(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073937
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域のリアルタイム潮流情報観測システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A01K 79/00 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
A01K79/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203612
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0157568
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521549062
【氏名又は名称】ジ・シ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GC Co.,Ltd
【住所又は居所原語表記】3, Yangyeon-ro, Yeonje-gu, Busan, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】金 男 洙
(72)【発明者】
【氏名】李 榮 根
(72)【発明者】
【氏名】林 大 燮
(72)【発明者】
【氏名】ナム,キョン テ
【テーマコード(参考)】
2B105
【Fターム(参考)】
2B105AG03
2B105AG12
2B105AJ01
2B105HA09
2B105PA05
2B105PA09
2B105PA11
2B105PA15
2B105PA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】広範囲な海域の潮流情報を連続的ながらも精巧に観測できるシステム及び方法を提供する。
【解決手段】漁具に備えられ、漁具ブイ位置情報を無線送出する位置発信装置が付着して電子化された電子漁具ブイと、前記位置発信装置から無線送出される漁具ブイ位置情報を収集し、電子漁具ブイの移動履歴を分析し、前記電子漁具ブイが位置する海域の流向及び流速などの潮流情報を生成及び登録する陸上官制局の陸上収集サーバーと、を含み;前記電子漁具ブイの位置発信装置は、陸上収集サーバー及びメイン通信網に漁具ブイ位置情報を無線送信する間に通信不能状態が発生すると、サブ通信網を介して陸上収集サーバーに漁具ブイ位置情報を無線送信することを特徴とする、電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
漁具に備えられ、漁具ブイ位置情報を無線送出する位置発信装置(110)が付着して電子化された電子漁具ブイ(100)と、前記位置発信装置(110)から無線送出される漁具ブイ位置情報を収集し、電子漁具ブイ(100)の移動履歴を分析し、前記電子漁具ブイ(100)が位置する海域の流向及び流速などの潮流情報を生成及び登録する陸上官制局の陸上収集サーバー(200)と、を含み;
前記電子漁具ブイ(100)の位置発信装置(110)は、陸上収集サーバー(200)及びメイン通信網(300)に漁具ブイ位置情報を無線送信する間に通信不能状態が発生すると、サブ通信網(400)を介して陸上収集サーバー(200)に漁具ブイ位置情報を無線送信することを特徴とする、電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測システム。
【請求項2】
前記位置発信装置(110)から前記陸上収集サーバー(200)に無線送信する漁具ブイ位置情報は、電子漁具ブイ(100)の固有識別情報及び位置検出時間のデータを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測システム。
【請求項3】
前記電子漁具ブイ(100)は、漁具のうち固定刺網と流刺網に連結され、
前記電子漁具ブイ(100)の位置発信装置(110)は、リアルタイムにGPS衛星から位置情報を受信するGPS受信部(111)と、固有識別情報を含めて漁具ブイ位置情報を格納する制御部(112)と、前記制御部(112)の漁具ブイ位置情報を無線で送出する無線通信部(113)と、前記制御部(112)の駆動のための駆動電源を供給する電源部(114)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測システム。
【請求項4】
