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特開2023-74113血圧指標又は血流指標の算出装置、方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074113
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】血圧指標又は血流指標の算出装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20230522BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20230522BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
A61B5/022 400F
A61B5/02 A
A61B5/026
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186892
(22)【出願日】2021-11-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (その1) ウェブサイトの掲載日 令和3年9月7日 ウェブサイトのアドレス https://journals.lww.com/jhypertension/Abstract/9000/Central_to_peripheral_stiffness_gradients.96558.aspx (その2) ウェブサイトの掲載日 令和3年10月21日 ウェブサイトのアドレス https://www.arterysociety.org/wp-content/uploads/2021/10/Abstract-Book-artery.pdf (その3) 開催日 令和3年10月21日~令和3年10月23日(公開日は令和3年10月21日) 集会名、開催場所 第21回動脈構造及び生理学研究学会(ARTERY21)Hopital europeen Georges-Pompidou 20,rue Leblanc 75015 Paris,France(フランス国 パリ 75015 リュ ルブラン 20 ホスピタル ユーロペアン ジョルジュ-ポンピド)
(71)【出願人】
【識別番号】516315742
【氏名又は名称】橋本 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 潤一郎
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA07
4C017AA08
4C017AA11
4C017AC01
4C017AC26
4C017BC11
4C017BC14
4C017FF08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡便かつ精度良く心血管系を評価することができる検査対象の血圧指標を算出する装置を提供する。
【解決手段】検査対象の血圧指標を算出する装置は、前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血圧波形の拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて、最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを有する残留圧力波形を生成する残留圧力波形生成部と、記残留圧力波形の前記負のピークにおける圧力をPR1、前記正のピークにおける圧力をPR2、末梢動脈の脈圧をPPPeriとした場合に、以下の式(1)で表される拡張期血圧変動指数(PFId)を算出する拡張期血圧変動指数算出部とを備える。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の血圧指標を算出する装置であって、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血圧波形の拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて、最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを有する残留圧力波形を生成する残留圧力波形生成部と、
前記残留圧力波形の前記負のピークにおける圧力をPR1、前記正のピークにおける圧力をPR2、末梢動脈の脈圧をPPPeriとした場合に、以下の式(1)で表される拡張期血圧変動指数(PFId)を算出する拡張期血圧変動指数算出部と、
【数1】
を備える血圧指標算出装置。
【請求項2】
前記拡張期血圧変動指数に基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定部を更に備える請求項1に記載の血圧指標算出装置。
【請求項3】
前記拡張期血圧変動指数に基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定部をさらに備える請求項1に記載の血圧指標算出装置。
【請求項4】
前記拡張期血圧変動指数に基づいて、前記検査対象の血管の硬化度を評価する血管硬化度評価部を更に備える請求項1に記載の血流指標算出装置。
【請求項5】
検査対象の血流指標を算出する装置であって、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血流速度波形の収縮期の正の最大ピークにおける血流速度をV FW、負のピークにおける血流速度をV BW、その次に現れる拡張期の正のピークにおける血流速度をVFW2とした場合に、以下の式(3)で表される拡張期血流変動指数(FFId)を算出する拡張期血流変動指数算出部
【数2】
を備える血流指標算出装置。
【請求項6】
前記拡張期血流変動指数に基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定部を更に備える請求項5に記載の血流指標算出装置。
【請求項7】
前記拡張期血流変動指数に基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定部をさらに備える請求項5に記載の血流指標算出装置。
【請求項8】
前記拡張期血流変動指数に基づいて、前記検査対象の血管の硬化度を評価する血管硬化度評価部を更に備える請求項5に記載の血流指標算出装置。
【請求項9】
検査対象の血圧指標を算出する方法であって、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血圧波形の拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて、最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを有する残留圧力波形を生成する残留圧力波形生成ステップと、
前記残留圧力波形のピークにおける圧力をPR1、前記正のピークにおける圧力をPR2、末梢動脈の脈圧をPPPeriとした場合に、以下の式(1)で表される拡張期血圧変動指数(PFId)を算出する拡張期血圧変動指数算出ステップと、
【数3】
を含む血圧指標算出方法。
【請求項10】
前記拡張期血圧変動指数に基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定ステップを更に含む請求項9に記載の血圧指標算出方法。
【請求項11】
前記拡張期血圧変動指数に基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定ステップをさらに含む請求項9に記載の血圧指標算出方法。
【請求項12】
検査対象の拡張期における血流指標を算出する方法であって、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血流速度波形の収縮期の正の最大ピークにおける血流速度をVFW、負のピークにおける血流速度をVBW、その次に現れる拡張期の正のピークにおける血流速度をVFW2とした場合に、以下の式(3)で表される血流速度変動指数(FFId)を算出する血流速度変動指数算出ステップと、
【数4】
を備える血流算出方法。
【請求項13】
前記拡張期血流変動指数に基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定ステップを更に含む請求項12に記載の血流指標算出方法。
【請求項14】
前記拡張期血流変動指数に基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定部をさらに備える請求項12に記載の血流指標算出方法。
【請求項15】
検査対象の血圧指標を算出する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血圧波形の拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて、最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを有する残留圧力波形を生成する残留圧力波形生成部、及び
前記残留圧力波形の前記負のピークにおける圧力をPR1、前記正のピークにおける圧力をPR2、末梢動脈の脈圧をPPPeriとした場合に、以下の式(1)で表される拡張期血圧変動指数(PFId)を算出する拡張期血圧変動指数算出部
【数5】
として機能させる血圧指標算出プログラム。
【請求項16】
検査対象の血流指標を算出する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血流速度波形の収縮期の正の最大ピークにおける血流速度をVFW、負のピークにおける血流速度をV BW、その次に現れる拡張期の正のピークにおける血流速度をVFW2とした場合に、以下の式(3)で表される血流速度変動指数(FFId)を算出する血流速度変動指数算出部
【数6】
として機能させる血流指標算出プログラム。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧指標又は血流指標の算出装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
