(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073896
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】抗力付与装置
(51)【国際特許分類】
F16H 19/04 20060101AFI20230519BHJP
F16F 9/14 20060101ALI20230519BHJP
F16H 19/02 20060101ALI20230519BHJP
F16H 19/06 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
F16H19/04 Z
F16F9/14 A
F16H19/02 D
F16H19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186648
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000236665
【氏名又は名称】不二ラテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 正夫
(72)【発明者】
【氏名】酒巻 有範
【テーマコード(参考)】
3J062
3J069
【Fターム(参考)】
3J062AA33
3J062AB05
3J062AB13
3J062AC01
3J062AC07
3J062BA22
3J062CA03
3J062CA07
3J062CA15
3J062CA33
3J069AA41
3J069DD47
(57)【要約】
【課題】抗力付与部を共通にしながら直線的なストロークの変更を容易とする抗力付与装置を提供する。
【解決手段】可動側の対象物T又は固定側Fの一方に取り付けられる受動部5と、対象物T又は固定側Fの他方に取り付けられ受動部5に対し相対動作が可能な抗力付与部7とを備え、抗力付与部7は、回転方向に抗力を付与可能であり、相対動作により抗力付与部7に回転方向への入力を行わせ抗力を入力に対抗させる伝達部5、17を備え、伝達部5、17の変更により抗力付与部7の変更を伴わずにストロークの変更ができることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動側の対象物又は固定側の一方に取り付けられる受動部と、
前記対象物又は固定側の他方に取り付けられ前記受動部に対し相対動作が可能な抗力付与部と、
を備え、
前記抗力付与部は、回転方向に抗力を付与可能であり、
前記相対動作により前記抗力付与部に回転方向への入力を行わせ前記抗力を前記入力に対抗させる伝達部を備えた、
抗力付与装置。
【請求項2】
請求項1記載の抗力付与装置であって、
前記受動部は、ラックであり、
前記ラックは、前記受動部としての取り付けが一端側の回転自在な支持又は固定であり、
前記抗力付与部は、回転ダンパーであり、
前記回転ダンパーは、回転方向への入力を行なわせるピニオンを備えて前記抗力付与部としての取り付けが固定であり、
前記伝達部は、前記ラック及び前記ラックに噛合うピニオンである、
抗力付与装置。
【請求項3】
請求項2記載の抗力付与装置であって、
前記ピニオンは、前記ラックの相対動作をガイドするガイドローラーを支持し、
前記ガイドローラーは、前記ピニオンに対し前記ラックを挟むように前記ラックに当接し、
前記ラックは、ガイドプレートを固定して備え、
前記ガイドプレートは、前記ピニオンに当接し、
前記ガイドローラー及びガイドプレートにより前記ラック及びピニオン間のバックラッシュを設定する、
抗力付与装置。
【請求項4】
請求項1記載の抗力付与装置であって、
前記受動部は、ラックであり、
前記ラックは、前記受動部としての取り付けが一端側の回転自在な支持又は固定であり他端側がチューブの一端側から相対動作可能に挿入され、
前記抗力付与部は、回転ダンパーであり、
前記回転ダンパーは、回転方向への入力を行なわせるピニオンを備えて前記チューブに支持され、
前記抗力付与部としての取り付けは、前記回転ダンパーを支持した前記チューブの他端側の回転自在な支持又は固定であり、
前記チューブは、前記ピニオンを前記ラックに噛合わせるダンパー用の開口を備え、
前記ピニオンは、前記ダンパー用の開口で前記ラックに噛合い、
