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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073930
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】地山補強工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186711
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 和則
(72)【発明者】
【氏名】小野 航
(72)【発明者】
【氏名】岡部 正
(72)【発明者】
【氏名】間野 真至
(72)【発明者】
【氏名】井本 厚
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054FA02
2D054FA07
(57)【要約】
【課題】安全性が高く、施工効率の高い口元コーキング処理を行える地山補強工法を提供する。
【解決手段】トンネル掘削時に切羽の前方地山に補強管10を直列に連結して長尺補強管20を打設し、長尺補強管20の周辺地山に固結材41、43を注入して前方地山を補強する地山補強工法であり、長尺補強管20の端末に、外周面と削孔壁54との間を閉塞可能な周状突部103aが後部に設けられた端末補強管10aを打設する第1工程と、端末補強管10aの内部における周状突部103aより孔奥側の位置にパッカー33を配置する第2工程と、パッカー33の内部に固結材41を注入し、パッカー33から削孔54の口元側に固結材41を浸出させて口元コーキング領域42を形成する第3工程と、パッカー33より孔奥側に固結材43を注入する第4工程を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削時に切羽の前方地山に補強管を直列に連結して長尺補強管を打設し、前記長尺補強管の周辺地山に固結材を注入して前方地山を補強する地山補強工法であって、
前記長尺補強管の端末に、外周面と削孔壁との間を閉塞可能な周状突部が後部に設けられた端末補強管を打設する第1工程と、
前記端末補強管の内部における前記周状突部より孔奥側の位置にパッカーを配置する第2工程と、
前記パッカーの内部に固結材を注入し、前記パッカーから削孔の口元側に前記固結材を浸出させて口元コーキング領域を形成する第3工程と、
前記パッカーより孔奥側に固結材を注入する第4工程と、を備えることを特徴とする地山補強工法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記端末補強管を途中まで打設した状態で、ガイドセルに設けられ且つ前記端末補強管を支持するセントラライザーを下降し、前記セントラライザーを前記周状突部と干渉しないように前記周状突部の後側に移動して上昇させ、前記セントラライザーで前記端末補強管の前記周状突部より後側の位置を支持し、前記端末補強管の打設作業を再開することを特徴とする請求項1記載の地山補強工法。
【請求項3】
前記端末補強管の前記周状突部が軸方向に間隔を開けて複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の地山補強工法。
【請求項4】
前記端末補強管の前記周状突部が後端に向かって漸次拡径するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の地山補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削時に切羽の前方地山に長尺補強管を打設し、長尺補強管から周辺地山に固結材を注入して前方地山を補強する地山補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地山補強を行う際に、地山補強管である鋼管を複数直列に連結、接続して地山に打設していく手法が知られている。例えばトンネル掘削工事の切羽前方補強において、図7に示すように、地山201の前方上方又は外周に向けて鋼管220を複数本直列に接続して長尺鋼管202を打ち込み、打ち込んだ長尺鋼管202から固結材を注入して固結領域203を形成し、地山201の地盤改良を行う長尺先受け工204や、鋼管220を複数本直列に接続して長尺鋼管205を切羽から地山201の前方に打ち込み、打ち込んだ長尺鋼管205から固結材を注入して地山の地盤改良を行う長尺鏡補強工206が行われている。
【0003】
