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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074160
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20230522BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20230522BHJP
   H01S 3/109 20060101ALI20230522BHJP
   H01S 3/11 20230101ALI20230522BHJP
   G02F 1/37 20060101ALI20230522BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/082
H01S3/109
H01S3/11
G02F1/37
H01S3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186966
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅夫
【テーマコード(参考)】
2K102
4E168
5F172
【Fターム(参考)】
2K102AA07
2K102AA08
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102BD10
2K102DA01
2K102DC07
2K102DD06
2K102EB20
2K102EB24
2K102EB30
4E168AA01
4E168CA06
4E168CA07
4E168CA14
4E168CB04
4E168CB07
4E168CB24
4E168DA04
4E168DA06
4E168DA24
4E168DA32
4E168DA43
4E168EA11
4E168EA15
4E168EA24
4E168FC01
4E168FC07
4E168JA17
4E168JA18
4E168JA27
4E168KA15
4E168KA16
4E168KA17
5F172AE03
5F172AE08
5F172AE09
5F172AF02
5F172AL01
5F172EE12
5F172NQ62
5F172NS03
5F172NS04
5F172WW18
5F172ZZ01
(57)【要約】
【課題】放熱効率を維持しつつ、照射方向における設置スペースのコンパクト化を実現する。
【解決手段】レーザ加工装置Lは、導光光学系3と、導光光学系3により導光された励起光に基づいてレーザ光を生成する固体レーザ結晶41と、固体レーザ結晶41により生成されたレーザ光を偏向する第1ミラー51aを駆動する第1スキャナ51と、第1スキャナ51を制御する第1制御基板53と、出射窓6が形成された筐体10とを備える。筐体10は、第1ミラー51aを収容するミラー収容部H11と、出射窓6から照射エリアR1に向かう照射方向に沿って広がる仕切面15gを有する第1ベースプレート15により区画され、該仕切面15gに対しミラー収容部H11とは反対側に配置されて固体レーザ結晶41を収容する結晶収容部H12と、ミラー収容部H11に対して結晶収容部H12とは反対側に配置され、第1制御基板53を収容する基板収容部H13とを有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射エリアに向けてレーザ光を照射することで、ワークに対して加工を行うレーザ加工装置であって、
励起光を導光する導光光学系と、
前記導光光学系によって導光された励起光に基づいてレーザ光を生成する固体レーザ結晶と、
前記固体レーザ結晶により生成された前記レーザ光が前記照射エリアに向かって照射されるように、該レーザ光を偏向する第1ミラーを駆動する第1スキャナと、
前記第1スキャナを制御する第1制御基板と、
前記導光光学系と、前記固体レーザ結晶と、前記第1スキャナと、前記第1制御基板と、を収容し、前記第1ミラーによって偏向されたレーザ光を透過する出射窓が形成された筐体と、を備え、
前記筐体は、
前記第1ミラーを収容するミラー収容部と、
前記出射窓から前記照射エリアに向かう照射方向に沿って広がる仕切面を有する支持プレートによって区画され、該仕切面に対して前記ミラー収容部とは反対側に配置されて前記固体レーザ結晶を収容する結晶収容部と、
前記ミラー収容部に対して前記結晶収容部とは反対側に配置され、前記第1制御基板を収容する基板収容部と、を有する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたレーザ加工装置において、
前記第1ミラーは、前記出射窓を挟んで前記照射エリアと向かい合うように配置される
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたレーザ加工装置において、
前記固体レーザ結晶によって生成されたレーザ光を反射することで、前記第1ミラーによる偏向方向である第1方向と前記照射方向との双方に直交する第2方向にレーザ光を偏向する第2ミラーを駆動する第2スキャナと、
前記第2ミラーによって反射されたレーザ光が入射し、該レーザ光を前記第1ミラーに向けて反射する中間ミラーと、を備え、
前記第1スキャナは、第1回転軸周りに前記第1ミラーを回転し、
前記第2スキャナは、前記第1回転軸に直交する第2回転軸まわりに前記第2ミラーを回転し、
前記第1回転軸および前記第2回転軸は、双方とも前記照射方向と異なる方向に延びる
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたレーザ加工装置において、
前記第1スキャナは、第1回転軸まわりに前記第1ミラーを回転し、
前記第2スキャナは、前記第1回転軸に直交する第2回転軸まわりに前記第2ミラーを回転し、
前記第1回転軸および前記第2回転軸は、双方とも前記照射方向に直交する方向に延びる
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載されたレーザ加工装置において、
前記第1ミラーによって偏向されたレーザ光を透過し、該レーザ光を前記照射方向に直交する外方向に拡散する光学素子を備える
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載されたレーザ加工装置において、
前記導光光学系によって導光される励起光を生成する励起光源を備え、
前記励起光源は、前記基板収容部に収容される
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたレーザ加工装置において、
前記導光光学系は、前記励起光源および前記固体レーザ結晶を光学的に結合するファイバケーブルによって構成され、
前記筐体には、前記ファイバケーブルの最小曲げ半径以上の曲げ半径で該ファイバケーブルを巻回するように構成されたファイバガイドが収容される
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載されたレーザ加工装置において、
前記出射窓は、前記レーザ光を透過するカバーガラスによって構成され、
前記照射エリアは、矩形状の領域として構成され、
前記カバーガラスは、前記照射エリアの形状に対応した矩形状に形成される
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載されたレーザ加工装置において、
前記固体レーザ結晶によって生成された前記レーザ光を受光し、該レーザ光を短波長側に波長変換する非線形光学結晶を備え、
前記非線形光学結晶は、前記結晶収容部に収容される
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項9に記載されたレーザ加工装置において、
前記結晶収容部は、密閉状態で前記非線形光学結晶を収容する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項10に記載されたレーザ加工装置において、
前記結晶収容部に収容され、基本波をパルス発振させるQスイッチを備え、
前記結晶収容部の内部空間は、前記Qスイッチを収容する空間と、前記非線形光学結晶を収容する空間とに分離される
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ加工装置の一例が開示されている。具体的に、この特許文献1に係るレーザ加工装置は、レーザ光を生成して出力するレーザ光出力部と、レーザ光出力部から出力されたレーザ光を偏向するレーザ光走査部と、該レーザ光走査部によって偏向されたレーザ光を透過する出射窓部と、レーザ光出力部およびレーザ光走査部を収容しかつ出射窓部が形成された筐体と、を備えている。
【0003】
前記特許文献1によれば、筐体の高さ方向に略一致する方向であるレーザ光の照射方向に沿って、レーザ光出力部を構成する一部の部材(波長変換部)、レーザ光走査部および出射窓部の順番で配置されるようになっている。
【0004】
さらに、前記特許文献1に係るレーザ光走査部は、該レーザ光走査部を制御するための回路基板を有している。この回路基板は、前記波長変換部のハウジングと照射方向に隣接するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-104047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、製造ライン等にレーザ加工装置を設置するためには、少なくとも、筐体のサイズよりも広めの設置スペースが求められる。具体的に、前述した照射方向における設置スペースの寸法としては、ワークと出射窓部との距離に加えて、出射窓部から筐体の上端部までの距離を考慮した長さが求められる。
【0007】
ところが、前記特許文献1に開示されているように、波長変換部、レーザ光走査部および出射窓部を照射方向に並べるようにレイアウトした場合、それらを収容する筐体の寸法は、その照射方向に拡大し得る。このことは、照射方向における設置スペースの肥大化を招くため不都合である。
【0008】
そこで、前記特許文献1に開示されているように、回路基板とハウジングとを上下に隣接させることで、高さ方向における筐体のコンパクト化を図ることも考えられる。しかしながら、そのような構成は、ハウジングおよび回路基板からの発熱を考慮すると、放熱効率という観点からは不都合なものとなる。
【0009】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、放熱効率を維持しつつ、照射方向における設置スペースのコンパクト化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様は、照射エリアに向けてレーザ光を照射することで、ワークに対して加工を行うレーザ加工装置に係る。このレーザ加工装置は、励起光を導光する導光光学系と、前記導光光学系によって導光された励起光に基づいてレーザ光を生成する固体レーザ結晶と、前記固体レーザ結晶により生成された前記レーザ光が前記照射エリアに向かって照射されるように、該レーザ光を偏向する第1ミラーを駆動する第1スキャナと、前記第1スキャナを制御する第1制御基板と、前記導光光学系と、前記固体レーザ結晶と、前記第1スキャナと、前記第1制御基板と、を収容し、前記第1ミラーによって偏向されたレーザ光を透過する出射窓が形成された筐体と、を備える。
【0011】
そして、本開示の第1の態様によれば、前記筐体は、前記第1ミラーを収容するミラー収容部と、前記出射窓から前記照射エリアに向かう照射方向に沿って広がる仕切面を有する支持プレートによって区画され、該仕切面に対して前記ミラー収容部とは反対側に配置されて前記固体レーザ結晶を収容する結晶収容部と、前記ミラー収容部に対して前記結晶収容部とは反対側に配置され、前記第1制御基板を収容する基板収容部と、を有する。
【0012】
前記第1の態様によると、仕切面の一側にはミラー収容部が配置される一方、その反対側には結晶収容部が配置されることになる。仕切面が照射方向に沿って広がっていることに鑑みると、ミラー収容部と結晶収容部は、照射方向に略直交する方向(例えば水平方向)に沿って並ぶことになる。
【0013】
さらに、ミラー収容部および結晶収容部に対する基板収容部の相対位置を考慮すると、筐体内には、照射方向に略直交する方向に沿って、結晶収容部、ミラー収容部および基板収容部の順番で配置されることになる。このように、3種の収容部を照射方向に略直交する方向に並べることで、照射方向において筐体をコンパクトに構成することが可能となる。これにより、筐体の設置スペースのコンパクト化を実現することができる。
【0014】
また、3つの収容部のうち、放熱が懸念される収容部である結晶収容部と基板収容部の間には、ミラー収容部が配置されるようになっている。結晶収容部および基板収容部を相互に離間させたレイアウトは、これらを隣接させたレイアウトと比較して、放熱効率の維持に資する。
【0015】
このように、前記第1の態様によると、放熱効率を維持しつつ、照射方向における設置スペースのコンパクト化を実現することができる。
【0016】
また、本開示の第2の態様によれば、前記第1ミラーは、前記出射窓を挟んで前記照射エリアと向かい合うように配置される、としてもよい。
【0017】
前記第2の態様によると、第1ミラーと出射窓との間に大型ミラー等を設けることなく、第1ミラーによって反射されたレーザ光を出射窓まで直に導くことができるようになる。これにより、筐体内の部品点数を抑制し、筐体の寸法、ひいてはその設置スペースのコンパクト化を実現する上で有利になる。
【0018】
また、本開示の第3の態様によれば、前記レーザ加工装置は、前記固体レーザ結晶によって生成されたレーザ光を反射することで、前記第1ミラーによる偏向方向である第1方向と前記照射方向との双方に直交する第2方向にレーザ光を偏向する第2ミラーを駆動する第2スキャナと、前記第2ミラーによって反射されたレーザ光が入射し、該レーザ光を前記第1ミラーに向けて反射する中間ミラーと、を備え、前記第1スキャナは、第1回転軸周りに前記第1ミラーを回転し、前記第2スキャナは、前記第1回転軸に直交する第2回転軸まわりに前記第2ミラーを回転し、前記第1回転軸および前記第2回転軸は、双方とも前記照射方向と異なる方向に延びる、としてもよい。
【0019】
一般に、2軸式のガルバノスキャナ等、2つのスキャナによってレーザ光を偏向する場合、2つのスキャナのうちの一方は、照射方向に沿って延びる回転軸まわりにミラーを回転することになる。しかしながら、ミラーを駆動するモータ等のレイアウトを考慮すると、そのような構成は、ミラーの回転軸方向、すなわち照射方向における筐体の肥大化を招くため、前述したような設置スペースのコンパクト化を図る上で不都合となる。
【0020】
対して、前記第3の態様によると、第1ミラーと第2ミラーとの間に中間ミラーが配置されることになる。中間ミラーが配置されることで、第1および第2ミラーのレイアウト(特に、各ミラーの回転軸のレイアウト)の自由度を高めることができる。これにより、筐体の小型化、ひいてはその設置スペースのコンパクト化を実現する上で有利になる。
【0021】
また、本開示の第4の態様によれば、前記第1スキャナは、第1回転軸まわりに前記第1ミラーを回転し、前記第2スキャナは、前記第1回転軸に直交する第2回転軸まわりに前記第2ミラーを回転し、前記第1回転軸および前記第2回転軸は、双方とも前記照射方向に直交する方向に延びる、としてもよい。
【0022】
前記第4の態様によると、第1回転軸および第2回転軸を双方とも照射方向に直交させることで、照射方向における筐体の小型化、ひいては、その設置スペースのコンパクト化を実現する上で有利になる。
【0023】
また、本開示の第5の態様によれば、前記レーザ加工装置は、前記第1ミラーによって偏向されたレーザ光を透過し、該レーザ光を前記照射方向に直交する外方向に拡散する光学素子を備える、としてもよい。
【0024】
前記第5の態様によると、レーザ光を拡散可能な光学素子を設けることで、第1ミラーと照射エリアとを照射方向に近接させつつも、その照射エリアを可能な限り広く設定することが可能になる。これにより、照射エリアを縮小させることなく、設置スペースのコンパクト化を実現することができる。
【0025】
また、本開示の第6の態様によれば、前記レーザ加工装置は、前記導光光学系によって導光される励起光を生成する励起光源を備え、前記励起光源は、前記基板収容部に収容される、としてもよい。
【0026】
前記第6の態様によると、基板収容部に励起光源を収容することで、結晶収容部と基板収容部との間にミラー収容部が介在する分、励起光源を結晶収容部から離間させることができる。この構成は、放熱性能の維持に資する。
【0027】
また、本開示の第7の態様によれば、前記導光光学系は、前記励起光源および前記固体レーザ結晶を光学的に結合するファイバケーブルによって構成され、前記筐体には、前記ファイバケーブルの最小曲げ半径以上の曲げ半径で該ファイバケーブルを巻回するように構成されたファイバガイドが収容される、としてもよい。
【0028】
一般的なファイバケーブルには、最小曲げ半径が設定されている。そのため、励起光源と固体レーザ結晶とをファイバケーブルによって接続すると、ファイバケーブルの折り曲げが規制された結果、固体レーザ結晶に対する励起光源の相対位置に制限が加わる可能性がある。このことは、固体レーザ結晶および励起光源を筐体内に収容することと、筐体のコンパクト化と、の両立を果たす上で不都合となり得る。
【0029】
対して、前記第7の態様によると、ファイバケーブルの最小曲げ半径に応じて構成されたファイバガイドを筐体内に収容することで、ファイバケーブルの長さ調整をより柔軟に行うことができるようになる。これにより、固体レーザ結晶と励起光源とをファイバケーブルで接続しながらもコンパクトにレイアウトし、固体レーザ結晶および励起光源を筐体内に収容することと、筐体のコンパクト化と、の両立を果たす上で有利になる。
【0030】
また、本開示の第8の態様によれば、前記出射窓は、前記レーザ光を透過するカバーガラスによって構成され、前記照射エリアは、矩形状の領域として構成され、前記カバーガラスは、前記照射エリアの形状に対応した矩形状に形成される、としてもよい。
【0031】
前記第8の態様によると、レーザ光が透過するカバーガラスは、一般的に知られた円形状ではなく、照射エリアの形状に対応してなる矩形状に形成される。円形状に形成される場合と比較して、カバーガラスをよりコンパクトに形成することが可能になる。このことは、筐体、ひいてはその設置スペースのコンパクト化を図る上で有効である。
【0032】
また、本開示の第9の態様によれば、前記レーザ加工装置は、前記固体レーザ結晶によって生成された前記レーザ光を受光し、該レーザ光を短波長側に波長変換する非線形光学結晶を備え、前記非線形光学結晶は、前記結晶収容部に収容される、としてもよい。
【0033】
前記第9の態様によると、結晶収容部に非線形光学結晶を収容することで、結晶収容部と基板収容部との間にミラー収容部が介在する分、非線形光学結晶を基板収容部から離間させることができる。この構成は、放熱性能の維持に資する。
【0034】
また、本開示の第10の態様によれば、前記結晶収容部は、密閉状態で前記非線形光学結晶を収容する、としてもよい。
【0035】
また、本開示の第11の態様によれば、前記レーザ加工装置は、前記結晶収容部に収容され、基本波をパルス発振させるQスイッチを備え、前記結晶収容部の内部空間は、前記Qスイッチを収容する空間と、前記非線形光学結晶を収容する空間とに分離される、としてもよい。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本開示によれば、放熱効率を維持しつつ、照射方向における設置スペースのコンパクト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、レーザ加工システムの全体構成を例示する図である。
図2図2は、レーザ加工装置の概略構成を例示するブロック図である。
図3A図3Aは、マーカヘッドの外観を例示する斜視図である。
図3B図3Bは、マーカヘッドの外観を例示する斜視図である。
図4図4は、マーカヘッドの側面図である。
図5図5は、マーカヘッドからカバー部材を取り外した状態を例示する斜視図である。
図6図6は、マーカヘッドの背面図である。
図7図7は、マーカヘッドにおける電気ケーブルの接続構造を例示する図である。
図8図8は、マーカヘッドの収容構造を例示する斜視図である。
図9図9は、マーカヘッドの収容構造を例示する斜視図である。
図10図10は、マーカヘッドの内部構造を概略的に例示する横断面図である。
図11図11は、マーカヘッドの内部構造を概略的に例示する縦断面図である。
