(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074162
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】レーザマーキング装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20230522BHJP
B23K 26/04 20140101ALI20230522BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/00 M
B23K26/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186971
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船橋 駿斗
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA01
4E168CA14
4E168CB04
4E168CB07
4E168CB18
4E168DA04
4E168DA06
4E168DA24
4E168EA11
4E168EA15
4E168EA24
4E168JA17
4E168JA18
4E168JA27
(57)【要約】
【課題】3次元的な移動経路に沿って移動するワークに対し、適切な印字を実施する。
【解決手段】レーザマーキング装置Lは、レーザ光を出力するレーザ光出力部3と、レーザ光をワークWの表面上で走査するレーザ光走査部4と、印字データDpを生成する印字データ生成部103と、印字データDpに基づいて、照射エリアR1にあるワークWに対してマーキングを行うマーキング制御部104と、3次元空間内において姿勢の変化を伴い移動するワークWの移動経路に関する移動経路情報に基づいて、入力インターフェースIuにより受け付けられた印字パターンPpを補正する印字パターン補正部105と、を備える。印字データ生成部103は、印字パターン補正部105によって補正された印字パターンPpに基づいて印字データDpを生成する。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部と、
前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光を、ワークの表面上で走査するレーザ光走査部と、
印字データを生成する印字データ生成部と、
前記印字データ生成部により生成された印字データに基づいて前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御することにより、印字面上に配置されたワークに対してレーザ光を用いたマーキングを行うマーキング制御部と、
を備えるレーザマーキング装置であって、
マーキングされるべき印字パターンの入力を受け付ける印字パターン受付手段と、
3次元空間内において姿勢の変化を伴い移動するワークの移動経路に関する移動経路情報に基づいて、前記印字パターン受付手段により受け付けられた印字パターンを補正する印字パターン補正部と、を備え、
前記印字データ生成部は、
前記印字パターン補正部によって補正された印字パターンに基づいて印字データを生成する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたレーザマーキング装置において、
前記マーキング制御部は、ワークの移動情報を取得する機能を有し、
前記マーキング制御部は、前記ワークの移動情報により特定される移動速度に基づいて、前記印字データ生成部により生成された印字データを構成する走査線がワークの移動に伴う姿勢変化に追従するように、前記レーザ光走査部を制御する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたレーザマーキング装置であって、
直交座標系により規定されかつ前記レーザ光走査部による走査範囲と対応付けられた設定平面を表示する表示手段を備え、
前記印字パターン受付手段は、前記表示手段により表示された設定平面上に配置された印字パターンの入力を受け付ける
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記ワークは、シート状の可撓性ワークであって、
前記移動経路情報は、前記可撓性ワークの異なる位置を順次支持しかつ該可撓性ワークの移動経路に沿って該可撓性ワークの姿勢を変化させる搬送支持部が、前記レーザ光走査部による走査範囲内に存在する場合における、該可撓性ワークの移動経路に関する移動経路情報からなる
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記移動経路情報の入力を受け付ける経路情報受付手段を備え、
前記印字パターン補正部は、前記経路情報受付手段により受け付けられた移動経路情報に基づいて前記印字パターンを補正する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を収容する筐体を備え、
前記ワークは、搬送ローラに巻き掛けられるとともに、該搬送ローラの回転によって所定の搬送方向に搬送されるシート状のフィルムによって構成され、
前記印字面は、前記搬送方向における上流側から順に、
前記搬送ローラに向かって傾斜しながら延びる第1搬送面と、
前記搬送ローラと接触し、かつ前記筐体に対して近接または離間する方向に突出するように湾曲した第2搬送面と、
前記搬送ローラから離間するように傾斜しながら延びる第3搬送面と、の少なくとも1つから構成され、
前記移動経路情報には、前記搬送ローラに関する情報が含まれる
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたレーザマーキング装置において、
前記移動経路情報には、前記搬送ローラの直径が含まれる
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載されたレーザマーキング装置において、
前記移動経路情報には、前記搬送方向に対して前記第1および第3搬送面のうちの少なくとも一方がなす傾斜角が含まれる
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記移動経路情報には、前記筐体から前記ワークに向かう照射方向における前記筐体と前記搬送ローラとの間の距離が含まれる
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記筐体には、前記レーザ光走査部によって走査されるレーザ光を透過する出射窓が形成され、
前記移動経路情報には、前記出射窓の中央部を貫く中心線に対する、前記搬送方向における前記搬送ローラのオフセット量が含まれる
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記印字パターン補正部は、
前記移動経路情報に基づいて、前記レーザ光走査部によるレーザ光の走査位置と、該レーザ光走査部の制御パラメータと、の対応関係を補正し、
前記マーキング制御部は、
前記マーキングされるべき印字パターンが前記印字面上にマーキングされるように、前記補正後の対応関係に基づいて前記レーザ光走査部を制御する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、レーザマーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザマーキング装置における印字方法として、移動している最中のワークに対して印字を行う移動印字と、静止中のワークに対して印字を行う静止印字と、が従来知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、移動印字を実行可能なレーザマーキング装置が開示されている。この特許文献1に開示されているレーザマーキング装置は、例えば水平面に沿った平面上を移動するワークを印字対象物としたものであり、マーキングヘッドの長手方向と、ワークの移動方向との角度を取得し、取得した角度およびワークの移動スピードに基づいて、印字パターンを補正することができる。
【0004】
一方、特許文献2には、静止印字を実行可能なレーザマーキング装置(レーザ加工装置)が開示されている。この特許文献2に開示されているレーザマーキング装置は、例えば円筒形状を有するワークを印字対象物としたものであり、円筒状の印字ブロック上に印字パターンを配置するとともに、その円筒に沿って焦点調整しながら印字することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-175103号公報
【特許文献2】特開2008-044001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、円筒形状を有する部材を印字対象物とするのではなく、例えば円筒形状を有するローラによって搬送されるフィルム等に印字を行う場合がある。この場合、フィルム等のワークは、必ずしもローラに密着した状態で印字されるとは限らない。例えば、ローラに巻き取られる前後の部分、ローラに密着する部分等、様々な部分に対する印字が想定される。
【0007】
また、そうしたワークのうち、ローラに密着した部分は円筒形状になる一方、ローラに巻き取られる前後の部分は、水平面に対して傾斜した平面状になるなど、部分毎に種々の形状を想定する必要がある。
【0008】
このような想定に対し、前記特許文献1に開示されているような従来の移動印字は、略水平面に沿って移動しているワークを前提としているため、円筒形状、水平面に対して傾斜した平面等、3次元的な移動経路に沿って移動しているワークに用いるには不都合である。
【0009】
一方、前記特許文献2に開示されているような従来の静止印字は、3次元的な形状を有する部材そのものに印字することを前提としているため、そうした部材の動作によって移動するワークに用いるには、やはり不都合である。
