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特開2023-74194廃棄物ガス化設備の運転方法および廃棄物ガス化設備
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  • 特開-廃棄物ガス化設備の運転方法および廃棄物ガス化設備 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074194
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】廃棄物ガス化設備の運転方法および廃棄物ガス化設備
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/30 20060101AFI20230522BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
F23G5/30 F
F23J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187014
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】皆川 公司
(72)【発明者】
【氏名】早川 諒
(72)【発明者】
【氏名】福富 裕太
【テーマコード(参考)】
3K070
【Fターム(参考)】
3K070DA07
3K070DA09
3K070DA27
3K070DA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】定常運転を速やかに開始することが可能な廃棄物ガス化設備の運転方法および廃棄物ガス化設備を提供する。
【解決手段】廃棄物ガス化設備の運転方法であって、廃棄物ガス化設備がガス化炉と集塵機とを備え、ガス化炉では、酸素を含む気体と可燃物を含む廃棄物とが導入され、可燃物の熱分解が行われて可燃性ガスを含む排ガスが発生され、集塵機では排ガスに含まれる煤が取り除かれ、廃棄物ガス化設備ではガス化炉を加熱して立ち上げる立上げ運転が実施され、立上げ運転では廃棄物か廃棄物とは別の可燃物かが立上げ用燃料とされ、立上げ用燃料がガス化炉で燃焼されてガス化炉が加熱され該立上げ用燃料の燃焼排ガスが立上げ時排ガスとして該ガス化炉から排出され、立上げ運転では、酸素を含む立上げ時排ガスをガス化炉から排出することと立上げ時排ガスに対して集塵機の上流側で水を加えることとが実施される廃棄物ガス化設備の運転方法、を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物ガス化設備の運転方法であって、
前記廃棄物ガス化設備が、ガス化炉と、集塵機とを備え、
前記ガス化炉では、酸素を含む気体と、可燃物を含む廃棄物とが導入され、前記可燃物の熱分解が行われて可燃性ガスを含む排ガスが発生され、
前記集塵機では、前記ガス化炉から排出される前記排ガスに含まれる煤が取り除かれ、
該廃棄物ガス化設備では、
前記ガス化炉を加熱して前記ガス化炉を立ち上げる立上げ運転が実施され、
該立上げ運転では、
前記廃棄物か、前記廃棄物とは別の可燃物かが立上げ用燃料とされ、
該立上げ用燃料が前記ガス化炉で燃焼されて前記ガス化炉が加熱されるとともに該立上げ用燃料の燃焼排ガスが立上げ時排ガスとして該ガス化炉から排出され、
前記立上げ運転では、酸素を含む前記立上げ時排ガスを前記ガス化炉から排出することと、
該立上げ時排ガスに対して前記集塵機の上流側で水を加えることとが実施される廃棄物ガス化設備の運転方法。
【請求項2】
前記立上げ運転では、
前記集塵機よりも上流側での立上げ時排ガスの温度を測定することと、
該温度に応じて前記集塵機の上流側で加えられる前記水の量を調整することとが実施される請求項1記載の廃棄物ガス化設備の運転方法。
【請求項3】
前記廃棄物ガス化設備は、前記集塵機で前記煤が取り除かれた前記排ガスを水で洗浄するガス洗浄装置を更に有し、
前記立上げ運転では、
前記ガス洗浄装置で前記立上げ時排ガスを負圧状態にしつつ水で洗浄することが更に実施される請求項1又は2記載の廃棄物ガス化設備の運転方法。
【請求項4】
前記立上げ運転では、前記立上げ時排ガスの酸素含有量を求めることを更に実施し、該酸素含有量が予め設定した基準値未満となったときに前記立上げ時排ガスに対して前記水を加えることを停止する請求項1乃至3の何れか1項に記載の廃棄物ガス化設備の運転方法。
【請求項5】
前記立上げ運転では、前記立上げ時排ガスの可燃性ガス含有量を求めることを更に実施し、該可燃性ガス含有量が予め設定した基準値を超えたときに前記立上げ時排ガスに対して前記水を加えることを停止する請求項1乃至3の何れか1項に記載の廃棄物ガス化設備の運転方法。
【請求項6】
ガス化炉と、集塵機とを備えた廃棄物ガス化設備であって、
前記ガス化炉から前記集塵機へと至る排ガス経路を有し、
前記ガス化炉では、酸素を含む気体と、可燃物を含む廃棄物とが導入され、前記可燃物の熱分解が行われて可燃性ガスを含む排ガスが発生され、
