(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073998
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】熱伝導シート及び熱伝導シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20230519BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230519BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
C08J5/18 CFH
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181713
(22)【出願日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2021186530
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】久保 佑介
【テーマコード(参考)】
4F071
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
4F071AA67
4F071AB18
4F071AB22
4F071AB27
4F071AB28
4F071AD04
4F071AD05
4F071AE22
4F071AF40Y
4F071AF44Y
4F071AF53
4F071AG05
4F071AG26
4F071AG28
4F071AH12
4F071AH16
4F071BB01
4F071BB06
4F071BC01
5E322AA01
5E322AA02
5E322AB11
5E322FA04
5E322FA09
5F136BC07
5F136FA51
5F136FA63
5F136FA71
5F136FA82
5F136FA88
5F136GA11
(57)【要約】
【課題】低誘電率と高熱伝導率を両立しつつ、長期の熱安定性に優れる熱伝導シートを提供する。
【解決手段】熱伝導シート1は、熱硬化性樹脂2と、異方性熱伝導剤3と、熱伝導性粒子4と、中空フィラー5とを含む熱伝導性樹脂組成物を少なくとも含み、熱伝導率が4.0W/m・K以上であり、比誘電率が4.0以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、異方性熱伝導剤と、熱伝導性粒子と、中空フィラーとを含む熱伝導性樹脂組成物を少なくとも含み、熱伝導率が4.0W/m・K以上であり、比誘電率が4.0以下である、熱伝導シート。
【請求項2】
上記熱硬化性樹脂の体積%を、上記異方性熱伝導剤と上記熱伝導性粒子と上記中空フィラーの各体積%の合計で除した値が0.5以上2.0以下である、請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
上記中空フィラーの材質が、硼珪酸ガラスである、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
上記異方性熱伝導剤が、鱗片状の窒化ホウ素であり、
上記熱伝導性粒子が、凝集窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
【請求項5】
比重が2以下である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
【請求項6】
上記熱硬化性樹脂と、上記異方性熱伝導剤と、上記熱伝導性粒子、上記中空フィラーとを含む熱伝導性樹脂組成物が押出成形された柱状の硬化物が、柱の長さ方向に対し略垂直方向に切断されてなる、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
【請求項7】
熱伝導率が5.0W/m・K以上である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
【請求項8】
上記中空フィラーの含有量が、上記異方性熱伝導剤と上記熱伝導性粒子の総含有量よりも少ない、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
【請求項9】
有機系バルーンを実質的に含まない、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
【請求項10】
熱硬化性樹脂と、異方性熱伝導剤と、熱伝導性粒子と、中空フィラーとを含む熱伝導性樹脂組成物を作製する工程と、
上記熱伝導性樹脂組成物を押出成形し、柱状の硬化物を得る工程と、
上記柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断し、熱伝導率が4.0W/m・K以上であり、比誘電率が4.0以下である熱伝導シートを得る工程と
を有する熱伝導シートの製造方法。
【請求項11】
発熱体と、
放熱体と、
上記発熱体と上記放熱体との間に配置された、請求項1または2に記載の熱伝導シートと
からなる電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、熱伝導シート及び熱伝導シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の更なる高性能化に伴って、半導体素子の高密度化、高実装化が進んでいる。これに伴って、電子機器を構成する電子部品から発熱する熱をさらに効率よく放熱することが重要になっている。また、今後の5G通信やミリ波レーダには、従来から使用されている6GHz以下の周波数バンドに加え、ミリ波領域といわれる20GHz以上の新たな周波数帯での通信が必要となる。このような技術の実用化には、高い周波数帯域での通信により適した誘電特性を満たす材料開発が求められる。
【0003】
放熱材料として、発熱体である半導体素子と、放熱部材であるヒートシンクなどの間に設けられる熱伝導シートがある。上述した観点から、熱伝導率がより向上し、より低誘電率化された熱伝導シートが求められる。