健康な人の場合、動脈は中心大動脈ほど柔らかく、末梢に行くほど固くなるため、脈圧増幅(Pulse Pressure Amplification)と呼ばれる中心大動脈の脈圧に対する末梢の脈圧が大きくなる現象が存在する。脈圧増幅の測定は、被検者の心血管系の評価、特には動脈の硬化度などの評価に従来から広く使用されている(非特許文献1)。
【0003】
ところで、脈圧増幅の測定には、大動脈血圧と、末梢血圧という2点の測定が必要であり、測定が煩雑であった。しかも、大動脈血圧は体幹深部にあるため直接の測定が困難であり、ほとんどの場合で、腕の血圧と手首の血圧波形を測って伝達関数(transfer function)を使って推定している(非特許文献2)。被検者の心血管系をより簡便かつ精度良く評価できる血圧指標及び/又は血流指標があれば望ましい。また、脈圧増幅や大動脈血圧がより簡便に測定できればなお望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Avolio AP et al., Hypertension 2009; 54: 375-383
【非特許文献2】Williams B et al. Circulation 2006; 113: 1213-1225
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より簡便かつ精度良く心血管系を評価することができる血圧指標及び/又は血流指標の算出装置、方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題解決のため鋭意検討した結果、予期せずに、末梢動脈の拡張期の波形に着目し、血圧波形を指数関数的減衰曲線に適合させた曲線の最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを用いて、拡張期血圧変動指数(PFId)を算出したところ、かかる血圧指標が簡便かつ精度良く心血管系を評価できる指標であることを見出し、本発明を完成するに至った。また、驚くべきことに、血流波形における負のピークと、その次に現れる拡張期の正のピークとを用いて拡張期血流変動指数(FFI d)を算出した場合にも、かかる血流指標簡便かつが精度良く心血管系を評価できる指標であることを見出した。
【0007】
本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
【0008】
項1. 検査対象の血圧指標を算出する装置であって、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血圧波形の拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて、最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを有する残留圧力波形を生成する残留圧力波形生成部と、
前記残留圧力波形の前記負のピークにおける圧力をPR1、前記正のピークにおける圧力をPR2、末梢動脈の脈圧をPPPeriとした場合に、以下の式(1)で表される拡張期血圧変動指数(PFId)を算出する拡張期血圧変動指数算出部と、
【0009】
【数1】
【0010】
を備える血圧指標算出装置。
【0011】
項2. 前記拡張期血圧変動指数に基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定部を更に備える項1に記載の血圧指標算出装置。
【0012】
項3. 前記拡張期血圧変動指数に基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定部をさらに備える項1に記載の血圧指標算出装置。
【0013】
項4. 前記拡張期血圧変動指数に基づいて、前記検査対象の血管の硬化度を評価する血管硬化度評価部を更に備える項1に記載の血流指標算出装置。
【0014】
項5. 検査対象の血流指標を算出する装置であって、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血流速度波形の収縮期の正の最大ピークにおける血流速度をV FW、負のピークにおける血流速度をV BW、その次に現れる拡張期の正のピークにおける血流速度をVFW2とした場合に、以下の式(3)で表される拡張期血流変動指数(FFId)を算出する拡張期血流変動指数算出部
【0015】
【数2】
【0016】
を備える血流指標算出装置。
【0017】
項6. 前記拡張期血流変動指数に基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定部を更に備える項5に記載の血流指標算出装置。
【0018】
項7. 前記拡張期血流変動指数に基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定部をさらに備える項5に記載の血流指標算出装置。
【0019】
項8. 前記拡張期血流変動指数に基づいて、前記検査対象の血管の硬化度を評価する血管硬化度評価部を更に備える項5に記載の血流指標算出装置。
【0020】
項9. 検査対象の血圧指標を算出する方法であって、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血圧波形の拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて、最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを有する残留圧力波形を生成する残留圧力波形生成ステップと、
前記残留圧力波形のピークにおける圧力をPR1、前記正のピークにおける圧力をPR2、末梢動脈の脈圧をPPPeriとした場合に、以下の式(1)で表される拡張期血圧変動指数(PFId)を算出する拡張期血圧変動指数算出ステップと、
【0021】
【数3】
【0022】
を含む血圧指標算出方法。
【0023】
項10. 前記拡張期血圧変動指数に基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定ステップを更に含む項9に記載の血圧指標算出方法。
【0024】
項11. 前記拡張期血圧変動指数に基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定ステップをさらに含む項9に記載の血圧指標算出方法。
【0025】
項12. 検査対象の拡張期における血流指標を算出する方法であって、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血流速度波形の収縮期の正の最大ピークにおける血流速度をVFW、負のピークにおける血流速度をVBW、その次に現れる拡張期の正のピークにおける血流速度をVFW2とした場合に、以下の式(3)で表される血流速度変動指数(FFId)を算出する血流速度変動指数算出ステップと、
【0026】
【数4】
【0027】
を備える血流算出方法。
【0028】
項13. 前記拡張期血流変動指数に基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定ステップを更に含む項12に記載の血流指標算出方法。
【0029】
項14. 前記拡張期血流変動指数に基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定部をさらに備える項12に記載の血流指標算出方法。
【0030】
項15. 検査対象の血圧指標を算出する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血圧波形の拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて、最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを有する残留圧力波形を生成する残留圧力波形生成部、及び
前記残留圧力波形の前記負のピークにおける圧力をPR1、前記正のピークにおける圧力をPR2、末梢動脈の脈圧をPPPeriとした場合に、以下の式(1)で表される拡張期血圧変動指数(PFId)を算出する拡張期血圧変動指数算出部
【0031】
【数5】
【0032】
として機能させる血圧指標算出プログラム。
【0033】
項16. 検査対象の血流指標を算出する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記検査対象の末梢動脈の時間変化に対する血流速度波形の収縮期の正の最大ピークにおける血流速度をVFW、負のピークにおける血流速度をV BW、その次に現れる拡張期の正のピークにおける血流速度をVFW2とした場合に、以下の式(3)で表される血流速度変動指数(FFId)を算出する血流速度変動指数算出部
【0034】
【数6】
【0035】
として機能させる血流指標算出プログラム。
【0036】
項17. 項15又は16に記載のプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、被検者の心血管系を簡便かつ精度良く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】血圧指標算出システムの構成の略図。
図2】血圧指標算出装置の処理装置の動作を示すフローチャート。
図3】血流指標算出システムの構成の略図。
図4】血流指標算出装置の処理装置の動作を示すフローチャート。
図5】(a)大腿動脈の血圧の脈波波形のグラフ、(b)拡張期残留圧力のグラフ、(c)血流速度のグラフ。カッコ内の記号は座標(x、y)を表す。Tは時間、Pは圧力、Vは速度、FWはピーク収縮期前方血流、BWはピーク逆方向(後方)血流、FW2はピーク拡張期前方血流。