前記集塵機では、前記ガス化炉で発生された前記排ガスが前記排ガス経路を通じて流入され、且つ、該排ガスに含まれる煤が取り除かれ、
前記排ガス経路を通じて前記集塵機に供給される前記排ガスに対して前記集塵機よりも上流側で水を加えることが可能な加水装置がさらに備えられている廃棄物ガス化設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物ガス化設備の運転方法と廃棄物ガス化設備とに関し、より詳しくは、廃棄物を熱分解して可燃性ガスを含む排ガスが排出されるガス化炉を備えた廃棄物ガス化設備の運転方法と廃棄物ガス化設備とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可燃物を含んだ廃棄物をガス化炉で熱分解して水素、一酸化炭素、メタンなどの可燃性ガスを発生させることが行われている。この可燃性ガスは、燃料や燃料を製造するための原料などに利用されている。この種の設備でのガス化炉から排出される排ガスには可燃性ガス以外のガス、ミスト、煤なども含まれている。この種の設備では、ガス化炉から排出される排ガスは、集塵機で煤などの固形物を取り除いた後にガス洗浄装置でミストや水溶性のガスを取り除いた後に燃料などに有効利用されている。
【0003】
下記特許文献1では上記のような設備を稼働して定常運転をさせるまでの立上げ運転に係る方法が検討されている。また、下記特許文献2には、石炭をガス化する設備での立上げ運転について記載されており、ガス化炉から排出される排ガスのフィルタリングを行なうポーラスフィルタでの付着物の燃焼を防止すべくイナートガスを使って排ガスの酸素濃度を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-25378号公報
【特許文献2】特開2014-152300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
休転状態でのガス化炉は内部温度が定常運転時よりも低下しており、場合によっては冷え切ってしまっている。そのため廃棄物ガス化設備での立上げ運転に際しては、ガス化炉に十分に酸素を取り込んで内部での発熱量を多くする方が定常運転に移行するまでの時間を短くすることができる。しかしながら、そうすると立上げに要する時間を短縮できるものの立上げ時の排ガスに酸素が多く含まれることになりかねない。そのような立上げ時排ガスが集塵機に導入されると、集塵機の内部で煤などが燃焼するおそれがある。石炭ガス化設備と違って廃棄物ガス化設備は、通常、イナートガスを手軽に利用できるようにはなっていない。そのようなことから廃棄物ガス化設備やその運転方法においては設備を良好な形で立上げて速やかに定常運転に移行させることが要望されているもののそのような要望は十分満たされていない。そこで、本発明は定常運転を速やかに開始することが可能な廃棄物ガス化設備の運転方法および廃棄物ガス化設備を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、
廃棄物ガス化設備の運転方法であって、
前記廃棄物ガス化設備が、ガス化炉と、集塵機とを備え、
前記ガス化炉では、酸素を含む気体と、可燃物を含む廃棄物とが導入され、前記可燃物の熱分解が行われて可燃性ガスを含む排ガスが発生され、
前記集塵機では、前記ガス化炉から排出される前記排ガスに含まれる煤が取り除かれ、
該廃棄物ガス化設備では、
前記ガス化炉を加熱して前記ガス化炉を立ち上げる立上げ運転が実施され、
該立上げ運転では、
前記廃棄物か、前記廃棄物とは別の可燃物かが立上げ用燃料とされ、
該立上げ用燃料が前記ガス化炉で燃焼されて前記ガス化炉が加熱されるとともに該立上げ用燃料の燃焼排ガスが立上げ時排ガスとして該ガス化炉から排出され、
前記立上げ運転では、酸素を含む前記立上げ時排ガスを前記ガス化炉から排出することと、
該立上げ時排ガスに対して前記集塵機の上流側で水を加えることとが実施される廃棄物ガス化設備の運転方法、を提供する。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、
ガス化炉と、集塵機とを備えた廃棄物ガス化設備であって、
前記ガス化炉から前記集塵機へと至る排ガス経路を有し、
前記ガス化炉では、酸素を含む気体と、可燃物を含む廃棄物とが導入され、前記可燃物の熱分解が行われて可燃性ガスを含む排ガスが発生され、
前記集塵機では、前記ガス化炉で発生された前記排ガスが前記排ガス経路を通じて流入され、且つ、該排ガスに含まれる煤が取り除かれ、
前記排ガス経路を通じて前記集塵機に供給される前記排ガスに対して前記集塵機よりも上流側で水を加えることが可能な加水装置がさらに備えられている廃棄物ガス化設備、を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、排ガスに水を加えるという簡易な操作でありながら、加えた水が大量の水蒸気となって排ガスの酸素濃度を低下させるとともに気化熱により排ガスの温度を低下させることができる。そのため、本発明では、集塵機に付着している煤が燃焼することを防ぎつつガス化炉を定常運転に適した温度にすばやく到達させることができる。即ち、本発明によれば定常運転を速やかに開始することが可能な廃棄物ガス化設備および廃棄物ガス化設備の運転方法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、廃棄物ガス化設備を構成する装置類と処理のフローとの状況を示した概略図である。
