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特開2023-73944情報処理方法、情報処理装置、プログラム、及び計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073944
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置、プログラム、及び計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230519BHJP
   G01C 7/06 20060101ALI20230519BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20230519BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
G01C15/00 101
G01C7/06
G01C15/00 102C
G01C15/06 T
G01B21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067695
(22)【出願日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2021186060
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592259060
【氏名又は名称】サンリツオートメイシヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】星野 心
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴彦
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA01
2F069AA13
2F069AA71
2F069CC02
2F069GG07
2F069GG09
2F069QQ01
(57)【要約】
【課題】配管形状の構造物の沈下の兆候を検出するための情報を提供する。
【解決手段】データ取得部40は、配管の内部の1又は複数の地点において配管の内壁形状を示す点群データを計測する内部計測器が生成した点群データと、配管の内部における内部計測器の位置を示す位置データを計測する固定計測器が生成した位置データとを取得する。位置算出部41は、点群データと位置データとに基づいて、配管の断面の中心点の位置を算出する。出力部42は、内部計測器の進行方向の距離と、配管の入口における配管の中心点を基準とする配管の中心点の高さとの関係を示す情報を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の内部の1又は複数の地点において前記配管の内壁形状の空間座標情報を有する点群データを計測する内部計測器が生成した前記点群データを取得するステップと、
前記配管の内部における前記内部計測器の位置を示す位置データを計測する固定計測器が生成した前記位置データを取得するステップと、
前記点群データと前記位置データとに基づいて、前記配管の断面の中心点の位置を算出するステップと、
前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記配管の中心点の高さと前記配管の入口からの距離との関係を示す情報を出力するステップと、を含む、
情報処理方法。
【請求項2】
前記中心点の位置を算出するステップは、
前記位置データに基づいて、前記複数の地点それぞれにおける前記点群データの座標系を、前記固定計測器を基準とする統一座標系の点群データに変換するステップと、
前記配管の入口からの距離が異なる複数の地点において前記統一座標系の点群データを抽出した複数の抽出点群データを生成するステップと、
前記複数の抽出点群データそれぞれの中心座標を前記配管の断面の中心点の位置として算出するステップと、を含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記固定計測器が航法衛星から受信した信号を用いて前記固定計測器の位置を取得するステップと、
前記固定計測器の位置を基準として、前記統一座標系を緯度及び経度を含む絶対座標系に変換するステップと、をさらに備える、
請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記点群データに変換するステップは、
前記複数の地点それぞれにおける前記点群データを楕円近似して得られた楕円に基づいて、前記配管の中心点を算出するステップと、
複数の前記中心点から、前記配管の中心線を推定するステップと、
推定した前記中心線に基づいて、前記複数の地点それぞれにおける前記内部計測器のヨー(Yaw)角を推定するステップと、をさらに含む、
請求項2又は3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記点群データに変換するステップは、前記内部計測器が備える姿勢角センサの計測結果に基づいて、前記複数の地点それぞれにおける前記内部計測器のロール(Roll)角とピッチ(Pitch)角とを取得するステップを含み、
前記統一座標系の点群データに変換するステップにおいて、前記複数の地点それぞれにおける前記ヨー角、ロール角、及びピッチ角にさらに基づいて、前記複数の地点それぞれにおける前記点群データの座標系を、前記固定計測器を基準とする統一座標系の点群データに変換する、
請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記情報を出力するステップにおいて、前記配管の入口から前記内部計測器に向かう方向の距離を第1の軸、前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記配管の中心点の高さを第2の軸とするプロットデータを出力する、
請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記情報を出力ステップにおいて、前記配管の入口から前記内部計測器に向かう方向の距離を第1の軸とし、(1)前記内部計測器の上面から前記配管の天井までの長さ、(2)前記内部計測器の下面から前記配管の底部までの長さ、及び(3)前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記内部計測器の水平方向の移動距離のうち、少なくとも一つを第2の軸とするプロットデータをさらに出力する、
請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記情報を出力するステップにおいて、前記配管の入口から前記内部計測器に向かう方向の距離を第1の軸とし、前記楕円近似して得られた楕円に基づいて算出された前記配管の変形度合いを示す値を第2の軸とするプロットデータをさらに出力する、
