図24】被介護者をトイレに着座させた状態を示す図である。
図25】第2実施形態の移乗装置を示す図である。
図26】第1センサと第2センサと駆動装置とが連携した動作流れを示すフローチャートである。
図27】変形例のハンドル部材の図である。
図28】変形例の座面部材を示す図である。
図29】変形例の支持部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[第1実施形態]
まず、図1図8を参照して、第1実施形態による移乗装置100の構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、第1実施形態による移乗装置100は、支持フレーム1と、座面部材2と、支持部材3と、キャスター4と、ハンドル部材5とを備える。移乗装置100は、介護が必要な被介護者P1をある場所(たとえば、ベッド)から、他の場所(たとえば、トイレまたは風呂)に移動させるための装置である。なお、移乗とは、被介護者P1(図8参照)が座る対象を変えることを指し、たとえば、ベッドから移乗装置100に移ることと、移乗装置100からトイレに移ることを含む。また、本願明細書では、介護者P2(図9参照)は、いわゆるホームヘルパー、看護師および家族を含む被介護者P1の介護を行う人を含む。また、本願明細書では、座面部材2に被介護者P1が着座した場合における、被介護者P1の前方をZ1側とし、後方をZ2側とし、Z1側とZ2側とを結ぶ前後方向をZ方向とする。また、座面部材2に被介護者P1が着座した場合における、被介護者P1の左側をX2側とし、右側をX1側とし、X1側とX2側とを結ぶ左右方向をX方向とする。さらに、X方向およびZ方向に直交する上下方向をY方向とし、上側をY1側、下側をY2側とする。
【0026】
支持フレーム1は、X方向において対向するとともに、各々Y方向に延びる2本のパイプのY1側の端部をX方向に延びるパイプで接続した第1支柱1aと、第1支柱1aと同一形状の第2支柱1bとから構成される。第1支柱1aと第2支柱1bとは、Z方向に隣接して配置されている。図1では、第1支柱1aがZ2側に位置し、第2支柱1bがZ1側に位置する。なお、支柱を形成するのはパイプに限られず円柱状の棒であってもよい。支柱は、金属で形成してもよい。
【0027】
ここで、図1を参照して、移乗装置100の各部材の配置について支持フレーム1の第1支柱1aおよび第2支柱1bを基準に説明する。なお、支持フレーム1以外の各部材の詳細な説明は後述する。
【0028】
第1支柱1aには、座面部材2が取り付けられる。具体的には、第1支柱1aの上端に、座面部材2の座面部2aの一端が固定される。また、第1支柱1aのZ2側に、座面部材2の伸縮機構2bが取り付けられる。また、第1支柱1aの上端には、Y方向に延びる可動アーム8のY2側の端部が座面部2aを介して配置される。可動アーム8のY1側の端部には、支持部材3が取り付けられている。支持部材3には、ハンドル部材5が取り付けられる。また、支持部材3のZ2側には、第2保持部7が取り付けられる。
【0029】
第2支柱1bのZ1側には、第1保持部6が取り付けられている。また、第1支柱1aと第2支柱1bとの下端部には、Z方向に延びるベースフレーム9が取り付けられている。ベースフレーム9のZ1側の端部およびZ2側の端部にはキャスター4が取り付けられている。また、ベースフレーム9のZ1側の端部近傍には足乗部10が取り付けられる。
【0030】
座面部材2は、伸縮可能な座面部2aと、座面部2aを伸縮させるための伸縮機構2bとを備える。
【0031】
図2および図3に示すように、座面部2aは、前後方向(Z方向)に伸縮可能である。座面部2aは、布で構成されている。また、座面部2aは、クッションを含んでいてもよい。座面部2aの形状および大きさは、特に限定されないが、被介護者P1が安定して着座することができる形状および大きさである。座面部2aは、伸びた状態において被介護者P1が着座するように構成されている。座面部2aのZ1側の端部は第1支柱1aに固定されており、Z2側の端部が移動することで座面部2aは伸縮する。座面部2aは、伸縮機構2bから取り外すことが可能に構成されている。座面部2aは、たとえば、一端を伸縮機構2bに巻き付けた状態で固定され、伸縮機構2bから巻き付け部分を抜くことにより取り外すことができるように構成されていてもよい。
【0032】
