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特開2023-7414金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及びビルドプラットフォームからの金属物体の解放を促進するための動作方法
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  • 特開-金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及びビルドプラットフォームからの金属物体の解放を促進するための動作方法 図1
  • 特開-金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及びビルドプラットフォームからの金属物体の解放を促進するための動作方法 図2
  • 特開-金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及びビルドプラットフォームからの金属物体の解放を促進するための動作方法 図3A
  • 特開-金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及びビルドプラットフォームからの金属物体の解放を促進するための動作方法 図3B
  • 特開-金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及びビルドプラットフォームからの金属物体の解放を促進するための動作方法 図4
  • 特開-金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及びビルドプラットフォームからの金属物体の解放を促進するための動作方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007414
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】金属滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及びビルドプラットフォームからの金属物体の解放を促進するための動作方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/30 20210101AFI20230111BHJP
   B22F 12/17 20210101ALI20230111BHJP
   B22F 10/22 20210101ALI20230111BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20230111BHJP
   B22F 3/115 20060101ALI20230111BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230111BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230111BHJP
   B22F 12/90 20210101ALN20230111BHJP
【FI】
B22F12/30
B22F12/17
B22F10/22
B22F12/50
B22F3/115
B33Y30/00
B33Y10/00
B22F12/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085029
(22)【出願日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】17/360,515
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エム.・ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ.・マッコンビル
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ケイ.・ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】チューホン・リョウ
(72)【発明者】
【氏名】シーミット・プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・アール.・リード
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォームに十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成する3D金属物体プリンタ装置および動作させるための方法を提供する。
【解決手段】金属物体の製造中に金属箔190をホールドダウンプレートに固定するために、真空システム及びホールドダウンプレートを備える。金属箔に接着する物体を形成して、物体の基部層を形成するために、装置によって溶融金属滴が金属箔に向かって吐出される。物体の製造が完了した後に、真空システムを停止させると、物体及び箔が損傷を受けることなく装置から取り外され、基部層の一部ではない箔が物体から切り取られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属滴吐出装置であって、
容器を有する吐出装置ヘッドであって、前記容器は、前記容器内に、溶融金属を保持するように構成されている収容部を有する、吐出装置ヘッドと、
平面部材と、