【0010】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、3次元的な移動経路に沿って移動するワークに対し、より適切な印字を実施することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の態様は、励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部と、前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光を、ワークの表面上で走査するレーザ光走査部と、印字データを生成する印字データ生成部と、前記印字データ生成部により生成された印字データに基づいて前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御することにより、印字面上に配置されたワークに対してレーザ光を用いたマーキングを行うマーキング制御部と、を備えるレーザマーキング装置に係る。
【0012】
そして、本開示の第1の態様によれば、前記レーザマーキング装置は、マーキングされるべき印字パターンの入力を受け付ける印字パターン受付手段と、3次元空間内において姿勢の変化を伴い移動するワークの移動経路に関する移動経路情報に基づいて、前記印字パターン受付手段により受け付けられた印字パターンを補正する印字パターン補正部と、を備え、前記印字データ生成部は、前記印字パターン補正部によって補正された印字パターンに基づいて印字データを生成する。
【0013】
ここで、前記レーザマーキング装置が加工対象とするワークは、移動経路に沿って移動中のワークには限定されない。移動経路の途中で静止しているワークを加工対象とすることもできる。
【0014】
前記第1の態様によると、印字パターン補正部は、印字データの生成に際し、移動経路情報に基づいた補正を実行する。この移動経路情報は、3次元空間内において姿勢を変化させながら移動するワークの移動経路、すなわち3次元的な移動経路に関する情報に相当する。そのため、移動経路情報に基づいた補正を行うことで、3次元的な移動経路に沿って移動するワークに対し、より適切な印字を実施することができるようになる。
【0015】
また、本開示の第2の態様によると、前記マーキング制御部は、ワークの移動情報を取得する機能を有し、前記マーキング制御部は、前記ワークの移動情報により特定される移動速度に基づいて、前記印字データ生成部により生成された印字データを構成する走査線がワークの移動に伴う姿勢変化に追従するように、前記レーザ光走査部を制御する、としてもよい。
【0016】
また、本開示の第3の態様によると、前記レーザマーキング装置は、直交座標系により規定されかつ前記レーザ光走査部による走査範囲と対応付けられた設定平面を表示する表示手段を備え、前記印字パターン受付手段は、前記表示手段により表示された設定平面上に配置された印字パターンの入力を受け付ける、としてもよい。
【0017】
また、本開示の第4の態様によると、前記ワークは、シート状の可撓性ワークであって、前記移動経路情報は、前記可撓性ワークの異なる位置を順次支持しかつ該可撓性ワークの移動経路に沿って該可撓性ワークの姿勢を変化させる搬送支持部が、前記レーザ光走査部による走査範囲内に存在する場合における、該可撓性ワークの移動経路に関する移動経路情報からなる、としてもよい。
【0018】
また、本開示の第5の態様によれば、前記レーザマーキング装置は、前記移動経路情報の入力を受け付ける経路情報受付手段を備え、前記印字パターン補正部は、前記経路情報受付手段により受け付けられた移動経路情報に基づいて前記印字パターンを補正する、としてもよい。
【0019】
前記第5の態様によると、レーザマーキング装置は、例えば外部から移動経路情報の入力を受け付けることができる。一般に、ワークの移動経路は、ワークの形状、ワークの加工設備等に応じて様々な形態となる。したがって、移動経路情報の入力を受付可能に構成することで、移動経路の各形態に適した補正を実行することができる。
【0020】
また、本開示の第6の態様によれば、前記レーザマーキング装置は、前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を収容する筐体を備え、前記ワークは、搬送ローラに巻き掛けられるとともに、該搬送ローラの回転によって所定の搬送方向に搬送されるシート状のフィルムによって構成され、前記印字面は、前記搬送方向における上流側から順に、前記搬送ローラに向かって傾斜しながら延びる第1搬送面と、前記搬送ローラと接触し、かつ前記筐体に対して近接または離間する方向に突出するように湾曲し第2搬送面と、前記搬送ローラから離間するように傾斜しながら延びる第3搬送面と、の少なくとも1つから構成され、前記移動経路情報には、前記搬送ローラに関する情報が含まれる、としてもよい。
【0021】
前記第6の態様によると、印字面は、第1搬送面、第2搬送面および第3搬送面の少なくとも1つから構成される。この場合、ワークの移動経路は、搬送ローラの形状、搬送ローラおよび筐体の相対的な位置関係等、搬送ローラに関係した情報によって、その3次元形状が特徴付けられることになる。したがって、移動経路情報として搬送ローラに関する情報を用いることで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0022】
また、本開示の第7の態様によれば、前記移動経路情報には、前記搬送ローラの直径が含まれる、としてもよい。
【0023】
前記第7の態様によると、レーザマーキング装置は、移動経路情報として、搬送ローラの直径を参照する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0024】
また、本開示の第8の態様によれば、前記移動経路情報には、前記搬送方向に対して前記第1および第3搬送面のうちの少なくとも一方がなす傾斜角が含まれる、としてもよい。
【0025】
前記第8の態様によると、レーザマーキング装置は、移動経路情報として、第1および第3搬送面のうち少なくとも一方の傾斜角を参照する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0026】
また、本開示の第9の態様によれば、前記移動経路情報には、前記筐体から前記ワークに向かう照射方向における前記筐体と前記搬送ローラとの間の距離が含まれる、としてもよい。
【0027】
前記第9の態様によると、レーザマーキング装置は、移動経路情報として、筐体と搬送ローラとの間の距離を参照する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0028】
また、本開示の第10の態様によれば、前記筐体には、前記レーザ光走査部によって走査されるレーザ光を透過する出射窓が形成され、前記移動経路情報には、前記出射窓の中央部を貫く中心線に対する、前記搬送方向における前記搬送ローラのオフセット量が含まれる、としてもよい。
【0029】
前記第10の対応によると、レーザマーキング装置は、移動経路情報として、出射窓に対する搬送ローラのオフセット量を参照する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0030】
また、本開示の第11の態様によれば、前記印字パターン補正部は、前記移動経路情報に基づいて、前記レーザ光走査部によるレーザ光の走査位置と、該レーザ光走査部の制御パラメータと、の対応関係を補正し、前記マーキング制御部は、前記マーキングされるべき印字パターンが前記印字面上にマーキングされるように、前記補正後の対応関係に基づいて前記レーザ光走査部を制御する、としてもよい。
【0031】
前記第11の態様によると、レーザマーキング装置は、レーザ光の走査位置と、レーザ光走査部の制御パラメータとの対応関係を補正することで、移動経路情報に基づいた補正を実行する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本開示によれば、3次元的な移動経路に沿って移動するワークに対し、より適切な印字を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、レーザマーキングシステムの全体構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、レーザマーキング装置の概略構成を例示するブロック図である。
【
図3】
図3は、印刷装置とマーカヘッドとの置換について説明するための図である。
【
図4】
図4は、マーカヘッドとワークとの位置関係について説明するための図である。
【
図5A】
図5Aは、印字面が水平面に平行に延びる場合の印字パターンを例示する図である。
【
図5B】
図5Bは、印字面が水平面に傾斜して延びる場合の印字パターンを例示する図である。
【
図5C】
図5Cは、印字パターン補正部による補正について説明するための図である。
【
図6】
図6は、第2テーブルの更新手順を例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、第3テーブルの更新手順を例示するフローチャートである。
【
図8】
図8は、実S角度の決定方法について説明するための図である。
【
図9】
図9は、移動経路情報の入力インターフェースを例示する図である。
【
図10】
図10は、第3テーブルを用いた走査手順を例示するフローチャートである。
【
図11】
図11は、印字パターンの入力インターフェースを例示する図である。
【
図12】
図12は、印字パターンの入力インターフェースを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0035】
すなわち、本実施形態では、レーザ光を用いたマーキングの代表例として印字加工(以下、「マーキング」と呼称したり、単に「加工」と呼称したりする)について説明するが、本開示は、図形のマーキング等、文字以外のマーキングに適用することができる。