【0004】
誘電特性を満たすためのフィラーの例として窒化ホウ素が挙げられる。窒化ホウ素は、熱伝導シートにおいて、高い熱伝導率を維持しつつ、誘電率を低下させるために有用である。また、誘電特性を良好とする目的や、熱伝導シート自体を軽量化する目的で、中空フィラーを用いることが提案されている(例えば特許文献1,2)。
【0005】
特許文献1には、エラストマからなる母剤に嵩比重が0.1~1.0の中空フィラーと熱伝導フィラーとを混合し、シート状に成形してなる熱伝導シートであって、熱伝導フィラーとして最も多く含まれる熱伝導フィラーうちの少なくとも1種類が窒化ホウ素以外の熱伝導フィラーである熱伝導シートが記載されている。また、特許文献1には、バインダ樹脂としてシリコーン樹脂を用い、且つ、中空フィラーとして樹脂系バルーン(有機系バルーン)を用いた熱伝導シートが記載されている。しかし、特許文献1で用いられる樹脂系バルーンは、長期の熱安定性に劣る傾向にある。
【0006】
特許文献2には、母材となるオルガノポリシロキサン成分100質量部、熱伝導性フィラー400~2500質量部、及び、気体を内包した中空粒子5~300質量部を含有する熱伝導性シリコーン組成物が記載されている。例えば、特許文献2には、熱伝導性フィラーとして酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムを用い、バインダ樹脂をシリコーン樹脂とし、中空フィラーとしてガラスバルーンを用いた熱伝導性シリコーン組成物の硬化物が記載されている。しかし、特許文献2に記載された熱伝導性シリコーン組成物の硬化物は、熱伝導率が低い傾向にある。また、特許文献2には、熱伝導性シリコーン組成物の硬化物が、長期の熱安定性を有するか否かについて記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-119674号公報
【特許文献2】特開2020-29524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、低誘電率と高熱伝導率を両立しつつ、長期の熱安定性に優れる熱伝導シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術に係る熱伝導シートは、熱硬化性樹脂と、異方性熱伝導剤と、熱伝導性粒子と、中空フィラーとを含む熱伝導性樹脂組成物を少なくとも含み、熱伝導率が4.0W/m・K以上であり、比誘電率が4.0以下である。
【0010】
本技術に係る熱伝導シートの製造方法は、熱硬化性樹脂と、異方性熱伝導剤と、熱伝導性粒子と、中空フィラーとを含む熱伝導性樹脂組成物を作製する工程と、熱伝導性樹脂組成物を押出成形し、柱状の硬化物を得る工程と、柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断し、熱伝導率が4.0W/m・K以上であり、比誘電率が4.0以下である熱伝導シートを得る工程とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、低誘電率と高熱伝導率を両立しつつ、長期の熱安定性に優れる熱伝導シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、熱伝導シートの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、熱伝導シートの供給形態の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、異方性熱伝導剤の一例である、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、熱伝導シートを適用した半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、異方性熱伝導剤および熱伝導性粒子の平均粒子径(D50)とは、異方性熱伝導剤または熱伝導性粒子の粒子径分布全体を100%とした場合に、粒子径分布の小粒子径側から粒子径の値の累積カーブを求めたとき、その累積値が50%となるときの粒子径をいう。なお、本明細書における粒度分布(粒子径分布)は、体積基準によって求められたものである。粒度分布の測定方法としては、例えば、レーザー回折型粒度分布測定機を用いる方法が挙げられる。
【0014】
<熱伝導シート>
図1は、本技術に係る熱伝導シート1の一例を示す断面図である。
図1中、Aは熱伝導シート1の面方向を表し、Bは熱伝導シート1の厚み方向を表す。熱伝導シート1は、熱硬化性樹脂2と、異方性熱伝導剤3と、熱伝導性粒子4と、中空フィラー5とを含む熱伝導性樹脂組成物を少なくとも含み、例えば、熱硬化性樹脂2と、異方性熱伝導剤3と、熱伝導性粒子4と、中空フィラー5とを含む熱伝導性樹脂組成物からなる。熱伝導シート1は、熱伝導率が4.0W/m・K以上であり、比誘電率が4.0以下である。このように、熱伝導シート1は、低誘電率と高熱伝導率を両立しつつ、長期の熱安定性にも優れる。熱伝導シート1は、熱硬化性樹脂2に、異方性熱伝導剤3と、熱伝導性粒子4と、中空フィラー5とが分散していることが好ましい。
【0015】
熱伝導シート1の熱伝導率は、高熱伝導化の観点では高いほど好ましく、例えば、熱伝導シート1の厚み方向Bのバルク熱伝導率(熱伝導シートそのものの熱伝導率)が4.0W/m・K以上であり、4.4W/m・K以上であってもよく、4.8W/m・K以上であってもよく、5.0W/m・K以上であってもよく、5.5W/m・K以上であってもよく、5.7W/m・K以上であってもよく、5.9W/m・Kの範囲であってもよく、4.4~5.9W/m・Kの範囲であってもよく、5.0~5.9W/m・Kの範囲であってもよい。熱伝導シート1の熱伝導率は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0016】
