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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074196
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】SOC推定装置、及びSOC推定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20230522BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230522BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20230522BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230522BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20230522BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20230522BHJP
   G01R 31/3835 20190101ALI20230522BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 X
H02J7/10 C
H01M10/44 Q
G01R31/367
G01R31/3828
G01R31/3835
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187016
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安谷屋 皓子
(72)【発明者】
【氏名】長谷 隆介
(72)【発明者】
【氏名】会沢 真一
(72)【発明者】
【氏名】石川 将成
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA02
2G216BA03
2G216BA04
2G216CA02
2G216CB34
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA02
5G503CA14
5G503EA05
5G503HA01
5H030AA10
5H030AS20
5H030BB02
5H030BB03
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】SOCの信頼性を向上すること。
【解決手段】蓄電制御装置は、判定電圧における電圧変化率とSOC推定値との対応関係を記憶する記憶部を備え、定電流モードにて電池セルの充電が行われている状況にて閉回路電圧Vcを取得するステップS4の処理と、ステップS4にて取得された閉回路電圧Vcに基づいて、電圧変化率を導出するステップS5の処理と、定電流モードにて電池セルの充電が行われている状況において、ステップS4にて取得された閉回路電圧Vcが所定の判定電圧に達したか否かの判定を行うステップS8の処理と、ステップS8にて閉回路電圧Vcが判定電圧に達したと判定されたことに基づいて、対応関係を用いて閉回路電圧Vcが判定電圧に達したときの電圧変化率に対応するSOC推定値に基づいて、SOCの推定を行うステップS9の処理と、を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルのSOCの推定を行うSOC推定装置であって、
充電電流が一定となる定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において前記電池セルの閉回路電圧を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記閉回路電圧に基づいて、単位充電容量あたりの前記閉回路電圧の変化量である電圧変化率を導出する変化率導出部と、
前記定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において、前記取得部によって取得された前記閉回路電圧が所定の判定電圧に達したか否かの判定を行う判定部と、
前記判定電圧における前記電圧変化率とSOC推定値との対応関係が記憶された記憶部と、
前記判定部によって前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したと判定された場合に、前記対応関係を用いて前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したときの前記電圧変化率に対応する前記SOC推定値を導出し、当該SOC推定値に基づいて前記SOCの推定を行う推定部と、を備える、SOC推定装置。
【請求項2】
前記電池セルの充電を行う充電モードは、
前記定電流モードと、
前記閉回路電圧が最大充電電圧に達したことに基づいて前記定電流モードから移行するモードであって前記充電電流が前記定電流モードよりも小さくなる後段充電モードと、を含み、
前記判定電圧は、前記最大充電電圧を含む、請求項1に記載のSOC推定装置。
【請求項3】
前記判定電圧は複数設定されており、
前記記憶部は、複数の前記判定電圧ごとに、前記判定電圧における前記電圧変化率と前記SOC推定値との対応関係をそれぞれ記憶しており、
前記判定部は、前記定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において、前記閉回路電圧が前記複数の判定電圧のいずれかに達したか否かの判定を行い、
前記推定部は、前記判定部によって前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したと判定される度に、当該判定電圧に対応した前記対応関係を用いて、前記判定されたときの前記電圧変化率に対応する前記SOC推定値を導出し、その導出された前記SOC推定値に基づいて前記SOCの推定を行う、請求項1又は2に記載のSOC推定装置。
【請求項4】
前記電池セルの充電を行う充電モードは、
前記定電流モードと、
前記閉回路電圧が最大充電電圧に達したことに基づいて前記定電流モードから移行するモードであって前記充電電流が前記定電流モードよりも小さくなる後段充電モードと、を含み、
前記複数の判定電圧は、前記最大充電電圧と、前記最大充電電圧未満の移行前電圧と、を含む、請求項3に記載のSOC推定装置。
【請求項5】
前記SOC推定装置は、前記電池セルが複数直列接続された蓄電装置における前記各電池セルのSOCの推定を行うものであり、
前記取得部は、前記各電池セルの閉回路電圧を取得し、
前記変化率導出部は、前記電池セルごとに前記電圧変化率を導出し、
前記充電モードは、複数の前記閉回路電圧のうちの少なくとも1つが前記最大充電電圧に達したと判定された場合に、前記定電流モードから前記後段充電モードへと移行し、
前記判定部及び前記推定部は、前記電池セルごとに判定及び推定を行う、請求項4に記載のSOC推定装置。
【請求項6】
前記電池セルは、前記電池セルの充電が行われている場合における前記電池セルの内部抵抗が所定値以下となる低抵抗領域と、前記内部抵抗が前記所定値より大きい高抵抗領域と、を含む充放電特性を有し、
前記高抵抗領域は、前記電池セルの満充電状態を含み、
前記記憶部に記憶された前記判定電圧は、前記高抵抗領域の前記閉回路電圧の範囲内に含まれる、請求項1~5のいずれか一項に記載のSOC推定装置。
【請求項7】
電池セルのSOCの推定を行うSOC推定方法であって、
充電電流が一定となる定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において前記電池セルの閉回路電圧を取得する取得工程と、
前記取得工程にて取得された前記閉回路電圧に基づいて、単位充電容量あたりの前記閉回路電圧の変化量である電圧変化率を導出する変化率導出工程と、
前記定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において、前記取得工程にて取得された前記閉回路電圧が所定の判定電圧に達したか否かの判定を行う判定工程と、
前記判定工程にて前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したと判定された場合に、前記判定電圧における前記電圧変化率とSOC推定値との対応関係を用いて前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したときの前記電圧変化率に対応する前記SOC推定値を導出し、当該SOC推定値に基づいて前記SOCの推定を行う推定工程と、を含む、SOC推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOC推定装置、及びSOC推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、充電中又は放電中の電池セルの閉回路電圧とSOC:State of Chargeとの関係を用いて電池セルのSOCの推定を行うSOC推定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-139521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池セルのなかには、SOCの変化に対する閉回路電圧の変化が乏しいものがある。このような電池セルに対して閉回路電圧に基づくSOCの推定を行った場合、取得した閉回路電圧の誤差がSOCの推定に大きな影響を与えるため、推定されたSOCの信頼性が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するSOC推定装置は、電池セルのSOCの推定を行うSOC推定装置であって、充電電流が一定となる定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において前記電池セルの閉回路電圧を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記閉回路電圧に基づいて、単位充電容量あたりの前記閉回路電圧の変化量である電圧変化率を導出する変化率導出部と、前記定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において、前記取得部によって取得された前記閉回路電圧が所定の判定電圧に達したか否かの判定を行う判定部と、前記判定電圧における前記電圧変化率とSOC推定値との対応関係が記憶された記憶部と、前記判定部によって前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したと判定された場合に、前記対応関係を用いて前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したときの前記電圧変化率に対応する前記SOC推定値を導出し、当該SOC推定値に基づいて前記SOCの推定を行う推定部と、を備える。