伸縮機構2bは、座面部2aを前後方向に伸縮させる。伸縮機構2bは、たとえば、リンク機構を有している。伸縮機構2bは、座面部2aが上方(Z1側)に取り付けられる。座面部2aは、伸縮機構2bから取り外すことが可能に構成されている。また、伸縮機構2bは、Z1側の端部は第1支柱1aに固定されており、Z2側の端部が移動することにより座面部2aを伸縮させる。
【0033】
図1に示すように、支持部材3は、被介護者P1の上半身を前方(Z1側)から支持をするための部材である。支持部材3は、X方向に延びる円柱状である。支持部材3は、ウレタンのように柔らかい素材から形成される。支持部材3は、移乗時に被介護者P1の姿勢を変更するために用いられる。具体的には、ハンドル部材5がY2側に押し下げられることにより、支持部材3が回動し、もたれかかっている被介護者P1の腰を浮かすことができる。また、ハンドル部材5がY1方向に押し上げられることにより、支持部材3が回動し、もたれかかっている被介護者P1を座面部材2または他の着座可能な部材に着座させることができる。
【0034】
キャスター4は、支持フレーム1の下方にベースフレーム9を介して取り付けられる。キャスター4は、前方および後方に各々2つずつの合計4つ設けられる。キャスター4は、支持フレーム1よりも前方(Z1側)に設けられるキャスター4の(車輪の)直径の大きさよりも支持フレーム1よりも後方(Z2側)に設けられるキャスター4の(車輪の)直径の大きさが小さくなるように構成されている。キャスター4は、たとえば、前後方向(Z方向)に移動可能なキャスター4だけでなく、前後方向(Z方向)および左右方向(X方向)に移動可能なキャスター4を含む。
【0035】
ハンドル部材5は、支持部材3のX1側およびX2側にそれぞれ設けられている。ハンドル部材5は、支持部材3の延びる方向(X方向)に交差する方向(Z方向)に延びる軸部5aと、軸部5aから支持部材3が延びる方向(X方向)に沿って屈曲した把持部5bとを有するように構成されている。軸部5aは、支持部材3のX1側の端部およびX2側の端部に配置されている。また、軸部5aのZ1側の端部に把持部5bが位置している。軸部5aが移乗時および移動時において、ハンドル部材5は、把持される。ハンドル部材5は、金属または樹脂で形成される。
【0036】
図4および図5に示すように、ハンドル部材5は、回動することにより、支持フレーム1の前後方向に位置を変更可能である。ハンドル部材5は、回動を停止させるロック機構5cが軸部5aの内部に設けられている。
【0037】
図6(A)は、ハンドル部材5が支持フレーム1の前方(Z1側)に位置している状態(図4で示す状態)において、上方(Y1側)から見たハンドル部材5を示す図であり、図6(B)は、Z方向に沿って、軸部5aを切断した断面図である。ロック機構5cは、Z2側(後方)からZ1側(前方)にハンドル部材5の位置変更をするための回動は制限しないが、ハンドル部材5の位置変更をするための回動を制限するように構成されている。ロック機構5cは、たとえば、ラチェット機構である。図6(B)に示すように、ロック機構5cは、ストッパ5dと、連結ロッド5eと、ばね部材5fと、カム5gとから構成される。ロック機構5cは、ハンドル部材5を回動させる歯車5hにストッパ5dが当接することにより、ハンドル部材5の回動を停止させる。このとき、ばね部材5fは伸びた状態であり、具体的には、ストッパ5dを歯車5hに押し当てる方向に伸びている。なお、ハンドル部材5は、歯車5hにより左右のハンドルが同期して回動中心Cを中心に回動する。
【0038】
図7(A)は、ハンドル部材5が支持フレーム1の前方(Z1側)に位置している状態(図4で示す状態)において、上方(Y1側)から見たハンドル部材5を示す図であり、図7(B)は、Z方向に沿って、軸部5aを切断した断面図である。ロック機構5cは、支持部材3の延びる方向(X方向)に交差する方向(Z方向)に沿って把持部5bを伸ばすことにより解除される。図7(B)に示すように、把持部5bが延びることにより、カム5gが矢印で示すように回転し、連結ロッド5eをストッパ5d側に押す。そして、連結ロッド5eに押されたストッパ5dは、歯車5hから離れてロック状態が解除される。この時、ストッパ5dは、ばね部材5fを縮める方向に押す。
【0039】
