(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074091
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】樹脂被覆アルミニウム合金板及び樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B32B 15/092 20060101AFI20230522BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20230522BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230522BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230522BHJP
【FI】
B32B15/092
B32B15/20
C09D163/00
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186860
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 博紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 治
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA20B
4F100AB10A
4F100AB31A
4F100AD11B
4F100AK35B
4F100AK53B
4F100AL05B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
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4F100DD07B
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4F100EJ08B
4F100GB41
4F100JA07B
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4F100JK14B
4F100JL11
4F100JN21B
4J038DB001
4J038HA036
4J038HA446
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA14
4J038NA01
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】良好な放熱性と高耐湿性の両方を備える樹脂被覆アルミニウム合金板を提供する。
【解決手段】エポキシ系樹脂と、硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物で形成されている被覆樹脂層を有し、該被覆樹脂層は、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部の黒鉛粒子と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部のシリカ粒子と、を含有し、該被覆樹脂層の厚みが2.0~25.0μmであること、を特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ系樹脂と、硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物で形成されている被覆樹脂層を有し、
該被覆樹脂層は、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部の黒鉛粒子と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部のシリカ粒子と、を含有し、該被覆樹脂層の厚みが2.0~25.0μmであることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項2】
前記被覆樹脂層は、樹脂成分として、前記エポキシ系樹脂と、前記硬化剤と、を含有し、且つ、充填材として、前記エポキシ系樹脂及び前記硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部の前記黒鉛粒子と、前記エポキシ系樹脂及び前記硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部の前記シリカ粒子と、を含有する樹脂組成物の硬化物で形成されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項3】
前記エポキシ系樹脂の分子量が40000~60000であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項4】
前記硬化剤は、アミノ樹脂系硬化剤であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項5】
前記被覆樹脂層の厚みが5.0~15.0μmであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項6】
前記黒鉛粒子の平均粒径が1.0~8.0μmであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項7】
前記黒鉛粒子の平均粒径が1.0~5.0μmであることを特徴とする請求項6記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項8】