前記電子漁具ブイ(100)の位置発信装置(110)は、正常状態では陸上収集サーバー(200)に直接、メイン通信網(300)を介してブイの固有識別情報及び位置検出時間を含む漁具ブイ位置情報を周期的に無線送信し、通信不能状態が発生すると、漁船用管制システム(410)の無線ルータ(411)又は管理船舶用管制システム(420)の無線ノード(421)を用いるサブ通信網(400)を介して陸上収集サーバー(200)に漁具ブイ位置情報を無線送信することを特徴とする、請求項1に記載の電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測システム。
【請求項5】
前記メイン通信網(300)は、前記位置発信装置(110)と陸上収集サーバー(200)とを連結する事業者LoRa網(301)からなり;
前記サブ通信網(400)は、前記位置発信装置(110)と漁船用管制システム(410)の無線ルータ(411)又は管理船舶用管制システム(420)の無線ノード(421)とを連結する私設LoRa網(401)と、前記漁船用管制システム(410)の無線ルータ(411)又は管理船舶用管制システム(420)の無線ノード(421)と陸上収集サーバー(200)とを連結する海上安全通信網402であるLTE-Mとから構成されることを特徴とする、請求項4に記載の電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測システム。
【請求項6】
電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測方法であって、
漁具に備えられる電子漁具ブイ(100)の位置発信装置(110)から漁具ブイ位置情報をメイン通信網(300)を介して陸上官制局の陸上収集サーバー(200)に無線送出する第1段階;及び
前記位置発信装置(110)から陸上収集サーバー(200)及びメイン通信網(300)に漁具ブイ位置情報を無線送信する間に通信不能状態が発生すると、サブ通信網(400)を介して陸上収集サーバー(200)に漁具ブイ位置情報を無線送信する第2段階;を含むことを特徴とする、電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測方法。
【請求項7】
前記第2段階は、前記メイン通信網(300)の通信不能状態が発生すると、漁船用管制システム(410)の無線ルータ(411)又は管理船舶用管制システム(420)の無線ノード(421)を用いるサブ通信網(400)を介して前記陸上収集サーバー(200)に漁具ブイ位置情報を無線送信する段階であることを特徴とする、請求項6に記載の電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域のリアルタイム潮流情報観測システム及び方法に関し、さらに詳細には、位置発信装置が装着された電子漁具ブイから収集される位置移動履歴を分析し、広範囲海域の流向及び流速などの潮流情報をリアルタイムに観測できるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、漁具(fishing gear)は、水中に入れ、魚などの対象物を直接捕獲及び採取するために用いる道具であり、代表的に刺網や筌などがある。
【0003】
このような刺網などの各種の漁具は、位置を容易に把握することは勿論のこと、船舶の安全な航路を誘導するために、ブイ(又は、浮具)を備えてその位置を表示している。
【0004】
特に、漁民が操業時に使用して捨てた廃漁具、廃漁網、廃綱などの海洋浮遊物により海洋安全事故、海洋環境破壊、漁業紛争などが起きている。
【0005】
このような状況を改善するために、漁具に位置発信装置を付着させ、位置収集、位置発信装置非付着漁具の海上引き揚げ処理、漁具を販売する船具店の販売履歴データ化、などの政府制度的レベルでの多大な努力がなされつつある。
【0006】
一方、ブイは海流により位置が移動する特徴があり、このようなブイの特徴を用いてリアルタイムに海洋環境を観測できる方案が活発に研究されている。このようなブイを用いて海洋環境を観測するシステムに関する先行技術として、韓国公開特許公報第10-2016-0105065号(参考文献1)が提案されたことがある。
【0007】
