(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074187
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】酸性飲料および酸性飲料の風味改善方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/68 20060101AFI20230522BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230522BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
A23L2/00 D
A23L2/68
A23L2/52 101
A23L2/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187005
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中山 早紀
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LG03
4B117LG05
4B117LG11
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK15
4B117LK18
4B117LL02
(57)【要約】
【課題】カゼインペプチドを含有する酸性飲料を飲用した場合に感じられる苦みを抑制しつつ、酸性飲料らしい良好な風味が保持される、飲料に関する技術を提供する。
【解決手段】酸性飲料は、カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸を含有し、前記カゼインペプチドの含有量が1.5質量%以下であり、前記乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が0.05以上であり、前記酸性飲料の20℃でのpHが4.0未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸を含有する酸性飲料であって、
前記カゼインペプチドの含有量が1.5質量%以下であり、
前記乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が0.05以上であり、
前記酸性飲料の20℃でのpHが4.0未満である、酸性飲料。
【請求項2】
前記リンゴ酸の含有量が0.01~0.8質量%である、請求項1に記載の酸性飲料。
【請求項3】
前記乳酸の含有量が0.01~1.0質量%である、請求項1または2に記載の酸性飲料。
【請求項4】
前記乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が2.5以下である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の酸性飲料。
【請求項5】
前記カゼインペプチドは、当該カゼインペプチドの分子量分布において、分子量500~10000の範囲の分子のピーク面積割合が50%以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の酸性飲料。
【請求項6】
甘味料をさらに含有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の酸性飲料。
【請求項7】
果汁をさらに含有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の酸性飲料。
【請求項8】
乳をさらに含有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の酸性飲料。
【請求項9】
前記酸性飲料が容器詰めされた、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の酸性飲料。
【請求項10】
カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸を含有する酸性飲料の風味改善方法であって、
前記カゼインペプチドの含有量が1.5質量%以下となるように調製する工程と、
前記乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が0.05以上となるように調製する工程と、
前記酸性飲料の20℃でのpHが4.0未満となるように調製する工程と、
を含む、酸性飲料の風味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性飲料および酸性飲料の風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドは、2個以上のアミノ酸が結合した化合物であり、人体に有用な生理作用が注目され、多くの飲食品に用いられている。ペプチドの由来としては、乳清、カゼイン、及び乳タンパク濃縮物(TMP)などの乳タンパク、並びに卵白、コラーゲン、及びプロタミンなどの動物性タンパク;大豆、小麦、及びとうもろこしなどを由来とする植物性タンパクが知られる。なかでも、乳タンパク由来のペプチドを用いた飲料の開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、酸味料、甘味料、カゼインペプチドを含有し、当該カゼインペプチドを0.01~1質量%、ショ糖甘味換算濃度で0.1~4質量%、酸度が0.003~1質量%である酸性飲料が開示されている。そして、特許文献1に開示される酸性飲料は、酸度が比較的高いにも関わらず、甘味料の増量を抑えつつも甘味を増強する観点から、特定量の甘味料と、特定量のカゼインペプチドとを含有させるものである。
【0004】
また、特許文献2には、乳酸菌発酵液に、該乳酸菌発酵液に由来しない乳タンパク質を添加することで生じる苦みを低減する観点から、当該乳原料由来のタンパク質の含量を3質量%以上とし、pH4.9以下とする飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-086721号公報
【特許文献2】特開2020-162489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載されるようなカゼインペプチドを含有する酸性飲料においては、酸性飲料らしい良好な風味を保持しつつ、苦みを抑制する点で改善の余地があった。本発明者は、カゼインペプチドを含有する酸性飲料を飲用した場合に感じられる苦みに着目し、これを抑制すべく鋭意検討を行った結果、数ある酸味料の中でもリンゴ酸と乳酸を組み合わせることが有効であることを知見し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の酸性飲料および酸性飲料の風味改善方法が提供される。
[1]
カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸を含有する酸性飲料であって、