請求項6記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記内部計測器は、前記固定計測器が前記内部計測器の位置を計測するために参照する複数のターゲットを備えており、
前記固定計測器は、前記内部計測器が備える複数のターゲットのうち観測可能なターゲットの位置に基づいて前記内部計測器の位置を示す位置データを計測する、
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
配管の内部の1又は複数の地点において前記配管の内壁形状を示す点群データを計測する内部計測器が生成した前記点群データを取得する機能と、
前記配管の内部における前記内部計測器の位置を示す位置データを計測する固定計測器が生成した前記位置データを取得する機能と、
前記点群データと前記位置データとに基づいて、前記配管の断面の中心点の位置を算出する機能と、
前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記配管の中心点の高さと前記配管の入口からの距離との関係を示す情報を出力する機能と、を実現させる、
プログラム。
【請求項11】
配管の内部の1又は複数の地点において前記配管の内壁形状を示す点群データを計測する内部計測器が生成した前記点群データと、前記配管の内部における前記内部計測器の位置を示す位置データを計測する固定計測器が生成した前記位置データとを取得するデータ取得部と、
前記点群データと前記位置データとに基づいて、前記配管の断面の中心点の位置を算出する位置算出部と、
前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記配管の中心点の高さと前記配管の入口からの距離との関係を示す情報を出力する出力部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項12】
配管の内部の1又は複数の地点において前記配管の内壁形状の空間座標情報を有する点群データを計測する内部計測器と、
前記配管の内部における前記内部計測器の位置を示す位置データを計測する固定計測器と、
請求項11に記載の情報処理装置と、を含む、
計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラム、及び計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水道管や農業用排水管等の管形状の構造物のうち、検査員が管内に入ることができない構造物の径方向の変位を測定するための管内変位測定技術が提案されている。このような技術を用いることにより、地盤の振動、土圧、洪水や地震等による地盤の変形といった種々の外圧を受けることで部分的に変形した配管の直径の変位を測定することができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-196935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配管が埋設された後に配管自体の自重によって沈下すること等が原因で配管の入口から出口に至るまでの間の配管が施工時点よりも下がる場合がある。配管が沈下すると配管が排水不全となったり道路陥没の原因となったりするため、配管の沈下を測定することが望まれている。上記のような技術は配管の径方向の変異を測定できるものの、配管の沈下は測定することはできない。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、配管形状の構造物の沈下の兆候を検出するための情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、情報処理方法である。この方法は、配管の内部の1又は複数の地点において前記配管の内壁形状の空間座標情報を有する点群データを計測する内部計測器が生成した前記点群データを取得するステップと、前記配管の内部における前記内部計測器の位置を示す位置データを計測する固定計測器が生成した前記位置データを取得するステップと、前記点群データと前記位置データとに基づいて、前記配管の断面の中心点の位置を算出するステップと、前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記配管の中心点の高さと前記配管の入口からの距離との関係を示す情報を出力するステップと、を含む。
【0007】
前記中心点の位置を算出するステップは、前記位置データに基づいて、前記複数の地点それぞれにおける前記点群データの座標系を、前記固定計測器を基準とする統一座標系の点群データに変換するステップと、前記配管の入口からの距離が異なる複数の地点において前記統一座標系の点群データを抽出した複数の抽出点群データを生成するステップと、前記複数の抽出点群データそれぞれの中心座標を前記配管の断面の中心点の位置として算出するステップと、を含んでもよい。
【0008】
前記情報処理方法は、前記固定計測器が航法衛星から受信した信号を用いて前記固定計測器の位置を取得するステップと、前記固定計測器の位置を基準として、前記統一座標系を緯度及び経度を含む絶対座標系に変換するステップと、をさらに備えてもよい。
【0009】
前記点群データに変換するステップは、前記複数の地点それぞれにおける前記点群データを楕円近似して得られた楕円に基づいて、前記配管の中心点を算出するステップと、複数の前記中心点から、前記配管の中心線を推定するステップと、推定した前記中心線に基づいて、前記複数の地点それぞれにおける前記内部計測器のヨー(Yaw)角を推定するステップと、をさらに含んでもよい。
【0010】
前記点群データに変換するステップは、前記内部計測器が備える姿勢角センサの計測結果に基づいて、前記複数の地点それぞれにおける前記内部計測器のロール(Roll)角とピッチ(Pitch)角とを取得するステップを含んでもよく、前記統一座標系の点群データに変換するステップにおいて、前記複数の地点それぞれにおける前記ヨー角、ロール角、及びピッチ角にさらに基づいて、前記複数の地点それぞれにおける前記点群データの座標系を、前記固定計測器を基準とする統一座標系の点群データに変換してもよい。
【0011】
前記情報を出力するステップにおいて、前記配管の入口から前記内部計測器に向かう方向の距離を第1の軸、前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記配管の中心点の高さを第2の軸とするプロットデータを出力してもよい。
【0012】
前記情報を出力ステップにおいて、前記配管の入口から前記内部計測器に向かう方向の距離を第1の軸とし、(1)前記内部計測器の上面から前記配管の天井までの長さ、(2)前記内部計測器の下面から前記配管の底部までの長さ、及び(3)前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記内部計測器の水平方向の移動距離のうち、少なくとも一つを第2の軸とするプロットデータをさらに出力してもよい。
【0013】
