(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074043
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230522BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230522BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230522BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20230522BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186771
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】514235341
【氏名又は名称】株式会社スマートドライブ
(72)【発明者】
【氏名】元垣内 広毅
(72)【発明者】
【氏名】大野 良
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】ユーザが運転者であるかを判別することができる情報処理技術を提供する。
【解決手段】情報処理方法は、少なくとも1つの対象カーブを移動体が通過する際の複数の移動体通過パターンにおける運転席に関する位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてモデル曲率半径情報を取得することと、前記少なくとも1つの対象カーブを通過するユーザ移動体に乗車したユーザに紐づけられた情報処理装置の位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてユーザ曲率半径情報を取得することと、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについて、前記モデル曲率半径情報と前記ユーザ曲率半径情報との差異を算出することと、前記差異に基づいて、前記ユーザが運転者であるかどうかを判断することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの対象カーブを移動体が通過する際の複数の移動体通過パターンにおける運転席に関する位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてモデル曲率半径情報を取得することと、
前記少なくとも1つの対象カーブを通過するユーザ移動体に乗車したユーザに紐づけられた情報処理装置の位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてユーザ曲率半径情報を取得することと、
前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについて、前記モデル曲率半径情報と前記ユーザ曲率半径情報との差異を算出することと、
前記差異に基づいて、前記ユーザが運転者であるかどうかを判断することと、
を含む、情報処理方法。
【請求項2】
前記モデル曲率半径情報は、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれを分割した複数の領域のそれぞれにおける領域毎モデル曲率半径情報を含み、
前記ユーザ曲率半径情報は、前記複数の領域のそれぞれにおける領域毎ユーザ曲率半径情報を含み、
前記モデル曲率半径情報と前記ユーザ曲率半径情報との差異を算出することは、前記複数の領域のそれぞれについて前記領域毎モデル曲率半径と前記領域毎ユーザ曲率半径との差異を算出することを含む、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記複数の領域は、前記対象カーブにおける前半部と後半部によって構成される、
請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
複数の対象カーブ候補から、第1条件に基づいて、前記少なくとも1つの対象カーブを決定することと、
を更に含み、
前記第1条件は、対象カーブ候補における過去の移動体軌跡に関する情報量が所定量より大きいこと、対象カーブ候補において前記ユーザ移動体に対応する移動体による軌跡に関する情報量が所定量より大きいこと、対象カーブ候補の曲率半径情報における分散値が所定値より小さいこと、対象カーブ候補が左折であること、対象カーブ候補の角度が所定角度より小さいこと、対象カーブ候補に進入する側の道路の幅員が所定長より小さいこと、及び、対象カーブ候補から離脱する側の道路の幅員が所定長より小さいこと、のうち少なくとも1つである、
請求項1乃至請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
複数の対象カーブ候補から、第2条件に基づいて、前記少なくとも1つの対象カーブを決定することと、
を更に含み、
前記第2条件は、前記ユーザ移動体による対象カーブ候補の通過時に取得された位置情報の精度が所定値より高いこと、前記ユーザ移動体による対象カーブ候補進入時の速度が所定の範囲にあること、前記ユーザ移動体による対象カーブ候補通過中の速度が所定の範囲にあること、前記ユーザ移動体による対象カーブ候補離脱時の速度が所定の範囲にあること、前記ユーザ移動体による対象カーブ候補進入時の加速度が所定の範囲にあること、前記ユーザ移動体による対象カーブ候補通過中の加速度が所定の範囲にあること、及び、前記ユーザ移動体による対象カーブ候補離脱時の加速度が所定の範囲にあること、のうち少なくとも1つである、
請求項1乃至請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記ユーザが運転者かどうかを判断することにおいて、運転者であると判断された場合、前記ユーザ移動体の稼働が開始されてから終了するまでの時刻の範囲であって、前記運転者であると判断された時刻を含む同一運転範囲において、前記ユーザが運転者であったと判断することと、