前記カゼインペプチドの含有量が1.5質量%以下であり、
前記乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が0.05以上であり、
前記酸性飲料の20℃でのpHが4.0未満である、酸性飲料。
[2]
前記リンゴ酸の含有量が0.01~0.8質量%である、[1]に記載の酸性飲料。
[3]
前記乳酸の含有量が0.01~1.0質量%である、[1]または[2]に記載の酸性飲料。
[4]
前記乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が2.5以下である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の酸性飲料。
[5]
前記カゼインペプチドは、当該カゼインペプチドの分子量分布において、分子量500~10000の範囲の分子のピーク面積割合が50%以上である、[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の酸性飲料。
[6]
甘味料をさらに含有する、[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の酸性飲料。
[7]
果汁をさらに含有する、[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の酸性飲料。
[8]
乳をさらに含有する、[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の酸性飲料。
[9]
前記酸性飲料が容器詰めされた、[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の酸性飲料。
[10]
カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸を含有する酸性飲料の風味改善方法であって、
前記カゼインペプチドの含有量が1.5質量%以下となるように調製する工程と、
前記乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が0.05以上となるように調製する工程と、
前記酸性飲料の20℃でのpHが4.0未満となるように調製する工程と、
を含む、酸性飲料の風味改善方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カゼインペプチドを含有する酸性飲料を飲用した場合に感じられる苦みを抑制しつつ、酸性飲料らしい良好な風味が保持される飲料に関する技術が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0010】
<酸性飲料>
本実施形態の酸性飲料(以下「飲料」とも表記する。)は、カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸を含有し、カゼインペプチドの含有量が1.5質量%以下であり、乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が0.05以上であり、酸性飲料の20℃でのpHが4.0未満である。
これにより、カゼインペプチドを含有する酸性飲料を飲用した際に感じられる苦みを低減しつつ、酸性飲料らしい良好な風味が保持できる。また、後味のよさを向上することで、酸性飲料らしい風味、おいしさをより向上できる。
かかる理由の詳細は明らかではないが、リンゴ酸と乳酸による酸味が苦みを効果的にマスキングできることが推測される。リンゴ酸や乳酸は酸味料の一種として知られるが、酸味料の種類によって、感じられる酸味の切れやまろやかさ、酸味が感じられるまでの早さや後味が異なる。例えば、リンゴ酸は爽やかで酸味がはっきりし比較的余韻があるのに対し、乳酸はリンゴ酸とは対照的に口当たりがまろやかな酸味が感じられることで知られる。そこで、リンゴ酸と乳酸を組み合わせ、その比率を制御することで、飲料の飲み始めから飲み終わりにかけてバランスよい酸味が継続的に感じられ、カゼインペプチドに由来する苦みのマスキング効果が持続的に得られるため、苦みがより感じられにくくなることが一因と考えられる。
【0011】
なお本実施形態において、カゼインペプチドに由来する苦みとは、カゼインペプチドを含有する酸性飲料を飲用した場合に感じられる、カゼインペプチド特有の薬のような、口の中に残る苦みを意図する。
また、本実施形態において、酸性飲料らしい良好な風味とは、適度な酸味によるさっぱり感、すっきり感、飲みやすさがバランスよく得られ、後味がよいことを意図する。
【0012】
以下、本実施形態の飲料に含まれる成分について説明する。
【0013】
[カゼインペプチド]
本実施形態の飲料は、カゼインペプチドを含有するものである。
一般に、ペプチドとは、例えば、動植物性あるいは微生物由来のタンパク質を酸、アルカリまたはタンパク質加水分解酵素で加水分解する等により得られるものである。由来するタンパク質によって、コラーゲンペプチド、大豆ペプチド、乳ペプチド、小麦ペプチドおよび卵ペプチドなどがある。
本実施形態のカゼインペプチドは、例えば、牛乳、馬乳、山羊乳、および羊乳等の獣乳に由来するペプチドが挙げられる。中でも、牛乳由来のカゼインペプチドが好ましく、当該牛乳由来のカゼインペプチドをタンパク質加水分解酵素で分解して得られる乳カゼインペプチドであることがより好ましい。
【0014】
また、本実施形態におけるカゼインペプチドは、分子量分布において、500~10000の数値範囲のサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比が50%以上であることが好ましく、500~6000の数値範囲でのサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比が60%以上であることがより好ましい。
これにより、カゼインペプチドを含有する酸性飲料を飲用した際に感じられる苦みを低減しつつ、酸性飲料らしい良好な風味が得られやすくなる。
【0015】
本実施形態におけるカゼインペプチドの分子量は、公知の方法で測定することができ、例えば、粘度測定、HPLC及びサイズ排除クロマトグラフ法等の定量方法によって測定できる。なかでも、サイズ排除クロマトグラフ法であることが好ましい。サイズ排除クロマトグラフ法を用いる場合、使用カラムはTSKgel G2500PWXL(東ソー株式会社製)とすることが好ましい。
【0016】
本実施形態の飲料において、カゼインペプチドの含有量は、1.5質量%以下であり、好ましくは1.2質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。カゼインペプチドの含有量を、上記上限値以下とすることにより、飲みやすさを保持しやすくなる。