前記吐出装置ヘッドから吐出された前記溶融金属滴を受容するために前記吐出装置ヘッドと前記平面部材との間に位置付けられた金属箔と、を備える、金属滴吐出装置。
【請求項2】
前記金属箔と前記平面部材との間に介在する熱伝導材料のプレートを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記熱伝導材料のプレートが、複数の孔を含み、前記装置が、
前記金属箔を前記熱伝導材料のプレートに対して保持するために、前記熱伝導材料のプレートの前記複数の孔に動作可能に接続された真空源を更に備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記吐出装置ヘッド及び前記真空源に動作可能に接続されたコントローラを更に備え、前記コントローラが、
前記金属箔を前記熱伝導材料のプレートに対して保持するように、かつ前記熱伝導材料のプレートから前記金属箔を解放するように、前記真空源を選択的に動作させることと、
前記金属箔を前記熱伝導材料のプレートに対して保持するように前記真空源が動作されている間、前記収容部から溶融金属の液滴を吐出するように前記吐出装置ヘッドを動作させることと、を行うように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記熱伝導材料のプレートを加熱するように構成されたヒータを更に備え、
前記コントローラが、
前記熱伝導材料のプレートを約400℃~約600℃の範囲に維持するように前記ヒータを動作させるように更に構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記熱伝導材料のプレートが、黄銅から本質的になる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記熱伝導材料の黄銅プレートの表面が、ニッケルめっきを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記金属箔が、アルミニウムから本質的になる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記アルミニウム金属箔が、約0.5mil~約3.0milの範囲の厚さを有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ヒータが、電気抵抗ヒータである、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
金属滴吐出装置を動作させる方法であって、
溶融金属の液滴を吐出するように構成された吐出装置ヘッドと、前記吐出装置ヘッドが前記溶融金属滴を吐出する平面部材との間に、金属箔を位置付けることと、
溶融金属滴を前記金属箔上に吐出して、前記金属箔に接着する金属物体を形成するように、前記吐出装置ヘッドを動作させることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記金属箔と前記平面部材との間に熱伝導材料のプレートを介在させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属箔を前記熱伝導材料のプレートに対して保持するように、前記熱伝導材料のプレートの複数の孔に動作可能に接続された真空源を動作させることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コントローラが、溶融金属滴を前記金属箔に向かって吐出するように前記吐出装置ヘッドを動作させている間、前記金属箔を前記熱伝導材料のプレートに対して保持するように、前記コントローラによって前記真空源を動作させることと、
前記コントローラによって真空を停止させて、前記熱伝導材料のプレートから前記金属箔を解放することと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱伝導材料のプレートを約400℃~約600℃の範囲に維持するように、前記熱伝導材料のプレートを加熱するように構成されたヒータを前記コントローラによって動作させることを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記熱伝導材料のプレートが、黄銅から本質的になる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記熱伝導材料の黄銅プレートの表面が、ニッケルめっきを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記金属箔が、アルミニウムから本質的になる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アルミニウム金属箔が、約0.5mil~約3.0milの範囲の厚さを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒータの前記動作が、
電気抵抗ヒータを動作させることを更に含む、請求項19に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融金属滴を吐出して物体を形成する三次元(three-dimensional、3D)物体プリンタを対象とし、より具体的には、かかるプリンタのビルドプラットフォーム上での金属物体の基部層の形成を対象とする。
【背景技術】
【0002】