【0006】
かかる構成によれば、電池セルの充電が行われている状態において、閉回路電圧が判定電圧に達したときの電圧変化率に対応させてSOC推定値を導出する構成が採用されている。ここで、SOCの変化に対する電圧変化率の変化は、SOCの変化に対する閉回路電圧の変化よりも大きくなりやすい。したがって、閉回路電圧の変化よりも、SOCの推定精度が向上しやすく、SOCの信頼性の向上を図ることができる。
【0007】
ここで、例えば充電が開始されるまでの充放電履歴などによって、定電流モードにおける閉回路電圧とSOCとの関係性が変化することがある。これに伴い、電圧変化率とSOCとの関係性が変化することがある。そのため、SOCの推定に電圧変化率を用いる場合、充放電履歴などによってSOCの推定の精度が低下するおそれがある。例えば、電圧変化率とSOCとの関係性が変化すると、異なる閉回路電圧間において、同一の電圧変化率であってもSOCが異なる場合が生じ得る。
【0008】
一方、本願発明者らは、閉回路電圧が所定の電圧(判定電圧)に達したタイミングにおける電圧変化率は、SOCが異なる場合には一致しないことを見出した。
この知見に鑑みて、本構成によれば、推定部は、閉回路電圧が判定電圧に達した場合に、当該判定電圧に対応する対応関係を用いて、閉回路電圧が判定電圧に達したときの電圧変化率に対応するSOC推定値を導出し、そのSOC推定値に基づいて電池セルのSOCの推定を行う。
【0009】
これによれば、閉回路電圧が判定電圧である条件下で、電圧変化率に対応するSOC推定値を導出することができる。これにより、充放電履歴が異なることに起因して閉回路電圧とSOCとの関係性が変化した場合であっても、SOC推定値の精度が低下しにくい。したがって、SOCの信頼性を向上させることができる。
【0010】
上記SOC推定装置において、前記電池セルの充電を行う充電モードは、前記定電流モードと、前記閉回路電圧が最大充電電圧に達したことに基づいて前記定電流モードから移行するモードであって前記充電電流が前記定電流モードよりも小さくなる後段充電モードと、を含み、前記判定電圧は、前記最大充電電圧を含む、ものであってもよい。
【0011】
電圧変化率は、閉回路電圧が大きいほど大きくなりやすい傾向がある。閉回路電圧が最大充電電圧に達したタイミングでの電圧変化率は、定電流モードでの充電が行われている状況における電圧変化率の中でも大きい値となりやすい。
【0012】
そこで本構成によれば、判定電圧が上記最大充電電圧を含むため、閉回路電圧が最大充電電圧に達したときにSOCの推定が行われる。これにより、SOCの差異に基づく電圧変化率の差異が大きくなるため、より信頼性の高いSOC推定値を導出することができる。
【0013】
上記SOC推定装置において、前記判定電圧は複数設定されており、前記記憶部は、複数の前記判定電圧ごとに、前記判定電圧における前記電圧変化率と前記SOC推定値との対応関係をそれぞれ記憶しており、前記判定部は、前記定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において、前記閉回路電圧が前記複数の判定電圧のいずれかに達したか否かの判定を行い、前記推定部は、前記判定部によって前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したと判定される度に、当該判定電圧に対応した前記対応関係を用いて、前記判定されたときの前記電圧変化率に対応する前記SOC推定値を導出し、その導出された前記SOC推定値に基づいて前記SOCの推定を行う、ものであってもよい。
【0014】
かかる構成によれば、閉回路電圧が複数の判定電圧のいずれかに達する度に、推定部がSOCの推定を行う。これにより、判定電圧が1つだけ設定されている場合に比べてSOCの推定の実施頻度が増加するため、SOCの信頼性を向上させることができる。
【0015】
上記SOC推定装置において、前記電池セルの充電を行う充電モードは、前記定電流モードと、前記閉回路電圧が最大充電電圧に達したことに基づいて前記定電流モードから移行するモードであって前記充電電流が前記定電流モードよりも小さくなる後段充電モードと、を含み、前記複数の判定電圧は、前記最大充電電圧と、前記最大充電電圧未満の移行前電圧と、を含む、ものであってもよい。
【0016】
かかる構成によれば、最大充電電圧は定電流モードでの充電が行われている状況において最大の閉回路電圧と一致する。そのため、判定電圧が最大充電電圧を含むことにより、閉回路電圧が最大充電電圧に達した場合に精度よくSOCの推定を行うことができる。
【0017】
これに加え、判定電圧は、移行前電圧を含む。これにより、仮に閉回路電圧が最大充電電圧に達する前に充電が終了した場合でも、閉回路電圧が最大充電電圧未満である移行前電圧に達することに基づいて、推定部によるSOCの推定が行われる。したがって、閉回路電圧が最大充電電圧に達する前に電池セルの充電が終了された場合にも、SOCの推定を行うことができる。
【0018】
上記SOC推定装置は、前記電池セルが複数直列接続された蓄電装置における前記各電池セルのSOCの推定を行うものであり、前記取得部は、前記各電池セルの閉回路電圧を取得し、前記変化率導出部は、前記電池セルごとに前記電圧変化率を導出し、前記充電モードは、複数の前記閉回路電圧のうちの少なくとも1つが前記最大充電電圧に達したと判定された場合に、前記定電流モードから前記後段充電モードへと移行し、前記判定部及び前記推定部は、前記電池セルごとに判定及び推定を行う、ものであってもよい。
【0019】
電池セルが複数存在する場合、電池セルごとにSOCのばらつきが存在する可能性がある。また、閉回路電圧のSOC依存性は、各電池セルの個体差によっても変動し得る。そのため、SOCのばらつきは、閉回路電圧のばらつきを引き起こす。最大の閉回路電圧が判定電圧としての最大充電電圧に達した場合、他の電池セルが最大充電電圧に達する前に充電モードが定電流モードから後段充電モードに移行する。
【0020】
そこで本構成によれば、複数の電池セルの閉回路電圧がそれぞれ判定電圧に達したことに基づいて、電池セルごとに推定部によるSOCの推定が行われる。また、判定電圧が移行前電圧を含む。そのため、複数の電池セルの閉回路電圧のうち最大の閉回路電圧が最大充電電圧に達するまでに、当該最大の閉回路電圧を有する電池セル以外の電池セルについて推定部による推定が行われる頻度を上げることができる。これにより、充電モードが定電流モードから後段充電モードに移行する前に推定部による推定が行われない電池セルが生じることを抑制できる。したがって、複数の電池セルが直列接続された蓄電装置に対して各電池セルのSOCの推定を行う場合であっても、各電池セルのSOCの信頼性を向上することができる。
【0021】
上記SOC推定装置において、前記電池セルは、前記電池セルの充電が行われている場合における前記電池セルの内部抵抗が所定値以下となる低抵抗領域と、前記内部抵抗が前記所定値より大きい高抵抗領域と、を含む充放電特性を有し、前記高抵抗領域は、前記電池セルの満充電状態を含み、前記記憶部に記憶された前記判定電圧は、前記高抵抗領域の前記閉回路電圧の範囲内に含まれる、ものであってもよい。
【0022】
かかる構成によれば、定電流モードでの充電が進行するにつれて、電池セルの内部抵抗が上昇する。内部抵抗の上昇は、閉回路電圧の上昇を引き起こす。電池セルの内部抵抗は、満充電状態近傍となる高抵抗領域にて急激に上昇する傾向にある。そのため、高抵抗領域でのSOCの増加に対する抵抗の増加量は、低抵抗領域のものに比べて大きい。これに伴い、高抵抗領域での電圧変化率は、低抵抗領域での電圧変化率に比べて大きい。そのため、高抵抗領域では、低抵抗領域に比べて、対応関係を用いてSOCの推定をしやすい。したがって、特に満充電状態近傍におけるSOCをより精度よく推定することができる。
【0023】
上記課題を解決するSOC推定方法は、電池セルのSOCの推定を行うSOC推定方法であって、充電電流が一定となる定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において前記電池セルの閉回路電圧を取得する取得工程と、前記取得工程にて取得された前記閉回路電圧に基づいて、単位充電容量あたりの前記閉回路電圧の変化量である電圧変化率を導出する変化率導出工程と、前記定電流モードにて前記電池セルの充電が行われている状況において、前記取得工程にて取得された前記閉回路電圧が所定の判定電圧に達したか否かの判定を行う判定工程と、前記判定工程にて前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したと判定された場合に、前記判定電圧における前記電圧変化率とSOC推定値との対応関係を用いて前記閉回路電圧が前記判定電圧に達したときの前記電圧変化率に対応する前記SOC推定値を導出し、当該SOC推定値に基づいて前記SOCの推定を行う推定工程と、を含む。
【0024】
かかる構成によれば、電池セルの充電が行われている状態において、閉回路電圧が判定電圧に達したときの電圧変化率に対応させてSOC推定値を導出する構成が採用されている。ここで、SOCの変化に対する電圧変化率の変化は、SOCの変化に対する閉回路電圧の変化よりも大きくなりやすい。したがって、閉回路電圧の変化よりも、SOCの推定精度が向上しやすく、SOCの信頼性の向上を図ることができる。