【0036】
<全体構成>
図1は、レーザマーキングシステムSの全体構成を例示する図であり、
図2は、レーザマーキングシステムSにおけるレーザマーキング装置Lの概略構成を例示する図である。また、
図3は、印刷装置1001とマーカヘッド1との置換について説明するための図であり、
図4は、マーカヘッド1とワークWとの位置関係について説明するための図である。
【0037】
図1に例示されるレーザマーキングシステムSは、レーザマーキング装置Lと、これに接続される外部機器400と、レーザマーキング装置Lが取り付けられるとともにワークWを搬送する加工設備500と、を備えている。このうち、
図1および
図2に例示されるレーザマーキング装置Lは、所定の照射エリアR1に向けてレーザ光を照射することで、ワークWに対して所定の印字パターンPpに対応したマーキングを行うように構成されている。
【0038】
なお、ここでいう照射エリアR1とは、ワークWの表面上に設定される領域であり、後述の設定平面R2に予め対応づけられた印字面に相当する領域である。印字面としての照射エリアR1は、レーザマーキング装置LとワークWとの相対的な位置関係、レーザマーキング装置Lの仕様、ワークWの移動経路等に応じて、種々の形態を取り得る。本実施形態に係る照射エリアR1は、
図1に示すような矩形状の領域として構成されている。また、ここでいう設定平面R2は、筐体10を基準に定義されたXY平面(詳細な定義は後述)に沿って延び、かつ表示部301に表示可能な仮想平面に相当する。
【0039】
例えば、2次元平面、特に水平方向に沿って移動するワークWの照射エリアR1は、水平方向に沿って平坦に延びる平面となる。一方、3次元空間、特に水平方向に対して傾斜または湾曲した空間内を移動するワークWの照射エリアR1は、水平面に対して傾斜した平面または水平面に対して湾曲した曲面となり得る。本実施形態に係る照射エリアR1は、例えば
図1および
図3に示すように、2次元的な平面を高さ方向に傾斜させた形態を取る。つまり、本実施形態に係るワークWは、3次元空間内を移動するように構成されている。
【0040】
また、以下の記載における印字パターンPpには、ワークWにマーキングされるべき文字のパターンに加え、「:」、「×」、バーコードやQRコード(登録商標)等、ワークWにマーキングされるべき図形のパターンが含まれる。
【0041】
特に、本実施形態に係るレーザマーキング装置Lは、ワークWを加工するためのレーザ光として、350nm付近の波長を有するレーザ光を出射することができる。この波長は、紫外線の波長域に含まれる。そのため、以下の記載では、ワークWを加工するためのレーザ光を「UVレーザ光」と呼称して、近赤外線等、他のレーザ光と区別する場合がある。なお、赤外線等、紫外線以外のレーザ光をワークWの加工に用いてもよい。
【0042】
以下、シート状のフィルムによって構成されたワークWをマーキング対象とし、かつ、そのフィルムにUVレーザ光と化学反応するUV反応層Xが含有された場合について説明する。このワークWは、例えばシート状の可撓性ワークとしてもよい。
【0043】
しかしながら、本開示においてマーキング対象として利用可能なワークWは、UV反応層Xが含有されたシート状のフィルムによって構成されたワークWには限定されない。紫外線以外の波長を有するレーザ光と化学反応するフィルムを用いてもよいし、プラスチックフィルム、アルミ層を含んだフィルム、アルミ蒸着層を含んだフィルム、紙層を含んだフィルム等、種々の素材からなるワークWをマーキング対象としてもよい。また、ワークWは、表面層、UV反応層、シーラント層からなる三層構造であってもよい。三層構造では、UV反応層は表面層とシーラント層によって挟み込まれている。表面層は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)や延伸PP(OPP)などを採用してもよい。UV反応層は、例えば、酸化チタンを含有する層を採用してもよい。シーラント層は、例えば、熱溶融接着が可能なポリオレフィンフィルムなどを採用してもよい。その他、付加的に他の層を設け、四層構造や五層構造としてもよい。
【0044】
また、本実施形態に係るレーザマーキング装置Lは、レーザ光を2次元走査することで、いわゆる2次元印字を行うように構成されているが、このレーザマーキング装置Lは従来品よりも焦点深度が深くなるように構成されているため、いわゆる3次元印字を行うこともできる。そのため、このレーザマーキング装置Lは、3次元的な移動経路に沿って搬送されるワークWさえもマーキング対象とすることができる。
【0045】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係るレーザマーキング装置Lは、マーカヘッド1と、マーカコントローラ100と、電気ケーブル200と、操作用端末300と、を備えている。
【0046】
このうち、マーカコントローラ100は、印字パターンPpに関する設定を受け付けることができ、マーカヘッド1を制御するためのコントローラとして構成されている。
【0047】
一方、マーカヘッド1は、マーカコントローラ100により制御されることで、照射エリアR1に向けてUVレーザ光を出射することができる。
【0048】
マーカヘッド1およびマーカコントローラ100は、本実施形態においては互いに別体とされており、電気ケーブル200によって接続されている。この電気ケーブル200は、マーカコントローラ100の内部(具体的には、不図示の電力供給部)から外部に電力を伝送する電気配線を少なくとも含む。具体的に、本実施形態に係る電気ケーブル200は、電力を伝送するための電気配線と、アナログ信号、ディジタル信号等を送受するための信号配線と、を束ねることで構成されている。
【0049】
本実施形態に係るマーカヘッド1は、シート状のフィルムにより構成されたワークW(特に可撓性ワーク)を加工対象とした加工設備500上に設置される。この加工設備500は、
図3に示すように、マーカヘッド1を支持する支持部材501と、ワークWが巻き掛けられる搬送ローラ502と、を備える。
【0050】
このうち、支持部材501は、
図3に示すように、レーザマーキング装置L、特にマーカヘッド1の筐体10を所定の被取付位置に取り付けることができる。
図1および
図3には、筐体10を上方から吊り下げるように構成された支持部材501が例示されているが、側方等、他の方向から筐体10を支持してもよい。
【0051】
以下、筐体10の前後方向をX方向とし、左右方向をY方向とし、高さ方向をZ方向とみなす。詳細には、X方向における
図3の紙面奥行側を+X方向とみなし、同図の紙面手前側を-X方向とみなす。同様に、Y方向における
図3の紙面左側を+Y方向とみなし、同図の紙面右側を-Y方向とみなす。同様に、Z方向における
図3の紙面上側を-Z方向とみなし、同図の紙面下側を+Z方向とみなす。以下、筐体10を基準として定義されたXY方向を「水平方向」と呼称したり、筐体10を基準としたXY平面を「水平面」と呼称したりする場合がある。
【0052】
一方、搬送ローラ502は、ワークWの短尺方向(後述の前後方向)に延びる中心軸を有する円筒状に構成されている。この場合、ワークWは、搬送ローラ502の回転によって、所定の移動経路に沿って長尺方向に搬送されることになる。以下、直交座標系に沿って見たワークWの移動方向を「搬送方向」と呼称し、これに符号「At」を付す。本実施形態に係る搬送方向Atは、-Y方向に一致する。
【0053】
図4に示すように、加工設備500はさらに、搬送ローラ502の駆動によるワークWの搬送時に従動する第1従動ローラ503lおよび第2従動ローラ503rと、を備える(
図1および
図3には、第2従動ローラ503rのみ図示)。搬送ローラ502、第1従動ローラ503lおよび第2従動ローラ503rは、可撓性ワークとしてのワークWの異なる位置(各部)を搬送方向に沿って順次支持することで、該ワークWの移動経路に沿って該ワークの姿勢を変化させる「搬送支持部」を構成している。
【0054】
第1従動ローラ503lは、搬送方向Atにおける前記搬送ローラ502の上流側(Y方向における+Y側)に配置されており、高さ方向においては搬送ローラ502の下側(Z方向における+Z側)に配置されている。シート状のワークWは、第1従動ローラ503lの下面と接触する。
【0055】
第2従動ローラ503rは、搬送ローラ502を挟んで第1従動ローラ503lの反対側(Y方向における-Y側)に配置されており、高さ方向においては搬送ローラ502の下側(Z方向における+Z側)に配置されている。シート状のワークWは、第2従動ローラ503rの上面と接触する。
【0056】
この場合、印字面としての照射エリアR1は、搬送方向における上流側(Y方向の+Y側)から順に、搬送ローラ502に向かって傾斜しながら延びる第1搬送面R11と、搬送ローラ502と接触し、かつ筐体10に対して近接または離間する方向に突出するように湾曲した第2搬送面R12と、搬送ローラ502から離間するように傾斜しながら延びる第3搬送面R13と、の少なくとも1つから構成される。
【0057】
なお、本実施形態に係る印字面は、第1搬送面R11と、第2搬送面R12と、第3搬送面R13と、の全てから構成されているが、マーカヘッド1のレイアウトおよび仕様、ならびに加工設備500のレイアウト等に応じて、第1搬送面R11、第2搬送面R12および第3搬送面R13の1つまたは2つによって印字面を構成してもよい。
【0058】
第1搬送面R11は、例えば、-Y側に向かうにしたがって-Z側に向かって延びる傾斜面である。第2搬送面R12は、例えば、筐体10に対して近接する方向、すなわち-Z側に向かって突出するように湾曲した曲面である。第3搬送面R13は、例えば、-Y側に向かうにしたがって+Z側に向かって延びる傾斜面である。第1搬送面R11および第3搬送面R13は、双方ともXY平面に沿って延びる設定平面R2に対して傾斜することになる。
【0059】
ここで、本実施形態に係る加工設備500は、