図12図12は、基板収容部内の要部を概略的に例示する側面図である。
図13図13は、結晶収容部内の要部を概略的に例示する側面図である。
図14図14は、ミラー収容部内の要部を概略的に例示する斜視図である。
図15図15は、レーザ光走査部によるレーザ光の偏向について説明するための斜視図である。
図16図16は、レーザ光走査部によるレーザ光の偏向について説明するための斜視図である。
図17A図17Aは、印刷装置とマーカヘッドとの置換について説明するための概略図である。
図17B図17Bは、支持部材に対するマーカヘッドの取り付けについて説明するための斜視図である。
図18図18は、マーカヘッドおよび支持部材における各種寸法について説明するための図である。
図19図19は、レーザ加工装置の基本的な制御プロセスを例示するフローチャートである。
図20図20は、電力供給部に係る回路構造について説明するためのブロック図である。
図21図21は、電力供給部に係る制御プロセスの具体例を示すフローチャートである。
図22図22は、取付面およびアタッチメントの変形例を示す斜視図である。
図23図23は、取付面のさらなる変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0039】
すなわち、本明細書では、レーザ加工装置の一例としてのレーザマーカについて説明するが、ここに開示する技術は、レーザ加工装置およびレーザマーカという名称に拘わらず、レーザ応用機器一般に適用することができる。
【0040】
また、本明細書においては、加工の代表例として印字加工について説明するが、印字加工に限定されず、画像のマーキング等、レーザ光を使ったあらゆる加工処理において利用することができる。
【0041】
<全体構成>
図1は、レーザ加工システムSの全体構成を例示する図であり、図2は、レーザ加工システムSにおけるレーザ加工装置Lの概略構成を例示する図である。また、図17Aは、印刷装置1001とマーカヘッド1との置換について説明するための概略図であり、図17Bは、支持部材501に対するマーカヘッド1の取り付けについて説明するための斜視図である。
【0042】
図1に例示されるレーザ加工システムSは、レーザ加工装置Lと、これに接続される外部機器400と、を備えている。このうち、図1および図2に例示されるレーザ加工装置Lは、所定の照射エリアR1に向けてレーザ光を照射することで、ワークWに対して所定の加工パターンPpに対応した加工を行うように構成されている。
【0043】
なお、ここでいう照射エリアR1とは、ワークWの表面上に設定される領域であり、レーザ加工装置LとワークWとの相対的な位置関係、レーザ加工装置Lの仕様、ワークWの移動経路等に応じて、種々の形態を取り得る。本実施形態に係る照射エリアR1は、図1に示すような矩形状の領域として構成されている。
【0044】
特に、本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、ワークWを加工するためのレーザ光として、350nm付近の波長を有するレーザ光を出射することができる。この波長は、紫外線の波長域に相当する。そのため、以下の記載では、ワークWを加工するためのレーザ光を「UVレーザ光」と呼称して、近赤外線等、他のレーザ光と区別する場合がある。なお、赤外線等、紫外線以外のレーザ光をワークWの加工に用いてもよい。
【0045】
以下、シート状のフィルムによって構成されたワークWを加工対象とし、かつ、そのフィルムにUVレーザ光と化学反応するUV反応層が含有された場合について説明する。
【0046】
しかしながら、本開示に係るレーザ加工装置Lにおいて、その加工対象として利用可能なワークWは、UV反応層が含有されたフィルムには限定されない。紫外線以外の波長を有するレーザ光と化学反応するフィルムを用いてもよいし、紙、合成樹脂等、種々の素材からなるワークWを加工対象としてもよい。
【0047】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、レーザ光を2次元走査することで、いわゆる2次元印字を行うように構成されているが、後述のように、このレーザ加工装置Lは焦点深度が深くなるように構成されているため、いわゆる3次元的印字を行うこともできる。そのため、このレーザ加工装置Lは、後述の図18に示すように、3次元的な移動経路に沿って搬送されるワークWさえも加工対象とすることができる。
【0048】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るレーザ加工装置Lは、マーカヘッド1と、マーカコントローラ100と、電気ケーブル200と、操作用端末300と、を備えている。
【0049】
このうち、マーカコントローラ100は、加工パターンに関する設定を受け付けるとともに、外部に電力を供給することができ、マーカヘッド1を制御するためのコントローラとして構成されている。
【0050】
一方、マーカヘッド1は、マーカコントローラ100により制御されることで、照射エリアR1に向けてレーザ光を出射することができる。
【0051】
マーカヘッド1およびマーカコントローラ100は、本実施形態においては互いに別体とされており、電気ケーブル200によって接続されている。この電気ケーブル200は、マーカコントローラ100の内部(具体的には、後述の電力供給部104)から外部に電力を伝送する電気配線を少なくとも含む。具体的に、本実施形態に係る電気ケーブル200は、電力を伝送するための電気配線と、アナログ信号、ディジタル信号等を送受するための信号配線と、を束ねることで構成されている。
【0052】
本実施形態に係るマーカヘッド1は、シート状のフィルムにより構成されたワークWを加工対象とした加工設備500上に設置される。この加工設備500は、図17Aおよび図17Bに示すように、マーカヘッド1を支持する支持部材501と、ワークWが巻き掛けられる搬送ローラ502と、を備える。
【0053】
また、図17Bおよび図18等に示すように、加工設備500はさらに、支持部材501を介してマーカヘッド1をスライド可能に支持する2本のレール部材503l,503rと、2本のレール部材503l,503rそれぞれの端部が取り付けられる2つの固定部材505,506と、搬送ローラ502の駆動によるワークWの搬送時に従動する第1従動ローラ504lおよび第2従動ローラ504rと、を備える。このとき搬送ローラ502には、搬送ローラ502とワークWとが接触する長さが、第1従動ローラ504lとワークWとが接触する長さより大きく、かつ、第2従動ローラ504rとワークWとが接触する長さより大きくなるように、ワークWが巻き掛けられることが好ましい。これによれば、搬送ローラ502がワークWを搬送するときに、搬送ローラ502上でワークWに滑りが生じにくくなる。なお、ここでいう「接触する長さ」とは、搬送ローラ502、第1従動ローラ504lおよび第2従動ローラ504rそれぞれの回転軸に直交する断面で見た長さをいう。
【0054】
このように、本実施形態に係るワークWは、搬送ローラ502に巻き掛けられた状態で搬送されるワークとすることができ、その際に用いられる搬送ローラ502は、例えば図1図17Aの下図、および図18に示すように、上下方向(後述のZ方向)において照射エリアR1と重なり合うように配置してもよい。
【0055】
支持部材501は、図17Aに示すように、レーザ加工装置L、特にマーカヘッド1の筐体10を所定の被取付位置に取り付けることができる。図1図17Aおよび図17Bには、筐体10を上方から吊り下げるように構成された支持部材501が例示されているが、後述のように、側方等、他の方向から筐体10を支持してもよい。
【0056】
一方、搬送ローラ502は、ワークWの短尺方向(後述の前後方向)に延びる中心軸を有する円筒状に構成されている。この場合、ワークWは、搬送ローラ502の回転によって、所定の移動経路に沿って長尺方向(後述の左右方向)に搬送されることになる。
【0057】
ここで、本実施形態に係る加工設備500は、図17Aの上図および下図に示すように、本実施形態に係るマーカヘッド1と、レーザ光以外の方式を用いて印刷する印刷装置1001と、の間で共有化されている。
【0058】
すなわち、本実施形態に係るマーカヘッド1は、印刷装置1001を取り付けるべく構成された加工設備500の支持部材501に対し、その印刷装置1001の代わりに取り付けることができるように構成されている。
【0059】
マーカヘッド1と置換可能な印刷装置1001としては、例えば熱転写式産業用サーマルプリンタ(Thermal Transfer Overprinter:TTO)が挙げられるが、他の印刷装置1001と置換することもできる。
【0060】
マーカヘッド1と置換可能な印刷装置1001としては、例えば、ワークW上の印刷エリアに接触する印刷部1006を露出させてなる印刷面1010dと、該印刷面1010dと相違しかつ支持部材501に接続可能な接続面1010uと、を備える略直方体状に構成された筐体1010を具備するものであればよい。
【0061】
この場合、図17Aの上図および下図に示すように、接続面1010uに接続可能な支持部材501によって印刷装置1001と同様にマーカヘッド1が支持されることになる。そうして支持されたマーカヘッド1は、印刷エリア(印刷装置1001において印刷部1006と接触する領域)に対応して設定される照射エリアR1に向けてレーザ光を照射することで、ワークWに対して加工を行うことになる。
【0062】
一方、操作用端末300は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)およびメモリを有しており、マーカコントローラ100に対し、有線または無線により電気信号を送受可能に接続されている。
【0063】
操作用端末300は、印字設定など、種々の加工条件(印字条件ともいう)を設定するとともに、ワークWの加工に関連した情報をユーザに示すための端末として機能する。この操作用端末300は、ユーザに情報を表示するための表示部301と、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部302と、種々の情報を記憶するための記憶装置303と、を備えている。
【0064】
例えば、表示部301は、液晶ディスプレイ又は有機ELパネルによって構成することができる。操作部302は、キーボード、ポインティングデバイスによって構成することができる。ポインティングデバイスには、マウス、ジョイスティック等が含まれる。そうしたポインティングデバイスの代わりに、マーカコントローラ100と直に接続された、例えばタッチパネル式のコンソールによって操作部302を構成してもよい。
【0065】
前述のように構成される操作用端末300は、ユーザによる操作入力に基づいて、レーザ加工における加工条件を設定することができる。この加工条件には、ワークWに印字されるべき文字列および図形の内容(加工パターンPp)と、レーザ光の目標出力(レーザパワー)と、ワークW上でのレーザ光の走査速度(スキャンスピード)と、のうちの1つ以上が含まれる。
【0066】
操作用端末300により設定される加工条件は、マーカコントローラ100に出力されて、該マーカコントローラ100における記憶部102に記憶される。必要に応じて、操作用端末300における記憶装置303が加工条件を記憶してもよい。
【0067】
なお、操作用端末300は、例えばマーカコントローラ100に組み込んで一体化することもできる。
【0068】
外部機器400は、必要に応じてマーカコントローラ100に接続される。図1および図2に示す例では、外部機器400として、搬送速度センサ401およびプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)402が設けられている。
【0069】
搬送速度センサ401は、例えばロータリエンコーダによって構成されており、ワークWの搬送速度を検出することができる。搬送速度センサ401は、その検出結果を示す信号(検出信号)をマーカコントローラ100へ出力する。マーカコントローラ100は、搬送速度センサ401から入力された検出信号に基づいて、レーザ光の2次元走査等を制御する。
【0070】
PLC402は、例えばマイクロプロセッサによって構成されており、マーカコントローラ100に制御信号を入力することができる。PLC402は、予め定めたシーケンスに従ってレーザ加工システムSを制御するために用いられる。
【0071】
レーザ加工装置Lには、上述した機器および装置以外にも、操作および制御を行うための装置、その他の各種処理を行うためのコンピュータ、記憶装置、周辺機器等を無線または有線で接続することができる。
【0072】
以下、マーカヘッド1およびマーカコントローラ100それぞれのハード構成について詳細に説明した後に、マーカコントローラ100によるマーカヘッド1の制御の概略について説明する。
【0073】
<マーカコントローラ100>
図2に示すように、マーカコントローラ100は、加工パターンを含んでなる加工条件に関する設定(加工設定)を受け付ける受付部101と、その加工条件を記憶する記憶部102と、加工条件に基づいてマーカヘッド1を制御する制御部103と、マーカヘッド1に電力を供給する電源部としての電力供給部104と、を備えている。
【0074】
(受付部101)
受付部101は、操作用端末300を介して入力された加工条件を受け付けるとともに、受け付けた加工条件を記憶部102および/または制御部103に出力するように構成されている。
【0075】
具体的に、本実施形態に係る受付部101は、操作用端末300と電気的に接続されており、該操作用端末300における前述の表示部301上に、各加工条件を設定するための設定画面(不図示)を表示させることができる。受付部101は、その設定画面を通じて入力された内容を各加工条件に反映し、反映後の加工条件を記憶部102および/または制御部103に出力することができる。
【0076】
(記憶部102)
記憶部102は、受付部101によって受け付けられた加工条件を一時的にまたは継続的に記憶するとともに、必要に応じて、記憶された加工条件を制御部103、表示部301等へ出力するように構成されている。
【0077】
具体的に、本実施形態に係る記憶部102は、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等の不揮発性メモリを用いて構成されており、加工条件を示すデータを一時的にまたは継続的に記憶することができる。
【0078】
(制御部103)
制御部103は、加工条件に基づいて電力供給部104、レーザ光出力部4およびレーザ光走査部5等を制御することで、ワークWに対し、加工条件に対応した加工を実行するように構成されている。
【0079】
具体的に、本実施形態に係る制御部103は、プロセッサ、揮発性のメモリおよび入出力バス等からなる。この制御部103は、記憶部102から読み出したり、受付部101から直に入力されたりした加工条件に基づいて制御信号を生成するとともに、そうして生成した制御信号をレーザ加工装置Lの各部へと出力することで、ワークWの加工を制御する。
【0080】
例えば、ワークWの加工を開始する際、制御部103は、加工条件の一をなす目標出力を記憶部102から読み込んで、その目標出力に関して生成された制御信号を電力供給部104等に入力することで、レーザ励起光の生成を制御する。
【0081】
(電力供給部104)
電力供給部104は、制御部103から出力された制御信号に基づいて、励起光生成部2に駆動電流を供給する。詳細は省略するが、電力供給部104は、制御部103から入力された目標出力に基づいて駆動電流を決定し、そうして決定した駆動電流を励起光生成部2へ供給する。電力供給部104は、励起光生成部2へと電力を供給するものであり、後述の図20に例示するように、直流電源104a等によって構成することができる。電力供給部104の詳細は、後述する。
【0082】
なお、本実施形態では、レーザダイオード等の励起光源によって構成される励起光生成部2は、マーカコントローラ100ではなく、マーカヘッド1に内蔵されるように構成されている。電力供給部104から供給される電力は、前述の電気ケーブル200によって励起光生成部2へと供給される。
【0083】
<マーカヘッド1>
図3Aおよび図3Bは、マーカヘッド1の外観を例示する斜視図である。図4は、マーカヘッド1の側面図であり、図5は、マーカヘッド1からカバー部材13を取り外した状態を例示する斜視図であり、図6は、マーカヘッド1の背面図である。
【0084】
また、図7は、マーカヘッド1における電気ケーブル200の接続構造を例示する図であり、図8および図9は、マーカヘッド1の収容構造を例示する斜視図である。また、図10は、マーカヘッド1の内部構造を概略的に例示する横断面図であり、図11は、マーカヘッド1の内部構造を概略的に例示する縦断面図である。図10の横断面は、図11のA-A断面と略一致する。
【0085】
また、図11は、マーカヘッド1の内部構造を概略的に例示する縦断面図であり、図12は、基板収容部H13内の要部を概略的に例示する側面図であり、図13は、結晶収容部H12内の要部を概略的に例示する側面図である。
【0086】
また、図14は、ミラー収容部H11内の要部を概略的に例示する斜視図であり、図15および図16は、レーザ光走査部によるレーザ光の偏向について説明するための斜視図である。
【0087】
(マーカヘッド1の概略構成)
図2に示すように、マーカヘッド1は、主たる構成要素として、励起光生成部2と、導光光学系としての励起光導光部3と、レーザ光出力部4と、レーザ光偏向部としてのレーザ光走査部5と、を備えている。
【0088】
詳しくは後述するが、励起光生成部2は、電気ケーブル200を介して供給される電力に基づいて、レーザ光を励起するための励起光を生成する。励起光導光部3は、励起光生成部2によって生成された励起光を導光し、レーザ光出力部4へと入力する。レーザ光出力部4は、励起光導光部3によって導光された励起光に基づいてレーザ光を生成する固体レーザ結晶41を有する。
【0089】
また、レーザ光走査部5は、固体レーザ結晶41により生成されたレーザ光が照射エリアR1の所望の位置に向かって照射されるように第1ミラー51aを駆動する第1スキャナ51と、この第1スキャナ51を制御する第1制御基板53と、を有する。
【0090】
より詳細には、本実施形態に係るレーザ光走査部5は、いわゆる2軸(X軸およびY軸)式のガルバノスキャナを用いて構成されており、Yスキャナとしての第1スキャナ51に加えてさらに、Xスキャナとしての第2スキャナ52と、この第2スキャナ52を制御する第2制御基板54と、を有する。
【0091】
レーザ光走査部5は、第1制御基板53を介して第1スキャナ51を制御するとともに、第2制御基板54を介して第2スキャナ52を制御することで、第1スキャナ51の第1ミラー51aと、第2スキャナ52の第2ミラー52aと、を駆動する。
【0092】
その際、レーザ光偏向部としてのレーザ光走査部5は、予め定められた加工設定(加工パターンPpに関する設定)にしたがって第1ミラー51aおよび第2ミラー52aを駆動することで、照射エリアR1の所望の位置に向けて照射されるように、レーザ光出力部4によって生成されたレーザ光を偏向する。
【0093】
マーカヘッド1はまた、前述した構成要素、すなわち、励起光生成部2と、励起光導光部3と、レーザ光出力部4と、レーザ光走査部5と、を収容する筐体10を備えている。この筐体10には、レーザ光走査部5の第1ミラー51aによって偏向されたレーザ光(つまり、レーザ光走査部5を介して照射エリアR1に向けて照射されるレーザ光)を透過する出射窓6が形成されている。
【0094】
以下、マーカヘッド1の外観に関する構成(具体的には、筐体10の6面の構成)と、マーカヘッド1の内部構造と、について順番に説明する。
【0095】
(筐体10の外面)
図3Aに例示するように、マーカヘッド1の筐体10は、左右方向(図3Aにおいて、筐体10を正面から見て左方かつ手前側から、同じく筐体10を正面から見て右方かつ奥行き側に向かう方向)に比して、前後方向(図3Aの前記右方かつ手前側から、前記左方かつ奥行き側に向かう方向)の寸法が長い略直方状に構成されている。なお、本明細書における「左右」とは、筐体10に相対したユーザから見た左右に相当する。
【0096】
以下、筐体10の前後方向をX方向とし、左右方向をY方向とし、高さ方向をZ方向とみなす。詳細には、X方向における図3Aの紙面奥行側を+X方向とみなし、同図の紙面手前側を-X方向とみなす。同様に、Y方向における図3Aの紙面手前側を+Y方向とみなし、同図の紙面奥行側を-Y方向と見なす。同様に、Z方向における図3Aの紙面上側を-Z方向とみなし、同図の紙面下側を+Z方向とみなす。
【0097】