前記情報を出力するステップにおいて、前記配管の入口から前記内部計測器に向かう方向の距離を第1の軸とし、前記楕円近似して得られた楕円に基づいて算出された前記配管の変形度合いを示す値を第2の軸とするプロットデータをさらに出力してもよい。
【0014】
前記内部計測器は、前記固定計測器が前記内部計測器の位置を計測するために参照する複数のターゲットを備えていてもよく、前記固定計測器は、前記内部計測器が備える複数のターゲットのうち観測可能なターゲットの位置に基づいて前記内部計測器の位置を示す位置データを計測してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、配管の内部の1又は複数の地点において前記配管の内壁形状を示す点群データを計測する内部計測器が生成した前記点群データを取得する機能と、前記配管の内部における前記内部計測器の位置を示す位置データを計測する固定計測器が生成した前記位置データを取得する機能と、前記点群データと前記位置データとに基づいて、前記配管の断面の中心点の位置を算出する機能と、前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記配管の中心点の高さと前記配管の入口からの距離との関係を示す情報を出力する機能と、を実現させる。
【0016】
本発明の第3の態様は、情報処理装置である。この装置は、配管の内部の1又は複数の地点において前記配管の内壁形状を示す点群データを計測する内部計測器が生成した前記点群データと、前記配管の内部における前記内部計測器の位置を示す位置データを計測する固定計測器が生成した前記位置データとを取得するデータ取得部と、前記点群データと前記位置データとに基づいて、前記配管の断面の中心点の位置を算出する位置算出部と、前記配管の入口における前記配管の中心点を基準とする前記配管の中心点の高さと前記配管の入口からの距離との関係を示す情報を出力する出力部と、を備える。
【0017】
本発明の第4の態様は、計測システムである。このシステムは、配管の内部の1又は複数の地点において前記配管の内壁形状の空間座標情報を有する点群データを計測する内部計測器と、前記配管の内部における前記内部計測器の位置を示す位置データを計測する固定計測器と、上述の情報処理装置と、を含む。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。また、プログラムを提供するため、あるいはプログラムの一部をアップデートするために、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、配管形状の構造物の沈下の兆候を検出するための情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係る計測システムの概要を説明するための図である。
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態に係る固定計測器が測定した内部計測器の位置データの一例を模式的に示す図である。
図4】統一座標系の点群データを模式的に示す図である。
図5】抽出点群データから配管の断面の中心点を算出する中心点算出処理を説明するための図である。
図6】実施の形態に係る変換部の内部構成を模式的に示す図である。
図7】実施の形態に係る変換部による内部計測器のヨー角推定処理を説明するための図である。
図8】実施の形態に係る出力部が出力する情報の一例を模式的に示す図である。
図9】実施の形態に係る出力部が出力する情報の別の例を模式的に示す図である。
図10】円柱形状の配管の潰れ度合いを説明するための模式図である。
図11】実施の形態に係る出力部が出力する情報のさらに別の例を模式的に示す図である。
図12】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図13】実施の形態に係る位置算出部が実行する中心点位置算出処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図14】第4の変形例に係る計測システムSを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態の概要>
図1は、実施の形態に係る計測システムSの概要を説明するための図である。以下、図1を参照して、実施の形態の概要を述べる。
【0022】
図1に示すように、実施の形態に係る計測システムSは、内部計測器Vと、固定計測器Mと、情報処理装置1とを備える。内部計測器Vは、配管Pの内部を移動しながら複数の地点において配管Pの内壁形状の空間座標情報を有する点群データを計測するための装置であり、例えば移動式のLiDAR(Light Detection And Ranging)計測装置や超音波センサ等である。また、固定計測器Mは配管Pの外側に設置されており、配管Pの内部を移動中の内部計測器Vの位置を示す位置データを計測するための装置であり、一例として固定式のLiDARである。なお、図1は内部計測器Vがキャタピラや車輪等の移動手段を備える場合の例を示しているが、内部計測器Vはこれに限られず、例えばドローン等の飛行装置であってもよい。
【0023】
図1に示す計測システムSにおいて、第1座標系C1は、固定計測器Mに対して固定した座標系であり、一例として固定計測器Mが備えるLiDARを原点とする座標系である。図1に示す計測システムSの例では、固定計測器Mが備えるLiDARのカメラの光軸がY軸、鉛直上向きがZ軸となる右手座標系となっており、Y軸は配管Pの長軸の方向と概ね一致する。なお、固定計測器Mも地面に対して固定されているため、第1座標系C1は静止した座標系と言える。なお、固定計測器Mが備えるLiDARは2DLiDARでも3DLiDARでもよい。また、固定計測器MはLiDARに替えて、あるいはそれに加えて、深度カメラを用いて内部計測器Vの位置を示す位置データを計測してもよい。
【0024】
また、第2座標系C2は、内部計測器Vに対して固定した座標系であり、一例として内部計測器Vが備えるLiDARを原点とする座標系である。図1に示す計測システムSの例では、内部計測器Vが備えるLiDARのカメラの光軸がy軸、内部計測器Vが水平な地面に置かれたときに鉛直上向きがz軸となる右手座標系となっている。内部計測器Vは配管P内を走行して移動するため、第1座標系C1から見ると、第2座標系C2は動いている座標系と言える。
【0025】
図1に示すように、配管P内には長年の使用により土砂等の堆積物Dがたまっており、内部計測器Vは堆積物Dの上を走行することになる。このため、内部計測器Vは配管Pの入口から出口に向かって概ねまっすぐ進むものの、堆積物Dの影響で姿勢が変化する。結果として、内部計測器Vに対して固定された第2座標系C2は、第1座標系C1から見ると、各軸の向きがランダムに変化する。
【0026】
内部計測器Vは配管P内を走行しながら配管Pの内部の1又は複数の異なる地点において配管Pの内壁形状に関するデータを測定する。したがって、内部計測器Vが測定するデータは、第1座標系C1から見ると、1又は複数の異なる地点における座標系のデータとなる。図1に示すように、内部計測器Vは、配管P内のある地点において、内部計測器Vの進行方向に向かってある程度奥行きを持ったデータとして内壁形状に関するデータを測定する。