前記参考文献1は、漂流ブイを用いたリアルタイム海洋環境観測データ提供システム及びその方法に関し、多数のGPS人工衛星から受信した信号を分析して現在の位置を把握するGPS受信部、GPS受信部に受信された位置情報を用いて速度と方向を測定する観測部、海水の水温を測定する温度センサー及び海水の塩分を測定する塩分センサーを含む測定部、観測部で測定した速度情報及び方向情報、並びに測定部で測定した水温情報及び塩分情報を含む海洋観測情報を収集する海洋観測情報収集装置、海洋観測情報収集装置で収集した海洋観測情報を送信する通信装置を含む漂流ブイと、漂流ブイから送信された海洋観測情報に基づいて海洋観測情報の分析を行い、海洋観測情報の分析結果を提供する海洋情報管理サーバーと、使用者の操作に対応して海洋情報管理サーバーの海洋観測情報の分析結果を受信してディスプレーするスマート端末機と、を含むことを特徴とする。
【0008】
しかしながら、参考文献1の漂流ブイは、漁具に付着させ、漁具の流失したか否かを判断する用途ではなく、海洋観測用途のものであるため、その用途が制限的である。
【0009】
その上、前記参考文献1では、漂流ブイの海洋観測情報を、海洋観測情報分析を行う海洋情報管理サーバーに送信するために、通信装置が備えられているが、通信装置は海洋情報管理サーバーに単一通信網を介して海洋観測情報を送信しているため、当該単一通信網が無力化して通信不能状態に陥ると、海洋情報管理サーバーも漂流ブイの海洋観測情報の収集が不可能になり、連続的ながらも精巧な海洋観測情報分析が困難になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2016-0105065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、このような従来技術の問題点を解決するための本発明は、位置発信装置が装着された電子漁具ブイから収集されるブイの位置移動履歴を分析し、広範囲な海域の潮流情報をリアルタイムに観測しながらも、メイン通信が不能状態である場合にも迂回して電子漁具ブイ位置情報を送信できるため、広範囲な海域の潮流情報を連続的ながらも精巧に観測できるシステム及び方法を提供することに目的がある。
【0012】
なお、本発明は、位置発信装置が付着して電子化された複数の電子漁具ブイから収集されるGPS座標の位置移動履歴を分析し、リアルタイムに広範囲な海域の流向及び流速などの潮流情報を観測可能なシステム及び方法を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような技術的課題を解決するために本発明は;
【0014】
漁具に備えられ、漁具ブイ位置情報を無線送出する位置発信装置が付着して電子化された電子漁具ブイと、前記位置発信装置から無線送出される漁具ブイ位置情報を収集し、電子漁具ブイの移動履歴を分析し、前記電子漁具ブイが位置する海域の流向及び流速などの潮流情報を生成及び登録する陸上官制局の陸上収集サーバーと、を含み;前記電子漁具ブイの位置発信装置は、陸上収集サーバー及びメイン通信網に漁具ブイ位置情報を無線送信する間に通信不能状態が発生すると、サブ通信網を介して陸上収集サーバーに漁具ブイ位置情報を無線送信することを特徴とする、電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測システムを提供する。
【0015】
このとき、前記位置発信装置から前記陸上収集サーバーに無線送信する漁具ブイ位置情報は、電子漁具ブイの固有識別情報及び位置検出時間のデータを含むことを特徴とする。
【0016】
また、前記電子漁具ブイは、漁具のうち固定刺網と流刺網に連結され;前記電子漁具ブイの位置発信装置は、リアルタイムにGPS衛星から位置情報を受信するGPS受信部と、固有識別情報を含めて漁具ブイ位置情報を格納する制御部と、前記制御部の漁具ブイ位置情報を無線で送出する無線通信部と、前記制御部の駆動のための駆動電源を供給する電源部とを含むことを特徴とする。
【0017】
なお、前記電子漁具ブイの位置発信装置は、正常状態では陸上収集サーバーに直接、メイン通信網を介してブイの固有識別情報及び位置検出時間を含む漁具ブイ位置情報を周期的に無線送信し、通信不能状態が発生すると、漁船用管制システムの無線ルータ又は管理船舶用管制システムの無線ノードを用いるサブ通信網を介して陸上収集サーバーに漁具ブイ位置情報を無線送信することを特徴とする。
【0018】
このとき、前記メイン通信網は、前記位置発信装置と陸上収集サーバーとを連結する事業者LoRa網(Long Range網)からなり;前記サブ通信網は、前記位置発信装置と漁船用管制システムの無線ルータ又は管理船舶用管制システムの無線ノードとを連結する私設LoRa網と、前記漁船用管制システムの無線ルータ又は管理船舶用管制システムの無線ノードと陸上収集サーバーとを連結する海上安全通信網であるLTE-M(Long Term Evolution-Marine)とから構成されることを特徴とする。