便宜上、ここでは筐体10の外形を基準とした定義を例示したが、この定義に代えて、または、この定義と同時に、筐体10に収容される各構成要素の動作方向および位置関係を基準とした定義を用いることもできる。
【0098】
例えば、第1ミラー51aによる偏向方向である第1方向をY方向とし、第2ミラー52aによる偏向方向である第2方向をX方向とすることができる。なお、本実施形態においてレーザ光走査部5に含まれ駆動されるミラーによる偏向方向とは、そのミラーが駆動されることによって照射エリアR1内で照射位置が走査する方向を示す。つまり第1ミラー51aが駆動されて回転することにより、照射エリアR1内の照射位置はY方向に走査する。また、第2ミラー52aが駆動されて回転することにより、照射エリアR1内の照射位置はX方向に走査する。同様に、マーカヘッド1から照射エリアR1に向かう方向、より詳細には出射窓6から照射エリアR1に向かう方向である照射方向をZ方向とみなすことができる。照射方向は、第1ミラー51aから照射エリアR1に向かう方向としてもよい。なお、本実施形態において、「ある部材から照射エリアR1に向かう方向」とは、ある部材と照射エリアR1とが向かい合う軸方向のうちの一方向を指す。「ある部材から照射エリアR1に向かう方向」とは、ある部材から照射エリアR1に向かう光の進行方向ではない。したがって、第1ミラー51aの回転と第2ミラー52aの回転とによって、照射エリアR1における照射位置、すなわち、照射エリアR1に向かう光の進行方向は変化するが、本実施形態における照射方向とは、当該光の進行方向の変化に伴って変化するものではない。
【0099】
以下の記載では、筐体10の外形を基準とした定義と、第1ミラー51aおよび第2ミラー52aの偏向方向ならびに照射方向を基準とした定義と、が一致しているものとして説明を進める。
【0100】
図3A図7に示すように、筐体10は、出射窓6が形成された底面10dと、当該底面10dひいては出射窓6に対向する天面10uと、を有する。例えば、底面10dは+Z方向に面する一方、天面10uは-Z方向に面しており、双方ともZ方向に厚みを有する1つまたは複数の板状部材によって構成される。なお、ここでの「対向」とは、筐体10を概念的な直方体とみなした場合における概念的な対向を指す。
【0101】
筐体10はさらに、底面10dおよび天面10uとともに、励起光生成部2、励起光導光部3、レーザ光出力部4およびレーザ光走査部5を包囲する前面10f、背面10b、左側面10lおよび右側面10rを有する。
【0102】
前面10f、背面10b、左側面10lおよび右側面10rは、いずれも天面10uおよび底面10dに対して直交する方向(すなわち、XY平面に沿った方向)に面する。例えば、前面10fは-X方向に面する一方、背面10bは+X方向に面しており、双方ともX方向に厚みを有する1つまたは複数の板状部材によって構成される。同様に、例えば、左側面10lは+Y方向に面する一方、右側面10rは-Y方向に面しており、双方ともY方向に厚みを有する1つまたは複数の板状部材によって構成される。
【0103】
以下、筐体10の6面について、順番に説明する。なお、底面10d、天面10u、前面10f、背面10b、左側面10lおよび右側面10rにおける「面」の語には、所定の厚みを有する板状部材も含まれる。また、これらの6面は、便宜上の分類に過ぎず、互いに別体とする必要はない。例えば、左側面10lおよび右側面10rの少なくとも一方と、底面10dの少なくとも一部(特に、後述の非オフセット部18)とを一体的に形成してもよい。
【0104】
-天面10u-
図3Aに示すように、筐体10を構成する6面のうちの天面10uは、XY方向に沿って延び、かつY方向に比してX方向の寸法が長い矩形板状に形成されている。本実施形態に係る天面10uは、支持部材に接続されかつ前記被取付位置に取り付けられる取付面として構成されている。この場合、天面10uの板厚は、左側面10lおよび右側面10rの板厚よりも大きい。
【0105】
そして、取付面としての天面10uには、被取付位置に取付可能なアタッチメント7が設けられる。このアタッチメント7は、天面10uと略平行な方向(XY方向)に沿って延び、かつ天面10uに直交する方向(Z方向)に厚みを有する板状部材として構成されている。アタッチメント7は、天面10uの上に載置されており、例えば図10に示すように、ボルト等の締結具7bによって天面10uに締結されている。前述したように、天面10uの板厚は、左側面10l、右側面10r等の板厚よりも大きい。天面10uの板厚を大きくすることで、締結具7bの挿入代を確保する上で有利になる。
【0106】
アタッチメント7の上面には、被取付位置に配置される支持部材501に対応した締結孔7aが設けられている。アタッチメント7上に支持部材501を載置した状態で、締結孔7aにボルト等の締結具を締結することで、アタッチメント7に支持部材501を取り付けることができる。これにより、アタッチメント7を介して天面10uが被取付位置に取り付けられることになると同時に、筐体10が支持部材501に吊り下げられることになる。
【0107】
-底面10d-
図4に示すように、前記6面のうちの底面10dは、レーザ光走査部5を挟んで天面10uの反対側に配置されている。この底面10dは、図5に示すように、X方向に沿って延びかつY方向の中央部を-Z側に凹ませた曲面状に形成されている。
【0108】
具体的に、本実施形態に係る底面10dは、図5および図10に示すように、Y方向の中央部に位置しかつ-Z側に向かってオフセットしたオフセット部16aと、Y方向の両端部に位置しかつオフセット部16aに比して+Z側に突出した非オフセット部18と、を有する。オフセット部16aと非オフセット部18は、双方ともX方向に沿って平坦に延びるように形成されている。
【0109】
詳細には、本実施形態に係る底面10dには、オフセット部16aを上底としかつ+Z側に向かって拡径する断面台形状の溝が形成されている。出射窓6は、上底としてのオフセット部16aに設けられる。本実施形態に係る底面10dは、出射窓6が形成された出射面として構成されている。出射窓6の詳細は後述する。
【0110】
一方、非オフセット部18は、底面10dにおいて、前記台形状の斜辺に相当する部位から+Z側端部にかけての部分を構成する。本実施形態に係る非オフセット部18は、オフセット部16aよりも+Y側に位置する第1板状部材18lと、オフセット部16aよりも-Y側に位置する第2板状部材18rと、によって構成されている。
【0111】
第1板状部材18lは、図10に示すように薄板状に形成されており、-X側から見て逆L字形状を有している。ここで、「逆L字形状」とは、Z方向に延びる対称軸に関してL字形状を反転させた形状を指す。第1板状部材18lは、オフセット部16aを挟んで第2板状部材18rの反対側に配置されている。第1板状部材18lにおける逆L字形状の縦辺部が前記台形状における+Y側の斜辺を構成し、逆L字形状の横辺部が+Y側の+Z側端部を構成している。
【0112】
第2板状部材18rは、図10に示すように薄板状に形成されており、-X側から見てL字形状を有している。第2板状部材18rは、オフセット部16aを挟んで第1板状部材18lの反対側に配置されている。第2板状部材18rにおけるL字形状の縦辺部が前記台形状における-Y側の斜辺を構成し、L字形状の横辺部が-Y側の+Z側端部を構成している。
【0113】
また、図10に示すように、第1板状部材18lは、左側面10lの下半部とともに出射窓6を+Y側から覆い隠す。一方、第2板状部材18rは、右側面10rの下半部とともに出射窓6を-Y側から覆い隠す。このように、第1板状部材18lおよび第2板状部材18rは、左側面10lの下半部および右側面10rの下半部とともに、スカート状の覆い(スカート部)を構成するようになっている。
【0114】
-前面10f-
図3Bおよび図5に示すように、前記6面のうちの前面10fは、YZ方向に沿って延び、かつインジケータ11と、2つの通気口12,12と、切り欠き10cと、が設けられた板状に形成されている。
【0115】
図3Bおよび図5に示すように、このうち、インジケータ11は、前面10fの上側かつ右端付近に設けられており、Y方向に沿って並んだ3つのランプ11a,11b,11cからなる(図5にのみ図示)。3つのランプ11a,11b,11cは、それぞれ、マーカコントローラ100と電気的に接続された発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)によって構成されている。以下、+Y側から順に、3つのランプ11a,11b,11cを第1ランプ11a、第2ランプ11bおよび第3ランプ11cと呼称する。
【0116】
第1ランプ11aは、例えば青色LEDによって構成されており、レーザ加工装置Lに設けられたキースイッチ(不図示)と連動して青色に点灯する。なお、ここでいう「キースイッチ」とは、安全管理者等によって管理される鍵によって切り替えられるスイッチである。レーザ加工装置Lに鍵を差し込んで、その鍵を所定方向に回すことで、電源の非投入状態に相当する「OFF」状態と、電源の投入状態に相当しかつレーザ光の出射を不許可とした「POWER ON」状態と、電源の投入状態に相当しかつレーザ光の出射が許可された「LASER ON」状態と、の間で切り替わるようになっている。
【0117】
一方、第2ランプ11bは、緑色および橙色の一方に発光色を切替可能に構成されており、キースイッチの状態に加え、各種状態に対応して発光色が切り替わるようになっている。また、第3ランプ11cは、緑色、橙色および赤色のいずれかに発光色を切替可能に構成されており、キースイッチの状態に加え、各種状態に対応して発光色が切り替わるようになっている。
【0118】
第1ランプ11a、第2ランプ11bおよび第3ランプ11cは、それぞれ、マーカコントローラ100と電気的に接続されており、制御部103から入力される制御信号を受けて点灯するように構成されている。インジケータ11の制御の詳細は後述する。
【0119】
図3Bおよび図5に示すように、2つの通気口12,12のうちの一方は、前面10fの下側かつ左端付近に設けられており、2つの通気口12,12のうちの他方は、前面10fの下側かつ右端付近に設けられている。2つの通気口12,12は、双方とも前面10fを厚み方向に貫通しており、それぞれ、後述の第2収容部H2に連通している。
【0120】
図3Bおよび図5に示すように、切り欠き10cは、前面10fの下端部を含んだ部位を切り欠いてなり、オフセット部16aの前端部(-X方向側の端部)と繋がっている。切り欠き10cは、Y方向において、2つの通気口12,12の間に配置されるようになっている。
【0121】
詳細には、切り欠き10cは、オフセット部16aを上底とした台形状の横断面と略一致する横断面を有するように、+Z方向に向かってテーパ状に拡径した略台形状に形成されている。本実施形態に係る前面10fは、その下半部に切り欠き10cが設けられることで、オフセット部16aを介して出射窓6に通じるように少なくとも部分的に開放されたユーザアクセス面(開放面)として構成されている。
【0122】
-前面10fの詳細1(集塵機およびカメラについて)-
本実施形態に係る切り欠き10cは、出射窓6のメンテナンス行為(例えば、切り欠き10cから清掃用具を挿入することで実施される清掃行為)に加え、種々の用途に用いることができる。
【0123】
一般に、フィルム等のワークWにUVレーザを照射した場合、煙が発生する。そこで、マーカヘッド1とは別体の集塵機を前面10fに接続し、切り欠き10cを通じて煙を吸い込むように構成してもよい。なお、前面10fへの接続等、マーカヘッド1に集塵機を外付する代わりに、マーカヘッド1に集塵機を内蔵してもよい。
【0124】
また、フィルム等のワークWにUVレーザを照射して印字加工を行った後、その印字内容を検査する目的で、マーカヘッド1にカメラを内蔵または外付けしてもよい。そうしたカメラは、例えば切り欠き10cに取り付けてもよいし、オフセット部16aに取り付けてもよい。前者の場合、照射エリアR1を可能な限り真上(-Z側)から撮像できるよう、出射窓6周辺に反射ミラーを設けてもよい。また、可能な限り明るい画像が得られるよう、カメラまたは出射窓6周辺に照明を設けてもよい。
【0125】
-前面10fの詳細2(カバー部材13および開閉センサについて)-
そして、開放面としての前面10fには、該前面10fを開閉可能なカバー部材13が取り付けられている。このカバー部材13は、前面10fの上半部に固定された第1カバー部13aと、前面10fの下半部、特に切り欠き10caによる開放部分を開閉するように揺動可能な第2カバー部13bと、第1カバー部13aおよび第2カバー部13bを連結するヒンジ機構13cと、を有する(図3Aおよび図3Bを参照)。
【0126】
第1カバー部13aは、前面10fの上半部を覆う矩形板状に形成されており、インジケータ11と略同じ位置に形成された貫通孔(符号省略)を有してなる。第1カバー部13aは、ネジ等の締結具によって前面10fの上半部に固定されている。
【0127】
第2カバー部13bは、前面10fの下半部、特に切り欠き10cを覆うことができる矩形板状に形成されており、2つの通気口12,12と略同じ位置に形成された貫通孔(符号省略)を有してなる。第2カバー部13bは、ヒンジ機構13cを介して第1カバー部13aに指示されている。
【0128】
ヒンジ機構13cは、Z方向における前面10fの中央部に位置しており、第1カバー部13aの下縁部に対し、第2カバー部13bの上縁部を揺動可能に連結している。
【0129】
ヒンジ機構13cは、第1カバー部13aが前面10fに固定された状態で、Y方向に延びる回転軸を中心に第2カバー部13bを揺動させることができる(図3Aおよび図3Bを参照)。開き方向に第2カバー部13bを揺動させることで、前面10fの切り欠き10cを露出させることができる。切り欠き10cを露出させることで、その切り欠き10cに繋がったオフセット部16aを通じて、出射窓6の清掃等、各種メンテナンスを行うことができるようになる。
【0130】
なお、カバー部材13は必須ではない。カバー部材13を設けることなく、前面10fを露出させてもよい。
【0131】
また、図示は省略するが、カバー部材13(特に、第2カバー部13b)と、前面10f(特に、前面10fにおける切り欠き10cの周辺部)と、の少なくとも一方に、カバー部材13の開閉を検知する開閉センサを設けてもよい。
【0132】
そうした開閉センサとしては、例えば、第2カバー部13bおよび前面10fの一方に設けられるマグネットと、第2カバー部13bおよび前面10fの他方に設けられる磁気センサ(例えばホール素子)と、からなる磁気方式センサを用いることができる。なお、磁気方式センサは一例に過ぎず、光学方式センサ、機械方式センサ等を用いてもよい。
【0133】
このマグネットセンサは、マーカコントローラ100、および/または、マーカヘッド1内の回路基板と電気的に接続されており、カバー部材13、特に第2カバー部13bの開閉状態を示す検知信号を、マーカコントローラ100および/または前記回路基板に出力することができる。
【0134】
こうした開閉センサを設けることで、カバー部材13の開閉状態を検知するとともに、その開閉状態に基づいた各種制御を行うことができるようになる。その一例として、本実施形態に係るマーカコントローラ100は、レーザ光の出射中にカバー部材13が開いた場合、レーザ光の出射を緊急停止する。その後、カバー部材13を閉じて操作部302を介して緊急停止の解除操作を行うことで、レーザ光の出射を再開させることができる。
【0135】
なお、カバー部材13を筐体10の一外面とみなした場合、このカバー部材13は、マーカヘッド1の取付等に際してユーザに視認されることになる。この場合、カバー部材13における例えば第2カバー部13bには、図3Aに示すように、マークとしての第1マークM1を付すこともできる。
【0136】
第1マークM1は、照射エリアR1のセンター(照射エリアR1の対角線が交わる交点)を示す第1中心線M11と、照射エリアR1における+Y側のエッジを示す+YエッジM12と、照射エリアR1における-Y側のセンターを示す-YエッジM13と、によって構成される。
【0137】
なお、カバー部材13は必須ではない。カバー部材13を設けることなく前面10fを筐体10の外面とみなした場合、その前面10fに第1マークM1を付すこともできる。
【0138】
-背面10b-
図3Bおよび図5に示すように、前記6面のうちの背面10bは、レーザ光走査部5を挟んで前面10fの反対側に配置されており、YZ方向に沿って延びる板状に形成されている。本実施形態に係る背面10bは、筐体10の一外面(カバー部材13とは異なる外面)とみなすことができ、筐体10内に電力を供給する電気ケーブル200が接続される接続面をなす。接続面としての背面10bは、開放面としての前面10f、取付面としての天面10u、および出射面としての底面10dとともに、レーザ光偏向部としてのレーザ光走査部5を包囲する。
【0139】
そして、接続面としての背面10bには、図7に示すように、該背面10bと電気ケーブル200との接続部分を覆う接続カバー14が設けられる。この接続カバー14は、背面10bの面内方向(YZ方向)、より詳細には、面内方向(YZ方向)のうち、照射方向(Z方向)に交差する方向(Y方向)に電気ケーブル200が繰り出されるように、電気ケーブル200の延び方向Aeを規制する。
【0140】
言い換えると、接続カバー14は、前面10fと背面10bを結ぶ方向であるX方向に直交する方向(Y方向またはZ方向)に沿って電気ケーブル200を繰り出すように構成されている。
【0141】
具体的に、本実施形態に係る接続カバー14は、マーカヘッド1における電気ケーブル200との接続端子を囲う囲い部14aと、該囲い部14aを閉塞する蓋部14bと、囲い部14aと蓋部14bとの間を液密状に封止するシール部材14cと、電気ケーブル200の線径を調整する線径変換コネクタ14dと、を有する。
【0142】
このうち、囲い部14aは、背面10bに開口したコネクタを側方(YZ方向)から取り囲むように形成されている。詳しくは、本実施形態に係る囲い部aは、+X方向に向かって開口した矩形薄箱状に形成されている。
【0143】
そして、囲い部14aを薄箱とみなした場合における底面14eには、それぞれ異なる接続端子に通じる2つの開口部(符号省略)が形成されている。また、囲い部14aを構成する複数の側壁のうち、+Y側に面する左側壁部14fには、延び方向AeとしてのY方向に沿って左側壁部14fを貫く第1貫通孔14gが設けられている。電気ケーブル200は、この第1貫通孔14gに挿通されることで、その延び方向Aeが規制されることになる。
【0144】
線径変換コネクタ14dは、囲い部14aの内側に配置されており、囲い部14aおよび蓋部14bによって区画される収容空間に収容されている。ここで、本実施形態に係る電気ケーブル200は、マーカコントローラ100から延びて線径変換コネクタ14dに接続される第1ケーブル部201と、線径変換コネクタ14dから延びマーカヘッド1の接続端子に接続される第2ケーブル部202と、によって構成されている。第2ケーブル部202の線径は、マーカヘッド1の接続端子に適合するように、第1ケーブル部201の線径よりも小径に設定されている。
【0145】
すなわち、本実施形態では、電気ケーブル200は、線径変換コネクタ14dによって線径が変換された状態で、マーカヘッド1に接続されるようになっている。
【0146】
一般に、マーカヘッド1の設置環境に応じて、電気ケーブル200のケーブル長を変更しようとするニーズがある。ここで、通常よりも長い電気ケーブル200を使用しようとした場合、相対的に短い電気ケーブルと比べて電圧降下が懸念されるため、その対策として、より大きな線径を有する電気ケーブル200を用いることが考えられる。
【0147】
このように、マーカヘッド1の設置環境に応じて電気ケーブル200の線径が変わり得るため、前述のような線径変換コネクタ14dを用いることが考えられるものの、単に線径変換コネクタ14dを用いるだけでは、第1ケーブル部201と線径変換コネクタ14dとの接続部分、および、第2ケーブル部202と線径変換コネクタ14dとの接続部分の被水が懸念される。
【0148】
これに対し、図7に示したように、線径変換コネクタ14dを接続カバー14内に収容することで、前述の各接続部分の被水を抑制することができる。これにより、より広範な設置環境にマーカヘッド1を適合させることが可能になる。
【0149】
-左側面10l-
図3A図3Bおよび図10に示すように、前記6面のうちの左側面10lは、レーザ光走査部5に対して+Y側に配置されており、ZX方向に沿って延びる板状に形成されている。
【0150】
なお、左側面10lを筐体10の一外面とみなした場合、この左側面10lは、マーカヘッド1の取付等に際してユーザに視認されることになる。この左側面10lには図3Aに示すように、マークとしての第2マークM2を付すこともできる。