図6】大腿動脈の拡張期血流変動と圧力変動の間の関係(n=592)(a)収縮期の立ち上がりからピーク後方(逆方向)速度までの時間(TBW)と圧力変曲点から推定される収縮期終末(TES)に対するBland-Altmanヒストグラム。x軸は平均([TES+TBW]/2)を示し、y軸は差(TES-TBW)を示し、z軸は観察数(Observations)を示す。平均及び2SDの差はそれぞれ-0.002及び0.046sである。(b)拡張期血流変動指標と拡張期血圧変動指標との間の相関を示すグラフ。(c)収縮期の立ち上がりから拡張期前方速度ピークまでの時間(TFW2)と第2の(正の)残留圧力ピーク(TR2)に対するBland-Altmanヒストグラム。x軸は平均([TR2+TFW2]/2)を示し、y軸は差(TR2-TFW2)を示し、z軸は観察数(Observations)を示す。平均及び2SDの差はそれぞれ0.071及び0.091sである
図7】拡張期流量変動指標(FFId)により媒介される拡張期血圧変動指標(PFId)に対する動脈-脚動脈の硬化度の勾配[(a)PWVFD/PWVCF比]又はパルス圧力増幅[(b)PPD/PPA比]の効果。各媒介モデルに関して、効果を標準化回帰係数として与えた。モデル数(i=1,2…)は下付き文字で示し(例、ai)、ai、bi及びciは直接的効果を示し、ciは全効果、ai*biは間接的効果である。実線及び点線はそれぞれ関連が有意及び関連が有意でないことを示す。**Pは0.01未満、***Pは0.001未満。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る検査対象の血圧指標を算出する装置を含む血圧指標算出システム1の構成について説明する。血圧指標算出システム1は、被検者の末梢動脈の血圧波形を計測する血圧脈波計測装置10と、被検者の動脈の血圧を測定する血圧測定装置20と、血圧脈波計測装置10及び血圧測定装置20から受信したデータを記憶及び処理するコンピュータ等からなる血圧指標算出装置30とを備えている。
【0040】
血圧指標算出装置30は、血圧脈波計測装置10及び血圧測定装置20から受信した各種データ、及び/又は内部で記憶又は生成したデータに基づいて演算又は判定等を行うCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrate Circuit)、FPGA (Field Programmable Gate Array)などの処理装置40と、各種のデータを記憶する、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶装置50と、処理装置40における演算結果を表示する表示装置52とを備えている。
【0041】
血圧脈波計測装置10は、被検者の末梢動脈からの血圧波形を測定することが可能な任意の血圧脈波計測装置であってよく、例えばトノメータ、パルスオキシメータなどの脈圧センサが挙げられる。血圧脈波計測装置10にて測定可能な末梢動脈としては、上腕動脈、橈骨動脈、頸動脈、大腿動脈、及び/又は足背動脈などが挙げられるがこれに限定されない。血圧脈波計測装置10で測定される動脈血圧としては、末梢動脈の血圧波形、脈圧が含まれる。
【0042】
血圧脈波計測装置10で一定時間(例えば5~30秒間)記憶された血圧波形は、血圧指標算出装置30に送信され、血圧指標算出装置30の記憶装置50に保存される。好ましい実施形態において、医師又は看護師等の医療従事者である、血圧指標算出システム1の使用者(以下、ユーザ)は、表示装置52上に時系列軸上に表示された保存した血圧波形データから、データが安定しているとユーザが判定した時間区域(例えば10秒間)のデータを選択し、後の演算処理のために選択し得る。別の好ましい実施形態において、血圧脈波計測装置10から血圧指標算出装置30へ送信される血圧波形データの選択は、血圧指標算出装置30により自動的に行われる。
【0043】
血圧測定装置20は、被検者の動脈の血圧を測定可能な任意の装置であってよく、例えばカフ式オシロメータ、トノメータなどが挙げられる。血圧測定装置20にて測定可能な末梢動脈としては、上腕動脈、橈骨動脈、及び/又は下肢動脈などが挙げられるがこれに限定されない。血圧測定装置20で測定される動脈血圧としては、末梢動脈の収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧及び/又は心拍が含まれる。かかる血圧測定法は公知技術であり、当業者には通常の技能で実施可能である。血圧測定装置20で測定した血圧データは、血圧指標算出装置30に送信され、血圧指標算出装置30の記憶装置50に保存される。好ましい実施形態において、血圧指標算出システム1の使用者は、表示装置52上に表示された保存した血圧データから、安定しているとユーザが判定した血圧データを選択及び/又は平均化し、後の演算処理のために用いることができる。別の好ましい実施形態において、血圧測定装置20から血圧指標算出装置30へ送信された血圧データの選択は、血圧指標算出装置30により自動的に行われる。
【0044】
血圧指標算出装置30の処理装置40は、血圧脈波計測装置10から受信した血圧波形データの所定期間のアンサンブル平均をとり、平均化血圧波形とする平均化血圧波形生成部41と、平均化血圧波形生成部41にて生成された検査対象の末梢動脈の血圧波形データの、時間変化に対する血圧波形の拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて、最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを有する残留圧力波形を生成する残留圧力波形生成部42と、残留圧力波形の該最初に現れる負のピークにおける圧力をPR1、その次に現れる正のピークにおける圧力をPR2、末梢動脈の脈圧をPPPeriとした場合に、以下の式(1)で表される拡張期血圧変動指数(PFId)を算出する拡張期血圧変動指数算出部43とを備える。
【0045】
【数7】
【0046】
後述の実施例では、大腿動脈の血圧波形データを用いて拡張期血圧変動指数を算出した例を説明している。図5(a)は血圧脈波計測装置10で測定した被検者の大腿動脈の血圧波形データのアンサンブル平均を取った平均化動脈波形のグラフであり、図5(b)は図5(a)の血圧波形データの拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて残る残留圧力波形のグラフである。
【0047】
カッコ内の記号は座標(x, y)を表し、Tは時間、Pは圧力である。ESは収縮期終末、DNは重複切痕、DWは重複波ピークであり、これらは血行力学の当業者には周知である。
【0048】
従来の研究では収縮期が検討されることが多かったが、本開示では血圧波形の拡張期の波形に注目している。
【0049】
血圧波形の拡張期の血圧を指数関数的減衰の曲線に近似させると、図5(b)に示されるように、残留圧力に、(TR1, PR1)の第1の負のピーク、(TR2, PR2)第2の正のピーク、(TR3, PR3)の第3の負のピークが現れ、図5(a)の(TDN, PDN)及び(TDW, PDW)が図5(b)の(TR1, PR1)及び(TR2, PR2)にそれぞれ対応する。図5(b)の(TR1, PR1)及び(TR2, PR2)のピークは実施例で調べたすべての被検者で観察された。これらの事実は本願発明者が初めて発見した点であり、従来は、図5(a)の(TES, PES)が収縮期と拡張期の境界とされていたが、式(1)では(TES, PES)とは異なる2点での圧力PR1、PR2を測定することを特徴とする。末梢動脈の脈圧PPPeriは平均化動脈波形の収縮期最大値と拡張期最小値の差である(図5(a)では130mmHg-70mmHgで約60mmHgとなる)。末梢動脈の脈圧PPPeriは血圧脈波計測装置10のシグナルから手動又は自動で求めることができる。
【0050】
指数関数的減衰の曲線への適合は、公知の式(2)を用いて行うことができ(Liu Z et al., Am J Physiol 1986; 251 (3 pt 2):H588-600.及びKottenberg-Assenmacher E et al., Anesthesiology 2009;110:370-379.)、Levenberg-Marquardtアルゴリズムを使用して最適化することができる。
【0051】
【数8】
【0052】
式中、tは収縮期終期からの時間であり、P(t)はtにおける指数関数的圧力波形であり、P0は収縮末期における推定 (最適化)圧力であり、Pは最適化漸近圧力であり、τ (タウ)は最適化時定数である。τは変動数値でもよいし、有限値でもよいが、適合をより良くするためには有限値とすることが好ましい。また、P=0としてもよい。
【0053】
驚くべきことに、式(1)にて算出される拡張期血圧変動指数PFIdは、脈圧増幅(Pulse Pressure Amplification)と強い相関を有する。脈圧増幅の測定には、大動脈血圧と、末梢血圧という2点の測定が必要であり、測定が煩雑であったが、本開示の拡張期血圧変動指数PFIdは、末梢動脈の1点を測定するだけで算出することができるため、簡便である。本開示の拡張期血圧変動指数PFIdを用いれば、被検者の心血管系をより簡便かつ精度良く評価することができる。
【0054】
また、本開示の拡張期血圧変動指数PFIdを用いれば、伝達関数を使わなくとも、脈圧増幅や大動脈血圧を簡単に推定することができる。
【0055】
さらには、脈波伝播速度(pulse wave velocity: PWV)は血管の動脈硬化の指標として周知であるが (Townsend RR et al. Hypertension 2015;66:698-722)、本開示の拡張期血圧変動指数PFIdは、2か所の末梢動脈のPWVの比とも強い相関がある。このため、脈波伝播速度を測定せずとも、簡便に本開示の拡張期血圧変動指数PFIdを硬化度の評価に使用することもできる。
【0056】
血圧指標算出装置30の処理装置40は、拡張期血圧変動指数PFIdに基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定部44を更に備えてもよい。
【0057】
具体的には、拡張期血圧変動指数PFIdは、末梢動脈脈圧PPperiに対する中心大動脈脈圧PPAの比(PPperi/PPA)である脈圧増幅と強い相関があるため、拡張期血圧変動指数PFIdから脈圧増幅を推定することができる。
【0058】
一つの例では、記憶装置50に、拡張期血圧変動指数PFIdと脈圧増幅PPperi/PPAの関数が記憶されており、脈圧増幅推定部44は、ある被検者の拡張期血圧変動指数から、かかる関数を用いて、当該被検者の脈圧増幅PPperi/PPAを推定することができる。
