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特開2023-7401ガーネット構造のリン光剤およびこのリン光剤を含む発光装置
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  • 特開-ガーネット構造のリン光剤およびこのリン光剤を含む発光装置 図1
  • 特開-ガーネット構造のリン光剤およびこのリン光剤を含む発光装置 図2
  • 特開-ガーネット構造のリン光剤およびこのリン光剤を含む発光装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007401
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ガーネット構造のリン光剤およびこのリン光剤を含む発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/80 20060101AFI20230111BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 11/73 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20230111BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20230111BHJP
【FI】
C09K11/80
C09K11/64
C09K11/59
C09K11/56
C09K11/67
C09K11/66
C09K11/78
C09K11/73
C09K11/00 A
C09K11/08 J
H01L33/50
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073662
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】202110725551.4
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519229622
【氏名又は名称】有研稀土高技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】GRIREM HI-TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】North of Gushan South Road And East Of Happiness Road,Hi-tech industrial zone,Yanjiao Town,Sanhe City, Langfang City, Hebei 065200, China
(71)【出願人】
【識別番号】521180371
【氏名又は名称】河北雄安稀土功能材料創新中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】Rare Earth Functional Materials (Xiong’an) Innovation Center Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.97-1, Jianli Road, Gouxi Village, Chengguan Town, Rongcheng County, Baoding City, Hebei 071700, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉 栄輝
(72)【発明者】
【氏名】秦 少偉
(72)【発明者】
【氏名】劉 元紅
(72)【発明者】
【氏名】李 彦鋒
(72)【発明者】
【氏名】陳 暁霞
(72)【発明者】
【氏名】馬 小楽
(72)【発明者】
【氏名】薛 原
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CA05
4H001XA03
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA15
4H001XA16
4H001XA17
4H001XA19
4H001XA20
4H001XA22
4H001XA30
