(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074099
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20230522BHJP
C08L 51/10 20060101ALI20230522BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20230522BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08L51/10
C08F292/00
C08F20/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186870
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】大村 愛
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BN191
4J002DA036
4J002DE236
4J002EV317
4J002FD016
4J002FD207
4J002GH02
4J011AA05
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA02
4J011PA03
4J011PA07
4J011PB22
4J011PB30
4J011PC02
4J011PC08
4J026AC00
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA29
4J026DB05
4J026DB11
4J026DB30
4J026FA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外観が不透明または有色であっても、エネルギー線の照射のみで組成物の表面および内部まで硬化可能な光硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)~(E)成分を含む光硬化性組成物。
(A)成分:分子内に(メタ)アクリル基を有する化合物
(B)成分:分子内にカチオン重合性基を有する化合物
(C)成分:サッカリン
(D)成分:光カチオン触媒
(E)成分:光遮蔽性化合物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)~(E)成分を含む光硬化性組成物。
(A)成分:分子内に(メタ)アクリル基を有する化合物
(B)成分:分子内にカチオン重合性基を有する化合物
(C)成分:サッカリン
(D)成分:光カチオン触媒
(E)成分:光遮蔽性化合物
【請求項2】
前記(B)成分のカチオン重合性基が、脂環式エポキシ基および/またはオキセタン基を有する化合物である請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記(E)成分が、無機充填剤、有機充填剤、顔料および染料からなる群から少なくとも1つ選択される化合物である請求項1または2のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記(D)成分の光吸収領域が、可視光領域を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記(A)成分が、分子内に2つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物である請求項1~4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、分子内に2つ以上のカチオン重合性基を有する化合物である請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光硬化性組成物の外観が、無色透明では無い光硬化性組成物。
【請求項8】
光照射のみで硬化する請求項1~7のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観が不透明または有色であるにもかかわらず、エネルギー線の照射のみで組成物の表面および内部まで硬化する光硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線、可視光などのエネルギー線により硬化する光硬化性組成物が知られている。例えば、(メタ)アクリレートとエネルギー線により分解してラジカル種が発生して重合する組成物または脂環式エポキシ樹脂とエネルギー線により分解してカチオン種が発生して重合する組成物が知られている。しかしながら、いずれの光硬化性組成物であっても、不透明または有色であると表面は硬化するものの、組成物の内部は硬化しないことが知られている。その対策として、特許文献1の様に、内部を硬化させるために、光硬化性に加えて熱硬化性を併用することで内部の硬化性を確保してきたが、エネルギー線照射と共に加熱工程が含まれるため多段階硬化をしなければならずエネルギー線照射のみで内部まで硬化することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、光硬化性組成物の外観が、不透明または有色(無色透明ではない)であると、エネルギー線の照射のみで組成物の表面および内部まで硬化することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、表面および内部まで硬化する光硬化性組成物に関する手法を発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。本発明の第一の実施態様は、(A)~(E)成分を含む光硬化性組成物である。
(A)成分:分子内に(メタ)アクリル基を有する化合物