【0025】
ここで、例えば充電が開始されるまでの充放電履歴などによって、定電流モードにおける閉回路電圧とSOCとの関係性が変化することがある。これに伴い、電圧変化率とSOCとの関係性が変化することがある。そのため、SOCの推定に電圧変化率を用いる場合、充放電履歴などによってSOCの推定の精度が低下するおそれがある。例えば、電圧変化率とSOCとの関係性が変化すると、異なる閉回路電圧間において、同一の電圧変化率であってもSOCが異なる場合が生じ得る。
【0026】
一方、本願発明者らは、閉回路電圧が所定の電圧(判定電圧)に達したタイミングにおける電圧変化率は、SOCが異なる場合には一致しないことを見出した。
この知見に鑑みて、本構成によれば、推定工程にて、閉回路電圧が判定電圧に達したことに基づいて、当該判定電圧に対応する対応関係を用いて、閉回路電圧が判定電圧に達したときの電圧変化率に対応するSOC推定値を導出し、そのSOC推定値に基づいて電池セルのSOCの推定を行われる。
【0027】
これによれば、閉回路電圧が判定電圧である条件下で、電圧変化率に対応するSOC推定値を導出することができる。これにより、充放電履歴が異なることに起因して閉回路電圧とSOCとの関係性が変化した場合であっても、SOC推定値の精度が低下しにくい。したがって、SOCの信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、SOCの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】充電システムの概要を説明するための図である。
図2】蓄電制御処理を説明するためのシーケンスである。
図3】対応関係の構成を説明するための図である。
図4】定電流モードにて充電が行われている状況における閉回路電圧とSOCとの対応関係を説明するための図である。
図5図4における高抵抗領域における箇所の拡大図である。
図6】蓄電制御処理が行われている場合における閉回路電圧の変化を説明するための図である。
図7】充電モードが定電流モードから後段充電モードに切り替わるタイミングの前後における閉回路電圧の変化を説明するための図である。
図8】充電モードが定電流モードから後段充電モードに切り替わるタイミングの前後におけるSOCの変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<構成>
以下、SOC推定装置、及びSOC推定方法が適用される充電システムの一実施形態について説明する。
【0031】
<充電システム100>
図1に示すように、充電システム100は、充電装置101と、蓄電ユニット10と、を備える。充電装置101は、充電電流Icを出力する電力源である。充電装置101は、スイッチング素子102と、ECU103と、を備える。充電電流Icは、スイッチング素子102の制御態様に応じて変化する。ECU103は、充電電流Icが目標値となるようにスイッチング素子102の制御する電子制御ユニット(Electronic Control Unit)である。
【0032】
<蓄電ユニット10>
蓄電ユニット10は、充電装置101と接続される。蓄電ユニット10は、充電装置101から出力される充電電流Icが流れることによって充電される。蓄電ユニット10は、蓄電装置11と、複数のセルバランス回路20と、電流センサ31と、温度センサ32と、蓄電制御装置40と、を備える。
【0033】
<蓄電装置11>
蓄電装置11は、複数の電池セル12が互いに直列接続されている直列接続体である。
<電池セル12、正極13、負極14>
電池セル12は、充放電可能な二次電池である。各電池セル12は、リン酸鉄リチウムを含む正極13と、リチウムイオンを吸蔵可能なグラファイトを含む負極14と、を備える。電池セル12には充電電流Icが流れる。充電電流Icが電池セル12に流れることにより、電池セル12の充電が行われる。
【0034】
以下、説明の便宜上、直列接続されている電池セル12の個数をセル数nという。nは2以上の自然数である。また、セル番号kを用いて各電池セル12を電池セル12kと表記することで、n個の電池セル12を区別することがある。セル番号kは、1からnまでの自然数である。具体的には、各電池セル12は、電池セル121,122,…,12nと表記することがある。電池セル12kは、先頭からk番目の電池セル12である。先頭の電池セル121の正極13は、充電装置101に接続されている。なお、セル番号kの付与方法はこれに限られず任意である。
【0035】
<セルバランス回路20>
図1に示すように、複数のセルバランス回路20はそれぞれ、放電抵抗21と、放電抵抗21に直列接続されたセルバランススイッチ22と、電圧センサ23と、を備える。セルバランス回路20はそれぞれ、各電池セル12に並列接続されている。本実施形態のセルバランス回路20は、パッシブセルバランス回路である。
【0036】
<セルバランススイッチ22>
セルバランススイッチ22は、ON/OFFを切り替え可能なスイッチである。セルバランススイッチ22がONとなることにより、電池セル12から放電抵抗21への放電が行われる。セルバランススイッチ22の具体的態様は任意である。
【0037】
<電圧センサ23>
電圧センサ23は、各電池セル12の閉回路電圧Vcを測定する。電圧センサ23の具体的態様は任意である。以下、説明の便宜上、セル番号kに対応する電池セル12kの閉回路電圧Vcを、セル番号kを用いて閉回路電圧Vckと表記することがある。
【0038】
<電流センサ31>
電流センサ31は、充電電流Icを測定する。電流センサ31は、充電装置101と蓄電装置11との間に設けられている。電流センサ31の具体的態様は任意である。
【0039】
<温度センサ32>
温度センサ32は、各電池セル12の温度Tcを測定する。以下、説明の便宜上、電池セル12の温度Tcをセル温度Tcという。温度センサ32の具体的態様は任意である。
【0040】
<蓄電制御装置40>
蓄電制御装置40は、処理部41と、記憶部42と、を備える。記憶部42は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部42は、処理を処理部41に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部42、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。蓄電制御装置40は、ASICやFPGA等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である蓄電制御装置40は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0041】
蓄電制御装置40は、蓄電装置11の充放電のための蓄電制御処理を実行する。蓄電制御処理を実行するにあたり、蓄電制御装置40は、蓄電装置11の充電に必要な充電電流Icの目標値をECU103に送信する。ECU103は、充電装置101から出力される充電電流Icが受信した目標値となるように、スイッチング素子102を制御する。言い換えれば、蓄電制御装置40は、充電装置101による充電を制御するための指令をECU103に与えている。これにより、蓄電制御装置40は、蓄電装置11の充電の制御を行う。蓄電制御装置40は、1又は複数の充電モードにて蓄電装置11、詳細には各電池セル12kの充電の制御を行う。本実施形態の充電モードは、定電流モードM1と、後段充電モードM2と、を含む。
【0042】
定電流モードM1では、電池セル12に流れる充電電流Icが一定となる。なお、充電電流Icが一定であるとは、充電電流Icが目標となる値から不変となるものに限られず、充電電流Icが目標となる値から所定の範囲内で変動することを許容するものである。
【0043】
本実施形態では、定電流モードM1は、充電開始時点から後段充電モードM2に移行するまで、換言すれば充電開始時点から閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達するまでに亘って設定される充電モードである。最大充電電圧Vxとは、電池セル12の充電が行われている場合における閉回路電圧Vcの上限値である。最大充電電圧Vxは、電池セル12において予め定められている。蓄電制御装置40は、閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vx以下となるように充電制御を行う。
【0044】
ただし、これに限られず、充電開始時点から閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達するまでの期間のうちの一部の期間において、定電流モードM1とは異なるモードが設定されていてもよい。例えば定電流モードM1とは異なるモードとして、定電流モードにおける充電電流Icよりも小さい電流が電池セル12に流れる制限モードがあってもよい。
【0045】
つまり、定電流モードM1は、充電開始時点から閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達するまでの期間において支配的な充電モードであればよく、充電開始時点から閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達するまでの期間において特定条件が成立した場合には一時的に定電流モードM1とは異なる充電モードに移行してもよい。なお、特定条件とは、例えばセル温度Tcが所定の閾値に達した場合などである。
【0046】
後段充電モードM2では、蓄電装置11に流れる充電電流Icが定電流モードM1における充電電流Icより小さくなる。本実施形態の後段充電モードM2では、蓄電装置11での電圧が一定となる条件のもと、充電電流Icが連続的に小さくなる定電圧モードである。なお、後段充電モードM2は、これに限られず、ある閉回路電圧Vcが閾値に達する毎に充電電流Icが段階的に小さくなる多段式の充電モードであってもよい。
【0047】
