(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074206
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】液体吐出ユニットおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
B41J2/165 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187033
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】竹内 則康
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EC07
2C056EC35
2C056FA10
2C056FA15
2C056HA11
2C056HA38
2C056JB04
2C056JB08
2C056JB15
2C056JB18
(57)【要約】
【課題】ノズル面に対する払拭部材の安定した移動を維持することが可能な液体吐出ユニットを提供する。
【解決手段】
液体を吐出するノズルを有するノズル面と、前記ノズル面と平行な面を移動し、前記ノズル面を払拭する払拭部材と、前記払拭部材の前記移動をガイドするガイド部材と、を備える液体吐出ユニットであって、前記ガイド部材に洗浄液を供給する洗浄液供給手段を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有するノズル面と、
前記ノズル面と平行な面を移動し、前記ノズル面を払拭する払拭部材と、
前記払拭部材の前記移動をガイドするガイド部材と、
を備える液体吐出ユニットであって、
前記ガイド部材に洗浄液を供給する洗浄液供給手段を備える
ことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項2】
前記洗浄液供給手段は、前記ノズル面の位置に対して鉛直方向下側に設置したガイド部材に対して洗浄液を供給することを特徴とする請求項1記載の液体吐出ユニット。
【請求項3】
前記払拭部材の位置に対して鉛直方向下側に、前記洗浄液が通過可能な通路を有する部材を備え、前記払拭部材の洗浄で使用した洗浄液を、前記部材を介して前記ガイド部材に供給することを特徴とする請求項2記載の液体吐出ユニット。
【請求項4】
前記ガイド部材は、該ガイド部材から前記洗浄液を排出する排液手段を備えることを特徴とする請求項2または3記載の液体吐出ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の液体吐出ユニットを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
前記ノズル面を鉛直方向と平行に設け、前記液体を前記鉛直方向と交差する方向に吐出することを特徴とする請求項5記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被描画物に向けてインクを吐出するノズルを有するノズル面(302a)と、ノズル面に接触し、ノズル面に平行な方向に延びるワイパ(3)と、ワイパに供給された洗浄液を保持する洗浄液回収部材(6)と、ワイパおよび洗浄液回収部材を保持し、ワイパがノズル面に対向する位置と、ワイパがノズル面に対向しない位置の間で、水平面に対する洗浄液回収部材の傾きを変化させずに、移動可能なワイパユニット(4)とを有するキャリッジ(1)を備えた液体吐出装置(1000)を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術では、ノズルから吐出した液体の一部がミスト状となって浮遊し、ミスト状の液体がワイパ等の払拭部材の移動をガイドするガイド部材に付着するという状態が生じていた。ガイド部材にミスト状の液体が付着すると払拭部材の移動に支障が生じ、払拭部材によるノズル面の払拭動作を妨げてしまう問題があった。特に液体が速乾性を有する液体の場合は、ガイド部材に付着した液体が堆積しやすくなるため、払拭部材の移動に、より大きな支障が生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、液体を吐出するノズルを有するノズル面と、前記ノズル面と平行な面を移動し、前記ノズル面を払拭する払拭部材と、前記払拭部材の前記移動をガイドするガイド部材と、を備える液体吐出ユニットであって、前記ガイド部材に洗浄液を供給する洗浄液供給手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ノズル面に対する払拭部材の安定した移動を維持することが可能な液体吐出ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出装置の全体斜視図。