一方、カゼインペプチドの含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上がさらに好ましく、0.15質量%以上がことさらに好ましい。カゼインペプチドの含有量を上記下限値以上とすることにより、苦み抑制効果を一層発揮し、酸性飲料の良好な風味を保持しやすくなる。
【0017】
[乳酸]
本実施形態において、乳酸は、乳酸塩であってもよい。乳酸は酸味料として含まれるものである。
乳酸の含有量は、飲料全量に対して、0.01~1.0質量%であることが好ましく、0.05~0.8質量%であることがより好ましく、0.07~0.6質量%であることがさらに好ましい。
【0018】
[リンゴ酸]
本実施形態において、リンゴ酸は、リンゴ酸塩であってもよい。リンゴ酸は酸味料として含まれるものである。
リンゴ酸の含有量は、飲料全量に対して、0.01~0.8質量%であることが好ましく、0.02~0.6質量%であることがより好ましく、0.03~0.3質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
本実施形態において、乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)は0.05以上であり、0.08以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、0.17以上であることがさらに好ましい。一方、本実施形態において、乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)は2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.2以下であることがさらに好ましい。
飲料の上記(リンゴ酸/乳酸)をかかる数値とすることにより、飲料の後味を良好にし、苦みの低減と、良好な風味とのバランスを高水準で両立できる。
【0020】
本実施形態の飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の他の成分を含んでもよい。具体的には、果汁、甘味料、酸味料、乳、香料、ビタミン、着色料、食塩、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、および増粘安定剤等の飲料に通常配合される成分を含有することができる。
【0021】
上記の果汁としては、例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、およびマンゴー果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸塩、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、リン酸、フィチン酸、アスコルビン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
ただし、本実施形態の飲料は、カゼインペプチドを含有する酸性飲料を飲用した場合に感じられる苦みを効果的に抑制する観点からは、リン酸を含まないことが好ましい。
【0024】
上記の乳としては、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、部分脱脂乳、練乳、粉乳、および発酵乳等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0025】
以下、本実施形態の飲料の詳細についてさらに説明する。
【0026】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、4.0未満であり、好ましくは3.9以下であり、より好ましくは3.8以下であり、さらに好ましくは3.7以下である。
pHを上記上限値以下とすることにより苦みを低減しつつ、飲料の風味のバランスを良好にできる。
本実施形態の飲料の20℃におけるpHの下限値はとくに限定されないが、飲料としての風味を保持する点から、好ましくは2.4以上であり、より好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは2.6以上である。
【0027】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0028】
[酸度]
本実施形態の飲料の酸度は、0.2g/100ml以上、0.6g/100ml以下であることが好ましい。酸度を、上記下限値以上とすることにより、おいしさが得られるようになる。一方、酸度を、上記上限値以下とすることにより、過度な酸味を抑制し、おいしさを両立できる。
【0029】
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0030】
[ブリックス値]
本実施形態の飲料のブリックス値(Bx)は、飲みやすさを向上しつつ、香り、酸味、苦み、後味のバランスを良好にする観点から、好ましくは、1°以上20°以下であり、より好ましくは、3°以上17°以下であり、さらに好ましくは、5°以上13°以下である。
ブリックス値は、飲料全量に対する可溶性固形分の合計含有量を示す。ブリックス値は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
ブリックス値は、例えば、後述の甘味料の量、その他の各種成分の量などにより調整することができる。
【0031】
[炭酸ガス、アルコール]
また、本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
なお、苦み抑制効果を安定的に得る観点から、炭酸ガスを含まない飲料であることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0033】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。飲料を外観から視認できる観点からは、ペットボトルが好ましい。
【0034】
飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000mlが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500mlがより好ましい。
【0035】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0036】
<酸性飲料の製造方法>
本実施形態の酸性飲料の製造方法は、カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸を含有する酸性飲料において、上記カゼインペプチドの含有量が1.5質量%以下となるように調製する工程と、上記乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が0.05以上となるように調製する工程と、上記酸性飲料の20℃でのpHが4.0未満となるように調製する工程と、を含むものである。これにより、カゼインペプチドを含有する酸性飲料を飲用した場合に感じられる苦みを抑制しつつ、飲料の風味を向上させることができる。