蓄電制御装置40は、各セルバランススイッチ22のON/OFFを制御することにより、各電池セル12kの放電を行い、各電池セル12kのSOCの均一化を行う。
<蓄電制御処理>
以下、蓄電制御処理の一例について説明する。蓄電制御処理では、各電池セル12kのSOCが推定される。詳細には、蓄電制御処理では、電池セル12が複数直列接続された蓄電装置11における各電池セル12kのSOCが推定される。蓄電制御処理の一部又は全部が本実施形態のSOC推定方法に相当する。また、当該蓄電制御処理の一部又は全部を行う蓄電制御装置40が本実施形態のSOC推定装置に相当する。
【0048】
<ステップS1>
図2に示すように、蓄電制御装置40は、定電流モードM1で蓄電装置11の充電を行う。このとき、蓄電制御装置40は、蓄電装置11の充電の開始時点の電池セル12のSOCの初期値の推定を行う。当該初期値の推定方法は任意であるが、例えば蓄電制御装置40は、充電開始直前の各電圧センサ23から各電池セル12の開回路電圧を取得し、当該開回路電圧に基づいて、各電池セル12のSOCの初期値の推定を行う。以下、説明の便宜上、蓄電制御処理において推定されたSOCを、実際のSOCと区別してSOC推定値ということがある。蓄電制御装置40は、ステップS1において、SOC推定値の初期値の導出を行うともいえる。
【0049】
<ステップS2>
次にステップS2に進み、蓄電制御装置40は、変数jを1に設定する。変数jは、後述する判定電圧Vdを区別するために用いられるパラメータである。本実施形態では、蓄電制御装置40は電池セル12ごとに個別に変数jを管理している。言い換えれば、各電池セル12kに対して、個別に変数jが設定されている。本実施形態では、蓄電制御装置40は、各電池セル12に対応する変数jを、全て1に設定する。言い換えれば、蓄電制御装置40は、全てのセル番号kに対して変数jを1に設定する。
【0050】
<ステップS3>
次にステップS3に進み、蓄電制御装置40は、各電池セル12kのSOCの推定を行い、SOC推定値を導出する。詳細には、蓄電制御装置40は、前回のSOC推定値からのSOCの変化量を加えることで、SOC推定値の導出及び更新を行う。本実施形態では、蓄電制御装置40は、電流積算法を用いて各電池セル12のSOC推定値の変化量を導出する。電流積算法とは、充電電流Icを積算することによって各電池セル12に流入した充電容量を導出し、当該充電容量をSOCの変化量に換算する方法である。充電容量とは、電池セル12に蓄えられている電気量ともいえる。充電電流Icは、電流センサ31によって測定されたものを用いてもよいし、定電流モードM1を行うに際し予め設定された充電電流Icの目標値を用いてもよい。
【0051】
<ステップS4>
次にステップS4に進み、蓄電制御装置40は、定電流モードM1にて電池セル12の充電が行われている状況において各電圧センサ23から各電池セル12kの閉回路電圧Vckを取得する。ステップS4の処理が本実施形態の取得工程に相当する。ステップS4の処理を行う蓄電制御装置40が本実施形態の取得部に相当する。ステップS4の処理は、電池セル12kごとに個別に行われる。なお、各電池セル12kについてステップS4の処理が行われるタイミングは、電池セル12kごとに独立していても、複数の電池セル12同士で同期されていてもよい。
【0052】
<ステップS5>
次にステップS5に進み、蓄電制御装置40は、ステップS4にて取得した閉回路電圧Vcに基づいて、各電池セル12の電圧変化率dVc/dQを導出する。ステップS5の処理が本実施形態の変化率導出工程に相当する。ステップS5の処理を実行する蓄電制御装置40が本実施形態の変化率導出部に相当する。ステップS5の処理は電池セル12ごとに行われる。
【0053】
<電圧変化率dVc/dQ>
電圧変化率dVc/dQは、単位充電容量あたりの閉回路電圧Vcの変化量である。単位充電容量は、単位時間あたりに電池セル12に充電される充電容量である。単位充電容量は、所定の期間に電池セル12に流れた充電電流Icを積算することや充電電流Icの目標値を所定の期間で積算することで得られる充電容量を、単位時間に規格化することで得られる。閉回路電圧Vcの変化量は、前回のSOC推定値に対する今回のSOC推定値の差分から得られる。蓄電制御装置40は、このようにして得られる単位充電容量及び閉回路電圧Vcの変化量から、電圧変化率dVc/dQを導出すればよい。なお、導出される電圧変化率dVc/dQは、あるタイミングでの電圧変化率dVc/dQでも、当該タイミングから過去に遡った所定期間の間の電圧変化率dVc/dQの平均値でもよい。複数の時刻での値の平均値を用いることで、電圧変化率dVc/dQの測定誤差の影響を低減し、導出される電圧変化率dVc/dQの値が安定する。
【0054】
<ステップS6>
次にステップS6に進み、蓄電制御装置40は、充電を途中で終了するか否かの判定を行う。充電を途中で終了する場合とは、例えば図示しない充電終了ボタンをユーザが操作した場合である。
【0055】
<ステップS7>
ステップS6の判定結果が否定の場合、ステップS7に進み、蓄電制御装置40は、セル番号kを1に設定する。セル番号kは、電池セル12kごとに行われる処理において、当該処理を行う対象となる電池セル12を指定する変数として機能する。
【0056】
<ステップS8>
ステップS7の後、ステップS8に進み、蓄電制御装置40は、定電流モードM1にて電池セル12の充電が行われている状況において、ステップS4にて取得した閉回路電圧Vcが所定の判定電圧Vdに達したか否かの判定を行う。ステップS7の処理が本実施形態の判定工程に相当する。ステップS8の処理を実行する蓄電制御装置40が本実施形態の判定部に相当する。
【0057】
<判定電圧Vd>
判定電圧Vdとは、電圧変化率dVc/dQを用いてSOCの推定を行う契機となる電圧の値である。判定電圧Vdは複数設定されている。本実施形態では、m個の判定電圧Vdが設定されている。なお、mは2以上の自然数である。複数の判定電圧Vdのなかでその値がj番目に小さいものを、変数jを用いてVdjと表す。言い換えれば、変数jは、複数の判定電圧Vdの値を指定するパラメータである。なお、変数jの取りうる値は、1からmまでの自然数である。本実施形態において、複数の判定電圧Vdjの最大値Vdmは、最大充電電圧Vxと等しい。本実施形態では、複数の判定電圧Vdjのうち、変数jがm未満の判定電圧Vdjが、移行前電圧である。移行前電圧は、最大充電電圧Vx未満の電圧である。したがって、複数の判定電圧Vdは、最大充電電圧Vxと、移行前電圧と、を含む。
【0058】
判定電圧Vdは、電池セル12kごとに個別に設定されている。以下、説明の便宜上、k番目の電池セル12に設定されている判定電圧VdがVdjの場合、変数j及びセル番号kを用いて、当該電池セル12kに設定されている判定電圧Vdを判定電圧Vdjkと表記することがある。各Vdjkの値は、Vdj(j=1,2,…,m)と等しい。
【0059】
本実施形態では、蓄電制御装置40は、k番目の閉回路電圧Vckが当該判定電圧Vdjk以上であるか否かの判定を行う。すなわち、蓄電制御装置40は、定電流モードM1にて充電が行われている状況において、閉回路電圧Vcが複数の判定電圧Vdjのいずれかに達したか否かの判定を行う。
【0060】
本実施形態では、蓄電制御装置40は、ステップS8において、電池セル12kごとに、ステップS4にて取得された閉回路電圧Vckが判定電圧Vdjkに達したか否かの判定を行う。詳細には、蓄電制御装置40は、現在のセル番号kに基づいて、ステップS4にて取得された電池セル12kの閉回路電圧Vckが判定電圧Vdjk以上か否かの判定を行う。
【0061】
<ステップS9>
ステップS8の判定結果が肯定の場合、すなわち、閉回路電圧Vckが判定電圧Vdjkに達したと判定された場合、ステップS9に進む。ステップS9において、蓄電制御装置40は、当該電池セル12について、対応関係Dを用いてSOC推定値を導出し、当該SOC推定値に基づいてSOCの推定を行う。本実施形態では、蓄電制御装置40は、対応関係Dを用いて導出されたSOC推定値と、ステップS3にて導出されたSOC推定値と、に基づいてSOCの推定を行う。ステップS9の処理が本実施形態の推定工程に相当する。また、ステップS9の処理を行う蓄電制御装置40が本実施形態の推定部に相当する。
【0062】
<対応関係D>
図3に示すように、対応関係Dは、判定電圧Vdにおける電圧変化率dVc/dQとSOC推定値との相関を示す。対応関係Dは、記憶部42に記憶されている。言い換えれば、蓄電制御装置40は、対応関係Dを記憶する記憶部42を備えている。本実施形態では、記憶部42は、複数の対応関係D1,D2,…,Dmを記憶している。以下、説明の便宜上、複数の対応関係D1,D2,…,Dmのそれぞれを、変数jを用いて対応関係Djと表記することがある。各対応関係Djは、複数の判定電圧Vdjごとに、判定電圧Vdjにおける電圧変化率dVc/dQとSOC推定値との相関を示す。各対応関係Djは、同一の変数jの判定電圧Vdjに対応している。
【0063】
対応関係Djは、例えば、1つの判定電圧Vdjに対して、電圧変化率dVc/dQとSOC推定値とのマップで表される。具体的には、対応関係Djは、判定電圧Vdjごとに、電圧変化率dVc/dQの代表値X1,X2,…,Xpと、これらの代表値と1対1に対応するSOC推定値Y1,Y2,…,Ypと、が対応しているマップで表される。このような複数の対応関係Dは、例えば試験やシミュレーション等により得られる。蓄電制御装置40は、マップで表される対応関係Djを参照して、各電池セル12の判定電圧Vdjにおける電圧変化率dVc/dQに対応するSOC推定値を導出する。なお、電池セル12の判定電圧Vdjは、各電池セル12に対応する変数jに基づいて設定される。電圧変化率dVc/dQとしては、ステップS5にて導出されたものを用いればよい。ステップS9の処理は、電池セル12kごとに行われる。したがって、蓄電制御装置40は、達したと判定された判定電圧Vdjに対応した対応関係Djを用いて、当該判定電圧Vdjに達したときの電圧変化率dVc/dQに対応するSOC推定値を導出する。
【0064】
ここで、対応関係Dを用いたSOC推定値の導出方法の一例について詳細に説明する。