図2図2は、廃棄物ガス化設備での立上げ運転の初期状況を示した概略図である。
図3図3は、廃棄物ガス化設備での立上げ運転の終盤の状況を示した概略図である。
図4図4は、廃棄物ガス化設備の運転状況が立上げ運転から通常運転に移行した際の様子を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。まず、図1の例示を参照しつつ廃棄物ガス化設備について説明する。本実施形態の廃棄物ガス化設備は、定常運転に際して可燃物を含んだ廃棄物を熱分解し、該熱分解によって可燃性ガスを生成し、該可燃性ガスを有効利用し得るように構成されている。
【0011】
図1の廃棄物ガス化設備1には、当該設備において処理される廃棄物を貯留する廃棄物貯留場10と、該廃棄物貯留場10から可燃物を含む廃棄物が供給されて当該可燃物を熱分解するガス化炉20とが備えられている。前記ガス化炉20は、酸素を含む気体を導入し、前記廃棄物を還元雰囲気下で燃焼させて可燃性ガスを含む排ガスを排出し得るように構成されている。本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、前記ガス化炉20に酸素を含む気体を供給するための気体供給装置30をさらに備えている。
【0012】
前記ガス化炉20は、その具体的な態様が特に限定されるわけではないが、例えば、流動層を有する流動床式ガス化炉とすることができる。前記廃棄物ガス化設備1には、前記気体供給装置30から前記ガス化炉20に前記気体を供給する気体供給経路GSが設けられている。前記気体供給経路GSは、前記ガス化炉20の前記流動層(図示せず)を流動化させるための流動化ガスとして前記気体を前記ガス化炉20の底部に供給するように設けられていてもよい。
【0013】
前記廃棄物ガス化設備1には、前記廃棄物貯留場10の廃棄物を燃料として前記ガス化炉20に供給するための第1の燃料供給経路(以下「第1燃料供給経路PS1」ともいう)が設けられている。該第1燃料供給経路PS1は、前記廃棄物を前記流動床に前記廃棄物を投入するように設けられていてもよい。
【0014】
前記廃棄物ガス化設備1では、前記ガス化炉20から排出される排ガスに含まれている可燃性ガスが有効利用される。前記廃棄物ガス化設備1には、前記ガス化炉20から可燃性ガスが利用される場所まで排ガスを搬送するための排ガス経路G1が設けられている。前記ガス化炉20から排出される排ガスには可燃性ガスだけでなく煤などの固形物も含まれる。前記廃棄物ガス化設備1には、煤などの固形物の少なくとも一部を排ガスから取り除くための集塵機40が設けられている。
【0015】
前記集塵機40は、特に集塵方式が限定されるわけではないが、例えば、ろ過式や吸着式のものが挙げられる。即ち、前記集塵機40は、フィルターを有するものであっても吸着板を有するものであってもよい。前記集塵機は、スクラバーや湿式電気集塵機などの内部で集塵のために水が用いられる湿式集塵機であっても、内部で水が用いられない乾式集塵機であってもよい。尚、該湿式集塵機は、後述するガス洗浄装置70としても利用可能である。
【0016】
前記集塵機40で排ガスから取り除かれる煤などの固形物は、再び、燃料としてガス化炉20に返送することができる。前記廃棄物ガス化設備1には、前記集塵機40で排ガスから取り除いた煤を含む固形物をガス化炉20で燃焼させる燃料としてガス化炉20に返送する固形物返送経路(図示せず)を有していてもよい。前記湿式集塵機では、内部が湿った状態になるので内壁面等に付着している煤などによる意図せぬ発火が乾式集塵機よりも生じ難い。一方、乾式集塵機では、煤などの固形物を乾燥した状態で回収できるため当該固形物を燃料に利用しやすくなる。
【0017】
集塵機40や後述するガス洗浄装置70として湿式電気集塵機のようなクーロン力による集塵作用を利用する装置を用いる場合、放電による可燃性ガスの燃焼を防止する上で、上流側に酸素濃度計を設けて排ガスにおける酸素濃度をモニタリングするようにしてもよい。酸素濃度のモニタリングには、レーザー式酸素濃度計を用いることができる。レーザー式酸素濃度計は、応答性が良く、酸素濃度の変化をいち早く検知できる点で好適である。
【0018】
本実施形態の前記排ガス経路G1は、前記ガス化炉20から前記集塵機40へと至り、該集塵機40からさらに下流側に延びるように設けられている。本実施形態の廃棄物ガス化設備1には、前記ガス化炉20と前記集塵機40との間の排ガス経路G1において前記ガス化炉20から排出された高温の排ガス(以下、「高温排ガスX0」ともいう)と熱交換して熱エネルギーを回収するための熱回収装置50が備えられている。また、本実施形態の廃棄物ガス化設備1には、排ガス経路G1を通じて前記集塵機40に供給される前記排ガスに対して前記集塵機40よりも上流側で水を加えることが可能な加水装置60がさらに備えられている。