【0151】
第2マークM2は、照射エリアR1のセンター(照射エリアR1の対角線が交わる交点)を示す第2中心線M21と、照射エリアR1における+X側のエッジを示す+XエッジM22と、照射エリアR1における-X側のエッジを示す-XエッジM23と、によって構成される。
【0152】
-右側面10r-
図4図5および図10に示すように、前記6面のうちの右側面10rは、レーザ光走査部5に対して-Y側に配置されており、ZX方向に沿って延びる板状に形成されている。右側面10rは、レーザ光走査部5を挟んで左側面10lの反対側に配置されている。
【0153】
なお、右側面10rを筐体10の一外面とみなした場合、この右側面10rに対し、第2マークM2と同様に構成された第3マークM3を付すことができる。
【0154】
第3マークM3は、照射エリアR1のセンター(照射エリアR1の対角線が交わる交点)を示す第3中心線M31と、照射エリアR1における+X側のエッジを示す+XエッジM32と、照射エリアR1における-X側のエッジを示す-XエッジM33と、によって構成される。
【0155】
なお、第2マークM2と第3マークM3を両方とも具備する構成は必須ではなく、第2マークM2および第3マークM3のうちのいずれか一方を具備するように構成してもよい。
【0156】
(筐体10の内部空間)
筐体10は、底面10d、天面10u、前面10f、背面10b、左側面10l、右側面10rの6面によって包囲された内部空間を区画する。この内部空間は、筐体10内に配置される板状部材によって、複数の収容部に仕切られるようになっている。
【0157】
そうした板状部材として、本実施形態に係るマーカヘッド1は、第1ベースプレート15と、第2ベースプレート16と、第3ベースプレート17と、を有している。第1ベースプレート15、第2ベースプレート16および第3ベースプレート17は、本実施形態では互いに別体とされている。また、これらの板状部材のうち、第1ベースプレート15は、固体レーザ結晶41を支持可能な支持プレートとして構成されている。
【0158】
以下、各板状部材の構成について、順番に説明をする。
【0159】
-第1ベースプレート15-
図8図9および図10に示すように、第1ベースプレート15は、X方向に延びる金属製の板状部材として構成されており、筐体10に収容されている(言い換えると、筐体10の6面に包囲されている)。第1ベースプレート15の板厚は、筐体10の6面のうち、少なくとも左側面10lおよび右側面10rの板厚よりも大きくなるように設定されている。
【0160】
特に、本実施形態に係る第1ベースプレート15は、-X側から見て逆L字形状を有している。ここで、「逆L字形状」とは、Z方向に延びる対称軸に関してL字形状を反転させた形状を指す。以下、第1ベースプレート15において逆L字形状の縦辺に相当する部位を縦辺部15aと呼称し、逆L字形状の横辺に相当する部位を横辺部15bと呼称する場合がある。
【0161】
第1ベースプレート15は、Y方向においては左側面10lと右側面10rとの間に配置されており、第2ベースプレート16よりも+Y側に配置されている。第1ベースプレート15は、第2ベースプレート16を挟んで第3ベースプレート17よりも+Y側に配置されている。
【0162】
ここで、横辺部15bの左端部(+Y側の端部)と、筐体10の左側面10lとの間には、第1ベースプレート15および左側面10lの隙間を液密状に封止するシール部材(不図示)が設けられている。
【0163】
第1ベースプレート15は、Z方向においては、天面10uの下方に配置されている。
【0164】
ここで、図10の囲み部C1に示すように、縦辺部15aの上端部(-Z側の端部)は、天面10uに対し所定の隙間を存して対向している。これにより、第1ベースプレート15は、筐体10の天面10uに対して非一体的な状態(天面10uに対する第1ベースプレート15の相対変位を許容する状態)となる。
【0165】
なお、筐体10の6面のうち、天面10u以外の外面を取付面とした場合、天面10uと縦辺部15aとの間に隙間を設ける代わりに、取付面とされた外面と第1ベースプレート15との間に隙間を設けてもよい。例えば、筐体10の左側面10lを取付面とした場合、横辺部15bの左端部と左側面10lとの間に隙間を設けることができる。
【0166】
第1ベースプレート15は、X方向においては、前面10fと背面10bとの間に配置されている。図11に示すように、第1ベースプレート15は、前面側締結具15cによって前面10fに固定されるとともに、背面側締結具15dによって背面10bに固定されるようになっている。
【0167】
すなわち、支持プレートとしての第1ベースプレート15は、取付面としての天面10uに対しては非一体的な状態となりつつ、前面10fおよび背面10bを介して筐体10に取り付けられるようになっている。
【0168】
続いて、縦辺部15aについて詳述すると、本実施形態に係る縦辺部15aは、照射方向としてのZ方向と、X方向とに沿って広がる厚板状に形成されている。図11に示すように、縦辺部15aには、少なくとも2つの貫通孔15e,15fが形成される。
【0169】
2つの貫通孔15e,15fのうち、+X側に位置する第2貫通孔15eは、励起光導光部3とレーザ光出力部4とを光学的に結合するために用いられる。第2貫通孔15eは、励起光導光部3からレーザ光出力部4に励起光を入射させる第1入射窓91を構成する。
【0170】
2つの貫通孔15e,15fのうち、-X側に位置する第3貫通孔15fは、レーザ光出力部4とレーザ光走査部5とを光学的に結合するために用いられる。第3貫通孔15fには、レーザ光を透過するガラス等の光学部材15hが嵌め込まれる。第3貫通孔15fおよび光学部材15hは、後述の第5貫通孔50bとともに、レーザ光出力部4からレーザ光走査部5にレーザ光を入射させる第2入射窓92を構成する。
【0171】
また、縦辺部15aの左右両側面のうち、+Y側に向かって面する左側面は、後述の結晶収容部H12を区画する仕切面15gをなす。この仕切面15gには、固体レーザ結晶41をはじめとする種々の光学部品が締結される。
【0172】
また、縦辺部15aの左右両側面のうち、-Y側に向かって面する右側面は、後述のミラー収容部H11を区画する第1ケーシング50を左方から支持する。縦辺部15aの右側面によって第1ケーシング50を支持する代わりに、当該右側面がミラー収容部H11の一部を区画してもよい。
【0173】
続いて、横辺部15bについて詳述すると、本実施形態に係る横辺部15bは、X方向と、Y方向とに沿って広がる厚板状に形成されている。図10に示すように、横辺部15bの下面には、本実施形態に係るヒートシンクとしての第1ヒートシンク81が設けられる。
【0174】
第1ヒートシンク81は、+Z方向に向かって突出した複数のフィンによって構成される。これらのフィンは、Y方向に並んでいる。各フィンは、X方向に延びるように形成される。第1ヒートシンク81は、第1ベースプレート15を介してレーザ光出力部4の構成部品(例えば固体レーザ結晶41)と熱的に結合されることになる。
【0175】
なお、図10に示す例では、横辺部15bと第1ヒートシンク81とが一体的に形成されているが、これに限らず、横辺部15bと第1ヒートシンク81とを別体に形成してもよい。
【0176】
-第2ベースプレート16-
図8図9および図10に示すように、第2ベースプレート16は、X方向に延びる金属製の板状部材として構成されており、筐体10の6面のうちの一部、特に底面10dのオフセット部16aを区画している。
【0177】
特に、本実施形態に係る第2ベースプレート16は、-Y側から見てZ型に形成されている。第2ベースプレート16をZ型とみなしたときの上辺が、本実施形態におけるオフセット部16aに相当する。X方向において、上辺としてのオフセット部16aの長さは、第2ベースプレート16をZ型とみなしたときの底辺の長さよりも長くなるように設定されている。
【0178】
第2ベースプレート16は、Y方向においては左側面10lと右側面10rとの間、より詳細には、第1ベースプレート15と第3ベースプレート17との間に配置されている。第2ベースプレート16は、ネジ等の締結具(不図示)を介して第1ベースプレート15および第3ベースプレート17によって支持されている。
【0179】
第2ベースプレート16は、Z方向においては天面10uの下方に配置されている。第2ベースプレート16は、第1ベースプレート15の横辺部15bよりも-Z側に配置される。具体的に、第2ベースプレート16において、Z型の上辺としてのオフセット部16aは、第1ベースプレート15の縦辺部15aをZ方向に2分したときの+Z側部分(下側部分)と略同じZ位置に配置されている。また、第2ベースプレート16において、Z型の底辺に相当する部分は、左側面10lおよび右側面10rにおける+Z側の端部(下端部)と略同じZ位置に配置されている。
【0180】
ここで、第2ベースプレート16におけるオフセット部16aにおける+Y側の端部(左端部)と、第1ベースプレート15における縦辺部15aの右側面との間には、オフセット部16aおよび前記右側面の隙間を液密状に封止するシール部材(不図示)が設けられている。
【0181】
同様に、オフセット部16aにおける-Y側の端部(右端部)と、第3ベースプレート17における縦辺部17aの左側面との間には、オフセット部16aおよび前記左側面の隙間を液密状に封止するシール部材(不図示)が設けられている。
【0182】
第2ベースプレート16は、X方向においては、前面10fと背面10bとの間に配置されている。第2ベースプレート16は、第1ベースプレート15および第3ベースプレート17を介して前面10fおよび背面10bに固定されるようになっている。第2ベースプレート16と前面10fおよび背面10bとを直に締結してもよい。
【0183】
続いて、オフセット部16aについて詳述すると、本実施形態に係るオフセット部16aは、X方向と、Y方向とに沿って広がる厚板状に形成されている。そして、オフセット部16aをX方向に2分したときの+X側部分(前後方向における後側部分)には、本実施形態に係る出射窓6が形成されている。
【0184】
出射窓6は、オフセット部16aの+X側部分を貫く出射孔61と、この出射孔61に嵌め込まれるカバーガラス62と、出射孔61およびカバーガラス62の隙間を液密状に封止するシール部材(不図示)と、を有する(図10を参照)。カバーガラス62は、レーザ光走査部5によって偏向されて照射エリアR1に向かうレーザ光を透過する光学部材として構成されている。このカバーガラス62は、照射エリアR1の形状に対応した矩形状、例えば照射エリアR1と略相似の関係にあり、かつ当該照射エリアR1よりも小サイズの矩形状に形成することができる。
【0185】
また、図8図9および図10に示すように、オフセット部16aの上下両面のうち、-Z側に向かって面する上面は、第1ケーシング50を下方から支持する。より詳細には、オフセット部16aの上面には第1ケーシング50を締結することができ、この締結によって、第2ベースプレート16に対して第1ケーシング50を固定することができるようになっている。オフセット部16aの上面によって第1ケーシング50を支持する代わりに、当該上面がミラー収容部H11の一部を区画してもよい。
【0186】
-第3ベースプレート17-
図8図9および図10に示すように、第3ベースプレート17は、X方向に延びる金属製の板状部材として構成されており、筐体10に収容されている(言い換えると、筐体10の6面に包囲されている)。第3ベースプレート17の板厚は、筐体10の6面のうち、少なくとも左側面10lおよび右側面10rの板厚よりも大きくなるように設定されている。
【0187】
特に、本実施形態に係る第3ベースプレート17は、-X側から見てL字形状を有している。以下、第3ベースプレート17においてL字形状の縦辺に相当する部位を縦辺部17aと呼称し、L字形状の横辺に相当する部位を横辺部17bと呼称する場合がある。
【0188】
第3ベースプレート17は、Y方向においては左側面10lと右側面10rとの間に配置されており、第2ベースプレート16よりも-Y側に配置されている。第3ベースプレート17は、第2ベースプレート16を挟んで第1ベースプレート15よりも-Y側に配置されている。
【0189】
ここで、第3ベースプレート17における横辺部17bの右端部(+Y側の端部)と、筐体10の右側面10rとの間には、第3ベースプレート17および右側面10rの隙間を液密状に封止するシール部材(不図示)が設けられている。
【0190】
第3ベースプレート17は、Z方向においては、天面10uの下方に配置されている。
【0191】
第3ベースプレート17は、X方向においては、前面10fと背面10bとの間に配置されている。第3ベースプレート17は、不図示の締結具によって前面10fおよび背面10bに固定されるようになっている。
【0192】
続いて、第3ベースプレート17の縦辺部17aについて詳述すると、本実施形態に係る縦辺部17aは、照射方向としての-Z方向と、X方向とに沿って広がる厚板状に形成されている。Z方向において、第3ベースプレート17の縦辺部17aの寸法は、第1ベースプレート15の縦辺部15aの寸法よりも短い。この縦辺部17aは、第2ベースプレート16を-Y側から支持する。
【0193】
続いて、第3ベースプレート17の横辺部17bについて詳述すると、本実施形態に係る横辺部17bは、X方向と、Y方向とに沿って広がる厚板状に形成されている。この横辺部17bには、種々の部品を取り付けることができる。横辺部17bに取り付けられる部品には、レーザ光走査部5の第1制御基板53が含まれる。また、図10に示すように、横辺部15bにおいて-Z側に向かって面する下面には、本実施形態に係るヒートシンクとしての第2ヒートシンク82が設けられる。
【0194】
第2ヒートシンク82は、+Z方向に向かって突出した複数のフィンによって構成される。これらのフィンは、Y方向に並んでいる。各フィンは、X方向に延びるように形成される。この第2ヒートシンク82は、第3ベースプレート17を介して励起光生成部2の構成部品(例えば励起光源21)と熱的に結合されることになる。
【0195】
つまり本実施形態では、レーザ光出力部4を冷却するための第1ヒートシンク81は、励起光生成部2を冷却するための第2ヒートシンク82とは別体に構成されるようになっている。
【0196】
なお、図10に示す例では、横辺部17bと第2ヒートシンク82とが一体的に形成されているが、これに限らず、横辺部17bと第2ヒートシンク82とを別体に形成してもよい。
【0197】
また本実施形態のように、第1ベースプレート15および第3ベースプレート17を別体とした場合、第1ベースプレート15に設けられる第1ヒートシンク81と、第3ベースプレート17に設けられる第2ヒートシンク82は、互いに別体となる。しかしながら、本開示はそうした構成には限定されず、第1ヒートシンク81と第2ヒートシンク82とを一体的に構成することもできる。
【0198】
(第1収容部H1および第2収容部H2の概略)
前述したように、筐体10の内部空間は、第1ベースプレート15、第2ベースプレート16および第3ベースプレート17によって複数の収容部に仕切られる。
【0199】
そうした収容部として、本実施形態に係る筐体10には、光学部材としてのカバーガラス62が設けられた第1収容部H1と、カバーガラス62の周囲の少なくとも一部を該カバーガラス62よりも照射エリアR1に向けて突出させてなる第2収容部H2と、が形成される(図10の破線Slを参照)。
【0200】
第1収容部H1と第2収容部H2は、照射方向(-Z方向)に沿って並んでおり、照射方向の一側(-Z側)には第1収容部H1が配置される一方、照射方向の他側(+Z側)には第2収容部H2が配置される。第1収容部H1と第2収容部H2との境界は、第1ベースプレート15、第2ベースプレート16および第3ベースプレート17によって区画される。
【0201】
第1収容部H1は、励起光の生成、レーザ光の生成およびレーザ光の偏向に関連した光学部品を収容する。具体的に、本実施形態に係る第1収容部H1は、励起光生成部2と、励起光導光部3と、レーザ光出力部4と、レーザ光走査部5と、を収容する。
【0202】
図10に示す例では、第1収容部H1は、天面10uと、前面10fの上側部分と、背面10bの下側部分と、左側面10lの上側部分と、右側面10rの上側部分と、底面10dのうち第2ベースプレート16によって構成される部分と、第1ベースプレート15と、第3ベースプレート17と、によって包囲された空間として構成されている。
【0203】
一方、第2収容部H2は、第1収容部H1に収容される光学部品の冷却に関連した冷却部品を収容する。具体的に、本実施形態に係る第2収容部H2は、第1収容部H1に収容される光学部品と熱的に結合された第1ヒートシンク81および第2ヒートシンク82と、第1ヒートシンク81に送風する送風部としての第1送風ファン83と、第2ヒートシンク82に送風する同じく送風部としての第2送風ファン84と、を収容する。
【0204】
図10に示す例では、第2収容部H2は、前面10fの下側部分と、背面10bの下側部分と、左側面10lの下側部分と、右側面10rの下側部分と、底面10dのうちオフセット部16aを除いた非オフセット部18によって構成される部分と、第1ベースプレート15と、第3ベースプレート17と、によって包囲された空間として構成される。
【0205】
また、第1収容部H1および第2収容部H2のうち、少なくとも第1収容部H1は、国際電気標準化会議(International Electrotechnical Commission:IEC)によって定められたIP規格を満足するように構成されている。これにより、固体レーザ結晶41、第1ミラー51a等の光学部品を被水させることなく、マーカヘッド1の水洗いを行うことができる。このことは、マーカヘッド1の洗浄容易性の向上に資する。
【0206】
また、第1収容部H1および第2収容部H2を構成する筐体10は、水洗い時に水が溜まり難い外観形状とすることもできる。そうした外観形状は、例えば天面10dをXY平面に対して傾斜させることで実現可能である。そうした外観形状は、マーカヘッド1のサニタリ性の向上に資する。
【0207】
その際、前述のようにカバー部材13によって前面10fを開閉するように構成したことで、水洗い後の拭き取り(特に、出射窓6付近の拭き取り)が容易になる。このことは、マーカヘッド1のメンテナンス性の向上に資する。
【0208】
(第1収容部H1の詳細)
ここで、前述した第1収容部H1および第2収容部H2のうち、第1収容部H1はさらに、照射方向に直交する方向(XY方向)、例えばY方向に沿って並んだ3つの収容部に仕切られている。具体的に、本実施形態に係る筐体10は、ミラー収容部H11と、結晶収容部H12と、基板収容部H13と、を有する。
【0209】
ミラー収容部H11は、レーザ光走査部5における第1ミラー51aおよび第2ミラー52aを収容する。本実施形態に係るミラー収容部H11は、第1ミラー51aおよび第2ミラー52aを気密状に封止可能な第1ケーシング50によって区画される。前述のように、オフセット部16aを用いて第1ケーシング50を区画してもよい。オフセット部16aを用いて第1ケーシング50を区画する場合、オフセット部16aと第1ケーシング50との間に緩衝材が設けられることが好ましい。オフセット部16aは底面10dの一部であるため、歪み、振動等の影響を受けやすく、緩衝材により当該外部からの影響が第1ケーシング、及び第1ケーシングに収容される部材への影響を低減することができる。あるいは、後述の結晶収容部H12と同様に、第1ベースプレート15を用いて結晶収容部H12を区画してもよい。
【0210】
ここで、第1ケーシング50は、-Z側に向かって開口した有底箱状に形成されている。第1ケーシング50は、第1ベースプレート15に保持されている。
【0211】
X方向における第1ケーシング50の寸法は、X方向におけるオフセット部16aの寸法と略一致する。同様に、Y方向における第1ケーシング50の寸法は、Y方向におけるオフセット部16aの寸法と略一致する。
【0212】
第1ケーシング50における-Z側の開口部は、例えば、図10に示す蓋部59によって閉塞することができる。蓋部59によって開口部を封止する代わりに、例えば、天面10uによって第1ケーシング50の開口部を封止してもよい。天面10uによって第1ケーシング50の開口部を封止する場合は、天面10uと第1ケーシング50との間に緩衝材を設けることが好ましい。これにより、天面10uに生じる歪み、振動等の影響が、第1ケーシング50、および第1ケーシングに収容される部材に及ぶことを低減することができる。
【0213】
