(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073984
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】フェーズドアレイで到達角度を測定する方法
(51)【国際特許分類】
G01S 3/46 20060101AFI20230519BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20230519BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20230519BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
G01S3/46
H04B7/08 800
H04B7/08 422
H01Q3/26 Z
H01Q21/06
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176547
(22)【出願日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】63/279,684
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】22159863
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520307104
【氏名又は名称】稜研科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TMY TECHNOLOGY INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲シュァン▼宏
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA11
5J021CA06
5J021DB02
5J021DB03
5J021FA06
5J021FA13
5J021FA17
5J021FA26
5J021FA29
5J021FA30
5J021GA02
5J021HA01
5J021HA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビームのAoAを測定するためのオンザフライな方法が必要とされる。
【解決手段】本発明はステアリング可能なフェーズドアレイで到達角度(AoA)を測定するための方法を対象とする。該方法は、ステアリング可能なフェーズドアレイにより第1のステアリング角及び第2のステアリング角で信号を受信することと(S201)、第1のステアリング角に対応する信号の第1の電力関連情報を取得することと(S203)、第2のステアリング角に対応する信号の第2の電力関連情報を取得することと(S205)、第1の電力関連情報と第2の電力関連情報とに基づき信号のAoAを算出することと(S207)を含むがこれに限定されず、第1のステアリング角は第2のステアリング角と異なり、第1のステアリング角と第2のステアリング角との間の差分絶対値はFNBW/2.未満である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング可能なフェーズドアレイで到達角度(AoA)を測定するための方法であって、
前記ステアリング可能なフェーズドアレイにより第1のステアリング角及び第2のステアリング角で信号を受信することと、
前記第1のステアリング角に対応する前記信号の第1の電力関連情報を取得することと、
前記第2のステアリング角に対応する前記信号の第2の電力関連情報を取得することと、
前記第1の電力関連情報と前記第2の電力関連情報とに基づき前記信号のAoAを算出することと
を含み、
前記第1のステアリング角が前記第2のステアリング角と異なり、前記第1のステアリング角と前記第2のステアリング角との間の差分絶対値がFNBW/2未満である、
方法。
【請求項2】
前記ステアリング可能なフェーズドアレイにより前記第1のステアリング角及び前記第2のステアリング角で前記信号を受信するステップが、
第1のタイムスロットにおける前記信号を受信するため、前記ステアリング可能なフェーズドアレイを前記第1のステアリング角へ切り替えることと、
前記第1のタイムスロットの直後の第2のタイムスロットにおける前記信号を受信するため、前記ステアリング可能なフェーズドアレイを前記第2のステアリング角へ切り替えることと
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステアリング可能なフェーズドアレイにより前記第1のステアリング角及び前記第2のステアリング角で前記信号を受信するステップが、
第1のタイムスロットに対応するN個の信号ストリームを取得するため、前記ステアリング可能なフェーズドアレイ中のN個の選択されたアンテナ素子により前記信号を受信することと、
集約した信号上に前記第1のステアリング角をデジタル的に適用するため、前記N個の信号ストリームを集約する前に前記N個の信号ストリーム上に第1の組のパラメータを適用することと、
前記集約した信号上に前記第2のステアリング角をデジタル的に適用するため、前記N個の信号ストリームを集約する前に前記N個の信号ストリーム上に第2の組のパラメータを適用することと
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の電力関連情報と前記第2の電力関連情報が、受信電力、信号対雑音比、変調精度、ビット誤り率、及び搬送波対雑音比からなる群から選択された基準で表現される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記AoAが、前記第1の電力関連情報と前記第2の電力関連情報との比に基づき算出される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記AoAが、前記第1のステアリング角と第1の差角Δθ
1とに基づき算出され、前記第1の差角Δθ
1が
により算出され、そのうちθ
S1は前記第1のステアリングであり、θ
S2は前記第2のステアリング角でありΔθ
s=θ
S2-θ
S1は前記第1のステアリング角と前記第2のステアリング角との間の差であり、前記係数a、b、cが
であり、そのうちΔ
GRX,dBは前記第1の電力関連情報と前記第2の電力関連情報との比のデシベル値であり、mは実数である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
であって、