蓄電制御装置40は、まず、ステップS9にて閉回路電圧Vckが達した判定電圧Vdjkの値Vdjに基づいて、複数の対応関係Dのうち、判定電圧Vdjkに最も近い判定電圧Vdに対応する対応関係Djを参照する。次に蓄電制御装置40は、参照される当該対応関係Dj内の電圧変化率dVc/dQの代表値X1,X2,…,Xpの中から、ステップS5にて導出された電圧変化率dVc/dQに最も近い代表値を決定する。なお、上述したように、ステップS5にて導出された電圧変化率dVc/dQは、あるタイミングでの電圧変化率dVc/dQでも、当該タイミングから過去の所定期間に導出された複数の電圧変化率dVc/dQの平均値でもよい。これに伴い、ステップS9にて用いられる電圧変化率dVc/dQは、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdに達したタイミングにおける電圧変化率dVc/dQに限られず、当該タイミングから過去の所定期間に導出された複数の電圧変化率dVc/dQの平均値でもよい。複数の電圧変化率dVc/dQの平均値を用いることにより、導出される電圧変化率dVc/dQの測定誤差の影響を低減することができる。次に蓄電制御装置40は、当該対応関係D内のSOC推定値Y1,Y2,…Ypの中から、当該代表値に対応するSOC推定値を決定する。このようにして、蓄電制御装置40は、対応関係Dを用いてSOC推定値を導出する。対応関係Dを用いたSOC推定値の導出方法はこれに限らず任意であり、例えば、蓄電制御装置40は、ステップS5にて導出された電圧変化率dVc/dQに対応する代表値として、電圧変化率の各代表値X1,X2,…,Xpの重み付き平均値を用いてもよい。
【0065】
蓄電制御装置40は、ステップS3にて導出されたSOC推定値と、ステップS9にて導出されたSOC推定値との重み付き平均値によってSOCの推定を行う。なおSOCの推定方法はこれに限られず任意である。例えば、蓄電制御装置40は、例えばステップS3にて導出されたSOC推定値を、ステップS9にて導出されたSOC推定値に置き換えることで、SOCの推定を行ってもよい。
【0066】
<ステップS10>
図2に示すように、ステップS9の後にステップS10に進み、蓄電制御装置40は、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdの最大値Vdm(すなわち最大充電電圧Vx)に達したか否かの判定を行う。詳細には、蓄電制御装置40は、複数の閉回路電圧Vckのうち、判定電圧Vdの最大値Vdm(すなわち最大充電電圧Vx)に達した閉回路電圧Vckが存在するか否かの判定を行う。本実施形態では、閉回路電圧Vckが判定電圧Vdの最大値Vdm以上であるか否かの判定を行う。
【0067】
<ステップS11>
ステップS10の判定結果が否定の場合、すなわち、閉回路電圧Vckが判定電圧Vdの最大値Vdm(すなわち最大充電電圧Vx)未満の場合、蓄電制御装置40は変数jの数を1だけ増やし、セル番号kに対応する判定電圧VdjkをVd(j+1)kに更新する。これにより、閉回路電圧Vckが判定電圧Vdjに達する度に、判定電圧Vdjkがより大きい値に更新される。
【0068】
<ステップS12>
次にステップS12に進み、蓄電制御装置40は、セル番号kがセル数nと一致するか否かの判定を行う。
【0069】
<ステップS13>
ステップS12の判定結果が否定の場合、すなわちセル番号kがセル数nではない場合、蓄電制御装置40は、セル番号kをk+1に更新して、再度ステップS8の処理を行う。これにより、蓄電制御装置40は、k+1番目の電池セル12に対して再度ステップS8からステップS12までの処理を行うことにより、各電池セル12に対して順次、ステップS8からステップS13までの処理を行う。そのため、ステップS10での判定結果が肯定とならない限り、1からnまでの全てのkに対して、少なくともステップS8の処理が行われる。
【0070】
一方、ステップS12の判定結果が肯定の場合、すなわちk=nの場合、ステップS3に戻り、再度SOCの推定を行う。ステップS12の判定結果が肯定の場合とは、全ての電池セル12について少なくともステップS8の処理が行われた場合に相当する。
【0071】
<ステップS14>
ステップS10での判定結果が肯定の場合、すなわち、閉回路電圧Vckが最大充電電圧Vx以上となる場合、ステップS14に進み、充電モードが定電流モードM1から後段充電モードM2へと切り替わる。ステップS10での判定結果が肯定の場合とは、各セル番号kに対応する閉回路電圧Vckのいずれか1つが最大充電電圧Vx以上となる場合である。言い換えれば、ステップS10での判定結果が肯定の場合とは、少なくとも複数の閉回路電圧Vckのうちの最大の閉回路電圧Vckである最大閉回路電圧Vcmaxが最大充電電圧Vx以上の場合である。本実施形態では、定電流モードM1である状況において最大閉回路電圧Vcmaxが最大充電電圧Vx以上になると、充電モードが定電流モードM1から後段充電モードM2へ切り替わる。したがって、本実施形態の最大充電電圧Vxは、充電モードが定電流モードM1から後段充電モードM2へ切り替わる契機となる電圧である。換言すれば、後段充電モードM2は、閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達したことに基づいて定電流モードM1から移行するモードである。なお、ステップS10での判定結果が肯定の場合、他の電池セル12kについて独立してステップS3~ステップS13までのいずれの処理が行われていたとしても、蓄電制御装置40は、充電モードを定電流モードM1から後段充電モードM2に切り替える。この場合、各電池セル12kの最新のSOC推定値は、定電流モードM1から後段充電モードM2に切り替わったときのSOC推定値となる。最新のSOC推定値は、充電モードが後段充電モードM2に切り替わるまでに各電池セル12kにおいて最後に実行されたステップS9にて推定されたSOC推定値を含む。すなわち、最大閉回路電圧Vcmaxを有する電池セル12kにおける最新のSOC推定値は、最大充電電圧Vxである判定電圧Vdmにおいて推定されたSOC推定値である。また、最大閉回路電圧Vcmaxを有する電池セル12k以外の電池セル12kにおける最新のSOC推定値は、最大充電電圧Vx未満の判定電圧Vdjkにおいて推定されたSOC推定値である。
【0072】
<ステップS15>
次にステップS15に進み、蓄電制御装置40は、後段充電モードM2で蓄電装置11の充電を行う。
【0073】
<ステップS16>
次にステップS16に進み、蓄電制御装置40は蓄電装置11の充電を終了するか否かの判定を行う。ステップS16での判定結果が否定の場合、蓄電制御装置40は蓄電装置11の充電を継続する。
【0074】
<ステップS17>
一方、ステップS16での判定結果が肯定の場合、ステップS17に進み、蓄電制御装置40は、充電終了処理を行い、蓄電装置11の充電を終了する。なお、充電を終了するか否かの判定方法の具体的態様は任意であるが、蓄電制御装置40は、例えば充電電流Icが所定の値以下であるか否かに基づいて当該判定を行う。充電電流Icが当該値以下である場合に、ステップS16での判定結果が肯定となる。充電電流Icが当該値より大きい場合に、ステップS16での判定結果が否定となる。さらに、蓄電制御装置40は、後段充電モードM2での充電中に充電装置101と蓄電ユニット10との接続が解除されたか否かに基づいて、ステップS16での判定を行ってもよい。例えば、蓄電制御装置40は、後段充電モードM2での充電中に当該接続が解除された場合に、ステップS16での判定結果が肯定となる。後段充電モードM2での充電中に当該接続が解除されていない場合に、ステップS16での判定結果が否定となる。また、蓄電制御装置40は、充電終了ボタンが操作されたか否かに基づいて、当該判定を行ってもよい。充電終了ボタンが操作された場合、ステップS16での判定結果が肯定となり、充電終了ボタンが操作されていない場合、ステップS16での判定結果が否定となる。なお、ステップS16での判定結果が肯定である場合とは、少なくとも定電流モードM1での充電が完了している場合に対応する。
【0075】
<ステップS18>
蓄電制御装置40は、ステップS17において蓄電装置11の充電が終了した後に、ステップS18に進み、各電池セル12のセルバランス制御を行う。蓄電制御装置40は、セルバランス制御を行うことにより、各電池セル12のSOCのばらつきを低減させる。本実施形態では、蓄電制御装置40は、セルバランススイッチ22の各電池セル12の放電を行うことにより、各電池セル12のセルバランス制御を行う。
【0076】
セルバランス制御の具体的態様は任意であるが、例えば蓄電制御装置40は、各電池セル12の最新のSOC推定値に基づいて、各電池セル12の放電量を決定する。蓄電制御装置40は、各電池セル12の放電量に基づいて、各セルバランススイッチ22のON期間を決定する。ON期間とは、セルバランススイッチ22がONである期間である。蓄電制御装置40は、ON期間に基づいてセルバランススイッチ22のON/OFFに関する制御態様を決定する。蓄電制御装置40は、決定された制御態様に基づいて各セルバランススイッチ22を制御することにより、各電池セル12の充放電を行い、各電池セル12のSOCのばらつきを低減する。セルバランス制御が完了した場合、蓄電制御装置40は、蓄電制御処理を終了する。
【0077】
<充電を途中で終了する場合>
一方、ステップS6の判定結果が肯定の場合、すなわち、蓄電制御装置40が充電を途中で終了する場合、ステップS17に進み、充電終了処理を行い、充電を終了する。ステップS4の判定結果が肯定の場合とは、全ての閉回路電圧Vckが最大充電電圧Vx未満の状況にて蓄電装置11の充電が終了した場合に対応する。
【0078】
なお、ステップS6での判定結果が肯定である場合とは、定電流モードM1での充電が途中で終了した場合に対応する。言い換えれば、ステップS6での判定結果が肯定である場合とは、ステップS10での判定結果が肯定である場合とは異なり、定電流モードM1での充電が完了する前にステップS10の充電終了処理が行われる場合に対応する。
【0079】
