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特開2023-73933導電性に優れたアルミニウム金属材料およびその製造法。
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  • 特開-導電性に優れたアルミニウム金属材料およびその製造法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073933
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】導電性に優れたアルミニウム金属材料およびその製造法。
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/04 20060101AFI20230519BHJP
   C25D 11/06 20060101ALI20230519BHJP
   C25D 11/12 20060101ALI20230519BHJP
   C25D 11/18 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C25D11/04 302
C25D11/04 101A
C25D11/04 101B
C25D11/04 101C
C25D11/06 A
C25D11/06 C
C25D11/12 Z
C25D11/18 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021198888
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】595179549
【氏名又は名称】株式会社アート1
(72)【発明者】
【氏名】田中 成憲
(72)【発明者】
【氏名】秋本 政弘
(57)【要約】
【課題】アルミニウムの陽極酸化皮膜に電気導電性と、アルマイトの硬さをもつ材料開発をする。
【解決手段】本発明はアルミニウムの陽極酸化皮膜が絶縁材料として利用されているバリヤー層を除去後に金属を析出することにより、1×10Ω以下、1×10-2Ωを超える電気抵抗と、硬さHV300以上、HV420未満を有するアルミニウム材として従来にない実用に即した低抵抗で硬さに優れた材料であり、この材料は4段階の電解を施すことによって製造できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と素地との間の電気抵抗が1×10Ω以下、1×10-2Ωを超える性能を持ち、皮膜断面硬度がビッカース硬さ試験でHV300以上、420HV未満の陽極酸化皮膜を有することを特徴とするアルミニウム又はその合金からなる材料。
【請求項2】
アルミニウム又はその合金の陽極酸化皮膜を有する材料の電磁波シールド効果が周波数500KHz~1GHzの範囲において電界、磁界が30dB以上の陽極酸化皮膜を有することを特徴とする請求項1のアルミニウム又はその合金からなる材料
【請求項3】
陽極酸化皮膜の耐摩耗性が、一般皮膜条件の往復運動平面摩耗試験の測定値が30ds/μm以上の陽極酸化皮膜を有することを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1つのアルミニウム又はその合金からなる材料。
【請求項4】
材料の耐食性が塩水噴霧試験で120時間行い、RN(レイティングナンバー)9以上の陽極酸化皮膜を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つのアルミニウム又はその合金からなる材料。
【請求項5】
皮膜の厚さが6~60μmで、色調が素地色~褐色~濃い褐色系の陽極酸化皮膜であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つのアルミニウム又はその合金からなる材料。
【請求項6】
アルミニウム又はその合金の陽極酸化に際し、液組成として第1電解液は無機酸系の硫酸系、スルファミン酸系及び/又は有機酸系の脂肪族または芳香族のスルホン酸、カルボン酸もしくはその無水物またはそれらの塩の1種又は2種以上を用いて第1電解を行い、第2電解として第1電解液と同一もしくは異なる電解液中にて段階的に電圧を下げて実質的に4~2Vまで下げて第2電解を終了した後に被陽極酸化製品を取り出し、十分に水洗を行い、第3電解として金属を含んだ酸性溶液中にて電圧5~50Vまでを1~5秒で上げ、3~300秒保持後に一挙に0Vまで下げ、第4電解は第3電解と同一液にて電解を行うこと特徴とする、表面と素地との間の電気抵抗は1×10Ω以下、1×10-2Ωを超え、皮膜断面硬度がビッカース硬さ試験でHV300以上、420HV未満性能を持つ陽極酸化皮膜を有するアルミニウム又はその合金からなる材料の製造法。
【請求項7】
アルミニウム又はその合金の陽極酸化に際し、液組成として第1電解液は無機酸系の硫酸系、スルファミン酸系及び/又は有機酸系の脂肪族または芳香族のスルホン酸、カルボン酸もしくはその無水物またはそれらの塩の1種又は2種以上を用いて第1電解を行い、第2電解として第1電解液と同一もしくは異なる電解液中にて段階的に電圧を下げて実質的に4~2Vまで下げて第2電解を終了した後に被陽極酸化製品を取り出し、十分に水洗を行い、更に第3電解としてアルカリ性の電解液中にて時間3~20分の電解を行い、十分に水洗後に第4電解として金属を含んだ酸性溶液中にて電解を行うこと特徴とする、表面と素地との間の電気抵抗が1×10Ω以下、1×10-2Ωを超え、皮膜断面硬度がビッカース硬さ試験でHV300以上、420HV未満の性能を持つ陽極酸化皮膜を有するアルミニウム又はその合金からなる材料の製造法。