4H001XA31
4H001XA32
4H001XA38
4H001XA39
4H001XA40
4H001XA56
4H001YA25
4H001YA29
4H001YA47
4H001YA58
4H001YA63
5F142AA02
5F142AA84
5F142DA01
5F142DA13
5F142DA22
5F142DA23
5F142DA24
5F142DA32
5F142DA43
5F142DA45
5F142DA53
5F142DA54
5F142DA55
5F142DA56
5F142DA63
5F142DA65
5F142DA73
5F142GA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】Ga含有量を効果的に減少し、スペクトラムを効果的にブルーシフトでき、コストダウンの利点を有する、ガーネット構造のリン光剤およびこのリン光剤を含む発光装置を提供する。
【解決手段】重量パーセントで、38.47~45.19%のY元素、9.49~22.09%のAl元素、2.06~24.31%のGa元素、27.3~32.04%のO元素、0.43~1.46%のCe元素を含むガーネット構造のリン光剤において、特定の粒径およびGaの分布が特定範囲にあるリン光剤および、該リン光剤を含む発光装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量パーセントで、38.47~45.19%のY元素、9.49~22.09%のAl元素、2.06~24.31%のGa元素、27.3~32.04%のO元素、0.43~1.46%のCe元素を含み、粒子の一方側表面から粒子の質量中心を通って反対側の表面までの最短距離をRとして定義すると、5μm≦R≦40μmであり、
【請求項2】
前記リン光剤は、重量パーセントで、40.6~45.2%のY元素、10.9~21.9%のAl元素、2.2~19.8%のGa元素、27.7~32%のO元素、0.67~1.2%のCe元素を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のガーネット構造のリン光剤。
【請求項3】
前記リン光剤は、10μm≦R≦30μmである、ことを特徴とする請求項1または2に記載のガーネット構造のリン光剤。
【請求項4】
【請求項5】
前記nの値の範囲は、0≦n≦0.5である、ことを特徴とする請求項4に記載のガーネット構造のリン光剤。
【請求項6】
青色光により励起されたときのピーク波長は、515nm~550nmである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のガーネット構造のリン光剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のガーネット構造のリン光剤を含む、ことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
(Ca、Sr、Ba)AlSiN:Eu、(Mg、Ca、Sr、Ba)SiO:Eu、(Ca、Sr)SiO:Eu、ZnS:Cu、ZnS:Ag、(Li、Na、K)ZrF:Mn、(Li、Na、K)(Ti、Zr)F:Mn、(Li、Na、K)(Si、Ge)F:Mn、(Ca、Sr、Ba)(Ti、Zr)F:Mn、(Sr、Ca)S:Eu、Y:Eu、(Sr、Ca、Ba、Mg)(PO)Cl:Eu、(Ca、Sr、Ba)MgAl10:Eu、(Ca、Sr、Ba)Si:Eu中の1つまたは複数を含む他のリン光剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記リン光剤は、膜、ガラスまたはセラミックの形態で存在し、または膜、ガラスおよびセラミックの混合形態で存在する、ことを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料の技術分野に関し、特にガーネット構造のリン光剤およびこのリン光剤を含む発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新世代のグリーン照明製品である半導体照明(White Light Emitting Diode、白色LED)は、高発光効率、低エネルギー消費、長寿命、汚染がないなどの利点があり、グリーン照明および尖端ディスプレイ分野では広く応用され、中国の重要な発展である戦略的な新興産業である。LED用の希土類リン光剤は、希土類光学機能材料の大きな一類として人間の生産と生活に重要な役割を果たしている。