前記被覆樹脂層の表面の算術平均粗さRaが0.100~2.500μmであることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項9】
前記被覆樹脂層の光沢度が0.1~4.5であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項10】
エポキシ系樹脂と、硬化剤と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部の黒鉛粒子と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部のシリカ粒子と、溶剤と、を含有することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱を発生する電子部品、家電製品等の筐体や放熱板、反射板等の材料として好適であり、加工性、放熱性及び耐高湿性を有する樹脂被覆アルミニウム合金板及び該樹脂被覆アルミニウム合金板の樹脂層の形成に用いられる樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、局所的に部品からの発熱量が大きくなることがある。部品からの発熱量の増加は、電子機器の性能を損なう恐れがあると共に、電子機器の信頼性を損なうおそれがある。この熱を速やかに外部へ放散させる手段として、通風孔による放熱対策や冷却ファンなどによる放熱手段による対策が挙げられる。しかし、これらの対策では、ファンの動力のためのエネルギーのためにCO2排出が増大するという環境性能の低下やコスト増加などが問題となる。
【0003】
一方、熱放射による放熱対策は動力を必要としないため低コストで、かつ冷却ファンレスによる静音化が可能なため環境性能が高く、省スペースにも適用可能である。このような趨勢の中、熱伝導性に優れるアルミニウム合金製基材の表面に塗装を施すことにより高い熱放射性を付与した放熱性樹脂被覆アルミニウム合金板が提案されており(特許文献1)、今後、放熱性樹脂被覆アルミニウム合金板への期待がますます高まるものと予想される。
【0004】
低コストで加工性、放熱性の良い材料として、金属等からなる基材表面に外層塗膜と内層塗膜とを備え、前記内層塗膜が熱放射率が70%以上の顔料を内層塗膜の乾燥質量に対して0.03~70質量%含有する塗膜である熱放射性表面処理材が提案(特許文献2)されている。ところが、特許文献2のような樹脂で被覆されたアルミニウム合金板では、樹脂が軟化し易いため、アルミニウム合金板を製造する時に、当該アルミニウム合金板を巻き回してコイル状に保管すると、樹脂塗膜同士が接着してしまうというブロッキング現象が生じて問題となることがある。
【0005】
これに対して、優れた放熱性を実現しつつ、ブロッキング現象が起き難く、加工性に優れた放熱性樹脂被覆アルミニウム合金板を実現する放熱性樹脂被覆アルミニウム合金板が提案されている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3の塗膜には加水分解し易い樹脂を使用しているため、高湿度環境下において塗膜の劣化が起こる可能性がある。また、加水分解しない樹脂を選定することも検討されているが、樹脂単体の放射率が低いことから、放熱特性と高湿度環境下での耐久性(耐湿性)を両立することは非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-201001号公報
【特許文献2】特開2002-228085号公報
【特許文献3】特開2005-305993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、良好な放熱性と耐高湿性の両方を備える樹脂被覆アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、アルミニウム合金板上に化成皮膜を設け、その上に、エポキシ樹脂と、硬化剤と、所定量の黒鉛粒子と、所定量のシリカ粒子と、を含有する樹脂組成物の硬化物からなる被覆樹脂層を設けることにより、放熱性を低下させず耐高湿性を向上し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
上記課題は、以下の本発明によって解決される。
すなわち、本発明(1)は、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物で形成されている被覆樹脂層を有し、
該被覆樹脂層は、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部の黒鉛粒子と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部のシリカ粒子と、を含有し、該被覆樹脂層の厚みが2.0~25.0μmであることを含有すること、
を特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板を提供するものである。
【0010】
また、本発明(2)は、前記被覆樹脂層は、樹脂成分として、前記エポキシ系樹脂と、前記硬化剤と、を含有し、且つ、充填材として、前記エポキシ系樹脂及び前記硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部の前記黒鉛粒子と、前記エポキシ系樹脂及び前記硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部の前記シリカ粒子と、を含有する樹脂組成物の硬化物で形成されていることを特徴とする(1)の樹脂被覆アルミニウム合金板を提供するものである。