図3の上図および下図に示すように、本実施形態に係るマーカヘッド1と、レーザ光によるマーキング以外の方式を用いて印刷する印刷装置1001と、の間で共有化されている。
【0060】
すなわち、本実施形態に係るマーカヘッド1は、印刷装置1001を取り付けるべく構成された加工設備500の支持部材501に対し、その印刷装置1001の代わりに取り付けることができるように構成されている。
【0061】
マーカヘッド1と置換可能な印刷装置1001としては、例えば熱転写式産業用サーマルプリンタ(Thermal Transfer Overprinter:TTO)が挙げられるが、他の印刷装置1001と置換することもできる。
【0062】
マーカヘッド1と置換可能な印刷装置1001としては、例えば、ワークW上の印刷エリアに接触する印刷部1006を露出させてなる印刷面1010dと、該印刷面1010dと相違しかつ支持部材501に接続可能な接続面1010uと、を備える略直方体状に構成された筐体1010を具備するものであればよい。
【0063】
この場合、
図3の上図および下図に示すように、接続面1010uに接続可能な支持部材501によって、印刷装置1001と同様にマーカヘッド1が支持されることになる。そうして支持されたマーカヘッド1は、印刷エリア(印刷装置1001において印刷部1006と接触する領域)に対応して設定される照射エリアR1に向けてUVレーザ光を照射することで、ワークWに対してマーキングを行うことになる。
【0064】
一方、操作用端末300は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)およびメモリを有しており、マーカコントローラ100に対し、有線または無線により電気信号を送受可能に接続されている。
【0065】
なお、操作用端末300は、本実施形態ではデスクトップコンピュータまたはラップトップコンピュータ等のパーソナルコンピュータによって構成されているが、本開示は、そうした構成には限定されない。例えば、タッチパネル式のコンソール等、レーザマーキング装置Lに接続可能な専用端末によって操作用端末300を構成してもよい。また、操作用端末300は、例えばマーカコントローラ100に組み込んで一体化することもできる。
【0066】
操作用端末300は、文字のサイズなど、種々の印字条件を設定するとともに、ワークWに対するマーキングに関連した情報をユーザに示すための端末として機能する。この操作用端末300は、ユーザに情報を表示するための表示部301と、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部302と、種々の情報を記憶するための記憶装置303と、を備えている。
【0067】
表示部301は、直交座標により規定されかつレーザ光走査部4による走査範囲と対応付けられた設定平面R2を表示することができる。この表示部301は、本実施形態における「表示手段」の例示である。また、
図1に示すように、表示部301により表示された設定平面R2上には、マーキングされるべき文字(印字パターンPp)の入力を受け付ける入力インターフェースIuが配置される。詳細は後述するが、この入力インターフェースIuは、設定平面R2の範囲を示す枠、設定平面R2上での印字パターンPpの位置を示す図形等のユーザインターフェースからなり、操作部302に対する操作入力に基づいて、印字パターンPpの入力を受け付けるとともに、受け付けた印字パターンPpの内容を設定平面R2上に表示することができる。入力インターフェースIuは、本実施形態における「印字パターン受付手段」の例示である。
【0068】
入力インターフェースIuはまた、3次元空間内において姿勢の変化を伴い移動するワークの移動経路に関する移動経路情報Ipの入力も受け付けることができ、本実施形態に係る「経路情報受付手段」も例示している。印字パターン受付手段および経路情報受付手段としての入力インターフェースIuの詳細は、後述する。
【0069】
具体的に、表示部301は、液晶ディスプレイ又は有機ELパネルによって構成することができる。操作用端末300をマーカコントローラ100に組み込んだり、タッチパネル式のコンソールを用いたりした場合、マーカコントローラ100またはコンソールに設けられた表示画面を表示部とすることができる。
【0070】
操作部302は、キーボード、ポインティングデバイスによって構成することができる。ポインティングデバイスには、マウス、ジョイスティック等が含まれる。操作用端末300をマーカコントローラ100に組み込んだり、タッチパネル式のコンソールを用いたりした場合、マーカコントローラ100またはコンソールに設けられたスイッチ、ボタン等を操作部とすることができる。
【0071】
前述のように構成される操作用端末300は、ユーザによる操作入力に基づいて、マーキングにおける印字条件を設定することができる。この印字条件には、印字パターンPpの詳細に加え、レーザ光の目標出力(レーザパワー)およびワークW上でのレーザ光の走査速度(スキャンスピード)等が含まれる。
【0072】
操作用端末300により設定される印字条件は、マーカコントローラ100に出力されて、該マーカコントローラ100における記憶部102に記憶される。必要に応じて、操作用端末300における記憶装置303が印字条件を記憶してもよい。
【0073】
外部機器400は、必要に応じてマーカコントローラ100に接続される。
図1および
図2に示す例では、外部機器400として、搬送速度センサ401およびプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)402が設けられている。
【0074】
搬送速度センサ401は、例えばロータリエンコーダによって構成されており、ワークWの搬送速度を検出することができる。搬送速度センサ401は、その検出結果を示す信号(検出信号)をマーカコントローラ100へ出力する。マーカコントローラ100は、搬送速度センサ401から入力された検出信号に基づいて、レーザ光の2次元走査等を制御する。
【0075】
PLC402は、例えばマイクロプロセッサによって構成されており、マーカコントローラ100に制御信号を入力することができる。PLC402は、予め定めたシーケンスに従ってレーザマーキングシステムSを制御するために用いられる。
【0076】
レーザマーキング装置Lには、上述した機器および装置以外にも、操作および制御を行うための装置、その他の各種処理を行うためのコンピュータ、記憶装置、周辺機器等を無線または有線で接続することができる。
【0077】
<マーカヘッド1>
図2に示すように、マーカヘッド1は、主たる構成要素として、励起光生成部2と、レーザ光出力部3と、レーザ光走査部4と、を備えている。励起光生成部2は、電気ケーブル200を介してマーカコントローラ100から供給される電力に基づいて、UVレーザ光を励起するための励起光を生成する。レーザ光出力部3は、励起光生成部2によって生成された励起光に基づいてUVレーザ光を生成し、該UVレーザ光を出力する。レーザ光走査部4は、レーザ光出力部3から出力されたUVレーザ光を偏向することで、該UVレーザ光をワークWの表面上で走査する。
【0078】
マーカヘッド1はまた、前述した構成要素、すなわち、励起光生成部2と、レーザ光出力部3と、レーザ光走査部4と、を収容する筐体10を備えている。この筐体10には、レーザ光走査部4によって走査されるUVレーザ光を透過する出射窓6が形成されている。詳細は省略するが、この筐体10は、略直方体状の外形を有しており、出射窓6が形成された出射面10dと、該出射面10d相違しかつ支持部材501に接続可能な取付面10uと、を有している。取付面10uは、アタッチメント7を介して支持部材501に接続されている。
【0079】
出射窓6は、筐体10の出射面10dを貫く出射孔と、この出射孔に嵌め込まれるカバーガラスと、を有する。詳細は省略するが、カバーガラスは、照射エリアR1の形状に対応した矩形状、例えば照射エリアR1と略相似の関係にあり、かつ当該照射エリアR1よりも小サイズの矩形状に形成することができる。
【0080】
筐体10内にはまた、レーザ光走査部4と出射窓6との間に介在し、かつUVレーザ光をデフォーカスするデフォーカスレンズ5が設けられている。このデフォーカスレンズ5は、例えば両凹レンズによって構成することができ、出射窓6と同軸に配置されている。
【0081】
以下、デフォーカスレンズ5および出射窓6の中心軸を「レーザ出射軸」と総称し、これに符号Alを付す(
図3参照)。このレーザ出射軸Alは、Z方向と略平行に延びている。
【0082】
(励起光生成部2)
励起光生成部2は、電気ケーブル200を介してマーカコントローラ100から電力が供給されるとともに、その電力に応じた励起光を生成するように構成されている。本実施形態に係る励起光生成部2は、例えばレーザダイオード(Laser Diode:LD)で構成された励起光源(不図示)を有している。なお、励起光生成部2、特に励起光源を筐体10内に収容する構成は必須ではなく、マーカコントローラ100内に収容してもよい。
【0083】
(レーザ光出力部3)
レーザ光出力部3は、励起光に基づいて基本波を生成する固体レーザ結晶31と、固体レーザ結晶31によって生成された基本波に基づいてUVレーザ光を生成する非線形光学結晶32と、を有している。
【0084】
本実施形態では、固体レーザ結晶31を構成するレーザ媒質として、ロッド状のNd:YVO4(イットリウム・バナデイト)が用いられている。ロッド状とされた固体レーザ結晶31の一端面からレーザ励起光が入射するとともに、その他端面から基本波長を有するレーザ光(いわゆる基本波)を出射するようになっている(いわゆるエンドポンピングによる1方向励起方式)。本実施形態では、基本波長は1064nmに設定されている。一方、励起光の波長は、誘導放出を促すべく、Nd:YVO4の吸収スペクトラムの中心波長付近に設定されている。ただし、この例に限らず、他のレーザ媒質として、例えば希土類をドープしたYAG、YLF、GdVO4等を用いることもできる。