蓄電制御装置40は、ステップS17において蓄電装置11の充電が終了した後に、ステップS18に進み、各電池セル12のセルバランス制御を行う。なお、蓄電制御装置40が充電を途中で終了した場合、蓄電制御装置40は、ステップS17で充電終了処理が行われる前の最新のSOC推定値に基づいて、各電池セル12kのセルバランス制御を行えばよい。
【0080】
<閉回路電圧Vc及び電圧変化率dVc/dQのSOC依存性>
次に、図4及び図5を用いて、閉回路電圧VcのSOC依存性について説明する。閉回路電圧VcのSOC依存性は、充電開始までの電池セル12の充放電履歴によって変動する。電池セル12の充放電履歴には、例えば充電開始時点におけるSOC、充電開始前における電池セル12の放電態様、充電態様などが含まれる。また、閉回路電圧VcのSOC依存性は、各電池セル12の個体差によっても変動し得る。
【0081】
電池セル12は、低抵抗領域R1と、高抵抗領域R2と、を含む充放電特性を有する。低抵抗領域R1は、電池セル12の充電が行われている場合における電池セル12の内部抵抗が所定値以下となる領域である。高抵抗領域R2は、電池セル12の充電が行われている場合における電池セル12の内部抵抗が所定値より大きい領域である。高抵抗領域R2は、電池セル12の満充電状態を含む。本実施形態では、記憶部42に記憶された判定電圧Vdは、高抵抗領域R2の閉回路電圧Vcの範囲内に含まれる。
【0082】
所定値は、例えば電池セル12の特性に基づいて適宜設定される値であればよい。例えば、閾値SOC(例えば85%付近等)に達すると、いかなる電池セル12であっても電池セル12の内部抵抗の上昇の傾きが大きくなる場合、上記所定値として、当該閾値SOCに対応する抵抗値を採用してもよい。換言すれば、SOCに対する内部抵抗の曲線において傾きが大きくなる変曲点が存在する場合、高抵抗領域R2は、少なくとも当該変曲点以上の領域であるとよい。
【0083】
このような電池セル12の充電履歴H1~H3を3つ例示する。充電履歴H1~H3は、それぞれ定電流モードM1で充電が行われている場合における電池セル12の状態の変化を示す。電池セル12の状態には、閉回路電圧Vc、電圧変化率dVc/dQ、及びSOCが含まれる。定電流モードM1での充電中の閉回路電圧Vcは、定電流モードM1での充電中の電池セル12の閉回路電圧に対応する。定電流モードM1は、充電開始から閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達するまでの間に行われる。充放電履歴の1つである充電開始時点でのSOCは、第1の充電履歴H1での充電、第2の充電履歴H2での充電、第3の充電履歴H3での充電の順に大きくなる。各充電履歴H1~H3を示す曲線の接線は、SOCの変化に対する閉回路電圧Vcの変化率を示す。SOCの変化とは、充電容量の変化に対応する。そのため、各充電履歴H1~H3の接線は、電圧変化率dVc/dQに対応する。
【0084】
各充電履歴H1~H3にて、定電流モードM1での充電中の電圧変化率dVc/dQは、SOCの増加に伴い上昇する傾向にある。充電履歴H1~H3ごとの電圧変化率dVc/dQとSOCとの間に正の相関がある。すなわち、電圧変化率dVc/dQが大きくなるにつれて、SOCが大きくなる。特に高抵抗領域R2では、低抵抗領域R1に比べて、1つの充電履歴H1~H3のなかでの電圧変化率dVc/dQとSOCとの間に、強い相関がある。したがって、各電池セル12の充電が同一の充電履歴に従って行われる場合、蓄電制御装置40は、電圧変化率dVc/dQに基づいてSOCの推定を行うことが可能となる。
【0085】
しかし、異なる充電履歴においては、異なる閉回路電圧Vck間において、SOCが異なるにも関わらず電圧変化率dVc/dQが一致する可能性がある。例えば、第1の充電履歴H1の高抵抗領域R2内の第1電圧V1に対応する電圧変化率dVc/dQは、他の充電履歴H2,H3にて第1電圧V1よりも低い第2電圧V2又は第3電圧V3に対応する電圧変化率dVc/dQと一致することがある。そのため、同一の電圧変化率dVc/dQに関わらず、異なるSOCが導出されることが生じる。となると、充電履歴H1~H3に応じて異なるSOCが導出されることとなり、電圧変化率dVc/dQによるSOCの推定の信頼性が低下するおそれがある。
【0086】
一方、図5に示すように、閉回路電圧Vcがある電圧(例えば最大充電電圧Vx)に達したタイミングにおける電圧変化率dVc/dQは、SOCが異なる場合には一致しない。すなわち、閉回路電圧Vcがある電圧に達したタイミングにおける電圧変化率dVc/dQと、当該タイミングにおけるSOCと、の間に正の相関が現れる。
【0087】
このような相関が現れる要因の1つは、充放電履歴の差が電池セル12のそれぞれの正極13及び負極14の反応ムラを引き起こすことであると考えられる。反応ムラとは、電池セル12の充放電の際に、正極13及び負極14のうちの一部が優先的に反応した結果、正極13及び負極14の内部にて反応の進行の偏りが生じることである。このような反応ムラによって、内部抵抗のSOC依存性、すなわち閉回路電圧VcのSOC依存性が変動する。そのため、充電履歴H1~H3が異なると、反応ムラに起因して、電圧変化率dVc/dQとSOCとの対応関係Dが変動する。なお、反応ムラは、例えば充電が行われる期間が長いほど大きくなりやすい。充電履歴H1~H3の例では、反応ムラが大きくなるほど、高抵抗領域R2における電圧変化率dVc/dQが小さくなっている。言い換えれば、反応ムラが大きくなるほど、閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに向けて緩やかに上昇している。
【0088】
このため、閉回路電圧Vcがある電圧に達したタイミングにおける電圧変化率dVc/dQと、当該タイミングにおけるSOCと、の間には、充放電履歴に応じた正の相関が現れる。
【0089】
詳細には、閉回路電圧Vcがある電圧に達したタイミングにおける電圧変化率dVc/dQは、その時点におけるSOCが大きくなるにつれて大きくなる。例えば、それぞれの閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達したタイミングにおける第1の充電履歴H1の電圧変化率dVc/dQは当該タイミングにおける第2の充電履歴H2の電圧変化率dVc/dQよりも低い。また、当該タイミングにおける第2の充電履歴H2の電圧変化率dVc/dQは、当該タイミングにおける第3の充電履歴H3の電圧変化率dVc/dQよりも低い。
【0090】
閉回路電圧Vcがある電圧に達したタイミングにおける電圧変化率dVc/dQの差異は、当該タイミングにおける電圧が大きいほど大きくなる。電圧変化率dVc/dQの差異が大きくなるほど、SOC推定値の精度が向上する。
【0091】
<蓄電制御処理が行われた場合における各閉回路電圧Vcの変化>
次に、図6及び図7を用いて、上記蓄電制御処理が行われた場合における各閉回路電圧Vcの変化について説明する。ここでは、説明の便宜上、判定電圧Vdjの数を表すmを4とし、セル数nを3とする。また、説明の便宜上、Vc1>Vc2>Vc3とする。なお、m及びnはこれに限らず任意である。
【0092】
図6に示すように、まず、蓄電制御装置40がステップS1の処理を行うことで、定電流モードM1にて各電池セル12の充電が行われる。次に、蓄電制御装置40は、各電池セル12に対応する変数jを1に設定する。これにより、各電池セル12kの判定電圧Vdjkが同一の値Vd1に設定される。
【0093】
図6及び図7に示すように、定電流モードM1にて各電池セル12の充電が進むとともに、各閉回路電圧Vcが上昇する。その結果、閉回路電圧Vc1が判定電圧Vd11(すなわちVd1)に達する。これにより、k=1の場合において、ステップS8の判定が肯定となり、ステップS9にて対応関係Dを用いたSOC推定値の導出が行われる。この時点では、閉回路電圧Vc1は判定電圧Vd4(すなわち最大充電電圧Vx)に達していないため、ステップS10の判定結果が否定となる。その結果、ステップS11において、蓄電制御装置40は、k=1に対応する電池セル121に対応する変数jを1から2に上昇させ、判定電圧Vd11を判定電圧Vd21(すなわちVd2)に更新する。一方、k=2,3,4に対応する電池セル12kの閉回路電圧Vckが判定電圧Vd1kに達していないため、ステップS8の判定結果が否定となる。このような処理の結果、k=4となってステップS12の処理が行われ、再びステップS3にてSOCの推定が行われる。
【0094】
図7に示すように、このような処理が行われている間にも定電流モードM1にて各電池セル12kの充電の進行に伴い、各閉回路電圧Vckが上昇する。そして、各閉回路電圧Vckがそれぞれの判定電圧Vdjkに達する度に対応関係Dを用いたSOC推定値の導出と判定電圧Vdjkの更新が繰り返し行われる。
【0095】
<蓄電制御処理が行われた場合におけるSOC推定値の変化>
次に図8を用いて、上記蓄電制御処理が行われた場合におけるSOC推定値の変化について説明する。図8では、説明の便宜上、セル番号kに対応する電池セル12kのSOC推定値を、SOCk(k=1,2,3)と表記している。
【0096】
図8に示すように、定電流モードM1にて各電池セル12の充電が進行するに従って、各電池セル12のSOCは増加する。各電池セル12のSOCの増加は、ステップS3にてSOC推定値の増加として現れる。本実施形態では、ステップS3におけるSOC推定値の導出にあたり、電流積算法を用いている。そのため、充電電流Icが一定となる定電流モードM1では、単位時間あたりに充電される充電容量が一定となるため、単位時間あたりのSOCの変化量も一定となる。しかし、電流センサ31の測定誤差や充電装置101から出力される充電電流Icの誤差によって、電池セル12に流れる充電電流Icには誤差が含まれ得る。特に充電電流Icの誤差にオフセット誤差が含まれる場合、当該誤差が積算されることによって、ステップS3にて導出されるSOC推定値が実際のSOCより大きい値となりうる。
【0097】