積層造形(additive manufacturing)としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、積層造形デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する積層プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、フォトポリマー又はエラストマーなどの紫外線硬化材料を吐出する吐出装置を使用するが、他の技術は、エラストマーを溶融し、熱可塑性材料を押出して物体層にする。プリンタは、典型的には、プラスチック又は熱可塑性材料の連続層を形成して、様々な形状及び構造を有する三次元印刷物体を構築するように、1つ以上の吐出装置又は押出機を動作させる。三次元印刷物体の各層が形成された後、可塑性材料は、紫外線硬化され、固まり、その層を三次元印刷物体の下地層に接着する。この積層造形法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
最近、1つ以上の吐出装置から、溶融金属の液滴を吐出して3D物体を形成するいくつかの3D物体プリンタが開発されている。これらのプリンタは、ワイヤのロール又はペレットなどの固体金属源を有し、この固体金属源は、固体金属が溶融されるプリンタ内の容器の加熱された収容部に固体金属を供給し、溶融金属が収容部を充填する。収容部は、周囲に電気ワイヤが巻き付けられてコイルを形成する非導電性材料で作製されている。電流がコイルを通過することにより、電磁場を生成し、その電磁場により、収容部のノズルにおいて溶融金属のメニスカスが収容部内の溶融金属から分離し、ノズルから推進する。ビルドプラットフォームは、吐出装置のノズルから吐出された溶融金属滴を受容するように位置付けられ、このプラットフォームは、コントローラ動作アクチュエータによって、プラットフォームの平面に平行なX-Y平面内を移動する。これらの吐出された金属滴は、プラットフォーム上に物体の金属層を形成し、別のアクチュエータは、コントローラによって動作されて、吐出装置とプラットフォームとの間の距離を変化させて、吐出装置と、形成される金属物体の直近に印刷された層との間の距離を一定に維持する。このタイプの金属滴吐出プリンタは、磁気流体力学(MHD)プリンタとしても知られている。
【0004】
MHDプリンタで行われる印刷プロセス中に、物体の第1の層は、ビルドプラットフォームの表面に確実に接着しなければならない。この接着がなければ、物体のサイズが増加するにつれて、物体の基部が安定しなくなる。ビルドプラットフォームの高い表面温度は、ビルドプラットフォームの表面を非常に高く酸化させ得る。この酸化層は、物体基部層のビルドプラットフォームへの接着に干渉する場合があり、印刷中に、物体がビルドプラットフォームの表面から尚早に離れ得る。加えて、酸化層は、物体の基部層を一様に形成させ、基部層が、安定した物体層の印刷に必要とされるよりも高い多孔性を有する場合がある。
【0005】
しかしながら、ビルドプラットフォーム表面の酸化は、物体のビルドプラットフォームへの適切な接着に影響を及ぼす唯一の問題ではない。比較的きれいなビルドプラットフォーム表面は、物体の基部層のビルドプラットフォーム表面への接着が過度になる場合がある。物体の基部が非常に安定しているので、物体の製造が良好に進行するが、プロセスの終了時に物体の取り外しが非常に困難になる場合がある。場合によっては、物体の取り外しが物体、ビルドプラットフォーム、又は両方に損傷を生じさせる程度にまで、ビルドプラットフォームへの物体の取り付けが固定される。その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、基部層をビルドプラットフォームに十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成することができることが有益である。
【発明の概要】
【0006】
3D金属物体プリンタを動作させる新しい方法は、その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォームに十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成する。本方法は、溶融金属の液滴を吐出するように構成された吐出装置ヘッドと、吐出装置ヘッドが溶融金属滴を吐出する平面部材との間に、金属箔を位置付けることと、溶融金属滴を金属箔上に吐出して、金属箔に接着する金属物体を形成するように、吐出装置ヘッドを動作させることと、を含む。
【0007】
新しい3D金属物体プリンタは、その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォームに十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成する。新しい3D金属物体プリンタは、容器を有する吐出装置ヘッドであって、容器は、容器内に、溶融金属を保持するように構成されている収容部を有する、吐出装置ヘッドと、平面部材と、吐出装置ヘッドから吐出された溶融金属滴を受容するために吐出装置ヘッドと平面部材との間に位置付けられた金属箔と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォームに十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成する3D金属物体プリンタを動作させるための方法、及び方法を実施する3D金属物体プリンタの前述の態様及び他の特徴を、添付図面と併せて、以下の記述において説明する。
【0009】