【
図3】液体吐出位置におけるキャリッジの全体斜視図。
【
図4】本発明の実施形態におけるヘッド位置の説明図。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るヘッドおよび清掃装置周りの概略構成を示した正面図。
【
図6】同実施形態に係るヘッドおよび清掃装置周りの概略側面図。
【
図7】付着インクの除去効果についての比較説明図。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るヘッドおよび清掃装置周りの概略側面図。
【
図9】本発明の実施形態に係る液体吐出装置の適用例を示す概略構成図。
【
図10】本発明の実施形態に係る液体吐出装置の別の適用例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
<液体吐出装置の概略>
はじめに
図1を用いて液体吐出装置の概略を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置の全体斜視図である。ここに例示した液体吐出装置は、トラックの車体側面などに画像を形成する印刷装置である。
【0009】
図1において印刷装置1000は、トラックの車体側面などの対象物100に対向して設置している。印刷装置1000は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。Y軸レール102は、X軸レール101がY方向(正側および負側)に移動可能なようにX軸レール101を保持する。X軸レール101は、Z軸レール103がX方向(正側および負側)に移動可能なようにZ軸レール103を保持する。Z軸レール103は、キャリッジ1がZ方向(正側および負側)に移動可能なようにキャリッジ1を保持する。ここで、キャリッジ1は「液体吐出ユニット」の一例である。
【0010】
印刷装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ方向へ動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向へ動かすX方向駆動部72とを備える。また、印刷装置1000は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向へ動かすY方向駆動部82と、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ方向へ動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0011】
上記構成の印刷装置1000は、X軸レール101が一定間隔でY方向負側へ下降する毎に、キャリッジ1がX軸レール101上を左右(X方向負側および正側)に往復動作する。キャリッジ1の往復移動に伴い、ヘッド保持体70に設けたヘッドは対象物100を走査しながら液体の一例としてのインクを吐出し、対象物100に対して液体吐出処理の一例としての画像形成を行う。
【0012】
ここで、キャリッジ1およびヘッド保持体70のZ方向の移動は、必ずしもZ方向に平行であることを意味するものではなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。なお、図において対象物100の表面形状は平面としているが、対象物100の表面形状は、鉛直に近い面、曲率半径の大きい面、または多少の凹凸を有する面であってもよい。また、システムの構成は、対象物100に対してヘッドを動かすものに限るものではない。ヘッドと対象物100とは相対的に移動が可能であればよく、対象物100をヘッドに対して動かす構成のものであってもよい。
【0013】
<キャリッジの構成>
次に、
図2および
図3を用いてキャリッジの構成を説明する。
図2および
図3は、
図1に示した印刷装置におけるキャリッジの全体斜視図であり、
図2はキャリッジがZ軸上の退避位置にある状態を示したものである。
図3は、キャリッジとヘッドがZ軸上のインク吐出位置にある状態を示したものである。
【0014】
図2において、キャリッジ1はヘッド保持体70を備える。キャリッジ1は、第1のZ方向駆動部92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向へ移動可能である。また、ヘッド保持体70は、ヘッド300を保持し、