【請求項8】
アルミニウムまたはその合金の陽極酸化処理の電流もしくは電圧波形を、直流波形、パルス波形、PRパルス波形の単独又は2つ以上の組合せた波形を用いることを特徴とする請求項6または7の導電性と硬さに優れた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム又はその合金材料の製造法。
【請求項9】
電解方法の第1電解は、有機系及び/又は無機系の電解液を用いて液温0~40℃、電流密度0.6~3.0A/dm、10~120分電解を行い、第2電解は同一液中にて最終電圧から4~2Vまで1~10V下げ、10~120秒保持、1~10V下げ、10~120秒保持の繰り返しで段階的に10Vまで下げ、保持時間10~60秒後、8V、6Vと順次4~2Vまで下げるこの時の保持時間は20~120秒とし、合計5~60分行なった後、水洗を十分に行い、更に第3電解は2種類あり、1方法はアルカリ性の電解液中にて液温0~30℃、電圧3~40V、時間2~20分電解を行い、水洗を十分行う方法と、他方、金属又は金属イオンを含んだ酸性溶液中にて液温10~40℃、電圧5~50V、電解時間3~300秒行い水洗を十分に行う方法とあり、第4電解として金属を含んだ酸性溶液中にて、液温10~40℃、電流密度0.5~2.0A/dmまたは電圧0.8~15V、電解時間2~30分行うことをと特徴とする請求項6または8の導電性と硬さに優れた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム又はその合金からなる材料の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性に優れたアルミニウム金属材料及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム陽極酸化皮膜(以下、アルマイトと呼ぶ。)は電気的には絶縁材料として開発されたが、加飾技術、耐食技術、硬さ・耐摩耗性技術等の改良を行うことにより今日のアルミニウムの発展の一翼を担ってきた。例えば、加飾と耐食技術によりビルのカラーパネル、窓枠のカラーサッシ、日用雑貨品のカラー化等があり、硬さの技術により摺動性の必要とされる機械部品の軽量化、耐食技術により屋外でのエクステリア、水中カメラ等が軽量化になり、多方面にアルミニウムが使われるようになった。今後、アルミニウムを今以上に発展させるには、素材の開発は勿論のこと、陽極酸化皮膜の出発点である絶縁材料を打破し、導電性、磁性等+軽量で加工がしやすい優位さを利用して電気、電子、半導体分野に進出する必要に迫られ、従来の特性に加えて導電性を有する陽極酸化皮膜の開発、実用化が待ち望まれていた。例えば、陽極酸化皮膜は静電気によるスパークで電子回路を破損する事故、スマホ、衛星放送、タクシー無線等に使用されている中波~極超短波の磁界シールド効果が出せずに、表面にめっきを行なうことによって対応してきたが、めっき液の処理及び廃棄、再生時に重金属が発生し、LCA対応としては問題があり、この問題を解決できるLCA対応可能な皮膜が望まれている。
【0003】
アルマイトの陽極酸化皮膜に導電性を付与することに関しては硝酸イオンを含む陽極酸化浴中で処理する方法が提案されている(特許文献1)。この方法で達成される導電性は、抵抗値で105~6Ω以上のレベルであり、静電防止機能を持ち各種のコンピュータ関連製品に利用できると記載されているが、実用面では静電気によるスパークで電子回路を破損する事故を防ぎ、スマホ、衛星放送、タクシー無線等に使用されている中波~極超短波の磁界シールド効果を発揮するには不十分な性能である。この文献には表面硬度に関する記述がないが実際にはHv280程度の硬さしか出すことが出来なくて硬質アルマイトの利用分野には硬さ不足で利用することはできず、改良が必要である。
【0004】
アルマイトの陽極酸化皮膜は、多孔質層とバリヤー層(無孔層)より成り立っている。アルマイトは当初理化学研究所で絶縁材料として開発され、今日に至ってきた。しかし、1970~80年代に硫酸皮膜を硬くする手法として金属材料研究所からバリヤー層を除去し、電解着色技術で表面まで金属を析出させたときに導電性があることを確認したことを示した論文が出されている。(技術文献1)
技術文献1には電解液を硫酸とし、皮膜作成時の最終電圧15~20Vから一気に0.05V付近まで降下させ、更にスイッチ切断後バリヤー層を溶解してからNi電析を行ってHV50~100程度の硬度増を達成したことが記載されている。そしてAl素地と皮膜表面との間にはテスターによる導通があることを報告している。しかしこの製法によるニッケル電析の皮膜硬度は最大でもHV450であり、更に最大の欠点はアルマイトの最大の特徴である耐食性を全くなくしてしまうことで実用的に使用されにくい製品である。一方陽極酸化皮膜の耐食性に影響の少ない亜鉛電析では皮膜硬度の向上に全くまたはほとんど役立たず、精々HV330が達成された程度であり、硬質アルマイトとしては全く不十分な硬度である。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】再公表特許 WO 00/01865 公報
【技術文献1】
金属表面材料 Vol33,No5 232-237(1982)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来使用できなかったアルマイトに導電性と硬さを付与し、軽量の材料としてその製造法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電気抵抗が1×10以下、1×10-2Ωを超える性能を持ち、更に皮膜断面硬さがHV300以上、HV420未満の硬さを持つアルミニウム又はその合金からなる陽極酸化皮膜を有する材料及びその製造方法である