(B)成分:分子内にカチオン重合性基を有する化合物
(C)成分:サッカリン
(D)成分:光カチオン触媒
(E)成分:光遮蔽性化合物
【0007】
本発明の第二の実施態様は、前記(B)成分のカチオン重合性基が、脂環式エポキシ基および/またはオキセタン基を有する化合物である第一の実施態様に記載の光硬化性組成物である。
【0008】
本発明の第三の実施態様は、前記(E)成分が、無機充填剤、有機充填剤、顔料および染料からなる群から少なくとも1つ選択される化合物である第一または第二の実施態様のいずれか1項に記載の光硬化性組成物である。
【0009】
本発明の第四の実施態様は、前記(D)成分の光吸収領域が、可視光領域を含む第一から第三の実施態様のいずれか1項に記載の光硬化性組成物である。
【0010】
本発明の第五の実施態様は、前記(A)成分が、分子内に2つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物である第一から第四の実施態様のいずれか1項に記載の光硬化性組成物である。
【0011】
本発明の第六の実施態様は、前記(B)成分が、分子内に2つ以上のカチオン重合性基を有する化合物である第一から第五の実施態様のいずれか1項に記載の光硬化性組成物である。
【0012】
本発明の第七の実施態様は、第一から第六の実施態様のいずれか1項に記載の光硬化性組成物の外観が、無色透明では無い光硬化性組成物である。
【0013】
本発明の第八の実施態様は、光照射のみで硬化する第一から第七の実施態様のいずれか1項に記載の光硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、光硬化性組成物の外観が不透明または有色であるにもかかわらず、エネルギー線の照射のみで組成物の表面硬化性および内部硬化性を両立することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の詳細を次に説明する。本発明で使用することができる(A)成分としては、分子内に(メタ)アクリル基を有する化合物である。(A)成分は(メタ)アクリル基を有する化合物であれば良い。ここで、(メタ)アクリル基とはアクリル基またはメタクリル基の総称である。(A)成分としては、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリルモノマーまたは(メタ)アクリルアミドモノマーなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。(A)成分として分子内に2つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を含むことが好ましい。特に、分子内に3つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を含むことが最も好ましい。(A)成分は単独で使用しても複数混合して使用しても良いが、(メタ)アクリルオリゴマーと(メタ)アクリルモノマーを併用することが好ましい。
【0016】
(メタ)アクリルオリゴマーとしては、エポキシ変性(メタ)アクリルオリゴマー、ウレタン変性(メタ)アクリルオリゴマーまたは(メタ)アクリルモノマーを重合させた主骨格を有し主骨格の末端に(メタ)アクリル基を有するオリゴマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体例としては、多価ポリオールに多官能イソシアネートと(メタ)アクリル基と水酸基を有する化合物を合成したいわゆるウレタン変性(メタ)アクリルオリゴマーが挙げられる。多価ポリオールは様々な骨格を有して良く、エチレンオキサイド骨格、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリブタジエン骨格や水添ポリブタジエン骨格など様々なものを使用することができる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ変性(メタ)アクリルオリゴマーも挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明では、(A)成分として(メタ)アクリルモノマーを使用することもできる。光硬化性組成物の粘度を低く調整して作業性を向上させる目的で、(メタ)アクリルオリゴマーと(メタ)アクリルモノマーを混合することもできるし、(メタ)アクリルオリゴマーまたは(メタ)アクリルモノマーを単独で使用することもできる。(メタ)アクリルモノマーとは、1官能性モノマーの他に、2官能性モノマー、3官能性モノマーまたは多官能性モノマーなどが挙げられる。特に好ましくは、添加することで粘度を下げる効果がある分子量が1000未満の低分子量の(メタ)アクリルモノマーである。
【0018】
1官能モノマーの具体例としては、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート 、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
2官能性モノマーの具体例としては、1、3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ-ト、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドサイド(以下POと略記)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、EO変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジアクリロイルイソシアヌレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