【0019】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1には、排ガス経路G1を流通する排ガスの温度を測定するための温度測定装置が1又は2台以上備えられている。本実施形態の廃棄物ガス化設備1には、複数の温度測定装置が備えられている。複数の温度測定装置の内の第1の温度測定装置(以下、「第1温度測定装置T1」ともいう)は、前記ガス化炉20から排出された排ガスの温度(以下、「ガス化炉出口温度t0」ともいう)を熱回収装置50よりも手前(上流側)で測定するように配されている。
【0020】
本実施形態の前記熱回収装置50は、熱回収用の熱媒が流通される熱交換器(図示せず)を有する。熱回収装置50は、熱交換器(図示せず)での単位時間あたりの熱媒の流通量を任意に調整可能であってもよい。即ち、熱回収装置50は、熱媒の流通量を調節することが可能な熱媒量調節機(図示せず)を有していてもよい。
【0021】
前記加水装置60は、排ガスに対して水を吐出するノズル(図示せず)と該ノズルに水を給水するポンプなどの給水機(図示せず)を備えている。前記加水装置60は、排ガスに対して単位時間あたりに加える水の量を調節自在であってもよい。即ち、加水装置60の給水機(図示せず)は、排ガスに対して単位時間あたりに加える水の量を調節することが可能であってもよい。
【0022】
前記複数の温度測定装置の内の第2の温度測定装置(以下、「第2温度測定装置T2」ともいう)は、前記集塵機40に導入される排ガスの温度(以下、「集塵機入口温度t2」ともいう)を測定できるように備えられている。該第2温度測定装置T2は、前記加水装置60で水が供給される地点よりも下流側において排ガスの温度を測定できるようになっている。
【0023】
本実施形態の加水装置60は、前記熱回収装置50で熱交換された排ガス(以下、「1次冷却排ガスX1」ともいう)に対して必要に応じて水を加え、該水の蒸発潜熱を利用して前記1次冷却排ガスX1をさらに冷却された排ガス(以下、「2次冷却排ガスX2」ともいう)へと変化させ得るよう構成されている。
【0024】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、必要に応じて前記排ガスが前記集塵機40を通過しないようにするために、前記集塵機40よりも上流側で前記排ガス経路G1から分岐した分岐経路G2を有している。また、本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、前記集塵機40に温風を循環供給して前記集塵機40を加熱し得るように循環経路C1が設けられている。該循環経路C1には温風循環装置B1が備えられている。
【0025】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、前記集塵機40を通じて排ガスが下流側に供給される第1の状態と前記集塵機40を通らずに前記分岐経路G2を通じて排ガスが下流側に供給される第2の状態とに排ガスの経路を切り替えるための切替弁V1が備えられている。また、本実施形態では、前記集塵機40に排ガスを流通させない状態において循環経路C1を通じて前記集塵機40を通る温風の循環流を形成することができるように前記切替弁V1が備えられている。
【0026】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、前記集塵機40で前記煤が取り除かれた前記排ガスを水で洗浄するガス洗浄装置70を更に有し、該ガス洗浄装置70で浄化された排ガス(以下、「浄化排ガスX3」ともいう)を可燃性ガスを有効利用するガス使用装置80に供給し得るように構成されている。
【0027】
ガス洗浄装置70は、潜り堰式の簡単な構造のものであってもよい。ガス洗浄装置70は、例えば、複数の充填材が隙間を設けて堆積された充填材層を有し、該充填材層を通過するように排ガスを流通させつつ前記充填材層に散水するスクラバーを備えたものであってもよい。
【0028】
集塵機40とガス洗浄装置70とは、廃棄物ガス化設備1に個別に設ける必要はなく一体化されてもよい。本実施形態では、湿式集塵機などで集塵機40とガス洗浄装置70とを兼用させることもできる。集塵機40とガス洗浄装置70とが一体化されている場合では、集塵機40とガス洗浄装置70とが個別に設けられているよりも廃棄物ガス化設備1を構成する装置類の数を減らすことができて省スペース化が図られ得る。一方、集塵機40とガス洗浄装置70とが個別に設けられている場合では、ガス洗浄装置70の排水処理の頻度を低減することができる。
【0029】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、ガス洗浄装置70で洗浄された後の浄化排ガスX3に含まれる可燃性ガスや酸素などの含有量(濃度)を測定可能なガス分析装置90をさらに備えている。本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、ガス洗浄装置70の下流側で前記排ガス経路G1から分岐し、該分岐地点よりも下流側で再び排ガス経路G1に接続されたバイパス経路G3が設けられており、該バイパス経路G3にも浄化排ガスX3を流通させ得るようになっている。そして本実施形態においては、該バイパス経路G3を通過する浄化排ガスX3に対して分析を行うことができるように前記ガス分析装置90が配されている。