【0011】
また、本発明(3)は、前記エポキシ系樹脂の分子量が40000~60000であることを特徴とする(1)又は(2)の樹脂被覆アルミニウム合金板を提供するものである。
【0012】
また、本発明(4)は、前記硬化剤は、アミノ樹脂系硬化剤であることを特徴とする(1)~(3)いずれかの樹脂被覆アルミニウム合金板を提供するものである。
【0013】
また、本発明(5)は、前記被覆樹脂層の厚みが5.0~15.0μmであることを特徴とする(1)~(4)いずれかの樹脂被覆アルミニウム合金板を提供するものである。
【0014】
また、本発明(6)は、前記黒鉛粒子の平均粒径が1.0~8.0μmであることを特徴とする(1)~(5)いずれかの樹脂被覆アルミニウム合金板を提供するものである。
【0015】
また、本発明(7)は、前記黒鉛粒子の平均粒径が1.0~5.0μmであることを特徴とする(6)の樹脂被覆アルミニウム合金板を提供するものである。
【0016】
また、本発明(8)は、前記被覆樹脂層の表面の算術平均粗さRaが0.100~2.500μmであることを特徴とする(1)~(7)いずれかの樹脂被覆アルミニウム合金板を提供するものである。
【0017】
また、本発明(9)は、前記被覆樹脂層の光沢度が0.1~4.5であることを特徴とする(1)~(8)いずれかの樹脂被覆アルミニウム合金板を提供するものである。
【0018】
また、本発明(10)は、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部の黒鉛粒子と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部のシリカ粒子と、溶剤と、を含有することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な放熱性と高耐湿性の両方を備える樹脂被覆アルミニウム合金板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板の形態例の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム合金板は、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物で形成されている被覆樹脂層を有し、
該被覆樹脂層は、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部の黒鉛粒子と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部のシリカ粒子と、を含有し、該被覆樹脂層の厚みが2.0~25.0μmであること、
を特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板である。
そして、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板は、放熱性を有する放熱性樹脂被覆アルミニウム合金板である。
【0022】
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板は、アルミニウム合金板の表面に、直接又は化成皮膜を介して、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、黒鉛粒子と、シリカ粒子と、を含有する樹脂組成物の硬化物で形成されている被覆樹脂層を有する。
【0023】
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板の形態例の模式的な断面図である。
図1中、樹脂被覆アルミニウム合金板1は、アルミニウム合金板(アルミニウム板)2の表面に形成されている化成皮膜3及び該化成皮膜3の表面に形成されている被膜樹脂層4からなる。なお、
図1に示す形態例の樹脂被覆アルミニウム合金板は、被覆樹脂層の下地として、化成皮膜を有しているが、本発明において、化成皮膜は任意であり、被覆樹脂層は、アルミニウム合金板(アルミニウム板)の表面に直接形成されていてもよい。例えば、被覆樹脂層は、有機溶剤、アルカリ又は酸で洗浄されたアルミニウム合金板(アルミニウム板)の表面に直接形成されていてもよい。本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板としては、(i)アルミニウム合金板(アルミニウム板を含む。)と、該アルミニウム合金板の表面に形成されている化成皮膜と、該化成皮膜の表面に形成されている被覆樹脂層と、からなる樹脂被覆アルミニウム合金板、(ii)アルミニウム合金板(例えば、有機溶剤、アルカリ又は酸で洗浄されたアルミニウム合金板)(アルミニウム板を含む。)と、該アルミニウム合金板の表面に形成されている被覆樹脂層と、からなる樹脂被覆アルミニウム合金板が挙げられる。アルミニウム合金板の洗浄に用いられる有機溶剤としては、アセトン、塩化メチレン、メチルエチルケトン等が挙げられ、また、アルカリとしては、水酸化ナトリウム水溶液、市販のアルミニウム用脱脂液(アルカリビルダー、キレート剤、界面活性剤等を含む。)等が挙げられ、また、酸としては、硝酸、硫酸等が挙げられる。
【0024】
(アルミニウム合金板)
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板に係るアルミニウム合金板とは、アルミニウム又はアルミニウム合金のいずれかからなる板である。アルミニウム合金板の材質は、特に限定されるものではないが、1000系アルミニウム材、3000系アルミニウム合金材、5000系アルミニウム合金材が好適である。アルミニウム合金板の厚みは、用途に応じて適宜選択されるが、0.6~2.0mmの範囲が好ましく、1.0~1.5mmの範囲がより好ましい。