【0085】
また本実施形態に係る非線形光学結晶32は、基本波の波長(基本波長)よりも高い波長を有する第2高調波を生成する第1波長変換素子(不図示)と、その第2高調波よりも高い波長を有する第3高調波を生成する第2波長変換素子(不図示)と、を組合わせて構成されている。
【0086】
第2高調波は、基本波の周波数を2倍にしたものである。第2高調波の波長は、本実施形態では532nmに設定されている。第2高調波は、基本波の周波数を3倍にしたものである。第3高調波の波長は、本実施形態では355nmに設定されており、紫外域に収まるように設定されている。
【0087】
なお、本実施形態では、第1波長変換素子および第2波長変換素子としてLBO(LiB3O3)が用いられている。ただし、LBO(LiB3O3)に限らず、第1波長変換素子および/または第2波長変換素子として、種々の有機非線形光学材料、無機非線形光学材料等を利用することができる。
【0088】
レーザ光走査部4は、いわゆる2軸(X軸およびY軸)式のガルバノスキャナを用いて構成されており、Yスキャナとしての第1スキャナ41と、Xスキャナとしての第2スキャナ42と、を有している。本実施形態では、UVレ-ザ光の光路上流側に第2スキャナ42が配置され、UVレーザ光の光路下流側に第1スキャナ41が配置されている。
【0089】
第1スキャナ41は、レーザ光出力部3によって生成されたUVレーザ光を反射する第1ミラー41aを有している。第1スキャナ41によるUVレーザ光の偏向方向は、前記設定平面R2と同じ直交座標系で見たY方向に一致する。第1スキャナ41が第1ミラー41aの回転角度(以下、「Y角度」ともいう)θyを調整することで、ワークWの表面上でのUVレーザ光の照射位置をY方向に走査することができる。
【0090】
第2スキャナ42は、第1ミラー41aによって反射されたUVレーザ光を反射する第2ミラー42aを有している。第2スキャナ42によるUVレーザ光の偏向方向は、前記設定平面R2と同じ直交座標系で見たX方向に一致する。第2スキャナ42が第2ミラー42aの回転角度(以下、「X角度」ともいう)θxを調整することで、ワークWの表面上でのUVレーザ光の照射位置をX方向に走査することができる。
【0091】
レーザ光走査部4は、予め作成された印字データにしたがって第1ミラー41aおよび第2ミラー42aを駆動することで、照射エリアR1に向かって照射されるように、レーザ光出力部3によって生成されたUVレーザ光を偏光する。そうして偏向されたUVレーザ光は、デフォーカスレンズ5と出射窓6を透過して照射エリアR1に照射される。
【0092】
<マーカコントローラ100>
図2に示すように、マーカコントローラ100は、印字条件の設定を受け付ける受付部101と、その印字条件を記憶する記憶部102と、印字条件に含まれる印字パターンPpを補正する印字パターン補正部105と、補正後の印字パターンPpに基づいて印字データDpを生成する印字データ生成部103と、印字データDpに基づいてマーカヘッド1を制御するマーキング制御部104と、を備えている。
【0093】
なお、これらの要素のうちの1つ以上を操作用端末300またはマーカヘッド1に設けてもよい。例えば、操作用端末300内に印字データ生成部103を実装してもよいし、マーカヘッド1内にマーキング制御部104を設けてもよい。
【0094】
(受付部101)
受付部101は、操作用端末300を介して設定された印字条件を受け付けるとともに、受け付けた印字条件を記憶部102および/または印字データ生成部103に出力するように構成されている。
【0095】
具体的に、本実施形態に係る受付部101は、操作用端末300と電気的に接続されており、表示手段としての表示部301上に設定平面R2を表示するとともに、その設定平面R2上に、印字パターン受付手段としての入力インターフェースIuを配置する。
【0096】
受付部101は、入力インターフェースIuを通じて入力された内容を各印字条件に反映し、反映後の印字条件を記憶部102、印字データ生成部103、マーキング制御部104および印字パターン補正部105の少なくとも1つに出力することができる。
【0097】
受付部101はまた、表示部301上に、経路情報受付手段としての入力インターフェースIuも配置する。入力インターフェースIuが受け付ける移動経路情報Ipは、前述のように、3次元空間内を移動するワークWの移動経路に関する情報を含む。この移動経路情報Ipは、例えば、前記搬送支持部がレーザ光走査部4による走査範囲内に存在する場合における、可撓性ワークとしてのワークWの移動経路に関する移動経路情報からなる、としてもよい。
【0098】
例えば
図1、
図3および
図4に示すような加工設備500を用いた場合、移動経路情報Ipには搬送ローラ502に関する情報が含まれる。具体的に、本実施形態に係る移動経路情報Ipには、搬送ローラ502に関する情報として、搬送ローラ502の直径Dが含まれる(
図4参照)。この他、第1従動ローラ503lの直径D1、第2従動ローラ503rの直径D2等を移動経路情報Ipに含めてもよい(
図8参照)。
【0099】
また、
図4に示すように、搬送ローラ502に関する情報として、筐体10からワークWに向かう照射方向(+Z方向)における筐体10、特に筐体10の下端部と搬送ローラ502との間の距離Dzを移動経路情報Ipに含めてもよい。
【0100】
また、
図4に示すように、搬送ローラ502に関する情報として、出射窓6の中央部を貫く中心線(
図3のレーザ出射軸Al)に対する、搬送方向における搬送ローラ502のオフセット量Loを移動経路情報Ipに含めてもよい。
【0101】
また、照射エリアR1に第1搬送面R11、第3搬送面R13等が含まれる場合、移動経路情報Ipには、設定平面R2または搬送方向に対して第1搬送面R11および第3搬送面R13のうちの少なくとも一方がなす傾斜角が含まれる。
図4に示す例では、移動経路情報Ipの一要素として、設定平面R2に対して第1搬送面R11がなす第1傾斜角度θ1と、設定平面R2に対して第3搬送面R13がなす第2傾斜角度θ2と、が例示されている。
【0102】
(記憶部102)
記憶部102は、受付部101によって受け付けられた印字条件を一時的にまたは継続的に記憶するとともに、必要に応じて、記憶された印字条件を印字データ生成部103、マーキング制御部104、表示部301等へ出力するように構成されている。
【0103】
具体的に、本実施形態に係る記憶部102は、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等の不揮発メモリ、あるいは、揮発性メモリによって構成されており、印字設定を示すデータを一時的にまたは継続的に記憶することができる。
【0104】
ところで、UVレーザ光のワークW上の所望の位置に照射するためには、第1ミラー41aの回転角度(Y角度θy)と、設定平面R2ひいては照射エリアR1上でのY座標とを関連付けるとともに、第2ミラー42aの回転角度(X角度θx)と、設定平面R2ひいては照射エリアR1上でのX座標とを関連付けた対応関係が必要となる。以下、X角度θxおよびY角度θyを「スキャナ角度(S角度)」と総称する。また周知のように、X座標およびY座標を「XY座標」と総称する。
【0105】
一般に、そうした対応関係は、光学設計に基づいて事前に算出可能とされているものの、製品のバラツキ等に起因して、レーザマーキング装置Lの製品毎に個体差が生じ得る。例えば、同じXY座標を照射位置に設定したとしても、その照射位置を実現するS角度は、個体差に応じてばらつく可能性がある。以下、事前算出に基づいたS角度を「理論S角度」と呼称し、個体差の影響を取り入れたS角度を「実S角度」と呼称する。
【0106】
そこで、本実施形態に係る記憶部102は、光学設計に基づいて事前に算出されたXY座標とS角度との対応関係つまり、XY座標と理論S角度との対応関係を記憶したルックアップテーブル(Lookup Table:LUT)である第1テーブル102aと、理論S角度と実S角度との対応関係を記憶したルックアップテーブルである第2テーブル102bと、を記憶するように構成されている。第1テーブル102aおよび第2テーブル102bを照合することで、所定のXY座標にレーザ光を照射するための実S角度を決定することができる。
【0107】
特に本実施形態では、記憶部102は、筐体10の下端部からレーザ出力が維持される所定距離(ワークディスタンス)までの各Z座標を通過する水平平面について、第1テーブル102aを記憶するように構成されている。この構成は、後述の第3テーブル102cの決定に資する。
【0108】
また、ワークWの移動経路が設定平面R2に対して傾斜または曲がっていた場合、設定平面R2上で設定された照射位置と、印字面(照射エリアR1)上での実際の照射位置と、の間にズレが生じることになる。このズレは、印字パターン補正部105によって補正されることになる。
【0109】
後述の説明と一部重複するが、本実施形態に係る印字パターン補正部105は、照射エリアR1をXY平面に沿わせた場合におけるXY座標系、言い換えると、照射エリアR1に沿って見た2次元座標系と、前記実S角度と、の対応関係を決定する。記憶部102は、印字パターン補正部105によって決定された対応関係を、前記第1テーブル102aおよび第2テーブル102bとは異なるルックアップテーブルである第3テーブル102cとして記憶するように構成されている。
【0110】
以下、照射エリアR1に沿って見た2次元座標系、さらに言い換えると、ワークWの表面に沿った2次元座標系を「実XY座標系」と呼称するとともに、その2次元座標系で見た2次元座標を「実XY座標」と呼称する。ワークW表面の各点で、実XY座標系の基底は相違することになる。それに対し、マーカヘッド1を基準とした2次元座標系、つまり水平面に沿ったXY座標系を「水平座標系」と呼称するとともに、そのXY座標系で見たXY座標を「水平座標」と呼称する場合がある。
【0111】