【0019】
なお、本発明は;
【0020】
電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測方法であって、漁具に備えられる電子漁具ブイの位置発信装置から漁具ブイ位置情報を、メイン通信網を介して陸上官制局の陸上収集サーバーに無線送出する第1段階;及び、前記位置発信装置から陸上収集サーバー及びメイン通信網に漁具ブイ位置情報を無線送信する間に通信不能状態が発生すると、サブ通信網を介して陸上収集サーバーに漁具ブイ位置情報を無線送信する第2段階;を含むことを特徴とする、電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域リアルタイム流向及び流速観測方法も提供する。
【0021】
このとき、前記第2段階は、前記メイン通信網の通信不能状態が発生すると、漁船用管制システムの無線ルータ又は管理船舶用管制システムの無線ノードを用いるサブ通信網を介して前記陸上収集サーバーに漁具ブイ位置情報を無線送信する段階であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、漁具を用いて操業をする広範囲な海域(漁民たちの操業区域)で、漁具に付着しているブイの位置移動履歴を分析し、広範囲な海域の潮流情報をリアルタイムに観測し、操業に必要な潮流情報を当該漁民たちに提供するか又は関連機関に送信することにより、船舶の安全事故の発生時に人命の救助などの海洋安全に寄与することができ、蓄積された様々な位置の潮流情報を海水流動モデルに適用し、潮流及び海流のモデリング予測をさらに精巧化することに用いることができる。
【0023】
なお、本発明によれば、メイン通信網を介した漁具ブイ位置情報の送信が不可能な場合、迂回してサブ通信網を介して陸上収集サーバーに送信することができるので、広範囲な海域の潮流情報を連続して観測できる他、広範囲海域におけるリアルタイム流向及び流速などの観測も安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域のリアルタイム潮流情報観測システムの構成図である。
【
図2】本発明に係る電子漁具ブイの制御構成図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る電子漁具ブイの位置情報及び経路を示す画面例である。
【
図4】本発明の一実施例であり、バダヌリ海洋情報サービスのリアルタイム海洋観測ブイ(37箇所に限定)を示す画面例である。
【
図5】本発明の一実施例であり、高周波レーダ(HF-Radar)を用いた海流観測(レーダー設置地域に限定)を示す画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域のリアルタイム潮流情報観測システム及び方法は、添付の図面を参照して詳細に記述される実施例から、その特徴が理解できるであろう。
【0026】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、実施例を本文で詳細に説明する。但し、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物又は代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0027】
図1及び
図2によれば、本発明に係る電子漁具ブイの位置移動履歴分析を用いた広範囲海域のリアルタイム潮流情報観測システムは、漁具に備えられ、漁具ブイ位置情報を無線送出する位置発信装置110が付着して電子化された電子漁具ブイ100の位置を容易に把握することは勿論のこと、船舶の安全な航路を誘導するためのブイを用いてリアルタイムに広範囲な海域の流向及び流速などの潮流情報を収集及び観測できるシステムである。
【0028】
このような本発明は、漁民たちが漁具を用いた操業をする広範囲な海域(漁民たちの操業区域)の潮流情報をリアルタイムに収集できるので、操業に必要な潮流情報を当該漁民たちに提供するか又は関連機関に送信することによって、船舶の安全事故の発生時に人命の救助などの海洋安全に寄与することができ、蓄積された様々な位置の潮流情報を海水流動モデルに適用し、潮流及び海流のモデリング予測をさらに精巧化することに用いることができる
【0029】
このような本発明は、漁具に備えられ、漁具ブイ位置情報を無線送出する位置発信装置110が付着して電子化された電子漁具ブイ100と、前記位置発信装置110から無線送出される漁具ブイ位置情報を収集し、電子漁具ブイ100の移動履歴を分析し、前記電子漁具ブイ100が位置する海域の流向及び流速などの潮流情報を生成して自体データベースに登録する陸上官制局の陸上収集サーバー200とを含む。