前記伝達部は、前記ラック及び前記ラックに噛合うピニオンである、
抗力付与装置。
【請求項5】
請求項4記載の抗力付与装置であって、
前記チューブ側に回転可能に支持されて前記相対動作をガイドするガイドローラーを備え、
前記ガイドローラーは、前記ラックを前記ピニオンに対して挟むように前記ラックに当接し、
前記ラックに固定されたガイドプレートを備え、
前記ガイドプレートは、前記ピニオンに当接し、
前記ガイドローラー及びガイドプレートにより前記ラック及びピニオン間のバックラッシュを設定する、
抗力付与装置。
【請求項6】
請求項4記載の抗力付与装置であって、
前記ラックは、前記チューブに対する相対動作可能な方向に沿った長孔を備え、
前記チューブは、ガイドローラーを支持し、
前記ガイドローラーは、前記長孔に嵌合して前記ラックの相対動作をガイドし前記ラック及びピニオン間のバックラッシュを設定する、
抗力付与装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の抗力付与装置であって、
前記チューブは、前記電動モーターを支持し且つモーター用の開口を備え、
前記電動モーターは、回転連動用のピニオンを備え、
前記ピニオンは、前記モーター用の開口で前記ラックに噛合う、
抗力付与装置。
【請求項8】
請求項1記載の抗力付与装置であって、
前記受動部は、結合部であり、
前記結合部は、前記受動部としての取り付けが、回転自在な支持又は固定であり、
前記抗力付与部は、回転ダンパーであり、
前記回転ダンパーは、回転方向への入力を行なわせる入力スプロケットを備え、
前記入力スプロケットは、前記結合部を中間部に支持したチェーンに噛合い、
前記伝達部は、前記入力スプロケット及びチェーンを備えると共に前記チェーンに噛合うアイドラ―スプロケット及びプレートを備え、
前記プレートは、前記回転ダンパーを一側に取り付け他側に前記アイドラ―スプロケットを回転自在に支持し、
前記抗力付与部としての取り付けを、前記プレートの一側又は他側の回転自在な支持又は固定若しくは前記プレートの一側及び他側の固定とした、
抗力付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器等の可動側と設置面等の固定側との振動伝達を抑制する場合等に供する抗力付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の抗力付与装置としては、例えば特許文献1に記載のサスペンションがある。このサスペンションは、洗濯機のドラムを有する可動側としての水槽を固定側としての台板に支持し、洗濯機の運転時の振動を低減する。
【0003】
具体的に、特許文献1のサスペンションは、磁気粘性流体を用いた直動ダンパーであり、台板に固定された固定側部材であるシリンダと、水槽に固定された可動側部材であるシャフトと、シャフトの周囲に保持された磁気粘性流体を含侵させた摩擦部材とを有している。
【0004】
このサスペンションは、シャフトの外周の摩擦力を変化させ、減衰力を調整することで水槽の振幅を減衰させることができる。
【0005】
しかし、かかるサスペンションは、直動ダンパーを用いており、ストロークの変更には抗力付与部である直動ダンパー自体の変更を必要とし、直動ダンパーの種類が増大するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、ストロークの変更には抗力付与部自体の変更を必要とし、抗力付与部の種類が増大する点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、抗力付与部を共通にしながらストロークの変更を可能とするために、可動側の対象物又は固定側の一方に取り付けられる受動部と、前記対象物又は固定側の他方に取り付けられ前記受動部に対し相対動作が可能な抗力付与部とを備え、前記抗力付与部は、回転方向に抗力を付与可能であり、前記相対動作により前記抗力付与部に回転方向への入力を行わせ前記抗力を前記入力に対抗させる伝達部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記構成であるから、伝達部の変更により抗力付与部の変更を伴わずにストロークの変更ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係り、抗力付与装置をテーブルの制振装置として適用した一部透視の平面図である。