そのうち、Nはアンテナ素子の数であり、dは2つの隣接したアンテナ素子間の間隔であり、λは前記信号の波長である、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のステアリング角と前記第2のステアリング角との間の前記差分絶対値がHPBW/2未満である、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のステアリング角と前記第2のステアリング角との間の前記差分絶対値がHPBW/4未満である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記信号を受信するため、算出したAoAを第3のステアリング角とすることと、
前記第3のステアリング角に対応する前記信号の第3の電力関連情報を取得することと、
前記第3の電力関連情報及び前記第3のステアリング角に基づき前記AoAを更新することと
を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記AoAを更新するステップが、
第3の電力関連情報と、前記第1の電力関連情報と前記第2の電力関連情報のうちの少なくとも1つとに基づき、新AoAを算出することと、
前記新AoAにより前記AoAを更新することと
を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記AoAを更新するステップが、
前記第1のステアリング角とそれに対応する前記第1の電力関連情報、前記第2のステアリング角とそれに対応する前記第2の電力関連情報、及び前記第3のステアリング角とそれに対応する前記第3の電力関連情報の3対から取得した放物線関数から、最大電力関連情報を有するステアリング角を算出することと、
算出された前記ステアリング角により前記AoAを更新することと
を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ステアリング可能なフェーズドアレイを含む送受信機と、
記憶媒体と、
送受信機と記憶媒体に結合されたプロセッサと
を含み、
前記プロセッサが、
前記ステアリング可能なフェーズドアレイにより第1のステアリング角及び第2のステアリング角で信号を受信し、
前記第1のステアリング角に対応する前記信号の第1の電力関連情報を取得し、
前記第2のステアリング角に対応する前記信号の第2の電力関連情報を取得し、
前記第1の電力関連情報と前記第2の電力関連情報とに基づき前記信号の到達角度(AoA)を算出するよう構成され、
前記第1のステアリング角が前記第2のステアリング角と異なり、前記第1のステアリング角と前記第2のステアリング角との間の差分絶対値がFNBW/2未満である、
通信装置。
【請求項14】
前記プロセッサが、
前記信号を受信するため、算出した前記AoAを第3のステアリング角とし、
前記第3のステアリング角に対応する前記信号の第3の電力関連情報を取得し、
前記第3の電力関連情報及び前記第3のステアリング角に基づき前記AoAを更新するよう更に構成された、
請求項13に記載の通信装置。
【請求項15】
前記プロセッサが、
前記第3の電力関連情報と、前記第1の電力関連情報と前記第2の電力関連情報のうちの少なくとも1つとに基づき新AoAを算出し、
前記新AoAにより前記AoAを更新するよう更に構成された、
請求項14に記載の通信装置。
【請求項16】
前記プロセッサが、
前記第1のステアリング角とそれに対応する前記第1の電力関連情報、前記第2のステアリング角とそれに対応する前記第2の電力関連情報、及び前記第3のステアリング角とそれに対応する前記第3の電力関連情報の3対から取得した放物線関数から、最大電力関連情報を有するステアリング角を算出し、
算出された前記ステアリング角により前記AoAを更新するよう更に構成された、
請求項14に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェーズドアレイに関するものであり、特に、ステアリング可能フェーズドアレイでの到達角度(AoA)の迅速な測定に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の電気通信システムにおいて、搬送波の周波数はより広い信号帯域幅を可能とするため益々高くなっている。フリスの伝達公式によると、受信機により受信される電力(P
r)と送信機により放出される電力(P
t)との比は次のように表現される:
【0003】
式(1)において、DtとDrはそれぞれ送信機のアンテナの指向性と受信機のアンテナの指向性を示す。搬送波の波長はその周波数が増加するにつれ減少し、このため信号の減衰又は衰退が悪化することは明らかであり、これは波長λが減少するにつれ比Pr/Ptが減少するためである。伝搬損失を補償するための従来の自明な解決策は、アンテナの指向性DtとDrのいずれか又は両方を増加させることである。
【0004】
しかし、指向性が増加するにつれ、通常、半値電力ビーム幅(HPBW)で表現されるビーム幅が減少する。その結果、送信機と受信機は移動中であるとき容易に互いを見失う。当該装置又はビーム追跡技術は広く調査されている分野である。拡張型カルマンフィルタ(EKF)に基づくいくつかのアルゴリズムが提案されているが、AoA測定の正確さ及び精度がやはりその予測結果に影響する。よって、ビームのAoAを測定するためのオンザフライな方法が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、ビームの到達角度(AoA)を測定するための方法を提供する。提供する方法は、オンザフライな応用において動作可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの例示的な実施形態において、本発明はステアリング可能なフェーズドアレイで到達角度(AoA)を測定するための方法を対象とする。該方法は、ステアリング可能なフェーズドアレイにより第1のステアリング角及び第2のステアリング角で信号を受信することと、第1のステアリング角に対応する信号の第1の電力関連情報(PRI1)を取得することと、第2のステアリング角に対応する信号の第2の電力関連情報(PRI2)を取得することと、第1の電力関連情報と第2の電力関連情報とに基づき信号のAoAを算出することとを含むがこれに限定されず、第1のステアリング角は第2のステアリング角と異なっており、第1のステアリング角と第2のステアリング角との間の差分絶対値はFNBW/2.未満である。
【0007】