【0030】
このとき、広範囲な海域の潮流情報をリアルタイムに観測するために、前記陸上収集サーバー200は、複数の電子漁具ブイ100から漁具ブイ位置情報を収集し、その位置移動履歴を分析する。
【0031】
また、前記電子漁具ブイ100の位置発信装置110は、陸上収集サーバー200及びメイン通信網300に漁具ブイ位置情報を無線送信する間に通信不能(又は通信異常)状態が発生すると、メイン通信網300とは別途に迂回可能なサブ通信網400を介して陸上収集サーバー200に漁具ブイ位置情報を無線送信し、連続的ながらも精巧に漁具ブイ位置履歴を分析することによって、潮流情報を観測することができる。
【0032】
以下、本発明の構成を具体的に説明する。
【0033】
まず、前記電子漁具ブイ100は、操業に使用する漁具に備えられ、漁具の位置を容易に把握することは勿論、船舶の安全な航路を誘導可能なものであり、電子漁具ブイ位置情報を陸上官制局の陸上収集サーバー200に送信可能にするために、位置発信装置110が付着している。
【0034】
一方、漁民たちが海上で操業する方法において、漁具は、大きく、旋刺網、固定刺網、流刺網などの3つがあるが、旋刺網は、漁船が直接動力を用いて刺網を移動させるため、潮流の流れを測定できない。したがって、本発明は、漁具のうち固定刺網と流刺網に位置発信装置110が付着している電子漁具ブイ100を連結し、これを用いて、漁具ブイ位置情報を収集することができる。
【0035】
このとき、前記電子漁具ブイ100の位置発信装置110は、リアルタイムにGPS衛星から位置情報を受信するGPS受信部111と、固有識別情報を含めて漁具ブイ位置情報を格納する制御部112と、前記制御部112の漁具ブイ位置情報を無線で送出する無線通信部113と、前記制御部112の駆動のための駆動電源を供給する電源部114とを含む。
【0036】
このとき、前記制御部112は、例えば、漁具の固有識別情報が格納される内蔵メモリーが備えられるマイコンから構成されてよく、前記無線通信部113は、遠隔地に漁具ブイ位置情報を送信できる長距離無線通信モジュールから構成されることが好ましく、前記電源部114は、バッテリー又は太陽電池から構成されてよい。
【0037】
このような構成により、位置発信装置110は、GPS衛星から受信するGPS座標を分析してリアルタイムに漁具ブイ位置情報をチェックし、当該位置情報を、無線通信部113を通じて、特定の時間又は一定の時間周期で陸上官制局の陸上収集サーバー200に送信できる。
【0038】
このとき、前記漁具ブイ位置情報は、当該ブイの固有識別情報と位置検出時間データを含む。なお、前記位置発信装置110は、電子漁具ブイ100又は位置発信装置110の状態を監視してチェックした状態情報を漁具ブイ位置情報と共に送信できる。
【0039】
また、前記電子漁具ブイ100の位置発信装置110は、漁具ブイ位置情報を周期的(例えば、数秒~数分単位)で送信して電源部114の電力消耗を最小化することが好ましく、前記陸上官制局の陸上収集サーバー200は、前記電子漁具ブイ100の位置発信装置110から定期的に送出される漁具ブイ位置情報(ブイの固有識別情報と位置検出時間を含む)が受信されると、ブイの位置移動履歴を分析し、電子漁具ブイ100が位置する海域の流向及び流速などの潮流情報を生成し、自体データベースに登録する。
【0040】
一方、前記電子漁具ブイ100の位置発信装置110は、正常状態では陸上収集サーバー200に 直接、メイン通信網300を介して、ブイの固有識別情報及び位置検出時間を含む漁具ブイ位置情報を周期的に無線送信し、通信不能状態が発生すると、メイン通信網300を使用せず、漁船用管制システム410の無線ルータ411又は管理船舶用管制システム420の無線ノード421を用いるサブ通信網400を介して、陸上収集サーバー200に漁具ブイ位置情報を無線送信する。
【0041】
この場合、電子漁具ブイ100の位置発信装置110は、メイン通信網300で漁具ブイ位置情報を送信しながらも、周期的に陸上収集サーバー200と正常な通信が行われているかを、通信感知信号の送受信を通じて状態監視することが好ましく、正常な通信感知信号の送受信が行われないと、通信不能状態と判断し、メイン通信網300に代わってサブ通信網400を介して漁具ブイ位置情報を陸上収集サーバー200に送信する。
【0042】
勿論、前記電子漁具ブイ100の位置発信装置110は、再び正常状態へと通信可能になると、メイン通信網300を介して陸上収集サーバー200に漁具ブイ位置情報を送信する。
