(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073912
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】泡状手指用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230519BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230519BHJP
A61K 8/96 20060101ALI20230519BHJP
C11D 3/40 20060101ALI20230519BHJP
A61K 8/46 20060101ALN20230519BHJP
A61K 8/36 20060101ALN20230519BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q19/10
A61K8/96
C11D3/40
A61K8/46
A61K8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186683
(22)【出願日】2021-11-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第36回日本環境感染学会総会・学術集会併設展示会 令和3年9月19,20日
(71)【出願人】
【識別番号】591240685
【氏名又は名称】ハクゾウメディカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390029654
【氏名又は名称】株式会社マックス
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】藤本 賢二
(72)【発明者】
【氏名】三溝 祥敬
(72)【発明者】
【氏名】大田 真平
(72)【発明者】
【氏名】大野 健剛
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC23
4C083AC55
4C083AC78
4C083AC79
4C083BB05
4C083BB06
4C083BB07
4C083BB21
4C083CC23
4C083DD08
4C083DD27
4C083EE07
4H003AB03
4H003AB13
4H003AB26
4H003DA02
4H003ED02
4H003FA12
4H003FA17
(57)【要約】
【課題】 使用感を阻害すること無く所定の手洗い時間を視覚的に容易に把握することが可能な泡状手指用洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】 (a)水と、(b)アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のうちの1種以上の界面活性剤と、(c)水に溶解する水溶性色素とを少なくとも含有する。水溶性色素は、使用前の泡沫の泡沫色が有色を呈するように調整されており、泡沫は、所定時間の手洗いによって白色化する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水と、(b)アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のうちの1種以上の界面活性剤と、(c)前記水に溶解する水溶性色素とを少なくとも含有し、
前記水溶性色素は、使用前の泡沫の泡沫色が有色を呈するように調整されており、
前記泡沫は、所定時間の手洗いによって白色化する泡状手指用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記泡沫色は、紫色、青色及び緑色のいずれかである請求項1記載の泡状手指用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記紫色は、PANTONE社色見本NO.220C-222C、227C-229C、233C-235C、239C-242C、245C-249C、251C-276C、511C-515C、518C-531C及び7436C-7442Cのいずれかの色番号で定義される色である請求項2記載の泡状手指用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記青色は、PANTONE社色見本NO.277C-321C、539C-552C及び628C-662Cのいずれかの色番号で定義される色である請求項2記載の泡状手指用洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記緑色は、PANTONE社色見本NO.322C-385C及び553C-587Cのいずれかの色番号で定義される色である請求項2記載の泡状手指用洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記泡沫色は、紫色である請求項2又は3記載の泡状手指用洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤はアニオン性界面活性剤であり、1%~20%含有している請求項1~6のいずれかに記載の泡状手指用洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡状手指用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症対策や食中毒防止の観点から念入りな手洗いの重要性が高まっており、医療機関や家庭において衛生的手洗いと言われる30秒程度の手洗いが推奨されている。一方、従来より、泡沫の色を変化させることで手洗い時間を知らせる泡状手指用洗浄剤組成物として、例えば特許文献1,2に記載の如きものが知られている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の組成物は、色材料をカプセル化しているため、カプセルを崩壊させ発色させるために、強い物理的刺激が必要となり、発色までに必要以上の時間を要し、個人差も生じ品質にバラツキが生じていた。また、強い物理的刺激に必要であるため、不測の振動等の衝撃等によって発色する場合もあり、保存安定性が低下する場合もあった。特許文献2に記載の組成物は、水不溶性色素とポリビニルアルコール等のポリマーによって色素顆粒を形成している。そのため、顆粒によって洗浄剤の滑らかさが低下していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012-533637号公報