熱伝導シート1は、高熱伝導化の観点では、異方性熱伝導剤3が熱伝導シート1の厚み方向Bに配向していることが好ましい。ここで、熱伝導シート1の厚み方向Bに異方性熱伝導剤3が配向しているとは、例えば、熱伝導シート1中の全ての異方性熱伝導剤3のうち、熱伝導シート1の厚み方向Bに長軸が配向している異方性熱伝導剤3の割合が50%以上であり、55%以上であってもよく、60%以上であってもよく、65%以上であってもよく、70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、95%以上であってもよく、99%以上であってもよい。異方性熱伝導剤3の詳細については後述する。
【0017】
熱伝導シート1の比誘電率は、低誘電率化の観点では低いほど好ましく、例えば厚み方向Bの比誘電率(30GHz)が4.0以下であり、3.9以下であってもよく、3.7以下であってもよく、3.5以下であってもよく、3.2以下であってもよく、3.2~3.9の範囲であってもよく、3.2~3.7の範囲であってもよく、3.2~3.5の範囲であってもよい。熱伝導シート1の比誘電率は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0018】
熱伝導シート1は、高温信頼性が良好であることが好ましく、例えば、100℃の環境下で30日間放置した後に、熱伝導シート1の表面に気泡が確認されないことが好ましい。熱伝導シート1の高温信頼性は、後述する実施例に記載の方法で評価することができる。
【0019】
熱伝導シート1は、成形性が良好であることが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂2と異方性熱伝導剤3と熱伝導性粒子4と中空フィラー5とを含む熱伝導性樹脂組成物の分散性が良好であることが好ましい。熱伝導シート1の成形性は、後述する実施例に記載の方法で評価することができる。
【0020】
図2は、熱伝導シート1の供給形態の一例を示す断面図である。一例として、熱伝導シート1は、剥離フィルム6に挟持された熱伝導シートの供給形態7としてもよい。すなわち、熱伝導シートの供給形態7は、例えば、剥離フィルム6Aと熱伝導シート1と剥離フィルム6Bとをこの順に備える積層体である。
【0021】
剥離フィルム6は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、グラシン紙等からなるフィルムに、シリコーンなどで剥離処理をしたものが挙げられる。剥離フィルム6の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5~200μmとすることができる。剥離フィルム6A,6Bは、材質が同じであってもよいし、材質が異なっていてもよい。また、剥離フィルム6A,6Bは、厚みが同じであってもよいし、厚みが異なっていてもよい。
【0022】
熱伝導シート1の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、熱伝導シート1の厚みは、0.05mm以上とすることができ、0.1mm以上とすることもできる。また、熱伝導シート1の厚みの上限値は、5mm以下とすることができ、4mm以下であってもよく、3mm以下であってもよい。熱伝導シート1は、取扱性の観点では、厚みが0.1~4mmであることが好ましい。熱伝導シート1の厚みは、例えば、任意の5箇所で測定し、その算術平均値から求めることができる。
【0023】
熱伝導シート1は、電子部品の軽量化の観点では比重が小さいほど好ましく、例えば、比重が2以下であってもよく、1以下であってもよく、0.66以下であってもよく、0.53以下であってもよく、0.52以下であってもよく、0.45以下であってもよく、0.43以下であってもよく、0.40~0.60の範囲であってもよい。熱伝導シート1の比重は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0024】
熱伝導シート1は、熱硬化性樹脂2の体積%を、異方性熱伝導剤3と熱伝導性粒子4と中空フィラー5の各体積%の合計で除した値(熱硬化性樹脂2/(異方性熱伝導剤3+熱伝導性粒子4+中空フィラー5)、以下、特定の配合体積比とも称する)が0.5以上であることが好ましく、0.8以上であってもよく、1.0以上であってもよく、1.2以上であってもよく、1.5以上であってもよく、1.8以上であってもよく、2.0以上であってもよい。特定の配合体積比が0.5以上であることにより、熱硬化性樹脂2の体積比が一定以上となるため、熱伝導シート1の高温信頼性がより良好となる傾向にある。また、特定の配合体積比の上限値は、特に制限されず、例えば、2.5以下であってもよく、2.3以下であってもよく、2.1以下であってもよく、2.0以下であってもよく、1.9以下であってもよく、1.8以下であってもよい。特定の配合体積比の上限値は、熱伝導シート1熱伝導率をより良好にする観点では2.0以下が好ましい。
【0025】
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂2は、異方性熱伝導剤3と熱伝導性粒子4と中空フィラー5とを熱伝導シート1内に保持するためのバインダ樹脂である。熱硬化性樹脂2は、熱伝導シート1に要求される機械的強度、耐熱性、電気的性質等の特性に応じて選択される。
【0026】
熱硬化性樹脂としては、架橋ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、付加反応もしくは縮合反応型のシリコーン樹脂等が挙げられる。架橋ゴムの具体例としては、天然ゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴムが挙げられる。
【0027】
