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特開2023-73934ネット用アームの角度調整が可能なネット用ブラケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073934
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ネット用アームの角度調整が可能なネット用ブラケット
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/00 20060101AFI20230519BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20230519BHJP
   E04G 5/06 20060101ALI20230519BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
E04G5/00 301D
E04G21/32 A
E04G5/06 P
F16B5/07 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021198889
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】516046709
【氏名又は名称】▲高▼井産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 利明
(72)【発明者】
【氏名】楊 振華
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001HA02
3J001HA08
3J001HA09
3J001JD36
3J001KA12
3J001KA14
3J001KB04
(57)【要約】
【課題】建築現場の外壁工事では、建物の壁面と足場板の間隙は30~50cm程度であるが、間隙を30cm以下にするよう指導があり、従来品の30~50cmの調整機能を持つネットブラケットでは、アームを建物の壁面に向かって左右斜めにアームの方向を変えてアームの先端が壁面に当たらないようにする必要があった。また、軽量で使用しないときには小さく収納できるネットブラケットが望まれていた。
【解決手段】ネットブラケットのアームの長さ調整に加え、アームの角度を水平方向から垂直方向に段階的に立てて固定できるようにし、ネットブラケットを取り付ける仮設足場の単管パイプからアームの先端までの長さを短くできるようにした。また、ブラケット本体に軽量化の穴とブラケット本体内にアームが収納できる長穴を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築現場の外壁工事の足場での工具などの落下を防止する落下防止用安全ネットを取り付けるネット用ブラケットであって、
足場に固定されるブラケット本体と、
建築物の壁面に向かって伸びるように前記ブラケット本体に取り付けられたネット用アームと、を備え、
前記ネット用アームは、基端部をブラケット本体で支えられるように構成され、
基端部の前記ブラケットによる支持位置を上下に変更することにより前記ネット用アームの傾斜角度を水平方向から垂直方向に調整できる、ことを特徴とするネット用ブラケット。
【請求項2】
前記ブラケット本体には、前記ネット用アームの基端部よりも前側の下面を支える支持部が形成されている、ことを特徴とする請求事項1記載のネット用ブラケット。
【請求項3】
前記ネット用アームは長さを調整できるようにスライドパイプ構造を有している、ことを特徴とする請求項1又は2記載のネット用ブラケット。
【請求項4】
前記ブラケット本体には上下方向に伸びる長穴が形成され、この長穴の後側には支持位置変更用の凹部が設けられていて、
前記ネット用アームは、基端部に通され又は設けられ、前記長穴内に入れられた調整シャフトの支持位置を長穴の上端部から凹部に変更することにより前記ネット用アームの傾斜角度を水平方向から垂直方向に調整できる、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のネット用ブラケット。
【請求項5】
前記凹部は上下方向に複数個設けられている、ことを特徴とする請求項4記載のネット用ブラケット。
【請求項6】
前記ブラケット本体は、それぞれに前記長穴が形成された一対の側板部を有している、ことを特徴とする請求項4又は5記載のネット用ブラケット。
【請求項7】