【0008】
本発明の電気抵抗の測定法は、低抵抗測定に優れている直流方式4端子法(電圧降下法)を抵抗計RM3548(日置電機株式会社製)にて表面と素地との間の電気抵抗を測定すると1×10以下、1×10-2Ωを超え、且つ皮膜断面硬さはJIS‐Z2244(ビッカース硬さ試験)方法にて荷重0.098N(10grf)、保持時間15秒で計測定したときにHV300以上、HV420未満の硬さを持つアルミニウム又はその合金からなる陽極酸化皮膜を有する材料及びその製造方法である。
【0009】
本発明の耐食試験はJIS‐Z2371の中性塩水噴霧試験機STP‐90V‐4((株)スガ試験機株式会社製)を用いて、連続噴霧時間120時間後、評価法はJIS‐H8679‐1(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜に発生した孔食の評価方法‐第1部:レイティングナンバー方法(RN)にて行う。レイティングナンバーとは皮膜を貫通し金属素地に達した孔食だけに適応する、(皮膜を貫通していない変色などの表面欠陥及び試験片に生じた端面の腐食は評価の対象としない。)
【0010】
陽極酸化皮膜の厚さはJIS‐H8680‐2(渦電流式測定法)を用い校正用標準板(プラスチックフィルム)にて校正後計測をすると6~60μmで、好ましくは10~50μm、特に好ましくは20~40μmで、色調が薄い褐色~濃い褐色系の皮膜を形成する。
【0011】
本発明の製造工程は電解が4工程と後処理より組み立てられており、第1電解は母体となる皮膜作成(図1,2)、第2電解は第1電解と同一又は異なる電解液にて微細孔の皮膜の底部にあるバリー層の一部を残し除去する方法(図3)、第3電解は2種類の方法があり、1法は核となる金属を析出させ、他方は再陽極酸化皮膜を作成しる方法で(図4)、第4電解で金属の微細孔への析出(図5)より成り立ち、更に後処理として封孔等の作業を行うことにより電気抵抗が1×10以下、1×10-2Ωを超え、ビッカース硬さ試験法での皮膜断面硬さがHV300以上、HV420未満あり、色調は素地色~褐色形~濃い褐色系の色調を持つ陽極酸化皮膜を形成するアルミニウム又はその合金からなる材料を製造することが出来る。
【0012】
第1電解では皮膜に一定以上の硬さを付加する必要があるが硫酸系のみでは添加剤を加えないと硬さがHV350~380で、これ以上を求める時には有機酸系を単体もしくは添加剤を加えることにより、硬さはHV420程度まで上げることが出来る。又、この皮膜は本発明工程第2電解方法でバリヤー層の一部残しての除去が短時間でできず、長すぎると皮膜の溶解が起きカブリとなり、短すぎるとバリヤー層が除去できず抵抗が高くなり、第4電解の金属の析出にバラツキが生じたり、スポーリング(皮膜が破壊され素地が現れる現象)が発生することがある。
【0013】
本発明の第1電解は母体となる皮膜作成を行う工程で、液組成は好ましくは無機酸及び/又は有機酸を主とし、添加剤として主成分以外の有機酸及び/または無機酸を必要に応じて加え、無機酸としては硫酸、リン酸、スルファミン酸とその化合物、有機酸は脂肪族又は芳香族のスルホン酸および/又はカルボン酸系の単体又は混合系用い、電解方式は直流波形で液温0~40℃、電流密度0.6~3.0A/dm、10~120分、好ましくは液温0~25℃、電流密度0.8~2.0A/dm、電解時間20~90分で行うか、パルス波形、PRパルス波形、1サイクルでの正電流の平均電流密度0.1~10A/dm、負電流の平均電流0.0~10A/dm、液温0~40℃で、好ましくは、直流波形では0~10℃、電流密度1.0~2.0A/dm,60~90分で、パルス波形、PRパルス波形では1サイクルでの正電流の平均電流密度0.6~3.0A/dm、負電流の平均電流0.0~3.0A/dmの電解条件、液温10~30℃で、直流波形、パルス波形、PRパルス波形の単独又は2つ以上の組合せた電流または電圧波形を用いて陽極酸化処理した結果、ビッカース断面硬さ試験法でHV300以上、HV420未満あり、色調は素地色~褐色形~濃い褐色系の色調を持つ陽極酸化皮膜を形成する。ここで形成された陽極酸化皮膜の全体像を図1に示し、その断面及び表面視野図を図2に示す。
【0014】
本発明の第2電解は第1電解において目的の皮膜厚さに達したら、電源を切らずに1~5分保持し、その後段階的に電圧を4~2Vまで下げる。方法は最終電圧から1~10V下げ、その電圧で10~120秒保持、更に1~10V下げ、10~120秒保持の繰り返しで10Vまで下げ、その後8V,6Vと4~2Vまで順次下げていく、この時の保持時間は各10~120秒とし、全体の電圧効果時間は5~60分で行い、好ましくは2~5V下げ、20~120秒保持で、5~40分で4~2Vまで到達することが望ましい。この工程で微細孔の低位部にあるバリヤー層を若干残すことが必要である。この模式図を図3に示す。
【0015】
本発明の第3電解は2方法あり、1方法はアルカリ溶液に添加剤を加えた電解液で、直流波形にて電圧3~40V、時間2~20分、液温0~30℃で、好ましくは電圧5~30V、時間3~15分、10~15℃にて陽極酸化処理を行い、微細孔底面部位に導電性の良い薄い陽極酸化膜を作成する。(図4
【0016】