熱硬化性樹脂2としては、例えば、発熱体(例えば電子部品)の発熱面とヒートシンク面との密着性の観点では、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂としては、例えば、アルケニル基を有するシリコーン(ポリオルガノシロキサン)を主成分とし、硬化触媒を含有する主剤と、ヒドロシリル基(Si-H基)を有する硬化剤とからなる、2液型の付加反応型シリコーン樹脂を用いることができる。アルケニル基を有するシリコーンとしては、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができる。一例として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができる。硬化触媒は、アルケニル基を有するシリコーン中のアルケニル基と、ヒドロシリル基を有する硬化剤中のヒドロシリル基との付加反応を促進するための触媒である。硬化触媒としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒が挙げられ、例えば、白金族系硬化触媒、例えば白金、ロジウム、パラジウムなどの白金族金属単体や塩化白金などを用いることができる。ヒドロシリル基を有する硬化剤としては、例えば、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン(ケイ素原子に直接結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン)を用いることができる。
【0028】
特に、発熱体への熱伝導シート1の密着性をより良好にする観点では、熱硬化性樹脂2が、1分子中にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、1分子中にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとからなる、付加反応型のシリコーン樹脂であることが好ましい。
【0029】
熱伝導シート1中の熱硬化性樹脂2の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、熱伝導シート1中の熱硬化性樹脂2の含有量は、30体積%超とすることができ、31体積%以上であってもよく、35体積%以上であってもよく、40体積%以上であってもよく、45体積%以上であってもよく、50体積%以上であってもよい。また、熱伝導シート1中の熱硬化性樹脂2の含有量の上限値は、70体積%以下とすることができ、65体積%以下であってもよく、60体積%以下であってもよく、55体積%以下であってもよく、50体積%以下であってもよく、45体積%以下であってもよく、37体積%以下であってもよい。特に、高温信頼性をより良好にする観点では、熱伝導シート1中の熱硬化性樹脂2の含有量は、30体積%超70体積%以下の範囲とすることが好ましく、35~70体積%の範囲であってもよく、35~65体積%の範囲であってもよい。熱硬化性樹脂2は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<異方性熱伝導剤>
異方性熱伝導剤3は、形状に異方性を有する熱伝導性フィラーである。異方性熱伝導剤3としては、長軸と短軸と厚みとを有する熱伝導性フィラー、例えば鱗片状の熱伝導性フィラーが挙げられる。鱗片状の熱伝導性フィラーとは、長軸と短軸と厚みとを有する熱伝導性フィラーであって、高アスペクト比(長軸/厚み)であり、長軸を含む面方向に等方的な熱伝導率を有するものである。鱗片状の熱伝導性フィラーの短軸とは、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸を含む面において、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸の中点を通って交差する方向であって、鱗片状の熱伝導性フィラーの最も短い部分の長さをいう。鱗片状の熱伝導性フィラーの厚みとは、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸を含む面の厚みを10点測定して平均した値をいう。異方性熱伝導剤3のアスペクト比は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、異方性熱伝導剤3のアスペクト比は、10~100の範囲とすることができ、20~50の範囲であってもよく、15~40の範囲であってもよい。異方性熱伝導剤3の長軸、短軸及び厚みは、例えば、マイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)、粒度分布計などにより測定できる。
【0031】
異方性熱伝導剤3の材質は、特に限定されず、例えば、窒化ホウ素(BN)、雲母、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、シリカ、酸化亜鉛、二硫化モリブデン等が挙げられ、熱伝導率の観点では、窒化ホウ素が好ましい。異方性熱伝導剤3は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
図3は、異方性熱伝導剤3の一例である、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素3Aを模式的に示す斜視図である。
図3中、aは鱗片状の窒化ホウ素3Aの長軸を表し、bは鱗片状の窒化ホウ素3Aの厚みを表し、cは鱗片状の窒化ホウ素3Aの短軸を表す。異方性熱伝導剤3は、熱伝導率の観点では、
図3に示すように結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素3Aが好ましい。本技術では、異方性熱伝導剤3として、球状の熱伝導性フィラー(例えば球状の窒化ホウ素)よりも安価な鱗片状の熱伝導性フィラー(例えば、鱗片状の窒化ホウ素3A)を用いることで、低誘電率と高熱伝導率を両立しつつ、長期の熱安定性に優れた熱伝導シート1がより低コストで得られる。
【0033】