上記の各工程の順序は特に限定されない。また、カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸の配合方法、混合方法、含有量の調製方法等は公知の方法とすることができる。
【0037】
<酸性飲料の風味改善方法>
本実施形態の酸性飲料の風味改善方法は、カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸を含有する酸性飲料において、上記カゼインペプチドの含有量が1.5質量%以下となるように調製する工程と、上記乳酸の含有量(g)に対するリンゴ酸の含有量(g)(リンゴ酸/乳酸)が0.05以上となるように調製する工程と、上記酸性飲料の20℃でのpHが4.0未満となるように調製する工程と、を含むものである。これにより、カゼインペプチドを含有する酸性飲料を飲用した場合に感じられる苦みを抑制しつつ、飲料の風味を向上させることができる。
上記の各工程の順序は特に限定されない。また、カゼインペプチド、リンゴ酸、および乳酸の配合方法、混合方法、含有量の調製方法等は公知の方法とすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(1)カゼインペプチドの準備
特許第5718741号公報段落[0108]~[0110]に記載の方法に従って作製し、7時間反応させて、ラクトノナデカペプチド(以下、「LNDP」)を得た。分子量分布は、500~6000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として65質量%であった。
得られたLNDPを用いて、以下の飲料を調製した。
【0041】
(2)飲料の物性
・ブリックス:飲料(20℃)について糖用屈折計(ATAGO RX-5000α)を用いて測定した。
・酸度:飲料100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)をJAS規格の酸度測定法で定められた方法に基づき測定し、算出した。
・pH:飲料(20℃)について、pHメータ(HM-30R)を用いて測定した。
【0042】
(3)官能評価
各飲料について訓練した技術者による官能試験を実施した。具体的には、複数の技術者がそれぞれ飲料(20℃)を試飲し、試飲した際に感じられる「苦みの強さ」「後味のよさ」について、以下の評価基準に従い各コントロール(対照)を4点とした7段階評価を行い、その平均値を算出した。
・「苦みの強さ」評価基準
評点7:対照と比較して非常に強いと感じた
評点6:対照と比較して強いと感じた
評点5:対照と比較してやや強いと感じた
評点4:対照と同じ
評点3:対照と比較してやや弱いと感じた
評点2:対照と比較して弱いと感じた
評点1:対照と比較して非常に弱いと感じた
・「後味のよさ」評価基準
評点7:対照と比較してとてもよくないと感じた
評点6:対照と比較してよくないと感じた
評点5:対照と比較してややよくないと感じた
評点4:対照と同じ
評点3:対照と比較してややよいと感じた
評点2:対照と比較してよいと感じた
評点1:対照と比較してとてもよいと感じた
【0043】
(4)実施例、参考例および比較例
[実験1]:酸味料の種類の影響1(コントロールを無水クエン酸とした場合)
表1、2に示す含有量となるように、各成分を混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(2)の測定、および(3)の官能評価を行った。なお、対照は比較例1とした。結果を表1、2に示す。
【0044】
【0045】
【0046】
表1より、リンゴ酸、乳酸のいずれか一方のみを含む比較例2,3、および、酢酸、リン酸のいずれか一方のみを含む比較例4,5、リンゴ酸、乳酸のいずれかと無水クエン酸、酢酸、リン酸のいずれかとを併用した比較例6,7,10,11,12,13、クエン酸と酢酸、リン酸のいずれかとを併用した比較例8,9、酢酸とリン酸を併用した比較例14は、「苦みの強さ」「後味のよさ」のいずれか一方が3.00を超えるものであった。
また、表2より、(リンゴ酸/乳酸)が0.02の比較例15は「後味のよさ」が3.00を超えた。
一方実施例1~5はいずれも、「苦みの強さ」「後味のよさ」がともに3.00以下であった。
【0047】
[実験2]:酸味料の種類の影響2(コントロールをリンゴ酸とした場合)
表3に示す含有量となるように、各成分を混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(2)の測定、および(3)の官能評価を行った。なお、対照は比較例16とした。結果を表3に示す。
【0048】
【0049】
[実験3]:カゼインペプチド濃度の影響1(酸度0.2%)
表4に示す含有量となるように、各成分を混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(2)の測定、および(3)の官能評価を行った。なお、対照は比較例17~20それぞれとした。結果を表4に示す。
【0050】
【0051】
[実験4]:カゼインペプチド濃度の影響2(酸度0.5%)
表5に示す含有量となるように、各成分を混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(2)の測定、および(3)の官能評価を行った。なお、対照は比較例21~23それぞれとした。結果を表5に示す。
【0052】
【0053】
[実験5]:カフェインの苦みに対する苦み抑制効果の検証
表6に示す含有量となるように、各成分を混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(2)の測定、および(3)の官能評価を行った。なお、対照は参考例1とした。結果を表6に示す。
【0054】
【0055】
カフェインおよびリンゴ酸を含む飲料(参考例1)と同程度の酸度、pHとなるようにリンゴ酸と乳酸の含有量を調整して適用した飲料(参考例2)は、参考例1よりも苦みの強さが高かった。これより、リンゴ酸と乳酸の組み合わせによる苦み抑制効果は、カゼインペプチドを含有する酸性飲料において効果的に得られることが分かった。
【0056】
[実験6]:乳入り酸性飲料における苦み抑制効果の検証
表7に示す含有量となるように、各成分を混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(2)の測定、および(3)の官能評価を行った。なお、対照は比較例24とした。結果を表7に示す。
【0057】
【0058】
[実験7]:果汁入り酸性飲料における苦み抑制効果の検証
表8に示す含有量となるように、各成分を混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(2)の測定、および(3)の官能評価を行った。なお、対照は比較例25とした。結果を表8に示す。
【0059】
【0060】
実施例1~19の各飲料はいずれも酸性飲料らしい風味が得られ、おいしく飲用できるものであった。