前記ブラケット本体は後方に開口していて、この開口の下部に足場の単管パイプを挟むように形成された一対の取り付けた単管パイプ押さえを有する、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は記載のネット用ブラケット。
【請求項8】
前記ネット用アームの調整シャフトを前記長穴の下端部に移動させることにより、前記ネット用アームを立てた状態でブラケット本体内に収納できるように構成されている、ことを特徴とする請求項4、5又は6記載のネット用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場などの仮設足場と建物の壁面との間に使用する転落・墜落・落下防止用安全ネットを取り付けるブラケットで、U字型のブラケット本体に足場のポール(単管パイプ)に固定するためのクランプと長さが調整できるネット用アームを有するネット用ブラケットの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築現場の外壁工事では建造物の外壁に沿って仮設足場が組み立てられ、この仮設足場を利用して作業を行なっている。仮設足場では建物側のポール(単管パイプ)と外側のポール(単管パイプ)間に足場板が設置される。この足場板と建築物には、作業員の作業性を考え概ね30~50cm程度の間隙が設けられている。そのため、その間隙に作業員が建築部材や工具などを落下した際の危険を防止する安全ネットを設置することが義務付けられており、この安全ネットを取り付ける器具をネット用ブラケットと一般に称されている。従来品のネット用ブラケットは、30~50cm程度の間隙に合わせてネットブラケットのネット用アームを伸縮する機能とネットブラケットを使用しないときにネット用アームを垂直に立てることができる機能を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3-115764
【特許文献2】特開平7-317298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物側のポール(単管パイプ)に通常垂直方向にネット用ブラケットを固定し、足場板から建物の壁面までの間隙に応じて建物の壁面に向かって伸びるネット用アームの長さを調整する。特許文献1及び特許文献2はいずれも30~50cmの間隙に応じたネット用アームの調整機能を有しているが、「足場先行工法に関するガイドライン」では、安全性を考慮し「建物と足場の作業相との間隔は、30センチメートル以下とすること。」とある。
従来のネット用ブラケットで30cm以下の間隙に安全ネットを設置する場合は、既存の30~50cm幅に調整できるネット用ブラケットでは、ネット用アームを建物の壁面に向かって左右斜め方向に伸びるように建物側のポール(単管パイプ)にネット用ブランケットを取り付け、ネット用アームの先端が建物の壁面に当たらないようにしている。
【0005】
また、クランプで単管パイプにネット用ブラケットを固定するが、ネット用アームを30~50cm水平方向に延ばすため、クランプ1か所の固定では、重量のある物体が落下した場合、長く伸びたネット用アームに斜め方向や回転する力がかかると十分な固定力が得られない心配がある。
【0006】
ネット用ブラケットは高所で使用するため、ネット用ブラケットに使用するボルトのナットの緩みによる落下も安全上大きな問題になる。安全ネットの網目は2~3cm程度なので、それより小さいナットは安全ネットの網目を通り抜け、下にいる人に重大な危害を及ぼす恐れがある。
【0007】
建築現場の仮設足場では、少なくとも数十個、多ければ数百個単位でネット用ブラケットが使用される。従来のネット用ブラケットは1個の重量が2~4kgあり、高所で使用していることから、安全面に対して軽量化への要望が強い。また、仮設業者は種々の資材を大量に保管しているので、使用しないときには軽量でコンパクトになるネット用ブラケットが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的の少なくとも1つを達成するため、建築現場の外壁工事の足場で工具などの落下防止用の安全ネットを取り付けるネット用ブラケットは、足場に固定されるブラケット本体と、建築物の壁面に向かって伸びるように前記ブラケット本体に取り付けられたネット用アームと、を備え、前記ネット用アームは、基端部をブラケット本体で支えられるように構成されていて、基端部の前記ブラケットによる支持位置を上下に変更することにより前記ネット用アームの傾斜角度を水平方向から垂直方向に調整できる、ことを特徴とするものである。