図1に示すように、第1保持部6は、バンド状の部材である。第1保持部6は、支持フレーム1のX方向に対向する一対の支柱のうち一方には固定され、他方には、取り外し可能に取り付けられる。第1保持部6は、弾力性および伸縮性のある生地から形成される。第1保持部6は、被介護者P1の膝から下の部位に当接するように構成されている。第1保持部6は、被介護者P1を支持部材3にもたれかからせて、姿勢を変更する際に被介護者P1がZ1方向に移動しないようにするための支えとなる。
【0040】
第2保持部7は、支持部材3に一端が固定された他端が取り外し可能なバンド状の部材である。第2保持部7は、弾力性および伸縮性のある生地から形成される。第2保持部7は、被介護者P1の上半身に後方(Z2側)から接触する。第2保持部7と支持部材3とにより被介護者P1を挟むことにより、被介護者P1を着座させた状態を維持することができる。
【0041】
可動アーム8は、Y方向に延びるアームである。可動アーム8は、パイプにより構成してもよく、柱状の部材から構成してもよい。可動アーム8のY2側の端部には、Y方向に伸縮可能な高さ調整機構8aが設けられている。可動アーム8は、支持部材3の側方の一方端において片持ちで支持するように構成されている。また、可動アーム8は、ハンドル部材5をY方向に移動させることにより、支持部材3とともにZ1側またはZ2側に向かって回動するように構成されている。
【0042】
ベースフレーム9は、座面部材2よりも下方側(Y2側)に位置する。ベースフレーム9は、支持フレーム1の下端部から前後方向に向かって延びるように構成された、互いに平行な一対のフレームから構成される。ベースフレーム9は、Z側の端部にキャスター4が取り付けられる。ベースフレーム9は、Z1側の高さ(Y方向の長さ)よりもZ2側の高さが低くなるように構成されている。ベースフレーム9は、Z2側の端部を着座の対象物と床(地面)との間の隙間に挿入可能に構成されている。また、ベースフレーム9は、着座の対象物を支持フレーム1よりもZ2側に位置する部分で挟みこめるように間隔をあけて一対のフレームが配置される。ベースフレーム9は、たとえば、金属により形成される。
【0043】
ベースフレーム9のZ1側の端部には、足乗部10が取り付けられている。足乗部10は、座面部材2に着座した被介護者P1の足を載せる部材である。足乗部10は、たとえば、金属または樹脂形成される。
【0044】
図8から図24に基づいて、移乗装置100の使用方法の一例を説明する。図8から図24では、移乗装置100を用いて被介護者P1をベッドA1からトイレA2まで移動させる場合を例に説明する。なお、図9を除いて、介護者P2は図示していない。
【0045】
図8に示すように、被介護者P1をベッドA1に座らせる。この時、図8(B)に示すように、被介護者P1の足とベッドA1との間に隙間ができるように座らせる。また、ベッドA1と床との間には隙間がある。
【0046】
図9に示すように、介護者P2により移乗装置100はベッドA1に向かってZ2方向に移動される。そして、図10のようにベースフレーム9のZ2側の部分がベッドA1と床との隙間との間に挿入される。このとき、図11のように被介護者P1と移乗装置100がX方向に並んで配置される。なお、移乗装置100は、初期位置では、座面部材2が縮められているとともに、ハンドル部材5がZ1側に位置する。
【0047】
図12に示すように、被介護者P1とベッドA1との間の隙間に位置するように、移乗装置100は、X方向に移動される。この時、座面部材2は、縮められている状態である。また、移乗装置100は、座面部材2を伸ばした際に被介護者P1が座面部2aの中央に着座できるように位置調整される。そして、支持部材3に被介護者P1がもたれかかることにより、支持部材3は、被介護者P1の上半身を前面から支持する。
【0048】
図13に示すように、被介護者P1の背中に当接可能な状態で、第2保持部7の固定されていない一端が支持部材3に固定される。この時、可動アーム8は、被介護者P1側に向かって傾斜している。また、被介護者P1の脚部に当接可能な状態で、第1保持部6の固定されていない一端が支持フレーム1に固定される。
【0049】
図14に示すように、ハンドル部材5が下Z1方向に引かれることにより、可動アーム8がZ1方向に向かって回動する。この時、可動アーム8は、Y方向に沿って略まっすぐに延びる。可動アーム8が回動することにより、支持部材3が回動し、支持部材3にもたれかかっている被介護者P1の姿勢を変化させることができる。具体的には、被介護者P1の腰を浮かすことができる。これにより、折りたたまれた座面部材2を伸ばす作業が容易となる。