図1】その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォーム上の金属箔層に十分に接着させて、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成する、新しい3D金属物体プリンタを表す。
【0010】
図2図1のビルドプラットフォーム上に形成されるべき金属物体の基部層を提供するために使用される箔保持真空システムの概略図である。
【0011】
図3A】ビルドプラットフォームから箔が取り外された後、図2に示される箔上に形成された物体を表す。
図3B】物体の箔からの取り外しを表す。
【0012】
図4】その取り外しが物体、プラットフォーム、又は両方に損傷をもたらす程度にまで物体をビルドプラットフォームに確実に取り付けることなく、金属物体の基部層をビルドプラットフォーム上の金属箔に十分に固定して、その層を一様に、かつ適切な有孔性と共に形成するプロセスのフロー図である。
【0013】
図5】箔層、及び金属物体の基部層を固定するための真空システムを含まない、先行技術の3D金属プリンタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示された3D金属物体プリンタ及びその動作のための環境、並びにプリンタ及びその動作の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は、同様の要素を表す。
【0015】
図5は、溶融金属の液滴を吐出してビルドプラットフォーム上に金属物体を直接形成するための、既知の3D金属物体プリンタ100の一実施形態を示す。図5のプリンタでは、溶融バルク金属の液滴は、単一のノズル108を有する取り外し可能な容器104の収容部から吐出され、ノズルからの液滴が、ビルドプラットフォーム112に直接適用されたスワスによって物体の基部層を形成する。本文書で使用されるとき、「取り外し可能な容器」という用語は、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味し、コンテナは全体として、3D金属物体プリンタにおける設置及び取り外し可能に構成されている。本文書で使用されるとき、「容器」という用語は、3D物体金属プリンタに対して設置及び取り外しを行うように構成され得る、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味する。本文書で使用されるとき、「バルク金属」という用語は、一般に利用可能な標準規格のワイヤ、マクロサイズの比率のペレット、及び金属粉末などの、集合形態で入手可能な導電性金属を意味する。
【0016】
図5を更に参照すると、金属ワイヤ120などのバルク金属源116は、吐出装置ヘッド140内の上部ハウジング122を通って延在するワイヤガイド124に送給され、取り外し可能な容器104の収容部内で溶融されて、吐出装置ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110を通してノズル108から吐出される溶融金属を提供する。本文書で使用されるとき、「ノズル」という用語は、容器内の収容部から溶融金属滴を排出するように構成されている、溶融金属を含む容器の収容部内の体積に流体的に接続されたオリフィスを意味する。本文書で使用されるとき、「吐出装置ヘッド」という用語は、金属物体の製造のための溶融金属滴の溶融、吐出、及び吐出の調整を行う3D金属物体プリンタのハウジング及び構成要素を意味する。溶融金属レベルセンサ184は、レーザー及び反射センサを含む。溶融金属レベルからのレーザーの反射は、反射センサによって検出され、溶融金属レベルまでの距離を示す信号を生成する。コントローラは、この信号を受信し、取り外し可能な容器の収容部内の適切なレベル118に維持することができるように、取り外し可能な容器104内の溶融金属の体積のレベルを求める。取り外し可能な容器104がヒータ160内へと摺動し、ヒータの内径が取り外し可能な容器に接触し、取り外し可能な容器の収容部内の固体金属を、固体金属を溶融させるのに十分な温度まで加熱することが可能になる。本文書で使用されるとき、「固体金属」という用語は、元素の周期表で定義されている金属、又は液体若しくは気体ではなく固体の形態でこれらの金属によって形成される合金を意味する。ヒータは、取り外し可能な容器から分離されて、ヒータと取り外し可能な容器104との間に体積を形成する。不活性ガス供給部128は、ガス供給管132を通して吐出装置ヘッドにアルゴンなどの不活性ガスの圧力調整された供給源を提供する。ガスは、ヒータと取り外し可能な容器との間の体積を通って流れ、ノズル108の周りの吐出装置ヘッド及びベースプレート114内のオリフィス110から出ていく。ノズルに近接するこの不活性ガスの流れは、溶融金属の吐出された液滴をベースプレート114の周囲空気から絶縁して、吐出された液滴の飛行中に金属酸化物が形成されるのを防止する。ノズルと、吐出された金属滴が着地する表面との間の隙間は、不活性ガス流内の液滴が着地する前に、ノズルの周りから出るこの不活性ガスが放散しない程度に意図的に十分に小さく保たれる。
【0017】
吐出装置ヘッド140は、プラットフォーム112に対する吐出装置ヘッドの移動に対応するように、Z軸軌道内に移動可能に装着される。1つ以上のアクチュエータ144は、吐出装置ヘッドをZ軸に沿って移動させるために吐出装置ヘッド140に動作可能に接続され、プラットフォームを吐出装置ヘッド140の下のX-Y平面内で移動させるために、プラットフォーム112に動作可能に接続される。アクチュエータ144は、吐出装置ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の適切な距離を維持するように、コントローラ148によって動作される。