【
図2】実施例1に係り、抗力付与装置をテーブルの制振装置として適用した一部透視の要部の拡大平面図である。
【
図3】実施例1に係り、抗力付与装置を示す一部透視の平面図である。
【
図4】実施例1に係り、
図3のIV-IV線矢視断面図である。
【
図5】実施例2に係り、抗力付与装置を示す一部透視の平面図である。
【
図6】実施例2に係り、
図5のVI-VI線矢視断面図である。
【
図7】実施例2に係り、
図5のVII-VII線矢視断面図である。
【
図8】実施例3に係り、抗力付与装置を示す一部透視の平面図である。
【
図9】実施例3に係り、
図8のIX-IX線矢視断面図である。
【
図10】実施例4に係り、抗力付与装置を示す一部透視の平面図である。
【
図11】実施例5に係り、抗力付与装置を示す平面図である。
【
図12】実施例6に係り、抗力付与装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、抗力付与部を共通にしながらストロークの変更を可能とするという目的を以下のように実現した。
【0012】
可動側の対象物又は固定側の一方に取り付けられる受動部と、前記対象物又は固定側の他方に取り付けられ前記受動部に対し相対動作が可能な抗力付与部とを備え、前記抗力付与部は、回転方向に抗力を付与可能であり、前記相対動作により前記抗力付与部に回転方向への入力を行わせ前記抗力を前記入力に対抗させる伝達部を備えて実現した。
【0013】
前記抗力付与装置は、制振装置として実現するが、制動装置、衝撃吸収装置などとして実現することもできる。
【0014】
前記受動部は、ラックであり、前記ラックは、前記受動部としての取り付けが一端側の回転自在な支持又は固定であり、前記抗力付与部は、回転ダンパーであり、前記回転ダンパーは、回転方向への入力を行なわせるピニオンを備えて前記抗力付与部としての取り付けが固定であり、前記伝達部は、前記ラック及び前記ラックに噛合うピニオンである態様で実現できる。
【0015】
前記ラックは、直線的なラックで実現するが、弧状のラックで実現することも可能である。
【0016】
前記ピニオンは、歯先円直径と径の異なる同心円の当接部を有し、前記ラックの相対動作をガイドするガイドローラーを支持し、前記ガイドローラーは、前記ピニオンに対し前記ラックを挟むように前記ラックに当接し、前記ラックは、ガイドプレートを固定して備え、前記ガイドプレートは、前記ピニオンの当接部に当接し、前記ガイドローラー及びガイドプレートにより前記ラック及びピニオン間のバックラッシュを設定する態様で実現できる。
【0017】
前記受動部は、ラックであり、前記ラックは、前記受動部としての取り付けが一端側の回転自在な支持又は固定であり他端側がチューブの一端側から相対動作可能に挿入され、前記抗力付与部は、回転ダンパーであり、前記回転ダンパーは、回転方向への入力を行なわせるピニオンを備えて前記チューブに支持され、前記抗力付与部としての取り付けは、前記回転ダンパーを支持した前記チューブの他端側の回転自在な支持又は固定であり、前記チューブは、前記ピニオンを前記ラックに噛合わせるダンパー用の開口を備え、前記ピニオンは、前記ダンパー用の開口で前記ラックに噛合い、前記伝達部は、前記ラック及び前記ラックに噛合うピニオンである態様で実現できる。
【0018】
前記チューブ側に回転可能に支持されて前記相対動作をガイドするガイドローラーを備え、前記ガイドローラーは、前記ラックを前記ピニオンに対して挟むように前記ラックに当接し、前記ラックに固定されたガイドプレートを備え、前記ガイドプレートは、前記ピニオンに当接し、前記ガイドローラー及びガイドプレートにより前記ラック及びピニオン間のバックラッシュを設定する態様で実現できる。
【0019】
前記ラックは、前記チューブに対する相対動作可能な方向に沿った長孔を備え、前記チューブは、ガイドローラーを支持し、前記ガイドローラーは、前記長孔に嵌合して前記ラックの相対動作をガイドし前記ラック及びピニオン間のバックラッシュを設定する態様で実現できる。
【0020】