【0025】
(化成皮膜)
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板は、アルミニウム合金板上に化成皮膜を有してもよいし、化成皮膜を有していなくてもよい。本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板が、化成皮膜を有する場合、アルミニウム合金板上に被覆樹脂層を形成する前に、アルミニウム合金板の表面に化成皮膜が形成される。
【0026】
化成皮膜としては、特に限定されないが、リン酸クロメート処理液で形成されるクロメート化成皮膜、環境問題に配慮したノンクロメート処理液で形成されるノンクロメート化成皮膜が好ましい。ノンクロメート化成皮膜としては、特に限定されないが、リン酸ジルコニウム系化成皮膜、又はジルコニウム-モリブデン系化成皮膜が好ましい。
【0027】
化成皮膜におけるCr又はZrの皮膜量は、蛍光X線で測定される。化成皮膜がCrを含有する場合、Crの皮膜量は、Cr原子換算で5~45mg/m2が好ましい。化成皮膜がZrを含有する場合、Zrの皮膜量は、Zr原子換算で0.5~15mg/m2が好ましい。Cr原子換算のCrの皮膜量が5mg/m2未満又はZr原子換算のZrの皮膜量が0.5mg/m2未満では耐食性が劣る場合があり、また、Cr原子換算のCrの皮膜量が45mg/m2を超える又はZr原子換算のZrの皮膜量が15mg/m2を超える場合には加工密着性が劣る場合がある。
【0028】
アルミニウム合金板上に化成皮膜を形成するに際して、アルミニウム合金板の表面の汚れを除去し、また表面性状を調整するために、脱脂処理を行うことが好ましい。脱脂処理は、アルカリ洗浄が好ましく、例えば、苛性ソーダ、リン酸ソーダ、ケイ酸ソーダ等を用いて行われる。このようなアルカリ洗浄による脱脂処理は、アルミニウム合金板に所定の表面処理液をスプレーしたり、アルミニウム合金板を処理液中に所定の温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。アルカリ洗浄後には、アルカリ洗浄により発生したスマットを除去する目的で酸洗浄を行うことが好ましい。酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、硝酸等が挙げられ、特に0.5~5.0質量%の硫酸が好ましい。
【0029】
次いで、得られた脱脂アルミニウム合金板の表面を、化成処理することにより、アルミニウム合金板の表面に化成皮膜を形成させる。化成処理として、リン酸クロメート処理液、ノンクロメート処理液等の処理液に、脱脂アルミニウム合金板を所定の温度で所定時間浸漬する処理、脱脂アルミニウム合金板に、リン酸クロメート処理液、ノンクロメート処理液等の処理液をスプレーして塗布し、乾燥する処理等が挙げられる。
【0030】
(被覆樹脂層)
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム合金板は、アルミニウム合金板の表面に、直接又は化成皮膜を介して、被覆樹脂層を有している。本発明に係る樹脂被覆アルミニウム合金板に係る被覆樹脂層は、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物で形成されている。つまり、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム合金板に係る被覆樹脂層は、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、を含有する樹脂組成物を硬化物させて得られたものである。そして、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物で形成されている被覆樹脂層は、黒鉛粒子と、シリカ粒子とを含有する。
【0031】
エポキシ系樹脂は、硬化剤により硬化して、樹脂層を形成することができる熱硬化性のエポキシ樹脂であれば、特に制限されない。エポキシ系樹脂としては、例えば、室温でガラス状のエポキシ樹脂が挙げられる。また、エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型やアミン類、カルボン酸類を用いて合成されるものが挙げられる。エポキシ系樹脂は、樹脂被覆アルミニウム合金板の耐湿性に寄与し、高耐湿性を実現する。エポキシ系樹脂の数平均分子量は、40000~60000の範囲であることが好ましい。エポキシ系樹脂の数平均分子量が40000未満では、加工性が劣る場合がある。エポキシ系樹脂の数平均分子量が60000を超えると、塗装性が劣る場合がある。なお、本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。
【0032】
硬化剤は、エポキシ系樹脂の硬化剤であり、アミノ樹脂系硬化剤が挙げられる。アミノ樹脂系硬化剤としては、例えば、ユリアをはじめとした尿素骨格を有する化合物や尿素誘導体;グアナミン、メチル化ベンゾグアナミン、ブチル化ベンゾグアナミン、メチルブチル化ベンゾグアナミン、エチル化ベンゾグアナミン等のグアナミン骨格を有する化合物;メラミン、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、ブチルメチル化メラミン等のメラミン骨格を有する化合物が挙げられる。
【0033】