図1に示した第2のZ方向駆動部93からの動力により、キャリッジ1に対してZ方向へ移動可能である。ヘッド300について、本実施形態ではヘッド保持体70に6つのヘッド300a~300fを積層状に並べて設けた構成を例示している。
【0015】
ヘッド300a~300fは、それぞれ複数のノズル302を有したノズル面302aを備える。なお、ヘッド300a~300fで用いるインクの色の種類や数は、ヘッド毎に異なる色としてもよいし、すべて同じ色としてもよい。例えば、印刷装置1000が単色を用いる装置である場合は、ヘッド300a~300fで用いるインクは同色でよい。また、ヘッド300を構成するヘッドの数は6つに限るものではない。6つより多くてもよく、また、6つより少なくてもよい。
【0016】
ヘッド300は、図示のように各ヘッドのノズル面302aが水平面(X-Z面)と交わり、かつ複数のノズル302の配列方向をX軸に対して傾きを持つようにしてヘッド保持体70に固定する。これにより、ノズル302は水平方向(Z方向)にインクを吐出する。
【0017】
また、キャリッジ1は、ヘッド300を清掃する清掃装置4を備える。キャリッジ1は、ヘッド保持体70の周囲を囲むように設けた枠体2を支持している。枠体2は、X方向に伸びたシャフト部材からなるガイドロッド3を備えており、清掃装置4は、ガイドロッド3に沿ってX方向、つまり水平方向(Z方向)および鉛直方向(Y方向)と交差する方向へ移動が可能なように、ガイドロッド3に取り付けている。
【0018】
枠体2内には、清掃装置4をガイドロッド3に沿って動かすための駆動モータ、清掃装置4のX方向における位置(待機位置、折り返し位置)を検知するための位置センサ等を備えている。これにより、駆動モータは、動力伝達ベルト5に動力を伝達し、動力伝達ベルト5に連結した清掃装置4は、ガイドロッド3に沿ってX方向正側に移動する。
【0019】
そして、清掃装置4は、ヘッド300のノズル面302aおよびノズル302を清掃する。清掃装置4がさらにX方向正側へ移動して折り返し位置に到達すると、清掃装置4の移動方向はX方向負側に切り替わり、清掃装置4は待機位置へ戻る。
【0020】
そして、トラックの車体側面などの対象物100に対してインク吐出(印刷)動作を行う場合は、
図3に示すようにヘッド保持体70がキャリッジ1に対してZ方向正側へ移動(対象物100側へ前進)する。なお、インク吐出時のキャリッジ1のZ方向位置は、常に一定とは限らない。インク吐出時のキャリッジ1のZ方向位置は、車体側面100の表面形状に追従して可変する。
【0021】
<ヘッドと清掃装置の位置関係>
次に、
図4を用いてヘッドと清掃装置の位置関係を説明する。
図4は、本発明の実施形態におけるヘッド位置の説明図であり、
図4(a)は液体吐出位置、
図4(b)は洗浄位置、
図4(c)は退避位置にヘッドがある状態を示している。なお、以下の説明ではヘッドの数を4つ(300a~300d)とし、簡略化して説明する。
【0022】
ヘッド300は、ヘッド保持体70を介してスライド機構90と連結している。スライド機構90は、
図1に示した第1のZ方向駆動部92および第2のZ方向駆動部93に相当し、ここでは便宜上、一まとめにして説明することとする。このスライド機構90により、ヘッド300はノズル面302aの法線方向(Z方向)において、液体吐出位置、洗浄位置および退避位置への移動が可能である。
【0023】
液体吐出位置では、
図4(a)のようにヘッド300は清掃装置4よりもX方向正側へ突出し、
図1に示した車両側面100とヘッド300との距離を適切な範囲に保ちながらヘッド300からインクを吐出し、印刷を行う。ヘッド300が清掃装置4よりもX方向正側へ突出することで、印刷中における車両側面100と清掃装置4との干渉を防ぎ、ノズル面302aが車両側面100と適切な距離を保てるようにしている。
【0024】
洗浄位置では、
図4(b)のようにヘッド300は清掃装置4よりもX方向負側へ後退し、ワイパ41がヘッド300に適切な食い込み量で当接するよう位置調整してある。
【0025】
退避位置では、
図4(c)のようにヘッド300は洗浄位置よりもさらにX方向負側へ後退し、ワイパ41がヘッド300と当接しない状態となる。なお、この状態においても清掃装置4はX方向(正側および負側)への移動が可能である。
【0026】
<ヘッドおよび清掃装置周りの構成>
次に、
図5および