異方性熱伝導剤3の平均粒子径は、目的に応じて適宜選択することができる。熱伝導シート1の熱伝導性をより良好にする観点では、熱伝導シート1中の異方性熱伝導剤3の平均粒子径は、例えば、15μm以上とすることができ、20μm以上であってもよく、25μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、35μm以上であってもよく、40μm以上であってもよい。また、熱伝導シート1中の異方性熱伝導剤3の平均粒子径は、30~60μmの範囲であってもよく、30~50μmの範囲であってもよく、35~55μmの範囲であってもよく、35~45μmの範囲であってもよい。
【0034】
熱伝導シート1中の異方性熱伝導剤3の含有量は、目的に応じて適宜選択できる。例えば、熱伝導シート1の熱伝導性をより良好にする観点では、熱伝導シート1中の異方性熱伝導剤3の含有量は、20体積%以上とすることができ、23体積%以上であってもよく、25体積%以上であってもよい。また、熱伝導シート1の熱伝導性をより良好にする観点では、熱伝導シート1中における異方性熱伝導剤3の含有量は、30体積%以下とすることができ、28体積%以下であってもよく、25体積%以下であってもよい。熱伝導シート1中における異方性熱伝導剤3の含有量は、20~25体積%の範囲であってもよい。
【0035】
<熱伝導性粒子>
熱伝導性粒子4は、異方性熱伝導剤3以外の熱伝導性粒子(熱伝導性フィラー)、すなわち、形状に異方性を有しない熱伝導性粒子である。熱伝導性粒子4の形状は、球状、粉末状、顆粒状などを含む。熱伝導性粒子4の材質は、熱伝導シート1の熱伝導性の観点では、例えば、セラミックフィラーが好ましく、具体例としては、酸化アルミニウム(アルミナ、サファイア)、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素などが挙げられる。熱伝導性粒子4は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、平均粒子径が異なる2種以上の熱伝導性粒子を併用してもよい。
【0036】
特に、熱伝導性粒子4としては、熱伝導シート1の低誘電率と高熱伝導率を両立することや、熱伝導シート1の比重を考慮して、凝集窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水酸化アルミニウムを含むことがより好ましい。また、熱伝導シート1の低誘電率と高熱伝導率を両立することや、熱伝導シート1の比重の観点では、異方性熱伝導剤3が鱗片状の窒化ホウ素であり、熱伝導性粒子4が、凝集窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
熱伝導性粒子4の一例である水酸化アルミニウムの平均粒子径は、熱伝導シート1の比重の観点では、0.1~10μmとすることができ、0.1~8μmであってもよく、0.1~7μmであってもよく、0.1~3μmであってもよい。
【0038】
熱伝導シート1中の熱伝導性粒子4の含有量は、目的に応じて適宜選択することができる。熱伝導シート1中における熱伝導性粒子4の含有量は、5体積%以上とすることができ、10体積%以上であってもよく、15体積%以上であってもよく、20体積%以上であってもよく、25体積%以上であってもよい。また、熱伝導シート1中の熱伝導性粒子4の含有量の上限値は、例えば、40体積%以下とすることができ、35体積%以下であってもよく、30体積%以下であってもよい。特に、熱伝導シート1中の熱伝導性粒子4の含有量は、上述した特定の配合体積比の観点では、5~25体積%の範囲が好ましく、10~25体積%の範囲であってもよい。
【0039】
熱伝導シート1中、異方性熱伝導剤3と熱伝導性粒子4の合計含有量は、上述した特定の配合体積比の観点では、25体積%以上とすることができ、30体積%以上であってもよく、40体積%以上であってもよく、45体積%以上であってもよく、50体積%以上であってもよく、25~50体積%の範囲であってもよく、30~50体積%の範囲であってもよい。
【0040】
<中空フィラー>
中空フィラー5は、内部が中空のフィラーである。中空フィラー5は、内部が気体であるため、熱伝導シート1の比誘電率を低くすることに寄与する。中空フィラー5の材質は特に限定されないが、熱伝導シート1の低誘電率と高熱伝導率を両立しつつ、熱伝導シート1の長期の熱安定性を良好にする観点では、中空フィラー5として材質が硼珪酸ガラスであるガラスバルーンを含むことが好ましい。中空フィラー5は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
中空フィラー5の嵩密度は、例えば、0.1~1.0g/cm3の範囲であり、0.2~0.8g/cm3の範囲であってもよい。中空フィラー5の嵩密度が小さすぎないことで、熱伝導シート1の比誘電率をより効果的に低下させることが可能となる。また、中空フィラー5の嵩密度が大きすぎないことで、中空フィラー5の内部の空気量が減少し、熱伝導シート1の比誘電率の低下に寄与しやすい傾向にある。また、中空フィラー5の嵩密度が大きすぎないことで、中空フィラー5の外形状が熱伝導シート1に現れることを抑制できるため、発熱体や放熱体に対する熱伝導シート1の密着性の低下を抑制でき、その結果、熱伝導シート1の性能をより確実に発揮させることができる。
【0042】
中空フィラー5の平均粒子径は、特に限定されず、例えば、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、25μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。また、ガラスバルーンの平均粒子径の上限値は、例えば、300μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、80μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。中空フィラー5の平均粒子径は、5~25μmの範囲であってもよい。
【0043】