前記運転者であったと判断された同一運転範囲に基づいて、前記ユーザ移動体に関する保険料を算出することと、
を更に含む、請求項1乃至請求項5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記同一運転範囲は、前記情報処理装置の前記位置情報の変異に基づいて定められる、
請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの対象カーブが複数の対象カーブである場合、前記判断することは、前記複数の対象カーブに含まれる第1対象カーブ及び第2対象カーブにおいて、前記第1対象カーブの角度が前記第2対象カーブの角度よりも小さい場合、前記第1対象カーブにおける差異による結果の優先度を、前記第2対象カーブにおける差異による結果の優先度より高くして行われる、
請求項1乃至請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記モデル曲率半径情報の分散値に基づいて閾値を設定することと、
を更に含み、
前記判断することは、前記閾値に基づいて行われる、
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記情報処理装置の位置情報、速度情報、及び角速度情報のうち少なくとも1つに基づいて、前記ユーザ移動体が運転中であるかどうかを判断すること、
前記ユーザ移動体が運転中であると判断された期間において、前記情報処理装置に対する操作が所定頻度以上の頻度であったかどうかを判断することと、
を更に含み、
前記ユーザが運転者であるかどうかを判断することは、前記情報処理装置に対する操作が所定頻度以上の頻度であったかどうかの判断結果にも基づく、
請求項1乃至請求項9の何れかに記載の情報処理方法。
【請求項11】
少なくとも1つの対象カーブを通過するユーザ移動体に乗車したユーザに紐づけられた情報処理装置であって、
前記少なくとも1つの対象カーブを移動体が通過する際の複数の移動体通過パターンにおける運転席に関する位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてモデル曲率半径情報を取得するモデル曲率半径情報取得部と、
位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記取得された位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてユーザ曲率半径情報を取得するユーザ曲率半径情報取得部と、
前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについて、前記モデル曲率半径情報と前記ユーザ曲率半径情報との差異を算出する算出部と、
前記差異に基づいて、前記ユーザが運転者であるかどうかを判断する判断部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項12】
コンピュータに、
少なくとも1つの対象カーブを移動体が通過する際の複数の移動体通過パターンにおける運転席に関する位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてモデル曲率半径情報を取得することと、
前記少なくとも1つの対象カーブを通過するユーザ移動体に乗車したユーザに紐づけられた情報処理装置の位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてユーザ曲率半径情報を取得することと、
前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについて、前記モデル曲率半径情報と前記ユーザ曲率半径情報との差異を算出することと、
前記差異に基づいて、前記ユーザが運転者であるかどうかを判断することと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ユーザが運転者であるかどうかを判別する情報処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テレマティクス技術、すなわち、移動体に搭載した機器をインターネット等の広域網に接続し、移動体に関する様々な情報を取得し、移動体の状態や行動を管理したり、取得した情報に基づいたサービスを提供したりすることにつき、技術開発が進んでいる。テレマティクス技術を利用したサービスとして、例えば、ユーザの行動に即した広告を配信する、移動体に関する保険料を算定する、といった需要がある。
【0003】
移動体に関して取得されるべき情報の一つとして、対象となる人物が運転者であるかどうかの情報がある。例えば、特許文献1には、カメラにより撮像された画像を解析することにより、携帯機器の使用者が車両の運転者であるか否かを判定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術においては、携帯機器の使用者が特定の人物であるかどうかを解析するのみであり、その使用者が何らかの車両に乗車しているかどうかまでの判別はできなかった。