【0030】
本実施形態の前記ガス使用装置80での浄化排ガスX3の利用方法は、特に限定されるものではないが、例えば、前記ガス使用装置80は、可燃性ガスを濃縮するための装置とすることができる。前記ガス使用装置80は、例えば、浄化排ガスX3に含まれる不燃性ガス(N等)の少なくとも一部を分離し、可燃性ガス(H、CO、CHなど)の濃度が浄化排ガスX3よりも高い高濃度ガスを製造可能な装置であってもよい。前記ガス使用装置80は、浄化排ガスX3を1次貯留する1次貯留部(図示せず)と、1次貯留部に蓄えられた浄化排ガスX3から窒素ガスなどを分離するガス分離部(図示せず)と、該ガス分離部(図示せず)で窒素ガスの少なくとも一部が取り除かれて可燃性ガスの濃度が向上された高濃度ガスを貯留する2次貯留部(図示せず)とを有していてもよい。前記ガス分離部(図示せず)は、例えば、圧力変動吸着(PSA)装置などにより構成され得る。
【0031】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、浄化排ガスX3や高濃度ガスを前記ガス化炉20の燃料として利用できるようになっていてもよい。即ち、前記廃棄物ガス化設備1には、浄化排ガスX3と高濃度ガスとの内の少なくとも一方をガス化炉20で燃焼させる燃料としてガス化炉20に返送するガス返送経路(図示せず)を有していてもよい。
【0032】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1では、前記ガス分析装置90の結果、可燃性ガスの濃度が低い場合など、排ガス(浄化排ガスX3)がガス使用装置80に供給するのに適さないと判断されるような場合に当該排ガスを焼却処理するための焼却装置100と、該焼却装置100から排出される焼却ガスを大気中など系外に放出できるように処理するためのガス処理装置110とがさらに備えられている。
【0033】
ガス分析装置90には、多成分分析計(CO/CO/CH・・・)、水素濃度計、吸引式酸素濃度計などを配することができる。
【0034】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、都市ガスなどの気体状の可燃物や石油(灯油、軽油、重油・・・)などの液体状の可燃物といった廃棄物とは別の可燃物を前記ガス化炉20での燃料とし得るように燃料供給装置P1がさらに備えられている。該燃料供給装置P1は、必要に応じて前述のような化石燃料をガス化炉20に供給すべく備えられている。該燃料供給装置P1から前記ガス化炉20への燃料の供給には、前記第1燃料供給経路PS1とは別の第2の燃料供給経路(以下、「第2燃料供給経路PS2」ともいう)が利用される。本実施形態では必要に応じて焼却装置100に対して前記燃料供給装置P1から燃料を供給するための第3の燃料供給経路(以下、「第3燃料供給経路PS3」ともいう)が設けられている。
【0035】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1では、排ガス経路G1を流れる前記排ガスの搬送動力となる送風装置B2が備えられている。該送風装置B2は、ガス洗浄装置70の下流側に設けられている。該送風装置B2は、当該送風装置B2が配されている地点よりも上流側の排ガス経路G1に対しては、前記排ガスを吸引するように機能し、当該送風装置B2が配されている地点よりも下流側の排ガス経路G1に対しては、前記排ガスを圧送するように機能する。
【0036】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、前記熱回収装置50での熱交換器における単位時間当たりの熱媒の流通量が前記第1温度測定装置T1や前記第2温度測定装置T2での測定結果に基づいて変更可能であってもよい。即ち、前記熱回収装置50の前記熱媒量調節機は、排ガスの温度を測定する温度測定装置での測定結果に基づいて運転されるように構成されていてもよい。そのような態様によれば回収する熱量や熱交換後の熱媒の温度を調整することが容易となり、且つ、1次冷却排ガスX1の温度も調整容易となる。
【0037】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1は、前記加水装置60で単位時間あたりに排ガスに対して加える水の量が前記第1温度測定装置T1や前記第2温度測定装置T2での測定結果に基づいて変更可能であってもよい。即ち、前記給水機は、排ガスの温度を測定する温度測定装置での測定結果に基づいて運転されるように構成されていてもよい。
【0038】
本実施形態の廃棄物ガス化設備1について、上記例示において直接的に明記されていない装置類やその具体的な構成については、従来公知の技術事項を採用することができる。
【0039】
以下、このような廃棄物ガス化設備1の運転方法について説明する。
