(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074115
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】野球キャッチャー
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20230522BHJP
A63B 63/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
A63B69/00 505M
A63B69/00 505K
A63B69/00 A
A63B63/00 A
A63B63/00 B
A63B63/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186895
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】721000413
【氏名又は名称】日高 修文
(72)【発明者】
【氏名】日高 修文
(57)【要約】
【課題】野球ではピッチャーの出来不出来が決定的に重要で、そのためピッチャーの投球練習が非常に重要であるが、草野球などでの壁当て等の一人練習は別として、通常はピッチャーの捕球をする役割のキャッチャーが練習相手として必要である。さらに、より大きな問題は練習が科学的でないことで、ピッチャーは自分が投げたボールが以前に比較してスピードやコントロール等の質が向上しているかなどを定量的に、正確に、知ることはできず、闇雲な投球練習となる。ストライクかボール判定をするためにアンパイヤーが立ち会うこともあるが、このように現状の投球練習は人的負担が大きく、しかも練習の効果も定量的に、経時的に把握できない。
【解決手段】本発明は投球目標位置を示した移動ボールを受け止める装置、移動ボール検知し判定する装置を備えたシステムとすることで、一人で科学的は投球練習ができるようにした野球キャッチャーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投球目標位置を示した移動ボールを受け止める装置、移動ボール検知し、判定する装置を備えたことを特徴とする野球キャッチャー。
【請求項2】
投球目標位置を示した移動ボールを受け止める装置の投球目標が捕球姿勢の捕手平面像又は立体像、内角外角上下に分画された図である請求項1の野球キャッチャー。
【請求項3】
移動ボール検知装置が移動ボールの速度、即ち球速計測装置を兼ねている請求項1の野球キャッチャー。
【請求項4】
移動ボール検知装置が移動ボールの投球目標位置判定、即ちストライクかボールの判定装置を兼ねている請求項1の野球キャッチャー。
【請求項5】
投球目標位置が表示灯やプロジェクションマッピングで光学的に表示されることを特徴とした請求項1の野球キャッチャー。
【請求項6】
投手が投球目標位置に向けた投げたボールが目標位置周辺に到達した後で、当該ボールが当該投手に向けて返球される返球装置を備えたことを特徴とした請求項1の野球キャッチャー。
【請求項7】
投球目標位置に向けて投げられたボールの結果であるストライクかボール判定、球速結果を音声通知、表示する装置を備えたことを特徴とした請求項1の野球キャッチャー。
【請求項8】
投球されたボールが打たれる可能性をAIが判定して声通知、表示する装置を備えたことを特徴とした請求項1の野球キャッチャー。
【請求項9】
投球されたボールの数、ストライクかボールの数や率、速度、ボールのスピン数等のデータが時系列に保存され及び/又は表示されるデータ処理設備を備えたことを特徴とした請求項1の野球キャッチャー。
【請求項10】
ボールの投手の手首に移動ボール検知装置との間の通信のための発信器をつけることを特徴とした請求項1の野球キャッチャー。
【請求項11】
投球目標位置を示した移動ボールを受け止める装置、移動ボール検知し、判定する装置がロボットであることを特徴とした請求項1の野球キャッチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球のピッチャーの新しい科学的な投球練習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