【0059】
別の例では、記憶装置50には、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値と、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値とが記憶されており、脈圧増幅推定部44は、ある被検者の拡張期血圧変動指数が、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値よりも高い場合に、当該被検者の脈圧増幅が脈圧増幅PPperi/PPAの基準値よりも高いと推定することができる。なお、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値及び脈圧増幅PPperi/PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよいし、それぞれ心疾患患者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよい。
【0060】
また別の例では、記憶装置50には、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値と、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値とが記憶されており、脈圧増幅推定部44は、ある被検者の拡張期血圧変動指数が、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値以下である場合に、当該被検者の脈圧増幅が、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値以下であると推定することができる。なお、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値及び脈圧増幅PPperi/PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよいし、それぞれ心疾患患者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよい。
【0061】
さらに別の例では、記憶装置50には、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値と、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値とが記憶されており、脈圧増幅推定部44は、ある被検者の拡張期血圧変動指数と拡張期血圧変動指数PFIdの基準値との関係と、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値とから、当該被検者の脈圧増幅の推定値を算出することができる。なお、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値及び脈圧増幅PPperi/PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよいし、それぞれ心疾患患者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよい。
【0062】
血圧指標算出装置30の処理装置40は、拡張期血圧変動指数PFIdに基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定部45を更に備えてもよい。中心大動脈血圧には、中心大動脈脈圧PPA、中心大動脈収縮期血圧などが含まれる。
【0063】
具体的には、拡張期血圧変動指数PFIdは、脈圧増幅PPperi/PPAと強い相関があるため、拡張期血圧変動指数PFIdと末梢動脈脈圧PPperiの値から、中心大動脈脈圧PPAを求めることができ、さらに、末梢動脈と中心大動脈の拡張期血圧は同じと考えられるため、中心大動脈脈圧PPAから中心大動脈収縮期血圧を推定することができる。末梢動脈脈圧PPperiは、血圧脈波計測装置10により測定することができ、血圧指標算出装置30に送信される。
なお、末梢動脈脈圧PPperiとして上腕脈圧を用いる場合は、上腕カフ血圧測定等から直接得ることができる。上腕動脈以外の動脈、たとえば大腿動脈上で末梢動脈脈圧PPperiを求める場合には、全ての末梢動脈において平均血圧および拡張期血圧は同等であることを前提として、上腕血圧測定等で得られた平均血圧および拡張期血圧を校正(キャリブレーション)血圧として用い、末梢動脈血圧波形から末梢動脈脈圧PPperiを求めることができる。
【0064】
一つの例では、記憶装置50に、拡張期血圧変動指数PFId、末梢動脈脈圧PPperi、及び中心大動脈脈圧PPAの関数が記憶されており、中心大動脈血圧推定部45は、ある被検者の拡張期血圧変動指数と末梢動脈脈圧から、たとえばかかる関数を用いて、当該被検者の中心大動脈脈圧PPAを推定することができる。
【0065】
脈圧増幅 PPperi/PPA = a×log(PFId) + b×年齢 + c×心拍数 + d×BMI
(a、b、c、dは定数であり、末梢動脈の部位によって異なる固有の値をとる)
中心大動脈脈圧PPA=PPperi÷脈圧増幅
中心大動脈収縮期血圧=(PPperi÷脈圧増幅)+ 末梢動脈拡張期血圧
【0066】
別の例では、記憶装置50には、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値と、末梢動脈脈圧PPperiの基準値と、中心大動脈脈圧PPAの基準値とが記憶されており、中心大動脈血圧推定部45は、ある被検者の拡張期血圧変動指数と、末梢動脈脈圧とから、当該被検者の中心大動脈脈圧PPAが、中心大動脈脈圧PPAの基準値よりも高いか否かを推定することができる。なお、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値、末梢動脈脈圧PPperiの基準値、及び中心大動脈脈圧PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値、末梢動脈脈圧PPperiの平均値、及び中心大動脈脈圧PPAの平均値の平均値であってもよいし、それぞれ心血管疾患患者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値、末梢動脈脈圧PPperiの平均値、及び中心大動脈脈圧PPAの平均値であってもよい。
【0067】
さらに別の例では、記憶装置50には、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値と、末梢動脈脈圧PPperiの基準値、及び中心大動脈脈圧PPAの基準値が記憶されており、中心大動脈血圧推定部45は、ある被検者の拡張期血圧変動指数と拡張期血圧変動指数PFIdの基準値の関係、当該被検者の末梢動脈脈圧と末梢動脈脈圧PPperiの基準値の関係、及び中心大動脈脈圧PPAの基準値から、当該被検者の当該被検者の中心大動脈脈圧PPAを推定することができる。なお、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値、末梢動脈脈圧PPperiの基準値、及び中心大動脈脈圧PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値、末梢動脈脈圧PPperiの平均値、及び中心大動脈脈圧PPAの平均値であってもよいし、それぞれ心血管疾患患者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値、末梢動脈脈圧PPperiの平均値、及び中心大動脈脈圧PPAの平均値であってもよい。
【0068】
中心大動脈脈圧PPA= 末梢動脈脈圧PPperi/脈圧増幅であり、
中心大動脈収縮血圧=中心大動脈脈圧PPA+末梢動脈拡張期血圧であることから、
中心大動脈収縮血圧=(末梢動脈脈圧PPperi/脈圧増幅)+末梢動脈拡張期血圧であり、
この式より、中心大動脈血圧推定部45は、中心大動脈脈圧PPAから、中心大動脈収縮期血圧を推定することができる。
【0069】
血圧指標算出装置30の処理装置40は、拡張期血圧変動指数に基づいて、前記検査対象の血管の硬化度を評価する血管硬化度評価部46を更に備えてもよい。
【0070】
一つの例では、記憶装置50には、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値が記憶されており、血管硬化度評価部46は、ある被検者の拡張期血圧変動指数が、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値と同じかそれよりも低い場合に、当該被検者の血管の硬化が進行している可能性が高いと推定することができる。可能性が高いことは、その旨の表示、ランク付、確率などの形式で表示装置52に表され得る。なお、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値は、動脈硬化を有する患者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値であってもよい。
【0071】
また別の例では、記憶装置50には、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値が記憶されており、血管硬化度評価部46は、ある被検者の拡張期血圧変動指数が、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値と同じかそれより高い場合に、当該被検者の血管の硬化が進行している可能性が低いと推定することができる。可能性が低いことは、その旨の表示、ランク付、確率などの形式で表示装置52に表され得る。なお、拡張期血圧変動指数PFIdの基準値は、健常者の拡張期血圧変動指数PFIdの平均値であってもよい。
【0072】