【0050】
図15に示すように、支持部材3に被介護者P1がもたれかかっている状態において、移乗装置100は、Z1方向に移動される。このとき、移乗装置100は、少なくとも座面部材2のZ2方向の長さの分だけ移動される。
【0051】
図16に示すように、座面部材2の座面部2aは、Z2方向に伸ばされる。そして、図17に示すように、ハンドル部材5がZ2方向に押されることにより、可動アーム8がZ2側に向かって回動される。これにより、支持部材3に当接している被介護者P1を座面部2aに向かって押すことができるため、被介護者P1を座面部2aに着座させることができる。これにより、ベッドA1から移乗装置100に被介護者P1が移乗される。
【0052】
図18に示すように、ハンドル部材5は、回動されることにより、Z2側からZ1側に位置が変わる。そして、移乗装置100は、Z2側から介護者P2が操作して移動される。
【0053】
図19に示すように、移乗装置100は、トイレA2に移動された後、被介護者P1の背中がトイレA2側に向くように向きを変えられる。そして、図20に示すように、ハンドル部材5は、回動されることにより、Z2側からZ1側に位置が変わる。
【0054】
図21に示すように、ハンドル部材5は、Z1方向に引かれる。これにより、可動アーム8がZ1側に向かって回動し、被介護者P1の姿勢が変更される。具体的には、被介護者P1は腰を浮かした状態になる。
【0055】
図22に示すように、被介護者P1の姿勢が変更された状態で、座面部材2は縮められる。そして、図23に示すように、移乗装置100は、トイレA2に近づけられる。具体的に、一対のベースフレーム9のZ2側の部分がトイレA2を挟むように移動される。
【0056】
そして図24に示すように、ハンドル部材5がZ2方向に押されることにより、可動アーム8がZ2側に向かって回動する。その結果、支持部材3が、被介護者P1をトイレA2に向かって押し、被介護者P1はトイレA2に着座する。これにより、移乗装置100からトイレA2に被介護者P1が移乗される。
【0057】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0058】
第1実施形態では、上記のように、支持フレーム1と、支持フレーム1に取り付けられるとともに、折り畳み可能または伸縮可能に構成されている被介護者P1を着座させるための座面部材2と、支持フレーム1に取り付けられるとともに、被介護者P1の上半身を前方から支持する支持部材3と、支持フレーム1の下方に取り付けられるキャスター4と、支持部材3に取り付けられるとともに、支持フレーム1の前後方向に位置を変更可能に構成され、移乗時に介護者P2に把持されるハンドル部材5と、を備える。これにより、移動時に支持フレーム1の後方にハンドル部材5の位置を変えることができることにより、介護者P2が被介護者P1の背中側から移乗装置100を操作することができるため、移動方向に対して介護者P2および被介護者P1がともに進行方向を向いた状態で移動することができる。また、移乗時に、ハンドル部材5を支持フレーム1の前方に移動することにより、前後方向において座面部材2とハンドル部材5とを支持フレーム1を挟んで互いに反対側に配置することができる。これにより、座面部材2の側方にハンドル部材5が配置されないため、介護者P2は、側方から被介護者P1を座面部材2に着座させることができる。また、被介護者P1の上半身を前方から支持する支持部材3を備えることにより、移乗時および移動時に被介護者P1が前方の支持部材3にもたれる(寄りかかる)ことができる。さらに、支持部材3に被介護者P1の上半身を支持させた状態で支持部材3を回動させることにより、被介護者P1の姿勢を変更させることができるため、移乗作業が容易となる。この結果、操作性を向上させながら、被介護者P1の乗り心地を向上させることができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、ハンドル部材5は、回動することにより支持フレーム1の前後方向に位置を変更可能に構成されている。