長尺先受け工204や長尺鏡補強工206を施工する場合、例えばトンネル空間Tにおいて、ドリルジャンボ207の削孔用アーム208のガイドセル209上に内部に削孔ロッド211が内挿された鋼管220を搭載し、ガイドセル209上で削孔ロッド211が連結された削孔機械210を前進させることにより、削孔しながら鋼管220を引き込むようにして地山201に打設する。そして、第1の鋼管220(220a)及び第1の削孔ロッドを根元近傍まで地山201に打設したところで、これに後続する第2の鋼管220(220b)及び第2の削孔ロッドを連結する作業を行い、多くのケースでは3m程度の鋼管220を4本程度接続して長尺鋼管202、205を打設する(図7図8参照)。長尺鋼管202、205の打設後には、削孔ロッド211を抜き出して回収し、長尺鋼管202、205に注入管を入れて長尺鋼管202、205の内外にシリカレジン、ウレタン、セメント系等の固結材を注入して地盤補強が行われる。
【0004】
こうした地山補強の施工では、切羽近傍の高所において作業員が人力で鋼管の連結作業を行わなければならないため、作業労力を低減すべく、特許文献1~3のように押し込むだけで連結できる鋼管を用いて、ガイドセル上で後続の鋼管を機械力で押し込むだけで連結する手法も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-190758号公報
【特許文献2】特許第6112918号公報
【特許文献3】特許第6486657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、地山に長尺鋼管を打設する際に、先頭の鋼管の先端に設けられる削孔ビットは、鋼管を引き込んで打設する必要上、鋼管よりも僅かに大径になっているため、鋼管外周と削孔壁との間には隙間ができる。そして、削孔の口元の隙間をそのままにしておくと、口元の隙間から固結材の注入作業時に固結材が削孔の手前側のトンネル空間にリークしてしまうため、口元にコーキングを施す必要がある。
【0007】
このような口元コーキングの処理は、削孔毎に作業員が高所に上がって手作業でウェスやコーキングカプセル(カプセル型接着剤)を孔口に押し込んで行われているのが実情であり、危険性があり且つ時間がかかる作業となる。そのため、安全性が高く、施工効率の高い口元コーキング処理を行える地山補強工法が望まれている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、安全性が高く、施工効率の高い口元コーキング処理を行える地山補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の地山補強工法は、トンネル掘削時に切羽の前方地山に補強管を直列に連結して長尺補強管を打設し、前記長尺補強管の周辺地山に固結材を注入して前方地山を補強する地山補強工法であって、前記長尺補強管の端末に、外周面と削孔壁との間を閉塞可能な周状突部が設けられた端末補強管を打設する第1工程と、前記端末補強管の内部における前記周状突部より孔奥側の位置にパッカーを配置する第2工程と、前記パッカーの内部に固結材を注入し、前記パッカーから削孔の口元側に前記固結材を浸出させて口元コーキング領域を形成する第3工程と、前記パッカーより孔奥側に固結材を注入する第4工程と、を備えることを特徴とする。
これによれば、端末補強管の打設によって端末補強管の外周面と削孔壁との間の隙間を周状突部で閉塞することができ、削孔毎に作業員が高所に上がって手で口元にウェスやコーキングカプセルを詰める作業を無くすことができる。従って、安全性が高く、施工効率の高い口元コーキング処理を行うことができる。
【0010】
本発明の地山補強工法は、前記第1工程において、前記端末補強管を途中まで打設した状態で、ガイドセルに設けられ且つ前記端末補強管を支持するセントラライザーを下降し、前記セントラライザーを前記周状突部と干渉しないように前記周状突部の後側に移動して上昇させ、前記セントラライザーで前記端末補強管の前記周状突部より後側の位置を支持し、前記端末補強管の打設作業を再開することを特徴とする。
これによれば、端末補強管の周状突部とセントラライザーとの干渉や、干渉による周状突部やセントラライザーの破損を防止することができる。また、端末補強管のセントラライザーによる芯出しも確保することができる。
【0011】
本発明の地山補強工法は、前記端末補強管の前記周状突部が軸方向に間隔を開けて複数設けられていることを特徴とする。
これによれば、軸方向に間隔を開けて配置される複数の周状突部による隔壁によって、端末補強管の外周面と削孔壁との間の隙間をより確実に閉塞状態にすることができる。複数の周状突起部が軸方向に間隔を開けて設けられていることによって、固結材が周状突起部と周状突起部の間に回り込んだ場合にそこにしっかりと限定注入され口元コーキングが確実に行われる。