【0018】
溶融金属の液滴がプラットフォーム112に向かって吐出されるときに、X-Y平面内でプラットフォーム112を移動させることにより、形成される物体上に溶融金属滴のスワスが形成される。コントローラ148はまた、アクチュエータ144を動作させ、吐出装置ヘッド140と、基材上に最も近時に形成された層との間の距離を調節して、物体上の他の構造の形成を容易にする。溶融金属3D物体プリンタ100は、垂直配向で動作されるものとして図5に表されているが、他の代替の配向を採用することができる。また、図5に示される実施形態は、X-Y平面内を移動するプラットフォームを有し、吐出装置ヘッドがZ軸に沿って移動するが、他の配置も可能である。例えば、アクチュエータ144は、吐出装置ヘッド140をX-Y平面内で、Z軸に沿って移動させるように構成されることも、又はX-Y平面及びZ軸の両方でプラットフォーム112を移動させるように構成されることもできる。
【0019】
コントローラ148は、スイッチ152を動作させる。1つのスイッチ152は、供給源156からヒータ160に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得、別のスイッチ152は、ノズル108から液滴を吐出する電場を生成するために別の電源156からコイル164に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得る。ヒータ160は高温で大量の熱を生成するため、コイル164は、吐出装置ヘッド140の1つ(円形)又は2つ以上の壁(直線形状)によって形成されたチャンバ168内に位置付けられる。本文書で使用されるとき、「チャンバ」という用語は、3D金属物体プリンタのヒータ、コイル、及び取り外し可能な容器が位置する、金属滴吐出プリンタ内の1つ以上の壁内に収容された体積を意味する。取り外し可能な容器104及びヒータ160は、かかるチャンバ内に位置している。チャンバは、ポンプ176を介して流体源172に流体的に接続され、また熱交換器180に流体的に接続される。本文書で使用されるとき、「流体源」という用語は、熱を吸収するのに有用な特性を有する液体のコンテナを指す。熱交換器180は、流体源172への戻りを介して接続される。供給源172からの流体は、チャンバを通って流れて、コイル164から熱を吸収し、流体は、交換器180を通して吸収された熱を搬送し、熱は、既知の方法によって除去される。冷却された流体は、適切な動作範囲内のコイルの温度を維持する際に更に使用するために、流体源172に戻される。
【0020】
3D金属物体プリンタ100のコントローラ148は、金属物体製造のためにプリンタを制御するために、外部供給源からのデータを必要とする。一般に、形成されるべき物体の三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラ148に動作可能に接続されたメモリ内に記憶される。コントローラは、サーバなどを通してデジタルデータモデルに、デジタルデータモデルが記憶されたリモートデータベースに、又はデジタルデータモデルが記憶されているコンピュータ可読媒体に、選択的にアクセスすることができる。この三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラと共に実装されるスライサによって処理され、既知の方法でコントローラ148が実行するマシン対応命令を生成して、プリンタ100の構成要素を動作させ、そのモデルに対応する金属物体を形成する。マシン対応命令の生成は、デバイスのCADモデルがSTLデータモデル、多角形メッシュ、又は他の中間表現に変換されるときなどの、中間モデルの生成を含むことができ、次いで、この中間モデルを処理して、プリンタによって物体を製造するためのGコードなどのマシン命令を生成することができる。本文書で使用されるとき、「マシン対応命令」という用語は、3D金属物体付加製造システムの構成要素を動作させて、プラットフォーム112上に金属物体を形成するために、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はコントローラによって実行されるコンピュータ言語コマンドを意味する。コントローラ148は、マシン対応命令を実行して、ノズル108からの溶融金属滴の吐出、プラットフォーム112の位置付け、並びにオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の距離の維持を制御する。
【0021】
同様の構成要素について同様の参照番号を使用し、物体をプラットフォーム112に過度に堅固に取り付けることなく、形成中に物体を安定させるために使用されない構成要素の一部を除去する、新しい3D金属物体プリンタ100’が図1に示されている。プリンタ100’は、図2を参照してより詳細に説明される金属箔のシート190及び真空システム200、並びにコントローラに接続された非一時的メモリに記憶されたプログラム命令と共に構成されたコントローラ148’を含み、コントローラ148’は、プログラム命令を実行すると、下で説明するように真空システムを動作させて、物体をビルドプラットフォーム112に過度に強く取り付けることなく、システムによって生成される金属物体のための安定した基礎を形成する。
【0022】