これにより、ハンドル部材5を回動させることにより、支持フレーム1の前後方向に位置を変更することができるため、介護者P2が容易にハンドル部材5の位置を変更することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、ハンドル部材5は、回動を抑制するためのロック機構5cを有し、ハンドル部材5は、ロック機構5cを解除することにより、回動可能になるように構成されている。これにより、ハンドル部材5を回動させた後、ロック機構5cによって回動が抑制されるため、移乗時および移動時に支持部材3に対してハンドル部材5を固定した状態で移乗装置100を操作することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、ハンドル部材5は、支持部材3の延びる方向に交差する方向に延びる軸部5aと、軸部5aから支持部材3が延びる方向に沿って屈曲した把持部5bとを有するように構成され、ハンドル部材5は、支持部材3の延びる方向に交差する方向に沿って把持部5bを伸ばすことにより、ロック機構5cが解除されて回動可能になるように構成されている。これにより、支持部材3の延びる方向に交差する方向に沿って把持部5bを伸ばすことによりロック機構5cが解除されるため、介護者P2がロック機構5cを解除するための複雑な操作を行う必要がない。これにより、操作性を向上させることができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、座面部材2は、前後方向に伸縮可能に構成されている。ここで、上下方向に折りたたまれる座面部材2では、上下方向(垂直方向)に移動する座面部材2に被介護者P1が接触しないように折りたたまれた座面部材2の上端の位置よりも上方に介護者P2が被介護者P1を持ち上げながら、介護者P2は座面部材2を操作する必要がある。そのため、座面部材2を前後方向に伸縮可能に構成することにより、座面部材2を前後方向(水平方向)に移動させて座面部材2を伸ばすことができるため、上下方向に折りたたまれる座面部材2と比較して、介護者P2は被介護者P1を上方に持ち上げずに座面部材2を操作することができる。この結果、被介護者P1の負担を減らすことができる。また、座面部材2が、前後方向に伸縮可能であることにより、座面部材2が縮んでいる場合に、支持フレーム1から座面部材2が前後方向に突出しないため、移乗装置100を前後方向においてコンパクトにすることができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、座面部材2は、被介護者P1が着座する座面部2aと、座面部2aを伸縮させる伸縮機構2bとを有し、座面部2aは、伸縮機構2bから取り外すことが可能に構成されている。これにより、座面部2aが汚損した場合に、清潔な座面部2aに取り換えるか、または、取り外して洗浄することができるため、移乗装置100の衛生状態を向上させることができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、座面部材2よりも下方側に位置し、支持フレーム1の下端部から後方に向かって平行に延びるとともに、キャスター4が取り付けられる一対のベースフレーム9をさらに備える。これにより、たとえば、ベッドA1と移乗装置100との間において被介護者P1を移乗する場合に、ベッドA1と床との間にベースフレーム9を挿入することができるため、移乗装置100をベッドA1に近づけることができる。また、トイレA2と移乗装置100との間において被介護者P1を移乗する際に、トイレA2を挟んだ状態で一対のベースフレーム9を配置することができるため、トイレA2と移乗装置100とを近づけることができる。これらの結果、被介護者P1を迅速に移乗することができるため、介護者P2および被介護者P1の負担を軽減することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、支持部材3を支持フレーム1に取り付けるための可動アーム8をさらに備え、可動アーム8は、支持部材3の側方の一方端において片持ちで支持するとともに、ハンドル部材5の上下方向の移動に伴って支持部材3とともに回動するように構成されている。これにより、可動アーム8が設けられていない側から被介護者P1を移乗装置100に移乗させることができる。また、可動アーム8は、ハンドル部材5の上下方向の移動に伴って支持部材3とともに回動するため、支持部材3を回動させて被介護者P1の姿勢を変更する際に被介護者P1が可動アーム8に接触することを抑制することができる。