廃棄物ガス化設備1の運転方法では、休転状態の設備の運転を開始してから定常運転までの過渡期において立上げ運転を実施する。
【0040】
該立上げ運転では、定常運転時よりも温度が低下している前記ガス化炉20に、前記廃棄物か、前記廃棄物とは別の可燃物かが立上げ用燃料として供給され前記ガス化炉20の昇温が行われる。別の可燃物としては、前記燃料供給装置P1より供給される都市ガスなどとすることができる。また、立上げ用燃料は、廃棄物ガス化設備1が休転状態になる前に作製された可燃性ガス(浄化排ガスX3、高濃度ガスなど)であってもよい。
【0041】
該立上げ運転では、該立上げ用燃料が前記ガス化炉20で燃焼されて前記ガス化炉20が加熱されるとともに該立上げ用燃料の燃焼排ガスが立上げ時排ガスとして該ガス化炉から排出され、前記立上げ運転では、酸素を含む前記立上げ時排ガスを前記ガス化炉から排出することと、該立上げ時排ガスに対して前記集塵機40の上流側で前記加水装置60により水を加えることとが実施される。
【0042】
前記立上げ運転の前段、すなわち、前記ガス化炉20の運転開始からしばらくの間は、前記燃料として廃棄物よりも燃料供給装置P1から供給される化石燃料を主として用いることが好ましい。前記立上げ運転の前段で用いることが好ましい化石燃料を主体とした燃料での廃棄物の割合(完全燃焼に必要な酸素量での割合)は、25%以下とすることができる。該割合は、10%以下であってもよく、5%以下であってもよく、実質的に0%であってもよい。
【0043】
このとき廃棄物は、第1燃料供給経路PS1を通じてガス化炉20に供給することができる。化石燃料は、流動層を主たる加熱対象として第2燃料供給経路PS2を通じてガス化炉20に供給することができる。
【0044】
前記立上げ運転の後段、すなわち、定常運転の手前の段階では、前段よりも燃料に含まれる廃棄物の量を多くすることが好ましい。前記立上げ運転の後段では、廃棄物を主体とした燃料を用いることが好ましい。前記立上げ運転の前段で用いることが好ましい廃棄物を主体とした燃料での化石燃料の割合(完全燃焼に必要な酸素量での割合)は、45%以下とすることができる。該割合は、30%以下であってもよく、15%以下であってもよく、実質的に0%であってもよい。
【0045】
ガス化炉20に供給する燃料における廃棄物の割合を増加させるタイミングは、ガス化炉20の内部の加熱状況に基づいて実施できる。本実施形態では、ガス化炉20の内部の加熱状況(例えば、流動層の温度)に基準値(以下、「炉内温度基準値」ともいう)を設け、該炉内温度基準値により燃料の切り替えを実施すればよい。
【0046】
ガス化炉20に供給する燃料における廃棄物の割合を増加させるタイミングを決定するのに設定される前記炉内温度基準値は、例えば、流動層の温度であれば、350℃以上750℃以下の範囲内での何れかとすることができる。
【0047】
本実施形態の前記ガス化炉20での立上げ用燃料の燃焼は、前記気体供給装置30から1を超える空気比で酸素を含む気体が供給されて実施される。酸素が余るような状態で立上げ用燃料が完全燃焼されるので、本実施形態では、ガス化炉20を所望の温度に速やかに到達させることができる。このとき立上げ時排ガスに対して前記加水装置60で水が加えられることから、加水装置60よりも下流側での排ガス経路G1を流通する立上げ時排ガスには、大量の水蒸気が含まれる。即ち、立上げ時排ガスは、加水装置60によって酸素濃度が大きく低下する。また、前記加水装置60で加えられた水が水蒸気となる際に蒸発潜熱により立上げ時排ガスの温度を低下させる。そのため、立上げ時排ガスは、加水装置60によって大きく温度低下する。
【0048】
排ガス経路G1がダクトなどで構成されている場合、その内壁面等には煤などの可燃性の固形物が付着していることがある。本実施形態では、立上げ時排ガスでの酸素濃度が低下されるとともに温度が低下されるため、煤などの可燃物が不用意に発火してしまうおそれを抑制することができる。このような機能をより確実に発揮させるべく、前記加水装置60による加水の程度は、前述の通り第2温度測定装置T2での測定結果に基づいて実施されてもよい。本実施形態の立上げ運転では、集塵機40に導入される立上げ時排ガスの温度(第2温度測定装置T2で測定される温度)に基準値(以下、「2次冷却基準値」ともいう)を設け、該2次冷却基準値に基づいて加水装置60の運転を制御するようにしてもよい。
【0049】
本実施形態では、前記集塵機40又は該集塵機40よりも上流側で立上げ時排ガスの温度が測定されることと、該測定結果に基づいて加水装置60での単位時間当たりの加水量が調整されることとが実施されるようにしてもよい。該温度測定は、加水装置60よりも下流側の立上げ時排ガスに対して実施されても上流側の立上げ時排ガスに対して実施されてもよい。加水装置60での加水量は段階的に変動されても連続的に変動されてもよい。加水装置60での加水量は、例えば、PID制御によって変動されてもよい。
【0050】