【0027】
情報処理装置1は、固定計測器Mと内部計測器Vとのそれぞれが測定した情報を受信し、それらの情報に基づいて配管Pの長手方向に対して垂直な断面の中心点の軌跡を算出する。具体的には、以下の(1)~(6)の順に演算することにより、中心点の軌跡を算出する。
【0028】
(1)まず、情報処理装置1は、固定計測器Mが測定した位置データから、配管P内の1又は複数の地点における内部計測器Vの第1座標系C1における位置を算出する。
【0029】
(2)続いて、情報処理装置1は、内部計測器Vの第1座標系C1における位置に基づいて、1又は複数の地点におけて内部計測器Vが測定した点群データの座標系を、第2座標系C2から第1座標系C1に変換する。これにより、情報処理装置1は、内部計測器Vが配管P内の各位置で測定した点群データの座標系を第1座標系C1に統一することができる。
【0030】
(3)情報処理装置1は、内部計測器Vが配管P内の複数の位置で点群データを測定した場合、各位置で測定した点群データを第1座標系C1の下で連結し、一つの点群データを生成する。
【0031】
(4)情報処理装置1は、配管Pの入口からの距離が異なる複数の地点において第1座標系C1の点群データを抽出する。図1に示す例では配管Pの断面は概ね円形であるため、情報処理装置1が抽出した点群データは、円又は楕円の弧の少なくとも一部を含むデータとなる。
【0032】
(5)情報処理装置1は、配管Pの入口からの距離が異なる複数の地点における抽出した点群データに基づいて、各地点における配管Pの中心点を算出する。
【0033】
(6)情報処理装置1は、算出した各計測地点における中心点を配管Pの入口における配管Pの中心点を基準点として出力する。
【0034】
実施の形態に係る情報処理装置1は、配管P内を移動しつつ配管P内部を計測して得られた情報を統一した座標系における情報に変換してから配管Pの中心点の軌跡を算出することにより、配管形状の構造物の沈下の兆候を検出するための情報を計測システムSのユーザに提供することができる。
【0035】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は、記憶部2、通信部3、及び制御部4を備える。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってもよい。図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0036】
記憶部2は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0037】
通信部3は、情報処理装置1が固定計測器Mや内部計測器V等の外部の装置との間で情報をやり取りするための通信インタフェースであり、例えば既知のLAN(Local Area Network)モジュールやWi-Fi(登録商標)モジュールで実現されている。
【0038】
制御部4は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部2に記憶されたプログラムを実行することによってデータ取得部40、位置算出部41、出力部42、位置取得部43、及び座標変換部44として機能する。また、位置算出部41は、変換部410、生成部411、及び中心座標算出部412を含んでいる。
【0039】
なお、図2は、情報処理装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、情報処理装置1は、例えばクラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部4を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0040】
データ取得部40は、内部計測器Vが配管Pの内部を移動しながら1又は複数の地点において計測して生成した点群データを取得する。データ取得部40は、走行中の内部計測器Vから無線通信で点群データを取得してもよいし、計測を終了した内部計測器Vから事後的に無線又は記録媒体を介して点群データを取得してもよい。
【0041】
データ取得部40は、固定計測器Mが生成した内部計測器Vの位置を示す位置データも取得する。点群データと同様に、データ取得部40は、位置データを計測している固定計測器Mから無線で位置データを取得してもよいし、計測を終了した固定計測器Mから事後的に無線又は記録媒体を介して位置データを取得してもよい。
【0042】
位置算出部41は、点群データと位置データとに基づいて、配管Pの断面の中心点の位置を算出する。位置算出部41による中心点算出の詳細は後述するが、位置算出部41は、位置データに基づいて各点群データの座標系を統一することにより、配管Pの入口から出口に至るまでの内壁形状を統一した座標系における空間座標情報にすることで、配管Pの中心点の軌跡を算出する。
【0043】
出力部42は、配管Pの入口における配管Pの中心点を基準とする配管Pの中心点の高さと、配管Pの入口からの距離との関係を示す情報を出力する。具体的には、出力部42は、この情報を情報処理装置1に接続された図示しない表示装置や情報処理装置1のユーザが所持する端末(不図示)に出力する。これにより、情報処理装置1のユーザは、出力部42が出力した情報を見ることで、配管Pの沈下の兆候に気づくことができる。
【0044】
(配管Pの中心点の算出)
続いて、実施の形態に係る位置算出部41が実行する配管Pの中心点の算出処理について説明する。図2に示すように、位置算出部41は、変換部410、生成部411、及び中心座標算出部412を備える。
【0045】
まず、変換部410は、固定計測器Mが計測した内部計測器Vの位置データに基づいて、固定計測器Mが配管P内の1又は複数の地点それぞれにおいて計測した点群データの座標系を、固定計測器Mを基準とする第1座標系C1の点群データに変換する。以下、本明細書において、変換部410によって第2座標系C2の点群データから第1座標系C1の点群データに変換された点群データを「統一座標系の点群データ」と記載することがある。
【0046】
図3は、実施の形態に係る固定計測器Mが測定した内部計測器Vの位置データの一例を模式的に示す図であり、固定計測器MがLiDARを用いて測定した位置データの例を示す図である。図3において示す位置データは点群データであり複数の点から構成されている。図3に示す点群データを構成する各点は固定計測器Mからの相対的な距離が既知である。図示の都合上、図3に示す点群データは、LiDARを用いた計測における計測対象物の反射光の強度が異なる点群データは異なるコントラストとなるように表現されているが、固定計測器Mから距離が異なる点群データは異なる色となるように表現されてもよい。なお、固定計測器Mは、反射光の強度に応じてその計測対象物の座標を決定することができる。
【0047】