図6を用いてヘッドおよび清掃装置周りの構成を説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係るヘッドおよび清掃装置周りの概略構成を示した正面図である。
図6は同実施形態に係るヘッドおよび清掃装置周りの概略側面図である。
【0027】
図5においてキャリッジ1を構成する枠体2は、その上部と下部にガイドロッド3a、3bを備える。そして、ガイドロッド3a、3bはブッシュ44を介して清掃装置4を保持している。清掃装置4の上部は、ガイドロッド3aの上方に設けた動力伝達ベルト5に連結しており、動力伝達ベルト5からの動力により清掃装置4はガイドロッド3a、3bに沿ってX方向(正側および負側)に移動する。清掃装置4は、ワイパ41、洗浄液供給部材42および洗浄液回収部材43を備える。
【0028】
ワイパ41は、スポンジや低硬度のゴム等の弾性体からなり、ワイパ41はノズル面302aと当接した際に変形し、払拭時にノズル面302aの表面に付着したインク汚れ等を拭き取るように調整してある。そして、ワイパ41は、清掃装置4のX方向への移動に伴い、ヘッド保持体70に固定したヘッド300(300a~300d)のノズル面302aを払拭し、ノズル面302aの汚れを除去する。ここで、ワイパ41は「払拭部材」の一例である。
【0029】
洗浄液供給部材42は、ワイパ41の上方(Y方向正側)に位置し、洗浄液をワイパ41の上方から下方(Y方向負側)に向けて供給する。洗浄液回収部材43は、ワイパ41の下方(Y方向負側)に位置し、余剰となった洗浄液などを回収する。なお、洗浄液供給部材42および洗浄液回収部材43は、洗浄液供給元または洗浄液回収先にそれぞれ配管で接続しており、洗浄液供給元から洗浄液供給部材42に洗浄液を供給し、洗浄液回収部材43からの排液を洗浄液回収先で回収する構成となっている。
【0030】
上記の構成において、ノズル面302aの洗浄を行う場合は、ヘッド300と清掃装置4とを
図4(b)に示した配置とし、清掃装置4のX方向正側への移動とともにワイパ41でノズル面302aを払拭する。ワイパ41がノズル面302aを通過し、ノズル面302aの払拭が終了したならば、ヘッド300と清掃装置4とを
図4(c)に示した配置とし、ワイパ41がヘッド300と当接しない状態にして清掃装置4をX方向負側へ動かす。これにより、清掃装置4は初期位置へ戻る。
【0031】
また、清掃装置4の上部と下部に設けたブッシュ44と隣接する位置には、ガイド清掃部材46と、ガイド清掃部材46に洗浄液を供給する第2の洗浄液供給部材45を備えている。ガイド清掃部材46は、例えば
図6に示すような断面が中空円筒状の形をしており、その中空部にガイドロッド3a、3bを通した構成となっている。第2の洗浄液供給部材45は、ガイド清掃部材46の外周面の一部に接触もしくは対向するようにして設けている。ここで、ガイドロッド3a、3bは「ガイド部材」の一例であり、第2の洗浄液供給部材45は「洗浄液供給手段」の一例である。
【0032】
ノズル302から吐出したインクの一部はミスト状となって浮遊し、ミスト状のインクがガイドロッド3a、3bの表面(清掃装置4の移動をガイドするガイド面)に付着してしまうことがある。ガイドロッド3a、3bにミスト状のインクが付着すると、清掃装置4の払拭方向への移動に支障が生じ、ワイパ41によるノズル面302aの払拭動作を妨げてしまう場合がある。特にインクが速乾性を有するインクの場合は、ガイドロッド3a、3bに付着したインクが堆積しやすくなるため、ワイパ41の払拭動作に、より大きな支障が生じる場合がある。そこで本実施形態では、第2の洗浄液供給部材45とガイド清掃部材46を設け、払拭動作での支障を防止する。
【0033】
具体的には、ガイドロッド3a、3bに嵌合したブッシュ44のX方向の動きに合わせてガイドロッド3a、3bの表面を清掃できるよう、ブッシュ44の側面にフェルト材等からなるガイド清掃部材46を固定する。そして、ガイド清掃部材46の上部より第2の洗浄液供給部材45が洗浄液を供給するようになっている。上記の構成により、ガイド清掃部材46は、ガイドロッド3a、3bに付着したインクを洗浄液で溶解しながらガイドロッド3a、3bに沿って払拭方向に移動し、ガイドロッド3a、3bをきれいな状態で維持する。
【0034】
<付着インクの除去効果の比較>
図7は、付着インクの除去効果についての比較説明図であり、ガイドロッド部分を拡大して示した図である。
図7(a)はガイドロッドの清掃手段を備えない構成、
図7(b)はガイド清掃部材のみを備えた構成、
図7(c)は本発明の実施形態に係る構成を示す。
【0035】