【特許文献2】特開2015-17245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、使用感を阻害すること無く所定の手洗い時間を視覚的に容易に把握することが可能な泡状手指用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る泡状手指用洗浄剤組成物の特徴は、(a)水と、(b)アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のうちの1種以上の界面活性剤と、(c)前記水に溶解する水溶性色素とを少なくとも含有し、前記水溶性色素は、使用前の泡沫の泡沫色が有色を呈するように調整されており、前記泡沫は、所定時間の手洗いによって白色化することにある。
【0007】
上記構成によれば、泡沫を着色させるために、水に溶解する水溶性色素を用いている。水溶性色素を組成物中の水に溶解させることで、洗浄剤全体を水溶性色素で着色するので、初期の有色状態を濃くすることができ、白色との差異が明瞭となるので、使用者は、有色から白色への泡沫色の変化を簡単に認識することができる。このように、泡沫色の変化を認識することで、手洗い時間を視覚的に容易に把握することが可能となる。
【0008】
上記構成において、前記泡沫色は、紫色、青色及び緑色のいずれかであるとよい。これらの色は、使用者の肌の色との識別が容易であり、白色との差異もより明瞭であるので、泡沫色の変化の把握がより容易となる。
【0009】
ここで、前記紫色は、PANTONE社色見本NO.220C-222C、227C-229C、233C-235C、239C-242C、245C-249C、251C-276C、511C-515C、518C-531C及び7436C-7442Cのいずれかの色番号で定義される色である。なお、記号「-」は、前後の数字が連続番号であることを示す。例えば、NO.220C-222Cの場合、NO.220C、221C及び222Cの3つの色番号を示す。以下、同じである。
【0010】
また、前記青色は、PANTONE社色見本NO.277C-321C、539C-552C及び628C-662Cのいずれかの色番号で定義される色である。
【0011】
前記緑色は、PANTONE社色見本NO.322C-385C及び553C-587Cのいずれかの色番号で定義される色である。
【0012】
上記特徴構成において、前記泡沫色は、紫色であるとよい。発明者らの実験によれば、紫色は、特に、使用者にとって肌の色との違いを鮮明に認識できるので、さらに泡沫色の変化がより鮮明に認識でき、手洗い時間の把握がさらに容易となる。
【0013】
また、上記いずれかの特徴構成において、前記界面活性剤はアニオン性界面活性剤であり、1%~20%含有しているアニオン性界面活性剤を用いることで、手洗い中の泡沫量やきめ細やかさを維持でき、使用感も向上する。しかも、アニオン性界面活性剤は、泡立ちが良好なので、手洗いの際に消泡せずに泡が細かくなる。それにより、泡沫での光の乱反射を促進し、白色をより強く発現させることができるので、色の変化をより鮮明に認識することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明に係る泡状手指用洗浄剤組成物の特徴によれば、使用感を阻害すること無く所定の手洗い時間を視覚的に容易に把握することが可能となった。
【0015】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る泡状手指用洗浄剤組成物は、(a)水と、(b)アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のうちの1種以上の界面活性剤と、(c)前記水に溶解する水溶性色素とを少なくとも含有する。この泡状手指用洗浄剤組成物は、例えば、泡状ハンドソープとして、吐出ポンプを備えた吐出容器(ボトル)に収容される。使用者は、吐出ポンプを操作し、吐出ポンプ先端の吐出口から吐出される泡状の手指用洗浄剤により手洗いを行う。
【0017】
(a)成分である水は、例えば、50%~98%含有するとよい。50%より少ない場合、界面活性剤を含めたその他成分が均一に溶解した組成物とならない。一方、98%より多くなると、(b)成分である界面活性剤等の泡状手指用洗浄剤組成物の他の成分の配合量が少なくなるので、洗浄剤としての機能が十分に発揮されない場合がある。このように、泡状手指用洗浄剤組成物中の水に色素を溶解させて着色することで、手に泡状の手指用洗浄剤を手に取った直後(手洗い開始直前)の有色状態の色を濃くすることができ、後述する手洗い後の白色との差異がより明確となり、視認性が向上する。
【0018】
本実施形態において、(b)成分である界面活性剤には、例えば、アニオン性界面活性剤を用いる。そのアニオン性界面活性剤は、例えば、1%~20%含有するとよい。1%より少ない場合、界面活性剤の効果が十分に発揮されない場合がある。他方、20%より多くなると、組成物の粘度が過剰に高くなり、吐出ポンプからの吐出が困難となる。また、上記数値範囲内であれば、後述する白色化の時間を所定時間維持することが可能となる。また、手洗い中の泡沫量やきめ細やかさを維持でき、使用感も向上する。アニオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩類、スルホン酸塩類、カルボン酸塩類等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0019】
本実施形態において、(c)成分である水溶性色素は、使用前の泡沫の泡沫色が有色を呈するように調整されている。この水溶性色素は、例えば、(a)成分である水に対し0.0001%~0.2%添加されているとよい。0.0001%より少ない場合、水溶性色素が少ないために着色が不十分となる。他方、0.2%より多くなると、身体や使用環境の着色に繋がる。また、上記数値範囲内であれば、初期の泡沫色が薄くならず、使用者に泡沫色を鮮明に視認させることができる。なお、本発明において、「泡沫色が有色を呈する」とは、泡沫(泡)に白色以外の色がついていることをいい、例えば、水溶性色素を含有しないこと以外は同一の成分(配合)の泡状手指用洗浄剤組成物の色(白)と比較して、目視で泡沫色の変化が認識可能であることをいう。又は、PANTONE社色見本NO.COOL GRAY 1Cの色番号で定義される色を除く色がついていることをいう(「COOL GRAY」とは色番号の名称の一部であって、色の種類を指すものではない。)。
【0020】