図3において、符号Tで示す円形状の領域は、内部計測器Vに設けられたターゲットTである。ターゲットTは、LiDARを用いた計測において照射される光を反射しやすい材料(例えば、反射板やプリズム)で作られており、点群データにおいて固定計測器Mが内部計測器Vの位置を計測するために参照される。なお、図3は内部計測器Vが1つのターゲットTを備える場合の例を示しているが。ターゲットTの数は1に限られず、内部計測器Vは複数のターゲットTを備えていてもよい。この場合、固定計測器Mは、内部計測器Vが備える複数のターゲットTのうち観測可能なターゲットT(すなわち、位置データに写り込んだターゲットT)の位置に基づいて内部計測器Vの位置を示す位置データを計測する。これにより、内部計測器Vが傾くことによって固定計測器Mから観測できないターゲットTが出現しても、固定計測器Mは観測できるターゲットTを起点として内部計測器Vの位置を計測することができる。
【0048】
図3において、破線で示す略円形P1及びP2は点群データではなく、説明の便宜のために付した図形である。略円形P1と略円形P2とに囲まれる領域は配管Pの内壁に対応し、略円形P1は略円形P2よりもMからの距離が近いため、大きな図形となっている。また、図3において一点鎖線で示す楕円形は内部計測器Vが存在する領域を示している。変換部410は、内部計測器Vを構成する点群データの距離から、固定計測器Mを基準とする内部計測器Vの距離、すなわち第1座標系C1における内部計測器Vの位置を取得することができる。
【0049】
図4(a)-(b)は、統一座標系の点群データを模式的に示す図である。具体的には、図4(a)は統一座標系である第1座標系C1における第2座標系C2の原点oの座標を示す図であり、図4(b)は複数の点群データを統一座標系である第1座標系C1において連結したデータを示す図である。
【0050】
図4(a)に示すように、変換部410は、固定計測器Mが計測した位置データに基づいて第2座標系C2の原点oの第1座標系C1における座標o(Xo,Yo,Zo)(Tはベクトル又は行列の転置)を算出する。これにより、例えば第2座標系C2における点Qの座標(x,y,z)は、第1座標系C1における座標(Xq,Yq,Zq)=(x+Xo,y+Yo,z+Zo)と表せる。
【0051】
詳細は後述するが、変換部410は、座標o(Xo,Yo,Zo)における内部計測器Vの姿勢、すなわち、座標o(Xo,Yo,Zo)における第2座標系C2の回転量を取得する。これにより、変換部410は、第1座標系C1に対して回転した第2座標系C2の座標を第1座標系C1に変換するための回転行列R(3行3列の行列)を算出することができる。これにより、変換部410は、まず第2座標系C2における点Qの座標(x,y,z)を回転行列Rで第1座標系C1との傾きがない座標系における座標に変換することができる。その後、変換部410は、第2座標系C2の原点oの第1座標系C1における座標o(Xo,Yo,Zo)に基づいて第2座標系C2で記述された点群データを統一座標系である第1座標系C1の点群データに変換する。
【0052】
変換部410は、配管P内の複数の地点において内部計測器Vが計測した第2座標系C2における点群データを統一座標系の点群データに変換して結合することにより、図4(b)に示すように統一座標系で記述した一つの点群データに変換することができる。
【0053】
生成部411は、配管Pの入口からの距離が異なる複数の地点において統一座標系の点群データを抽出した複数の抽出点群データを生成する。中心座標算出部412は、複数の抽出点群データそれぞれの中心座標をその地点における配管Pの断面の中心点の位置として算出する。
【0054】
図5(a)-(d)は、抽出点群データから配管Pの断面の中心点を算出する中心点算出処理を説明するための図である。具体的には、図5(a)は、第1座標系C1においてY座標がYtの地点における抽出点群データを示す図である。図5(a)-(d)に示す例において配管Pは円柱形状であるため、図5(a)中の上部は配管Pの内壁に沿って円形となっている。一方、配管Pの下部には堆積物が存在するため、図5(a)の下部は堆積物表面の形状が現れ、円形から外れた形状となっている。
【0055】
図5(b)は、第1座標系C1においてY座標をYtに固定した場合のXZ座標系において点群データを円近似した結果を示す図である。具体的には、図5(b)において、一点鎖線で示す円Wが、図5(b)に示す全ての点群データを使って円近似した結果を示している。また、点Cwは、円Wの中心を示している。
【0056】
図5(b)に示すXZ座標系において、点群データを構成する各点の値を、点群データの数をNとして、(X,Z,(X,Z,・・・,(X,Zとする。また、XZ座標系において、中心Cwの座標を(X,Z、半径をRとする円は、
(X-X+(Z-Z=R (1)
と書ける。
【0057】
式(1)を変形すると、以下の式(2)を得る。
sX+tZ+u=X+Z (2)
【0058】
式(2)において、s、t、及びuは以下の式(3)で表現される。
【0059】
【数1】
【0060】
図5(b)に示す各点群データが式(1)に示す円上に存在すると仮定すると、以下の式(4)が成り立つ。
【0061】
【数2】
【0062】
式(4)を行列を用いて表現すると以下の式(5)となる。
【0063】
【数3】
【0064】
式(5)において、左辺第1項の行列をA、左辺第2項のベクトルをx、右辺のベクトルをdとすると、式(5)は以下の式(6)となる。
Ax=d (6)
【0065】
ここで、行列A及びベクトルdの各要素は変換部410が算出した統一座標系の点群データの座標から算出できるため既知である。ベクトルxは、円Wを規定するパラメータであるため未知である。ベクトルdの要素の数は3であるため、図5(b)に示す抽出点群データの要素数が3より大きければ、式(5)及び式(6)において未知数を求める問題は優決定問題となる。
【0066】
いま、式(6)の誤差eを式(7)で表す。
e=d-Ax (7)
このとき、誤差eの2ノルムの二乗を最少化するという意味での最適解xestは最小二乗誤差解として既知であり、以下の式(8)で表される。
est=(AA)-1d (8)
【0067】
式(8)及び式(3)から、中心座標算出部412はX、Z、及びRを算出し、円Wを特定することができる。
【0068】
ところで、図5(b)に例示するように、図5(b)に示す全ての点群データを使って円近似した円Wは、堆積物の影響を受けて実際の配管Pの内壁からずれてフィッティングされる場合がある。そこで、中心座標算出部412は、円Wの中心である点Cwから所定の範囲内に存在する点群データをノイズデータとして削除する。
【0069】
図5(c)は、中心座標算出部412が判定したノイズデータを示す図である。具体的には、図5(c)において黒丸は中心座標算出部412によって判定されたノイズデータであり、白抜きの丸は円近似の対象として残されたデータを示している。
【0070】