他方の第3電解は、金属及び金属イオンを含む酸性液と添加剤より成り立っており、直流、パルス波形を単独または2つ以上を組合せて行い、液温は10~40℃、好ましくは15~30℃で行い、電解は1~5秒で電圧を5~50Vまで上げ、3~300秒保持し、一挙に0Vに戻す手法で、微細孔底部に核となる金属の析出をさせる。この液組成は次工程の第4電解液と同じでもよい。
【0017】
第4電解は第3電解の酸性液と同一の液で金属塩を含む酸性液と添加剤より成り立っている電解液で行われる。電解液中では金属塩は溶解して金属イオンとして用いられている。電解は直流、パルス、PRパルス波形を単独または2つ以上を組合せて行い、電圧は0.8~15V、時間は2~30分、液温は10~40℃、好ましくは電圧1~10V、3~15分、16~30℃で行い、電源に極性がある場合は(被処理部材を)陰極側にセットし、陽極側は炭素板電極を用いて電解を行い、電解着色前後の水洗は脱イオン水又は純水で十分に行う。この工程で陽極酸化皮膜の微細孔中に金属が析出する。この模式図を図5に示した。
【0018】
本発明の第1、2電解に用いられる電解液は、無機酸系及び/又は有機酸系に添加剤として主たる成分以外の無機酸及び/又は有機酸とその化合物を添加した混合系で具体的には無機酸として硫酸、リン酸とそれらの化合物、添加剤として用いる有機酸は脂肪族又は芳香族のスルホン酸および/又はカルボン酸系の単独又は混合系が好ましく、これらの液濃度は0.1~4.5mol/Lが好ましい。
【0019】
本発明のアルカリ性第3電解溶液は、アルカリ性化合物の単体または2つ以上を加え、更に添加剤として有機物系を加えたものを用いる。具体的には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどで、これらを1種又は2種以上組合せて陽極酸化の電解液として用いる。これらの液濃度は0.05~2.0mol/Lで、好ましくは0.1~0.5mol/Lである。
【0020】
本発明のアルカリ性第3電解液の添加剤は、カルボン酸塩、炭酸塩、リン酸塩、フッ化物及びアルミン酸塩などを1種又は2種以上組合せて添加剤として用いる。具体的には酒石酸アンモニウム、酒石酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、アルミン酸ナトリウムなどで、液濃度は0.05~1.0mol/Lで、好ましくは0.1~0.5mol/Lである。
【0021】
本発明の酸性第3電解液と第4電解液は同じ組成で電解条件が異なり、電解液は金属塩を含む酸性液と添加剤より成り立っており、金属塩は溶解可能な金属イオンの状態で用いられている。酸性液の代表的なものとして硫酸化合物、シュウ酸化合物を主とし、添加剤としてカルボン酸系の有機酸、ホウ酸等を加えた液、添加される金属塩化合物としては、金、銀、銅、白金、錫、コバルト、ニッケル、鉄、タングステン、モリブデン、クロム、亜鉛、パラジウム、ジルコニウム、ロジウム、ルテニウム、バナジウム、チタン、マンガンなどの化合物が用いられる。得られた材料の陽極酸化皮膜の優れた耐食性を維持するには亜鉛単独か他の金属との積層が最も好ましい。
【0022】
本発明は、厚さ6~60μm、特に20~50μmの皮膜においても素地色~褐色系の陽極酸化皮膜が形成されているが、この皮膜は染料または顔料などで着色されたものではなく、第4電解の金属析出により形成されたものである。
【0023】
本発明における第1電解及び第2電解において好ましく用いる無機酸系及び/又は有機酸に添加剤として主たる成分以外の無機酸及び/又は有機酸とその化合物を添加した混合系で具体的には無機酸として硫酸、リン酸とそれらの化合物、添加剤として用いる有機酸は脂肪族又は芳香族のスルホン酸および/又はカルボン酸系の単独又は混合系、具体的にはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸など、スルホン酸系ではスルホサリチル酸、スルホフタル酸、スルホ酢酸などで、これらを1種又は2種以上組合せて陽極酸化の際の電解液として用いる。
【0024】
本発明における第1電解の電解は直流波形で液温0~40℃、電流密度0.6~3.0A/dm、10~120分、好ましくは液温10~25℃、電流密度0.8~2.0A/dm、電解時間20~90分で行うか、パルス波形、PRパルス波形、1サイクルでの正電流の平均電流密度0.1~10A/dm、負電流の平均電流0.0~10A/dm、液温0~40℃で好ましくは、1サイクルでの正電流の平均電流密度0.6~3.0A/dm、負電流の平均電流0.0~3.0A/dm、液温10~30℃で、直流波形、パルス波形、PRパルス波形の単独又は2つ以上の組合せた電流または電圧波形を用いて液温10~60℃で、陽極酸化処理して陽極酸化皮膜の厚さを6~60μmとする。
【0025】
無機酸を主とする電解液に添加剤として添加できるものは、有機酸系もしくは有機酸系の1種又は2種以上の化合物と無機酸系及びその塩類であるである。有機酸系の化合物としては上記した脂肪族又芳香族のスルホン酸および/又はカルボン酸系の化合物であるが、有機酸を主とする電解液に用いた有機酸とは異なるものを添加剤として用いる。他にまたエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール系化合物も溶媒として使用でき、その量は60%までとし、これらアルコール系化合物は水と共に溶媒の一部として使用することも可能である。無機酸系の化合物としてはホウ酸、ケイ酸、硫酸、リン酸、もしくはこれらの塩類、ピロリン酸、スルファミン酸もしくはこれらの塩類、などの1種または2種以上を使用することが出来る。これら添加剤の使用量は、電解液に主として使用した有機酸の使用量より少ない量で、0.001~0.9mol/Lの液濃度とすることは好ましい。