【0003】
現在、市販されている製品は一般に、青色光チップ複合アルミン酸塩黄緑色粉末、窒化物赤色粉末の形態で白色LEDを形成し、このような方法は技術的に最も成熟している。応用分野と消費構造の点から、約90%のLED用の希土類リン光剤は半導体照明と電子情報産業によって消費されている。白色LEDのコア材料として、LED用の希土類リン光剤の性能がデバイスの発光効率と発光色品質を直接決定し、Ga含有のガーネット構造のリン光剤は、AlがGaでドープされてなり、ガーネット構造を有するキュービッククリスタルシステムに属する。GaYAG:Ceシリーズ含有のグリーンリン光剤の研究は現在最も成熟しており、市販されている白色LED用の主なリン光剤の1つでもある。半導体照明技術の発展と市場応用の急速進行に伴って、白色LEDの光効率に対する市場要求がますます高まっているが、Ga含有ガーネット構造のリン光剤は、Ga含有量が増加すると、波長帯域が短くなり、粒度が小さくなり、リン光剤の輝度が低下するため、GaYAGグリーンリン光剤の励起効率および光効率性能により高い要求が求められている。
【発明の概要】
【0004】
従来技術の問題を鑑み、本発明は、ガーネット構造のリン光剤およびこのリン光剤を含む発光装置を提供し、リン光剤は青色光によって励起され得、発光効率を効果的に高め、Ga含有ガーネット構造のリン光剤の優れた発光性能を兼ね、Ga含有量を効果的に減少し、スペクトラムを効果的にブルーシフトでき、コストダウンの利点を有する。
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明によって提供されるガーネット構造のリン光剤は、重量パーセントで、38.47~45.19%のY元素、9.49~22.09%のAl元素、2.06~24.31%のGa元素、27.3~32.04%のO元素、0.43~1.46%のCe元素を含み、粒子一方側表面から粒子質量中心を通って反対側表面までの最短距離をRとして定義すると、5μm≦R≦40μmであり、
【0006】
さらに、前記リン光剤は、重量パーセントで、40.6~45.2%のY元素、10.9~21.9%のAl元素、2.2~19.8%のGa元素、27.7~32%のO元素、0.67~1.2%のCe元素を含む。
【0007】
さらに、前記リン光剤は、10μm≦R≦30μmである。
【0008】
【0009】
さらに、前記nの値の範囲は、0≦n≦0.5である。
【0010】
さらに、青色光により励起されたときのピーク波長は515nm~550nmである。
【0011】
他方、本発明は、上記のガーネット構造のリン光剤を含む発光装置を提供する。
【0012】
さらに、(Ca、Sr、Ba)AlSiN:Eu、(Mg、Ca、Sr、Ba)SiO:Eu、(Ca、Sr)SiO:Eu、ZnS:Cu、ZnS:Ag、(Li、Na、K)ZrF:Mn、(Li、Na、K)(Ti、Zr)F:Mn、(Li、Na、K)(Si、Ge)F:Mn、(Ca、Sr、Ba)(Ti、Zr)F:Mn、(Sr、Ca)S:Eu、Y:Eu、(Sr、Ca、Ba、Mg)(PO)Cl:Eu、(Ca、Sr、Ba)MgAl10:Eu、(Ca、Sr、Ba)Si:Eu中の1つまたは複数を含む他のリン光剤をさらに含む。
【0013】
さらに、前記リン光剤は、膜、ガラスまたはセラミックの形態で存在し、または膜、ガラスおよびセラミックの混合形態で存在する。
【0014】
本発明の上記技術的解決策は、以下の有益な技術的効果を有する。
(1)GaYAGとYAGはいずれもガーネット構造のリン光剤であり、両者は同様の相構造を有し、いずれもキュービッククリスタルシステムに属し、Ceを発光中心としてY元素、Al元素、Ga元素、O元素とともに一定の割合で配置してガーネット構造を有するリン光剤を形成し、それは堅固なネットワーク構造を有し、さらに安定な物理的および化学的特性を保持し、各元素は上記の比率範囲で制御される同時にガーネット構造のリン光剤粒子における粒子表面から質量中心の方向までの任意距離をrに協同して制御し、r外とr内の任意の単位体積のGa元素の重量パーセント含有量の比率をnとすると、0≦n<1である。両者の構造が同様であるため、GaYAGとYAGを含有する相の融合成長を促進し、結晶粒子の成長を促進し、形態が球形になり、発光効率が向上し、パッケージの光効率が大幅に向上する。