熱伝導シート1中、中空フィラー5の含有量は、5体積%以上とすることができ、10体積%以上であってもよく、15体積%以上であってもよい。また、熱伝導シート1における中空フィラー5の含有量は、20体積%未満とすることができ、19体積%以下であってもよく、15体積%以下であってもよい。特に、熱伝導シート1における中空フィラー5の含有量は、上述した特定の配合体積比の観点では、5体積%以上20体積%未満とすることが好ましく、5~15体積%の範囲とすることも好ましい。また、熱伝導シート1における中空フィラー5の含有量は、異方性熱伝導剤3と熱伝導性粒子4の総含有量よりも少ないことが好ましい。これにより、熱伝導シート1の成形時に熱伝導シート1の柔軟性が損なわれることをより効果的に抑制できる。例えば、熱伝導シート1における中空フィラー5の含有量(体積%)は、異方性熱伝導剤3と熱伝導性粒子4の総含有量(体積%)の1/2以下であってもよく、1/3以下であってもよい。
【0044】
また、熱伝導シート1は、耐熱性(高温信頼性)の観点から、中空フィラー5として、ガラスバルーン以外の中空フィラー、具体的には有機系バルーンを実質的に含まないことが好ましい。有機系バルーンは、内部に揮発性溶剤を含むため、高温環境下(例えば、100℃以上の環境下)では、その揮発性溶剤がバルーン内で気化し、膨張して割れ、熱伝導シートの高温信頼性を損なうおそれがある。なお、熱伝導シート1は、本技術の効果を損なわない範囲で、有機系バルーンを含んでもよい。熱伝導シート1中の有機系バルーンの含有量は、例えば、10体積%以下とすることができ、5体積%以下であってもよく、3体積%以下であってもよく、1体積%以下であってもよく、0.1体積%以下であってもよく、0体積%であってもよい。
【0045】
熱伝導シート1は、本技術の効果を損なわない範囲で、必要に応じて上述した成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、カップリング剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、溶剤などが挙げられる。
【0046】
<熱伝導シートの製造方法>
熱伝導シート1の製造方法は、下記工程Aと、工程Bと、工程Cとを有する。
【0047】
<工程A>
工程Aでは、熱硬化性樹脂2と、異方性熱伝導剤3と、熱伝導性粒子4と、中空フィラー5とを含む熱伝導性樹脂組成物を作製する。例えば、異方性熱伝導剤3と、熱伝導性粒子4と、中空フィラー5とを熱硬化性樹脂2に分散させることにより熱伝導性樹脂組成物を作製する。また、熱伝導性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂2と、異方性熱伝導剤3と、熱伝導性粒子4と、中空フィラー5以外に、必要に応じて上述した他の成分を公知の手法により均一に混合して調製してもよい。
【0048】
<工程B>
工程Bでは、工程Aで作製した熱伝導性樹脂組成物を押出成形し、柱状の硬化物を得る。例えば、工程Bでは、熱伝導性樹脂組成物を押出成形した後硬化し、柱状の硬化物を得る。押出成形する方法は、特に制限されず、公知の各種押出成形法の中から、熱伝導性樹脂組成物の粘度や熱伝導シート1に要求される特性等に応じて適宜採用することができる。押出成形法において、熱伝導性樹脂組成物をダイより押し出す際、熱伝導性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂2が流動し、その流動方向に沿って異方性熱伝導剤3が配向する。
【0049】
工程Bで得られる柱状の硬化物の大きさ・形状は、求められる熱伝導シート1の大きさに応じて決めることができる。例えば、断面の縦の大きさが0.5~15cmで横の大きさが0.5~15cmの直方体が挙げられる。直方体の長さは必要に応じて決定すればよい。工程Bにおいて、熱伝導性樹脂組成物を押出成形した後に熱硬化させる場合、熱硬化における硬化温度は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂2がシリコーン樹脂である場合、60℃~120℃の範囲とすることができる。熱硬化における硬化時間は、例えば、30分~10時間の範囲とすることができる。
【0050】
<工程C>
工程Cでは、工程Bで得た柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断することで熱伝導シート1を得る。工程Cで得られる熱伝導シート1の表面(切断面)には、異方性熱伝導剤3が露出する。柱状の硬化物の切断方法は、特に制限されず、柱状の硬化物の大きさや機械的強度により公知のスライス装置の中から適宜選択することができる。柱状の硬化物の切断方向は、成形方法が押出成形法である場合、押出し方向に異方性熱伝導剤3が配向しているものもあるため、押出し方向に対して60~120度であることが好ましく、70~100度の方向であることがより好ましく、90度(略垂直)の方向であることがさらに好ましい。柱状の硬化物の切断方向は、上記の他は特に制限はなく、熱伝導シート1の使用目的等に応じて適宜選択することができる。
【0051】
このような工程Aと、工程Bと、工程Cとを有する熱伝導シートの製造方法では、熱伝導率が4.0W/m・K以上であり、比誘電率が4.0以下である熱伝導シート1が得られる。
【0052】
熱伝導シート1の製造方法は、上述した例に限定されず、例えば、工程Cの後に、切断面をプレスする工程Dをさらに有してもよい。プレスする工程Dをさらに有することで、工程Cで得られる熱伝導シート1の表面がより平滑化され、他の部材との密着性をより向上させることができる。プレスの方法としては、平盤と表面が平坦なプレスヘッドとからなる一対のプレス装置を使用することができる。また、ピンチロールでプレスしてもよい。プレスの際の圧力としては、例えば、0.1~100MPaとすることができる。プレスの効果をより高め、プレス時間を短縮するために、プレスは、熱硬化性樹脂2のガラス転移温度(Tg)以上で行うことが好ましい。例えば、プレス温度は、0~180℃とすることができ、室温(例えば25℃)~100℃の温度範囲内であってもよく、30~100℃であってもよい。
【0053】
<電子機器>