【0026】
本発明の第4電解の電解条は、直流波形、パルス、PRパルス波形を単独または2つ以上を組合せて行い、電圧は0.8~15V、時間は2~30分、液温は10~40℃、好ましくは電流密度0.8~1.5A/dm又は電圧1.0~10V、3~15分、16~30℃で行い、電源に極性がある場合は(被処理部材を)陰極側にセットし、陽極側は炭素板電極を用いて電解を行い、電解前後の水洗は脱イオン水又は純水で十分に行う。
【0027】
また、本発明の陽極酸化皮膜は、導電性と同時にビッカース硬さ試験でHV300以上、HV420未満の硬さを有するものである。
【0028】
本発明皮膜の電磁波シールド効果測定はKEC法にて100KHz-1000MHz(1GHz)までの電解、磁界測定を行った結果、保証可能な数値として500KHz-1000MHz(1GHz)においては30db以上あり、これはアルミニウム素地と同じ値で、アルミニウムの限界値と同等のシールド効果を持っている。
【発明の効果】
【0029】
アルミニウムの陽極酸化皮膜が当初絶縁材料として開発され、長い年月が過ぎ改良に改良を加え今日の陽極酸化皮膜となり、アルミニウムの発展に寄与したことは間違いがないが、近年の半導体の進歩により実装密度が格段に上がりこれに伴って電子機器の小型化が急速に進んできた、このために従来問題にならなかった空間が極端に狭められ、静電気によるスパークが発生しそれが電子機器に重大なダメージを招く結果となってきた。この問題を解決する為に静電気を表面に溜めないで常にグラウンドに落とせるような、導体で硬さを兼ね備えしかもLCAを満足できる皮膜が求められていたところ、本発明の陽極酸化皮膜が導電性と硬さに加えさらに耐食性、電磁波シールド効果も併せ持った優れた皮膜が開発された。これらを組み合わせることにより電子機器の更なる小型化、通信では5Gのシールド効果、スマホ等のチャージ等としても使用されることに期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
なお、実施例において、電気抵抗の測定法は、低抵抗測定に優れている直流方式4端子法(電圧降下法)を図6のように用いて行った。抵抗計RM3548(日置電機株式会社製)6を陽極酸化皮膜の表面12と素地3とに1cmの銅に金メッキをした電極11を乗せ表面に50g/cmの加重をかけ電気抵抗を測定する。ビッカース硬さ試験は顕微鏡断面測定法により(株)島津製作所社製の微小硬度計(HMV-G-XY-D)を用いて荷重10gfで15秒行って測定した平均皮膜硬さを示す。但し、皮膜厚さが20μm以下の場合にはヌープ式の圧子を用いて同一荷重、同一時間にて測定したものである。耐摩耗性は(株)スガ試験機社製の往復運動平面磨耗試験機にて一般皮膜試験条件にて計測した実測値であり、皮膜厚さは(株)ケット科学研究所社製渦電流膜厚計(LH-373)で計測した平均厚さを示す。耐食試験はJIS‐Z2371の中性塩水噴霧試験機((株)スガ試験機社製)を用いて、連続噴霧時間120時間後、評価法としてJIS‐H8679‐1(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜に発生した孔食の評価方法‐第1部:レイティングナンバー方法(RN)にて行う。実際は塩水噴霧試験機より取り出し後、表面の腐食生成物を物理的、化学的に除去し、乾燥後レイティングナンバー標準図表と比較して評価する。電磁波シールド効果測定はKEC法にて100KHz-1000MHz(1GHz)までの電界、磁界測定を行った結果を表示する。
【実施例0031】
アルミニウムA1050材(Si 0.25%、Mn0.05%以下)で50×100×t1.0mmのテストピースを前処理として、エマルジョン脱脂・45℃×5分―5%硝酸・室温×3分-エッチング20%水酸化ナトリウム・室温×1分―脱スマット・10%硫酸・室温×3分を行い、第1電解液を硫酸125g/Lに、添加剤としてシュウ酸15g/Lを加えたものとし、液温10±1℃、電源は直流波形を用い、電流密度1.3±0.1A/dmで70分行ない最終電圧は38V、第2電解は電源を切らずに第1電解の最終電圧38Vを2分保ち、その後4V下げ、60秒保持を2回行い30Vとし、次に5V下げ―60秒保持を電圧10Vまで繰り返し、その後8V,6V,4Vと順次下げ、この時の保持時間は各90秒で、12.5分で4Vになり、更に3Vで90秒保持し開始から14分後取り出し水洗を十分に行い、第3電解は、第3電解は直流波形で、液組成は硫酸亜鉛300g/L、硫酸アンモニウム28g/L、ホウ酸25g/L、PH=2~3.5、浴温29±1℃、電解は3秒で30Vまで上昇させ、10秒保ち一気に0Vまで下げる。第4電解は同一電解液、液温で直流波形にて電流密度1.0A/dmで10分電解した後、十分に脱イオン水で水洗をし、更に封孔処理を95~98℃で20分沸騰水封孔を行った結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は平均0.53Ω、断面平均硬さはHV374,耐摩耗性平均値は78.7ds/μm、平均皮膜厚さは29.4μm、色調は素地色系、耐食性は120時間でRN9.5以上、電磁波シールド効果は電界が37dB以上,磁界が33dB以上であった。
【実施例0032】
材料、前処理、第1、第2、第4、封孔処理、測定方法は実施例1と同様にし、第3電解法をアルカリ電解法で行った。第3電解は、液組成を水酸化ナトリウム。0.3mol/Lに添加剤として酒石酸アンモニウム0.05mol/Lを加え液温は5℃、直流波形で電圧8V、電解時間5分行い十分に水洗後、第4電解、封孔処理を行った結果、皮膜表面とアルミニウム素地の平均電気抵抗は1.5Ω、顕微鏡断面測定法による平均皮膜硬さはHV381で、平均皮膜厚さは29.7μm、色調は素地色系、電磁波シールド効果は電界が35dB以上,磁界が32dB以上、耐摩耗性は76ds/μm、耐食性は120時間でRN9.5以上であった。