図5(d)は、図5(c)における白抜きの丸で示される点群データに対して中心座標算出部412が円近似を実行した結果を示す図である。図5(d)において、円Fが図5(c)における白抜きの丸で示される点群データに対して円近似された結果の円を表し、点Cは円Fの中心を示している。
【0071】
中心座標算出部412は、複数の抽出点群データそれぞれの中心座標を算出し、配管Pの断面の中心点の位置とする。これにより、位置算出部41は、第1座標系C1の異なるY座標の地点において、配管Pの中心点を算出することができる。
【0072】
(内部計測器Vの姿勢推定)
続いて、変換部410による内部計測器Vの姿勢推定処理、具体的には内部計測器Vのヨー角ψ、ロール角φ、及びピッチ角θの推定処理について説明する。
【0073】
図6は、実施の形態に係る変換部410の内部構成を模式的に示す図である。図6に示すように、実施の形態に係る変換部410は、楕円近似部4100、中心線推定部4101、及び姿勢推定部4102を備える。また、図7(a)-(b)は、実施の形態に係る変換部410による内部計測器Vのヨー角推定処理を説明するための図である。以下、図6及び図7を参照して、ヨー角推定処理を説明する。
【0074】
上述したように、配管P内を走行中の内部計測器Vは、堆積物Dの影響で姿勢が変化する。その結果、内部計測器Vは配管Pの入口から出口に向かって概ねまっすぐ進むものの、ある瞬間の内部計測器V進行方向と配管Pの中心軸とがずれることも起こりうる。
【0075】
配管Pが円柱形状である場合に配管Pの中心軸に垂直な平面で配管Pを切断すると、配管Pの切り口は円形となる。しかしながら、配管Pの中心軸に対して垂直でない平面、言い換えると、配管Pの中心軸と平面の法線とのなす角αが0より大きくなるような平面で配管Pを切断すると、その切り口は楕円形状となる。配管Pの中心軸と平面の法線とのなす角αが大きくなるほど、切り口の楕円の離心率が大きくなる。
【0076】
そこで、楕円近似部4100は、複数の地点それぞれにおける点群データ(第2座標系C2における点群データ)を楕円近似して得られた楕円に基づいて、配管Pの中心点を算出する。図1を参照して説明したように、内部計測器Vは、配管P内の各点において、内部計測器Vの進行方向に向かってある程度奥行きを持って内壁形状に関するデータを測定する。このため、楕円近似部4100は、内部計測器Vが配管P中のある地点において測定した点群データから抽出した複数のデータについて楕円近似を行う。
【0077】
楕円の方程式は、長軸の長さ2a、短軸の長さ2b、楕円の中心の座標(X,Z)、及びX軸に対する楕円の傾きξの5つのパラメータを用いて一般化できる。既知の技術のため詳細な説明は省略するが、楕円近似の対象とするデータが6つ以上あれば、楕円近似部4100は、上述した円近似と同様に最小二乗法を用いて楕円近似を実現できる。
【0078】
図7(a)は、配管Pを進行中の内部計測器Vを鉛直上方から下方に向かって眺めた場合の模式図である。説明の便宜のため、図7(a)では、内部計測器Vの傾きは誇張して図示されている。図7(a)において、符号Gで示す矢印は内部計測器Vの進行方向を示す。また、符号Gで示す矢印は内部計測器Vが備えるLiDARのカメラの光軸の方向、すなわち内部計測器Vが向いている方向を示す。方向Gと方向Gとのなす角ψが内部計測器Vのヨー角である。
【0079】
図7(a)において、符号Eで示す図形は楕円近似部4100が近似して得られた楕円であり、点Cは楕円Eの中心を示している。煩雑となることを避けるために図7(a)では一つの図形にのみ符号Eを付しているが、図7(a)において楕円Eと類似する図形は楕円近似部4100が近似した楕円であり、黒丸はその楕円の中心を示している。楕円近似部4100は、内部計測器Vが配管P中のある地点において測定した点群データから抽出した複数のデータについて楕円近似を行い、対応する複数の中心Cを算出する。
【0080】
図7(b)は、楕円近似部4100が算出した複数の中心Cと配管Pの中心線Lとを示す図である。中心線推定部4101は、複数の中心Cから、配管Pの中心線を推定する。具体的には、中心線推定部4101は、内部計測器Vの進行方向に平行な方向をα軸、α軸に垂直な方向をβ軸とする二次元直交座標系において、既知の最小二乗法を用いて中心Cを通る直線を近似し、その直線を配管Pの中心線Lとする。
【0081】
姿勢推定部4102は、中心線推定部4101が推定した配管の中心線Lに基づいて、複数の地点それぞれにおける内部計測器Vのヨー角を推定する。具体的には、中心線推定部4101が複数の地点それぞれについて推定した中心線Lに基づいて、各地点における内部計測器Vの進行方向である方向G(すなわち、図7(b)におけるα軸)と、中心線Lとのなす角をヨー角ψとして推定する。
【0082】
なお、内部計測器Vは内部計測器Vの姿勢角を検出するための姿勢角センサ(不図示)を備えているが、内部計測器Vのヨー角ψは地磁気の影響によってRoll角φ及びピッチ角θと比較して精度が著しく低下することが知られている。変換部410は、上記の方法によってヨー角ψを推定することにより、姿勢角センサが検出するヨー角ψよりも精度の高いヨー角ψを取得することができる。
【0083】
姿勢推定部4102は、内部計測器Vが備える姿勢角センサの計測結果に基づいて、複数の地点それぞれにおける内部計測器Vのロール角φとピッチ角θとを取得する。変換部410は、複数の地点それぞれにおけるヨー角ψ、ロール角φ、及びピッチ角θに基づいて、第1座標系C1に対して回転した第2座標系C2の座標を第1座標系C1に変換するための回転行列Rを算出する。これにより、変換部410は、複数の地点それぞれにおける点群データの座標系である第2座標系C2を、固定計測器Mを基準とする統一座標系(第1座標系C1)の点群データに変換することができる。
【0084】
変換部410が生成した統一座標系の点群データは、固定計測器Mを基準とした座標であり、固定計測器Mの位置情報がなければ統一座標系の点群データが地図上のどの位置にあるデータであるのかは分からない。そこで、固定計測器Mは、図示しない航法衛星から信号を受信する信号受信部を備えていてもよい。具体的には、固定計測器Mの信号受信は、GPS(Global Positioning System)衛星等の航法衛星からの信号を受信する既知のGPSモジュール等で実現される。
【0085】
情報処理装置1の位置取得部43は、固定計測器Mが航法衛星から受信した信号を用いて固定計測器Mの位置を取得する。座標変換部44は、固定計測器Mの位置を基準として、統一座標系を緯度及び経度を含む絶対座標系に変換する。これにより、点群データを絶対座標系で表すことができ、情報処理装置1のユーザは、点群データの想定対象となる配管Pが地図上のどこに位置するかを把握することができる。
【0086】
(出力情報)
続いて、出力部42が出力する情報について説明する。
【0087】
図8は、実施の形態に係る出力部42が出力する情報の一例を模式的に示す図である。具体的には、図8は、出力部42が、内部計測器Vの進行方向の距離を第1の軸、配管Pの入口における配管Pの中心点を基準とする配管Pの中心点の高さを第2の軸とするプロットデータを情報として出力する場合の例を示している。