図7(a)の場合は、ガイドロッド3を清掃する清掃手段を備えないため、ガイドロッド3に付着したインクAがブッシュ44のX方向(払拭方向)の動きを阻害する。
図7(b)の場合は、ガイドロッド3を清掃するガイド清掃部材47を備えるため、ガイドロッド3に付着したばかりのインクAをガイド清掃部材47で除去することは可能だが、ガイドロッド3に乾燥固着したインクAまでは除去しきれない。
【0036】
これらに対し
図7(c)の場合は、ガイド清掃部材46に洗浄液を供給する第2の洗浄液供給部材45を備えるため、ガイドロッド3に乾燥固着したインクAを洗浄液で再溶解することが可能になる。つまり、第2の洗浄液供給部材45は、ガイド清掃部材46の外周の一部と接触しており、第2の洗浄液供給部材45が供給する洗浄液は、矢印aで示すようにガイド清掃部材46に浸透し、ガイド清掃部材46が洗浄液を保持する構成となっている。そして、ブッシュ44のX方向への移動に合わせて、ガイド清掃部材46は、自身が保持した洗浄液によってガイドロッド3に乾燥固着したインクAを再溶解し、インクAをガイドロッド3から除去するため、ブッシュ44の動きを阻害しなくなる。なお、第2の洗浄液供給部材45は、それ自身に洗浄液を収容する収容部を備えた構成としてもよいし、あるいは第2の洗浄液供給部材45を、配管を介して洗浄液を収容したタンク等に接続した構成としてもよい。
【0037】
上述のように第1の実施形態は、インクを吐出するノズル302を有するノズル面302aと、ノズル面302aと平行な面を移動し、ノズル面302aを払拭するワイパ41と、ワイパ41の移動をガイドするガイドロッド3a、3bと、を備えるキャリッジ1であって、ガイドロッド3a、3bに洗浄液を供給する第2の洗浄液供給部材45を備える。これにより、ガイドロッド3a、3bに固着したインクを洗浄液で溶解し、ガイドロッド3a、3bからインクを除去するので、ノズル面302aに対するワイパ41の安定した移動を維持することができる。
【0038】
<第2の実施形態>
図8を用いて変形例を説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係るヘッドおよび清掃装置周りの概略側面図である。
【0039】
ミスト状となって浮遊するインクは自重で下側に流れるため、ヘッド300のノズル面302aの位置よりも鉛直方向下側(図ではY方向負側)に設置したガイド部材に付着するインクが多くなる。そのため第2の実施形態における洗浄液供給手段は、ノズル面302aの位置に対して鉛直方向下側に設置したガイド部材に対して洗浄液を供給するようにしている。
【0040】
本実施形態において、ノズル面302aの位置よりも鉛直方向下側に設置するガイド部材は、上面にX方向の溝を有した断面U字状のガイドレール3cとしている。清掃装置4の洗浄液回収部材43の下部には、Y方向に貫通した貫通孔47aを有した部材47を備えている。さらに部材47は、その下部に摺動部材48を備え、ガイドレール3cの溝に摺動部材48が係合する構成となっている。
【0041】
摺動部材48は、例えばY方向と平行な回転軸を有した軸受からなり、当該軸受の外周面をガイドレール3cの溝に嵌めることで、ガイドレール3cは清掃装置4の下端部を保持している。部材47の貫通孔47aは、ガイドレール3cの溝と摺動部材48との接触位置に対しておおよそ対向するように設ける。また、ガイドレール3cは、その一部にY方向に貫通した貫通孔3dを備え、配管3eを介して排液部3fにつながっている。
【0042】
上記のように構成した第2の実施形態では、清掃装置4の上部に設けた洗浄液供給部材42がワイパ41へ洗浄液を供給し、ワイパ41は洗浄液供給部材42からの洗浄液を用いてノズル面302aを清掃する。ノズル面302aの清掃で使用した洗浄液は、その後、ワイパ41を流れ落ちて洗浄液回収部材43が洗浄液を回収する。洗浄液回収部材43が回収した洗浄液は、部材47に設けた貫通孔47aを通り、ガイドレール3cに落ちていく。
【0043】
上述のように貫通孔47aは、ガイドレール3cの溝と摺動部材48との接触位置に対しておおよそ対向するように設置してあるため、ガイドレール3cに落ちた洗浄液はガイドレール3cの溝の内側面に付着したインクを溶解して洗い流す。また、ガイドレール3cの溝に集まった洗浄液は、貫通孔3dから配管3eを介して排液部3fへ流れる。排液部3fがガイドレール3cの溝に集まった洗浄液を回収することで、ガイドレール3cからの洗浄液の溢れを防止できる。ここで、第2の実施形態において、洗浄液供給部材42は「洗浄液供給手段」の一例であり、部材47は「洗浄液が通過可能な通路を有する部材」の一例であり、貫通孔47aは「通路」の一例である。また、貫通孔3d、配管3eおよび排液部3fは「排液手段」の一例である。