また、第1ケーシング50には、少なくとも4つの貫通孔50a,50b,50c,50dが形成される。4つの貫通孔50a,50b,50c,50dのうち、第1ケーシング50の左側壁部に形成される第4貫通孔50aは、マーカヘッド1の組立によって第1ベースプレート15の第3貫通孔15fと連通し、該第3貫通孔15fおよび該第3貫通孔15fに嵌め込まれる光学部材15hとともにとともに第2入射窓92を構成する。
【0214】
一方、4つの貫通孔50a,50b,50c,50dのうち、第1ケーシング50の底部に形成される第5貫通孔50bは、第1ケーシング50ひいてはオフセット部16aをX方向に2分したときの+X側に配置される。この第5貫通孔50bには、光学素子としてのデフォーカスレンズ57が設けられる。このデフォーカスレンズ57については後述する。
【0215】
また、4つの貫通孔50a,50b,50c,50dのうち、第1ケーシング50の右側壁部(-Y側に位置する壁部)に形成される第6貫通孔50cは、第1ケーシング50ひいてはオフセット部16aをX方向に2分したときの+X側に配置される。この第6貫通孔50cには、第2スキャナ52を構成する第2モータ52bを挿入して固定することができる。
【0216】
また、4つの貫通孔50a,50b,50c,50dのうち、第1ケーシング50の後壁部(+X側に位置する壁部)に形成される第7貫通孔50dは、第1ケーシング50ひいてはオフセット部16aをX方向に2分したときの+X側に配置される。Z方向において、第7貫通孔50dは、第6貫通孔50cよりも+Z側に配置される。また、Y方向において、第7貫通孔50dの中心(第7貫通孔50dを断面円形状とみなしたときの円の中心)は、カバーガラス62の光軸と略同じ位置に配置される。この第7貫通孔50dには、第1スキャナ51を構成する第1モータ51bを挿入して固定することができる。
【0217】
結晶収容部H12は、照射方向に沿って広がる仕切面15gを有する支持プレート(第1ベースプレート15)によって区画され、該仕切面15gに対してミラー収容部H11とは反対側(図例では、+Y側)に配置されて固体レーザ結晶41を収容する。結晶収容部H12は、固体レーザ結晶41等、レーザ光出力部4を構成する光学部品を収容する。結晶収容部H12は、そうした光学部品を気密状に封止可能な第2ケーシング40によって区画される。本実施形態に係る結晶収容部H12は、密閉状態で非線形光学結晶45を収容することができる。
【0218】
ここで、第2ケーシング40は、-Y側に向かって開口した有底箱状に形成されている。第2ケーシング40は、第1ベースプレート15の縦辺部15aに取り付けられ、該縦辺部15aの仕切面15gによって-Y側から支持される。第2ケーシング40における-Y側の開口部は、仕切面15gによって閉塞することができる。
【0219】
また、結晶収容部H12の内部空間は、X方向に並んだQスイッチ収容部H121および波長変換部H122に2分することができる。Qスイッチ収容部H121は、Qスイッチ43を収容する空間である。波長変換部H122は、非線形光学結晶35を収容する空間である。
【0220】
ここで、Qスイッチ収容部H121と波長変換部H122は、X方向に沿って並んでおり、双方とも第2ケーシング40および仕切面15gによって包囲された空間として構成されている。より詳細には、第2ケーシング40は、Qスイッチ収容部H121に対応する箱状体と、波長変換部H122に対応する箱状体とにより構成され、それぞれの箱状体と仕切面15gによって包囲された空間がQスイッチ収容部H121と、波長変換部H122と、である。Qスイッチ収容部H121と波長変換部H122は、不図示の光学部材によって光学的に結合されている。このようにQスイッチ収容部H121と、波長変換部H122とが別の空間として構成されることにより、後述するQスイッチ43で生じた不純物が後述する波長変換素子45に付着して、レーザ光の出力が低減する虞が低減する。
【0221】
基板収容部H13は、ミラー収容部H11に対して結晶収容部H12とは反対側に配置され、第1制御基板53を収容する。本実施形態に係る基板収容部H13は、第1収容部H1の内部空間のうち、ミラー収容部H11および結晶収容部H12を除いた空間として区画される。
【0222】
つまり本実施形態では、「所定の部材がミラー収容部H11に収容されている」の文言は、その部材が第1ケーシング50によって六方を包囲されていることを示し、「所定の部材が結晶収容部H12に収容されている」の文言は、その部材が第2ケーシング40および仕切面15gによって六方を包囲されていることを示す。
【0223】
対して、「所定の部材が基板収容部H13に収容されている」の文言は、その部材が、筐体10内におけるミラー収容部H11および結晶収容部H12以外を除いた空間に配置されていることを示しているに過ぎない。もちろん、こうした構成に限らず、第1ケーシング50および第2ケーシング40と同様に、基板収容部H13専用のケーシング(いわば第3ケーシング)を設けてもよい。
【0224】
(第2収容部H2の詳細)
一方、第2収容部H2は、板状部材として第1板状部材18lおよび第2板状部材18rによって、筐体10内の+Z側部分に仕切られる。この第2収容部H2は、照射方向に直交する方向、例えば、ミラー収容部H11、結晶収容部H12および基板収容部H13の並び方向(Y方向)に間隔を空けて配置された2つの空間を有する。
【0225】
そうした2つの空間として、本実施形態に係る第2収容部H2は、結晶側収容部H21および光源側収容部H22を有する。ここで、結晶側収容部H21と光源側収容部H22とY方向に離れて配置されることから、結晶側収容部H21と光源側収容部H22との間には、第2収容部H2に属さない空間が仕切られることになる。
【0226】
本実施形態に係る第1板状部材18lおよび第2板状部材18rは、部材を収容する空間としての第2収容部H2に加え、スキャナミラーとしての第1ミラー51aと照射エリアR1とを結ぶレーザ光の光路のうち、照射エリアR1寄りの光路(+Z側の光路)を含んだ空間を仕切るように構成されている。以下、この空間を「光路区画部」と呼称し、これに符号H3を付す。本実施形態に係る光路区画部H3は、第1板状部材18l、第2板状部材18rおよびカバーガラス62によって、+Y側、-Y側および-Z側の3方が囲われた空間として構成されている。
【0227】
なお、図例では、光路区画部H3は、+Z側の下端部が開放された空間として構成されているが、そうした構成には限定されない。光路区画部H3の+Z側端部をガラス等の光学部材によって覆ってもよい。光路区画部H3の+Z側端部を覆う光学部材は、カバーガラス62と択一的に具備してもよいし、カバーガラス62と併用してもよい。
【0228】
また、第2収容部H2を構成する2つの空間のうち、結晶側収容部H21は、第1ヒートシンク81および第1送風ファン83を収容する。第1ヒートシンク81と第1送風ファン83は、X方向に並んで配置される。
【0229】
ここで、前記説明と重複するが、本実施形態に係る第1ヒートシンク81は、レーザ光出力部4を構成する光学部品のうち、少なくとも第1ベースプレート15に取り付けられる光学部品と熱的に結合する。
【0230】
一方、第1送風ファン83は、図13に示すように第1ヒートシンク81よりも+X側に配置される。第1送風ファン83は、いわゆる軸流ファンによって構成されており、マーカコントローラ100から受ける制御信号にしたがって、第1ヒートシンク81を通過する気流を発生させる。第1送風ファン83は第1ヒートシンク81よりも-X側に配置されてもよい。本実施形態においては、+X側に設けられる接続カバー14に接続部分が覆われる電気ケーブル200を介して前記第1送風ファンを駆動するための電力や信号が供給されるため、第1送風ファン83が第1ヒートシンク81よりも+X側に設けられる構成であれば、配線に要するスペースが削減され、マーカヘッド1の小型化に有利である。
【0231】
図13の矢印Al1に示すように、第1送風ファン83によって生成された気流は、筐体10の前面10fに設けられた通気口12から結晶側収容部H21に流入する。そうして流入した気流は、X方向に沿って-X側から+X側に向かって流れることで、第1ヒートシンク81および第1送風ファン83を通過する。第1送風ファン83を通過した気流は、図13の矢印Al2に示すように、筐体10の背面10bに設けられた排気口から流出する。
【0232】
ここで、筐体10の背面10bには、気流の流れ方向を整える第1整流板85が取り付けられている(図6も参照)。この第1整流板85は、図13の矢印Al3に示すように、背面10bから流出する気流の流れ方向を、筐体10からワークWに向かう方向の反対側(-Z側)に導く。これにより、排気とワークWとの衝突を抑制し、ひいてはワークWの姿勢を安定させる上で有利になる。
【0233】
光源側収容部H22は、第2ヒートシンク82および第2送風ファン84を収容する。第2ヒートシンク82と第2送風ファン84は、X方向に並んで配置される。
【0234】
本実施形態に係る第2ヒートシンク82は、基板収容部H13に収容される光学部品のうち、少なくとも第3ベースプレート17に取り付けられる励起光源21と熱的に結合する。
【0235】
一方、第2送風ファン84は、図12に示すように第2ヒートシンク82よりも+X側に配置される。第2送風ファン84は、第1送風ファン83と同様に軸流ファンによって構成されており、マーカコントローラ100から受ける制御信号にしたがって、第2ヒートシンク82を通過する気流を発生させる。第2送風ファン84は第2ヒートシンク82よりも-X側に配置されてもよい。本実施形態においては、+X側に設けられる接続カバー14に接続部分が覆われる電気ケーブル200を介して前記第1送風ファンを駆動するための電力や信号が供給されるため、第1送風ファン83が第2ヒートシンク82よりも+X側に設けられる構成であれば、配線に要するスペースが削減され、マーカヘッド1の小型化に有利である。
【0236】
図12の矢印Ar1に示すように、第2送風ファン84によって生成された気流は、筐体10の前面10fに設けられた通気口12から光源側収容部H22に流入する。そうして流入した気流は、X方向に沿って-X側から+X側に向かって流れることで、第2ヒートシンク82および第2送風ファン84を通過する。第2送風ファン84を通過した気流は、図12の矢印Ar2に示すように、筐体10の背面10bに設けられた排気口から流出する。
【0237】
ここで、筐体10の背面10bには、気流の流れ方向を整える第2整流板86が取り付けられている(図6も参照)。この第2整流板86は、図12の矢印Ar3に示すように、背面10bから流出する気流の流れ方向を、筐体10からワークWに向かう方向の反対側(-Z側)に変更する。これにより、排気とワークWとの衝突を抑制し、ひいてはワークWの姿勢を安定させる上で有利になる。
【0238】
以下、第1収容部H1および第2収容部H2のうち、第1収容部H1内に設けられる励起光生成部2、励起光導光部3、レーザ光出力部4、レーザ光走査部5等の構成について、筐体10内での相対的な位置関係を交えつつ、詳細に説明する。
【0239】
(励起光生成部2)
励起光生成部2は、電力供給部104から供給される電力(駆動電流)に基づいてレーザ励起光(励起光)を生成する励起光源21と、励起光源21を支持する金属プレート22と、励起光源21の温度を整える温調部23と、マーカコントローラ100から入力された制御信号に基づいて励起光源21を支持する光源制御基板24と、を有する。
【0240】
励起光生成部2を構成する励起光源21、金属プレート22、温調部23および光源制御基板24は、いずれも基板収容部H13に収容されている。これにより、励起光生成部2、特に励起光源21は、ミラー収容部H11を挟んでレーザ光出力部4の反対側に配置されることになる。これにより、励起光生成部2とレーザ光出力部4とを可能な限り離間させることができる。
【0241】
-金属プレート22-
金属プレート22は、金属製かつ薄板状の部材として構成されている。金属プレート22は、図11および図12に示すように、第3ベースプレート17をX方向において+X側部分と、中央部分と、-X側部分とに3分したときの-X側部分に載置されている。金属プレート22は、第3ベースプレート17の上面(より詳細には、第3ベースプレート17の横辺部17bの上面)に締結されており、この第3ベースプレート17を介して第2ヒートシンク82と熱的に結合される。
【0242】
また、金属プレート22の上面には励起光源21が載置される一方、金属プレート22の下面と第3ベースプレート17との間には板状の温調部23が挟み込まれるようになっている。
【0243】
-励起光源21-
励起光源21は、電気ケーブル200を介して電力供給部104から電力が供給されるとともに、その電力に応じた励起光を生成するように構成されている。励起光源21によって生成される励起光の出力は、駆動電流が大きくなるにしたがい増加する。
【0244】
本実施形態に係る励起光源21は、レーザダイオード(Laser Diode:LD)で構成されている。励起光源21から発振されるレーザ光は、不図示のフォーカシングレンズ等によって集光されて、レ-ザ励起光(励起光)として出力される。励起光源21は、励起光導光部3を構成するファイバケーブル31に対し、光学的に結合されている。励起光源21から出力されるレーザ励起光は、ファイバケーブル31を介して励起光導光部3に導かれる。
【0245】
また、励起光源21は、図11および図12に示すように、矩形薄板状に形成されており、その厚み方向をZ方向に沿わせた姿勢で、金属プレート22の上面に固定されている。励起光源21は、金属プレート22と同じく、第3ベースプレート17をX方向において3分したときの-X側部分に配置されるようになっている。このように配置することで、本実施形態に係る励起光源21は、第2送風ファン84によって生成される気流の下流端部(第2送風ファン84に隣接した+X側端部)に比して、該気流の上流端部(第2送風ファン84から離間した-X側端部)に配置されることになる。
【0246】
また、励起光源21の一側面は、+X側かつ+Y側に向かって斜めに面しており、その斜めに面する一側面に、ファイバケーブル31の上流端部が接続されるようになっている。
【0247】
-温調部23-
温調部23は、所定の温度範囲内に収めるように励起光源21の温度を調整するように構成されている。ここで、温調部23によって実現される温度範囲(前記所定の温度範囲)は、マーカヘッド1の保証環境に基づいて設定され、好ましくはマーカヘッド1の保証環境よりも高温になるように設定され、さらに好ましくは40℃以上60℃以下に設定される。
【0248】
具体的に、本実施形態に係る温調部23は、略薄板状のペルチェ素子によって構成されており、第3ベースプレート17の上面(より詳細には、横辺部17bの上面)と、金属プレート22の下面との間に挟持されている。温調部23は金属プレート22の熱を排熱する。温調部23の側部には、該温調部23に電流を供給するためのハーネス(不図示)が接続されている。温調部23は、ハーネスを介して供給される電流によって、金属プレート22側の面で吸熱し、第3ベースプレート17側の面で発熱する。
【0249】
-光源制御基板24-
光源制御基板24は、マーカコントローラ100と電気的に接続されており、電力供給部104から励起光源21に供給される電力を制御する。
【0250】
本実施形態に係る光源制御基板24は、略矩形薄板状の回路基板によって構成されている。光源制御基板24は、その表裏両面をZX方向に沿わせた姿勢で配置されており、第3ベースプレート17の例えば縦辺部17aに対し、-Y側から締結されている(締結構造については不図示)。
【0251】
光源制御基板24はまた、図12に示すように、Z方向においては励起光源21よりも-Z側に配置されており、不図示の配線類によって、励起光源21と電気的に接続されている。
【0252】
(励起光導光部3)
導光光学系としての励起光導光部3は、励起光源21とレーザ光出力部4における固体レーザ結晶41とを光学的に結合するファイバケーブル31と、所定の曲げ半径で該ファイバケーブル31を巻回するように構成されたファイバガイド32と、を有する。ファイバケーブル31およびファイバガイド32は、いずれも筐体10内の基板収容部H13に収容されている。
【0253】
-ファイバケーブル31-
ファイバケーブル31は、いわゆる光ファイバによって構成されており、その一端部(光の伝搬方向で見た一端部)は励起光源21に接続されている一方、その他端部(光の伝搬方向において、前記一端部の反対側に位置する端部)は、第1入射窓91に接続されている。
【0254】
ファイバケーブル31の他端部は、第1入射窓91および後述の第1偏向ミラー42を介して固体レーザ結晶41と光学的に結合されている。また、ファイバケーブル31の一端部と他端部とを結ぶ中途の部位は、その少なくとも一部がファイバガイド32に巻回されている。
【0255】
ファイバケーブル31は、励起光源21において生成された励起光を導光し、これを固体レーザ結晶41まで導くことができる。
【0256】
-ファイバガイド32-
ファイバガイド32は、所定の曲げ半径で該ファイバケーブル31を巻回するように構成されている。ファイバガイド32の曲げ半径は、ファイバケーブル31の最小曲げ半径以上に設定される。
【0257】
具体的に、本実施形態に係るファイバガイド32は、ファイバケーブル31を幾重にも巻回可能な略円筒形のリール状に形成されている。このファイバガイド32は、円筒形状の中心軸をY方向に沿わせた姿勢で配置されており、第3ベースプレート17の縦辺部17aに対して-Y側から取り付けられている。
【0258】
また、ファイバガイド32は、図12に示すように、X方向においては、光源制御基板24の前端部から第2制御基板54の後端部にかけての範囲に配置される。ファイバガイド32は、図11に示すように、Y方向においては、光源制御基板24および第2制御基板54よりも+Y側、かつ、第1ケーシング50の右側壁部よりも-Y側に配置される。
【0259】
(レーザ光出力部4)
レーザ光出力部4は、励起光の光路を折り曲げる前記第1偏向ミラー42と、励起光に基づいて基本波を生成する前記固体レーザ結晶41と、マーカコントローラ100から入力される制御信号に基づいて基本波をパルス発振させるQスイッチ43と、基本波を反射するための第1反射ミラー44と、を有する。これらの光学部品は、結晶収容部H12を2分したときのQスイッチ収容部H121内に気密状に収容される。なお、これらの光学部品のうち、少なくとも固体レーザ結晶41については、波長変換部H122に収容することもできる。
【0260】
レーザ光出力部4はまた、固体レーザ結晶41によって生成されたレーザ光(基本波)を受光し、該レーザ光を短波長側に波長変換する非線形光学結晶45と、第1反射ミラー44とともに共振光路を構成する第2反射ミラー46と、短波長側に波長変換されたレーザ光を共振光路から分離させるためのレーザ光分離部47と、レーザ光分離部47によって分離されたレーザ光の光路を折り曲げる第2偏向ミラー48と、を有する。これらの光学部品は、結晶収容部H12を2分したときの波長変換部H122内に気密状に収容される。
【0261】
特に、本実施形態に係るレーザ光出力部4は、いわゆるイントラキャビティ式のレーザ発振器として構成されている。すなわち、第1反射ミラー44から第2反射ミラー46へ至る途中には、Qスイッチ43と、第1偏向ミラー42と、固体レーザ結晶41と、レーザ光分離部47を構成する第1セパレータ47aと、非線形光学結晶45としての第2波長変換素子45bと、同じく非線形光学結晶45としての第1波長変換素子45aと、がこの順番に配置されている。換言すれば、第1反射ミラー44と、第2反射ミラー46と、第1反射ミラー44および第2反射ミラー46の間の各部材とが共振ユニットを構成し、第1波長変換素子45aと第2波長変換素子45bとが共振ユニットの内部に配置される。本実施形態において、レーザ光出力部4は、イントラキャビティ式のレーザ発振器として構成されているが、非線形光学結晶45が第1反射ミラー44と第2反射ミラー46との間に位置しないエクストラキャビティ式のレーザ発振器であってもよい。
【0262】
ここで、第1偏向ミラー42は、励起光導光部3によって導光されて第1入射窓91を通過する励起光の光軸(図11の符号A1に示すように、Y方向に沿って延びる光軸)と、共振光路の光軸(図11および図12の符号A2に示すように、X方向に沿って延びる光軸)と、を合流させるように配置されている。
【0263】
また、第1セパレータ47aは、例えば第3高調波を含んだレーザ光を、第1反射ミラー44と第2反射ミラー46とを結んだ共振光路から分離させるように配置されている。すなわち、このレーザ光出力部4は、固体レーザ結晶41から誘導放出された光子から成るレーザ光を、第1反射ミラー44と第2反射ミラー46との間で多重反射により増幅しつつ、短波長側に波長変換する。そうして増幅されたレーザ光は、レーザ光分離部47によって分離されて、レーザ光出力部4から出力する。