1つの例示的な実施形態において、本発明は通信装置を対象とする。該通信装置は、送受信機と、記憶媒体と、プロセッサとを含むがこれに限定されない。送受信機は、ステアリング可能なフェーズドアレイを含むがこれに限定されない。プロセッサは、送受信機と記憶媒体とに結合される。プロセッサは、ステアリング可能なフェーズドアレイにより第1のステアリング角及び第2のステアリング角で信号を受信し、第1のステアリング角に対応する信号の第1の電力関連情報(PRI1)を取得し、第2のステアリング角に対応する信号の第2の電力関連情報(PRI2)を取得し、第1の電力関連情報と第2の電力関連情報とに基づき信号の到達角度(AoA)を算出するよう構成され、第1のステアリング角は第2のステアリング角と異なり、第1のステアリング角と第2のステアリング角との間の差分絶対値はFNBW/2未満である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ステアリング可能なフェーズドアレイで到達角度(AoA)を測定するための方法を提供する。本発明の実施形態において、ビーム放射パターンのアレイファクタの放物線近似を開示する。該方法は、正確なAoAの迅速な測定における迅速な追跡のための収束結果を提供する。該方法は、アナログビームフォーミング及びデジタルビームフォーミングの両方に適用され、該方法は装置又はビーム追跡のオンザフライな応用において動作可能である。
【0009】
ただし、この概要は本発明の全ての様態及び実施形態を含んでいない可能性があり、このため如何なるかたちでも限定又は制限することを意図していないことを理解されたい。また、本発明は当業者にとって自明な改善及び改変を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の更なる理解を提供するために添付図面が含まれ、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。図面は本発明の実施形態を表しており、説明と併せて、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0011】
図1は、本発明の1つの実施形態によるフェーズドアレイのビーム放射パターンの概略図である。
【0012】
図2は、本発明の1つの実施形態による到達角度を測定するための方法のフロー図である。
【0013】
図3は、本発明の1つの実施形態による到達角度を更新するフロー図である。
【0014】
図4Aは、本発明の1つの実施形態によるビーム放射パターンのメインローブの近似に用いられるHPBW及びポイントの概略図である。
【0015】
図4Bは、本発明の1つの実施形態によるビーム放射パターンのメインローブの放物線近似の概略図である。
【0016】
図5は、本発明の1つの実施形態による、AoAを算出するためのステアリング角の切り替えの概略図である。
【0017】
図6A~6Cは、本発明の1つの実施形態による、実AoAが12°であるときに、提案する方法が如何に機能するかを理解するためのビーム照射野パターンの概略図である。
【0018】
図7Aと
図7Bは、本発明の1つの実施形態による、提案する方法が迅速な追跡のための収束結果を提供することを表す例の概略図である。
【0019】
図8は、本発明の1つの実施形態によるアナログビームフォーミングアーキテクチャを用いるフェーズドアレイの概略図である。
【0020】
図9は、本発明の1つの実施形態によるデジタルビームフォーミングアーキテクチャを用いるフェーズドアレイの概略図である。
【0021】
図10は、本発明の1つの実施形態による通信装置のブロック図である。
【0022】
図11Aは、本発明の1つの実施形態による、ユーザ機器を走査する基地局を有する通信システムの概略図である。
【0023】
図11Bは、本発明の1つの実施形態による、基地局を走査するユーザ機器を有する通信システムの概略図である。
【0024】
図11Cは、本発明の1つの実施形態による、互いを走査する基地局とユーザ機器を有する通信システムの概略図である。
【0025】
図12は、本発明の1つの実施形態による二次元フェーズドアレイの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の上述した特徴及び利点を理解できるようにするため、図面を伴い例示的な実施形態を以下で詳細に説明する。上述の一般的な説明と以下の詳細な説明との両方が例示であり、特許請求される発明の更なる説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【0027】
ここに、本発明の実施形態を詳細に参照し、その例を添付図面に示す。可能な限り、同一又は類似の部材を参照するために同一の符号を図面及び説明で用いる。
【0028】
図1は、本発明の1つの実施形態によるフェーズドアレイのビーム放射パターンの概略図である。
図1を参照し、フェーズドアレイのビーム放射パターンは、メインローブと、いくつかのサイドローブとを含んでよい。メインローブは、フェーズドアレイにより最大且つ一定のエネルギーが放射されるフェーズドアレイの主ビームである。ビーム幅は、ビーム放射パターンのメインローブにおいてほとんどの電力が放射される範囲である。実際には、ビーム幅は通常、半値電力ビーム幅(HPBW)又は第1のヌルビーム幅(FNBW)として表現される。
【0029】
HPBWは、ビーム放射パターンの電力が主ビームのピークから50%(又は-3dB)減少するポイント間の角分離として定義される。
図1に示すように、メインローブの電力半値ポイント間で両方の側に線を描いている。電力半値ポイント間の角度が、ビーム放射パターンのHPBWである。
【0030】
FNBWは、ビーム放射パターンの規模がメインローブ付近でゼロである第1のヌルポイント間の角分離として定義される。
図1に示すように、メインローブの第1のヌルポイント間で両方の側に線を描いている。第1のヌルポイント間の角度が、ビーム放射パターンのFNBWである。HPBWはFNBWよりも狭いことが
図1から理解できる。
【0031】
フェーズドアレイは、到達角度を測定するためにステアリング角の間で切り替えられてよい。異なるステアリング角は、ビーム放射パターンを異ならせることができる。このため、異なるステアリング角でHPBW又はFNBWは変化する。
【0032】
等間隔直線状フェーズドアレイ(ULA)は、最も一般的に用いられるフェーズドアレイである。ステアリング角θ
Sを有するN個のアンテナ素子を備えた等間隔直線状フェーズドアレイの半値電力ビーム幅は、次のように表現することができる:
【0033】
ここで、dは2つの隣接するアンテナセルの重心の間の間隔を示し、λはアンテナセルにより放出及び/又は受信される電磁波の波長を示す。
【0034】