【0088】
図8に示すグラフにおいて、横軸(第1の軸)は配管Pの入口からの距離、すなわち、内部計測器Vの進行方向の距離Xを表しており、単位はメートルである。また、縦軸(第2の軸)は配管Pの入口における配管の中心点を基準とする配管Pの中心点の高さを表しており、単位はセンチメートルである。
【0089】
図8に示す例では、計測対象とした配管Pは、入口から出口までは約100メートルあり、入口は出口よりも30センチメートル高い位置に存在する。すなわち、図8に示す例では、計測対象とした配管Pの中心は下降傾向となる。図8において、実線で示す直線は配管Pの入口から出口までが直線である場合の中心点のトレンドを示す。また、黒い点(五角形の点)は、配管P内の各位置で算出された配管Pの断面の中心点を示す。図8より、配管Pの断面の中心点は全体としては下降傾向であるものの、局所的には上下方向に移動していることが分かる。情報処理装置1のユーザは出力部42が出力した情報を確認することにより、配管形状の構造物の沈下の兆候を把握することができる。
【0090】
図9(a)-(d)は、実施の形態に係る出力部42が出力する情報の別の例を模式的に示す図である。具体的には、図9(a)は、配管P内における内部計測器Vの左右の移動量、配管P内における堆積物Dの高さ、及びを説明するための図である。図9(a)において(1)で示す矢印は上方のクリアランスを示す矢印であり、内部計測器Vの上面から配管Pの天井までの長さを示している。また、図9(a)において(2)で示す矢印は堆積物Dの高さを示す矢印であり、内部計測器Vの下面から配管Pの底部までの長さを示している。さらに、図9(a)において(3)で示す矢印は配管P内における内部計測器Vの水平方向の移動を示す矢印である。
【0091】
図9(b)は、内部計測器Vの上方のクリアランスの変位をグラフ形式で示す図である。図9(b)において、横軸(第1の軸)は、配管Pの入口から内部計測器Vに向かう方向の距離を表しており、単位はメートルである。また、縦軸(第2の軸)は内部計測器Vの上面から配管Pの天井までの長さを表しており、単位はセンチメートルである。図9(c)は、配管P内における堆積物Dの高さの変位をグラフ形式で示す図である。図9(c)において、横軸(第1の軸)は、配管Pの入口から内部計測器Vに向かう方向の距離を表しており、単位はメートルである。また、縦軸(第2の軸)は内部計測器Vの下面から配管Pの底面までの長さを表しており、単位はセンチメートルである。図9(b)-(c)に示すように、配管P内における堆積物Dの高さと内部計測器Vの上方のクリアランスとは関連性があり、堆積物の高さが高いほど内部計測器Vの上方のクリアランスは小さくなる。
【0092】
図9(d)は、内部計測器Vの水平方向の移動の変位をグラフ形式で示す図である。図9(d)において、横軸(第1の軸)は、配管Pの入口から内部計測器Vに向かう方向の距離を表しており、単位はメートルである。また、縦軸(第2の軸)は配管Pの入口における配管Pの中心点を基準とする内部計測器Vの水平方向の移動距離を表しており、単位はセンチメートルである。図9(d)に示す例では配管Pは直線形状であり、内部計測器Vは配管Pの概ね中心付近を移動していることが分かる。
【0093】
出力部42は、配管Pの入口から内部計測器Vに向かう方向の距離を第1の軸とし、(1)内部計測器Vの上面から配管Pの天井までの長さ、(2)内部計測器Vの下面から配管Pの底部までの長さ、及び(3)配管Pの入口における配管Pの中心点を基準とする内部計測器Vの水平方向の移動距離のうち、少なくとも一つを第2の軸とするプロットデータをさらに出力する。これにより、情報処理装置1のユーザは、出力部42が出力した情報を確認することにより、配管P内における内部計測器Vの状態を把握することができる。
【0094】
図10(a)-(d)は、円柱形状の配管Pの潰れ度合いを説明するための模式図である。具体的には、図10(a)は、変形していない配管Pの断面(配管の長軸に対して垂直な平面での切断面)を示している。配管Pが円柱形状である場合、その断面は図10(a)に示すように円となる。いま、配管Pの断面の直径の長さを「1」と仮定する。
【0095】
図10(b)は縦方向(鉛直方向)に潰れた配管Pを模式的に示す図であり、図10(c)は横方向(水平方向)に潰れた配管Pを模式的に示す図である。図10(b)では配管Pが縦方向に潰れているため、断面の縦方向の軸の長さがs(<1)となっている。同様に、図10(c)では、配管Pが横方向に潰れているためl断面の横方向の長さがt(<1)となっている。楕円近似部4100は、統一座標系の点群データの種々の位置で配管Pの断面を楕円近似し、その長軸の長さと短軸の長さとを求める。出力部42は、楕円近似部4100が算出した長軸の長さに対する、長軸と短軸との差の割合を百分率で表し、配管Pの潰れ度合いとして算出する。例えば、図10(b)の例では(1-s)/1×100が潰れ度合いであり、図10(c)の例では(1-t)/1×100が潰れ度合いである。なお、潰れ度合いはこれに限らず、楕円の離心率や扁平率等の他の値であってもよい。
【0096】
なお、図10(b)及び図10(c)は、それぞれ配管Pが水平方向及び垂直方向に変形する場合の例を示したが、配管Pはそれ以外の方向に潰れる場合もある。図10(d)は、配管Pの潰れ方向を説明するための図である。説明の便宜のため、図10(a)に示す回転前の水平方向の軸を横軸、回転前の縦方向の軸を縦軸と記載する。このとき、図10(d)に示す例では、回転前の縦軸(図10(d)では破線で示す)と、回転後の横軸とのなす角Θを潰れ方向と定義している。
【0097】
図11(a)-(b)は、実施の形態に係る出力部42が出力する情報のさらに別の例を模式的に示す図である。具体的には、図11(a)は配管Pの潰れ度合いの変位をグラフ形式で示す図であり、図11(b)は配管Pの潰れ方向の変位をグラフ形式で示す図である。図11(a)において横軸(第1の軸)は、配管Pの入口から内部計測器Vに向かう方向の距離を表しており、単位はメートルである。また、縦軸(第2の軸)は配管Pの断面を楕円近似して得られた楕円に基づいて算出された配管Pの潰れ度合いを示す値を表しており、単位はパーセントである。このように、出力部42が配管Pの潰れ度合いを示すプロットデータをさらに出力することにより、情報処理装置1のユーザは、配管Pの状態を把握し、配管の入れ替えの必要性の有無を判断することができる。
【0098】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図12は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0099】
データ取得部40は、配管Pの内部を移動しながら複数の地点において配管Pの内壁形状の空間座標情報を有する点群データを計測する内部計測器Vが生成した点群データを取得する(S2)。データ取得部40は、配管Pの内部を移動中の内部計測器Vの位置を示す位置データを計測する固定計測器Mが生成した位置データを取得する(S4)。
【0100】