【0264】
また、レーザ光出力部4は、結晶収容部H12の外部に配置される部品として、Qスイッチ43を駆動するQスイッチドライバ49を有する。図13に示すように、Qスイッチドライバ49は、X方向において天面10uを2分したときの+X側部分に取り付けられている。Qスイッチドライバ49はまた、第1ベースプレート15の縦辺部15aよりも+Y側に配置されている。
【0265】
なお、Qスイッチドライバ49は、筐体10の左側面10l、背面10b等に取り付けてもよい。Qスイッチドライバ49は、筐体10の外面を構成する板状部材に取り付けることができる。
【0266】
-第1反射ミラー44-
第1反射ミラー44は、Qスイッチ収容部H121に収容されており、少なくとも基本波を反射するように構成されている。この第1反射ミラー44は、第2反射ミラー46とともに共振器を構成している。なお、本実施形態に係る第1反射ミラー44は、基本波を反射する全反射ミラーとして構成されている。
【0267】
また、本実施形態に係る第1反射ミラー44は、結晶収容部H12を区画する仕切面15gに取り付けられており、第1ベースプレート15を介して第1ヒートシンク81と熱的に結合されている。
【0268】
-第2反射ミラー46-
第2反射ミラー46は、波長変換部H122に収容されており、少なくとも基本波を反射するように構成されている。第2反射ミラー46は、第1反射ミラー44とともに共振器を構成している。なお、本実施形態に係る第2反射ミラー46は、基本波に加え、該基本波よりも高い波長を有する第2高調波と、該第2高調波よりもさらに高い波長を有する第3高調波とを反射する全反射ミラーとして構成されている。
【0269】
また、本実施形態に係る第2反射ミラー46は、第1反射ミラー44と同様に仕切面15gに取り付けられており、第1ベースプレート15を介して第1ヒートシンク81と熱的に結合されている。このように、精度の高い共振光路を構成するために、共振光路の両端である第1反射ミラー44と第2反射ミラー46とは同一の第1ベースプレート15により位置決めされることが好ましい。
【0270】
-Qスイッチ43-
Qスイッチ43は、Qスイッチ収容部H121に収容されており、固体レーザ結晶41にて生成された基本波をパルス発振させるように構成されている。具体的に、Qスイッチ43は、共振光路(共振器の光路)の光軸上に位置するように配置されており、固体レーザ結晶41と第1反射ミラー44との間に介在している。
【0271】
本実施形態に係るQスイッチ43は、Qスイッチドライバ49から印加されるRF信号に基づいて動作するいわゆるアクティブQスイッチである。すなわち、Qスイッチ43を仮にオン状態にすると、Qスイッチ43へ入射したレーザ光は、偏向されて共振光路から分離される。この場合、レーザ光の多重反射が規制された結果、固体レーザ結晶41での反転分布の生成が促される。
【0272】
そして、Qスイッチ43を所定期間にわたってオン状態にしてからオフ状態に切り替えると、レーザ光は、Qスイッチ43によって分離されずに多重反射を行って、その多重反射により増幅される。この場合、高出力なレーザ光がパルス発振されることになる。
【0273】
また、本実施形態に係るQスイッチ43は、第1反射ミラー44等と同様に仕切面15gに取り付けられており、第1ベースプレート15を介して第1ヒートシンク81と熱的に結合されている。
【0274】
-Qスイッチドライバ49-
Qスイッチドライバ49は、筐体10の内部かつ結晶収容部H12の外部に収容されており、マーカコントローラ100から入力される制御信号に基づいて、Qスイッチ43に印加されるRF信号を生成する。
【0275】
Qスイッチドライバ49は、金属製の支持プレートを介して天面10uに取り付けられており、その支持プレートおよび天面10uを介して筐体10と熱的に結合されている。
【0276】
-第1偏向ミラー42-
第1偏向ミラー42は、Qスイッチ収容部H121に収容されており、X方向においてQスイッチ43と固体レーザ結晶41との間に配置されている。本実施形態に係る第1偏向ミラー42は、いわゆるビームスプリッターによって構成されている。第1偏向ミラー42は、第1入射窓91から+Y側に向かって入射した励起光については、X方向に沿って伝搬するように全反射する。一方、第1偏向ミラー42は、X方向に沿って伝搬する基本波については、反射せずに透過する。第1偏向ミラー42を透過する基本波は、Qスイッチ43を介して第1反射ミラー44に至る。
【0277】
また、本実施形態に係る第1偏向ミラー42は、第1反射ミラー44等と同様に仕切面15gに取り付けられており、第1ベースプレート15を介して第1ヒートシンク81と熱的に結合されている。
【0278】
-固体レーザ結晶41-
固体レーザ結晶41は、Qスイッチ収容部H121に収容されており、反転分布を形成可能なレーザ媒質によって構成されている。固体レーザ結晶41は、その端面にレーザ励起光が入射した際に、入射したレーザ励起光に対応した誘導放出を行うように構成されている。誘導放出によって放出される光子の波長(いわゆる基本波長)は、固体レーザ結晶41の具体的な構成に応じて増減するもものの、本実施形態では1μm前後の赤外域にある。
【0279】
本実施形態では、固体レーザ結晶41を構成するレーザ媒質として、ロッド状のNd:YVO(イットリウム・バナデイト)が用いられている。ロッド状とされた固体レーザ結晶41の一端面からレーザ励起光が入射するとともに、その他端面から基本波長を有するレーザ光(いわゆる基本波)を出射するようになっている(いわゆるエンドポンピングによる1方向励起方式)。この例では、基本波長は1064nmに設定されている。一方、レーザ励起光の波長は、誘導放出を促すべく、Nd:YVOの吸収スペクトラムの中心波長付近に設定されている。ただし、この例に限らず、他のレーザ媒質として、例えば希土類をドープしたYAG、YLF、GdVO等を用いることもできる。レーザ加工装置Lの用途に応じて、様々な固体レーザ媒質を用いることができる。
【0280】
また、本実施形態に係る固体レーザ結晶41は、第1反射ミラー44等と同様に仕切面15gに取り付けられており、第1ベースプレート15を介して第1ヒートシンク81と熱的に結合されている。
【0281】
-非線形光学結晶45-
非線形光学結晶45は、固体レーザ結晶41により生成された基本波を受光するとともに、該基本波の波長よりも高い波長を有する第2高調波を生成する第1波長変換素子45aと、その第2高調波よりも高い波長を有する第3高調波を生成する第2波長変換素子45bと、を組合わせて構成される。第1波長変換素子45aおよび第2波長変換素子45bは、双方とも波長変換部H122に収容されている。
【0282】
第1波長変換素子45aは、第2高調波を生成可能な非線形光学結晶とされており、基本波が入射したときに、その基本波の周波数を2倍にして第2高調波として出射する(Second Harmonic Generation:SHG)ように構成されている。すなわち、第1波長変換素子45aに対して基本波を入射させたときに生成されるレーザ光の波長は、500nm前後の可視光域にある。特に本実施形態では、第2高調波の波長は532nmに設定されている。
【0283】
また一般に、第1波長変換素子45aによる変換効率は100%を下回る。そのため、第1波長変換素子45aに基本波を入射させると、基本波と第2高調波とが混在したレーザ光が出射されるようになっている。
【0284】
なお、本実施形態では、第1波長変換素子45aとしてLBO(LiB)を用いた。ただし、この例に限らず、第1波長変換素子45aとして、種々の有機非線形光学材料、無機非線形光学材料等を利用することができる。
【0285】
第2波長変換素子45bは、第3高調波を生成可能な非線形光学結晶とされており、基本波と第2高調波とが入射したとき(特に、基本波と第2高調波の伝搬方向が等しいとき)に、その基本波の3倍の周波数を有する第3高調波に変換して出射する(Third Harmonic Generation:THG)ように構成されている。すなわち、第2波長変換素子45bに対して基本波と第2高調波を入射させたときに生成されるレーザ光の波長は、350nm前後の紫外域(具体的には、可視光域と紫外域との境界付近)にある。特に本実施形態では、第3高調波の波長は355nmに設定されている。
【0286】
また一般に、第2波長変換素子45bによる変換効率は100%を下回る。そのため、第1波長変換素子45aに基本波および第2高調波を入射させると、基本波と第2高調波と第3高調波とが混在したレーザ光が出射されるようになっている。
【0287】
なお、本実施形態では、第2波長変換素子45bとしてLBO(LiB)を用いた。ただし、この例に限らず、第2波長変換素子45bとして、種々の有機非線形光学材料、無機非線形光学材料等を利用することができる。
【0288】
また、本実施形態に係る非線形光学結晶45は、第1反射ミラー44等と同様に仕切面15gに取り付けられており、第1ベースプレート15を介して第1ヒートシンク81と熱的に結合されている。
【0289】
-レーザ光分離部47-
レーザ光分離部47は、波長変換部H122に収容されており、レーザ光の共振光路から第3高調波を分離して、レーザ加工用のUVレーザ光を生成するように構成されている。
【0290】
レーザ光分離部47は、複数の光学部品によって構成されている。具体的に、本実施形態に係るレーザ光分離部47は、レーザ光から第2高調波および第3高調波を抽出するための第1セパレータ47aと、第2高調波および第3高調波からなるレーザ光のビーム径を整えるための凹レンズ47bと、レーザ光から第3高調波を抽出するための第2セパレータ47cと、を有する。
【0291】
第1セパレータ47aは、いわゆるビームスプリッターであって、基本波を透過させる一方で、第2高調波と第3高調波を反射するように構成されている。この第1セパレータ47aは、第1反射ミラー44と第2反射ミラー46とを結んだ共振光路の光軸と交わるように配置されており、その光軸に対して、略45度傾斜した姿勢とされている。第1セパレータ47aによって反射されたレーザ光は、-Z側に向かって伝搬する。
【0292】
凹レンズ47bは、第1セパレータ47aによって反射されたレーザ光、つまり、共振光路から分離したレーザ光を透過させることにより、その透過したレーザ光のビーム径を拡大させるように構成されている。本実施形態では、凹レンズ47bは、第1セパレータ47aと第2セパレータ47cとの間に介在しているものの、そのような配置には限定されない。
【0293】
第2セパレータ47cは、第1セパレータ47aに類似したビームスプリッターであって、第2高調波を透過させる一方で、第3高調波を反射するように構成されている。この第2セパレータ47cは、凹レンズ47bを通過したレーザ光の光軸と交わるように配置されており、その光軸に対して、略45度傾斜した姿勢とされている。第2セパレータ47cによって反射されたレーザ光は、-X側に向かって伝搬する。
【0294】
また、レーザ光分離部47を構成する各光学部品は、第1反射ミラー44等と同様に仕切面15gに取り付けられており、第1ベースプレート15を介して第1ヒートシンク81と熱的に結合されている(図10も参照)。
【0295】
このように、精度の高い光路でレーザ光を生成するために、第1反射ミラー44、第2反射ミラー46、Qスイッチ43、第1偏向ミラー42、固体レーザ結晶41、非線形光学結晶45およびレーザ光分離部47は、いずれも同一の第1ベースプレート15により位置決めされることが好ましい。
【0296】
-第2偏向ミラー48-
第2偏向ミラー48は、波長変換部H122に収容されており、結晶収容部H12に収容される他の光学部材よりも-X側に配置されている。本実施形態に係る第2偏向ミラー48は、いわゆるビームスプリッターによって構成されている。第2偏向ミラー48は、第2セパレータ47cを通過して-X側に向かって伝搬するレーザ光を反射する。第2偏向ミラー48によって反射されたレーザ光は、-Y側に向かって伝搬するように偏向される。
【0297】
また、本実施形態に係る第2偏向ミラー48は、第1反射ミラー44等と同様に仕切面15gに取り付けられており、第1ベースプレート15を介して第1ヒートシンク81と熱的に結合されている。このように、生成されたレーザ光が出力される位置の精度を向上させるために、レーザ光出力部4から外部にレーザ光を出射する第2偏向ミラー48は第1反射ミラー44等と同様に第1ベースプレート15により位置決めされることが好ましい。
【0298】
最終的に、第2偏向ミラー48によって偏向されたレーザ光は、第2入射窓92を透過することで、レーザ光出力部4から第1ケーシング50内に入射することになる。図11に示すように、第1ケーシング50内に入射したレーザ光は、-Y側に向かって伝搬してレーザ光走査部5の第3偏向ミラー56に至る。
【0299】
(レーザ光走査部5)
レーザ光走査部5は、前述した第1スキャナ51、第2スキャナ52と、第1制御基板53および第2制御基板54に加え、中間偏向部55と、第3偏向ミラー56と、光学素子としてのデフォーカスレンズ57と、少なくとも第1スキャナ51の第1ミラー51a、および第2スキャナ52の第2ミラー52aを収容する第1ケーシング50と、を有する。
【0300】
以下、これらの構成要素についてレーザ発振時にレーザ光が到達する順番に説明する。
【0301】
-第3偏向ミラー56-
図11に示すように、第3偏向ミラー56は、第1ケーシング50内に収容されており、Y方向に沿って第2偏向ミラー48および第2入射窓92と並ぶように配置されており、これらの部材よりも-Y側に位置している。第3偏向ミラー56は、Y方向において第2入射窓92と光源制御基板24との間(言い換えると、第2入射窓92よりも-Y側、かつ、光源制御基板24よりも+Y側)に配置されている。
【0302】
第3偏向ミラー56は、例えば全反射ミラーによって構成されており、第1ケーシング50内に入射して-Y側に向かって伝搬するレーザ光を受光し、これを+X側に向けて反射する。第3偏向ミラー56によって反射されたレーザ光は、第2スキャナ52の第2ミラー52aに至る。なお、第3偏向ミラー56は、全反射ミラーに代えて一部レーザ光を透過するミラーによって構成してもよい。その場合、一部透過したレーザ光を用いて、レーザ光出力部4から第1ケーシング50内に入射するレーザ光の出力が検出されてもよい。
【0303】
-第2スキャナ52-
図14図15および図16に示すように、第2スキャナ52は、所定の第2方向にレーザ光を走査するための第2ミラー52aと、第2ミラー52aを回動可能に支持する第2モータ52bと、を有する。このうち、第2ミラー52aはミラー収容部H11に収容され、第2モータ52bは、その大部分が基板収容部H13に収容される。
【0304】
第2ミラー52aは、いわゆるガルバノミラーとして構成されている。第2ミラー52aは、固体レーザ結晶41によって生成されたレーザ光を、図11に示す第3偏向ミラー56等を介して受光する。第2ミラー52aは、そうして受光したレーザ光を+Z側に反射することで、該レーザ光を偏向する。第2ミラー52aが回動することにより、照射エリアR1におけるレーザ光の照射位置が第2方向に走査される。
【0305】
ここで、第2ミラー52aによる偏向方向である第2方向は、第1スキャナ51の第1ミラー51aによる偏向方向である第1方向と、照射方向としての-Z方向と、の双方に直交する方向であり、本実施形態ではX方向に一致するように設定されている。
【0306】
具体的に、第2ミラー52aは、略矩形板状の全反射ミラーであって、第2モータ52bの回転軸の先端に支持された状態で、ミラー収容部H11の室内に収容されている。第2ミラー52aは、第2モータ52bのシャフトと一体的に回転するようになっており、この第2モータ52bによって所定の第2回転軸Ac2まわりに回転されるように構成されている。第2ミラー52aによる偏向量、ひいては第2方向におけるレーザ光の照射位置は、この第2回転軸Ac2まわりの第2ミラー52aの回転角度に基づいて決定される。
【0307】
ここで、図14および図15に示すように、第2ミラー52aの回転中心である第2回転軸Ac2は、第1ミラー51aの回転中心である第1回転軸Ac1と、照射方向としてのZ方向と、の双方に直交するように延びており、本実施形態ではY方向に沿って延びるように設定されている。
【0308】
第2ミラー52aはまた、X方向に沿って第3偏向ミラー56と並ぶように配置されており、第3偏向ミラー56よりも+X側に位置している。第2ミラー52aはさらに、Y方向においては第1ミラー51aおよびデフォーカスレンズ57よりも-Y側に位置しており、Z方向においては第1ミラー51aおよびデフォーカスレンズ57よりも-Z側に位置している。
【0309】
第2モータ52bは、直流モータ等によって構成されるガルバノモータであって、第2回転軸Ac2を中心軸とした略円柱状に形成されている。第2モータ52bにおける第2回転軸Ac2方向(Y方向)の先端部(+Y側端部)は、第1ケーシング50における第6貫通孔50cに挿入されている。一方、第2回転軸Ac2方向において前記先端部の反対側に位置する他端部(第2モータ52bの-Y側端部)は、第6貫通孔50cから突出して基板収容部H13内に露出している。
【0310】
第2スキャナ52は、第2ミラー52aを介してレーザ光を反射する。第2ミラー52aによって反射されたレーザ光は、中間偏向部55、第1ミラー51aおよびデフォーカスレンズ57を介して出射窓6から出射する。その際、第2スキャナ52は、第2モータ52bによってレーザ光の反射角度を調整することで、照射エリアR1内でレーザ光を第2方向(X方向)に走査することができる。
【0311】
-中間偏向部55-
図14図15および図16に示すように、中間偏向部55は、第2ミラー52aおよび第1ミラー51aの間でレーザ光を中継する中間ミラー55aと、該中間ミラー55aを支持する台座部55bと、を有する。中間ミラー55aおよび台座部55bは、双方ともミラー収容部H11に収容される。
【0312】
中間ミラー55aは、例えば全反射ミラーによって構成されている。中間ミラー55aは、第2ミラー52aによって反射されたレーザ光を入射させるとともに、該レーザ光を第1ミラー51aに向けて反射する。
【0313】
中間ミラー55aはまた、Z方向に沿って第2ミラー52aと並ぶように配置されており、第2ミラー52aよりも+Z側に位置している。中間ミラー55aはさらに、Y方向に沿って第1ミラー51aと並ぶように配置されており、第1ミラー51aよりも-Y側に位置している。
【0314】
中間ミラー55aは、第2ミラー52aによって反射されて+Z側に向かって伝搬するレーザ光を受光し、これを+Y側に向けて反射する。中間ミラー55aによって反射されたレーザ光は、第1スキャナ51の第1ミラー51aに至る。
【0315】
台座部55bは、第1ケーシング50の底部に配置されており、中間ミラー55aを+Z側から支持する。本実施形態に係る台座部55bは、+Y側かつ-Z側に鏡面を向けるように中間ミラー55aを支持する。
【0316】
-第1スキャナ51-
図14図15および図16に示すように、第1スキャナ51は、所定の第1方向にレーザ光を走査するための第1ミラー51aと、第1ミラー51aを回動可能に支持する第1モータ51bと、を有する。このうち、第1ミラー51aはミラー収容部H11に収容され、第1モータ51bは、その大部分が基板収容部H13に収容される。
【0317】
第1ミラー51aは、いわゆるガルバノミラーとして構成されている。第1ミラー51aは、中間ミラー55aによって反射されたレーザ光を受光する。第1ミラー51aは、そうして受光したレーザ光を+Z側に反射することで、該レーザ光を偏向する。第1ミラー51aが回動することにより、照射エリアR1におけるレーザ光の照射位置が第1方向に走査される。
【0318】
ここで、図14および図15に示すように、第1ミラー51aによる偏向方向である第1方向は、前述した第2方向と、照射方向としてのZ方向と、の双方に直交する方向であり、本実施形態ではY方向に一致するように設定されている。
【0319】
なお、第1方向および第2方向は、本実施形態の設定には限定されない。第1方向をX方向に一致させかつ第2方向をY方向に一致させてもよいし、第1方向および第2方向をそれぞれX方向およびY方向に対して傾斜させてもよい。
【0320】