【0015】
(2)本発明によって調製したリン光剤の内外Ga含有量の差により、最終的に得られたリン光剤は同じ元素含有量の通常のリン光剤よりもピーク波長が短く、同じ発光波長の場合より良好な発光効率を有する。
【0016】
(3)本発明によって提供されるガーネット構造のリン光剤の調製方法は簡単で実行しやすく、通常のGaYAG含有のグリーンリン光剤よりも低コストである。
【0017】
(4)本発明は同じ元素含有量のGa含有ガーネット構造のリン光剤のスペクトラムを効果的にブルーシフトでき、その発光効率を向上させ、LEDに応用された場合より高い光効率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】リン光剤粒子の構造概略図である。
図2】範囲内の各Ga元素含有量を走査することによって得られるリン光剤粒子の断面EDS状態図である。
図3】調製方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的、技術的解決策および利点をより明らかにするために、以下、具体的な実施形態と併せて図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。理解できるように、これらの説明は例示であり、本発明の範囲を制限するものではない。また、以下の説明では、本発明の概念を不必要に曖昧にすることを回避するために、周知の構造および技術の説明を省略する。
【0020】
本発明では、「単位体積」という用語は、具体的に指すものではなく、リン光剤粒子内の任意体積を表してもよく、粒子質量中心からr位置までの範囲内の任意の単位体積中Ga元素の重量パーセント含有量と、rから粒子表面までの範囲内の任意の単位体積中Ga元素の重量パーセント含有量の比を比較するために提出される相対体積の概念である。
【0021】
背景技術におけるGaYAGグリーンリン光剤の発光効率を高め、コストを削減するために、本発明はガーネット構造のリン光剤を提供する。提供されるガーネット構造のリン光剤は、以下の技術的解決策を採用している。
【0022】
【0023】
図1および図2を参照すると、このリン光剤中のR1とRはリン光剤のD50粒子径(中央値粒子径)を表し、通常の焼成によって得られたリン光剤の粒子径分布は正規分布図に一致するために、R1とRで代表されるように、本発明の実施効果は同様に正規分布中のすべての粒子径の粒子にも適用可能である。したがって、本発明は、異なるD50粒子径で代表されるリン光剤について普遍的な法則を有し、ほとんどの結晶粒子に適用可能であるが、ある結晶粒子の異常な状況を排除するものではない。また、本発明では、リン光剤粒子の質量中心から表面延伸方向への任意の単位体積のGaの重量パーセント含有量の増減変化は同様に本発明の保護範囲内に含まれる。
【0024】
本発明は、CeをアクティベーターとしてY元素、Al元素、Ga元素、O元素とともに一定の割合で配置してガーネット構造を有するリン光剤を形成し、堅固なネットワーク構造を有し、さらに安定な物理的および化学的特性を保持する。この構造のリン光剤結晶粒子の成長過程中、焼成温度が徐々に上昇すると、フラックスの作用下で、Ga含有の原料の物質移動が増加し、徐々に拡散してGaを含まないまたはGa含有量が低いガーネット構造の結晶粒子を取り囲み、Gaを含まないガーネット構造の結晶粒子の表面に作用して核を形成し、融合して成長し、さらに大きくなる。成長過程中、リン光剤粒子表面が丸く滑らかになる。最終的にリン光剤粒子の内外のGa含有量が大きな差を有する構造を得、通常の同じ元素含有量のGa含有ガーネット構造のリン光剤と比較すると、本発明の構造のリン光剤は試験過程中スペクトラムブルーシフト効果を達成し、かつ同じ発光ピーク波長の場合Ga含有量が少なくなる。
【0025】
さらに、好ましくは、上記リン光剤は重量パーセントで40.6~45.2%のY元素、10.9~21.9%のAl元素、2.2~19.8%のGa元素、27.7~32%のO元素、0.67~1.2%のCe元素を含む。
【0026】