【0066】
[第2実施形態]
図25および図26を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、ハンドル部材5は、ブレーキ5iが設けられている。また、移乗装置200は、第1センサ11と、第2センサ12と、駆動機構13とを備える。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0067】
ブレーキ5iは、ハンドル部材5の軸部5aのY2側に取り付けられる。ブレーキ5iは、たとえば、図示しないブレーキワイヤと、キャスター4に取り付けられる回転抑制部材4aとにより構成される。そして、ブレーキ5iを操作することにより、ブレーキワイヤが回転抑制部材4aをキャスター4に当接する方向に引っ張り、回転抑制部材4aがキャスター4に当接することで、ブレーキ5iが作動状態となる。
【0068】
第1センサ11は、ブレーキ5iの作動状態または非作動状態を検知するように構成されている。第1センサ11は、たとえば、キャスター4の近傍に設けられ、回転抑制部材4aの接触または非接触状態を検知することで、ブレーキ5iの作動状態または非作動状態を検知する。
【0069】
第2センサ12は、可動アーム8の初期位置からの回動を検知するように構成されている。初期位置は、Z2側に所定角度傾いている状態である。第2センサ12は、初期位置の角度を基準に回動角度を検知する角度センサである。
【0070】
駆動機構13は、座面部材2を伸縮させるための機構である。駆動機構13は、第1センサ11および第2センサ12の検知結果に基づいて作動するように構成されている。駆動機構13は、たとえば、アクチュエータである。
【0071】
ハンドル部材5には、検出部5jが取り付けられる。検出部5jは、ハンドル部材5の支持部材3に対する傾斜角度を検知する。傾斜角度は、支持部材3に直交する時の角度が90度であり、前側に位置すると90度よりも小さい値を検知し、後ろ側に位置すると90度よりも大きな値を検知する。
【0072】
図26に基づいて、第1センサ11と、第2センサ12と、駆動機構13との動作の関連を説明する。まず、ステップS1としては、第1センサ11により、ブレーキ5iが作動状態であることを検知する。ブレーキ5iが作動する場合は、移乗装置200の移動が停止された場合である。次に、ステップS2では、ハンドル部材5が前方に回動したか否かで進むステップが異なる。具体的には、検出部5jにより検知されたハンドル部材5の角度が、90度より小さい場合は、ハンドル部材5は前側に位置しているため、ステップS3に移り、それ以外の場合は、終了する。
【0073】
ステップS3では、可動アーム8が前方に回動されたか否かで進むステップが異なる。具体的には、第2センサ12が、可動アーム8の初期位置からの前方に向かう回動を検知した場合は、ステップS4に進み、検知していない場合は、ステップS3を繰り返す。第2センサ12が、可動アーム8の初期位置からの前方に向かう回動を検知する場合は、被介護者P1が支持部材3にもたれかかっている状態である。
【0074】
ステップS4では、ブレーキ5iが解除されたか否かで進むステップが異なる。具体的には、第1センサ11が、ブレーキ5iの非作動状態を検知した場合は、ステップS5に進み、検知していない場合は、ステップS4を繰り返す。第1センサ11が、ブレーキ5iの非作動状態を検知する場合は、移乗装置100を移動させて、座面部材2を伸縮させようとする場合である。
【0075】
ステップS5では、座面部材2の状態で進むステップが変わる。座面部材2が伸びている場合は、ステップS6に進み、駆動機構13は座面部材2を縮める。一方で、座面部材2が縮んでいる場合は、ステップS7に進み、駆動機構13は座面部材2を伸ばす。
【0076】
なお、第2実施形態による移乗装置200のその他の構成は、上記第1実施形態による移乗装置200の構成と同様である。
【0077】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0078】