例えば、波長の1/2の間隔(d=λ/2)を有する4つのアンテナ素子(N=4)、及び0°のステアリング角(θS=0)を有するフェーズドアレイでは、HPBWは約25.4°である。ステアリング角に近い方法から情報信号が来る場合、ステアリング角が約5°変化したときの情報信号の受信電力は大きく変化せず、このため通信の品質は許容可能なままである。短時間内で、ステアリング角間の差異絶対値は小さく、異なるステアリング角での受信電力における変化は無視できると推定され、ビーム放射パターンのメインローブは差角及びHPBWに関連付けて放物線で近似化することができる(放物線関数として表される)。このため、ステアリング角間の差異絶対値が閾値により境界付けられると仮定し、到達角度はステアリング角及びそれらに対応する電力関連情報(PRI)により推定することができる。1つの実施形態において、閾値はビーム放射パターンのメインローブのFNBW及び/又はHPBWに関連付いてよい。
【0035】
図2は、本発明の1つの実施形態による到達角度を測定するための方法のフロー図である。該方法は、ステアリング可能なフェーズドアレイに適用されてよい。ステップS201にて、フェーズドアレイは第1のステアリング角及び第2のステアリング角で信号を受信する。ステップS203にて、フェーズドアレイは第1のステアリング角に対応する信号の第1の電力関連情報(PRI1)を取得する。ステップS205にて、フェーズドアレイは第2のステアリング角に対応する信号の第2の電力関連情報(PRI2)を取得する。ステップS207にて、フェーズドアレイは第1の電力関連情報と第2の電力関連情報とに基づき信号のAoAを算出する。
【0036】
第1のステアリング角は第2のステアリング角と異なり、第1のステアリング角と第2のステアリング角との間の差異絶対値は閾値未満であることに注意されたい。
【0037】
1つの実施形態において、ステアリング可能なフェーズドアレイはデジタルビームフォーミングアーキテクチャを用いてよい。この実施形態において、ステップS201はデジタルビームフォーミングアーキテクチャにおいて更に実装されてよい。具体的には、ステアリング可能なフェーズドアレイは、第1のタイムスロットに対応するN個の信号ストリームを取得するため、ステアリング可能なフェーズドアレイ中のN個の選択されたアンテナ素子により信号を受信し、ここでNは整数である。ステアリング可能なフェーズドアレイは、集約された信号に第1のステアリング角をデジタル的に適用するため、N個の信号ストリームを集約する前に、N個の信号ストリーム上に第1の組のパラメータを適用する。ステアリング可能なフェーズドアレイは、集約された信号に第2のステアリング角をデジタル的に適用するため、N個の信号ストリームを集約する前に、N個の信号ストリーム上に第2の組のパラメータを適用する。
【0038】
ステップS201とステップS203は信号伝送に大きく不利に影響しない。このため、方法はオンザフライな応用、即ち、信号伝送又は信号受信が電気通信において行われている状況において用いられることができる。
【0039】
1つの実施形態において、第1のステアリング角と第2のステアリング角との間の差異絶対値はFNBW/2未満である。
【0040】
1つの実施形態において、第1のステアリング角と第2のステアリング角との間の差異絶対値はHPBW/2未満である。
【0041】
1つの実施形態において、第1のステアリング角と第2のステアリング角との間の差異絶対値はHPBW/4未満である。
【0042】
図3は、本発明の1つの実施形態による到達角度を更新するフロー図である。
図3におけるステップは、
図2のステップS207の変形と見ることができる。
図3を参照されたい。ステップS302にて、信号を受信するため、フェーズドアレイは算出されたAoAを第3のステアリング角とする。具体的には、算出されたAoAはステップS207で算出された結果であってよい。算出されたAoAは、カルマンフィルタといった予測メカニズムにより取得された現在のAoAの推定であってもよい。ステップS304にて、フェーズドアレイは第3のステアリング角に対応する信号の電力関連情報(PRI3)を取得する。ステップS306にて、フェーズドアレイは第3の電力関連情報及び第3のステアリング角に基づきAoAを更新する。
【0043】
1つの実施形態において、第1の電力関連情報と第2の電力関連情報は、受信電力、信号対雑音比(SNR)、変調精度(EVM)、ビット誤り率(BER)、及び搬送波対雑音比(C/N)のうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない基準で表現されてよい。同様に、第3の電力関連情報は、受信電力、信号対雑音比(SNR)、変調精度(EVM)、ビット誤り率(BER)、及び搬送波対雑音比(C/N)のうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない基準で表現されてよい。
【0044】
1つの例として、第1の電力関連情報と第2の電力関連情報は搬送波対雑音比(C/N)であってよい。ここで、第1のステアリング角に対応する信号のC/N
1と、第2のステアリング角に対応する信号のC/N
2とを如何にして取得するかがポイントである。E
b/N
0はビット誤り率(BER)から算出することが可能であり、その関係性は変調方式と符号化方式によって異なります。次いで、次の式に基づき、取得したE
b/N
0に基づきC/Nを算出する:
【0045】
ここで、fbはチャネルの正味ビット速度又はデータ速度を示し、Bはチャネル帯域幅を示す。これら両方は予め定められているか、取得可能である。よって、BERに基づきC/Nを算出することは可能であり、C/N1とC/N2は第1ステアリング角に対応する情報信号の第1のセグメントに対するデータのBERと、第2のステアリング角に対応する情報信号の第2のセグメントに対するデータのBERとから取得される。
【0046】
[放物線近似]
【0047】
取得したC/N
1とC/N
2に基づき到達角度(AoA)を算出する簡略化したメカニズムは、フェーズドアレイのメインローブの形状の放物線近似に基づく。理想的には、N個のアンテナ素子を有する等間隔直線状フェーズドアレイに関する振幅のフィールドパターンは次のように表現することができる:
【0048】
ここで、G
Aはフェーズドアレイのマグニチュードゲインを示し、AFはアレイファクタを示し、EFは、アンテナセルのフィードパターンとしても知られるエレメントファクタを示す。1つの実施形態において、フェーズドアレイは先ず発信源から信号を受信するため第1のステアリング角θ
S1に切り替えられる。次いで、フェーズドアレイは、該発信源から同一の信号を受信するため、デジタル手段又はアナログ手段により第2のステアリング角θ
S2に切り替えられる。第1のステアリング角で受信した電力と第2のステアリング角で受信した電力との比は次のように表現される:。
【0049】
これによってエレメントファクタからの影響は除去される。受信した電力とアレイファクタAFのモデルが両方とも既知であるとき、次いで到達角度AoAを導き出すことができる。アレイファクタAFは次のように表現できることが知られている:
【0050】