第1テーブル102aと第2テーブル102bとを参照することで、水平座標系で見たXY位置と実S角度との対応関係を読み込むことができる。そこに第3テーブル102cをさらに参照することで、実XY座標系で見たXY位置と実S角度との対応関係を決定することができる。
【0112】
(印字パターン補正部105)
図5Aは、印字面が水平面に平行に延びる場合の印字パターンPp’を例示する図であり、
図5Bは、印字面が水平面に傾斜して延びる場合の印字パターンPpを例示する図である。また
図5Cは、印字パターン補正部105による補正について説明するための図である。
【0113】
印字パターン補正部105は、入力インターフェースIuにより受け付けられた移動経路情報Ipに基づいて、印字パターンPpを補正するように構成されている。ここで、印字パターン補正部105は、印字パターンPpを直に補正してもよいし、XY座標と理論S角度または実S角度との対応関係を補正する(実2次元座標標と理論S角度または実S角度を決定する)ことで、印字パターンPpを間接的かつ結果的に補正してもよい。本実施形態に係る印字パターン補正部105は、後者の補正方式を採用した構成とされている。
【0114】
すなわち、
図5Aに示すように、印字面としての照射エリアR1’が水平面に沿って平坦に延びている場合、特別な処理を行わずとも、入力インターフェースIuが受け付けた印字パターンPp’がワークW’の照射エリアR1’にマーキングされる。この場合、設定平面R2上に表示される印字パターンPpと、実際にマーキングされる印字パターンPp’は一致することになる。
【0115】
一方、
図5Bに示すように、印字面としての照射エリアR1が水平面に対し傾斜して延びている場合、特別な処理を行わなくては、入力インターフェースIuが受け付けた印字パターンPpと、照射エリアR1に実際にマーキングされる実際の印字パターンPpとは相違することになる。
【0116】
図5Aのようなケースの場合、実XY座標系と水平座標系とが一致する。一方、
図5Bのようなケースの場合、実XY座標系と水平座標系とが相違するため、実XY座標系で所望の印字パターンPpが実現される場合、水平座標系つまり設定平面R2に沿って見た印字パターンPpは、
図5Bの紙面右上に示すように、所望の印字パターンPpから歪むことになる。
【0117】
裏を返せば、設定平面R2上で見た印字パターンPpを適切に歪ませる(補正する)ことで、実XY座標系では所望の印字パターンPpがマーキングされることになる。
【0118】
そこで、本実施形態に係る印字パターン補正部105は、実XY座標と実S角度との対応関係を決定し、その対応関係を第3テーブル102cとして記憶部102に記憶させる。
【0119】
実XY座標系で所望の印字パターンPpとなるように実S角度を決定することで、入力インターフェースIuが受け付けた印字パターンPpと、照射エリアR1に実際にマーキングされる実際の印字パターンPpとを一致させることができる。
【0120】
実XY座標系で所望の印字パターンPpとなるように決定された実S角度によってレーザ光走査部4を制御した場合、水平座標系で見た印字パターンPpは、
図5Bの紙面右上に示すように、所望の印字パターンPpから補正されて歪むことになる。
【0121】
このように、印字パターン補正部105は、移動経路情報Ipに基づいて、レーザ光走査部4によるレーザ光の走査位置と、該レーザ光走査部4の制御パラメータ(実S角度)と、の対応関係を補正する。具体的に、印字パターン補正部105は、水平座標系で見た走査位置との対応関係から、実XY座標系で見た走査位置との対応関係に補正する。これにより、印字パターンPpは、水平座標系で見た形態から、間接的かつ結果的に補正されることになる。
【0122】
さらに例示すると、
図5Cの上側に示すように、照射エリアR1’が水平面に沿って平坦に延びかつ装置毎の個体差を仮に無視した場合、第1テーブル102aと第3テーブル102cは略一致する。この場合、印字パターンPp’としての文字「A」の下端部P1’にレーザ光を照射するための実S角度θ1’は、第1テーブル102aを参照することで決定可能となっている。
【0123】
対して、
図5Cの下側に示すように、照射エリアR1が水平面に対して湾曲して延びる場合、ワークWの移動経路情報Ipに応じて、第1テーブル102aと第3テーブル102cは相違することになる。この場合、印字パターンPpとしての文字「A」において、前記下端部P1’と同じ下端部P1にレーザ光を照射するための実S角度θ1は、第1テーブル102aを参照することで得られる実S角度θ1’とは相違する。この場合の実S角度θ1は、第3テーブル102cを参照することで決定可能となる。
【0124】
(印字データ生成部103)
印字データ生成部103は、文字入力手段としてのユーザインターフェースIuが受け付けた印字パターンPpに基づいて、直交座標により規定された設定平面R2に対応付けて印字データDpを生成する。
【0125】
具体的に、本実施形態に係る印字データ生成部103は、ユーザインターフェースIuによって入力が受け付けられた印字パターンPpに基づいて、1つまたは複数の走査線を並べてなる印字データDpを生成する。
【0126】
なお、ここでいう走査線とは、ワークWの表面(特に、照射エリアR1内の表面)上でのUVレーザ光の照射位置の軌跡を指す。この走査線は、印字パターンPpに対応して設定されるものであり、印字パターンPpに応じて走査線の形状が変化するとともに、印字パターンPpの文字の形態および太さに応じて走査線の本数が変化することになる。本実施形態に係る印字データDpには、走査線の本数と、各走査線の形状と、を示すデータが含まれる。
【0127】
より詳細には、本実態形態に係る印字データ生成部103は、ユーザインターフェースIuによって入力が受け付けられた後、印字パターン補正部105によって直にまたは間接的に補正された印字パターンPpに基づいて、印字データDpを生成するように構成されている。
【0128】
本実施形態のように、第3テーブル102cを介して印字パターンPpが間接的に補正された場合、印字データDpの内容は、印字パターンPpの補正時と非補正時とで同一になる。つまり、第3テーブル102cを用いる場合、各走査線の形状は、実XY座標系すなわち照射エリアR1をXY平面に沿わせた場合におけるXY座標系で見た形状となるものの、走査線の形状それ自体は、非補正時と同一になる。走査線の本数についても同様である。
【0129】
なお、各走査線の形状は、水平座標系または実XY座標系でみたレーザ光のスポット位置(レーザ光の照射位置)によって定めることができる。印字データ生成部103は、走査線毎に、実XY座標系で見たレーザ光の照射位置を決定し、その照射位置を示す座標データによって印字データDpを構成する。
【0130】
印字データ生成部103によって生成された印字データDpは、記憶部102に記憶されるか、マーキング制御部104に直に入力される。
【0131】
(マーキング制御部104)
マーキング制御部104は、印字データ生成部103により生成された印字データDpに基づいてレーザ光出力部3およびレーザ光走査部4を制御することで、印字面としての照射エリアR1上に配置されたワークWに対し、UVレーザ光を用いたマーキングを行うように構成されている。
【0132】
例えば複数の走査線からなる印字データDpが生成された場合、マーキング制御部104は、その印字データDfを構成する各走査線の本数と、各走査線の形状と、を読み込む。そして、複数の走査線を、所定の走査順(各走査線を走査する順番)にしたがって、印字面上で1本ずつ順番に走査する。
【0133】
ここで、マーキング制御部104は、マーキングされるべき印字パターンPpが印字面としての照射エリアR1上にマーキングされるように、レーザ光の走査位置(照射位置)と該レーザ光走査部の制御パラメータ(実S角度)との補正後の対応関係(第3テーブル103c)に基づいて、レーザ光走査部4を制御する。
【0134】
詳しくは、本実施形態に係るマーキング制御部104は、第3テーブル103cを参照することで、各走査線の形状に基づいたレーザ光の照射位置から、その照射位置に対応した実S角度を決定する。マーキング制御部104は、そうして決定した実S角度を実現するようにレーザ光走査部4を制御することで、所望のマーキングを施すことができる。
【0135】
<レーザマーキング装置Lの主要処理およびユーザインターフェースについて>
図6は、第2テーブル102b更新手順を例示するフローチャートである。また、
図7は、第3テーブル102cの更新手順を例示するフローチャートである。
図8は、実S角度の決定方法について説明するための図である。
図9は、移動経路情報Ipの入力インターフェースIuを例示する図である。
図6および
図7に示すフローは、レーザマーキング装置LによるワークWのマーキングに先立って事前に行われるものである。
【0136】
また、
図10は、第3テーブル102cを用いた走査手順を例示するフローチャー-トである。
図11および
図12は、印字パターンPpの入力インターフェースIuを例示する図である。
図10に示すフローは、レーザマーキング装置LによるワークWのマーキングに際して実行されるものである。
【0137】
以下、第2テーブル102bおよび第3テーブル102cの更新手順、第3テーブル102cを用いた走査手順、ならびに、各手順に関連したユーザインターフェースの具体例について、前記各図を参照しながら説明する。
【0138】
(第1テーブル102aの準備)
第1テーブル102aは、光学設計で決定されたものが用いられる。光学設計で決定された第1テーブル102aは、記憶部102等に事前に記憶されるようになっている。
【0139】
(第2テーブル102bの準備)
第2テーブル102bの準備に際しては、マーカコントローラ100が
図6に示すフローを実行する。まず
図6のステップS11では、マーカコントローラ100が第1テーブル102aを読み込む。続くステップS12では、マーカコントローラ100が第2テーブル102bを作成する。
【0140】