水溶性色素としては、例えば、緑色201号、赤色3号、赤色106号、青色1号、黄色201号、黄色203号、橙色201号、橙色204号、紫色201号等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、例えば、使用前の泡沫の泡沫色を紫色とする場合、紫色201号、若しくは緑色201号と赤色106号を(a)成分である水に溶解させるとよい。また、青色の場合は、例えば、青色1号を水に溶解させるとよい。緑色の場合は、例えば、緑色201号、若しくは青色1号と赤色106号を水に溶解させるとよい。なお、赤色の場合は、例えば、赤色3号又は赤色106号、黄色の場合は、例えば、黄色201号又は黄色203号、橙色の場合は、例えば、橙色201号又は橙色204号を水に溶解させる。
【0021】
ここで、泡沫色の有色を所定時間維持する原理を説明する。
上述の水溶性色素を泡状手指用洗浄剤組成物中の水に溶解させてあるので、吐出容器(ボトル)から吐出された泡沫は、既に着色された有色である。吐出された泡沫は、使用者がその泡沫を手に取って擦り合わせることで、泡沫は徐々に細かくなっていく。そして、泡沫が細かくなるに従い、泡沫の表面では光の乱反射が生じ、泡沫の泡沫色が視覚的に白色に変化したと使用者が認識する。このように、本発明は、物理的刺激や化学的刺激によって泡沫を発色させるものではない。
【0022】
発明者らの実験によれば、上述したように、アニオン性界面活性剤が例えば1%~20%含有している場合、使用者が泡状の手指用洗浄剤を手に取って手洗いを開始してから泡沫の有色が白色に変化するまで、数十秒程度の時間を要することが分かった。このように、泡沫の色の変化を明確に且つ容易に認識させることができるので、例えば、使用者に衛生的手洗いの手洗い時間を喚起させながら手洗いを実行させることができる。
【0023】
特に、使用前の泡沫の泡沫色が紫色、青色及び緑色のいずれかの場合、使用者にとって手の肌の色との区別が付きやすく、視覚的に泡沫の残存程度が分かりやすいとの結果を得た。さらに、紫色の場合は、より顕著であった。これらの泡沫色色は、例えば、PANTONE社色見本NO.で定義される。色の確認は、例えば、上記色見本と吐出した泡沫(又は液自体)とを目視で比較して行う。
【0024】
紫色の場合は、次のいずれかのPANTONE社色見本NO.で定義される。
すなわち、色見本NO.220C、221C、222C、227C、228C、229C、233C、234C、235C、239C、240C、241C、242C、245C、246C、247C、248C、249C、251C、252C,253C、254C、255C、256C、257C、258C、259C、260C、261C、262C、263C、264C、265C、266C、267C、268C、269C、270C、271C、272C、273C、274C、275C、276C、511C、512C、513C、514C、515C、518C、519C、520C、521C、522C、523C、524C、525C、526C、527C、528C、529C、530C、531C、7436C、7437C、7438C、7439C、7440C、7441C及び7442Cのいずれかの色番号である。
【0025】
青色の場合は、次のいずれかのPANTONE社色見本NO.で定義される。
すなわち、色見本NO.277C、278C、279C、280C、281C、282C、283C、284C、285C、286C、287C、288C、289C、290C、291C、292C、293C、294C、295C、296C、297C、298C、299C、300C、301C、302C、303C、304C、305C、306C、307C、308C、309C、310C、311C、312C、313C、314C、315C、316C、317C、318C、319C、320C、321C、539C、540C、541C、542C、543C、544C、545C、546C、547C、548C、549C、550C、551C、552C、628C、629C、630C、631C、632C、633C、634C、635C、636C、637C、638C、639C、640C、641C、642C、643C、644C、645C、646C、647C,648C、649C、650C、651C、652C、653C、654C、655C、656C、657C、658C、659C、660C、661C及び662Cのいずれかの色番号である。
【0026】
緑色の場合は、次のいずれかのPANTONE社色見本NO.で定義される。
すなわち、色見本NO.322C、321C、323C、324C、325C、326C、327C、328C、329C、330C、331C、332C、333C、334C、335C、336C、337C、338C、339C、340C、341C、342C、343C、344C、345C、346C、347C、348C、349C、350C、351C、352C、353C、354C、355C、356C、357C、358C、359C、360C、361C、362C、363C、364C、365C、366C、367C、368C、369C、370C、371C、372C、373C、374C、375C、376C、377C、378C、379C、380C、381C、382C、383C、384C、385C、553C、554C、555C、556C、557C、558C、559C、560C、561C、562C、563C、564C、565C、566C、567C、568C、569C、570C、571C、572C、573C、574C、575C、576C、577C、578C、579C、580C、581C、582C、583C、584C、585C、586C及び587Cのいずれかの色番号である。
【0027】
なお、本発明に係る泡状手指用洗浄剤組成物には、上記に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常使用される他の成分を使用することができる。他の成分としては、例えば、油剤、増粘剤、保湿剤、湿潤剤、防腐剤、アルコール、香料等が挙げられる。
【0028】
また、上記実施形態において、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤を例に説明した。しかし、界面活性剤はこれに限られるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲において、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のうちの1種以上の界面活性剤であればよい。なお、カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩型や第4級アンモニウム塩型が挙げられる。また、両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、2-アルキルイミダゾリンの誘導型、グリシン型、アミンオキシド型が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型が挙げられる。