野球の試合では投手(ピッチャー)の出来不出来が決定的に重要であり、このためにはピッチャーの投球練習が非常に重要であるが、草野球などでの壁当て等の一人練習は別として、通常はピッチャーの捕球をする役割のキャッチャーが練習相手として必要である。 その場合、一人のピッチャーが練習するために一人となる。さらに、より大きな問題はこのピッチャーは自分が投げたボールが打者に対してどの位有効であるか、以前に比較して自分が進歩しているのかどうか、ボールのスピード(球速)やコントロールが向上しているかなどは正確には分からない。これでは投球練習そのものの成果が分からない。このため、人的に或いは資金的に余裕があるプロ野球の練習等ではキャッチャーの背後に投球のストライクかボール判定をするアンパイヤーが立ち会うこととなる。即ち、一人のピッチャーが練習するために一人のキャッチャーと一人のアンパイヤーがセットで必要であり、更に、ボールのスピード(球速)や回転数等のボールの質を測定しようとするとそのため更に追加の測定者や器具が必要であり非常に人的効率が悪い、しかも、このアンパイヤーは「ナイスピッチング!」などと叫んでストライクかボールを判定するが、それがストライクかボールの判定以外は真にナイスピッチングか否か、想定される相手チームの強打者に対する有効性は分からない。ピッチャーは不安に駆られて闇雲に練習時間を多くするしかないのが現状である。しかも練習した効果は定量的には把握できない。ピッチャーは自分の能力の経時的に、定量的に変化を知ることが出来ず、野球チームの監督も自分のチームの数人いるピッチャー間の相対比較ができない。ピッチャーは実際の試合で現実の強打者と対戦して初めて自分の能力を認識することとなる。当該ピッチャーを指導するコーチは実際の試合でノックアウトされたピッチャーにスパルタ式練習と呼ばれるような更なる闇雲の練習を強いることなるか、若しくは当該ピッチャーに落第の烙印を押すこととなる。プロ野球などでは落第の烙印は年俸の減少か、多くの場合は戦力外通告を受けて失業する。その上でピッチャーの練習相手のキャッチャーには野球でのもう一つの重要な打者としての役割があるが、ピッチャーの相手をしている間はバッティングの練習ができず、その練習時間が不足することとなる。このため、例えプロ野球でも通常キャッチャーの打率は非常に低いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-294312
【特許文献2】特開平2-140073
【特許文献3】特開2007-101294
【特許文献4】特開2011-147500
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
野球のピッチャーが一人で投球練習ができ、しかも自分の投球のパーフォマンスを正確に定量的に把握でき、科学的な練習が必要である。練習でのキャッチャーやアンパイヤーが不要となり大幅な省力化となる。野球はチームプレーであり、チームの他のメンバーにはそれぞれの役割があるが本発明の副次的な大きな効果としては従来必要とした投球相手のキャッチャーは打撃練習に多くの時間を費やすことが可能となりバッティングの向上となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は投球目標位置を示した移動ボールを受け止める装置、移動ボール検知し判定する装置を備えたことを特徴とする野球キャッチャーである。
【0006】
本発明の投球目標位置を示した移動ボールを受け止める装置は、投球目標と受け止める装置(捕球装置)からなる。
【0007】
投球目標とは投球練習するピッチャーが投げたい位置又はキャッチャーが要求する位置を示したものであり、最も簡単な目標は
図2に示したような幕上に示した絵とすることができる。当該絵に
図2のように区分表示することでピッチャーは投げた目標を意識することができる。
図4に示したようにキャッチャーを立体像としたり、
図3のようにキャッチャー絵とすることでピッチャーはより臨場感を意識できる。
【0008】
移動ボールを受け止める装置に用いる材料は超強力特殊ポリエチレン糸等の強い強度の糸で編んだ網や幕、鋼板やアルミ板や複合樹脂等に弾力性のシリコン樹脂などを組み合わせた構造体等を用いることができる。野球のピッチャーが投げる球は最速では180km/時間と高速でしかも至近距離から投球されるので高い負荷がかかる。しかし、超強力特殊ポリエチレン糸等の強い強度の糸で編んだ網を以下に説明する装置の前に配置することでその負荷を避けることは容易である。しかも、該網の編目も野球のボール直径約70mmより小さい20mm~40mm程度とすることでピッチャーは網を意識することなく投球練習できる。特に該網の背後上に例えは
図1のような投球目標位置がある場合、ほとんど網が意識されない。
【0009】
通常ピッチャーは一人で練習するときは自分が投げたい位置に向けて投球する。しかし、実際に試合ではピッチャーはキャッチャーの要求位置に要求された球種(直球、カーブ、シュート、フォークボールなど)を投げることが要求される。このキャッチャーの要求に答えられない場合、実際に試合では成功が難しくなる。本発明では投球目標位置を
図2や
図3の上に光学的に表示(灯で示される)できるようにすることが可能である。しかも、後述する投球のストライク・ボールの判定以外に要求された投球目標位置とのずれが判定されるようにすることができる。