【0009】
前記ブラケット本体には、前記ネット用アームの基端部よりも前側の下面を支える支持部を形成しておくことができる。
【0010】
ネット用アームは長さを調整できるようにスライドパイプ構造を有している、ことを特徴とする。
【0011】
ブラケット本体には上下方向に伸びる長穴が形成され、この長穴の後側には支持位置変更用の凹部が設けられていて、前記ネット用アームは、後端部に設けられ、前記長穴内に入れられた調整シャフトの支持位置を長穴の上端部から凹部に変更することにより前記ネット用アームの傾斜角度を水平方向から垂直方向に調整できる、ことを特徴とする。
【0012】
前記凹部は上下方向に複数個設けられている、ことを特徴とするネット用ブラケット。
【0013】
前記ブラケット本体は、それぞれに前記長穴が形成された一対の側板部を有している、ことを特徴とするネット用ブラケット。
【0014】
前記ブラケット本体は後方に開口していて、この開口の下部に足場の単管パイプを挟むように取り付けた単管パイプ押さえを有する、ことを特徴とするネット用ブラケット。
【0015】
前記ネット用アームの調整シャフトを前記長穴の下端部に移動させることにより、前記ネット用アームを立てた状態でブラケット本体内に収納できるように構成されている、ことを特徴とするネット用ブラケット。
【発明の効果】
【0016】
ネット用アームを30cmまで縮めた後、更にネット用アームを水平方向から垂直方向に角度を上げることにより、足場板から建築物の壁面までの幅が30cm以下の仮設足場にも、ネット用アームの取り付け方向を変えることなく、クランプが固定できる。
【0017】
例えば、ブラケット本体に単管パイプ押さえを設けるにより、ネット用アームへの斜め方向や回転する力に対し、より強固に固定できる。
【0018】
例えば、クランク止めボルト、蝶ねじの先端の溶接肉盛や、ゆるみ止めナットを使用することで、ナットの落下による危険を防止した。
【0019】
例えば、ブラケット本体の両側面に複数の軽量化穴とブラケット本体にネット用アームを収納するための長穴を設けることによりコンパクトな収納性が得られ、総重量(1.2kg程度)が軽減された。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のネット用ブラケットを単管パイプに取り付けた場合の側面図である。
図2】本発明のネット用ブラケットの平面図である。
図3】本発明のネット用ブラケットのネット用アームをブラケット本体に収納した側面図である。
図4】本発明の実施例でネット用ブラケットのネット用アームを縮め、ネット用アームを水平にした側面図である。
図5】本発明の実施例でネット用ブラケットのネット用アームを縮め、ネット用アームを水平から2段階高く傾斜した側面図である。
図6】本発明の実施例でネット用ブラケットのネット用アームを縮め、ネット用アームを水平から3段階高く傾斜した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を、以下に図面を参照しながら説明する。本発明の安全ネットを取り付けるネット用ブラケット1は金属製で、図1図2に示すように、ブラケット本体3と、このブラケット本体3に後端側又は基端側に取り付けられたネット用アーム5と、ブラケット本体3の後ろ側に設けられたクランプ7と、を備えている。
ブラケット本体3は、所定の間隔を有して対向するように配置された一対の側面プレート(側板部)9、9と、この側面プレート9、9の前端縁を連結する前側プレート11と、を一体的に有し、上面、後面及び底面で開孔するU字型の枠状に形成されていて、クランプ7はブラケット本体3の側面プレート9、9の後端縁の上端部に一体的に形成された取り付け部13にボルト15及びゆるみ止めナット17を用いて取り付けられている。
【0022】
ブラケット本体3のそれぞれの側面プレート9、9には、上下方向に伸びる長穴19が形成されていて、この長穴19の後ろ側の上部には凹状のアーム止め溝21、23、が形成されていて、長穴19の上端部27、アーム止め溝21、23、25により4つのアーム位置決めが設けられている。
【0023】
前側プレート11の上端部は、折り返されてアーム支持部29を形成している。また、側面プレート9、9の後ろ、後端部の肩にはハの字状に開くように単管パイプ押さえ片31が形成されている。なお、一対の側面プレート9、9の底部及び上端部には、補強部33、35が設けられていて、上端の補強部35にはフック37が形成されている。図中39は軽量化穴である。
【0024】