ただし、式(6-1)及び/又は式(6-2)の適用を妨げる障害がいくつか存在する。一つ目は、これら式が超越関数であり、対数値(dB)を取得するのが困難なことである。もう1つの問題は、これら式は、理論上、等間隔直線状フェーズドアレイ(ULA)にのみ適するが、使用されているほとんどのフェーズドアレイは実際の放射パターンが式(6-1)及び/又は(6-2)よりもはるかに複雑な、完全なULAではないことである。従って、本発明では簡略化した方法論を導入している。高次関数又は超越関数は、二次多項式/放物線関数により近似又は接近させることが知られている。
【0051】
図4Aは、本発明の1つの実施形態によるビーム放射パターンのメインローブの近似に用いられるHPBW及びポイントの概略図である。
図4Aを参照し、ビーム放射パターンのメインローブ40の形状は、2つの電力半値ポイント401、402とピークポイント403により定義される放物線関数として表わされる放物線により近似されてよい。電力半値ポイント401と402は半値受信電力P
AF/2を有する2つのステアリング角に対応し、ピークポイント403はピーク電力P
AFを有するステアリング角に対応する。このため、(放物線関数としての)放物線は、電力と、メインローブ40の形状に当てはまる3つのポイント401、402、403のステアリング角により定義される。
【0052】
上記前提及び式(2)によると、近似は次のように表現することができる:
そのうち、Δθは選択された角度とステアリング角との間の差を示す差角である。式(7)において、λはアンテナアレイが位置する第1の媒体における搬送波信号の波長である。1つの従来の例において、これは自由空間又は空気中の搬送波信号の波長である。ただし、たとえアンテナアレイが海中に位置しているとしても、本発明の方法はやはり適用可能である。
【0053】
4つのアンテナ素子を有する一次元アレイを例とする。2つの隣接したアンテナ素子間の間隔dが動作波長の半分に等しい場合、式(7)は次の結果をもたらす:
【0054】
P
AF,dBは、上述した例のデシベル値におけるアレイファクタを示す。差角Δθの値が5°以下である場合、分散は1よりはるかに小さい。よって、式(9)は自然対数関数の1次テイラー級数に従い近似されることができ、式(9)は次の式(10)として表現されることができる:
【0055】
一般的に、kは、アンテナ素子の数N、2つの隣接したアンテナ素子間の間隔d、及び波長λに関連付く係数である。1つの実施形態において、式(10)における係数kは、4つのアンテナ素子(N=4)及び間隔d=λ/2を有するフェーズドアレイにおいてk=-0.0135である。
【0056】
図4Bは、本発明の1つの実施形態によるビーム放射パターンのアレイファクタのメインローブの放物線近似の概略図である。
図4Bは、4つのアンテナ素子(N=4)を有するフェーズドアレイの現実モデル、sinc関数による近似、及び放物線近似を示す。現実モデルは、式(6-1)により説明したメインローブの形状である。sinc関数による近似は、式(6-2)により説明したメインローブの形状に対応する。放物線近似は、式(7)により説明したメインローブの形状に対応する。
【0057】
角度θ=0°で、sinc関数による近似及び放物線近似は、該現実モデルのメインローブ上のピークポイントに合致する。ポイントhp1とhp2は、放物線近似による近似された電力半値ポイントである。放物線近似はポイントhp1とhp2でsinc関数による近似に一致しており、ポイントhp1とhp2が現実モデルにより特徴付けられるような左右の電力半値ポイントに近いことは注目に値する。このため、式(7)による放物線近似は、特に差角Δθが小さいとき、現実モデルとの良好な近似を提供する。例えば、アンテナ素子の数が4であり間隔が波長の半分である実施形態において、差角Δθは5°未満に設定され、これはその理論上のHPBWの半分よりもはるかに小さい。
【0058】
図5は、本発明の1つの実施形態によるAoAを算出するためのステアリング角の切り替えの概略図である。
図5を参照されたい。垂直線Lは、フェーズドアレイのアレイ面APに直交する基準線である・フェーズドアレイは、到来する信号を受信するため、破線L1に対応する第1のステアリング角θ
S1にステアリングされてよい。これは、
図2において説明したステップS201に対応する。第1のステアリング角θ
S1と第2のステアリング角θ
S2は異なることに注意されたい。そして、到来する信号の到達角度(AoA)を測定するため、選択された角度がAoAに置き換えられ、アンテナアレイが第1の段階で、AoA付近であるとアルゴリズムにより算出又は予測された第1のステアリング角θ
S1にステアリングされる。差角Δθ
1とΔθ
2はそれぞれ、AoAと第1のステアリング角θ
S1との間の差異、AoAと第2のステアリング角θ
S2との間の差異として表現される。
【0059】
次いで、受信した電力を次のように表現することができる:
【0060】
信号電力自体が変わらないと仮定し、アンテナアレイが次いでそのステアリング角を第2のステアリング角θ
S2へ切り替えられ、受信した電力は次のように表現することができる:
【0061】
電力における比と同等であるdBにおけるG
RX,dB(AoA,θ
S2)とG
RX,dB(AoA,θ
S1)との間の差は、次のよう記述することができる:
【0062】
式(10)によると、式(13)は次のように書き換えることができる:
【0063】
式(13)~(14)において、ΔGRX,dB(AoA,θS1,θS2)は、第2のステアリング角θS2での受信電力PAF,dB(AoA-θS2,θS2)と第1のステアリング角θS1での受信電力PAF,dB(AoA-θS1,θS1)との比のデシベル値である。
【0064】
図6A~6Cは、本発明の1つの実施形態による、AoAが12°のとき提案する方法が如何に機能するかを理解するためのビーム放射パターンの概略図である。
【0065】
図6A~
図6Cを参照されたい。
図6A~
図6Cのそれぞれは、4つのアンテナ素子、及び波長の半分の間隔を有するアンテナアレイの現実パターンを図示している。右/上向きの軸及び方向は正を表し、左/下向きの軸及び方向は負を表す。
図6A~6Cにおいて、AoAは12°である。
図6Aにおいて、第1のステアリング角θ
S1は10°であり、第2のステアリング角θ
S2は15°である。第1のステアリング角はメインローブ上のポイント601に対応する。ポイント601で、受信した電力(dB)は-0.5265dBである。第2のステアリング角はメインローブ上のポイント602に対応する。ポイント602で、受信した電力(dB)は-0.5930dBである。
図6Aにおける例から、ポイント601と602との間の受信した電力(dB)の差が-0.0665dBであることが得られる。
【0066】
【0067】
1つの実施形態において、mの値は次のように算出される:
【0068】