【実施例0033】
材料、前処理、第1電解、第3電解、第4電解、封孔処理、測定方法は実施例1と同様にし、第2電解は第一電解終了後ただちに第1電解の最終電圧38Vから、4Vに下げ、60秒保持を2回行い30Vとし、次に4V下げ―60秒保持を電圧10Vまで繰り返し、その後8V,6V,4Vと順次下げ、この時の保持時間は各120秒で、13分で4Vになり、取り出し水洗を十分に行い、次工程に進めた結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は平均2.8Ω、断面平均硬さはHV361,耐摩耗性平均値は76.3ds/μm、平均皮膜厚さは29.5μm、色調は素地色系、耐食性は120時間でRN9.5以上、電磁波シールド効果は電界が35dB以上,磁界が32dB以上であった。
【実施例0034】
材料、前処理、第1電解、第2電解、第4電解、封孔処理、測定方法は実施例1と同様にし、第3電解を実施例2のアルカリ法で行った所、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は平均6.2Ω、断面平均硬さはHV374,耐摩耗性平均値は75.8ds/μm、平均皮膜厚さは30.1μm、色調は素地色系、耐食性は120時間でRN9.5以上、電磁波シールド効果は電界が36dB以上,磁界が34dB以上であった。
【実施例0035】
材料、前処理、第1電解、第3電解、第4電解、封孔処理、測定方法は実施例1と同様にし、第2電解は第一電解終了後ただちに第1電解の最終電圧38Vから、4Vに下げ、60秒保持を2回行い30Vとし、次に4V下げ―60秒保持を電圧10Vまで繰り返し、その後8V,6V,4Vと順次下げ、この時の保持時間は各120秒で、13分で4Vになり、更に3Vで2分、2V4分行い合計19分で終了し、取り出し水洗を十分に行い、次工程に進めた結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は平均0.28Ω、断面平均硬さはHV358,耐摩耗性平均値は78.3ds/μm、平均皮膜厚さは30.3μm、色調は素地色系、耐食性は120時間でRN9.5以上、電磁波シールド効果は電界が38dB以上,磁界が35dB以上であった。
【比較例1】
【0036】
材料、前処理、第1電解、第4電解、封孔処理及び皮膜の計測は実施例1と同様に行い、第第2,3電解を除き第4電解処理を行い表面観察するとスポーリングが発生し、皮膜が火山の噴火口の様に見られたので以後の工程を中止した。
【比較例2】
【0037】
材料、前処理、第4電解、封孔処理及び皮膜の計測は実施例1と同様に行い、第1電解を硫酸15%、電流密度1.0~1.1A/dm、電解電圧14~16V、浴温19~20℃、電解時間60分、電解終了後十分水洗をし、第2,3電解を除き、第4電解、封孔処理を行った結果、均一な濃い褐色となり、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は10Ω以上の絶縁体で、硬さはヌープ式の断面平均硬さHV290、耐摩耗性は39ds/μm、平均皮膜厚さは20μm、耐食性はRN10で腐食無し、この製法では本発明が目的とする材料が得られない。
【実施例0038】
材料、前処理、第2電解、第3電解、第4電解、封孔処理及び皮膜の計測は実施例1と同様に行い、第1電解の液組成は同じで、電解条件をPRパルス波形で、プラス側電流密度を2.0A/dm、マイナス側の電流密度を0.5A/dm、プラス側最大電圧35V、マイナス側最大電圧-15Vで、1パルスを3.3msとし、プラス側を20パルス、マイナス側
【発明の効果】
【0029】
アルミニウムの陽極酸化皮膜が当初絶縁材料として開発され、長い年月が過ぎ改良に改良を加え今日の陽極酸化皮膜となり、アルミニウムの発展に寄与したことは間違いがないが、近年の半導体の進歩により実装密度が格段に上がりこれに伴って電子機器の小型化が急速に進んできた、このために従来問題にならなかった空間が極端に狭められ、静電気によるスパークが発生しそれが電子機器に重大なダメージを招く結果となってきた。この問題を解決する為に静電気を表面に溜めないで常にグラウンドに落とせるような、導体で硬さを兼ね備えしかもLCAを満足できる皮膜が求められていたところ、本発明の陽極酸化皮膜が導電性と硬さに加えさらに耐食性、電磁波シールド効果も併せ持った優れた皮膜が開発された。これらを組み合わせることにより電子機器の更なる小型化、通信では5Gのシールド効果、スマホ等のチャージ等としても使用されることに期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