図2で示すように、ネット用アーム5は外パイプ41と内パイプ43から成るスライドパイプを有し、外パイプ41に内パイプ43を挿入することにより、アーム5の長さを調整し、外パイプ41の先端部に配置されている蝶ネジ45をねじ込むことにより、外パイプ41から適宜の長さ突出するように調整された内パイプ43を固定する。内パイプ43にはスライド溝47があり、挿入された内パイプ43を蝶ネジ45で締めることにより、外パイプ41内で内パイプ43が自由にスライドしたり、回転するのを防ぐ。なお、内パイプ43の先端部にはフック49が設けられている。
【0025】
外パイプ41の基端部には、軸通し孔51、51が径方向に形成されていて、一対の長穴19、19と軸通し孔51、51に蝶ネジ53(調整シャフト)を通すことにより、外パイプ41はこの蝶ネジ53を中心として揺動できるようにブラケットに取り付けられている。蝶ネジ53の頭部と一方の側面プレート9の間にはスペーサー55が配置され、蝶ネジの53の先端部に取り付けられた蝶ナット57と他方の側面プレート9との間にもスペーサー55、55が配置されている。また、側面プレート9、9と外パイプ41との間には、それぞれワッシャー59、59が配置されている。
【0026】
ネット用ブラケット1を使用して安全ネット63を張設する場合には、ブラケット本体3を足場の単管パイプ65に取り付ける。ブラケット本体3の単管パイプ65への取り付けは単管パイプ押さえ31が単管パイプ63を挟んだ状態でクランプ7を単管パイプ63に固定する。次に、蝶ネジ53を緩めて蝶ネジ53を適切な位置決め部に収め、外パイプ41の基端側の下面支持部で支えられる状態として、蝶ネジ53を締めこむ。ここで、蝶ネジ53が長穴19の上端部にはまっている場合には、ネット用アーム5は水平方向に伸びるようにブラケット本体3に取り付けられている(図4参照)。あるいは、蝶ネジ53をアーム止め溝21、23、25のいずれかに収める場合には、ネット用アーム5は上方を向いて伸びるように取り付けられることになる(図5は、真ん中のアーム止め溝23に蝶ネジ53を収めた状態を示し、図6は下側のアーム止め溝25に蝶ネジ53を収めた状態を示す)。そして、ブラケット本体3のフック37と内パイプ43のフック49に安全ネット63を掛けて張設する。即ち、内パイプ43の突出長さを調整することにより、ネット用アーム5の長さ調整を行い、蝶ネジ53の固定位置を調整することにより、ネット用アーム5の角度調整を行い、安全ネット63の張設を行うこととなる。
なお、図4ないし図6は内パイプ43を外パイプ41内に全体的に収めて、アーム5を最も短くした状態を示し、図1及び図2は内パイプ43を外パイプ41から最も引き出してアーム5を最も長くした図である
【0027】
図4は本発明の実施例で、単管パイプ65と建物の壁面67の間隙aにネット用アーム5を縮めた状態で単管パイプ65に取り付けた場合を示す。図5は長穴19のアーム止め溝23の凹部へ蝶ネジ53を移動する角度調整を示し、図6は長穴19のミゾ25の凹部へ蝶ネジ53を移動する角度調整を示す。単管パイプ65と建物の壁面67の間隙が図4のaより狭くなった図5のb、図6のcの場合、ネット用アーム5を垂直方向に立てて、安全ネット63を張設する。
【0028】
仮設足場の壁側の単管パイプ65にブラケット本体3を固定するクランク止めボルト61、蝶ねじ53の先端を溶接肉盛し、クランプ7とブラケット本体3を接合するボルト15のナットをゆるみ止めナット17にした。
【0029】
ブラケット本体5の両側面に複数の軽量化穴39とブラケット本体3にネット用アーム5を収納するための長穴19を設け、コンパクトな収納性と総重量を軽減した。
【0030】
なお、図3に示すように、蝶ネジ53を緩めて、長穴19下端部に移動させることにより、ネット用アーム5をほぼ垂直に立ててブラケット本体3に収める。
【符号の説明】
【0030】
1 ネット用ブラケット
3 ブラケット本体
5 ネット用アーム
7 クランプ
9 側面プレート
11 前側プレート
13 取り付け部
15 ボルト
17 ゆるみ止めナット
19 長穴
21 アーム止め溝
23 アーム止め溝
25 アーム止め溝
27 上端部
29 アーム支持部
31 単管パイプ押さえ
33 補強部
35 補強部
37 フック
39 軽量化穴
41 外パイプ
43 内パイプ
45 蝶ネジ
47 スライド溝
49 フック
51 軸通し孔
53 蝶ネジ
55 スペーサー
57 蝶ナット
59 ワッシャー
61 クランク止めボルト
63 安全ネット
65 単管パイプ
67 壁面
69 作業員
図1
図2
図3
図4
図5
図6