【0012】
本発明の地山補強工法は、前記端末補強管の前記周状突部が後端に向かって漸次拡径するテーパ状に形成されていることを特徴とする。
これによれば、周状突部を削孔内にスムーズに挿入して端末補強管の外周面と削孔壁との間の隙間を確実に閉塞状態にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の地山補強工法によれば、安全性が高く、施工効率の高い口元コーキング処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)~(e)は本発明による実施形態の地山補強工法の前半工程を説明する工程説明図。
図2】(a)~(e)は実施形態の地山補強工法の後半工程を説明する工程説明図。
図3】実施形態の地山補強工法で用いられる端末補強管の後端周辺と端末キャップを示す斜視図。
図4】(a)、(b)は端末補強管の後端周辺に口元コーキング領域を形成する工程を説明する模式説明図。
図5】実施形態の地山補強工法で用いられる別例の端末補強管の後端周辺と端末キャップを示す斜視図。
図6】(a)、(b)は別例の端末補強管の後端周辺に口元コーキング領域を形成する工程を説明する模式説明図。
図7】トンネル掘削工事における長尺先受け工と鏡補強工を説明する説明図。
図8】既に打設された第1の鋼管への第2の鋼管の連結を説明する斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態の地山補強工法〕
本発明による実施形態の地山補強工法は、トンネル掘削時に切羽の前方地山に補強管10、10aを直列に連結して長尺補強管20を打設し、長尺補強管20の周辺地山に固結材を注入して前方地山を補強する地山補強工法であり、その施工の際には、例えば図1(a)に示すように、吹付コンクリート52が設けられた地山51の切羽から地山補強管である補強管10を地山51に打設する。尚、地山補強管である補強管10は鋼管とすると好適であるが、樹脂等の他の素材による補強管とすることも可能である。
【0016】
補強管10の打設では、例えばドリルジャンボのアームに取り付けられたガイドセル11を有し、ガイドセル11上に削孔機械12が前進後退自在に搭載されている削孔装置を用いる(図1参照)。ガイドセル11上には削孔機械12に装着される補強管10を下側から支持するセントラライザーが設けられ、図示例では、ガイドセル11の先頭位置に固定セントラライザー13が固定され、ガイドセル11上の所定領域を前進後退するように移動セントラライザー14が設けられている。
【0017】
補強管10の内部には削孔ロッドが挿入され(図示省略)、先頭の補強管10には、削孔ロッドの先頭にある削孔ビットが、先頭の補強管10の先でケーシングシューを介して係合される。この係合は削孔機械12の正転によって係合し、逆転によって離脱する構成になっている。即ち、地山51に既に打設されている補強管10が先頭管である場合には、先頭管の補強管10の先端部で削孔ビットが係合され、補強管10に削孔ロッドが内挿されている状態となる。図1(a)は、先頭管と中間管で構成される複数の補強管10が既に連結されて地山51に打設され、中間管の補強管10の端末部分が削孔53から地山51の外側に突出した状態を示している。
【0018】
また、補強管10は、先行する補強管10に後続の補強管10を押し込んで連結、接続する構造のものである。この補強管10は、例えば後端部の外周に略C字形状に形成された係合部材を外嵌合し、その先端部の内周に係合部材が内側から嵌合される嵌合溝を形成して構成する。そして、後続の補強管10の先端部を先行する補強管10の後端部の外側に嵌めるように押し込んで係合部材を僅かに縮径し、係合部材を後続の補強管10の溝位置で元の径に弾性復元させて嵌合溝に嵌合することにより、先行する補強管10と後続の補強管10を連結する。
【0019】
図1(a)、(b)では、地山51に既に打設された先行する中間管の補強管10に、補強管10と同様の押し込んで連結、接続する構造を有する端末補強管10aを固定セントラライザー13、移動セントラライザー14で芯出しして近づけ、中間管の補強管10に後続の端末補強管10aを押し込んで連結している。中間管に連結された端末補強管10aは、先頭管の補強管10と中間管の補強管10と共に、削孔ビットの削孔によって地山51の奥側に打設されていく。
【0020】
端末補強管10aには、先頭管や中間管の補強管10と同様に、周壁101aに固結材の吐出孔102aが形成されていると共に、周壁101aの外周面と削孔53の削孔壁54との間を閉塞可能な周状突部103aが後部に設けられている(図1図4参照)。