真空システム200は、図2により詳細に示されている。真空システム200は、金属箔190をホールドダウンプレート208に固定するために、熱的に隔離されたリザーバ220及びホールドダウンプレート208内の孔216に流体的に接続される真空装置(vacuum)204を含む。ヒータ212は、ホールドダウンプレート208及び箔190を金属物体の形成に寄与する温度に維持するように、ホールドダウンプレート208とビルドプラットフォーム112との間に配置される。コントローラ148’は、ホールドダウンプレートの温度を約400℃~約600℃の範囲に維持するようにヒータを選択的に動作させるように、ヒータ212に動作可能に接続される。いくつかの実施形態では、ヒータは、電気抵抗ヒータであるが、ヒータの他の実装形態を使用することができる。ホールドダウンプレート208は、黄銅などの高熱伝導性物質で作製される。本文書で使用されるとき、「黄銅」という用語は、銅及び亜鉛から本質的になる金属合金を意味する。いくつかの実施形態では、黄銅ホールドダウンプレートの表面は、ニッケルめっきされる。ホールドダウンプレート208内の孔216及び真空リザーバ220を接続するリザーバ220及び導管は、プリンタ100’の環境における温度に耐えるように、耐高温性材料で作製される。金属箔は、金属物体を形成するために吐出装置ヘッド140によって吐出される金属と同じ金属で作製される。吐出装置ヘッドが溶融アルミニウム液滴を吐出してアルミニウム物体を形成する実施形態では、アルミニウム箔は、約0.5mil~約3milの範囲の厚さを有するが、それらがシートに対する真空引きに干渉しないのであれば、他の厚さを使用することができる。本文書で使用されるとき、「金属箔」という用語は、可撓性金属の平面部材を意味する。真空装置は、約10インチ~約30インチHgの真空を引くように構成されている。
【0023】
図3Aは、真空システム200によって適所に保持された金属箔シート190上に形成された金属物体304を示す。物体304及び箔190は、真空システム200を停止させた後にプリンタ100’から取り外されている。物体304の直下の金属箔シートの一部分は、物体の基部層になっている。図3Bに示されるように、ナイフ又は他の分離ツールを使用して、物体基部層の部品を形成しなかった箔190の一部分が物体から除去される。したがって、物体304は、物体304、ホールドダウンプレート208、抵抗ヒータ212、又はビルドプラットフォーム112に損傷を与えることなく、プリンタ100’から取り外される。
【0024】
コントローラ148’は、プログラムされた命令を実行する1つ以上の汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装され得る。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に説明し、並びに以下に説明される操作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供されてもよいか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されてもよい。回路の各々は、別個のプロセッサで実装され得るか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装され得る。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。金属物体の形成中、製造される構造の画像データが、プラットフォーム112上に物体を形成するようにプリンタ100’の構成要素を動作させる信号を処理及び生成するために、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかから、コントローラ148’のプロセッサ(単数又は複数)に送信される。
【0025】
真空システム200によって保持された金属箔シートの表面に金属物体を形成するように3D金属物体プリンタ100’を動作させるためのプロセスが図4に示されている。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを動作させるために、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を操作してタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ148’は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素と共に実装され得、これらは各々、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0026】
図4は、プリンタ100’による金属物体の形成中に金属箔190のシートを保持するように真空システム200を動作させるプロセス400のためのフロー図である。コントローラ148’は、コントローラに動作可能に接続された非一時的メモリに記憶されたプログラム命令を実行して、プリンタによる金属物体の形成中に、金属箔のシートを保持するように構成されている。プリンタを初期化した後(ブロック404)、金属箔のシートをホールドダウンプレート上に配置し、真空システムを作動させる(ブロック408)。次いで、既知の様式でプリンタを動作させて、金属物体を形成する(ブロック412)。物体の製造が完了した時点で、真空システムを停止させて、金属箔シートと一緒に物体をプリンタから取り外す(ブロック416)。次いで、くっついていない金属箔を物体から切り取る(ブロック420)。
【0027】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5