これにより、質量パーセント含有量範囲内の各元素によって得られたGa含有ガーネット構造のリン光剤はより高い発光効率を有する。
【0027】
さらに、好ましくは、上記のリン光剤のRの値の範囲は10μm≦R≦30μmである。通常のリン光剤の応用角度およびリン光剤合成の点から、この粒子径は、リン光剤の成熟した合成および応用に対して最も良い範囲であり、良好な発光性能を有しパッケージに適している。
【0028】
【0029】
さらに、好ましくは、上記ガーネット構造のリン光剤のnの値の範囲は、0≦n≦0.5である。
【0030】
rとnは関連して本発明の最終的な実施効果に影響を及ぼし、r値が小さいほど、r内の体積範囲が小さくなることを意味し、r値が大きいほど、r内の体積範囲が大きくなることを意味し、発光効率、発光スペクトラムおよび粒度の包括的な性能の向上に不利である。なお、n値が小さいほど、r内と外のGa含有量の差が大きくなることを意味し、これは本発明の実施効果にとって有益であり、逆もまた同様である。
さらに、上記のガーネット構造のリン光剤は青色光によって励起されたときのピーク波長は515nm~550nmである。
【0031】
本発明によって調製されたガーネット構造のリン光剤は、3種類の酸素配位子、Y-O十二面体、Al-O八面体およびAl-O四面体を有するので、スペクトラム調節はCe3+とGa3+の異なる占有下での結晶場強度によって制御され得、Ce3+のY3+への置換量の増加に伴い、ガーネット構造の結晶場によりCe3+エネルギー準位分割が大きくなり、スペクトラムが長波長シフトするが、Ga3+が格子に入ると八面体Al3+位置を優先的に置き換えるため、Ga3+含有量が増加すると格子定数の拡大を引き起こし、十二面体の中心Ce3+の結晶場強度を低減し、スペクトラムが短波長シフトする。
【0032】
本発明によって提供される発光装置は、本発明のガーネット構造のリン光剤を含む。
【0033】
さらに、上記発光装置は、(Ca、Sr、Ba)AlSiN:Eu、(Mg、Ca、Sr、Ba)SiO:Eu、(Ca、Sr)SiO:Eu、ZnS:Cu、ZnS:Ag、(Li、Na、K)ZrF:Mn、(Li、Na、K)(Ti、Zr)F:Mn、(Li、Na、K)(Si、Ge)F:Mn、(Ca、Sr、Ba)(Ti、Zr)F:Mn、(Sr、Ca)S:Eu、Y:Eu、(Sr、Ca、Ba、Mg)(PO)Cl:Eu、(Ca、Sr、Ba)MgAl10:Eu、(Ca、Sr、Ba)Si:Eu中の1つまたは複数を含む他のリン光剤をさらに含む。
【0034】
また、本発明のリン光剤は粉末の形態に加えて、蛍光膜、蛍光ガラスまたは蛍光セラミック等、または以上の形態の混合形態で存在し得る。上記の形態により、高エネルギー密度下でリン光剤の発光性能を保持することができるため、本発明は高出力デバイスにも応用できる。
【0035】
本発明のガーネット構造のリン光剤では、元素GaとCeの割合を変えることにより、発光材料の発光主ピークを制御でき、レッドシフトまたはブルーシフトの制御により、リン光剤の発光色を変えることができる。
【0036】
本発明のガーネット構造のリン光剤では、粒子表面から質量中心の方向までの任意距離をrとし、空間r外範囲内の任意の単位体積中Ga元素の重量パーセント含有量と空間r内範囲内の任意の単位体積中Ga元素の重量パーセント含有量の比をnとし、nの測定方法は以下のとおりであり:
まず、EDS装置を使用してガーネット構造のリン光剤の粒子表面から質量中心の方向までの任意距離をrとし、粒子質量中心からr位置までの範囲内の任意の第1点(例えばこの第1点の単位体積が1×10-6~5×10-2μm)を取って測定し、この点でのGa元素重量パーセント含有量n1を測定する。
【0037】
次に、EDS装置を使用して、ガーネット構造粒子中のrから粒子表面までの範囲内の任意の単位体積で第2点(この第2点は上記第1点と体積が同じである)を取って測定し、この点でのGa元素重量パーセント含有量n2を測定し、かつn1/n2=nである。この測定方法では、既存のEDS装置を使用して測定し、測定する第1点および第2点の具体的な単位体積を考慮せず、測定する上記第1点と第2点の体積が同じであることを確保すればよい。具体的な測定は図1の粒子構造概略図を参照し、図2は粒子断面図である。
【0038】