【0021】
図1図4の周状突部103aは、周壁101aから鍔状に突出する突条で形成されており、軸方向に間隔を開けて複数設けられ、図示例では3条の周状突部103aが相互に間隔を開けて設けられている。この突条の周状突部103aは、例えば周壁101aに溶接加工等して設けられる。また、周状突部103aの孔奥側の先端は、端末補強管10aの後端から80cm程度の距離に設けると好適であり、端末補強管10aは吹付コンクリート52から外側に15~30cm位突出した状態で打設完了になることから、3条等の複数条の周状突部103aは端末補強管10aの後端から40~80cm程度の範囲に設けることが好ましい。
【0022】
そして、端末補強管10aの打設が進行して、端末補強管10aの周状突部103aがセントラライザーの近くまで到達した際には、端末補強管10aを途中まで打設した状態で、端末補強管10aを支持しているセントラライザー、本例では固定セントラライザー13と移動セントラライザー14とを下降し、セントラライザーを周状突部103aと干渉しないように周状突部103aの後側に移動して上昇させ、セントラライザーで端末補強管10aの周状突部103aより後側の位置を支持し、端末補強管10aの打設作業を再開する(図1(c)~(e)参照)。
【0023】
図1(c)~(e)の例では、固定セントラライザー13と移動セントラライザー14で構成されるセントラライザーが設けられているガイドセル11を下降し、セントラライザーが周状突部103aの後側に配置されるようにガイドセル11を移動して上昇させ、セントラライザーで端末補強管10aの周状突部103aより後側の位置を支持するようにガイドセル11を上昇させている。尚、図1(d)においては、図示の都合上ガイドセル11を十分に下降させた状態を示しているが、実施工でこの工程を行う際には、端末補強管10aに内挿されている削孔ロッドがある為ガイドセル11を周状突部103aが通過できるだけ僅かに下げれば十分であり、それも難しい場合には削孔ロッドをガイドセル11上の削孔機械12から取り外し、セントラライザーで端末補強管10aの周状突部103aより後側の位置を支持するように配置した後に、削孔ロッドを削孔機械12に再度取り付けるようにしても差し支えない。また、セントラライザー13、14がガイドセル11に対して下降する構成でも良く、さらに、例えば周状突起103aの前面を前方に向かって傾斜する傾斜面とする形状等、周状突部103aとセントラライザー13、14があまり干渉せずに通過できるように形状を工夫しておくことによりセントラライザー13、14の下降、上昇工程を伴わずにそのまま通過させることも可能ではある。
【0024】
端末補強管10aの打設作業を再開した後、端末補強管10aの周状突部103aが削孔53に入り込み、周壁101aの外周面と削孔壁54との間を閉塞するように周状突部103aが配置された既定位置まで端末補強管10aを打設することにより、端末補強管10aの打設作業を完了する。打設された端末補強管10aは長尺補強管20の端末を構成する(図2(a)参照)。尚、端末補強管10a、先頭管や中間管の補強管10からは、内挿されていた削孔ロッドが抜き出されて回収される。
【0025】
打設された端末補強管10aには、固結材の注入器具30を取り付ける(図2(b)、(c)参照)。注入器具30は、端末補強管10aの後端に着脱自在に外嵌合して取り付けられる端末キャップ31と、端末キャップ31の基板311に貫通するように設けられ、端末補強管10aの内部に挿入されるパッカー用注入ホース32と、パッカー用注入ホース32の先端に設けられ、端末補強管10aの内部に配置されるパッカー33と、端末キャップ31の基板311に貫通するように設けられ、長尺補強管20の内部に挿入される奥側注入ホース34とから構成される。尚、図面においては簡略化の為、奥側注入ホース34を1本だけ図示しているが、実施工における奥側注入ホース34は長尺補強管20の長さに応じて、それぞれ長さの異なるものを複数本用い、パッカー33より奥側の注入工程において注入エリアごとに段階的な注入が出来るように配置することが多い。
【0026】
そして、図2(c)、図4(a)に示すように、パッカー33は、端末補強管10aの内部における周状突部103aより孔奥側の位置に配置され、好ましくは端末補強管10aの軸方向で周状突部103aの孔奥側先端から離間して配置される。例えば3条の周状突部103aが端末補強管10aの後端から40~80cmの範囲に配置されている場合には、パッカー33は端末補強管10aの後端から孔奥側の1m程度の位置に配置される。
【0027】