加えて、車両に乗車していることが判別できたとしても、それが運転者として乗車しているのか、または非運転者として乗車しているのかを判別することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、情報処理方法は、少なくとも1つの対象カーブを移動体が通過する際の複数の移動体通過パターンにおける運転席に関する位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてモデル曲率半径情報を取得することと、前記少なくとも1つの対象カーブを通過するユーザ移動体に乗車したユーザに紐づけられた情報処理装置の位置情報に基づき、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについてユーザ曲率半径情報を取得することと、前記少なくとも1つの対象カーブのそれぞれについて、前記モデル曲率半径情報と前記ユーザ曲率半径情報との差異を算出することと、前記差異に基づいて、前記ユーザが運転者であるかどうかを判断することと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る方法、装置およびプログラムによれば、ユーザが移動体を運転しているかどうかに関連する情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】携帯情報処理装置10の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図3】搭載機器20の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図4】サーバ30の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図5】記憶部220に記憶される対象カーブ情報と曲率半径情報とが紐づけられたテーブルの一例。
【
図6】ユーザが移動体1の運転者であるかどうかを判定するための手順例を示すフローチャート
【
図7】カーブ通過時の各乗車席が描く軌跡の簡易例を示す図。
【
図8】左折時における各乗車席が描くより詳細な軌跡を示す図。
【
図9】カーブの角度を変化させた際の移動体の軌跡の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態の例について図面を参照して説明する。
なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
また、これらの実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。
【0010】
[実施形態]
以下、本発明の情報処理技術を実現するための一例である実施形態について説明する。
本実施形態では、ユーザが、ユーザ自身の保有する自動車に運転者として乗車しているかを判別する。
なお、本実施形態に記載の内容は、他の各実施形態や各実施例、他の各変形例のいずれにも適用可能である。
【0011】
図1は、本実施形態の一態様に係る運転者判別システムのシステム構成図である。本システムでは、移動体1に乗車するユーザが携帯する携帯情報処理装置10において位置情報等の各種情報が取得され、取得されたこれら情報がネットワークNW(例えば、インターネット)を通じてサーバ20に送信される。
【0012】
移動体1は、本実施形態においては、ユーザが乗車する車両としているが、特にそのような車両に限定されない。例えば、レンタカーや友人の車両など、任意の移動体であってよい。
【0013】
図2は、
図1の携帯情報処理装置10の機能構成を示すブロック図である。本実施形態における携帯情報処理装置10は、限定ではなく例として、スマートフォンやタブレットなど、携帯可能な電子機器であればよい。携帯情報処理装置10は、例えば、制御部110、記憶部120、通信部130、表示部140、入力部150、音声出力部160、位置情報取得部170、速度情報取得部180、角速度情報取得部190を備えて構成される。
携帯情報処理装置10は、ユーザによって保持されており、また、同装置上で動作するアプリにログインするなどにより、携帯情報処理装置10とユーザは紐づけられている。携帯情報処理装置10は、通信部130を通じてインターネット等のネットワークに接続されており、例えば、位置情報取得部170、速度情報取得部180、及び角速度情報取得部190によって取得された各種情報を、サーバ20に送信する。
【0014】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)を含む処理演算装置によって構成される。制御部110は各データに対する各種処理を行うとともに、記憶部120に格納されたプログラムを読み出して実行することで、通信部130、表示部140、入力部150、音声出力部160、位置情報取得部170、速度情報取得部180、及び角速度情報取得部190といった携帯情報処理装置10の各機能部を制御する。
【0015】
記憶部120は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含み、制御部110が処理する制御プログラムや、各種データ、例えば、取得した位置情報などを記憶する。なお、記憶部120は、携帯情報処理装置10に内蔵されるものに限らず、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置でもよい。
【0016】
通信部130は、例えば、LTE(Long Term Evolution)や3G、4G、5G等の移動体通信、DSRC(Dedicated Short Range Communication)等の狭帯域通信を用いて、インターネット等の公共のネットワークに接続し、同ネットワークに接続されたサーバー20等の各機器とのデータ通信が可能なモジュールである。
例えば、通信部130を通じて携帯情報処理装置10はサーバー20とデータのやり取りを行う。
【0017】
表示部140は、例えば、液晶ディスプレイ、又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等によって構成される、様々な情報を表示するためのディスプレイ手段である。
表示部140は、例えば、通信部130を通じて取得した各種情報や制御部110による処理結果等を表示する。
【0018】
入力部150は、ユーザーが携帯情報処理装置10に対して各種入力を行うための入力手段である。例えば、ボタン、タッチパネル、スイッチなどにより構成されている。また、入力部150は、表示部140と一体に構成されたタッチスクリーンとして構成してもよい。
入力部150に対してユーザによる入力操作がなされると、その入力に対応した制御信号が生成されて制御部110に出力される。そして、制御部110によりその制御信号に対応した演算処理や制御が行われる。