黒鉛粒子は、赤外線を放射する機能を有し、例えば、公知の赤外線を放射する機能を有する材料が挙げられる。黒鉛粒子が被覆樹脂層に含有されていることにより、被覆樹脂層に放熱性が付与される。黒鉛粒子として、グラファイト等の凝集性を有する黒鉛粒子が挙げられる。グラファイトは、六方晶系、六角板状結晶で、構造は、亀の甲状の層状物質で層毎の面内は、強い共有結合で炭素間が繋がっており、層と層の間は、弱いファンデルワールス力で結合したものである。黒鉛粒子の種類は、特に限定されないが、例えば、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、粒状黒鉛、土状黒鉛等が挙げられる。
【0034】
黒鉛粒子の平均粒径は、好ましくは1.0~8.0μmである。黒鉛粒子の平均粒径が1.0~8.0μmであることにより、被覆樹脂層における色素の表面積が増加し、高い放射率が得られ、且つ、優れた曲げ加工性が得られる。一方、黒鉛粒子の平均粒径が1.0μm未満だと、曲げ加工性に関し、それ以上の効果が認められず、コストアップになり得、また、黒鉛粒子の平均粒径が8.0μmを超えると、曲げ加工性が劣る場合がある。黒鉛粒子の平均粒径は、より好ましくは1.0~5.0μmである。黒鉛粒子の平均粒径が1.0~5.0μmであることにより、放射率が更に高くなる。なお、本発明において、グラファイト等の黒鉛粒子は、樹脂組成物及び被覆樹脂層中で、一次粒子が凝集した二次粒子の状態で存在しており、黒鉛粒子の平均粒径とは、黒鉛粒子の二次粒子の平均粒径を指す。黒鉛粒子の二次粒子の平均粒径は、レーザー回折法により測定される体積積算50%になるときの粒子の粒子径を指す。
【0035】
被覆樹脂層中の黒鉛粒子の含有量は、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100.0質量部に対して5.0~25.0質量部、好ましくは10.0~20.0質量部である。被覆樹脂層中の黒鉛粒子の含有量が上記範囲にあることにより、放熱性に優れ、且つ、均一な被覆樹脂層が得られる。一方、被覆樹脂層中の黒鉛粒子の含有量が、上記範囲未満では、黒鉛粒子の被覆樹脂層中の絶対量が不足し、放熱性が劣る場合があり、また、上記範囲を超えると、均一な被覆樹脂層が得られない。
【0036】
シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、湿式法シリカ、乾式法シリカが挙げられ、湿式法シリカが好ましい。湿式法シリカは、乾式法と比較して、表面シラノール基が多い。このシラノール基が、フィラーとしての補強性や吸着性の機能を発揮する。また、被覆樹脂層の透明性、耐水性等を改良する目的で、シリカ粒子は、表面がシラン類やシリコーン類で疎水化処理されたものであっても良い。被覆樹脂層が硬質のシリカ粒子を含有することで、被覆樹脂層が硬くなり、耐ブロッキング性や被覆樹脂層の硬度が向上する。
【0037】
被覆樹脂層中のシリカ粒子の含有量は、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部、好ましくは3.0~25.0質量部、より好ましくは5.0~18.0質量部、更に好ましくは10.0~15.0質量部である。被覆樹脂層中のシリカ粒子の含有量が上記範囲にあることにより、放熱性に優れる。一方、被覆樹脂層中のシリカ粒子の含有量が、3.0質量部未満では、放熱性が劣る場合があり、また、上記範囲を超えると、耐アルカリ性が極めて低くなる。また、被覆樹脂層中のシリカ粒子の含有量が、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100.0質量部に対して、15.0質量部以下であることが、耐アルカリ性に優れる点で、好ましい。
【0038】
被覆樹脂層は、潤滑性の付与のために、ワックスを含有することができる。ワックスとしては、特に限定されないが、ラノリン、ポリエチレンワックス、カルナウバワックスが好適に用いられる。ポリエチレンワックスは、数平均分子量が600~12000であり、80~130℃の融点を有するものが好ましい。カルナウバワックスは、高級脂肪酸エステルを主成分とする植物ロウであり、80~86℃の融点を有するものが好適である。樹脂組成層中のワックスの含有量は、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計に対して1.0~15.0質量%、好ましくは2.0~12.0質量%である。
【0039】
被覆樹脂層は、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、黒鉛粒子と、シリカ粒子と、を含有する樹脂組成物を硬化物させたものである。そして、被覆樹脂層形成用の樹脂組成物は、樹脂成分として、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、を含有し、且つ、充填材として、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部の黒鉛粒子と、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部のシリカ粒子と、を含有する。樹脂組成物に係るエポキシ系樹脂、硬化剤、黒鉛粒子、シリカ粒子、ワックスは、被覆樹脂層に係るエポキシ系樹脂、硬化剤、黒鉛粒子、シリカ粒子、ワックスと同様である。
【0040】
樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、エポキシ系樹脂の種類、エポキシ当量等、及び硬化剤の種類により、適宜選択されるが、エポキシ系樹脂100.0質量部に対して、好ましくは0.5~11.0質量部、より好ましくは0.5~7.0質量部である。
【0041】