この状態で、パッカー33の内部に固結材41を注入し、パッカー33から削孔53の口元側に固結材41を浸出させて口元コーキング領域42を形成する(図2(c)、(d)、図4(b)参照)。パッカー33には、固結材41が口元側のみに染み出し可能なものを用いると好適であり、例えば孔奥側を固結材41が浸出しないナイロン、ビニール、ゴム等の材質で形成し、口元側を固結材41が浸出する布等の材質で形成したパッカー33とすると良好である。
【0028】
端末補強管10aの内部に配置されたパッカー33と複数条の周状突部103aの孔奥側の先端との間における端末補強管10aの周壁101aには、固結材の吐出孔102aが形成されている。そして、パッカー33の内部に固結材41を注入すると、パッカー33が固結材41の充填で膨らんだ後、パッカー33から浸み出した固結材41が、削孔53の口元側の端末補強管10aの内部に注入されていくと共に、パッカー33と周状突部103aの孔奥側の先端との間における周壁101aの吐出孔102aから端末補強管10aの外側に吐出されて削孔53、地山51に注入され、口元コーキング領域42が形成される。
【0029】
口元コーキング領域42の形成後には、長尺補強管20の内部に挿入されている奥側注入ホース34から固結材43を注入する。固結材43は、口元コーキング領域42より孔奥側の長尺補強管20の内部に注入されていくと共に、端末補強管10aの吐出孔102a、長尺補強管20を構成する中間管と先頭管の補強管10に形成されている吐出孔から、長尺補強管20の外側に吐出されて削孔53、地山51に注入されていき、口元コーキング領域42で固結材43の漏れが防止された状態で固結領域44が形成される(図2(e)参照)。
【0030】
本実施形態の地山補強工法によれば、端末補強管10aの打設によって端末補強管10aの外周面と削孔壁54との間の隙間を周状突部103aで閉塞することができ、削孔毎に作業員が高所に上がって手で口元にウェスやコーキングカプセルを詰める作業を無くすことができる。従って、安全性が高く、施工効率の高い口元コーキング処理を行うことができる。
【0031】
また、端末補強管10aの軸方向に間隔を開けて配置される複数の周状突部103aによる隔壁によって、端末補強管10aの外周面と削孔壁54との間の隙間をより確実に閉塞状態にすることができる。複数の周状突起部103aが軸方向に間隔を開けて設けられていることによって、固結材が周状突起部103aと周状突起の間に回り込んだ場合にそこにしっかりと限定注入され口元コーキングが確実に行われる。尚、周状突起部103aが1つだけの場合には、パッカー33の内部に固結材41注入する際に多めに注入することで、しっかりと口元コーキングを行うことができる。
【0032】
また、セントラライザーを下降、後方移動して上昇させ、セントラライザーで端末補強管10aの周状突部103aより後側の位置を支持し、端末補強管10aの打設作業を再開する工程により、端末補強管10aの周状突部103aとセントラライザーとの干渉や、干渉による周状突部103aやセントラライザーの破損を防止することができる。また、端末補強管10aのセントラライザーによる芯出しも確保することができる。
【0033】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態、各例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や下記の更なる変形例も含まれる。
【0034】
例えば本発明の地山補強工法で用いられる端末補強管の構成は、上記実施形態の端末補強管10aに限定されず本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば図5及び図6に示す端末補強管10bを用いても好適である。端末補強管10bは、補強管10や端末補強管10aと同様の押し込んで連結、接続する構造を有するものであり、周壁101bに固結材の吐出孔102bが形成されていると共に、周壁101bの外周面と削孔53の削孔壁54との間を閉塞可能な周状突部103bが後部に設けられている。
【0035】
端末補強管10bの周状突部103bは、後端に向かって漸次拡径するテーパ状に形成されており、図示例では後端に向かって外周面が漸次拡径するテーパ状のゴム製筒材になっている。端末補強管10bの後端近傍における周壁101bには、鍔状に外側に突出する環状プレート104bが形成され、溶接等で周壁101bに固定されている。本例のテーパ状のゴム製筒材で構成される周状突部103bは、その後端面を位置規制する環状プレート104bの先端面に当接するようにして周壁101bの外側に嵌め込まれている。
【0036】