【0019】
音声出力部160は、例えば音声出力端子からなり、接続されたイヤホンやスピーカなどから音声を出力させるために音声信号を送信する。または、音声信号にかかる音声を出力するスピーカであってもよい。
音声出力部160は、例えば、インターネット等から配信され記憶部120に格納された音楽データを、制御部110が音声信号として処理したものを出力する。
【0020】
位置情報取得部170は、例えば、GNSS衛星(例えばGPS衛星)から到来する電波に基づいて、携帯情報処理装置10の位置情報(例えば、緯度経度情報)を所定間隔で取得する。すなわち、携帯情報処理装置10を携帯するユーザーの位置情報を取得することができる。転じて、携帯情報処理装置10を携帯するユーザーが移動体1を利用することで、実質的に移動体1の位置情報を取得することができる。取得された位置情報は、当該位置情報を取得した時刻(現在時刻)と紐付けられて、記憶部120に格納される。
ここで、位置情報取得部170は、位置情報を取得すると共に、その位置情報の精度を示す精度値(例えば、DOP値)を取得することとしてもよい。この場合、取得された位置情報及び精度値が現在時刻と紐付けられて、記憶部120に格納される。
【0021】
なお、位置情報取得部170による位置情報の取得方式は、上記のものに限られず、任意の位置情報取得方式を適用してよい。例えば、道路脇に設置された路側機により発せられる当該路側機に固有の位置情報を含んだ電波を、携帯情報処理装置10の携帯者が乗車する移動体1が近接した際に位置情報取得部170が受信することで、情報処理装置10の位置情報を取得することとしてもよい。
【0022】
速度取得部180は、移動体1の走行速度を定期的に取得し、当該走行速度を制御部110に供給する。速度取得部180は任意の構成であってよいが、例えば、位置情報取得部170によって取得された位置情報に基づいて速度情報を算出することとしてもよい。または、移動体1側に搭載される車速パルス取得部によって取得される車速パルス情報を通信部130を通じて取得し、その車速パルス情報に基づいて移動体1の速度を算出することとしてもよい。
【0023】
角速度取得部190は、携帯情報処理装置10における3軸まわりの角速度を検出可能に構成されている。具体的には、角速度取得部190は、携帯情報処理装置10の前後軸まわりの角度(ロール角)の変化速度であるロール角速度、車体の左右軸まわりの角度(ピッチ角)の変化速度であるピッチ角速度、及び車体の上下軸まわりの角度(ヨー角)の変化速度であるヨー角速度をそれぞれ検出可能である。なお、曲率半径の算出において必要となる角速度情報はヨー角のみであるので、ヨー角のみを取得し、ロール角及びピッチ角の情報は取得せずともよい。また、角速度取得部190の構成はこれに限られず、例えば、位置情報取得部170によって取得された位置情報に基づいてヨー角を算出することとしてもよい。
なお、角速度取得部190は任意の構成であってよいが、例えば、位置情報取得部170によって取得された位置情報に基づいて角速度情報を算出することとしてもよい。
【0024】
図3は、
図1のサーバ20の機能構成を示すブロック図である。本実施形態におけるサーバ20は、制御部210、記憶部220、通信部230を備えて構成される。
サーバ20は、例えば、インターネット等のネットワークを通じて携帯情報処理装置10等と接続され、携帯情報処理装置10等から位置情報等の様々な情報を受信し、記憶部220に記憶する。また、記憶された情報を適宜処理し、携帯情報処理装置10のユーザが移動体1の運転者であるかどうかの判別等の処理を行う。
【0025】
制御部210は、携帯情報処理装置10の制御部110と同様に、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)を含む処理演算装置によって構成される。制御部210は各データに対する各種処理を行うとともに、記憶部220に格納されたプログラムを読み出して実行する。また、
【0026】
記憶部220は、携帯情報処理装置10の記憶部120と同様に、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含み、制御部210が処理する制御プログラムや、各種データ、例えば、機器の識別情報が登録された搭載機器テーブルなどを記憶する。なお、記憶部220は、サーバー20に内蔵されるものに限らず、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置でもよい。
【0027】
通信部340は、有線通信インターフェースを用いて、または、携帯情報処理装置10の通信部130と同様に、例えば、LTE(Long Term Evolution)や3G等の移動体通信、DSRC(Dedicated Short Range Communication)等の狭帯域通信を用いて、インターネット等のネットワークに接続し、同ネットワークに接続された携帯情報処理装置10等の各機器とのデータ通信が可能なモジュールである。
【0028】
[情報処理の手順:対象カーブにおけるモデル曲率半径の取得]
図4は、本実施形態において、ユーザが運転者として移動体に乗車しているかどうかを判別するための基準となるカーブ(以下、対象カーブという)を、複数の移動体が通過した際の運転者の軌跡群に基づく曲率半径情報をモデルとして取得する処理例を示すフローチャートである。
図4および他図のフローチャートにおける処理は、例えばサーバ20の制御部210が、記憶部220に格納された情報処理プログラムのコードを不図示のRAMに読み出して実行することにより実現される。
【0029】
図4および他図のフローチャートにおける各記号Sは、ステップを意味する。
また、以下説明するフローチャートは、あくまでも本実施形態における情報処理の手順の一例を示すものに過ぎず、他のステップを追加したり、一部のステップを削除したりしてもよい。
【0030】