式(20)において、Nはアンテナ素子の数、dは2つの隣接したアンテナ素子間の間隔、λは信号の波長である。ここで、式(20)の右側の分母「296」は局所最適値である。他の実施形態において、分母の値は「296」から僅かに異なってよい。1つの実施形態において、分母はステアリング可能なフェーズドアレイが製造又は校正されるとき取得される。次いで、分母がシステム中の記憶媒体といったシステム中に記録される。分母は、本発明の技術を実行するステアリング可能なアレイ又はアンテナ素子の組の実際の半値電力ビーム幅に基づき決定される。差角ΔθSの変動は近似誤差に影響することから、分母の範囲は差角ΔθSに伴い変化してよい。
【0069】
全ての既知である変数を置き換えた式(15)~(19)で、算出された第1の差角Δθ1は1.9577°であるから、算出されたAoAは第1のステアリング角と第1の差角からθS1+Δθ1=11.9577°として算出される。即ち、実際のAoAが2つのステアリング角間にあるとき、算出されたAoAは実際のAoAに非常に近い。
【0070】
図6Bにおいて、第1のステアリング角θ
S1は10°であり、第2のステアリング角θ
S2は5°である。第1のステアリング角は、メインローブ上のポイント611に対応する。ポイント611で、受信した電力(dB)は-1.1648dBである。第2のステアリング角は、メインローブ上のポイント612に対応する。ポイント612で、受信した電力(dB)は-0.5266dBである。
図6Bから、ポイント611と612との間の受信した電力(dB)の差が-0.6382dBであることが得られる。全ての既知である変数を置き換えた式(15)~(19)で、算出された第1の差角Δθ
1は2.2474°であるから、算出されたAoAはθ
S1+Δθ
1=12.2474°である。この例において、たとえ第2のステアリング角が第1のステアリング角と比較して実際のAoAから遠ざかっているとしても、算出されたAoAはやはり実際のAoAに非常に近い。
【0071】
図6Cにおいて、第1のステアリング角θ
S1は20°であり、第2のステアリング角θ
S2は15°である。第1のステアリング角は、メインローブ上のポイント621に対応する。ポイント621で、受信した電力(dB)は-0.5930である。第2のステアリング角は、メインローブ上のポイント622に対応する。ポイント622で、受信した電力(dB)は-1.3302である。
図6Cから、ポイント621と622との間の受信した電力(dB)の差が0.7372dBであることが得られる。全ての既知である変数を置き換えた式(15)~(19)で、算出されたΔθ
1は-8.7582°であるから、算出されたAoAはθ
S1+Δθ
1=11.2418°である。従って、第2のステアリング角で受信した電力と第1のステアリング角で受信した電力の間、又はその逆の比に基づき実際のAoAを推定することが可能である。この例において、たとえ実際のAoAが第1のステアリング角及び第2のステアリング角から遠くとも、算出されたAoAはやはり実際のAoAの比較的正確な予測を提供する。
【0072】
信号源と受信機との間のチャネルが加算性白色ガウス雑音(AWGN)チャネルであると仮定し、ステアリング角が僅かに変化したシステムにおける雑音は変化しないままである。よって、これら2つの測定期間(第1のステアリング角と第2のステアリング角)での搬送波信号間の比は、そのSNR間の比と同一である。即ち、SNR2/SNR1の比、又はSNR2,dBとSNR1,dBとの間の差は、搬送波信号間の比と同一の意味を有する。即ち、全ての電力関連情報は、SNR、BER、C/N、EVM、及び/又は受信信号の電力といった基準で表現されることができる。異なる基準はいずれも本発明の実施形態において適用可能である。
【0073】
上記に基づき、いくつかの拡張した方法が導き出されてよい。先ず、到来する信号の連続した3つの測定値が、第2のステアリング角及び第1のステアリング角から取得されたSNR比に基づき、そして第3のステアリング角及び第2のステアリング角から取得されたSNR比に基づき、AoAにおける推定される変化を提供することができる。ステップS302、S304、S306において説明したように、フェーズドアレイは新たなステアリング角及び対応するSNR比に基づき新たなAoAを繰り返し算出及び更新し続けてよい。取得されたAoAのそれぞれ又は組合せは、将来的なAoAを予測するため、カルマンフィルタのための入力データとしての役割を果たす。更に、たとえ予測されたAoAが正確には正しいAoAではなくとも、提案する方法は正しいAoAの近似方向を示唆することができる。
【0074】
図7Aと
図7Bは、本発明の1つの実施形態による、提案する方法が迅速な追跡のための収束結果を提供することを表す例の概略図である。
図7Aと
図7Bにおいて、AoAは10°である。
【0075】
図7Aを参照されたい。例えば、予測されたAoAが18°であり、実際のAoAが10°である。第1の例は、第1のステアリング角が18°であり第2のステアリング角が13°である
図7Aに見ることができる。第1のステアリング角はメインローブ71に対応する。第2のステアリング角はメインローブ72に対応する。メインローブ71上のポイント701での電力と、メインローブ72上のポイント702での電力を、それぞれ取得することができる。ポイント701で、受信した電力(dB)は-1.12024dBである。ポイント702で、受信した電力(dB)は-0.4504dBである。4つのアンテナ素子(N=4)及び間隔d=λ/2を有するフェーズドアレイでは、係数はk=-0.0135である。受信した電力比(SNR比)によると、式(15)~(19)に基づき算出されたAoAは9.2796°である。第3のステアリング角が9°に選択された場合、13°での電力と9°での電力に基づき算出されたAoAは9.9311°である。
【0076】
図7Bを参照されたい。同様に、第2の例は、第1のステアリング角が18°であり第2のステアリング角が23°である
図7Bに見ることができる。第1のステアリング角はメインローブ71に対応する。第2のステアリング角はメインローブ73に対応する。メインローブ71上のポイント701での電力と、メインローブ73上のポイント703での電力を、それぞれ取得することができる。ポイント701で、受信した電力(dB)は-1.12024dBである。ポイント703で、受信した電力(dB)は-2.668dBである。式(15)~(19)基づく同一の方法によれば、算出されたAoAは6.8654°であり、これは正確な側(左側)を示唆している。第3のステアリング角が7°の場合、18°での電力と7°での電力に基づき算出されたAoAは9.6832°である。このため、該方法は、S207における算出されたAoAから、S302で収束結果を生むことができる。
図2及び