端末補強管10bにおけるテーパ状の周状突部103bの孔奥側の先端は、端末補強管10bの後端から80cm程度までの距離に設けると好適であり、さらにテーパ状の周状突部103bの先端は環状プレート104bから50cm位の位置となるのが望ましい。また、端末補強管10bは吹付コンクリート52から外側に15~30cm位突出した状態で打設完了になると共に、打設完了状態で周状突部103bの後端面及び環状プレート104bは吹付コンクリート52の外側に配置されることから、テーパ状の周状突部103bの後端面は端末補強管10bの後端から2~20cm程度の位置に配置することが好ましい。
【0037】
端末補強管10bの打設作業においても、上述の端末補強管10aと同様に、端末補強管10bの周状突部103bがセントラライザーの近くまで到達した際には、端末補強管10bを途中まで打設した状態で、端末補強管10bを支持しているセントラライザーを下降し、セントラライザーを周状突部103b及び環状プレート104bと干渉しないように周状突部103b及び環状プレート104bの後側に移動して上昇させ、セントラライザーで端末補強管10bの周状突部103b及び環状プレート104bより後側の位置を支持し、端末補強管10bの打設作業を再開する。
【0038】
端末補強管10bの打設作業を再開した後、端末補強管10bの周状突部103bのテーパ面を削孔壁54に押し当てるようにして周壁101bの外周面と削孔壁54との間を閉塞し、既定位置まで端末補強管10bを打設することにより、長尺補強管20の端末を構成する端末補強管10bの打設作業を完了する。
【0039】
打設された端末補強管10bには、上述の固結材の注入器具30を取り付け、パッカー33を、端末補強管10bの内部における周状突部103bより孔奥側の位置に配置し、好ましくは端末補強管10bの軸方向で周状突部103bの孔奥側先端から離間して配置する。この状態で、パッカー33の内部に固結材41を注入し、パッカー33から削孔53の口元側に固結材41を浸出させて口元コーキング領域42を形成する。
【0040】
端末補強管10bの内部に配置されたパッカー33とテーパ状の周状突部103bの孔奥側の先端との間における端末補強管10bの周壁101bには、固結材の吐出孔102bが形成されている。そして、パッカー33の内部に固結材41を注入すると、パッカー33が固結材41の充填で膨らんだ後、パッカー33から浸み出した固結材41が、削孔53の口元側の端末補強管10bの内部に注入されていくと共に、パッカー33と周状突部103bの孔奥側の先端との間における周壁101bの吐出孔102bから端末補強管10bの外側に吐出されて削孔53、地山51に注入され、口元コーキング領域42が形成される。
【0041】
口元コーキング領域42の形成後には、端末補強管10aを用いる場合と同様に、長尺補強管20の内部に挿入されている必要本数の奥側注入ホース34から固結材43を順次注入し、口元コーキング領域42で固結材43の漏れが防止された状態で固結領域44を形成する。
【0042】
端末補強管10bを用いる地山補強工法によれば、端末補強管10aを用いる地山補強工法と対応する構成から対応する効果を得ることができると共に、テーパ状の周状突部103bを削孔53内にスムーズに挿入して端末補強管10bの外周面と削孔壁54との間の隙間を確実に閉塞状態にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、トンネル掘削時に切羽の前方地山に長尺鋼管を打設し、長尺鋼管から周辺地山に固結材を注入して前方地山を補強する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…補強管 11…ガイドセル 12…削孔機械 13…固定セントラライザー 14…移動セントラライザー 10a…端末補強管 101a…周壁 102a…吐出孔 103a…周状突部 10b…端末補強管 101b…周壁 102b…吐出孔 103b…周状突部 104b…環状プレート 20…長尺補強管 30…注入器具 31…端末キャップ 311…基板 32…パッカー用注入ホース 33…パッカー 34…奥側注入ホース 41…固結材 42…口元コーキング領域 43…固結材 44…固結領域 51…地山 52…吹付コンクリート 53…削孔 54…削孔壁 201…地山 202…長尺鋼管 203…固結領域 204…長尺先受け工 205…長尺鋼管 206…長尺鏡補強工 207…ドリルジャンボ 208…削孔用アーム 209…ガイドセル 210…削孔機械 211…削孔ロッド 220、220a、220b…鋼管 T…トンネル空間
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