まず、サーバ20は、モデル曲率半径情報を取得する対象となるカーブ(以下、対象カーブ)を特定する(S1001)。ここで、前提として、データとして複数のカーブのそれぞれについてモデル曲率半径情報が紐づけられており、それら複数のカーブから、何らかの選択条件に基づいて対象カーブを特定する。選択条件については後述する。
ここで、対象カーブをデータとして記憶するにあたっては、例えば、当該カーブが存在する交差点の位置情報をもって同定し記憶する。なお、対象カーブの記憶方法は特にこれに限られない。例えば、当該カーブの近傍にある建物情報の位置情報を持って同定することとしてもよく、カーブを同定できる情報であればよい。
なお、同定される対象カーブとしての情報には、そのカーブへの進入方向に関する情報も含まれることが好ましい。すなわち、当該カーブに対してどちらの方向から進入するかも紐づけて記憶する。例えば、記憶部220には、
図5に示すような形態で同定した対象カーブの情報を記憶する。
図5に示すように、この記憶方式においては、対象カーブに関する位置情報(x1,y1)と、カーブへの進入方向を示す方位角情報(α)が紐づけられている。方位角情報は、例えば、真北を基準として右回りに当該方向を測った水平角の大きさを意味するが、方位角の定義はこれに限られず、任意の方向(例えば、真南)を基準としてもよいし、左回りに方向を測った水平角の大きさとしてもよい。
【0031】
次に、サーバ20は、移動体における運転者席の近傍に備えられたデバイス等を通じて、移動体が対象カーブを通過した際の曲率半径の情報を複数パターン取得する(S1003)。この曲率半径の情報の取得においては、例えば以下の処理を行う。
まず、サーバ20は、対象カーブを通過した移動体から取得された位置情報に基づいて、その移動体における対象カーブ通過時の速度情報を取得する。同様に、その移動体における対象カーブ通過時の角速度(ヨー角)情報を取得する。そして、以下の数1に基づいて、それぞれのパターンについての曲率半径情報を求める。
【0032】
【0033】
求められる曲率半径情報は、複数の曲率半径の値から構成されていてもよい。例えば、カーブ通過時の移動体の位置情報ごと(例えば、1秒ごとに取得された位置情報ごと)に求められた曲率半径の値によって構成されてよい。
【0034】
また、カーブ通過とする期間は、例えば、取得される角速度が所定の閾値以上となった時刻をカーブ通過開始時刻とし、同様に所定の閾値以下となった時刻をカーブ通過終了時刻とすることで定義されてよいが、これに限られない。例えば、カーブ通過とする範囲を予め登録しておき、移動体の位置情報がその範囲内にあれば、カーブ通過していると判断することとしてもよい。
カーブ通過として認識される範囲は、例えば、カーブの中心部から一定範囲を包含する形態、好ましくは移動体長の4倍範囲を包含する形態でカーブの開始及び終了を特定できる方法であれば、カーブとしての範囲の特定方法は特に限定されない。
【0035】
なお、好ましくは、カーブ通過をする領域を複数の領域に分けて曲率半径情報を取得することとしてもよい。例えば、カーブ通過前半部とカーブ通過後半部の2つの曲率半径情報を取得する。特に、カーブ通過後半部における曲率半径情報は、後述する運転者判別処理における、ユーザが移動体1の前の席又は後ろの席のいずれに座っているかを判別する際に有用である。カーブ前半とカーブ後半との境界は任意の基準によって設定してよく、例えば、移動体が通過するに際して、カーブに進入してから離脱するまでの期間の半分の時刻を基準として設定したり、移動体の角加速度の値が正から負となった時点を基準としたり等、移動体がカーブ通過する際の状況に応じて設定可能であるほか、カーブの大きさを物理的に二分した位置を基準とする等、移動体の通過方法にかかわらずカーブに対して固定的に設定することとしてもよい。
【0036】
その後、サーバ20は、取得した曲率半径情報を加工する(S1005)。曲率半径情報を加工するとは、取得された複数の曲率半径の値を後の処理で扱いやすくすることを意味し、例えば、本実施形態においては、これら複数の曲率半径の値を集合として捉え、かかる集合の期待値と分散値を求めることとする。
【0037】
なお、ステップS1005は行わずともよい。すなわち、取得した複数の曲率半径の値を加工せず、これらの値をそのまま記憶し後の処理に用いることとしてもよい。
【0038】
その後、サーバ20は、加工した曲率半径情報と対象カーブ情報とを紐づけて記憶部220に記憶する(S1007)。
図5に示すように、対象カーブ情報に紐づけられた曲率半径情報として、例えば、対象カーブに関する位置情報(x1,y1)に対応して、前半部における集合の期待値Ea1及び分散値Va1、並びに後半部における集合の期待値Ea2及び分散値Va2が格納されている。
そして、対象カーブにおけるモデル曲率半径情報の取得処理を終了する。
【0039】
ここで、モデル曲率半径情報の取得方法は、上述のものに特に限られず、任意の方法が適用可能である。例えば、対象カーブを通過するときに取得される位置情報に基づいて二次元平面にプロットした点の集合に対し、各曲率半径によるカーブ軌跡のモデルとフィッティングし、最もフィッティングしたモデルの情報(例えば、モデルにおける曲率半径の値)をモデル曲率半径情報としてもよい。
【0040】
また、上述の曲率半径の取得方法において使用される速度情報及び角速度情報としては、位置情報から算出することに限られず、移動体に備えられた速度情報取得部180及び角速度情報取得部190において取得した値(観測値)を用いてもよいし、またこれらの値にノイズ等が含まれることを考慮して適宜ノイズ等を除去する処理を適用して得られた値を用いることとしてもよい。
【0041】
更に、モデル曲率半径情報はカーブ通過の全期間について取得することに限られず、カーブ通過期間のうち一部について取得することとしてもよい。例えば、カーブ通過期間中の後半部のみ等、任意の部分を取得することとしてもよい。または、カーブ通過の全期間における曲率半径情報を取得し、ステップS1005における加工処理において、必要部分のみ切り取って加工することとしてもよい。
【0042】