図3において提案する方法は、オンザフライな応用に適用することができ、収束効果は迅速な追跡の実用的なユースケースにおいて有利であり得る。該方法は、アナログビームフォーミングアーキテクチャを用いるフェーズドアレイ、又はデジタルビームフォーミングアーキテクチャを用いるフェーズドアレイに適合させることができる。
【0077】
図8は、本発明の1つの実施形態によるアナログビームフォーミングアーキテクチャを用いるフェーズドアレイの概略図である。アナログビームフォーミングアーキテクチャにおいて、フェーズドアレイ80は、デジタルプロセッサ81と、AD/DA変換器82と、集約装置83と、複数の混合器MXと、複数の位相器PHSと、複数の利得制御型増幅器GCAと、複数のアンテナ素子ANTとを含んでよい。デジタルプロセッサ81はAD/DA変換器82に結合される。AD/DA変換器は複数の混合器MXに結合される。アナログビームフォーミングにおいて、フェーズドアレイ80は異なるタイムスロットにおける信号を受信する。具体的には、フェーズドアレイ80は、第1のタイムスロットにて第1の信号を受信するため第1のステアリング角へステアリングしてよく、次いで、フェーズドアレイ80は、第2のタイムスロットにて第2の信号を受信するため第2のステアリング角へステアリングしてよい。前記の実施形態において、第1の信号及び第2の信号は共に、信号源からの信号のAoAを決定するため、同一の信号源から到来している。しかし、第1の信号及び第2の信号は異なる信号源から到来する可能性がある。利得制御型増幅器GCAは、それぞれアンテナ素子ANTから受け取った信号の利得を調整する。受信した信号が位相器PHSと混合器MXを通過した後、集約装置83は信号を集約し、集約した信号をAD/DA変換器82へ供給する。AD/DA変換器82は、次いで、デジタルプロセッサ81によって更に処理されるデジタルデータへと信号を変換する。アナログビームフォーミングアーキテクチャは複数のアンテナ素子ANTに対し単一のAD/DAのみを要するが、信号は異なるタイムスロットにおいて受信しなければならないことに注意されたい。
【0078】
図9は、本発明の1つの実施形態によるデジタルビームフォーミングアーキテクチャを用いるフェーズドアレイの概略図である。デジタルビームフォーミングアーキテクチャにおいて、フェーズドアレイ90は、デジタルプロセッサ91と、複数のAD/DA変換器92と、複数の混合器MXと、複数の増幅器AMPと、複数のアンテナ素子ANTとを含んでよい。デジタルプロセッサ91は複数のAD/DA変換器92に結合される。アンテナ素子ANTから受け取った信号は、それぞれ対応する増幅器AMPと混合器MXを通過する。次いで、複数のAD/DA変換器92は、デジタルプロセッサ91によって更に処理されるデジタルデータへと信号を変換する。
【0079】
1つの実施形態において、アンテナアレイがデジタルビームフォーミング技術を用いる場合、異なるタイムスロットにおいて信号を受信する必要はない。ステップS201とS203は、ステアリング角をデジタル式に変化させて上記S205~S207で表した同一の処理を行うことにより、ベースバンドにおいて行うことができる。明示的には、無線信号SEQ1の第1のシーケンスがアレイにより受信される。次いで、デジタルプロセッサ91はSEQ1上に第1の組のステアリング設定パラメータを適用し、このためアレイはSEQ1を受信するため第1のステアリング角θS1でステアリングしているように見える。その間、SEQ1は更なる処理のためデジタルプロセッサ91のバッファといった非一時的なストレージに格納される。次いで、デジタルプロセッサ91が受信した信号の後続のシーケンス上に第1の組のステアリング設定パラメータを適用している間に、他のプロセッサ又は同一プロセッサのスレッドがSEQ1上に第2の組のステアリング設定パラメータを適用し、このためSEQ1は第2のステアリング角θS2でアレイにより受信されたように見える。1つの実施形態において、次いで、SEQ1のAoAを取得するためにステップS205を実行するためC/N1とC/N2が用いられる。この実施形態において、C/N1とC/N2は信号の同一のシーケンスSEQ1に関連しており、C/N又は電力に影響する環境因子は既に排除されており、このためAoAの予測は実際のAoAに、より近くなる。
【0080】
上述した実施形態は、信号源からの信号が測定の間に変化しないままであることを前提としている。
図2及び
図3において説明したAoAを測定するための方法は、一般的に、アナログビームフォーミングを用いるフェーズドアレイ80、又はデジタルビームフォーミングを用いるフェーズドアレイ90を含む、通信装置に適用される。
【0081】
図10は、本発明の1つの実施形態による通信装置のブロック図である。
図10を参照し、通信装置100は、送受信機110と、プロセッサ120と、記憶媒体130とを含んでよい。プロセッサ120は、送受信機110と記憶媒体130とに結合される。
【0082】
送受信機110はプロセッサ120に結合される。送受信機110は、DL信号を受信し、UL信号を送信してよい。送受信機110は、低雑音増幅器(LNA)、インピーダンス整合、アナログ-デジタル変換(ADC)、デジタル-アナログ変換(DAC)、周波数混合、アップ&ダウン周波数変換、フィルタリング、増幅、及び/又は類似の動作を実行してよい。送受信機110は、アナログビームフォーミングを用いるフェーズドアレイ80、又はデジタルビームフォーミングを用いるフェーズドアレイ90を含んでよく、フェーズドアレイは、無指向性アンテナビーム又は指向性アンテナビームを送受信するため、1つ又は複数のアンテナ素子を含んでよい。
【0083】
プロセッサ120は、例えば、中央処理装置(CPU)、又は他のプログラム可能な汎用又は特殊用途向けマイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、プログラマブルコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、又は類似のコンポーネント、又は上記コンポーネントの組合せである。プロセッサ120は、
図2及び
図3において説明したAoAを測定するための方法を実行するよう構成されてよい。
【0084】
記憶媒体130はプロセッサ120に結合され、例えば、任意のタイプの固定又は携帯ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、又は類似のコンポーネント、又は上記コンポーネントの組合せである。記憶媒体130はプロセッサ120によるアクセスのために複数のモジュール又はプログラムを格納し、プロセッサ120は通信装置100の様々な通信機能を実行してよい。
【0085】