立上げ運転での前記加水装置60は、単位時間当たりの加水量が相対的に少ない低加水状態と、該低加水状態よりも単位時間当たりの加水量が多い高加水状態とに切り替え可能であり、且つ、前記温度測定の結果が前記低加水状態よりも高温である場合に前記高加水状態で運転されてもよい。温度測定が加水装置60よりも下流側で実施される場合、該温度測定の結果が基準となる温度に近い値となるように前記高加水状態と前記低加水状態とが切り替えられてもよい。
【0051】
前記加水装置60は、前記集塵機40へ導入される立上げ時排ガスの温度が、基準値以下で、且つ、基準値よりも大きく下回らない温度域(例えば、(基準値-x℃)以上基準値以下の範囲(ただし、x>0))となるように加水量を調整可能であることが好ましい。基準値を下回る温度(x℃)としては、例えば、50℃以内とすることができる。基準値を下回る温度(x℃)は、例えば、30℃以内であってもよい。基準値を下回る温度(x℃)は、例えば、5℃以上とすることができ、10℃以上であってもよい。
【0052】
前記2次冷却基準値の温度は、例えば、350℃以下の何れかとすることができる。前記2次冷却基準値は、300℃以下の何れかの温度としてもよく、250℃以下の何れかの温度としてもよい。前記2次冷却基準値の温度は、例えば、100℃以上とすることができる。前記2次冷却基準値は、120℃以上の何れかの温度としてもよく、150℃以上の何れかの温度としてもよい。
【0053】
立上げ運転では、ガス化炉20の温度上昇にともなって内部での燃焼における空気比をスタート時よりも低下させるようにしてもよい。そのことにより炉内を還元雰囲気にして立上げ時排ガスにおける可燃性ガスの含有量を増やすようにしてもよい。空気比の切り替えは、前記第1温度測定装置T1での測定結果(ガス化炉出口温度t0)と前記第2温度測定装置T2での測定結果(集塵機入口温度t2)との何れか一方又は両方に基づいて実施されてもよい。空気比の切り替えは、前記第1温度測定装置T1での測定結果と前記第2温度測定装置T2での測定結果との両方に基づいて実施されることが好ましい。
【0054】
本実施形態では、上記のようなことからガス化炉出口温度t0についても基準値(以下、「出口温度基準値」ともいう)を設けるようにしてもよい。空気比の切り替えタイミングを決定するための出口温度基準値は、例えば、800℃以上とされ得る。出口温度基準値は、例えば、850℃以上であってもよく、900℃以上であってもよく、950℃以上であってもよい。出口温度基準値は、例えば、1200℃以下とされ得る。出口温度基準値は、例えば、1150℃以下であってもよく、1100℃以下であってもよい。ガス化炉出口温度t0は、出口温度基準値以上で、且つ、温度の変動幅が50℃以内の状態が一定時間以上(例えば、1分以上)継続された場合に安定状態に達したとみなすことができる。また、集塵機入口温度t2も、前記2次冷却基準値以上で、且つ、温度の変動幅が50℃以内の状態が一定時間以上(例えば、1分以上)継続された場合に安定状態に達したとみなすことができる。そして、空気比の切り替えは、両者が安定状態に入ったことが確認できた時点で行われることが好ましい。
【0055】
休転状態のガス化炉20の運転を開始する時点では、十分な酸素が供給される方が燃料の燃焼による熱量を十分に確保することができる。但し、空気比が過度に大きいと、立上げ時排ガスとして持ち出される熱量も大きくなってしまい、燃料がガス化炉20の加熱に効率良く活用され難い。
【0056】
休転状態のガス化炉20の運転を開始する時点での空気比(以下、「立上初期空気比」ともいう)は、例えば、1.0を超え1.5以下の範囲の何れかの値とすることができる。立上初期空気比は、1.1以上であってもよい。立上初期空気比は、1.4以下であってもよい。
【0057】
本実施形態での空気比は、「空気比=ガス化炉に投入される空気風量/必要理論空気量」で表され、「必要理論空気量」とは、廃棄物及び廃棄物とは別の燃料の可燃分組成より理論上必要となる空気量として求められる。
【0058】
立上げ運転の後期では、定常運転と同様の空気比で燃料のガス化を実施してもよい。立上げ運転では、そのような空気比の切替を複数回実施してもよい。切替は、切替後の空気比が切り替え前よりも低下するように実施してもよい。
【0059】
定常運転の直前での空気比(以下、「立上後期空気比」ともいう)は、例えば、0.9以下とすることができる。立上後期空気比は、0.7以下であってもよく、0.5以下であってもよい。立上後期空気比は、通常、0.2以上とされる。立上後期空気比は、0.3以上であってもよい。
【0060】
化石燃料を主体として燃料によってガス化炉20が加熱されている間は、煤などが発生し難い状況にあるため立上げ時排ガスを前記集塵機40に供給するのは効率的であるとは言い難い。そのため、ガス化炉20の運転を開始してしばらくの間は、例えば、切替弁V1を操作し、図2に示すように立上げ時排ガスを分岐経路G2を通じて前記集塵機40よりも下流側に流すようにしてもよい。即ち、ガス化炉20の運転を開始してしばらくの間は、前記集塵機40に立上げ時排ガスを流さないようにしてもよい。その場合、別途、集塵機40を加熱しておく方が好ましく、循環経路C1を通じて前記集塵機40を通る温風の循環流を形成させて集塵機40を加熱すようにしてもよい。