[情報処理の手順:ユーザが運転者であるかどうかの判定]
図6は、本実施形態において、ユーザが移動体1の運転者であるかどうかを判定するための手順例を示すフローチャートである。
【0043】
まず、携帯情報処理装置10から取得される位置情報に基づいて、サーバ20は、携帯情報処理装置10が対象カーブを通過した際の位置情報を特定する(S2001)。この特定にあたっては、例えば、取得された位置情報が対象カーブ位置情報から所定の距離内(例えば、5m以内)に所定期間(例えば、3秒間)以上存在し、かつ、対象カーブ情報における進入方向と同一の方向から進入した、といった条件を満たした場合に、携帯情報処理装置10が対象カーブを通過したと判定し、対応する位置情報を特定する。無論、対象カーブを通過したかどうかの判定はこの方法に限定されず、取得された位置情報に基づいた任意の方法を適用可能である。
【0044】
次に、サーバ20は、携帯情報処理装置10が対象カーブを通過した際の曲率半径情報を取得する(S2003)。曲率半径情報の取得方法は、S1003と同様に、位置情報取得部170によって取得される位置情報に基づいて速度及び角速度を算出し、これらに基づいて曲率半径情報を取得することとしてもよいし、速度取得部180及び角速度取得部190によってそれぞれ取得される速度情報及び角速度情報に基づいて曲率半径情報を取得することとしてもよく、特に限定されない。
また、本実施形態においては、カーブ通過前半部とカーブ通過後半部との2つに分けて曲率半径情報を取得することとする。
【0045】
そして、サーバ20は、既に取得されているモデル曲率半径情報と、S2003にて取得された曲率半径情報とをカーブ通過前半部及びカーブ通過後半部についてそれぞれ比較し、その差異が双方とも所定の閾値以下であるかどうかを判断する(S2005)。差異が双方とも所定の閾値以下であった場合は(S2005;Y)、携帯情報処理装置10に紐づけられたユーザは移動体1の運転者であると判定する(S2007)。逆に、少なくとも一方の差異が所定の閾値を超える場合は(S2005;N)、携帯情報処理装置10に紐づけられたユーザは移動体1の運転者ではない(非運転者である)と判定する(S2009)。
【0046】
ここで、本実施形態においては、カーブ通過前半部とカーブ通過後半部それぞれについて、取得した曲率半径の値と、モデル曲率半径における期待値との差異と、所定の閾値(前半部と後半部で同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい)に基づいて判断することとしている。即ち、カーブ通過前半部について、モデル曲率半径情報における期待値と取得した曲率半径の値との差異値を算出し、更に、カーブ通過後半部について、モデル曲率半径情報における期待値と取得した曲率半径の値との差異値を算出して、これら差異値と所定の閾値とを比較する。
なお、カーブ通過前半部と後半部のうちの一方が所定の閾値以下であって、他方が所定の閾値を超える場合は、運転者でないと判断することとしているが、そのような判断をすることに限られず、例えば、運転者であるかどうかの判断を保留することとしてもよい。
【0047】
図7にカーブ通過時の各乗車席が描く軌跡の例を示す。
図7(1)は左折の場合、
図7(2)は右折の場合を示す。
図7(1)に示すように、左折の場合においては、右前にある運転者席は最も大きい曲率半径となる。逆に、
図7(2)に示すように、右折の場合においては、運転者席(同様)は右後の席よりは大きな曲率半径となる一方で、左前の席よりは小さい曲率半径となる。
【0048】
このことから、モデルとなる曲率半径のカーブは、左折であることが計算処理上簡易であり、好ましい。また、左折である場合、モデル曲率半径情報と取得した曲率半径情報の差異が所定の閾値を超える場合であって、かつ取得した曲率半径情報の方がモデル曲率半径情報より大きい場合は、カーブの通過が通常想定される方法で行われなかった(障害物の迂回等のため通常よりも大きな曲率半径となった、等)として、運転者であるかどうかの判断を保留することが好ましい。
更に、このように判断が保留されることがある場合に鑑みて、複数の対象カーブの通過を探知し、それぞれの対象カーブでの判断を合わせた総合的な情報をもって運転者であるかどうかを判断することとしてもよい。
【0049】
また、
図8に、左折時における各乗車席のより詳細な軌跡を示す。
図8に示すように、カーブ通過前半部とカーブ通過後半部を比較すると、移動体における前の席においては、前半部より後半部における曲率半径の値が大きくなる(r2>r1)。一方で、移動体における後ろの席においては、前半部と後半部とで曲率半径に大きな差異は発生しない。
このため、カーブ通過前半部と、カーブ通過後半部それぞれにおいて比較を行うことで、ユーザが移動体の前の席にいるのか、または後ろの席にいるのかをより適切に判別することができる。
【0050】
なお、運転者席が移動体の左前にある場合は右前にある場合と左右対称の関係となり、例えば、モデルとなる曲率半径のカーブは、右折であることが好ましいということがいえる。
【0051】
また、モデル曲率半径情報が、本実施形態のように、期待値と分散値とによって記憶部220に記憶されている場合には、かかる期待値と、取得された曲率半径の値とを所定の閾値に基づいて比較することとなるが、分散の値によって、この所定の閾値を変化させることとしてもよい。例えば、分散が小さい場合は閾値を小さく設定し、逆に分散が大きい場合は閾値を大きく設定することとしてもよい。
【0052】