樹脂組成物中の黒鉛粒子の含有量は、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100.0質量部に対して5.0~25.0質量部、好ましくは10.0~20.0質量部である。樹脂組成物中の黒鉛粒子の含有量が上記範囲にあることにより、放熱性に優れ、且つ、均一な被覆樹脂層が得られる。一方、樹脂組成物中の黒鉛粒子の含有量が、上記範囲未満では、黒鉛粒子の樹脂皮膜中の絶対量が不足し、放熱性が劣る場合があり、また、上記範囲を超えると、均一な被覆樹脂層が得られない。
【0042】
樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量は、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部、好ましくは3.0~25.0質量部、より好ましくは5.0~18.0質量部、更に好ましくは10.0~15.0質量部である。樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量が上記範囲にあることにより、放熱性に優れる。樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量が、3.0質量部未満では、放熱性が劣る場合があり、また、上記範囲を超えると、耐アルカリ性が極めて低くなる。また、被覆樹脂層中のシリカ粒子の含有量が、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100.0質量部に対して、15.0質量部以下であることが、耐アルカリ性に優れる点で、好ましい。
【0043】
樹脂組成物は、潤滑性の付与のために、ワックスを含有することができる。ワックスとしては、特に限定されないが、ポリエチレンワックス、カルナウバワックスが好適に用いられる。ポリエチレンワックスは、数平均分子量が600~12000であり、80~130℃の融点を有するものが好ましい。カルナウバワックスは、高級脂肪酸エステルを主成分とする植物ロウであり、80~86℃の融点を有するものが好適である。樹脂組成物中のワックスの含有量は、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計に対して1.0~15.0質量%、好ましくは2.0~12.0質量%である。また、ワックスの平均粒径は1~5μmであることが好ましい。ワックスの平均粒径が上述の範囲内にあると、ウエットの状態で塗布した場合、ワックスは溶剤に溶け難いために被覆樹脂層の表面から突出しやすい。これを焼付乾燥することにより、表面に突出している部分が溶融し、被覆樹脂層の表面をワックスが覆うので、均一なワックスの分布を得ることができる。また、被覆樹脂層が、2層以上の樹脂組成物の硬化物からなる場合、再上層の樹脂層のみがワックスを含有することが好ましい。なお、数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。融点は、JIS K7121に準じて測定される。平均粒径は、レーザー回折・散乱法で測定される。
【0044】
樹脂組成物は、溶媒を含有することができる。樹脂組成物が溶媒を含有する場合、エポキシ系樹脂、硬化剤、黒鉛粒子、シリカ粒子及びそれら以外に必要に応じて含有される成分は、溶媒に、分散又は溶解している。溶媒は特に限定されないが、例えば、水、エステル、グリコールエーテル、グリコール、ケトン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール等が挙げられる。これらの中でも、溶媒としては、具体的には、キシレン、トルエン、及びこれらの混合物が特に好ましい。樹脂組成物では、固形分含有量が、通常、1.0~50.0質量%となるように調製される。
【0045】
被覆樹脂層は、樹脂組成物の硬化物からなり、アルミニウム合金板に樹脂組成物を所定の厚みで塗布して、樹脂組成物の被覆層を形成させ、次いで、加熱して樹脂組成物を硬化させることにより形成される。
【0046】
被覆樹脂層の厚みは、好ましくは2.0~25.0μmである。被覆樹脂層の厚みが上記範囲にあることにより、高い放射率が得られ、且つ、加工性に優れる。被覆樹脂層の厚みは、放熱性が高くなる点で、好ましくは5.0~25.0μmである。被覆樹脂層の厚みは、塗装性が高くなる点で、更に好ましくは5.0~15.0μmである。また、被覆樹脂層の厚みは、耐アルカリ性が高くなる点で、5.0μm以上であることが好ましく、更に耐アルカリ性が高くなる点で、10.0μm以上であることが更に好ましい。なお、被覆樹脂層が2層以上の樹脂層からなる場合、上記被覆樹脂層の厚みは、全樹脂層の合計の厚みを指す。
【0047】
被覆樹脂層は、1層の樹脂層からなるものであっても、2層の樹脂層からなるものであっても、3層以上の樹脂層からなるものであってもよい。被覆樹脂層が2層以上の樹脂層からなる場合、各樹脂層は、全て同一の組成の樹脂組成物の硬化物からなるものであってもよいし、あるいは、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板に係る樹脂組成物の組成範囲内で、組成が異なっている樹脂組成物の硬化物からなるものであってもよい。被覆樹脂層が2層の樹脂層からなる場合、上層の厚みが3.0~10.0μmであることが好ましく、下層の厚みが3.0~10.0μmであることが好ましい。なお、被覆樹脂層の厚みは、ストランドゲージ、電磁膜厚計、渦電流式膜厚計や重量法等で測定される。
【0048】
被覆樹脂層の表面の算術平均粗さは、好ましくは0.7~2.5μm、より好ましくは1.2~2.3μmである。被覆樹脂層の表面粗さが上記範囲にあることにより、塗膜表面の表面積が増加し、放射率が増加する。