【0061】
立上げ時排ガスを集塵機40を通過させずに下流側に流す間、立上げ時排ガスは、焼却装置100に供給して焼却処理するようにしてもよい。その際、必要に応じて第3燃料供給経路PS3を通じて前記燃料供給装置P1から焼却装置100に前記燃料を供給してもよい。立上げ時排ガスは、集塵機40だけでなくガス洗浄装置70をも通過させずに焼却装置100に供給してもよく、ガス洗浄装置70を通過させて焼却装置100に供給してもよい。
【0062】
前述のように本実施形態では、ガス洗浄装置70の下流側に送風装置B2が設けられており、ガス洗浄装置70を通過した立上げ時排ガスは、該送風装置B2によって吸引される。そこで、本実施形態の前記立上げ運転では、前記ガス洗浄装置70で前記立上げ時排ガスを水で洗浄することと、該ガス洗浄装置70で前記立上げ時排ガスを負圧状態にすることとが両立され易い。前記ガス洗浄装置70で前記立上げ時排ガスを負圧状態にしつつ水で洗浄することで立上げ時排ガスがガス洗浄装置70から外部に漏れだすことを防止することができる。
【0063】
ガス化炉20から排出された直後の立上げ時排ガス(高温排ガスX0)が所定の温度以上になったら、燃料における廃棄物の割合が増加されるため、切替弁V1を操作し、立上げ時排ガスを集塵機40に通過させるようにすればよい。この時も、図3に示すように立上げ時排ガスは、焼却装置100に供給して焼却処理するようにしてもよい。
【0064】
立上げ時排ガスを集塵機40に通過させない状態から集塵機40に通過させる状態への切り替えはガス化炉20への廃棄物の供給量を増加させるタイミングとすることができる。したがって、上記切替は炉内温度基準値に基づいて実施されてもよい。立上げ時排ガスを集塵機40に供給するタイミングを決定するのに設定される炉内温度基準値は、燃料における廃棄物の割合を増加させるタイミングを決定するのに設定される炉内温度基準値と全く同じ温度であっても異なる温度であってもよい。制御が複雑になることを抑制できる点では立上げ時排ガスを集塵機40に供給するタイミングを決定するのに設定される炉内温度基準値は、燃料における廃棄物の割合を増加させるタイミングを決定するのに設定される炉内温度基準値と同じく450℃以上750℃以下の範囲内から選択されることが好ましく、両者が同じ温度であることが好ましい。
【0065】
前記立上げ運転では、前記立上げ時排ガスの酸素含有量を前述の酸素濃度計などによって求めることを更に実施し、該酸素含有量が予め設定した基準値未満となったときに前記立上げ時排ガスに対して前記水を加えることを停止するようにしてもよい。酸素含有量に関する基準値(以下、「酸素基準値」ともいう)は、例えば、0体積%以上2体積%以下の範囲から選択される値とすることができる。前記酸素基準値は、0体積%以上1体積%以下の範囲から選択される値であってもよい。前記酸素基準値は、0体積%以上0.5体積%以下から選択される値であってもよい。前記酸素基準値は0体積%としてもよい。
【0066】
前記立上げ運転では、前記立上げ時排ガスの可燃性ガス含有量を求めることを更に実施し、該可燃性ガス含有量が予め設定した基準値を超えたときに前記立上げ時排ガスに対して前記水を加えることを停止するようにしてもよい。可燃性ガスの内、水素ガスでの基準値(以下、「水素基準値」ともいう)は15体積%以上35体積%以下の範囲から選択される値とすることができる。前記水素基準値は、20体積%以上30体積%以下の範囲から選択される値であってもよい。可燃性ガスの内、一酸化炭素ガスでの基準値(以下、「一酸化炭素基準値」ともいう)は15体積%以上35体積%以下の範囲から選択される値とすることができる。前記一酸化炭素基準値は、20体積%以上30体積%以下の範囲から選択される値であってもよい。可燃性ガスの内、メタンガスでの基準値(以下、「メタン基準値」ともいう)は3体積%以上20体積%以下の範囲から選択される値とすることができる。前記メタン基準値は、5体積%以上15体積%以下の範囲から選択される値であってもよい。
【0067】
可燃性ガスの発生状況が上記のようになれば、図4に示すように浄化排ガスX3をガス使用装置80に供給するようにし、立上げ運転を終了して定常運転へと移行させることができる。このように本実施形態では、定常運転を速やかに開始することが可能となる。尚、本実施形態の廃棄物ガス化設備の運転方法は、上記例示に何等限定されることなく、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1:廃棄物ガス化設備、10:廃棄物貯留場、20:ガス化炉、30:気体供給装置、40:集塵機、50:熱回収装置、60:加水装置、70:ガス洗浄装置、80:ガス使用装置、90:ガス分析装置、100:焼却装置、110:ガス処理装置、B1:温風循環装置、B2:送風装置、C1:循環経路、G1:排ガス経路、G2:分岐経路、G3:バイパス経路、GS:気体供給経路、P1:燃料供給装置、T1:第1温度測定装置、T2:第2温度測定装置、V1:切替弁、X0:高温排ガス、X1:1次冷却排ガス、X2:2次冷却排ガス、X3:浄化排ガス
図1
図2
図3
図4