ステップS2007の後、サーバ20は、対象カーブの通過時を含む同一運転者範囲を特定し、この同一運転者範囲においては、移動体1はユーザにより運転がなされていたことを登録する(S2011)。ここで、同一運転者範囲とは、移動体1において同一の運転者により運転がなされていると想定される時間の範囲である。同一運転者範囲については、例えば、携帯情報処理装置10から取得される位置情報に基づいて範囲を判別してもよく、位置情報に変化が継続して発生している期間は同一運転者範囲とみなすこととし、例えば、一定の期間(例えば、5分間)において観測された速度値(例えば、位置情報から算出する)が、所定の速度(例えば、時速10km)を超えない変化であったのであれば、移動体1は稼働していない、または、移動体1に乗車していないとみなし、その時点で同一運転者範囲が終了したとして、対応する終了時刻を特定し記録することとしてもよい。さらに、過去の運転に関する情報に対しても同様のことが適用可能であり、対象カーブの通過時から過去に遡り、同様の処理に基づいて同一運転者範囲の開始時刻を特定し記録することとしてもよい。
または、例えば、移動体1は不図示の稼働情報取得部を備え、稼働情報取得部は移動体1の稼働情報(エンジンのオン及びオフに関する情報)を生成できるよう構成されており、かかる稼働情報をサーバ20が取得し、サーバ20においてその稼働情報と、運転者であるとの判定を行った際の対象カーブの通過時刻に基づいて同一運転者範囲を特定することとしてもよく、同一運転者範囲の特定方法は特に限定されない。
このように、いつユーザが移動体1を運転していたかを判別することができるので、例えば、走行した距離に応じた保険料が設定される実走行距離連動型や、運転行動に応じた保険料が設定される運転行動連動型の保険を適切に適用できるという効果を奏する。
【0053】
ここで、ステップS2005における結果に応じて、即座に運転者であるかどうかを判定することとしているが、この方法に限られない。例えば、複数の対象カーブについて同様の処理をすることとし、ステップS2005においては、差異の大きさに応じたスコアを算出し、複数の対象カーブ全てにおいて算出されたスコアをまとめ(例えば合計する)、そのまとめた結果と所定の閾値との比較結果に基づいて(例えば、合計値が閾値以下であるかどうか)、運転者であるかどうかを判定することとしてもよい。
【0054】
[変形例]
上述の実施形態においては、対象カーブに対する複数の通過パターンにおける曲率半径情報から算出されるモデル曲率半径情報に基づいて、ユーザが移動体1の運転者かどうかを判別することとしているが、これに限られない。
例えば、移動体1の縦の長さ(前後の長さを意味する。以下、車両長さという)に対応した移動体群による曲率半径情報から算出されるモデル曲率半径情報とすることが好ましい。これは、移動体の車両長さに応じてカーブ通過前半部とカーブ通過後半部との曲率半径の差が異なってくるためである。例えば、移動体1が軽自動車であれば、モデル曲率半径情報は、同様に軽自動車による対象カーブにおける複数のパターンの曲率半径情報から算出されることが好ましい。
【0055】
また、上述の実施形態においては、位置情報取得部170は、位置情報を取得すると共にその位置情報の精度を示す精度値(例えば、DOP値)を取得することとしているが、この精度値を利用して、精度値が所定の閾値より低い場合には、ユーザが運転者であるかどうかの判断を行わない、又は、判断材料としない(複数の対象カーブでのスコアをまとめて判断する場合)こととしてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態においては、モデル曲率半径情報を期待値と分散値によって定義する方法を述べたが、これに限られない。モデル曲率半径情報は、取得した複数の曲率半径情報を何らかの形で表現できるものであればよい。
また、モデル曲率半径情報における分散値の値が所定の値より大きい場合は、モデルとしての信頼度が低いとして、対応するカーブを対象カーブとして採用しないこととしてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態においては、サーバ20がステップS2007又はステップS2009の判定を行うこととしているが、これに限られない。例えば、携帯情報処理装置10を含めたサーバ20以外の装置が、サーバ20に記憶されたモデル曲率半径情報を参照して、これら判断を行うこととしてもよい。または、各ステップは全て携帯情報処理装置10において行われることとしてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態においては、カーブ前半部とカーブ後半部のそれぞれについて取得された移動体1の曲率半径情報とモデル曲率半径情報とを比較することとしていたが、曲率半径情報を用いて運転者かどうかを判別する方法は特にこの方法に限られず、任意の方法を適用可能である。例えば、前側の乗車席においては、カーブ前半部よりもカーブ後半部の方が曲率半径が大きくなるという性質に鑑み、移動体1の曲率半径情報及びモデル曲率半径情報のそれぞれについてカーブ後半部の曲率半径情報とカーブ前半部の曲率半径情報との差異を取得し、その差異に基づいて、ユーザが移動体1の運転者であるかどうかを判断することとしてもよい。この場合も同様に、例えば、比較した結果(差分)が所定の閾値以下であるかどうかによって判断することが好ましい。
【0059】
また、上述の実施形態においては、対象カーブ中の任意の範囲について曲率半径情報、すなわち、曲率半径の値を取得することとしているが、この値は、この範囲において得られた複数の曲率半径の値であってよく、また、これら複数の曲率半径の値を総合して得られた値(例えば、平均値)を曲率半径情報としてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態においては、対象カーブの性質については特に限定されないが、より角度が小さいカーブであることが好ましい。
図9(1)(2)(3)は、カーブの角度をそれぞれ120度、90度、60度としたときの移動体による軌跡の例である。
図9に示すように、角度が小さい方が、移動体の前側の乗車席におけるカーブ前半部とカーブ後半部での曲率半径の差異が大きくなりやすい。したがって、カーブの角度がより小さい方が、ユーザが運転者であるかどうかの判断を明確に行い易いこととなる。
ここで、「カーブの角度(カーブ角度)」とは、例えば、直線からカーブに進入し、そして離脱して直線に復帰するまでの間に移動体が変化したヨー角の大きさを示すものである。即ち、カーブにおける一箇所を注目して求められるものではなく、カーブを総合して見てどれだけの角度の変化があったかを示すものである。