このようにSOC推定値に誤差が生じている可能性がある場合でも、蓄電制御装置40は、閉回路電圧Vckが判定電圧Vdjkに達する度に、判定電圧Vdjkに対応した対応関係Djを用いて、各閉回路電圧Vckが判定電圧Vdjkに達したと判定されたときの電圧変化率dVc/dQに対応するSOC推定値を導出する。そして蓄電制御装置40は、ステップS10にて、その導出された前記SOC推定値に基づいてSOCの推定を行い、当該推定後のSOCを最新のSOC推定値とする。本実施形態では、SOC推定値がオフセット誤差によって実際のSOCより大きい値となっている。そのため、当該推定によってSOC推定値が低下する。これにより、充電電流Icの誤差によって生じるSOC推定値と実際のSOCとの乖離が抑制される。
【0098】
蓄電制御装置40は、このような処理を電池セル12kごとに、各電池セル12kの閉回路電圧Vckが判定電圧Vdjkに達する度に行う。そして、閉回路電圧Vc1が最大充電電圧Vxに達したタイミングにて少なくともk=1に対応する電池セル121のSOC推定値の導出が行われる。これに伴い、充電モードが定電流モードM1から後段充電モードM2へと移行する。
【0099】
<作用・効果>
以下、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)蓄電制御装置40は、判定電圧Vdにおける電圧変化率dVc/dQとSOC推定値との対応関係Dが記憶された記憶部42を備える。かかる構成において、蓄電制御装置40は、充電電流Icが一定となる定電流モードM1にて電池セル12の充電が行われている状況において閉回路電圧Vcを取得するステップS4の処理と、ステップS4にて取得された閉回路電圧Vcに基づいて、単位充電容量あたりの閉回路電圧Vcの変化量である電圧変化率dVc/dQを導出するステップS5の処理と、定電流モードM1にて電池セル12の充電が行われている状況において、ステップS4にて取得された閉回路電圧Vcが所定の判定電圧Vdに達したか否かの判定を行うステップS8の処理と、ステップS8にて閉回路電圧Vcが判定電圧Vdに達したと判定された場合に、対応関係Dを用いて閉回路電圧Vckが判定電圧Vdに達したときの電圧変化率dVc/dQに対応するSOC推定値を導出し、当該SOC推定値に基づいてSOCの推定を行うステップS9の処理と、を行う。
【0100】
かかる構成によれば、電池セル12の充電が行われている状況において、閉回路電圧Vcが電池セル12の閉回路電圧Vcではなく、判定電圧Vdに達したときの電圧変化率dVc/dQに対応させてSOC推定値を導出する構成が採用されている。ここで、SOCの変化に対する電圧変化率dVc/dQの変化は、SOCの変化に対する閉回路電圧Vcの変化よりも大きくなりやすい。したがって、閉回路電圧Vcの変化よりも、SOCの推定精度が向上しやすく、SOCの信頼性の向上を図ることができる。
【0101】
ここで、例えば充電が開始されるまでの充放電履歴などによって、定電流モードM1における閉回路電圧VcとSOCとの関係性が変化することがある。これに伴い、電圧変化率dVc/dQとSOCとの関係性が変化することがある。そのため、SOCの推定に電圧変化率dVc/dQを用いる場合、充放電履歴などによってSOCの推定の精度が低下するおそれがある。例えば、電圧変化率dVc/dQとSOCとの関係性が変化すると、異なる閉回路電圧Vc間において、同一の電圧変化率dVc/dQであってもSOCが異なる場合が生じ得る。
【0102】
一方、閉回路電圧Vcが所定の電圧、すなわち判定電圧Vdに達したタイミングにおける電圧変化率dVc/dQは、SOCが異なる場合には一致しないことが見出された。
この知見に鑑みて、本構成によれば、蓄電制御装置40は、ステップS9にて、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdに達した場合に、当該対応関係Dを用いて、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdに達したときの電圧変化率dVc/dQに対応するSOC推定値を導出し、当該SOC推定値に基づいて電池セル12のSOCの推定を行う。
【0103】
これによれば、蓄電制御装置40は、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdである条件下で、電圧変化率dVc/dQに対するSOC推定値を導出することができる。これにより、充放電履歴が異なることに起因して閉回路電圧VcとSOCとの関係性が変化した場合であっても、SOC推定値の精度が低下しにくい。したがって、SOCの信頼性を向上させることができる。
【0104】
(2)電池セル12の充電を行う充電モードは、定電流モードM1と、閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達したことに基づいて定電流モードM1から移行するモードであって充電電流Icが定電流モードM1よりも小さくなる後段充電モードM2と、を含む。
【0105】
かかる構成において、判定電圧Vdは、最大充電電圧Vxを含む。
電圧変化率dVc/dQは、閉回路電圧Vcが大きいほど大きくなりやすい傾向がある。閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達したタイミングでの電圧変化率dVc/dQは、定電流モードM1での充電が行われている状況における電圧変化率dVc/dQの中でも大きい値となりやすい。
【0106】
そこで本構成によれば、判定電圧Vdjが上記最大充電電圧Vxを含むため、閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達したときにSOCの推定が行われる。これにより、SOCの差異に基づく電圧変化率dVc/dQの差異が大きくなるため、より信頼性の高いSOC推定値を導出することができる。
【0107】
(3)判定電圧Vdjは複数設定されている。また、記憶部42は、複数の判定電圧Vdjごとに、判定電圧Vdjにおける電圧変化率dVc/dQとSOC推定値との対応関係Djをそれぞれ記憶している。
【0108】
かかる構成において、蓄電制御装置40は、ステップS8で、定電流モードM1にて電池セル12の充電が行われている状況において、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdjのいずれかに達したか否かの判定を行う。また、蓄電制御装置40は、ステップS9において、ステップS8にて閉回路電圧Vcが判定電圧Vdjに達したと判定される度に、当該判定電圧Vdjに対応した対応関係Djを用いて、判定電圧Vdjに達したと判定されたときの導出された電圧変化率dVc/dQに対応するSOC推定値を導出し、その導出されたSOC推定値に基づいてSOCの推定を行う。
【0109】
かかる構成によれば、閉回路電圧Vcが複数の判定電圧Vdjのいずれかに達する度に、ステップS9にてSOCの推定が行われる。これにより、判定電圧Vdjが1つだけ設定されている場合に比べてSOCの推定の実施頻度が増加するため、SOCの信頼性を向上させることができる。
【0110】
(4)電池セル12の充電を行う充電モードは、定電流モードM1と、閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達したことに基づいて定電流モードM1から移行するモードであって充電電流Icが定電流モードM1よりも小さくなる後段充電モードM2と、を含む。
【0111】
かかる構成において、複数の判定電圧Vdjは、最大充電電圧Vxと、最大充電電圧Vx未満の移行前電圧と、を含む。
かかる構成によれば、最大充電電圧Vxは定電流モードM1での充電が行われている状況において最大の閉回路電圧Vc、すなわち最大閉回路電圧Vcmaxと一致する。そのため、判定電圧Vdが最大充電電圧Vxを含むことにより、閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達した場合に精度よくSOCの推定を行うことができる。
【0112】
これに加え、判定電圧Vdは、移行前電圧を含む。これにより、仮に閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達する前に充電が終了した場合でも、閉回路電圧Vckが最大充電電圧Vx未満である移行前電圧に達することに基づいて、ステップS9にてSOCの推定が行われる。したがって、閉回路電圧Vcが最大充電電圧Vxに達する前に電池セル12の充電が終了された場合にも、SOCの推定を行うことができる。
【0113】
(5)蓄電制御装置40は、電池セル12が複数直列接続された蓄電装置11における各電池セル12kのSOCの推定を行うものである。
かかる構成において、蓄電制御装置40は、ステップS4にて各電池セル12kの閉回路電圧Vckを取得し、ステップS5にて電池セル12kごとに電圧変化率dVc/dQを導出する。
【0114】
かかる構成において、充電モードは、ステップS10にて複数の閉回路電圧Vckのうちの少なくとも1つが最大充電電圧Vxに達したと判定された場合に、定電流モードM1から後段充電モードM2へと移行する。
【0115】
かかる構成において、蓄電制御装置40は、ステップS8及びステップS9にて、電池セル12kごとに判定及び推定を行う。
かかる構成によれば、電池セル12が複数存在する場合、電池セル12kごとにSOCのばらつきが存在する可能性がある。また、閉回路電圧VcのSOC依存性は、各電池セル12の個体差によっても変動し得る。そのため、SOCのばらつきは、閉回路電圧Vckのばらつきを引き起こすため、最大閉回路電圧Vcmaxが判定電圧としての最大充電電圧Vxに達した場合、他の電池セル12kが最大充電電圧Vxに達する前に充電モードが定電流モードM1から後段充電モードM2に移行する。
【0116】