位置算出部41は、点群データと位置データとに基づいて、配管Pの断面の中心点の位置を算出する(S6)。出力部42は、配管Pの断面の中心点の位置を示す情報、具体的には、配管Pの入口における配管Pの中心点を基準とする配管Pの中心点の高さと配管Pの入口からの距離との関係を示す情報を出力する(S8)。出力部42が情報を出力すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0101】
図13は、実施の形態に係る位置算出部41が実行する中心点位置算出処理の流れを説明するためのフローチャートであり、12におけるステップS6の処理内容を詳細に説明するための図である。
【0102】
姿勢推定部4102は、複数の地点それぞれにおいて内部計測器Vが測定した点群データに基づいて内部計測器Vのヨー角ψを推定する(S60)。姿勢推定部4102は、内部計測器Vが備える姿勢角センサの計測結果に基づいて、複数の地点それぞれにおける内部計測器Vのロール角φを取得する(S61)。姿勢推定部4102は、内部計測器Vが備える姿勢角センサの計測結果に基づいて、複数の地点それぞれにおける内部計測器Vのピッチ角θを取得する(S62)。
【0103】
変換部410は、固定計測器Mが計測した内部計測器Vの位置データに基づいて、固定計測器Mが配管P内の複数の地点それぞれにおいて計測した点群データの座標系を、固定計測器Mを基準とする統一座標系の点群データに変換し、点群データを統一する(S63)。生成部411は、配管Pの入口からの距離が異なる複数の地点において統一座標系の点群データを抽出した複数の抽出点群データを生成する(S64)。中心座標算出部412は、複数の抽出点群データそれぞれの中心座標をその地点における配管Pの断面の中心点の位置として算出する(S65)。これにより、位置算出部41は、人が侵入することが困難な配管Pの中心点の位置を精度よく算出することができる。
【0104】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、配管形状の構造物の沈下の兆候を検出することができる。
【0105】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。以下そのような変形例を説明する。
【0106】
<第1の変形例>
上記では、内部計測器Vが3次元の座標を特定可能なLiDARを用いて配管Pの内壁形状を示す点群データを計測する場合について説明した。これに替えて、内部計測器Vは、深度カメラ(距離画像カメラやステレオカメラ)を用いて配管Pの内壁形状を示す点群データを計測してもよい。
【0107】
<第2の変形例>
上記では、出力部42が、配管Pの中心点の高さに関する情報を出力する場合について説明した。これに替えて、あるいはこれに加えて、出力部42は、配管P内のクリアランスの計測値、配管P内にたまった水の水位の推定値、配管P内に堆積した土砂の高さの推定値、及び配管Pの入口から出口に至るまでの間に配管P内を移動した内部計測器Vの移動経路のうちの少なくとも一つに関する情報を出力してもよい。
【0108】
ここで、出力部42は、固定計測器Mが生成した位置データに基づいて内部計測器Vの移動経路を出力することができる。また、出力部42は、中心座標算出部412がノイズデータとして削除したデータ(円Wの中心である点Cwから所定の範囲内に存在する点群データ)に基づいて配管Pの入口から出口に至るまでの間の地面又は水面の位置を特定することにより、配管P内のクリアランスの計測値、配管P内にたまった水の水位の推定値、及び配管P内に堆積した土砂の高さの推定値を出力することができる。
【0109】
<第3の変形例>
上記では、配管Pの断面が円形状(すなわち、配管Pが円柱形状)である場合について説明した。しかしながら、配管Pの断面形状は円に限らず、正方形や長方形等の多角形であってもよい。配管Pの断面の形状が先見情報として既知である場合、中心座標算出部412は、配管Pの断面の形状に合わせたモデルを用いて抽出点群データをフィッティングすることにより、配管Pの中心点の位置を算出すればよい。
【0110】
<第4の変形例>
上記では、1台の内部計測器Vが配管P内を移動しながら点群データを取得する場合について説明した。これに替えて、内部計測器Vは2台以上あってもよい。以下この場合について説明する。
【0111】
図14は、第4の変形例に係る計測システムSを説明するための図であり、固定計測器Mと、配管P内の2台の移動内部計測器Vとを上方から見た場合の模式図である。図1に示す実施の形態に係る計測システムSと比較して、第4の変形例に係る計測システムSは、第1内部計測器V1と第2内部計測器V2との複数台(2台)の移動内部計測器Vを備える点、及び配管Pが直線ではなく曲がっている点で相違する。
【0112】
図14における固定計測器Mと第1内部計測器V1との関係は、図1における固定計測器Mと内部計測器Vとの関係と同じである。すなわち、図14において、固定計測器Mが第1内部計測器V1の位置を計測することにより、情報処理装置1は、第1内部計測器V1が1又は複数の位置で計測した点群データの座標を統一することができる。
【0113】
図14に示すように、配管Pが曲がっているため固定計測器Mは第2内部計測器V2の位置を計測することができない。一方、第1内部計測器V1は、第2内部計測器V2の位置を計測することができる。そこで、情報処理装置1は、第2内部計測器V2が計測した点群データの座標を第1内部計測器V1の座標系に変換する。結果として、情報処理装置1は、第1内部計測器V1が計測した点群データの座標と第2内部計測器V2が計測した点群データの座標とを統一することができる。内部計測器Vが3台以上ある場合であっても、情報処理装置1は同様に各内部計測器Vが計測した点群データの座標を統一することができる。以上より、第4の変形例に係る計測システムSは、配管Pの外部に設置された固定計測器Mから内部計測器Vを直接計測できない場合であっても、点群データの座標を統一することができる。
【0114】
<第5の変形例>
上記では、内部計測器Vが動力を持ち、配管P内を移動しながら1又は複数の地点において点群データを計測する場合について説明した。これに替えて、内部計測器Vは、配管P内に設置された1又は複数の設置型の計測器であってもよい。これは例えば配管P内の計測の準備として図示しない運搬用ロボットがあらかじめ配管P内の1又は複数の位置にターゲットTを付したLiDARを設置することで実現できる。
【符号の説明】
【0115】
1・・・情報処理装置
2・・・記憶部
3・・・通信部
4・・・制御部
40・・・データ取得部
41・・・位置算出部
410・・・変換部
4100・・・楕円近似部
4101・・・中心線推定部
4102・・・姿勢推定部
411・・・生成部
412・・・中心座標算出部
42・・・出力部
43・・・位置取得部
44・・・座標変換部
V・・・内部計測器
M・・・固定計測器
S・・・計測システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14