なお、実施例において、電気抵抗の測定法は、低抵抗測定に優れている直流方式4端子法(電圧降下法)を図6のように用いて行った。抵抗計RM3548(日置電機株式会社製)6を陽極酸化皮膜の表面12と素地3とに1cmの銅に金メッキをした電極11を乗せ表面に50g/cmの加重をかけ電気抵抗を測定する。ビッカース硬さ試験は顕微鏡断面測定法により(株)島津製作所社製の微小硬度計(HMV-G-XY-D)を用いて荷重10gfで15秒行って測定した平均皮膜硬さを示す。但し、皮膜厚さが20μm以下の場合にはヌープ式の圧子を用いて同一荷重、同一時間にて測定したものである。耐摩耗性は(株)スガ試験機社製の往復運動平面磨耗試験機にて一般皮膜試験条件にて計測した実測値であり、皮膜厚さは(株)ケット科学研究所社製渦電流膜厚計(LH-373)で計測した平均厚さを示す。耐食試験はJIS‐Z2371の中性塩水噴霧試験機((株)スガ試験機社製)を用いて、連続噴霧時間120時間後、評価法としてJIS‐H8679‐1(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜に発生した孔食の評価方法‐第1部:レイティングナンバー方法(RN)にて行う。実際は塩水噴霧試験機より取り出し後、表面の腐食生成物を物理的、化学的に除去し、乾燥後レイティングナンバー標準図表と比較して評価する。電磁波シールド効果測定はKEC法にて100KHz-1000MHz(1GHz)までの電界、磁界測定を行った結果を表示する。
【実施例0031】
アルミニウムA1050材(Si 0.25%、Mn0.05%以下)で50×100×t1.0mmのテストピースを前処理として、エマルジョン脱脂・45℃×5分―5%硝酸・室温×3分-エッチング20%水酸化ナトリウム・室温×1分―脱スマット・10%硫酸・室温×3分を行い、第1電解液を硫酸125g/Lに、添加剤としてシュウ酸15g/Lを加えたものとし、液温10±1℃、電源は直流波形を用い、電流密度1.3±0.1A/dmで70分行ない最終電圧は38V、第2電解は電源を切らずに第1電解の最終電圧38Vを2分保ち、その後4V下げ、60秒保持を2回行い30Vとし、次に5V下げ―60秒保持を電圧10Vまで繰り返し、その後8V,6V,4Vと順次下げ、この時の保持時間は各90秒で、12.5分で4Vになり、更に3Vで90秒保持し開始から14分後取り出し水洗を十分に行い、第3電解は、第3電解は直流波形で、液組成は硫酸亜鉛300g/L、硫酸アンモニウム28g/L、ホウ酸25g/L、PH=2~3.5、浴温29±1℃、電解は3秒で30Vまで上昇させ、10秒保ち一気に0Vまで下げる。第4電解は同一電解液、液温で直流波形にて電流密度1.0A/dmで10分電解した後、十分に脱イオン水で水洗をし、更に封孔処理を95~98℃で20分沸騰水封孔を行った結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は平均0.53Ω、断面平均硬さはHV374,耐摩耗性平均値は78.7ds/μm、平均皮膜厚さは29.4μm、色調は素地色系、耐食性は120時間でRN9.5以上、電磁波シールド効果は電界が37dB以上,磁界が33dB以上であった。
【実施例0032】
材料、前処理、第1、第2、第4、封孔処理、測定方法は実施例1と同様にし、第3電解法をアルカリ電解法で行った。第3電解は、液組成を水酸化ナトリウム。0.3mol/Lに添加剤として酒石酸アンモニウム0.05mol/Lを加え液温は5℃、直流波形で電圧8V、電解時間5分行い十分に水洗後、第4電解、封孔処理を行った結果、皮膜表面とアルミニウム素地の平均電気抵抗は1.5Ω、顕微鏡断面測定法による平均皮膜硬さはHV381で、平均皮膜厚さは29.7μm、色調は素地色系、電磁波シールド効果は電界が35dB以上,磁界が32dB以上、耐摩耗性は76ds/μm、耐食性は120時間でRN9.5以上であった。
【実施例0033】
材料、前処理、第1電解、第3電解、第4電解、封孔処理、測定方法は実施例1と同様にし、第2電解は第一電解終了後ただちに第1電解の最終電圧38Vから、4Vに下げ、60秒保持を2回行い30Vとし、次に4V下げ―60秒保持を電圧10Vまで繰り返し、その後8V,6V,4Vと順次下げ、この時の保持時間は各120秒で、13分で4Vになり、取り出し水洗を十分に行い、次工程に進めた結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は平均2.8Ω、断面平均硬さはHV361,耐摩耗性平均値は76.3ds/μm、平均皮膜厚さは29.5μm、色調は素地色系、耐食性は120時間でRN9.5以上、電磁波シールド効果は電界が35dB以上,磁界が32dB以上であった。
【実施例0034】
材料、前処理、第1電解、第2電解、第4電解、封孔処理、測定方法は実施例1と同様にし、第3電解を実施例2のアルカリ法で行った所、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は平均6.2Ω、断面平均硬さはHV374,耐摩耗性平均値は75.8ds/μm、平均皮膜厚さは30.1μm、色調は素地色系、耐食性は120時間でRN9.5以上、電磁波シールド効果は電界が36dB以上,磁界が34dB以上であった。
【実施例0035】
材料、前処理、第1電解、第3電解、第4電解、封孔処理、測定方法は実施例1と同様にし、第2電解は第一電解終了後ただちに第1電解の最終電圧38Vから、4Vに下げ、60秒保持を2回行い30Vとし、次に4V下げ―60秒保持を電圧10Vまで繰り返し、その後8V,6V,4Vと順次下げ、この時の保持時間は各120秒で、13分で4Vになり、更に3Vで2分、2V4分行い合計19分で終了し、取り出し水洗を十分に行い、次工程に進めた結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は平均0.28Ω、断面平均硬さはHV358,耐摩耗性平均値は78.3ds/μm、平均皮膜厚さは30.3μm、色調は素地色系、耐食性は120時間でRN9.5以上、電磁波シールド効果は電界が38dB以上,磁界が35dB以上であった。
【比較例1】
【0036】