図2は、検査対象の血圧指標を算出するための、血圧指標算出装置30の処理装置40の主な動作を示すフローチャートである。工程S1で、平均化血圧波形生成部41が、被検者の末梢動脈の血圧波形データから平均化血圧波形を生成する。工程S2で、残留圧力波形生成部42が、平均化血圧波形生成部41から受け取った血圧波形データの拡張期の部分を指数関数的減衰曲線に適合させて、最初に現れる負のピークと、その次に現れる正のピークとを有する残留圧力波形を生成する。工程S3で、拡張期血圧変動指数算出部43が、残留圧力波形の該最初に現れる負のピークにおける圧力をPR1、その次に現れる正のピークにおける圧力をPR2、末梢動脈の脈圧をPPPeriとした場合に、以下の式(1)で表される拡張期血圧変動指数(PFId)を算出する。
【0073】
【数9】
【0074】
任意選択で、工程S4で、脈圧増幅推定部44は、拡張期血圧変動指数PFIdに基づいて、脈圧増幅を推定する。
【0075】
任意選択で、工程S5で、中心大動脈血圧推定部45は、拡張期血圧変動指数PFIdに基づいて推定された脈圧増幅と、上腕血圧測定によって得られた平均血圧(または収縮期血圧)および拡張期血圧から、中心大動脈血圧を推定する。
【0076】
任意選択で、工程S6で、血管硬化度評価部46は、拡張期血圧変動指数PFIdに基づいて、前記検査対象の血管の硬化度を評価する。
【0077】
上記の第1実施形態の検査対象の血圧指標算出方法によれば、血圧指標である拡張期血圧変動指数を簡便に算出することができる。また、この拡張期血圧変動指数を用いて、被検者の心血管系の評価、脈圧増幅の推定、中心大動脈血圧の推定、検査対象の血管硬化度の評価を簡便かつ精度よく行うことができる。
【0078】
上記の第1実施形態では検査対象の血圧指標算出装置30及び血圧指標算出方法について説明したが、本発明は、これに限らず、コンピュータを上記の血圧指標算出装置30の処理装置40として機能させるためのプログラムや、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も包含する。
【0079】
なお、上記第1実施形態は、以下のように変更可能である。
○血圧波形データを測定する場合、ユーザの操作により手動で測定時間を決定してもよいが、ある一定の時間区域(例えば5~30秒間)をプリセットとして用い、その時間区域で自動的に測定が開始及び終了されるよう、処理装置22によりすべての工程が自動計測されてもよい。また、手動と自動をユーザが切り替えられる構成であってもよい。
○血圧と血流を別個に計測する代わりに、被験者からの血圧の測定と血流の測定とを同時に行い、両データを時間的に同期させてパーソナルコンピュータに取り込んだ上で自動処理してもよい。この場合、より精密な測定が可能である。
〇第1実施形態では血圧脈波計測装置10と血圧測定装置20を異なる装置として説明したが、血圧脈波計測装置10と血圧測定装置20は同じであってもよい。つまり、被検者の末梢動脈からの血圧波形と、被検者の動脈の血圧とを、一つの装置で測定してもよい。
○第1実施形態では、処理装置40の平均血圧波形生成部41、残留圧力波形生成部42、拡張期血圧変動指数算出部43、脈圧増幅推定部44、中心大動脈血圧推定部45、及び血管硬化度評価部46は、いずれも処理装置40内に存在しているが、部41,42,43,44,45,46は物理的に離れた別の処理装置に存在してもよい。つまり、処理装置40内の各部が同一のハードウェア内の処理装置内にある場合のみならず、異なるハードウェア内の離れた処理装置に存在する場合も本発明の範囲に含まれる。
〇第1実施形態では、血圧指標算出装置30内に記憶装置50と表示装置52を備えているが、記憶装置50及び/又は表示装置52を血圧指標算出装置30の外部において処理装置40とは別体にし、LAN(Local Area Network)やインターネットなどの通信回線を介して処理装置40と通信接続する構成としてもよい。例えばその場合、記憶装置50は、図2に示される工程をはじめとする処理装置40の各工程で処理されるデータを記憶することができる。また、記憶装置50は、血圧脈波計測装置10、血圧測定装置20、又はその両方で生成されたデータを記憶し、そのようなデータを、図2に示される工程をはじめとする処理装置40における後の処理のために処理装置40に送ってもよい。
【0080】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る検査対象の血流指標を算出する装置を含む血流指標算出システム101の構成について説明する。図3に示すように、血流指標算出システム101は、被検者の末梢動脈の血流波形を計測する血流測定装置110と、被検者の動脈の血圧を測定する血圧測定装置20と、血流測定装置110及び血圧測定装置120から受信したデータを記憶及び処理するコンピュータ等からなる血圧指標算出装置130とを備えている。
【0081】
血流指標算出装置130は、血流測定装置110及び血圧測定装置120から受信した各種データ、及び/又は内部で記憶又は生成したデータに基づいて演算又は判定等を行うCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrate Circuit)、FPGA (Field Programmable Gate Array)などの処理装置40と、各種のデータを記憶する、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶装置150と、処理装置140における演算結果を表示する表示装置152とを備えている。
【0082】
血流測定装置110は、末梢動脈の血流を測定可能な任意の装置であってよく、例えば公知の変換器付き超音波装置が挙げられる。変換器付きの超音波装置の使用により、被験者の体表面から非侵襲的に大動脈の血流データ、特には経時的な血流速度変化の波形データを収集することが可能である。
【0083】
血流測定装置110で一定時間(例えば5~30秒間)記憶された血流速度ないし血流量の波形データは、血流指数算出装置130に送信され、記憶装置150に保存される。好ましい実施形態において、医師又は看護師等の医療従事者である、血流指標算出システム100の使用者(以下、ユーザ)は、表示装置152上に時系列軸上に表示された保存した血流速度波形データから、データが安定しているとユーザが判定した時間区域(例えば10秒間)のデータを選択し、後の演算処理のために選択し得る。別の好ましい実施形態において、血流測定装置110から血流指標算出装置130へ送信される血流速度波形データの選択は、血流指標算出装置130により自動的に行われる。
【0084】
血圧測定装置120は、被検者の動脈の血圧を測定可能な任意の装置であってよく、例えばカフ式オシロメータが挙げられる。血圧測定装置120にて測定可能な末梢動脈としては、上腕動脈、橈骨動脈、及び/又は下肢動脈などが挙げられるがこれに限定されない。血圧測定装置120で測定される動脈血圧としては、末梢動脈の収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧及び/又は心拍が含まれる。かかる血圧測定法は公知技術であり、当業者には通常の技能で実施可能である。血圧測定装置120で測定した血圧データは、血流指標算出装置130に送信され、血流指標算出装置130の記憶装置150に保存される。好ましい実施形態において、血流指標算出システム100の使用者は、表示装置152上に表示された保存した血流データから、安定しているとユーザが判定した血流データを選択及び/又は平均化し、後の演算処理のために用いることができる。別の好ましい実施形態において、血圧測定装置120から血流指標算出装置130へ送信される血圧データの選択は、血流指標算出装置130により自動的に行われる。
【0085】
血流指標算出装置130の処理装置140は、血流測定装置110から受信した血流速度波形データの所定期間のアンサンブル平均をとり、平均化血流速度波形とする平均血流速度波形生成部141と、平均化血流速度波形生成部141にて生成された検査対象の末梢動脈の血流速度波形データの、時間変化に対する血流速度波形の収縮期の正の最大ピークにおける血流速度をV FW、負のピークにおける血流速度をV BW、その次に現れる拡張期の正のピークにおける血流速度をVFW2とした場合に、以下の式(3)で表される拡張期血流変動指数(FFId)を算出する拡張期血流変動指数算出部143とを備える。
【0086】
【数10】
【0087】
後述の実施例では、大腿動脈の血流速度波形データを用いて拡張期血流変動指数を算出した例を説明している。図5(c)は血流測定装置110で測定した被検者の大腿動脈の血流速度波形データのアンサンブル平均を取った平均化動脈血流速度波形のグラフである。
【0088】
カッコ内の記号は座標(x, y)を表し、Tは時間、Vは速度である。図5(c)の波形と図5(b)の波形と拡張期部分の形は類似しているが、図5(b)時間TR1より図5(c)の時間TBWの方が若干早い。
【0089】
驚くべきことに、式(3)にて算出される拡張期血流変動指数FFIdは、脈圧増幅(Pulse Pressure Amplification)と強い相関を有する。脈圧増幅の測定には、大動脈血圧と、末梢血圧という2点の測定が必要であり、測定が煩雑であったが、本開示の拡張期血圧変動指数PFIdは、末梢動脈の1点を測定するだけで算出することができるため、簡便である。本開示の拡張期血流変動指数FFIdを用いれば、被検者の心血管系をより簡便かつ精度良く評価することができる。
【0090】
また、本開示の拡張期血流変動指数FFIdを用いれば、伝達関数を使わなくとも、脈圧増幅や大動脈血圧を簡単に推定することができる。
【0091】
さらには、脈波伝播速度(pulse wave velocity: PWV)は血管の動脈硬化の指標として周知であるが、本開示の拡張期血流変動指数FFIdは、2か所の末梢動脈のPWVの比とも強い相関がある。このため、脈波伝播速度を測定せずとも、簡便に本開示の拡張期血流変動指数FFIdを硬化度の評価に使用することもできる。
【0092】
さらに、拡張期血流変動指数FFIdは、拡張期血圧変動指数PFIdとの相関が高い(R=0.63, P<0.001)。
【0093】
血流指標算出装置130の処理装置140は、拡張期血流変動指数FFIdに基づいて、脈圧増幅を推定する脈圧増幅推定部144を更に備えてもよい。
【0094】