熱伝導シート1は、例えば、発熱体と放熱体との間に配置させることにより、発熱体で生じた熱を放熱体に逃がすためにそれらの間に配された構造の電子機器(サーマルデバイス)とすることができる。電子機器は、発熱体と放熱体と熱伝導シート1とを少なくとも有し、必要に応じて、その他の部材をさらに有してもよい。このように、熱伝導シート1を適用した電子機器は、熱伝導シート1により低誘電率と高熱伝導率を両立しつつ、長期の熱安定性に優れ、発熱体への熱伝導シート1の密着性にも優れる。
【0054】
発熱体としては、特に限定されず、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの集積回路素子、トランジスタ、抵抗器など、電気回路において発熱する電子部品等が挙げられる。また、発熱体には、通信機器における光トランシーバ等の光信号を受信する部品も含まれる。
【0055】
放熱体としては、特に限定されず、例えば、ヒートシンクやヒートスプレッダなど、集積回路素子やトランジスタ、光トランシーバ筐体などと組み合わされて用いられるものが挙げられる。ヒートシンクやヒートスプレッダの材質としては、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。放熱体としては、ヒートスプレッダやヒートシンク以外にも、熱源から発生する熱を伝導して外部に放散させるものであればよく、例えば、放熱器、冷却器、ダイパッド、プリント基板、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、ベーパーチャンバー、金属カバー、筐体等が挙げられる。ヒートパイプは、例えば、円筒状、略円筒状又は扁平筒状の中空構造体である。
【0056】
図4は、熱伝導シートを適用した半導体装置の一例を示す断面図である。例えば、熱伝導シート1は、
図4に示すように、各種電子機器に内蔵される半導体装置50に実装され、発熱体と放熱体との間に挟持される。
図4に示す半導体装置50は、電子部品51と、ヒートスプレッダ52と、熱伝導シート1とを備え、熱伝導シート1がヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持される。熱伝導シート1が、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に挟持されることにより、ヒートスプレッダ52とともに、電子部品51の熱を放熱する放熱部材を構成する。熱伝導シート1の実装場所は、ヒートスプレッダ52と電子部品51との間や、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に限らず、電子機器や半導体装置の構成に応じて、適宜選択できる。ヒートスプレッダ52は、例えば方形板状に形成され、電子部品51と対峙する主面52aと、主面52aの外周に沿って立設された側壁52bとを有する。ヒートスプレッダ52は、側壁52bに囲まれた主面52aに熱伝導シート1が設けられ、主面52aと反対側の他面52cに熱伝導シート1を介してヒートシンク53が設けられる。
【実施例0057】
以下、本技術の実施例について説明する。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
シリコーン樹脂45体積%と、中空ガラスビーズ(平均粒子径:約18μm、嵩密度:0.6g/cm3、材質:硼珪酸ガラス)10体積%と、水酸化アルミニウム(平均粒子径:約1μm)20体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(平均粒子径:約40μm、アスペクト比15~40)25体積%とを均一に混合することにより、特定の配合体積比が0.82である熱伝導性樹脂組成物を調製した。この熱伝導性樹脂組成物を、押出成形法により、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、60℃のオーブンで4時間加熱して、柱状の硬化物(成形体ブロック)を形成した。なお、金型の内面には、剥離処理を行なったポリエチレンテレフタレートフィルムを、剥離処理面が内側となるように貼り付けておいた。得られた柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略直交する方向に、柱状の硬化物をスライサーで1mm厚のシート状に切断(スライス)することにより、鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導シートを得た。
【0059】
<実施例2>
実施例2では、シリコーン樹脂35体積%と、中空ガラスビーズ(平均粒子径:約18μm、嵩密度:0.6g/cm3、材質:硼珪酸ガラス)15体積%と、水酸化アルミニウム(平均粒子径:約1μm)25体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(平均粒子径:約40μm、アスペクト比15~40)25体積%とを均一に混合することにより、特定の配合体積比が0.54である熱伝導性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。
【0060】
<実施例3>
実施例3では、シリコーン樹脂65体積%と、中空ガラスビーズ(平均粒子径:約18μm、嵩密度:0.6g/cm3、材質:硼珪酸ガラス)5体積%と、水酸化アルミニウム(平均粒子径:約1μm)10体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(平均粒子径:約40μm、アスペクト比15~40)20体積%とを均一に混合することにより、特定の配合体積比が1.86である熱伝導性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。
【0061】
<実施例4>