前記チューブは、前記電動モーターを支持し且つモーター用の開口を備え、前記電動モーターは、回転連動用のピニオンを備え、前記ピニオンは、前記モーター用の開口で前記ラックに噛合う態様で実現できる。
【0021】
なお、前記受動部は、対象物の動作を受けて連動するものであればよく、ボールねじのナット、タイミングベルトに係合して直線動作する駒等で実現することもできる。
【0022】
前記抗力付与部は、動作を受けた受動部に対し相対動作により回転方向への入力を行わせ抗力を入力に対抗させることが可能で有ればよい。回転ダンパーとしては、油圧等の液圧式の他、ビスカスカップリング、電磁力で押し付けを制御する摩擦制御式ダンパー等を用いることができる。
【0023】
前記伝達部は、前記相対動作により前記抗力付与部に回転方向への入力を行わせ前記抗力を前記入力に対抗させることができればよく、ラック及びピニオンの組み合わせに限らず、ボールねじとナット、タイミングベルトとこれに噛合う駒の組み合わせ筒でも実現できる。
【0024】
前記受動部は、結合部であり、前記結合部は、前記受動部としての取り付けが、回転自在な支持又は固定であり、前記抗力付与部は、回転ダンパーであり、前記回転ダンパーは、回転方向への入力を行なわせる入力スプロケットを備え、前記入力スプロケットは、前記結合部を中間部に支持したチェーンに噛合い、前記伝達部は、前記入力スプロケット及びチェーンを備えると共に前記チェーンに噛合うアイドラ―スプロケット及びプレートを備え、前記プレートは、前記回転ダンパーを一側に取り付け他側に前記アイドラ―スプロケットを回転自在に支持し、前記抗力付与部としての取り付けを、前記プレートの一側又は他側の回転自在な支持又は固定若しくは前記プレートの一側及び他側の固定とした態様でも実現できる。
【実施例0025】
[制震装置]
図1は、抗力付与装置をテーブルの制振装置として適用した平面図である。
図2は、抗力付与装置をテーブルの制振装置として適用した要部の拡大平面図である。
【0026】
図1、
図2のように、実施例1では、抗力付与装置1の一側が固定側である床F側等に回転自在に支持され、抗力付与装置1の他側が可動側である対象物のテーブルTに結合されている。なお、可動側及び固定側は、相対的な概念であり、固定側は、可動側の動きを制限するための相手側を意味し、固定側も絶対的には動く場合があり得る。
【0027】
前記テーブルTは、例えば平面視で正方形形状であり、床Fに対し車輪などで平面方向の全てに自在に動くように設置されている。抗力付与装置1は、テーブルTの四隅に取付けられている。テーブルTの各辺部には、四隅側にコイルスプリング3の一端が取り付けられている。各コイルスプリング3の他端は、テーブルTの各辺部に直交するように床F側等に結合されている。
【0028】
したがって、地震時等の振動入力によりテーブルTにはコイルスプリング3と抗力付与装置1を介して所定の制動が伝達される。このときコイルスプリング3、抗力付与装置1の特性により両社が共働しテーブルTの振動を入力より小さくする。一般の抗力付与装置1は特性が決まっているので、一定範囲の入力にのみテーブルTの振動を低減できる。一方本実施例の抗力付与装置1は入力に応じ適した抗力を発生するよう制御するため、より広い入力範囲で高い振動低減効果を有する。
【0029】
[抗力付与装置]
図3は、抗力付与装置の一部透視の平面図である。
図4は、抗力付与装置の要部拡大断面図である。
【0030】
図3、
図4のように、前記抗力付与装置1は、受動部5と、抗力付与部7と、伝達部9とを備えている。
【0031】
前記受動部5は、長尺のラックで構成されている。ラック5は、可動側の対象物又は固定側の一方、実施例1では床F側にラック5の一端側のボス部5aが回転自在に取り付けられている。このラック5のボス部5aの支持により、前記ラック5は、前記受動部としての取り付けが一端側の回転自在な支持となっている。この支持状態でラック5は、他端側5bが、テーブルTの対角線方向に沿って配置されている。
【0032】
前記抗力付与部7は、前記対象物又は固定側の他方であるテーブルTに取り付けられ前記ラック5に対し相対動作が可能となっている。抗力付与部7は、回転方向に抗力を付与可能である回転ダンパーで構成されている。
【0033】