【0049】
被覆樹脂層の表面の光沢度は、好ましくは0.1~4.5、より好ましくは0.3~2.0である。被覆樹脂層の光沢度が上記範囲にあることにより、高い放射率が得られる。被覆樹脂層の光沢度が上記範囲にあることにより、塗膜表面が粗く、塗膜の表面積が大きくなるため、放熱性が増加する。
【0050】
被覆樹脂層の放射率は、好ましくは0.70~0.95、より好ましくは0.80~0.95、さらに好ましくは0.80~0.95である。被覆樹脂層の放射率が上記範囲にあることにより、放熱性が向上する。
【0051】
被覆樹脂層の形成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。先ず、溶媒に、エポキシ系樹脂と硬化剤とを混合し、更に、黒鉛粒子及びシリカ粒子を加え、溶媒にこれら配合物を溶解又は分散させることにより、塗料(樹脂組成物)を調製する。次いで、この塗料(樹脂組成物)をアルミニウム合金板の表面に直接又はアルミニウム合金板の表面に形成された化成皮膜上に塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥することにより、樹脂組成物の塗膜を形成させ、更に、樹脂組成物の塗膜を硬化させる。これにより、被覆樹脂層が形成される。溶媒は特に限定されないが、例えば、水、エステル、グリコールエーテル、グリコール、ケトン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール等が挙げられる。これらの中でも、具体的には、キシレン、トルエン、及びこれらの混合物が特に好ましい。通常、塗料は1~50質量%の固形分となるように調製される。
【0052】
2層の樹脂層からなる樹脂被覆層を形成させる場合には、塗料(樹脂組成物)をアルミニウム合金板の表面に直接又はアルミニウム合金板の表面に形成された化成皮膜上に塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥し、下層の樹脂層を形成させ、次いで、前記塗料(樹脂組成物)を下層の樹脂層の表面に塗布し、所定温度のオーブン中で所定時間処理して焼付け乾燥する。これにより、上層の樹脂層が形成される。
【0053】
塗料(樹脂組成物)の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールコーター法、ロールスクイズ法、エアナイフ法、ケミコーター法、浸漬法、スプレー法、バーコーター法等が挙げられる。アルミニウム合金板上に低コストにて被覆樹脂層を形成するには、コイルを用いロールコーターにて連続的に塗料(樹脂組成物)を塗布する方法が最も適している。この方法で塗料を塗布する場合、例えば3~7ゾーンに分かれた焼付炉にて塗料を焼付ける。また、全焼付時間は10~60秒が好ましく、20~45秒がより好ましい。焼付温度は、最高到達温度が200~290℃が好ましい。
【0054】
また、厚みが10.0~25.0μmと、厚みが大きい樹脂被覆層を形成させる場合、1回で厚みが大きい樹脂被覆層を形成させるためには、塗布する樹脂組成物の厚みを大きくしなければならない。そして、樹脂組成物の厚みが大きいと、塗布後に樹脂組成物中からの溶剤の蒸発が起こり難いために、樹脂の硬化により溶剤の蒸発が妨げられるようになるため、塗膜表面の平坦度が損なわれる不具合が生じる可能性がある。そのため、厚みが大きい樹脂被覆層を形成させる場合、先ずは、樹脂組成物を用いて、厚みが3.0~15.0μmの下層の樹脂層を形成させる、次いで、厚みが3.0~15.0μmの上層の樹脂層を形成させることが、溶剤の蒸発が妨げられ難くなり、塗膜表面の凹凸形状発生を抑制できる点で好ましい。
【0055】
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物は、エポキシ系樹脂と、硬化剤と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、5.0~25.0質量部、好ましくは10.0~20.0質量部の黒鉛粒子と、該エポキシ系樹脂及び該硬化剤の合計100.0質量部に対して、3.0~28.0質量部、好ましくは3.0~25.0質量部、より好ましくは5.0~18.0質量部、更に好ましくは10.0~15.0質量部のシリカ粒子と、溶剤と、を含有することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物である。また、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物は、必要に応じて、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計に対して1.0~15.0質量%、好ましくは2.0~12.0質量%のワックスを含有することができる。
【0056】
そして、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物は、アルミニウム合金板の表面に、直接又はアルミニウム合金板の表面に形成されている化成皮膜上に、塗布し、樹脂組成物の塗膜を形成させ、次いで、該樹脂組成物の塗膜を硬化させることにより、アルミニウム合金板に樹脂被覆層を形成させるための樹脂組成物である。本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物は、放熱性樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物である。
【0057】