3官能性モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ECH変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
多官能モノマーの具体例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明で使用することができる(メタ)アクリルアミドモノマーとしては、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジエチルアクリルアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。価格と入手のし易さを考慮するとジエチルアクリルアミドまたはジメチルアクリルアミドが好ましい。(B)成分の具体例としては、KJケミカル株式会社製のDMAA、ACMO、DEAAなどが知られているが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明で使用することができる(B)成分は、分子内にカチオン重合性基を有する化合物である。(B)成分には、エポキシ樹脂の様なグリシジルエーテル基を有する化合物は含まれない。エポキシ樹脂にはビスフェノール骨格を水素添加したエポキシ樹脂も含まれる。後記の(D)成分が光エネルギー線により分解してカチオン種を発生させた時に重合性を有する化合物であり、(B)成分のカチオン重合性基としては、脂環式エポキシ基(エポキシシクロヘキシル基)、オキセタン基、ビニルエーテル基などが挙げられるが、これらに限定されないが、カチオン種に対する反応性を考慮すると、脂環式エポキシ基またはオキセタン基が好ましい。(B)成分は、単独で使用しても複数混合して使用しても良い。
【0024】
(A)成分および(B)成分100質量部に対して、(B)成分は0.1~80質量部含むことが好ましい。(B)成分が0.1質量部以上であると表面硬化性を向上させ、(B)成分が80質量部以下であると(A)成分による貼合部硬化性が向上する。
【0025】
本発明で使用することができる(C)成分としては、サッカリンである。(B)成分としては、式1の様な化合物である。
【0026】
【0027】
(A)成分100質量部に対して(C)成分は0.1~5.0質量部添加されることが好ましく、より好ましい添加量は0.1~3.0質量部である。(C)成分が0.1質量部以上であると内部硬化性を発現し、(C)成分が5.0質量部以下であると保存安定性を向上させることができる。
【0028】
本発明で使用することができる(D)成分としては、光カチオン触媒である。エネルギー線照射により酸が発生する化合物であれば使用することができる。また、(D)成分は溶剤または可塑剤に溶解または分散した形態で販売されていることもあり、それらを使用しても良い。特に、(D)成分の光吸収領域として可視光領域である380~780nmを含む事で硬化性が向上して好ましい。サンアプロ株式会社製のCPI-410Sなどの様に明確に可視光領域に吸収がある(D)成分や、サンアプロ株式会社製のHS-1Aなどの様に吸収が弱くても添加量を増やすことで感度が上がる。
【0029】
具体的な光カチオン触媒としては、カチオン種がヨードニウム系カチオン種やスルホニウム系カチオン種など、アニオン種がリン系アニオン種やホウ素系アニオン種などからなる塩が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。具体的には、1-メトキシ-4-(3,5-ジ(トリクロロメチル)トリアジニル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(3,5-ジ(トリクロロメチル)トリアジニル)ナフタレンなどのハロアルキルトリアジニルアリール、1-メトキシ-4-[2-(3,5-ジトリクロロメチルトリアジニル)エテニル]ベンゼン、1,2-ジメトキシ-4-[2-(3,5-ジトリクロロメチルトリアジニル)エテニル]ベンゼン、1-メトキシ-2-[2-(3,5-ジトリクロロメチルトリアジニル)エテニル]ベンゼン、スクシンイミジルカンファスルホネート、スクシンイミジルフェニルスルホネート、スクシンイミジルトルイルスルホネート、スクシンイミジルトリフルオロメチルスルホネート、フタルイミジルトリフルオロスルホネート、ナフタルイミジルカンファスルホネート、ナフタルイミジルメタンスルホネート、ナフタルイミジルトリフルオロメタンスルホネート、ナフタルイミジルトルイルスルホネート、ノルボルネンイミジルトリフルオロメタンスルホネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明で使用できるスルホニウム塩の一つとして、一般式2、一般式3およびそれらを基本骨格とする誘導体などが挙げられる。ここで、R-としてはヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、パーフルオロアルキル基を有するフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロルアンチモネート、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン、フルオロスルフォン酸イオン等のアニオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
【0032】
【0033】