前記回転ダンパー7の抗力付与部としての取り付けは、テーブルTに対するビス15による固定である。つまり、ビス15は、ハウジング16をテーブルTに固定し、ハウジング16に回転ダンパー7がビス19で固定されたものである。
【0034】
前記回転ダンパー7は、例えば油圧式が用いられている。回転ダンパー7は、回転方向への入力を行なわせるピニオン17を備えている。ピニオン17は、軸心部のボス部17aが回転ダンパー7への入力軸8に一体回転可能に固定されている。ピニオン17は、噛合い歯の厚み方向の上下に周面での当接部17bを備えている。このピニオン17は、前記ラック5に噛合っている。
【0035】
前記ピニオン17は、前記ラック5の相対動作をガイドするガイドローラー21を支持している。ガイドローラー21は、2個備えられている。二股アーム23の各先端23aにそれぞれ回転自在に支持されている。二股アーム23の各先端23aには、支持軸25が取り付けられている。支持軸25は、下端に平頭25aを備えている。支持軸25の上端は、二股アーム23の各先端23aを貫通し、ナット27の螺合により二股アーム23の各先端23aに締結固定されている。この支持軸25に前記ガイドローラー21が回転自在に支持されている。
【0036】
前記二股アーム23の基端23bは、前記入力軸8の段付きの先端部8a及びピニオン17のボス部17a外周に嵌合している。二股アーム23の基端23bは、入力軸8の先端部8aに螺合するナット29により軸方向の抜け止めが行われている。二股アーム23は、入力軸8及びピニオン17に対して回転自在となっている。
【0037】
こうして、2個のガイドローラー21は、回転ダンパー7の軸心部を境としてラック5の長手方向で対称に配置されている。
【0038】
前記ガイドローラー21は、前記ピニオン17に対し前記ラック5を挟むように前記ラック5に当接している。この当接は、ピニオン17が前記のように二股アーム23の先端23aに支持された状態でラック5の背部に当接している。
【0039】
前記ラック5は、上下のガイドプレート31を固定して備えている。ガイドプレート31は、ラック5の長手方向に沿って配置され、スポット溶接などにより取り付けられている。ラック5は、上下のガイドプレート31によって断面H型をなし、強度向上が図られている。前記ガイドプレート31は、前記ピニオン17の当接部17bに縁部が当接している。
【0040】
前記ガイドローラー21及びガイドプレート31により前記ラック5及びピニオン17間のバックラッシュが設定されている。
【0041】
前記伝達部9は、前記回転ダンパー7及びラック5間の相対動作により前記回転ダンパー7に回転方向への入力を行わせ、回転ダンパー7の抗力をピニオン17からの入力に対抗させるものである。伝達部9は、前記ラック5及び前記ラック5に噛合うピニオン17で構成されている。
【0042】
前記ラック5に対しピニオン17が相対動作するとラック5との噛合いにおいてピニオン17が回転入力を受ける。
【0043】
[制振装置の動作及び作用効果]
地震などによりテーブルTが床F側に対して動作すると、コイルスプリング3及び抗力付与装置1が伸縮及び揺動する。
【0044】
同時に回転ダンパー7がテーブルTと共に動作する。回転ダンパー7の動作により回転ダンパー7がラック5に対し相対動作を行う。
【0045】
この相対動作において、テーブルTの動作方向へ回転ダンパー7のピニオン17を介してラック5が押されるとラック5は、ボス部5aを中心に床F側に対して回転し、テーブルTの動作を許容する。
【0046】
同時に回転ダンパー7は、ラック5に沿った相対動作を含み、ピニオン17がラック5との噛合いにおいて回転する。このピニオン17の回転は、入力軸8に入力され、回転ダンパー7の抗力が入力軸8に働き、回転入力に対抗する。
【0047】
このため、テーブルTの動きを円滑にダンピングすることができる。
【0048】
前記ラック5とピニオン17との噛合いにおいては、ガイドローラー21がラック5の背部に当接し、ラック5に固定されたガイドプレート31がピニオン17の当接部17bに当接するからラック5及びピニオン17間のバックラッシュが保持され、ラック5とピニオン17との噛合いを円滑に行わせることができる。
【0049】