【0043】
このとき、前記メイン通信網300は、LoRa通信網のうち、事業者LoRa網(例えば、SKT LoRa)301から構成し、前記サブ通信網400は、LoRa通信網のうち、私設LoRa網(例えば、Private LoRa)401と海上安全通信網402とから構成することが好ましい。
【0044】
前記LoRa(Long-Range Sub-Ghz Module)通信は、低電力・低費用・高信頼を要求するIoT(Internet of Things)サービスのためのもので、LoRa通信網技術は他の無線プロトコルに比べてはるかに長い範囲(可視距離が確保された環境で最大で21km)を有するので、多くのリピータ及びAPが不要であり、インフラ構築コストを下げることができ、3/4Gセルラーネットワークに比べてエンベデッド(embedded)アプリケーションのためのより高い拡張可能性とコスト効率性を提供することができる。
【0045】
また、前記サブ通信網400は、LoRa通信網のうち、私設LoRa網401と共に海上安全通信網402であるLTE-Mを用いて陸上収集サーバー200に漁具ブイ位置情報を送信する。前記LTE-Mは、小さなモノのインターネット(IoST)に特化されたグローバル標準ネットワーク技術であるLET(Long Term Evolution)を用いた海上通信網である。
【0046】
このようなサブ通信網400を用いるために、前記漁船に搭載される漁船用管制システム410の無線ルータ411又は管理船舶に搭載される管理船舶用管制システム420の無線ノード421を用いる。そこで、前記電子漁具ブイ100の位置発信装置110は、メイン通信網300が通信不能状態である場合、漁船用管制システム410の無線ルータ411又は管理船舶に搭載される管理船舶用管制システム420の無線ノード421と私設LoRa網401を介して漁具ブイ位置情報を送信し、前記漁船用管制システム410の無線ルータ411又は管理船舶に搭載される管理船舶用管制システム420の無線ノード421は、受信した漁具ブイ位置情報を海上安全通信網402なるLTE-Mを介して陸上収集サーバー200に送信する。
【0047】
すなわち、海上に位置している電子漁具ブイ100から陸上収集サーバー200にデータを送信する方法は、LoRa無線通信を基本として使用し、海上環境などの外部要因によりLoRa無線通信が不可能な場合、代替通信手段として、電子漁具ブイ100から船舶(無線ノード/ルータ)までは私設LoRa通信を、船舶から陸上収集サーバー200まではLET-M通信を用いる。
【0048】
一方、
図3は、本発明の一実施例に係る電子漁具ブイの位置情報及び経路を示す画面の例である。これは、電子漁具ブイ100から収集する位置情報を用いてその位置移動履歴を分析することによって可能となり、その経路を連続して精密に追跡することができ、これにより、リアルタイムに広範囲海域の潮流情報観測が可能となる。
【0049】
なお、
図4は、本発明の一実施例であり、バダヌリ海洋情報サービスのリアルタイム海洋観測ブイ(37箇所に限定)を示す画面の例であり、
図5は、本発明の一実施例であり、高周波レーダーを用いた海流観測(レーダー設置地域に限定)を示す画面の例である。
【0050】
現在、国立海洋調査院では韓国の海上37箇所(2021.10.26基準)に限定して潮流情報を観測しているが、位置発信装置110を漁具ブイに付着させることを法制化し、漁具実名制の施行業種を拡大することにより、漁民が操業をする海域の潮流情報をリアルタイムに収集することが可能になる。
【0051】
収集されたリアルタイム潮流情報を関連機関に送信することにより、船舶の安全事故の発生時に人命救助などの海洋安全に寄与することができ、蓄積された様々な位置の潮流情報を海水流動モデルに適用し、潮流及び海流モデリング予測をさらに精巧化することができる。
【0052】
以上のように、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、本発明の実施例と実質的に均等な範囲にあるものまでに本発明の権利範囲が及ぶ。
【符号の説明】
【0053】
100 電子漁具ブイ
110 位置発信装置
111 GPS受信部
112 制御部
113 無線通信部
114 電源部
200 陸上収集サーバー
300 メイン通信網
301 事業者LoRa網
400 サブ通信網
401 私設LoRa網
402 海上安全通信網
410 漁船用管制システム
411 無線ルータ
420 管理船舶用管制システム
421 無線ノード