上記ガーネット構造のリン光剤では、Y、Al、Ga、Ce元素に加えて、必要に応じてガーネット構造のリン光剤でよく使用されている他の化学元素、例えばLu、Sc、Tb、F等の元素を含んでもよく、リン光剤のガーネット構造を維持できれば、それに含まれるY、Al、Ga、Ce元素の含有量および割合関係は上記の要件を満足すればよい。
【0039】
当業者は、本発明の上記ガーネット構造のリン光剤の教示下で、当業者に周知の方法を合理的に選択して上記ガーネット構造のリン光剤を調製することができる。本発明では、上記ガーネット構造のリン光剤を調製するときの操作難しさを低減し、操作手順を簡素化し、プロセスコストを削減するために好ましい調製方法を提供し、この方法は、まずY、AlまたはAl/Ga、Ceの酸化物を原料として混合した後熱処理して中間体を得て、Ga含有中間体またはGaを含まない中間体を混合して二次焼成を行って、本発明の上記リン光剤を得ることを含む。
【0040】
図3を参照すると、ガーネット構造のリン光剤の調製方法は、以下のステップを含む。
(1)Y、AlまたはAl/Ga、Ce元素を含有する酸化物、塩、フッ化物などを原料として秤量し、フラックスとともに乳鉢に入って均一に混合し、1270~1500℃で熱処理して、初期原料Aを取得し、
(2)Y、Al、Ga、Ceの酸化物を原料として秤量し均一に混合した後、原料Bを取得し、
(3)初期原料Aと異なる量の原料Bを簡単に混合し、後処理の後、フラックスを加えて均一に混合した後、還元雰囲気で1400~1500℃で1~5hの熱処理を行い、焼成が完了した後、後処理過程を経って、ガーネット構造のリン光剤を得る。
【0041】
さらに、初期原料Aと原料Bの重量比が0.5:10~20:10であり、得られたガーネット構造のリン光剤の各元素重量パーセントはいずれも、38.47~45.19%のY元素、9.49~22.09%のAl元素、2.06~24.31%のGa元素、27.3~32.04%のO元素、0.43~1.46%のCe元素である。
【0042】
上記各原料の使用量はガーネット構造のリン光剤の各元素の重量パーセントに応じて秤量され、上記ステップによって調製されたガーネット構造のリン光剤は、粒子表面から質量中心の方向までの任意距離をrとし、r外とr内の任意の単位体積のGa元素の重量パーセント含有量の比率をnとし、かつ0≦n<1である。
【0043】
上記各原料の使用量はガーネット構造のリン光剤の各元素の重量パーセントに応じて秤量され、Y、Al、Ga、Ceの酸化物はそれぞれ酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化セリウムである。
【0044】
さらに、上記方法のステップでは、前記のフラックスはアルカリ金属ハロゲン化物/酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物/酸化物、炭酸塩、ホウ酸中の少なくとも1つである。
【0045】
上記の調製方法によってガーネットリン光剤を合成することにより、リン光剤の輝度と安定性を向上させる同時に、上記調製方法では、フラックスの添加により、リン光剤の核形成と成長に寄与し、フラックスはアルカリ金属ハロゲン化物/酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物/酸化物、炭酸塩、ホウ酸中の少なくとも1つである。
【0046】
本発明のガーネットリン光剤の品質をさらに向上させるために、このリン光剤の調製過程中、中間体および焼成後のリン光剤を後処理し、後処理は破砕、洗浄、および等級付け中の少なくとも1つを含む。上記後処理ステップでは、破砕により粒度1~100ミクロン、例えば1ミクロン、10ミクロン、50ミクロン、100ミクロンなどの粒子を形成し得る。洗浄の過程中、水洗浄や弱酸洗浄などにより、1~5回洗浄、例えば1回、2回、3回、5回などの回数で水洗浄してもよい。
【0047】
以下、具体的な実施例により本発明のガーネットリン光剤の発光効率を説明し、さらに本発明の有益な効果を説明する。
【0048】
試験方法は、以下を含む。
EDS検出:EDS装置を使用し、試験条件は、15kVの加速電圧、70μAの検出電流である。相対輝度測定:分光光度計で本発明の比較例1~4と実施例1~24のガーネットグリーンリン光剤の相対輝度およびピーク波長を試験し、励起波長を460nmに設定する。
【0049】
比較例1