具体的に、第1ミラー51aは、略矩形板状の全反射ミラーであって、第1モータ51bの回転軸の先端に支持された状態で、ミラー収容部H11の室内に収容されている。第1ミラー51aは、第1モータ51bのシャフトと一体的に回転するようになっており、この第1モータ51bによって所定の第1回転軸Ac1まわりに回転されるように構成されている。第1ミラー51aによる偏向量、ひいては第1方向におけるレーザ光の照射位置は、この第2回転軸Ac2まわりの第1ミラー51aの回転角度に基づいて決定される。
【0321】
ここで、第1ミラー51aの回転中心である第1回転軸Ac1は、第2ミラー52aの回転中心である第2回転軸Ac2と、照射方向としての-Z方向と、の双方に直交するように延びており、本実施形態ではX方向に沿って延びるように設定されている。
【0322】
このように設定することで、第1回転軸Ac1および第2回転軸Ac2は、双方とも照射方向とは異なる方向、例えば照射方向に直交する方向(XY方向)に延びることになる。なお、第1回転軸Ac1および第2回転軸Ac2を照射方向に直交させる構成は必須ではなく、XY方向に対し、例えば20deg以内の傾斜角を持たせてもよい。
【0323】
また、本実施形態では、第1回転軸Ac1は、第2回転軸Ac2に対して+Z側にオフセットしているが、中間ミラー55aの構成次第では、第1回転軸Ac1と第2回転軸Ac2を同一平面上に配置することもできる。
【0324】
第1ミラー51aはまた、Y方向に沿って中間ミラー55aと並ぶように配置されており、中間ミラー55aよりも+Y側に位置している。第1ミラー51aはさらに、Z方向に沿って、カバーガラス62およびデフォーカスレンズ57と並ぶように配置されており、デフォーカスレンズ57よりも-Z側に位置している。このように構成した結果、本実施形態に係る第1ミラー51aは、出射窓6を挟んでワークW、ひいては照射エリアR1と向かい合うように配置されることになる。第1ミラー51aは出射窓6の直上方に位置しており、第1ミラー51aと出射窓6との間には、他の反射ミラーは非介在となっている。本実施形態では説明の便宜のために、第1ミラー51aと出射窓6との間に反射ミラーが介在しないものとして第1ミラー51aを定義するが、間に何らかの反射ミラーが介在することを排除するものではない。第1ミラー51aと出射窓6との間に反射ミラーが介在する場合、照射エリアR1に至る直前で照射エリアR1における照射位置を走査させるミラーを、第1ミラー51aとしてみなす。なお、第1ミラー51aと出射窓6との間では、第2ミラー52aの回転と第1ミラー51aの回転とによりレーザ光が通過する領域に広がりがあるため、介在させる反射ミラーは、レーザ光が通過する領域をカバーできる程度のサイズを有する。したがって、マーカヘッド1の小型化のために、第1ミラー51aと出射窓6との間に反射ミラーが介在しないことが好ましい。
【0325】
第1モータ51bは、直流モータ等によって構成されるガルバノモータであって、第1回転軸Ac1を中心軸とした略円柱状に形成されている。第1モータ51bにおける第1回転軸Ac1方向(X方向)の先端部(-X側端部)は、第1ケーシング50における第7貫通孔50dに挿入されている。一方、第1回転軸Ac1方向において前記先端部の反対側に位置する他端部(第1モータ51bの+Y側端部)は、第7貫通孔50dから突出して基板収容部H13内に露出している。
【0326】
第1スキャナ51は、第1ミラー51aを介してレーザ光を反射する。第1ミラー51aによって反射されたレーザ光は、デフォーカスレンズ57を通過して出射窓6から出射する。その際、第1スキャナ51は、第1モータ51bによってレーザ光の反射角度を調整することで、照射エリアR1内でレーザ光を第1方向(Y方向)に走査することができる。
【0327】
-デフォーカスレンズ57-
デフォーカスレンズ57は、第1ミラー51aによって偏向されたレーザ光を透過し、該レーザ光を照射方向に直交する外方向に拡散するように構成されている。本実施形態のように、Z方向を照射方向とした場合、拡散方向としての外方向は、XY平面に沿った方向となる。
【0328】
具体的に、デフォーカスレンズ57は、例えば1枚の両凹レンズによって構成することができる。この場合、デフォーカスレンズ57は、その中心軸をZ方向に沿わせた状態で第5貫通孔50bに嵌め込まれることになる。
【0329】
デフォーカスレンズ57はまた、第1ミラー51aと、出射窓6におけるカバーガラス62の中央部と、を結ぶ直線状に配置される。デフォーカスレンズ57は、Z方向において、第1ミラー51aとカバーガラス62との間(言い換えると、第1ミラー51aよりも+Z側、かつカバーガラス62よりも-Z側)に配置される。
【0330】
デフォーカスレンズ57はさらに、該デフォーカスレンズ57の光軸がカバーガラス62の光軸と同軸になるように配置されている。以下、デフォーカスレンズ57およびカバーガラス62の光軸を「レーザ出射軸」と総称し、これに符号Alを付す(図4も参照)。このレーザ出射軸Alは、Z方向に沿って延びており、第2ミラー52aおよび中間ミラー55aに対しては+Y側にオフセットする一方、第1ミラー51aの鏡面には交わるように構成されている。
【0331】
なお、光学素子としてのデフォーカスレンズ57の構成は、1枚の両凹レンズを用いたものには限定されない。複数枚のレンズを用いて光学素子を構成してもよいし、両凹レンズ以外のレンズを用いて光学素子を構成してもよい。またそもそも、デフォーカスレンズ57を用いることなくレーザ光走査部5を構成してもよい。
【0332】
-第2制御基板54-
第2制御基板54は、マーカコントローラ100および第2スキャナ52と電気的に接続されており、第2スキャナ52を制御するように構成されている。より詳細には、第2制御基板54は、マーカコントローラ100から入力される制御信号にしたがって第2モータ52bを駆動することで、第2ミラー52aの回転角度を制御することができる。
【0333】
本実施形態に係る第2制御基板54は、略矩形薄板状の回路基板によって構成されている。第2制御基板54は、その表裏両面をZ方向およびX方向に沿わせた姿勢で基板収容部H13に収容されており、第3ベースプレート17の例えば縦辺部17aに対し、-Y側から締結されている。
【0334】
第2制御基板54はまた、図12に示すように、X方向においては光源制御基板24よりも+X側に配置されており、Y方向においては第1ケーシング50および光源制御基板24よりも-Y側に配置されている。第2制御基板54はまた、不図示の配線類によって、第2モータ52bと電気的に接続されている。
【0335】
-第1制御基板53-
第1制御基板53は、マーカコントローラ100および第1スキャナ51と電気的に接続されており、第1スキャナ51を制御するように構成されている。より詳細には、第1制御基板53は、マーカコントローラ100から入力される制御信号にしたがって第1モータ51bを駆動することで、第1ミラー51aの回転角度を制御することができる。
【0336】
本実施形態に係る第1制御基板53は、略矩形薄板状の回路基板によって構成されている。第1制御基板53は、その表裏両面をZ方向およびX方向に沿わせた姿勢で基板収容部H13に収容されており、第3ベースプレート17の例えば縦辺部17aに対し、-Y側から締結されている。
【0337】
第1制御基板53はまた、図12に示すように、X方向に沿って第2制御基板54と並んで配置されており、光源制御基板24および第2制御基板54よりも+X側に位置している。第1制御基板53はまた、不図示の配線類によって、第1モータ51bと電気的に接続されている。
【0338】
<レーザ加工装置Sの主要動作・主要処理について>
図19は、レーザ加工装置Lの基本的な制御プロセスを例示するフローチャートである。以下、レーザ加工装置Lの主要動作・主要処理について、図19を参照して説明する。
【0339】
まず、図19のステップS1で、表示部303に表示された設定平面R2上で、印字加工されるべき加工パターンPpの入力が受け付けられる。この入力は、受付部103によって受け付けられ、制御部103によって読み込まれる。制御部103は、入力された加工パターンPpに基づいて印字データを生成する。この印字データは、加工パターンPpに対応して設定される、ワークW上でのレーザ光の軌跡(いわゆる走査線)等からなる。
【0340】
続くステップS2では、制御部103は、励起光源21に供給すべき電圧(供給電圧)を設定する。この設定の詳細は、図20および図21を参照して後述する。
【0341】
続くステップS3では、制御部103が光源制御基板24等に制御信号を入力することで、励起光源21に電力が供給される。これにより、励起光生成部2において励起光が生成され、その励起光がレーザ光出力部4に入力される。
【0342】
続くステップS4では、制御部103がQスイッチドライバ49等に制御信号を入力することで、Qスイッチ43がオンオフ制御されてUVレーザ光がパルス発振する。このレーザ光は、レーザ光出力部4から出力されてレーザ光走査部5に入力される。
【0343】
続くステップS5では、制御部103が第1制御基板および53および第2制御基板54等に制御信号を入力することで、UVレーザ光が2次元走査される。ここで言う2次元走査とは、2次元方向、すなわち本実施形態においてはXY平面に沿う方向にレーザ光の照射位置を移動させることを意味する。なお、レーザ光が照射されるワークWの形状は、XY平面に沿う2次元形状に限定されず、Z方向に異なる位置を有する3次元形状(Z方向の高さが変化する形状)であってもよい。
【0344】
その際、レーザ光走査部5では、第2ミラー52aによって偏向されたUVレーザ光が中間ミラー55aによって反射された後、第1ミラー51aによって再度偏向されることになる。第1ミラー51aによって偏向されたUVレーザ光は、図10および図18に示すように、デフォーカスレンズ57とカバーガラス62を順次通過した後、前述の光路区画部H3を通過することで、筐体10外に出射される。筐体10外に出射されたUVレーザ光は、ワークW上に設定される照射エリアR1へと照射される。ワークW上に照射されたUVレーザ光は、印字データにしたがって、走査線をなぞるように照射エリアR1内で2次元走査される。
【0345】
<励起光源21における発熱対策>
図20は、電力供給部104に係る回路構造について説明するためのブロック図であり、図21は、電力供給部104に係る制御プロセスを例示するフローチャートである。ここまでに説明したように、励起光源21には、電源部としての電力供給部104から電力が供給されるように構成されている。
【0346】
詳しくは、本実施形態に係る電力供給部104は、図20に示すように、外部から供給された交流電力を直流電力に変換して出力する直流電源104aと、直流電源104aから出力された電力をDC/DC変換するDC/DCコンバータ104bと、を有する。DC/DCコンバータ104bによって変換された電力(特に直流電力)は、LDによって構成された励起光源21に入力される。
【0347】
ここで、DC/DCコンバータ104bと、励起光源21との間には、継電器25が介在している。この継電器25は、DC/DCコンバータ104bと、励起光源21との間の電気的な接点を開閉する。
【0348】
継電器25は、例えば電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)によって構成することができる。本実施形態に係る継電器25は、このFETによって構成されており、PLC902、制御部103等から光源制御基板24を介して入力される制御信号に基づいて、前記電気的な接点を開閉する。
【0349】
従来、DC/DCコンバータ104bから継電を介して励起光源21に入力される出力電圧は、固定値とされていた。そして、励起光源21における順方向電圧(いわゆるVf)のバラツキは、継電器25で発熱させていた。なお、Vfにバラツキが生じる要因は、例えば、励起光源21自体に品質のバラツキが存在することであり、あるレーザ光の出力に対して必要なVfが異なる。このため、ワーストケースにおいてもレーザ光の出力を最低限確保するべく、DC/DCコンバータ104bの出力にマージンを持たせる(言い換えると、DC/DCコンバータ104bの出力電圧を多めに設定する)必要がある。
【0350】
しかしながら、そうした従来構成を用いた場合、継電器25における発熱量が大きくなる傾向にある。このことは、ヒートシンク等の発熱構造の大型化を招くため、励起光源21をマーカヘッド1に内蔵しようとしたときに、支障を来す可能性があった。
【0351】
そこで、本実施形態に係る制御部103は、電源部としての電力供給部104から出力されて励起光源21に入力される出力電圧を制御する。そのために、本実施形態では、図20に示すように、制御部103とDC/DCコンバータ104bとが電気的に接続されており、制御部103から出力される制御信号に基づいて、DC/DCコンバータ104bからの出力(前記出力電圧)が調整されるようになっている。
【0352】
さらに、本実施形態に係る制御部103は、継電器25において生じる電圧降下を検出するとともに、そうして検出した電圧降下に基づいて出力電圧を制御する。具体的に、この制御部103は、検出した電圧降下が所定値になるように出力電圧を制御する。そのために、本実施形態では、図20に示すように、継電器25の上流側の電圧をモニタする第1モニタ回路26と、継電器25の下流側の電圧をモニタする第2モニタ回路27と、が設けられている。制御部103は、第1モニタ回路26がモニタした電圧と、第2モニタ回路27がモニタした電圧と、の差分を算出することで、継電器25において生じる電圧降下を推定することができる。
【0353】
また、電圧降下の判定基準となる前記「所定値」は、例えば、励起光源21に1アンペア流した状態での2.5Vと設定することができる。なお、所定値の設定は、記憶部102に事前に記憶されており、必要に応じて制御部103が読み込むように構成されている。
【0354】
前述のように、所定値を2.5Vに設定した場合、制御部103は、継電器25において生じた電圧降下が2.5Vとなるように、DC/DCコンバータ104bの出力電圧を調整する。このように構成することで、DC/DCコンバータ104bの出力電圧にマージンを持たせる必要が無くなるため、その出力電圧を抑制し、継電器25で生じる発熱を抑制することができるようになる。
【0355】
図21は、電力供給部104に係る制御プロセスを例示するフローチャートである。この制御プロセスは、例えば、図19の制御プロセス中のステップS2で実行することができる。
【0356】
まず、図21のステップS101では、制御部103は、光源制御基板24を介して継電器25に制御信号を入力し、DC/DCコンバータ104bと励起光源21とを電気的に接続する。そして、制御部103は、電力供給部104に制御信号を入力し、DC/DCコンバータ104bの出力電圧を、継電器25を介して励起光源21に供給する。
【0357】
続くステップS102では、制御部103は、第1モニタ回路26および第2モニタ回路27の検出信号に基づいて、継電器25で生じた電圧降下を検出する。
【0358】
続くステップS103では、制御部103は、ステップS102で検出された電圧降下が、前述のように設定された所定値に一致するか否かを判定する。この判定がNOの場合、制御部103は、制御プロセスをステップS105に進め、DC/DCコンバータ104からの出力電圧を調整してステップS101に戻る。つまり、制御部103は、電圧降下が所定値に一致するまで、ステップS101~S103およびステップS105に係る処理を繰り返すように構成されている。なお、本実施形態において、制御部103は、継電器25で生じた電圧降下が所定値に一致するか否かを判断することとしたが(図21のステップS103)、本開示はこれに限られない。例えば、電圧降下が所定値の上下一定の範囲内に収まるか否かを判断してもよい。要するに、制御部103は、検出した電圧降下に基づいて出力電圧を制御してもよい。
【0359】
一方、ステップS103での判定がYESの場合、制御部103は、制御プロセスをステップS104に進め、DC/DCコンバータ104の出力調整を終了する(出力決定)。この場合、制御部103は、図21に示す処理を終了し、図19のステップS2からステップS3へ制御プロセスを進めることになる。以降の処理については、前述した通りである。
【0360】
<インジケータ11の点灯制御>
前述のように、インジケータ11を構成する第1ランプ11a、第2ランプ11bおよび第3ランプ11cは、マーカコントローラ100から入力される制御信号に応じて点灯する。例えば第1ランプ11aは、マーカヘッド1に電源が投入されている場合に発光する。一方、第2ランプ11bは、UVレーザ光の規格要求に応じて点灯し、第3ランプ11cは、UVレーザ光の照射状態、マーカヘッド1におけるエラー発生の有無等、レーザ加工装置Lの状態に応じて点灯する。点灯状態の詳細は、表1に示す通りである。
【0361】
具体的に、マーカコントローラ100は、キースイッチが「OFF」状態にある場合(KSW:OFF)、第1ランプ11a、第2ランプ11bおよび第3ランプ11cを全て消灯させる。
【0362】
マーカコントローラ100は、キースイッチが「POWER ON」状態にある場合(KSW:POWER ON)、第1ランプ11aのみを青色に発光させ、第2ランプ11bおよび第3ランプ11cを2つとも消灯させる。
【0363】
マーカコントローラ100は、キースイッチが「LASER ON」状態にある場合(KSW:LASER ON)、第1ランプ11aを青色に発光させて第2ランプ11bを緑色に発光させるとともに、第3ランプ11cについては消灯状態を保持する。
【0364】
マーカコントローラ100は、マーカヘッド1においてUVレーザ光の出射準備が整っている場合(レディ状態)、第1ランプ11aを青色に発光させるとともに、第2ランプ11bおよび第3ランプ11cを2つとも緑色に発光させる。
【0365】
マーカコントローラ100は、マーカヘッド1からUVレーザ光を出射している最中(レーザ照射中)、第1ランプ11aを青色に発光させて第2ランプ11bを黄色に発光させるとともに、第3ランプ11cを緑色に発光させる。
【0366】
マーカコントローラ100は、レーザ加工装置Lにおいてユーザに通知すべき警告が発生した場合(警告エラー発生)、第1ランプ11aを青色に発光させて第2ランプ11bを緑色に発光させるとともに、第3ランプ11cを橙色に発光させる。
【0367】
マーカコントローラ100は、レーザ加工装置Lにおいてなんらかの異常が発生した場合(異常エラー発生)、第1ランプ11aを青色に発光させて第2ランプ11bを緑色に発光させるとともに、第3ランプ11cを赤色に発光させる。
【0368】
マーカコントローラ100は、レーザ加工装置Lがインターロック状態にある場合(例えば、安全端子台がオフ状態にある場合)、第1ランプ11aを青色に発光させて第2ランプ11bを消灯するとともに、第3ランプ11cを赤色に発光させる。
【0369】
このように、筐体10の前面10fに設けたインジケータ11の点灯状態を制御することで、レーザ加工装置Lの状態をユーザに直感的に視認させることができるようになる。
【0370】
【表1】
【0371】
<加工設備500およびマーカヘッド1の設定>
図18は、マーカヘッド1および支持部材501における各種寸法について説明するための図である。図17Aおよび図17Bに示したように、マーカヘッド1は、TTO等の印刷装置1001と置換されることで、加工設備500の支持部材501に取り付けられる。支持部材501に取り付けられたマーカヘッド1は、シート状のフィルムによって構成されるワークWに向けてUVレーザ光を照射し、そのワークWに含有されるUV反応層にて化学反応を引き起こすことで、ワークWに対する印字加工を実行する。
【0372】
本実施形態に係る加工設備500およびマーカヘッド1は、そうした利用態様に適した設定とされている。以下、加工設備500およびマーカヘッド1に関する設定、ならびに、加工設備500とマーカヘッド1との相対的な位置関係について順番に説明する。
【0373】
まず、本実施形態に係る加工設備500は、ワークWを搬送するように駆動する搬送ローラ502に加えて、搬送ローラ502の+Y側に配置されかつ+Z側からワークWが巻き掛けられる第1従動ローラ504lと、搬送ローラ502の-Y側に配置されかつ-Z側からワークWが巻き掛けられる第2従動ローラ504rと、を有する。
【0374】
駆動ローラとしての搬送ローラ504は、搬送方向AtとしてのY方向に沿って、1500mm/s以上2000mm/s以下の速度でワークWを搬送する。搬送ローラ504によって搬送されるワークWは、搬送ローラ502、第1従動ローラ504lおよび第2従動ローラ504rによって規定される移動経路に沿って移動することになる。
【0375】
ここで、ワークWの移動経路のうち照射エリアR1に対応する経路は、出射窓6に対する距離を異ならせた部位を含む。つまり、図18に示すように、ワークWの移動経路は、照射エリアR1の範囲内では、その高さを異ならせるように構成されている。