具体的には、拡張期血流変動指数FFIdは、末梢動脈脈圧増幅PPperiに対する中心大動脈脈圧PPAの比(PPperi/PPA)である脈圧増幅と強い相関があるため、拡張期血流変動指数FFIdから脈圧増幅を推定することができる。
【0095】
一つの例では、記憶装置150に、拡張期血流変動指数FFIdと脈圧増幅PPperi/PPAの関数が記憶されており、脈圧増幅推定部144は、ある被検者の拡張期血流変動指数から、たとえばかかる関数を用いて、当該被検者の脈圧増幅PPperi/PPAを推定することができる。
【0096】
脈圧増幅 PPperi/PPA = a×FFId + b×年齢 + c×心拍数 + d×BMI
(a、b、c、dは定数であり、末梢動脈の部位によって異なる固有の値をとる)
【0097】
別の例では、記憶装置150には、拡張期血流変動指数FFIdの基準値と、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値とが記憶されており、脈圧増幅推定部144は、ある被検者の拡張期血流変動指数が、拡張期血流変動指数FFIdの基準値よりも高い場合に、当該被検者の脈圧増幅が脈圧増幅PPperi/PPAの基準値よりも高いと推定することができる。なお、拡張期血流変動指数FFIdの基準値及び脈圧増幅PPperi/PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよいし、それぞれ心疾患患者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよい。
【0098】
また別の例では、記憶装置150には、拡張期血流変動指数FFIdの基準値と、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値とが記憶されており、脈圧増幅推定部144は、ある被検者の拡張期血流変動指数が、拡張期血流変動指数FFIdの基準値以下である場合に、当該被検者の脈圧増幅が、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値以下であると推定することができる。なお、拡張期血流変動指数FFIdの基準値及び脈圧増幅PPperi/PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよいし、それぞれ心疾患患者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよい。
【0099】
さらに別の例では、記憶装置150には、拡張期血流変動指数FFIdの基準値と、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値とが記憶されており、脈圧増幅推定部144は、ある被検者の拡張期血流変動指数と拡張期血流変動指数FFIdの基準値との関係と、脈圧増幅PPperi/PPAの基準値とから、当該被検者の脈圧増幅の推定値を算出することができる。なお、拡張期血流変動指数FFIdの基準値及び脈圧増幅PPperi/PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよいし、それぞれ心疾患患者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値及び脈圧増幅PPperi/PPAの平均値であってもよい。
【0100】
血流指標算出装置130の処理装置140は、拡張期血流変動指数FFIdに基づいて、中心大動脈血圧を推定する中心大動脈血圧推定部145を更に備えてもよい。
【0101】
具体的には、拡張期血流変動指数FFIdは、末梢動脈脈圧PPperiに対する中心大動脈脈圧PPAの比(PPperi/PPA)と強い相関があるため、拡張期血流変動指数FFIdと末梢動脈脈圧PPperiの値から、中心大動脈脈圧PPAをを求めることができ、さらに、末梢動脈と中心大動脈の拡張期血圧は同じと考えられるため、中心大動脈脈圧PPAから中心大動脈収縮期血圧を推定することができる。末梢動脈脈圧PPperiは血圧脈波計測装置10により測定することができ、血流指標算出装置130に送信される。
【0102】
一つの例では、記憶装置150に、拡張期血流変動指数FFId、末梢動脈脈圧PPperi、及び中心大動脈脈圧PPAの関数が記憶されており、中心大動脈血圧推定部145は、ある被検者の拡張期血流変動指数と末梢動脈脈圧から、たとえばかかる関数を用いて、当該被検者の中心大動脈脈圧PPAを推定することができる。
【0103】
脈圧増幅 PPperi/PPA = a×FFId + b×年齢 + c×心拍数 + d×BMI
(a、b、c、dは定数であり、末梢動脈の部位によって異なる固有の値をとる)
中心大動脈血圧=(PPperi÷脈圧増幅)+末梢動脈拡張期血圧
【0104】
別の例では、記憶装置150には、拡張期血流変動指数FFIdの基準値と、末梢動脈脈圧PPperiの基準値と、中心大動脈脈圧PPAの基準値とが記憶されており、中心大動脈血圧推定部145は、ある被検者の拡張期血流変動指数と、末梢動脈脈圧とから、当該被検者の中心大動脈脈圧PPAが、中心大動脈脈圧PPAの基準値よりも高いか否かを推定することができる。なお、拡張期血流変動指数FFIdの基準値、末梢動脈脈圧PPperiの基準値、及び中心大動脈脈圧PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値、末梢動脈脈圧PPperiの平均値、及び中心大動脈脈圧PPAの平均値の平均値であってもよいし、それぞれ心血管疾患患者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値、末梢動脈脈圧PPperiの平均値、及び中心大動脈脈圧PPAの平均値であってもよい。
【0105】
さらに別の例では、記憶装置150には、拡張期血流変動指数FFIdの基準値と、末梢動脈脈圧PPperiの基準値、及び中心大動脈脈圧PPAの基準値が記憶されており、中心大動脈血圧推定部145は、ある被検者の拡張期血流変動指数と拡張期血流変動指数FFIdの基準値の関係、当該被検者の末梢動脈脈圧と末梢動脈脈圧PPperiの基準値の関係、及び中心大動脈脈圧PPAの基準値から、当該被検者の当該被検者の中心大動脈脈圧PPAを推定することができる。なお、拡張期血流変動指数FFIdの基準値、末梢動脈脈圧PPperiの基準値、及び中心大動脈脈圧PPAの基準値は、それぞれ健常者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値、末梢動脈脈圧PPperiの平均値、及び中心大動脈脈圧PPAの平均値であってもよいし、それぞれ心血管疾患患者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値、末梢動脈脈圧PPperiの平均値、及び中心大動脈脈圧PPAの平均値であってもよい
【0106】
血流指標算出装置130の処理装置140は、拡張期血流変動指数FFIdに基づいて、検査対象の血管の硬化度を評価する血管硬化度評価部146を更に備えてもよい。
【0107】
一つの例では、記憶装置150には、拡張期血流変動指数FFIdの基準値が記憶されており、血管硬化度評価部146は、ある被検者の拡張期血流変動指数が、拡張期血流変動指数FFIdの基準値と同じかそれよりも低い場合に、当該被検者の血管の硬化が進行している可能性が高いと推定することができる。可能性が高いことは、その旨の表示、ランク付、確率などの形式で表示装置52に表され得る。なお、拡張期血流変動指数FFIdの基準値は、動脈硬化を有する患者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値であってもよい。
【0108】
また別の例では、記憶装置150には、拡張期血流変動指数FFIdの基準値が記憶されており、血管硬化度評価部146は、ある被検者の拡張期血流変動指数が、拡張期血流変動指数FFIdの基準値と同じかそれより高い場合に、当該被検者の血管の硬化が進行している可能性が低いと推定することができる。可能性が低いことは、その旨の表示、ランク付、確率などの形式で表示装置52に表され得る。なお、拡張期血流変動指数FFIdの基準値は、健常者の拡張期血流変動指数FFIdの平均値であってもよい。
【0109】
図4は、検査対象の血流指標を算出するための、血流指標算出装置130の処理装置140の主な動作を示すフローチャートである。工程S101で、平均血流速度波形生成部141が、被検者の末梢動脈の血流速度波形データから平均血流速度波形を生成する。工程S102で、拡張期血流変動指数算出部143が、平血流速度波形の収縮期の正の最大ピークにおける血流速度をV FW、負のピークにおける血流速度をV BW、その次に現れる拡張期の正のピークにおける血流速度をVFW2とした場合に、以下の式(3)で表される拡張期血流変動指数(FFId)を算出する。
【0110】
【数11】
【0111】
任意選択で、工程S103で、脈圧増幅推定部144は、拡張期血流変動指数FFIdに基づいて、脈圧増幅を推定する。
【0112】
任意選択で、工程S104で、中心大動脈血圧推定部145は、拡張期血流変動指数FFIdに基づいて、中心大動脈血圧を推定する。
【0113】
任意選択で、工程S105で、血管硬化度評価部146は、拡張期血流変動指数FFIdに基づいて、前記検査対象の血管の硬化度を評価する。
【0114】
上記の第2実施形態の検査対象の血流指標算出方法によれば、血流指標である拡張期血流変動指数を簡便に算出することができる。また、この拡張期血流変動指数を用いて、被検者の心血管系の評価、脈圧増幅の推定、中心大動脈血圧の推定、検査対象の血管硬化度の評価を簡便かつ精度よく行うことができる。
【0115】
上記の第2実施形態では検査対象の血流指標算出装置130及び血流指標算出方法について説明したが、本発明は、これに限らず、コンピュータを上記の血流指標算出装置130の処理装置140として機能させるためのプログラムや、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も包含する。
【0116】
なお、上記第2実施形態は、以下のように変更可能である。