Gaガーネットリン光剤中のY、Al、Ga、O、Ce元素の質量パーセント38.47%、9.48%、24.31%、27.31%、0.43%でそれぞれ原料を秤量し、BaFフラックスを加えて混合し、1450℃温度で3時間維持し、温度が100℃に低下すると取り出し、後処理して517nm波長帯域のリン光剤を取得し、このリン光剤の相対輝度を100として定義する。
【0050】
実施例3
16.64gのY、13.42gのAl、0.18gのCeOを正確に秤量し、BaFフラックスとともに混合した後、1300℃で熱処理し、初期原料Aを取得し、28.74gのY、9.27gのAl、21.3gのGa、0.31gのCeOを正確に秤量し、均一に混合した後原料Bを取得し、原料Aと原料Bを3:10で混合し、BaFフラックスを加え、還元雰囲気(N:H=50:1)で1450℃で1時間熱処理し、温度が100℃以下まで低下すると取り出し、破砕、不純物除去、乾燥処理した後、所要のガーネット構造のリン光剤を取得し、得られたリン光剤構造中のY、Al、Ga、O、Ce元素の質量とリン光剤質量パーセント、R、r、nピーク波長、相対輝度を表1に示している。
【0051】
比較例2
Gaガーネットリン光剤中のY、Al、Ga、O、Ce元素の質量パーセント40.72%、11.33%、19.03%、27.85%、1.07%でそれぞれ原料を秤量し、BaFフラックスを加えて混合し、1470℃で3時間維持し、温度が100℃に低下すると取り出し、後処理した後522nm波長帯域のリン光剤を取得し、このリン光剤の相対輝度を109として定義する。
【0052】
実施例7
17.83gのY、13.42gのAl、0.45gのCeOを正確に秤量し、BaFフラックスを加えて混合した後、1350℃で熱処理して、初期原料Aを取得し、30.79gのY、11.59gのAl、17.04gGa、0.78gのCeOを正確に秤量し、均一に混合した後原料Bを取得し、原料Aと原料Bを1:10で混合し、BaFフラックスを加え、還元雰囲気(N:H=50:1)で1470℃で1時間熱処理し、温度が100℃以下に低下すると、取り出して、破砕、不純物除去、乾燥処理して所要のガーネット構造のリン光剤を取得し、得られたリン光剤構造中のY、Al、Ga、O、Ce元素の質量とリン光剤質量パーセント、R、r、nピーク波長、相対輝度を表1に示している。
【0053】
比較例3
Gaガーネットリン光剤中のY、Al、Ga、O、Ce元素の質量パーセント40.72%、11.33%、19.03%、27.85%、1.07%でそれぞれ原料を秤量し、BaFフラックスを加えて混合し、1500℃で3時間維持し、温度が100℃に低下すると取り出し、後処理して550nm波長帯域のリン光剤を取得し、このリン光剤の相対輝度を120として定義する。
【0054】
実施例13
19.02gのY、14.76gのAl、0.63gのCeOを正確に秤量し、BaFフラックスと混合した後、1450℃で熱処理して、初期原料Aを取得し、32.84gのY、25.49gのAl、2.56gGa、1.10gのCeOを正確に秤量し、均一に混合した後原料Bを取得し、原料Aと原料Bを1:2で混合し、BaF、Bフラックスを加えた後、還元雰囲気(N:H=50:1)で1500℃で5時間熱処理し、温度が100℃以下に低下すると、取り出して、破砕、不純物除去、乾燥処理した後所要のガーネット構造のリン光剤を取得し、得られたリン光剤構造中のY、Al、Ga、O、Ce元素の質量とリン光剤質量パーセント、R、r、nピーク波長、相対輝度を表1に示している。
【0055】
比較例4
Gaガーネットリン光剤中のY、Al、Ga、O、Ce元素の質量パーセント39.50%、16.27%、13.23%、29.91%、1.09%でそれぞれ原料を秤量し、BaFフラックスを加えて混合し、1500℃で3時間維持し、温度が100℃に低下すると取り出し、後処理して533nm波長帯域のリン光剤を取得し、このリン光剤の相対輝度を118として定義する。
【0056】
実施例16
16.64gのY、14.76gのAl、0.45gのCeOを正確に秤量し、BaFフラックスと混合した後、1350℃で熱処理して、初期原料Aを取得し、29.56gのY、15.76gのAl、13.63gGa、0.78gのCeOを正確に秤量し、均一に混合した後原料Bを取得し、原料Aと原料Bを1:2で混合し、BaF、YFフラックスを加えた後、還元雰囲気(N:H=50:1)で1500℃で2時間熱処理し、温度が100℃以下に低下すると、取り出して、破砕、不純物除去、乾燥処理した後所要のガーネット構造のリン光剤を取得し、得られたリン光剤構造中のY、Al、Ga、O、Ce元素の質量とリン光剤質量パーセント、R、r、nピーク波長、相対輝度を表1に示している。