【0061】
よって、例えば、複数の対象カーブの通過時の曲率半径とモデル曲率半径との差異によって総合的に判断する場合は、より角度が小さい対象カーブにおける比較結果により大きな重みを付けて判断することとしてもよい。
また、対象カーブを選択する際においても、カーブの角度が所定の閾値以上でないと対象カーブとして選択しない、といったこととしてもよい。
【0062】
また、対象カーブについて満たされるべきカーブに進入する側の道路及びカーブから離脱する側の道路の性質については特に限定されないが、前者及び後者ともに、幅員が小さいことが好ましい。ここでいう幅員とは、必ずしも道路全体における幅員を意味するものではなく、例えば、対象カーブに進入する側の道路であって、進入方向と順方向と逆方向の2つからなる複数車線の道路であれば、順方向側の車線のみの幅員を意味することとしてもよい。同様に、対象カーブから離脱する側の道路であって、離脱方向と順方向と逆方向の2つからなる複数車線の道路であれば、順方向側の車線のみの幅員を意味することとしてもよい。
なお、幅員に関する情報(以下、「幅員情報」という)の取得に関しては、例えば、幅員情報を含む地図情報等から取得することとしてもよい。
【0063】
すなわち、対象カーブにおいて通過する移動体が使用しうる道路の幅の大きさが小さければ、それだけ移動体のカーブ通過時の軌跡の分散が小さくなることが想定されることから、その性質を利用するものである。
【0064】
また、上述の実施形態においては、ユーザの移動体が対象カーブをどのように通過したかについては特に述べなかったが、対象カーブを通過した際の性質が例えば以下のような条件を満たしていることが好ましい。
・カーブ進入時の速度が所定の範囲にある
・カーブ通過中の速度が所定の範囲にある
・カーブ離脱時の速度が所定の範囲にある
・カーブ進入時の加速度が所定の範囲にある
・カーブ通過中の加速度が所定の範囲にある
・カーブ離脱時の加速度が所定の範囲にある
すなわち、カーブ進入時、通過中、離脱時のそれぞれにおいて、速度があまりに小さかったり、またはあまりに大きかったりする場合、及び、加速度が通常想定されるような挙動をしていなかった場合は、通常想定される方法でカーブ通過がなされなかったと思われる(例えば、障害物があった、通常より急ぐ状況下にあった、突然のイベントにより急ハンドルまたは急減速を行った、等)ため、そのような場合における軌跡を処理から除外するものである。
【0065】
また、サーバ20が、複数の対象カーブ候補の中から、何らかの選択条件に基づいて対象カーブを決定することとしてもよい。
例えば、上述した説明を踏まえて、対象カーブ候補が以下に挙げる条件の少なくともいずれかを満たしていることが好ましい。
・過去の移動体軌跡に関する情報が多く蓄積されている(所定量より大きい)、更に好ましくは、ユーザの移動体に対応する移動体による軌跡に関する情報が多く蓄積されている
・対象カーブ候補の曲率半径情報における分散値が小さい(所定値より小さい)
・左折である
・角度が小さい(所定角度より小さい)
・カーブ進入時の道路の幅員が小さい(所定長より小さい)
・カーブ離脱時の道路の幅員が小さい(所定長より小さい)
【0066】
同様に、例えば、上述した説明を踏まえて、対象カーブ候補をユーザの移動体が通過したときのユーザの移動体に関する情報が、以下に挙げる条件の少なくともいずれかを満たしていることが好ましい。
・対象カーブ候補を通過時に取得された位置情報の精度が高い(精度値が所定値より高い)
・対象カーブ進入時の速度が所定の範囲にある
・対象カーブ通過中の速度が所定の範囲にある
・対象カーブ離脱時の速度が所定の範囲にある
・対象カーブ進入時の加速度が所定の範囲にある
・対象カーブ通過中の加速度が所定の範囲にある
・対象カーブ離脱時の加速度が所定の範囲にある
【0067】
また、上述の実施形態においては、曲率半径に基づいた処理によりユーザが運転者かどうかを判断することとしているが、他の処理と組み合わせることにより、ユーザが運転者かどうかを総合的に判断することとしてもよい。
例えば、携帯情報処理装置10は不図示の操作探知部を備え、位置情報取得部170、速度情報取得部180又は角速度情報取得部190などから取得される情報に基づいて運転中であると思われる期間を判別し、かかる期間において、操作探知部は入力部150に何らかの入力があったか、または、所定値より大きな頻度で入力があったかを判別することとし、その判別結果をユーザが運転者かどうかの判断材料の一つとしてもよい。これは、運転中でありながら携帯情報処理装置10を入力部150を介して操作しているのであれば、そのユーザは運転者でない可能性が高いといえる背景を活用するものである。
同様に、携帯情報処置装置10のユーザが停止している移動体1に乗車する際、どちらの側から乗車したかの結果を、そのユーザが運転者かどうかの判断材料の一つとしても良い。これは、通常右側に運転席があることから、右側から乗車したのであれば運転席に座る可能性が高いといえ、反面、左側から乗車したのであれば運転者ではない可能性が高いといえる背景を活用するものである。
【0068】
以上、本発明の実施形態および変形例について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態および変形例に限定されない。また、上記の実施形態および変形例は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態および変形例は、組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 移動体
10 携帯情報処理装置
110 制御部
120 記憶部
130 通信部
140 表示部
150 入力部
160 音声出力部
170 位置情報取得部
180 速度情報取得部
190 角速度情報取得部
20 サーバ
210 制御部
220 記憶部
230 通信部