続くステップS13では、マーカコントローラ100は、マーカヘッド1からレーザ光を出射させ、事前に準備された治具上に所定のテストパターンを印字させる。治具としては、XY平面に沿って平坦に延びるワークWが選ばれるようになっている。
【0141】
続くステップS14では、マーカコントローラ100は、治具上に印字されたテストパターンが適切か否かを判定し、この判定はNOの場合はステップS12に戻る一方、YESの場合はステップS15に進む。
【0142】
ステップS15では、マーカコントローラ100は、テストパターン上でのレーザ光の照射位置毎に、その照射位置のXY座標と、そこにレーザ光を照射する際に用いられた実S角度と、を照合する。
【0143】
そして、マーカコントローラ100は、第1テーブル102aを参照することで、先ほど照合対象となったXY座標に対応した理論S角度を取得する。マーカコントローラ100は、そうして取得された理論S角度と、照合対象となった実S角度と、の対応関係を順次記憶することで、第2テーブル102bを更新する。このプロセスは、投影機、画像検査機等の任意の検査装置を用いて行うことができる。
【0144】
ステップS15に示す処理が完了すると、マーカコントローラ100は、更新された第2テーブル102bを記憶部102に記憶させ、
図6に示すフローを終了する。
【0145】
(第3テーブル102cの準備)
第3テーブル102cの準備に際しては、マーカコントローラ100が
図7に示すフローを実行する。まずステップS21では、マーカコントローラ100が、移動経路情報Ipの入力を受け付ける入力インターフェースIuを表示部301上に配置する。
【0146】
図8において、第1インターフェースI
1は、移動経路情報Ipにおける前述のオフセット量Lo、距離Dzおよび搬送ローラ502の直径Dの入力を受け付けるインターフェースである。
【0147】
また、第2インターフェースI2は、第1従動ローラ503lの直径D1を入力するための入力欄であり、第3インターフェースI3は、Z方向(高さ方向)における、搬送ローラ502の中心軸と、第1従動ローラ503lの中心軸とのズレ量(z1)を入力するための入力欄であり、第4インターフェースI4は、Y方向における、搬送ローラ502の中心軸と、第1従動ローラ503lの中心軸とのズレ量(y1)を入力するための入力欄である。
【0148】
また、第5インターフェースI5は、第2従動ローラ503rの直径D2を入力するための入力欄であり、第6インターフェースI6は、Z方向(高さ方向)における、搬送ローラ502の中心軸と、第2従動ローラ503rの中心軸とのズレ量(z2)を入力するための入力欄であり、第7インターフェースI7は、Y方向における、搬送ローラ502の中心軸と、第2従動ローラ503rの中心軸とのズレ量(y2)を入力するための入力欄である。
【0149】
そして、第8インターフェースI8は、移動経路情報Ipの入力以前の設定画面に戻るためのボタンであり、第9インターフェースI9は、移動経路情報Ipの入力を確定するためのボタンである。
【0150】
第1インターフェースI1~第9インターフェースI9は、本実施形態における入力インターフェース(経路情報受付手段)Iuを構成しており、いずれも、操作部302を介した入力を受け付けるように構成されている。
【0151】
続くステップS22において、印字パターン補正部105は、ステップS21で入力された移動経路情報Ipに基づいてワークWの移動経路を設定し、その移動経路上に等間隔(間隔dl)で格子点Ccを生成する。
【0152】
図8において、Z=0,Z=1,…と示された破線は、各Z位置での水平座標系(通常のXY座標系)を示す。以下、Z座標と水平座標系とを統合した座標系(通常の意味でのXYZ座標系)を「直交座標系」ともいう。直交座標系には、等間隔で単純立方格子を設定することができる。以下、単純立方格子を構成する各格子点を「単純格子点」と呼称し、これに符号「Cl」を付す。
【0153】
ここで、
図8において移動経路上に配置される各格子点Ccは、移動経路ひいては照射エリアR1をXY平面に沿わせた場合におけるXY座標系、つまり実XY座標系で見た格子点に相当する。以下、単純格子点Clと区別するために、移動経路上に生成される各格子点Ccについては、「変形格子点」と呼称する場合がある。
【0154】
なお、実XY座標は、各変形格子点Ccをナンバリングすることで設定可能である。例えば、
図8の紙面左右方向に沿って左側からN番目かつ、紙面奥行き方向に沿って手前側にM番目の変形格子点Ccは、実XY座標系で見て(X,Y)=(N,M)の実XY座標に在るとみなすことができる。また、
図8に拡大して示すように、各変形格子点Ccは、8つの単純格子点Clからなる単純立方格子によって包囲されるようになっている。
【0155】
続くステップS23で、印字パターン補正部105は、一変形格子点Ccを包囲する8つの単純格子点Clそれぞれの直交座標に基づいて、一変形格子点Ccにレーザ光を照射するための理論S角度を算出する。具体的に、印字パターン補正部105は、第1テーブル102aを参照することで、8つの単純格子点Clそれぞれの直交座標(水平座標+Z座表)に対応した理論S角度を取得する。
【0156】
そして、印字パターン補正部105は、8つの単純格子点Clそれぞれに対応した理論S角度の加重平均を算出し、その算出結果を一変形格子点Ccに対応した理論S角度とみなす。印字パターン補正部105は、変形格子点Cc毎に理論S角度の算出を実行する。
【0157】
続くステップS24で、印字パターン補正部105は、装置の個体差等に起因したバラツキを考慮すべく第2テーブル102bを参照することで、ステップS23で算出した理論S角度から実S角度を算出する。印字パターン補正部105は、変形格子点Cc毎に実S角度の算出を実行する。
【0158】
続くステップS25で、印字パターン補正部105は、前述したように各変形格子点Ccに実XY座標を割り当てる。印字パターン補正部105は、変形格子点Cc毎に、実XY座標とステップS24で算出された実S角度とを関連付けることで、第3テーブル102cを決定する。
【0159】
ステップS25に示す処理が完了すると、印字パターン補正部105は、更新された第3テーブル102cを記憶部102に記憶させ、
図8に示すフローを終了する。
【0160】
(ワークWのマーキング手順)
ワークWのマーキングに際しては、マーカコントローラ100が
図10に示すフローを実行する。まず
図10のステップS31では、マーカコントローラ100が、表示部301上に設定平面R2を表示させるとともに、その設定平面R2上に、印字パターンPpの入力を受け付ける入力インターフェースIuを配置する。マーカコントローラ100は、そうした入力インターフェースIuを介して印字パターンPpの入力を受け付ける。その際、マーカコントローラ100は、文字の太さ等、印字データDpを構成する他の設定も受け付ける。
【0161】
ステップS31に際し、表示部301には、例えば
図11および
図12に示すような表示画面が表示される。
図11および
図12において、第10インターフェースI
10は、印字内容(印字パターンPp)の入力を受け付けるべく、設定平面R2が配置された入力画面を表示するための切替タブである。また、第11インターフェースI
11は、印字パターンPpの位置調整を受け付けるべく、設定平面R2を拡大表示するための切替タブであり、第12インターフェースI
12は、印字パターンPpの詳細設定を入力するための入力欄等が配置された入力画面を表示するための切替タブである。
図11は第10インターフェースI
10が選択された状態に相当し、
図12は第11インターフェースI
11が選択された状態に対応する。
【0162】
また、
図11の画面右上に表示された第13インターフェースI
13は、複数の印字パターンPpをひとまとめにしてなる印字ブロックに割り振られた識別番号(ブロックNo.)を表示するとともに、その識別番号を介して印字パターンPpを切り替えるためのユーザインターフェースである。
【0163】
また、
図11の画面左側に表示された第14インターフェースI
14は、レーザマーキング装置Lの動作を停止させるためのボタンであり、第15インターフェースI
15は、印字パターンPpよりも早いタイミングで決定されるべき設定項目の入力画面に遷移させるためのボタンであり、第16インターフェースI
16は、印字パターンPpの内容を記憶部102等に保存させるためのボタンである。
【0164】
また、
図11の画面中央部から右側にかけて表示された第17インターフェースI
17は、印字内容(印字パターンPp)の入力を受け付ける入力欄であり、本実施形態における入力インターフェースIuを構成している。本実施形態では、「製造年月日」が入力されているが、例えば、食品関連のワークであれば賞味期限などの日付を入力可能にしてもよい。
【0165】
また、第17インターフェースI17の画面左側には、設定平面R2によって構成された第18インターフェースI18が表示される。この第18インターフェースI18は、印字パターンPpのレイアウトを表示する表示欄として機能するものであり、本実施形態における入力インターフェースIuを構成している。
【0166】
また、
図11において、第18インターフェースI
18の画面下側には、印字パターンPpの文字サイズの入力を受け付ける第19インターフェースI
19と、印字パターンPpの文字幅の入力を受け付ける第20インターフェースI
20と、印字パターンPpを構成する文字の太さの入力を受け付ける第21インターフェースI
21と、が表示される。
【0167】
一方、
図12には、
図11に示した状態よりも拡大表示された第18インターフェースI
18が表示される。
図12における第18インターフェースI
18には、位置調整の対象となった印字パターンPpを示す第22インターフェースI
22と、位置調整の目安となる十字線を示す第23インターフェースI
23と、が表示される。第22インターフェースI
22は、本実施形態における入力インターフェースIuを構成している。