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板用樹脂組成物に係るエポキシ系樹脂、硬化剤、黒鉛粒子、シリカ粒子、溶剤、ワックスは、上記本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板における樹脂組成物に係るエポキシ系樹脂、硬化剤、黒鉛粒子、シリカ粒子、溶剤、ワックスと同様である。
【0058】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例0059】
(実施例1~12、比較例1~2)
アルミニウム合金板(材質:JIS A1050、板厚:0.6mm)に対し、市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗後、市販のリン酸クロメート処理液にて化成処理を行い、化成皮膜を形成させた。
次いで、表1に示す通りに、有機溶剤(トルエン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンの混合溶剤)に、エポキシ系樹脂及びアミノ系硬化剤(樹脂分)と、放熱性粒子と、シリカ粒子(湿式法シリカ)と、を添加し、分散又は溶解させた塗料を調製し、得られた塗料を、化成皮膜を形成させたアルミニウム合金板の一方の表面にバーコーター方式によって塗布し、熱風炉で焼き付けて、被覆樹脂層を形成させた。なお、焼付条件は、最高到達温度が272℃で、焼付時間が84秒であった。なお、実施例12では、先に下層の樹脂層を形成させた後、次いで上層の樹脂層を形成させる2コート方式で行なった。
また、蛍光X線で化成皮膜量を測定したところ、Cr量20~30g/m2であった。乾燥後の被覆樹脂層の厚みを渦電流式膜厚計で測定した結果を表1に示す。
【0060】
(試験方法)
得られた樹脂被覆アルミニウム合金板について下記の試験方法にて性能試験を行なった。
(放射率)
規格ASTM C1371(ポータブルエミソメーターを用いた室温付近の材料のエミッタンス測定のための標準試験方法)に準拠したポータブル放射率計(DandSAERD 京都電子工業株式会社製)を用いて被覆樹脂層の表面の放射率を測定した。
(光沢度)
ハンディ光沢度計(IG-410 堀場製作所製)を用いて被覆樹脂層の表面の光沢度を測定した。
(曲げ加工性)
評価面を外側にして180度3T曲げを行い、被覆樹脂層の割れを目視で観察し、1:被覆樹脂層の割れなし、2:非常に軽微な被覆樹脂層の割れあるが良好、3:小さな被覆樹脂層の割れあるが使用可能、4:大きな塗膜割れあり使用不可、の基準で曲げ加工性を評価した。
(テープ試験)
密着性試験としてJIS K5400に準拠した碁盤目剥離試験を行った。試験では、初期(塗装後無処理)及び高温高湿試験後(120℃、96時間)の試験材を使用した。試験方法は、カッターナイフで1mm×1mmのマスが100個できるよう切込みを入れ(縦横11本)、セロハンテープを密着させ、テープを急激に剥離した際の塗膜の剥れていないマスの数を観察するテープ試験を行った。
(耐薬品性試験)
耐薬品性試験としてJIS K5600-6-1に準拠した浸漬試験を行った。浸漬液は5質量%水酸化ナトリウム水溶液及び5質量%硫酸を使用した。試験片を浸漬液に浸漬させ24時間浸漬させ、浸漬後の試験片は水洗及び乾燥を行った。塗膜の状態を目視で観察し、1:塗膜の剥がれなし、2:非常に軽微な塗膜の剥がれがあるが良好、3:小さな塗膜の剥がれがあるが使用可能、4:大きな塗膜剥がれあり使用不可、の基準で評価した。
(被覆樹脂層表面の算術平均粗さRa)
樹脂被覆アルミニウム合金板の樹脂層の表面の算術平均粗さRa(μm)を、JIS B0601に準拠して、測定した。
(黒鉛粒子の平均粒径の測定)
レーザー回折法により粒度分布及び平均粒径(D50、体積積算50%になるときの粒子の粒子径)を算出した。
得られた性能試験結果を表1に示す。表1において、添加量は、エポキシ系樹脂及び硬化剤の合計100.0質量部に対する配合質量部で示す。
【0061】
【0062】
(実施例13~16)
アルミニウム合金板(材質:JIS A1050、板厚:0.6mm)に対し、市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行い、水洗後、市販のリン酸クロメート処理液にて化成処理を行い、化成皮膜を形成させた。
次いで、表2に示す通りに、有機溶剤(トルエン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンの混合溶剤)に、エポキシ系樹脂及びアミノ系硬化剤(樹脂分)と、放熱性粒子と、シリカ粒子(湿式法シリカ)と、を添加し、分散又は溶解させた塗料を調製し、得られた塗料を、化成皮膜を形成させたアルミニウム合金板の一方の表面にバーコーター方式によって塗布し、熱風炉で焼き付けて、被覆樹脂層を形成させた。なお、焼付条件は、最高到達温度が272℃で、焼付時間が84秒であった。
また、蛍光X線で化成皮膜量を測定したところ、Cr量20~30g/m2であった。乾燥後の被覆樹脂層の厚みを渦電流式膜厚計で測定した結果を表2に示す。
得られた樹脂被覆アルミニウム板について放射率を測定した。その結果を表2に示す。
【0063】
【0064】
表1~表2における樹脂種は、以下のとおりである。
A エポキシ系樹脂(分子量50000)及びアミノ系硬化剤
B 高分子ポリエステル
表1~表2における放熱性粒子種は、以下のとおりである。
A1 黒鉛粒子:平均粒径3.0μm、
A2 黒鉛粒子:平均粒径5.0μm、
A3 黒鉛粒子:平均粒径7.0μm、
A4 黒鉛粒子:平均粒径8.0μm、
B 既存の黒鉛粒子
C カーボンブラック