○血流波形データを測定する場合、ユーザの操作により手動で測定時間を決定してもよいが、ある一定の時間区域(例えば5~30秒間)をプリセットとして用い、その時間区域で自動的に測定が開始及び終了されるよう、処理装置22によりすべての工程が自動計測されてもよい。また、手動と自動をユーザが切り替えられる構成であってもよい。
○血圧と血流を別個に計測する代わりに、被験者からの血圧の測定と血流の測定とを同時に行い、両データを時間的に同期させてパーソナルコンピュータに取り込んだ上で自動処理してもよい。この場合、より精密な測定が可能である。
〇第2実施形態では血圧脈波計測装置10と血圧測定装置20を異なる装置として説明したが、血圧脈波計測装置10と血圧測定装置20は同じであってもよい。つまり、被検者の末梢動脈からの血圧波形と、被検者の動脈の血圧とを、一つの装置で測定してもよい。
○第2実施形態では、処理装置140の平均血流波形生成部141、拡張期血流変動指数算出部143、脈圧増幅推定部144、中心大動脈血圧推定部145、及び血管硬化度評価部146は、いずれも処理装置140内に存在しているが、部141,143,144,145,146は物理的に離れた別の処理装置に存在してもよい。つまり、処理装置140内の各部が同一のハードウェア内の処理装置内にある場合のみならず、異なるハードウェア内の離れた処理装置に存在する場合も本発明の範囲に含まれる。
〇第2実施形態では、血流指標算出装置130内に記憶装置150と表示装置152を備えているが、記憶装置150及び/又は表示装置152を血流指標算出装置130の外部において処理装置140とは別体にし、LAN(Local Area Network)やインターネットなどの通信回線を介して処理装置140と通信接続する構成としてもよい。例えばその場合、記憶装置150は、図4に示される工程をはじめとする1処理装置40の各工程で処理されるデータを記憶することができる。また、記憶装置150は、血流測定装置110、血圧測定装置120、又はその両方で生成されたデータを記憶し、そのようなデータを、図4に示される工程をはじめとする処理装置140における後の処理のために処理装置140に送ってもよい。
【0117】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態の血圧及び血流指標算出システムは、第1実施形態に係る検査対象の血流指標を算出する装置を含む血圧指標算出システム1と、第2実施形態に係る検査対象の血流指標を算出する装置を含む血流指標算出システム101との両方を備える。本発明の第3実施形態の血圧及び血流指標算出システムは、血圧脈波計測装置10、血流測定装置110、血圧測定装置20,120から受信した各種データ、及び/又は内部で記憶又は生成したデータに基づいて演算又は判定等を行う処理装置と、各種のデータを記憶する、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶装置と、処理装置における演算結果を表示する表示装置とを備える。
【0118】
本発明の第3実施形態の処理装置は、第1実施形態の処理装置40及び第2実施形態の処理装置140を含み、第3実施形態の記憶装置は、第1実施形態の記憶装置50及び第2の実施形態の記憶装置150の機能を果たす1つ又は2つ以上の記憶装置であり、第3実施形態の表示装置は、第1実施形態の表示装置52及び第2実施形態の表示装置152の機能を果たす1つ又は2つ以上の表示装置である。
【0119】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例0120】
1.患者
本研究の患者は、高血圧症および関連する心臓血管リスクの臨床評価のために東北大学病院において発明者の部署の紹介を受けた592人の成人患者であった。このうち、顕性心不全、心臓弁膜症、卒中、末期腎疾患、末梢動脈疾患 (足関節上腕血圧インデックス<0.9又は>1.4、又は実証済み)、大動脈瘤、持続性心房細動、及び直近6ヶ月以内に急性心血管系イベントを有する患者を除外した。いずれの患者も、四肢に顕性の臨床症状を有していなかった。研究プロトコールは東北大学の倫理委員会によって承認され、参加者は全員、書面によるインフォームドコンセントを提供した。
【0121】
2.動脈圧と硬化度(stiffness)の測定
一連の非侵襲性の血行力学的測定値は、Hashimoto J. et., Hypertension 2010; 56:926-933及びHashimoto J. et., Hypertension 2011; 58:839-846.に詳しく説明した通りに、静かな温度調節した部屋で行なった。簡単に説明すると、背臥位で20分間休息した後、患者の腕の血圧を、カフ-オシロメトリック式装置(HEM-907; オムロンヘルスケア、京都、日本)を2回使用して測定した。圧力波は、圧平トノメーターセンサ(SPT-301;Milllar Instruments,ヒューストン、テキサス州、アメリカ)を使用して、橈骨動脈、総大腿動脈、及び足背動脈で記録し、それぞれの一拍ごとのパルス波形をアンサンブル平均した。大動脈波形は、一般化された伝達関数(SphygmoCor、AtCor Medical, ウエストライド、オーストラリア)を使用して、対応する橈骨動脈波形から推定した。橈骨動脈波形を上腕収縮期・拡張期圧を使用して校正し、平均動脈圧(MAP)を算出した。大動脈波形、大腿動脈波形、足背動脈波形も、大動脈及び末梢動脈のシグナルのMAP及び拡張期血圧レベルを平均化することにより校正した(Avolio AP etl, Hypertension
2009; 54:375-383.及びHashimoto J. et., Hypertension 2010; 56:926-933)。
【0122】
大動脈-大腿脈波増幅、大動脈-足背動脈脈波増幅、及び大動脈-橈骨動脈脈波増幅(PPF/PPA、PPD/PPAおよびPPR/PPA)は、大動脈脈圧(PPA)に対するそれぞれの末梢動脈脈圧の比率として計算した(Hashimoto J. et., Hypertension 2010; 56:926-933)。PPF、PPD及びPPRがそれぞれ大腿動脈、足背動脈及び橈骨動脈の脈圧を表わす。
【0123】
脈波速度(PWV)は以前に記載されているように頸動脈-大腿動脈、大腿動脈-足背動脈、及び頸動脈-橈骨動脈の部位 (つまりPWVCF、PWVFD及びPWVCR)で計算した(Hashimoto J. et al., Hypertension 2010; 56:926-933及びHashimoto J. et., Hypertension 2011; 58:839-846.)。PWVCFは大動脈の(弾性動脈の)硬化度を反映し、PWVFD及びPWVCRは末梢動脈の (筋性動脈の)硬化度を反映し、PWVFD及びPWVCRのPWVCFに対する比 (つまりPWVFD/PWVCF及びPWVCR/PWVCF)の比率は、大動脈対末梢動脈の (つまり、弾性動脈対筋性動脈の)動脈硬化度勾配と以前から考えられている (London GM et al., Hypertension 2019; 74:1366-1372.及びHashimoto J. et al., Hypertension 2013; 62:542-549)。
【0124】
3.拡張期血圧波形分析
大腿動脈圧波形の拡張期の部分を可変漸近線を用いて指数関数的減衰曲線に適合させた(図5(a)) 。まず、拡張期の開始(つまり収縮末期、TESの時間)を、全心臓期における脈波の第2の変曲点として定義したが、これは二次導関数波の2つ目の正のピークに相当する(Balmer J et all, J Clin Monit Comput 2021; 35:79-88.)。拡張期の終末を次の心周期の末端(foot)として決定した。その後、心拡張期の期間の最初の95%を心拡張期の最適化ウィンドウとして抽出し、前駆出期に関連するアーチファクトを回避した。
【0125】
曲線の適合つまりフィッティングは以下の式(2)に従って行い(Liu Z et al., Am J Physiol 1986; 251 (3 pt 2):H588-600.及びKottenberg-Assenmacher E et al., Anesthesiology 2009;110:370-379.)、Levenberg-Marquardtアルゴリズム(OriginPro 2018; Origin Lab,ノーサンプトン、マサチューセッツ、アメリカ)を使用して最適化した。
【0126】
【数12】
【0127】
式中、tは収縮末期からの時間であり、P(t)はtにおける指数関数的圧力波形であり、P0は収縮末期における推定(最適化)圧力であり、Pは最適化漸近圧力であり、τ(タウ)は最適化時定数である。本実施例では、τを有限とした。適合度は、決定係数(R2)および二乗平均平方根誤差 (RMSE;すなわち実測曲線と推定曲線との間の瞬間圧力の平均差)を使用して評価した。
【0128】
次に、残留圧力波形を、実測曲線と推定曲線との間の差として導出した(図5(b))。典型的には、残留圧力波形は3つの圧力ピーク:最初の負のピーク (PR1)、2番目の正のピーク (PR2)、及び3番目の負のピーク (PR3)を有していた。これらのピークは、ピーク分析ソフトウェア(OriginPro)を使用して局所的最小又は極大値として自動検出した。オリジナルの波形の収縮期の立ち上がりからこれらのピークまでの時間も決定した(TR1、TR2及びTR3)。したがって、残留波形の変動の振幅(つまり拡張期血圧変動振幅、PFAd)を、以下の式(4)に従って計算した:
【0129】
【数13】
【0130】
その後、拡張期血圧変動振幅を、オリジナルの脈波の全振幅(すなわち大腿動脈脈圧)に対して標準化し、拡張期血圧変動インデックス(PFId)を以下の式(1)に従って計算した。PPPeriは大腿動脈脈圧PPFとした。
【0131】
【数14】
【0132】