【0168】
また、
図12において、第18インターフェースI
18の画面右側には、設定平面R2内で印字ブロックを移動させるための第24インターフェースI
24と、印字ブロック全体の幅を調整するための第25インターフェースI
25と、印字ブロック全体の高さを調整するための第26インターフェースI
26と、が表示される。
【0169】
第10インターフェースI10~第26インターフェースI26は、いずれも、操作部302を介した入力を受け付けるように構成されている。
【0170】
続くステップS32では、印字データ生成部103が、ステップS31で受け付けられた印字パターンPpに基づいて、設定平面R2に対応付けられた印字データDpを生成する。
【0171】
ここで、印字データ生成部103は、走査線毎に、実XY座標系で見たレーザ光の照射位置を決定し、その照射位置を示す座標データの集合として印字データDpを生成する。水平座標系ではなく実XY座標系で見たレーザ光の照射位置を決定したことで、水平座標系で見た印字パターンPpは、結果的に補正されることになる。
【0172】
続くステップS33では、マーキング制御部104がステップS32で生成された座標データを読み込んで、ワークWの移動速度の影響を座標データに加味する。
【0173】
ここで、マーキング制御部104は、移動経路に沿ってワークWが移動している場合、搬送速度センサ401(エンコーダ等)の検出信号が示す搬送速度に基づいて、レーザ光の照射位置を搬送方向Atにシフトさせる。照射位置のシフト量は、搬送速度の高低と、照射位置に対してレーザ出射軸Alがなす角度の大小と、に応じて決定される。なお、移動経路中でワークWが静止している場合、移動速度はゼロとみなされる。この場合、座標データは不変となる。
【0174】
また、ワークWがフィルムの場合、フィルムに付されたレジマークを検出するレジマーク検出センサ403が設けられていてもよい。レジマーク検出センサ403の検出信号によって、マーキング制御部104は移動するフィルムに対して適切な印字タイミングを認識することができる。具体的には、レジマーク検出センサ403によりレジマーク(印字トリガ)が検出されてから、搬送スピードに応じた所定時間(印字ディレイ)が経過したタイミングで、印字を行う。
【0175】
このように、移動するワークWに対して印字を行う場合、マーキング制御部104は、ワークの移動情報を取得する機能を有していてもよい。この場合、マーキング制御部104は、ワークの移動情報により特定される移動速度に基づいて、印字データ生成部103により生成された印字データを構成する走査線がワークの移動に追従するように、レーザ光走査部4を制御してもよい。
【0176】
また、印字パターンを構成する文字の太さが太くなった場合、太線印字処理を行ってもよい。太線印字処理は、マーキングされるべき文字の線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データを生成する処理である。マーキング制御部104は、太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、線要素が太る方向において隣合う走査線については、太線用印字データに対応した文字の線要素の中心線 に近接する内側の走査線よりも先に、内側の走査線と比較して中心線から離間する外側の走査線に沿ってレーザ光を走査するように、レーザ光走査部4を制御してもよい。そして、このような太線文字に対して、上述した移動印字を行うことも可能である。
【0177】
続くステップS34では、マーキング制御部104は、記憶部102に記憶された第3テーブル102cを参照することで、各座標データに対応した実S角度を決定する。
【0178】
続くステップS35では、マーキング制御部104は、レーザ光出力部3を制御してUVレーザ光を出力させると同時に、ステップS34で決定した実S角度に基づいてレーザ光走査部4を制御する。これにより、マーキング制御部104は、所望の走査線に沿ってUVレーザ光を走査するとともに、ワークWの表面(特に、印字面としての照射エリアR1)上にマーキングを施すことができる。
【0179】
続くステップS36では、マーキング制御部104は、全ての走査線がマーキングされたか否かを判定し、この判定がNOの場合はステップS33に戻る一方、YESの場合は
図10に示すフローを終了する。
【0180】
<3次元的な移動経路への対応策について>
以上説明したように、本実施形態によれば、印字パターン補正部105は、印字データDpの生成に際し、移動経路情報Ipに基づいた補正を実行する(
図5A、
図5Bおよび
図5Cを参照)。この移動経路情報Ipは、3次元空間内を移動するワークWの移動経路、すなわち3次元的な移動経路に関する情報に相当する。そのため、移動経路情報Ipに基づいた補正を行うことで、3次元的な移動経路に沿って移動するワークWに対し、より適切な印字を実施することができるようになる。
【0181】
また、
図8に例示したように、レーザマーキング装置Lは、例えば外部から移動経路情報Ipの入力を受け付けることができる。一般に、ワークWの移動経路は、ワークWの形状、ワークWの加工設備等に応じて様々な形態となる。したがって、移動経路情報Ipの入力を受付可能に構成することで、移動経路の各形態に適した補正を実行することができる。
【0182】
また、
図4に例示したように、印字面としての照射エリアR1は、第1搬送面R11、第2搬送面R12および第3搬送面R13の少なくとも1つから構成される。この場合、ワークWの移動経路は、搬送ローラ502の形状、搬送ローラ502および筐体10の相対的な位置関係等、搬送ローラ502に関係した情報によって、その3次元形状が特徴付けられることになる。したがって、移動経路情報Ipとして搬送ローラ502に関する情報を用いることで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0183】
また、
図4に例示したように、レーザマーキング装置Lは、移動経路情報Ipとして、搬送ローラ502の直径を参照する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0184】
また、
図4に例示したように、レーザマーキング装置Lは、移動経路情報Ipとして、第1搬送面R11および第3搬送面R13のうち少なくとも一方の傾斜角(第1傾斜角度θ1および/または第2傾斜角度θ2)を参照する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0185】
また、
図4に例示したように、レーザマーキング装置Lは、移動経路情報Ipとして、筐体10と搬送ローラ502との間の距離Dzを参照する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0186】
また、
図4に例示したように、レーザマーキング装置Lは、移動経路情報Ipとして、出射窓に対する搬送ローラ502のオフセット量Loを参照する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0187】
前記第8の態様によると、レーザマーキング装置Lは、レーザ光の走査位置と、レーザ光走査部4の制御パラメータとの対応関係を補正することで、移動経路情報Ipに基づいた補正を実行する。このように構成することで、3次元的な移動経路に対応した印字を実現する上で有利になる。
【0188】
≪他の実施形態≫
前記実施形態では、経路情報受付手段としての入力インターフェースIuによって移動経路情報Ipの入力を受け付けるように構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。マーカコントローラ100は、CADデータ等の設計データを読み込むことで移動経路情報Ipを取得してもよいし、レーザ光によってワークWの表面形状を測定し、その測定結果に基づいて移動経路情報Ipを設定してもよい。
【0189】
また、本開示は、移動経路に沿って移動している最中のワークWに対するマーキング(いわゆる移動印字)に適用してもよいし、移動経路の途中で静止しているワークWへのマーキング(いわゆる静止印字)に適用してもよい。
【0190】
また、本開示は、レーザ光の焦点距離を調整可能な機構(いわゆるZスキャナ)を備えたレーザマーキング装置Lに適用することもできる。
【0191】
また、本開示の適用対象とする移動経路は、
図4に例示したものに限定されない。前記実施形態における第2搬送エリアR12のように、+Z方向または-Z方向に向かって突出した領域を2つ以上有していてもよい。また、突出形状についても、第2搬送エリアR12のような断面円弧状のものには限定されない。移動経路は、角状に突出した形状を有していてもよい。
【0192】
他の移動経路の具体例としては、例えば
図13に示すように、第1搬送ローラ1501、第2搬送ローラ1502、第3搬送ローラ1503および第4搬送ローラ1504によって規定された断面U字上の移動経路に沿って搬送されるワークW
2に対し、本開示を適用することができる。
【符号の説明】
【0193】
S レーザマーキングシステム
L レーザマーキング装置
1 マーカヘッド
2 励起光生成部
3 レーザ光出力部
4 レーザ光走査部
10 筐体
100 マーカコントローラ
102 記憶部
103 印字データ生成部
104 マーキング制御部
105 印字パターン補正部
300 操作用端末
301 表示部(表示手段)
500 加工設備
502 搬送ローラ
At 搬送方向
Dp 印字データ
Dz 筐体と搬送ローラとの間の距離
Pp 印字パターン
Ip 移動経路情報
Iu 入力インターフェース(印字パターン受付手段、経路情報受付手段)
Lo 搬送ローラのオフセット量
R1 照射エリア(印字面)
R11 第1搬送エリア(第1搬送面)
R12 第2搬送エリア(第2搬送面)
R13 第3搬送エリア(第3搬送面)
R2 設定平面
θ1 第1傾斜角度
θ2 第2傾斜角度