かかる抗力付与装置1においては、メイン部材の回転ダンパー7を変更することなく、ラック5の変更によりストロークを自由に変更することができる。したがって、ストロークの変更があっても回転ダンパー7の種類の変更はないか、抑制することができる。
【0050】
前記効力付与部7として電磁力等により締結制御を行わせる摩擦制御式ダンパーを使用した場合、電気的なコントローラーと組み合わせることで、自由な特性を得ることができるため、より広い入力振動に対応可能となる。
【0051】
高度なシール等が不要となり、信頼性が高く、安価に製造することもできる。
前記ラック5は、前記受動部としての取り付けがボス部5aのテーブルTへの回転自在な支持である。ラック5の他端側5bがチューブ33の一端側33aの開口から相対動作可能に挿入されている。チューブ33は、例えば、建築用の角チューブ等が利用されている。
前記回転ダンパー7は、前記チューブ33に支持されている。回転ダンパー7の抗力付与部としての取り付けは、回転ダンパー7を支持したチューブ33の他端側のボス部33bの床F側への回転自在な支持である。
前記チューブ33は長手方向の中間部には、ダンパー取り付け用のブラケット35が固定して取り付けられている。前記回転ダンパー7は、ブラケット35にボルト36及びナット37により固定されている。
前記チューブ33には、前記回転ダンパー7の反対側にガイドローラー21を備えている。ガイドローラー21は、チューブ33側に回転可能に支持されてラック5に対する回転ダンパー7の相対動作をガイドするものである。
前記ガイドローラー21は、チューブ33に固定されたアーム38に回転自在に支持されている。チューブ33は、ガイドローラー21の対応箇所に開口33dを備えている。ガイドローラー21は、前記ラック5を前記ピニオン17に対して挟むように前記開口33dから前記ラック5の背部に当接している。ガイドローラー21のラック5に当接する位置は、ラック5の長手方向で前記回転ダンパー7に対して僅かにボス部33b側にずれている。
前記ラック5は、実施例1同様に上下のガイドプレート31を備えている。ガイドプレート31は、チューブ33内に配置され、チューブ33に沿ってラック5と共に動作する。ガイドプレート31は、実施例1同様に前記ピニオン17の当接部17bに当接し、ガイドローラー21及びガイドプレート31によりラック5及びピニオン17間のバックラッシュを設定する。
前記チューブ33の一端側33aには、補助ガイドローラー39が幅方向の両側に備えられている。補助ガイドローラー39は、チューブ33に固定されたアーム41の両側にそれぞれボルト43により回転自在に支持されている。ボルト43は、ナット45によりアーム41に固定されている。
前記チューブ33は、補助ガイドローラー39の対応箇所に開口33eを備えている。補助ガイドローラー39は、前記ラック5を両側から挟むように前記開口33eから前記ラック5の両側に当接するか僅かな隙間で対向している。補助ガイドローラー39の一方は、前記ラック5の背部に当接又は対向し、補助ガイドローラー39の他方は、前記ラック5の歯先に当接又は対向している。
前記補助ガイドローラー39には、厚み方向の上下に当接部39aが形成されている。前記ガイドプレート31は、前記補助ガイドローラー39の当接部39aに縁部が当接している。この当接により補助ガイドローラー39のラック5に対する当接又は隙間を持った対向が適切に設定されている。
したがって、前記ラック5は、ガイドローラー21及び補助ガイドローラー39によりチューブ33に対して3点支持となり、チューブ33に対するラック5の相対動作をピニオン17とラック5との間のバックラッシュを適正に維持しつつ安定して行わせることができる。
この相対動作において、ピニオン17がラック5との噛合いにおいて回転する。このピニオン17の回転は、入力軸8に入力され、回転ダンパー7の抗力が入力軸8に働き、回転入力に対抗する。
前記ラック5とピニオン17との噛合いにおいては、ガイドローラー21がラック5の背部に当接し、ラック5に固定されたガイドプレート31がピニオン17の当接部17bに当接するからラック5及びピニオン17間のバックラッシュが保持され、補助ガイドローラー39がこれを補助するから、ラック5とピニオン17との噛合いを円滑に行わせることができる。