【0057】
実施例22
16.64gのY、12.07gのAl、1.97gGa、0.45gのCeOを正確に秤量し、BaFフラックスと混合した後、1500℃で熱処理して、初期原料Aを取得し、28.74gY、16.68gのAl、11.93gGa、0.63gのCeOを正確に秤量し、均一に混合した後原料Bを取得し、原料Aと原料Bを1:5で混合し、BaF、YFフラックスを加え、還元雰囲気(N:H=50:1)で1500℃で2時間熱処理し、温度が100℃以下低下すると、取り出して、破砕、不純物除去、乾燥処理した後所要のガーネット構造のリン光剤を取得し、得られたリン光剤構造中のY、Al、Ga、O、Ce元素の質量とリン光剤質量パーセント、R、r、nピーク波長、相対輝度を表1に示している。
【0058】
実施例1~24
以上代表的な実施例を説明したが、他の実施例の調製方法は上記の方法と同様であり、各実施例中の目標化合物の化学式組成に従い、適切量の化合物を選択して混合および研磨し、適切な焼成条件を選択して、所要のガーネット構造のリン光剤を得、測定された質量パーセントと発光色のデータを表1に示している。
【0059】
【0060】
【0061】
以下、本発明の装置の具体的な実施形態を説明する。
比較例5
本実施例は、青色LEDチップを放射源として使用し、比較例4のリン光剤とCaAlSiN:Euを質量比94:4.5で均一に混合した後、リン光剤をシリコンゴム(屈折率1.41、透過率99%)に均一に分散させ、チップと光変換膜を組み合わせ、回路を溶接して封止した後白色発光装置を取得する。
【0062】
実施例26~32は、比較例5と同様の青色LEDチップを放射源として使用し、それぞれ本発明の実施例14~17、実施例19、実施例22~24のリン光剤とCaAlSiN:Euを同様に質量比94:4.5で均一に混合し、シリコンゴムに分散した後白色発光装置にパッケージされる。
【0063】
比較例5と実施例25~32のデバイス発光色データを表2に示している。
【0064】
表2から分かるように、本発明を用いた比較例4、実施例14~17、実施例19、実施例22~24のリン光剤中のガーネットリン光剤は他のリン光剤と併せて白色発光装置を作製し、r値が増加するとその光効率が向上し、カラーレンダリング指数Raが増加する傾向がある。nが大きくなると、光効率が低下する。しかしながら、本発明の保護範囲内のガーネットリン光剤は、実際の用途において他のリン光剤と組み合わせて作製された発光装置は高い光効率の特徴を有する。
【0065】
実施例33
実施例14中のリン光剤、CaAlSiN:Euと低温ガラス粉末を質量比1:0.05:10で混合し、ガラス粉末組成はSiO、Al、Bおよびアルカリ金属酸化物(NaO、KO)または2価金属酸化物(CaO、SrO、BaO、ZnO)であり、低温共融の後ガラスマトリックスを得て、薄くし研磨して、スライスした後サイズ2.8×3.5×0.15mmの蛍光ガラスシートを得、このガラスシートと青色LEDチップとともにパッケージした後発光装置を得、この発光装置の色座標は(0.3132、0.3555)であり、色温は6300Kであり、カラーレンダリング指数Raは82である。
【0066】
本実施例の装置は、供給電流が1Aのとき1000℃で点灯およびエージングした後光減衰が5%であるが、実施例25~32の装置は同じ電流でエージングした後光減衰が15~20%に達し、これは、ガラス状態下の蛍光変換層は高出力密度の光源によりよく適用できることを示す。
【0067】
【0068】
理解できるように、本発明の上記の具体的な実施形態は、本発明の原理を例示的に説明または解釈するために使用され、本発明を制限するものではない。したがって、本発明の精神および範囲を逸脱しないかぎりなされた変更、同等置換、改善などは、すべて本発明の保護範囲内に含まれるべきである。さらに、本発明の添付の特許請求の範囲は、添付の特許請求の範囲および境界、またはこれらの範囲および境界と同等の変更や修正のすべてを網羅することを意図している。
図1
図2
図3