第2実施形態では、上記のように、支持フレーム1と、支持フレーム1に取り付けられるとともに、折り畳み可能または伸縮可能に構成されている被介護者P1を着座させるための座面部材2と、支持フレーム1に取り付けられるとともに、被介護者P1の上半身を前方から支持する支持部材3と、支持フレーム1の下方に取り付けられるキャスター4と、支持部材3に取り付けられるとともに、支持フレーム1の前後方向に位置を変更可能に構成され、移乗時に介護者P2に把持されるハンドル部材5と、を備える。これにより、移動時に支持フレーム1の後方にハンドル部材5の位置を変えることができることにより、介護者P2が被介護者P1の背中側から移乗装置200を操作することができるため、移動方向に対して介護者P2および被介護者P1がともに進行方向を向いた状態で移動することができる。また、移乗時に、ハンドル部材5を支持フレーム1の前方に移動することにより、前後方向において座面部材2とハンドル部材5とを支持フレーム1を挟んで互いに反対側に配置することができる。これにより、座面部材2の側方にハンドル部材5が配置されないため、介護者P2は、側方から被介護者P1を座面部材2に着座させることができる。また、被介護者P1の上半身を前方から支持する支持部材3を備えることにより、移乗時および移動時に被介護者P1が前方の支持部材3にもたれる(寄りかかる)ことができる。さらに、支持部材3に被介護者P1の上半身を支持させた状態で支持部材3を回動させることにより、被介護者P1の姿勢を変更させることができるため、移乗作業が容易となる。この結果、操作性を向上させながら、被介護者P1の乗り心地を向上させることができる。
【0079】
また、第2実施形態では、上記のように、ハンドル部材5は、キャスター4の回転を停止させるためのブレーキ5iを有し、ブレーキ5iの作動状態または非作動状態を検知する第1センサ11と、可動アーム8の初期位置からの回動を検知する第2センサ12と、第1センサ11と第2センサ12との検知結果に基づいて、座面部材2を伸縮させる駆動機構13とを備える。ここで、ブレーキ5iが作動した後、非作動状態になった場合は、座面部材2を伸縮させるために移乗装置200が移動される場合と考えられる。また、可動アーム8が初期位置から回動した状態は、被介護者P1が支持部材3にもたれかかっている状態であると考えられる。そのため、これにより、第1センサ11の検知結果と第2センサ12との検知結果から座面部材2を伸縮させる段階であると判断し、座面部材2を自動で伸縮させることができる。その結果、介護者P2が座面部材2を手動で伸縮させる必要がなく、介護者P2の作業負担を軽減することができる。
【0080】
なお、第2実施形態による移乗装置200のその他の効果は、上記第1実施形態による移乗装置100の効果と同様である。
【0081】
[変形例]
なお、今回開示された第1実施形態および第2実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0082】
たとえば、第1および第2実施形態では、ハンドル部材5は、回動することにより支持フレーム1の前後方向に位置を変更可能に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、ハンドル部材5は、支持部材3に対して取り外し可能に取り付けられており、取り外すことにより支持フレーム1の前後方向に位置を変更可能に構成されていてもよい。これにより、介護者P2は、たとえば、支持フレーム1の後方に向かって延びるように支持部材3に配置されたハンドル部材5を支持部材3から取り外し、ハンドル部材5を支持フレーム1の前方に向かって延びるように向きを変更して支持部材3に取り付けることができる。この結果、介護者P2は、容易にハンドル部材5の向きを変更することができる。
【0083】
たとえば、第1および第2実施形態では、支持フレーム1は第1支柱1aと第2支柱1bとによって構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、支持フレーム1は、第1支柱1aのみから構成されていてもよい。
【0084】
また、上記第1および第2実施形態では、支持部材3の延びる方向に交差する方向に沿って把持部5bを伸ばすことにより、ロック機構5cが解除されて回動可能になるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図27に示すように、たとえば、ハンドル部材5を支持部材3に対して側方に回動させることにより、ロック機構5cが解除されて回動可能になるように構成されていてもよい。この場合、ハンドル部材5を側方に回動させることにより、軸部5a内のカム5gが連結ロッド5eを下方(Y2方向)に押し、連結ロッド5eによりストッパ5dが歯車5hから離れる方向に押されることで、ロック状態が解除されてもよい。図27は、ハンドル部材5が支持フレーム1の前方(Z1側)に位置している状態(図4で示す状態)において、上方(Y1側)から見たハンドル部材5を示す図である。