【0010】
この投球目標位置は後述するAI(人工知能)により蓄積された有能なキャッチャーの過去データをベースとして要求できるようにすることができる。
特に、AI が要求する多種で変幻な位置をプロジェクションマッピングなどを用いて受け止める装置(捕球装置)上に表示することで一段と現実の試合に近い投球練習ができる。自分の好きな球を好きな位置に投げているだけでは現実の試合では通用しない。
【0011】
受け止める装置(捕球装置)は、ヒト型をしたロボットや、実用化されているオムロン社の卓球ロボット「フォルフェア」の応用型を用いることが可能であるが、現状では通常ロボットは高価であり、その保守も大変でコストがかかる。練習するピッチャーから見て実際のキャッチャーのように見えればよいのでゴルフ練習場ネットのようなネットや幕上に
図2や
図3のような絵を示すことができる。又は絵が示されていない幕上にプロジェクションマッピングでキャッチャーの絵を映すことができる。プロジェクションマッピングの場合は、キャッチャーやアンパイヤーの動作を含めて映像表示でき、投球要求位置も現実仮想空間となるのでピッチャーはより実経験に近い体験をすることができる。しかも、後述する判定装置や表示・通知装置により結果をその場で知ることが可能となる。
【0012】
本発明の移動ボール検知し判定する装置は、移動ボールを検知する装置、判定装置からなる。
【0013】
移動ボールを検知する装置とは移動体の有無を検知する移動体検知装置であり、例えば特開平2-140073のカメラの自動追尾制御装置,対象物の自動追尾装置,追尾制御を利用した対象物の方向検出装置,ならびに追尾制御を利用したロボット制御装置や、特開2007-101294 のボール計測装置、特開2011-147500の速度測定装置およびプログラム、オムロン社の卓球ロボット「フォルフェア」等で実用化されている装置等を応用して用いることができる。このボールの追跡をより容易にするために、投球するキャッチャーの腕、手首、指などに赤外線などを用いたボール発信装置を付けて、この発信装置と移動ボールを検知する装置、判定装置とを連動させ、データ処理装置によりボールを確実に検知、判定できるようにすることが可能となる。
【0014】
最近ではピッチャーの球種を高性能のカメラとレーダーを搭載した簡易型弾道測定器で判定するラプソード(Rapsodo) という装置が市販されており球速、回転数、有効回転数、有効回転率、ストライクゾーン分析ができるようになっており本装置そのもの、又はその原理を応用したものをそのまま本発明の移動ボールを検知する装置、判定装置とすることができる。しかし、ラプソード(Rapsodo)は球種を判定するがピッチャーが一人で練習することはできない。ましてキャッチャーが要求した球を投球したり、それを判定する装置ではなく、本発明のシステムの一つの部品としてのみ使用できるものである。
即ち、既存の装置はピッチャーが一人で練習したりできるものではなく、ピッチャーのパーフォマンスを総合判定するものでもなく、高性能であるが単なる計測装置である。
【0015】
本発明の移動ボール検知し判定する装置は、移動ボールを検知する装置、判定装置には録画装置、表示・通知装置、データ処理装置(過去データ、経時データ、他者データ)を組み合わせることが可能である。ピッチャーがキャッチャーの要求した位置からのずれ、ストライク・ボールの判定結果をLED表示装置に示したり、音声で知らせる装置を組み合わせることができる。これらのLED表示装置や音声装置は多種のものが市販されている。投球されたボールがピッチャーの手から離れ、移動ボールを受け止める装置に到達するまでの映像を録画として残す録画装置を用いることでピッチャーや自分の投球フォームと結果としてのボールの判定を客観的に見ることが可能となる。データ処理装置(過去データ、経時データ、他者データ)には全ての投球、その結果が時系列的に保存できる、また、過去のデータを蓄積することで特定のチームの特定の強打者がどの球種や投球位置を良く打っているのデータ処理して投球の都度表示することも可能となる。
【0016】
更に、ピッチャーが練習するとき、通常は数10球から100球以上を投げるが投げたボールをその都度取りに行くのでは練習の効率が上がらない。そこで本発明ではピッチャーが投げ移動ボールを受け止める装置に到達したボールをピッチャーに返球する装置をつけることができる。
この返球の方法としては、キャッチャーがロボットであれば通常のヒトのキャッチャーのように返球できるがそれは高価であり保守が大変である。そこで代替の方法としては、
図5に示したような移動ボールを受け止める装置の下に設けた受器から筒状発射装置によりコンプレッサーによる空気圧、バネ式打球装置、弾きバネ等の力でボールをピッチャーの位置に届くように弾く装置が望ましく用いることができる。キャッチャーからピッチャーまでの距離は指公式には18.44mであるが、ピッチャーにボールが飛行して又は転がって届けばよいので必要となる圧力や弾く力は小さい。