通信装置100は、通信システムにおけるユーザ機器であってよい。本発明における用語「ユーザ機器(UE)」は、例えば、移動局、高度移動局(AMS)、サーバ、クライアント、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットワークコンピュータ、ワークステーション、携帯情報端末(PDA)、タブレットパーソナルコンピュータ(PC)、スキャナ、電話装置、ポケットベル、カメラ、テレビ、携帯型ビデオゲームデバイス、音楽デバイス、ワイヤレスセンサ等であってよい。いくつかの応用において、UEは、バス、電車、飛行機、船、車等といった移動環境内で動作する固定型コンピュータデバイスであってよい。
【0086】
通信装置100は、通信システムにおける基地局であってよい。本発明における用語「基地局(BS)」は、例えば、「gNodeB」(gNB)、「eNodeB」(eNB)、Node-B、高度基地局(ABS)、送信受信ポイント(TRP)、免許不要のTRP、基地送受信機システム(BTS)、アクセスポイント、ホームBS、中継局、スキャッタ、リピータ、中間ノード、仲介装置、衛星ベースの通信BS等と同義である。
【0087】
互いに通信する2つの装置、前記の基地局(STA)及びユーザ機器(UE)を有する、より複雑なシステムにおいては、より好ましい通信品質を追求するために信号源のステアリング角が変化する可能性があるため、放出される信号電力は随時変化する可能性がある。
【0088】
図11Aは、本発明の1つの実施形態による、ユーザ機器を走査する基地局を有する通信システムの概略図である。例えば、
図11Aを参照し、基地局STAは、UEとの通信を確立するため、ビーム1101aからビーム1101bへと走査を実行してよい。第1段階で、基地局STAはビーム1101aに対応するステアリング角θ
S1,STAで動作する。次いで、第2段階で、基地局STAはビーム1101bに対応するステアリング角θ
S2,STAへと切り替える。
【0089】
図11Bは、本発明の1つの実施形態による、基地局を走査するユーザ機器を有する通信システムの概略図である。例えば、
図11Bを参照し、UEは、基地局STAとの通信を確立するため、ビーム1102aからビーム1102bへと走査を実行してよい。第1段階で、UEはビーム1102aに対応するステアリング角θ
S1,UEで動作する。次いで、第2段階で、UEはビーム1102bに対応するステアリング角θ
S2,UEへと切り替える。
【0090】
図11Cは、本発明の1つの実施形態による、互いを走査する基地局及びユーザ機器を有する通信システムの概略図である。
図11Cにおいて、基地局STAがUEを走査している間に、UEも基地局を走査している。第1段階で、基地局はステアリング角θ
S1,STAで動作し、UEはステアリング角θ
S1,UEで動作する。第2段階で、基地局はステアリング角θ
S2,STAで動作し、UEはステアリング角θ
S2,UEで動作する。
【0091】
UEのAoAを測定する基地局STAにとって、UEのステアリング角がθS1,UEからθS2,UEへ変化するため、式(7)~(10)のための前提は必ずしも成り立たなくてよいことに注意されたい。
【0092】
そのような状況において、基地局STAからUEへ送信されたパケットは、ステアリング角、アレイサイズ、及びSTAにより測定された推定AoAの情報を更に含んでよい。そのような情報を持つことで、UEは、STAからUEに向かう方向でのSTAのアンテナ利得を推定することができる。基地局STAとUEとの間の通信を通じて、基地局STAは、UEにより推定された基地局STAのAoA、及び/又は、異なる段階でのUEのステアリング角といった追加的な情報を取得してよい。従って、追加的な情報がUEのAoAの測定におけるUEのステアリング角の変更によるエラーを補償するために利用されてよい。
【0093】
受信電力P
rと送信された信号P
tとの間の関係は次のようであることが知られている:
【0094】
ここで、θS,TXは信号源、即ち基地局STAのステアリング角を示し、θAoDは信号源から見た受信側、即ちUEの角度を示し、θS,RXは受信側のステアリング角を示し、θAoA,RXは受信側から見たAoAを示し、GTXとGRXはそれぞれ信号源及び受信側の電力利得を示し、λは信号の波長を示し、Rは信号源と受信側との間の距離を示す。本例において、距離はそのような短時間で変化せず、信号の波長は少々の変化があるものの変化せず、送信された信号の電力Prも変化しないと仮定される。このため、GTX(θS,TX,θAoD)とθS,RXが分かればθAoA,RXを正確に取得することができる。1つの実施形態において、UEが信号源であり基地局が受信側、又はその逆と見なされてよい。
【0095】
図12は、本発明の1つの実施形態による二次元フェーズドアレイの概略図である。
図2と
図3の実施形態において説明したAoAを測定するための方法は、二次元フェーズドアレイにも適用することができる。例えば、
図12に示すように、二次元フェーズドアレイはM×N個のアンテナ素子を含んでよい。アンテナ素子は、z軸とy軸それぞれに沿って均等な間隔λ/2で配置されてよい。そのような構成において、小さなHPBWがAoAを算出するための多数の繰り返しを引き起こし得る。ただし、提案する方法は必要とする走査時間がより少なく、またAoAの満足できる推定を取得するために必要とするデータ及び補償がより少ないため、電力効率がより優れる。
【0096】
上記説明に鑑み、本発明はステアリング可能なフェーズドアレイで到達角度(AoA)を測定するための方法を提供している。ビーム放射パターンの配列係数の放物線近似が本発明の実施形態において開示される。該方法は、正確なAoAの迅速な測定における迅速な追跡の収束結果を提供する。該方法は、アナログビームフォーミング及びデジタルビームフォーミングの両方に適用され、該方法は装置又はビーム追跡のオンザフライな応用において動作可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のステアリング可能なフェーズドアレイを用いた到達角度(AoA)の迅速な測定のための方法は、フェーズドアレイに適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
110:送受信機
1101a、1101b、1102a、1102b:ビーム
120:プロセッサ
130:記憶媒体
40:メインローブ
401、402:電力半値ポイント
403:ピークポイント
81:デジタルプロセッサ
82:AD/DA変換器
83:集約装置
90:フェーズドアレイ
92:AD/DA変換器
AMP:増幅器
ANT:アンテナ素子
GCA:利得制御型増幅器
L:垂直線
L1、L2:破線
MX:混合器
PHS:位相器
PRI1:第1の電力関連情報
PRI2:第2の電力関連情報
PRI3:第3の電力関連情報
【外国語明細書】