【0044】
上述のように第2の実施形態の場合、洗浄液供給部材42は、ノズル面302aの位置に対して鉛直方向下側に設置したガイドレール3cに対して洗浄液を供給する。また、上述のように、ワイパ41の位置に対して鉛直方向下側に、洗浄液が通過可能な貫通孔47aを有する部材47を備え、ワイパ41の洗浄で使用した洗浄液を、部材47を介してガイドレール3cに供給する。これにより、ガイドレール3cに洗浄液を供給するための専用の洗浄液供給手段を設ける必要がないので、洗浄液供給用の配管構成等の簡素化が可能になる。
【0045】
さらに、上述のように、ガイドレール3cは、ガイドレール3cから洗浄液を排出する貫通孔3d、配管3eおよび排液部3fを備える。これにより、洗浄液の回収および排液をガイドレール3cに集約し、回収および排液側の配管構成等の簡素化が可能になる。
【0046】
<適用例>
以下、本発明の適用例を説明する。
【0047】
図9は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置の適用例を示す概略構成図であり、
図9(a)は全体構成図、
図9(b)は
図9(a)の要部拡大図である。
【0048】
例示した液体吐出装置は、例えば航空機の機体側面などに画像を形成する印刷装置である。印刷装置2000は、キャリッジ1を往復直線移動可能に支持するリニアレール404と、リニアレール404を適宜所定の位置へ動かし、その位置で保持する多関節ロボット405とを備える。多関節ロボット405は、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能としたロボットアーム405aを備えており、ロボットアーム405aの先端を自由に動かし、正確な位置に配置することができる。
【0049】
多関節ロボット405としては、例えば、6つの軸、すなわち6つの関節を備えた6軸制御型の産業用ロボットを用いることができる。6軸型の多関節ロボットによれば予め動作に関する情報をティーチングしておくことで、きわめて正確、且つ迅速にリニアレール404を機体702の所定位置に対峙することができる。ロボット405は、6軸に限るものではなく、5軸、7軸など適宜の軸数を備えた多関節ロボットを用いることができる。
【0050】
ロボット405のロボットアーム405aはフォーク状の支持部材424を備えている。この支持部材424の左側の枝部424aの先端には垂直リニアレール423aを、右側の枝部424bの先端には垂直リニアレール423bを平行になるようにして取り付けている。そして、キャリッジ1を移動可能に保持したリニアレール404の両端を、2つの垂直リニアレール423a、423bが支持している。
【0051】
キャリッジ1は、上述の第1の実施形態または第2の実施形態で説明した構成を備えるものであり、機体702に向けて液体を吐出するヘッドを備えている。ヘッドとしては、上述のヘッド300や、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトなどの各色の液体を吐出する複数のヘッド300、または複数のノズル列を有するヘッド300を備えている。このキャリッジ1の各ヘッド300またはヘッド300の各ノズル列に対しては、インクタンク400から各色の液体を供給している。
【0052】
キャリッジ1は、リニアレール404上を移動することで第1の方向へ動き、このリニアレール404が垂直リニアレール423a、423b上を移動することで第1の方向と交差する第2の方向へ動くことが可能である。また、キャリッジ1には、第1の方向および第2の方向と交差する第3の方向(本例では機体702に向けての液体吐出方向)にてキャリッジ1を動かす第1のスライド機構を備えている。また、キャリッジ1は、ヘッドをキャリッジ1に対して第3の方向にて動かす第2のスライド機構を備えている。
【0053】
印刷装置2000は、ロボット405によりリニアレール404を機体702の画像形成領域に動かし、画像データに応じてキャリッジ1をリニアレール404に沿って移動しながらヘッド300を駆動して、画像形成を行う。そして、1ライン分の印刷が終了したときに、垂直リニアレール423a、423bを駆動することにより、キャリッジ1のヘッド300をあるラインから次のラインに動かす。この動作を繰り返して、機体702の所要の画像形成領域に画像形成することが可能となる。
【0054】