【0017】
さらに、本発明では投球目標位置を示した移動ボールを受け止める装置、移動ボール検知し、判定する装置が一体化されたヒト型又はヒト型ではないがヒト型に要求される機能を備えたロボットとすることができる。例えば
図3の外観をしたロボットとすることができる。その場合、該ロボットはキャッチャーミットの位置を変更して投球目標位置を示し、該ロボットは手(アーム)の位置を投球されたボールの到着位置に合わせてピッチャーが投げたボールをキャッチャーミットで受け止めることができる。受け止めたボールを投げて、又は弾く装置でピッチャーに返球できる。該ロボットはストライク・ボールの判定機能や球種判定機能など、上述の機能を備えることができる。該ロボットの場合、ピッチャーとの会話機能を追加することも可能で投球練習の効果が各段に向上でき、また、該ロボットが台車に搭載された形状とすることで投球練習する場合の準備作業も各段に容易となり、設置場所も通常の練習グランドとできる。
【発明の効果】
【0018】
ピッチャーは自分一人で何時でも、科学的な投球練習ができ、しかも自分の投球のボールストライク、キャッチャーが要求した位置への到達する精度、ボールのスピード(球速)や回転数や軌道、想定される対戦相手の強打者に打たれる可能性などのパーフォマンスやパーフォマンスの経時的な変化や向上を正確に定量的に把握できるようになり、科学的な練習が可能となり真に才能あるピッチャーの能力が伸び、闇雲の練習によるピッチャーの肩故障の可能性が減り、またピッチャーコーチや監督等の第三者が該ピッチャーのパーフォマンスを予め定量的に相対的に推定出来るようになり、先発又は救援させる前に知ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】各種装置の位置関係を示し、キャッチャーが立体像である図。
【
図5】空気圧でボールをピッチャーに返球する装置図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を、本発明の可能な装置を多く含めた実施形態の例の一つである
図1で説明する。
投球練習をするピッチャー13は捕球装置2上に示されたキャッチャー像9に向けてボールを投げる。ピッチャーの手首や指、ボールそのものなどに付けた発信装置6からの信号を受けたカメラ自動追尾制御装置3がボールを追尾し、ボールの検知・判定装置4でボールのボールストライク、キャッチャーが要求した位置への到達する精度、ボールのスピード(球速)や回転数や軌道などが判定され、その結果情報は結果の表示・通知通信装置5にてLED表示されたり、音声で通知されたりする。この投球の結果は人工知能(データ処理装置)7にも送信され、データ保存装置(過去データ、現在データ、他人データ)8にデータ保存され、また蓄積データと照合されて人工知能(データ処理装置)7にデータがフィードバックされて打者に打たれる確率などを結果の表示・通知通信装置5に同時表示することも可能である。ピッチャーが投球してからキャッチャー像9に到達するまでのピッチャー13の様子やボールは録画装置10に録画されデータ保存される。ピッチャー13は捕球装置2上に示されたキャッチャー像9に向けて投げたボールは捕球装置2にて停止、捕球されてボールの回収装置11に落下又は収集されて返球装置12に送られ、返球装置12はボールを受取るとその都度、ピッチャー13の方向にピッチャー13に届くように返球する。本発明の各種の高性能の機器を保護するために機器にボールが直接当たらないように保護ネット1を配置する。保護ネット1上にキャッチャー像9を示す場合は保護ネット1と捕球装置2は実質的に一体となる。 捕球装置2に表示されるキャッチャー像9はプロジェクションマッピング装置8で表示することが可能で、その場合、人工知能(データ処理装置)7が判定した通りの画像とすることができる。
【0021】
図1からピッチャー発信装置6とピッチャ-13を除いた部分全体をキャッチャーロボットとしてヒト型又は一見ヒト型でないロボットとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によりピッチャーは科学的な効率的、効果的な練習が可能となり能力が向上する。
【符号の説明】
【0023】
1 保護ネット
2 捕球装置
3 カメラ自動追尾制御装置
4 ボールの検知・判定装置
5 結果の表示・通知通信装置
6 ピッチャー発信装置
7 人工知能(データ処理装置)
8 データ保存装置(過去データ、現在データ、他人データ)
9 キャッチャー像
10 録画装置
11 ボールの回収装置
12 返球装置
13 ピッチャー
14 プロジェクションマッピング装置