【0376】
また、ワークWの移動経路において、搬送ローラ502より上流でワークWに接触するローラのうち最も搬送ローラ502に近い直上のローラとしての第1従動ローラ504lと、搬送ローラ502より下流でワークWに接触するローラのうち最も搬送ローラ502に近い直下のローラとしての第2従動ローラ504rと、は、いずれもワークWの搬送に伴って回転する従動ローラである。搬送ローラ502の直上のローラと直下のローラとは、従動ローラに限定されないが、別途設けられる駆動源により駆動される場合も、搬送ローラ502に対してワークWの滑り量が大きいローラであることが好ましい。例えばワークWに対する摩擦力が大きい材質であれば滑り量は小さい。また、各ローラの表面の材質が同じである場合、ワークWとの接触量が大きいほど滑り量が小さい。直上のローラと直下のローラとが従動ローラ、もしくは、搬送ローラ502に対して滑り量の大きいローラで構成される場合、搬送ローラ502の回転に対するワークWの移動量に誤差が生じにくい。したがって、搬送ローラWの回転に基づいて印字制御を行うことにより印字品質を向上させることができる。特に、TTOと比較して本実施形態のマーカヘッド1は非接触でワークWに印字するため、搬送ローラ502で滑りが生じる場合に、印字の位置がずれやすい。したがって、マーカヘッド1は、照射エリアR1に、直前と直後のローラに対して滑り量が小さい搬送ローラが位置するように配置されることが好ましい。
【0377】
ここで、ワークWの移動経路のうち、照射エリアR1に対応してUVレーザ光が照射される領域は、第2収容部H2の突出方向において、該突出方向における第2収容部H2の端部よりも、光学部材としてのカバーガラス62から離間するように配置される。
【0378】
ここで、第2収容部H2の突出方向とは、本実施形態ではUVレーザ光の照射方向(つまり、+Z方向)に一致する。また、突出方向における第2収容部H2の端部とは、本実施形態では筐体10の+Z側端部に相当する。
【0379】
つまり、ワークWの移動経路においてUVレーザ光が照射される領域は、筐体10の+Z側端部よりも+Z側に配置されるようになっている。さらに言い換えると、ワークWの移動経路においてUVレーザ光が照射される領域は、光路区画部H3に入り込まないようになっている(光路区画部H3よりも+Z側に配置されるようになっている。)。この構成によれば、ワークWの移動経路の前方から当該移動経路へのワークWの挿入が容易になる。そのため、当該移動経路へのワークWのセットが容易になる。
【0380】
また、図18に示すように、搬送ローラ502におけるカバーガラス62側(-Z側)の頂部502aは、カバーガラス62の中央部を貫く中心線(レーザ出射軸Al)に対し、Y方向に略一致する搬送方向Atの上流側(+Y側)または下流側(-Y側)にオフセットしている(図例では、+Y側にオフセット)。
【0381】
つまり、搬送ローラ502の回転軸を貫きかつZ方向に延びる中心線Arは、レーザ出射軸Alに対して上流または下流側にオフセットするようになっている。さらに言い換えると、Z方向に延びるレーザ出射軸Alと、X方向に延びる搬送ローラ502の回転軸とは、互いに交差しないようにレイアウトされている。
【0382】
また、上述した関係をさらに言い換えると、レーザ出射軸Alは、前記頂部502aに対し、搬送方向Atの上流側(+Y側)または下流側(-Y側)にオフセットしていることになる(図例では、-Y側にオフセット)。詳しくは、図18に示すように、頂部502aに対して上流側のワークWと、下流側のワークWとのうち、後者のワークWの方が、レーザ出射軸Alに直交する平面(XY平面)に対する傾斜が小さくなるようになっている。つまり、頂部502aに対して下流側のワークWは、上流側のワークWと比べてより緩やかに傾斜するようになっている。本実施形態に係るレーザ出射軸Alは、搬送方向Atの上流側および下流側のうち、前記下流側のワークWのように、レーザ出射軸Alに直交する平面に対するワークWの傾斜が小さい方にオフセットしている。
【0383】
なお、照射エリアR1の大きさは、TTOとして構成された置換前の印刷装置1001における印字可能領域(印字領域)よりも大きくなるように設定される。TTOはワークWの短尺方向に延びる印刷部1006をワークWに接触させることでワークWに印字する。したがって、ワークW上の印刷エリアがワークWの長尺方向に一定の長さを有するエリアであっても、ワークWの短尺方向において、印刷部1006の印刷可能範囲がワークW上の印刷エリアを含むような位置関係であれば、印刷部1006に対してワークWを通過させることで、ワークW上の印刷エリア全体に対する印字が可能である。これに対して、マーカヘッド1は、ある瞬間においてレーザ光が照射される部分は、一定の面積は有するものの点状である。したがって、ワークW上の印刷エリアがワークWの長尺方向に一定の長さを有するエリアである場合、レーザ光が照射される照射エリアR1は、ワークWの長尺方向に対応する方向に一定の長さ(寸法)を有することが好ましい。具体的に、搬送方向Atにおける照射エリアR1の寸法(図17Aの符号L5を参照)は、ワークWがXY平面に平行であるときに、120mm以上となるように設定される。なお、本実施形態における照射エリアR1は、ワークWの表面上において、第1スキャナ51および第2スキャナ52によりレーザ光を照射可能な領域を指す。
【0384】
また、ワークWがXY平面に平行であるときの照射エリアR1の大きさは、XY平面に置いて照射エリアR1が筐体10の底面10dに覆われるように設定される。すなわち、XY平面に直交するZ方向に見て照射エリアR1の全体は底面10dに重なり、Y方向における照射エリアR1の寸法L5は筐体10の底面10dのY方向の寸法より小さく、X方向における照射エリアR1の寸法L6は筐体10dのX方向の寸法より小さい。この構成によれば、ワークWに照射されたレーザ光が周囲に漏れにくい。特に、筐体10の+Z側端部からワークWまでの距離(図18の距離L2参照)を0mm以上20mm以下に設定した場合において、レーザ光の漏れが低減する。さらに、ワークWが、複数の搬送ローラに巻き掛けられて搬送されるシート状のワークWであるとき、ユーザは、搬送ローラの前方からワークWを挿入することで容易にワークWをワークWの移動経路にセットすることができる。したがって、ワークWの移動経路の前方が開放されていることにより、ワークWを移動経路にセットする作業が容易になる。このため、X方向において、照射エリアR1の全長が底面10dに収まる構成によれば、移動経路の前方を開放してワークWをセットする作業性を保ちつつレーザ光の漏れを低減できる。なお、ワークWの前方側を覆う部材を用いてレーザ光の漏れを低減する構成である場合、ワークWが斜行した時にワークWと当該部材とが接触してワークWが汚損する虞があるため、ワークWの前方が開放される構成によればワークWの汚損の虞が低減する。
【0385】
なお、これらの設定は、3mm×2mm角で1文字あたり10msにわたってUVレーザ光を照射することで、ワークW上に8文字印字する場合に、特に有効となる。ここで、UVレーザ光に係るパラメータは、3本の走査線での太線印字により、0.2~0.35mmの線幅(1本の走査線につき、100~150μmの目標線幅に相当)を実現するケースに適したものである。
【0386】
TTOにおける印字可能領域よりも大きくなるように照射エリアR1を設定することで、UVレーザ光の照射位置をワークWの搬送に追従させながら、照射エリアR1内で印字加工を行うことができるようになる。これにより、TTOと同様の印字可能領域を確保することができる。
【0387】
一方、マーカヘッド1において生成されて出射窓6を通過するレーザ光の出力は、1W以上かつ2W以下に設定される。この設定は、マーカヘッド1の小型化を実現すべく決定されたものである。一定の時間レーザ光を照射したときの印字の発色は、照射されるレーザ光のパワー密度により変化する。レーザ光の出力が1W以上かつ2W以下であるとき、十分な発色が得られるように、レーザ光のスポット径は160μm以下であることが好ましい。
【0388】
より好ましくは、照射エリアR1におけるレーザ光のスポット径は、60μm以上80μm以下に設定される。このスポット径は、照射エリアR1のうちレーザ光の光路長が最長となる部分(照射エリアR1の端部)と、照射エリアR1のうちその光路長が最短となる部分(照射エリアR1の中央部)と、にレーザ光の焦点深度が対応するように設定することができる。
【0389】
例えば、スポット径の下限値は、前述した走査線の本数、および、線幅に対応する設定である。この設定は、筐体10の+Z側端部からワークWまでの距離(図18の距離L2参照)を0mm以上20mm以下に設定した場合において、さらに照射エリアR1の寸法を120mm以上に設定した場合に、Z方向に沿って焦点を調整せずとも、照射エリアR1の中央部と端部との間の光路長差の影響を抑制する上で有効である。
【0390】
一方、スポット径の上限値は、前述した0.2~0.35mmの線幅のように、200μm(0.2mm)以上の太さで太線印字を行う際に有効である。この場合、太線処理に要する処理時間が比較的長くなることが懸念されるところ、スポット径の上限値を前述のように設定することで、UVレーザ光の照射エリアR1を大きくし、その照射可能な時間を長くすることができる。
【0391】
なお、スポット径の上限値(=80μm)は、照射方向と平行にUVレーザ光を照射しかつ距離L2を10mmに設定した場合における最適値である。0mm以上20mm以下の範囲内で距離L2を変化させた場合、スポット径の上限値は120μmとなる。
【0392】
なお、照射エリアR1内での光路長差が懸念される場合、前述のデフォーカスレンズ57を具備することで、焦点深度をより深くすることができる。焦点深度を深くすることは、光路長差の影響を抑制する上で有効である。
【0393】
また、筐体10に対するワークWの相対位置のうち、特に、ワークWに対して印字可能な相対位置は、第1ミラー51aからワークWの表面までの距離(特に、照射方向に沿って見た距離であり、図19の距離L2と距離L3の和に相当)が150mm以下になるように設定される。
【0394】
なお、本実施形態においては上記に加え、筐体10の天面10uからワークWまでの距離は195mm以下になるように設定される。置換前の印刷装置1001としてのTTOは天面からワークWまでの距離が200mm前後の環境で使用されることが多く、当該置換前の印刷装置1001と同様の環境で使用することができる。具体的に本実施形態では、筐体10の天面10uから、底面10dの+Z側端部までの距離L1は、165mmに設定される。そして、底面10dの+Z側端部からワークWまでの距離L2は、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは20mm以下に設定される。
【0395】
ここで、距離L2を30mm以下に設定することで、照射エリアR1に照射されるレーザ光のワークWによる正反射光を、第1板状部材18lと第2板状部材18rとの間の領域、すなわち光路区画部H3に導くことができる。このことは、正反射光の筐体10外への漏れを抑制する上で有効である。
【0396】
また本実施形態では、第1ミラー51aから底面10dの+Z側端部までの距離L3は、123mmに設定される。そして、デフォーカスレンズ57の下面から底面10dの+Z側端部までの距離L4は、100mmに設定される。ここで、デフォーカスレンズ57の厚みが2mmであることに鑑みると、デフォーカスレンズ57の上面から底面10dの+Z側端部までの距離(不図示)は、102mmに設定される。
【0397】
ここで、天面10uから第1ミラー51aまでの距離(=L1-L3)は42mmとなり、天面10uからデフォーカスレンズ57までの距離(=L1-L4)は65mmとなる。一方、Z方向における筐体10の中央部は、天面10uから見て約82mm(=L1/2)の部位に相当する。ゆえに、本実施形態に係る第1ミラー51aおよびデフォーカスレンズ57は、双方とも、Z方向における筐体10の中央部よりも-Z側に位置することになる。
【0398】
<設置スペースのコンパクト化について>
以上説明したように、本実施形態によると、仕切面15gの-Y側にはミラー収容部H11が配置される一方、仕切面15gの+Y側には結晶収容部H12が配置されることになる(図10参照)。仕切面15gが照射方向(+Z方向)に沿って広がっていることに鑑みると、ミラー収容部H11と結晶収容部H12は、照射方向に略直交する方向(本実施形態ではY方向)に沿って並ぶことになる。
【0399】
ここで、ミラー収容部H11および結晶収容部H12に対する基板収容部H13の相対位置を考慮すると、筐体10内には、照射方向に略直交する方向に沿って、結晶収容部H12、ミラー収容部H11および基板収容部H13の順番で配置されることになる。このように、3種の収容部を照射方向に略直交する方向に並べることで、照射方向において筐体10をコンパクトに構成することが可能となる。これにより、筐体10の設置スペースのコンパクトを実現することができる。
【0400】
また、図10に示すように、3つの収容部のうち、放熱が懸念される収容部である結晶収容部H12と基板収容部H13の間には、ミラー収容部H12が配置されるようになっている。結晶収容部H12および基板収容部H13を相互に離間させたレイアウトは、これらを隣接させたレイアウトと比較して、放熱効率の維持に資する。
【0401】
このように、本実施形態によると、放熱効率を維持しつつ、照射方向における筐体10の設置スペースのコンパクト化を実現することができる。
【0402】
また、図18に示すように、出射窓6を挟んで照射エリアR1と向かい合うよう第1ミラー51aを配置することで、第1ミラー51aと出射窓6との間に大型ミラー等を設けることなく、第1ミラー51aによって反射されたレーザ光を出射窓6まで直に導くことができるようになる。これにより、筐体10内の部品点数を抑制し、筐体10の寸法、ひいては、その設置スペースのコンパクト化を実現する上で有利になる。
【0403】
また、図14図16に示すように、第1ミラー51aと第2ミラー52aとの間に中間ミラー55aが配置されることで、第1ミラー51aおよび第2ミラー52aのレイアウト(特に、第1回転軸Ac1および第2回転軸Ac2のレイアウト)の自由度を高めることができる。これにより、筐体10の小型化、ひいてはその設置スペースのコンパクト化を実現する上で有利になる。
【0404】
また、図14図16に示すように、第1回転軸Ac1および第2回転軸Ac2を双方とも照射方向(+Z方向)に直交させることで、照射方向における筐体10の小型化、ひいては、その設置スペースのコンパクト化を実現する上で有利になる。
【0405】
また、図18等に示すように、レーザ光を拡散可能なデフォーカスレンズ57を設けることで、第1ミラー51aと照射エリアR1とを照射方向に近接させつつも、その照射エリアR1を可能な限り広く設定することが可能になる。これにより、照射エリアR1を縮小させることなく、設置スペースのコンパクト化を実現することができる。
【0406】
また、図10等に示すように、基板収容部H13に励起光源21を収容することで、結晶収容部H12と基板収容部H13との間にミラー収容部H11が介在する分、励起光源21を結晶収容部H12から離間させることができる。この構成は、放熱性能の維持に資する。
【0407】
また、図8図11および図12に示すように、ファイバケーブル31の最小曲げ半径に応じて構成されたファイバガイド32を筐体10内に収容することで、ファイバケーブル31の長さ調整をより柔軟に行うことができるようになる。これにより、固体レーザ結晶41と励起光源21とをファイバケーブル31で接続しながらもコンパクトにレイアウトし、固体レーザ結晶41および励起光源21を筐体10内に収容することと、筐体10のコンパクト化と、の両立を果たす上で有利になる。
【0408】
また、図15および図16に示すように、レーザ光が透過するカバーガラス62は、一般的に知られた円形状ではなく、照射エリアR1の形状に対応してなる矩形状に形成される。円形状に形成される場合と比較して、カバーガラス62をよりコンパクトに形成することが可能になる。このことは、筐体10、ひいてはその設置スペースのコンパクト化を図る上で有効である。
【0409】
また、図13に示すように、結晶収容部H12に非線形光学結晶45を収容することで、結晶収容部H12と基板収容部H13との間にミラー収容部H11が介在する分、非線形光学結晶45を基板収容部H13から離間させることができる。この構成は、放熱性能の維持に資する。
【0410】
≪他の実施形態≫
前記実施形態では、筐体10内に第2収容部H2が構成されていたが、この第2収容部H2は必須でない。第1ヒートシンク81および第2ヒートシンク82は、例えば第1収容部H1内に収容してもよい。また、光路区画部H3についても、適宜省略することができる。
【0411】
また、前記実施形態では、マーカヘッド1の筐体10内に励起光源21が収容されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。例えば、マーカコントローラ100内に励起光源21を設けてもよい。
【0412】
また、前記実施形態では、筐体10の6面のうち、出射窓6が形成された底面10d以外の一面(前記実施形態では天面10u)が取付面に設定されていたが、本開示は、そうした設定には限定されない。6面のうちのいずれか一面を取付面とみなしてもよい。底面10dを取付面とみなした場合、加工設備500の支持部材501は、底面10dを例えば下方から支持することになる。
【0413】
また、筐体10の6面のうちの2面以上を取付面とみなすことができる。例えば、左側面10lと天面10uを取付面とした場合、アタッチメント7は、左側面10lおよび天面10uの一方に取り付けられてもよいし、図22に示すマーカヘッド1’のように、左側面10lおよび天面10uの両方に取り付けられてもよい。
【0414】
例えば、図22に示されるアタッチメント2007は、天面10uに取り付けられる第1部分2007aと、左側面10lに取り付けられる第2部分2007bと、を有しており、支持部材501’もまた、そのアタッチメント2007に適合した形状とされている。このように、支持部材501’の形態に応じて取付面を設定し、その設定に対応したアタッチメント2007を用いることができる。
【0415】
またそもそも、アタッチメント7は必須ではない。図23に示すマーカヘッド1”の筐体10”のように、アタッチメント7を介さずに、取付面(図例では天面10u”)に支持部材501を直に取り付けることもできる。この場合、取付面の一部領域をアタッチメントとみなしてもよい。また、取付面の一部を出射窓6の反対方向に突出させ、その突出部をアタッチメントとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0416】
S レーザ加工システム
L レーザ加工装置
1 マーカヘッド
2 励起光生成部
21 励起光源
23 温調部
25 継電器
3 励起光導光部(導光光学系)
31 ファイバケーブル
32 ファイバガイド
4 レーザ光出力部
41 固体レーザ結晶
43 Qスイッチ
45 非線形光学結晶
49 Qスイッチドライバ
5 レーザ光走査部(レーザ光偏向部)
51 第1スキャナ
51a 第1ミラー
52 第2スキャナ
52a 第2ミラー
53 第1制御基板
55 中間偏向部
55a 中間ミラー
57 デフォーカスレンズ(光学素子)
6 出射窓
62 カバーガラス(光学部材)
7 アタッチメント
81 第1ヒートシンク(ヒートシンク)
82 第2ヒートシンク(ヒートシンク)
83 第1送風ファン(送風部)
84 第2送風ファン(送風部)
10 筐体
10u 天面(取付面)
10d 底面
10f 前面(開放面)
10b 背面(接続面)
13 カバー部材
14 接続カバー
15 第1ベースプレート(支持プレート)
15g 仕切面
18l 第1板状部材(板状部材)
18r 第2板状部材(板状部材)
100 マーカコントローラ
101 受付部
103 制御部
104 電力供給部(電源部)
200 電気ケーブル
500 加工設備
501 支持部材
502 搬送ローラ
502a 搬送ローラの頂部
Ac1 第1回転軸
Ac2 第2回転軸
Ae 延び方向
At 搬送方向
H1 第1収容部
H11 ミラー収容部
H12 結晶収容部
H13 基板収容部
H2 第2収容部
H21 結晶側収容部
H22 光源側収容部
H3 光路区画部
M1 第1マーク(マーク)
M2 第2マーク(マーク)
M3 第3マーク(マーク)
Pp 加工パターン
R1 照射エリア
W ワーク
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23