PFIdの計算はもっぱら波形に依存し、任意の圧力校正に影響されないことに留意すべきである。更に、以前の報告(Oppenheim MI et al., Comput Biomed Res 1995; 28:154-170.)のアルゴリズムに従い、重複切痕は、収縮期終期と重複波の間のノッチ(トラフ)又は下方への屈曲(たわみ)として同定された(図5(a))。具体的には、対応する一次導関数波において負から負でない値へのゼロ交差点があった場合、ディッピングノッチ(トラフ)が存在するとみなし、トラフが存在しない場合、二次導関数波における下方に向かうゼロ交差点をデフレクションノッチとして代わりに検出した。本実施例では、相当な数の波形において明瞭なトラフを検出できなかったため、ディッピングノッチとデフレクションノッチを総称して重複切痕と称している。その後、重複隆起の後の正のショルダーとして重複波の(隠れた)ピークを定義し(図5(a))、一次誘導法(OriginPro)後の残留圧力を使用して、発生時間を決定した。収縮期の立ち上がりからの瞬間圧力および時間を、重複切痕(PDNとTDN)及び重複波ピーク(PDWとTDW)の対して計算した。
【0133】
4.血流速度波形分析
以前に説明したように(Hashimoto J et al., Hypertension 2010; 56:926-933)、複式超音波検査法(Vivid i, GEヘルスケア、東京、日本)を使用して、総大腿動脈の血流速度を記録した。一拍ごとのパルス速度波形を、10個の連続するパルスについて数学的にアンサンブル平均した。大腿動脈パルス波形は基本的に三相であり、次のパラメータ (図5(c)を決定した:収縮期順流ピーク速度 (VFW)、逆流(後ろ向き)ピーク速度(VBW)、拡張期順流ピーク速度(VFW2)、拡張期末期速度、および時間平均速度。収縮期の立ち上がりからの時間も計算した。収縮期順流(TFW)ピーク、逆流(TBW)ピーク、及び拡張期順流(TFW2)ピークに対して計算した。次に、拡張期血流変動インデックス(FFId)を、全速度パルス振幅に対する拡張期速度変動振幅(つまりVFW2-VBW)の相対的な比率として以下の式(3)に従って計算した。
【0134】
【数15】
【0135】
FFIdの計算では、波形が二相波で、拡張期順流がない場合、VFW2を0と見なした(Hashimoto et al. Hypertension 2010; 56:926-933.)。
【0136】
5.統計学的分析
データは、平均±標準偏差(正規分布が想定される場合)、連続変数については中央値[四分位範囲](非対称の場合)、あるいはカテゴリー変数についてはパーセンテージとして示す。非対称データは、後の統計分析用に正規分布に対数変換した。
【0137】
一変量線形相関はピアソン係数(r)を使用して評価した。paired t検定又は反復測定分散分析を使用して、個体の圧力、速度および時間パラメータの対応するデータを比較した。時間パラメータの対応はBland-Altmanプロット分析を使用して評価した。対のないデータはスチューデントt検定を使用して比較した。多変量線形回帰分析を使用して、様々な圧力および硬化度勾配パラメータの独立した相関をPFIdとFFIdと比較した。PFId及びFFIdは年齢、性別、身長、BMI、MAP、心拍数、空腹時血糖、LDLコレステロール、HDLコレステロール、eGFR、カルシウムチャネル遮断薬による治療、レニン-アンジオテンシン系阻害剤、β-遮断薬、α-遮断薬、利尿薬、アルドステロン受容体遮断薬、抗糖尿病薬、及び抗高脂血症薬を含む共変量で調整した。PFIdとFFIdの独立した決定因子を、PPD/PPA及びPWVFD/PWVCFならびに上記と同じ共変量を候補として使用して、段階的な手順で評価した。
【0138】
媒介分析は、振幅又は硬化度勾配、拡張期血流変動、及び拡張期血圧変動の間で仮説の関連性を調べるために線形回帰の結果に基づいて適時に行った。より具体的には、PROCESS プログラムを用いて5000個の再サンプルでブートストラップすることにより年齢と性別が最小に調節されたモデルで間接的効果、直接的効果、及び信頼区間を推定した。間接的効果がゼロとは有意に異なる場合に、媒介が確立されたとみなした。媒介の比率を全効果に対する間接的効果の比として評価した。
【0139】
統計分析はすべてSPSSのStatistics (バージョン25.0; IBM、アーモンク、ニューヨーク、アメリカ)を使用して行った。0.05 (両側検定)未満のP値を統計的に有意とみなした。
【0140】
6.結果
(1)患者特性
592人の患者(平均年齢55±14歳)の臨床学的及び血行力学的特性を表1に示す。患者の大部分(91%)は抗高血圧薬で治療されていたため、血圧がほぼ制御されていた(上腕の血圧(131±18/74±12 mmHg))。全患者のうち24%及び43%で糖尿病と高コレステロール血症が観察された。PWVCFの中央値は7.8m/sであり、平均PWVFD/PWVCF(大動脈-脚動脈の動脈硬化度勾配)比及び平均PWVCR/PWVCF(大動脈-腕動脈硬化度勾配)比は、それぞれ1.2±0.3及び1.0±0.2であった。脈圧増幅比は、大動脈と足背動脈の間(PPD/PPA)で1.8±0.3、大動脈と橈骨動脈の間(PPR/PPA)で1.3±0.2であった。
【0141】
【表1】
【0142】
(2)大腿動脈拡張期血圧波形
収縮期の立ち上がりから第2の変曲点までの時間(TES)は、309±3ミリ秒であった(図5(a)及び表1)。ディッピング重複切痕(つまりトラフ)は92人の患者のみに存在し、収縮期の立ち上がりから428±50ミリ秒で起こったが、発生の時間は残りの500人の患のデフレクティブ重複切痕とは異なっていなかった(436±4ミリ秒、P=NS(統計学的有意差なし))。517人の患者(87%)において重複切痕(TDN)後の63±4ミリ秒で、重複波ピーク又はショルダ(TDW)を確認できた。
【0143】
すべての患者の拡張期波形は、単一指数関数減衰曲線(図5(a))に成功裏に適合し、適合度はR2(中央値、0.99)及びRMSE(0.9mmHg)の点から満足するものであった。τ及び漸近線の中央値はそれぞれ0.7[四分位範囲:0.4-1.7]及び50[14-64]mmHgと推定された。
【0144】
優れたモデルの適合にもかかわらず、残留分は有限の振動変動(図5(b))を示した。
残留波は三相(n=492、83%)か、二相(n=100、17%)のパターンであり、すなわち最初の負の波(R1)に常に2番目の正の波(R2)が続き、ほとんどの場合に3番目の負の波(R3)が続いた(表1)。絶対波高は、それらの見た目の順に高かった(|PR1|>|PR2|>|PR3|; P<0.001)の順に高かった。拡張期血圧変動インデックス(PFId)は4.9[3.4-6.6]%であった。R1ピークは、重複切痕よりもわずかに早く生じ(差:49±39ミリ秒;P<0.001)、R2ピークは重複波ピークよりも遅く起こったが(差:86±62ミリ秒;P<0.001)、それらは互いに密接に相関していた(r=0.58、r=0.62;P<0.001)。
【0145】
(3)大腿動脈拡張期血流波形
速度脈波波形は549人の患者では逆方向と、拡張期の順方向の血流がある三相であったが(93%及び図5(c))、43人の患者(7%)では拡張期の順方向の血流がない二相であった。平均拡張期血流変動インデックス(FFId)は34±8%(表1)であった。Bland-Altmaヒストグラムにより、逆方向速度ピークの時間(TBW)がオリジナルの圧縮波の第2の変曲点の時間と十分一致していることが明らかとなった(TES、図6(a))。差の平均及び2SDはそれぞれ-2及び46ミリ秒であった。
【0146】
(4)拡張期の残留圧力と血流波形の間の相関
FFIdとPFIdの間には密接な相関があった(図6(b))。拡張期速度ピーク時間(TFW2)はR2ピーク時間(TR2、r=0.68、P<0.001)とよく対応していたが、前者は平均で後者よりも71ミリ秒だけ先行していた(図6(c))。
【0147】
(5)拡張期の血圧及び血流変動の決定因子
表2は、個々の硬化度及び圧力測定値と、拡張期の血流及び血圧の変動との多変数調整された関連を示す。多数の共変量(年齢、性別、MAP、心拍数、人体計測パラメータ、生化学的パラメータ、及び種々の内科療法を含む)により調節された時さえ、より高いPWVCFと、より低いPWVFD又はPWVCRが、より小さいFFIdと関連した。従って、PWVFD/PWVCF比及びPWVCR/PWVCF比(つまり弾性動脈-筋性動脈間圧力勾配)は、FFIdとより近い正の相関を有していた。同様に、より大きい脈圧増幅比(すなわちPPD/PPA、PPF/PPAおよびPPR/PPA)は、より大きいFFIdと関連していた。そのうち、PPD/PPAがFFIdと最も密接に相関していた。FFIdと類似して、PFIdは、脈波増幅及び硬化度勾配の測定値とは有意に独立した関連を有していた(表2)。この結果は、PFIdが残留圧力波)の絶対振幅(PFAdと置き換えても本質的に同じであった。
【0148】
FFIdとPPIdの独立した決定因子を要ステップワイズ線形回帰モデルを使用して評価した。これはPWVFD/PWVCF比及びPPD/PPA比と、他の潜在的な共変量を含む(表3)。同時に考慮された時さえ、PPD/PPAとPWVFD/PWVCFの両方はFFIdの独立した決定因子であることが分かった。この2つを組み合わせただけで合計の説明可能な変量の67%を占めた。FFIdと同様に、PFIdは、年齢と性別に加えて、PPD/PPA及びPWVFD/PWVCFにより独立して決定された。
【0149】
【表2】
【0150】
【表3】
【0151】
(6)媒介分析
媒介分析を、拡張期血流変動が、動脈の硬化勾配と拡張期血圧変動との間の相関を説明するかどうかを調べるために行なった(図7(a)(b))。図7(a)は、より高いPWVFD/PWVCF比とより大きなPFIdの間の相関を示している。この相関は、より大きなFFIdを通じて媒介している直接的及び間接的結果の点から別々に評価した。媒介分析から、間接的結果が非常に重要であることが明らかとなった (P<0.001)。FFIdはPFIdに対するPWVFD/PWVCFの観察された全効果のうちの54%(95%信頼区間: 30-100%)を媒介すると推定された。PPD/PPA比を予測変数として評価した場合(図7(b))、FFIdはPPD/PPA比とPFIdの間の相関の57%(42-80%)を媒介すると推定された。
【符号の説明】
【0152】
30…血圧指標算出装置、42…残留圧力波形生成部、43…拡張期血圧変動指数算出部、44,144…脈圧増幅推定部、45,145…中心大動脈血圧推定部、46,146…血管硬化度評価部、143…拡張期血流変動指数算出部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7