光カチオン触媒の具体例としては、サンアプロ株式会社製のCPI-100P、CPI-101A、CPI-110B、CPI-200K、CPI-210S、IK-1、IK-2、CPI-410S、HS-1Aなどが、和光純薬工業株式会社製のWPI-113、WPI-116、WPI-169、WPI-170,WPAG-336、WPAG-367、WPAG-370、WPAG-469、WPAG-638などが、ADEKA株式会社製のアデカオプトマーSP-103、SP-150、SP-151、SP-170、SP-171、SP-172などが、Polyset社製のPC-2506、PC-2508、PC-2520、三新化学工業株式会社製のサンエイドSI-60、SI-80、SI-100、SI-60L、SI-80L、SI-100L、SI-L145、SI-L150、SI-L160、SI-L110、SI-L147、Bluestar Silicones HK社製 BLUESIL PI2074などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0034】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(D)成分は0.01~10.0質量部添加されることが好ましく、さらに好ましくは、0.01~5.0質量部である。(D)成分が0.01質量部以上であると表面硬化性と内部硬化性を発現させ、(C)成分が10.0質量部以下であると保存安定性の向上をすることができる。
【0035】
本発明で使用することができる(E)成分は光遮蔽性化合物である。光遮蔽性化合物とは組成物の外観が不透明または有色にする添加剤を指し、具体的には無機充填剤、有機充填剤、染料、顔料などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0036】
無機充填剤としては、アルミナ粉、シリカ粉、ガラス粉、金属粉などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一方、有機充填剤としては、カーボン粉、スチレンフィラー、アクリルゴムやポリブタジエンゴムなどからなるゴムフィラー、コアシェル構造を有するゴムフィラーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
染料と顔料は着色剤である。ここでいう染料とは主に溶媒に溶解させて着色に用いる有色の物質であり、顔料とは主に特定の媒体に分散して着色するものを言う。樹脂に対して相溶・分散することが好ましく、顔料には無機充填剤そのものの色により着色する無機顔料は含まれない。染料と顔料の具体例としては、塩基性染料、直接染料、酸性染料、アゾ顔料、多環顔料、レーキ顔料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アゾ顔料の主な種類としてはモノアゾ顔料、ジアゾ顔料、縮合ジアゾ顔料等が有る。多環顔料の主な種類としては、イソインドリノン、キノフタロン、アントラキノン、アントロン、キサンテン、ジケトピロロピロール、ペリレン、アントラキノン(アントロン)、キナクリドン、インジゴイド、キナクリドン、ペリノン、インジゴイド、ジオキサジン、キサンテン、フタロシアニン、アゾメチン等またはそれらの誘導体が有る。
【0038】
染料と顔料の具体的な商品名としては、中央合成化学株式会社製のYellow SS-G、Yellow 93、Yellow GE、Yellow 3G、Yellow 185、Yellow 54、Orange S、Orange R、Orange 826N、Scarlet 3、Red TR-71、Red RC、Red 6B、Pink 330、Brown SGN、Brown PB、Blue BOM、Blue BA、Blue 94、Blue 8B、Violet MVB、Green 201、Green GB、Green 430、Black S、Black SF、Black 109、Black 141等、オリエント化学工業株式会社製のOIL BLACK 803、OIL BLACK 830、OIL BLACK 860、OIL BLACK BS、OIL BLACK HBB、OIL BLACK NO5、OIL BLUE 2N、OIL BLUE 613、OIL BLUE 630、OIL BLUE 650M、OIL BROWN BB、OIL GREEN 502、OIL GREEN 530、OIL ORANGE 201、OIL ORANGE PS、OIL PINK 312、OIL RED 330、OIL RED 5B、OIL RED OG、OIL RED RR、OIL SCARLET 308、OIL SCARLET 318、OIL VIOLET 730、OIL VIOLET 732、OIL YELLOW 105、OIL YELLOW 107、OIL YELLOW 129、OIL YELLOW 136、OIL YELLOW 3G、OIL YELLOW GG-S等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(E)成分は0.01~50質量部添加されることが好ましい。当該範囲であれば、表面硬化性および内部硬化性を両立することができる。
【0040】
本発明の組成物の性状や硬化物の物性が損なわれない程度に、その特性を調整するために、ラジカル重合促進剤、有機過酸化物、キレート剤、酸化防止剤、重合禁止剤および充填材を配合してもよい。
【0041】