材料、前処理、第1電解、第4電解、封孔処理及び皮膜の計測は実施例1と同様に行い、第第2,3電解を除き第4電解処理を行い表面観察するとスポーリングが発生し、皮膜が火山の噴火口の様に見られたので以後の工程を中止した。
【比較例2】
【0037】
材料、前処理、第4電解、封孔処理及び皮膜の計測は実施例1と同様に行い、第1電解を硫酸15%、電流密度1.0~1.1A/dm、電解電圧14~16V、浴温19~20℃、電解時間60分、電解終了後十分水洗をし、第2,3電解を除き、第4電解、封孔処理を行った結果、均一な濃い褐色となり、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は10Ω以上の絶縁体で、硬さはヌープ式の断面平均硬さHV290、耐摩耗性は39ds/μm、平均皮膜厚さは20μm、耐食性はRN10で腐食無し、この製法では本発明が目的とする材料が得られない。
【実施例0038】
材料、前処理、第2電解、第3電解、第4電解、封孔処理及び皮膜の計測は実施例1と同様に行い、第1電解の液組成は同じで、電解条件をPRパルス波形で、プラス側電流密度を2.0A/dm、マイナス側の電流密度を0.5A/dm、プラス側最大電圧35V、マイナス側最大電圧-15Vで、1パルスを3.3msとし、プラス側を20パルス、マイナス側を3パルスとし、極性が変わるときに3パルス分の休止時間を入れ、これを1サイクルとして、液温25±1℃、電解時間70分処理し、以後第2、第3、第4電解、封孔処理と進めた結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は6.27Ω、平均皮膜さはHV375、耐摩耗性80ds/μm、平均皮膜厚さは21μm、色調は濃い褐色系、耐食性は120時間でRN9.8以上、電磁波シールド効果は電界が39dB,磁界が35dBとなった。
【比較例4】
【0039】
材料、前処理、第1電解、第2電解、第3電解、封孔処理及び皮膜の計測は実施例1と同様に行い、第4電解を除いた結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は10Ω以上で、顕微鏡断面測定法による平均皮膜さはHV372で、平均皮膜厚さは19μm、色調は褐色、耐食性は120時間でRN9.8以上、耐摩耗性は71ds/μm電磁波シールド効果は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の材料はアルミニウムの陽極酸化皮膜で1×10Ω以下の低抵抗の皮膜とHV450以上の硬さを併せ持つことにより、導電性がある軽量の傷つきにくい筐体、電子機器における静電気のスパークによる破損防止、500KHz~1000MHzまでの特に磁界のシールド効果、300℃‐2週間と、500℃‐1時間の加熱処理で色差ΔE3.0以下の耐熱性を持ち未利用エネルギー温度帯材料として軽量で硬い摺動性のある導体材料として使用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】 第1電解により生成した陽極酸化皮膜の全体像
図2】 第1電解により生成した陽極酸化皮膜の表面、断面の模式図
図3】 第2電解により微細孔の底部位(バリヤー層)を除去した時の模式図
図4】 第3電解により陽極酸化皮膜の微細孔の底に再度皮膜を生成した状態の模式図
図5】 第4電解により陽極酸化皮膜の微細孔中に金属析出した状態の模式図
図6】 直流方式4端子測定方法の模式図
【符号の説明】
【0042】
1.微細孔 2.壁
3.素材(アルミニウム) 4.多孔質層
5.バリヤー層 6.再皮膜
7.微細孔中への金属析出 8.抵抗計:RM3548
9.直流定電圧電源 10.電圧系
11.金めっき電極 12.陽極酸化皮膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
【実施例4】
材料、前処理、第1電解、第3電解、第4電解、封孔処理、測定方法は実施例1と同様にし、第2電解は第一電解終了後ただちに第1電解の最終電圧38Vから、4Vに下げ、60秒保持を2回行い30Vとし、次に4V下げ―60秒保持を電圧10Vまで繰り返し、その後8V,6V,4Vと順次下げ、この時の保持時間は各120秒で、13分で4Vになり、更に3Vで2分、2V4分行い合計19分で終了し、取り出し水洗を十分に行い、次工程に進めた結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は平均0.28Ω、断面平均硬さはHV358,耐摩耗性平均値は78.3ds/μm、平均皮膜厚さは30.3μm、色調は素地色系、耐食性は120時間でRN9.5以上、電磁波シールド効果は電界が38dB以上,磁界が35dB以上であった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
【実施例5】
材料、前処理、第2電解、第3電解、第4電解、封孔処理及び皮膜の計測は実施例1と同様に行い、第1電解の液組成は同じで、電解条件をPRパルス波形で、プラス側電流密度を2.0A/dm、マイナス側の電流密度を0.5A/dm、プラス側最大電圧35V、マイナス側最大電圧-15Vで、1パルスを3.3msとし、プラス側を20パルス、マイナス側を3パルスとし、極性が変わるときに3パルス分の休止時間を入れ、これを1サイクルとして、液温25±1℃、電解時間70分処理し、以後第2、第3、第4電解、封孔処理と進めた結果、皮膜表面とアルミニウム素地の電気抵抗は6.27Ω、平均皮膜硬さはHV375、耐摩耗性80ds/μm、平均皮膜厚さは21μm、色調は濃い褐色系、耐食性は120時間でRN9.8以上、電磁波シールド効果は電界が39dB,磁界が35dBとなった。