そこで本構成によれば、複数の電池セル12の閉回路電圧Vckがそれぞれ判定電圧Vdjkに達したことに基づいて、電池セル12kごとにステップS9にてSOCの推定が行われる。また、判定電圧Vdjが移行前電圧を含む。そのため、複数の電池セル12のうち最大の閉回路電圧Vcmaxが最大充電電圧Vxに達するまでに、当該最大の閉回路電圧Vcmaxを有する電池セル12以外の電池セル12についてステップS9にて推定が行われる頻度を上げることができる。これにより、充電モードが定電流モードM1から後段充電モードM2に移行する前にステップS9にて推定が行われない電池セル12が生じることを抑制できる。したがって、複数の電池セル12が直列接続された蓄電装置11に対して各電池セル12kのSOCの推定を行う場合であっても、各電池セル12kのSOCの信頼性を向上することができる。
【0117】
(6)電池セル12は、電池セル12の充電が行われている場合における電池セル12の内部抵抗が所定値以下となる低抵抗領域R1と、内部抵抗が所定値より大きい高抵抗領域R2と、を含む充放電特性を有する。高抵抗領域R2は、電池セル12の満充電状態を含む。
【0118】
かかる構成において、記憶部42に記憶された判定電圧Vdjは、高抵抗領域R2の閉回路電圧Vcの範囲内に含まれる。
かかる構成によれば、定電流モードM1での充電が進行するにつれて、電池セル12の内部抵抗が上昇する。内部抵抗の上昇は、閉回路電圧Vcの上昇を引き起こす。電池セル12の内部抵抗は、満充電状態近傍となる高抵抗領域R2にて急激に上昇する傾向にある。そのため、高抵抗領域R2でのSOCの増加に対する内部抵抗の増加量は、低抵抗領域R1のものに比べて大きい。これに伴い、高抵抗領域R2での電圧変化率dVc/dQは、低抵抗領域R1での電圧変化率dVc/dQに比べて大きい。そのため、高抵抗領域R2では、低抵抗領域R1に比べて、対応関係Dを用いてSOCの推定をしやすい。したがって、特に満充電状態近傍におけるSOCをより精度良く推定することができる。
【0119】
(7)蓄電制御装置40が行うSOC推定方法は、充電電流Icが一定となる定電流モードM1にて電池セル12の充電が行われている状況において閉回路電圧Vcを取得するステップS4の工程と、ステップS4にて取得された閉回路電圧Vcに基づいて、単位充電容量あたりの閉回路電圧Vcの変化量である電圧変化率dVc/dQを導出するステップS5の工程と、定電流モードM1にて電池セル12の充電が行われている状況において、ステップS4にて取得された閉回路電圧Vcが所定の判定電圧Vdに達したか否かの判定を行うステップS8の工程と、ステップS8にて閉回路電圧Vcが判定電圧Vdに達したと判定された場合に、判定電圧Vdにおける電圧変化率dVc/dQからSOC推定値を導出するための対応関係Dを用いて閉回路電圧Vcが判定電圧Vdに達したときの電圧変化率dVc/dQに対応するSOC推定値を導出し、当該SOC推定値に基づいてSOCの推定を行うステップS9の工程と、を含む。
【0120】
かかる構成によれば、電池セル12の充電が行われている状態において、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdに達したときの電圧変化率dVc/dQに対応させてSOC推定値を導出する構成が採用されている。ここで、SOCの変化に対する電圧変化率dVc/dQの変化は、SOCの変化に対する閉回路電圧Vcの変化よりも大きくなりやすい。したがって、閉回路電圧Vcの変化よりも、SOCの推定精度が向上しやすく、SOCの信頼性の向上を図ることができる。
【0121】
ここで、例えば充電が開始されるまでの充放電履歴などによって、定電流モードM1における閉回路電圧VcとSOCとの関係性が変化することがある。これに伴い、電圧変化率dVc/dQとSOCとの関係性が変化することがある。そのため、SOCの推定に電圧変化率dVc/dQを用いる場合、充放電履歴などによってSOCの推定の精度が低下するおそれがある。例えば、電圧変化率dVc/dQとSOCとの関係性が変化すると、異なる閉回路電圧Vc間において、同一の電圧変化率dVc/dQであってもSOCが異なる場合が生じ得る。
【0122】
一方、閉回路電圧Vcが所定の電圧、すなわち判定電圧Vdに達したタイミングにおける電圧変化率dVc/dQは、SOCが異なる場合には一致しないことが見出された。
この知見に鑑みて、本構成によれば、ステップS9にて、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdに達した場合に、当該判定電圧Vdに対応する対応関係Dを用いて、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdに達したときの電圧変化率dVc/dQに対応するSOC推定値を導出し、当該SOC推定値に基づいて電池セル12のSOCの推定が行われる。
【0123】
これによれば、閉回路電圧Vcが判定電圧Vdである条件下で、電圧変化率dVc/dQに対するSOC推定値を導出することができる。これにより、充放電履歴が異なることに起因して閉回路電圧VcとSOCとの関係性が変化した場合であっても、SOC推定値の精度が低下しにくい。したがって、SOCの信頼性を向上させることができる。
【0124】
<変形例>
実施形態は以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0125】
・蓄電制御装置40は、セル温度Tcに基づいて、各対応関係Djに含まれる各代表値X1,X2,…,Xp及びSOC推定値Y1,Y2,…,Ypのうちの一部又は全部に変更を加えてもよい。これにより、セル温度Tcが充電履歴H1~H3に与える影響を考慮してSOCの推定を行うことができるため、SOCの信頼性のさらなる向上を図ることができる。
【0126】
・蓄電制御装置40は、電流積算法等によりSOC推定値を導出するステップS3の処理を省略してもよい。この場合、蓄電制御装置40は、例えばステップS9にて対応関係Dを用いて導出されたSOC推定値のみを用いてSOCの推定を行えばよい。具体的には、蓄電制御装置40は、対応関係Dを用いて導出されたSOC推定値自体を電池セル12のSOCとして取り扱ってもよい。また、蓄電制御装置40は、当該SOC推定値を電池セル12の充電状況を示す係数にて補正したものを、電池セル12のSOCとして取り扱ってもよい。
【0127】
要は、対応関係Dを用いて導出されたSOC推定値に基づくSOCの推定は、電流積算法等の他のSOC推定手法と併用される必要はなく、単独で行われてもよい。
・対応関係Dは任意の形式で表すことができる。例えば、対応関係Dは、複数の対応関係Djで表されていなくてもよい。例えば対応関係Dは、判定電圧Vdj、電圧変化率dVc/dQ、及びSOC推定値との対応関係を示す1つのマップとして表されていてもよい。また、対応関係Dは、マップとして表されていなくてもよく、例えば判定電圧Vdjと電圧変化率dVc/dQとを入力するとSOC推定値を出力する関数として表されていてもよい。
【0128】
・判定電圧Vdは、複数設定されていなくてもよく、1つだけ設定されていてもよい。この場合、この1つの判定電圧Vdは、最大充電電圧Vxと一致していることが好ましい。
【0129】
・判定電圧Vdjの値は任意に設定可能である。例えば判定電圧Vdjは、その一部又は全部が低抵抗領域R1の閉回路電圧Vcの範囲内に含まれていてもよい。
・判定電圧Vdは、最大充電電圧Vxを含まなくてもよい。言い換えれば、判定電圧Vdjのうちの1つが最大充電電圧Vxと等しくなくてもよい。例えば複数の判定電圧Vdの全てが最大充電電圧Vx未満であってもよい。
【0130】
・充電モードは、定電流モードM1を含んでいれば任意である。例えば、充電モードは後段充電モードM2を含んでいなくても、定電流モードM1及び後段充電モードM2以外の充電モードを含んでいてもよい。
【0131】
・セルバランス回路20は、放電抵抗21と、セルバランススイッチ22と、を備える、いわゆるパッシブセルバランス回路でなくてもよい。セルバランス回路20は、例えば、アクティブセルバランス回路であってもよい。蓄電制御装置40は、アクティブセルバランス回路を制御することにより、ある電池セル12が放電した電力を他の電池セル12に充電することができる。蓄電制御装置40は、例えば各電池セル12の最新のSOCに基づいて、アクティブセルバランス回路が備えるスイッチの制御態様を決定する。次に、蓄電制御装置40は、決定された制御態様に基づいて、アクティブセルバランス回路が備えるスイッチを制御することにより、各電池セル12のSOCが互いに近づくように、複数の電池セル12の少なくとも一部の充放電を行う。アクティブセルバランス回路の具体的態様は任意であり、コンデンサを用いたものであっても、コンバータを用いたものであってもよい。
【0132】
・SOC推定値の用途は任意であり、各電池セル12kのセルバランス制御に限られない。したがって、蓄電制御装置40は、ステップS18の処理を省略してもよい。例えば蓄電制御装置40は、SOC推定値を用いて各電池セル12kのなかに過充電状態となっているものがあるか否かの判定と、過充電状態の電池セル12kが存在する場合にはステップS17の充電終了処理と、を行ってもよい。すなわち、SOC推定値は、電池セル12が過放電状態か否かの判定を行う際のパラメータとして用いてもよい。
【0133】
・蓄電装置11は、電池セル12が複数直列接続されたものでなくてもよい。例えば、蓄電装置11に含まれる電池セル12は1つであってもよい。言い換えれば、蓄電制御処理は、1つの電池セル12に対して行われてもよい。この場合、蓄電制御処理で用いられる変数としてのセル番号kは、1で固定すればよい。
【0134】
充電制御処理が行われる電池セル12は、低抵抗領域R1と高抵抗領域R2とを含む充放電特性を有するもの、例えば正極13にリン酸鉄リチウムを含有するもの、に限られない。例えば電池セル12は、他のリチウムイオン蓄電池でも、リチウムイオン蓄電池以外の電池であってもよい。リチウムイオン蓄電池以外の電池とは、例えば鉛蓄電池やニッケル水素電池などである。
【符号の説明】
【0135】
11…蓄電装置、12…電池セル、40…蓄電制御装置、42…記憶部、D,Dj…対応関係、dVc/dQ…電圧変化率、M1…定電流モード、M2…後段充電モード、R1…低抵抗領域、R2…高抵抗領域、Vc,Vck…閉回路電圧、Vx…最大充電電圧、Vd,Vdj,Vdjk…判定電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8