本発明ではラジカル重合促進剤を使用することもできる。ラジカル重合促進剤とは(A)成分の反応を促進させる化合物である。本発明の光硬化性組成物では、保存安定性を損なわない範囲内で硬化促進剤を添加することができる。具体的には、テトラヒドロキノリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-P-トルイジン、ジイソプロパノール-P-トルイジン、トリエチルアミン等の3級アミン類としてジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン類としてチオ尿素、エチレンチオ尿素、ベンゾイルチオ尿素、アセチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素等のチオ尿素類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明では有機過酸化物を添加することもできるが、内部硬化性を発現させるために添加することが好ましい。具体的には、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイドなど挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明ではキレート剤を使用することができる。キレート剤の具体例としては、株式会社同人化学研究所製のEDTA・2Na、EDTA・4Naなどが、キレスト株式会社製のEDTA系(エチレンジアミン四酢酸)、NTA系(ニトリロ四酢酸)、DTPA系(ジエチレントリアミン五酢酸)、HEDTA系(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)、TTHA系(トリエチレンテトラミン六酢酸)、PDTA系(1,3-プロパンジアミン四酢酸)、DPTA-OH系(1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸)、HIDA系(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)、DHEG系(ジヒドロキシエチルグリシン)、GEDTA系(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、CMGA系(ジアルボキシメチルグルタミン酸)、EDDS系((S,S)-エチレンジアミンジコハク酸)およびEDTMP系(エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸))の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、25℃で液状のキレート剤の具体例としては、キレスト株式会社製のMZ-8や、HEDP系(1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸)、NTMP系(ニトリロトリス(メチレンホスホン酸))およびPBTC系(2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸)の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明では経時による粘度変化をさらに抑制するために、重合禁止剤を添加することができる。具体的には、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4-t-ブチルカテコールなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。(A)成分中の重合禁止剤の濃度としては0.01~5.0質量%であることが好ましく、重合禁止剤が5.0質量%より多く添加されると硬化性が低下する。
【0045】
また、目的に応じて酸化防止剤を添加してもよく、具体的にはフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ニトロキシド系酸化防止剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0046】
本発明の組成物の性状や硬化物の物性が損なわれない程度にその特性を調整するために、感光剤、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、レベリング剤、可塑剤などの添加剤を配合してもよい。ただし、本発明の光硬化性組成物は貼り合わせ部分や塗膜の内部に残留するため溶剤は含まない。
【0047】
光硬化性組成物は光照射により硬化することができる。光照射としては、様々な方法が使用できる。エネルギー照射の光源としては、高圧水銀灯やLEDを使用することができる。高圧水銀灯を搭載したベルトコンベヤ式照射器などを使用でき、積算光量で0.1~60kJ/m2を必要とする。LEDを光源とするLED照射装置の照度では、一般的に30~900mW/cm2であり、場合によっては20~300mW/cm2である。光硬化性組成物に含まれる原料の種類と添加量で、光照射条件を調整することができる。内部硬化が完了するまで時間を確保するため、光照射後の放置時間を保つことが好ましい。放置時間として30秒~10時間であれば良く、好ましくは30秒~3時間であり、更に好ましくは30秒~2時間である。本発明は、光照射のみで硬化する。ここで、光照射のみで硬化するとは、光照射に加えて、熱風乾燥炉などによる加熱や恒温相により加湿などを行わなずに、光照射だけを行えば硬化することを意味する。
【実施例0048】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。(以下、光硬化性組成物を単に組成物とも呼ぶ。)
【0049】
[実施例1~5、比較例1~6]
組成物を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:分子内に(メタ)アクリル基を有する化合物
・トリメチロールプロパントリアクリレート(NKエステル A-TMPT 新中村化学工業株式会社製)
・2,2-ビス[4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン(EO:2.3mol)(NKエステル BPE-80N 新中村化学工業株式会社製)
(B)成分:分子内にカチオン重合性基を有する化合物