【0085】
また、上記第1および第2実施形態では、ロック機構5cがロック状態なることにより回動が制限されるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロック状態になった後、ハンドル部材5の角度を微調整できるように構成されていてもよい。
【0086】
また、上記第1および第2実施形態では、座面部材2が前後方向に伸縮可能である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、図28に示すように、座面部材2を回動させることにより、折りたたむことができるように構成されていてもよい。
【0087】
また、上記第1および第2実施形態では、前方のキャスター4の(車輪の)直径の大きさと後方のキャスター4の(車輪の)直径の大きさが異なる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、前方のキャスター4の(車輪の)直径の大きさと後方のキャスター4の(車輪の)直径の大きさとを同じにしてもよい。
【0088】
また、上記第1および第2実施形態では、ベースフレーム9の後方側が前方側よりも低く構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベースフレーム9の高さを同じにしてもよい。
【0089】
また、上記第1および第2実施形態では、支持部材3が被介護者P1を前面から支持する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、支持部材3が被介護者P1を全面および両側面から支持するように構成されていてもよい。この場合、図29に示すように、支持部材3は、U字状であってもよい。また、支持部材3は、空気により膨張するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 支持フレーム
2 座面部材
2a 座面部
2b 伸縮機構
3 支持部材
4 キャスター
5 ハンドル部材
5a 軸部
5b 把持部
5c ロック機構
5i ブレーキ
8 可動アーム
9 ベースフレーム
11 第1センサ
12 第2センサ
13 駆動機構
100、200 移乗装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
伸縮機構2bは、座面部2aを前後方向に伸縮させる。伸縮機構2bは、たとえば、リンク機構を有している。伸縮機構2bは、座面部2aが上方(1側)に取り付けられる。座面部2aは、伸縮機構2bから取り外すことが可能に構成されている。また、伸縮機構2bは、Z1側の端部は第1支柱1aに固定されており、Z2側の端部が移動することにより座面部2aを伸縮させる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
図7(A)は、ハンドル部材5が支持フレーム1の前方(Z1側)に位置している状態(図4で示す状態)において、上方(Y1側)から見たハンドル部材5を示す図であり、図7(B)は、Z方向に沿って、軸部5aを切断した断面図である。ロック機構5cは、支持部材3の延びる方向(X方向)に交差する方向(Z方向)に沿って把持部5bを伸ばした状態にすることにより解除される。図7(B)に示すように、把持部5bを伸ばした状態にすることにより、カム5gが矢印で示すように回転し、連結ロッド5eをストッパ5d側に押す。そして、連結ロッド5eに押されたストッパ5dは、歯車5hから離れてロック状態が解除される。この時、ストッパ5dは、ばね部材5fを縮める方向に押す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
図18に示すように、ハンドル部材5は、回動されることにより、Z側からZ側に位置が変わる。そして、移乗装置100は、Z2側から介護者P2が操作して移動される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7