実施例4では、シリコーン樹脂70体積%と、中空ガラスビーズ(平均粒子径:約18μm、嵩密度:0.6g/cm3、材質:硼珪酸ガラス)5体積%と、水酸化アルミニウム(平均粒子径:約1μm)5体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(平均粒子径:約40μm、アスペクト比15~40)20体積%とを均一に混合することにより、特定の配合体積比が2.33である熱伝導性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。
【0062】
<比較例1>
比較例1では、シリコーン樹脂30体積%と、中空ガラスビーズ(平均粒子径:約18μm、嵩密度:0.6g/cm3、材質:硼珪酸ガラス)20体積%と、水酸化アルミニウム(平均粒子径:約1μm)25体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(平均粒子径:約40μm、アスペクト比15~40)25体積%とを均一に混合することにより、特定の配合体積比が0.43である熱伝導性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。
【0063】
<比較例2>
比較例2では、シリコーン樹脂45体積%と、有機系バルーン(平均粒子径:約35~55μm、嵩密度:0.03g/cm3)10体積%と、水酸化アルミニウム(平均粒子径:約1μm)20体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(平均粒子径:約40μm、アスペクト比15~40)25体積%とを均一に混合することにより、特定の配合体積比が0.82である熱伝導性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。
【0064】
<比較例3>
比較例3では、シリコーン樹脂45体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(平均粒子径:約40μm、アスペクト比15~40)25体積%と、窒化アルミニウム(平均粒子径:約1μm)30体積%とを均一に混合することにより、(シリコーン樹脂の体積%/(鱗片状の窒化ホウ素の体積%+窒化アルミニウムの体積%)が0.82である熱伝導性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で熱伝導シートを得た。
【0065】
<シート比重>
熱伝導シートの縦、横の長さと厚みから求めた体積と、熱伝導シートの重量を測定することにより、熱伝導シートの比重を求めた。結果を表1に示す。
【0066】
<熱伝導率>
熱伝導率は、ASTM-D5470に準拠した方法で各熱伝導シートの熱抵抗を測定し、横軸に測定時の熱伝導シートの厚み(mm)、縦軸に熱伝導シートの熱抵抗(℃・cm2/W)をプロットし、そのプロットの傾きから熱伝導シートのバルク熱伝導率(W/m・K)を算出した。熱伝導シートの熱抵抗は、厚みの異なる熱伝導シートを3種類用意して、それぞれの厚みの熱伝導シートについて測定した。結果を表1に示す。
【0067】
<比誘電率>
Sパラメータ法を用いて、熱伝導シートの厚み方向の比誘電率(30GHz)を測定した。結果を表1に示す。具体的には、導波管を含む伝送路を用意し、導波管に試料を挿入し、ネットワークアナライザを用いて比誘電率を求める方法である。導波管は、キーコム(株)社製のWR28を、ネットワークアナライザは、キーサイトテクノロジー社製のPNA5227Bを用いた。なお、本試験においては、シートを7.1mm×3.5mm×1.0mm厚に切り出して測定した。
【0068】
<高温信頼性>
50μmのPETフィルム2枚の間に熱伝導シートを挟んだ状態で、100℃のオーブン内で30日間放置した後、熱伝導シート表面の気泡の有無を目視で確認した。熱伝導シート表面に気泡が確認されなかったときを「OK」と評価し、それ以外を「NG」と評価した。結果を表1に示す。
【0069】
<シート成形性>
熱伝導シートの成形性について、熱伝導性樹脂組成物がなじむかどうか(熱硬化性樹脂2に、異方性熱伝導剤3と熱伝導性粒子4と中空フィラー5とが分散するかどうか)を目視で確認した。熱伝導性樹脂組成物の分散性が良かったときを「OK」と評価し、それ以外「NG」と評価した。結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
実施例1~4で得られた熱伝導シートは、熱硬化性樹脂と、異方性熱伝導剤と、熱伝導性粒子と、中空フィラーとを含む熱伝導性樹脂組成物を少なくとも含み、熱伝導率が4.0W/m・K以上であり、比誘電率が4.0以下であり、高温信頼性も良好であることが分かった。すなわち、実施例1~4で得られた熱伝導シートは、低誘電率と高熱伝導率を両立しつつ、長期の熱安定性に優れることが分かった。また、実施例1~4で得られた熱伝導シートは、成形性も良好であることが分かった。
【0072】
特に、実施例1~3で得られた熱伝導シートは、熱硬化性樹脂と、異方性熱伝導剤と、熱伝導性粒子と、中空フィラーとを含む熱伝導性樹脂組成物を少なくとも含み、熱伝導率が5.0W/m・K以上であり、比誘電率が4.0以下であることが分かった。すなわち、実施例1~3で得られた熱伝導シートは、実施例4で得られた熱伝導シートに比べて、高熱伝導率がより良好であることが分かった。
【0073】
比較例1で得られた熱伝導シートは、高温信頼性とシート成形性が良好ではないことが分かった。
【0074】
比較例2で得られた熱伝導シートは、高温信頼性が良好ではないことが分かった。比較例2で得られた熱伝導シートは、有機系バルーンを含んだためと考えられる。
【0075】
比較例3で得られた熱伝導シートは、比誘電率が4.0以下であることを満たさないことが分かった。比較例3で得られた熱伝導シートは、中空フィラーを含まなかったためと考えられる。
1 熱伝導シート、2 熱硬化性樹脂、3 異方性熱伝導剤、4 熱伝導性粒子、5 中空フィラー、6 剥離フィルム、7 熱伝導シートの供給形態、50 半導体装置、51 電子部品、52 ヒートスプレッダ、52a 主面、52b 側壁、52c 他面、53 ヒートシンク