・3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021P 株式会社ダイセル製)
(C)成分:サッカリン
・サッカリン(試薬)
(D)成分:光カチオン触媒
・一般式2においてR-がヘキサフルオロホスフェートの塩(固形分50質量%の炭酸プロピレン溶液)(CPI-100P サンアプロ株式会社製)
・一般式2においてR-がヘキサフルオロアンチモネートの塩(固形分50質量%の炭酸プロピレン溶液)(CPI-101A サンアプロ株式会社製)
・一般式3においてR-が(Rf)nPF6-nの塩(Rf=パーフルオロアルキル基)(CPI-410S サンアプロ株式会社製)(固形分10質量%の炭酸プロピレン溶液として使用した。)
・アンチモン系スルホニウム塩(HS-1A サンアプロ株式会社製)(固形分10質量%の炭酸プロピレン溶液として使用した。)
(E)成分:光遮蔽性化合物
・カーボンブラック(EMPEROR 1200 Cabot社製)
・カーボンブラック(PALIOGEN Black S0084 BASF社製)
・炭酸カルシウムウィスカー(ウィスカルA 丸尾カルシウム株式会社製)
キレート剤
・エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸二ナトリウム塩二水和物(25℃で固体)(2NA(EDTA・2Na) 株式会社同人化学研究所製)
【0050】
(A)成分、(B)成分、(C)成分およびキレート剤を秤量して撹拌釜に投入し、10分撹拌した後、80℃雰囲気下で5時間攪拌を行う。常温に戻った後に、(D)成分(炭酸プロピレンを含んだ質量)を秤量して撹拌釜に投入し、遮光した状態で30分攪拌する。最後に、(E)成分を秤量して撹拌釜に投入し、遮光した状態で3時間攪拌する。また、表1には、目視による外観を記載する。詳細な調製量は表1、表2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0051】
【0052】
【0053】
実施例1~3および比較例1~3について下記の硬化性確認1を行い、その結果を表3にまとめた。
【0054】
[硬化性確認1]
長さ75mm×幅25mm×厚さ1mmのスライドガラス(透明)に組成物を0.02g滴下する。もう一枚のスライドガラスを25mm×25mmの貼り合わせ面積になる様に、2枚のスライドガラスが十字になる様に重ねて固定治具で固定する。はみ出した組成物はそのままにして、テストピースに対して積算光量30kJ/m2の光照射条件で高圧水銀灯を搭載したベルトコンベヤ式紫外線照射器により光照射して治具を取り外す。その後、25℃雰囲気下で1時間放置する。
下記の表面硬化性の評価基準に従い、はみ出している部分の外気に接触している表面の状態についてポリテトラフルオロエチレン棒を使用して視認で確認して「表面硬化性」とする。一方、2枚のスライドガラスの貼り合わせの硬化性を確認するため、一方のスライドガラスを固定した状態でもう一方のスライドガラスに剪断方向にデジタルフォースゲージによる測定で30Nの力をかけた時にスライドガラスが固定されているか貼合部硬化性の評価基準に従って確認し、「貼合部硬化性」とする。表面硬化性は「○」であり、貼合部硬化性は「○」または「△」である事が最も好ましい。
評価基準
表面硬化性
○:タック無し
×:タック有り
貼合部硬化性
○:硬化している
△:硬化しているが若干柔らかい(スライドガラスを押した時にゆっくり動く)
×:液状のまま(スライドガラスを押した時にすぐに動く))
【0055】
【0056】
実施例4、5および比較例4~6について下記の硬化性確認2を行い、その結果を表4にまとめた。
【0057】
[硬化性確認2]
基材として光透過性の有るスライドガラス(透明)と光透過性が無いPPS(ポリフェニレンサルファイド)板(不透明)を使用する。基材に対して厚さ0.25mmのフィルム状スペーサーを形成し、組成物をスキージして幅10mm×0.25mmの厚さの組成物を形成する。テストピースに対して積算光量30kJ/m2の光照射条件でスポット照射機により光照射する事で塗膜を形成する。その後、25℃雰囲気下で1時間放置する。ポリテトラフルオロエチレン棒で硬化物の表面を押して、以下の評価基準に従って、硬化物の状態を確認した。硬化物の状態は「○」が好ましい。
評価基準
○:硬化物の表面と内部が共に硬化している
×:硬化物の表面は硬化しているが硬化物の内部が硬化していない
【0058】
【0059】
硬化性確認1と2において、本発明は(C)成分としてサッカリンを含んでいるため、被着体に非金属被着体を選択して、嫌気硬化性の影響を排除して試験を行った。また、被着体がスライドガラスの場合、光照射した際に照射面の裏から光が入る可能性もあるため、完全に遮光できる様にPPSでも検討を行った。
【0060】
表3の実施例1~3を見ると、(E)成分を含んでいるにもかかわらず、表面硬化性は「○」である。貼合部硬化性は、「○」または「△」である。硬化性確認1(表3)では、被着体にガラス板を使用しているものの、(E)成分を含んでいるため貼り合わせ部分に光は透過しない。しかしながら、比較例1~3と比較して、表面硬化性および貼合部硬化性を発現している本発明の特異性が明確である。また、硬化性確認2(表4)では、塗膜を形成してその硬化性を確認している。実施例4、5においても(E)成分を含んでいるため、光は透過しないにも関わらず、硬化物の表面および内部が共に硬化していることが分かる。比較例4~6は(B)成分およびカチオン系の光開始剤を含む組成物であるが、内部までは硬化していない。本発明は、(E)成分を含んでいても表面および内部まで硬化性が発現する特異性が明確になっている。
本発明は、不透明または有色の光硬化性組成物であるにもかかわらず光照射のみで硬化することができるため、表面コーティングや遮光材料として使用することができ、光硬化性組成物の用途が広がる。