図10は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置の別の適用例を示す概略構成図である。
【0055】
例示した液体吐出装置は、例えばウォールクライミングロボットのような無人車両型の印刷装置である。印刷装置7000は、対象物(本例では建物の壁面)100を印刷装置7000の底部で吸引しながらローラ710を駆動して移動することが可能である。印刷装置7000は、インク等の液体を吐出するヘッド、および清掃装置を含む液体吐出ユニット720を備えており、液体タンク730に収容した液体を、ケーブル740を介して液体吐出ユニット720へ供給する。そして、印刷装置7000は液体吐出ユニット720に備えたヘッドから対象物100に向けて液体を吐出し、対象物100の塗装部Pに液体を塗布する。
【0056】
なお、本例は、液体タンク730を地上に設置し、ケーブル740を介して液体タンク730から液体吐出ユニット720への液体の供給を行っているが、液体タンク730は印刷装置7000に備えてもよい。印刷装置7000に液体タンク730を備えることで、ケーブル740による移動範囲の制限をなくすことができ、印刷装置7000を自由に動かすことが可能になる。
【0057】
このような印刷装置7000の液体吐出ユニット720に、上述の第1の実施形態または第2の実施形態で説明した構成を適用した場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【0058】
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0059】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0060】
[第1態様]
第1態様は、液体を吐出するノズルを有するノズル面(例えばノズル面302a)と、前記ノズル面と平行な面を移動し、前記ノズル面を払拭する払拭部材(例えばワイパ41)と、前記払拭部材の前記移動をガイドするガイド部材(例えば第1の実施形態のガイドロッド3a、3b、第2の実施形態のガイドレール3c)と、を備える液体吐出ユニット(例えばキャリッジ1)であって、前記ガイド部材に洗浄液を供給する洗浄液供給手段(例えば第1の実施形態の第2の洗浄液供給部材45、第2の実施形態の洗浄液供給部材42)を備えることを特徴とするものである。
【0061】
第1態様によれば、ノズル面に対する払拭部材の安定した移動を維持することが可能な液体吐出ユニットを提供することができる。
【0062】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記洗浄液供給手段(例えば第2の実施形態の洗浄液供給部材42)は、前記ノズル面(例えばノズル面302a)の位置に対して鉛直方向下側に設置したガイド部材(例えば第2の実施形態のガイドレール3c)に対して洗浄液を供給することを特徴とするものである。
【0063】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記払拭部材(例えばワイパ41)の位置に対して鉛直方向下側に、前記洗浄液が通過可能な通路(例えば貫通孔47a)を有する部材(例えば部材47)を備え、前記払拭部材の洗浄で使用した洗浄液を、前記部材を介して前記ガイド部材(例えば第2の実施形態のガイドレール3c)に供給することを特徴とするものである。
【0064】
第2態様および第3態様によれば、ガイド部材に洗浄液を供給するための専用の洗浄液供給手段を設ける必要がないので、洗浄液供給用の配管構成等の簡素化が可能になる。
【0065】
[第4態様]
第4態様は、第2態様または第3態様において、前記ガイド部材(例えば第2の実施形態のガイドレール3c)は、該ガイド部材から前記洗浄液を排出する排液手段(例えば貫通孔3d、配管3eおよび排液部3f)を備えることを特徴とするものである。
【0066】
第4態様によれば、洗浄液の回収および排液をガイド部材に集約し、回収および排液側の配管構成等の簡素化が可能になる。
【符号の説明】
【0067】
1 キャリッジ
300 ヘッド
302 ノズル
302a ノズル面
3a ガイドロッド
3b ガイドロッド
3c ガイドレール
3d 貫通孔
3e 配管
3f 排液部
4 清掃装置
41 ワイパ
42 洗浄液供給部材
43 洗浄液回収部材
45 第2の洗浄液供給部材
47 部材
47a 貫通孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】